JP5683957B2 - 光安定化された医薬組成物 - Google Patents

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Description

高齢化社会の現在において、変形性関節症(以下、OAとも称する)を包含する関節疾患を有する患者の数は増加の一途を辿っている。本発明者らは、先の出願において、ヒアルロン酸(以下、HAとも称する)とメトトレキサート(以下、MTXとも称する)との結合体からなる、関節疾患治療薬として有用な医薬組成物を提供した(WO05/85294号)。この結合体は、ステロイド製剤に代わりうる安全な関節疾患用の関節注入剤として利用できるというHAの特徴と、滑膜炎を抑制できるというMTXの特徴を併せ持つ、優れた化合物である。
しかしながら、その後の検討により、この化合物は光を照射するとゲル化や分子量の低下を引き起こしやすく、保存安定性が必ずしも充分とはいえないことが明らかとなった。このため、ヒアルロン酸−メトトレキサート結合体からなる医薬組成物は、冷暗所に保存しておいて使用する直前に取り出すことが推奨される。或いは、アルミ箔等により完全に遮光する方法もある。しかしながら、病院等の医療の現場においては医薬組成物を冷暗所から取り出した後や、遮光性の包装を取り除いた後に、しばしば数時間〜十数時間程度光の下に当該組成物が放置されることが想定される。このように、医薬の容器を遮光性の包装材で包装するという手段だけでは十分にヒアルロン酸−メトトレキサート結合体の安定性を必ずしも十分に確保することができず、従ってその光安定性の向上が望まれていた。
WO05/85294号公報
本発明者らは、光の照射によってHA−MTX結合体が不安定になる原因(ゲル化、分子量の低下を引き起こす原因)を検討した結果、この光不安定化の現象に少なくとも2種類の反応が関与していることが推定された。
第一の反応においては、光照射によりヒアルロン酸−メトトレキサート結合体分子からMTX残基由来のプテリジン環(a)が脱離し(図1の反応A)、当該結合体分子中にアミノ安息香酸部分(b)が生成し、そしてそのアミノ安息香酸部分が二つ一緒になってアゾダイマーを形成する(図1の反応B)。結果として、アゾダイマーを介してヒアルロン酸分子同士が架橋される。
この反応メカニズムは、後述する実施例2及び3により示唆されるものである。尚、MTX分子自体に光を照射した場合にもアゾダイマーが形成されることが知られており(Photochemistry and Photobiology vol.44, No.2, pp.231-233, 1986; C. Chahide, et al)、このことも、上記の反応メカニズムを裏付けている。
この様にして生じた架橋がヒアルロン酸−メトトレキサート結合体のゲル化をもたらすと考えられる。
第二の反応においては、光照射によりラジカル種が生じ、そのラジカル種がヒアルロン酸−メトトレキサート結合体のヒアルロン酸のポリマー鎖に作用し、この結果として当該結合体の分子量が低下するものと考えられる。
従って、本発明の目的は、光照射によりヒアルロン酸−メトトレキサート結合体に生じる上記二つの反応を抑制してヒアルロン酸−メトトレキサート結合体の光安定性を向上させることである。
本発明者らは、光照射によって生じるゲル化や分子量低下を防止してヒアルロン酸−メトトレキサート結合体の光安定性を向上させるべく鋭意検討した。その結果、光安定化剤、具体的には光の照射により生じる励起状態にある分子からエネルギーを吸収する効果(消光効果)、及び/又は光照射によって生じるラジカルを捕捉する効果(ラジカル捕捉効果)を有する物質をヒアルロン酸−メトトレキサート結合体を含有する医薬組成物に配合させることにより、ヒアルロン酸−メトトレキサート結合体の安定性を向上させることができることを見出した。この効果は、ヒアルロン酸誘導体とメトトレキサートとの結合体にも応用することができる。この知見に基づき、本発明を完成した。
即ち、本発明は、ヒアルロン酸又はヒアルロン酸誘導体とメトトレキサートとの結合体又はその塩および光安定化剤を含有してなる光安定化された医薬組成物に関する。
本発明の別の側面において、組成物中の光安定化剤の配合量が0.01〜30%(w/v)である上記医薬組成物が提供される。
本発明の更なる別の側面において、光安定化剤が消光剤またはラジカル捕捉剤である上記医薬組成物も提供される。好ましくは、光安定化剤は消光剤であり、かつラジカル捕捉剤である。
本発明の別の側面において、光安定化剤が、硫黄含有無機酸、硫黄含有有機酸、芳香族アミノ酸誘導体、若しくはヒドロキシ安息香酸類、またはそれらの塩である、上記医薬組成物が提供される。
さらに、本発明の別の側面において、上記医薬組成物が、少なくとも320〜430nmの範囲の光波長領域全体に渡って、好ましくは540nm以下の波長領域全体に渡って光を遮断する包装材で包装されている医薬品が提供される。
本発明においては、光安定化剤を添加することにより、ヒアルロン酸又はヒアルロン酸誘導体とメトトレキサートとの結合体の光安定性を向上させることができる。また、包装を取り除いてから長時間放置されうる、という医療の現場でのプラクティスの下で扱われても、十分に安定性を確保できる医薬組成物を提供できる。さらに、本発明においては、光を遮断するための包装を併用することによって、光安定性をより向上させることができる。
図1は、光照射によりHA−MTX結合体に生じる反応を示す。 図2Aは、光照射をされていないHA−MTX結合体の酵素消化後のHPLCチャートを示す。 図2Bは、光照射した後に酵素消化したHA−MTX結合体のHPLCチャートを示す。 図3は、光照射の後に酵素消化されたHA−MTX結合体の逆相分取HPLCチャートを示す。 図4は、逆相分取画分FのMALDI-TOFMSのスペクトルを示す。 図5は、HA−MTX結合体の励起スペクトルに及ぼす安定化剤の影響を示す。 図6Aは、種々の波長における遮光フィルムの光透過性を示す。 図6Bは、種々の波長における遮光フィルムの光透過性を示す。 図6Cは、種々の波長における遮光フィルムの光透過性を示す。 図6Dは、種々の波長における遮光フィルムの光透過性を示す。 図7は、種々の波長における遮光フィルムの光透過性を示す。
以下、本発明を詳細に説明する。
ヒアルロン酸−メトトレキサート結合体
本明細書において用いられるヒアルロン酸−メトトレキサート結合体とは、ヒアルロン酸またはヒアルロン酸誘導体の分子とメトトレキサート分子とが直接的に、又はリンカーを介して間接的に結合した構造を有する化合物、又はその塩のことをいう。以下、この結合体を「HA−MTX結合体」とも称する。
本明細書における「ヒアルロン酸」との用語は、特に限定されないが、例えば平均分子量5万〜1000万ダルトンを有する、グルクロン酸とN−アセチルグルコサミンとから成る二糖の重合体を意味する。本発明においては、遊離のヒアルロン酸を用いても、その塩を用いてもよい。本発明に用いられるヒアルロン酸の塩は、特に限定はされないが、例えばナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、鉄塩、アンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩などが含まれる。ヒアルロン酸及びその塩、並びにそれらの混合物の具体例には、例えば、商品名 スベニール(登録商標:製造販売 中外製薬株式会社);商品名 アルツ(登録商標:製造 生化学工業株式会社、販売 科研製薬株式会社);商品名 オペガン(登録商標:製造 生化学工業株式会社、販売 参天製薬株式会社)などが含まれる。本発明における「ヒアルロン酸誘導体」との用語は、ヒアルロン酸から誘導されるヒアルロン酸骨格を有する物質を意味する。ヒアルロン酸誘導体としては、特に限定はされないが、例えば、ヒアルロン酸中の一つ以上のカルボキシル基がエステル化されている物質(例えば、ベンジルエステル化ヒアルロン酸(商品名 Hyaff(登録商標)、Fidia Advanced Biopolymers))、ヒアルロン酸をホルムアルデヒドで架橋しさらに高分子化した物質(例えば、商品名 Synvisc(登録商標)、Biomatrix))、ヒアルロン酸中の一つ以上のヒドロキシ基がアセチル化されているアセチル化ヒアルロン酸、などを包含する。以下の説明において用いられる「HA」との用語は、ヒアルロン酸若しくはヒアルロン酸誘導体、又はその塩を意味するものとする。
本発明のHA−MTX結合体は、HAの疼痛除去作用を損なってはならないため、HA−MTX結合体として、臨床での疼痛除去作用が確認されているHAと同等の分子量サイズと粘弾性を保持したものであることが好ましい。また、分子量が大きくなると粘弾性が上がり、取り扱いが困難になること、および生体内におけるキャリアとしてのHAの効果を考慮すると、具体的には、HA−MTX結合体としての分子量が60万〜600万ダルトンであることが好ましく、HA−MTX結合体としての分子量が80万〜600万ダルトンであることがより好ましく、HA−MTX結合体としての分子量が100万〜500万ダルトンであることが特に好ましい。
ここで、上記した原料HAの分子量、HA−MTX結合体の分子量は、極限粘度から粘度平均分子量を算出する方法で測定したものである。極限粘度は、試料を0.2M NaCl水溶液に溶解し、ウベローデ型粘度計(草野科学製、粘度計番号0C)を用いて、恒温槽中30℃で測定した。極限粘度([η])から粘度平均分子量(Mw)への換算は、以下の式を用いて算出することができる。
Mw=([η]/0.00036)1.282
本発明において用いるのに適したHA−MTX結合体は、例えば、本出願人によるWO05/85294号に記載されているものである。
それは、具体的には、HAのカルボキシル基に、1〜8個のアミノ酸からなるペプチド鎖を含有するリンカーを介してメトトレキサートが結合した、HA−MTX結合体である。
好ましくは、当該リンカーは、1〜8個のアミノ酸からなるペプチド鎖、および1〜5個の酸素原子が挿入されていてもよくおよび/またはカルボキシル基またはC1−6アルコキシカルボニル基で置換されていてもよいC2−20アルキレンジアミン鎖を含むものである。
さらに好ましくは、上記HA−MTX結合体において、リンカーに結合したメトトレキサートは、式(I)、(II)、(III)または(IV):
[式中、RおよびRはそれぞれ独立に、ヒドロキシ基、アミノ基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルキルアミノ基、またはジ−C1−6アルキルアミノ基であり;
は、リンカーの結合位置である。]
で表される。
さらに好ましくは、上記HA−MTX結合体において、ペプチド鎖を含有するリンカーおよび当該リンカーに結合したメトトレキサートは、式(I’)または(II’):
[式中、RおよびRはそれぞれ独立に、ヒドロキシ基、アミノ基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルキルアミノ基、またはジ−C1−6アルキルアミノ基であり;
Lは、式(X)
(式中、Qは結合する−NH−と一緒になって1〜8個のアミノ酸からなるペプチド鎖を形成し、当該ペプチド鎖に含まれるアミノ酸の各残基は、独立に、C1−6アルキル基、C1−6アルキルカルボニル基、C1−6アルコキシカルボニル基、ホルミル基、C1−6アルキルスルホニル基、およびC6−10アリールスルホニル基からなる群から選択される、1個以上の基により置換または保護されていてもよく、当該ペプチド鎖に含まれる各アミド結合は、独立に1個以上のC1−6アルキル基および/またはC1−6アルキルカルボニル基で窒素原子上を置換されていてもよく、当該残基に含まれる各カルボキシル基は、独立に1または2個のC1−6アルキル基で置換されていてもよいアミド基に変換されていてもよく;
11およびR12はそれぞれ独立に水素原子またはC1−6アルキル基であり;
は1〜5個の酸素原子が挿入されていてもよくおよび/またはカルボキシル基またはC1−6アルコキシカルボニル基で置換されていてもよいC2−20アルキレンであり;および
[HA]はヒアルロン酸との結合位置を表し、当該リンカーは当該HAに含まれるカルボキシル基とアミド結合を形成する。)で表されるリンカーである。]
で表される。
本発明の好ましい態様において用いられるリンカーのペプチド鎖は、アミノ酸により構成される。当該アミノ酸には、グリシン、アラニン、セリン、プロリン、バリン、トレオニン、システイン、ロイシン、イソロイシン、アスパラギン、アスパラギン酸、リジン、グルタミン、グルタミン酸、メチオニン、ヒスチジン、フェニルアラニン、アルギニン、チロシン、トリプトファンなどの天然α−アミノ酸の他に、アルキル側鎖を持つα−アミノ酸(例えば、ノルバリン、ノルロイシン、t−ロイシンなど)、シクロアルキル基で置換されたアラニンやグリシン(例えば、シクロペンチルアラニン、シクロヘキシルアラニン、シクロヘキシルグリシンなど)、またはアリール基で置換されたアラニンやグリシン(例えば、ピリジルアラニン、チエニルアラニン、ナフチルアラニン、置換フェニルアラニン、フェニルグリシンなど)などの非天然α−アミノ酸、β−アラニンなどのβ−アミノ酸、γ−アミノ酪酸などのγ−アミノ酸、およびタウリンなどのアミノスルホン酸などが含まれる。本発明のリンカーペプチドにおけるアミノ酸には、その残基が適切に置換または保護されたものも含まれる。例えば、当該残基上の官能基は、保護基を用いて保護され得る。この目的のために使用する保護基は当該技術分野で周知であり、その一部の例は、本明細書の他の段落に記載される。各置換基および保護基、特に保護基の導入方法は、当該技術分野において周知のものを用いればよい。
当該リンカーはアミノ酸のみにより構成されていてもよく、またはペプチド鎖の中または末端にアミノ酸以外の化合物に由来する部分を含んでいてもよい。例えば、アルキレンジアミン、オキサアルキレンジアミンのようなジアミノ化合物やコハク酸のようなジカルボン酸化合物がペプチド鎖の中または末端に結合したものなども当該リンカーに含まれる。ペプチド鎖の中または末端にアミノ酸以外の化合物を含む場合で、当該リンカーがメトトレキサート(MTX)のカルボキシル基とHAのカルボキシル基に結合する場合には、アルキレンジアミン、オキサアルキレンジアミンのようなジアミノ化合物がペプチド鎖の末端に存在することが好ましく、エチレンジアミン、4,7,10−トリオキサ−1,13−トリデカンジアミンがペプチド鎖の末端に存在することが特に好ましい。また、ペプチド鎖を構成するアミノ酸は特に限定されないが、プロテアーゼに対する親和性の観点から、α−アミノ酸が好ましく、ペプチド鎖を含有するリンカーのMTXに結合する末端はα−アミノ酸であることが好ましい。
当該ペプチド鎖を構成するアミノ酸の数は、特に限定はされないが、典型的には1〜8であり、好ましくは1〜6であり、特に好ましくは1〜4である。当該ペプチド鎖を構成するアミノ酸の各残基は、独立に1個以上の基により適切に置換または保護され得る。そのような基には、C1−6アルキル基、C1−6アルキルカルボニル基、C1−6アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、(n−またはi−)プロピルオキシカルボニル基、および(n−、s−、またはt−)ブトキシカルボニル基)、ホルミル基、C1−6アルキルスルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、および(n−またはi−)プロパンスルホニル基)、C6−10アリールスルホニル基(例えば、ベンゼンスルホニル基、(o−、m−またはp−)トルエンスルホニル基、および(1−または2−)ナフタレンスルホニル基)が含まれるが、これらに限定されない。置換または保護により、例えば当該残基に含まれるカルボキシル基はC1−6アルコキシカルボニル基に、ヒドロキシ基はC1−6アルコキシ基またはC1−6アルキルカルボニルオキシ基に、アミノ基はC1−6アルキルアミノ基、ジC1−6アルキルアミノ基、C1−6アルキルカルボニルアミノ基またはN−C1−6アルキル−C1−6アルキルカルボニルアミノ基にそれぞれ変換されていてもよい。また、当該残基に含まれるカルボキシル基は、1または2個のC1−6アルキル基で置換されていてもよいアミド基に変換されていてもよい。当該残基中にインドール環やイミダゾール環のような含窒素複素環が含まれる場合は、その環上の窒素原子は、各々独立して、C1−6アルキル基またはC1−6アルキルカルボニル基で保護されていてもよい。当該残基中にグアニジノ基が存在する場合には、そこに含まれている窒素原子も、C1−6アルキル基またはC1−6アルキルカルボニル基で保護され得る。窒素原子に対する他の保護基としては、限定されないが、上記したアルコキシカルボニル基、ホルミル基、C1−6アルキルスルホニル基、C6−10アリールスルホニル基のような通常用いられるものを選択することもできる。チオール基が当該残基に含まれる場合は、C1−6アルキル基またはC1−6アルキルカルボニル基で保護され得る。また、当該ペプチド鎖に含まれるアミド結合も、C1−6アルキル基および/またはC1−6アルキルカルボニル基で置換されていてもよく、例えば−CON(C1−6アルキル)−に変換されていてもよい。
ペプチド鎖を構成するアミノ酸配列は特に限定されないが、例えば、以下のようなものが挙げられる。尚、ターゲットとなる生体内プロテアーゼが存在し、その基質認識アミノ酸配列が既知の場合、その認識部位および/または切断部位を含むアミノ酸配列を用いてもよい。
アミノ酸1個からなるペプチド鎖:Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、Val、など。好ましくは、Phe、Tyr、Ile、Glu。
アミノ酸2個からなるペプチド鎖:PhePhe、PheGly、PheLeu、TyrPhe、TrpPhe、PheTrp、PheTyr、GlyPhe、GlyGly、など。好ましくは、PhePhe、PheGly。
アミノ酸3個からなるペプチド鎖:PheGlyGly、PheLeuGly、PhePheGly、AsnPhePhe、GlyPhePhe、LeuPhePhe、LeuAlaLeu、AlaValAla、GlyAlaPhe、GlyPheAla、GlyIleAla、GlyIlePhe、GlyLeuAla、GlyValAla、GlyValPhe、GlyGlyGly、など。好ましくは、AsnPhePhe。
アミノ酸4個からなるペプチド鎖:GlyPheLeuGly、GlyPhePheLeu、GlyPhePheAla、GlyPheTyrAla、GlyPheGlyPhe、GlyPheGlyGly、GlyGlyPheGly、GlyGlyPheTyr、GlyGlyGlyGly、LeuAlaLeuAla、AlaLeuAlaLeu、AlaGlyValPhe、GluAsnPhePhe、など。好ましくは、GlyPheLeuGly。
本発明におけるリンカーは、例えば上記式(X)で示される構造を有していてもよく、その場合Qは結合する−NH−と一緒になって上述したような1〜8個のアミノ酸からなるペプチド鎖を形成する。また、Qは1〜5個の酸素原子が挿入されるか、もしくはカルボキシル基またはC1−6アルコキシカルボニル基で置換されていてもよいC2−20アルキレンである。Qの具体例としては、エタン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基、ヘプタン−1,7−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基、ノナン−1,9−ジイル基、デカン−1,10−ジイル基、2−メチルプロパン−1,3−ジイル基、2−メチルブタン−1,4−ジイル基、3−メチルブタン−1,4−ジイル基、3−メチルペンタン−1,5−ジイル基、3−エチルペンタン−1,5−ジイル基、2−メチルヘキサン−1,6−ジイル基、3−メチルヘキサン−1,6−ジイル基、4−メチルヘプタン−1,7−ジイル基、3−オキサペンタン−1,5−ジイル基、3−オキサヘキサン−1,6−ジイル基、4−オキサヘキサン−1,6−ジイル基、3−オキサヘプタン−1,7−ジイル基、4−オキサヘプタン−1,7−ジイル基、4−オキサオクタン−1,8−ジイル基、3,6−ジオキサオクタン−1,8−ジイル基、3,6−ジオキサノナン−1,9−ジイル基、3,6−ジオキサ−4−メチルノナン−1,9−ジイル基、4,7−ジオキサデカン−1,10−ジイル基、4,9−ジオキサドデカン−1,12−ジイル基、4,7,10−トリオキサトリデカン−1,13−ジイル基などが挙げられ、好ましくは、エタン−1,2−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、3−オキサペンタン−1,5−ジイル基、3,6−ジオキサオクタン−1,8−ジイル基、4,7−ジオキサデカン−1,10−ジイル基、4,9−ジオキサドデカン−1,12−ジイル基、4,7,10−トリオキサトリデカン−1,13−ジイル基などが挙げられる。
本発明組成物中に用いられるHA−MTX結合体において、MTXとリンカーの結合様式は特に限定されない。しかしながら、典型的には、ペプチド鎖を含有するリンカーが、
1)MTXのα位のカルボキシル基;
2)MTXのγ位のカルボキシル基;および
3)MTXのアミノ基と結合する。また、これらの結合様式が複数混在(例えば、MTXのα位のカルボキシル基で結合した結合体と、MTXのγ位のカルボキシル基で結合した結合体が混在)していてもよい。しかしながら、プロテアーゼに対する親和性と合成上の観点から、ペプチド鎖を含有するリンカーはMTXのα位のカルボキシル基及び/またはγ位のカルボキシル基と結合していることが好ましく、当該リンカーはMTXのα位のカルボキシル基と結合していることがより好ましい。
本発明の組成物中で用いられるHA−MTX結合体のうち、ペプチド鎖を含有する特に好ましいリンカーおよび特に好ましい結合様式を有するものは、ペプチド鎖を含有するリンカーがα−アミノ酸からなるペプチド鎖の末端にジアミノ化合物が存在するものであり、そのペプチド鎖のN末端がMTXのα位のカルボキシル基に酸アミド結合によって結合し、そのペプチド鎖のC末端がジアミノ化合物を介してHAのカルボキシル基と酸アミド結合によって結合しているものである。
本発明のHA−MTX結合体におけるメトトレキサート(MTX)部分は、リンカーによる修飾以外に、公知の方法によりプロドラッグ化されていてもよい。
本明細書においてC1−6アルキル基は、炭素数1〜6の直鎖または分枝鎖状のアルキル基を意味し、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、3−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、及びn−ヘキシル基等を含む。
本明細書においてC1−6アルキルカルボニルは、炭素数1〜6の直鎖または分枝鎖状のアルキルカルボニル基を意味し、例えば、アセチル基、プロピオニル基、2−メチルプロピオニル基、2,2−ジメチルプロピオニル基などの既に定義したアルキル基をアルキル部分として有するものが含まれる。
本明細書においてC1−6アルコキシは、炭素数1〜6の直鎖または分枝鎖状のアルコキシ基を意味し、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基などの既に定義したアルキル基をアルキル部分として有するものが含まれる。
本明細書においてC1−6アルキルアミノは、炭素数1〜6の直鎖または分枝鎖状のアルキルアミノ基を意味し、例えばメチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基などの既に定義したアルキル基をアルキル部分として有するものが含まれる。
本明細書においてジC1−6アルキルアミノは、炭素数1〜6の直鎖または分枝鎖状のジアルキルアミノ基を意味し、例えばジメチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルn−プロピルアミノ基などの、同一または異なってもよい既に定義したアルキル基をアルキル部分として有するものが含まれる。
本明細書においてジC2−20アルキレンは、炭素数2〜20の直鎖または分枝鎖状のアルキレン基を意味し、例えばエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、オクチレン基、デカレン基などが含まれる。
本明細書においてC1−6アルコキシカルボニル基は、炭素数1〜6の直鎖または分枝鎖状のアルコキシカルボニル基を意味し、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基などの既に定義したアルキル基をアルキル部分として有するものが含まれる。
本明細書においてC1−6アルキルスルホニル基は、炭素数1〜6の直鎖または分枝鎖状のアルキルスルホニル基を意味し、例えばメタンスルホニル基、エタンスルホニル基、n−プロパンスルホニル基などの既に定義したアルキル基をアルキル部分として有するものが含まれる。
本明細書におけるアシル化には、C1−6アルキルカルボニル化;およびベンゾイル化などが含まれ、当該ベンゾイル基はC1−6アルキル、ハロゲン原子、C1−6アルコキシなどで置換されていてもよい。
本発明のHA−MTX結合体におけるMTXの結合率は、薬効を発揮し副作用の懸念が無い範囲であることが好ましい。本明細書におけるMTXの結合率は、以下の式:
により算出される。MTXの結合率は、特に限定はされないが、薬効発現の観点から0.5%以上が好ましく、1.0%以上がより好ましい。一方で、MTXの作用を投与部分に限局させ、MTXの有する全身性の副作用を低減するためには、結合率は10%より小さいことが好ましい。また、本発明のHA−MTX結合体は、分子量が大きく、かつ、MTXの結合率が高いと不溶化を起こし合成上の不都合が生じることを考慮すると、MTXの結合率は0.5%以上かつ4.5%より小さいことが好ましく、1.0%以上かつ4.5%より小さいことが特に好ましい。
本発明のHA−MTX結合体は、塩として存在することもできるが、その用途を考慮すれば薬学上許容可能な塩であることが好ましい。例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、鉄塩、アンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩などが挙げられる。
HA−MTX結合体の合成法としては、WO05/85294号に記載されているものを適宜用いればよい。簡単に説明すると、HA、ペプチド鎖を含有するリンカー、MTXを適切な順番で結合させることによってHA−MTX結合体を得ることができる。これら結合反応は、通常の酸アミド結合反応に用いられる溶媒、縮合剤、及び必要に応じて反応促進性の添加剤を用いて行うことができる。溶媒、縮合剤、温度等の反応条件は、WO05/85294号の記載及び有機化学分野における技術常識を考慮して適宜選択すればよい。
光安定化剤
本明細書における「光安定化剤」との用語は、光の照射により励起状態となった分子からエネルギーを吸収する消光効果、ラジカルを捕捉し得るラジカル捕捉効果、又はそれらの両方の効果を有する物質のことをいう。
消光剤としては、320〜430nmの光照射により励起されたHA−MTX結合体が発する蛍光の生成を抑制する効果(消光効果)を有するものが好ましい。
本発明において好適に使用し得る消光効果または/及びラジカル捕捉効果を有する光安定化剤の例には下記(a)〜(c)の化合物が含まれる。
(a)硫黄含有無機酸または有機酸およびそれらの塩
この化合物群には、例えば、チオ硫酸ナトリウム、チオグリコール酸、チオグリコール酸アンモニウム、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリコール酸カリウム、チオグリコール酸エチル、チオリンゴ酸、チオリンゴ酸アンモニウム、チオリンゴ酸ナトリウム、チオリンゴ酸カリウム、メルカプトプロピオン酸、メルカプトプロピオン酸アンモニウム、メルカプトプロピオン酸ナトリウム、及びメルカプトプロピオン酸カリウムが含まれる。
好ましい化合物は、チオ硫酸、チオ硫酸ナトリウム、チオグリコール酸、チオグリコール酸アンモニウム、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリコール酸カリウム、及びチオグリコール酸エチルである。
特に好ましい化合物は、チオ硫酸、チオ硫酸ナトリウム、及びチオグリコール酸ナトリウムである。
(b)芳香族アミノ酸誘導体およびその塩
この化合物群には、例えば、N−アセチルトリプトファン、トリプトファン、トリプトファンメチルエステル、トリプトファンエチルエステル、チロシン、及びフェニルアラニン、及びその塩が含まれる。
好ましい化合物は、N−アセチルトリプトファン及びトリプトファンである。
特に好ましい化合物は、N−アセチルトリプトファンである。
これらアミノ酸誘導体の塩は、特に限定はされないが、例えば塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の酸付加塩;及びナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、鉄塩、アンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩等の塩基付加塩が含まれる。
(c)ヒドロキシ安息香酸類およびその塩
この化合物群には、例えば、サリチル酸、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸メチル、サリチル酸エチル、サリチル酸フェニル、サリチル酸フェニル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸イソアミル、p−ヒドロキシ安息香酸メチル(メチルパラベン)、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、p−ヒドロキシ安息香酸プロピル、p−ヒドロキシ安息香酸 n−ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸イソブチル、4−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸ナトリウム、3−ヒドロキシ安息香酸、及び3−ヒドロキシ安息香酸ナトリウムが含まれる。
好ましい化合物は、サリチル酸、サリチル酸ナトリウム、p−ヒドロキシ安息香酸メチル、及びp−ヒドロキシ安息香酸プロピルである。
特に好ましい化合物は、サリチル酸、サリチル酸ナトリウム、及びp−ヒドロキシ安息香酸メチルである。
理論に拘束されることを望まないが、光安定化剤は以下の様にしてその効果を発揮すると考えられる。
先ず、図1を参照して光照射により生じる第一の反応を説明する。光照射を受けたHA−MTX結合体のMTX部分は励起状態となる。この際、励起一重項状態から基底状態への電子遷移の過程で蛍光が放出されると考えられる。励起状態にあるMTX部分からはプテリジン環を有する化合物(a)が脱離しやすく、そして、その脱離の後に当該結合体の残存部(2−(4−アミノベンゾイルアミノ)−4−カルボキシルブチルカルボニル基を含む、プテリジン環脱離MTX−リンカー−HA)(b)が形成される(反応A)。さらに、その残存部(b)が2つ一緒になってアゾダイマーが形成され(反応B)、結果として、アゾダイマーを介してヒアルロン酸分子同士が架橋されると考えられる。
事実、HA−MTX結合体が蛍光を発する励起波長の領域と、当該結合体のゲル化をもたらす光の波長領域はほぼ一致すること(実施例1)、また、光照射したHA−MTX結合体には、MTXのプテリジン環が離脱して生じるアゾダイマーが含まれていること(実施例2及び3)から、HA−MTX結合体の蛍光生成とゲル化は密接に関連していると考えられる。本願発明に用いられる光安定化剤は強い消光作用(励起状態にある分子からエネルギーを吸収し、相対的に蛍光生成を抑制する効果)を有し、HA−MTX結合体が蛍光を放出しうる励起波長の光を照射しても、光安定化剤存在下では蛍光生成が抑制された(実施例4)。この結果、励起に引き続いて起こるプテリジン環の脱離及びアゾダイマー形成が抑制され、ひいてはゲル化の抑制につながると考えられる。
また、光照射により生じると考えられる反応がもうひとつ存在する。それは、HA−MTX結合体の低分子化である。この反応は、光照射によって励起状態にあるMTX部分またはMTX部分から脱離したプテリジン環を有する化合物が直接作用するか、プテリジン環を有する化合物が関与する光化学反応により生じるラジカル種が間接的に作用することにより、HAポリマー分子を切断することにより起きると考えられる。本発明の光安定化剤は、励起状態にあるMTX部分に対する強い消光作用によりプテリジン環の脱離やその後引き続き生じる光化学反応そのものを抑制するか、光化学反応によって生じるラジカル種を捕捉して、そのような低分子化を抑制すると考えられる。
本発明の医薬組成物
WO05/85294号公報に記載されているHA−MTX結合体を含有する医薬組成物と同様に、HA−MTX結合体と光安定化剤とを含有する本発明の医薬組成物も、関節疾患治療に有効である。
本明細書における「関節疾患」とは、具体的には、関節軟骨欠損、変形性関節症(明らかな原因のない1次性と原因疾患が認められる2次性を含む)、肩関節周囲炎、関節リウマチ、反応性関節炎、ウイルス性関節炎、化膿性関節炎、結核性関節炎、神経性関節症などの疾患を指し、さらに、これら疾患における関節痛(例えば、関節リウマチにおける膝関節痛など)をも包含する。また、「関節疾患治療薬」とは、前記関節疾患の治療に用いられる薬剤だけでなく、予防に用いられる薬剤、病態の進展抑制(悪化の防止や現状維持)等のために用いられる薬剤をも包含する。
HA−MTX結合体は、その有効量に、適宜、製薬上許容しうる担体、賦型剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、香料、着色剤等を加えて医薬組成物として用いることができる。本発明のHA−MTX結合体を有効成分とする医薬組成物は、関節疾患治療薬として用いられることが好ましく、その中でも関節局所投与製剤として用いられることが特に好ましい。
本発明の医薬組成物を(例えば関節疾患治療薬として)製剤化する方法は、特に限定されないが、例えば、HA−MTX結合体及び光安定化剤を生理食塩水やリン酸生理食塩水等に所望の濃度に溶解させ、注射用溶液として製剤化してもよいし、使用時に溶解される注射用粉末剤として製剤化してもよい。この際、必要に応じて、溶液を所望のpHに調整するために酸又は塩基を加えてもよい。また、溶液を所望の塩濃度に調整するために、ナトリウム塩、カリウム塩等の1価の金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、マンガン塩等の2価の金属塩等の無機塩等を加えてもよい。更に、所望に応じて、安定化剤等が加えられていてもよい。このようにして調製された、溶解させた溶液を、ディスポーザブル注射筒等の注射器に予め充填させた形で流通させてもよい。
本発明組成物をHA−MTX結合体を有効成分とする関節疾患治療薬として投与するに際しては、HA−MTX結合体を0.01%〜10%(w/v)の溶液濃度、好ましくは0.1%〜2.0%(w/v)の溶液濃度、特に好ましくは0.5%〜1.5%(w/v)の溶液濃度で含有する組成物を、1回あたり1〜3mL患者に投与すればよい。但し、この投与量は、医師の指示、対象となる患者、又は疾患の種類やその重篤度、或いはHA−MTX結合体の分子量等により、それぞれ最適な投与量に適宜増減してもよい。
光安定化剤は、本発明の医薬組成物が溶液(例えば、注射剤溶液)である場合には、当該溶液中、0.01〜30%(w/v)、好ましくは、0.1〜20%(w/v)、特に好ましくは、0.5〜15%(w/v)の範囲の濃度で存在する(「%(w/v)」は、当該溶液100ml中に溶解している当該物質のgを表す。例えば、30%(w/v)とは、溶液100ml中に光安定化剤が30g溶解していることを表す)。組成物が、使用時に溶解される粉末剤(例えば、注射用粉末剤)である場合には、製品の指示書に規定された量の溶媒で当該粉末剤を溶解して得られる溶液中に光安定化剤が0.01〜30%(w/v)、好ましくは、0.1〜20%(w/v)、特に好ましくは、0.5〜15%(w/v)の範囲の濃度で存在するように、光安定化剤が含まれる。
包装材
本発明においては、本発明の医薬組成物を、特定の波長を有する光を遮断する包装材で包装すると、光照射に対する安定性がさらに向上するので好ましい。光の透過を100%遮断するような、例えばアルミニウムでラミネートされたフィルム等を用いてもよいが、実際の医療現場における利便性を考慮すれば、光の透過を完全に遮断してしまうよりも、内容物が確認できる包装を用いる方が商品価値も高く、好ましい。そこで、包装内容を確認することができる程度に光の透過を保持させつつ、かつ本発明の医薬組成物の安定性に貢献する包装材としては、安定性に支障をもたらしうる特定範囲の波長を有する光を遮断する又は当該範囲の波長を有する光の透過率を減少させる特徴を有する包装材を用いることが、包装した際の光照射に対する安定性をより向上させ、かつ商品価値としても好ましい。好ましくは、少なくとも320〜430nm、さらに好ましくは540nm以下の波長を有する光を遮断する包装材を好適に使用することができる。前記範囲に含まれない波長の光は、遮断されてもされなくてもよいが、包装される内容物の様子を外から確認できる観点から、包装材は、前記範囲に含まれない波長の少なくとも一部の波長、好ましくは前記範囲以外の波長の光、より好ましくは、可視光領域の波長(380から780nm)において前記範囲に含まれない波長の光を、遮断又は減少させない特徴を有することが好ましい。
但し、アルミニウムでラミネートされたフィルム等、上記特定の範囲の波長を含むあらゆる波長の光を遮断する包装材を、上記特定の範囲の波長の光以外を遮断しない包装材と併用することもできる。例えば、製品の個別包装には、医療現場にて使用直前まで内容物を確認可能なように、前記の特定範囲の波長の光以外を遮断しない包装材を用いて包装し、そのように個別に包装された製品を、数個ずつまとめて箱詰めする場合に用いる箱として、さらにアルミニウムでラミネートされたフィルム等、上記特定の範囲の波長を含むあらゆる波長の光を遮断する包装材を用いることができる。
本明細書においては、ある物質が「遮光」作用又は「光を遮断する」作用を有する場合には、当該物質が有する光透過率が、10%以下であることを意味する。光透過率は、当業者に知られている如何なる方法を用いて測定してもよいが、例えば、後述の実施例5に記載されているように、分光光度計により測定される。ゲル化、低分子化の観点からみると、HA−MTX結合体に照射される光の光透過率は、低い方が望ましい。好ましくは、実際の使用環境において実質的にゲル化および低分子化が抑制される範囲、すなわち320〜430nm、好ましくは540nm以下の光を「遮光」又は「遮断する」ことが好ましい。
包装材としては、上記波長を有する光を吸収し得る酸化チタン、カーボンブラックなどの色素又は顔料で着色されたプラスチックフィルム、例えば、ポリエステルフィルムや、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルム又はガラスなどが挙げられる。
包装は、これらの特徴を有する包装材から構成される容器を用いることにより、又はそれら包装材で容器の外側をカバーすることにより行われる。例えば、注射器やバイアルの容器に前記特徴を有する包装材を用いる場合や、通常の注射器やバイアルを包装する際の包装材として、前記特徴を有する包装材を用いる場合が想定される。
本発明においては、医薬品に使用される包装材の全てが光を遮断する包装材である必要はない。しかしながら、好ましくは、医薬品の包装材の大部分、特に好ましくは、医薬品の包装材の全てが、少なくとも上記の特定の範囲の波長の光を遮断する包装材を用いる。
上記の遮光フィルム等の包装材を用いる場合には、光安定化剤の使用量を低減させても十分な安定性を確保することができる。具体的には、光安定化剤の使用量を、例えば、組成物に対して0.01〜2%(w/v)、好ましくは、0.05〜1%(w/v)程度まで低下させることができる。
本発明を以下の実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
製造例1
HA−MTX結合体の製造
WO05/85294公報の実施例2−1に記載された方法に準じて、ヒアルロン酸ナトリウム塩を、リンカーに結合させたメトトレキサート(2−[N−[N−[N−[4−[[(2,4−ジアミノ−6−プテリジニル)メチル]メチルアミノ]ベンゾイル]−α−(O5−メチルグルタミル)]フェニルアラニル]フェニルアラニルアミノ]エチルアミン:MTX−α−PhePhe−NH−C−NH)に結合させて、HA−MTX結合体(MTX−α−PhePhe−NHCNH−HA;DK−226)を製造した。ヒアルロン酸を標準物質とするゲルろ過クロマトグラフィー法により当該結合体の分子量を求めた。ゲルろ過クロマトグラフィーは、カラムとしてOHpakSB-806HQ(Shodex)、検出器としてRI検出器RI-71(Shodex)およびUV検出器875-UV(JASCO、検出波長:304nm)を装着した装置を用い、次の条件で分析を行った、すなわち、溶離液:50mMリン酸ナトリウム水溶液(pH6.0);溶離速度:0.6mL/min;カラム温度:40℃。
標準物質としては、異なる分子量を有するヒアルロン酸を調製し、それを極限粘度法により分子量を算出して用いた。上記のゲルろ過クロマトグラフィーにより当該結合体の溶出時間を求め、標準物質の溶出時間と分子量の関係から当該結合体の分子量を求めた。当該結合体の分子量は約207万であった。また、当該結合体のMTXの結合率は、紫外吸収(259nm)を測定することにより算出したところ、2.2%であった。HA−MTX結合体は乾燥して粉末状で保管しておき、以下の実験に供した。
実施例1
この実験は、特定波長の光照射によるHA−MTX結合体のゲル化、及びゲル化と蛍光発生との関係を検証するために行われた。
製造例1において得られたHA−MTX結合体を0.9%NaClを含む2mMリン酸緩衝液(pH7.3)に溶解し(HA換算濃度9.9mg/ml)、液体クロマトグラフィー用の蛍光検出器(日立社製、F1050型蛍光検出器)を用いて種々の波長の光(260nm、310nm、360nm、405nm)を照射し、当該結合体のゲル化及び蛍光発生を観察した。ゲル化の観察は、試料溶液の表面をスパチュラで穿刺し、ゲル化に伴う界面形成を目視で確認することにより行った。また、蛍光発生の観察は、試料に励起光を照射した場合の照射前後の発光状態を直接目視で観察し、照射後に強い発光が観察された場合を「+」、照射前後で変わらない場合を「−」とした。結果を表1に示す。
表1のとおり、HA−MTX結合体に特定波長の光を照射したところ、360nm、405nmにおいて目視で強い蛍光が観察された。また、これらの波長では、当該結合体は1時間でゲル化した。また、310nmの光を照射したものでも、6時間でゲル化した。一方、260nmの光を照射したものは、24時間経過してもゲル化しなかった。
以上の結果から、一定の範囲の波長を有する光がHA−MTX結合体にゲル化を生じさせ、また蛍光を発生させることが明らかとなった。ゲル化を引き起こす波長の範囲は、短波長側の限界点は、260nmよりも長波長側かつ310nmよりも短波長側にあり、長波長側の限界点は、405nmよりも長波長側にあることが推定される。特に、短時間でゲル化を引き起こす波長の範囲は、短波長側の限界点は310nmよりも長波長側かつ360nmより短波長側にあり、長波長側の限界点は405nmよりも長波長側にあることが推定される。また、実施例4にて説明するとおり、HA−MTX結合体の励起波長の範囲は、表1より目視で強い蛍光および短時間でのゲル化が観察された360nm、405nmを含む320〜430nmの範囲であり、このことから、HA−MTX結合体のゲル化と蛍光発生は、HA−MTX結合体の励起波長と密接に関連していることが示唆される。
実施例2
実施例2及び後述の実施例3は、光照射を受けたHA−MTX結合体に起きる反応のメカニズムを調べるために行われた。
方法
光照射を受けたHA−MTX結合体のHA鎖をヒアルロン酸分解酵素を用いて切断し、得られた生成物を分析してその構造を推測した。
具体的には、WO05/85294公報の実施例2−1に記載された方法に準じて調製したHA−MTX結合体(DK−226:MTX−α−PhePhe−NHCNH−HA、当該結合体中のMTXの結合率=2.1%、当該結合体の分子量=206万)を用いて、以下の方法で行った。
当該結合体を、0.9%NaClを含む2mMリン酸緩衝液(pH7.3)に溶解してHA換算濃度10.5mg/mlの溶液を調製した。当該結合体溶液を1ml採取し、これに光安定性試験用蛍光灯(東芝FL20S・D-EDL-D65)を用いて光を照射(5000Lux×24hr)した後、5U/mlに調製したChondoroitinase ACII(生化学工業)を含む50mMリン酸緩衝液(pH6.0)を1ml加えて37℃で3日間HA鎖の消化を行った(試験サンプル)。また、光を照射しない当該結合体溶液1mlに、0.5U/mlに調製した上記酵素を含む50mMリン酸緩衝液(pH6.0)を1ml加えて37℃で1日間HA鎖の消化を行った(コントロール)。
得られた試験サンプルおよびコントロールを、以下の条件でゲルろ過クロマトグラフィー及び逆相液体クロマトグラフィーにより分析した。装置はいずれもSMARTsystem(ファルマシア社製)を用い、UV検出器の波長は205nm、220nm、310nmを用いた。
ゲル濾過クロマトグラフィーでは、酵素消化液を0.1%TFAを含む30%CH3CNで50倍に希釈し、0.45μmのフィルターで濾過し、20μlを分析に用いた。カラムとしてSuperdex Peptide PC 3.2/30、溶出液として0.1%TFAを含む30%CH3CNを用い、溶出速度100μl/分で分析した。
逆相クロマトグラフィーでは、酵素消化液を0.1%TFA水溶液で50倍に希釈し、0.45μmのフィルターで濾過し、20μlを分析に用いた。カラムとしてμRPC C2/C18 PC 3.2/3、溶出液として溶出液A(0.1%TFA水溶液)と溶出液B(0.1%TFAを含むCH3CN溶液)の組成グラジエントを用い、溶出速度200μl/分で分析した。当該グラジエントの条件は以下の通り。溶出液(溶出液AとBの混合液)中の溶出液Bの比率%(v/v)は、分析開始後0分〜5分は0%に維持し;5分〜30分は毎分2%の割合で0%から50%へ直線的に増加させ;30分〜35分は100%に維持し;35分〜40分は0%に維持した。
結果
コントロールについてゲルろ過又は逆相クロマトグラフィー分析を行った結果、2個の糖ユニット(以下、「Δ2糖」とも称する)、及び4個の糖ユニットが結合したMTX−リンカー分子(以下、「MTX−リンカー−Δ4糖」とも称する)と考えられるピークが認められた(図2A)。次に、試験サンプルについて同様の分析を行った結果、Δ2糖ともMTX−リンカー−Δ4糖とも異なる新たなピーク1、2、3及び4が認められた(図2B)。これら新たなピークに相当する化合物の単離及び分析を、実施例3に記載されている通りに行った。
実施例3
実施例2に記載した方法にて調整した試験サンプルを、逆相カラムを用いる分取液体クロマトグラフィーに付した。そのクロマトグラフを図3に示す。
分析条件は以下の通りである。
分取用試験サンプルとして、酵素消化液原液を0.45μmのフィルターで濾過した液を、200μl用いた。装置はSMARTsystem(ファルマシア社製)を用い、UV検出器の波長は205nm、220nm、310nmを用いた。カラムとしてμRPC C2/C18 PC 3.2/3、溶出液として溶出液A(0.1%TFA水溶液)と溶出液B(0.1%TFAを含むCH3CN溶液)の組成グラジエントを用い、溶出速度200μl/分で分析した。
当該グラジエントの条件は以下の通り。溶出液(溶出液AとBの混合液)中の溶出液Bの比率%(v/v)は、分析開始後0分〜5分は0%に維持し;5分〜30分は毎分2%の割合で0%から50%へ直線的に増加させ;30分〜35分は100%に維持し;35分〜40分は0%に維持した。
分析開始直後から24分までの溶出液を100μl毎に試験管に採取し、図3に示された画分A〜F(保持時間:11.5〜14.5分(A〜C)、15.0〜16.0分(D)、17.0〜18.0分(E)、及び18.5〜19.0分(F))を採取し、それぞれについてLC/MS分析を行った。その結果を表2に示す。
表2に示されている画分A〜Cに含まれている成分の主なm/z値は、下記の式a:
で示される構造を有するものであると推定される。即ち、MTX−リンカー−Δ4糖構造からプテリジン環が脱離した構造の化合物が生成したものと推定された。
さらに、表2に示されているように、画分E及びFの質量分析において検出されたm/zの値は、MTXのプテリジン環が脱離して生成したアゾダイマーのナトリウム付加イオンに相当するものである。また、分光光度計(日立社製、U-2000 ダブルビーム分光光度計、スキャンスピード400nm/min)を用いて画分FのUV吸収を測定すると、画分Fは、MTX自体の光分解物から単離されたアゾダイマーと同様のUV吸収極大値(約330nm)を有した(Photochemistry and Photobiology vol.44, No.2, pp.231-233, 1986; C. Chahide, et al中の化合物IIのデータを参照のこと)。これらのことは、画分E及びFにそれらダイマーが存在することを示唆している。
さらに、画分FをMALDI−TOFMSを用いて分析した(Voyager DE STR (Applied Biosystems社製)、Matrix: 10 mg/mL α-CHCA(0.1%TFA in 50%CH3CN溶液)、Sampling: Matrix 2 μLと画分F 1 μLを混合し、MALDIプレート上で結晶化後測定した。Detection Mode: Linear positive)。その結果、m/z2705.98および2722.14に、式(b)に示された構造を有するプテリジン環脱離MTX−リンカー−Δ4糖のアゾダイマーの、ナトリウム付加イオンおよびカリウム付加イオンに相当するイオンが検出された(図4)。
このように、HA−MTX結合体に光照射し、そしてHA鎖を酵素的に切断して得られた分解物には、MTXのプテリジン環が脱離して生じるアニリン窒素が2つ結合して生成したアゾダイマーと考えられる物質が含まれていることが示唆された。
したがって、実施例2及び3の結果より、光照射によって図1に提示した反応A及びBがHA−MTX結合体に生じていることが裏付けられた。
実施例4
実施例4は、本発明における光安定化剤の効果を立証するものである。
(1)HA−MTX結合体の励起スペクトルに及ぼす各種光安定化剤の効果を調べた。各種光安定化剤(p−ヒドロキシ安息香酸メチル(メチルパラベン)、サリチル酸Na、チオ硫酸Na、N−アセチルトリプトファン)を製剤バッファー(0.9%NaClを含む2mM リン酸緩衝液(pH7.4))に9mg/ml(メチルパラベンのみ0.9mg/ml)になるように溶解した後、0.2μmフィルター(Millex GV)で無菌ろ過した。製造例1に従って調製したHA−MTX結合体の粉末を無菌的に量り取り、ろ過した光安定化剤含有製剤バッファーに1mg/mlになるように溶解して、被検サンプルを調製した。また、光安定化剤を有しない製剤バッファーにHA−MTX結合体を1mg/mlとなるように溶解させてコントロール液を調製した。被検サンプルとコントロール液に300〜480nmの光を照射し、458nmの蛍光の強度を測定した。
図5に示されるコントロール液の励起スペクトルから、HA−MTX結合体の主な励起波長範囲は、320〜430nmであることが明らかとなった。そして、本願発明に用いられる光安定化剤は強い消光作用を有し、HA−MTX結合体が蛍光を発する励起波長の光を照射しても光安定化剤存在下では蛍光生成が抑制された(特に、図5の右側のグラフ参照)。このように、用いた全ての光安定化剤は、HA−MTX結合体の320〜430nm付近で励起される蛍光を消失させることから(特に、HA−MTX結合体の励起極大波長(Exλmax=380nm)に注目すると、光安定化剤の添加によるピーク消失は明らかであり、蛍光生成が抑制されていることが分かる)、蛍光放出や化学反応に用いられる励起されたエネルギーをなんらかの形で吸収しているものと考えられる。
(2)次に、光照射に伴うHA−MTX結合体のゲル化および分子量・結合率に及ぼす各種光安定化剤の効果を調べた。
各種光安定化剤(p−ヒドロキシ安息香酸メチル(メチルパラベン)、サリチル酸Na、チオ硫酸Na、チオグリコール酸Na、N−アセチルトリプトファン、トリプトファン)を製剤バッファー(2mM リン酸緩衝液,0.9% NaCl pH7.4)に1又は10mg/ml溶解した後、0.2μmフィルター(Millex GV)で無菌ろ過した。製造例1に従って調製したHA−MTX結合体の粉末を無菌的に量り取り、ろ過した光安定化剤含有製剤バッファーに10mg/mLになるように溶解して、被検サンプルを調製した。また、光安定化剤を有しない製剤バッファーにHA−MTX結合体を10mg/mLとなるように溶解させてコントロール液を調製した。
これら溶液を未遮光のガラスバイアルに入れて光照射に供した。
光照射は、光安定性試験機(ETAC LABONIC LA110)により光安定性試験用蛍光灯(東芝FL20S・D-EDL-D65)を用いて、25℃、照度4000Luxの条件で行った。光照射を行って所定時間(0h、25h、50h、100h、150h、300h)が経過した後にサンプリングし、ゲル化の確認並びにHA−MTX結合体の分子量とMTX結合率(HA−MTX結合体中のMTXの結合率)の測定を行った。
ゲル化の度合いは、試料溶液の表面をスパチュラで穿刺し、ゲル化に伴う界面形成を目視で判断した。コントロールにおいては光照射開始後直ちにゲル化が生じた。これに対し、光安定化剤を添加したすべてのサンプルでゲル化が抑制されていた。この抑制効果は、300時間光を照射した時点でも認められた。ゲルろ過クロマトグラフィーにより分析したHA−MTX結合体の分子量とMTX結合率を表3A及び3Bに示す。ゲルろ過クロマトグラフィーは、カラムとしてOHpakSB-806HQ(Shodex)、検出器としてRI検出器RI-71(Shodex)およびUV検出器875-UV(JASCO、検出波長:304nm)を装着した装置を用い、次の条件で分析を行った、すなわち、溶離液:50mMリン酸ナトリウム水溶液(pH6.0);溶離速度:0.6mL/min;カラム温度:40℃。上記のゲルろ過クロマトグラフィーにより当該結合体の溶出時間を求め、標準物質の溶出時間と分子量の関係から当該結合体の分子量を求めた。標準物質は、異なる分子量を有するヒアルロン酸を調製し、極限粘度法により分子量を算出して用いた。尚、0hにおける各サンプルのMTX結合率が2.1〜2.3%の範囲で変動したが、この程度の変動の範囲は、MTX結合率の測定において通常観測される程度のものである。
光加速試験ガイドライン(ICHモジュール3/Q1B)によると、光安定性試験では、D65(ISO10977に規定されている屋外の昼光の標準として国際的に定められている)またはID65の放射基準の出力を示すように設計された光源を用い、総照度が120万Lux×h以上となり、および総近紫外放射エネルギーが200W・h/m以上となるように、試料が光に曝されなければならない。この条件下で光安定性が低いと認められた場合には、遮光等の処理を施して充分な光安定性を確保する必要がある。しかしながら、本発明は、製造工程中で光曝露される場合や、病院で包装を剥がされて数日放置されるという医療現場でのプラクティスの下で安定性を確保することを目的としており、上記ガイドラインに定められているような過酷な試験条件は必要でないと考えられる。本発明の目的を達成するためには、照度4000Luxの光を50〜100時間程度照射した場合に製剤の安定性が確保されていれば十分であると考えられる。以下、この基準に従って光安定性を評価する。
尚、光加速試験ガイドライン(ICHモジュール3/Q1B)に関する詳細な情報に関しては、以下の文書を参照されたい:
「新原薬及び新製剤の光安定性試験ガイドラインについて」、平成9年5月28日 薬審第422号(各都道府県衛生主管部(局)長あて);又は
ICH Harmonised Tripartite Guideline, Stability Testing: PHOTOSTABILITY TESTING OF NEW DRUG SUBSTANCES AND PRODUCTS, Recommended for Adoption at Step 4 of the ICH process on 6 November 1996 by the ICH Steering Committee
表3A及びBによると、上述したゲル化抑制効果に加え、光安定化剤は、HA−MTX結合体の分子量の低下及びMTX結合率の低下を抑制する効果も有する。特に、サリチル酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、及びチオグリコール酸ナトリウムの濃度を10mg/mlで添加した場合、照射時間が100時間を超える場合でも、分子量低下および結合率低下に対して大きい抑制効果を示した。さらに、メチルパラベン、N−アセチルトリプトファンおよびトリプトファンは、照射時間が100時間程度までであれば、添加量が低濃度(1mg/mL)であっても分子量低下及びMTX結合率低下を抑制することができた。
実施例5
実施例5は、特定の波長の光を遮断するフィルムがHA−MTX結合体のゲル化を阻害することを立証するものである。
フィルム
実施例1及び実施例4に記載したように、HA−MTX結合体は、特に320〜430nmの波長を有する光の照射により蛍光を生じる。したがって、本実施例においては、主にこの範囲又はその付近の波長の光を遮断するフィルムを用いて検証した。使用したフィルムの、種々の波長における光透過率を、分光光度計(日立社製、U-2000 ダブルビーム分光光度計、データモード:%T、スキャンスピード:400nm/min)により測定した。その結果を図6A〜Dに示す。
フィルムA:UVGuard(富士フイルム社製、70μm)
フィルムB:テイジン(登録商標)テトロン(登録商標)フィルムS(帝人デュポンフィルム社製、25μm)
フィルムC:テイジン(登録商標)テトロン(登録商標)フィルムS(帝人デュポンフィルム社製、50μm)
フィルムD:テイジン(登録商標)テトロン(登録商標)フィルムHB(帝人デュポンフィルム社製、25μm)
フィルムE:テイジン(登録商標)テトロン(登録商標)フィルムHB(帝人デュポンフィルム社製、50μm)
フィルムF:デンカDXフィルム(登録商標) DX14Sシリーズ(電気化学工業社製、DX14S0230 30μm)
フィルムG:デンカDXフィルム(登録商標) DX14Sシリーズ(電気化学工業社製、DX14S0250 50μm)
フィルムH:デンカDXフィルム(登録商標) DX14Sシリーズ(電気化学工業社製、DX14S02100 100μm)
フィルムI:ポリエステルフィルム、ルミラー(登録商標)(東レ社製、25μm)
フィルムJ:ポリエステルフィルム、ルミラー(登録商標)(東レ社製、50μm)
フィルムK:紫外吸収ポリエステルフィルム、T−UV(登録商標)(トチセン社製、25μm)
フィルムL:紫外吸収ポリエステルフィルム、T−UV(登録商標)(トチセン社製、50μm)
図6A〜Dに示されているように、用いられたフィルムは、いずれも、少なくとも300nm以下の波長を有する光を遮断した。中でも、UVGuard(富士写真フィルム株式会社)は、410nm以下の波長を遮断し、かつ420nm以下の波長を透過率50%以下に抑えた。すなわち、実施例1においてHA−MTX結合体にゲル化を生じさせた波長(310nm、360nm、405nm)を遮断する特徴を有し、また、HA−MTX結合体が蛍光発生する波長範囲(320〜430nm)において、光の透過率を抑制する特徴を有している。
ゲル化試験
次に、これらフィルムを用いてHA−MTX結合体のゲル化の抑制を試験した。実施例2に準じて調整したHA−MTX結合体 DK-226(分子量:207万、結合率:2.2%)を0.9%NaClを含む2mMリン酸緩衝液(pH7.3)に溶解して、HA−MTX結合体のHA換算濃度が9.9mg/mlになるように溶液を調製し、その溶液250μlを、上記のフィルムを外側に巻いたガラスバイアルに充填した。光安定性試験用蛍光灯(東芝FL20S・D-EDL-D65)を使用し、インキュベータ内にて、25℃で各バイアルに照度3600Luxで光を照射し、ゲル化の度合いを目視で判断した。結果を下記の表4に示す。
全てのフィルムは、フィルムを使用しなかったコントロールと比較して、ゲル化に要する時間を延長させた。
HB-25及びHB-50は2時間程度まではゲル化を抑制した。S-25及びS-50は1時間程度までゲル化を抑制した。UVガード(富士写真フィルム株式会社)を使用した場合が最もゲル化を遅延させ、10時間程度までゲル化を抑制した。
ゲル化を抑制した時間と、各フィルムの特徴である波長と光透過率の関係(図6A〜D)を考慮すると、実用上、ゲル化を遅延させるためには、300nm以下の波長の光透過率を抑えることが好ましく、370nm以下の波長の光透過率を抑えることがより好ましく、410nm以下の光を遮断することが、特に好ましい。
一方、実施例1の結果から、ゲル化と蛍光発生は互いに密接に関連していると考えられた点を併せて考慮すると、ゲル化を遅延させるためには、蛍光発生を引き起こす波長範囲である320〜430nmの範囲、より好ましくは、320〜430nmよりも幅広い範囲の波長を遮断するほど効果的と考えられる。
事実、300nm以下の波長の光透過率を抑えてもゲル化は遅延するものの、その効果においては十分ではなく、540nm以下の光を遮断するフィルム(ルミクール(登録商標)1905、リンテック社、540nm以下の波長範囲を遮断する;図7参照)を用いて上記と同様の試験を行うと、表5に示される通り、10日間もゲル化が抑制された。従って、ゲル化を抑制するためには、320〜430nm、好ましくは540nm以下の光を抑制(好ましくは遮断)することが有効である。
実施例6
次に、実施例5で用いたフィルムのうち、ルミクール(登録商標)1905(褐色フィルム、リンテック社製、図7参照)で包装したバイアルを用いて実施例4(2)と同様の実験を行った。光を完全に遮断した場合のコントロールとして、光安定剤を含有しないサンプルのバイアルをアルミ箔で覆った。
本実験においては、いずれのサンプルにおいてもゲル化は認められなかった。本試験の結果から、ゲル化や低分子化の原因と考えられる範囲、すなわち320〜430nm、好ましくは540nm以下の波長の光を遮断するフィルム(ルミクール(登録商標)1905は、540nm以下の波長を遮断する特徴を有する)を併用することにより、ゲル化や低分子化を抑制でき、300時間経過後でも品質を安定に保持できることが確認された。完全に光を遮断したアルミ箔を用いた場合と同等の効果が得られることも確認された。
以下に、HA−MTX結合体分子量及びMTX結合率の測定結果を示す(分子量、結合率の測定は、製造例1の記載に従って測定した)。
表6に示されているように、遮光フィルムを用いることによって、より一層のゲル化や低分子化に対する抑制効果が認められた。即ち、全てのサンプルにおいて、分子量低下及び結合率低下に対する抑制効果が大きいことが明らかとなった。特に、メチルパラベン、サリチル酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムは、いずれの濃度においてもアルミ箔で完全に遮光した場合(コントロール)に匹敵する安定化効果(低分子化及びMTX結合率低下に対する抑制効果)を示した。

Claims (4)

  1. ヒアルロン酸又はヒアルロン酸誘導体とメトトレキサートとの結合体又はその塩および光安定化剤を含有してなる光安定化された医薬組成物が、少なくとも540nm以下の光波長領域全体に渡って光を遮断する特徴を有する包装材で包装されている医薬品であって、当該包装材が、前記範囲に含まれない波長の少なくとも一部の波長の光を遮断又は減少させず、当該光安定化剤が、チオ硫酸、チオ硫酸ナトリウム、チオグリコール酸、チオグリコール酸アンモニウム、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリコール酸カリウム、チオグリコール酸エチル、チオリンゴ酸、チオリンゴ酸アンモニウム、チオリンゴ酸ナトリウム、チオリンゴ酸カリウム、メルカプトプロピオン酸、メルカプトプロピオン酸アンモニウム、メルカプトプロピオン酸ナトリウム、メルカプトプロピオン酸カリウム;N−アセチルトリプトファン又はその塩、トリプトファン又はその塩、トリプトファンメチルエステル又はその塩、トリプトファンエチルエステル又はその塩、チロシン又はその塩、フェニルアラニン又はその塩;サリチル酸、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸メチル、サリチル酸エチル、サリチル酸フェニル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸イソアミル、p−ヒドロキシ安息香酸メチル、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、p−ヒドロキシ安息香酸プロピル、p−ヒドロキシ安息香酸 n−ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸イソブチル、4−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸ナトリウム、3−ヒドロキシ安息香酸、又は3−ヒドロキシ安息香酸ナトリウムであ、医薬
  2. 光安定化剤が消光剤またはラジカル捕捉剤である請求項1記載の医薬
  3. 光安定化剤が、チオ硫酸、チオ硫酸ナトリウム、チオグリコール酸、チオグリコール酸アンモニウム、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリコール酸カリウム、チオグリコール酸エチル、N−アセチルトリプトファン又はその塩、トリプトファン又はその塩、サリチル酸、サリチル酸ナトリウム、p−ヒドロキシ安息香酸メチル、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、p−ヒドロキシ安息香酸プロピル、p−ヒドロキシ安息香酸 n−ブチル、又はp−ヒドロキシ安息香酸イソブチルである、請求項1又は2に記載の医薬
  4. 組成物中の光安定化剤の配合量が0.01〜30%(w/v)である請求項1〜3のいずれか1
    項に記載の医薬
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