JP5682882B2 - 内部状態解析方法およびプログラム並びに内部状態解析装置 - Google Patents

内部状態解析方法およびプログラム並びに内部状態解析装置 Download PDF

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Description

本発明は、内部状態解析方法およびプログラム並びに構造物、内部状態解析装置に関する。
従来、この種の内部状態解析方法としては、ミュオンのうち天頂角50°〜90°の範囲で地表に降り注ぐ水平ミュオンを用いて、構造物の測定対象部を通過した前方水平ミュオンと構造物の測定対象部を通過しない後方水平ミュオンとの同じ入射角についての強度比により構造物の内部構造情報を得るものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この方法では、前方水平ミュオンのうち低エネルギー(5GeV未満)の前方水平ミュオンだけをデータとして取得し、取得した低エネルギーの前方水平ミュオンの強度と後方水平ミュオンの強度との比から構造物の内部構造情報を得ている。
特開2007−271400号公報
一般に、内部状態解析方法では、ミュー粒子など高い透過性を有する粒子の性質を用いて構造物の内部をより適正に解析することが望まれている。このため、上述の内部状態解析方法、即ち、低エネルギーの前方水平ミュオンの強度と後方水平ミュオンの強度との比を用いて構造物の内部構造情報を解析する方法とは異なる方法の構築が課題の一つとされている。
本発明の内部状態解析方法およびプログラム並びに構造物、内部状態解析装置は、所定の高透過性を有する粒子である高透過性粒子の性質を用いて構造物の内部状態をより適正に解析することを目的の一つとする。本発明の構造物は、より適正な解析結果を用いた構造物の製造を可能にすることを目的の一つとする。
本発明の内部状態解析方法およびプログラム並びに構造物、内部状態解析装置は、上述の目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
本発明の内部状態解析方法は、
所定の高透過性を有する粒子である高透過性粒子の性質を用いて構造物の内部の状態を解析する内部状態解析方法であって、
前記構造物の内部を通過する前記高透過性粒子の軌跡に基づいて定められる前記高透過性粒子の散乱角の分布を用いて該高透過性粒子の散乱角を設定すると共に該設定した散乱角を用いて前記構造物の内部の状態を解析する、
ことを特徴とする。
この本発明の内部状態解析方法では、構造物の内部を通過する所定の高透過性を有する粒子である高透過性粒子の軌跡に基づいて定められる高透過性粒子の散乱角の分布を用いて高透過性粒子の散乱角を設定すると共に設定した散乱角を用いて構造物の内部の状態を解析する。これにより、高透過性粒子の性質(特に、構造物内の物質によって散乱角が異なる性質)を用いて構造物の内部の状態をより適正に解析することができる。ここで、「所定の高透過性」は、1メートルの鉄を透過する透過性である、ものとすることもできる。また、「高透過性粒子」は、ミュー粒子である、ものとすることもできる。また、「構造物」には、原子炉や、高炉,鉄筋・鉄骨コンクリートの柱や梁などが含まれる。
こうした本発明の内部状態解析方法において、前記散乱角の分布は、ガウス分布である、ものとすることもできる。
また、本発明の内部状態解析方法において、前記高透過性粒子が通過する通過経路の長さと該通過経路における物質の密度とを用いて前記散乱角の分布を定める、ものとすることもできる。この場合、前記構造物の内部の一部に相当し前記高透過性粒子が通過する通過パーツにおける前記通過経路の長さと前記通過パーツにおける物質の密度との積としての密度長を用いて前記通過パーツにおける前記散乱角の分布を定める、ものとすることもできる。こうすれば、通過パーツにおける散乱角の分布を定めることができる。この場合、前記通過パーツにおける前記散乱角の分布は、前記通過パーツをj、前記通過パーツjにおける前記高透過性粒子の軌跡を基準平面に投影したときの該高透過性粒子の基準方向に対するズレとしての投影時角度をθx[j]、前記通過パーツjにおける標準偏差をσ[j]、前記通過パーツjにおける前記散乱角の分布をf(θx[j])としたときに次式(A)により表わされるガウス分布であり、前記式(A)中、前記通過パーツjにおける前記標準偏差σ[j]は、前記高透過性粒子の運動量をp、光速に対する前記高透過性粒子の速度をβ、前記通過パーツjにおける前記密度長をDL[j]、前記通過パーツjにおける物質の放射長をX[j]としたときに式(B)により表わされる、ものとすることもできる。
さらに、本発明の内部状態解析方法において、前記ガウス分布の標準偏差を前記高透過性粒子の散乱角として設定する、ものとすることもできる。
あるいは、本発明の内部状態解析方法において、前記高透過性粒子の前記構造物に入射する前の入射状態と前記高透過性粒子の前記構造物を通過した後の放出状態とから推定される前記高透過性粒子の散乱角である推定散乱角と、前記構造物の内部の物質として仮定した仮定物質と前記高透過性粒子の前記入射状態とから得られる前記高透過性粒子の散乱角の分布を用いて設定される前記高透過性粒子の散乱角である分布散乱角と、の比較を前記推定散乱角と前記分布散乱角との乖離が予め設定された所定範囲内になるまで前記仮定物質を変更しながら行ない、前記推定散乱角と前記分布散乱角との乖離が前記所定範囲内になるときの前記仮定物質を前記構造物の内部の物質であると推定する、ものとすることもできる。
加えて、本発明の内部状態解析方法において、ウラン,セシウム,ストロンチウムのいずれかの放射長と前記高透過性粒子の軌跡とに基づいて定められる前記高透過性粒子の散乱角の分布を用いて前記構造物としての原子炉の内部の状態を解析する、ものとすることもできる。
本発明のプログラムは、上述のいずれかの態様の本発明の内部状態解析方法のステップを1以上のコンピューターに実現させるためのものである。このプログラムは、コンピューターが読み取り可能な記録媒体(例えばハードディスク、ROM、FD、CD、DVDなど)に記録されていてもよいし、伝送媒体(インターネットやLANなどの通信網)を介してあるコンピューターから別のコンピューターに配信されてもよいし、その他どのような形で授受されてもよい。このプログラムを一つのコンピューターに実行させるか又は複数のコンピューターにステップを分担して実行させれば、上述の本発明の内部状態解析方法のステップが実行されるため、本発明の内部状態解析方法と同様の作用効果が得られる。
本発明の構造物は、上述のいずれかの態様の本発明の内部状態解析方法による解析結果を用いて製造された構造部である、ことを要旨とする。これにより、より適正な解析結果を用いた構造物の製造を可能にすることができる。
本発明の内部状態解析装置は、
所定の高透過性を有する粒子である高透過性粒子の性質を用いて構造物の内部の状態を解析する内部状態解析装置であって、
前記構造物の内部を通過する前記高透過性粒子の軌跡に基づいて定められる前記高透過性粒子の散乱角の分布を用いて該高透過性粒子の散乱角を設定すると共に該設定した散乱角を用いて前記構造物の内部の状態を解析する内部状態解析手段、
を備えることを要旨とする。
この本発明の内部状態解析装置では、構造物の内部を通過する所定の高透過性を有する粒子である高透過性粒子の軌跡に基づいて定められる高透過性粒子の散乱角の分布を用いて高透過性粒子の散乱角を設定すると共に設定した散乱角を用いて構造物の内部の状態を解析する。これにより、高透過性粒子の性質(特に、構造物内の物質によって散乱角が異なる性質)を用いて構造物の内部の状態をより適正に解析することができる。
一実施例としての内部状態解析装置20の構成の概略を示す構成図である。 内部状態解析プログラム30の一例を示すフローチャートである。 原子炉内の全体領域およびパーツiの一例を示す説明図である。 ミュー粒子のエネルギEμおよび天頂角θ*の分布の一例を示す説明図である。 原子炉内を対象ミュー粒子が仰角θeで通過するときの様子の一例を示す説明図である。 対象ミュー粒子の軌跡と投影軌跡と投影時角度θx[j,φ,θe,α]との関係の一例を示す説明図である。 投影時角度θx[j,φ,θe,α]についてのガウス分布の一例を示す説明図である。 原子炉モデルの一例を示す説明図である。 図8の原子炉モデルの内部の状態の解析に内部状態解析プログラム30を用いたときの実行結果の一例を示す説明図である。 観測装置50の構成の概略を示す構成図である。 観測装置50におけるシンチレータ52,54,56の配置の様子を示す説明図である。 シミュレーションの結果である。 炭素と鉄について交互に2時間ずつ行なったときの各時間におけるコインシデンス数割合である。 鉄と鉛について交互に2時間ずつ行なったときの各時間におけるコインシデンス数割合である。 図13および図14をまとめた結果である。 仰角が10°の1万発のミュー粒子のうち散乱角が0.004rad以下の粒子数である。 原子炉の燃料体のモデルである。 原子炉の燃料体のモデルである。 燃焼前の原子炉モデルについての解析結果である。 燃焼後の原子炉モデルについての解析結果である。 燃焼の前後で低散乱角の粒子数がどの程度変化したかについて燃焼前の粒子数に対する燃焼後の粒子数の割合で視覚化したものである。
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施例としての所定の高透過性の粒子である高透過性粒子の性質を用いて構造物の内部の状態を解析する内部状態解析装置20の構成の概略を示す構成図である。実施例の内部状態解析装置20は、図示するように、一般的な汎用コンピュータ22にアプリケーションソフトウエアとしての内部状態解析プログラム30がインストールされたものとして構成されている。
コンピュータ22は、図示しないCPU,ROM,RAM、グラフィックプロセッサ(GPU)、グラフィックメモリ(VRAM)、システムバス、ハードディスクドライブなどを備え、ハードディスクドライブに内部状態解析プログラム30などが記憶されている。内部状態解析プログラム30は、計算条件の設定などを行なうためにデータを入力するデータ入力モジュール32と、入力されたデータを用いて構造物の内部の状態を計算する計算モジュール34と、計算した結果を出力する結果出力モジュール36と、から構成されている。なお、コンピュータ22には、表示装置としてのディスプレイ40や、入力装置としてのキーボード42やマウス44などが接続されている。
次に、こうして構成された内部状態解析装置20における内部状態解析プログラム30の一連の処理について説明する。なお、実施例では、高透過性粒子としてミュー粒子を用いるものとし、構造物として原子炉を用いるものとした。以下、説明の都合上、まず、原子炉の仮想的なモデル(以下、原子炉モデルということがある)の内部の状態の解析に内部状態解析プログラム30を用いる場合について説明し、その後に、現実の原子炉(以下、現実原子炉ということがある)の内部の状態の解析に内部状態解析プログラム30を用いる場合について説明する。図2は、原子炉モデルの内部の状態の解析に用いられる内部状態解析プログラム30の一例を示すフローチャートである。このプログラムは、ユーザによって実行が指示されたときに、CPUにより、RAMの所定アドレスに書き込まれて実行される。
内部状態解析プログラム30が実行されると、CPUは、まず、原子炉内の全体領域の形状や、それぞれが全体領域の一部に相当する複数のパーツ(要素)i(iはパーツの各々に対応する番号で1〜Ni、但しNiはパーツの数)のそれぞれの位置,複数のパーツiのそれぞれにおいて仮定する物質(以下、仮定物質という)Mas[i],複数のパーツiのそれぞれにおける仮定物質Mas[i]の密度(単位体積あたりの質量)ρ[i],後述のステップS120〜S180の処理(以下、内部状態解析処理という)に用いるミュー粒子の数である目標ミュー粒子数NFなどの計算条件を入力する(ステップS100)。ここで、原子炉内の全体領域と複数のパーツiとの関係は、円筒や立方体,直方体,円錐などの複数のパーツiの組み合わせによって原子炉内の全体領域が定められるものとしてもよいし、原子炉内の全体領域の分割によって複数のパーツiが定められるものとしてもよい。また、仮定物質Mas[i]は、実施例では、複数のパーツiのそれぞれについて、一種類の物質(ウラン、セシウム、ストロンチウムなどのうち一つ)を用いるものとした。これらの計算条件は、例えば、ユーザによるキーボード42やマウス44の操作によって設定されたデータを入力するものとしたり、ハードディスクドライブなどに記憶されたデータを入力するものとしたりすることができる。原子炉内の全体領域およびパーツiの一例を図3に示す。
こうしてデータを入力すると、現在までに内部状態解析処理に用いたミュー粒子の数である処理用ミュー粒子数NCを初期化(初期値としての値0を設定)すると共に(ステップS110)、今回の内部状態解析処理に用いるミュー粒子(以下、対象ミュー粒子という)のエネルギEμと天頂角θ*と水平角φと通過点αとを設定する(ステップS120)。ここで、対象ミュー粒子のエネルギEμおよび天頂角θ*については、実施例では、図4に例示するミュー粒子のエネルギEμおよび天頂角θ*の分布に基づいて設定するものとした。具体的には、内部状態解析処理に用いたミュー粒子の数が目標ミュー粒子数NFになったときに目標ミュー粒子数NFのミュー粒子のエネルギEμおよび天頂角θ*の分布が図4に応じた分布になるよう、エネルギEμについては0.1〜100GeVの範囲内で、天頂角θ*については0°〜90°の範囲内で、対象ミュー粒子のエネルギEμと天頂角θ*とを設定するものとした。また、ミュー粒子の水平角φについては、実施例では、周知の乱数発生プログラムを用いて−90°〜90°の範囲内で設定するものとした。さらに、通過点αについては、ミュー粒子を検出するための仮想の検出器が原子炉の全体を覆うように設置されているものとみなして、周知の乱数発生プログラムを用いて、原子炉に入射する前のミュー粒子の通過点を設定するものとした。
次に、対象ミュー粒子の水平角φと仰角θe(=90°−θ*)と通過点αとに基づいて、複数のパーツi(iは1〜Ni)のうち対象ミュー粒子が通過するパーツを通過パーツj(jは通過パーツの各々に対応する番号で1〜Nj、但しNjは通過パーツの数で1≦Nj≦Ni)として設定する(ステップS130)。そして、原子炉内でのミュー粒子の散乱(移動方向の変化)を考慮せずに、通過パーツjにおける対象ミュー粒子が通過する通過経路の長さである通過長L[j,φ,θe,α]を設定すると共に(ステップS140)、通過パーツjについて通過長L[j,φ,θe,α]と仮定物質Mas[j]の密度ρ[j]との積としての密度長DL[j,φ,θe,α]を計算する(ステップS150)。図5は、原子炉内を対象ミュー粒子が仰角θeで通過するときの様子の一例を示す説明図である。図5の例では、簡単のために、対象ミュー粒子の垂直方向の軌跡だけを図示し、水平方向の軌跡については図示を省略した。また、図5中、通過パーツjについては斜線を付した。通過パーツjにおける通過長L[j,φ,θe,α]は、対象ミュー粒子の水平角φと仰角θeと通過点αとから容易に導くことができる。
次に、通過パーツjについて、対象ミュー粒子の軌跡を予め定められた基準平面(例えば、原子炉の底面に平行な平面など)に投影したときの投影軌跡の基準方向(原子炉に入射する前のミュー粒子、例えば、通過点αにおけるミュー粒子の投影軌跡の方向)に対するズレとしての投影時角度θx[j,φ,θe,α]に対するガウス分布(正規分布)を次式(1)により設定する(ステップS160)。対象ミュー粒子の軌跡と投影軌跡と投影時角度θx[j,φ,θe,α]との関係の一例を図6に示す。また、式(1)中、「f(θx[j,φ,θe,α])」は投影時角度θx[j,φ,θe,α]に対する分布であり、「σ[j,φ,θe,α]」は通過パーツjにおける標準偏差であり、対応する通過パーツjの密度長DL[j,φ,θe,α]を用いて式(2)により得られる。式(2)中、「p」はミュー粒子の運動量(実施例では、対象ミュー粒子のエネルギEμを用いるものとした)であり、「β」は光速に対する対象ミュー粒子の速度(実施例では、値1を用いるものとした)であり、「X[j]」は通過パーツjにおける仮定物質Mas[j]の放射長(例えば、ウランは5mm,セシウムは11mm,ストロンチウムは13mmなど)である。こうして得られる投影時角度θx[j,φ,θe,α]に対するガウス分布の一例を図7に示す。ミュー粒子は、高い透過性を有する一方、中性子などに比して原子量の大きな物質(例えば、ウランやセシウム,ストロンチウム,プルトニウム,鉄など)内で曲がりやすい性質を有することが知られている。荷電粒子は、物質中を通過する際に非常に細かい散乱を数多く経験するが、これらの散乱のほとんどは原子核との間のクーロン散乱によるものであるため、このような効果は多重クーロン散乱と呼ばれる。多重クーロン散乱の分布はモリエールの理論によって精度よく表わすことができ、このモリエールの理論は小さな散乱角度についてはおおよそガウス分布によって説明することができる。式(1)は、対象ミュー粒子が通過パーツjにおける物質を通ったときの多重クーロン散乱によるおおよその散乱角度分布を示し、式(2)は、その散乱角度分布の標準偏差を示す。なお、対象ミュー粒子が物質内で散乱する場合、通過パーツjにおける対象ミュー粒子の通過経路の長さは、ステップS140で計算した通過長DL[j,φ,θe,α]に比して長くなったり短くなったりする。しかし、通常、ミュー粒子の透過力は通過パーツjの大きさに比して非常に大きいため、対象ミュー粒子が物質内で散乱したとしても、その散乱角は極めて小さい。したがって、実施例では、式(2)において、対象ミュー粒子の散乱の有無による変化を無視してステップS140で計算した通過長DL[j,φ,θe,α]をそのまま用いるものとした。
こうして通過パーツjにおけるガウス分布を設定すると、通過パーツjにおけるガウス分布の標準偏差σ[j,φ,θe,α]を対象ミュー粒子の散乱角θsc[j,φ,θe,α]として設定し(ステップS170)、設定した通過パーツjにおける対象ミュー粒子の散乱角θsc[j,φ,θe,α]を用いて、通過パーツjにおける物質が仮定物質Mas[j]であると判断するためのミュー粒子の数である条件成立ミュー粒子数N[j,φ,θe,α]を設定する(ステップS180)。条件成立ミュー粒子数N[j,φ,θe,α]は、実施例では、通過パーツjについて、散乱角θsc[j,φ,θe,α]と通過パーツj内の仮定物質Mas[j]に応じた閾値θref[j,φ,θe,α]との比較により設定するものとした。この条件成立ミュー粒子数N[j,φ,θe,α]は、例えば、通過パーツjについて、通過パーツj内の仮定物質Mas[j」がミュー粒子が散乱しやすい物質(例えば、ウラン)の場合には散乱角θsc[j,φ,θe,α]が閾値θref[j,φ,θe,α]以上のときに条件成立ミュー粒子数N[j,φ,θe,α]に値1を加えて更新すると共に散乱角θsc[j,φ,θe,α]が閾値θref[j,φ,θe,α]未満のときに条件成立ミュー粒子数N[j,φ,θe,α]を保持し、通過パーツj内の仮定物質Mas[j]がミュー粒子が散乱しにくい物質(例えば、セシウムやストロンチウム)の場合には散乱角θsc[j,φ,θe,α]が閾値θref[j,φ,θe,α]以下のときに条件成立ミュー粒子数N[j,φ,θe,α]に値1を加えて更新すると共に散乱角θsc[j,φ,θe,α]が閾値θref[j,φ,θe,α]より大きいときに条件成立ミュー粒子数N[j,φ,θe,α]を保持する、ことにより設定することができる。なお、閾値θref[j,φ,θe,α]は、ユーザによるキーボード42やマウス44の操作によって設定されたものを入力して用いたり、仮定物質Mas[j]に応じて予め設定された固定値(ハードディスクドライブなどに記憶されたデータなど)を用いたりすることができる。
そして、処理用ミュー粒子数NCをインクリメントして更新し(ステップS190)、更新した処理用ミュー粒子数NCが目標ミュー粒子数NFに至ったか否かを判定し(ステップS200)、処理用ミュー粒子数NCが目標ミュー粒子数NFに至っていないと判定されたときにはステップS120に戻る。こうしてステップS120〜S200の処理を繰り返し実行し、ステップS200で処理用ミュー粒子数NCが目標ミュー粒子数NFに至ったと判定されたときに、計算結果をディスプレイ40に出力したりハードディスクドライブに記憶したりして(ステップS210)、本ルーチンを終了する。計算結果の出力では、例えば、パーツiにおける条件成立ミュー粒子数N[j,φ,θe,α]や、パーツiにおけるミュー粒子の通過数(通過パーツjとして設定された数)に対する条件成立ミュー粒子数N[j,φ,θe,α]の割合などを出力することができる。
図8は、原子炉モデルの一例を示す説明図であり、図9は、図8の原子炉モデルの内部の状態の解析に内部状態解析プログラム30を用いたときの実行結果の一例を示す説明図である。図8(a)は燃焼前(反応前)の原子炉モデル内即ち燃料体(図ではウラン100%)の様子を示したものであり、図8(b)は燃焼後(反応後)の原子炉モデル内の様子を示したものである。なお、図8中、ウラン濃度の低下分は、セシウムやストロンチウムに変化したものとした。図9は、図8(b)の時点における原子炉モデル内について、目標ミュー粒子数NFを100万個として内部状態解析プログラム30を実行したときの実行結果を、図8(b)の燃料体をA−A面からみたAA視図に相当する形態で示したものである。ミュー粒子は天頂角θ*が0°の場合において1秒間に1m2,1srあたり70個の割合で発生することが解っているため、図9の実行結果は、現実のミュー粒子を検出する検出器の検出領域を4m2としてその検出領域を3ヶ月の間に通過する現実のミュー粒子を用いてプログラムを実行したときの実行結果に相当する。図8(b)と図9とを比較すると、原子炉モデル内の状態を比較的精度よく解析できていることが解る。
次に、各物質(例として、炭素や鉄,鉛)によるミュー粒子の散乱への影響や、原子炉モデルの内部の状態の解析について具体例を用いてより詳細に説明する。以下、まず、各物質によるミュー粒子の散乱への影響について説明し、その後に、原子炉モデルの内部の状態の解析について説明する。
まず、各物質によるミュー粒子の散乱への影響について説明する。多重クーロン散乱における散乱角は物質の放射長に依存するため、比較する物質間で密度長を略等しくすることによって各物質によるミュー粒子の散乱への影響を見ることができる。実施例では、炭素と鉄との比較においては、炭素の密度長を53.4g/cm2とすると共に鉄の密度長を56.7g/cm2とし、鉄と鉛との比較においては、鉄の密度長を85.0g/cm2とすると共に鉛の密度長を84.3g/cm2として、図10および図11に例示する観測装置50を用いてミュー粒子の散乱具合を測定するものとした。観測装置50は、図10および図11に示すように、ミュー粒子の入射方向(図中X軸方向)に52.5cmおよび79.5cmの間隔で平行配置された3本のシンチレータ52,54,56と、シンチレータ52,54,56からの信号に対してノイズを除去するディスクリミネータ58と、ディスクリミネータ58によってノイズが除去された信号についてシンチレータ52,54のコインシデンス(以下、2本コインシデンスという)およびシンチレータ52,54,56のコインシデンス(以下、3本コインシデンスという)を検出するコインシデンス検出器60と、コインシデンス検出器60によって検出された2本コインシデンス数と3本コインシデンス数とをカウントする信号カウンタ62と、を備え、シンチレータ54,56の間に対象物質を配置するものとした。ここで、シンチレータ52,54,56は、X軸方向(実施例では鉛直方向とした)の長さが7cm,Y軸方向(X軸に直交する方向)の長さが2cm,Z軸方向(X軸およびY軸に直交する方向)の長さが100cmの同一のシンチレータを用いるものとした。また、シンチレータ52,54,56には、光電子増倍管が取り付けられており、ミュー粒子がシンチレータ52,54,56に入射されると、シンチレータ52,54,56内でフォトンが発生し、光電子増倍管で電子に変換されると共に増幅され、電流が流れるようになっている。この観測装置50では、信号カウンタ62によってカウントした2本コインシデンス数と3本コインシデンス数とを比較することにより、シンチレータ52,54を通過したミュー粒子のうちいくつのミュー粒子がシンチレータ56を通過したかを測定することができる。具体的には、2本コインシデンス数で3本コインシデンス数を除して求めた2本コインシデンス数に対する3本コインシデンス数の割合(以下、コインシデンス数割合という)が低いほどミュー粒子が散乱せずに進んだと言える。そして、このコインシデンス数割合を物質間で比較することにより、ミュー粒子がどの程度散乱せずに進むことができたかを物質間で比較することができる。なお、2本コインシデンス数をカウントするのは、Y軸方向に略垂直な軌道をもつミュー粒子を選別するためや、ミュー粒子の飛来数が時間によって変化する影響を除去するためである。
実施例では、この観測装置50を用いて測定を行なう前に、モンテカルロシミュレーション用のプログラムとしてのGeant4(Geometry and Tracking 4)によって観測装置50と同様のものを設計してシミュレーションを行なった。このシミュレーションでは、エネルギのカットオフを4GeVとし、ミュー粒子を天頂角が0°から59°までの分布に従ってシンチレータ52に入射させた。なお、天頂角を0°から59°までしか考慮しなかったのは、これ以上の天頂角のミュー粒子は、シンチレーター52の通過後にシンチレータ54には入らず、2本コインシデンスにはならないためである。また、ミュー粒子の方位角と入射位置は乱数を用いて決定した。炭素と鉄との差を見るシミュレーションでは400万発、鉄と鉛との差を見るシミュレーションでは250万発のミュー粒子を打ち込んだ。このシミュレーションの結果を図12に示す。図12から、コインシデンス数割合は、炭素と鉄とのシミュレーションでは約0.4%、鉄と鉛とのシミュレーションでは約0.6%の差が表れることが分かる。
続いて、観測装置50を用いて測定を行なった。実施例では、この測定を建物内で行ない、建物の天井で多重発生した電子や陽電子の軟成分を取り除くために、シンチレータ52とシンチレータ54との間に電子の放射長の2倍の厚さの鉄板を挿入した。測定は、まず、炭素と鉄について交互に2時間ずつ40時間かけて行ない、その後に、鉄と鉛について交互に2時間ずつ40時間かけて行なった。図13は炭素と鉄について交互に2時間ずつ行なったときの各時間におけるコインシデンス数割合であり、図14は鉄と鉛について交互に2時間ずつ行なったときの各時間におけるコインシデンス数割合であり、図15は図13および図14をまとめた結果である。図13中、丸印は炭素のコインシデンス数割合であり、四角印は鉄のコインシデンス数割合である。また、図14中、丸印は鉄のコインシデンス数割合であり、四角印は鉛のコインシデンス数割合である。図15を図12と比較して、コインシデンス数割合の絶対値がシミュレーションの結果と異なるのは、シンチレータ52,54,56の検出効率の影響によると考えられる。図13および図14をまとめた図15より、炭素と鉄のコインシデンス数割合の差は約0.45%、鉄と鉛のコインシデンス数割合の差は約0.61%となっていることが解る。この結果は、シミュレーションで行った結果の差に近いものとなった。即ち、各物質によるミュー粒子の散乱具合について、シミュレーション結果と測定結果とで比較的整合性が取れていると言える。
次に、原子炉モデルの内部の状態の解析について説明する。実施例では、原子炉モデルを設定し、そのモデルを通過したミュー粒子のうち散乱角が小さかった粒子数を数えることによって原子炉モデルの内部構造を決定(推定)するものとした。簡単のため、燃焼したウランからはセシウムとストロンチウムのみが生成されることとした。まず、ウラン濃度とミュー粒子の通過距離による散乱角の変化とをGeant4によって調べ、その後、設定したモデルを縦横それぞれ20分割し、通過距離とウランの平均濃度とを計算し、Geant4の結果と対応させて、原子炉モデルのウラン平均濃度分布をミュー粒子のデータから求めるものとした。
まず、Geant4において、ウラン濃度を0%,50%,100%と変化させて仰角が10°のミュー粒子を1万発入射し、それぞれの濃度でミュー粒子が1m,2m,3mと通過したときに散乱角が0.004rad以下である粒子数を数えた。この結果を図16に示す。図16から、ウラン濃度が高いほど、また通過距離が長いほど小さな散乱角を持つ粒子数が少なくなっていることが解る。
続いて、原子炉モデルの内部の状態の解析のために、図17および図18に示すように、原子炉の燃料体をモデル化した。具体的には、図17に示すように、原子炉を半径1.5mで高さ5mの円筒形とし、図18に示すように、燃焼前はウランが100%で燃焼後は外周側から中心側に向けてウラン濃度が低くなるものとした。また、図17に示すように、ミュー粒子の検出装置を原子炉の端部から2mの位置に配置すると仮定した。そして、設定した原子炉の燃料体のモデルを半径、高さ方向にそれぞれ20分割し、それぞれのセルに対してミュー粒子の進行方向における長さとウランの平均濃度を計算し、そのビンに一万発のミュー粒子が通過した場合に散乱角が0.004rad以下の粒子数がいくつになるかを図16に照らし合わせて求めた。ここで、表の各値間についてはスプライン補間を行なって求めた。そして、求めた粒子数(散乱角が0.004rad以下の粒子数)をビン毎にプロットして画像化した。燃焼前の原子炉モデルについて求めた結果を図19に示し、燃焼後の原子炉モデルについて求めた結果を図20に示し、燃焼の前後で低散乱角の粒子数がどの程度変化したかについて燃焼前の粒子数に対する燃焼後の粒子数の割合で視覚化したものを図21に示す。なお、ここでは、仰角を10°としているため、4m以上の高さについては求めていない。図19に示すように、燃焼前の原子炉モデルは全てウランであるため、鉛直方向に対して変化が見られない。また、図20に示すように、燃焼後については、原子炉モデルで仮定した通りにウラン濃度の高い部分と低い部分とが色の差で表われている。さらに、図21に示すように、燃焼後のほうがウラン濃度は少ないため、燃焼が進んだ部分の方が燃焼が進んでいない部分に比して低散乱角の粒子数の割合は大きくなっている。即ち、原子炉が中央から燃焼している様子が解る。これらの結果、原子炉モデルの内部の状態を比較的精度よく解析できていることが解る。
次に、現実の原子炉の内部の状態の解析に内部状態解析プログラム30を用いる場合について説明する。なお、実施例では、現実のミュー粒子を検出するための検出器が現実原子炉の一部または全体を覆うように設定されているものとした。まず、内部状態解析プログラム30とは異なる図示しないプログラムにより、目標ミュー粒子数NFの現実のミュー粒子について、現実の原子炉に入射する前の入射状態(エネルギEμ1,天頂角θ1*,水平角φ1,通過点α1)と現実の原子炉を通過した後の放出状態(エネルギEμ2,天頂角θ2*,水平角φ,通過点α2)とを検出し、検出した入射状態と放出状態とから目標ミュー粒子数NFのミュー粒子の各々についての現実原子炉内での通過経路や散乱角θscを推定する(以下、この散乱角θsc[j,φ,θe,α]を現実推定散乱角θscest[j,φ,θe,α]という)。なお、ミュー粒子の入射状態や放出状態の検出方法については、文献Aなどに記載されている。
引用文献A:Hiroyuki K.M. Tanaka, Tomohisa Uchida, Manobu Tanaka, Hiroshi Shinohara Cosmic-ray muon imaging of magma in a conduit: Degassing process of Satsuma-Iwojima Volcano, Japan Geophys. Res. Lett. 36 L01304 2009
そして、内部状態解析プログラム30では、検出した入射状態(エネルギEμ1,天頂角θ1*,水平角φ1,通過点α1)を対象ミュー粒子のエネルギEμ,天頂角θ*,水平角φ,通過点αとして入力する処理を図3のフローチャートのステップS120の処理に代えて行なう点と(ステップS120b)、現実推定散乱角θscest[j,φ,θe,α]と後述の解析散乱角θscana[j,φ,θe,α]との乖離が小さくなるよう仮定物質に関するパラメータ(仮定物質Mas[i]や仮定物質Mas[i]の密度ρ[i]、以下、仮定物質パラメータという)を調整する処理を図3のフローチャートの各処理の他に行なう点と、を除いて図3のフローチャートと同様の処理を実行する。具体的には、仮定物質パラメータなどを入力し(ステップS100)、目標ミュー粒子数NFの現実のミュー粒子の各々について、検出した入射状態を対象ミュー粒子のエネルギEμ,天頂角θ*,水平角φ,通過点αとして入力する処理(ステップS120b)と内部状態解析処理によって散乱角θsc[j,φ,θe,α]を設定する処理(ステップS120〜S180、以下、この散乱角θscを解析散乱角θscana[j,φ,θe,α]という)とを行ない、目標ミュー粒子数NFの現実のミュー粒子の各々についての現実推定散乱角θscest[j,φ,θe,α]と解析散乱角θscana[j,φ,θe,α]とを比較することによって仮定物質と現実原子炉内の物質とが整合しているか否かを判定する。そして、目標ミュー粒子数NFの現実のミュー粒子の各々についての現実推定散乱角θscest[j,φ,θe,α]と解析散乱角θscana[j,φ,θe,α]との乖離が予め設定された所定範囲内にないときには仮定物質と現実原子炉内の物質とが整合していないと判断して仮定物質パラメータを変更して内部状態解析処理によって解析散乱角θscana[j,φ,θe,α]を再設定して現実推定散乱角θscest[j,φ,θe,α]と解析散乱角θscana[j,φ,θe,α]とを再比較し、現実推定散乱角θscest[j,φ,θe,α]と解析散乱角θscana[j,φ,θe,α]との乖離が所定範囲内にあるときには仮定物質と現実原子炉内の物質とが整合していると判断して現在の仮定物質パラメータに対応する仮定物質Mas[i]を現実原子炉内の物質であると推定し、内部状態解析プログラムを終了する。このように、現実推定散乱角θscest[j,φ,θe,α]と解析散乱角θscana[j,φ,θe,α]との乖離が十分に小さくなるように仮定物質Mas[i]を変更しながら内部状態解析処理を行なうことにより、現実原子炉の内部の状態をより適正に解析することができる。
以上説明した実施例の内部状態解析装置20によれば、ミュー粒子の軌跡に基づいてミュー粒子の散乱角のガウス分布を設定すると共に設定したガウス分布を用いてミュー粒子の散乱角を設定し、設定した散乱角を用いて原子炉内の状態を解析するから、ミュー粒子の性質(特に、原子量の大きな物質内で曲がりやすい性質)を用いて原子炉内の状態(燃焼の程度など)をより適正に解析することができる。しかも、構造物の内部の一部に相当し且つ水平角φ,仰角θe,通過点αのミュー粒子が通過する通過パーツjについて、通過長L[j,φ,θe,α]と仮定物質Mas[j]の密度ρ[j]との積としての密度長DL[j,φ,θe,α]を用いてガウス分布を設定すると共に設定したガウス分布を用いて通過パーツjにおけるミュー粒子の散乱角θsc[j,φ,θe,α]を設定し、設定した散乱角θsc[j,φ,θe,α]を用いて通過パーツjの状態を解析するから、原子炉内の状態をより適正に解析することができる。そして、これらのように解析した結果を用いて原子炉を製造すれば、原子炉内の燃料の配置や密度などをより適正なものとすることができ、操業効率のよい原子炉を設計、建築することができる。この結果、単位生成エネルギあたりの二酸化炭素の排出量の低減などを図ることができる。
実施例の内部状態解析装置20では、図4に例示したミュー粒子のエネルギEμおよび天頂角θ*の分布に基づいて対象ミュー粒子のエネルギEμおよび天頂角θ*を設定するものとしたが、これ以外の方法、例えば、次式(3)により表わされるミュー粒子のエネルギEμおよび天頂角θ*と発生確率Pμ(Eμ,θ*)との関係に基づいて対象ミュー粒子のエネルギEμおよび天頂角θ*を設定するものとしてもよい。ここで、式(3)中、「Wμ」は式(4)により表わされる崩壊長Ldecayを飛行したミュー粒子の崩壊による残存確率で式(5)により表わされ、「ΔEμ」はミュー粒子のエネルギ損失(例えば、2.6GeV)であり、「γ」はLorentzのガンマファクターと呼ばれるもので式(6)により表わされる。また、式(5)中、「R」は地球の半径(6400km)であり、「r」は大気の厚さ(13km)であり、「L0」は地表に対して垂直方向の大気圧(1.013kg/cm2)である。さらに、式(6)中、「mμ」はミュー粒子の質量(106MeV)である。
実施例の内部状態解析装置20では、通過パーツj(jは1〜Nj)の各々の密度長DL[j,φ,θe,α]を用いて、通過パーツjの各々について、投影時角度θx[j,φ,θe,α]に対するガウス分布の標準偏差σ[j,φ,θe,α],散乱角θsc[j,φ,θe,α],条件成立ミュー粒子数N[j,φ,θe,α]を設定するものとしたが、通過パーツjの各々の密度長DL[j,φ,θe,α]の積算値としての総密度長DLsum[φ,θe,α]を用いて、通過パーツjの全体としての投影時角度θx[φ,θe,α]に対するガウス分布の標準偏差σ[φ,θe,α],散乱角θsc[φ,θe,α],条件成立ミュー粒子数N[φ,θe,α]を設定するものとしてもよい。この場合、投影時角度θx[φ,θe,α]に対するガウス分布は次式(7)により設定することができ、ガウス分布の標準偏差σ[φ,θe,α]は式(8)により設定することができる。
実施例の内部状態解析装置20では、通過パーツjにおけるガウス分布の標準偏差σ[j,φ,θe,α]を対象ミュー粒子の散乱角θsc[j,φ,θe,α]として設定するものとしたが、これに限られず、通過パーツjにおけるガウス分布を用いて対象ミュー粒子の散乱角θsc[j,φ,θe,α]を設定するものであればよい。
実施例の内部状態解析装置20では、ガウス分布を用いて通過パーツjにおける対象ミュー粒子の散乱角θsc[j,φ,θe,α]を設定するものとしたが、ガウス分布に限られず、ミュー粒子など高い透過性を有する粒子の散乱角の分布を用いて通過パーツjにおける対象ミュー粒子の散乱角θsc[j,φ,θe,α]を設定するものであればよい。
実施例の内部状態解析装置20では、ミュー粒子の性質を用いて原子炉内の状態を解析するものとしたが、ミュー粒子に限られず、所定の高透過性(例えば、1メートルの鉄を透過する透過性)を有する粒子の性質を用いて原子炉内の状態を解析するものであればよい。
実施例の内部状態解析装置20では、構造物としての原子炉の内部の状態を解析するものとしたが、原子炉に限られず、高炉や、鉄筋・鉄骨コンクリートの柱や梁などの内部の状態を解析するものとしてもよい。
実施例では、コンピュータ22に内部状態解析プログラム30がインストールされた内部状態解析装置20として説明したが、内部状態解析プログラム30の形態としてもよいし、所定の高透過性の粒子である高透過性粒子の性質を用いて構造物の内部の状態を解析する内部状態解析方法の形態としてもよい。
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
本発明は、内部状態解析装置を利用する製造産業などに利用可能である。
20 内部状態解析装置、22 コンピュータ、30 内部状態解析プログラム、32 データ入力モジュール、34 計算モジュール、36 結果出力モジュール、40 ディスプレイ、42 キーボード、44 マウス。

Claims (12)

  1. 所定の高透過性を有する粒子である高透過性粒子の性質を用いて構造物の内部の状態を解析する内部状態解析方法であって、
    前記構造物の内部を通過する前記高透過性粒子の軌跡に基づいて定められる前記高透過性粒子の散乱角の分布を用いて該高透過性粒子の散乱角を設定すると共に該設定した散乱角を用いて前記構造物の内部の状態を解析するステップを含み、
    前記ステップは、前記高透過性粒子が通過する通過経路の長さと該通過経路における物質の密度とを用いて前記散乱角の分布を定める、
    ことを特徴とする内部状態解析方法。
  2. 請求項1記載の内部状態解析方法であって、
    前記散乱角の分布は、ガウス分布である、
    ことを特徴とする内部状態解析方法。
  3. 請求項1または2記載の内部状態解析方法であって、
    前記ステップは、前記構造物の内部の一部に相当し前記高透過性粒子が通過する通過パーツにおける前記通過経路の長さと前記通過パーツにおける物質の密度との積としての密度長を用いて前記通過パーツにおける前記散乱角の分布を定める、
    ことを特徴とする内部状態解析方法。
  4. 請求項記載の内部状態解析方法であって、
    前記通過パーツにおける前記散乱角の分布は、前記通過パーツをj、前記通過パーツjにおける前記高透過性粒子の軌跡を基準平面に投影したときの該高透過性粒子の基準方向に対するズレとしての投影時角度をθx[j]、前記通過パーツjにおける標準偏差をσ[j]、前記通過パーツjにおける前記散乱角の分布をf(θx[j])としたときに次式(A)により表わされるガウス分布であり、前記式(A)中、前記通過パーツjにおける前記標準偏差σ[j]は、前記高透過性粒子の運動量をp、光速に対する前記高透過性粒子の速度をβ、前記通過パーツjにおける前記密度長をDL[j]、前記通過パーツjにおける物質の放射長をX[j]としたときに式(B)により表わされる、
    ことを特徴とする内部状態解析方法。
  5. 請求項2または4記載の内部状態解析方法であって、
    前記ステップは、前記ガウス分布の標準偏差を前記高透過性粒子の散乱角として設定する、
    ことを特徴とする内部状態解析方法。
  6. 所定の高透過性を有する粒子である高透過性粒子の性質を用いて構造物の内部の状態を解析する内部状態解析方法であって、
    前記構造物の内部を通過する前記高透過性粒子の軌跡に基づいて定められる前記高透過性粒子の散乱角の分布を用いて該高透過性粒子の散乱角を設定すると共に該設定した散乱角を用いて前記構造物の内部の状態を解析するステップを含み、
    前記ステップは、前記高透過性粒子の前記構造物に入射する前の入射状態と前記高透過性粒子の前記構造物を通過した後の放出状態とから推定される前記高透過性粒子の散乱角である推定散乱角と、前記構造物の内部の物質として仮定した仮定物質と前記高透過性粒子の前記入射状態とから得られる前記高透過性粒子の散乱角の分布を用いて設定される前記高透過性粒子の散乱角である分布散乱角と、の比較を前記推定散乱角と前記分布散乱角との乖離が予め設定された所定範囲内になるまで前記仮定物質を変更しながら行ない、前記推定散乱角と前記分布散乱角との乖離が前記所定範囲内になるときの前記仮定物質を前記構造物の内部の物質であると推定する、
    ことを特徴とする内部状態解析方法。
  7. 請求項1ないし6のいずれか1つの請求項に記載の内部状態解析方法であって、
    前記所定の高透過性は、1メートルの鉄を透過する透過性である、
    ことを特徴とする内部状態解析方法。
  8. 請求項1ないし7のいずれか1つの請求項に記載の内部状態解析方法であって、
    前記高透過性粒子は、ミュー粒子である、
    内部状態解析方法。
  9. 請求項1ないし8のいずれか1つの請求項に記載の内部状態解析方法であって、
    前記ステップは、ウラン,セシウム,ストロンチウムのいずれかの放射長と前記高透過性粒子の軌跡とに基づいて定められる前記高透過性粒子の散乱角の分布を用いて前記構造物としての原子炉の内部の状態を解析する、
    内部状態解析方法。
  10. 請求項1ないし9のいずれか1つの請求項に記載の内部状態解析方法のステップを1以上のコンピュータに実現させるためのプログラム。
  11. 所定の高透過性を有する粒子である高透過性粒子の性質を用いて構造物の内部の状態を解析する内部状態解析装置であって、
    前記構造物の内部を通過する前記高透過性粒子の軌跡に基づいて定められる前記高透過性粒子の散乱角の分布を用いて該高透過性粒子の散乱角を設定すると共に該設定した散乱角を用いて前記構造物の内部の状態を解析する内部状態解析手段、
    を備え
    前記内部状態解析手段は、前記高透過性粒子が通過する通過経路の長さと該通過経路における物質の密度とを用いて前記散乱角の分布を定める、
    内部状態解析装置。
  12. 所定の高透過性を有する粒子である高透過性粒子の性質を用いて構造物の内部の状態を解析する内部状態解析装置であって、
    前記構造物の内部を通過する前記高透過性粒子の軌跡に基づいて定められる前記高透過性粒子の散乱角の分布を用いて該高透過性粒子の散乱角を設定すると共に該設定した散乱角を用いて前記構造物の内部の状態を解析する内部状態解析手段、
    を備え
    前記内部状態解析手段は、前記高透過性粒子の前記構造物に入射する前の入射状態と前記高透過性粒子の前記構造物を通過した後の放出状態とから推定される前記高透過性粒子の散乱角である推定散乱角と、前記構造物の内部の物質として仮定した仮定物質と前記高透過性粒子の前記入射状態とから得られる前記高透過性粒子の散乱角の分布を用いて設定される前記高透過性粒子の散乱角である分布散乱角と、の比較を前記推定散乱角と前記分布散乱角との乖離が予め設定された所定範囲内になるまで前記仮定物質を変更しながら行ない、前記推定散乱角と前記分布散乱角との乖離が前記所定範囲内になるときの前記仮定物質を前記構造物の内部の物質であると推定する、
    内部状態解析装置。
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