JP5705162B2 - フィルタ係数決定装置、局所再生装置、フィルタ係数決定方法、及びプログラム - Google Patents
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Description
以下、本実施形態において利用するエバネッセント波の理論について説明する。
音波はある法則に従って伝搬し、その音波の伝搬の秩序を表す方程式は波動方程式と呼ばれ、式(1)で表される。
軸方向zに沿った波長λz(λz=2π/kz)が音源から発せられる音の波長λ(λ=2π/k、但しkは音源から発せられる音の波数)より短い場合、放射方向にエバネッセント波が発生する(図6参照、なお、図中、96は受聴領域を示す)。このときkz>kである。また音源の波数kと放射方向の波数kr、軸方向の波数kzの間には、
k2 r=k2−k2 z (7)
という関係が成り立つ。kz>kの条件下では、
ここではkz≦kとし、軸方向におけるエバネッセント波発生条件を満たさない場合を考える。
図8、図9、図10に局所再生装置100の構成を示す。図8は局所再生装置100の外観図であり、図9は局所再生装置100を横から見た概念図であり、図10は局所再生装置100を上から見た概念図である。局所再生装置100は、M×L個のスピーカ110lm(但し、m=1,…,M、lはローマ字のエルでありl=1,…,Lとする。Mは周方向のスピーカ総数であり、Lは軸方向のスピーカ総数である。)と、M×L個のA/D変換器160lmと、M×L個のフィルタ乗算部120lmと、M×L個のD/A変換器150lmと、M×L個のアンプ140lmと、フィルタ係数算出部170と、波数算出部180とを含む(図9参照)。なお、フィルタ乗算部120lmは、ディジタルフィルタによって構成される。
<フィルタ乗算部120lm>
フィルタ乗算部120lmでは、フィルタ係数算出部170から出力されるフィルタ係数H(a,φm,zl,k)とAD変換器160lmにより変換されたディジタル入力信号S(k)とを入力として、スピーカ110lmを駆動するための信号である駆動信号D(a,φm,zl,k)を生成し、出力する。
フィルタ係数算出部170では、スピーカ110lmの配置情報(a,φm,zl)とエバネッセント波を再生するための波数kz及び波の数n(以下、kzとnとを併せて「波数情報」ともいう)を入力とし、フィルタ乗算部120lmに与えるフィルタ係数H(a,φm,zl,k)を算出し、フィルタ乗算部120lmへ出力する。
波数算出部180はエバネッセント波の再生条件を満たす方向(軸方向または周方向)と波数決定パターン(波数決定パターンの種類については後述する)を入力として、波数kz及び波の数nを算出し、フィルタ係数算出部170へ出力する。波数算出部180の処理フローを図12に示す。波数算出部180は、まず、エバネッセント波の再生条件を満たす方向として、「軸方向」または「軸方向及び周方向」を入力されたか、「周方向」を入力されたかを判定する(s21)。以下では各入力条件における波数算出方法を説明する。なお、算出された軸方向の波数kz及び周方向の波の数nをフィルタ係数算出部170に出力する(s27)。
ここではエバネッセント波の再生条件を満たす方向が軸方向と入力された場合の波数算出方法を示す(図12参照)。
(i)波数kzを音源の波数kの最大値kmaxを用いて決定する方法
音源の波数kの最大値をkmaxとすると、kz=α1kmaxとして算出する。但し、α1は1より大きい任意の定数である。このようにして決定したkzは音源の波数kに依存しない。言い換えると、式(C’)に示す最大値kmax=k(Q−1)以外の波数k(0),k(1),…,k(Q−2)に依存しない。ここでのαの値は1〜数十程度が目安であり、値を変化させると減衰しない周波数の位置が変わる傾向があるため、入力信号の周波数特性の応じた減衰特性の制御が可能である。
なお、式(C’)及び式(18)より、
kmax=2πfmax/c
fmax=f(Q−1)
である。
β1を1より大きい任意の定数として、kz(k)=β1kとして算出する。ここでのβ1の値は1〜数十程度が目安である。なお、式(C’)よりkは各周波数帯域f(q)に応じて変化する値なので、kzも各周波数帯域f(q)及びkに応じて変化する値となる。
エバネッセント波の式(12)において、P(r,φ,z)のr方向の指数減衰項がe−kar(但し、添え字kaはkaを表す)となるとすると、
ここではエバネッセント波の再生条件を満たす方向が周方向と入力された場合の波数算出方法を示す(図12参照)。
(i)波の数nを音源の波数kの最大値を用いて決定する方法
音源の波数kの最大値をkmaxとすると、n=α2kmaxaとして算出する。但し、α2は1より大きい任意の定数である。このようにして決定したnは音源の波数kに依存しない(言い換えると最大値kmax以外の波数kに依存しない)。ここでのα2の値は1〜数十程度が目安であり、値を変化させると減衰しない周波数の位置が変わる傾向があるため、入力信号の周波数特性の応じた減衰特性の制御が可能である。なお、kmaxについては、(1)(i)で説明した値と同様である。
β2を1より大きい任意の定数として、n(k)=β2kaとして算出する。ここでのβ2の値は1〜数十程度が目安である。kについては(1)(ii)で説明した値と同様である。
ここではエバネッセント波の再生条件を満たす方向として、軸方向と周方向の両方を入力された場合の波数算出方法を示す(図12参照)。軸方向と周方向の両方を入力された場合、軸方向の発生条件の制約がより強いため、「軸方向」と入力された場合と同様の算出方法となる。
(i)波数kzを音源の波数kの最大値kmaxを用いて決定する方法
音源の波数kの最大値をkmaxとすると、kz=α1kmaxとして算出する。但し、α1は1より大きい任意の定数である。このようにして決定したkzは音源の波数kに依存しない。言い換えると、式(C’)に示す最大値kmax=k(Q−1)以外の波数k(0),k(1),…,k(Q−2)に依存しない。ここでのαの値は1〜数十程度が目安であり、値を変化させると減衰しない周波数の位置が変わる傾向があるため、入力信号の周波数特性の応じた減衰特性の制御が可能である。
なお、式(C’)及び式(18)より、
kmax=2πfmax/c
fmax=f(Q−1)
である。
β1を1より大きい任意の定数として、kz(k)=β1kとして算出する。ここでのβ1の値は1〜数十程度が目安である。なお、式(C’)よりkは各周波数帯域f(q)に応じて変化する値なので、kzも各周波数帯域f(q)及びkに応じて変化する値となる。
エバネッセント波の式(12)において、P(r,φ,z)のr方向の指数減衰項がe−kar(但し、添え字kaはkaを表す)となるとすると、
このような構成とすることで、円筒面スピーカアレーを用いてエバネッセント波を再生し、その受聴領域を従来とは異なる円筒状とし、減衰効果範囲を拡大できる、さらに指数減衰だけでなくべき乗関数に従うような減衰特性を有するエバネッセント波を再生することができる。
予めエバネッセント波の再生条件を満たす方向が決定されている場合には、波数算出部180では、エバネッセント波の再生条件を満たす方向としてどの方向が入力されたか等の判定(図12のs21)をせずともよい。また、波数決定パターンが決定されている場合には、その波数決定パターンに従って処理を行えばよい。
上述した局所再生装置またはフィルタ係数決定装置は、コンピュータにより機能させることもできる。この場合はコンピュータに、目的とする装置(各種実施例で図に示した機能構成をもつ装置)として機能させるためのプログラム、またはその処理手順(各実施例で示したもの)の各過程をコンピュータに実行させるためのプログラムを、CD−ROM、磁気ディスク、半導体記憶装置などの記録媒体から、あるいは通信回線を介してそのコンピュータ内にダウンロードし、そのプログラムを実行させればよい。
Claims (13)
- 複数のスピーカを用いてエバネッセント波を再生する局所再生装置のフィルタ係数を決定するフィルタ係数決定装置であって、
前記スピーカは円筒面上に配置されるものとし、前記エバネッセント波の再生条件を満たす方向を円筒面の軸方向とし、
音源の波数kよりも前記軸方向の波数kzが大きくなるように前記軸方向の波数kzを算出し、円筒面の周方向の波の数nを任意の定数とする波数算出部と、
前記スピーカの配置情報と前記波数kzと前記波の数nとを用いて前記フィルタ係数を算出するフィルタ係数算出部と、を含む、
フィルタ係数決定装置。 - 請求項1記載のフィルタ係数決定装置であって、
kmaxを前記波数kの最大値とし、α1を1より大きい任意の定数とし、前記波数算出部は、前記波数kzをkz=α1kmaxとして算出する、
フィルタ係数決定装置。 - 請求項1記載のフィルタ係数決定装置であって、
β1を1より大きい任意の定数とし、前記波数算出部は、前記波数kzをkz(k)=β1kとして算出する、
フィルタ係数決定装置。 - 請求項1記載のフィルタ係数決定装置であって、
kaを1より大きい任意の定数とし、前記波数算出部は、前記波数kz(k)をkz(k)=±√(ka 2+k2)として算出する、
フィルタ係数決定装置。 - 複数のスピーカを用いてエバネッセント波を再生する局所再生装置のフィルタ係数を決定するフィルタ係数決定装置であって、
前記スピーカは円筒面上に配置されるものとし、前記エバネッセント波の再生条件を満たす方向を円筒面の周方向とし、
音源の波数k以下になるように円筒面の軸方向の波数kzを決定し、円筒面の放射方向の波数krをkr=√(k2−k z 2)として算出し、この波数krと円筒座標系の半径rとの積よりも前記周方向の波の数nが大きくなるように前記周方向の波の数nを算出する波数算出部と、
前記スピーカの配置情報と前記波数kzと前記波の数nとを用いて前記フィルタ係数を算出するフィルタ係数算出部と、を含む、
フィルタ係数決定装置。 - 請求項5記載のフィルタ係数決定装置であって、
α2を1より大きい任意の定数とし、kmaxを前記波数kの最大値とし、aを前記円筒面の成す円の半径とし、前記波数算出部は、前記波の数nをn=α2kmaxaとして算出する、
フィルタ係数決定装置。 - 請求項5記載のフィルタ係数決定装置であって、
β2を1より大きい任意の定数とし、aを前記円筒面の成す円の半径とし、前記波数算出部は、前記波の数nをn(k)=β2kaとして算出する、
フィルタ係数決定装置。 - 複数のスピーカを用いてエバネッセント波を再生する局所再生装置のフィルタ係数を決定するフィルタ係数決定装置であって、
前記スピーカは円筒面上に配置されるものとし、前記エバネッセント波の再生条件を満たす方向を円筒面の軸方向及び周方向とし、
音源の波数kよりも前記軸方向の波数kzが大きくなるように前記軸方向の波数kzを算出し、円筒面の周方向の波の数nを任意の定数とする波数算出部と、
前記スピーカの配置情報と前記波数kzと前記波の数nとを用いて前記フィルタ係数を算出するフィルタ係数算出部と、を含み、
kmaxを前記波数kの最大値とし、α1、β1及びkaをそれぞれ1より大きい任意の定数とし、前記波数算出部は、前記波数kzを
(1)kz=α1kmax
(2)kz(k)=β1k
(3)kz(k)=±√(ka 2+k2)
の何れかとして算出する、
フィルタ係数決定装置。 - 請求項1から請求項8の何れかに記載のフィルタ係数決定装置で決定されたフィルタ係数を複数のスピーカに設定し該スピーカを用いてエバネッセント波を再生する局所再生装置であって、
前記フィルタ係数と前記入力信号とを乗じて前記スピーカを駆動するための駆動信号を生成するフィルタ乗算部と、をさらに含む、
局所再生装置。 - 複数のスピーカを用いてエバネッセント波を再生する局所再生方法のフィルタ係数を決定するフィルタ係数決定方法であって、
前記スピーカは円筒面上に配置されるものとし、前記エバネッセント波の再生条件を満たす方向を円筒面の軸方向とし、
音源の波数kよりも前記軸方向の波数kzが大きくなるように前記軸方向の波数kzを算出し、円筒面の周方向の波の数nを任意の定数とする波数算出ステップと、
前記スピーカの配置情報と前記波数kzと前記波の数nとを用いて前記フィルタ係数を算出するフィルタ係数算出ステップと、を含む、
フィルタ係数決定方法。 - 複数のスピーカを用いてエバネッセント波を再生する局所再生方法のフィルタ係数を決定するフィルタ係数決定方法であって、
前記スピーカは円筒面上に配置されるものとし、前記エバネッセント波の再生条件を満たす方向を円筒面の周方向とし、
音源の波数k以下になるように円筒面の軸方向の波数kzを決定し、放射方向の波数krをkr=√(k2−k z 2)として算出し、この波数krと円筒座標系の半径rとの積よりも前記周方向の波の数nが大きくなるように前記周方向の波の数nを算出する波数算出ステップと、
前記スピーカの配置情報と前記波数kzと前記波の数nとを用いて前記フィルタ係数を算出するフィルタ係数算出ステップと、を含む、
フィルタ係数決定方法。 - 複数のスピーカを用いてエバネッセント波を再生する局所再生方法のフィルタ係数を決定するフィルタ係数決定方法であって、
前記スピーカは円筒面上に配置されるものとし、前記エバネッセント波の再生条件を満たす方向を円筒面の軸方向及び周方向とし、
音源の波数kよりも前記軸方向の波数kzが大きくなるように前記軸方向の波数kzを算出し、円筒面の周方向の波の数nを任意の定数とする波数算出ステップと、
前記スピーカの配置情報と前記波数kzと前記波の数nとを用いて前記フィルタ係数を算出するフィルタ係数算出ステップと、を含み、
kmaxを前記波数kの最大値とし、α1、β1及びkaをそれぞれ1より大きい任意の定数とし、前記波数算出ステップにおいて、前記波数kzを
(1)kz=α1kmax
(2)kz(k)=β1k
(3)kz(k)=±√(ka 2+k2)
の何れかとして算出する、
フィルタ係数決定方法。 - コンピュータを、請求項1から請求項8の何れかに記載のフィルタ係数決定装置、または、請求項9に記載の局所再生装置として機能させるためのプログラム。
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