JP5714016B2 - スイッチング型蛍光ナノ粒子プローブ及びそれを用いた蛍光分子イメージング法 - Google Patents

スイッチング型蛍光ナノ粒子プローブ及びそれを用いた蛍光分子イメージング法 Download PDF

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Description

本発明は、生体適合性を有する両親媒性物質からなる分子集合体に蛍光色素を内包してなる蛍光ナノ粒子及びそれをプローブとして用いた蛍光イメージングに関する。
近年ナノテクノロジーへの関心が高まっており、ナノサイズ物質特有の性質を活かした新規機能性材料が開発されている。この新規機能性材料は、エネルギー、エレクトロニクス、及び医薬などの幅広い分野での応用が可能となっている。ナノテクノロジーは、なかでも、生体試料中の物質の検出、in vivo でのイメージングにおいて注目を浴びている。
医薬の分野においては、腫瘍部分に近赤外蛍光色素を集め、腫瘍部分をイメージングする近赤外蛍光撮影法が注目されている。この方法においては、励起光照射により近赤外領域に蛍光を放射する性質を持つ化合物を、造影剤として生体内に投与する。次に身体の外側から近赤外の波長である励起光を照射し、腫瘍部分に集まった蛍光造影剤から放射される蛍光を検出して、病変部位を確定するものである。
イメージング用プローブとして用いられる物質は、主としてキャリア剤と蛍光色素とからなり、それぞれ様々な態様のものが報告されている。
キャリア剤としては、リポソームナノ粒子(特開2005−220045号公報(特許文献1))、ペプチド性ナノ粒子(Journal of Controlled Release 51 (1998) 241-248(非特許文献1)、疎水性ブロックとしてポリグルタミン酸メチルエステルを有する両親媒性ブロックポリマーを用いたナノ粒子(特開2008−024816号公報(特許文献2))、ポリサルコシン鎖とポリ乳酸鎖とから構成される両親媒性ブロックポリマーを用いたナノ粒子(Chemistry Letters, vol.36, no.10, 2007, p.1220-1221(非特許文献2))、ポリサルコシン鎖とポリ乳酸鎖とから構成される両親媒性ブロックポリマーと、ポリ乳酸とを用いたナノ粒子(国際公開第2009/148121号パンフレット(特許文献3))等が挙げられる。
蛍光色素はキャリア剤に共有結合により結合又は非共有結合により内包されるものであり、フルオレセイン系色素、シアニン系色素、ローダミン系色素などが用いられる。シアニン系色素としては、インドシアニングリーン(ICG)が用いられることが多いが、様々なインドシアニン誘導体が開発されている(Bioconjugate Chem. 1996, 7, 356-362(非特許文献3)、日本薬学会第131年会、29p−am395Qポスター、2010年3月29日(非特許文献4))。また、インドシアニン誘導体と消光剤とを同時内包させることにより消光したナノ粒子に、腫瘍組織に到達した際に蛍光性を獲得させる方法も報告されている(Cancer Research, 60, 4953-4958, September 1, 2000(非特許文献5)、Bioconjugate Chem. 2002, 13, 605-610(非特許文献6)、Cancer Research, 2009; 69: (4). February 15, 2009(非特許文献7))。
より具体的には、上記非特許文献4においては、ポリサルコシン鎖とポリ乳酸鎖とからなる両親媒性ポリマー(PSar70-PLLA30)の6mg/mL溶液500μLとインドシアニン誘導体IC7-1の1mg/mL溶液3.16μLとからナノ粒子IC7-1 lactosomeを作成したことが開示されている。すなわち、このナノ粒子IC7-1 lactosomeにおけるインドシアニン誘導体IC7-1の内包量が0.48mol%であることが開示されている。この内包量は、ナノ粒子IC7-1 lactosome1個に対してインドシアニン誘導体IC7-1分子1個に相当する。
特開2005−220045号公報 特開2008−024816号公報 国際公開第2009/148121号パンフレット
「ジャーナル・オブ・コントロールド・リリース(Journal of Controlled Release)」、第51巻、1998年、p.241−248 「ケミストリ・レターズ(Chemistry Letters)」、第36巻、第10号、2007年、p.1220-1221 「バイオコンジュゲート・ケミストリ(Bioconjugate Chemistry)」 1996年, 第7巻, p.356-362 日本薬学会第131年会、29p−am395Qポスター、2010年3月29日 「キャンサー・リサーチ(Cancer Research)」, 第60巻, p.4953-4958, 2000年9月1日 「バイオコンジュゲート・ケミストリ(Bioconjugate Chemistry)2002年, 第13巻, p.605-610 「キャンサー・リサーチ(Cancer Research)」2009年; 第69巻: (第4号). 2009年2月15日
本発明の目的は、スイッチング機能(すなわち、ナノ粒子調製時には内包された蛍光色素が消光しており、且つ、イメージング時には蛍光を発している機能)を有する新規なイメージング用蛍光ナノ粒子プローブを提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討の結果、蛍光色素が高濃度内包されることにより自己消光したナノ粒子が、血中成分に接触することによって蛍光を回復するという驚くべき効果を見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下のスイッチング型蛍光ナノ粒子プローブ及びそれを用いたイメージング法を含む。
(1)
親水性ブロック鎖と疎水性ブロック鎖とを有する両親媒性ブロックポリマーからなる分子集合体と、前記分子集合体に内包されている蛍光色素を含む蛍光ナノ粒子プローブであって、
(a)前記親水性ブロック鎖が、サルコシン単位及びアルキレンオキシド単位から選ばれる単位を親水性必須構成単位として含み且つ前記親水性必須構成単位を20個以上有するものであり、
(b)前記疎水性ブロック鎖が、アミノ酸単位及びヒドロキシル酸単位からなる群から選ばれる単位を疎水性必須構成単位として含み、且つ前記疎水性必須構成単位を15個以上有するものであり、
(c)前記蛍光色素が、下記構造式(I):
(式中、R及びRは、それぞれ、同一又は異なっていてもよく、置換されていてもよい炭化水素基であり;Rは、置換されていてもよい2価の炭化水素基であり;
Xはハロゲン、アリーロキシ基又はチオアリーロキシ基であり;Aは陰イオンであり、mは0又は1であり;環B及び環Dは、同一又は異なっていてもよく、含窒素二環式又は三環式芳香族複素環である。)
で示されるシアニン化合物であり、
前記蛍光色素が前記分子集合体1個当たり複数分子内包される、蛍光ナノ粒子プローブ。
上述のスイッチング型蛍光ナノ粒子プローブにおいては、内包された複数分子の蛍光色素が会合することによって、蛍光が消光している。
(2)
前記蛍光色素が、前記分子集合体に、前記両親媒性ブロックポリマー及び前記蛍光色素の合計に対し1〜50mol%となる量で内包される、(1)に記載の蛍光ナノ粒子プローブ。
上記の蛍光ナノ粒子における蛍光色素内包量は、粒子1個に対して蛍光色素が2〜200分子に相当する。
(3)
血漿中における蛍光強度が、リン酸緩衝生理食塩水中における蛍光強度の10倍以上である、(1)又は(2)に記載の蛍光ナノ粒子プローブ。
上記蛍光強度が10倍となる場合の一例として、蛍光色素内包量が20mol%(すなわち蛍光ナノ粒子1個に対して蛍光色素が50分子に相当)である場合が挙げられる。
(4)
前記環Bが以下に示す構造:
(式中、R及びRは、水素であるか、又はそれらが互いに連結してアリール環を形成するものである。)のいずれかを有するものであり、
前記環Dが以下に示す構造:
(式中、R及びRは、水素であるか、又はそれらが互いに連結してアリール環を形成するものである。)のいずれかを有するものである、(1)〜(3)のいずれかに記載の蛍光ナノ粒子プローブ。
(5)
前記シアニン化合物が、下記構造式(I-i):
で示されるインドシアニン化合物である、(1)〜(4)のいずれかに記載の蛍光ナノ粒子プローブ。
(6)
前記蛍光色素が、下記構造式(I-ii):
で示されるものである、(1)〜(5)のいずれかに記載の蛍光ナノ粒子プローブ。
(7)
前記蛍光色素が、下記構造式(I-iii):
で示されるものである、(1)〜(5)のいずれかに記載の蛍光ナノ粒子プローブ。
(8)
前記蛍光色素が、下記構造式(I-iv):
で示されるものである、(1)〜(5)のいずれかに記載の蛍光ナノ粒子プローブ。
(9)
前記蛍光色素が、下記構造式(I-v):
で示されるものである、(1)〜(5)のいずれかに記載の蛍光ナノ粒子プローブ。
(10)
前記蛍光色素が、下記構造式(I-vi):
で示されるものである、(1)〜(4)のいずれかに記載の蛍光ナノ粒子プローブ。
前記蛍光色素が、下記構造式(I-vii):
で示されるものである、(1)〜(4)のいずれかに記載の蛍光ナノ粒子プローブ。
(12)
前記蛍光色素が、下記構造式(I-viii):
で示されるものである、(1)〜(4)のいずれかに記載の蛍光ナノ粒子プローブ。
(13)
前記蛍光色素が、下記構造式(I-ix):
で示されるものである、(1)〜(4)のいずれかに記載の蛍光ナノ粒子プローブ。
(14)
前記蛍光色素が、下記構造式(I-x):
で示されるものである、(1)〜(4)のいずれかに記載の蛍光ナノ粒子プローブ。
(15)
前記蛍光色素が、下記構造式(I-xi):
で示されるものである、(1)〜(4)のいずれかに記載の蛍光ナノ粒子プローブ。
(16)
前記疎水性ブロック鎖が、
疎水性アミノ酸単位を10個以上有する疎水性ポリペプチド鎖、
ヒドロキシル酸単位を15個以上有する疎水性ポリエステル鎖、及び、
アミノ酸単位及びヒドロキシル酸単位の両方を合計20個以上有する疎水性デプシペプチド鎖、
からなる群から選ばれる、(1)〜(15)のいずれかに記載の蛍光ナノ粒子プローブ。
(17)
前記疎水性ブロック鎖が、25個以上の乳酸単位を有する疎水性ブロック鎖である、(1)〜(16)のいずれかに記載の蛍光ナノ粒子プローブ。
(18)
(1)〜(17)のいずれかに記載のスイッチング型蛍光ナノ粒子プローブを非ヒト動物に投与する工程と、蛍光を検出する工程とを含む、蛍光分子イメージング法。
本発明によると、スイッチング機能(すなわち、ナノ粒子調製時には内包された蛍光色素が消光しており、且つ、イメージング時には蛍光を発している機能)を有する新規なイメージング用蛍光ナノ粒子プローブを提供することができる。
より具体的には、本発明によると、シアニン系の蛍光色素を従来のナノ粒子より高濃度に内包させることによって、調製時において内包された蛍光色素の蛍光が(蛍光色素の)濃度依存的に減少し、且つ、血中の成分に接触させた際に蛍光が(血中成分の)濃度依存的に回復するナノ粒子であって、EPR効果による所望の組織への良好な集積性を有するナノ粒子を提供することができる。このため、生体内の所望の組織において特異的に高輝度の蛍光を呈する蛍光ナノ粒子プローブ及びそれを用いた蛍光イメージング法を提供することができる。
IC7-1又はIC7-2内包ラクトソームの吸収スペクトル(a)及び(c)と、蛍光スペクトル(b)及び(d)との測定結果である。それぞれIC7-1又はIC7-2を1、5、10及び20 mol%内包した場合のスペクトルを示す。 IC7-1内包ラクトソーム(1 mg/ml)の蛍光強度測定結果である。それぞれIC7-1を0.5、1、2、4、8、12、16、20 mol%内包した場合の蛍光極大値を示す(a)。蛍光色素濃度(1μM)あたりに換算した蛍光強度測定結果である(b)。励起波長785 nmで蛍光極大値を測定した。 IC7-1を20 mol%内包したラクトソーム(PSar-PLLA)、PEG-PLLA粒子(PEG-PLLA)及びペプトソーム(PSar-P(Leu-Aib))それぞれに対して、PBS、SDS、BSA又は血漿を加えた場合の蛍光スペクトル測定結果である。 蛍光色素(IC7-1 (a)、IC7-2 (b)、ICG (c)、IR820 (d)、IR783 (e)、又はIR806 (f))を内包したラクトソームに対して、PBS、SDS、BSA又は血漿を加えた場合の蛍光スペクトル測定結果である。 蛍光色素(Rhodamine800 (j)、Rhodamine101 (k)、又はRhodamine6G (l))を内包したラクトソームに対して、PBS、SDS、BSA又は血漿を加えた場合の蛍光スペクトル測定結果である。 IC7-1 (a)、IC7-2 (b)、IR820 (e)、IR783 (f)、IR806 (g)について、それぞれ配合量を変えて調製した蛍光色素内包ラクトソーム(1 mg/ml)に対して、PBS、SDS、BSA、又は血漿を加えた場合の蛍光強度測定結果である。 IC7-1 20 mol%内包ラクトソームに対して、BSAを0.5〜10 wt%混合した場合の蛍光強度測定結果(a)である。図(b)はBSA濃度と蛍光極大値(839 nm)における前記蛍光強度との関係を示す。 IC7-1を1 mol%内包したラクトソームを用いた場合(a)及びIC7-1を20mol%内包したラクトソームを用いた場合(b)における担がんマウスの蛍光イメージング試験結果である。蛍光プローブを尾静脈注射後、投与直後、3時間、6時間、9時間、24時間及び48時間経過後のマウスを5方向(左腹、左体側、背中、右体側及び右腹)から測定したイメージを示す。 IC7-1を1 mol%内包したラクトソームを用いた場合(a)及び20mol%内包したラクトソームを用いた場合(b)における、背中方向から観測したがんと、バックグラウンドとしての背中とにおける蛍光強度の比較を行った結果を示す。 両親媒性ブロックポリマー(図中PLLA30-PSar70で例示される)と蛍光色素(図中IC7-1で例示される)とから自己組織化によって形成されるミセル(IC7-1 lactosome)を示す。 蛍光色素(IR775 (m)、IR780 (n)、IR792 (o)、IR797(p)、又はIR813(q)を内包したラクトソームに対して、PBS、SDS、BSA又は血漿を加えた場合の蛍光スペクトル測定結果である。
[1.両親媒性ブロックポリマー]
本発明の両親媒性ブロックポリマーは、以下の親水性ブロック及び疎水性ブロックを有する。以下、本発明において、用語「アミノ酸」は、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、及びそれらの修飾及び/又は化学的変更による誘導体を含む概念で用いる。さらに、本明細書において、アミノ酸は、α−、β−、γ−アミノ酸を含む。好ましくは、α−アミノ酸である。
[1−1.親水性ブロック鎖]
本発明において、親水性ブロック鎖が有する「親水性」という物性の具体的な程度としては、特に限定されるものではないが、少なくとも、親水性ブロック鎖が、後述の特定の疎水性ブロック鎖に対して、相対的に親水性が強い領域であり、当該親水性ブロック鎖が当該疎水性ブロック鎖とコポリマーを形成することによって、コポリマー分子全体として両親媒性を実現することが可能となる程度の親水性を有していれば良い。或いは、当該両親媒性ブロックポリマーが溶媒中で自己組織化して、自己集合体、好ましくは粒子状の自己集合体を形成することが可能となる程度の親水性を有していれば良い。
親水性ブロック鎖は、サルコシンに由来する単位、及びアルキレンオキシド又はアルキレングリコールに由来する単位からなる群から選ばれる単位を親水性必須構成単位として含み、且つ前記親水性必須構成単位を20個以上有する親水性分子鎖である。具体的には、親水性分子鎖は、サルコシン単位を20個、好ましくは30個以上有する親水性ポリペプチド鎖;アルキレンオキシド単位を20個以上有する親水性ポリエーテル鎖;及び、サルコシン単位及びアルキレンオキシド単位の両方を合計20個、好ましくは30個以上有する親水性複合鎖、が含まれる。
サルコシンとはすなわちN−メチルグリシンである。
アルキレンオキシド単位としては、具体的には、エチレンオキシド単位(ポリエチレングリコール単位)、プロピレンオキシド単位(プロピレングリコール)などが挙げられる。また、アルキレンオキシド単位においては、水素が置換されていてもよい。
サルコシン単位及びアルキレンオキシド単位以外の構成単位を有する場合、そのような構成単位としては特に限定されないが、例えばサルコシン以外のアミノ酸(親水性アミノ酸及びその他のアミノ酸を含む)とすることができる。そのようなアミノ酸としては、好ましくは、αアミノ酸である。例えば、セリン、スレオニン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸などが挙げられる。
親水性ブロック鎖において、その鎖を構成する構成単位の種類・比率は、ブロック鎖全体が上述したような親水性となるように、当業者によって適宜決定される。
親水性ブロック鎖は、例えば構成単位数500程度を上限として設計することができる。本発明においては、しばしば、30〜300、より好ましくは50〜200程度の構成単位数を有する親水性ブロック鎖が合成されうる。構成単位数が500程度を超えると、分子集合体を形成した場合に、当該形成された分子集合体の安定性を欠く傾向にある。構成単位数が30を下回ると、分子集合体の形成自体が困難となる傾向にある。
親水性ブロック鎖においては、同じ構成単位のすべてが連続していてもよいし、非連続であってもかまわない。親水性ブロック鎖において、上記特定の単位以外の他の構成単位を含む場合、他の構成単位の種類・比率は、ブロック鎖全体が上述したような親水性となるように、当業者によって適宜決定される。またその場合、後述の基本特性を損なわないように分子設計されることが好ましい。
サルコシン(すなわちN−メチルグリシン)は水溶性が高く、また、サルコシンのポリマーはN置換アミドを有することから通常のアミド基に比べてシス−トランス異性化が可能であり、さらに、Cα炭素まわりの立体障害が少ないことから、高い柔軟性を有するものである。このようなポリペプチドを構成ブロック鎖として用いることは、当該ブロック鎖に高い親水性と高い柔軟性とを併せ持つという基本特性が備わる点で非常に有用である。
また、ポリアルキレンオキシド鎖は、親水性が高く、免疫原性や毒性などの悪影響を及ぼさないものである。このようなポリエーテル鎖を構成ブロック鎖として用いることは、当該ブロック鎖に高い親水性を与え、キャリア剤に抗原性を減少させ且つ良好な血中安定性及び血中滞留性を与えるという基本特性が備わる点で非常に有用である。
[1−2.疎水性ブロック鎖]
本発明において、疎水性ブロック鎖が有する「疎水性」という物性の具体的な程度としては、特に限定されるものではないが、少なくとも、疎水性ブロック鎖が、上記の特定の親水性ブロック鎖に対して、相対的に疎水性が強い領域であり、当該疎水性ブロック鎖が当該親水性ブロック鎖とコポリマーを形成することによって、コポリマー分子全体として両親媒性を実現することが可能となる程度の疎水性を有していれば良い。或いは、当該両親媒性ブロックポリマーが溶媒中で自己組織化して、自己集合体、好ましくは粒子状の自己集合体を形成することが可能となる程度の疎水性を有していれば良い。
疎水性ブロック鎖は、アミノ酸に由来する構成単位及びヒドロキシル酸に由来する構成単位からなる群から選ばれる単位を必須構成単位として含み、且つ当該必須構成単位を20個以上有する疎水性分子鎖である。具体的には、疎水性分子鎖は、疎水性アミノ酸単位を20個以上有する疎水性ポリペプチド鎖;ヒドロキシル酸単位を20個以上有する疎水性ポリエステル鎖;及び、アミノ酸単位及びヒドロキシル酸単位の両方を合計20個以上有する疎水性デプシペプチド鎖、が含まれる。
本発明における疎水性ブロック鎖は、へリックス構造を有しているものが好ましい。
疎水性アミノ酸は、その多くが、脂肪族側鎖、芳香族側鎖などを有する。天然アミノ酸では、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、メチオニン、チロシン、及びトリプトファンなどが挙げられる。非天然アミノ酸では、特に限定されないが、グルタミン酸メチルエステル、グルタミン酸ベンジルエステル、アスパラギン酸メチルエステル、アスパラギン酸エチルエステル、アスパラギン酸ベンジルエステルなどのアミノ酸誘導体が挙げられる。
ヒドロキシル酸としては、特に限定されないが、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシイソ酪酸などが挙げられる。
疎水性ブロック鎖において、その鎖を構成する構成単位の種類・比率は、鎖全体が疎水性となるように、当業者によって適宜決定される。
疎水性ブロック鎖は、例えば構成単位数100程度を上限として設計することができる。本発明においては、しばしば、10〜80、好ましくは20〜50程度の構成単位数を有する疎水性ブロック鎖が合成されうる。構成単位数が100程度を超えると、分子集合体を形成した場合に、当該形成された分子集合体の安定性を欠く傾向にある。構成単位数が10を下回ると、分子集合体の形成自体が困難となる傾向にある。
疎水性ブロック鎖においては、同じ構成単位のすべてが連続していてもよいし、非連続であってもかまわない。疎水性ブロック鎖において、上記特定の単位以外の他の構成単位を含む場合、他の構成単位の種類・比率は、ブロック鎖全体が上述したような疎水性となるように、当業者によって適宜決定される。またその場合、後述の基本特性を損なわないように分子設計されることが好ましい。
疎水性ブロック鎖に採用されるアミノ酸単位及びヒドロキシル酸単位は、優れた生体適合性及び安定性を有するものである。このため、このようなポリ乳酸を構成ブロックとした両親媒性物質から得られる分子集合体は、生体、特に人体への応用性という点で非常に有用である。
また、特にポリ乳酸は、優れた生分解性を有することから代謝が早く、生体内においてがん組織以外への組織への集積性が低い。このため、このようなポリ乳酸を構成ブロックとした両親媒性物質から得られる分子集合体は、がん組織への特異的な集積性という点で非常に有用である。
そして、ポリ乳酸は、低沸点溶媒への溶解性に優れるものであることから、このようなポリ乳酸を構成ブロックとした両親媒性物質から分子集合体を得る際に、有害な高沸点溶媒の使用を回避することが可能である。このため、このような分子集合体は、生体への安全性という点で非常に有用である。
さらに、ポリ乳酸の鎖長を調整することは、このようなポリ乳酸を構成単位とする両親媒性物質から得られる分子集合体の形状制御及び大きさ制御の一要因として寄与する点で好ましい。このため、このような構成ブロックを用いることは、得られる分子集合体形状の用途性に優れるという点で非常に有用である。
[1−3.その他]
本発明において、両親媒性ブロックポリマーを構成する構成単位は、さらなる基を有しても良い。そのような基は、当業者によって適宜選択されるものであって、特に限定されるものではない。たとえば、当該基の例として、適当な鎖長を有する有機基などの機能性基が挙げられる。これらの基は、例えば、本発明のナノ粒子が、分子イメージングシステムや薬剤搬送システムに用いられる分子プローブとして用いられる場合に、そのような分子プローブとしてさらに有用となるような形態・機能などを持たせるための基となりうるものであり、当業者によって適宜選択されるものである。機能性基のより具体的な例としては、糖鎖や、上記のポリアルキレンオキシド鎖以外の水溶性高分子が挙げられる。糖鎖の例としては、カルボキシルメチルセルロース、アミロースなどが挙げられる。水溶性高分子の例としては、ポリエーテル鎖、ポリビニルアルコール鎖などが挙げられる。
[2.蛍光色素]
本発明においてキャリア剤に内包される蛍光色素は、以下の一般式(I)で表されるシアニン化合物である。
上記式(I)中、R及びRは、それぞれ、同一又は異なっていてもよく、置換されていてもよい炭化水素基である。
及びRにおける炭化水素基は、炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜5のアルキル基でありうる。R及びRにおける置換基は、アニオン性であってもよい置換基であり、カルボキシル基、カルボキシレート基、金属カルボキシレート基、スルホニル基、スルホネート基、金属スルホネート基、又は水酸基でありうる。前記金属は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属でありうる。
或いは、R及びRにおける炭化水素基は、5〜50、好ましくは15〜35の乳酸単位を含むポリ乳酸鎖でありうる。すなわちこの場合、内包されるべき蛍光色素は、蛍光標識されたポリ乳酸鎖である。
は、環状構造をとることができる、置換されていてもよい2価の炭化水素基である。Rは、環状構造をとることにより、蛍光色素の分子構造をリジッド化するものでありうる。好ましくは、エチレン基又はプロピレン基である。
Xはハロゲン、アリーロキシ基又はチオアリーロキシ基である。ハロゲンは、Cl、Br、又はIでありうる。アリーロキシ基は、例えばフェノキシ基でありうる。チオアリーロキシ基は、例えばチオフェノキシ基でありうる。
は陰イオンであり、mは0又は1である。mが0の場合、R及びRのいずれか一方がアニオン性基であり、分子全体としてベタイン構造をとる。mが1の場合、Aは、Cl、Br、I等のハロゲンイオン、CIO 、BF 、PF 、SbF 、SCN等でありうる。
環B及び環Dは、同一又は異なっていてもよく、含窒素二環式又は三環式芳香族複素環である。好ましくは、環B及び環Dは、同一である。
環Bの好ましい態様としては、以下に示す構造が挙げられる。
環Dの好ましい態様としては、以下に示す構造が挙げられる。
上記式において、R及びRは、いずれも水素でありうる。又は、R及びRは、それらが互いに連結してアリール環を形成しうる。前記アリール基は、置換されてよいベンゼン環でありうる。
本発明においてより好ましい蛍光色素は、下記構造式(I-i)で示されるインドシアニン化合物である。
本発明における蛍光色素の具体例として、環B及び環Dがいずれも含窒素三環式芳香族複素環であるIC7−1(I-ii)、IR820(I-iii)及びIR813(I-xi)、環B及び環Dがいずれも含窒素二環式芳香族複素環であるIR783(I-iv)、IR806(I-v)、IR775(I-vii)、IR780(I-viii)、IR792(I-ix)及びIR797(I-x)、並びに、環Bが含窒素三環式芳香族複素環、環Cが含窒素二環式芳香族複素環であるIC7−2(I-vi)の構造式を以下に示す。
本発明における蛍光色素には、式(I-ii)、(I-iii)、(I-iv)、(I-v)、(I-vii)、(I-viii)、(I-ix)、(I-x)及び(I-xi)で例示されるように少なくともN置換基(R、R)以外において対称構造を有するもの、及び、式(I-vi)で例示されるように非対称構造を有するものが含まれる。本発明においては、少なくともN置換基以外において対称構造を有するものがより好ましい。このうち、式(I-ii)で例示されるものは、N置換基以外において対称構造を有し、式(I-iii)、(I-iv)、(I-v)、(I-vii)、(I-viii)、(I-ix)、(I-x)及び(I-xi)で例示されるものは、N置換基を含めて分子全体として対称構造を有する。
[3.ナノ粒子]
本発明のナノ粒子は、上記両親媒性ブロックポリマーの凝集により、或いは自己集合的な配向会合により成り立つ分子集合体をキャリア剤として、上記蛍光色素が内包された構造体である。
[3−1.ナノ粒子の構造]
本発明における分子集合体はミセルを構成する。本発明のミセルの一例の模式図を、図10に示す。図10は、両親媒性ブロックポリマー(図中PLLA30-PSar70で例示される)と蛍光色素(図中IC7-1で例示される)とから自己組織化によって形成されるミセル(IC7-1 lactosome)を示している。
図10に例示されるように、両親媒性ブロックポリマーは、自己組織化によって、疎水性ブロック鎖がコア部を形成する。一方、蛍光色素は、当該疎水コア部に位置する。このとき、シアニン系色素である蛍光色素は会合している。これにより、蛍光が消光している(すなわち後述のオフ状態にある)。
本発明のナノ粒子のキャリア剤である分子集合体は、後述のオン状態において、外部環境に応答可能な柔軟性と蛍光色素が分子集合体に保持されることが可能な内包安定性とを両立することができる。
[3−2.ナノ粒子における蛍光色素の内包量]
本発明のナノ粒子は、ナノ粒子1個につき蛍光色素を複数分子内包する。例えば、両親媒性ブロックポリマー及び蛍光色素の合計に対し、蛍光色素の量が1〜50mol%でありうる。好ましくは、5〜20mol%、又は10〜20mol%でありうる。本発明においては一般的に、両親媒性ブロックポリマー及び蛍光色素の合計に対し1mol%となる蛍光色素の量は、ナノ粒子1個に内包される蛍光色素2分子に相当する。上記範囲を下回ると、スイッチング機能を具備することができない傾向にあり、上記範囲を上回ると、ナノ粒子の形成が困難となる傾向にある。
[3−3.ナノ粒子のスイッチング機能]
[3−3−1.オフ機能]
本発明のナノ粒子には、蛍光色素が複数分子内包されている。内包されている複数の分子は会合することによって自己消光する。
消光の度合いは、内包される蛍光色素の量に依存する。すなわち、内包される蛍光色素の量が多くなるほど、特定量の蛍光色素当たりの蛍光強度は指数関数的に減少する。減少する度合いは蛍光色素によって異なりうるが、特定量(例えば1μM)の蛍光色素当たりに換算した蛍光強度は、両親媒性ポリマー濃度1/15 mg/mlで測定した場合、蛍光色素内包量を1.12〜2.07mol%増やすごとに蛍光強度は1/2に減少する場合がある。例えば、1.12mol%増やすごとに蛍光強度が1/2に減少しうる場合として、ラクトソーム(ナノ粒子のキャリア部分であってポリサルコシン−ポリ乳酸両親媒性ブロックポリマーからなる分子集合体)にIC7−1を内包したものを上記濃度に調整して測定した場合が挙げられる。内包された蛍光色素の量が0.5mol%(ナノ粒子1個当たり蛍光色素1分子に相当)における蛍光強度と比較した消光率は、内包された蛍光色素の量が1〜50mol%(ナノ粒子1個当たり蛍光色素2〜200分子に相当)である場合で最大限(すなわち1.12mol%増やすごとに蛍光強度が1/2に減少する場合)1/1.36〜1/1.95×1013、或いは、内包された蛍光色素の量が10〜20mol%(ナノ粒子1個当たり蛍光色素22〜50分子に相当)である場合で最大限1/355〜1/1.72×10である。
従って、本発明のナノ粒子は少ない蛍光分子数で効率よく消光することが可能である。
上述のような消光状態(オフ状態)は、少なくともナノ粒子調製時の環境において保たれる。オフ状態が保たれる環境としては、後述のオン状態を惹起する環境でなければどのような環境でも良い。例えば、界面活性剤や血中成分が含まれていない、水や水溶液などの水系環境及び無水環境が挙げられる。水や水溶液としては、生化学的、薬学的に許容することができるものであればよく、具体的には、注射用蒸留水、生理食塩水、緩衝液などが挙げられ、好ましくはリン酸緩衝生理食塩水が挙げられる。また、無水環境にあるナノ粒子とは、すなわち凍結乾燥処理されたナノ粒子である。
[3−3−2.オン機能]
上述のオフ状態にあるナノ粒子は、外部環境が変化すると、外部環境に応答することによって蛍光を回復した状態(すなわちオン状態)となる。
オン状態を惹起する環境としては、ナノ粒子に内包された蛍光色素の会合を解くことができる環境であれば特に限定されない。蛍光色素の会合を解くことができる環境とは、キャリア剤である分子集合体構造を変形させる作用を有する環境であると考えられる。さらに、蛍光色素の会合を解くことを可能にするキャリア剤構造の変形を生じさせる一方で、会合が解かれた蛍光色素がナノ粒子から開放されることなくナノ粒子に保持され続けることを可能にする環境であることが好ましい。これにより、好ましいオン状態を生じさせることが可能である。
オン状態を惹起する環境に含まれる成分としては、具体的には、血中成分が挙げられる。
血中成分としては、血液、血漿、血清、アルブミンなどが挙げられる。
血中成分は、生体の体内環境における濃度であれば、オン状態を惹起することができる。オン状態を惹起することが可能な血中成分濃度範囲としては、例えばアルブミンの場合であれば0.5〜10重量%、又は、内包する蛍光色素の2.3〜47倍(モル基準)である。上記範囲を下回ると、蛍光強度が十分に回復しない傾向にあり、上記範囲を上回ると、最大限蛍光が回復することにより蛍光強度が頭打ちとなる傾向にある。なお、蛍光回復の程度は、血中成分の濃度依存的に変化することが本発明者らによって確認されている。
オン状態となることによって、オフ状態の場合に消光していた蛍光が回復する。回復後の蛍光強度は、キャリア剤や内包された蛍光色素によって異なりうるが、オフ状態(例えばリン酸緩衝生理食塩水中に存在している状態)における蛍光強度と比較して大きければよい。一例に過ぎないが、内包された蛍光色素の量が1〜50mol%(ナノ粒子1個当たり蛍光色素2〜200分子に相当)である場合で、最大限1.09〜2200倍程度、或いは10〜20mol%(ナノ粒子1個当たり蛍光色素22〜50分子に相当)である場合で最大限45.2〜287倍程度となりうる。本発明においては、回復後の蛍光強度がオフ状態における蛍光強度と比較して10倍以上であることが好ましい。100倍以上であればより好ましい。上記範囲の上限は特に限定されるものではないが、例えば10,000倍である。
[3−4.ナノ粒子の大きさ]
[3−4−1.ナノ粒子の大きさ]
本発明のナノ粒子の大きさは、例えば粒子径10〜500nmである。ここで「粒子径」とは、粒子分布で最も出現頻度の高い粒径、すなわち中心粒径をいう。粒子径が10nmより小さいものは作成が難しく、500nmより大きいものは、特に生体内へ注射により投与する場合に、注射剤として好ましくない場合がある。
[3−4−2.ナノ粒子の大きさ測定]
本発明のナノ粒子の大きさを測定するための方法は特に限定されるものではなく、当業者によって適宜選択されるものである。例えば、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;TEM)による観察法や、動的光散乱(Dynamic Light Scattering;DLS)法などが挙げられる。DLS法においては、溶液中でブラウン運動している粒子の移動拡散係数を測定する。
[3−4−3.ナノ粒子の大きさ制御]
分子集合体の大きさを制御する手段の例として、両親媒性ブロックポリマーの鎖長を制御することが挙げられる。好ましくは、両親媒性ブロックポリマーにおける疎水性ブロックの重合度を調整することが有効である。
[3−5.ナノ粒子の形成]
ナノ粒子の作成法は特に限定されず、所望するナノ粒子の大きさ、特性、担持させる蛍光色素の種類、性質、含有量などに応じて、当業者が適宜選択することができる。必要に応じ、下記のようにナノ粒子を形成した後に、得られたナノ粒子に対して、公知の方法によって表面修飾を行っても良い。
なお、粒子が形成されたことの確認は、電子顕微鏡観察によって行うと良い。
[3−5−1.フィルム法]
フィルム法は、リポソームの調製に用いられていた方法である。本発明における両親媒性ブロックポリマーは低沸点溶媒への溶解性を有するため、この方法を用いたナノ粒子の調製が可能である。
フィルム法は、次の工程を含む。すなわち、容器(例えばガラス容器)中に、両親媒性ブロックポリマーと蛍光色素とを有機溶媒中に含む溶液を用意する工程;前記溶液から前記有機溶媒を除去し、前記容器の内壁に両親媒性ブロックポリマーと蛍光色素とを含むフィルムを得る工程;及び、前記容器中に水又は水溶液を加え、超音波処理又は加温処理を行い、前記フィルム状物質を、蛍光色素を内包する分子集合体に変換してナノ粒子の分散液を得る工程、を含む。さらに、フィルム法は、前記のナノ粒子の分散液を凍結乾燥処理に供する工程を含んでも良い。
両親媒性ブロックポリマーと蛍光色素とを有機溶媒中に含む溶液は、両親媒性ブロックポリマーをあらかじめフィルムの状態でストックしておき、ナノ粒子調製時に、蛍光色素を含む溶液を加えてフィルムを溶解することによって調製してもよい。
フィルム法に用いる有機溶媒としては、低沸点溶媒を用いることが好ましい。本発明における低沸点溶媒とは、1気圧における沸点が100℃以下、好ましくは90℃以下のものをいう。具体的には、クロロホルム、ジエチルエーテル、アセトニトリル、エタノール、アセトン、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、ヘキサンなどが挙げられる。
両親媒性ブロックポリマー及び蛍光色素の溶解にこのような低沸点溶媒を使用することによって、溶媒の除去が非常に簡単になる。溶媒の除去の方法としては特に限定されることなく、使用する有機溶媒の沸点などに応じ、当業者が適宜決定すればよい。例えば、減圧下における溶媒除去を行ってもよいし、自然乾燥による溶媒除去を行ってもよい。
有機溶媒が除去された後は、容器内壁に両親媒性ブロックポリマーと蛍光色素とを含むフィルムが形成される。このフィルムが張り付いた容器中に、水又は水溶液を加える。水又は水溶液としては特に限定されることなく、生化学的、薬学的に許容することができるものを当業者が適宜選択すればよい。例えば、注射用蒸留水、生理食塩水、緩衝液などが挙げられる。
水又は水溶液が加えられた後、加温処理を行う。加温によりフィルムが容器内壁から剥がれる過程で分子集合体を形成する。加温処理は、例えば70〜100℃、5〜60分の条件下で行うことができる。加温処理終了時には、蛍光色素が内包された分子集合体(ナノ粒子)が前記の水又は水溶液中に分散された分散液が容器中に調製される。
得られた分散液は、直接生体に投与されることが可能である。すなわち、無溶媒のナノ粒子そのものの状態で保存されなくてもよい。
一方、得られた分散液を凍結乾燥処理しても良い。凍結乾燥処理の方法としては公知の方法を特に限定されることなく用いることができる。たとえば、上記のようにして得られたナノ粒子の分散液を液体窒素などによって凍結させ、減圧下で昇華させることによって行うことができる。これにより、ナノ粒子の凍結乾燥処理物が得られる。すなわち、ナノ粒子を凍結乾燥処理物として保存することが可能になる。必要に応じ、この凍結乾燥物に水又は水溶液を加えて、ナノ粒子の分散液を得ることによって、ナノ粒子を使用に供することができる。水又は水溶液としては特に限定されることなく、生化学的、薬学的に許容することができるものを当業者が適宜選択すればよい。例えば、注射用蒸留水、生理食塩水、緩衝液などが挙げられる。
ここで、凍結乾燥処理前の分散液中には、両親媒性ブロックポリマーと蛍光色素とから形成された本発明のナノ粒子以外にも、そのようなナノ粒子の形成に寄与しなかった両親媒性ブロックポリマー及び/又は蛍光色素が各々それ自体として残存しうる。このような分散液を凍結乾燥処理に供すると、溶媒が濃縮される過程で、本発明のナノ粒子を形成せず残存していた両親媒性ブロックポリマーと蛍光色素とから、さらにナノ粒子を形成することが可能になる。従って、本発明のナノ粒子の調製を効率的に行うことが可能になる。
[3−5−2.インジェクション法]
インジェクション法は、本発明のナノ粒子に限らず、他の多くのナノ粒子の調製に用いられる方法である。この方法においては、有機溶媒、例えばトリフルオロエタノール、エタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、ジメチルスルホキシドなどに、両親媒性ブロックポリマーと蛍光色素とを溶解し、得られた溶液を、注射用蒸留水、生理食塩水、緩衝液などの水系溶媒に分散させ、精製処理、例えばゲルろ過クロマトグラフィー、フィルタリング、超遠心などの処理を行った後、有機溶媒を除去することによってナノ粒子を調製することができる。このようにして得られたナノ粒子を生体内へ投与する場合であって、有機溶媒に生体に有害なものを用いた場合は、この有機溶媒の除去を厳密に行う必要がある。
[4.蛍光分子イメージング法]
本発明の蛍光分子イメージング法は、上記の蛍光ナノ粒子をプローブとして生体内に投与することを含む。本発明の蛍光分子イメージング法は、上記の蛍光プローブを用いることに特徴付けられており、その他の具体的な手順は、公知の蛍光分子イメージング法に準じ、当業者が適宜決定することができる。
[4−1.蛍光プローブの投与]
蛍光プローブを投与される生体としては特に限定されないが、非ヒト動物でありうる。非ヒト動物としては特に限定されないが、ヒト以外の哺乳類、より具体的には、霊長類、齧歯類(マウス、ラットなど)、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、及びウマなどが挙げられる。
生体内への投与の方法としては特に限定されず、当業者が適宜決定することができる。従って、投与の方法としては、蛍光プローブが血中成分と接触することができる態様であれば、全身投与及び局所投与とを問わない。すなわち、分子プローブの投与は、注射(針有型、針無型)、内服、外用のいずれの方法によっても行うことができる。
本発明の蛍光プローブは、スイッチング機能を備えている。このため、蛍光プローブ調製後から生体内に投与される前においては蛍光が消光しているが、生体内に投与されることによって蛍光プローブが血中成分と接触し、蛍光を発する。
[4−2.投与ターゲット]
本発明の方法において蛍光プローブとして用いられるナノ粒子は、血管病変部位(例えば、悪性腫瘍部位、炎症部位、動脈硬化部位、血管新生部位など)への特異的集積性に優れたものである。本発明の蛍光プローブは、EPR (enhanced permeability and retention) 効果によりこれらの部位の組織へ集積するため、その集積性は血管病変部位の組織の種類によらない。本発明の蛍光プローブの投与ターゲットとしてはがんであることが好ましい。投与ターゲットとなりうるがんは多岐に亘る。例えば、肝臓がん、すい臓がん、肺がん、子宮頸がん、乳がん、大腸がんなどが挙げられる。
[4−3.蛍光プローブの検出]
本発明の分子イメージングシステムにおいては、投与された蛍光プローブに由来する蛍光を検出する工程を含む。投与された蛍光プローブを検出することによって、体外から投与ターゲットの様子(特にがんなどの組織の位置・大きさ)を観測することができる。
検出方法としては、投与された蛍光プローブを可視化させることができるあらゆる手段を用いることができる。当該手段としては、蛍光プローブが有する蛍光色素の種類に応じて、当業者が適宜決定することができる。
例えば、蛍光プローブを投与された生体を励起光照射し、体内の蛍光プローブが有する蛍光色素が発する蛍光を検出することができる。
励起波長や、検出すべき蛍光波長といったパラメーターは、投与される蛍光プローブが有する蛍光色素の種類、及び投与ターゲットの種類に応じて、当業者が適宜決定することができる。
投与から検出開始までの時間は、投与される蛍光プローブが有する蛍光色素の種類、及び投与ターゲットの種類に応じて、当業者が適宜決定することができる。例えば、投与後3〜48時間、とすることができる。上記範囲を下回ると、シグナルが強すぎ、投与ターゲットと他の部位(バックグラウンド)とを明確に分けることができない傾向にある。また、上記範囲を上回ると、蛍光プローブが投与ターゲットから排泄されてしまう傾向にある。
蛍光プローブの検出は、正確性の観点から、生体の一方向からではなく、複数の方向からの測定によって行うことが好ましい。具体的には、少なくとも3方向、より好ましくは少なくとも5方向からの測定を行うと良い。5方向からの測定を行う場合は、例えば、左右両腹側から、左右両体側から、及び背中側からの測定を行うことができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。
実施例においては、本発明のナノ粒子として、ポリサルコシン−ポリ乳酸両親媒性ブロックポリマー(PSar-PLLA)、ポリエチレングリコール−ポリ乳酸両親媒性ブロックポリマー(PEG-PLLA)、又はポリサルコシン−ポリ(ロイシン−アミノイソブチル酸)(PSar-P(Leu-Aib))をキャリア剤とし、IC7-1、IC7-2、IR820(Aldrich)、IR783(Aldrich)、及びIR806(Aldrich)それぞれの蛍光化合物を蛍光色素として内包させたナノ粒子を調製した。しかしながら、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
また、比較用のナノ粒子として、上記のポリサルコシン−ポリ乳酸両親媒性ブロックポリマー(PSar-PLLA)をキャリア剤とし、ICG(Sigma)、Rhodamine800(Sigma)、Rhodamine101(Sigma)、及びRhodamine6G(Aldrich)それぞれの蛍光化合物を蛍光色素として内包させたナノ粒子を調製した。
以下に、蛍光化合物の構造を示す。
[実験例1:N-[5-Anilino-3-chloro-2,4-(propane-1,3-diyl)-2,4-pentadiene-1-ylidene]anilinium Chloride (化合物1)の合成]
100 mL 3つ口フラスコに無水DMF(13 mL, 0.17 mol)を入れ0℃まで冷却した。その中へ、オキシ塩化リン(11 mL, 0.12 mol)を15分かけ滴下した。0℃で1時間攪拌した後、シクロヘサノン(5.5 mL, 0.053 mol)を加えた。室温で1時間攪拌した後、過熱還流させさらに1時間攪拌した。室温まで冷却した後、aniline/EtOH=1/1(体積比)の混合溶液 18 mLを加えた。30分後、H2O/HCl=10/1(体積比)の混合溶液 110 mLを加え、5℃で一晩放置した。沈殿物をろ取し、THF、冷水で洗浄した後、結晶をP2O5と共にデシケーター内で乾燥させ、化合物1を得た(スキーム1)。収率は53.6% (10.2 g)であった。
[実験例2:3-(5-Carboxy-pentyl)-1,1,2-trimethyl-1H-benzo[e]indolium; iodide (化合物2)の合成]
50 mLのナスフラスコに、6-Bromohexanoic Acid(8.4 g, 43.0 mmol)、ヨウ化カリウム(7.2 g, 43 mmol)及びトルエン5 mLを加えた後、1,1,2-Trimethyl-1H-benzo[e]indole(3.0 g, 14.3 mmol)を加えた。15時間加熱還流した後、析出した固体を濾取した。固体は、THF、冷水、Chloroformの順で洗浄した後、デシケーターで乾燥させ、化合物2を得た(スキーム2)。収率は77% (5.0 g)であった。
[実験例3:中間体3の合成]
化合物1(3.00 g, 8.35 mmol)、化合物2(3.77 g, 8.35 mmol)、無水酢酸ナトリウム(0.753 g, 9.19 mmol)、を75.0 mLの無水エタノールに溶解し、窒素雰囲気下6時間加熱還流した。反応終了後、0.2 mol/Lのリン酸緩衝液 pH=7.0を加え中和した後、有機物をクロロホルムで抽出した。抽出物を一旦濃縮し、カラムクロマトグラフィーにて精製し、中間体3を得た(スキーム3)。収率は25.5% (1.45 g)であった。
[実験例4:3-(2-Hydroxy-ethyl)-1,1,2-trimethyl-1H-benzo[e]indolium; iodide(化合物4)の合成]
50 mLの3つ口フラスコに1,1,2-Trimethyl-1H-benzo[e]indole(2.0 g, 9.556 mmol)と無水トルエン10 mLを加え、窒素雰囲気下80℃に加熱した。1,1,2-Trimethyl-1H-benzo[e]indoleがトルエンに完全に溶解した後、2-Iodoethanol(1.64 g, 9.556 mmol)を加えた。2時間加熱還流を行った後、室温まで冷却し、析出した淡青色結晶を濾取した。結晶をトルエンで洗浄し、デシケーター内で乾燥させ、化合物4を得た(スキーム4)。収率は33% (1.21 g)であった。
[実験例5:IC7-1の合成]
中間体3(1.16 g, 1.70 mmol)、化合物4(0.714 g, 1.87 mmol)、及び無水酢酸ナトリウム(0.153 g, 1.87 mmol)を29.0mLの無水エタノールに溶解し、窒素雰囲気下5時間加熱還流した。反応終了後、0.2 mol/Lのリン酸緩衝液 pH=7.0を加え中和した後、有機物をクロロホルムで抽出した。抽出物を一旦濃縮し、カラムクロマトグラフィーにて精製し、IC7-1を得た(スキーム5)。収率は85.3 % (1.22 g)であった。
[実験例6:1-(2-Hydroxy-ethyl)-4-methyl-quinolinium; iodide(化合物5)の合成]
50 mLのナスフラスコに4-Methylquinoline(1 g, 7 mmol)と2-Iodoethanol(1.2 g, 7 mmol)を加え、トルエン5 mLに溶解させた。4時間過熱攪拌した後、黄色結晶を濾取し、トルエンで洗浄し、デシケーターで乾燥させ、化合物5を得た(スキーム6)。収率は74% (1.63 g)であった。
[実験例7:IC7-2の合成]
中間体3(414.0 mg ,0.608 mmol)、化合物5(210.7 mg, 0.669 mmol)、及び無水酢酸ナトリウム(54.9 mg, 0.669 mmol)を12.0mLの無水エタノールに溶解し、窒素雰囲気下8時間加熱還流した。
反応終了後、0.2 mol/Lのリン酸緩衝液pH=7.0を加え中和した後、有機物をクロロホルム/メタノール/水を用いて分液操作により精製しIC7-2を得た(スキーム7)。収率は46.7% (221 mg)であった。
[実験例8:ポリサルコシン−ポリ乳酸両親媒性ブロックポリマー(PSar70-PLLA30)の合成]
本実験例では、サルコシン−NCA(Sar-NCA)とアミノ化ポリL-乳酸(a-PLA)とから、ポリサルコシン−ポリ乳酸両親媒性ブロックポリマー(PSar70-PLLA30)を合成した(スキーム12)。
a-PLA(383 mg, 0.17 mmol)とサルコシン−NCA (Sar-NCA) (3.21 g, 27.9 mmol) に、Ar雰囲気下、ジメチルホルムアミド(DMF)(140 mL)を加え、室温にて12時間攪拌した。反応溶液を0 ℃に冷却した後、グリコール酸(72 mg, 0.95 mmol)、O−(ベンゾトリアゾル−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(HATU)(357 mg, 0.94 mmol)、及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)(245 μL, 1.4 mmol)を加え、室温にて18時間反応させた。
ロータリーエバポレーターによりDMFを減圧溜去した後、LH20カラムにて精製を行った。UV270 nmにてピークが検出されたフラクションを回収・濃縮した。得られた濃縮溶液を0 ℃にてジエチルエーテル中に滴下し、再沈澱することにより、目的物であるPSar70-PLLA30(1.7 g)を得た。
[実験例9:ポリエチレングリコール−ポリ乳酸両親媒性ブロックポリマー(PEG-PLLA)の合成]
a-PLA(0.47 g、206 μmol))を溶解したDMF溶液中に、SUNBRIGHT ME-050AS(日油)を1.1モル当量加え、アルゴンガス雰囲気下、30度にて一晩撹拌した。反応終了後、得られた溶液を約5.0 mlまで濃縮し、ゲル濾過カラム(Sephadex LH-20、DMF溶出)にて精製を行なった。フラクションは、波長270 nmの吸光度を測定し、目的ポリマーを検出した。それぞれの回収溶液を濃縮し、氷冷したジエチルエーテルに滴下し、析出した白色沈殿を遠心分離によって回収した。収率は48%(0.71 g)であった。
[実験例10:ポリサルコシン−ポリ(ロイシン−アミノイソブチル酸)(PSar-P(Leu-Aib))の合成]
本実験例では、サルコシン−NCA(Sar-NCA)とポリ(ロイシン−アミノイソブチル酸)(P(Leu-Aib))とから、両親媒性物質サルコシン−ポリ(ロイシン−アミノイソブチル酸)(PSar-P(Leu-Aib))を合成した(スキーム14)。
Boc-(Leu-Aib)8-OMe (600 mg, 0.349 mmol)を、6.0 mlトリフルオロ酢酸(TFA)と0.6 mlアニソールとの混合溶液に添加し、Boc基の除去を行い、TFA塩誘導体を得た。TFA塩誘導体を、イソプロピルエーテルで洗浄し、2時間真空下で乾燥させた。これをクロロホルムに溶解し、4 wt%の炭酸水素ナトリウム水溶液で中和し、TFA基の除去を行った。クロロホルム溶液を濃縮し、420 mg(0.259 mmol)のポリ(ロイシン−アミノイソブチル酸)(P(Leu-Aib))を得た。
得られたP(Leu-Aib)を8.0 mlのDMF/HCl3の1/1(v/v)混合溶液に溶解し、Sar-NCA(1.11 g, 15.6 mmol)を6.0 mlのDMF/HCl3の1/1(v/v)混合溶液に溶かしたものに添加した。Sar-NCAが反応によって消失した後、反応溶液を0℃に冷却してグリコール酸(98 mg, 1.30 mmol)、HATU (492 mg, 1.30 mmol)、及びDIEA (338 μL, 1.94 mmol)を加え、室温下で10時間撹拌した。この反応溶液に、更にグリコール酸(40 mg, 0.52 mmol)、HATU (198 mg, 0.52 mmol)、及びDIEA (135 μL, 0.78 mmol)を加えて12時間撹拌した。反応終了後、反応溶液を濃縮し、Sephadex LH-20にてゲルろ過を行うことによって、目的物PSar-P(Leu-Aib)を精製した(186 mg)。
[実施例1:蛍光色素内包ナノ粒子の作成]
[実施例1−1:蛍光色素内包ラクトソームの作製]
ナノ粒子のキャリア部分であってポリサルコシン−ポリ乳酸両親媒性ブロックポリマーからなる分子集合体をラクトソーム(Lactosome)と記載する。
本実施例では、蛍光色素としてIC7-1、IC7-2、ICG(比較用)、IR820 (Aldrich)、IR783 (Aldrich)、IR806 (Aldrich)、Rhodamine800 (Sigma) (比較用)、Rhodamine101 (Sigma) (比較用)、Rhodamine6G (Aldrich) (比較用)を内包させたラクトソームを調製した。
キャリア剤であるポリ乳酸−ポリサルコシン両親媒性ブロックポリマー(PSar70-PLLA30・ 26H2O, MW=7767)及び上記の蛍光色素それぞれのクロロホルム溶液(0.2 mM)を調製した。蛍光色素のモル濃度がそれぞれ0.5 mol%(比較用)、1 mol%、2 mol%、4 mol%、5 mol%、8 mol%、10 mol%、12 mol%、16 mol%及び20 mol%となるように、ガラス容器内で両溶液を混合した。その後、溶媒を減圧留去しガラス容器の壁面にキャリア剤及び蛍光色素を含むフィルムを形成させた。さらに、フィルムを形成したガラス容器内に、水または緩衝液を加え、温度82℃で20分間湯せんした後、室温で30分間放置し、0.2 mmのフィルターでろ過し凍結乾燥した。
[実施例1−2:蛍光色素内包PEG-PLLAの作成]
本実施例では、キャリア剤としてポリエチレングリコール−ポリ乳酸両親媒性ブロックポリマー(PEG-PLLA)を用い、蛍光色素としてIC7-1を内包させたナノ粒子を調製した。
ポリエチレングリコール−ポリ乳酸両親媒性ブロックポリマー(PEG114-PLLA30, MW=7302)3 mg及びIC7-1 20 mol% (103 nmol)をアセトニトリル0.1 mlに溶解し、超純水1.9 mlに攪拌しながら添加し粒子化を行った。得られた粒子溶液は、ゲルろ過カラム(PD-10、GE Helthcare)を用いて、超純水3 mlで溶媒交換を行い、IC7-1内包PEG-PLLA粒子溶液を得た。
[実施例1−3:蛍光色素内包ペプトソーム(PSar-P(Leu-Aib))の作成]
ナノ粒子のキャリア部分であってポリサルコシン−ポリ(ロイシン−アミノイソブチル酸)からなる分子集合体をペプトソーム(Peptosome)と記載する。
本実施例では、蛍光色素としてIC7-1を内包させたペプトソームを調製した。
ポリサルコシン−ポリ(ロイシン−アミノイソブチル酸)両親媒性ブロックポリマー(PSar60-P(Leu-Aib)8, MW=6001)3 mg及びIC7-1 20 mol% (125 nmol)をエタノール0.1 mlに溶解し、超純水1.9 mlに攪拌しながら添加し粒子化を行った。得られた粒子溶液は、ゲルろ過カラム(PD-10、GE Helthcare)を用いて、超純水3 mlで溶媒交換を行い、IC7-1内包ペプトソーム粒子溶液を得た。
[実施例2:蛍光色素内包ラクトソームの吸収及び蛍光スペクトル]
実施例1−1で得られた蛍光色素IC7-1内包ラクトソーム(IC7-1/Lactosome)のうち、蛍光色素をそれぞれ1 mol%、5 mol%、10 mol%及び20 mol%内包したものの凍結乾燥品について、以下のように吸収スペクトルと蛍光スペクトルの測定を行った。
それぞれのラクトソームが、蛍光色素を配合割合に応じて内包していることの確認のため、吸収スペクトルの測定を行った。また、蛍光色素内包ラクトソームの蛍光強度を測定した。吸収スペクトルは、紫外可視分光光度計(UVmini-1240 島津製作所社製)で測定した。蛍光スペクトルは、励起波長785 nmで700-900 nmの範囲を蛍光分光光度計(RF-5300PC 島津製作所社製)で測定した。
蛍光色素内包ラクトソームは両親媒性ポリマー濃度で1 mg/mlとなるように超純水に分散させ、吸収および蛍光スペクトルを測定した(図1)。IC7-1を1mol%内包したラクトソームの吸収極大は831 nmであり、蛍光極大は836 nmであった。蛍光色素の配合量を増やすと吸収強度は増大するにもかかわらず、蛍光強度は1 mol%配合した場合が最も高く、20 mol%配合すると蛍光強度が1 mol%配合した場合の約1/120に減少した(図1(a)、(b))。
IC7-2を1mol%内包したラクトソームの吸収極大は831 nmであり、蛍光極大は833 nmであった。IC7-2はIC7-1と比較して幅広い吸収スペクトルを示した。IC7-2を配合した場合も蛍光の消光が観測され、20 mol%配合した場合1 mol%の約1/8に蛍光強度が減少した(図1(c)、(d))。
[実施例3:IC7-1内包ラクトソームの蛍光強度]
実施例1−1で得られた蛍光色素IC7-1内包ラクトソーム(IC7-1/Lactosome)のうち、蛍光色素をそれぞれ0.5 mol%(比較用)、1 mol%、2 mol%、4 mol%、8 mol%、12 mol%、16 mol%及び20 mol%内包したものを、それぞれ、両親媒性ポリマー濃度で1 mg/mlとなるように超純水に分散させ、励起波長785 nmで蛍光極大値を測定した(図2(a))。この結果、IC7-1を1 mol%内包した場合が最も蛍光強度が高くなることが分かった。蛍光色素濃度1 μMあたりに換算した蛍光強度は8 mol%まで指数関数的に減少し、蛍光色素配合量を0.78 mol%増やすごとに蛍光強度が1/2に減少する傾向を示した(図2(b))。
[実施例4:外部環境変化前後におけるIC7-1内包粒子の蛍光強度の比較]
上述のとおり、IC7-1をキャリア剤PSar-PLLAに高密度に内包したラクトソーム(IC7-1/Lactosome)において蛍光が消光していることが明らかとなった。そこで、生体内条件下における蛍光強度の回復条件について検討した。IC7-1をキャリア剤PSar-PLLAに20mol%内包したラクトソーム水分散液(1mg/ml)に対して、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、血漿(Plasma; ddY 雄性より採血)、5重量% アルブミン(BSA)、又は5重量% SDSをそれぞれ1:1(体積比)で混合し、遮光下室温で30分間放置後、両親媒性ポリマー濃度で1/15 mg/mlとなるようにPBSで希釈し、蛍光スペクトルを測定した(図3(a))。
同様に、IC7-1をキャリア剤PEG-PLLAに20mol%内包した粒子及びIC7-1をキャリア剤PSar-P(Leu-Aib)に20mol%内包したペプトソームそれぞれについても蛍光スペクトルを測定した (図3(b)及び(c))。
なお、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)の具体的な組成は、超純水1L に対して、Na2HPO4・12H2Oを29 g、NaH2PO4・2H2Oを2.96 g、NaClを8.7 gである。
外部環境変化(血漿添加)前後におけるIC7-1 20 mol%内包ナノ粒子の蛍光強度比の比較を下記表1に示す。
外部環境変化(5重量% BSA添加)前後におけるIC7-1 20 mol%内包ナノ粒子の蛍光強度比の比較を下記表2に示す。
外部環境変化(5重量% SDS添加)前後におけるIC7-1 20 mol%内包ナノ粒子の蛍光強度比の比較を下記表3に示す。
SDS、BSA、血漿中の蛍光極大波長における、PBS中の蛍光強度との比を比較すると、すべての場合において、IC7-1内包ラクトソームの蛍光強度比が最も高かった(表1〜3)。特に血漿中の蛍光強度はPBS中の蛍光強度に対して287倍回復した。また、すべての場合において、蛍光強度比はラクトソーム>PEG-PLLA粒子>ペプトソームの順で高い傾向があった(表1〜3)。ラクトソーム及びPEG-PLLA粒子の疎水部は310へリックス構造のポリ乳酸で形成されており、またペプトソームの疎水コアはα−へリックス構造のアミノ酸系ポリマーで形成されていることから、ナノ粒子の疎水部がヘリックス構造である場合に、シアニン系蛍光色素の消光及び、外部環境変化による蛍光強度の回復が観測されると考えられる。
[実施例5:外部環境変化前後における蛍光色素内包ラクトソームの蛍光強度比の比較]
IC7-1、ICG(比較用)、IR820、IR783、IR806、Rhodamine 800(比較用)、Rhodamine 101(比較用)、Rhodamine 6G(比較用)、IR775、IR780、IR792、IR797又はIR813を20mol%配合したラクトソーム水分散液(1 mg/ml)、若しくは、IC7-2を15mol%配合したラクトソーム水分散液(1 mg/ml)の100μLと;PBS、血漿(ddYマウスより採血)、5重量% BSA(溶媒:PBS)、又は5重量% SDS(溶媒:PBS)の100μLと、を混合し、遮光下室温で30分間撹拌後、両親媒性ポリマー濃度で1/15 mg/mlとなるようにPBSで希釈し、Fluorolog-3 (HORIBA Jobin Yvon Inc.) を用いて蛍光スペクトルを測定した。その結果を図4(a)〜(f)、図5(j)〜(l)及び図11(m)〜(q)に示す。
結果、シアニン系蛍光色素を内包したラクトソームは、血漿またはBSAを混合することにより、PBS溶液中の蛍光強度に対して、蛍光強度の顕著な増大が観測された(図4及び図11)。それに対して、ローダミン骨格を有する蛍光色素を内包したラクトソームでは、蛍光強度の顕著な回復は観測されなかった(図5(j)〜(l))。
外部環境変化(血漿添加)前後における蛍光色素内包ラクトソームの蛍光強度比の比較を下記表4に示す。
外部環境変化(5重量% BSA添加)前後における蛍光色素内包ラクトソームの蛍光強度比の比較を下記表5に示す。
外部環境変化(5重量% SDS添加)前後における蛍光色素内包ラクトソームの蛍光強度比の比較を下記表6に示す。
SDS、BSA、血漿中の蛍光極大波長における、PBS中の蛍光強度との比を比較すると、すべての場合において、IC7-1内包ラクトソームの蛍光強度比が最も高く、次いでIR820、ICGの順で高かった(表4〜6)。ローダミン骨格を有する蛍光色素を内包したラクトソームでは、蛍光強度比が大きいものでも1.9倍であった。
[実施例6:蛍光色素内包ラクトソームの蛍光強度の蛍光色素内包量依存性]
IC7-1、IC7-2、IR820、IR783、又はIR806について、それぞれ配合量を変えて調製した蛍光色素内包ラクトソーム(1 mg/ml)を調製し、PBS、5重量% SDS、5重量% BSA、及び血漿をそれぞれ1:1(体積比)で混合し、遮光下室温で30分間放置後、両親媒性ポリマー濃度で1/15 mg/mlとなるようにPBSで希釈し、Fluorolog-3 (HORIBA Jobin Yvon Inc.) を用いて蛍光強度を測定した(図6)。
蛍光色素内包ラクトソームは、PBS中でそれぞれIC7-1の場合は1 mol%、IC7-2の場合は2.5 mol%、IR820、IR783、IR806の場合は5 mol%蛍光色素を内包した場合に蛍光強度が最大となり、それ以上の蛍光色素を内包すると蛍光強度が減少する傾向を示した。
SDS、BSA、血漿を加えると、IC7-1、IC7-2、IR783、IR806の場合は蛍光色素の内包量に依存して蛍光強度が増大した。IR820の場合は、SDS又は血漿を加えると蛍光色素の内包量に依存して蛍光強度が増大するが、BSAを加えると蛍光色素内包量が5 mol%以上で蛍光強度がほぼ一定であった。
[実施例7:蛍光色素内包ラクトソームの蛍光強度のBSA濃度依存性]
IC7-1 20 mol%内包ラクトソームに対して、BSAを0.5〜10 wt%混合した場合の蛍光強度測定結果を図7(a)に、BSA濃度と蛍光極大値(839 nm)における前記蛍光強度との関係を図7(b)に示す。BSA濃度依存的にIC7-1内包ラクトソームの蛍光強度が増大し、10 wt%添加した場合の蛍光強度は、0.5 wt%添加した場合の約4.5倍であった。内包されているIC7-1と添加したBSAのモル比は1:2.3〜1:47であり、ラクトソームに内包されている蛍光色素の消光状態の回復には、過剰のBSA分子が必要と考えられる。
[実施例8:IC7-1内包ラクトソームを用いた皮下がんの蛍光造影試験]
マウスがん細胞の皮下移植による担がんマウスを、次のように作成した。
動物は、Balb/c nu/nu mice (クレア) 7週齢を用い、マウス腹水癌細胞(Ehrlich Ascites Tumor)を、マウスの右大腿部に1×106個/0.05 ml皮下移植した。2週間後にがん組織が12 mmに成長した時点で、マウスを下記造影試験に供した。
上記担がんマウスをイソフルランにより麻酔し、その尾静脈から、分子プローブとして、内包量がそれぞれ1 mol%又は20 mol%のIC7-1内包ラクトソームの分散液を0.05 ml (それぞれ0.13 nmol/body、3.2 nmol/body)投与した。プローブ分散液の投与後、マウス全身の蛍光画像を経時的に撮影した。撮影は、全身を5方向、すなわち、マウスの左腹、左体側、背中、右体側及び右腹の全ての方向から行った。蛍光色素は785nmで励起して、845nm付近の蛍光を経時的に測定した。
IC7-1を1 mol%内包したラクトソームを用いた場合に得られた画像を図8(a)に、IC7-1を20mol%内包したラクトソームを用いた場合に得られた画像を図8(b)に示す。図8(a)及び(b)においては、ナノ粒子を尾静脈注射後、投与直後、3時間、6時間、24時間及び48時間経過後のマウスを測定した結果を示す。図8においては、蛍光強度の違いを、色調を変化させることによって示す。
IC7-1を1 mol%内包したラクトソームを用いた場合、尾静脈注射後3時間経過後からがん部位の蛍光が観測され、徐々に蛍光強度が上昇し、24時間後に蛍光強度が最大となった。投与直後には肝臓部位の蛍光が観測されるが、肝臓に集積した蛍光色素が体外に排泄されることにより、投与24時間後には肝臓からの蛍光はほとんど観測されなくなった。IC7-1を20 mol%内包したラクトソームを用いた場合も、同様の体内動態が観察された。
図9に、IC7-1を1 mol%内包したラクトソームを用いた場合(a)及び20mol%内包したラクトソームを用いた場合(b)における、背中方向から観測したがんと、バックグラウンドとしての背中とにおける蛍光強度の比較を行った結果を示す。図9において、横軸は、ナノ粒子を尾静脈注射後の経過時間(Time(H))を表し、縦軸は露光時間1秒あたりの蛍光強度(Intensity of Fluorescence (conts/sec))を表す。
IC7-1を1 mol%又は20mol%内包したラクトソームを用いた場合は、尾静脈注射後24時間経過後の蛍光強度の平均値が、それぞれ約350、約6300であり、ラクトソームに内包された蛍光色素の量に比例して、IC7-1を20mol%内包したラクトソームを用いた場合の方が約18倍蛍光強度が高かった。
このことから、シアニン系色素を多量に内包したラクトソームを用いることにより、高輝度でがんの蛍光観測が出来ることが示された。

Claims (18)

  1. 親水性ブロック鎖と疎水性ブロック鎖とを有する両親媒性ブロックポリマーからなる分子集合体と、前記分子集合体に内包されている蛍光色素を含む蛍光ナノ粒子プローブであって、
    (a)前記親水性ブロック鎖が、サルコシン単位及びアルキレンオキシド単位から選ばれる単位を親水性必須構成単位として含み且つ前記親水性必須構成単位を20個以上有するものであり、
    (b)前記疎水性ブロック鎖が、アミノ酸単位及びヒドロキシル酸単位からなる群から選ばれる単位を疎水性必須構成単位として含み、且つ前記疎水性必須構成単位を15個以上有するものであり、且つ、
    前記両親媒性ブロックポリマーは、ポリサルコシン−ポリ乳酸両親媒性ブロックポリマー、ポリエチレングリコール−ポリ乳酸両親媒性ブロックポリマー、及びポリサルコシン−ポリ(ロイシン−アミノイソブチル酸)両親媒性ブロックポリマーからなる群から選ばれ、
    (c)前記蛍光色素が、下記構造式(I):
    (式中、R及びRは、それぞれ、同一又は異なっていてもよく、置換されていてもよい炭化水素基であり;Rは、置換されていてもよい2価の炭化水素基であり;
    Xはハロゲン、アリーロキシ基又はチオアリーロキシ基であり;Aは陰イオンであり、mは0又は1であり;環B及び環Dは、同一又は異なっていてもよく、含窒素二環式又は三環式芳香族複素環である。)
    で示されるシアニン化合物であり、
    前記分子集合体1個当たり、複数分子の前記蛍光色素が自己消光した状態で内包されており、
    血中成分に接触することによって蛍光を回復する、蛍光ナノ粒子プローブであって、
    前記蛍光色素が、前記分子集合体に、前記両親媒性ブロックポリマー及び前記蛍光色素の合計に対し1〜50mol%(ただし、1.5mol%以下を除く)となる量で内包される、蛍光ナノ粒子プローブ
  2. 前記蛍光色素が、前記分子集合体に、前記両親媒性ブロックポリマー及び前記蛍光色素の合計に対し5〜20mol%となる量で内包される、請求項1に記載の蛍光ナノ粒子プローブ。
  3. 血漿中における蛍光強度が、リン酸緩衝生理食塩水中における蛍光強度の10倍以上である、請求項1又は2に記載の蛍光ナノ粒子プローブ。
  4. 前記環Bが以下に示す構造:
    (式中、R及びRは、水素であるか、又はそれらが互いに連結してアリール環を形成するものである。)のいずれかを有するものであり、
    前記環Dが以下に示す構造:
    (式中、R及びRは、水素であるか、又はそれらが互いに連結してアリール環を形成するものである。)のいずれかを有するものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の蛍光ナノ粒子プローブ。
  5. 前記シアニン化合物が、下記構造式(I-i):
    で示されるインドシアニン化合物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の蛍光ナノ粒子プローブ。
  6. 前記蛍光色素が、下記構造式(I-ii):
    で示されるものである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の蛍光ナノ粒子プローブ。
  7. 前記蛍光色素が、下記構造式(I-iii):
    で示されるものである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の蛍光ナノ粒子プローブ。
  8. 前記蛍光色素が、下記構造式(I-iv):
    で示されるものである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の蛍光ナノ粒子プローブ。
  9. 前記蛍光色素が、下記構造式(I-v):
    で示されるものである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の蛍光ナノ粒子プローブ。
  10. 前記蛍光色素が、下記構造式(I-vi):
    で示されるものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の蛍光ナノ粒子プローブ。
  11. 前記蛍光色素が、下記構造式(I-vii):
    で示されるものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の蛍光ナノ粒子プローブ。
  12. 前記蛍光色素が、下記構造式(I-viii):
    で示されるものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の蛍光ナノ粒子プローブ。
  13. 前記蛍光色素が、下記構造式(I-ix):
    で示されるものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の蛍光ナノ粒子プローブ。
  14. 前記蛍光色素が、下記構造式(I-x):
    で示されるものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の蛍光ナノ粒子プローブ。
  15. 前記蛍光色素が、下記構造式(I-xi):
    で示されるものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の蛍光ナノ粒子プローブ。
  16. 前記疎水性ブロック鎖が、
    疎水性アミノ酸単位を10個以上有する疎水性ポリペプチド鎖、
    ヒドロキシル酸単位を15個以上有する疎水性ポリエステル鎖、及び、
    アミノ酸単位及びヒドロキシル酸単位の両方を合計20個以上有する疎水性デプシペプチド鎖、
    からなる群から選ばれる、請求項1〜15のいずれか1項に記載の蛍光ナノ粒子プローブ。
  17. 前記疎水性ブロック鎖が、25個以上の乳酸単位を有する疎水性ブロック鎖である、請求項1〜16のいずれか1項に記載の蛍光ナノ粒子プローブ。
  18. 請求項1〜17のいずれか1項に記載の蛍光ナノ粒子プローブを非ヒト動物に投与する工程と、蛍光を検出する工程とを含む、蛍光分子イメージング法。
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