JP5740526B2 - 無段変速機 - Google Patents

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Description

本発明は無段変速機に関するものである。
従来、入力ディスクの一部と出力ディスクの一部とが互いに重なり合うディスク重合領域を設け、ディスク重合領域で入力ディスクと出力ディスクとを一対の押付ローラで挟んで接触させる変速機がJP2010−53995Aに開示されている。
しかし、上記の発明では、一対のローラをバネによる付勢力で直接挟持するので、入力ディスクの回転を出力ディスクに伝達するためにバネで発生させる付勢力が大きくなる、といった問題点がある。
本発明はこのような問題点を解決するために発明されたもので、小さい力によって入力ディスクの回転を出力ディスクに伝達するために必要な挟持力を発生させることを目的とする。
本発明のある態様に係る無段変速機は、原動機に接続され、変速機ケース部材に支持される入力軸と、入力軸に平行配置され、変速機ケース部材に支持される出力軸と、入力軸に設けられ、外周端を出力軸に近接配置した円板状の入力ディスクと、出力軸に設けられ、外周端を入力軸に近接配置した円板状の出力ディスクと、入力ディスクと出力ディスクが互いに重なり合うディスク重合領域のうち、入力軸の軸心と出力軸の軸心を結ぶ軸心連結線上に沿って移動可能に設けられ、目標変速比に応じた位置にて両ディスクを挟持押圧し、両ディスクの弾性変形によりトルク伝達接触部を形成する一対の押圧手段とを備える無段変速機である。無段変速機は、軸心連結線に対して交差する方向に延び、一方の端部側を支点として押圧手段を支持して押圧手段とともに軸心連結線に沿って移動し、もう一方の端部側に加わる挟持力によって押圧手段により両ディスクを挟持押圧する力を発生させる一対の第1支持手段と、軸心連結線と平行な連結線方向に延設され、回動シャフトを支点として、一対の第1支持手段のもう一方の端部側を連結線方向に沿って移動可能となるように挟んで支持し、挟持力を発生させる一対の第2支持手段と、回動シャフト側とは反対側の一対の前記第2支持手段の端部に連結し、第2支持手段による挟持力を調整する挟持力調整手段とを備える。
この態様によると、一方の端部側を支点として押圧手段で両ディスクを挟持押圧する第1支持手段と、回動シャフトを支点として第1支持手段を挟持する第2支持手段と、第2支持手段による挟持力を調整する挟持力調整手段戸を備えることで、小さい力でトルク伝達接触部を形成し、入力ディスクから出力ディスクへ回転を伝達することができる。
図1は車両用自動変速システムを示す全体概略図である。 図2は変速機をエンジン側から見た図である。 図3は図2における下面図である。 図4Aは図2のIV−IV断面図である。 図4Bは押付ローラとサイドディスクとの接触箇所付近の拡大図である。 図5Aは図4Aの入力軸、および出力軸付近の概略図である。 図5Bは図4Aの入力軸、および出力軸付近の概略図である。 図6Aは図2のVI−VI断面図である。 図6Bは押付ローラシャフトの端部付近の拡大図である。 図7は図6のVII−VII断面における概略図である。 図8は付勢部と保持部および押付ローラとの関係を示す概略図である。 図9Aは図2のIX-IX断面図である。 図9Bは図9AのX−X断面における概略図である。 図10Aは第2ローラフォロアの位置と、一対の押付ローラ機構を挟持する挟持力との関係を示す図である。 図10Bは第2ローラフォロアの位置と、一対の押付ローラ機構を挟持する挟持力との関係を示す図である。 図11は旋回角とクランプアームによる挟持力との関係を示すマップである。 図12Aは押付ローラの動きを説明するための図である。 図12Bは押付ローラの動きを説明するための図である。 図13Aは変速比をLow側からHigh側へ変速させる場合の押付ローラの動きを説明する図である。 図13Bは変速比をLow側からHigh側へ変速させる場合の押付ローラの動きを説明する図である。 図13Cは変速比をLow側からHigh側へ変速させる場合の押付ローラの動きを説明する図である。 図14は押付ローラを出力軸側に傾斜させた状態を示す概略図である。 図15は変速比制御を説明するフローチャートである。 図16は一対の押付ローラによる推力制御を説明するフローチャートである。 図17は目標スリップ率算出制御を説明するフローチャートである。 図18は油温と、目標変速比と、目標スリップ率との関係を示すマップである。 図19はスリップ率と、入力軸から出力軸へのトルク伝達率との関係を示す 図20はスリップ率算出制御を説明するフローチャートである。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態のマルチディスク無段変速ユニットが適用された車両用自動変速システムを示す全体概略図である。
車両用自動変速システム1は、エンジン2と、マルチディスク無段変速ユニット(以下変速機と言う。)3と、左右の駆動軸4、5と、左右の駆動輪6、7と、コントロールユニット(以下、ATCU)8とを備える。
変速機3は、変速機ケース9と、入力軸10と、プライマリディスク11と、セカンダリディスク12と、押圧機構13と、出力軸14と、従来周知の乾式発進クラッチ15と、リバースギア16と、リバースアイドラギア17と、出力ギア18と、シンクロ機構19と、ファイナルギア20と、デファレンシャルギアユニット21とを備える。
車両用自動変速システム1は、入力軸10と、出力軸14と、駆動軸4、5とによる三軸構成である。
入力軸10と出力軸14とは、入力軸10の軸心と、出力軸14の軸心とが平行となるように配置される。入力軸10および出力軸14は、変速機ケース9によって回転可能に支持される。
変速機3について図2、図3を用いて詳しく説明する。図2は変速機3をエンジン2側から見た図である。図3は図2の下面図である。図4Aは図2のIV−IV断面図である。なお、図2以降の図面については説明のため部材の一部を省略している。
プライマリディスク11は、2枚の円形のディスク11aを図5A、図5Bに示すように入力軸10の軸方向に並べて入力軸10に取り付けて構成され、入力軸10と一体となって回転する。図5は図4Aの入力軸10、および出力軸14付近の概略図である。2枚のディスク11aの間にはスペーサ22が設けられ、2枚のディスク11aは、スペーサ22によって入力軸10の軸方向に所定の間隔を設けて配置される。プライマリディスク11は、ディスク11aの外周端が出力軸14に近接するように配置される。プライマリディスク11は入力軸10とともに図2の矢印方向に回転する。
セカンダリディスク12は、センターディスク12aと、センターディスク12aの両面側に向かい合わせて設けた2枚のサイドディスク12bとを備える。セカンダリディスク12は、図5A、図5Bに示すようにセンターディスク12aとサイドディスク12bとを出力軸14の軸方向に並べて出力軸14に取り付けて構成され、出力軸14と一体となって回転する。センターディスク12aとサイドディスク12bとの間にはスペーサ23が設けられ、センターディスク12aとサイドディスク12bとは、スペーサ23によって出力軸14の軸方向に所定の間隔を設けて配置される。セカンダリディスク12は、センターディスク12aの外周端、およびサイドディスク12bの外周端が入力軸10に近接するように配置される。
センターディスク12aは、円形のディスクであり、サイドディスク12b、およびプライマリディスク11のディスク11aよりも出力軸14の軸方向における厚さが厚い。センターディスク12aには、径方向内側に凹部12cが形成され、凹部12cにスラストボールベアリング24が設けられる。
サイドディスク12bは、円形のディスクであり、半径方向の外方になるに従ってセンターディスク12aとの距離が大きくなるように反っている。
プライマリディスク11のディスク11aは、セカンダリディスク12のセンターディスク12aとサイドディスク12bとの間に配置される。プライマリディスク11とセカンダリディスク12とは、入力軸10と出力軸14との間で、ディスクの一部が重なり合うディスク重合領域を形成する。センターディスク12aは、入力軸10の軸方向におけるディスク重合領域の中心に位置する。
ディスク重合領域において、プライマリディスク11のディスク11aの出力軸14側の外周端は、スラストボールベアリング24によって支持されており、プライマリディスク11のディスク11aとセンターディスク12aとの間には、以下に詳述する押圧機構13による押圧力が作用しない状態では、隙間が形成される。また、セカンダリディスク12のサイドディスク12bは、外周端側がセンターディスク12aとの距離が大きくなるように反っているので、プライマリディスク11のディスク11aとセカンダリディスク12のサイドディスク12bとの間には隙間が形成される。そのため、ディスク重合領域においては、プライマリディスク11およびセカンダリディスク12に押圧機構13によって挟持押圧する力(以下、この力を推力と言う。)がかかっていない場合、または推力が小さい場合には、図5Aに示すようにプライマリディスク11とセカンダリディスク12とは接触しない。一方、押圧機構13による推力が大きくなると、図5Bに示すようにプライマリディスク11とセカンダリディスク12とが弾性変形し、プライマリディスク11とセカンダリディスク12とが接触し、トルク伝達接触部が形成される。プライマリディスク11とセカンダリディスク12との間にトルク伝達接触部が形成されることで、入力軸10から出力軸14へ回転が伝達される。
押圧機構13は、一対の押付ローラ機構30と、一対のディスククランプ機構31と、挟持力調整機構32と、第1アクチュエータ33とを備える。
第1アクチュエータ33は、押付ローラ機構30を入力軸10の軸心と出力軸14の軸心とを結ぶ軸心連結線Oに沿って移動させる。軸心連結線Oは、入力軸10の軸心と出力軸14の軸心とに直交する。
第1アクチュエータ33は、電動モータ34と、ボールスクリュー機構35とを備える。ボールスクリュー機構35は、ねじ軸36と、ブラケット37と、ボール(図示せず)とによって構成される。
ねじ軸36は、一方の端部が電動モータ34の回転軸に連結され、電動モータ34の回転軸の回転方向に応じて正方向または逆方向に回転する。ねじ軸36は軸心連結線O方向に延設される。ねじ軸36とブラケット37との間には複数のボール(図示せず)が転動自在に設けられる。
ブラケット37は、ねじ軸36が回転すると、ねじ軸36の回転に応じてねじ軸36の軸方向、つまり軸心連結線O方向に沿って移動する。ブラケット37には、電動モータ34側となるにつれてねじ軸36からの距離が短くなるテーパ面37aがエンジン2側の面に形成される。ブラケット37が電動モータ34によって往復動されると、テーパ面37aに所謂カムフォロワーのように追随するプッシュロッド(図示せず)が往復動され、プッシュロッドによって乾式発進クラッチ15のレリーズレバーが駆動されてクラッチの断続操作がなされる。
ブラケット37は、軸心連結線O方向に延設される第1シャフト38を介して、詳しくは後述する押付ローラ機構30の第2支持部44、ローラフォロアサポートブロック48に連結する。電動モータ34によってねじ軸36が回転されると、ブラケット37はねじ軸36の回転方向に応じて軸心連結線O方向に沿って前後進し、押付ローラ機構30がブラケット37および第1シャフト38と一体となって軸心連結線O方向に沿って前後進する。
押付ローラ機構30について、図6A、図6Bを用いて説明する。図6Aは図2のVI−VI断面図である。図6Bは押付ローラシャフト42の端部42b付近の拡大図である。
押付ローラ機構30は、押付ローラ40と、保持部41と、押付ローラシャフト42と、第1支持部43と、第2支持部44と、付勢部45と、サポートブロック46と、第1ローラフォロア47とを備える。
一対の押付ローラ機構30は、セカンダリディスク12のセンターディスク12aに対して線対称となるように配置され、上部でガイドブロック49に取り付けられている。ガイドブロック49は、変速機ケース9に取り付けられる2つのガイドシャフトブロック50の間に設けられて軸心連結線O方向に延設される2本のガイドシャフト51に摺動可能に支持される。つまり、一対の押付ローラ機構30は、ガイドブロック49を介してガイドシャフト51に摺動可能に支持され、第1アクチュエータ33により軸心連結線O方向に移動し、目標変速比に応じた位置にトルク伝達接触部を形成する。
押付ローラシャフト42は、軸心連結線O方向に交差する方向に延設され、一方の端部42aを第1支持部43によって支持され、もう一方の端部42bを第2支持部44によって支持される。押付ローラシャフト42は、第2支持部44によって支持される端部42bが球形状となっている。押付ローラシャフト42には第1支持部43と第2支持部44との間に押付ローラ40を支持する保持部41が取り付けられる。
第1支持部43は、押付ローラ40よりもプライマリディスク11の回転方向の下流側となる位置に設けられ、ガイドシャフト51と平行に設けた回動軸52を介してガイドブロック49に回動可能に支持されている。第1支持部43は、押付ローラシャフト42の一方の端部42aをニードルベアリング53を介して支持する。
第2支持部44は、押付ローラ40よりもプライマリディスク11の回転方向の上流側となる位置に設けられ、押付ローラシャフト42のもう一方の端部42bをサポートブロック46およびニードルベアリング54を介して支持する。入力軸10の軸方向における第2支持部44とサポートブロック46との間には、球形状の先端部55aを有するブッシュ55が設けられ、第2支持部44とサポートブロック46との間に隙間が形成される。入力軸10の軸方向において隙間はブッシュ55よりもプライマリディスク11側に位置し、ブッシュ55の先端部55aがサポートブロック46に当接する。第2支持部44には軸心連結線O方向、および入力軸10の軸方向に直交する方向に延び、第1ローラフォロア47が取り付けられた第2シャフト56の端部が連結する。第2支持部44は第1ローラフォロア47にかかる挟持力によって入力軸10の軸方向に移動する。第2支持部44の入力軸10の軸方向への移動に応じて、第1支持部43、押付ローラシャフト42、および押付ローラ40を支持する保持部41は、回動軸52の軸心を中心として回動する。
また、第1支持部43は、軸心連結線O方向において、図7に示すようにニードルベアリング53と押付ローラシャフト42との間に隙間を形成するように設けられる。図7は図6AのVII−VII断面の概略図である。第2支持部44に支持される押付ローラシャフト42の端部42bは球形状となっており、この端部42bがニードルベアリング54と当接している。押付ローラシャフト42は、第1支持部43および第2支持部44によって軸心連結線O方向に対して傾動可能に支持される。
さらに、押付ローラシャフト42は、ニードルベアリング53を介して第1支持部43、およびニードルベアリング54を介して第2支持部44によって回動可能に支持されている。
保持部41は、第1支持部43と第2支持部44との間に設けられ、押付ローラシャフト42に取り付けられる。保持部41は、押付ローラシャフト42と一体となって回動、および傾動する。保持部41は、押付ローラ40を回転可能に支持する第1軸部57が固定される。入力軸10の軸方向から見た場合に、押付ローラシャフト42が軸心連結線Oに対して垂直な方向にある場合には、第1軸部57の軸心は軸心連結線Oと一致する。また、第1軸部57は、図4Aにおいて第1軸部57の軸心がディスク平面に対して傾斜するように設けられる。保持部41には、詳しくは後述する付勢部45のバネ60による引張応力が常にかかっている。
押付ローラ40は、第1軸部57によって回転可能に支持され、保持部41を介して押付ローラシャフト42に取り付けられる。押付ローラ40は、ディスク重合領域において、セカンダリディスク12のサイドディスク12bと当接し、セカンダリディスク12のサイドディスク12bとの摩擦力により第1軸部57の軸心を中心に回転する。一対の押付ローラ40は、第1ローラフォロア47を介して伝達される挟持力が大きくなると、ディスク11、ディスク12を挟持押圧し、ディスク11、12を弾性変形させて、トルク伝達接触部を形成する。
押付ローラ40は、保持部41によって支持され、保持部41と共に詳しくは後述する付勢部45のバネ60による引張応力が常にかかっている。そのため、押付ローラ40は、付勢部45のバネ60による引張応力とディスク11、12から受ける反力とに応じて出力軸14側への傾きが変更される。
図4Aにおいてセカンダリディスク12に当接する押付ローラ40の当接部40aは、曲率が異なる曲面によって形成されている。当接部40aは押付ローラ40の軸方向中央の先端側となるにつれて曲率が小さくなるように形成されており、押付ローラ40が出力軸14側へ倒れるにつれて曲率が大きい曲面がセカンダリディスク12に当接する。ここでは「押付ローラ40が出力軸14側へより倒れる」状態を「傾斜角度が大きい」と言う。
具体的には、当接部40aは、図4Bに示すように先端側となるにつれて曲面の曲率が1/34、1/55、1/100となる。図4Bにおいては、曲率が1/34の曲面に点Aを付し、曲率が1/55の曲面に点Bを付し、曲率が1/100の曲面に点Cを付している。そのため、傾斜角度が大きくなると、セカンダリディスク12と当接する当接部40aの曲率は1/100、1/55、1/34の順に変更される。
傾斜角度が大きくなると、接触箇所の曲面の曲率が大きくなるので、接触箇所の面積は小さくなり、円形に近い形状となる。なお、トルク伝達接触部も同様に傾斜角度が大きくなると、トルク伝達接触部の面積は小さくなり、円形に近い形状となる。
付勢部45は、図8に示すようにバネ60と、固定部61とを備える。図8は付勢部45と保持部41および押付ローラ40との関係を示す概略図である。
バネ60は、一方の端部がディスク11、12側の保持部41に連結し、もう一方の端部が固定部61に連結する。固定部61は第1支持部43、または第2支持部44に固定されており、押付ローラ40と共に軸心連結線O方向に移動する。
付勢部45は、保持部41および押付ローラ40を入力軸10側へ引っ張る張力を保持部41および押付ローラ40に常にかけている。これにより、保持部41および押付ローラ40には、押付ローラシャフト42の軸心を中心にした回転方向の力がかかり、保持部41および押付ローラ40は全体的に出力軸14側へ倒れる。
押付ローラ40による推力が小さい場合には、付勢部45は押付ローラ40および保持部41の入力軸10側への回動を規制する引っ張り側ストッパー(図示せず)に当接している。この状態であっても、押付ローラ40の当接部40aとサイドディスク12bとの接触箇所が押付ローラシャフト42の軸心からサイドディスク12bへ降ろした垂線よりも、出力軸14側に位置するようにストッパーは設けられる。そのため、一対の押付ローラ40によってプライマリディスク11およびセカンダリディスク12を挟持押圧する場合に、押付ローラ40がプライマリディスク11およびセカンダリディスク12から受ける反力によって押付ローラ40および保持部41にはバネ60によって発生する第1のモーメントとは逆向きの第2のモーメントが発生する。
押付ローラ40の推力が大きくなるにつれて第2のモーメントが大きくなり、押付ローラ40および保持部41は、押付ローラシャフト42の軸心を中心に回転し、傾斜角度が小さくなる。そして第1のモーメントと第2のモーメントとが釣り合う位置に押付ローラ40および保持部41は保持される。傾斜角度が小さくなると、サイドディスク12bに当接する押付ローラ40の当接部40aの曲率は小さくなり、押付ローラ40とサイドディスク12bとの接触面積は大きくなる。つまり、押付ローラ40による推力が大きくなると、押付ローラ40とサイドディスク12bとの接触面積、およびトルク伝達接触部の面積は大きくなる。これにより、押付ローラ40による推力が大きくなっても、接触箇所、およびトルク伝達接触部の単位面積あたりの圧力が高くなることを抑制することができる。
第1ローラフォロア47は、図6Aに示すように第2支持部44と連結する第2シャフト56が内周孔47aに挿入され、後述するクランプアーム66のディスク11、12側の側面67a、68aに当接して転動する。エンジン2側から変速機3を見た場合に、第1ローラフォロア47の位置と、一対の押付ローラ40によって形成されるトルク伝達接触部の位置とは、押付ローラシャフト42の延設方向において略一致している。
第2支持部44に連結する端部とは反対側の第2シャフト56の端部は、ローラフォロアサポートブロック48に形成された孔48aに挿入される。孔48aは、入力軸10の軸線方向に沿って形成される小判形の孔である。ローラフォロアサポートブロック48は孔48aに沿って第2シャフト56を入力軸10の軸線方向に摺動可能に支持する。また、ローラフォロアサポートブロック48は、軸心連結線O方向に延びる第1シャフト38を介してブラケット37に連結しており、ブラケット37の移動に応じて軸心連結線O方向に移動する。
ディスククランプ機構31は、アームシャフト65と、クランプアーム66とを備える。
アームシャフト65は、軸心連結線O、および入力軸10に対して垂直な方向に延びる円柱状の部材である。アームシャフト65は、その軸心が、入力軸10の軸心と直交し、かつ図6Aに示すように入力軸10の軸方向におけるプライマリディスク11の中心と重なるように設けられる。
クランプアーム66は、フロントクランプアーム67と、リアクランプアーム68とにより一対のアームとして構成される。
フロントクランプアーム67は、図3に示すように略L字状となる板状部材である。フロントクランプアーム67は一方の端部側でアームシャフト65に回動可能に支持されている。フロントクランプアーム67のもう一方の端部は、後述する挟持力調整機構32の係合部72が形成されている。フロントクランプアーム67は、図6Aに示すようにディスク11、12側の側面67a(板状部材の厚みを形成する面)が第1ローラフォロア47に当接する。
リアクランプアーム68は、図3に示すように略L字状となる板状部材である。リアクランプアーム68は一方の端部側でアームシャフト65に回動可能に支持されている。リアクランプアーム68のもう一方の端部は、後述する挟持力調整機構32のケース70に連結する。リアクランプアーム68は、図6Aに示すようにディスク11、12側の側面68a(板状部材の厚みを形成する面)が第1ローラフォロア47に当接する。
フロントクランプアーム67およびリアクランプアーム68は、アームシャフト65によってそれぞれ回動可能に支持されており、クランプアーム66は、挟持力調整機構32によって発生する挟持力によってアームシャフト65を支点として回動し、一対の押付ローラ機構30を駆動してディスク11、12の挟持力を調整する。
挟持力調整機構32は、図3に示すようにケース70と、第2軸部71と、係合部72と、回動部73と、圧縮バネ74と、第2アクチュエータ(図示せず)とを備える。
ケース70は、リアクランプアーム68の端部に連結する。ケース70は回動部73の一部を収容し、第2軸部71が取り付けられる。
第2軸部71は、アームシャフト65の軸心と平行な軸心を有する円柱状の部材である。第2軸部71は、ケース70に取り付けられ、回動部73を軸心連結線O方向に対して回動可能に支持する。第2軸部71とケース70との間には隙間が設けられる。この隙間によって寸法公差、部品のバラツキなどの影響を吸収し、クランプアーム66によって一対の押付ローラ機構30をバランス良く挟持することができる。
係合部72は、フロントクランプアーム67の端部に形成され、同端部からリアクランプアーム68側に延びる連結部75と、連結部75のリアクランプアーム68側の端部から第2軸部71を囲繞するように延びる曲面部76とを備える。曲面部76は、第2軸部71の軸心を中心とした円弧状の外周壁を有する。曲面部76の外周壁には、回動部73の第2ローラフォロア79が接触して転動する。
回動部73は、図9A、図9Bに示すように、回転ボディ77と、回転伝達ブロック78と、第2ローラフォロア79とを備える。回転ボディ77は、第1ボディ80と、第2ボディ81とを備える。図9Aは、図2のIX-IX断面図である。図9Bは図9AのX−X断面における概略図である。
第1ボディ80は、第2軸部71を挟むように延びる2枚の第1板状部材80aの一方の端部同士を第1折曲部80bによって連結して構成され、第2軸部71を挟んだ略U字状となる。第1板状部材80aは、第2軸部71の外周壁に当接し、第2軸部71によって回動可能、且つ第1板状部材80aの延設方向に沿って摺動可能に支持される。第1ボディ80は、第1折曲部80bとは反対側の端部に圧縮バネ74の一方の端部を支持するストッパー82を備える。
回転伝達ブロック78は、第2軸部71が貫通し、第2軸部71によって回動可能に支持される。回転伝達ブロック78は、圧縮バネ74のストッパー82によって支持される端部とは反対側の端部を支持する。
第2ボディ81は、図9Bに示すように、第2軸部71の軸方向で曲面部76を挟むように同軸方向と直交する方向に延びる2枚の第2板状部材81aの一方の端部同士を第2折曲部81bによって連結して構成され、略U字状となる。第2折曲部81bは、第1ボディ80の第1折曲部80bに対して直交して接合している。第2折曲部81bは、回転伝達ブロック78と当接しており、回転ボディ77が第2軸部71から圧縮バネ74方向へ移動することを防止するストッパーとして機能する。第2板状部材81aには、回動部73を第2アクチュエータ(図示せず)によって回動させるための第3シャフト83が貫通しており、回転ボディ77は、第3シャフト83が回動すると第2ローラフォロア79と一体となって第2軸部71の軸心を中心に回動する。
[推力調整機構の作動説明]
圧縮バネ74は、一方の端部が回転伝達ブロック78に支持され、もう一方の端部が第1ボディ80のストッパー82に支持されている。回転伝達ブロック78はケース70に取り付けられた第2軸部71に回動可能に支持されている。そのため、回転ボディ77は、圧縮バネ74の復元力によって、常に第2軸部71からストッパー82に向かう向きに付勢されている。しかし、第2軸部71に対して圧縮バネ74とは反対側に位置する第2ボディ81の第2折曲部81bが回転伝達ブロック78に当接しているので、第2軸部71から圧縮バネ74方向への回転ボディ77の移動は規制される。
第2ローラフォロア79は、内周孔79aに係合する第3シャフト83によって支持され、2つの第2板状部材81a間に設けられる。第2ローラフォロア79は曲面部76の円弧状の外周壁に当接して転動する。第2ローラフォロア79は第3シャフト83を介して第2のアクチュエータによって第2軸部71の軸心を回転ボディ77と一体となって回動し、圧縮バネ74によって常に第2軸部71に向けて付勢されている。
以上のような構成を有する挟持力調整機構32は、第2ローラフォロア79を第2軸部71の軸心を中心に回動させることで、圧縮バネ74によって第2ローラフォロア79を第2軸部71に向けて付勢する力の方向を変更する。これにより、フロントクランプアーム67をリアクランプアーム68側へ押す力、すなわち一対の押付ローラ機構30を挟持する挟持力を変更する。
ここで、第2ローラフォロア79の位置と、一対の押付ローラ機構30を挟持する挟持力との関係について図10A、図10Bを用いて説明する。図10A、図10Bは、第2ローラフォロア79の位置と、一対の押付ローラ機構30を挟持する挟持力との関係を示す図である。
第2ローラフォロア79が連結部75から遠い箇所にあり、圧縮バネ74によって第2ローラフォロア79を第2軸部71に向けて付勢する力の向きが、図10Aに示すように軸心連結線Oと平行となる場合には、第2ローラフォロア79によってフロントクランプアーム67をリアクランプアーム68側へ押す力、すなわちクランプアーム66によって一対の押付ローラ機構30を挟持する挟持力も微小、またはゼロとなる。以下において、この状態を回動部73の基準位置とし、第2ローラフォロア79が基準位置から回動する角度を旋回角と言い、連結部75側へより回動することを第2ローラフォロア79の旋回角が大きいと言う。
第2ローラフォロア79の旋回角が大きくなると、圧縮バネ74によって第2ローラフォロア79を第2軸部71に向けて付勢する力の向きが変わり、第2ローラフォロア79によってフロントクランプアーム67をリアクランプアーム68側へ押す力が大きくなり、クランプアーム66によって一対の押付ローラ機構30を挟持する挟持力が大きくなる。
そして、図10Bに示すように第2ローラフォロア79が連結部75に接触すると、クランプアーム66によって一対の押付ローラ機構30を挟持する挟持力が最大となる。ここで、旋回角とクランプアーム66による挟持力との関係を図11に示す。旋回角が大きくなると挟持力が大きくなるが、所定旋回角よりも大きくなると、旋回角の増加量に対する挟持力の増加量が小さくなることがわかった。そのため、本実施形態では、第2ローラフォロア79の最大旋回角を図11における所定旋回角とした。第2ローラフォロア79が連結部75と接触する旋回角が最大旋回角となり、連結部75は第2ローラフォロア79の回動を規制するストッパーとして機能する。
ATCU8には、図1に示すように第1アクチュエータ33によるねじ軸36の操作量を検出するモータ回転センサ100からの信号と、変速機3の入力軸10の回転速度を検出する第1回転速度センサ101からの信号と、変速機3の出力軸14の回転速度を検出する第2回転速度センサ102からの信号と、変速機3に供給される潤滑油の温度を検出する油温センサ103からの信号と、第2ローラフォロア79の旋回角を検出する角度センサ104からの信号と、アクセル開度を検出するアクセル開度センサ105からの信号と、シフトレバーの位置を検出するインヒビタスイッチ106からの信号と、エンジン2の制御を司るECU(図示せず)からの入力トルクに関した信号とが入力される。
ATCU8は、入力される信号に基づいて電動モータ34、挟持力調整機構32の第2アクチェエータを制御する。ATCU8は、CPU、ROM、RAMなどによって構成され、ROMに格納されたプログラムをCPUが読み込むことで、ATCU8の機能が発揮される。
[リバース機構]
シフトレバーがRレンジに操作され、車両を後退させる場合には、まず挟持力調整機構32による挟持力を小さくし、押付ローラ40による推力を小さくし、トルク伝達接触部が形成されないようにする。これによりプライマリディスク11からセカンダリディスク12へのトルク伝達が遮断される。そして、シンクロ機構19のカップリングスリーブ19aを移動させてリバースギア16と入力軸10とを締結する。これにより、入力軸の回転をシンクロ機構19、リバースギア16、リバースアイドラギア17、出力軸14の順に伝達し、車両を後退させる。
[パーキング機構]
シフトレバーがPレンジに操作され、車両を停車させる場合には、シンクロ機構19のカップリングスリーブ19aを移動させてリバースギア16と入力軸10とを締結する。これにより、出力軸14の回転可能な方向は押付ローラ40によってトルク伝達接触部を形成した場合の回転方向とは逆方向となる。そして、一対の押付ローラ40によってプライマリディスク11およびセカンダリディスク12を挟持押圧してトルク伝達接触部を形成する。これにより、セカンダリディスク12の回転可能な方向は押付ローラ40によってトルク伝達接触部を形成した場合の回転方向となる。このようにシフトレバーがPレンジに操作された場合には、リバースギア16を締結し、かつ押付ローラ40でディスク11、12を挟持押圧してトルク伝達接触部を形成し、変速機3をインターロックする。このようにして車両の移動を防止することができる。
シフトレバーがPレンジに操作され、車両を停車させる場合には、押付ローラ機構30は、変速比が最Lowとなる位置でプライマリディスク11およびセカンダリディスク12を挟持押圧し、挟持力調整機構32によって発生させる挟持力は最大とする。これにより、ブレーキ力を大きくすることができる。
次に本実施形態の作用について説明する。
[変速を行っていない場合の押付ローラ40の動き]
変速機3で変速を行っていない場合の押付ローラ40の動きについて図12A、図12Bを用いて説明する。
第2支持部44側の押付ローラシャフト42の端部42bは球形状となっており、ニードルベアリング54、サポートブロック46を介して第2支持部44に支持されている。また、第1支持部43側の押付ローラシャフト42の端部42aは軸心連結線O方向に所定の隙間を設けてニードルベアリング53を介して第1支持部43に支持されている。このように押付ローラシャフト42、および押付ローラ40は、第1支持部43と第2支持部44とによって軸心連結線O方向に傾動可能に支持されている。
通常、押付ローラ機構30がディスク重合領域の或る位置に留まっている場合、つまりは変速中ではない場合には、図12Aに示すように押付ローラ40を回転可能に支持する第1軸部57の軸心は軸心連結線Oに一致している。しかし、押付ローラシャフト42は、第1支持部43および第2支持部44によって傾動可能に支持されているので、図12Bに示すように第1軸部57の軸心が軸心連結線Oに対して傾斜することがある。この状態が維持されると、押付ローラ機構30にかかる負荷が大きくなり、押付ローラ機構30が劣化するおそれがある。
図12Bの状態になった場合には、押付ローラ40にはセカンダリディスク12の接線方向となる実線の矢印で示すようにセカンダリディスク12との摩擦力が発生する。実線の矢印で示す摩擦力は、押付ローラ40の軸線に直交する方向の破線の矢印で示す力に分解することができ、破線矢印Aの力により押付ローラ40は回転し、破線矢印Bの力により押付ローラ40にはモーメントが発生し、押付ローラ40は元の位置に戻ろうとする。このように押付ローラ40の回転中心となる軸心が軸心連結線Oに対して傾斜した場合には、押付ローラ40には元の位置に戻ろうとする力が発生し、押付ローラ40は軸心が軸心連結線Oに一致するように押付ローラシャフト42とともに移動し、押付ローラ40は軸心が軸心連結線Oに一致する図12Aの状態に自動的に戻る。
[変速を行う場合の押付ローラ40の動き]
変速機3で変速を行う場合の押付ローラ40の動きについて説明する。
変速機3は、一対の押付ローラ40を軸心連結線Oに沿って移動させ、ディスク重合領域におけるトルク伝達接触部の形成場所を変更することで、変速比を連続して変更する無段変速を実現する。
押付ローラ40が入力軸10側にある場合には、入力軸10からトルク伝達接触部までの距離が短く、出力軸14からトルク伝達接触部までの距離が長い。そのため、プライマリディスク11の回転速度に対してセカンダリディスク12の回転速度が遅くなり、変速比は大きくなる。押付ローラ40が出力軸14側へ移動すると、入力軸10からトルク伝達接触部までの距離が長くなり、出力軸14からトルク伝達接触部までの距離が短くなる。そのため、プライマリディスク11の回転速度に対してセカンダリディスク12の回転速度が徐々に速くなり、変速比は小さくなる。このように一対の押付ローラ40が軸心連結線Oに沿って入力軸10側から出力軸14側へ移動すると、変速比がLow(変速比大)からHigh(変速比小)へ変更される。
変速は、第2支持部44を第1アクチュエータ33によって軸心連結線O方向に移動させて実行される。押付ローラ40および第1支持部43は第2支持部44の移動が押付ローラシャフト42を介して伝達され、第2支持部44の移動に伴って第2支持部44に追従して軸心連結線O方向に移動する。第2支持部44はプライマリディスク11の回転方向において押付ローラ40よりも上流側に位置し、第1支持部43はプライマリディスク11の回転方向において押付ローラ40よりも下流側に位置している。
変速比をHigh側へ変速させる場合について図13A、図13B、図13Cを用いて説明する。
変速機3の変速比が或る値となっている状態(図13A)から第1アクチュエータ33によって図13Bに示すように第2支持部44を出力軸14側へ移動させると、第1支持部43に設けた隙間の作用によって、まず押付ローラシャフト42が傾斜し、それによって押付ローラ40にモーメントが生じて、モーメントの作用によって押付ローラ40が移動を開始する。押付ローラ40には実線で示すようにセカンダリディスク12との摩擦力が発生する。実線の矢印で示す摩擦力は、押付ローラ40が傾斜すると破線の矢印で示す力に分解することができる。破線矢印Bの力により押付ローラ40にはモーメントが発生し、押付ローラ40は出力軸14側に向けて移動する。つまり、押付ローラ40は、変速時に傾斜すると、押付ローラ40自体に出力軸14側へ移動する力が発生し、押付ローラ40は第2支持部44の移動に追従して出力軸14側へ移動する。
第1アクチュエータ33により目標変速比となる位置まで第2支持部44が移動すると第2支持部44は停止する。第2支持部44が停止すると、第1支持部43に設けた隙間の作用によって、まず押付ローラシャフト42が傾斜し図12Bに示すような状態となり、それによって押付ローラ40にモーメントが生じて、モーメントの作用によって押付ローラ40が移動を開始し、その後、押付ローラ40を回転可能に支持する第1軸部57の軸心と軸心連結線Oとが一致し、図13Cに示すように押付ローラ40は目標変速比を実現する位置に保持される。
変速機3をLow側へ変速させる場合についても、High側へ変速させる場合と同様に、押付ローラ40は第2支持部44の移動に伴って第2支持部44の移動に追従する力が押付ローラ40で発生する。
このように、押付ローラ機構30を移動させて変速を行う場合には、第2支持部44を第1アクチュエータ33によって軸心連結線O方向に移動させて押付ローラ40を傾斜させると、第2支持部44の移動方向に押付ローラ40を移動させる力が押付ローラ40自体で発生する。そのため、小さい力を第1アクチュエータ33によって第2支持部44に与えることで、変速機3は変速する。
[同一入力トルク時の推力]
同一入力トルク時の推力について説明する。
押圧機構13は、アームシャフト65の軸心が軸心連結線Oに対して垂直な方向に延び、入力軸10の軸心と直交し、且つ2枚のプライマリディスク11の隙間の中央に位置するようにディスククランプ機構31を設けている。そのため、押付ローラシャフト42の軸心が軸心連結線Oに対して垂直になる場合には、入力軸10の軸心からトルク伝達接触部までの距離、具体的にはトルク伝達接触部の中心までの距離と、アームシャフト65の軸心からクランプアーム66による第1ローラフォロア47の挟持位置までの距離、具体的には2つの第1ローラフォロア47の軸心を結ぶ線までの距離とが等しくなる。
ディスククランプ機構31は、アームシャフト65を支点として押付ローラ機構30を挟持している。挟持力調整機構32によるクランプアーム66の挟持力が一定の場合には、例えばアームシャフト65の軸心から押付ローラ機構30の第1ローラフォロア47までの距離が2倍になると、一対の押付ローラ機構30を挟持する挟持力、すなわち押付ローラ40による推力は1/2倍となる。
そのため、例えば入力軸10からトルク伝達接触部の中心までの距離が2倍となるように変速比を変更する場合には、アームシャフト65の軸心から第1ローラフォロア47までの距離も2倍となり、押付ローラ40による推力は1/2倍となる。この場合、入力軸10の同一入力トルク時の推力は、変速比に応じたものとなる。
[押圧機構13による推力制御]
次に押圧機構13による推力制御について説明する。
押圧機構13は、押付ローラ機構30の軸心連結線O方向における位置、および挟持力調整機構32の第2ローラフォロア79の旋回角を変更することで、一対の第1ローラフォロア47を挟持する挟持力を変更し、押付ローラ40による推力を変更する。
一対の押付ローラ機構30によって形成されるトルク伝達接触部の中心ではプライマリディスク11の周速と、セカンダリディスク12の周速とが等しく、位置ベクトルの向きも等しい。しかし、トルク伝達接触部の中心からずれると、プライマリディスク11の周速と、セカンダリディスク12の周速とが異なり、または位置ベクトルの向きが異なる。そのため、トルク伝達接触部ではこれらの要因によって、トルク伝達のロスとなるスピンロスが生じる。
また、トルク伝達のロスとなるスピンロスは、押付ローラ40とセカンダリディスク12のサイドディスク12bとの間でも生じている。
本実施形態では、押付ローラ40とセカンダリディスク12のサイドディスク12bとの間のスピンロスを押付ローラ40を出力軸14側に傾斜させることで低減し、トルク伝達接触部におけるスピンロスを挟持力調整機構32によって推力を調整することで低減する。
ここではまず、押付ローラ40を傾斜させることによる作用について説明し、その後、挟持力調整機構32によって推力を調整することによる作用について説明する。
[押付ローラ40の傾斜について]
押付ローラ40とセカンダリディスク12のサイドディスク12bとの間のスピンロスを低減するために、押付ローラ40は押付ローラ40の回転中心となる保持部41の第1軸部57の軸心が軸心連結線Oに対して傾斜するように設けられている。
図14に示すように第1軸部57の軸心を延長した線がセカンダリディスク12の表面上のサイドディスク12bの回転中心Pと交差する場合には、トルク伝達接触部の中心A、中心Aにおける押付ローラ40の回転半径AA’とし、中心Aよりも出力軸14側における当接箇所B、当接箇所Bにおける押付ローラ40の回転半径BB’とすると、△PAA’と△PBB’とは相似形となる。これにより、PAとPBとの比率と、AA’とBB’との比率が等しくなり、トルク伝達接触部の中心Aにおけるセカンダリディスク12の周速と押付ローラ40の周速が等しくなり、当接箇所Bにおけるセカンダリディスク12の周速と押付ローラ40の周速とが等しくなる。このような場合にはセカンダリディスク12と押付ローラ40との間のスピンロスは発生しない。当接箇所AB間が直線であればスピンロスは発生しないが、当接箇所AB間が曲率の変化する曲線形状の場合は、若干スピンロスは発生する。
押付ローラ40を傾斜させた場合でも、第1軸部57の軸心を延長した線が点Pと交差しない場合には、セカンダリディスク12と押付ローラ40との間でスピンロスが発生するが、第1軸部57の軸心と軸心連結線Oとを平行にする場合と比較してスピンロスを低減することができる。
押付ローラ40の傾斜角度は、望ましくは、第1軸部57の軸心を延長した線が点Pと交差するように設けるようにするのがよい。
[挟持力調整機構32による推力調整]
(第2ローラフォロア79が基準位置にある場合)
第2ローラフォロア79が基準位置にある場合には、圧縮バネ74によって第2ローラフォロア79を第2軸部71に向けて付勢する力の向きが、軸心連結線Oと平行となり、挟持力調整機構32によってフロントクランプアーム67をリアクランプアーム68側に押す力は微小、またはゼロとなる。クランプアーム66は、ディスク11、12側の側面67a、68aによって押付ローラ機構30の第1ローラフォロア47と当接し、第1ローラフォロア47を挟持している。そのため、第2ローラフォロア79によってフロントクランプアーム67をリアクランプアーム68側に押す力が微小、またはゼロになると、第1ローラフォロア47を挟持する挟持力も小さくなる。
押付ローラ機構30は、ガイドブロック49に回動軸52を介して回動可能に支持されており、回動軸52を支点として第1ローラフォロア47にかかる挟持力によって推力を発生させている。第1ローラフォロア47を挟持する挟持力が小さい場合には、押付ローラ機構30をディスク11、12側へ回動させる力が小さく、トルク伝達接触部は形成されず、入力軸10から出力軸14へ回転は伝達されない。
第2ローラフォロア79が基準位置にある場合には、トルク伝達接触部が形成されていないので、押付ローラ機構30を軸線連結線に沿って容易に移動することができる。そのため、変速比が最Lowとなる前に車両が停車した場合に、次回の発進に備えて変速比が最Lowとなる位置まで押付ローラ40を移動させるLow戻し制御を実行する場合でも容易に押付ローラ40を最Lowとなる位置まで戻すことができる。
なお、基準位置から連結部75側とは反対側、つまり旋回角が小さくなるように第2ローラフォロア79を回動させると、圧縮バネ74によって第2ローラフォロア79を第2軸部71に向けて付勢する力によってフロントクランプアーム67をリアクランプアーム68から離す方向に力がはたらく。確実にトルク伝達接触部が形成されないようにするために、第2ローラフォロア79を基準位置から連結部75側とは反対側に回転させてもよい。
なお、押付ローラ40は、付勢部45によって第1のモーメントが発生しており、押付ローラ40は出力軸14側に傾斜し、ストッパーによって傾斜角が維持されている。
(第2ローラフォロア79の旋回角が大きくなる場合)
第2ローラフォロア79の旋回角が大きくなると、フロントクランプアーム67をリアクランプアーム68側に押す力が大きくなる。そのため、クランプアーム66によって第1ローラフォロア47を挟持する挟持力が大きくなる。クランプアーム66は、アームシャフト65を支点とし、アームシャフト65とは反対側に位置する端部を力点として第1ローラフォロア47を挟持するので、小さい力で第1ローラフォロア47を挟持することができる。
第2ローラフォロア79が転動する曲面部76の曲面は第2軸部71の軸心を中心とした円弧形状に形成されており、第2ローラフォロア79は第2軸部71の軸心を中心として回動するので、第2ローラフォロア79の位置によらず、圧縮バネ74の長さはほとんど変わらない。そのため、圧縮バネ74によって第2ローラフォロア79を第2軸部71に向けて付勢する力の大きさをさほど変えずに、力の向きを変更することで、一対の第1ローラフォロア47を挟持する挟持力を変更することができる。従って、第2ローラフォロア79を小さい力によって移動させることができる。
第1ローラフォロア47を挟持する挟持力が大きくなると、押付ローラ機構30は回動軸52の軸心を中心にディスク11、12側へ回動する。
押付ローラ機構30は、回動軸52の軸心を中心にディスク11、12側へ回動すると、押付ローラ40によってセカンダリディスク12のサイドディスク12bをセンターディスク12a側へ弾性変形させてサイドディスク12bとプライマリディスク11のディスク11aとを接触させる。さらに押付ローラ機構30は、プライマリディスク11のディスク11aをセンターディスク12a側へ弾性変形させてプライマリディスク11のディスク11aとセンターディスク12aとを接触させる。これにより、トルク伝達接触部が形成され、入力軸10から出力軸14へ回転が伝達される。
押付ローラ機構30は、押付ローラシャフト42の一方の端部42a側に設けた回動軸52を支点とし、押付ローラシャフト42のもう一方の端部42b側に設けられた第1ローラフォロア47を力点として推力を発生させる。そのため、小さい力で一対の押付ローラ40によってプライマリディスク11とセカンダリディスク12とを接触させてトルク伝達接触部を形成し、入力軸10から出力軸14へ回転を伝達することができる。
第2ローラフォロア79の旋回角が大きくなると、押付ローラ機構30は回動軸52の軸心を中心にディスク11、12側へより回動し、押付ローラ40による推力は大きくなる。
トルク伝達接触部の面積を小さくし、トルク伝達接触部の形状を円形に近づけることでトルク伝達接触部におけるスピンロスを低減することができる。しかし、トルク伝達接触部の面積を小さくすると、押付ローラ40による推力が大きくなった場合に、接触箇所の単位面積あたりの圧力が高くなり、プライマリディスク11、セカンダリディスク12、または押圧機構13が劣化するおそれがある。そこで、押付ローラ40の傾斜角度を調整してスピンロスを低減しつつ、プライマリディスク11、セカンダリディスク12、または押圧機構13の劣化を抑制する。
押付ローラ40は、付勢部45によって第1のモーメントが発生している。また、押付ローラ40はディスク11、12から反力を受け、ディスク11、12の反力によって第1のモーメントとは逆向きの第2のモーメントが発生している。押付ローラ40は、第1のモーメントと第2のモーメントとが釣り合う位置で保持される。第1のモーメントは付勢部45によって発生するので、バネ60の長さによって第1のモーメントの大きさは変化する。一方、第2のモーメントの大きさはディスク11、12から受ける反力、つまり推力によって変化する。
推力が小さい場合には、第2のモーメントが小さいので、付勢部45によってディスク11、12側の押付ローラ40は入力軸10側に引っ張られ、押付ローラ40の傾斜角度は大きくなる。そのため、当接部40aとサイドディスク12bとの接触面積は小さく、円形に近い形状となる。また、トルク伝達接触部も面積は小さく、円形に近い形状となる。そのため、トルク伝達接触部におけるスピンロスは小さくなる。
推力が大きくなると、第2のモーメントが大きくなり、押付ローラ40の傾斜角度は小さくなる。傾斜角度が小さくなるとセカンダリディスク12のサイドディスク12bに当接する当接部40aの曲率が小さくなり、押付ローラ40とサイドディスク12bとの接触面積は大きくなる。そのため、推力が大きくなっても、接触面積、およびトルク伝達接触部の単位面積あたりの圧力が高くなることを抑制することができ、押付ローラ40またはディスクの劣化を抑制することができる。
(変速比制御)
次に電動モータ34による変速比制御について図15のフローチャートを用いて説明する。
ステップS100では、ATCU8は、第2回転速度センサ102からの信号に基づいて車速を算出する。
ステップS101では、ATCU8は、ECUからの信号に基づいて変速機3への入力トルクを算出する。
ステップS102では、ATCU8は、車速、入力トルクに基づいて予め設定したマップなどを用いて目標変速比を算出する。
ステップS103では、モータ回転センサ100からの信号に基づいて実変速比を算出する。
ステップS104では、ATCU8は、目標変速比と実変速比との偏差を算出する。
ステップS105では、ATCU8は、偏差に応じた押付ローラ機構30の移動量、つまり電動モータ34の操作量となるステップ数を算出する。
ステップS106では、ATCU8は、電動モータ34の回転軸の回転をステップ数に基づいて制御する。偏差が正の値である場合には、変速比をLow側へ変更するダウンシフトであるので電動モータ34は押付ローラ機構30を入力軸10側に移動させる。偏差が負の値である場合には、変速比をHigh側へ変更するアップシフトであるので電動モータ34は押付ローラ機構30を出力軸14側に移動させる。偏差がゼロである場合に、変速が行われないので、電動モータ34は押付ローラ機構30を現在の位置に保持する。なお、ステップ数に上限値を設けても良い。
以上の制御により、押付ローラ機構30の軸心連結線O方向への移動が制御され、目標変速比に応じた変速が実行される。
(推力制御)
挟持力調整機構32の推力制御について図16のフローチャートを用いて説明する。
ステップS200では、ATCU8は、目標変速比を算出する。目標変速比の算出方法はステップS100からステップS102と同じ方法である。
ステップS201では、ATCU8は、モータ回転センサ100からの信号に基づいて実変速比を算出する。
ステップS202では、ATCU8は、目標変速比と実変速比との偏差を算出する。
ステップS203では、ATCU8は、偏差がゼロであるかどうか判定する。偏差がゼロの場合にはステップS204へ進み、偏差がゼロではない場合にはステップS205へ進む。
ステップS204では、ATCU8は、安全率を1.0に設定する。
ステップS205では、ATCU8は、安全率を1.1に設定する。
ステップS206では、ATCU8は、目標スリップ率を算出する。スリップ率は、入力回転速度に対するプライマリディスク11とセカンダリディスク12との滑り量の割合である。図17を用いて目標スリップ率算出制御について説明する。
ステップS300では、ATCU8は、油温センサからの信号に基づいて変速機3に供給される油の油温を算出する。
ステップS301では、ATCU8は油温と目標変速比とに基づいて図18に示すマップから目標スリップ率を算出する。目標スリップ率は、変速比がLow側となるほど大きくなり、油温が高くなるほど大きくなる。
図19にスリップ率と、入力軸10から出力軸14へのトルク伝達率との関係を示す。図19に示すように多少のスリップがある場合に入力軸10から出力軸14へのトルク伝達率が高いことがわかった。これは、変速機3は、プライマリディスク11とセカンダリディスク12とを接触させてトルク伝達接触部を形成することで、入力軸10から出力軸14へトルクを伝達するものであり、トルク伝達接触部においては、プライマリディスク11がセカンダリディスク12を引きずることでトルクが伝達されるからである。そのため、トルク伝達接触部ではプライマリディスク11とセカンダリディスク12との間で滑りを発生させてトルクを伝達することができる領域の割合を大きくすることが望ましい。また、スリップ率は変速比がLow側となる方がHigh側となる場合よりもスリップ率を高くした方がトルク伝達率が高いことがわかった。
本実施形態では、目標スリップ率を図19に基づいてトルク伝達率が高くなる範囲で予め設定し、図18に基づくマップに基づいて算出する。このようにして目標スリップ率が算出される。目標スリップ率は、図19に示すトルク伝達開始スリップ率よりも高い値に設定される。トルク伝達開始スリップ率は、変速比が最Lowの場合であってもトルク伝達可能なる値である。
図16に戻り、ステップS207では、実スリップ率を算出する。ここで、実スリップ率を算出するスリップ率算出制御について図20に示すフローチャートを用いて説明する。
ステップS400では、ATCU8は、第2回転速度センサ102からの信号に基づいて出力軸14の回転速度を算出する。
ステップS401では、ATCU8は、第1回転速度センサ101からの信号に基づいて入力軸10の回転速度を算出する。
ステップS402では、ATCU8は、モータ回転センサ100からの信号に基づいて実変速比を算出する。
ステップS403では、ATCU8は、式(1)に基づいて実スリップ率を算出する。
(数1)
実スリップ率=((入力軸10の回転速度×実変速比)−出力軸14の回転速度)/入力軸10の回転速度・・・(1)
このようにして実スリップ率が算出される。
図16に戻り、ステップS208では、ATCU8は、目標スリップ率と実スリップ率との偏差をスリップ偏差として算出する。
ステップS209では、ATCU8は、スリップ偏差がゼロであるかどうか判定する。そして、スリップ偏差がゼロではない場合にはステップS210へ進み、スリップ偏差がゼロの場合にはステップS213へ進む。
ステップS210では、ATCU8は、スリップ偏差がゼロよりも大きいかどうか判定する。そして、スリップ偏差がゼロよりも大きい場合にはステップS211へ進み、スリップ偏差がゼロよりも小さい場合にはステップS212へ進む。
ステップS211では、ATCU8は、推力定数を「−Kp」に設定する。Kpは予め設定された値であり、正の値である。
ステップS212では、ATCU8は、推力定数を「Kp」に設定する。
ステップS213では、ATCU8は、推力定数を「0」に設定する。
ステップS214では、ATCU8は、目標推力を下記式(2)に基づいて算出する。なお、現在の第2ローラフォロア79の旋回角、実変速比に基づいて目標推力を算出してもよい。
(数2)
目標推力=(実推力+推力定数)×安全率・・・(2)
ステップS214では、ATCU8は、目標推力、目標変速比に基づいて挟持力調整機構32による挟持力を算出し、算出した挟持力をクランプアーム66に与える第2ローラフォロア79の旋回角を算出する。
ステップS216では、ATCU8は、算出した第2ローラフォロア79の旋回角を第2アクチュエータに出力し、第2ローラフォロア79を旋回させる。
以上の制御によってスリップ率を制御し、トルク伝達接触部におけるスピンロスを低減しトルク伝達率を高くすることができる。
本発明の実施形態の効果について説明する。
押付ローラ40を取り付けた押付ローラシャフト42を軸心連結線Oと交差する方向に延設し、押付ローラシャフト42の一方の端部側を回動可能に支持し、もう一方の端部側に挟持力を与えることで、押付ローラ40に推力を発生させる。押付ローラシャフト42は一方の端部42a側を支点に回動するので、小さい挟持力を一対の押付ローラ機構30に与えることで一対の押付ローラ40によってプライマリディスク11とセカンダリディスク12とを挟持し、トルク伝達接触部を形成し、入力軸10から出力軸14へ回転を伝達することができる。また、小さい挟持力によってトルク伝達接触部を形成し、入力軸10から出力軸14へ回転を伝達することができるので、変速機3を小型にすることができる。
アームシャフト65の軸心を中心に回動し、一対の押付ローラシャフト42に挟持するクランプアーム66を備える。クランプアーム66はアームシャフト65を支点として回動するので、小さい挟持力によって一対の押付ローラシャフト42の端部42b側を挟持することができる。そのため、小さい挟持力を与えることで一対の押付ローラ40によってプライマリディスク11とセカンダリディスク12とを挟持し、トルク伝達接触部を形成し、入力軸10から出力軸14へ回転を伝達することができる。
変速機3を入力軸10の軸方向から見た場合に、入力軸10からトルク伝達接触部の中心までの距離と、アームシャフト65の軸心からクランプアーム66によって一対の押付ローラシャフト42を挟持する位置までの距離とが等しい。これにより、入力軸10の同一入力トルク時の推力を変速比に応じた推力とすることができ、素早い変速を実現することができる。
アームシャフト65とは反対側のクランプアーム66の端部に挟持力調整機構32を設ける。小さな挟持力を挟持力調整機構32で発生させることでクランプアーム66を介して一対の押付ローラ40によってプライマリディスク11とセカンダリディスク12とを挟持し、トルク伝達接触部を形成し、入力軸10から出力軸14へ回転を伝達することができる。
挟持力調整機構32は、リアクランプアーム68に連結する第2軸部71の軸心を中心に回動する回動部73と、フロントクランプアーム67の端部に連結し、第2軸部71の軸心と中心とした曲面を有する曲面部76とを備える。回動部73は、曲面部76の曲面に当接し、転動する第2ローラフォロア79を備え、第2ローラフォロア79は圧縮バネ74によって第2軸部71に向けて付勢される。挟持力調整機構32は、第2ローラフォロア79の位置を変えるだけで、リアクランプアーム68とフロントクランプアーム67によって押付ローラ機構30を挟持する挟持力を変更することができる。小さい力によって押付ローラ40の推力を変更することができ、第2ローラフォロア79を旋回させる第2アクチュエータを小型にし、変速機3を小型化することができる。特に、曲面を円弧形状とすることで、小さい力によって第2ローラフォロア79を旋回させることができる。
圧縮バネ74を第2軸部71に対して第2ローラフォロア79とは反対側に設け、圧縮バネ74を圧縮した状態で保持することで、圧縮バネ74のバネ圧縮量をほとんど変えずに第2ローラフォロア79を旋回させることができる。つまり、圧縮バネ74の弾性エネルギーをほとんど変えずに第2ローラフォロア79を旋回させることができ、小さい力で第2ローラフォロア79を旋回させることができる。そのため、小型の第2アクチュエータによって第2ローラフォロア79の旋回を素早く行うことができ、第2アクチュエータを小型にし、変速機3を小型化することができる。
第2ローラフォロア79を基準位置付近にすることで、クランプアーム66による挟持力を小さく、またはゼロにすることができ、トルク伝達接触部が形成されないようにすることができる。これにより、Low戻し制御を容易に行うことができる。
また、第2ローラフォロア79を基準位置よりも旋回角が小さくなるように第2ローラフォロア79を旋回させることで、クランプアーム66間の距離を長くし、クランプアーム66による挟持力をさらに小さくすることができる。これにより、プライマリディスク11とセカンダリディスク12とが確実に接触しないようにし、トルク伝達接触部が形成されないようにすることができる。
アームシャフト65とクランプアーム66との間、および第2軸部71と回動部73との間に隙間を設けない場合には、寸法公差、部品のバラツキなどにより、クランプアーム66によって一対の押付ローラ機構30をバランス良く挟持することができないおそれがある。そのため、例えば一方の押付ローラ40による推力が他方の押付ローラ40による推力よりも小さくなる。これにより、推力が小さい押付ローラ40側ではプライマリディスク11からセカンダリディスク12へ回転を伝達することができないおそれがある。また、推力が大きい方の押付ローラ機構30にかかる負荷が大きくなり、押付ローラ機構30を劣化させるおそれがある。これを防ぐために強度を高くすることも考えられるがコストが高くなる。本実施形態では、寸法公差、部品のバラツキなどがある場合でも、第2軸部71とケース70との間に隙間を設けることで、これらの影響を隙間によって吸収し、クランプアーム66によって一対の押付ローラ機構30をバランス良く挟持することができる。そのため、押付ローラ40によって推力をバランス良くプライマリディスク11、およびセカンダリディスク12に伝達し、押付ローラ機構30の劣化を抑制し、コストを抑制することができる。
押付ローラシャフト42は第1支持部43と第2支持部44とによって軸心連結線O方向に傾動可能に支持され、第2支持部44は押付ローラ40よりもプライマリディスク11の回転方向の上流側に位置する。そして、第2支持部44を第1アクチュエータ33によって軸心連結線O方向に沿って移動させて変速を行う。これにより、変速時に押付ローラシャフト42および押付ローラ40が第2支持部44の移動に伴って傾斜した場合に、第2支持部44の移動に追従する力が押付ローラ40自体で発生する。そのため、小さい力を第1アクチュエータ33によって第2支持部44に与えることで、押付ローラ40を軸心連結線Oに沿って移動させて変速することができる。また、押付ローラ40自体に第2支持部44の移動に追従する力が発生するので、素早く変速を行うことができる。
変速を行っていない場合に押付ローラシャフト42が傾動した場合でも、押付ローラ40に発生する力によって、押付ローラ40および押付ローラシャフト42を元の位置に戻すことができる。
押付ローラ40を出力軸14側に傾斜させることで、押付ローラ40とセカンダリディスク12のサイドディスク12bとの間のスピンロスを低減することができ、入力軸10から出力軸14へのトルク伝達率を高くすることができる。特に押付ローラ40の軸心がサイドディスク12bの表面上の回転中心Pと交差する場合に、押付ローラ40とサイドディスク12bとのスピンロスを低減することができる。
押付ローラ40の推力に応じて、押付ローラ40の傾斜角度を変更し、押付ローラ40の当接部40aがセカンダリディスク12のサイドディスク12bに当接する曲面の曲率を変更し、トルク伝達接触部の形状、面積を変更することができる。押付ローラ40の推力が大きい場合には、曲率の小さい曲面がサイドディスク12bに当接し、トルク伝達接触部の面積を大きくし、プライマリディスク11、セカンダリディスク12、または押付ローラ機構30の劣化を抑制することができる。また、押付ローラ40の推力が小さい場合には、曲率の大きい曲面がサイドディスク12bに当接し、トルク伝達接触部の形状を円形に近い形状とし、トルク伝達接触部の面積を小さくし、トルク伝達接触部におけるスピンロスを低減することができる。
押付ローラ40には付勢部45によって第1のモーメントが発生し、押付ローラ40の推力に応じたディスク11、12からの反力によって第1のモーメントとは逆方向の第2のモーメントが発生する。2つのモーメントが釣り合うように押付ローラ40は傾斜し、その位置で保持される。つまり、トルク伝達接触部の形状、面積を押付ローラ40の推力に応じて自動的に変更することができる。新たなアクチュエータによって制御しなくてもトルク伝達接触部の形状、面積を適宜変更することができる。
プライマリディスク11からセカンダリディスク12へトルク伝達可能となるトルク伝達開始スリップ率よりも高い値の目標スリップ率を算出し、トルク伝達接触部におけるスリップ率が目標スリップ率となるように挟持力調整機構32によって押付ローラ40の推力を制御することで、トルク伝達率を高くすることができる。変速比がLow側となるほど目標スリップ率を高くすることで、トルク伝達率を高くすることができる。
プライマリディスク、セカンダリディスクは厚さが薄い板状部材で構成され、部材のバラツキによっては押付ローラによって挟持押圧した場合に、セカンダリディスクとプライマリディスクとが接触しないおそれもある。
本実施形態では、入力軸10の軸方向における中央に位置するセカンダリディスク12のセンターディスク12aの厚さを他のディスクの厚さよりも厚くすることで、押付ローラ40によってトルク伝達接触部を形成する場合に、セカンダリディスク12とプライマリディスク11とを確実に接触させることができ、トルク伝達率を高くすることができる。
サイドディスク12bを径方向の外方となるに従ってセンターディスク12aとは反対側に反ることで、スラストボールベアリングを設けずに、サイドディスク12bとプライマリディスク11との間に隙間を形成し、トルク伝達接触部以外でのサイドディスク12bとプライマリディスク11との接触を抑制することができる。
乾式発進クラッチ15の断接状態を押付ローラ機構30を軸心連結線O方向に移動させる第1アクチュエータ33によって切り替えることで、1つのアクチェエータによって乾式発進クラッチ15の断接状態、および変速機3における変速を行うことができ、アクチュエータの数を少なくし、コストを削減し、車両用自動変速システム1を小型にすることができる。
電動モータ34によって軸心連結線O方向に移動するブラケット37にテーパ面37aを設け、テーパ面37aに沿って入力軸10の軸方向にプッシュロッドを移動させて、乾式発進クラッチ15の断接状態を切り替える。このように簡易な構成によって乾式発進クラッチ15の断接状態を切り替えることができる。
シフトレバーがPレンジに操作されて車両を停車させる場合には、リバースギア16と入力軸10とを締結し、かつ押付ローラ40によってプライマリディスク11およびセカンダリディスク12を挟持押圧し、トルク伝達接触部を形成する。これにより、変速機3をインターロックし、車両の移動を防止することができる。
本実施形態では、押付ローラシャフト42と第1支持部43との間に隙間を形成し、第2支持部44側で支持される押付ローラシャフト42の端部を球形状としたが、これに限られることはなく、押付ローラシャフト42および押付ローラ40が軸心連結線O方向に傾動可能となればよい。例えば押付ローラシャフト42と第2支持部44との間に隙間を形成してもよい。
本実施形態では、第2軸部71とケース70との間に隙間を設けたが、アームシャフト65とクランプアーム66との間に隙間を設けてもよい。
本実施形態では、基準位置でトルク伝達接触部が形成されないようにしているが、基準位置よりも第2ローラフォロア79がフロントクランプアーム67側に旋回した位置でトルク伝達接触部が形成されないようにしてもよい。
車速が低い場合の目標スリップ率を車速が高い場合の目標スリップ率よりも高くしてもよい。また、アクセル開度が大きくなる、または単位時間当たりのアクセル踏み込み量が大きくなるほど、目標スリップ率を高くしてもよい。
本実施形態では、セカンダリディスク12にセンターディスク12aを設けているが、プライマリディスク11に設けてもよい。
プライマリディスク11の外周端側をセカンダリディスク12のセンターディスク12a側に反るように形成してもよい。これにより、サイドディスク12bとプライマリディスク11との間でトルク伝達接触部以外でのサイドディスク12bとプライマリディスク11との接触をさらに抑制することができる。
本実施形態では押付ローラ40を出力軸14側に傾斜させているが、入力軸10側に傾斜させてもよい。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。

Claims (7)

  1. 原動機に接続され、変速機ケース部材に支持される入力軸と、
    前記入力軸に平行配置され、変速機ケース部材に支持される出力軸と、
    前記入力軸に設けられ、外周端を前記出力軸に近接配置した円板状の入力ディスクと、
    前記出力軸に設けられ、外周端を前記入力軸に近接配置した円板状の出力ディスクと、
    前記入力ディスクと前記出力ディスクが互いに重なり合うディスク重合領域のうち、前記入力軸の軸心と前記出力軸の軸心を結ぶ軸心連結線上に沿って移動可能に設けられ、目標変速比に応じた位置にて両ディスクを挟持押圧し、両ディスクの弾性変形によりトルク伝達接触部を形成する一対の押圧手段とを備える無段変速機であって、
    前記軸心連結線に対して交差する方向に延び、一方の端部側を支点として前記押圧手段を支持して前記押圧手段とともに前記軸心連結線に沿って移動し、もう一方の端部側に加わる挟持力によって前記押圧手段により前記両ディスクを挟持押圧する力を発生させる一対の第1支持手段と、
    前記軸心連結線と平行な連結線方向に延設され、回動シャフトを支点として、一対の前記第1支持手段の前記もう一方の端部側を前記連結線方向に沿って移動可能となるように挟んで支持し、前記挟持力を発生させる一対の第2支持手段と、
    前記回動シャフト側とは反対側の一対の前記第2支持手段の端部に連結し、前記第2支持手段による前記挟持力を調整する挟持力調整手段とを備える無段変速機。
  2. 前記挟持力調整手段は、
    一方の前記第2支持手段に連結し、前記連結線方向に対し交差する方向に延びる軸部と、
    もう一方の前記第2支持手段に連結し、前記軸部の軸心を中心とした曲面を有する曲面部と、
    前記曲面の外周壁に当接する当接部を有し、前記軸部の軸心を中心に回動する回動部と、
    前記回動部とともに回動し、前記当接部を前記軸部に向けて付勢する付勢手段とを備え、
    前記挟持力調整手段は、前記回動部を回動させて、前記当接部と前記曲面との当接位置を変更することで前記第2支持手段による前記挟持力を調整する請求項1に記載の無段変速機。
  3. 前記当接部が前記もう一方の第2支持手段側に近くなるように前記回動部が回動するほど前記挟持力は大きくなる請求項2に記載の無段変速機。
  4. 前記当接部はカムフォロアである請求項2または3に記載の無段変速機。
  5. 前記曲面は、前記軸部の軸心を中心とした円弧形状である請求項2から4のいずれか一つに記載の無段変速機。
  6. 前記付勢手段は、前記軸部に対して前記当接部とは反対側に設けられた圧縮バネである請求項2から5のいずれか一つに記載の無段変速機。
  7. 前記回動シャフトと前記第2支持手段との間、前記軸部と前記回動部との間の少なくともどちらか一方に隙間を形成する請求項1から6のいずれか一つに記載の無段変速機。
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