JP5705560B2 - 複合材硬化用支持治具 - Google Patents
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即ち、このオートクレーブにおいては、外部から高圧のガスが供給された圧力容器内に成形材を収容した状態で、該圧力容器内のガスを加熱しながら循環させる。これによって、成形材に対して高圧の高温ガスが絶え間なく供給され、多数の薄板状の繊維強化プラスチックからなる成形材が硬化、接着されて複合材を得ることができる。
他の加熱方法としては、加圧作用のない硬化炉内にて成型する場合や、冶具のみを加熱して成型品を硬化させる方法が知られている。
なお、上記支持治具は、高圧加熱処理時の成型材との熱変形の差を最少にするため、一般的に線膨張係数が成型材と略等しい材料によって構成されている。その材料には、炭素繊維複合材(CFRP)の成型においてはインバー材が用いられることが多いが、CFRPを用いる場合もある。
高圧加熱処理時にたわみが発生すると、成形材の形状精度が劣化してしまう。さらに、高圧加熱処理を施して複合材を得た後、該複合材を支持治具ごと圧力容器外部に搬出する際に支持治具にたわみが生じると、複合材にひずみが生じて破損するおそれがある。
即ち、本発明に係る複合材硬化用支持治具は、加熱対象となる成形材を加熱硬化させる際に前記成形材を支持する支持治具であって、下段支持部と、該下段支持部の上面に固定されずに載置されるとともに前記成形材を下方から支持し、前記下段支持部と線膨張係数の異なる材料からなる上段支持部とを備えることを特徴とする。
即ち、下段支持部によって複合材硬化用支持治具全体としての剛性を確保しつつ、成形材を線膨張係数の小さい上段支持部により支持することで、成形材に接触する部分の高温加熱処理時における熱膨張を抑制し、成形材の形状精度の劣化を回避することができる。
この点、本発明の複合材硬化用支持治具では、上段支持部は下段支持部の上面に載置されているのみで固定されていないため、例えば下段支持部の方が上段支持部に比べて大きく熱膨張しても、当該熱膨張によって上段支持部が影響を受けることはない。したがって、材料の線膨張係数の違いによってオートクレーブ支持治具自体にたわみが発生することを回避することができる。これによっても、剛性を確保しながら成形材の形状精度の劣化を防止することができる。
なお、成形材と線膨張係数が略等しい材料として、上段支持部を例えばインバー材で構成した場合にも、成形材の形状精度の劣化を防止することができる。ここで、一般にインバー材に比べて炭素鋼やステンレス鋼の方が安価であるため、下段支持部によって剛性を確保すべく該下段支持部を構成する材料を増加させたとしても、製造コストが著しく増加してしまうことはない。したがって、下段支持部を炭素鋼及びステンレス鋼により製造することで、製造コストを抑えながら、剛性を確保することが可能となる。
これによって、複合材硬化用支持治具全体としての剛性をより大きくすることができ、たわみをより効果的に抑制することが可能となる。
また、前記滑り手段は、前記上段支持部と前記下段支持部とのいずれか一方に回転自在に設けられて他方に接触する回転体であってもよい。
これによって、下段支持部と上段支持部とが滑らかに相対移動させることができる。
また、前記拘束手段は、前記下段支持部と前記上段支持部とを接続する弾性部材であってもよい。
さらに、前記拘束手段は、前記下段支持部と前記上段支持部とのいずれか一方に設けられた凸部と、他方に設けられて前記凸部が挿入可能とされるスリットであってもよい。
これによって、上段支持部を下段支持部の上面に対して相対移動可能としつつ該上段支持部の落下を防止することができる。
また、このような通気孔を剛性を大きく設定することが可能な下段支持部に形成したため、支持治具全体としての剛性の低下を回避することができる。したがって、下段支持部においては剛性を確保するとともに高温ガスの上方への導入を容易とし、上段支持部においては熱膨張が小さく複合材の形状精度を高く維持する構成を実現することができる。
オートクレーブ1は、例えば炭素繊維に樹脂を含浸させた繊維強化プラスチック(FRP)等の複合材のシートを積層してなる成形材Wに、加圧加熱処理を施すことで該成形材Wを接着硬化させて複合材を得るために用いられる。このオートクレーブ1は、圧力容器10と、内側容器11と、加熱手段15と、循環手段16と、複合材硬化用支持治具(以下、単に「支持治具」と称する。)20とを備えている。
さらに、内側容器11の下部には、該内側容器11の内外を連通するガス流入口12が形成されており、内側容器11の上部には該内側容器11の内外を連通するガス流出口13が形成されている。
循環手段16は、内側容器11のガス流出口13の外側におけるガス流路R、即ち、ガス流路Rの最上部に配置されたファンであって、ガス流路R最上部から該ガス流路Rに沿ってガスを下方に向けて循環させる役割を有している。この循環手段16は、奥行き方向に間隔をあけて複数が設けられている。
下段支持部30は、オートクレーブ1の圧力容器10内における架台18上に載置されるものであって、図1及び図2に示すように、一対の下段脚部31と、載置板部34と、複数の補強板36とを備えている。
複数の補強板36と一対の下段立設部33とは平面視において互いに直交しており、即ち、これら補強板36と下段立設部33とによって格子状をなす補強構造が構成されている。これによって、下段支持部の剛性が担保されている。
上段脚部41は、詳しくは図3に示すように、オートクレーブ1の奥行き方向を長手方向とするとともに幅方向を短手方向とする平板状をなす上段底板42を有している。一対の上段脚部41の各上段底板42は、その短手方向に互いに間隔をあけて配置されている。この下段底板32の幅方向略中央には、上方に向かって立ち上がり上段底板42の長手方向に延在する上段立設部43が設けられている。
さらに、インバー材としては、いわゆるステンレスインバーを用いてもよい。このステンレスインバーは、Coと、Crと、Feとを少なくとも含む合金材料であって、例えば54原子%のCoと、9.5原子%のCrと、残りのFeとを含む鉄合金である。このステンレスインバーの線膨張係数は室温で0.1(×10−6/K)以下である。
また、本実施形態においては、上記下段支持部30の方が上段支持部40よりも剛性の大きい構造を有している。
この支持治具20には、成形材Wのオートクレーブ成形に先立って、オートクレーブ1の外部にて成形材Wが載置される。即ち、オートクレーブ1の外部の床面に下段支持部30が配置されるとともにこの下段支持部30の上面35に上段支持部40が載置された状態で、該上段支持部40の型部44にその上方から成形材Wが載置される。その後、いわゆる真空バッグを施すことによって、成形材Wを型部44の形状に従って該型部44に密着させる。
そして、このように成形材Wを支持した支持治具20を、オートクレーブ1の圧力容器10内に例えばクレーンを使用することにより搬入する。これにより、支持治具20の下段支持部30が上段支持部40を下方から支持した状態でオートクレーブ1内の架台18上に載置される。
オートクレーブ成形を施す際には、まず図示しないガス供給手段によって圧力容器10内にガスを供給し、該圧力容器10内を高圧状態とする。そして、ガス流路R内の高圧のガスを加熱手段15によって加熱するとともに循環手段16によってガス流路Rに沿って上部から下部に向かって送り込む。すると、加熱手段15により加熱された高温ガスが、ガス流路Rの下部からガス流入口12を介して内側容器11内に流入する。
この点、本実施形態の用支持治具20では、上段支持部40は下段支持部30の上面35に載置されているのみで固定されていないため、下段支持部30の方が上段支持部40に比べて大きく熱膨張しても、当該熱膨張によって上段支持部40が影響を受けることはない。したがって、材料の線膨張係数の違いによって支持治具20自体にたわみが発生することを回避することができる。これによっても、剛性を確保しながら成形材Wの形状精度の劣化を防止することができる。
この第二実施形態の支持治具20には、第一実施形態の構成要素に加えて、上段支持部40と下段支持部30との間にこれら上段支持部40及び下段支持部30を水平方向に相対移動可能とする滑り手段50が設けられている。
この樹脂シート51は、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)からなるシートであって、本実施形態では下段支持部30の上面35全域と上段支持部40の下面全域を覆うようにしてそれぞれ設けられている。これら樹脂シート51の表面は平滑面とされており、摩擦係数が下段支持部30の上面35や上段支持部40の下面よりも小さく設定されている。
また、樹脂シート51の材料としてはPTFEに限られず、他の樹脂を用いてもよい。さらに、樹脂シート51の表面は、平滑性をより向上させることができるように低摩擦処理が施されていることが好ましい。
また、これら回転体52及び受け部材53の存在によって、下段支持部30と上段支持部40との間には間隙が形成されるため、高温ガスをより効果的に上段支持部40及びこれに支持された成形材Wに導入することができる。
この第三実施形態の支持治具20には、第一実施形態の構成要素に加えて、上段支持部40を下段支持部30の上面35の所定範囲内において相対移動可能に拘束する拘束手段60が設けられている。
これによって、支持治具20を例えばクレーン等によって搬送する際に、互いに相対移動可能とされた下段支持部30の上面35から上段支持部40が滑り落ちてしまうことを防止することができる。したがって、支持治具20を搬送する際の安全性を担保することが可能となる。
これによっても、下段支持部30の上面35における上段支持部40の相対移動を弾性部材62が所定範囲に拘束することで、該上段支持部40が下段支持部30の上面35から滑り落ちてしまうことを防止できる。
即ち、本実施形態においては、下段支持部30の上面35に水平断面略円形をなす凸部63が設けられており、上段底板42には、上下方向に貫通して凸部63が挿入されるとともに、水平方向位置方向に向かって延在するスリット64が形成されている。
これによって、下段支持部30と上段支持部40とはスリット64の形成領域内においてのみ相対移動可能となる。したがって、上記同様、凸部63とスリット64とによって下段支持部30の上面35における上段支持部40の相対移動が拘束されるため、上段支持部40が下段支持部30の上面35から滑り落ちてしまうことを防止できる。
また、凸部63及びスリット64は一組のみならず複数組み設けてもよい。これによって、例えば下段支持部30と上段支持部40とが凸部63を中心として互いに相対回転しまうことはなく、上段支持部40を下段支持部30の上面35上に安定的に保持することが可能となる。
さらに、下段支持部30の熱膨張量はその長手方向に顕著となるため、スリット64の延在方向を上段支持部40及び下段支持部30の長手方向に沿って配置させることが好ましい。
この第三実施形態の支持治具20には、図9に示すように、その下段支持部30に高温ガスを通過させる通気孔70が形成されている。
例えば、滑り手段50として、2つの構成について説明したが、これら2つの構成を組み合わせてもよい。即ち、樹脂シート51を設けるとともに回転体52及び受け部材53を設けた構成を採用してもよい。
さらに、上記の支持治具20のいずれかに第四実施形態で説明した通気孔70を形成した構成としてもよい。
10 圧力容器
11 内側容器
12 ガス流入口
13 ガス流出口
15 加熱手段
16 循環手段
18 架台
18a 支持脚部
18b 架台本体
20 複合材硬化用支持治具
30 下段支持部
31 下段脚部
32 下段底板
33 下段立設部
34 載置板部
35 上面
36 補強板
40 上段支持部
41 上段脚部
42 上段底板
43 上段立設部
44 型部
50 滑り手段
51 樹脂シート
52 回転体
53 受け部材
54 凹部
60 拘束手段
61 ストッパ
62 弾性部材
63 凸部
64 スリット
70 通気孔
W 成形材
R ガス流路
Claims (11)
- 加熱対象となる成形材を加熱硬化させる際に前記成形材を支持する複合材硬化用支持治具であって、
下段支持部と、
該下段支持部の上面に固定されずに載置されるとともに前記成形材を下方から支持し、前記下段支持部と線膨張係数の異なる材料からなる上段支持部とを備えることを特徴とする複合材硬化用支持治具。 - 前記上段支持部が前記成形材と線膨張係数が略等しい材料からなるとともに、
前記下段支持部が炭素鋼あるいはステンレス鋼からなることを特徴とする請求項1に記載の複合材硬化用支持治具。 - 前記下段支持部は、前記上段支持部よりも剛性が大きい構造であることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合材硬化用支持治具。
- 前記上段支持部と前記下段支持部との間に、これら上段支持部及び下段支持部を水平方向に相対移動可能とする滑り手段を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の複合材硬化用支持治具。
- 前記滑り手段は、前記下段支持部及び前記上段支持部との少なくとも一方に設けられた樹脂シートであることを特徴とする請求項4に記載の複合材硬化用支持治具。
- 前記滑り手段は、前記上段支持部と前記下段支持部とのいずれか一方に回転自在に設けられて他方に接触する回転体であることを特徴とする請求項4に記載の複合材硬化用支持治具。
- 前記上段支持部を前記下段支持部の上面の所定範囲内において相対移動可能に拘束する拘束手段を備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の複合材硬化用支持治具。
- 前記拘束手段は、前記下段支持部の上面に設けられ、前記上段支持部が水平方向から当接可能とされたストッパであることを特徴とする請求項7に記載の複合材硬化用支持治具。
- 前記拘束手段は、前記下段支持部と前記上段支持部とを接続する弾性部材であることを特徴とする請求項7に記載の複合材硬化用支持治具。
- 前記拘束手段は、前記下段支持部と前記上段支持部とのいずれか一方に設けられた凸部と、他方に設けられて前記凸部が挿入可能とされるスリットであることを特徴とする請求項7に記載の複合材硬化用支持治具。
- 前記下段支持部に、前記高温ガスを通過させる通気孔が設けられていることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の複合材硬化用支持治具。
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