JP5723988B2 - 圧力モニタリングによる地中ガス保存層からのガス漏れ探知方法 - Google Patents

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Description

本発明は、地中ガス保存システム及び該ガス保存システムからのガス漏れを探知する方法に係り、特に、二酸化炭素または天然ガスなどを陸上または海底地下深部の油田、ガス田、帯水層などを用いて保存する地中ガス保存システムからのガス漏れ有無を探知するための方法に関する。
産業化以来たゆまず排出されてきた温室ガスにより温暖化問題が深化しつつある。例えば、去る100年間海水面の高さが10〜25cm上昇することでパプアニューギニアなどの南太平洋の島々が海につかり、北半球の氷山がほぼ20%以上低減し、砂漠化、気象異変などの多い問題が発生しつつある。
地球温暖化を引き起こす温室ガスは、メタン、フレオンガス、二酸化炭素などその種類が多様であるが、これらのうち二酸化炭素が規制可能なガス(controlable gas)であり、全体で占める比重が80%で最も大きいため、温室ガス問題は主に二酸化炭素にフォーカスが合わせられている。
二酸化炭素減縮技術の一つとして、最近CCS(Carbon Capture&Storage)への期待が高まりつつある。特に国際エネルギー機構(IEA)によれば、2050年には二酸化炭素減縮量の19%である年間約92億トンの二酸化炭素をCCS技術が担当せねばならないと分析された。現在実証または商用化規模であるといえるCCSプロジェクトが全世界で4個のみ稼動している状態であるが、現在計画中のプロジェクトが約300個であり、2050年には3500個以上のプロジェクトが必要であるという予測も出ている。
CCSの保存分野である地中保存技術は、発電所などで捕集された二酸化炭素を陸上または海底地下の深部に半永久的に保存させる技術であり、地質学的環境によって油田、ガス田、帯水層、石炭層などが主要保存場所である。保存場所を定める時に最も重要な条件としては、少なくとも800m以上の深部地域でなければならず、貯留岩(保存層)は孔隙率及び透水率が大きくなければならず、その上部には、注入された二酸化炭素が地上に漏れない不透水層(上部帽岩)が存在せねばならない。
地中保存技術を具現するためには、適当なサイト選定と共に漏れの恐れを最小化するための注入計画の樹立が重要であり、二酸化炭素の注入後には二酸化炭素が計画された地層に保存されて統制可能な位置に留まっているという点、すなわち、漏れ有無のモニタリングが非常に重要である。
ノルウェーのスレイプニル(Sleipner)、スノービット(Snohvit)、カナダのウェーバーン(Weyburn)、アルジェのインサラ(In Salah)などの多くの地中保存プロジェクトが実行または計画されているが、注入以後に漏れ有無を確認できる信頼性のある経済的なモニタリング方法は提示されておらず、かつ国際的基準のモニタリングプロトコルが用意されていないことにも問題がある。
しかし、二酸化炭素地中保存技術の目標が、二酸化炭素地中保存による炭素排出権(carbon credit)獲得という点に鑑みれば、注入された二酸化炭素が再び漏れずに保存されているということを立証することは非常に重要な問題であるといえる。このような観点で、既存の石油や天然ガス開発または石油回収増進過程で重要に考慮されていない地層内モニタリング技術が非常に重要に浮び上がっている。
現在適用可能なモニタリング技術には、弾性波探査、電気探査、重力探査、注入地層内温度測定などの地球物理学的モニタリングと、地表または地下水内の二酸化炭素の濃度測定などの地球化学的モニタリング、試錐孔内のモニタリング技術などがある。しかし、これらの技術のうち一部は、個別的に適用するには信頼性が劣り、そうであるとして、可能なモニタリング技術を全体的に使えば、過多コストがかかるという問題点がある。
また最も基本的なモニタリング手段として使っている弾性波を用いる場合、陸上では季節や天気、送/受信元の位置変化などの影響で調査の環境及び条件が毎度変わるため、その結果を信頼できないという問題点がある。海洋の場合にはまた他の問題に出会う。陸上の場合、観測井(observation well)を活用するか、または地下水、土壌、大気モニタリングによりCO漏れを探知するが、海洋の場合、コスト問題で観測井の適用が困難であり、弾性波探査以外のその他の土壌または大気モニタリングも適用し難いので、直接的探知手段自体が極めて制限されている。
図1及び図2は、オーストラリアのOtwayプロジェクトで実際に使われたモニタリング技法である。Otwayの場合、最も幅広いモニタリング手段が使われたプロジェクトであり、図1及び図2の図表を参照すれば、保存場所及び上部帽岩の無欠性(integrity)に係る地球化学的モニタリング及び地球物理学的モニタリングと、ガスが漏れていないことを証明するためのAssuranceモニタリングのために、大気、土壌、物理検層などの技術を使った。
すなわち、保存場所周辺の大気または地下水中の二酸化炭素の濃度、地面での二酸化炭素の濃度などを調査して二酸化炭素の漏れを確認するか、または弾性波探査などを用いて幅広く二酸化炭素の漏れを調査した。このような広範囲なモニタリング手段の適用は、コストとは関係ない研究用プロジェクトであるため可能であり、天文学的費用がかかる実際の商業用プロジェクトでは不可能である。
また、ノルウェーのスレイプニルでは、ガスを注入する前の地質状態(baseline)についての調査と共に周期的な3d地震(seismic)を意味する4D弾性波探査を行った。これらの方法を共に行う場合、ガス漏れ有無について一定ほど信頼性のある調査が可能であるということを確認したが、これも多くの費用がかかるだけではなく地中のCOを定量化するには、技術的成熟度が落ちるという限界点を露出させた。
特に、弾性波探査は、一定周期(ノルウェーのスレイプニルの場合に毎1年)で行われるため、その間の漏れには対応できず、弾性波探査結果の処理に時間が多くかかるという点も短所として指摘されている。図3は、ノルウェーのスレイプニルのtime−lapse 3d seismic surveyを表示したものであり、1994年にガスを注入する前の弾性波探査結果と、1996年に二酸化炭素を注入し始めた以降2001年からの探査結果とが表示されている。2001年からの結果をみれば、二酸化炭素が充填された領域が少しずつ広がりつつあるが、1996年から年間100万トンずつ注入したことに鑑みれば、注入量による差を区分し難い。すなわち、弾性波探査が実際注入量による変化を定量化し難いという点が確認できる。
今後の最小単位の地中保存技術プロジェクトが年間約300万トンであると仮定すれば、毎年行う4D弾性波探査技術のみに依存する場合、結果解析まで考慮すれば、最小300万トンのCO漏れが可能であるといえる。大量のCO漏れ時、これによる対応は、モニタリングとは別途の天文学的コストがかかる。
すなわち、現在のモニタリングだけでは、CO漏れを把握するには技術かつ時間、コスト面でも困難であるため、経済的で信頼性のある、かつリアルタイムでガス漏れ可能性を探知できる技術の開発が強く求まれている。
本発明は、前記問題点を解決するためのものであり、二酸化炭素または天然ガスなどが保存されている保存場所からのガス漏れ可能性を、リアルタイムで信頼性高く探知できる経済的な方法及びその方法が具現されている地中ガス保存システムを提供することを課題とする。
前記課題を解決するための本発明による地中ガス保存システムは、陸地または海底地下の深部に透水性の岩質で形成された保存層と、前記保存層の上部に形成された不透水性の帽岩層及び前記帽岩層の上部に透水性岩質で形成された上部透水層を持つ地層構造;地上から前記保存層まで試錐して形成されたガス注入井の内面に挟み込まれ、前記保存層と同じ深度に配された部分には、周方向に沿って複数のガス注入孔が開いている中空型のケーシング;及び前記上部透水層と同じ深度に配されて前記上部透水層の圧力を探知する圧力センサー;を備える。
本発明により、地中の貯留岩に注入されたガスが外部に漏れるかどうかを、上部透水層の圧力変化を測定することで非常に経済的かつ信頼性高く探知でき、ガス漏れに対してリアルタイムで対応可能になった。
また本発明では、圧力センサーで圧力値をリアルタイムで測定して伝送することで、ガス漏れが探知された場合に即刻な対応が可能であるという利点がある。
さらに、ガス注入時点またはガス注入の中断時点から上部透水層で圧力変化が現れる時間間隔を用いるか、上部透水層の圧力変化の大きさを用いてガス漏れが発生した領域を推定できるという利点がある。
オーストラリアのOtwayプロジェクトに使われたモニタリング技法を示す図表である。 オーストラリアのOtwayプロジェクトに使われたモニタリング技法を示す図表である。 ノルウェーのスレイプニルプロジェクトにおける3D弾性波探査結果であって、左端は、注入前の弾性波探査結果を、上側は、弾性波探査の2D断面を、下側は、弾性波探査の平面を示す写真である。 本発明の一実施形態による地中ガス保存システムの概略的構成図である。 本発明の一実施形態による圧力モニタリングによる地中ガス保存層からのガス漏れ探知方法の実効性を試すための3Dシミュレーションの基本条件を示す表である。 図5の条件による3Dシミュレーションの格子システム及び境界条件を示す図面である。 ガス漏れのない場合の3Dシミュレーションで、20年間ガスを注入して100年間保持した時の経時的なガス注入井の圧力変化及びガス注入累積量を示すグラフである。 ガス漏れのない場合(case1)、ケーシングの外壁に沿って漏れのある場合(case2)、及び帽岩層の亀裂または断層を通じて漏れのある場合(case3)の3Dシミュレーションで、経時的なガス注入井の圧力変化を示すグラフである。 ガス漏れのない場合(case1)の3Dシミュレーションで、経時的なガス注入井及び上部透水層の圧力変化を示すグラフである。 ケーシングの外壁に沿ってガス漏れのある場合(case2)の3Dシミュレーションで、経時的なガス注入井及び上部透水層の圧力変化を示すグラフである。 case3の3Dシミュレーションで、帽岩層に発生した亀裂の位置及び垂直透過度を示す図面である。 帽岩層の亀裂を通じるガス漏れのある場合(case3)の3Dシミュレーションで、経時的なガス注入井及び上部透水層の圧力変化を示すグラフである。 ガス漏れのない場合(case1)、ケーシングの外壁に沿って漏れがある場合(case2)、及び帽岩層の亀裂を通じて漏れがある場合(case3)の3Dシミュレーションで、経時的な上部透水層の圧力変化を示すグラフである。 ガス漏れが発生する地域の距離差及び圧力変化が現われる時間と関係を示すグラフである。 本発明の他の実施形態による地中ガス保存システム200の概略的構成図である。
前記課題を解決するための本発明による地中ガス保存システムは、陸地または海底地下の深部に透水性の岩質で形成された保存層と、前記保存層の上部に形成された不透水性の帽岩層及び前記帽岩層の上部に透水性岩質で形成された上部透水層を持つ地層構造;地上から前記保存層まで試錐して形成されたガス注入井の内面に挟み込まれ、前記保存層と同じ深度に配された部分には、周方向に沿って複数のガス注入孔が開いている中空型のケーシング;及び前記上部透水層と同じ深度に配されて前記上部透水層の圧力を探知する圧力センサー;を備える。
そして前記圧力センサーは、前記ケーシングの内部を通じて前記上部透水層と同じ深度に配され、前記ケーシングには、前記上部透水層と同じ深度に配された部分に周方向に沿って複数の観測孔が開いて、前記圧力センサーと前記上部透水層とを連通させる。また別途の観測井を前記上部透水層まで開けて、前記圧力センサーをこの観測井を通じて前記上部透水層と同じ深度に配してもよい。
一方、本発明による圧力モニタリングによる地中ガス保存層からのガス漏れ探知方法は、前記地中ガス保存システムで前記上部透水層に設けた圧力センサーを通じて前記上部透水層の圧力の変化を測定し、前記保存層からのガス漏れを探知する。
本発明の一実施形態では、前記保存層にガスを注入した後で既定の時間内に前記上部透水層の圧力が上昇する場合、または前記保存層へのガス注入を中断した後で既定の時間内に前記上部透水層の圧力が下降する場合、前記ガス注入井のケーシング外壁を通じて前記保存層のガスが上部に漏れると判断する。
また本発明の一実施形態では、前記保存層にガスを注入した後で前記上部透水層の圧力が上昇する場合、または前記保存層からのガス注入を中断した後で前記上部透水層の圧力が下降する場合、前記保存層にガスを注入または中断した時点から前記上部透水層の圧力が変化(上昇または下降)した時点までの時間を用いて、ガスが漏れる領域を推定する。
そして、本発明の一実施形態による圧力モニタリングによる地中ガス保存層からのガス漏れ探知方法は、前記保存層にガスを注入する途中で前記上部透水層の圧力が既定の範囲以上に変化する場合、前記帽岩層に新たに亀裂が発生したと判断する。
また本発明の一実施形態では、前記上部透水層の圧力変化の大きさを用いて、前記圧力センサーからガスが漏れる領域までの距離を探知する。
以下、添付した図面を参照して、本発明の一実施形態による地中ガス保存システム及び圧力モニタリングによる地中ガス保存層からのガス漏れ探知方法について説明する。
図4は、本発明の一実施形態による地中ガス保存システムの概略的構成図である。図4を参照すれば、本発明の一実施形態による地中ガス保存システム100は、基本的に陸上または海洋地中に二酸化炭素などのガスを保存するためのものであり、ガスの保存のためには特殊な地質構造が要求される。
すなわち、ガス保存のためには、保存層10及び帽岩層20が必要である。保存層10は、ガスが注入及び保存されるところであり、多孔性及び透水性を持つ岩質からならねばならず、砂、砂岩、長石質砂岩などの堆積岩層がこれに当たる。石油や天然ガスが埋蔵されている貯留岩が保存層と同じ条件を持っているところ、開発が完了した油田やガス田を保存層として使う。同じ構造で地下水が岩石の孔隙に飽和されている帯水層も保存層として使われる。
ガス保存の原理をさらに具体的に説明すれば、多孔性岩質からなる保存層10内の微細な孔隙は、石油や天然ガスなどの炭化水素または水などの流体で飽和されているが、二酸化炭素などのガスを高圧で保存層10に注入すれば、ガスが孔隙内の流体を押し出しつつ保存層の孔隙に充填されて保存されることである。また保存層10は、地下の深部、約800mの深度を持っていてはじめて高圧でガスを注入及び保存できる。
そして、保存層10に保存されたガスの保存層10からの漏れを防止するためには、油田やガス田と同様に保存層10の上部に不透水性(孔隙率及び透水率が極めて底い)の岩質からなる帽岩層20(cap rock)が存在していなければならない。油田やガス田の帽岩層は、ほとんどがシェール層で形成されている。
前記のように、ガスを保存するためには、透水性の保存層10と、保存層10の上部に不透水性の帽岩層20とが存在すればよいが、本発明では、保存層10に注入されたガスが、帽岩層20の亀裂またはガス注入井wのケーシング50の外壁に沿って上部に漏れるかどうかを確認することを主目的とするところ、別途の地層構造が要請される。すなわち、帽岩層20の上部に再び砂岩などの多孔性及び透水性岩質からなる上部透水層30が存在していなければならない。
具体的に説明すれば、帽岩層20に亀裂が発生したか、または後述するガス注入井wのケーシング50の外壁と帽岩層20との間に隙間が生じた場合、注入されたガスがこの亀裂または隙間を通じて上部透水層30に流れ込むか、または注入されたガスが上部透水層に既存在の流体を押し出しつつ上部透水層30の圧力を変化させる。
本発明では、上部透水層30の圧力を測定して保存層10から上部透水層へのガス漏れ可能性を探知できるというところに技術的に着目した。
前記構成の地質構造を条件として、ガスを注入するためのガス注入井wを形成する。ガス注入井wは、地上から保存層10まで試錐して形成する。ガス注入井wにはケーシング50を挿入する。ケーシング50は、中空型の管状にガス注入井wに挿入した後、ケーシング50の外壁とガス注入井wの内壁との間はモルタルなどのシーリング材51で充填し、保存層10と帽岩層20との間及び帽岩層20と上部透水層30との間を完全に密閉させる。開発済みの油田やガス田の場合に既に試錐孔が形成されているため、試錐孔をガス注入井wとして活用してもよい。
そして、ガス注入井wには、二酸化炭素などのガスをガイドするためのチュービング52が用意される。チュービング52は、地上からガス注入井wに沿って挿入され、チュービング52の下端部は、保存層10が位置している深度に配される。ケーシング50の下端部には、周方向に沿って複数のガス注入孔55が形成される。チュービング52から排出された高圧のガスは、ケーシング50及びシーリング材51を貫通して形成されるガス注入孔55を通じて保存層10に注入される。
そして、チュービング52の下端部とケーシング50との間にはパッカー53が挟み込まれることで、ケーシング50の下端部のガスが注入される領域とその上側の上部領域とを互いに分離、密閉させる。
一方、ケーシング50の全体領域のうち上部透水層30と同じ深度に配された領域には、ケーシング50の周方向に沿って複数の観測孔57が開く。この観測孔57は、ケーシング50とシーリング材51とを貫通して形成されることで、上部透水層30とケーシング50の内側とを相互連通させる。そして、観測孔57の上下両側には、ケーシング50の内壁とチュービング52の外面との間に環状のパッカー58、59が挟み込まれることで、観測孔57が形成された領域のケーシング50の内部を隔離及び密閉させる。この密閉された領域は、上部透水層30の深度範囲内に配される。
パッカー58、59によって密閉された領域には圧力センサー60が配される。圧力センサー60は、有線または無線で地上のコントローラと交信するように設けられる。この圧力センサー60は、観測孔57を通じて伝達される上部透水層30の圧力を探知する役割を行う。すなわち、圧力センサー60が配された空間は、パッカー58、59によって密閉され、但し、観測孔57を通じて上部透水層30のみと連通されているので、圧力センサー60は上部透水層30の圧力変化を探知する。
保存層10から漏れたガスが、帽岩層20を経て上部透水層30の孔隙(水または流体で満たされている)に流れ込めば、ガスの流れ込みによる圧力が、孔隙内の媒質を通じて上部透水層30全体に伝達される。圧力センサー60は、上部透水層30の圧力変化を探知し、これにより保存層10のガスが漏れているということが分かる。
特に、圧力は、流体(注入されたガスまたは孔隙内に飽和されていた炭化水素や水などの流体)の実質的移動なしでも上部透水層30全体に速く伝播される特性がある。すなわち、ガスの漏れによる圧力が上部透水層30内の孔隙に充電されていた媒質(上部透水層に充電されていた既存の流体)に連続的に伝播されるので、ガス漏れを類推できる。流体の流れ込みによる上部透水層の圧力変化は、流体の実質的な移動時間に比べればほぼ即刻で探知できるので、ガス漏れモニタリング手段として非常に類似して機能する。
本発明による地中ガス保存システム100と、圧力モニタリングによる地中ガス保存層からのガス漏れ探知方法との運用例について説明する。
先ず、ガスが漏れる位置による上部透水層30での圧力変化間の相関性を通じて、本発明ではガスが漏れる領域を測定する。すなわち、ガスが漏れた領域が圧力センサー60の近距離にある場合、遠距離にある場合に比べて圧力伝達時間が短い。逆にガス漏れ領域が圧力センサーから遠距離にあれば、圧力伝達時間が相対的に長い。
このような点に着目して、本発明では、ガスを保存層10に注入する時点から上部透水層30の圧力が上昇する時点までの時間を測定し、この時間を用いて漏れの発生距離を逆に推定する。圧力センサー60を中心点として同心円に沿って漏れ発生地域を推定する。
特に、地中ガス保存システム100では、ケーシング50の外壁を通じる漏れが発生しやすい。ここで、ケーシング50の外壁に沿ってガスが漏れるという意味は、シーリング材51の外壁とガス注入井wの内面との間を通じる漏れを意味するのが一般的であるが、ケーシング50の外壁とシーリング材51の内面との間と、シーリング材52の亀裂を通じて上部透水層に漏れる場合と、ケーシング50とシーリング材52とにいずれも亀裂があって上部透水層30に漏れる場合も含まれる。
図4に示したように、ケーシング50の外壁を通じて漏れのある場合、圧力センサー60と最近距離にあるため上部透水層30の圧力はほぼ即刻で上昇する。よって、本発明では、保存層10にガスを注入した時点から既定の時間以内に上部透水層30の圧力が上昇する場合、ケーシング50の外壁に沿って漏れが発生したと判断する。
そして、一般的には、ガス注入時点から上部透水層30の圧力が上昇する時点までの時間によりガス漏れ地域を予測する。距離と圧力変化時点との相関性を定量化するには多くの変数がある。上部透水層30の孔隙率、透水率、そして保存層と上部透水層との境界条件、ガス注入圧力などによって圧力変化時点が変わる。
一方、ガスを注入し始めてから一定時間が経過すれば、経時的に圧力の変化がない定常状態に至る。すなわち、ガス漏れのある場合といっても、ガスを注入し始めた時点に上部透水層30の圧力上昇が発生した後は、経時的に圧力変化なしに一定に維持される。
このように定常状態を維持するうち急に上部透水層30の圧力が上昇すれば、新たにガス漏れが発生したと判断できる。定常状態が解除されるのは、帽岩層20などに新たに亀裂が発生したか、またはケーシング50の外壁に沿ってガス漏れが発生して上部透水層30に保存層内の流体が流れ込んだといえるからである。
但し、ガス注入を始めた後で定常状態を維持している場合であっても一定範囲内では圧力変化があり得るので、本発明では一定範囲内の圧力変化はフィルタリングし、一定範囲を超過する圧力上昇時にのみ新たに亀裂が発生したと判断する。
また、前記保存層10へのガス注入を中断すれば、定常状態が解除されつつ上部透水層30への流体の流れ込みも低減する。よって、ガス注入を中断した時点から上部透水層30の圧力が下降した時点までの時間間の相関性を用いて、ガス漏れ発生地域を類推する。
この場合にも、ガスを注入する場合と同様にガス注入を中断した時点から上部透水層30の圧力下降が既定の時間内に起きる場合、ケーシング50の外壁に沿ってガス漏れが発生していると判断する。そして、一般的には、圧力下降が探知された時間と圧力センサー60からガス漏れが発生した地点までの距離とは比例関係にあるので、経時的に圧力センサー60を中心点として半径を広げつつ同心円領域で漏れ地域を予測する。
一方、圧力変化が探知される時点ではなく、圧力変化の大きさでもガス漏れ地域を予測する。すなわち、同じ圧力でガスを注入しても、ガス漏れ発生地域が圧力センサー60から近距離である場合が、遠距離である場合に比べて上部透水層30の圧力変化が大きく起きる。圧力は全方位的に伝達されるので、遠距離で圧力が伝達されれば、近距離である場合に比べて圧力の損失が大きくなり、その伝達経路上で周辺の条件に影響を受けて圧力の損失が伴うからである。
本発明では、前記のように上部透水層30で圧力変化が探知される時間及び圧力変化の大きさを用いてガス漏れが発生した地点を予測及び判断する。但し、正確に定量的に位置及び距離を判断することは周辺の条件が考慮されてはじめて可能であるが、本発明により定量的測定の基礎が用意される。
本発明でケーシングの外壁を通じる漏れや帽岩層の亀裂または断層によってガスが漏れると説明したが、ここでガスが漏れるという意味は、保存のために注入されたガスが保存層から帽岩層を経て上部透水層に直接的に漏れることでもあるが、注入されたガスが亀裂の発生した領域まで到達するには一定期間がかかるため、保存層の孔隙に満たされている既存の流体(天然ガス、石油、水などの流体)が帽岩を経て上部透水層に漏れることでもある。
貯留層シミュレーションにより本発明の妥当性を確認した。CO隔離シミュレーションは、カナダCMG(Computer Modeling Group)会社で開発した多相・多成分モデルであるGEMを活用した。塩水帯水層システムの入力資料及び格子システムは、図5の表に整理された通りである。基本的な地質条件は、Lee et al.(2010)が発表(Lee,J.H.,Park,Y.C.,Sung,W.M. and Lee,Y.S.(2010)‘A Simulation of a Trap Mechanism for the Sequestration of CO into Gorae V Aquifer,Korea’,Energy Sources,Part A:Recovery,Utilization,and Environmental Effects,32:9,pp.796〜808)した貯留層(保存層)を基本として格子数は70×70×24個で総117,660個であり、ガス注入井の数は1つと設定した。Leeの研究は実際貯留層を対象としたが、対象貯留層がCO保存によくない特徴を持つので、対象地層の孔隙率及び透水率をそれぞれ20%と100mdと設定した。上部透水層への漏れに決定的影響を及ぼす垂直透過度は、水平透過度の1/10である10md(millidracy)とし、相対透水率(relative permeability)の履歴現象は無視した。
図6は、本シミュレーションで使った格子システムであり、数字は各セルのTop depth(地表面からの深度)を示している。境界条件は、下端部及び右側面に断層が存在し、注入されたCOが断層方向に漏れないように閉まった境界条件に設定し、それ以外の境界面は塩水帯水層と接している条件に設定し、漏れ可能な条件に設定した。
圧力モニタリングの効用性を調べるCO保存シミュレーションは、次の3つのシナリオで行った。先ず、基準条件として上部層への漏れのない場合をcase1と選定した。case1でのガス注入井の圧力及びガス注入率などを定め、上部透水層での圧力を観測した。
case2は、注入位置から上部層に移動する最短経路であるケーシングの外壁を通じる漏れを仮定し、帽岩層格子のうち一つ(35、37、13)が透水性であると仮定した。case3は、ガス注入井から比較的遠距離にある帽岩層の亀裂を通じる漏れを仮定した。すなわち、水平方向に3.2km、垂直方向に391m離れた位置に亀裂(35、69、13)を通じて漏れが起きる場合である。ガス注入井から圧力センサーのある上部透水層モニタリング位置までは、6km以上離れている。これに対してcase2は、垂直方向に50mほどの距離差のみある。
CO注入量は、一日652,214m(1233トン)と20年間総900万トンを注入する場合を仮定した。500MWe級火力発電所で年間排出するCOの量が約300万トンであることを仮定すれば、非常に小量といえる。しかし、本シミュレーションの目的が上部透水層への漏れを圧力でモニタリングできるかどうかを確認することであるので、量の大小は問題にならない。かえって、小量のガスを注入する場合にも圧力変化探知ができるかどうかを調べる必要がある。
図7は、case1でのガス注入井の保存層での圧力(以下‘BHP(bottom hole pressure’という)と累積注入量を示したものである。
上部透水層への漏れ有無によるガス注入井でのBHPを図8に示した。上部透水層への漏れが全然ないcase1が最も高く示され、ケーシングを通じる漏れのあるcase2が最も低く示された。帽岩層の亀裂を通じる漏れのあるcase3は、その中間程度に示されたが、これは、注入位置の直ぐ垂直上部に漏れる場合には、漏れ経路が約50mであるのに対し、case3の帽岩層の亀裂は、ガス注入井から約6km離れた遠距離に位置しているからと判断される。
ケーシングまたは亀裂を通じるCOの定量的漏れ量についての参照資料がほとんどない実情であるため、本シミュレーションでは、ケーシングと遠距離亀裂とも該格子の垂直透過度を10mdに設定することで漏れを模写した。
図9及び図10のグラフは、case1及びcase2で、ガス注入前のBHPの変化量及び上部透水層(圧力センサーが位置している地点で測定)の圧力変化量が示されている。
漏れのない場合であるcase1は、CO注入が上部透水層圧力に及ぼす影響がほとんどないということを示している。これに対し、ケーシングを通じる漏れのあるcase2では、ガス注入と同時に上部透水層での圧力も極めて高くなるということが分かる。図10で、ガス注入初期以後に注入中断までガス注入井での最高圧力差は、閉井時点である7300日であって981.2kPaであり、この時、上部透水層での圧力差は495.3kPaであり、ガス注入井の底部の圧力差の50%ほどに至った。
前記シミュレーション結果を調べれば、ガス漏れのある場合とない場合とで上部透水層での圧力差が目立つように示されるということが分かり、これは、上部透水層での圧力測定がガス漏れ探知または漏れ標識因子としての役割を十分に行えると立証したといえる。
case2で実際上部透水層へのCO移動は、ガス注入後40日経過した時点と予想されるが、圧力は、注入とほぼ同時に増加し、上部透水層でその変化を容易に探知することができた。
前述したようにcase3は、遠距離帽岩層の亀裂または断層を通じる漏れを仮定した。図11のように、ガス注入井から水平に3200m、垂直方向には391m上部の帽岩層に亀裂があると仮定した。また図11には、保存層と帽岩層及び上部透水層の垂直透過度が表示されている。帽岩層は、透水率が0の状態であり、保存層及び上部透水層は透水率が非常に高い。漏れが発生した地点では、帽岩層の透過度が変化して亀裂が発生したということを示す。
図12には、シミュレーション結果が示されている。BHPの圧力差は699.2kPaとcase2に比べて高く示されたが、case1に比べては低い。上部透水層での圧力差は最大130.6kPaとcase2に比べては低い値を示した。
再び図12を参照すれば、case3でCOが実際に移動して上部透水層に到逹する時期は12,400日が経過した34年後と判断されるが、圧力はもうその前に反応していることが分かり、その頂点も注入が終わる7300日近くであって、上部透水層での圧力測定を通じて漏れ可能性を探知できるということが分かる。
図13のように、case1〜case3の上部透水層での圧力測定値を同時に図示すれば、さらに明らかになる。すなわち、距離によって圧力反応が変わるが、ガス注入井を活用して上部透水層で圧力モニタリングを行う場合、CO漏れ可能性を予め遮断できると期待される。
またcase3の漏れ経路は、case2に比べて3km以上遠く離れている。図14は、このような距離差が圧力変化の大きさだけではなく到達時間にも影響を及ぼしていることを示している。図14のグラフを参照すれば、ガス注入井ケーシングを通じる漏れである場合に、注入以後に非常に速く圧力上昇が確認されるが、case3のように遠距離漏れである場合には、相対的に遅れて圧力が上昇している。すなわち、定量的な位置把握は現段階では限界があるが、history matchingなどを活用すれば、本発明により概略的ガス漏れ位置把握または定性的位置推定が可能であるということが分かる。
前記シミュレーション結果から分かるように、ガス地中保存システムでの保存層からのガス漏れ有無は、帽岩層上部に配された上部透水層の圧力変化をよって探知できるということが分かった。
すなわち、本発明による方法を通じて、ガス漏れ有無が直接的に探知され、圧力センサーでは圧力値をリアルタイムで測定して伝送することで、ガス漏れが探知された場合に即刻な対応ができる。
さらに、ガス注入時点またはガス注入の中断時点から上部透水層で圧力変化が現われる時間間隔を用いるか、または上部透水層の圧力変化の大きさを用いてガス漏れが発生した領域を推定する。
すなわち、本発明を通じてガスが統制可能な位置に留まっており、外部への漏れ有無を経済的で信頼性のように探知できる基礎が用意されたといえ、ガス漏れに対してリアルタイムで対応できるようになったというところに大きい意味があるといえる。
以上、圧力センサーはガス注入井を通じて設けられると説明及び図示したが、必ずしもガス注入井を通じて設ける必要はなく、図15に示した実施形態200のように、ガス注入井とは別途の観測井を開けて上部透水層の圧力変化を測定してもよい。図15に示した実施形態では、ガス注入井とは別途に観測井90を試錐し、この観測井90に圧力センサー60を設けたという点以外には他のすべての構成要素は前述した実施形態と同一であるので、具体的な説明は略する。
本発明は、添付した図面に図示された一実施形態を参照として説明されたが、これは例示的なものに過ぎず、当業者ならば、これより多様な変形及び均等な他の実施形態が可能であるという点を理解できるであろう。したがって、本発明の真の保護範囲は特許請求の範囲のみによって定められねばならない。

Claims (9)

  1. 陸地または海洋地中に透水性の岩質で形成された保存層と、前記保存層の上部に形成された不透水性の帽岩層及び前記帽岩層の上部に透水性岩質で形成された上部透水層を持つ地質構造において、地上から前記保存層までガス注入井を試錐し、前記ガス注入井を通じて前記保存層にガスを注入及び保存する地中ガス保存システムの前記保存層からのガス漏れを探知するための方法であり、
    前記上部透水層に設けた圧力センサーを通じて前記上部透水層の圧力の変化を測定し、前記保存層からのガス漏れを探知することを特徴とする圧力モニタリングによる地中ガス保存層からのガス漏れ探知方法。
  2. 前記ガス注入井内で、前記上部透水層と同じ深度に前記上部透水層の圧力を測定する圧力センサーを設け、
    前記ガス注入井で、前記圧力センサーが設けられた領域の上側及び下側はそれぞれ密閉させ、前記圧力センサーは、前記上部透水層とのみ連通するようにシーリングして前記上部透水層の圧力変化を測定することを特徴とする請求項1に記載の圧力モニタリングによる地中ガス保存層からのガス漏れ探知方法。
  3. 前記ガス注入井とは別途に地上から前記上部透水層まで観測井を穿孔し、前記圧力センサーを設けて前記上部透水層の圧力変化を測定することを特徴とする請求項1に記載の圧力モニタリングによる地中ガス保存層からのガス漏れ探知方法。
  4. 前記保存層にガスを注入した後、既定の時間内に前記上部透水層の圧力が上昇する場合、前記ガス注入井のケーシング外壁を通じて前記保存層のガスが上部に漏れると判断することを特徴とする請求項1に記載の圧力モニタリングによる地中ガス保存層からのガス漏れ探知方法。
  5. 前記保存層にガスを注入した後、前記上部透水層の圧力が上昇する場合、前記保存層にガスが注入され始めた時点から前記上部透水層の圧力が上昇した時点までの時間を用いて、ガスが漏れる領域を探知することを特徴とする請求項1に記載の圧力モニタリングによる地中ガス保存層からのガス漏れ探知方法。
  6. 前記保存層にガスを注入する途中で前記上部透水層の圧力が既定の範囲以上に変化する場合、前記帽岩層に新たに亀裂が発生したと判断することを特徴とする請求項1に記載の圧力モニタリングによる地中ガス保存層からのガス漏れ探知方法。
  7. 前記保存層へのガスの注入を中断した後、既定の時間内に前記上部透水層の圧力が下降する場合、前記ガス注入井のケーシング外壁を通じて前記保存層のガスが上部に漏れると判断することを特徴とする請求項1に記載の圧力モニタリングによる地中ガス保存層からのガス漏れ探知方法。
  8. 前記保存層へのガスの注入を中断した後、前記上部透水層の圧力が下降する場合、前記保存層へのガスの注入を中断した時点から前記上部透水層の圧力が下降した時点までの時間を用いて、ガスが漏れる領域を探知することを特徴とする請求項1に記載の圧力モニタリングによる地中ガス保存層からのガス漏れ探知方法。
  9. 前記上部透水層の圧力変化の大きさを用いて、前記圧力センサーからガスが漏れる領域までの距離を探知することを特徴とする請求項1に記載の圧力モニタリングによる地中ガス保存層からのガス漏れ探知方法。
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