JP5738346B2 - 統合失調症の検査 - Google Patents

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Description

本発明は、統合失調症を検査する方法、ならびに当該方法に使用される統合失調症の検査試薬または検査機器に関する。
統合失調症(Schizophrenia)は、かつては精神分裂症と称されていた幻覚や妄想を主症状とする精神科の代表的疾患である。障害罹患率1%と頻度が高く、現在治療を受けている患者は日本国内で70万人にのぼる。発症年齢のピークは17〜27歳までの思春期〜青年期にあり、その後は慢性に経過するため、全病床の22%(1996年)がこの疾患で占められている。男性の発症ピークが15〜24歳であるのに対して、女性が25〜34歳と初発年齢が遅く、また閉経期にもう一つの発症ピークがあることなどから、女性ホルモンが統合失調症の病態に抑制的に働いているとも言われているが、その原因はいまだに不明である。また、後述するように、治療法も主として対症療法的薬物投与が行われているにすぎず、決め手になる治療方法は未だ確立されていない。
一卵双生児の発症一致率は35〜58%と、二卵性双生児の一致率13〜27%より高いことから遺伝的要因が統合失調症の発症に関与していることが示唆されている。遺伝率(heritability)は、約80%と算出されており、高血圧の30%、肥満の40〜70%と比べても、遺伝要因の大きい疾患である。このため1990年代から数多くの候補遺伝子研究が行われ、検討された遺伝子の数は3桁におよんでいる。また、大規模な連鎖研究も行われ、ポジショナルなアプローチによって幾つかの候補遺伝子が同定されたが、生化学を含めた病態の説明はつかず、さらに候補遺伝子の関連解析結果も研究者間で一貫していないのが実情である。このため、統合失調症はいわゆる遺伝病(単一遺伝子疾患)ではなく、複数の弱い発病効果の遺伝子の組み合わせに、環境要因も加わって発症する複雑遺伝疾患と考えられている。
統合失調症の症状として、主として、急性期に顕著な陽性症状(幻覚、妄想、思考滅裂など)と、慢性期になって目立ってくる陰性症状(感情鈍麻、意欲・自発性欠如、社会的引きこもり)がある。
現在のところ、統合失調症の診断は、患者との面接に基づいて、陳述内容や表情、ときには家族からの情報などを総合して、世界保健機構(WHO)の「国際疾病分類・第10版」(ICD-10)(図1)または米国精神医学会(APA)の「診断・統計マニュアル・第4版」(DSM-IV)(図2参照)を判断基準として行われる。このため、最終的な決定は、担当医の経験に基づく主観に頼らざるを得ず、診断の精度は十分であるとはいえない。このため、統合失調症の原因遺伝子の染色体マッピングやその同定、ならびに患者の血液や尿などの生体試料を使用した研究が盛んに行われており、その結果、統合失調症の診断に利用可能な生物学的マーカーいくつか報告されている(例えば、特許文献1〜7等参照)。しかしながら、未だに確立されたものはない。
統合失調症の治療は、抗精神病薬(図3参照)の投与が中心であり、ほぼ生涯にわたって服薬が必要とされる。抗精神病薬の幻覚・妄想に対する薬理効果は、ドーパミン受容体の遮断作用に基づいている。しかし、ドーパミン神経を抑制することにより、副作用としてパーキンソン病様症状が発現するため、通常抗パーキンソン薬が併用される。近年、統合失調症の陽性症状には効果があるものの陰性症状にはほとんど効果がなかった従来型の抗精神病薬に代えて、陰性症状にも効果があるとされる非定型抗精神病薬が開発され、従来型の薬剤に取って代わってきている。当該非定型抗精神病薬は、ドーパミン受容体への遮断作用が従来型に比べて強くないため、パーキンソン病様の副作用も少ないといった利点を備えている。
抗精神病薬投与以外の治療方法としては、100Vの交流電流を5秒間頭部に通電して全身痙攣を誘発させる治療法である電気痙攣療法(ECT)、ならびに農耕、木工、手芸、レクリエーションなどの作業療法や社会生活技能訓練(SST)等を行う精神科リハビリテーションを挙げることができる。前者のECTは、切迫した自殺の危険性、栄養不良、緊張病状態など迅速な改善が求められる症状や薬物治療に抵抗性の症例に適用される方法である。また後者の精神科リハビリテーションは生活技能を獲得することで社会生活でのストレスを軽減して再発予防をはかろうとするものである。
しかしながら、いずれの治療も対症療法でしかなく、古いデータであるが、薬物治療効果のない慢性の難治例を対象に15年間追跡調査した結果として、回復6%。良好8%、中等度23%、境界23%、持続的障害41%と報告されている(非特許文献1)。
ところで、糖化最終産物(advanced glycation end products:以下「AGEs」ともいう)は、高血糖や酸化ストレス下において糖・脂質などから生じたカルボニル化合物とタンパク(アミノ基)とが非酵素学的に反応(メイラード反応)することによって体内で生成される物質である(本発明でいう「カルボニル化合物の蛋白修飾物(カルボニル蛋白修飾物)」には、当該AGEsが含まれる)。AGEsは、多数の構造体から成るheterogeneousな集合体であり、当該集合体を構成する構造体の一つであるペントシジンは、1989年Sellらによりヒト脳硬膜コラーゲン中から単離された蛍光性物質である。近年、これらのAGEsに対する抗体(抗AGE抗体)を利用した解析結果により、種々の病態で、組織や血中のAGEsが増加していることが判明している。例えば、糖尿病では高血糖のため、AGEsの前駆物質である糖由来のカルボニル化合物およびその蛋白修飾物(AGEs)の増加が認められる。腎不全ではカルボニル化合物の排泄低下と酸化ストレスの亢進により、また炎症性疾患では酸化ストレスの亢進によって、カルボニル化合物の産生が亢進し、その蛋白修飾物(AGEs)の増加が認められる。さらにカルボニル化合物を消去する酵素であるグリオキシラーゼを欠損する患者でもAGEs値が上昇することが報告されている。このため血中のAGEs値は、糖尿病や腎不全の血管合併症などの指標として、実際に臨床検査に使用されている。AGEs値の測定方法としては、AGEsの構造体であるペントシジンの量を、抗ペントシジン抗体を用いてELISA法で測定する方法、皮膚中のペントシジン含量をAGE Reader機器で測定する方法などが使用されている。
特開2001−245661号公報 特開2003−38198号公報 特開2003−212795号公報 WO2004/005935パンフレット 特開2004−251865号公報 特開2005−55227号公報 特開2005−278490号公報
McGlashan Schizophr Bull, 1988
統合失調症は、病態が特殊であり、しかも前述するように病歴が長期にわたるため、本人およびその家族の精神的苦痛や負担は大きい。加えて、1%と罹患者数も多いことから、この精神疾患による社会的損失ははかりしれない。さらに前述するように、全病床の22%が統合失調症の患者で占められているという実情は、医療経済の点からも大きな問題である。このため、早期診断、治療、社会復帰活動、および再発防止といった包括的な診断及び治療体系の早期確立が望まれている。
本発明は、かかる課題を解決することを目的とするものであり、統合失調症の診断および治療に有効に使用できる新規な手法を提供することを目的とする。具体的には、本発明は統合失調症の検査方法および当該方法に有効に使用できる検査試薬や検査機器を提供することを目的とする。
本発明者の一人である糸川は、統合失調症の患者家系を対象とした遺伝子解析の結果、統合失調症の患者家系に、1つのアレルが点突然変異のためフレームシフトし、グリオキシラーゼを欠損してなる患者家系が複数存在していることを見出した。そこで、かかる患者の生物学的・化学的解析を、本発明者の一人である宮田が行ったところ、この統合失調症の家系では、赤血球グリオキシラーゼの活性が健常者の半分程度まで低下していること、腎不全や糖尿病・炎症といった他の病態がないにも拘わらず血中カルボニル化合物とAGEsが高値(すなわちカルボニルストレス)にあること、カルボニル消去のため体内のビタミンB6(ピリドキサール)が消費され低値になっており、そのためホモシステイン量が増加しているなど、統合失調症患者においてグリオキシラーゼの遺伝子異常に基づいて一連の生化学的な異常が生じていることを確認することができた。
また本発明者らのさらなる研究により、カルボニルストレスとビタミンB6欠乏は、上記グリオキシラーゼが欠損した統合失調症患者のみならず、一部の一般の統合失調症においても確認することができた。具体的には、グリオキシラーゼIの111番目のアミノ酸変異(Glu→Ala)をホモ接合体として有する統合失調症患者(1099例中、5例)において、赤血球グリオキシラーゼの活性が健常者の8割程度まで低下しており、さらに血中カルボニル化合物とAGEsの高値(カルボニルストレス)とビタミンB6の低値が確認された。グリオキシラーゼI遺伝子にはpolymorphismがあることが知られているが(活性の低いpolymorphism有り)、上記111位のAla/Alaのホモ接合体は854例の健常者からは1例も検出されなかったことから、当該変異に基づくグリオキシラーゼの活性の低下が、統合失調症に関連する一連の生化学的な異常を招いているものと考えられた。
斯くして本発明者らは、被験者の(1)グリオキシラーゼ遺伝子の遺伝子異常、(2)生体試料中のグリオキシラーゼ活性、(3)カルボニル化合物またはその蛋白修飾物(AGEs)の量、および(4)生体試料中のピリドキサール量から選択されるいずれか少なくとも一つ、好ましくは、(1)グリオキシラーゼ遺伝子の遺伝子異常または(3)AGEs量の少なくとも一つを測定し、それを指標とすることで、従来医師の問診による主観的判断に頼っていた統合失調症の診断を、簡便かつ客観的に行うことができることを確認して、本発明を完成するに至った。さらに本発明者らは、上記知見から、カルボニルストレスを抑制するカルボニル消去剤またはAGEs生成抑制剤が、統合失調症の治療または症状の改善に有効であることを確信して、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記に示す、統合失調症を検査する方法、および当該方法に使用される統合失調症の検査薬に関する。
I.統合失調症を検査する方法
(I-1)被験者の生体試料を対象として、
(1)生体試料中のカルボニル化合物の蛋白修飾物(カルボニル蛋白修飾物)の量、
(2)生体試料中のグリオキシラーゼIの発現量または活性、
(3)グリオキシラーゼI遺伝子の遺伝子異常、および
(4)生体試料中のピリドキサール量
からなる群から選択されるいずれか少なくとも1つを測定する工程を有する、
統合失調症の検査方法。
(I-2)下記(A)および(B)の工程を有する、(I-1)に記載する統合失調症の検査方法:
(A)被験者の生体試料を対象として、(1) 生体試料中のカルボニル化合物の蛋白修飾物の量、(2)生体試料中のグリオキシラーゼIの発現量または活性、(3)グリオキシラーゼI遺伝子の遺伝子異常、および(4)生体試料中のピリドキサール量からなる群から選択されるいずれか少なくとも1つを測定する工程、および
(B)上記(A)工程で得られた被験者における測定値と、当該測定値に対応する健常者における測定値(対照値)とを対比する工程。
(I-3)被験者の生体試料について測定した各測定値が下記に該当する場合に、当該被験者を統合失調症罹患者であるか、または将来それを発症する危険性が高いと認定する、(I-2)に記載する統合失調症の検査方法:
(1)被験者の生体試料中のカルボニル化合物の蛋白修飾物の量が、健常者の生体試料中の当該量よりも多い、
(2)被験者の生体試料中のグリオキシラーゼIの発現量または活性が、健常者の生体試料中の当該発現量または活性よりも低値である、
(3)被験者のグリオキシラーゼI遺伝子にグリオキシラーゼIの活性低下を招く異常がある、
(4)被験者の生体試料中のピリドキサール量が、健常者の生体試料中の当該量よりも少ない。
(I-4)(4)生体試料中のピリドキサール量の測定に加えて、さらに(5)生体試料中のホモシステイン量を測定する工程を有する、(I-1)乃至(I-3)のいずれかに記載する統合失調症の検査方法。
(I-5)上記被験者が、統合失調症の診断基準に定められる、統合失調症に特徴的な症状または所見を有するか、当該基準により統合失調症が疑われる者である、(I-1)乃至(I-4)のいずれかに記載する統合失調症の検査方法。
(I-6)上記被験者が、腎機能障害、糖尿病および炎症を有しない者である(I-1)乃至(I-5)のいずれかに記載する統合失調症の検査方法。
(I-7)(3)グリオキシラーゼI遺伝子の遺伝子異常が、配列番号1に示すグリオキシラーゼI遺伝子の塩基配列(配列番号2)において79位のアデニンと80位のシトシンの間へのアデニン挿入によるフレームシフト異常である、(I-1)乃至(I-6)のいずれかに記載する統合失調症の検査方法。
(I-8)(3)グリオキシラーゼI遺伝子の遺伝子異常が、配列番号3に示すグリオキシラーゼIのアミノ酸配列において111番目のアミノ酸の変異(Glu→Ala)をもたらす塩基置換変異である、(I-1)乃至(I-6)のいずれかに記載する統合失調症の検査方法。
(I-9)グリオキシラーゼIの活性低下を招くグリオキシラーゼI遺伝子異常を有する被験者に対して、上記(1)、(2)及び(4)からなる群から選択されるいずれか少なくとも1つを測定する工程を有する、(I-1)乃至(I-6)のいずれかに記載する統合失調症の検査方法。
(I-10)上記グリオキシラーゼI遺伝子異常が、配列番号1に示すグリオキシラーゼI遺伝子の塩基配列(配列番号2)において79位のアデニンと80位のシトシンの間へのアデニン挿入によるフレームシフト異常か、または配列番号3に示すグリオキシラーゼIのアミノ酸配列において111番目のアミノ酸の変異(Glu→Ala)をもたらす塩基置換変異である、(I-9)に記載する統合失調症の検査方法。
(I-11)被験者の(1)カルボニル化合物の蛋白修飾物(カルボニル蛋白修飾物)の量を測定する工程を有する、(I-1)乃至(I-10)のいずれかに記載する統合失調症の検出方法であって、当該カルボニル蛋白修飾物の測定方法として、抗−カルボニル蛋白修飾物抗体を用いた免疫学的手法、高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー/マススペクトリー、またはAGE-Reader法を用いることを特徴とする方法。
(I-12)カルボニル蛋白修飾物がペントシジンである(I-1)乃至(I-11)のいずれかに記載する統合失調症の検査方法。
II.統合失調症の検査試薬または検査機器、ならびにその使用
(II-1)配列番号1に示すグリオキシラーゼI遺伝子において、そのコード領域の塩基配列(配列番号2)の79位のアデニンと80位のシトシンを含む16塩基長以上の連続したオリゴ若しくはポリヌクレオチド(但し、当該オリゴヌクレオチド若しくはポリヌクレオチドがRNAである場合は、配列表中の塩基記号「t」は「u」に読み替えるものとする)にハイブリダイズし、当該オリゴ若しくはポリヌクレオチドを特異的に増幅するために用いられる15〜35塩基長のオリゴヌクレオチドまたはその標識物。
(II-2)被験者について、配列番号1に示すグリオキシラーゼI遺伝子のコード領域の塩基配列(配列番号2)の79位のアデニンと80位のシトシンの間へのアデニン挿入を識別して統合失調症を検査するために用いられる、(II-1)に記載されるオリゴヌクレオチドまたはその標識物からなるプライマー。
(II-3)配列番号1に示すグリオキシラーゼI遺伝子において、そのコード領域の塩基配列(配列番号2)の79位のアデニンと80位のシトシンを含む16塩基長以上の連続したオリゴ若しくはポリヌクレオチド、または332位の塩基を含む16塩基長以上の連続したオリゴ若しくはポリヌクレオチド(但し、これらのオリゴヌクレオチド若しくはポリヌクレオチドがRNAである場合は、配列表中の塩基記号「t」は「u」に読み替えるものとする)にハイブリダイズし、当該オリゴ若しくはポリヌクレオチドを特異的に検出するために用いられる16〜500塩基長のオリゴヌクレオチドまたはその標識物。
(II-4)被験者について、配列番号1に示すグリオキシラーゼI遺伝子のコード領域の塩基配列(配列番号2)の79位のアデニンと80位のシトシンの間へのアデニン挿入または332位のアデニンからシトシンへの変異を識別して統合失調症を検査するために用いられる、(II-3)に記載されるオリゴヌクレオチドまたはその標識物からなるプローブ。
(II-5)(II-2)に記載するプライマー、または/および、(II-4)に記載するプローブを含む、統合失調症の検査試薬、または当該試薬を含むキット。
(II-6)被験者の生体試料中の (2)グリオキシラーゼIの発現量または活性を測定する工程を有する統合失調症の検査に用いる試薬であって、少なくとも抗グリオキシラーゼI抗体またはグリオキシラーゼIの反応基質を含有する検査試薬。
(II-7)被験者の生体試料中の(1)カルボニル蛋白修飾物の量を測定する工程を有する統合失調症の検査に用いる試薬であって、(a)既知濃度のカルボニル蛋白修飾物、または(b)標識されていてもよい抗−カルボニル蛋白修飾物抗体のいずれか少なくとも1つを含有する検査試薬。
(II-8)上記カルボニル蛋白修飾物がペントシジンである(II-5)記載の検査試薬。
(II-9)被験者の生体試料中の (3)ピリドキサール量を測定する工程を有する統合失調症の検査に用いる試薬であって、(a)既知濃度のピリドキサール、または(b)ピリドキサール測定試薬のいずれか少なくとも1つを含有する検査試薬。
(II-10)被験者の皮膚中のカルボニル蛋白修飾物の量を測定する手段を有する、統合失調症の診断に使用するためのAGE-Reader装置。
(II-11)統合失調症の診断に使用できることを記載した書類が添付された、(II-10)に記載するAGE-Reader装置。
(II-12)被験者の皮膚中のカルボニル蛋白修飾物量を測定する手段を有するAGE-Reader装置の、統合失調症の診断のための使用。
本発明の診断方法によれば、被験者の(1)グリオキシラーゼI遺伝子の遺伝子異常、(2)生体試料中のグリオキシラーゼの発現量または活性、(3)カルボニル化合物またはその蛋白修飾物の量、および(4)生体試料中のピリドキサール量からなる群から選択される少なくとも1つを指標とすることにより、従来医師の問診による主観的判断に頼っていた統合失調症の診断を、簡便かつ客観的に行うことができる。
世界保健機構(WHO)の「国際疾病分類・第10版」(ICD-10)による統合失調症の診断基準を示す。 米国精神医学会(APA)の「診断・統計マニュアル・第4版」(DSM-IV)による統合失調症の診断基準を示す。 統合失調症の治療に使用されている抗精神病薬を列記した図である。 重篤な統合失調症患者(n=1)と健常者(n=5)とで、赤血球glyoxalaseI活性を比較した結果を示す図である(実施例1)。 重篤な統合失調症患者(患者A)のglyoxalase I遺伝子解析結果を示す。図5AおよびB中、遺伝子Mおよび遺伝子Xはいずれもglyoxalase I遺伝子を意味する。また図Aにおいて症例2とは統合失調症患者(患者A)を意味する。 重篤な統合失調症患者(n=1)と健常者(n=5)とで、血清AGEs値(ペントシジン量)を比較した結果を示す図である(実施例1)。 健常者(n=24)と統合失調症患者(n=24)とで皮膚中のAGEs含量を対比した結果を示す図である(実施例2)。 健常者(n=24)と統合失調症患者(n=24)とで、年齢別(50歳以下、50歳より高齢)に皮膚中のAGEs含量を対比した結果を示す図である(実施例2)。 Ala/Alaホモ接合体の統合失調症患者、ならびにGlu/Alaヘテロ接合体およびGlu/Gluヘテロ接合体の統合失調症患者および健常者について、赤血球glyoxalase活性を測定した結果を示す図である(実施例3)。 111位がAlaの変異GLO-IとGFPとのコンストラクト(pAcGFP-GLO1-Ala)および111位がGluの正常GLO-IとGFPとのコンストラクト(pAcGFP-GLO1-Glu)をそれぞれCOS細胞に発現させてGLO-I活性を測定した結果を示す図である(実施例3)。 Ala/Alaホモ接合体の統合失調症患者(n=4)および重篤な統合失調症患者A(フレームシフトによるglyoxalase I欠損)について、glyoxalase IのmRNAの発現量を測定した結果を示す図である。 各タイプの統合失調症患者(フレームシフト型[n=2]、Ala/Alaホモ接合型[n=5]、Glu/Alaヘテロ接合型[n=1])、ならびに健常者(Glu/Gluホモ接合型)[n=7]について、Glyoxalase I活性(mUnit/106RBC)、ペントシジン活性(pmol/mg protein)、血中ビタミンB6含量(ng/ml)(ピリドキサール、ピリドキサミン、ピリドキシン)、血中ビタミンB12含量(pg/ml)、血中葉酸含量(ng/ml)、血中ホモシステイン含量(nmol/ml)、クレアチニン量(mg/dl)、およびeGFR(ml/min/1.73m2)を測定した結果をまとめたものである。 アミノグアニジン、ピリドキサミン、オルメサルタン、エダラボンおよびTM2002について、ペントシジン生成抑制作用を調べた結果を示す(試験例1(2))。
I.統合失調症を検査する方法
本発明の統合失調症の検査方法は、被験者の生体試料を材料として、下記のいずれか少なくとも1つを測定することによって行うことができる:
(1)グリオキシラーゼI遺伝子の遺伝子異常、
(2)グリオキシラーゼIの発現量または活性、
(3)カルボニル化合物またはその蛋白修飾物(例えば「advanced glycation end products」(AGEs))の量、
(4)ピリドキサール量。
また、(4)生体試料中のピリドキサール量を測定する場合は、さらに(5)生体試料中のホモシステイン量を測定してもよい。
ここで本発明の検査に供することができる生体試料としては、例えば血液ならびに血液成分(血清、血漿、血球など)、尿、髄液、唾液、涙液、汗などの生体由来の液体成分;毛髪、バイオプシーなどで切除された組織の一部などの生体由来の固体成分を挙げることができる。好ましくは血液または血液成分であり、特に好ましくは血清である。なお、生体から採取された試料を直接使用しても、また何かの処理を加えて調整した試料も本発明の生体試料の対象として使用することができる。
被験者としては、好ましくはヒトである。ただし、これに限定されることなく、ヒト以外の哺乳動物、たとえばサル、マウス、ラット、モルモットなども対象となりえる。
また被験者は、統合失調症の診断基準に定められる、統合失調症に特徴的な症状または所見を有するか、または当該診断基準により統合失調症が疑われる者であることができる。ここで統合失調症の診断基準としては、当業界で通常使用されているものを挙げることができるが、具体的には世界保健機構(WHO)の「国際疾病分類」(ICD)および米国精神医学会(APA)の「診断・統計マニュアル」(DSM)を挙げることができる。前者「国際疾病分類」第10版(ICD-10)による統合失調症の判断基準を図1に、後者「診断・統計マニュアル」第4版(DSM-IV)による統合失調症の判断基準を図2に示す。
上記(2)〜(4)または(2)〜(5)を指標として統合失調症を検査する場合、被験者は、グリオキシラーゼI遺伝子の遺伝子異常を有するものであってもよく、また予め下記(1)で説明するグリオキシラーゼI遺伝子の遺伝子異常を測定する検査を受けた者であってもよい。ここで対象とするグリオキシラーゼI遺伝子異常とは、グリオキシラーゼIの欠損やグリオキシラーゼIの発現不良など、結果としてグリオキシラーゼI活性の低下を招く遺伝子異常を意味する。具体的には、グリオキシラーゼI遺伝子の少なくとも一つのアレルが点突然変異し(グリオキシラーゼI遺伝子のコード領域の塩基配列(配列番号2)の79位と80位の間へのアデニン挿入)、これによりフレームシフトしているケース、またはグリオキシラーゼIのアミノ酸配列(配列番号3)の111番目のアミノ酸の変異(Glu→Ala)をホモ接合的に有するケースを挙げることができる。前者の遺伝子異常の場合は、血液中のグリオキシラーゼI活性が健常者に比して約50%低下していること、また後者の遺伝子異常の場合は、血液中のグリオキシラーゼI活性が健常者に比して約20%低下していることが確認されている(実施例参照)。なお、これらの遺伝子異常に限らず、グリオキシラーゼI活性の低下を招く遺伝子異常であればよい。
また、上記(3)〜(4)または(3)〜(5)を指標として統合失調症を検査する場合、被験者は、少なくとも腎機能障害、糖尿病および炎症を有しない者であることが好ましい。本発明が検査の指標とする(3)カルボニル化合物またはその蛋白修飾物(AGEs)や、(4)ピリドキサール量および (5)ホモシステイン量は、腎機能障害、糖尿病または炎症の有無によって変動するからである。よって、上記(3)〜(4)または(3)〜(5)を指標として統合失調症を検査する場合は、事前にまたは本発明の検査と並行して、腎機能障害、糖尿病または炎症の有無を、問診または/および生化学的検査により確認することが好ましい。
(1)グリオキシラーゼI遺伝子の遺伝子異常の測定
本発明が対象とするグリオキシラーゼI遺伝子(以下、単に「GLO-I」遺伝子ともいう)の遺伝子異常は、グリオキシラーゼI(GLO-I)の欠損やGLO-Iの発現不良など、結果としてGLO-I活性の低下を招く遺伝子異常である。その限りにおいて特に制限されないが、具体的には、(1-1) GLO-I遺伝子のコード領域の塩基配列(配列番号2)の少なくとも一つのアレルが点突然変異し(79位のアデニンと80位のシトシンの間へのアデニン挿入)、これによりフレームシフトしている遺伝子異常、および(1-2) GLO-Iのアミノ酸配列(配列番号3)の111番目のアミノ酸の変異(Glu→Ala)をホモ接合的に起こす塩基置換変異を挙げることができる。前述するように、前者の遺伝子異常の場合は、血液中のGLO-I活性が健常者に比して約50%低下していること、また後者の遺伝子異常の場合は、血液中のGLO-I活性が健常者に比して約20%低下していることが確認されている(実施例参照)。
かかる遺伝子異常の検出は、具体的には、(i)遺伝子異常を含む領域でPCRを行い、SSCP法で検出する方法、(ii)遺伝子異常を含む領域でPCRを行い、PCR産物に対する制限酵素の切断様式から検出する方法、(iii)同PCR産物を直接シーケンシングして、配列を決定する方法、(iv)遺伝子異常を有する領域にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドをプローブとして使用し、個体のDNAとハイブリダイズさせるASO(allele specific oligonucleotide)法、(v) 遺伝子異常を有する領域にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドをプローブとして使用して、質量分析装置等で検出する方法など、公知の方法を用いることにより行うことができる。
より具体的な検出方法として、(1-1)GLO-I遺伝子のコード領域の塩基配列(配列番号2)の79位のアデニンと80位のシトシンの間への1塩基挿入(アデニン挿入)の有無を識別する方法、(1-2)GLO-Iのアミノ酸配列(配列番号3)の111番目のアミノ酸の変異(Glu→Ala)をもたらす遺伝子多型の一つである、GLO-I遺伝子のコード領域の塩基配列(配列番号2)の332位の変異(a→c)を識別する方法を例示することができる。当該検出方法は、以下の工程(a)及び(b)を行うことによって実施することができる:
(a)被験者の生体試料からゲノムDNAを抽出する工程、及び
(b)抽出したゲノムDNAに含まれるGLO-I遺伝子を対象として、そのコード領域の塩基配列の79-81位の領域の塩基配列または332位の塩基を識別する工程。
なお、(b)の工程は、実際は抽出したゲノムDNA上においてGLO-I遺伝子を特定して対象とする必要はなく、抽出したゲノムDNAそのものを対象として、その塩基配列に存在する、配列番号4記載の塩基配列と配列番号5記載の塩基配列により挟まれた塩基配列、または配列番号6記載の塩基配列と配列番号7記載の塩基配列により挟まれた塩基を識別することによって行うこともできる。
ここで、配列番号4で示される塩基配列は、ヒトGLO-I遺伝子の塩基配列(配列番号1)(Genbank accession number NM_006708)において、そのコード領域の塩基配列(配列番号2)の79-80位に位置する塩基配列(ac)の5’側(上流側)に位置する200塩基長の塩基配列に該当し、また配列番号5で示される塩基配列は、ヒトGLO-I遺伝子の塩基配列(配列番号1)において、そのコード領域の塩基配列(配列番号2)の79-80位に位置する塩基配列(ac)の3’側(下流側)に位置する300塩基長の塩基配列に該当する。また、配列番号6および7で示される塩基配列は、GLO-I遺伝子の塩基配列(配列番号1)において、そのコード領域の塩基配列(配列番号2)の332位に位置する塩基(a)の、それぞれ5’側(上流側)に位置する300塩基長の塩基配列および3’側(下流側)に位置する300塩基長の塩基配列に該当する。
上記本発明の(1-1)の方法は、さらに下記の工程(c-1)を有することが好ましい:
(c-1) GLO-I遺伝子のコード領域の塩基配列(配列番号2)の79位のアデニンと80位のシトシンの間に、アデニンが挿入されているか否かを検出する工程。
当該検出によって、(1-1)GLO-I遺伝子のコード領域の塩基配列(配列番号2)の79位のアデニンと80位のシトシンの間にアデニンが挿入されている場合、当該ゲノムDNA試料を提供した被験者は、統合失調症であるか、または将来統合失調症を発症する可能性が高い。
また上記本発明の(1-2)の方法は、さらに下記の工程(c-2)を有することが好ましい:
(c-2) GLO-I遺伝子のコード領域の塩基配列(配列番号2)の332位の塩基がアデニンであるかシトシンであるかを検出する工程。
当該検出によって、(1-2)332位の塩基がシトシンのホモ接合体(C/C)である場合、当該ゲノムDNA試料を提供した被験者は、統合失調症であるか、または将来統合失調症を発症する可能性が高い。
当該方法によれば、被験者について統合失調症の罹患の有無またはその発症の潜在的危険度を判定することができる。当該検査は、上記遺伝子異常を判断基準(判断指標)として医師等の専門知識を有する者の判断を要することなく、機械的に行なうことができる。このため、本発明の方法は、統合失調症の検出方法と言うこともできる。
なお、上記工程(a)(ゲノムDNAの抽出)と工程(b)(目的塩基の識別)は、公知の方法〔例えば、Bruce, et al., Geneme Analysis/A laboratory Manual (vol.4), Cold Spring Harbor Laboratory, NY., (1999)〕を用いて行うことができる。
工程(a)においてゲノムDNAの抽出を行う検体は、被験者および臨床検体等から単離されたあらゆる細胞(培養細胞を含む。但し生殖細胞は除く)、組織(例えば、肝臓、腎臓、副腎、子宮、脳など。培養組織を含む)、または体液(例えば、唾液、リンパ液、気道粘膜、精液、汗、尿等)などを材料とすることができる。該材料としては末梢血から分離した白血球または単核球が好ましく、特に白血球が最も好適である。これらの材料は、臨床検査において通常用いられる方法に従って単離することができる。
例えば白血球を材料とする場合、まず被験者より単離した末梢血から常法に従って白血球を分離する。次いで、得られた白血球にプロティナーゼKとドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を加えてタンパク質を分解、変性させた後、フェノール/クロロホルム抽出を行うことによりゲノムDNA(RNAを含む)を得る。RNAは、必要に応じてRNaseにより除去することができる。なお、ゲノムDNAの抽出は、上記の方法に限定されず、当該技術分野で周知の方法(例えば、Sambrook J. et. al., “Molecular Cloning: A Laboratry Manual (2nd Ed.)”Cold Spring Harbor Laboratory, NY)や、市販のDNA抽出キット等を利用して行なうことができる。さらに必要に応じて、GLO-I遺伝子またはこれを含むDNAを単離してもよい。当該DNAの単離は、GLO-I遺伝子にハイブリダイズするプライマーを用いて、ゲノムDNAを鋳型としたPCR等によって行うことができる。
工程(b)において、上記のようにして得られたヒトゲノムDNAを含む抽出物から、GLO-I遺伝子のコード領域の塩基配列(配列番号2)の79位と80位の間の挿入塩基の有無、またはGLO-I遺伝子のコード領域の塩基配列(配列番号2)の332位の塩基を識別する。なお、当該塩基の識別は、ヒトゲノムDNAを含む試料からさらに単離したGLO-I遺伝子のコード領域の塩基配列を直接決定し、当該塩基配列の79位と80位との間に位置する塩基の有無、または332位の塩基の種類(アデニンまたはシトシン)を調べる方法によってもよい。
例えば目的の塩基を識別する方法としては、上記のように該当領域の遺伝子配列を直接決定する方法の他に、多型配列が制限酵素認識部位である場合は、制限酵素切断パターンの相違を利用して、遺伝子型を決定する方法(以下、RFLPという)、多型特異的なプローブを用いたハイブリダイゼーションを基本とする方法(例えば、チップやガラススライド、ナイロン膜上に特定なプローブを張り付け、それらのプローブに対するハイブリダイゼーション強度の差を検出することによって、多型の種類を決定する、または、特異的なプローブのハイブリダイゼーションの効率を、鋳型2本鎖増幅時にポリメレースが分解するプローブの量を検出することにより遺伝子型を特定する方法、ある種の2本鎖特異的な蛍光色素が発する蛍光を、温度変化を追うことにより2本鎖融解の温度差を検出し、これにより多型を特定する方法、多型部位特異的なオリゴプローブの両端に相補的な配列を付け、温度によって該当プローブが自己分子内で2次構造をつくるか、ターゲット領域にハイブリダイズするかの差を利用して遺伝子型を特定する方法など)がある。また、さらに鋳型特異的なプライマーからポリメレースによって塩基伸長反応を行わせ、その際に多型部位に取り込まれる塩基を特定する方法(ダイデオキシヌクレオタイドを用い、それぞれを蛍光標識し、それぞれの蛍光を検出する方法、取り込まれたダイデオキシヌクレオタイドをマススペクトロメトリーにより検出する方法)、さらに鋳型特異的なプライマーに続いて変異部位に相補的な塩基対または非相補的な塩基対の有無を酵素によって認識させる方法などがある。
以下、従来公知の代表的な遺伝子多型の検出方法を列記するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
(a)RFLP(制限酵素切断断片長多型)法、(b)PCR−SSCP法(一本鎖DNA高次構造多型解析)〔Biotechniques, 16, 296-297 (1994)、及びBiotechniques, 21, 510-514 (1996)〕、(c)ASO(Allele Specific Oligonucleotide)ハイブリダイゼーション法〔Clin. Chim. Acta, 189, 153-157 (1990)〕、(d)ダイレクトシークエンス法〔Biotechniques, 11, 246-249 (1991)〕、(e)ARMS(Amplification Refracting Mutation System)法〔Nuc. Acids. Res., 19, 3561-3567 (1991);Nuc. Acids. Res., 20, 4831-4837 (1992)〕、(f)変性剤濃度勾配ゲル電気泳動(Denaturing Gradient Gel Electrophoresis;DGGE)法〔Biotechniques, 27, 1016-1018 (1999)〕、(g)RNaseA切断法〔DNA Cell. Biol., 14, 87-94 (1995)〕、(h)化学切断法〔Biotechniques, 21, 216-218 (1996)〕、(i)DOL(Dye-labeled Oligonucleotide Ligation)法〔Genome Res., 8, 549-556 (1998)〕、(j)TaqMan−PCR法〔Genet. Anal., 14, 143-149 (1999);J. Clin. Microbiol., 34, 2933-2936 (1996)〕、(k)インベーダー法〔Science, 5109, 778-783 (1993);J.Biol.Chem., 30,21387-21394 (1999);Nat. Biotechnol., 17, 292-296 (1999)〕、(l)MALDI−TOF/MS法(Matrix Assisted Laser Desorption-time of Flight/Mass Spectrometry)法〔Genome Res., 7, 378-388 (1997);Eur.J.Clin.Chem.Clin.Biochem., 35, 545-548 (1997)〕、(m)TDI(Template-directed Dye-terminator Incorporation)法〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94, 10756-10761 (1997)〕、(n)モレキュラー・ビーコン(Molecular Beacons)法〔Nat. Biotechnol., 1, p49-53 (1998);遺伝子医学、4, p46-48 (2000)〕、(o)ダイナミック・アレル−スペシフィック・ハイブリダイゼーション(Dynamic Allele-Specific Hybridization;DASH)法〔Nat.Biotechnol.,1.p.87-88 (1999);遺伝子医学,4, 47-48 (2000)〕、(p)パドロック・プローブ(Padlock Probe)法〔Nat. Genet.,3,p225-232 (1998) ;遺伝子医学,4, p50-51 (2000)〕、(q)UCAN法〔タカラ酒造株式会社ホームぺージ(http://www.takara.co.jp)参照〕、(r)DNAチップまたはDNAマイクロアレイ(「SNP遺伝子多型の戦略」松原謙一・榊佳之、中山書店、p128-135)、(s)ECA法〔Anal. Chem., 72, 1334-1341, (2000)〕。
以上は代表的な遺伝子多型検出方法であるが、本発明の統合失調症の検査には、これらに限定されず、他の公知または将来開発される遺伝子異常検出方法を用いることもできる。また、本発明の遺伝子異常検出に際して、これらの遺伝子多型検出方法を単独で使用してもよいし、また2以上を組み合わせて使用することもできる。
本発明の方法によって、統合失調症であるか、または統合失調症を発症する潜在的な危険度が相対的に高いことが判明した被験者に対しては、その旨を告知し、その治療若しくは改善、またはその発症を防ぐための的確な対策を講じることができる。従って、本発明は、統合失調症の早期治療若しくは改善、または発症を予防するための、さらにはその進展(進行)を阻止するための検査方法として極めて有用である。
本発明の方法は、遺伝子異常を塩基配列から検出する方法に限らず、遺伝子異常の結果生じたGLO-Iのアミノ酸配列(配列番号3)の111番目のアミノ酸の変異(Glu→Ala)をそのまま検出する方法であってもよい。かかる方法としては、被験者のGLO-I遺伝子の発現産物(例えば、mRNA、GLO-I)について上記アミノ酸変異が生じているかどうかを測定する方法を挙げることができる。かかる方法としては、GLO-I遺伝子の発現産物の配列を決定する方法のほか、GLO-Iまたは変異GLO-I(Glu111Ala)に対する抗体を用いたウエスタンブロッティング法、ドットブロッティング法、免疫沈降法、酵素結合免疫測定法(ELISA)、及び免疫蛍光法、またはGLO-Iのアミノ酸配列の111番目のアミノ酸変異(Glu→Ala)によって生じた(または消失した)活性を測定する方法を例示することができる。
(2)生体試料中のグリオキシラーゼIの発現量または活性の測定
かかる測定は、好ましくは、血液、特に血清や血球を材料として行うことができる。
GLO-Iの発現量は、通常GLO-Iに対する抗体(ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体)を用いて、ウエスタンブロッティング、EIA法、RIA法、FIA法、化学発光イムノアッセイ、またはECLIA法などの公知の免疫学的な手法を用いて測定することができる。好ましくはGLO-Iに対するモノクローナル抗体を用いたウエスタンブロッティング法である。具体的には、被験試料をメルカプトエタノールで処理した後、SDS-ポリアクリルアミドゲルに供して電気泳動し、次いでタンパク質をPVDF膜にトランスファーした後、抗GLO-I抗体、次いで標識した第2抗体と反応させて発色させて視覚化する方法を挙げることができる。なお、ウエスタンブロッティングにおいて必要に応じて、βアクチンなどのハウスキーピング遺伝子由来のタンパク質を内部標準物質として用いることによって、より正確にGLO-IのmRNAを定量することができる。GLO-Iに対する抗体は、GLO-Iを用いて定法に従って調製することができるし、また商業的に入手することも可能である(例えば、GLO1 polyclonal antibody [Abnova Corporation社製/Taipei City 114 Taiwan)Catalog#: H00002739-A01]など)。
GLO-Iの活性は、当業界で公知の方法を用いて行うことができる。制限はされないが、例えば、実施例1に記載するように、McLellanらの方法(McLellan AC, Thornalley PJ:Glyoxalase activity in human red blood cells fractioned by age. Mech Ageing Dev 48 : 63-71, 1989)を挙げることができる。かかる方法は、破壊した赤血球をメチルグリオキサールとグルタチオンから生成されるヘミチオアセタールと反応させて、生じたS-D-ラクトイルグルタチオン量を測定して、赤血球中のGLO-I活性を評価する方法である。なお、かかる方法において1 unit は 赤血球10 6が1分あたり、1μmol のS-D-lactoylglutathionを形成する量を意味する。
本発明の診断方法は、より具体的には、上記方法により被験者の生体試料中のGLO-Iの発現量または活性を測定した後、当該測定値を、健常者における対応のGLO-Iの発現量(対照発現量)または活性(対照活性)と対比し、高低を評価することによって行うことができる。この場合、被験者が統合失調症罹患者であるとの判断は、被験者のGLO-Iの発現量または活性が、対照発現量または対照活性より低いことを指標とすることができる。
(3)生体試料中のカルボニル化合物またはその蛋白修飾物の測定
かかる測定は、好ましくは、血液、特に血清や血漿を材料として行うことができる。
対象とするカルボニル化合物としては、アラビノース、GO、MGO、3−DG、グリコールアルデヒド、デヒドロアスコルビン酸、ヒドロキシノネナール、マロンジアルデヒド、アクロレイン、5−ヒドロキシメチルフルフラール、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、レプリン酸、フルフラールなどを挙げることができる。これらの量は、通常既知濃度の標準品を用いて、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)やガスクロマトグラフィー/マススペクトロメトリー(GC/MS)などの機器分析を行うことによって測定することができる。
またこれらのカルボニル化合物と生体の蛋白質とが反応して生成する蛋白修飾物(例えば「AGEs」)(以下これを単に「AGEs」という)も同様に、通常既知濃度の標準品を用いて、HPLCやGC/MSなどの機器分析を行うことによって測定することができる。なお、AGEsは複数の構造体(AGEs構造体)の集合体である。従って、AGEsの測定はAGEs構造体を測定することによって行うことができる。AGEs構造体としては、ペントシジン、クロスリン、ピロピリジン、ベスペルリジンA,B,C、glyoxal-lysine dimmer(GOLD)、methylglyoxal-lysine dimmer(MOLD)(以上、蛍光性物質)、Nε-(carboxymethyl)lysine(CML)、Nε-(carboxyethyl)lysine(CEL)、アルグピリミジン、ピラリン、イミダゾロン、GA-ピリジン(以上、非蛍光性物質)などを挙げることができる。好ましくはペントシジンである。
ペントシジンはペントースと等モルのリジンとアルギニンが架橋した構造を有し、酸加水分解に安定な蛍光性物質である。加齢や糖尿病の発症に相関してヒトの皮膚に蓄積することが知られており、特に糖尿病の発症や末期の腎症において増加することが報告されている。血液など蛋白質中に含まれるペントシジンは、酸加水分解後にその蛍光性(Ex:335nm、Em:385nm)を指標としてHPLCで定量することができる。また、ペントシジンは、ペントシジンに対するモノクローナル抗体を用いた免疫化学的な方法(例えばELISA法、特にサンドイッチELISA法や競合ELISA法など)を用いて定量することができる。なお、ペントシジンに対するモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体は、定法に従って調製することができるが、簡便には商業的に入手することもできる(例えば(株)トランスジェニック、伏見製薬(株)など)。そのほか、AGEs構造体であるカルボキシメチルリジン、ならびにマロンジアルデヒドやヒドロキシノネナールの蛋白修飾物に対する抗体も商業的に入手することができる。
競合ELISA法は、ペントシジンなどのAGEs構造体を固相化したマイクロプレートに蛋白分解酵素で前処理した検体(血漿)および標準AGEs構造体を加え、さらにAGEs構造体に対する抗体を加えて反応させ、次いで洗浄後、酵素溶液を加えて再洗浄し、発色剤を加えて吸光度を測定することによって行うことができる。当該方法はペントシジンの血液化学検査として定められている方法であり、例えば「FSKペントシジン」(製品名)((株)伏見製薬所)などの定量キットを用いることで簡便に行うことができる。また、皮膚に蓄積したペントシジンなどのAGEs量は、市販のAGE−Reader機器(Diagn Optics)を用いて簡便に測定することができる。
本発明の検査方法は、より具体的には、上記方法により被験者の生体試料中のカルボニル化合物またはその蛋白修飾物(AGEs)の量を測定した後、当該測定値を、健常者における対応する量(対照量)と対比し、高低を評価することによって行うことができる。この場合、被験者が統合失調症罹患者であるか、または将来それを発症する危険性が高いとの判断には、被験者のカルボニル化合物またはAGEs量が、対照量より高いことを指標とすることができる。なお、ペントシジンなどのAGEs構造体の生体内の量は加齢に従って増加することが知られている。よって比較する健常者の試料は、被験者と同年齢または同年代のものを使用することが好ましい。
(4)生体試料中のピリドキサール量および(4)ホモシステイン量の測定
かかる測定は、好ましくは、血液、特に血清や血漿を材料として、公知方法に従って行うことができる。例えば、通常既知濃度の標準品を用いて、HPLCやGC/MSなどの機器分析を行うことによって測定することができる。
本発明の検査方法は、より具体的には、上記方法により被験者の生体試料中のピリドキサール量を測定した後、当該測定値を、健常者における対応する量(対照量)と対比し、高低を評価することによって行うことができる。この場合、被験者が統合失調症罹患者であるか、または将来それを発症する危険性が高いとの判断は、被験者のピリドキサール量が対照量より低いことを指標とすることができる。なお、健常者のピリドキサールの血清濃度は、男性で6.0−40.0ng/ml、女性で4.0-19.0 ng/mlである。
なお、ピリドキサール値はホモシステイン値と連動しており、ピリドキサール値が低値になるとホモシステイン値は高値になる傾向にある。このため、ピリドキサール量を測定する場合は、併せてホモシステイン量を測定し、ピリドキサール量の測定値の精度・正確性を確認してもよい。この場合、被験者のピリドキサール量が対照量より低く、また当該被験者のホモシステイン量が健常者のホモシステイン量(対照量)よりも高い場合は、当該被験者が統合失調症罹患者であるか、または将来それを発症する危険性が高いという蓋然性が高くなる。ホモシステイン量は、定法に従って測定することができ、例えば、通常、既知濃度の標準品を用いて、HPLCやGC/MSなどの機器分析を行うことによって測定することができる。なお、健常者のホモシステインの血清濃度は、3.7−13.5nmol/mlである。
本発明の検査方法は、前述する(1)〜(4)のいずれか少なくとも1つを行うことによって実施することができるが、これらの2以上、好ましくは3以上、より好ましくは4以上を組み合わせて行うこともできる。複数組み合わせて行うことによって、より診断の精度を上げることができる。好ましくは、少なくとも(1)GLO-I遺伝子の遺伝子異常の測定、または(3)カルボニル化合物またはその蛋白修飾物の測定を行うことである。より好ましくは当該(1)と(3)の測定の組み合わせ、または(3)の測定と(2)グリオキシラーゼIの発現量または活性測定との組み合わせである。また、本発明の検査方法は、従来の主観的検査や診断方法(例えば、ICDやDSMの基準に従ったBPRSスコア判定など)と併用して行うこともできる。
本発明の検査方法によれば、被験者の生体試料を材料として客観的に統合失調症の罹患の有無を評価することができるので、法的責任能力の有無を調べるときの補助的証拠のひとつとして、または法的責任能力の有無判定以外の目的で行われる場合でも、精神鑑定に適用することも可能である。
また本発明の検査方法によれば、患者の原因や治療方法の決定、病態の判定および病態の経過観察、治療効果の有無の判定、予後の予測、精神疾患を含む他の疾患との判別を行うことができる。特に、本発明の方法によれば、GLO-I活性低下によって生じたカルボニルストレスを原因とする統合失調症患者を選別することができることから、カルボニル消去剤やAGEs生成抑制剤などを用いたカルボニルストレス除去療法が有効な統合失調症患者を的確に選択して、的確かつ有効な治療を施すことが可能になる。
II.統合失調症の検査試薬または検査機器、ならびにその使用
また本発明は、上記統合失調症の検査方法に使用される検査試薬および検査機器を提供する。かかる試薬ならびに機器は、統合失調症の検査に用いる指標に応じて適宜選択することができる。
(1) GLO-I遺伝子の遺伝子異常を検査指標とする場合の検査試薬
例えば、(1) GLO-I遺伝子の遺伝子異常を検査指標とする場合の検査試薬としては、下記に説明する上記プローブまたはプライマー(なお、これらは標識されていても、また固相に固定化されていてもよい)を挙げることができる。また当該試薬は、これらプローブまたはプライマーの他、必要に応じてハイブリダイゼーション用の試薬、プローブの標識、ラベル体の検出剤、緩衝液など、本発明の検査に必要な他の試薬、器具などを適宜含む、キットの形態を有していてもよい。
(1-1)プローブ
目的とするGLO-I遺伝子のコード領域の塩基配列(配列番号2)の79位と80位との間へのアデニンの挿入、または332位のアデニンからシトシンへの変異の検出には、当該遺伝子のコード領域の塩基配列の79-80位の塩基配列または332位の塩基を含むオリゴまたはポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズし、当該塩基配列または塩基を検出することができるオリゴまたはポリヌクレオチドが用いられる。かかるオリゴまたはポリヌクレオチドは、GLO-I遺伝子(配列番号1)上において当該塩基配列(コード領域(配列番号2)の79-80位の領域)または塩基(コード領域(配列番号2)の332位)を含む16〜500塩基長、好ましくは20〜200塩基長、より好ましくは20〜50塩基長の連続した遺伝子領域と特異的にハイブリダイズするように、上記塩基長を有するオリゴまたはポリヌクレオチドとして設計される。
ここで「特異的にハイブリダイズする」とは、通常のハイブリダイゼーション条件下、好ましくはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下(例えば、サムブルックら、Molecular Cloning, Cold Spring Harbour Laboratory Press, New York, USA, 第2版、1989に記載の条件)において、他のDNAとクロスハイブリダイゼーションを有意に生じないことを意味する。好適には当該オリゴまたはポリヌクレオチドは、上記検出する塩基配列または塩基を含む遺伝子領域の塩基配列に対して相補的な塩基配列を有することが望ましい。但し、かかる特異的なハイブリダイゼーションが可能であれば、完全に相補的である必要はない。
かかるオリゴまたはポリヌクレオチドとして、具体的には、GLO-I遺伝子のコード領域の塩基配列(配列番号2)において、79-80位に位置する塩基配列(ac)を含む16〜500塩基長の連続したオリゴまたはポリヌクレオチド(但し、当該ヌクレオチドがRNAである場合、配列表中の塩基記号「t」は「u」に読み替えるものとする)にハイブリダイズする16〜500塩基長のオリゴまたはポリヌクレオチド、または332位に位置する塩基配列を含む16〜500塩基長の連続したオリゴまたはポリヌクレオチド(但し、当該ヌクレオチドがRNAである場合、配列表中の塩基記号「t」は「u」に読み替えるものとする)にハイブリダイズする16〜500塩基長のオリゴまたはポリヌクレオチドを挙げることができる。
当該オリゴまたはポリヌクレオチドは、被験者について統合失調症罹患の有無またはその発症の潜在的可能性を判定するために、GLO-I遺伝子のコード領域の塩基配列(配列番号2)の79-80位の領域または332位の塩基を含むオリゴヌクレオチドに、特異的にハイブリダイズするオリゴまたはポリヌクレオチド「プローブ」として設計される。なお、これらのオリゴまたはポリヌクレオチドは、GLO-I遺伝子の塩基配列(配列番号1)に基づいて、例えば市販のヌクレオチド合成機によって常法に従って作成することができる。
さらに好ましくは、後述するように、当該プローブは、放射性物質、蛍光物質、化学発光物質、または酵素等で標識されていてもよい。
上記プローブ(オリゴまたはポリヌクレオチド)は任意の固相に固定化して用いることもできる。このため本発明はまた、上記プローブ(オリゴまたはポリヌクレオチド)を固定化プローブ(例えばプローブを固定化した遺伝子チップ、cDNAマイクロアレイ、オリゴDNAアレイ、メンブレンフィルター等)として提供するものである。当該プローブは、好適には統合失調症検査用のDNAチップとして利用することができる。
固定化に使用される固相は、オリゴまたはポリヌクレオチドを固定化できるものであれば特に制限されることなく、例えばガラス板、ナイロンメンブレン、マイクロビーズ、シリコンチップ、キャピラリーまたはその他の基板等を挙げることができる。固相へのオリゴまたはポリヌクレオチドの固定は、予め合成したオリゴまたはポリヌクレオチドを固相上に載せる方法であっても、また目的とするオリゴまたはポリヌクレオチドを固相上で合成する方法であってもよい。固定方法は、例えばDNAマイクロアレイであれば、市販のスポッター(Amersham社製など)を利用するなど、固定化プローブの種類に応じて当該技術分野で周知である〔例えば、photolithographic技術(Affymetrix社)、インクジェット技術(Rosetta Inpharmatics社)によるオリゴヌクレオチドのin situ合成等〕。
ASO法の一例であるTaqMan PCR法〔Livak KJ. Gene Anal 14, 143 (1999), Morris T et al., J Clin Microbiol 34, 2933 (1996)〕の場合、79-80位または332位を含む領域に相補的な20塩基長程度のオリゴヌクレオチドがプローブとして設計される。当該プローブは、5’末端を蛍光色素、3’末端を消光物質により標識され、検体DNAと特異的にハイブリダイズするが、そのままでは発光せず、別に加えられたPCRプライマーの上流からの伸長反応により5’側の蛍光色素結合が切断され、遊離した蛍光色素により検出される。ASO法の別の1例であるInvade法〔Lyamichev V. et al., Nat Biotechnol 17, 292 (1999)〕では、変異部位に隣接する配列(3’側と5’側の2種)に相補的なオリゴヌクレオチドがプローブとして設計される。検出は、これら2種のプローブと検体とは無関係な第3のプローブによって達成される。
(1-2)プライマー
本発明は、またGLO-I遺伝子のコード領域の塩基配列(配列番号2)における変異(79位と80位との間への塩基挿入、または332位のアデニンからシトシンへの変異)を含む配列領域を特異的に増幅するためのプライマーとして用いられるオリゴヌクレオチドを提供する。このようなプライマー(オリゴヌクレオチド)は、GLO-I遺伝子において、そのコード領域の塩基配列の79-80位または332位のヌクレオチドを含む連続したオリゴまたはポリヌクレオチドの1部に特異的にハイブリダイズし、当該オリゴまたはポリヌクレオチドを特異的に増幅するための15〜35塩基長、好ましくは18〜30塩基長程度のオリゴヌクレオチドとして設計される。増幅するオリゴまたはポリヌクレオチドの長さは、用いられる検出方法に応じて適宜設定されるが、一般的には15〜1000塩基長、好ましくは20〜500塩基長、より好ましくは20〜200塩基長である。
かかるプライマーとして、具体的には、ヒトGLO-I遺伝子のコード領域の塩基配列(配列番号2)において、79-80位に位置するヌクレオチドを含む16塩基長以上の連続したオリゴまたはポリヌクレオチド(但し、当該ヌクレオチドがRNAである場合、配列表中の塩基記号「t」は「u」に読み替えるものとする)にハイブリダイズし、当該オリゴまたはポリヌクレオチドを特異的に増幅するための15〜35塩基長、好ましくは18〜30塩基長程度のオリゴヌクレオチド、ならびに332位に位置するヌクレオチドを含む16塩基長以上の連続したオリゴまたはポリヌクレオチド(但し、当該ヌクレオチドがRNAである場合、配列表中の塩基記号「t」は「u」に読み替えるものとする)にハイブリダイズし、当該オリゴまたはポリヌクレオチドを特異的に増幅するための15〜35塩基長、好ましくは18〜30塩基長程度のオリゴヌクレオチドを例示することができる。
なお、これらのオリゴヌクレオチドは、GLO-I遺伝子の公知の塩基配列(配列番号1)に基づいて、例えば市販のヌクレオチド合成機によって常法に従って作成することができる。
(1-3)標識物
上記本発明のプローブまたはプライマーには、遺伝子異常検出のための適当な標識物、例えば蛍光色素、酵素、タンパク質、放射性同位体、化学発光物質、ビオチン等が付加されたものが含まれる。
なお、本発明において用いられる蛍光色素としては、一般にヌクレオチドを標識して、核酸の検出や定量に用いられるものが好適に使用でき、例えば、HEX(4,7,2’,4’,5’,7’-hexachloro-6-carboxylfluorescein、緑色蛍光色素)、フルオレセイン(fluorescein)、NED(商品名、アプライドバイオシステムズ社製、黄色蛍光色素)、あるいは、6−FAM(商品名、アプライドバイオシステムズ社製、黄緑色蛍光色素)、ローダミン(rhodamin)またはその誘導体〔例えば、テトラメチルローダミン(TMR)〕を挙げることができるが、これらに限定されない。蛍光色素でヌクレオチドを標識する方法は、公知の標識法のうち適当なものを使用することができる〔Nature Biotechnology, 14, 303-308 (1996)参照〕。また、市販の蛍光標識キットを使用することもできる(例えば、アマシャム・ファルマシア社製、オリゴヌクレオチドECL 3’−オリゴラベリングシステム等)。
また、本発明のプライマーには、その末端に遺伝子異常の検出のためのリンカー配列が付加されたものも含まれる。このようなリンカー配列としては、例えば、前述したインベーダー法で用いられるオリゴヌクレオチド5’末端に付加される、フラップ(多型近傍の配列とは全く無関係な配列)等が挙げられる。
遺伝子異常測定法としてPCR-direct sequence法を用いる場合、GLO-I遺伝子のコード領域の塩基配列(配列番号2)の79-80位を含む塩基配列を検出するためのフォワードプライマー(順方向のプライマー)としては、好適には配列番号8に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを、また、リバースプライマー(逆方向のプライマー)としては、好適には配列番号9に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを例示することができる。また、GLO-I遺伝子のコード領域の塩基配列(配列番号2)の332位を含む塩基配列を検出するためのフォワードプライマーとしては、好適には配列番号10に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを、また、リバースプライマーとしては、好適には配列番号11に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを例示することができる。
以上の、プローブまたはプライマー(標識されていてもよい)は、統合失調症の罹患の有無または発症リスクを検出するための試薬として利用することができる。
(2)GLO-Iの発現量を検査指標とする場合の試薬
(2)GLO-Iの発現量を検査指標とする場合の試薬としては、抗GLO-I抗体(ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体)を、またGLO-I活性を診断指標とする場合の試薬としては、GLO-Iの反応基質(例えばヘミチオアセタール)を挙げることができる。また、前者の場合、抗GLO-I抗体に加えて、ウエスタンブロッティング、EIA法、RIA法、FIA法、化学発光イムノアッセイ、またはECLIA法などの免疫学的な手法を行うために使用される試薬(例えば、標識第2抗体、SDS-PAGE、マイクロプレートなど)も含めることができる。
(3)カルボニル化合物またはその蛋白修飾物(AGEs)の量を検査指標とする場合の試薬または機器
さらに、(3)カルボニル化合物またはAGEsの量を検査指標とする場合の試薬としては、(a)既知濃度のカルボニル化合物またはAGEs、または(b)標識されていてもよい抗AGEs抗体を挙げることができる。カルボニル化合物および抗AGEs抗体としては、前述のものを挙げることができる。また、(3)カルボニル化合物の蛋白修飾物としてペントシジンを用いる場合、前述するように皮膚に含まれるペントシジン量を検査指標とすることができる。この場合、皮膚中のペントシジン量が測定できる市販のAGE-Reader装置は、統合失調症検査機器として好適に用いることができる。すなわち、本発明はAGE-Reader装置を、統合失調症を検査するための検査機器として提供するものである。この場合、当該機器には、統合失調症の検査に使用できることを記載した書類を添付することができ、また当該書類には統合失調症の診断基準や診断のための使用方法に関する記載を含めることができる。
(4)ピリドキサール量を検査指標とする場合の試薬、(5)ホモシステイン量を検査指標とする場合の試薬
さらにまた、(4)ピリドキサール量を検査指標とする場合の試薬としては、(a)既知濃度のピリドキサール、または(b)ピリドキサール測定試薬を挙げることができる。さらに(5)ホモシステイン量を検査指標とする場合の試薬としては、(a)既知濃度のホモシステイン、または(b) ホモシステイン測定試薬を挙げることができる。
III.統合失調症の治療または改善剤
本発明の統合失調症の治療または改善剤は、カルボニル消去剤またはAGEs生成抑制剤を有効成分とすることを特徴とする。
(1)カルボニル消去剤
本発明が対象とするカルボニル消去剤は、酸化ストレスなどによって体内の糖、脂質またはアミノ酸から産生されるカルボニル化合物(例えば、アラビノース、GO、MGO、3−DG、グリコールアルデヒド、デヒドロアスコルビン酸、ヒドロキシノネナール、マロンジアルデヒド、アクロレイン、5−ヒドロキシメチルフルフラール、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、レプリン酸、フルフラールなど)の体内量を低減させる作用を有するものである。その作用機序は特に問わず、たとえばカルボニル化合物の産生を抑制する作用、産生されたカルボニル化合物を捕捉して結果として体内量を低減させる作用などを挙げることができる。かかる作用を有するカルボニル消去剤としては、ピリドキサミンまたはその薬学的に許容される塩またはエステルなどが知られており、これらを広く用いることができる。
(2)AGEs生成抑制剤
前述するカルボニル化合物は、反応性が高く非酵素的に生体内の蛋白と反応し、糖化最終物(advanced glycation end products: AGEs)を生成する(カルボニルストレス)。なお、AGEsは複数の構造体の集合物であり、かかる構造体としてペントシジン、クロスリン、ピロピリジン、ベスペルリジンA,B,C、glyoxal-lysine dimmer(GOLD)、methylglyoxal-lysine dimmer(MOLD)(以上、蛍光性物質)、Nε-(carboxymethyl)lysine(CML)、Nε-(carboxyethyl)lysine(CEL)、アルグピリミジン、ピラリン、イミダゾロン、GA-ピリジン(以上、非蛍光性物質)などが知られている。
本発明が対象とするAGEs生成抑制剤は、体内におけるかかるAGEsの生成を抑制する作用を有するものである。なお、ここで「AGEsの生成を抑制する」とは、カルボニル化合物をトラップする作用を有することによるものであってもよく、蛋白修飾物(AGEs)を生成する反応を抑制することによるものであってもよく、最終的にAGEsの生成を抑制すればよく、その作用機序には限定されない。
なお、対象とする化合物が、AGEs生成抑制作用を有するか否かは下記(i)または(ii)の試験により確認することができる:
(i)代表的なAGEsであるペントシジンを指標として、非糖尿病の腎不全透析患者から血漿を採取し、被験化合物を添加し、一定時間後のペントシジン生成量を測定する。
(ii)フェニルアラニンは、ヒドロキシラジカル存在下でOHラジカルと結合し、o−またはm−チロシンを生成する。さらに、チロシンは、パーオキシナイトライト存在下でNOラジカルと反応してニトロチロシンを生成する。一方、ラジカルは生体内で腎に障害を与えることが知られている。そこで、フェニルアラニン−ラジカル反応系における被験化合物のラジカル捕捉能を検証する。
またなお、対象とする化合物はビタミンB6欠乏症を惹起しないことが好ましい。対象化合物がビタミンB6欠乏症を惹起しないか否かは下記(a)または(b)の試験により確認することができる。
(a)ビタミンB6溶液に被験化合物を加え、一定時間後のビタミンB6残存量を測定する。
(b)正常ラットに被験化合物を投与し、一定期間後のビタミンB6欠乏症発症の有無を確認する。
本発明が対象とするAGEs生成抑制剤は、少なくともAGEs生成抑制作用を有するものであればよく、その有効成分の一例として、遊離形または塩形の1−置換または非置換−3−置換または非置換−2−ピラゾリン−5−オン化合物の4位に、ビタミンB6分子の結合を妨げる置換基(ビタミンB6分子自体に由来するものを含む)を導入した構造を有する化合物または当該化合物の転位体を挙げることができる。これらの化合物は、in vivo、ex vivoまたは/およびin vitroに拘わらず、AGEsの生成を結果的に抑制することができる。かかる化合物として、具体的には、下記一般式(1)および(2)で示されるエダラボン(3-methyl-1-phenyl-2-pyrazolin-5-one)およびその類縁体を挙げることができる。また、本発明が対象とするAGEs生成抑制剤の有効成分には、一般式(I)で示されるフェニレン誘導体;および一般式(II)で示されるフェニレン誘導体が含まれる。
(2-1)エダラボンおよびその類縁体
遊離形または塩形の式(1):
Figure 0005738346
または式(2):
Figure 0005738346
[式中、Raは置換または非置換の芳香環基であり、Rb、RcおよびRdはそれぞれ水素原子または1価の有機基であるか、またはRbとRcは両者合して縮合環を形成するか、もしくはRcとRdは両者合して2価の有機基を表す。]
で示される化合物。
式(1)または(2)において、Raは、水素原子または置換または非置換の芳香環(異項環を含む。)基を表わす。「芳香環基」には、20個を越えることのない環構成原子数(そのなかに酸素、硫黄、窒素などのヘテロ原子が存在してもよいが、それらの数が4個を越えることはない)を有するものが包含され、特に環構成炭素原子数6〜10個を有するアリール(たとえばフェニル、ナフチル)が好ましい。
置換基としては、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルコキシ、低級アルケニルオキシ、低級アルカノイル、ハロ(低級)アルキル、カルボキシル、低級アルコキシカルボニル、カルボキシ(低級)アルキル、ハロ(たとえば塩素、臭素、ヨウ素、フッ素)、ニトロ、アミノ、低級アルキルアミノ、ジ(低級)アルキルアミノ、低級アルカノイルアミノ、ヒドロキシ、チオール、ヒドロキシスルホニル、アミノスルホニル、アリール(低級)アルカノイル、アリールオキシアミノ、アリール、アリール(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルケニル、シクロ(低級)アルキル(低級)アルキル、3〜7員ヘテロ環(たとえばオキサジアゾリル、チアジアゾリル)などの中から1種またはそれ以上が選択されてよい。置換基の数に制限はないが、通常、3個を越えることはない。
Raで表される置換または非置換の芳香環基の具体例を挙げると、次のとおりである:フェニル、ナフチル、o−,m−またはp−低級アルキルフェニル(たとえばo−メチルフェニル、p−メチルフェニル、p−エチルフェニル)、o−,m−またはp−低級アルコキシフェニル(たとえばo−,m−またはp−メトキシフェニル、o−,m−またはp−エトキシフェニル)、o−,m−またはp−アミノフェニル、o−,m−またはp−ニトロフェニル、o−,m−またはp−ハロフェニル(たとえばo−,m−またはp−クロロフェニル、o−,m−またはp−フルオロフェニル)、o−,m−またはp−ハロ(低級)アルキルフェニル(たとえばo−,m−またはp−トリフルオロメチルフェニル)、o−,m−またはp−スルファモイルフェニル、o−,m−またはp−カルボキシフェニル、o−,m−またはp−低級アルコキシカルボニルフェニル(たとえばo−,m−またはp−メトキシカルボニルフェニル、o−,m−またはp−エトキシカルボニルフェニル、o−,m−またはp−イソプロポキシカルボニルフェニル)、o−,m−またはp−低級アルカノイルフェニル(たとえばo−,m−またはp−アセチルフェニル)、ジ(低級)アルキルフェニル(たとえば3,4−ジメチルフェニル)、ジヒドロキシフェニル(たとえば2,4−ジヒドロキシフェニル)、2−アミノ−4−カルボキシフェニル、3−アミノ−5−カルボキシフェニル、3−低級アルコキシ−4−ヒドロキシフェニル(たとえば3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)、3−カルボキシ−4−ハロフェニル(たとえば3−カルボキシ−4−クロロフェニル)など。
Rb、RcおよびRdは、それぞれ独立して、水素原子または1価の有機基を表わす。「1価の有機基」には、置換または非置換の炭化水素基、ハロ基、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基、チオール基、カルボキシ基、カルボキシ(低級)アルキル基、低級アルコキシカルボニル基、ホルミル基、低級アルカノイル基、低級アルキルアミノ基、ジ(低級)アルキルアミノ基、低級アルカノイルアミノ基、アリール(低級)アルカノイル基、アリールオキシアミノ基、スルホン酸基、3〜7員ヘテロ環基などが包含される。「炭化水素基」には、炭素数30個を越えない(好ましくは8個を越えない)鎖状または環状の、脂肪族、脂環式または芳香族炭化水素基が包含され、具体的にはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基などが例示される。「3〜7員ヘテロ環基」は、環構成原子として3個を越えないヘテロ原子を含むものであり、たとえばピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ、チアモルホリノなどが挙げられる。置換基の種類と数は、Raについて説明したのと同様である。
また、RbとRcは、両者合して縮合環を形成することができる。当該縮合環は、5または6員飽和炭素環(すなわち、Rb+Rc=トリメチレンまたはテトラメチレン)が好ましく、置換基が存在していてもよい。なおまた、RcとRdは、両者合して2価の有機基を表わすことができる。当該2価の有機基としては、たとえばメチレンタイプのものとスピロタイプのものを挙げることができる。メチレンタイプのものとしては、フェニルメチレン、フェニルアルケニルメチレン、キノリニルメチレン、フラニルメチレン、ジアゾリルメチレン、アミノメチレン、ジ(低級)アルキルアミノメチレン、ピリジルメチレン、チオフェニルメチレンなどが例示され、それらは、適宜、置換基を有していてもよい。これら縮合環や2価の有機基に存在しうる置換基の種類と数は、Raの場合と同様であってよい。
なお、上記において、アルキル、アルコキシ、アルカノイルなどの語に関連して使用された「低級」なる言葉は、通常、炭素数8個まで、好ましくは炭素数5個までの基を指称するものとして使用される。
本発明の化合物(1)または(2)の具体例を挙げれば、次のとおりである:
1. 2−(3−アミノ−5−オキソ−1−フェニル−4,5−ヒドロ−1H−ピラゾール−4−イル)−2−オキソ−N−フェニル−アセトアミド;
2. 2−(3−アミノ5−オキソ−1−フェニル−4,5−ヒドロ−1H−ピラゾール−4−イル)−2−オキソ−N−チアゾール−2−イル−アセトアミド;
3. 2−(3−アミノ−5−オキソ−1−フェニル−4,5−ヒドロ−1H−ピラゾール−4−イル)−2−オキソ−アセトアミド;
4. 2−(3−アミノ−5−オキソ−1−フェニル−4,5−ヒドロ−1H−ピラゾール−4−イル)−N−(3,4−ジメチル−フェニル)−4−オキソ−ブチルアミド;
5. 2−(4−アミノ−フェニル)−4−(2−ヒドロキシ−エチル)−5−メチル−2,4−ヒドロ−ピラゾール−3−オン;
6. 5−アミノ−2−フェニル−4−(1−フェニル−1H−テトラゾール−5−イルスルファニル)−2,4−ジヒドロ−ピラゾール−3−オン;
7. 3−(3−メチル−5−オキソ−1−ペニル−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−4−イル)−プロピオン酸;
8. N−(3−メチル−5−オキソ−1−フェニル−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−4−イル)−アセトアミド;
9. 4−[(5−ヒドロキシ−3−メチル−1−フェニル−1Hピラゾール−4−イル)−フェニル−メチル]−5−メチル−2−フェニル−2,4−ジヒドロ−ピラゾール−3−オン;
10. 2−フェニル−3a,4,5,6−テトラヒドロ−2H−シクロペンタピラゾール−3−オン;
11. 4−メチル−N−(3−メチル−5−オキソ−1−フェニル−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−4−イル)−ベンゼンスルホンアミド;
12. N−(3−メチル−5−オキソ−1−フェニル−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−4−イル)−アセトアミド;
13. 5−メチル−2−(3−ニトロ−フェニル)−4−(1−フェニル−1H−テトラゾール−5−イルスルファニル)−2,4−ジヒドロ−ピラゾール−3−オン;
14. N−[5−オキソ−1−フェニル−4−(1−フェニル−1H−テトラゾール−5−イルスルファニル)−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−3−イル]−ベンズアミド;
15. 4−(ヒドロキシ−フェニル−メチル)−2−フェニル−5−トリフルオロメチル−2,4−ジヒドロ−ピラゾール−3−オン;
16. 4−(1−ヒドロキシイミノ−エチル)−2,5−ジフェニル−2,4−ジヒドロ−ピラゾール−3−オン;
17. 5,5’−ジメチル−2,2’−ジフェニル−2,4,2’,4’−テトラヒドロ−[4,4’]ビピラゾール−3,3’−ジオン;
18. 2−(4−クロロ−フェニル)−4−エチル−5−メチル−2,4−ジヒドロ−ピラゾール−3−オン;
19. 4−[4−(4−メトキシ−フェニル)−チアゾール−2−イルスルファニル]−5−メチル−5−フェニル−2,4−ジヒドロ−ピラゾール−3−オン;
20. 4−(2−オキソ−2−フェニル−エチル)−2−フェニル−5−プロピル−2,4−ジヒドロ−ピラゾール−3−オン;
21. 5−メチル−2−フェニル−4−(4−p−トルイル−チアゾール−2−イルスルファニル)−2,4−ジヒドロ−ピラゾール−3−オン;
22. 2−(4−フルオロ−フェニル)−4−[[1−(4−フルオロ−フェニル)−5−ヒドロキシ−3−メチル−1H−ピラゾール−4−イル]−(2−ヒドロキシ−フェニル)−メチル]−5−メチル−2,4−ジヒドロ−ピラゾール−3−オン;
23. N−(3,4−ジメチル−フェニル)−2−(3−メチル−5−オキソ−1−フェニル−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−4−イル)−2−オキソ−アセトアミド;
24. 5−(4−クロロ−ベンゾイル)−4,4−ジヒドロキシ−2−フェニル−2,4−ジヒドロ−ピラゾール−3−オン;
25. ソジウム;4−ヒドロキシ−3−メチル−5−オキソ−1−フェニル−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−4−スルホン酸ナトリウム;
26. 5−メチル−4,4−ジ−モルホリン−4−イル−2−フェニル−2,4−ジヒドロ−ピラゾール−3−オン;
27. 3−ベンゾイルアミノ−4−ヒドロキシ−5−オキソ−1−フェニル−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−4−スルホン酸ナトリウム;
28. 3−メチル−1−フェニル−5−オキソ−4−スピロ(3オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール;
29. 4,4,5−トリメチル−2−フェニル−2,4−ジヒドロ−ピラゾール−3−オン;
30. 4,10−ジメチル−2,8,11−トリフェニル−2,3,8,9−テトラザ−ジスピロ[4.0.4.1]ウンデカ−3,9−ジエン−1,7−ジオン;
31. 2−(2−クロロ−フェニル)−4−(3−エトキシ−4−ヒドロキシ−ベンジリデン)−5−メチル−2,4−ジヒドロ−ピラゾール−3−オン;
32. 2−(2−クロロ−フェニル)−4−(4−ジメチルアミノ−ベンジリデン)−5−メチル−2,4−ジヒドロ−ピラゾール−3−オン;
33. 5−メチル−4−(3−フェニル−アリリデン)−2−(3−トリフルオロメチル−フェニル)−2,4−ジヒドロ−ピラゾール−3−オン;
34. 3−{5−[3−メチル−5−オキソ−1−(4−スルファモイル−フェニル)−1,5−ジヒドロ−ピラゾール−4−イリデンメチル]−フラン−2−イル}−安息香酸;
35. 4−(4−ヂメチルアミノ−ベンジリデン)−2−(3−フルオロ−フェニル)−5−メチル−2,4−ジヒドロ−ピラゾール−3−オン;
36. 3−{4−[4−(3−クロロ−4,5−ジヒドロ−ピラゾール−1−イル)−ベンジリデン]−3−メチル−5−オキソ−4,5−ジヒドロ−ピラゾール−1−イル}−安息香酸;
37. 3−[4−(2−ヒドロキシ−ベンジリデン)−5−オキソ−3−フェニル−4,5−ジヒドロ−ピラゾール−1−イル]−安息香酸;
38. 3−[1−(3−クロロ−フェニル)−3−メチル−5−オキソ−1,5−ジヒドロ−ピラゾール−4−イリデンメチル]−1H−キノリン−2−オン;
39. 3−{5−[3−メチル−5−オキソ−1−(4−スルファモイル−フェニル)−1,5−ジヒドロ−ピラゾール−4−イリデンメチル]−フラン−2−イル}−安息香酸メチル;
40. 4−(4−ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イルメチレン−3−メチル−5−オキソ−4,5−ジヒドロ−ピラゾール−1−イル)−安息香酸メチル;
41. 4−{3−メチル−5−オキソ−4−[5−(4−スルファモイル−フェニル)−フラン−2−イルメチレン]−4,5−ジヒドロ−ピラゾール−1−イル}−安息香酸メチル;
42. 2−(4−クロロ−フェニル)−4−(2,4−ジヒドロキシ−ベンジリデン)−5−メチル−2,4−ジヒドロ−ピラゾール−3−オン;
43. 2−(4−クロロ−フェニル)−4−(3−ヒドロキシ−ベンジリデン)−5−メチル−2,4−ジヒドロピラゾール−3−オン;
44. 4−(3,4−ジヒドロキシ−ベンジリデン)−5−メチル−2−p−トルイル−2,4−ジヒドロ−ピラゾール−3−オン;
45. 3−[1−(4−アセチル−フェニル)−3−メチル−5−オキソ−1,5−ジヒドロ−ピラゾール−4−イリデン]−1,3−ジヒドロ−インドール−2−オン;
46. 2−(4−フルオロ−フェニル)−4−(5−ヒドロキシ−3−メチル−1−o−トルイル−1H−ピラゾール−4−イルメチレン)−5−メチル−2,4−ジヒドロ−ピラゾール−3−オン;
47. 2−(4−クロロ−フェニル)−4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシ−ベンジリデン)−5−トリフルオロメチル−2,4−ジヒドロ−ピラゾール−3−オン;
48. 2−(4−エチル−フェニル)−4−(4−ヒドロキシ−ベンジリデン)−5−メチル−2,4−ジヒドロ−ピラゾール−3−オン;
49. 4−[4−(4−ヒドロキシ−ベンジリデン)−3−メチル−5−オキソ−4,5−ジヒドロ−ピラゾール−1−イル]−ベンゼンスルホンアミド;
50. 4−(5−オキソ−4−チオフェン−2−イルメチレン−3−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロ−ピラゾール−1−イル)−安息香酸エチル;
51. 4−[4−(4−ジメチルアミノ−ベンジリデン)−5−オキソ−3−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロ−ピラゾール−1−イル]−ベンゼンスルホンアミド;
52. 4−イソプロピリデン−5−メチル−2−フェニル−2,4−ジヒドロ−ピラゾール−3−オン;
53. 4−(4−ヒドロキシ−ベンジリデン)−2−フェニル−5−トリフルオロメチル−2,4−ジヒドロ−ピラゾール−3−オン;
54. 4−(2,4−ジヒドロキシ−ベンジリデン)−2−(3,4−ジメチル−フェニル)−5−メチル−2,4−ジヒドロ−ピラゾール−3−オン;
55. 3−[4−(3−エトキシ−4−ヒドロキシ−ベンジリデン)−3−メチル−5−オキソ−4,5−ジヒドロ−ピラゾール−1−イル]−安息香酸;
56. 4−[4−(3,5−ジ− tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジリデン)−3−メチル−5−オキソ−4,5−ジヒドロ−ピラゾール−1−イル]−安息香酸;
57. 3−[3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシ−ベンジリデン)−3−メチル−5−オキソ−4,5−ジヒドロ−ピラゾール−1−イル]−安息香酸;
58. 3−[3−ヒドロキシ−4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシ−ベンジリデン)−5−オキソ−ピラゾリジン−1−イル]−安息香酸;
59. 4−(3−ヒドロキシ−2,4−ジメトキシ−ベンジリデン)−5−メチル−2−フェニル−2,4−ジヒドロ−ピラゾール−3−オン;
60. 4−[4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシ−ベンジリデン)−3−メチル−5−オキソ−ピラゾリジン−1−イル]−安息香酸イソプロピル;
61. 2−クロロ−5−[4−(2−クロロ−4−ヒドロキシ−5−メトキシ−ベンジリデン)−3−メチル−5−オキソ−4,5−ジヒドロ−ピラゾール−1−イル]−安息香酸;
62. 4−[4−(4−ヒドロキシ−ベンジリデン)−3−メチル−5−オキソ−4,5−ジヒドロ−ピラゾール−1−イル]−安息香酸エチル;
63. 4−[4−(4−ヒドロキシ−ベンジリデン)−5−オキソ−3−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロ−ピラゾール−1−イル]−安息香酸エチル;
64. 4−[4−(4−ヒドロキシ−ベンジリデン)−3−メチル−5−オキソ−4,5−ジヒドロ−ピラゾール−1−イル]−安息香酸;
65. 4−ジメチルアミノメチレン−5−メチル−2−フェニル−2,4−ジヒトロ−ピラゾール−3−オン;
66. 4−(5−ヒドロキシ−3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾール−4−イルメチレン)−5−メチル−2−フェニル−2,4−ジヒドロ−ピラゾール−3−オン;
67. 4−(4−クロロ−ベンジリデン)−5−メチル−2−フェニル−2,4−ジヒドロ−ピラゾール−3−オン;
68. 1−(5−ヒドロキシ−3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾール−4−イル)−6−メチル−1,3−ジヒドロ−フロ[3,4−c]ピリジン−7−オール;
69. 1−(5−ヒドロキシ−3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾール−4−イル)−6−メチル−1,3−ジヒドロ−フロ[3,4−c]ピリジン−7−オール(塩酸塩);
70. 4−(4−ヒドロキシ−ベンジリデン)−5−メチル−2−フェニル−2,4−ジヒドロ−ピラゾール−3−オン;
71. 2−(3−クロロ−フェニル)−4−(4−ヒドロキシ−ベンジリデン)−5−メチル−2,4−ジヒドロピラゾール−3−オン;
72. 4−(4−ベンジルオキシ−ベンジリデン)−5−メチル−2−フェニル−2,4−ジヒドロピラゾール−3−オン;
73. 2−(3−クロロ−フェニル)−5−メチル−2H−ピラゾール−3,4−ジオン 4−オキシム;
74. 5−(5−オキソ−1,3−ジフェニル−1,5−ジヒドロ−ピラゾール−4−イリデン)−4−フェニル−4,5−ジヒドロ−[1,3,4]チアゾール−2−カルボン酸エチル;
75. 4−[1,3]ジチオラン−2−イリデン−5−メチル−2−フェニル−2,4−ジヒドロ−ピラゾール−3−オン;
76. 5−(4−クロロ−フェニルスルファニルメチル)−2−フェニル−4−[N’−(3−トリフルオロメチル−フェニル)−ヒドラジノ]−2,4−ジヒドロ−ピラゾール−3−オン;
77. 4−(5−ベンゾイル−3−フェニル−3H−[1,3,4]チアジアゾール−2−イリデン)−2,5−ジフェニル−2,4−ジヒドロ−ピラゾール−3−オン;
78. フォスフォリックアシッド モノ−[5−ヒドロキシ−6−メチル−4−(3−メチル−5−オキソ−1−フェニル−1,5−ジヒドロ−ピラゾール−4−イリデンメチル)−ピリジン−3−イルメチル]エステル;
79.3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン。
なおこれらの化合物(1)または(2)は、遊離形または塩形で用いてもよい。塩形としては、通常、薬剤学的に許容されているもの、たとえば無機塩基や有機塩基との塩、無機酸、有機酸、塩基性または酸性アミノ酸などの酸付加塩などが挙げられる。無機塩基との塩としては、たとえばアルカリ金属(ナトリウム、カリウムなど)塩、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウムなど)塩、アルミニウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。有機塩基との塩としては、たとえば第1級アミン(エタノールアミンなど)、第2級アミン(ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミンなど)、第3級アミン(トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、トリエタノールアミンなど)との塩が挙げられる。無機酸との塩としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸などとの塩が例示され、有機酸との塩としては、ギ酸、酢酸、乳酸、トリフルオロ酢酸、フマール酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、安息香酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などとの塩が例示される。さらに、塩基性アミノ酸との塩としては、アルギニン、リジン、オルニチンなどとの塩が例示され、酸性アミノ酸との塩としては、アスパラギン酸、グルタミン酸などとの塩が例示される。
これらの化合物(1)および(2)ならびにその薬理上許容される塩及びその薬理上許容されるエステルは、例えば、国際公開公報WO2005/054205パンフレットに記載される方法に従って公知化合物を出発原料として用いて製造することができる。なお、当該公開公報に記載されるこれらの化合物の製造方法は、そのまま本明細書の内容として援用される。
(2-2)フェニレン誘導体(I)
一般式(I)
Figure 0005738346
[式中、Aは下記一般式(A1)、(A2)又は(A3)
Figure 0005738346
で表される基を示し、Bは1H−テトラゾール−5−イル基又は2,4−ジオキソチアゾリジン−5−イル基を示し、Xはメチレン、酸素原子又は硫黄原子を示し、Yは単結合又はC6-10アリーレン基を示し、R1Aは水素原子又はC1-6アルキル基を示し、R2A及びR3Aは同一若しくは異なって水素原子、カルボキシル基又はC1-6アルキル基を示し、R4A、R5A及びR6Aは同一若しくは異なって水素原子又はC1-6アルキル基を示し、R7AはC1-10アルキルカルボニル基を示す。但し、Aが(A2)である場合、Bは2,4−ジオキソチアゾリジン−5−イル基を示す。]で表される化合物。
ここで「C1-6アルキル基」とは、炭素原子を1個乃至6個有する直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基であり、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、へキシル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピルを挙げることができる。R1Aにおいては、好適にはプロピル基である。R2A及びR3Aにおいては、好適にはC1-3アルキル基である。R4Aにおいては、好適にはC1-3アルキル基であり、更に好適にはエチル基又はプロピル基である。R5A及びR6Aにおいては、好適にはC1-3アルキル基であり、更に好適にはメチル基である。
「C6-10アリーレン基」とは、炭素数6乃至10個の2価の芳香族炭化水素基であり、例えば、フェニレン、インデニレン、ナフチレン基を挙げることができ、Yにおいて好適にはフェニレン基である。
「C1-10アルキルカルボニル基」とは、炭素原子を1個乃至10個有する直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基がカルボニル基に結合した基であり、例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、ペンタノイル、ピバロイル、バレリル、イソバレリル、オクタノイル、ノナノイル、デカノイル、3−メチルノナノイル、8−メチノレノナノイル、3−エチルオクタノイル、3,7−ジメチルオクタノイル及びウンデカノイルのようなアルキルカルボニル基を挙げることができ、R7Aにおいては、好適にはC4-7アルキルカルボニル基であり、更に好適にはオクタノイル基である。
本発明において、Aとしては、好適には(A1)又は(A3)で表される基であり、更に好適には(A3)で表される基である。
本発明において、Bとしては、好適には1H−テトラゾール−5−イル基である。
本発明において、Xとしては、好適にはメチレン又は酸素原子であり、更に好適にはメチレンである。
本発明において、Yとしては、好適には単結合又はフェニレンであり、更に好適にはフェニレンである。
本発明において、R1Aとしては、好適にはプロピル基又は水素原子であり、更に好適にはプロピル基である。
本発明において、R2A及びR3Aとしては、同一又は異なって、好適には、水素原子、カルボキシル基又はその薬理上許容されるエステルである。
本発明において、R4Aとしては、好適には、エチル基又はプロピル基である。
本発明において、R4A及びR6Aとしては、好適には、メチル基又は水素原子である。
本発明において、R7Aとしては、好適にはC4〜7アルキルカルボニル基であり、更に好適にはオクタノイル基である。
本発明のフェニレン誘導体(I)が塩基性基を有する場合には、常法に従って酸付加塩にすることができる。そのような塩としては、例えばフッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、沃化水素酸のようなハロゲン化水素酸の塩;硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、燐酸塩のような無機酸塩;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、エタンスルホン酸のような低級アルカンスルホン酸の塩;ベンゼンスルホン酸、P−トルエンスルホン酸のようなアリールスルホン酸の塩;グルタミン酸、アスパラギン酸のようなアミノ酸の塩;酢酸、フマール酸、酒石酸、蓚酸、マレイン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、マンデル酸、アスコルビン酸、乳酸、グルコン酸、クエン酸のようなカルボン酸の塩を挙げることができる。好適にはハロゲン化水素酸の塩である。
更に、上記フェニレン誘導体(I)がカルボキシル基を有する場合には、常法に従って金属塩にすることができる。そのような塩としては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウムのようなアルカリ金属塩;カルシウム、バリウム、マグネシウムのようなアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩を挙げることができる。好適にはアルカリ金属塩である。
本発明のフェニレン誘導体(I)は、常法に従って薬理上許容されるエステルにすることができる。そのようなエステルとしては、医学的に使用され、薬理上受け入れられるものであれば特に限定はない。
本発明のフェニレン誘導体(I)のエステルのエステル残基としては、例えば炭素数1乃至6個を有する直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基(当該アルキル基は、トリアルキルシリル基により置換されていてもよい)、炭素数7乃至19個を有するアラルキル基、炭素数1乃至6個を有する直鎖状若しくは分枝鎖状のアルカノイルオキシが置換した炭素数1乃至5個を有する直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基、炭素数1乃至6個を有する直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキルオキシカルボニルオキシが置換した炭素数1乃至5個を有する直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基、炭素数5乃至7個を有するシクロアルキルカルボニルオキシが置換した炭素数1乃至5個を有する直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基、炭素数5乃至7個を有するシクロアルキルオキシカルボニルオキシが置換した炭素数1乃至5個を有する直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基、炭素数6乃至10個を有するアリールカルボニルオキシが置換した炭素数1乃至5個を有する直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基、炭素数6乃至10個を有するアリールオキシカルボニルオキシが置換した炭素数1乃至5個を有する直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基、5位に置換基として炭素数1乃至6個を有する直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキルを有する(2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)メチル基を挙げることができる。
ここで、炭素数1乃至6個を有する直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基としては、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、へキシル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル又は1,2,2−トリメチルプロピルを挙げることができ、好適には炭素数1乃至4個を有する直鎖状 若しくは分枝鎖状のアルキル基であり、更に好適にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル又はイソブチルであり、最適にはメチル又はエチルである。
炭素数7乃至19個を有するアラルキル基としては、例えばベンジル、フェネチル、3−フェニルプロピル、4−フェニルブチル、1−ナフチルメチル、2−ナフチルメチル又はジフェニルメチルを挙げることができ、好適にはベンジルである。
炭素数5乃至7個を有するシクロアルキル基としては、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルを挙げることができ、好適にはシクロヘキシルである。
炭素数6乃至10個を有するアリール基としては、例えばフェニル又はナフチルを挙げることができ、好適にはフェニルである。
好適なエステル残基の具体例としては、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ベンジル、アセトキシメチル、1−(アセトキシ)エチル、プロピオニルオキシメチル、1−(プロピオニルオキシ)エチル、ブチリルオキシメチル、1−(ブチリルオキシ)エチル、イソブチリルオキシメチル、1−(イソブチリルオキシ)エチル、バレリルオキシメチル、1−(バレリルオキシ)エチル、イソバレリルオキシメチル、1−(イソバレリルオキシ)エチル、ピバロイルオキシメチル、1−(ピバロイルオキシ)エチル、メトキシカルボニルオキシメチル、1−(メトキシカルボニルオキシ)エチル、エトキシカルボニルオキシメチル、1−(エトキシカルボニルオキシ)エチル、プロポキシカルボニルオキシメチル、1−(プロポキシカルボニルオキシ)エチル、イソプロポキシカルボニルオキシメチル、1−(イソプロポキシカノレボニルオキシ)エチル、ブトキシカルボニルオキシメチル、1−(ブトキシカルボニルオキシ)エチル、イソブトキシカルボニルオキシメチル、1−(イソブトキシカルボニルオキシ)エチル、t−ブトキシカルボニルオキシメチル、1−(t-ブトキシカルボニルオキシ)エチル、シクロペンタンカルボニルオキシメチル、1−(シクロペンタンカルボニルオキシ)エチル、シクロヘキサンカルボニルオキシメチル、1−(シクロヘキサンカルボニルオキシ)エチル、シクロペンチルオキシカルボニルオキシメチル、1−(シクロペンチルオキシカルボニルオキシ)エチル、シクロヘキシルオキシカルボニルオキシメチル、1−(シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ)エチル、ベンゾイルオキシメチル、1−(ベンゾイルオキシ)エチル、フェノキシカルボニルオキシメチル、1−(フェノキシカルボニルオキシ)エチル、(5-メチル-2-オキソ−1,3-ジオキソレン−4-イル)メチル、2−トリメチルシリルエチル又はフタリジルであり、更に好適には(5-メチル-2-オキソ−1,3-ジオキソレン−4-イル)メチル、ピバロイルオキシメチル又は1−(イソプロボキシカルボニルオキシ)エチルである。
なお、上記一般式(I)で表されるフェニレン誘導体、その塩又はエステルが溶媒和物(例えば水和物)を形成する場合には、これらの溶媒和物もすべて本発明に含まれる。
更に、生体内において代謝されて上記で表されるフェニレン誘導体(I)、その塩又はエステルに変換される化合物(例えばアミド誘導体のような、いわゆるプロドラッグ)もすべて本発明に含まれる。
本発明の上記一般式(1)で表されるフェニレン誘導体又はその薬理上許容される塩若しくはエステルの具体例としては、次に例示する化合物を挙げることができる。但し、本発明は下記の例示化合物に限定されるものではない。
なお、以下の表1〜3において、「Me」はメチル基を、「Et」はエチル基を、「Pr」はプロピル基を、「Bu」はブチル基を、「t-Bu」はt−ブチル基を、「Hex」はへキシル基を、「-Ph-」はフェニレン基を、「DMDO」は(5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソレン-4-イル)メチル基を、「PHT」はフタリジル基を、「Tez」は1H−テトラゾリル−5−イル基を、「Tzd」は2,4−ジオキソチアゾリジン−5−イル基を、「−」は単結合をそれぞれ示す。
Figure 0005738346
Figure 0005738346
Figure 0005738346
上記表中、好適な化合物(I)としては1-1、1-8、1-10、1-19、1-20、1-25、1-29、1-30、2-2、2-3、2-12、2-18、3-3-、3-4、3-5、3-6、3-7、3-8、3-9、3-10、3-13、3-25、3-29、3-30が挙げられ、更に好適には1-1、2-2、3-7、3-6、3-3、3-9、3-13、3-25または3-30が挙げられる。
これらのフェニレン誘導体(I)、ならびにその薬理上許容される塩及びその薬理上許容されるエステルは、例えば、国際公開公報WO2005/030737パンフレットに記載される方法に従って公知化合物を出発原料として用いて製造することができる。なお、当該公開公報に記載されるフェニレン誘導体(I)の製造方法は、そのまま本明細書の内容として援用される。
(2-3)フェニレン誘導体(II)
一般式(II)
Figure 0005738346
[式中、Aは、下記一般式(A4)、(A5)、(A6)または(A7)
Figure 0005738346
で表される基を示し、
Bは、1H−テトラゾール−5−イル基または2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル基を示し;
Xは、単結合またはC6-10アリーレン基を示し;
Y1は、カルボニル、スルホニルまたは単結合を示し;
Y2は、C1-6アルキレン基または単結合を示し;
Y3は、メチレン、カルボニルまたは単結合を示し;
Y4は、メチンまたは窒素原子を示し;
Y5は、メチレン、カルボニルまたは単結合を示し;
は、
C1-8アルキル基(該C1-8アルキル基は、下記置換基群αから選択される基で1乃至3個置換されていても良い)、
C6-14アリール基(該C6-14アリール基は、下記置換基群βから選択される基で1乃至5個置換されていても良い)、
C6-14アリール−C1-6アルキル基(該C6-14アリール−C1-6アルキル基は、下記置換基群βから選択される基で1乃至5個置換されていても良い)、
窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択される同一若しくは異なった1乃至3個のヘテロ原子を含む4乃至10員複素環基(該複素環基は、下記置換基群βから選択される基で1乃至5個置換されていても良い)、
窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択される同一若しくは異なった1乃至3個のヘテロ原子を含む4乃至10員複素環−C1-6アルキル基(該複素環−C1-6アルキル基は、下記置換基群βから選択される基で1乃至5個置換されていても良い)、
C3-7シクロアルキル基(該C3-7シクロアルキル基は、下記置換基群βから選択される基で1乃至5個置換されていても良い)、
C3-7シクロアルキル−C1-6アルキル基(該C3-7シクロアルキル−C1-6アルキル基は、下記置換基群βから選択される基で1乃至5個置換されていても良い)、
C6-14アリール−カルボニル−C1-6アルキル基(該C6-14アリール−カルボニル−Cl-6アルキル基は、下記置換基群βから選択される基で1乃至5個置換されていても良い)または
C1-6脂肪族アシル基(該C1-6脂肪族アシル基は、下記置換基群βから選択される基で1乃至5個置換されても良い)を示し;
は、水素原子、下記置換基群βから選択される基、カルボキシル基または−C(O)NR1314で表される基を示し;
は、
水素原子、
C1-8アルキル基(該C1-8アルキル基は、下記置換基群αから選択される基で1乃至3個置換されていても良い)、
C6-14アリール基(該C6-14アリール基は、下記置換基群βから選択される基で1乃至5個置換されていても良い)、または
窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択される同一若しくは異なった1乃至3個のヘテロ原子を含む4乃至10員複素環基(該複素環基は、下記置換基群βから選択される基で1乃至5個置換されていても良い)を示し;
およびRは、同一または異なって、それぞれ水素原子またはC6-14アリール基(該C6-14アリール基は、下記置換基群βから選択される基で1乃至5個置換されていても良い)を示し;
およびRは、一緒になってC3-7シクロアルカンを形成するか、或いは同一または異なってそれぞれ水素原子またはC1-8アルキル基(該C1-8アルキル基は、下記置換基群αから選択される基で1乃至3個置換されていても良い)を示し;
およびRは、同一または異なってそれぞれ水素原子、下記置換基群βから選択される基、カルボキシル基または−C(O)NR1314で表される基を示し;
10は、
−水素原子、
−C1-8アルキル基(該C1-8アルキル基は、下記置換基群αから選択される基で1乃至3個置換されていても良い)、
−C6-14アリール基(該C6-14アリール基は、下記置換基群βから選択される基で1乃至5個置換されていても良い)、または
−窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択される同一若しくは異なった1乃至3個のヘテロ原子を含む4乃至10員複素環基(該複素環基は、下記置換基群βから選択される基で1乃至5個置換されていても良い)を示し;
11およびR12は、同一または異なってそれぞれ水素原子、下記置換基群βから選択される基、カルボキシル基または−C(O)NR1314で表される基を示し;
13およびR14は、一緒になって4乃至10員含窒素複素環(該含窒素複素環は、下記置換基群βから選択される基で1乃至5個置換されていても良い)を形成するか、或いは同一または異なってそれぞれ水素原子またはC1-8アルキル基(該C1-8アルキル基は、下記置換基群αから選択される基で1乃至3個置換されていても良い)を示す。
但し、
(1)RがC1-8アルキル基であり、かつY1が単結合である場合、Bは2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル基であり、
(2)Y2がメチレンである場合、RおよびRは共に水素原子ではなく、
(3)Rが無置換のC1-8アルキル基である場合、Y1はカルボニルではなく、
(4)Rが無置換のC1-6脂肪族アシル基である場合、Y1は単結合ではない。
(置換基群α)
ハロゲン原子、C1-6アルキルチオ基、C1-6脂肪族アシル基、C1-6アルキルスルホニル基、C1-6アルコキシ基、シアノ基およびニトロ基。
(置換基群β)
ハロゲン原子、C1-6アルキル基、ハロC1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルキルチオ基、C1-6アルキルスルホニル基、C1-6脂肪族アシル基、オキソ基、シアノ基、ニトロ基、C3-7シクロアルキル基、C6-14アリール基、C1-6アルコキシイミノ基、C6-14アリール−カルボール基、および窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択される同一若しくは異なった1乃至3個のへテロ原子を含む4乃至10員複素環基。〕
で表される化合物。
上記一般式(II)で表されるフェニレン誘導体において、「C6-10アリーレン基」とは、炭素原子を6乃至10個有する2価の芳香族炭化水素基であり、例えば、1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、1,2−ナフチレン、1,3−ナフチレン、1,4−ナフチレン、1,5−ナフチレン、1,6−ナフチレン、1,7−ナフチレン、1,8−ナフチレン、2,3−ナフチレン、2,4−ナフチレン等が挙げられる。
Xにおいては、好適にはフェニレンである。
フェニレン誘導体(II)において「C1-6アルキレン基」とは、炭素原子数1個乃至6個の直鎖状または分枝鎖状のアルキレン基であり、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、1−エチル−1,2−エチレン、1−プロピル−1,2−エチレン、1−イソプロピル−1,2−エチレン、1−ブチル−1,2−エチレン、1,2−ジメチル−1,2−エチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン等が挙げられる。
Y2においては、好適にはC1-3アルキレン基であり、より好適にはメチレン、エチレンである。
フェニレン誘導体(II)において、「C1-8アルキル基」とは、炭素原子数1個乃至8個の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基であり、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、ヘキシル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、ヘプチル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、n−ヘプチル、イソヘプチル、sec−ヘプチル、tert−ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、tert−オクチル、2−メチルヘキシル、2−エチルヘキシル等が挙げられる。
においては、
(1)Y1がスルホニル基の場合、好適にはC1-6アルキル基であり、より好適にはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルであり、さらに好適にはメチル、ブチルである。
(2)Y1が単結合またはカルボニル基の場合、好適にはC4-8アルキル基であり、より好適にはブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルであり、さらに好適にはペンチルである。
においては、好適にはC1-5アルキル基であり、より好適にはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルである。
およびRにおいては、好適にはC1-3アルキル基であり、より好適にはメチル、エチル、プロピルである。
10においては、好適にはC1-4アルキル基であり、より好適にはメチル、エチル、プロピル、ブチルである。
13およびR14においては、好適にはC1-3アルキル基であり、より好適にはメチル、エチルである。
フェニレン誘導体(II)において「C1-6アルキル基」とは、炭素原子数1個乃至6個の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基であり、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、ヘキシル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル等が挙げられる。
置換基βにおいては、好適にはC1-3アルキル基であり、より好適にはメチル、エチルである。
フェニレン誘導体(II)において「C6-14アリール基」とは、炭素原子数6個乃至14個の芳香族炭化水素基であり、例えば、フェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、アセナフチレニル等が挙げられる。
においては、好適にはC6-10アリール基であり、より好適にはフェニル、ナフチルである。
においては、好適にはC6-10アリール基であり、より好適にはフェニル、ナフチルである。
およびRにおいては、好適にはC6-10アリール基であり、より好適にはフェニルである。
10においては、好適にはC6-10アリール基であり、より好適にはフェニルである。
置換基βにおいては、好適にはC6-10アリール基であり、より好適にはフェニルである。
フェニレン誘導体(II)において、「C6-14アリール−C1-6アルキル基」とは、上記の「C6-14アリール基」が上記の「C1-6アルキル基」に結合した基であり、例えば、ベンジル、1−フェネチル、2−フェネチル、3−フェニルプロピル、4−フェニルブチル、5−フェニルペンチル、5−フェニルヘキシル、1−ナフチルメチル、2−ナフチルエチル、アントリルメチル、フェナントリルメチル、アセナフチレニルメチル等が挙げられる。
においては、好適にはC6-10アリール−C1-3アルキル基であり、より好適にはベンジル、1−フェネチル、2−フェネチル、3−フェニルプロピル、1−ナフチルメチル、2−ナフチルメチル、2−(1−ナフチル)エチル、2−(2−ナフチルエチル)である。
フェニレン誘導体(II)において「窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択される同一若しくは異なった1乃至3個のヘテロ原子を含む4乃至10員複素環基」としては、例えば、ピロリル、フリル、チエニル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラニル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、アゼピニル、アゾシニル等の不飽和複素環基;アゼチジニル、ピロリジニル、ピロリニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピペリジル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリール、パーヒドロアゼビニル、パーヒドロアゾシール、1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニル、1,2,3,6−テトラヒドロピリジル等の、上記不飽和複素環基が部分的にもし<は完全に還元された基でもよい。また、インドリル、インドリニル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、ベンズイミダゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンズイソキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンズイソチアゾリル、キノリル、イソキノリル、キナゾリニル、キノキサリニル、ベンズオキサジアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ピロロピロリル、ピロロオキサゾリル、ピロロチアゾリル、ピロロピリジル、フロピロリル、フロピリジル、チエノピロリル、チエノピリジル、イミダゾピロリル、イミダゾイミダゾリル、イミダゾオキサゾリル、イミダゾイソキサゾリル、イミダゾチアゾリル、イミダゾイソチアゾリル、イミダゾピリジル、イミダゾピリダジニル、イミダゾピリミジニル、イミダゾピラジニル、オキサゾオキサゾリル、オキサゾイソキサゾリル、オキサゾチアゾリル、オキサゾイソチアゾリル、オキサゾピリジル、チアゾオキサゾリル、チアゾイソキサゾリル、チアゾチアゾリル、チアゾイソチアゾリル、チアゾピリジル等の、上記不飽和複素環同士が縮合した基またはベンゼン環と上記不飽和複素環とが縮合した基でもよい。
においては、好適には窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択される同一若しくは異なった1または2個のヘテロ原子を含む5または6員複素環基(該複素環はベンゼン環と縮合していても良い)であり、より好適にはピリジル、オキサゾリル、チアゾリル、キノリルである。
においては、好適には窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択される同一若しくは異なった1または2個のへテロ原子を含む5または6員複素環基 (該複素環はベンゼン環と縮合していても良い)であり、より好適にはピリジル、キノリルである。
10においては、好適には窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択される同一若しくは異なった1または2個のヘテロ原子を含む5または6員複素環基(該複素環はベンゼン環と縮合していても良い)であり、より好適にはピリジル、キノリルである。
置換基βにおいては、好適には窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択される同一若しくは異なった1または2個のヘテロ原子を含む5または6員複素環基(該複素環はベンゼン環と縮合していても良い)であり、好適にはイミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、ピリジルである。当該複素環基は、上記「C1-6アルキル基」で1乃至3個置換されていても良い。
フェニレン誘導体(II)において「4乃至10員含窒素複素環」としては、上記の「窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択される同一若しくは異なった1乃至3個のヘテロ原子を含む4乃至10員複素環基」を構成する環のうち、少なくとも1つの窒素を含み、さらに窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択される同一若しくは異なった1または2個のヘテロ原子を含んでいてもよい環であり、例えば、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール等の不飽和複素環;アゼチジン、ピロリジン、ピロリン、イミダゾリジン、イミダゾリン、ピラゾリジン、ピラゾリン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、チオモルホリン、パーヒドロアゼピン、パーヒドロアゾシン、1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1,2,3,6−テトラヒドロピリジン等の、上記不飽和複素環が部分的にもしくは完全に還元された環でもよい。また、インドール、インドリン、ベンズイミダゾール、ピロロピロール、ピロロオキサゾール、ピロロチアゾール、ピロロピリジン、フロピロール、チエノピロール、イミダゾピロール、イミダゾイミダゾール、イミダゾオキサゾール、イミダゾイソキサゾール、イミダゾチアゾール、イミダゾイソチアゾール、イミダゾピリジン、イミダゾピリダジン、イミダゾピリミジン、イミダゾピラジン等の、上記不飽和複素環同士が縮合した環またはベンゼン環と上記不飽和複素環環とが縮合した環でもよい。
13およびR14においては、好適にはイミダゾール、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、インドール環であり、より好適にはピロリジン、ピペリジン、モルホリン環である。
フェニレン誘導体(II)おいて「窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択される同一若しくは異なった1乃至3個のへテロ原子を含む4乃至10員複素環−C1-6アルキル基」とは、上記の「窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択される同一若しくは異なった1乃至3個のヘテロ原子を含む4乃至10員複素環基」が上記の「C1-6アルキル基」に結合した基であり、例えば、ピロリルメチル、フリルメチル、チエニルメチル、チエニルエチル、チエニルプロピル、ピラゾリルメチル、イミダゾリルメチル、オキサゾリルメチル、イソキサゾリルメチル、チアゾリルメチル、イソチアゾリルメチル、オキサジアゾリルメチル、チアジアゾリルメチル、トリアゾリルメチル、テトラゾリルメチル、ピラニルメチル、ピリジルメチル、ピリダジニルメチル、ピリミジニルメチル、ピラジニルメチル、アゼピニルメチル、アゾシニルメチル、アゼチジニルメチル、ピロリジニルメチル、ピロリニルメチル、イミダゾリジニルメチル、イミダゾリニルメチル、ピラゾリジニルメチル、ピラゾリニルメチル、ピペリジルメチル、ピペラジニルメチル、モルホリニルメチル、チオモルホリニルメチル、パーヒドロアゼピニルメチル、パーヒドロアゾシニルメチル、1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニルメチル、1,2,3,6−テトラヒドロピリジルメチル、インドリルメチル、インドリニルメチル、ベンゾフラニルメチル、ベンゾチエニルメチル、ベンズイミダゾリルメチル、ベンズイソオキサゾリルメチル、ベンズイソキサゾリルメチル、ベンゾチアゾリルメチル、ベンズイソチアゾリルメチル、キノリルメチル、イソキノリルメチル、キナゾリニルメチル、キノキサリニルメチル、ベンズオキサジアゾリ ルメチル、ベンゾチアジアゾリルメチル、ピロロピロリルメチル、ピロロオキサゾリルメチル、ピロロチアゾリルメチル、ピロロピリジルメチル、フロピロリルメチル、フロピリジルメチル、チエノピロリルメチル、チエノピリジルメチル、イミダゾピロリルメチル、イミダゾイミダゾリルメチル、イミダゾオキサゾリルメチル、イミダゾイソキサゾリルメチル、イミダゾチアゾリルメチル、イミダゾイソチアゾリルメチル、イミダゾピリジルメチル、イミダゾピリダジニルメチル、イミダゾピリミジニルメチル、イミダゾピラジニルメチル、オキサゾオキサゾリルメチル、オキサゾイソキサゾリルメチル、オキサゾチアゾリルメチル、オキサゾイソチアゾリルメチル、オキサゾピリジルメチル、チアゾオキサゾリルメチル、チアゾイソキサゾリルメチル、チアゾチアゾリルメチル、チアゾイソチアゾリルメチル、チアゾピリジルメチル等が挙げられる。
においては、好適には窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択される同一若しくは異なった1または2個のヘテロ原子を含む5または6員複素環−C1-3アルキル基(該複素環はベンゼン環と縮合していても良い)であり、より好適にはオキサゾリルメチル、チアゾリルメチル、ピリジルメチル、キノリルメチ ル、チエニルエチル、チエニルプロピルである。
フェニレン誘導体(II)において「C3-7シクロアルキル基」とは、炭素原子数3個または7個の環状アルキル基であり、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル等が挙げられる。
においては、好適にはC5-6シクロアルキル基であり、より好適にはシクロペンチル、シクロヘキシルである。
置換基βにおいては、好適にはC4-6シクロアルキル基であり、最も好適にはシクロペンチル、シクロヘキシルである。
フェニレン誘導体(II)において「C3-7シクロアルキル−C1-6アルキル基」とは、上記の「C3-7シクロアルキル基」が上記の「C1-6アルキル基」に結合した基であり、例えば、シクロプロピルメチル、2−シクロプロピルエチル、シクロブチルメチル、2−シクロブチルエチル、シクロペンチルメチル、2−シクロペンチルエチル、3−シクロペンチルプロピル、4−シクロペンチルブチル、5−シクロペンチルペンチル、6−シクロペンチルヘキシル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル、3−シクロヘキシルプロピル、4−シクロヘキシルブチル、5−シクロヘキシルペンチル、6−シクロヘキシルヘキシル、シクロヘプチルメチル、2−シクロヘプチルエチル等が挙げられる。
においては、好適にはC5-6シクロアルキル−C1-3アルキル基であり、より好ましくはシクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチルである。
フェニレン誘導体(II)において「C6-14アリール−カルボニル−C1-6アルキル基」とは、上記の「C6-14アリール基」がカルボニル基に結合した基が、さらに上記の「C1-6アルキル基」に結合した基であり、例えば、ベンゾイルメチル、2−ベンゾイルエチル、3−ベンゾイルプロピル、4−ベンゾイルブチル、5−ベンゾイルペンチル、6−ベンゾイルヘキシル、ナフトイルメチル、2−ナフトイルエチル等が挙げられる。
においては、好適にはC6-10アリール−カルボニル−C1-3アルキル基であり、より好適にはベンゾイルメチル、ナフトイルメチルである。
フェニレン誘導体(II)において「C1-6脂肪族アシル基」とは、水素原子または飽和若しくは不飽和の炭素数2乃至5個の鎖状炭化水素基がカルボニル基に結合した基を示し、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル、ヘキサノイル、アクリロイル、メタクリロイル、クロトノイル等が挙げられる。
においては、好適にはC1-4脂肪族アシル基であり、さらに好適にはブチリルである。
置換基αおよびβにおいては、好適にはC1-4脂肪族アシル基であり、更に好適にはアセチル、プロピオニルであり、最も好適にはアセチルである。
フェニレン誘導体(II)において「C3-7シクロアルカン」とは、炭素原子数3個乃至7個の環状アルカンであり、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等が挙げられる。
およびRが一緒になって、好適にはC3-5シクロアルカンを形成し、より好適にはシクロプロパンを形成する。
フェニレン誘導体(II)において「ハロゲン原子」は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
置換基αおよびβにおいては、それぞれ好適にはフッ素原子、塩素原子、臭素原子であり、より好適にはフッ素原子、塩素原子であり、最も好適にはフッ素原子である。
フェニレン誘導体(II)において「C1-6アルコキシ基」は、上記C1-6アルキル基で置換された水酸基であり、例えば、メトキシ、エトキシ、1−プロポキシ、2−プロポキシ、1−ブトキシ、2−ブトキシ、2−メチル−1−プロポキシ、2−メチル−2−プロポキシ、1−ペンチルオキシ、2−ペンチルオキシ、3−ペンチルオキシ、2−メチル−2−ブトキシ、3−メチル−2−ブトキシ、1−へキシルオキシ、2−へキシルオキシ、3−ヘキシルオキシ、2−メチル−1−ペンチルオキシ、3−メチル−1−ペンチルオキシ、2−エチル−1−ブトキシ、2,2−ジメチル−1−ブトキシ、2,3−ジメチル−1−ブトキシ等が挙げられる。
置換基αおよびβにおいては、それぞれ好適にはC1-4アルコキシ基であり、より好適にはメトキシ、エトキシであり、最も好適にはメトキシである。
フェニレン誘導体(II)において「C1-6アルキルチオ基」は、上記C1-6アルキル基で置換されたメルカプト基であり、例えば、メチルチオ、エチルチオ、1−プロピルチオ、2−プロピルチオ、1−ブチルチオ、2−ブチルチオ、2−メチル−1−プロピルチオ、2−メチル−2−プロピルチオ、1−ペンチルチオ、2−ペンチルチオ、3−ペンチルチオ、2−メチル−2−ブチルチオ、3−メチル−2−ブチルチオ、1−ヘキシルチオ、2−ヘキシルチオ、3−へキシルチオ、2−メチル−1−ペンチルチオ、3−メチル−1−ペンチルチオ、2−エチル−1−ブチルチオ、2,2−ジメチル−1−ブチルチオ、2,3−ジメチル−1−ブチルチオ基等が挙げられる。
置換基αおよびβにおいては、それぞれ好適にはC1-4アルキルチオ基であり、より好適にはメチルチオ、エチルチオであり、最も好適にはメチルチオである。
フェニレン誘導体(II)において「C1-6アルキルスルホニル基」は、上記C1-6アルキル基で置換されたスルホニル基(−SO−)であり、例えば、メタンスルホニル、エタンスルホニル、1−プロパンスルホニル、2−プロパンスルホニル、1−ブタンスルホニル、2−ブタンスルホニル、2−メチル−1−プロパンスルホニル、2−メチル−2−プロパンスルホニル、1−ペンタンスルホニル、2−ペンタンスルホニル、3−ペンタンスルホニル、2−メチル−2−ブタンスルホニル、3−メチル−2−ブタンスルホニル、1−ヘキサンスルホニル、2−ヘキサンスルホニル、3−ヘキサンスルホニル、2−メチル−1−ペンタンスルホニル、3−メチル−1−ペンタンスルホニル、2−エチル−1−ブタンスルホニル、2,2−ジメチル−1−ブタンスルホニル、2,3−ジメチル−1−ブタンスルホニル基等が挙げられる。
置換基αおよびβにおいては、好適にはC1-4アルキルスルホニル基であり、より好適にはメタンスルホニル、エタンスルホニルであり、最も好適にはメタンスルホニルである。
フェニレン誘導体(II)において「ハロC1-6アルキル基」は、1乃至7個の上記ハロゲン原子で置換された上記C1-6アルキル基であり、例えば、フルオロメチル、ジフルオロメチル、ジクロロメチル、ジブロモメチル、トリフルオロメチルミトリクロロメチル、2−フルオロエチル、2−ブロモエチル、2−クロロエチル、2−ヨードエチル、2,2−ジフルオロエチル、2,2,2−トリフルオロエチル、2,2,2−トリクロロエチル、ペンタフルオロエチル、3−フルオロプロピル、3−クロロプロピル、4−フルオロブチル、5−フルオロペンチル、6−フルオロヘキシル等が挙げられる。
置換基βにおいては、好適には1乃至5個のハロゲン原子で置換されたC1-4アルキル基であり、より好適にはフルオロメチル、クロロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチルであり、最も好適にはトリフルオロメチルである。
フェニレン誘導体(II)において「C6-14アリール−カルボニル基」とは、上記の「C6-14アリール基」がカルボニル基に結合した基であり、例えば、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、フェナントリルカルボニル等が挙げられる。
置換基βにおいては、好適にはC6-10アリール−カルボニル基であり、最も好適にはベンゾイルである。
フェニレン誘導体(II)において「C1-6アルコキシイミノ基」とは、上記C1-6アルコキシ基で置換されたイミノ基であり、例えば、メトキシイミノ、エトキシイミノ、1−プロポキシイミノ、2−プロポキシイミノ、1−ブトキシイミノ、2−ブトキシイミノ、2−メチル−1−プロポキシイミノ、2−メチル−2−プロポキシイミノ、1−ペンチルオキシイミノ、2−ペンチルオキシイミノ、3−ペンチルオキシイミノ、2−メチル−2−ブトキシイミノ、3−メチル−2−ブトキシイミノ、1−ヘキシルオキシイミノ、2−ヘキシルオキシイミノ、3−ヘキシルオキシイミノ、2−メチル−1−ペンチルオキシイミノ、3−メチル−1−ペンチルオキシイミノ、2−エチル−1−ブトキシイミノ、2,2−ジメチル−1−ブトキシイミノ、2,3−ジメチル−1−ブトキシイミノ等が挙げられる。
置換基βにおいては、好適にはC1-4アルコキシイミノ基であり、より好適にはメトキシイミノ、エトキシイミノであり、最も好適にはメトキシイミノである。
フェニレン誘導体(II)においてAとしては、好適には上記一般式(A4)、(A5)または(A6)で表される基である。
フェニレン誘導体(II)において、Xとしては、好適には単結合またはフェニレンである。ここで、Xがフェニレンである場合、Bとしては、好適には1H−テトラゾール−5−イル基であり、Xが単結合の場合、Bとしては、好適には2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル基である。
フェニレン誘導体(II)において、Y1としては、好適にはスルホニルまたはカルボニルである。
フェニレン誘導体(II)において、Y2としては、好適にはC1-3アルキレン基または単結合であり、より好適にはメチレン、エチレンまたは単結合である。
フェニレン誘導体(II)において、Y3としては、好適にはカルボニルまたは単結合である。
本発明において、Y4としては、好適には窒素原子である。
フェニレン誘導体(II)において、Y5としては、好適にはカルボニルまたは単結合である。
フェニレン誘導体(II)において、Rとしては、好適にはC1-8アルキル基(該C1-8アルキル基は、C1-6脂肪族アシル基で1乃至5個置換されていても良い)、C6−14アリール基(該C6-14アリール基は、C1-6アルキル基およびC6-14アリール基からなる群から選択される基で1乃至5個置換されていても良い)、C6-14アリール−C1-6アルキル基(該C6-14アリール−C1-6アルキル基は、C6-14アリール基、ハロゲン原子、C1-6アルコキシ基およびC6-14アリール−カルボニル基からなる群から選択される基で1乃至5個置換されていても良い)、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択される同一若しくは異なった1または2個のヘテロ原子を含む5乃至10員複素環基(該複素環基は、C1-6アルキル基およびC6-14アリール基からなる群から選択される基で1乃至5個置換されていても良い)、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択される同一若しくは異なった,または2個のヘテロ原子を含む5乃至10員複素環−C1−6アルキル基(該複素環−C1-6アルキル基は、C1-6アルキル基、C6-14アリール基およびC1-6アルコキシイミノ基からなる群から選択される基で’乃至5個置換されていても良い)、C3-7シクロアルキル基(該C3-7シクロアルキル基は、オキソ基で置換されていてもよい)、C3-7シクロアルキル−C1-6アルキル基、C6-14アリール−カルボニル−C1-6アルキル基、またはC1-6脂肪族アシル基、であり、より好適には、C4-8アルキル基(好適にはブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル)(該C4-8アルキル基は、C1-4脂肪族アシル基(好適にはアセチル、プロピオニル)で1乃至5個置換されていても良い)、C6-10アリール基(好適にはフェニル、ナフチル)(該C6-10アリール基は、C1-3アルキル基(好適にはメチル、エチル)およびC6-10アリール基(好適にはフェニル)からなる群から選択される基で1乃至5個置換されていても良い)、C6-10アリール−C1-3アルキル基(好適にはベンジル、1−フェネチル、2−フェネチル、3−フェニルプロピル、1−ナフチルメチル、2−ナフチルメチル、2−(1−ナフチル)エチル、2−(2−ナフチルエチル))(該C6-10アリール−C1-3アルキル基は、C6-10アリール基(好適にはフェニル)、ハロゲン原子(好適にはフッ素原子、塩素原子、臭素原子)、C1-4アルコキシ基(好適にはメトキシ、エトキシ)およびC6-10アリール−カルボニル基(好適にはベンゾイル)からなる群から選択される基で1乃至5個置換されていても良い)、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択される同一若しくは異なった1または2個のヘテロ原子を含む5または6員複素環基(該複素環はベンゼン環と縮合していても良い。好適にはピリジル、オキサゾリル、チアゾリル、キノリル)(該複素環基はC1-3アルキル基(好適にはメチル、エチル)およびC6-10アリール基(好適にはフェニル)からなる群から選択される基で1乃至5個置換されていても良い)、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択される同一若しくは異なった1または2個のヘテロ原子を含む5または6員複素環−C1−3アルキル基(該複素環はベンゼン環と縮合していても良い。好適にはオキサゾリルメチル、チアゾリルメチル、ピリジルメチル、キノリルメチル、チエニルエチル、チエニルプロピル)(該複素環−C1-3アルキル基は、C1-3アルキル基(好適にはメチル、エチル)、C6-10アリール基(好適にはフェニル)、C1-4アルコキシイミノ基(好適にメトキシイミノ、エトキシイミノ)からなる群から選択される基で1乃至5個置換されていても良い)、C5-6シクロアルキル基(好適にはシクロペンチル、シクロヘキシル)(該C5-6シクロアルキル基は、オキソ基で置換されていてもよい)、C5-6シクロアルキル−C1-3アルキル基(好適にはシクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル)、C6-10アリール−カルボニル−C1-3アルキル基(好適にはベンゾイルメチル、ナフトイルメチル)、またはC1-4脂肪族アシル基(好適にはブチリル)である。
フェニレン誘導体(II)において、Rとしては、好適には水素原子、カルボキシル基、フェニル基および一C(O)NR1314で表される基である。
フェニレン誘導体(II)において、R3 としては、好適には水素原子またはC6-14アリール基であり、より好適には水素原子またはC6-10アリール基(好適にはフェニル、ナフチル)である。
フェニレン誘導体(II)において、RおよびRとしては、好適には同一または異なってそれぞれ水素原子またはC6-10アリール基であり、より好適には水素原子またはフェニルである。
フェニレン誘導体(II)において、RおよびRとしては、好適には、一緒になってC3-5シクロアルカンを形成するか、或いは同一または異なってそれぞれ水素原子またはCl-3アルキル基であり、より好適には同一または異なってそれぞれ水素原子またはC1-3アルキル基(好適にはメチル、エチル、プロピル)である。
フェニレン誘導体(II)において、RおよびRとしては、好適には同一または異なってそれぞれ水素原子またはカルボキシル基であり、より好適には一方が水素原子であり、他方がカルボキシル基である。
フェニレン誘導体(II)において、R10としては、好適には、水素原子、C1-4アルキル基、C6-10アリール基、または窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択される同一若しくは異なった1または2個のヘテロ原子を含む5または6員複素環基(該複素環基はベンゼン環と縮合していても良い)であり、より好適には、C1-4アルキル基(好適にはメチル、エチル、プロピル、ブチル)、C6-10アリール基(好適にはフェニル)、または窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択される同一若しくは異なった1または2個のヘテロ原子を含む5または6員複素環基(該複素環基はベンゼン環と縮合していても良い)(好適にはピリジル、キノリル)である。
フェニレン誘導体(II)において、R11およびR12としては、好適には同一または異なってそれぞれ水素原子またはカルボキシル基であり、より好適にはカルボキシル基である。
フェニレン誘導体(II)において、R13およびR14としては、好適には一緒になって5または6員含窒素複素環(該含窒素複素環はベンゼン環と縮合していても良い)(好ましくはイミダゾール、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、インドール)を形成するか、或いは同一または異なってそれぞれ水素原子またはC1-3アルキル基(好適にはメチル、エチル)である。
フェニレン誘導体(II)として、具体的には、以下の化合物が好適である。
(II-1)3−{N−(3−フェニルプロピオニル)−N−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル4−イルメチル]アミノ}安息香酸、
(II-2)3−{N−フェニルアセチル−N−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル4−イルメチル]アミノ}安息香酸、
(II-3)3−{N−(4−フェニルブチリル)−N−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル4−イルメチル]アミノ}安息香酸、
(II-4)3−{N−シクロヘキサンカルボニル−N−〔2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル4−イルメチル〕アミノ}安息香酸、
(II-5)3−{N−(ピリジン−3−カルボニル)一N−〔2’−(lH−テトラゾール−5−イル)ビフェニル4−イルメチル〕アミノ}安息香酸、
(II-6)3−{N一ペンチル−N−〔4−(2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル)ベンジル〕アミノ}安息香酸、
(II-7)1−[4−(2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル)ベンジル]−2−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−7−カルボン酸、
(II-8)5−[4−(N−メチルスルホニル−N−フェニルアミノメチル)フェニル]−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン、
(II-9)5−[4−(N−ブチルスルホニル−N−フェニルアミノメチル)フェニル]−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン、
(II-10) 3−{N−〔4−(2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル)ベンジル〕−N−(メチルスルホニル)アミノ}安息香酸、
(II-11)3−{N−ブチルスルホニル−N−〔4−(2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル)ベンジル〕アミノ}安息香酸、
(II-12)5−{4−〔(2−オキソ−2H−キノリン−1−イル)メチル〕フェニル}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン、
(II-13)5−{4−〔(2−メチルベンズイミダゾール−1−イル)メチル〕フェニル}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン、
(II-14)5−{4−〔(2−プロピルベンズイミダゾール−1−イル)メチル〕フェニル}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン、
(II-15)5−{4−〔2−(2−ピリジル)ベンズイミダゾール−1−イルメチル〕フェニル}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン、
(II-16)5−[4−(2−フェニルイミダゾール−1−イルメチル)フェニル]−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン、
(II-17)1−[4−(2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル)ベンジル]−2−オキソ−3−プロピル−1,2−ジヒドロキノリン−7−カルボン酸、
(II-18)3−{N−シクロヘキサンカルボニル−N−〔4−(2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル)ベンジル〕アミノ}安息香酸、
(II-19)3−{N一〔4−(2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル)ベンジル〕−N−(ピリジン−3−カルボニル)アミノ}安息香酸、
(II-20)3−{N−〔4−(2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル)ベンジル〕−N−(3−フェニルプロピオニル)アミノ}安息香酸、
(II-21)3−{N−(ビフェニル4−カルボニル)−N−〔4−(2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル)ベンジル〕アミノ}安息香酸、
(II-22)3−{N−(フェニルスルホニル)−N−〔4−(2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル)ベンジル〕アミノ}安息香酸、
(II-23)3−{N−(4−メチルフェニルスルホニル)−N一〔4−(2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル)ベンジル)アミノ)安息香酸、
(II-24)3−{N−(ビフェニル4−スルホニル)-N−〔4−(2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル)ベンジル〕アミノ}安息香酸、
(II-25)3−{N−(2−ナフチルスルホール)−N−〔4−(2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル)ベンジル〕アミノ}安息香酸、
(II-26)3−{N−(ベンジルスルホニル)−N−〔4−(2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル)ベンジル〕アミノ}安息香酸、
(II-27)1−[4−(2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル)ベンジル]−2−オキソ−3−プロピル−2,3−1H−インドール−6−カルボン酸、
(II-28)1−[4−(2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル)ベンジル]−2−オキソ−3−プロピル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]アゼピン−8−カルボン酸、
(II-29)3,3−ジメチル−1−[4−(2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル)ベンジル]−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−7−カルボン酸、
(II-30)1’−[4−(2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル)ベンジル]−2’−オキソ−1’,4’−ジヒドロ−2’H−スピロ[シクロプロパン−1,3’−キノリン]−7’−カルボン酸、
(II-31)1−[4−(2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル)ベンジル]−2−プロピル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−7−カルボン酸、
(II-32)3−{N−フェネチルN−〔2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イルメチル〕アミノ}安息香酸、
(II-33)3−{N−〔4−(2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル)ベンジル〕−N−〔(5−メチル−2−フェニル1,3−オキサゾール−4−イル)アセチル〕アミノ}安息香酸、
(II-34)3−{N−〔(2,5−ジメチル−1,3−オキサゾール−4−イル)カルボニル〕−N−〔4−(2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル)ベンジル〕アミノ}安息香酸、
(II-35)2−オキソ−3−プロピル−1−[2,−(1H−テトラゾール−5−イルメチル)ビフェニル4−イルメチル]−2,3,4,5−テトラヒドロ−H−ベンゾ[b]アゼピン−8−カルボン酸、
(II-36)3−{N−(3−シクロヘキシルプロパノイル)−N−〔2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル4−イルメチル〕アミノ}安息香酸、
(II-37)3−{N−〔(5−メチル−2−フェニル1,3−オキサゾール−4−イル)アセチル〕−N−〔2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル4−イルメチル〕アミノ}安息香酸、
(II-38)5−[4’−(2−フェニルイミダゾール−1−イルメチル)ビフェニル2−イル]−1H−テトラゾール、
(II-39)5−[4’−(4−フェニルイミダゾール−1−イルメチル)ビフェニル2−イル]−1H−テトラゾール、
(II-40)5−[4’一(5−フェニルイミダゾール−1−イルメチル)ビフェニル2−イル]−1H−テトラゾール、
(II-41)2−プロピル−1−[2’−(lH−テトラゾール−5−イル)ビフェニル4−イルメチル]−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−7−カルボン酸、
(II-42)3−{N−(2−オキソ−2−フェニルエチル)−N−〔2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル4−イルメチル〕アミノ}安息香酸、
(II-43)3−{N−(3−キノリンカルボニル)−N−〔2’−(lH−テトラゾール−5−イル)ビフェニル4−イルメチル〕アミノ}安息香酸、
(II-44)3−{N−(2−ナフトイル)−N−〔2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル4−イルメチル〕アミノ}安息香酸、
(II-45)3−{N−(4−ビフェニルカルボニル)−N−〔2’−(lH−テトラゾール−5−イル)ビフェニル4−イルメチル〕アミノ}安息香酸、
(II-46)3−{N−〔(2,5−ジメチル−1,3−オキサゾール−4−イル)カルボニル〕−N−〔2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル4−イルメチル〕アミノ}安息香酸、
(II-47)3−{N−〔4−(5−メチル−1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)ベンゾイル〕−N−〔2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル4−イルメチル〕アミノ}安息香酸、
(II-48)3−{N−〔4−(2−メチルチアゾール−4−イル)ベンゼンスルホニル〕−N−〔2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル4−イルメチル〕アミノ}安息香酸、
(II-49)3−{N−〔4−(2−ピリジル)ベンゾイル〕一N−〔2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル4−イルメチル〕アミノ}安息香酸、
(II-50)N−[3−(モルホリノカルボニル)フェニル]−N−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル4−イルメチル]−4−(2−ピリジル)ベンズアミド、
(II-51)3−{N−[4−(2−ピリジル)ベンゾイル]−N−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル4−イルメチル]アミノ}ベンズアミド、
(II-52)N−[3−(モルホリノカルボニル)フェニル]−N−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル4−イルメチル]キノリン−3−カルボキサミド、
(II-53)3−{N−(3−キノリンカルボニル)−N−〔2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル4−イルメチル〕アミノ}ベンズアミド、
(II-54)3−{N−ベンジルN−〔2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−イルメチル〕アミノ}安息香酸、
(II-55)3−{N−(ビフェニル4−イルメチル)−N−〔2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル4−イルメチル〕アミノ}安息香酸、
(II-56)3−{N−(4−クロロベンジル)−N−〔2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル4−イルメチル〕アミノ}安息香酸、
(II-57)3−{N−(3,4−ジメトキシベンジル)−N−〔2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル4−イルメチル〕アミノ}安息香酸、
(II-58)3−{N−〔2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル4−イルメチル〕一N−〔2−(2−チエニル)エチル〕アミノ}安息香酸、
(II-59)3−{N−〔2−(3,4−ジメトキシフェニル)エチル〕−N−〔2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル4−イルメチル〕アミノ}安息香酸、
(II-60)3−{N−(2−シクロヘキシルエチル)−N一〔2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル4−イルメチル〕アミノ}安息香酸、
(II-61)N−[4−(2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル)ベンジル]−N−フェニル1−ナフタレンスルホンアミド、
(II-62)N−[4−(2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル)ベンジル]−N−フェニル2−ナフタレンスルホンアミド、
(II-63)3−{N−〔4−(2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル)ベンジル〕−N−〔4−(2−メチルチアゾール−4−イル)ベンゼンスルホニル〕アミノ}安息香酸、
(II-64)3−{N−〔4−(2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル)ベンジル〕−N−〔4−(5−メチル−1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)ベンゾイル〕アミノ}安息香酸、
(II-65)3−{N−〔4−(2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル)ベンジル〕−N−〔4−(2−ピリジル)ベンゾイル〕アミノ}安息香酸、
(II-66)3−{N−[4−(2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル)ベンジル]−N−(キノリン−3−カルボニル)アミノ}安息香酸、
(II-67)N−[4−(2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル)ベンジル]−N−(2−ピフェニリル)ベンゼンスルホンアミド、
(II-68)3−{N−(ビフェニル4−イルメチル)−N−〔4−(2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル)ベンジル〕アミノ}安息香酸、
(II-69)3−{N一(2−シクロヘキシルエチル)−N−〔4−(2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル)ベンジル〕アミノ}安息香酸、
(II-70)3−{N−ブチルスルホニル−N−〔4−(2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル)ベンジル〕アミノ}ベンズアミド、
(II-71)5−{4−〔N−(3−モルホリノカルボニルフェニル)−N−(2−ナフタレンスルホニル)アミノメチル〕フェニル}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン、
(II-72)5−{4−〔{2−(2−ナフチル)イミダゾール−1−イル}メチル〕フェニル}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン、
(II-73)5−{4−〔{2−(4−ビフェニリル)イミダゾール−1−イル}メチル〕}フェニル1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン、
(II-74)2−オキソ−N−フェニルN−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル4−イルメチル]バレルアミド、
(II-75)3−{N-(7−オキソオクタノイル)−N−〔2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル4−イルメチル〕アミノ}安息香酸、
(II-76) 3−{N−〔4−(E)ーメトキシイミノ−4−(2−チエニル)ブチリル〕−N−〔2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル4−イルメチル〕アミノ}安息香酸、
(II-77)3−{N−〔4−(Z)メトキシイミノ−4−(2−チエニル)ブチリル〕−N−〔2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル4−イルメチル〕アミノ}安息香酸、
(II-78)3−{N−〔2−(3−ベンゾイルフェニル)プロピオニル〕−N−〔2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル4−イルメチル〕アミノ}安息香酸、
および
(II-79)3−{N−(3−オキソ−1−シクロペンタンカルボニル)−N−〔2’-(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル4−イルメチル〕アミノ}安息香酸。
上記フェニレン誘導体(II)のなかでも特に好ましくは(II-1)、(II-6)、(II-7)、(II-8)、(II-9)、(II-10)、(II-11)、(II-15)、(II-16)、(II-17)、(II-18)、(II-19)、(II-20)、(II-21)、(II-22)、(II-23)、(II-24)、(II-25)、(II-26)、(II-27)、(II-28)、(II-29)、(II-30)、(II-32)、(II-33)、(II-36)、(II-42)、(II-63)、(II-68)に掲げる化合物である。
これらのフェニレン誘導体(II)、ならびにその薬理上許容される塩及びその薬理上許容されるエステルは、例えば、国際公開公報WO2007/026962パンフレットに記載される方法に従って公知化合物を出発原料として用いて製造することができる。なお、当該公開公報に記載されるフェニレン誘導体の製造方法は、そのまま本明細書の内容として援用される。
なお、フェニレン誘導体(I)と同様、フェニレン誘導体(II)が塩基性基を有する場合には、常法に従って酸付加塩にすることができる。かかる塩としては、フェニレン誘導体(I)と同様のものを挙げることができる。好適にはハロゲン化水素酸の塩である。また上記フェニレン誘導体(II)がカルボキシル基を有する場合には、フェニレン誘導体(I)と同様、常法に従って金属塩にすることができる。そのような塩としては、フェニレン誘導体(I)と同様のものを挙げることができる。好適にはアルカリ金属塩である。
本発明のフェニレン誘導体(II)は、常法に従って薬理上許容されるエステルにすることができる。そのようなエステルとしては、医学的に使用され、薬理上受け入れられるものであれば特に限定はない。好適なエステル残基の具体例としては、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ベンジル、アセトキシメチル、1−(アセトキシ)エチル、プロピオニルオキシメチル、1−(プロピオニルオキシ)エチル、ブチリルオキシメチル、1−(ブチリルオキシ)エチル、イソブチリルオキシメチル、1−(イソブチリルオキシ)エチル、バレリルオキシメチル、1−(バレリルオキシ)エチル、イソバレリルオキシメチル、1−(イソバレリルオキシ)エチル、ピバロイルオキシメチル、1−(ピバロイルオキシ)エチル、メトキシカルボニルオキシメチル、1−(メトキシカルボニルオキシ)エチル、エトキシカルボニルオキシメチル、1−(エトキシカルボニルオキシ)エチル、プロポキシカルボニルオキシメチル、1−(プロポキシカルボニルオキシ)エチル、イソプロポキシカルボニルオキシメチル、1−(イソプロポキシカノレボニルオキシ)エチル、ブトキシカルボニルオキシメチル、1−(ブトキシカルボニルオキシ)エチル、イソブトキシカルボニルオキシメチル、1−(イソブトキシカルボニルオキシ)エチル、t−ブトキシカルボニルオキシメチル、1−(t-ブトキシカルボニルオキシ)エチル、シクロペンタンカルボニルオキシメチル、1−(シクロペンタンカルボニルオキシ)エチル、シクロヘキサンカルボニルオキシメチル、1−(シクロヘキサンカルボニルオキシ)エチル、シクロペンチルオキシカルボニルオキシメチル、1−(シクロペンチルオキシカルボニルオキシ)エチル、シクロヘキシルオキシカルボニルオキシメチル、1−(シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ)エチル、ベンゾイルオキシメチル、1−(ベンゾイルオキシ)エチル、フェノキシカルボニルオキシメチル、1−(フェノキシカルボニルオキシ)エチル、(5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソレン−4-イル)メチル、2−トリメチルシリルエチル又はフタリジルであり、更に好適には(5-メチル-2-オキソ−1,3-ジオキソレン−4-イル)メチル、ピバロイルオキシメチル又は1−(イソプロボキシカルボニルオキシ)エチルである。
なお、一般式(II)で表されるフェニレン誘導体、その塩又はエステルが溶媒和物(例えば水和物)を形成する場合には、これらの溶媒和物もすべて本発明に含まれる。更に、生体内において代謝されて上記で表されるフェニレン誘導体(II)、その塩又はエステルに変換される化合物(例えばアミド誘導体のような、いわゆるプロドラッグ)もすべて本発明に含まれる。
以上の化合物(1)および(2)、ならびにフェニレン誘導体(I)および(II)は、いずれも必要に応じて、アミノグアニジン、ピリドキサミン誘導体、OPB−9195、ビグアナイド化合物、架橋形成阻害薬、アマドリ化合物を分解する酵素、GSH、システイン、アセチルシステイン、ビタミンE、ユビキノール、アルドース還元酵素阻害薬、カルボニル化合物トラップ剤など、公知の薬物と共に使用されてもよく、これによりAGEs生成抑制作用の持続性を高めることができる。
本発明のカルボニル消去剤ならびにAGEs生成抑制剤は、種々の形態で投与される。その投与形態としては特に限定はなく、各種製剤形態、患者の年齢、性別その他の条件、疾患の程度等に応じて決定される。例えば錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤、液剤、懸濁剤、乳剤及びカプセル剤の場合には経口投与される。また、注射剤の場合には単独であるいはぶどう糖、アミノ酸等の通常の補液と混合して静脈内投与され、更には必要に応じて単独で筋肉内、皮内、皮下もしくは腹腔内投与される。坐剤の場合には直腸内投与される。好適には経口投与である。
これらの各種製剤は、常法に従って主薬に賦形剤、結合剤、崩壊剤、潤沢剤、溶解剤、矯味矯臭、コーティング剤等の医薬製剤分野において通常使用しうる既知の補助剤を用いて製剤化することができる。
錠剤の形態に成形するに際しては、担体としてこの分野で従来公知のものを広く使用でき、例えば乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ぶどう糖、尿素、澱粉、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸等の賦形剤、水、エタノール、プロパノール、ぶどう糖液、澱粉液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、セラック、メチルセルロース、リン酸カリウム、ボリビニルピロリドン等の結合剤、乾燥澱粉、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ボリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、澱粉、乳糖等の崩壊剤、白糖、ステアリン酸、カカオバター、水素添加油等の崩壊抑制剤、第4級アンモニウム塩基、ラウリル硫酸ナトリウム等の吸収促進剤、グリセリン、澱粉等の保湿剤、澱粉、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸等の吸着剤、精製タルク、ステアリン酸塩、棚酸末、ボリエチレングリコール等の滑沢剤等が例示できる。更に錠剤は必要に応じ通常の剤皮を施した錠剤、例えば糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フィルムコーティング錠あるいは二重錠、多層錠とすることができる。
丸剤の形態に成形するに際しては、担体としてこの分野で従来公知のものを広く使用でき、例えばぶどう糖、乳糖、澱粉、カカオ脂、硬化植物油、カオリン、タルク等の賦形剤、アラビアゴム末、トラガント末、ゼラチン、エタノール等の結合剤、ラミナランカンテン等の崩壊剤等が例示できる。
坐剤の形態に成形するに際しては、担体としてこの分野で従来公知のものを広く使用でき、例えばボリエチレングリコール、カカオ脂、高級アルコール、高級アルコールのエステル類、ゼラチン、半合成グリセライド等を挙げることができる。
注射剤として調製される場合には、液剤及び懸濁剤は殺菌され、且つ血液と等張であるものが好ましく、これら液剤、乳剤及び懸濁剤の形態に成形するに際しては、希釈剤としてこの分野において慣用されているものをすべて使用できる。 希釈剤としては、例えば水、エチルアルコール、プロピレングリコール、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等を挙げることができる。なお、この場合、等張性の溶液を調製するに十分な量の食塩、ぶどう糖、あるいはグリセリンを医薬製剤中に含有せしめてもよく、また通常の溶解補助剤、緩衝剤、無痛化剤等を添加してもよい。
更に必要に応じて着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤等や他の医薬品を含有せしめてもよい。
上記医薬製剤中に含まれる有効成分である上記化合物の量は、特に限定されず広範囲に適宜選択されるが、通常全組成物中1〜70重量部、好ましくは1〜30重量部含まれる量とするのが適当である。その投与量は、症状、年令、体重、投与方法及び剤型等によって異なるが、通常は成人に対して1日当たり、下限として0.01mg (好ましくは0.1mg、更に好ましくは1mg)、上限として2,000mg(好ましくは1,000mg、更に好ましくは200mg)を1回ないし数回に分けて投与することができる。
かかる医薬製剤は、統合失調症の治療または改善を目的として、統合失調症と判断された患者に対して有効量投与して用いられる。従って、本発明の医薬製剤には、統合失調症の治療または改善に使用する場合の用法を記載した仕様書または説明書が添付されていてもよい。
IV.統合失調症の治療または改善方法
本発明の統合失調症の治療または改善方法は、前述するカルボニル消去剤またはAGEs生成抑制剤を有効成分とする統合失調症の治療または改善剤を有効量、統合失調症と判断される患者に投与することによって実施される。
当該カルボニル消去剤またはAGEs生成抑制剤は、統合失調症患者におけるカルボニルストレスを除去し、統合失調症を改善または治療するための有効な量を、薬学的に許容される担体もしくはその他の添加剤ととともに、医薬組成物の形態で使用することができる。これら医薬組成物の投与対象者(被験者)、投与形態、投与経路、投与方法並びに当該医薬組成物の投与用量(有効成分の投与量)は前述する通りである。
V.統合失調症の治療または改善剤のスクリーニング方法
本発明は、統合失調症を治療改善または発症を予防するために有用な医薬品や食品を開発するために有効な方法、具体的には統合失調症を治療改善または発症を予防するために有効な候補物質を選別するための方法(スクリーニング方法)を提供する。
当該方法は、被験物質の中から、カルボニル消去作用またはカルボニル蛋白修飾物生成抑制作用(AGEs生成抑制作用)を有する物質を選択することによって実施することができる。好ましくは、被験物質の中から、AGEs生成抑制作用を指標として、当該作用を有する物質を選別することによって実施することができる。
当該方法で用いられる被験物質は特に制限されない。例えば、天然化合物、有機化合物、無機化合物、タンパク質及びペプチド等の単一化合物;並びに化合物ライブラリー、遺伝子ライブラリーの発現産物、細胞抽出物、細胞培養上清、発酵微生物産生物、海洋生物抽出物、植物抽出物等の組成物を例示することができる。
AGEs生成抑制作用の有無は、下記(i)の試験により確認することができる:
(i)代表的なAGEsであるペントシジンを指標として、非糖尿病の腎不全透析患者から血漿を採取し、被験物質を添加し、一定時間後のペントシジン生成量を測定する。
詳細な方法は、実験例1の記載を参考にすることができる。この場合、被験物質のAGEs生成抑制作用は、被験物質に代えて陽性対照としてピリドキサミンを用いて測定したペントシジン生成量と対比することによって評価することができる。具体的には、陽性対照であるピリドキサミンのペントシジンの生成量に比較して、ペントシジンの生成量が同等または少ない被験物質はAGEs生成抑制作用があると判断することができる。
また、AGEs生成抑制作用の有無は、、下記(ii)の試験によっても確認することができる:
(ii)フェニルアラニン−ラジカル反応系における被験物質のラジカル捕捉能を測定する。
この方法は、過酸化水素と硫酸銅の反応によって生じるヒドロキシラジカルが、フェニルアラニンをヒドロキシル化してo−チロシンまたはm−チロシンを生成することを利用したものである。具体的には、当該方法は、過酸化水素、硫酸銅およびフェニルアラニンを含有する反応系に被験物質を添加した場合のo−チロシンまたはm−チロシンの生成量と、被験物質を添加しない場合のo−チロシンまたはm−チロシンの生成量とを対比することによって行うことができ、被験物質を添加した場合にo−チロシンまたはm−チロシンの生成量の抑制が認められれば、当該被験物質にはラジカル捕捉能があり、AGEs生成抑制作用があると判断することができる。なお、具体的な測定方法を下記に示す。
<ラジカル捕捉能の測定方法>
最終濃度が、フェニルアラニン1mM、被験物質0.1mM、0.5mMおよび2.5mM、過酸化水素5mM、硫酸銅0.1mMになるように200mMのリン酸緩衝液(pH7.4)に溶解(全量500μl)した調製液を、37℃で4時間インキュベートして反応させる。反応終了後、最終濃度が1mMになるようにDTPA(diethylene triamine pentaacetic acid)および260 unitのカタラーゼを加えて反応を停止させる。次いで、下記条件のHPLCを用いてo−チロシンおよびm−チロシンの生成量を測定する。
HPLC条件
カラム:C18逆相カラム(4.6×250mm、5μm:野村化学(株)製)
移動相:バッファーA:0.10%トリフルオロ酢酸、
バッファーB:0.08%トリフルオロ酢酸を含む80%アセトにトリル
グラジェント:25分間で、バファーB濃度を6.5%から10%に上昇
流速:0.6ml/分
検出:蛍光検出器(RF-10A、島津製作所)を用いて励起波長275nm、蛍光波長305nmで検出。
また候補物質はビタミンB6欠乏症を惹起しないことが好ましい。ゆえに被験物質について、さらにビタミンB6欠乏症を惹起しないか否かを、下記(a)または(b)の試験により確認することが好ましい。
(a)ビタミンB6溶液に被験物質を加え、一定時間後のビタミンB6残存量を測定する。
(b)正常ラットに被験物質を投与し、一定期間後のビタミンB6欠乏症発症の有無を確認する。
以上の方法(候補物質の選択)で選択された候補物質は、必要に応じてさらに他の薬理試験や臨床試験並びに毒性試験を経ることによって、よりヒトに対して有効で且つ安全な統合失調症の治療改善または発症予防剤の有効成分として取得することができる。
斯くして得られる候補物質は、公知の方法によって処方並びに製剤化することによって統合失調症の治療改善または発症予防剤として提供することができる。
以下、本発明をより詳細に示すために実施例を示す。但し、当該実施例は本発明の一例であって、本発明はかかる実施例になんら制限されるものではない。
実施例1 重篤な統合失調症患者の遺伝子および生化学的解析
精神病棟に入院中の統合失調症患者(男性、60歳、体重75.5kg)(以下、患者Aという)について、glyoxalase I遺伝子解析ならびに、赤血球glyoxalase活性、血清AGEs値、および血清ビタミンB6を測定した。なお、上記患者Aは、兄弟4人のうち2名は自殺、2名は本人も含め現在精神病棟に入院中であり、重篤な家族性統合失調症患者であると診断されている。
<測定方法>
(1) 赤血球glyoxalase活性の測定
McLellanらの方法に従って測定した(McLellan AC, Thornalley PJ : Glyoxalase activity in human red blood cells fractioned by age. Mech Ageing Dev 48 : 63-71, 1989)。具体的には、破壊させた赤血球を、methylglyoxal と glutathione から生成される hemi-thioacetal 溶液中に添加し、形成されるS-D-lactoylglutathion 量を分光光度計 を用いて、吸収波長 240 nm で測定した。得られた測定値から、モル吸光係数△ε240 = 2.86 Mm -1 cm -1 に基づいてS-D-lactoylglutathion濃度を算出し、unit 換算した。なお、1 unit は 赤血球10 6が1分当たり、1μmol のS-D-lactoylglutathionを形成する量である。
(2) 血清AGEs値の測定
AGEs値としてペントシジンを指標とした。ペントシジンの測定は、採取した血清を窒素下、6N HCl中、110℃で16時間加水分解した後、既知濃度の合成ペントシジンを標準品として用いて、逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、励起-吸収波長(335/385nm)で定量分析した。
(3) 血清ビタミンB6量の測定
血清ビタミンB6量として、血清中のPyridoxamine 値、Pyridoxine値、およびPyridoxal値を測定した。なお、測定は委託検査会社(株式会社 SRL)に依頼し、逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により定量分析した。
<測定結果>
(1) 赤血球glyoxalase活性(図4)
10%ヘマトクリットの赤血球数を0.6 x 109 / mlとして計算したところ、患者Aの赤血球GlyoxalaseI活性は2.9 mUnit/10 6 RBCと、健常者(n=5)の赤血球GlyoxalaseI活性(6.1 ± 0.7 mUnit/10 6 RBC)より低値であった(図4)。
(2) glyoxalase I遺伝子解析結果(図5)
患者Aのglyoxalase I遺伝子解析結果を図5に示す。健常者のglyoxalase I遺伝子との対比からわかるように、患者Aのglyoxalase I遺伝子は、80位にA(アデニン)が一つ挿入しており(点突然変異)、その結果フレームシフトが生じ、正常なglyoxalase Iが発現していないことが判明した。このことから、上記患者Aの(1)赤血球glyoxalase活性の低下は、glyoxalase I遺伝子異常(点突然変異によるフレームシフト)に起因していることがわかった。
(3) 血清AGEs値の測定(図6)
血清AGEs値(ペントシジン量)を健常者と対比した結果を図6に示す。この結果からわかるように、患者Aの血清AGEs値0.368nmol/mlと、健常者(n=5)の血清AGEs値0.128 ± 0.04 nmol/mlより有意に高かった。タンパク質1mg当たりのペントシジン量に換算すると、患者Aの値は5 pmol/mg protenと、健常者の1.7 ± 0.4 pmol/mg protenよりも、3倍高値であることが判明した。
なお、この患者A(60歳、体重75.5kg、クレアチニン1.05 mg/dl)のestimated glomerular filtration rate (eGFR)は、MDRD法で76.7 ml/min、estimated creatinin clearance (eCcr) はCockcroft-Gault法で79.9 ml/minであり、若干の腎臓機能低下が認められた。しかし、この程度の腎臓機能低下によって、上記のようなAGEs(ペントシジン)の増加は生じ得ないことから、統合失調症ではAGEs(ペントシジン)を上昇させる、糖尿病や腎不全以外の因子が存在すると考えられた。前記のGlyoxalase I欠損を考え合わせると、統合失調症患者における血清AGEsの高値は、Glyoxalase I活性低下によってAGE 前駆体の解毒異常に起因すると考えられる。
(4) 血清ビタミンB6量
血清ビタミンB6のうち、Pyridoxamine値と Pyridoxine 値は健常者と同様に検出限界以下であった(Pyridoxamineの検出限界は0.2 ng/ml 、Pyridoxine の検出限界は3.0 ng/ml)。一方、Pyridoxal値は2.8 ng/ml で、健常人(14.8 ± 0.3ng/ml, n = 2)より有意に低値だった。ちなみに、男性の基準値は6.0〜40.0ng/mlである。Pyridoxalには血中のカルボニルを消去する作用がある。そこで、統合失調症の患者は、カルボニルを消去する必要のため、体内でPyridoxalが消費され、その結果血清中のPyridoxal(ビタミンB6)量が低下していると考えられた。
以上のことから、統合失調症の病態には、Glyoxalase I欠損に基づくカルボニルストレスが関係していると考えられた。すなわち、統合失調症患者では、Glyoxalase I遺伝子異常によってglyoxalase I活性が低下しており、これがカルボニルストレスを増し(AGEsの増加)、これによりビタミンB6が枯渇して、統合失調症の病態が悪化していると考えられる。従って、glyoxalase I活性の低下、カルボニルストレスの亢進(AGEsの増加)、およびビタミンB6の低下は、統合失調症の診断の指標となり得る。また、AGEs阻害剤(AGEs生成抑制剤)、ならびにビタミンB6やエダラボンなどのカルボニル消去剤は、統合失調症の治療剤または病態改善剤として有効であると考えられる。
実施例2 皮膚中のAGEs含量の測定
健常者(女性12名、男性12名、計24名;平均年齢48.88+3.17歳)と統合失調症患者(女性12名、男性12名、計24名;;平均年齢48.38+2.23歳)を対象として、AGE-Reader(Diagn Optics: The Netherlands社製)を用いて皮膚中のAGEs含量を測定した。
健常者と統合失調症患者とで皮膚中のAGEs含量を対比した結果を図7に示す。この結果から、統合失調症患者では、健常者に比して皮膚中のAGEs含量が有意に増加していることがわかる。健常者と統合失調症患者とで年齢別に皮膚中のAGEs含量を対比した結果を図8のAとBに示す。この結果から、健常者では年齢とAGEs含量との間に強い正の相関が見られたが、統合失調症患者ではそれが認められなかった(図8A)。しかし、図8Bに示すように、50歳以下では勿論、50歳より高年齢でも、統合失調症患者の皮膚中AGEs含量は、健常者より高い傾向にあった。
このことから、実施例1で示したように統合失調症患者は、健常者に比してAGEs含量が高く、その傾向は皮膚中のAGEs含量を測定するAGE-Readerによっても評価することができることが示された。
実施例3 統合失調症患者のglyoxalase I遺伝子解析
(1)統合失調症患者(700名)および健常者(600名)を対象として、glyoxalase I(GLO-I)遺伝子の解析を行った。
なお、GLO-I遺伝子におけるフレームシフト変異(GLO-I遺伝子のコード領域の塩基配列(配列番号1)の79位と80位の間への一塩基挿入)は、Blend Taq (TOYOBO Cat#BTQ-101S)を用いて、PCRプライマー F: 5’- GAGTTTGCCTCCTTTATGCG - 3’(配列番号8)および R: 5’- AACAGATCCCCTCCACACTT - 3’(配列番号9)により、(i)94℃、2分間を1サイクル、(ii)94℃、30秒―62.5℃、20秒―72℃、30秒のサイクルを40サイクル、(iii)72℃、2分間を1サイクルの条件でPCRを行う、PCR-direct sequence法によって同定した。また、GLO-Iの111番目のアミノ酸の変異(Glu→Ala)をもたらす塩基置換異常(GLO-I遺伝子のコード領域の塩基配列(配列番号1)の332位のアラニンからシトシンへの変異)は、Blend Taq (TOYOBO Cat#BTQ-101S)を用いて、 F: 5’- TCAGAGTGTGTGATTTCGTG - 3’ (配列番号10)および R: 5’- CATGGTGAGATGGTAAGTGT - 3’ (配列番号11)により、(i)94℃、2分間を1サイクル、(ii)94℃、30秒―62.5℃、20秒―72℃、30秒のサイクルを40サイクル、(iii)72℃、2分間を1サイクルの条件でPCRを行う、PCR-direct sequence法によって同定した。
その結果、GLO-Iのアミノ酸配列(配列番号2)111番目のGluがAlaに置換するSNPを中心に、有意な差が認められた。Ala/Alaのホモ接合体は、統合失調症患者(700名)中で4例検出されたが、健常者(600名)中には全く認められなかった。
(2)4名のAla/Alaホモ接合体の統合失調症患者のうち、3名について、実施例1(1)の方法に従って赤血球glyoxalase活性を測定した。なお、当該3名は下記の病歴および病態を有している。
(a)患者B(入院患者):女性、年齢50歳、CREAT0.57、41歳発症
現在は、幻覚妄想は消失しているが、陰性症状(意欲低下、感情平板化)が目立つ。
(b)患者C(入院患者):男性、年齢66歳、CREAT0.86、15歳発症
陰性症状がひどく、殆ど自発言語がない。問いかけには首を縦横に振るだけである。
(c)患者D(外来通院):男性、年齢50歳、CREAT0.72、19歳発症
「隣人の嫌がらせ」という妄想があり、転居を繰り返している。
また、同様にして、Glu/Alaヘテロ接合体およびGlu/Gluヘテロ接合体の統合失調症患者および健常者の赤血球glyoxalase活性を測定した。結果を図9に示す。この結果からわかるように、Ala/Alaホモ接合体の統合失調症患者は、有意に赤血球glyoxalase活性が低下していた。また、GLO-Iのアミノ酸配列(配列番号2)の111位がAlaである変異GLO-IとGFPとのコンストラクト(pAcGFP-GLO1-Ala)、および当該111位がGluの正常GLO-IとGFPとのコンストラクト(pAcGFP-GLO1-Glu)をそれぞれ定法に従ってCOS細胞に発現させて、GLO-I活性を測定したところ、変異GLO-IのGLO-I活性は、正常GLO-Iに比して有意に低下していることが確認された(図10)。
(3)Ala/Alaのホモ接合体の統合失調症患者(4名)および実施例1の統合失調症患者A(GLO-I遺伝子の一つのアレル(GLO-I遺伝子のコード領域の塩基配列の79位と80位の間)が点突然変異によるフレームシフトによってGLO-I欠損)について、GLO-IのmRNAの発現量を測定した結果を図11に示す。この結果からわかるように、フレームシフト型の患者AはGLO-IのmRNAの発現量が50%低下していた。またAla/Alaホモ接合体の統合失調症患者も、GLO-IのmRNAの発現量が20%低下していた。このことから、50%まで低下しないまでも、GLO-ImRNAの発現量(GLO-I活性)の20%の低下は、統合失調症のリスクになる可能性が示唆された。
実施例4 統合失調症患者のglyoxalase I遺伝子解析および生化学的解析(まとめ)
統合失調症患者をタイプ毎(フレームシフト型[n=2]、Ala/Alaホモ接合型[n=5]、Glu/Alaヘテロ接合型[n=1])にわけ、各患者についてGlyoxalase I活性(mUnit/106RBC)、ペントシジン活性(pmol/mg protein)、血中ビタミンB6含量(ng/ml)(ピリドキサール、ピリドキサミン、ピリドキシン)、血中ビタミンB12含量(pg/ml)、血中葉酸含量(ng/ml)、血中ホモシステイン含量(nmol/ml)、クレアチニン量(mg/dl)、およびeGFR(ml/min/1.73m2)を測定した。各活性および含有量の測定は、実施例1および定法に従って行った。また、比較対照のため、統合失調症に罹患していない健常者(Glu/Gluホモ接合型)[n=7]についても、同様に測定した。
結果を、各人の糖尿病の有無を含めて図12に示す。
この結果から、統合失調症患者はどのタイプでも、GLO-I活性は低く、ペントシジン値(AGEs値)は健常者に比して高い傾向にあった。いずれの患者もクレアチンおよびeGFRは正常で、糖尿病もないので、かかる高いペントシジン値は、腎機能低下や高血糖では説明できず、GLO-I活性の低下に基づくと考えられる。特に、ペントシジン値が高いMZ-65患者は陰性症状がひどく、殆ど自発言語のない重篤な統合失調症患者である。
統合失調症患者のなかでも特にフレームシフト型の患者は、健常者に比して、GLO-I活性が低く、ペントシジン値(AGEs値)が高く、ピリドキサール量が低く、且つホモシステイン含量が高い傾向が顕著に認められた。このことから、特にこのタイプの統合失調症患者の病因として、GLO-Iの低下が考えられた。すなわち、上記の解析結果はすべて体内のGLO-Iの低下に起因するものであり、体内のGLO-Iの低下によって、カルボニルが高値となり、その結果、体内のAGEs値(ペントシジン含量)が高くなり、それを消去するためのビタミンB6(ピリドキサール)量が低下していると考えられた。また、ホモシステインの形成にはビタミンB6が重要であることから、ホモシステイン高値もビタミンB6低下が反映しているものと考えられる。ゆえにこれらの生化学的な値を指標とすることにより、簡便に統合失調症を診断することが可能になる。
試験例1 エダラボン類縁体のAGEs生成抑制効果
(1)1−(5−ヒドロキシ−3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾール−4−イル)−6−メチル−1,3−ジヒドロ−フロ[3,4−c]ピリジン−7−オール(以下、「TM−2002」という。)について、代表的なAGEsであるペントシジンの生成抑制効果を調べた。
血液透析患者の透析前の血漿を同意の下に透析前に採取し、濾過滅菌した。血漿(450μL)にTM−2002のジメチルスルホキシド溶液(50μL)を加え(最終濃度:0.8、2.0、5.0mM)、37℃で1週間インキュベートし、ペントシジンの生成量を測定した。
ペントシジンの測定は、以下のようにして行った。インキュベーション後の各試料(50μL)に、等容積の10%トリクロロ酢酸を加えた後、5000gで5分間遠心分離した。上清を除去後、ペレットを5%トリクロロ酢酸(300μL)で洗浄した。ペレットを減圧下乾燥後、窒素雰囲気下で6N HCl溶液(100μL)中にて、110℃で16時間加水分解を行った。次いで酸加水分解物に5N NaOH(100μL)および0.5Mリン酸緩衝液(pH7.4)(200μL)を添加した後、0.5μm孔のポアフィルタを通して濾過し、PBSで希釈した。遊離したペントシジンの濃度は、蛍光検出器(RF−10A、島津製作所)を用いた逆相HPLCを用いて測定した(Miyata, T. et al. ; Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol.93, p.2353−2358, 1996)。流出液を335/385nmの励起/発光波長でモニターした。合成ペントシジンを標準物質として使用した。ペントシジンの検出限界は、0.1pmol/mgタンパク質であった。
抑制効果は、化合物TM−2002と同様にして反応させた陽性対照(ピリドキサミン(シグマ))と比較することにより評価した。なお、アミノグアニジン、オルメサルタン、エダラボンについても、同様に抑制効果を調べた。結果(ペントシジン量nmol/ml)を、図13(図中、対照とあるのは、溶媒のみを使用した陰性対照を意味する。以下、同じ。)に示す。この結果から、TM−2002が陽性対照のピリドキサミンに比較して有意にペントシジンの生成を抑制することが理解される。
(2)患者血漿に代え、BSAとアラビノースとともにインキュベートする以外は、上記(1)と同様にして、他のエダラボン類縁体(化合物(1)または(2))のペントシジン生成抑制活性を調べた。結果は、下記表に示すとおりであった。なお、「−」は、試験を行わなかったことを示す。
Figure 0005738346
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この結果からわかるように、被験化合物(1)〜(78)はいずれもペントシジン産生抑制作用を示した。
試験例2 フェニレン誘導体(I)のAGEs生成抑制効果
本発明において一般式(I)で示すフェニレン誘導体に属する下記の被験化合物について、AGEs生成抑制作用を調べた。
(1)3−[N−[[4−[2−(1H−テトラゾール−5−イル)フェニル]フェニル]メチル]−N−ペンタノイルアミノ]安息香酸
(2)3−[N−[[4−[2−(1H−テトラゾール−5−イル)フェニル]フェニル]メチル]−N−アセチルアミノ]安息香酸
(3)3−[N−[[4−[2−(1H−テトラゾール−5−イル)フェニル]フェニル]メチル]−N−プロパノイルアミノ]安息香酸
(4)3−[N−[[4−[2−(1H−テトラゾール−5−イル)フェニル]フェニル]メチル]−N−ブタノイルアミノ]安息香酸
(5)3−[N−[[4−[2−(1H−テトラゾール−5−イル)フェニル]フェニル]メチル]−N−オクタノイルアミノ]安息香酸
(6)3−[N−[[4−[2−(1H−テトラゾール−5−イル)フェニル]フェニル]メチル]−N−ペンタノイルアミノ]安息香酸(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)メチル
(7)3−[N−[[4−(1H−テトラゾール−5−イル)フェニル]メチル]−N−ペンタノイルアミノ]安息香酸
(8)2−[N−[[4−[2−(1H−テトラゾール−5−イル)フェニル]フェニル]メチル]−N−ペンタノイルアミノ]安息香酸
(9)4−[N−[[4−[2−(1H−テトラゾール−5−イル)フェニル]フェニルル]メチル]−N−ペンタノイルアミノ]安息香酸
(10)2−オキソ−3−プロピル−1−[[4−[2−(1H−テトラゾール−5−イル)フェニル]フェニル]メチル]−1,3,4−トリヒドロキノリン−7−カルボン酸
(11)2−オキソ−3−プロピル1−[[4−[2−(1H−テトラゾール−5−イル)フェニル]フェニル]メチル]−1,3,4−トリヒドロキノリン−6−カルボン酸
(12)2−オキソ−3−プロピル−1−[[4−[2−(1H−テトラゾール−5−イル)フェニル]フェニル]メチル]−1,3,4−トリヒドロキノリン−7−カルボン酸(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)メチル
(13)1−[[4−[2−(1H−テトラゾール−5−イル)フェニル]フェニル]メチル]−1,3,4−トリヒドロキノリン−2−オン
(14)3−オキソ−2−プロピル−4−[[4−[2−(1H−テトラゾール−5−イル)フェニル]フェニル]メチル]−2H−ベンゾ[e]1,4−オキサジン−6−カルボン酸
(15)3−オキソ−2−プロピル−4−[4−[4−(1H−テトラゾール−5−イル)フェニル]メチル]2−H−ベンゾ[e]1,4−オキサジン−6−カルボン酸
(16)3−オキソ−2−プロピル−4−[[4−[2−(1H−テトラゾール−5−イル)フェニル]フェニル]メチル]−2H−ベンゾ[e]1,4−チアジン−6−カルボン酸
(17)3−オキソ−2−プロピル−4−[[4−(1H−テトラゾール−5−イル)フェニル]メチル]2−H−ベンゾ[e]1,4−チアジン−6−カルボン酸
(18)5−[4−[(2−エチル−5,7−ジメチルイミダゾ[4,5−b]ピリジン−3−イル)メチル]フェニル]−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン
(19)5−[4−[(5,7−ジメチル−2−プロピルイミダゾ[4,5−b]ピリジン−3−イル)メチル]フェニル]−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン
(20)3−[N−[4−(2,4−ジオキソチアゾリジン−5−イル)ベンジル]−N−ペンタノイルアミノ]安息香酸。
蛋白質(インフォームド・コンセントが得られた腎不全患者血清)450μlに、被験化合物のジメチルスルホキシド溶液50μl を加え(最終濃度5mM)、得られた混合物を37℃で1週間インキュベーションした。次いで、生成するAGEsの一つであるペントシジンの量を、以下のようにして測定した。
まず蛋白質中に生成したペントシジンを遊離させるため、反応後の試料50μlに10%トリクロロ酢酸50μ1を加え、遠心して蛋白質を沈殿させて回収した。回収した蛋白質を300μ1の5%トリクロロ酢酸で洗浄し、乾燥させた後、6規定塩酸を100μl添加し110℃で16時間加水分解を行なった。蛍光検出器を用いたHPLC(ODS C18、4.6×250mm、335nm、385nm)を用い、0.1%トリフルオロ酢酸添加蒸留水/0.08%トリフルオロ酢酸添加80%アセトニトリルを移動相とするグラジェント法(30分間、1.0ml/分)によりペントシジンの生成量(nmol/1)を測定した(Miyata, T et al.,:J.Am.Soc., Nephro1., 7, 1198-1206, 1996; Miyata,T., et al., Proc. Natl. Acad. Sci.,USA,93 2353-2358,1996)。
AGEs生成抑制効果を検討するため、コントロールによるペントシジン産生量を100%とした場合の、上述のペントシジン生成量の割合をペントシジン産生率(%)として計算し、またこの値からペントシジン産生抑制率(AGEs生成抑制率)(%)を求めた。結果を表15に示す。この結果からわかるように、被験化合物(1)〜(20)はいずれもペントシジン産生抑制作用を示した。
Figure 0005738346
ペントシジンはAGEs構造体のひとつであり、本発明のフェニレン誘導体(I)はペントシジンの産生を抑制することから、AGEs生成抑制効果を有していることが分かった。このように本発明が提供するフェニレン誘導体(I)は、AGEs生成抑制作用を有しており、統合失調症の治療または改善に有効に利用できる。
試験例3 フェニレン誘導体(II)のAGEs生成抑制効果
本発明において一般式(II)で示すフェニレン誘導体に属する下記の被験化合物について、試験例1と同様に方法により、AGEs生成抑制作用を調べた。
(II-1)3−{N−(3−フェニルプロピオニル)−N−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル4−イルメチル]アミノ}安息香酸、
(II-6)3−{N一ペンチル−N−〔4−(2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル)ベンジル〕アミノ}安息香酸、
(II-7)1−[4−(2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル)ベンジル]−2−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−7−カルボン酸、
(II-8)5−[4−(N−メチルスルホニル−N−フェニルアミノメチル)フェニル]−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン、
(II-9)5−[4−(N−ブチルスルホニル−N−フェニルアミノメチル)フェニル]−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン、
(II-10) 3−{N−〔4−(2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル)ベンジル〕−N−(メチルスルホニル)アミノ}安息香酸、
(II-11)3−{N−ブチルスルホニル−N−〔4−(2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル)ベンジル〕アミノ}安息香酸、
(II-15)5−{4−〔2−(2−ピリジル)ベンズイミダゾール−1−イルメチル〕フェニル}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン、
(II-16)5−[4−(2−フェニルイミダゾール−1−イルメチル)フェニル]−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン、
(II-17)1−[4−(2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル)ベンジル]−2−オキソ−3−プロピル−1,2−ジヒドロキノリン−7−カルボン酸、
(II-18)3−{N−シクロヘキサンカルボニル−N−〔4−(2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル)ベンジル〕アミノ}安息香酸、
(II-19)3−{N一〔4−(2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル)ベンジル〕−N−(ピリジン−3−カルボニル)アミノ}安息香酸、
(II-20)3−{N−〔4−(2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル)ベンジル〕−N−(3−フェニルプロピオニル)アミノ}安息香酸、
(II-21)3−{N−(ビフェニル4−カルボニル)−N−〔4−(2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル)ベンジル〕アミノ}安息香酸、
(II-22)3−{N−(フェニルスルホニル)−N−〔4−(2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル)ベンジル〕アミノ}安息香酸、
(II-23)3−{N−(4−メチルフェニルスルホニル)−N−〔4−(2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル)ベンジル)アミノ)安息香酸、
(II-24)3−{N−(ビフェニル4−スルホニル)-N−〔4−(2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル)ベンジル〕アミノ}安息香酸、
(II-25)3−{N−(2−ナフチルスルホール)−N−〔4−(2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル)ベンジル〕アミノ}安息香酸、
(II-27)1−[4−(2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル)ベンジル]−2−オキソ−3−プロピル−2,3−1H−インドール−6−カルボン酸、
(II-28)1−[4−(2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル)ベンジル]−2−オキソ−3−プロピル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]アゼピン−8−カルボン酸、
(II-29)3,3−ジメチル−1−[4−(2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル)ベンジル]−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−7−カルボン酸、
(II-30)1’−[4−(2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル)ベンジル]−2’−オキソ−1’,4’−ジヒドロ−2’H−スピロ[シクロプロパン−1,3’−キノリン]−7’−カルボン酸、
(II-32)3−{N−フェネチルN−〔2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イルメチル〕アミノ}安息香酸、
(II-33)3−{N−〔4−(2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル)ベンジル〕−N−〔(5−メチル−2−フェニル1,3−オキサゾール−4−イル)アセチル〕アミノ}安息香酸、
(II-36)3−{N−(3−シクロヘキシルプロパノイル)−N−〔2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル4−イルメチル〕アミノ}安息香酸、
(II-42)3−{N−(2−オキソ−2−フェニルエチル)−N−〔2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル4−イルメチル〕アミノ}安息香酸、
(II-63)3−{N−〔4−(2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル)ベンジル〕−N−〔4−(2−メチルチアゾール−4−イル)ベンゼンスルホニル〕アミノ}安息香酸、
(II-68)3−{N−(ビフェニル4−イルメチル)−N−〔4−(2,4−ジオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イル)ベンジル〕アミノ}安息香酸。
結果を表16に示す。この結果からわかるように、被験化合物(21)〜(20)はいずれもペントシジン産生抑制作用を示した。
Figure 0005738346
この結果から本発明のフェニレン誘導体(II)はペントシジンの産生を抑制することから、AGEs生成抑制効果を有していることが分かった。このように本発明が提供するフェニレン誘導体(II)は、AGEs生成抑制作用を有し、統合失調症の治療または改善に有効に利用できる。
製剤例1 カプセル剤
被験化合物 10 mg
ラクトース 100 mg
コーン・スターチ 58 mg
ステアリン酸マグネシウム 2 mg
合 計 180 mg
*化合物(1)、化合物(2)、フェニレン誘導体(I)または(II)。
上記で示される各成分の粉末を良く混合し、60メッシュの篩い(メッシュの基準はTyler基準による)を通す。得られる粉末180mgをはかり分け、ゼラチンカプセル(No.3)に充填し、カプセル剤形態の統合失調症の治療または改善剤を調製する。
製剤例2 錠剤
被験化合物 10 mg
ラクトース 85 mg
コーン・スターチ 34 mg
微結晶セルロース 10 mg
ステアリン酸マグネシウム 1 mg
合計 150 mg
*化合物(1)、化合物(2)、フェニレン誘導体(I)または(II)。
上記で示される各成分の粉末を良く混合し、各150mg重量の錠剤に圧縮成型する。必要ならば、これらの錠剤は糖またはフイルムで被覆してもよい。かくして錠剤形態の統合失調症の治療または改善剤を調製する。
製剤例3 顆粒剤
被験化合物 10 mg
ラクトース 839 mg
コーン・スターチ 150 mg
ヒドロキシプロピルセルロース 1 mg
合計 1000 mg
*化合物(1)、化合物(2)、フェニレン誘導体(I)または(II)。
上記で示される各成分の粉末を良く混合し、純水で湿らし、バスケット式顆粒化機で顕粒化し、乾燥して顆粒剤形態の統合失調症の治療または改善剤を調製する。
配列番号4は、グリオキシラーゼI(GLO-I)遺伝子の塩基配列(配列番号1)の201位〔コード領域の塩基配列(配列番号2)の79位に相当〕のアデニンの上流1-200領域の塩基配列を示す。
配列番号5は、GLO-I遺伝子の塩基配列(配列番号1)の202位〔コード領域の塩基配列(配列番号2)の80位に相当〕のシトシンの下流203-502領域の塩基配列を示す。
配列番号6は、GLO-I遺伝子の塩基配列(配列番号1)の454位〔コード領域の塩基配列(配列番号2)の332位に相当〕のアデニンの上流154-453領域の塩基配列を示す。
配列番号7は、GLO-I遺伝子の塩基配列(配列番号1)の454位〔コード領域の塩基配列(配列番号2)の332位に相当〕のアデニンの下流455-754領域の塩基配列を示す。
配列番号8は、GLO-I遺伝子のコード領域の塩基配列(配列番号2)の79-80間の挿入変異を検出するためのPCT-direct sequence に使用するフォワードプライマーの塩基配列を示す。
配列番号9は、GLO-I遺伝子のコード領域の塩基配列(配列番号2)の79-80間の挿入変異を検出するためのPCT-direct sequence に使用するリバースプライマーの塩基配列を示す。
配列番号10は、GLO-I遺伝子のコード領域の塩基配列(配列番号2)の332位の塩基置換変異を検出するためのPCT-direct sequence に使用するフォワードプライマーの塩基配列を示す。
配列番号11は、GLO-I遺伝子のコード領域の塩基配列(配列番号2)の332位の塩基置換変異を検出するためのPCT-direct sequence に使用するリバースプライマーの塩基配列を示す。

Claims (4)

  1. 統合失調症の診断基準に定められる統合失調症に特徴的な症状または所見を有するか、当該基準により統合失調症が疑われる者であって、腎機能障害、糖尿病および炎症を有しない者(被験者)の生体試料を対象として、
    下記(A)〜(C)の工程を有する、当該被験者に対する統合失調症の検査方法:
    (A)(1)被験者の生体試料中のペントシジンの量、および(2)被験者の生体試料中のピリドキサール量からなる群から選択されるいずれか少なくとも1つを測定する工程
    (B)上記(A)工程で得られた被験者における測定値と、当該測定値に対応する健常者における測定値(対照値)とを対比する工程、および
    (C)被験者の生体試料について測定した各測定値が下記に該当する場合に、当該被験者が統合失調症罹患者であるか、または 将来それを発症する危険性が高いと判断する工程:
    (1)被験者の生体試料中のペントシジンの量が、健常者の生体試料中の当該量よりも多い、
    (2)被験者の生体試料中のピリドキサール量が、健常者の生体試料中の当該量よりも少ない。
  2. (2)生体試料中のピリドキサール量の測定に加えて、さらに(3)生体試料中のホモシステイン量を測定する工程、および
    被験者の生体試料中のピリドキサール量が健常者の生体試料中の当該量よりも少なく、また被験者の生体試料中のホモシステイン量が健常者の生体試料中の当該量よりも多い場合に、当該被験者は統合失調症罹患者であるか、または 将来それを発症する危険性が高いと判断する工程
    を有する、請求項1に記載する統合失調症の検査方法。
  3. (1)被験者の生体試料中のペントシジンの量を測定する工程を有する、請求項1または2に記載する統合失調症の検査方法であって、当該ペントシジンの測定方法として、抗−ペントシジン抗体を用いた免疫学的手法、高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー/マススペクトリー、またはAGE-Reader法若しくはAGE-Reader装置を用いることを特徴とする方法。
  4. (1)被験者の生体試料中のペントシジンの量を測定する工程を有する統合失調症の検査に用いる試薬であって、(a)既知濃度のペントシジン、または(b)標識されていてもよい抗−ペントシジン抗体のいずれか少なくとも1つを含有する検査試薬。
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