以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
まず、添付の図1は、本発明の一実施の形態になる投写型映像表示装置の全体構成を示す斜視図である。即ち、この図において、投写型映像表示装置100を構成する略箱型の筐体110の内部には、例えば、外部のパーソナルコンピュータから入力される画像又は映像を表示する画像表示素子1と、高輝度の白色光を発生するランプなどの光源8とを備えており、更に、その構造については以下に詳細に説明するが、当該光源8から照射されて画像表示素子1で変調された光を拡大して照射するための投写光学ユニットが搭載されている。そして、この投写型映像表示装置を室内で使用する場合、当該投写光学ユニットから出射した光は、図に矢印で示すように、その筐体110の一方向(図では、長手方向)に対向して位置する部屋の壁面やシート状のスクリーン等、所謂、スクリーン5上に投写されることとなる。
次に、添付の図2の断面図を参照しながら、上記投写型映像表示装置を構成する投写光学ユニットの基本的な光学構成について説明する。なお、この図2の断面は、上記図1の右下方向(図の白抜きの矢印を参照)から見た断面を示しており、この図2に示したXYZ直交座標系(図中に矢印で示す)におけるYZ断面に相当する。
この図2にも示すように、本発明になる投写光学ユニットは、光源8からの光を入射して所望の映像を射出する画像表示素子1とプリズム10、前方レンズ群2と後方レンズ群3とを含む2つのレンズ群から構成される透過(レンズ)光学系、そして、回転対称でない(即ち、非回転対称)の自由曲面形状の反射面を有する反射鏡(以下、自由曲面ミラーと言う)4を含む反射光学系とによって構成される。
ここでは、上記画像表示素子1として、例えば、液晶パネルに代表される透過型のものを採用した例を示しているが、本発明では、これに限らず、例えば、CRTのような自発光型のものでもよい。また、上記画像表示素子1として、例えば上述した液晶パネルなどの透過型のものを採用する場合には、液晶パネルを照射する光源8となるランプが必要となる。また、当該液晶パネルとして、所謂、3板式のように、R、G、Bの複数の画像を合成する方式でもよく、その場合には、映像合成用のプリズム等が必要となる。しかしながら、これら液晶パネルの詳細やこれを照射する光源8となるランプ等については、後に説明することとし、ここでは直接的に関係しないため、その図示は省略している。一方、CRTのような自発光型のものでは、上記光源8を必要としないことは明らかであろう。
以上のような構成になる本発明の投写光学ユニットでは、上記画像表示素子1からプリズム10を介して射出した光は、まず、レンズ光学系を構成する前方レンズ群2に入射される。なお、後にもその詳細を説明するが、この前方レンズ群2は、回転対称な面形状を有する、正のパワー及び負のパワーを有する複数の屈折レンズを含んで構成されている。その後、この前方レンズ群2から射出した光は、少なくとも一方の面が回転対称でない(回転非対称の)自由曲面の形状を有する複数(本例では2枚)のレンズを含めた複数のレンズから構成される後方レンズ群3を通過する。そして、この後方レンズ群3から射出した光は、更に、回転対称でない自由曲面形状の反射面を有する反射鏡(以下、自由曲面ミラーと言う)4を含む反射光学系で拡大反射された後、所定のスクリーン5(例えば、部屋の壁面やシート状のスクリーン等)上に投写されることとなる。
なお、本実施の形態では、上記図2からも明らかなように、従来技術(特に、上述の特許文献1や2)のように投影画面(表示素子)を投影系の光軸に対して垂直方向にシフトし、更には、投影系の光軸に対して所定の角度傾けて付加光学系を配置する光学系とは異なり、上記画像表示素子1は、その表示画面の中央がレンズ光学系のほぼ光軸上に位置するように配置されている(即ち、共軸光学系を形成している)。従って、上記画像表示素子1の表示画面の中央から出てレンズ光学系の入射瞳の中央を通ってスクリーン5上の画面中央に向かう光線11は、ほぼ、レンズ光学系(上記前方レンズ群2と後方レンズ群3を含む)の光軸に沿って進む(以下、これを「画面中央光線」という)。その後、この画面中央光線11は、上記反射光学系(自由曲面ミラーを含む)の自由曲面形状を有する反射面4上の点P2で反射された後、スクリーン5上の画面中央の点P5に、スクリーンの法線7に対して下方から斜めに入射する。この角度を以下、「斜め入射角度」と称し、θsで表わすこととする。このことは、即ち、前記レンズ光学系の光軸に沿って通過した光線がスクリーンに対して斜めに入射していることで、実質的にレンズ光学系の光軸がスクリーンに対して斜めに設けられている(斜め入射系となる)ことを意味することとなる。
なお、上述したように、スクリーンに対して光線を斜めに入射すると、上記画像表示素子1から投写された長方形の形状が台形になる、所謂、台形歪を含め、その他にも、光軸に対して回転対称でないことによる種々の収差が生じることとなるが、しかしながら、本発明では、これらを前記レンズ光学系を構成する後方レンズ群3と、そして、前記反射光学系の反射面とで補正するものである。
特に、上記画像表示素子1から投写された光線を、前記反射光学系を構成する反射鏡4の反射面で拡大反射してスクリーン5上に斜めに入射することによれば、レンズにより得られる光の偏心量(偏向角)に比較し、より大きな偏心量(偏向角)が得られ、また、収差も生じ難くいことから、装置の大型化を抑え、且つ、広画角化を図ることが可能となる。即ち、上記前方レンズ群2と後方レンズ群3を含むレンズ光学系を、上述した従来技術(特に、上述の特許文献1や2)の付加光学系(アフォーカルコンバータ)を偏心させて台形歪み抑える構成に比較して、より口径の小さな光学系として構成することが可能となる。
また、上記反射光学系を構成する反射鏡4の反射面に入射する光を、上述したように、前記レンズ光学系により所定の大きさまで拡大して投射することから、従来の反射鏡だけで拡大投射系を構成する構造(例えば、上述した特許文献3)に比較しても、その製造が容易となる。即ち、レンズ光学系を反射光学系とは個別に製造し、その後、装置筐体内において、これら両者の位置を固定調整する構成とすることにより、特に、量産に適したものとなる。また、上記のように、台形歪等を補正するための後方レンズ群3を、前記前方レンズ群2の前方に配置する構成によれば、この後方レンズ群3と前方レンズ群2との間の間隔を小さくして配置することが可能となることから、当該投写光学ユニットを搭載する装置を全体的にコンパクトとすることができ、特に、スクリーンの下部での高さを小さく出来るという好適な効果が得られる。
このように、自由曲面形状を有する透過型のレンズ光学系と、自由曲面形状を有する反射光学系とを組み合わせることによれば、特に、フロント投写型の映像表示装置に適した場合、フロント投写型で強く要求される広画角化を、確実かつ比較的容易に、かつ、装置全体を小さくしたコンパクトな投写型映像表示装置として実現することが可能となる。
次に、添付の図3及び図4には、上記投写型映像表示装置を構成する投写光学ユニットのレンズ光学系及び反射光学系を含む光学素子の詳細が示されている。即ち、図3は上記投写光学ユニットの斜視図であり、図4はその垂直方向断面(図4(a))及びその水平方向断面(図4(b))をそれぞれ示している。
これらの図にも示されるように、レンズ光学系では、映像表示素子1からプリズム10を介して出射される映像は、まず、回転対称形状を有する複数のレンズを含む前方レンズ群2に入射される。上述したように、前方レンズ群2は、回転対称の球面レンズと非球面レンズとを含んでいる。又は、添付の図5や図6に示すように、前方レンズ群2と後方レンズ群3の途中に折り曲げミラー35を配置して光線を直角に折り曲げる構成としてもよい。
また、後方レンズ群3は、少なくとも2つの自由曲面レンズにより構成されている。これらの図にも示すように、反射鏡4の反射面S22に最も近い自由曲面レンズ31は、その光の射出方向に凹部を向けており、かつ、前記スクリーンの下端に入射する光線が通過する部分の曲率が、前記スクリーンの上端に入射する光線が通過する部分の曲率よりも大きく設定されている。即ち、自由曲面レンズとは、その光の射出方向に凹部を向けて湾曲されており、かつ、スクリーンの下端に入射する光線が通過する部分の曲率が、前記スクリーンの上端に入射する光線が通過する部分の曲率よりも大きい形状を有するものとする。
また、本実施形態では、次の条件を満たすように構成されている。即ち、上記の図2に示す断面内において、上記画像表示素子1の画面下端から射出されて前方レンズ群2の入射瞳の中央を通り、スクリーン5の画面上端の点P6に入射する光線を光線12とする。この光線12が自由曲面ミラー4を通過する点P3からスクリーン上の点P6にまで至る光路長をL1とする。また、上記画像表示素子1の画面上端から射出されて前方レンズ群2の入射瞳の中央を通り、スクリーン5の画面下端の点P4に入射する光線を光線13とする。この光線13が自由曲面ミラー4を通過する点P1からスクリーン上の点P4にまで至る光路長をL2とする。そして、上述した投写光学ユニットでは、上記L1、L2が次の式を満足するように構成されている。
但し、ここで、Dvは図2の断面内でのスクリーン上の画面の大きさであり、言い換えると、スクリーン上の画面上端の点P6から画面下端の点P4までの距離である。また、θsは上記斜め入射角度である。
一方、前記画像表示素子1は、その表示画面の中央を前記レンズ光学系の光軸上に位置するように配置されているが、或いは、添付の図7にも示すように、当該表示画面の法線は前記レンズ光学系の光軸に対して僅かに傾けて配置することが望ましいであろう。
なお、上記の図2を見ると、前述したように、点P3から点P6に到る光路長は、点P1から点P4に到る光路長よりも長くなっている。これは、レンズ光学系から見て、スクリーン上の像点P6が像点P4よりも遠くにあることを意味している。そこで、スクリーン上の像点P6に対応する物点(表示画面上の点)がよりレンズ光学系に近い点に、また、像点P4に対応する物点がよりレンズ光学系から遠い点にあれば、像面の傾きを補正できる。そのためには、上記図7にも示すように、前記画像表示素子1の表示画面中央の法線ベクトルを、スクリーン5の法線と画面中央光線を含む平面内において、レンズ光学系の光軸に対して僅かに傾けるようにすることが好ましい。そして、その傾斜の方向は、スクリーン5が位置する方向と反対方向とすることが好ましい。
なお、光軸に対して傾いた像平面を得るのに物平面を傾ける方法は知られているが、実用的な大きさの画角では、物平面の傾きによる像面は、光軸に対して非対称な変形を生じ、回転対称な投写レンズでは補正が困難であった。本実施形態では、上記の後方レンズ群3において、回転非対称の自由曲面レンズ31を、更には、やはり自由曲面レンズ32を用いているため、非対称な像面の変形に対応することができる。このため、物平面を傾けること、すなわち映像表示素子の表示面を傾けることで、低次の像面の歪を大きく低減できることから、自由曲面による収差補正を補助する上で効果的である。
次に、上記した各光学要素の作用については、前記レンズ光学系ではその前方レンズ群2(レンズ21〜25)が、前記画像表示素子1の表示画面をスクリーン5上に投写するための主レンズを構成しており、回転対称な光学系における基本的な収差を補正する。また、前記レンズ光学系の後方レンズ群3(レンズ31〜34)は回転対称でない(回転非対称)自由曲面形状を有するレンズで構成されている。更に、前記反射光学系4は、回転対称でない自由曲面形状を有する反射面で構成されるため、主として、斜め入射によって生じる収差の補正を行う。このように、前記反射光学系をなすミラー4が主として台形歪を補正し、他方、レンズ光学系の後方レンズ系群3が主として像面の歪みなどの非対称な収差の補正を行う構成となっている。
以上のように、本発明の実施形態では、前記反射光学系は回転対称でない自由曲面形状を有する1枚の反射面(ミラー)4で構成され、前記レンズ光学系の後方レンズ群3は、両面共に回転非対称な自由曲面形状を有する2枚の透過型レンズを(反射ミラー4側のレンズ31及び32)含んで構成されている。なお、ここで、自由曲面ミラー4は、その反射方向に凸部を向けるように湾曲されている。そして、自由曲面ミラー4のスクリーンの下端に入射する光線を反射する部分の曲率は、前記スクリーンの上端に入射する光線を反射する部分の曲率よりも大きく設定されている。また、スクリーンの下端に入射する光線を反射する部分がその反射方向に対し凸形状を為し、他方、前記スクリーンの上端に入射する光線を反射する部分がその反射方向に凹形状を為すようにしてもよい。
反射光学系の反射面(ミラー)4における座標原点と、前方レンズ群2のうち最も反射面(ミラー)4に近いレンズ面との間の光軸方向での距離は、前方レンズ群2の焦点距離の5倍、又は、それ以上に設定することが望ましい。これによれば、反射光学系の自由曲面形状を有する反射面により、台形歪収差をより効果的に補正し、もって、良好な性能を得ることができる。
以下、本発明の具体的な数値実施例について説明する。
まず、添付の図8及び図9、更には、以下の表1〜表4を用いて、上記に説明した本実施例になる投写光学ユニットの詳細を、特に、そのレンズ光学系及び反射光学系を含む光学素子の具体的な数値を示しながら説明する。なお、これらの図は、第1の数値例に基づく本発明に係る光学系の光線図を示している。即ち、図8は、前述した図2のXYZ直交座標系におけるYZ断面、即ち、光学系をZ軸方向に展開して示している。また、図9はXZ断面での構成を示している。なお、図9では、その詳細構造を添付の図5及び図6に示すように、レンズ光学系を構成するレンズ光学系の前方レンズ群2と後方レンズ群3との途中に折り曲げミラー35を設置し、もって、光路をX軸方向に一度折り曲げている例を示している。
本例において、図4の下側に表示した映像表示素子1から射出した光は、複数のレンズを含むレンズ光学系のうち、まず回転対称形状の面のみを有するレンズのみで構成される前方レンズ群2を通過する。そして、回転非対称の自由曲面レンズを含む後方レンズ群3を通り、反射光学系である自由曲面ミラー4の反射面で反射される。その反射光は、その後スクリーン5に入射される。
ここで、レンズ光学系の前方レンズ群2は、全て、回転対称な形状の屈折面を持つ複数のレンズにより構成されており、これらレンズの屈折面のうち4つは回転対称な非球面であり、他は球面である。なお、ここに用いられた回転対称な非球面は、各面毎のローカルな円筒座標系を用いて、次の式で表される。
ここで、「r」は光軸からの距離であり、「Z」はサグ量を表している。また、「c」は頂点での曲率、「k」は円錐定数、「A」から「J」は上記「r」のべき乗の項の係数である。
一方、前記レンズ光学系の後方レンズ群3を構成する自由曲面は、各面の面頂点を原点とするローカルな直交座標系(x、y、z)を用い、X、Yの多項式を含む次の式で表わされる。
ここで、「Z」はX、Y軸に垂直な方向で自由曲面の形状のサグ量を表わしており、「c」は頂点での曲率、「r」はX、Y軸の平面内での原点からの距離、「k」は円錐定数、「C(m、n)」は多項式の係数である。
次に、以下の表1は、本実施例に係る光学系の数値データを示している。この表1において、S0〜S23は、上記図4に示された符号S0〜S23にそれぞれ対応している。ここで、符号S0は映像表示素子11の表示面、すなわち物面を示しており、S23は自由曲面ミラー5の反射面を示している。また、符号S24は、これらの図では示されていないが、上記図1のスクリーン5の入射面、すなわち、像面を示している。
また、上記表1において、「Rd」は各面の曲率半径であり、上記図3において面の左側に曲率の中心がある場合は正の値で、逆の場合は負の値で表わしている。また、上記表1において、「TH」は面間距離であり、そのレンズ面の頂点から次のレンズ面の頂点までの距離を示す。そのレンズ面に対して、次のレンズ面が図の中で左側にある時には面間距離は正の値、右側にある場合は負の値で表している。
更に、上記表1において、S5、S6、S17、S18は回転対称な非球面であり、この表1では面の番号の横に「*」を付けて分かり易く表示しており、これら4つ面の非球面の係数を以下の表2に示している。
また、上記表1においてS19からS22は前記レンズ光学系の後方レンズ群を構成する自由曲面形状を有する屈折面であり、S23は反射光学系の自由曲面S23形状を有する反射面であって、面の番号の横に#を付けて表示した。これら5つの自由曲面の形状を表す係数の値を以下の表3に示す。
また、本発明では、上記の図7に示すように、画像表示素子1の表示画面である物面を、前記レンズ光学系の光軸に対して−1.163度傾けている。なお、傾斜の方向は、この図7の断面内で物面の法線が時計回りに回転する方向を正の値で表わすことにする。従って、本実施例では物面を図7の断面内で、前記レンズ光学系の光軸に垂直な位置から反時計回り方向に1.163度傾けていることになる。
また、上記の図3又は図7中の符号S23で示す自由曲面ミラー4は、そのローカル座標の原点を前記レンズ光学系の光軸上に置き、ローカル座標の原点での法線、すなわち、Z軸を、前記レンズ光学系の光軸と平行な位置から約+29度だけ傾斜して配置している。なお、この傾きの方向は、前記物面と同様に、上記図3又は図7の断面内で反時計回りに回転する方向を正とし、従って、反時計回りに傾けていることになる。これによって、画像表示素子1の画面中央から出て、ほぼ、前記レンズ光学系の光軸に沿って進んできた画面中央光線は、S23で反射後、前記レンズ光学系の光軸に対して前記傾き角度の2倍の58度だけ傾いた方向に進む(図の矢印を参照)。
更に、本実施例における、各面のローカル座標系の傾き又は偏心の様子を以下の表4に示す。この表4において、面番号の右側に傾き角度、偏心の値を示しており、「ADE」は図4の断面と平行な面内での傾きの大きさであり、その表示規則は上に示した通りである。また、「YDE」は偏心の大きさであり、偏心は上記図4の断面と平行な面内でかつ光軸に垂直な方向で設定され、上記図4の断面において下側への偏心を正とする。なお、以降に説明する実施例においても、光学要素の傾きや偏心は、表示した断面に平行な断面内での方向で設定される。
なお、上記の表1、表3を見ると、本実施例では、曲率「c」とコーニック係数「k」が零(0)となっていることがわかる。即ち、斜め入射による台形歪は、斜め入射の方向に極端に大きく発生し、これと垂直な方向での歪量は小さい。従って、斜め入射の方向とこれに垂直な方向とでは、大幅に異なる機能が必要であり、回転対称で全方向に機能する上記曲率「c」やコーニック係数「k」を利用しないことにより、非対称な収差を良好に補正することが可能となる。
また、上記表4において、面S23の「ADE」は、上記図2に示すθmと同じであり、スクリーン5の面上での「ADE」は、上記図2に示すように、θsである。これらの両者の値から、前記条件を満足しており、従って、スクリーンの下部の高さをより小さくして、コンパクトな光学系を実現している。
また、上記の式1に示す光路長の差|L1−L2|の値は、スクリーンの画面の高さの0.42倍であり、θsが30度であることから、上記数1の条件を満足している。上記表1〜表4の数値は、物面(例えば、比率16:9の液晶パネル)上の範囲(12.16×6.84mm)の映像を像面(60”+over-scan:1452.8×817.2mm)上に拡大して投写する場合の一例である。
更に、スポットダイアグラムを添付の図10に示す。この図10では、映像表示素子5の表示画面上、即ち、X、Y座標の値で、(8,4.5)、(0,4.5)、(4.8,2.7)、(8,0)、(0,0)、(4.8、−2.7)、(8、−4.5)、(0、−4.5)の8点から射出した光束のスポットダイアグラムを上から順に(図では、丸で囲んだ(1)〜(8)の順に)示す。なお、単位はmmである。各スポットダイアグラムの横方向はスクリーン上でのX方向、縦方向はスクリーン上でのY方向である。両者ともに、良好な性能を維持している。
加えて、上記によって得られた投射画像(例えば、図1のスクリーン5)の対角寸法を「Lo」とし、自由曲面ミラー5の中心から投射画像までの距離を「Lp」とした場合(上記図1を参照)、Lo=1524mm、Lp=700×cos45°≒495mmであることから、これらの間の比率が2以上(Lo/Lp>2)となり、比較的近い距離(Lp)でも、物面を十分大きな画面に拡大して投射することが出来ること、即ち、投射拡大率に優れていることが分る。
次に、図11と表5〜表8を用いて第2の実施例について説明する。ここで、レンズ光学系の前方レンズ群2は、全て、回転対称な形状の屈折面で構成されており、これらレンスの屈折面のうち4つは回転対称な非球面であり、他は球面である。ここに用いられた軸対称な非球面は、各面ごとのローカルな円筒座標系を用いて、前記に示した式、[数2]で表される。
また、前記レンズ光学系の後方レンズ群3を構成するレンズの自由曲面は、各面の面頂点を原点とするローカルな直交座標系(x、y、z)を用い、X、Yの多項式を含む、前記に示した式、[数3]で表される。
以下の表5は、本数値実施例のレンズデータを示しており、面番号は物面をS0、順にS1からS23まである。この表5において、「Rd」は各面の曲率半径であり、また、「TH」は面間距離であり、そのレンズ面の頂点から次のレンズ面の頂点までの距離を示す。
この表5において面S5、S6、S17、S18は回転対称な非球面であり、表1では面の番号の横に「*」を付けて分かり易く表示しており、これら4つ面の非球面の係数を以下の表6に示している。
また、上記表5において、面S19からS22は前記レンズ光学系の後群を構成する自由曲面形状を有する屈折面であり、S23は前記反射光学系の自由曲面形状を有する反射面であって、面の番号の横に「#」を付けて表示した。これら5つの自由曲面の形状を表す係数の値を以下の表7に示す。
更に、以下の表8には、この第2の実施例における各面の傾きと偏心の大きさとを示している。この表8における「ADE」、「YDE」の値の表示の規則は前述した通りである。また、本実施例における各面の傾きは、先の実施例1とほぼ同じ量である。
なお、上記表8において、S23のADE(=θm)と、スクリーン面5のADE(=θs)から、前記条件を満足してスクリーンの下部の高さが小さいコンパクトな光学系を実現している。
また、式1に示す光路長の差|L1−L2|の値は、スクリーンの画面の高さの0.43倍であり、θsが30度であることから、上記[数1]の条件を満足していることがわかる。
一方、この第2の実施例では、上記表8に示すように、S15を−0.193mmだけ偏心させ、S17面を逆に0.193mmだけ偏心させている。ある面を偏心させた場合、以後の面ではその偏心量だけ光軸が移動する。従って、このS15とS17の偏心は、S15とS16で構成される1枚のレンズを光軸から−0.193mm偏心させることを意味している。なお、この偏心量は微量であり、レンズのサイズを大きくするような悪影響は生じないが、この偏心によって、非対称な色収差の微調整を実現している。
また、上記の表5及び表7を見ると、この実施例では、曲率「c」とコーニック係数「k」が零(0)となっていることがわかる。斜め入射による台形歪は、斜め入射の方向に極端に大きく発生し、これと垂直な方向に歪量は小さい。従って、斜め入射の方向とこれに垂直な方向とでは、大幅に異なる機能が必要であり、回転対称で全方向に機能する上記曲率「c」やコーニック係数「k」を利用しないことにより、図形歪を良好に補正することが可能となる。
以上に述べた数値による第2の実施例の有効範囲は、物面(比率16:9)上の範囲を像面(70”+over-scan:1694.9×953.4mm)上に拡大して投写する場合である。
また、第2の実施例のスポットダイアグラムを図11に示す。この図11では、映像表示素子61の表示画面上、X,Y座標の値で、(8,4.5)、(0,4.5)、(4.8,2.7)、(8,0)、(0,0)、(4.8、−2.7)、(8、−4.5)、(0、−4.5)の8点から射出した光束のスポットダイアグラムを上から順に(図では、丸で囲んだ(1)〜(8)の順に)示す。単位はmmである。各スポットダイアグラムの横方向はスクリーン上でのX方向、縦方向はスクリーン上でのY方向である。即ち、両者ともに、良好な性能を維持していることが分る。
また、この例でも、得られる投射画像の対角寸法を「Lo」と、自由曲面ミラー5の中心から投射画像までの距離を「Lp」として、Lo=1524mm、Lp=700×cos45°≒495mmであることから、これらの間の比率が2以上(Lo/Lp>2)となり、比較的近い距離(Lp)でも、物面を十分大きな画面に拡大して投射することが出来ることが、即ち、投射拡大率に優れていることが分る。
次に、図12と表9〜表12を用いて、本発明になる第3の実施例について説明する。ここでも、レンズ光学系の前方レンズ2群は、全て、回転対称な形状の屈折面で構成されており、これら屈折面の内の4つは回転対称な非球面であり、他は球面である。ここに用いられた軸対称な非球面も、各面ごとのローカルな円筒座標系を用いて、前記に示した式[数2]で表される。
前記レンズ光学系の後方レンズ群3を構成する自由曲面は、各面の面頂点を原点とするローカルな直交座標系(x、y、z)を用い、X、Yの多項式を含む、前記に示した[数3]で表わされる。
以下の表9は、第3の実施例におけるレンズデータを示しており、面番号は物面をS0、順にS1からS23まである。この表9において「Rd」は各面の曲率半径である。また、「TH」は面間距離を示しており、そのレンズ面の頂点から次のレンズ面の頂点までの距離を示す。
この表9においても、面S5、S6、S17、S18は回転対称な非球面であり、面の番号の横に「*」を付けて分かり易く表示しており、また、これら4つ面の非球面の係数を以下の表10に示している。
また、上記の表9において、面S19からS22は前記レンズ光学系の後方レンズ群を構成する自由曲面形状を有する屈折面であり、S23は前記反射光学系の自由曲面形状を有する反射面であって、面の番号の横に「#」を付けて表示した。なお、これら5つの自由曲面の形状を表す係数の値を以下の表11に示す。
更に、以下の表12には、第3の実施例における各面の傾きと偏心の大きさを示している。なお、この表12における「ADE」、「YDE」の値の表示の規則は前述した通りである。
なお、この表12からは、前述した条件は満足していないことが分る。しかしながら、この第3の実施例では、その分奥行きが小さく、奥行きを優先した構成となっている。
また、上記表12に示すように、先の実施例2と同様に、面S15とS16で構成される1枚のレンズを、光軸から−0.304mm偏心させている。この偏心量は微量であり、レンズのサイズを大きくするような悪影響は生じないが、この偏心によって、非対称な色収差の微調整を実現している。
さらに、上記[数1]に示す光路長の差|L1−L2|の値は、スクリーンの画面高さの0.62倍であり、θsが45度であることから、上述の条件を満足している。
また、上記の表9及び表11からは、この第3の実施例では、曲率「c」とコーニック係数「k」が零(0)となっていることがわかる。斜め入射による台形歪は、斜め入射の方向に極端に大きく発生し、これと垂直な方向に歪量は小さい。従って、斜め入射の方向とこれに垂直な方向とでは、大幅に異なる機能が必要であり、回転対称で全方向に機能する上記曲率「c」やコーニック係数「k」を利用しないことにより、図形歪を良好に補正することが可能である。
また、上記第3の実施例の有効範囲は、物面(比率16:9)上の範囲を像面(50”+over-scan:1210.7×681.0)上に拡大して投写する場合である。
本数値実施例のスポットダイアグラムを図12に示す。この図12では、映像表示素子61の表示画面上、X,Y座標の値で、(8,4.5)、(0,4.5)、(4.8,2.7)、(8,0)、(0,0)、(4.8、−2.7)、(8、−4.5)、(0、−4.5)の8点から射出した光束のスポットダイアグラムを上から順に(図では、丸で囲んだ(1)〜(8)の順に)示す。なお、単位はmmである。各スポットダイアグラムの横方向はスクリーン上でのX方向、縦方向はスクリーン上でのY方向である。即ち、両者ともに、良好な性能を維持していることが分る。
また、この例でも、得られる投射画像の対角寸法を「Lo」と、自由曲面ミラー5の中心から投射画像までの距離を「Lp」として、Lo=1524mm、Lp=700×cos45°≒495mmであることから、これらの間の比率が2以上(Lo/Lp>2)となり、比較的近い距離(Lp)でも、物面を十分大きな画面に拡大して投射することが出来ること、即ち、投射拡大率に優れていることが分る。
図13と表13〜表16を用いて、本発明による第4の実施例について説明する。
ここでも、画像表示素子1から射出した光は、回転対称な面形状を有する透過型レンズで構成されるレンズ光学系の前方レンズ群2、自由曲面形状を有する透過型レンズで構成されるレンズ光学系の後方レンズ群3の順で通過後、反射光学系の自由曲面形状を有する反射面4で反射され、スクリーン5に入射する。
即ち、ここでも、レンズ光学系の前方レンズ群2は、全て、回転対称な形状の屈折面で構成されており、各屈折面の内の4つは回転対称な非球面であり、他は球面である。また、ここに用いられた軸対称な非球面は、各面ごとのローカルな円筒座標系を用いて、前述した式[数1]で表される。
前記レンズ光学系の後方レンズ群3を構成する自由曲面は、やはり、各面の面頂点を原点とするローカルな直交座標系(x、y、z)を用い、X、Yの多項式を含む前述した[数2]で表わされる。
以下の表13は、第4の実施例のレンズデータを示しており、面番号は物面をS0、順にS1からS24までありS25は像面である。表13において「Rd」は各面の曲率半径であり、上記図3又は図7の中で面の左側に曲率の中心がある場合は正の値で、逆の場合は負の値で表わしている。
この表13において、「TH」は面間距離であり、そのレンズ面の頂点から次のレンズ面の頂点までの距離を示す。また、そのレンズ面に対して、次のレンズ面が左側にある時には、面間距離は正の値で、右側にある場合は負の値で表している。
この表13においてS5、S6、S17、S18は回転対称な非球面であり、表13では面の番号の横に「*」を付けて分かり易く表示しており、これら4つ面の非球面の係数を、以下の表14に示している。
また、この表13において、S19からS22は前記レンズ光学系の後方レンズ群3を構成する自由曲面形状を有する屈折面であり、S23は前記反射光学系の自由曲面形状を有する反射面であって、面の番号の横に「#」を付けて表示した。これら5つの自由曲面の形状を表す係数の値を、以下の表15に示す。
更に、以下の表16には、本実施例における各面の傾きと偏心の大きさを示している。この表16における「ADE」、「YDE」の値の表示の規則は、前述した通りであり、本実施例における各面の傾きも、先の実施例1とほぼ同じ量である。
即ち、この表16を見ると、前述した条件は満足していないことが分る。しかしながら、その分奥行きが小さく、奥行きを優先した実施例となっている。
一方、この第4の実施例では、上記の表16に示すように、S15面を−0.23mm偏心させ、S17面を逆に0.23mm偏心させている。ある面を偏心させた場合、以後の面ではその偏心量だけ光軸が移動する。従って、このS15とS17の偏心は、S15とS16で構成される1枚のレンズを光軸から−0.193mm偏心させることを意味している。この偏心量は微量であり、レンズのサイズを大きくするような悪影響は生じないが、この偏心によって、非対称な色収差の微調整を実現している。
さらに、光路長の差|L1−L2|の値は、スクリーン画面の高さの0.64倍であり、θsが45度であることから、上記[数1]の条件を満足している。
また表13及び表15を見ると、この第4の実施例では、曲率「c」とコーニック係数「k」が零(0)となっていることがわかる。斜め入射による台形歪は、斜め入射の方向に極端に大きく発生し、これと垂直な方向に歪量は小さい。従って、斜め入射の方向とこれに垂直な方向とでは、大幅に異なる機能が必要であり、回転対称で全方向に機能する上記曲率「c」やコーニック係数「k」を利用しないことにより、図形歪を良好に補正することができる。
なお、本実施例の有効範囲は、物面(比率:16:9)上の範囲を像面(60”+over-scan:1452.8×817.2mm)上に拡大して投写する場合である。
さらに、この第4の実施例のスポットダイアグラムを図13に示す。この図13では、映像表示素子61の表示画面上、X,Y座標の値で、(8,4.5)、(0,4.5)、(4.8,2.7)、(8,0)、(0,0)、(4.8、−2.7)、(8、−4.5)、(0、−4.5)の8点から射出した光束のスポットダイアグラムを上から順に(図では、丸で囲んだ(1)〜(8)の順に)示す。単位はmmである。各スポットダイアグラムの横方向はスクリーン上でのX方向、縦方向はスクリーン上でのY方向である。即ち、両者ともに、良好な性能を維持している。
そして、上記によって得られた投射画像の対角寸法を「Lo」とし、自由曲面ミラー5の中心から投射画像までの距離を「Lp」とした場合(上記図1を参照)、Lo=2032mm、Lp=996×cos45°≒704mmであることから、これらの間の比率が2以上(Lo/Lp>2)となり、比較的近い距離(Lp)でも、物面を十分大きな画面に拡大して投射することが出来ること、即ち、投射拡大率に優れていることが分る。
次に、添付の図14には、以上に詳述した投写光学ユニットを投写型映像表示装置に適用し、例えば、部屋の壁面やシート状のスクリーン等の上に画像を拡大投射した状態が示されており、更に、添付の図15には、投写光学ユニットからスクリーンまでの投写距離を変えた場合の問題を示している。即ち、図15からも明らかなように、自由曲面を用い、スクリーンに対して光軸を傾けて斜め投写する方式では、投写距離を設計した距離から大きく変化させると、図形歪が大きくなり、スポットサイズも大きくなって解像性能が劣化する。
例えば、上記の図15に示すように、スクリーン5の位置を、設計位置65(設計された画面サイズ、例えば、80インチ相当)から、投射画面を小さくする方向の位置66(例えば、画面サイズ60インチ相当)に置いた場合のスポット形状を添付の図16に、他方、画面を大きくする方向の位置67に(例えば、画面サイズ100インチ相当)置いた場合のスポット形状を図17に示す。これらの場合、歪の大きさは画面縦幅の約2%以上にまで大きくなり、図16及び図17からも明らかなように、スポット形状は設計位置の場合の3倍以上に大きくなり解像性能が劣化する。
なお、スポットの増大は、例えばパネルの位置を前後に移動させてピント合わせを行っても、画面全体スポット形状を良好にすることはできない。その理由は、光学系が回転対称でないため、パネルや回転対称のレンズの移動では、画面の一部のフォーカスを合わせると、他の部分のフォーカスが大きくずれることになるためである。また、自由曲面レンズである後方レンズ群のレンズ31や32のみを移動しただけでは、やはり、このスポット形状の補正はできない。これは、スクリーン位置の移動に伴う歪の補正には、回転対称レンズのパワーが必要になるためである。
そこで、上記の実施例を基に、スクリーン位置の移動に対応して、レンズを移動させ、もって、スポット形状の歪や解像性能の改善に効果があるレンズを調査した結果、特に、前記後方レンズ群を構成する負のパワーを有するレンズ33、34(上記の図2又は図6を参照)と共に、自由曲面を有する透過レンズ31と32とを、その光軸方向に移動させることが有効であることを見出した。なお、前記自由曲面を有するミラー4の移動も効果的である。しかしながら、傾いて設置され、かつ、比較的サイズが大きい自由曲面のミラー4を移動させることは、装置の構造上からも、困難な点が多いため、特に、上記後方レンズ群3を構成するレンズ31〜34を移動することが最も有効である。
添付の図18には、上記後方レンズ群3を構成するレンズ、即ち、自由曲面を有する透過レンズ31と、やはり自由曲面を有する透過レンズ32と、そして、負のパワーを有する回転対称な2枚の透過レンズ33、34)を移動させた状態を示している。なお、図18(a)は、上記図15において、投射画面を小さくする方向の位置66(画面サイズ60インチ相当)に置いた場合、図18(b)は、投射画面を設計位置65(画面サイズ80インチ相当)に位置する場合、そして、図18(c)は、投射画面を投射画面を大きくする方向の位置67に移動した場合をそれぞれ示している。即ち、この実施例では、スクリーン位置の移動に対して、上記後方レンズ群3を構成する負のパワーを有するレンズとその近傍の回転対象なレンズを合せて一体としたレンズ群と、そして、自由曲面を有する2枚の透過レンズを1つのレンズ群とし、このレンズ群をその光軸方向に移動させてスクリーン位置に対して調整することにより、スクリーンを位置66から67までの間で、良好な性能を得られるようにしている。
なお、上述したように、上記後方レンズ群3を構成するレンズ31〜34を移動するための構造としては、例えば、添付の図19(a)にも示すように、投写型映像表示装置100の内部に、それぞれ、上記前方レンズ群2(回転対称のレンズ21〜25)と後方レンズ群3(レンズ31〜34)を個別の搭載台210、220に組み込み、一方の搭載台210を装置の筐体110の底部111上に固定すると共に、他方の搭載台220は、例えば、レール上に滑動可能に取り付ける。また、この他方の搭載台220からは、例えば、ロッド状の部材221を上方に延長しており、上記筐体110の上面に形成したスリット部112から外部に突出させる。そして、この他方の搭載台(例えば、搭載台220)には、予め溝221、222、223を形成しておくと共に、当該搭載台220を上記搭載台210に対して(この例では、図に矢印で示すように、レンズ群の光軸方向に対して直角方向に)移動可能に装置内に設置する。
なお、上記後方レンズ群3を構成するレンズ31〜34は、上記の図19(b)にも示すように、レンズ33と34とを纏めて一体とし、即ち、レンズ31、レンズ32、そして、レンズ33及び34からなる3群に分けられており、そして、そのそれぞれの位置を、スクリーンに投射して得られる画面のサイズ(60インチ、80インチ、100インチ)に対応して移動する。即ち、上記の溝221、222、223は、これら3群のレンズに対応して、即ち、各レンズ群に対して所望の傾斜角度で形成されている。かかる構成によれば、上記移動可能な搭載台220から筐体外部に突出したロッド部材221を、予め筐体110の表面上に「60」インチ、「80」インチ、「100」インチなどの印を付けておいた位置に移動することにより、上記3群のレンズ、即ち、レンズ31、レンズ32、そして、レンズ33及び34が、それぞれ、溝221、222、223に沿って移動することにより、所望に位置に配置されることとなる。即ち、かかる構成によれば、投写型映像表示装置の外部から、上記ロッド状部材221の先端を図の矢印方向に移動することにより、投射画面の大きさを、スポット形状の歪や解像性能の劣化を伴うことなく、変更することが可能となる。
または、上述した構造に代えて、図示はしないが、やはり上記のような溝をその外周に形成した円筒を利用することによっても、上記と同様の機能を達成することも出来る。なお、その場合、特に、後方レンズ群3において自由曲面を有する2枚の透過レンズ31、32は、光軸方向の相対位置の変更にもかかわらず、回転を伴う必要がない。このことから、例えば、上記筒状部材を互いに独立に回転可能に、即ち、先端側と後端側に分離し、その先端側を回転しないような構造とすることが好ましい。更には、例えば、電動モータなどを含む駆動手段を用いて、後方レンズ群3(レンズ31〜34)をそれぞれ移動する構造を採用することも可能であろう。即ち、これによれば、映像を投射するスクリーンの位置(即ち、装置からスクリーンまでの距離)の変更に対応して、スポット形状の歪や解像性能の改善する効果が得られる。
続いて、上記に示した実施例のレンズデータを、以下の表17〜21及び図20、21を参照しながら、以下に示す。
なお、ここでも、自由曲面の式は、上記の[数1]と同様である。また、以下の表17〜20の数値は、物面(比率16:9)上の範囲の映像を像面(60”+over-scan:1841.9×1036.1mm)上に拡大投写する場合の一例を示したものである。また、この場合の投写光学ユニットにおける光学素子のレンズ面が、図20に示されている。なお、この実施例が上記の実施例と異なるのは、上記図4においてS9とS10で示されるレンズ面が、この図20では、これらが一体になっており、そのため、S0〜S22の面で構成されている。
まず、表17において「Rd」は各面の曲率半径であり、図中で面の左側に曲率の中心がある場合には正の値で、逆の場合は負の値で表わされている。また、この表17において「TH」は面間距離であり、そのレンズ面の頂点から次のレンズ面の頂点までの距離を示す。あるレンズ面に対して、次のレンズ面が左側に位置するときには面間距離は正の値で、右側に位置する場合は負の値で表されている。更に、この表17においてS5、S6、S16、S17(上記図4を参照)は回転対称な非球面であり、表17では面の番号の横に「*」を付けて示している。なお、これら4つ面の非球面の係数を以下の表18に示している。
また、上記の表17においてS18からS21は自由曲面レンズの各屈折面であり、S22は自由曲面ミラーの反射面であって、面の番号の横に「#」を付けて示している。これら5つの自由曲面の形状を表す係数の値を表18に示す。
次に、以下の表19においては、係数の名称と値を左右に並べて枠の組で表示しており、右側が係数の値であり、左側が名称で括弧内のカンマで区切った2組の数値は式2に示した「m」と「n」の値を示している。
更に、この実施例における、各面のローカル座標系の傾き又は偏心の様子を以下の表20に示す。なお、この表20において、「ADE」は図の断面と平行な面内での傾きの大きさで、傾きの方向は図の断面内で反時計回りに回転する方向を正とし、単位は度である。また、「YDE」は偏心の大きさであり、偏心は図の断面内でかつ光軸に垂直な方向で設定され、図の断面において下側への偏心を正とし、単位はmmである。
この表20に示した傾き又は偏心では、表示された面番号を含むそれ以降の面は、全て、表示された面の傾いた光軸の上に配置される。但し、S22面の傾きは22面のみの光軸の傾きを示しており、その後の23面は22面の傾き量の2倍傾いた光軸の上に配置される。
表21は、スクリーン位置の移動に対応して移動するレンズ群について、それらの面間距離の変化を示している。
なお、この表9のSc65、Sc67、Sc66に対応する欄の値が、スクリーン位置65、67、66でのレンズ間隔を表示している。
また、添付の図21は、上記スクリーンが、それぞれ、上記図15において66、65、67の位置にある場合のスポット形状の様子を示している。
なお、この図では、映像表示素子1の表示画面上、X,Y座標の値で、(8,4.5)、(0,4.5)、(4.8,2.7)、(8,0)、(0,0)、(4.8、−2.7)、(8、−4.5)、(0、−4.5)の8点から射出した光束のスポットダイアグラムを上から順に(図では、丸で囲んだ(1)〜(8)の順に)示しており、また、その横方向には、それぞれの位置66、65、67でのスクリーン位置(Sc66、Sc65、Sc67)を示している。なお、単位はmmであり、各スポットダイアグラムの横方向はスクリーン上でのX方向、縦方向はスクリーン上でのY方向である。即ち、これらの図からも明らかなように、その何れの場合においても、両者ともに良好な性能を維持していることが分る。
そして、上記によって得られた投射画像の対角寸法を「Lo」とし、自由曲面ミラー5の中心から投射画像までの距離を「Lp」とした場合(上記図1を参照)、Lo=2032mm、Lp=996×cos45°≒704mmであることから、これらの間の比率が2以上(Lo/Lp>2)となり、比較的近い距離(Lp)でも、物面を十分大きな画面に拡大して投射することが出来ること、即ち、投射拡大率に優れていることが分る。
次に、添付の図22には、本発明の他の実施形態になる投写型映像表示装置が示されている。即ち、図からも明らかなように、この他の実施形態になる投写型映像表示装置100’では、上記図1又は図5に示した投写型映像表示装置の投写光学ユニットの構成に加え、その自由曲面の反射鏡4とスクリーン5との間の光路に、更に、平面の反射鏡27を配置して投写光学ユニットを構成している。なお、この図の例では、この平面の反射鏡27は、上記自由曲面の反射鏡4に対応して装置筐体110の上面に形成された開口部を覆うための蓋をも兼ね、その上方で開閉自在に設けられている。
かかる投写光学ユニットの構成では、添付の図23にも示すように、画像表示素子1からプリズム10を介して射出した光は、まず、レンズ光学系を構成する前方レンズ群2に入射される。その後、この前方レンズ群2から射出した光は、やはり少なくとも一方の面が回転対称でない(回転非対称の)自由曲面の形状を有する複数(本例では2枚)のレンズを含めた複数のレンズから構成される後方レンズ群3を通過する。そして、この後方レンズ群3から射出した光は、回転対称でない自由曲面形状の反射面を有する反射鏡(以下、自由曲面ミラーと言う)4を含む反射光学系で拡大反射された後、更に、上記平面の反射鏡27により反射されて所定のスクリーン5(例えば、部屋の壁面やシート状のスクリーン等)上に投写されることとなる。即ち、この図からも明らかなように、上述した実施例(例えば、図2や図4)とは反対の方向に投写する。このことからも、この他の実施形態になる投写型映像表示装置100’の投写光学ユニットの構成では、自由曲面ミラー4からスクリーン5までの光路を上記平面反射鏡27により折り返すことから、スクリーン5までの距離をより小さくすることが可能となり、広角化を可能とするのに好適である。
また、この投写光学ユニットの構成では、図23において破線で示すように、上記平面反射鏡27は、その傾斜角度を微小な角度で調整可能となるように構成されている。即ち、これによれば、やはり図中に破線及び矢印で示すように、この平面反射鏡27の傾斜角度を変えることにより、スクリーン5上での投写画像の位置を上下に変更することが可能となり、特に、投写型映像表示装置においては、好適な機能を提供することが可能となる。なお、この平面反射鏡27は、当該投写型映像表示装置の使用状況に応じてユーザがその傾斜角度を調整することが出来、或いは、ここでは図示しないが、例えば、電動モータなどを含む駆動機構によって筐体110上面の開口部を覆おう位置から移動し(立ち上がり)、そして、ユーザによって設定された角度に傾斜して配置されるように構成することも可能である。
なお、以上に述べた本発明の実施例になる投写型映像表示装置では、画像表示素子1からの映像(画像)は、上記の投写光学ユニットから出射して自由曲面ミラー4で反射され、又は、更に平面反射鏡27により反射されてスクリーン5上に投写される。そのため、当該装置100、100’の位置を、映像(画像)を投写するスクリーン5に対して正確に位置決めする必要がある。即ち、上記図5に示した画面中央の光線が上記スクリーン5の面に対して垂直になるよう、その配置を調整することが、特に、その全体において歪みや収差を最小限に抑え、良好な投写画面を得るために重要である。
そこで、本発明の実施例になる投写型映像表示装置では、装置の位置決め機構をその一部に備えており、その具体的な例を、以下に説明する。
添付の図24は、上記位置決め機構を備えた投写型映像表示装置100が示されており、特に、図24(a)は、位置決め機構を備えた投写型映像表示装置100の上面からの斜視図を、図24(b)は、当該装置の底面からの斜視図を、そして、図24(c)は、上記図24(b)におけるc−c拡大断面をそれぞれ示している。
即ち、図24(b)にも示すように、投写型映像表示装置100の筐体110の底面には、光の投射方向(図の右方向)の縁部に隣接して、その中央部には、例えば、ゴム等の弾性体を略円錐形状に形成してなる中心ストッパ113が取り付けられ、他方、上記縁部とは反対側の縁部に隣接して、その両端付近には、例えば、回動ボールからなる一対の移動部材114、114が設けられている。
なお、上記一対の移動部材114、114の各々は、図24(c)にも示すように、筐体110の底面に形成した受孔115内にボール116を回転可能に保持しており、更に、当該筐体110の内部には、その矢印方向の移動によって上記ボール116の回転を停止する拘束部材(又は、押圧部材)117を備えている。即ち、図の拘束部材(又は、押圧部材)117をユーザが矢印方向に押下することにより(但し、図24(c)は、上下を逆転して示す)、ボール116を受孔115の内壁面に押し付けてその回動を停止する。
上述した位置決め機構の使用方法の一例を図24(a)に示す。まず、拘束部材(又は、押圧部材)117を上方に移動した状態(即ち、ボール116を回転可能にする)で、投写型映像表示装置100を、その筐体110の底面を下にして、例えば、机等の上に平行に配置する。そして、図に矢印で示すように、映像(画像)をスクリーン5上に投写しながら、その側面を押す等により、当該装置100(100’)を上記ストッパ113を中心として回転移動する。そして、投写型映像表示装置100がスクリーン5に対して所望の角度位置になった時点で、装置筐体110の両側面に設けられた一対の移動部材114、114を押し下げる。即ち、上述の位置決め機構を備えた投写型映像表示装置100によれば、以上に述べた操作により、簡単に、スクリーン5に対して正確に位置決めすることが可能となり、更には、上記した平面反射鏡27や後方レンズ群3の移動機構を適宜設定することによれば、スクリーン5上に、その全体において歪みや収差を最小限に抑えた良好な投写画面を得ることが可能になる。
以上述べたように、本発明によれば、上述した従来技術のように使用するレンズを偏心させる必要がないことから、口径の大きな付加光学系を必要とすることなく、しかも広角角化を可能とすると共に、スクリーンまでの位置が変更しても歪みを最小限に抑えることが可能であり、かつ、その製造も比較的容易な投写型映像表示装置が提供される。そして、かかる投写型映像表示装置によれば、その全体において歪みや収差を最小限に抑えた良好な投写画面を得ることが出来、使い勝手にも優れた投写型映像表示装置を実現することが可能となる。