JP5718132B2 - 金属鋳塊製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、湯面の変動を監視して制御可能な金属鋳塊製造方法に関するものである。
従来、例えば銅合金等の金属を連続鋳造して鋳塊を製造する方法がある。鋳造時には、鋳型内部に連続的に金属溶湯を注ぎつつ金属を凝固させることで鋳塊を得ることができる。
鋳塊の品質に影響を与える要因として、鋳型内部の溶湯のモールド高さ(以下「湯面高さ」)がある。湯面高さが変動することで、鋳塊表層のチル層の厚みや金属組織の大きさなどが安定しないばかりでなく、溶湯のあふれや、湯切れなどの鋳造トラブルの要因ともなる。このため、鋳型内部の溶湯の湯面高さはできるだけ一定に制御することが望まれる。
一方、鋳型内部の湯面高さを測定しつつ、湯面高さに応じて鋳型内への溶湯の出湯量を調整して湯面高さの制御を行う方法を採用する場合に、外乱から生じる湯面変動を考慮する必要がある。たとえば、スラブ用連続鋳造ではピンチロールの駆動と鋳塊表層の材料挙動の不安定さに起因する湯面変動が考えられる。
このような湯面変動を考慮して鋳型内部の溶湯の湯面高さを制御する方法としては、湯面高さの変動についてフーリエ変換等により湯面変動の周期を監視して、これを考慮したうえで湯面高さを制御する方法がある(たとえば、特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
特開2002−248555号公報 特開2007−253170号公報 特開2008−290082号公報
しかし、特許文献1〜3のような方法は、フーリエ変換を用いており、たとえば機械的要因から生じる周期的な波成分には効果があるが、周期を見出せない波立ちについては効果がない。なお、瞬間的な波立ちにおいて、周期を把握するには、かなりのデータ数を必要とするため、対応が困難である。
また、特許文献1〜3は、通常のスラブ用連続鋳造モールドを対象としたものであり、比較的鋳型のサイズも大きい。このためそもそも湯面変動速度が小さいため、比較的長時間のデータに基づいて湯面制御を行うこともできる。しかし、たとえば、回転式移動鋳型などの場合には、スパウトからの注入量に対する鋳型内部の溶湯容量(鋳型サイズ)が極めて小さい。このため、鋳型へ注湯量のわずかな変動により、鋳型内部の湯面が大きく変動する。このため、特に比較的少ない(短い)データに基づいて、正確に湯面を制御する必要がある。
また、鋳造時の湯面変動が大きいことで、鋳塊の品質が安定しない。このため、特に当該鋳塊を極細銅合金線とする場合には、鋳塊の品質に起因するミクロ欠陥等の影響を受け、伸線の細径化には限界があった。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、鋳型内部の溶湯の湯面を監視するとともに、湯面高さを正確に制御可能な金属鋳塊製造方法を提供することを目的とする。
前述した目的を達するために本発明は、金属鋳塊の製造方法であって、鋳型と、前記鋳型に溶湯を注ぐスパウトと、前記スパウトの開度を調節するストッパと、前記鋳型の内部の溶湯の湯面を撮影するカメラと、前記カメラで撮影された画像を解析する解析部と、前記解析部で解析された情報に基づき、前記スパウトの開度を調節する制御部と、を具備する製造装置を用い、前記解析部は、前記カメラで撮影された湯面画像を二値化して、前記鋳型の内部の溶湯の湯面高さを検出し、前記制御部は、所定の測定間隔で得られる湯面高さの情報から、当該測定間隔ごとに、前回湯面高さと現在湯面高さの差と測定間隔とから湯面変動速度を算出し、さらに、所定期間内における複数の湯面変動速度情報から湯面変動速度の標準偏差σを当該測定間隔ごとに算出し、現在湯面高さと基準湯面高さとの差に応じて前記ストッパの開度を調整する際に、前記標準偏差σが小さいとストッパ開度調整量が大きく、前記標準偏差σが大きいとストッパ開度調整量が小さくなるように、前記標準偏差σに応じてストッパ開度の調整量に重みづけを与えることを特徴とする金属鋳塊製造方である。
基準標準偏差B、重みづけ係数X=B/σとし、前回のストッパ開度の調整量をMVn−1、今回の基準湯面高さと湯面高さの差をDV、前回の基準湯面高さと湯面高さの差をDVn−1、P(≠0)は係数とすると、今回のストッパ開度の調整量をMVは、
MV=MVn−1+X・P(DV−DVn−1)・・・(1)
で表わされることが望ましい。
前記重みづけ係数Xは、
σが基準下限変動速度Aminよりも小さい場合には、X=B/Amin、
σが基準上限変動速度Amaxよりも大きい場合には、X=B/Amax、
Amin≦σ≦Amaxの場合にX=B/σであることが望ましい。
前記(1)式に代えて、
MV=MVn−1+X・[P(DV−DVn−1)+(1/I)DV+D{(DV−DVn−1)−(DVn−1−DVn−2)}]・・・(2)
但し、P、I、DはそれぞれPID制御の比例・積分・微分のパラメータ
(2)式で表わしてもよい。
本発明によれば、所定の測定間隔で湯面高さの変動速度を算出し、さらにこの変動速度のばらつき(標準偏差)から、鋳型内の湯面の安定度を把握することができる。このため、たとえば、一定速度で湯面が変動する場合には、湯面は安定であると認定し、ストッパの開度の調整量を大きくして、速やかに基準湯面高さとなるように制御できるとともに、湯面速度の変動が大きい場合には、湯面が不安定であるとして、ストッパの調整量を小さくし、過剰な湯面制御を抑制することができる。
これに対し、湯面変動差を測定する場合には、一定速度で湯面が変動する場合にも、湯面が変動し続けているため、湯面が安定であるか把握することができない。このため、湯量の調整量を大きくすることができず、基準湯面高さに達するまでの時間を要する。
また、ストッパの調整量は、基準標準偏差を湯面変動速度の標準偏差で除した重み付け係数によって制御するため、少ないデータからでも調整量を正確に制御可能である。
また、重み付け係数に上下限が設定されれば、過剰な湯量調整や、湯量調整が不能に陥ることがない。
なお、重み付け係数によるストッパ開度調整は、PID制御におけるパラメータPのみに重み付け係数を考慮してもよく、PID全てのパラメータに対して考慮しても良い。
本発明によれば、鋳型内部の溶湯の湯面を監視するとともに、湯面高さを正確に制御可能な金属鋳塊製造方法を提供することができる。
連続鋳造圧延装置1を示す図。 図1のA部拡大図。 図2のカメラ25からのC矢視図。 カメラ25による画像を示す概念図であり、(a)は二値化画像、(b)は各解析枠等の設定後の画像。 二値データの変化率を示す概念図。 解析帯35の位置補正方法を示す図。 湯面高さの変動を示す概念図。 湯面制御工程を示すフローチャート。 湯面変化を示す図で(a)は本発明による結果を示す図、(b)は従来の方法による結果を示す図。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は、連続鋳造圧延装置1を示す概略図である。なお、以下の説明では、連続鋳造圧延装置の例として、回転移動鋳型を用いた銅合金の連続鋳造の例を示すが、本発明はこれに限られない。例えば、本発明は、他の金属に対しても当然に適用可能であり、また、たとえば一対のベルトにより構成されるいわゆるツインベルト式(回転)移動鋳型等などの他の連続鋳造方法にも適用可能である。連続鋳造圧延装置1は、主に、シャフト炉3、樋5、タンディッシュ7、ホイール11等からなる回転移動鋳型、圧延機17、巻取機23等から構成される。
シャフト炉1は、例えば電気銅の地金等を還元性雰囲気で溶解する。シャフト炉1で溶解された溶湯は、樋5を介してタンディッシュ7内に連続的に導かれる。タンディッシュ7内の溶湯は、スパウト9を介して、ベルト15およびホイール11により構成された回転移動鋳型内に注湯される。ベルト15は、複数のターンロール13によって移動し、ホイール11の外周の一部を覆う。ホイール11の外周に形成された凹部(図示せず)とベルトで囲まれた空間が鋳型となる。
鋳型に注湯された溶湯は、当該鋳型内で冷却固化されて鋳塊19となる。鋳塊19は、鋳型から連続的に引き出されて、圧延機17で連続圧延されて線材21となる。線材21は、巻取機23で巻き取られる。
ここで、本発明における鋳塊とは、本実施形態のように、連続して溶湯から直接凝固させて得られる鋳造品の全てを指す。すなわち、連続して得られる鋳造品であれば、その形態によらずすべて鋳塊と称する。
図2は、図1のA部拡大図であり、鋳型への溶湯の注湯部近傍を示す図である。前述の通り、ターンロール13によってベルト15がホイール11の外周面に密着されて、ベルト15とホイール11外周面との空間が鋳型となる。鋳型へは、スパウト9を介して溶湯29aが注湯される。ホイール11は、回転しながら(図中矢印B方向)連続的に内部の溶湯を冷却固化する。したがって、溶湯29aは連続的に鋳型内部へ注湯される。
鋳型内部の溶湯の湯面27は、カメラ25により常に監視される(図中矢視C方向)。カメラ25は例えばCCDカメラである。湯面27は、略一定の速度で回転するホイール11で連続的に鋳造される量と、注湯される溶湯量29aとのバランスによって変動する。特に、本実施形態のように、回転移動鋳型は、スパウト9の内径に対する湯面の面積が小さい(湯面の面積が、スパウト内径の約5〜30倍程度)。このため、スパウト9からの出湯量のわずかな変化によっても、湯面が大きく変動する恐れがある。
図3は、図2におけるカメラ25による撮影方向から見た鋳型近傍の概略図である。カメラ25は、鋳造作業等に影響を及ぼさない範囲で、鋳型の斜め上方から湯面を撮影する。すなわち、カメラ25は、鋳型の内部の湯面27を含む、出湯部の溶湯29aや、溶湯の飛沫等の溶湯29b等を撮影する。
図4は、図3のD部の画像であって、カメラ25の撮影視野の概念図であり、図4(a)は、溶湯部と非溶湯部とを二値化した画像を示し、図4(b)は、各解析枠等を重ね合わせた状態を示す画像である。
カメラ25により撮影された画像では、溶湯の輝度が極めて高い。このため、解析部(図示省略)により、カメラ25で撮影された画像が二値化されると、図4(a)に示すように、溶湯29a、29b、湯面27(図3)が、それぞれ、溶湯部31a、31b、31cとして白色となり、他の部位が非溶湯部33として黒色で判断される。
本実施例では、図4(b)に示すように、解析部は、得られた画像に対して、解析帯35、溶湯パターン37、注湯監視部43等の各種解析枠等が設定される。解析帯35は、たとえば、湯面(溶湯部31c)を含み、湯面の変動方向が長手方向(図中矢印E方向)となるように所定の幅で設定される。解析帯35の幅は、解析帯35の一部に出湯部(溶湯部31a)にかからないような範囲でできるだけ広くなるように設定される。
解析帯35内部では、解析部によって二値データの変化率が算出される。ピーク表示部41では、算出された二値データの変化率のピークが表示される。すなわち、解析帯35の長手方向のそれぞれの位置における変化率を解析帯35に垂直な方向(図中矢印F方向)に表示する。
図5は、解析帯35およびピーク表示部41の拡大図であり、横軸をE方向(図4(b))、縦軸をF方向(図4(b))とした図である。解析帯35の内部では、2値化されたデータが解析される。解析部は、溶湯部31c(白色部)と、非溶湯部33(黒色部)との境界を算出する。例えば、解析帯35内部において、図中左側(湯面が低い側)から、長手方向右側に向けて、微小範囲(dh)における色の変化率を微分して算出する。図に示す例では、湯面近傍で大きなピーク45が得られる。なお、ピーク45は、湯面の低い側からの色の変化として、白から黒への変化について変化率を算出する。すなわち、黒から白への変化部はピークとして算出しない。したがって、溶湯部(白)から非溶湯部(黒)となる境界のみを湯面として認識し、非溶湯部(例えば鋳型の影)と溶湯部との境界は湯面とは認識しない。
実際には、湯面は多少の波立ちがあるため、解析帯35の幅全体において湯面が一定とはならない場合がある。また、本発明では、0.1秒ごとに画像を解析し、例えば6点(0.6秒間)の移動平均によりピークを算出する。したがって、解析帯35の幅全体における湯面は、常に一定とはならず、ピーク45としては100%とならない場合がある。
本実施例では、ピーク45が閾値47を超える位置の中で、最も湯面の低い側を湯面と認定する。すなわち、図5の例では、G位置を湯面と認識する。ここで、閾値47としては、50〜80%と設定される。50%未満では、溶湯の波や飛沫を湯面と誤認識する恐れがあり、また、80%以上では、湯面の波立ち等によって湯面自体を認識できない恐れがあるためである。
このようにすることで、湯面の波立ちの影響をできるだけ小さくすることができる。また、飛沫などの溶湯部31bは、ピークが閾値を超えることがなく、湯面の誤認識を防止することができる。以上のようにして、解析帯35内部の湯面位置を算出することができる。
なお、本発明は、湯面高さの測定方法は上述した例に限られない。本発明では、解析帯ではなく、二値化した解析画像上で一本または複数本の線上での湯面位置を検出しても良い。すなわち、本発明では、鋳型内の湯面高さを測定できれば、いずれの方法で湯面高さを測定しても良い。
また、図4(b)に示すように、出湯部である溶湯部31c内部において、注湯監視部43を設定してもよい。注湯監視部43はスパウト開度を調整して出湯量を絞った際にも、常に溶湯が位置する部位に設定される。すなわち、注湯監視部43は、監視中、常に溶湯部(白色)と認識されるべき位置となる。
これに対し、万が一スパウトが詰まることで溶湯が注湯されなくなり、または、カメラ異常や、カメラの前に障害物等が映り込むことで、正確な湯面監視ができない状況となると、注湯監視部43が非溶湯部と認定されることとなる。この場合には、監視部は異常と認識して、異常信号を発信する。具体的には、作業者等に異常を知らせるための警報を発信し、またはライトを点灯させて、鋳造装置を安全に制御すればよい。
また、解析部に溶湯パターン37を記憶させておいてもよい。溶湯パターン37は、鋳型内部の溶湯部31cの先端部のカメラ画像視野における形状と一致するように設定される。すなわち、溶湯パターン37は、少なくとも常に溶湯があるべき部位の白色部の形状の一部である。解析部は、溶湯パターン37をパターン認識範囲39内部の所定の位置に設定する。
図6は、溶湯パターンによる制御を示す概念図である。図6(a)に示すように、溶湯パターン37は、溶湯部31cの先端側(低湯面側)の先端形状と一致する。解析部は、パターン認識範囲39内において、溶湯パターン37と一致する溶湯部(白色部)を探し、当該部位に溶湯パターン37を配置する。この際、解析帯35等の他の解析枠は、溶湯パターン37の位置に応じて設定される。
図6(b)は、図6(a)の状態から溶湯部31cの位置がずれた状態(図中矢印H方向)を示す図である。このような状況としては、例えば、カメラや鋳型の振動の影響や、鋳型のサイズ変更や鋳型の摩耗等に伴う湯面(鋳型)位置の変動の影響を受ける場合である。図6(b)に示すように、溶湯部31cの位置が変動することで、解析帯35内部における湯面の算出ができなくなる。
これに対し、本実施例では、図6(c)に示すように、パターン認識範囲39内部において、常に溶湯パターン37の位置を溶湯部31cに追従させるため、溶湯部31cの位置が変動しても、この溶湯部31cの位置に応じて解析帯35等の解析枠の位置が常に適切な位置に補正される(図中矢印I方向)。したがって、溶湯部31cの位置変動によらず、常に正確な湯面位置を把握することができる。
なお、パターン認識範囲39は、溶湯パターン37の位置の誤認識がない範囲で設定される。例えば、図4(a)に示すように、溶湯部31cの先端部形状は、溶湯部31a先端部形状と近似する。このため、パターン認識範囲を設定せず、またはパターン認識範囲が大きすぎると、溶湯パターン37の位置を溶湯部31aの先端位置と誤認識する恐れがある。このため、パターン認識範囲39は、溶湯パターン37が移動する可能性のある範囲(溶湯部31aが映り込まない範囲)であらかじめ設定される。
このようにすることで、上述のようにカメラの振動等の影響を受けることがないため、カメラを鋳造装置の近くに配置することができる。このため、撮影視野の光量を十分確保することができる。このため、シャッタースピードを上げることができる。このため、振動による画像ブレの影響をより小さくすることができる。また、溶湯部の近くで撮影することで、高い解像度を得ることができる。
次に、ストッパ開度の制御方法について説明する。図7は、湯面高さの変化を示す概念図である。本発明では、所定の測定間隔(たとえば100ms)で湯面高さが計測される。線Jは、基準湯面高さL近傍で湯面高さが変動している。この場合の所定期間の変動幅はたとえばMとする。
線Jのような場合に、基準湯面高さからの差のみを考慮すると、たとえば外乱により生じる湯面変動に伴い、基準湯面高さから離れると基準湯面高さになるようにストッパ開度が調整される。しかし、この調整量が大きすぎると、湯面高さは過剰に調整され、湯面がハンチングする恐れがある。したがって、調整量のゲインを低くせざるを得ない。
一方、線Kの場合には、所定期間内の変動幅Nは、線Jと略同様であるが、略一定の湯面高さの変化で推移する。すなわち、線Kは、湯面変化速度が略一定である。このような場合に、湯面高さのばらつき(N)のみを考慮し、線Jと同様に低いゲインでストッパを調整すると、湯面高さが基準湯面高さまで調整されるまでの時間を要する。しかし、ゲインを高めたのでは、線Jのような場合にまで過剰な調整がなされる場合がある。
本発明では、湯面の安定状態の可否を湯面高さのばらつきで把握するのではなく、湯面の変化速度のばらつきで把握するものである。すなわち、湯面制御装置の制御部は、所定の測定間隔で得られる湯面高さの情報から、当該測定間隔ごとに、前回湯面高さと現在湯面高さの差と測定間隔とから湯面変動速度を算出し、さらに、所定期間内における複数の湯面変動速度情報から湯面変動速度の標準偏差σを当該測定間隔ごとに算出する。
また、各制御時点において、現在湯面高さと基準湯面高さとの差に応じてストッパの開度を調整する際には、標準偏差σが小さい場合(すなわち湯面変動速度が略一定で湯面が安定な場合)にはゲインを大きくして、ストッパ開度調整量が大きくなるように制御される。同様に、標準偏差σが大きい場合(すなわち湯面変動速度にばらつきがあり、湯面が不安定な場合)にはゲインを小さくして、ストッパ開度調整量が小さくなるように制御される。すなわち、標準偏差σに応じてストッパ開度の調整量に重みづけを与えるものである。
具体的には、基準標準偏差をB、重みづけ係数X=B/σとし、前回のストッパ開度の調整量をMVn−1、今回の基準湯面高さと湯面高さの差をDV、前回の基準湯面高さと湯面高さの差をDVn−1、P(≠0)はゲイン(係数)とすると、今回のストッパ開度の調整量をMVは、
MV=MVn−1+X・P(DV−DVn−1)・・・(1)
で表される。
ここで、基準標準偏差Bは、たとえばあらかじめ湯面変動速度のばらつきを計測しておき、その湯面変動速度の平均値である。なお、回転移動鋳型の湯面変動速度ばらつきの平均速度としては、たとえば、B=80mm/s程度である。すなわち、基準標準偏差よりも実際の標準偏差が大きい場合(平均よりも湯面変動が大きい場合)には、1よりも小さな重み付け係数がPに乗じられる。したがって、ストッパ開度の調整量は小さくなり、過剰な湯量調整を抑制する。また、基準標準偏差よりも実際の標準偏差が小さい場合(平均よりも湯面変動が小さい場合)には、1よりも大きな重み付け係数がPに乗じられる。したがって、ストッパ開度の調整量は大きくなり、より早く基準湯面高さに調整される。
なお、σ
σ=√Σ(x’−M
で表される。ここでx’は、湯面変動速度であり、
’=(xm−1−x)/Δtで表される。
但し、xは、現在よりm回前の湯面高さ、Δtは計測間隔、Mはx’のn回分の平均値である。なお、Δtはたとえば100ms程度である。
また、標準偏差の算出ではたとえば15回分程度の湯面変動速度のデータを用いればよく、n=15程度とすればよい。
また、前述の(1)式に代えて、以下の(2)式を用いても良い。
MV=MVn−1+X・[P(DV−DVn−1)+(1/I)DV+D{(DV−DVn−1)−(DVn−1−DVn−2)}]・・・(2)
但し、P、I、DはそれぞれPID制御の比例・積分・微分のパラメータである。
このように、本発明では、PのみまたはI、Dなど湯面制御を行うパラメータによらず、これらのパラメータの全てまたは任意に選択して重み付け係数を乗じればよい。たとえば、(2)式において、XをPのみに乗じてもよく、またはPとIにのみ乗じても良い。
また、重み付け係数Xには上下限が設定されることが望ましい。たとえば、σが基準下限変動速度Aminよりも小さい場合には、X=B/Aminと一定にすればよい。また、σが基準上限変動速度Amaxよりも大きい場合には、X=B/Amaxとすればよい。すなわち、Amin≦σ≦Amaxの場合にのみX=B/σとして、重み付け係数を標準偏差に応じて変化させればよい。
なお、Aminとしては4mm/100ms、Amaxとしては40mm/100ms程度とすればよい。すなわち、B=80mm/sとすれば、重み付け係数Xは、0.2≦X≦2の範囲で設定される。
次に、本発明の湯面制御方法を用いた金属鋳塊製造工程を説明する。図8は湯面制御の工程を示すフローチャートである。なお、以下の解析、制御およびデータの記憶は、通常のコンピュータを用いればよい。まず、解析部によって、所定の測定間隔で湯面高さが測定される(ステップS1)。制御部は、前回の湯面高さと現在の湯面高さの差を算出し(ステップS2)、各測定ごとに湯面高さの変動速度を算出する(ステップS3)。
次に、制御部は、所定間隔(たとえば過去1.5秒間(=15データ))の湯面変動速度のばらつき(標準偏差σ)を算出する(ステップS4)。得られた標準偏差σが基準下限変動速度よりも小さい場合には(ステップS5)、重み付け係数X=B/AminしてステップS10に進む(ステップS6)。
また、得られた標準偏差σが基準上限変動速度よりも大きい場合には(ステップS7)、重み付け係数X=B/AmaxしてステップS10に進む(ステップS8)。その他は、X=B/σとしてステップS10に進む(ステップS9)。
次に、制御部は、基準湯面高さと現在湯面高さの差DVを算出し(ステップS10)、重み付け係数Xによってストッパ開度調整量を算出する。なお、この際の算出には、たとえば(1)式や(2)式を用いればよい。以上により算出されたストッパ開度調整量に応じて、制御部は、ストッパの開度を調整する(ステップS12)。
なお、この際算出されるのは、ストッパ開度の絶対値ではなく、前回のストッパ開度に対する差分である。したがって、急激なストッパの動作や過剰な開度調整が行われることがない。以上を繰り返し、ストッパ開度を制御して湯面を所定の位置に一定にすることができる。
図9(a)は、本発明により制御した湯面変動を示す図であり、横軸は時間、縦軸は湯面高さを示す。図に示すように、本発明では、湯面変動が極めて小さく、湯面変動幅を±10mm以内に収めることができる。
これに対し、図9(b)は、従来の制御方法によって制御した湯面変動を示す図である。すなわち、基準湯面高さの現在湯面高さとの差から、単にPID制御を用いて湯面制御を行ったものである。従来の制御方法では、湯面変動が大きく、湯面変動としては±50mm程度であった。
本発明によれば、極めて安定した湯面を得ることができる。このため、鋳造トラブルの発生を防止でき、また、湯面変動に伴う鋳塊の品質ばらつきを抑えることができる。特に、湯面の安定度に応じて、湯面制御の調整量に重み付けを与えるため、効率よく湯面を制御することができる。
また、湯面の安定度を湯面変動速度のばらつきにより算出するため、従来のような周期的な湯面変動のみではなく、その他の外乱に対しても正確な湯面制御を行うことができる。また、単なる湯面変動差のばらつきではなく、湯面変動速度のばらつきを用いるため、正確に湯面変動の安定度を把握することができる。
また、重み付け係数には上下限が設定されるため、過剰な調整等の恐れもない。また、算出されるストッパ開度調整量は、前回調整量に対する差分で与えられるため、急激なストッパ調整が行われずに正確な湯面制御を行うことができる。
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1………連続鋳造圧延装置
3………シャフト炉
5………樋
7………タンディッシュ
9………スパウト
11………ホイール
13………ターンロール
15………ベルト
17………圧延機
19………鋳塊
21………線材
23………巻取機
25………カメラ
27………湯面
29a、29b………溶湯
31a、31b、31c………溶湯部
33………非溶湯部
35………解析帯
37………溶湯パターン
39………パターン認識範囲
41………ピーク表示部
43………注湯監視部
45………ピーク
47………閾値

Claims (4)

  1. 金属鋳塊の製造方法であって、
    鋳型と、前記鋳型に溶湯を注ぐスパウトと、前記スパウトの開度を調節するストッパと、前記鋳型の内部の溶湯の湯面を撮影するカメラと、前記カメラで撮影された画像を解析する解析部と、前記解析部で解析された情報に基づき、前記スパウトの開度を調節する制御部と、を具備する製造装置を用い、
    前記解析部は、前記カメラで撮影された湯面画像を二値化して、前記鋳型の内部の溶湯の湯面高さを検出し、
    前記制御部は、所定の測定間隔で得られる湯面高さの情報から、当該測定間隔ごとに、前回湯面高さと現在湯面高さの差と測定間隔とから湯面変動速度を算出し、さらに、所定期間内における複数の湯面変動速度情報から湯面変動速度の標準偏差σを当該測定間隔ごとに算出し、
    現在湯面高さと基準湯面高さとの差に応じて前記ストッパの開度を調整する際に、前記標準偏差σが小さいとストッパ開度調整量が大きく、前記標準偏差σが大きいとストッパ開度調整量が小さくなるように、前記標準偏差σに応じてストッパ開度の調整量に重みづけを与えることを特徴とする金属鋳塊製造方法。
  2. 基準標準偏差B、重みづけ係数X=B/σとし、前回のストッパ開度の調整量をMVn−1、今回の基準湯面高さと湯面高さの差をDV、前回の基準湯面高さと湯面高さの差をDVn−1、P(≠0)は係数とすると、今回のストッパ開度の調整量をMVは、
    MV=MVn−1+X・P(DV−DVn−1)・・・(1)
    で表わされることを特徴とする請求項1記載の金属鋳塊製造方法。
  3. 前記重みづけ係数Xは、
    σが基準下限変動速度Aminよりも小さい場合には、X=B/Amin、
    σが基準上限変動速度Amaxよりも大きい場合には、X=B/Amax、
    Amin≦σ≦Amaxの場合にX=B/σであることを特徴とする請求項2に記載の金属鋳塊製造方法。
  4. 前記(1)式に代えて、
    MV=MVn−1+X・[P(DV−DVn−1)+(1/I)DV+D{(DV−DVn−1)−(DVn−1−DVn−2)}]・・・(2)
    但し、P、I、DはそれぞれPID制御の比例・積分・微分のパラメータ
    (2)式で表わされることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の金属鋳塊製造方法。
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