JP5678180B2 - 高度精製に適した、エイコサペンタエン酸を含む組成物 - Google Patents

高度精製に適した、エイコサペンタエン酸を含む組成物 Download PDF

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Description

本発明の分野は、医薬および工業用途のための濃縮および精製に適した、エイコサペンタエン酸を含有する組成物、ならびにそのような組成物を製造するための方法および工程に関する。
極長鎖オメガ−3脂肪酸(VLC n−3 FA)を含有する医薬品は、何十万もの人々を治療するために現在使用されており、心臓血管疾患に罹患している、またはそれを発症するリスクがある何百万もの患者を治療するためにまもなく使用されることになろう。さらに、他の症状を治療するための医薬品の中にこれらの物質を使用することが検討されている。
VLC n−3 FAは、化学的にデノボ合成することは経済的に不可能であり、そのため、生物学的供給源から抽出しなければならない。そのような供給源では、VLC n−3 FAの大部分は、膜または脂肪体などの細胞構造の中に存在し、したがって、医薬製品の中では所望されない可能性のある他の分子と結合している。これらの場合には、VLC n−3 FAを抽出し、使用前にある程度精製する必要がある。
医薬品製造業者は、現在、原体製造用のVLF n−3 FAの供給源として魚に依存している。しかしながら、このような目的のために魚油にもっぱら依存することは、医薬品製造業者および製薬会社ならびに可能性としてこのような医薬を投与される患者にいくつかの重大なリスクを負わせる。そのようなリスクには、これに限定されないが、潜在的な供給不足に関連したものが含まれ、供給不足によって、製薬会社が財政的に打撃を受けるとともに、健康のために医薬に頼る患者に悪影響が及ぶ可能性がある。
エイコサペンタエン酸(EPA)は、原体中の活性代謝物として使用されるVLC n−3 FAである。治療が患者に十分受容されることを可能にし、かつ薬物が所望の効果を発揮するのに必要なバイオアベイラビリティレベルを達成するために、高純度形態のEPAが送達されることが望ましい。
魚油からの医薬品または他の治療薬の製造は複雑であり、魚の捕獲および/または養殖ならびに魚油の製造方法における固有の変動により、最終生成物の組成が変化する可能性がある。さらに、野生魚資源および水産養殖の長期持続性に関して懸念が広がっている。
したがって、医薬品または他の治療薬の製造において、その使用のために望ましいEPA純度がその後に得られ得る、魚油の代わりのEPA供給源に対する緊急の必要性が存在する。
高純度EPAを製造するための現行の工業的方法では、多くの場合、濃縮工程(ここでは、短鎖脂肪酸および飽和脂肪酸が混合物から除去される)、次いで精製工程(ここでは、EPAに生理化学的かつ構造的に類似した化合物が除去される)が実施される。
前者の工程では、多くの場合、アラキドン酸(ARA)および20以上の炭素を含みかつ少なくとも1つの二重結合を含有する他の脂肪酸(共濃縮脂肪酸co-concentrating fatty acids)からEPAを分離することができないため、これらの脂肪酸含量が最小限である、魚油以外のEPA供給源の開発が大変望まれている。
精製工程では、EPAに生理化学的かつ構造的に類似した分子を分離することの困難さが経験されている。EPAと最も類似した天然分子種で最もよく見られるのは、別の脂肪酸のARAである。したがって、そのような分子を実質的に含まない、魚油以外のEPA供給源の開発が大変望まれている。
さらに、主流の人口母集団の食事の中に評価可能な濃度では見出されないか、またはまったく見出されない脂肪酸は、それらを医薬用途に適さないものにする生物活性が十分に特徴づけられていない可能性があるので、理想的には、このような供給源には含まれるべきではない。このことは、前記脂肪酸がEPAに構造的または生理化学的に十分類似して、EPAから精製するのが困難となる場合に、特に当てはまる。
EPAは、オメガ−3およびオメガ−6脂肪酸を生成する2重並行生合成経路の一部として合成される(例えば、非特許文献1、Damude and Kinney(Lipids 42:179-185,2007)を参照のこと)。酵素の多くは、経路間で共有され、オメガ−3またはオメガ−6形態の脂肪酸のいずれかに作用することになり、そのため、オメガ−6経路の生成物は、オメガ−3経路の生成物と並んで通常見出される。特に、ARAがEPAと一緒に見出されることがよく見られる。合成経路の各段階は、別々の酵素により触媒され、経路中間体が蓄積することは珍しくなく、これらの中間体には、二重結合数は少ないが、炭素分子は同数の脂肪酸が含まれることになる。ARAおよびEPAはまた、さらなる伸長および不飽和化によりドコサペンタエン酸(DPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)などの脂肪酸になる基質となり得る。したがって、EPAを含有する生物が、一般に、顕著な量のARAおよび共濃縮脂肪酸をさらに含有することは驚くことではない。
Damude and Kinney(Lipids 42:179-185,2007)
したがって、治療用途のための高純度精製が可能な形態でかつ豊富な供給量でEPAを提供する必要性が当技術分野には存在する。特に、EPAに生理化学的かつ構造的に類似した他の脂肪酸(例えば、ARA)から分離可能な形態でEPAを提供する必要性がある。
第1の態様では、本発明は、従属栄養(heterotropic)発酵から生成される微生物バイオマスであって、
−エイコサペンタエン酸(EPA)とアラキドン酸(ARA)との比が約11:1以上;および
−EPAと共濃縮総脂肪酸との比が約8:1以上
を示す脂肪酸プロフィールを有するバイオマスを提供する。
好ましくは、ジュニペロン酸(JPA)および/またはシアドン酸が共濃縮脂肪酸の中に存在しない。
好ましくは、微生物バイオマスは、微細藻類バイオマスである。
好ましくは、微細藻類バイオマスは、ニッチア・ラエビス(Nitzschia laevis)バイオマスである。
第2の態様では、本発明は、エイコサペンタエン酸(EPA)とアラキドン酸(ARA)との比が約11:1以上であり、EPAと共濃縮総脂肪酸との比が約8:1以上である脂肪酸プロフィールを示す微生物バイオマスを生成するための方法であって、
(i)微生物を従属栄養的に培養する工程と;
(ii)前記微生物バイオマスを回収する工程と
を含む方法を提供する。
好ましくは、微生物は非制限的な炭素供給下で培地(culture medium)中にて培養される。
好ましくは、微生物は非制限的な窒素および非制限的なリン酸塩(phosphate)供給下で培地中にて培養される。
好ましくは、微生物は微細藻類(microalgal)である。
好ましくは、微生物は珪藻類(diatom)である。
好ましくは、微生物が珪藻類である場合、この微生物は、生物が利用可能なケイ素の非制限的な供給下で培地中にて培養される。
好ましくは、この方法は、前記バイオマスから脂肪酸を抽出して脂肪酸組成物を得る工程をさらに含む。
好ましくは、この方法は、EPAに関し脂肪酸組成物を濃縮するか、または脂肪酸組成物からEPAを精製して、濃縮または精製した脂肪酸組成物を得る工程をさらに含む。
第3の態様では、本発明は、第2の態様の方法によって得られうる(obtainable)か、または得られる微生物バイオマスを提供する。
第4の態様では、本発明は、第2の態様の方法によって得られうるか、または得られた脂肪酸組成物を提供する。
好ましくは、前記脂肪酸組成物中のEPAレベルは、組成物中の総脂肪酸の少なくとも5重量%である。
第5の態様では、本発明は、第2の態様の方法によって得られたか、または得られうる、濃縮または精製脂肪酸組成物を提供する。
好ましくは、前記濃縮または精製脂肪酸組成物中のEPAレベルは、組成物中の脂肪酸の少なくとも30重量%である。
第6の態様では、本発明は、心臓血管障害または肥満関連症状の治療に使用するための、第4の態様の濃縮または精製脂肪酸組成物を提供する。
第7の態様では、本発明は、第4または第5の態様の脂肪酸組成物を含む、ヒトまたは動物消費用の製品を提供する。
第7の態様では、本発明は、高純度EPA組成物の製造における、第1の態様の微生物バイオマスの使用を提供する。
好ましくは、高純度EPA組成物は、総脂肪酸の少なくとも60重量%のEPAを有する。
好ましくは、高純度EPA組成物は、総脂肪酸の少なくとも70重量%のEPAを有する。
好ましくは、高純度EPA組成物は、総脂肪酸の少なくとも80重量%を有する。
好ましくは、高純度EPA組成物は、総脂肪酸の少なくとも90重量%を有する。
好ましくは、高純度EPA組成物は、総脂肪酸の少なくとも95重量%を有する。
好ましくは、高純度EPA組成物は、総脂肪酸の少なくとも97重量%を有する。
第8の態様では、本発明は、少なくとも14:1の比のエイコサペンタエン酸とアラキドン酸とを含み、エイコサペンタエン酸が、珪藻類の乾燥重量の少なくとも1.5%w/wを形成する、従属栄養的に増殖した珪藻類を提供する。
好ましくは、珪藻類はニッチア・ラエビス(Nitzschia laevis)である。
第9の態様では、本発明は、高純度EPA組成物の製造における、第8の態様の珪藻類の使用を提供する。
第10の態様では、本発明は、少なくとも14:1の比のエイコサペンタエン酸とアラキドン酸とを含む、第8の態様の珪藻類に由来する脂質混合物を提供する。
第11の態様では、本発明は、少なくとも14:1の比のエイコサペンタエン酸とアラキドン酸とを含む、第8の態様の珪藻類に由来する脂肪酸混合物を提供する。
好ましくは、EPAは総脂肪酸の少なくとも5%を形成する。
第12の態様では、本発明は、少なくとも14:1の比のエイコサペンタエン酸とアラキドン酸、ならびにエイコサペンタエン酸として、乾燥細胞重量の少なくとも1.5%w/wを含む、珪藻類を生成する方法であって、
a.以下のもの、すなわち、
(i)初期濃度が少なくとも0.5M炭素の有機炭素源
(ii)有機炭素と窒素とのモル比が30:1(モルC:モルN)以下、および
(iii)生物が利用可能なケイ素の非制限的供給源
を含む栄養液を含有する従属栄養培養物(heterotropic culture)中で珪藻類を培養する工程と、
b.従属栄養培養物から珪藻類を回収する工程と
を含む方法。
好ましくは、珪藻類は発酵槽の従属栄養培養物中で培養される。
好ましくは、培養(cultivation)は連続発酵を含む。
好ましくは、珪藻類はニッチア(Nitzschia)種である。
好ましくは、培養は約12℃〜約35℃の温度で実施される。
好ましくは、培養は約7.0〜約8.7のpHで実施される。
好ましくは、前記炭素源はグルコースを含む。
好ましくは、前記炭素源は、グルコース、加水分解デンプン、または加水分解乳漿から選択される。
好ましくは、前記窒素源は、硝酸ナトリウムまたは硝酸カリウムの形態である。
好ましくは、前記窒素源はアミノ酸源で補充される。
好ましくは、前記アミノ酸源は、コーンスティープリカー、酵母抽出物、トリプトン、ペプトン、リジン、およびグルタメート(glutamate)から選択される。
好ましくは、生物が利用可能なケイ素源はケイ酸塩(silicate)の形態である。
好ましくは、ケイ酸塩濃度は150μM未満に低下しない。
好ましくは、前記ケイ酸塩はメタケイ酸ナトリウムまたはカリウムの形態である。
好ましくは、栄養液はリン酸塩形態のリンを含む。
好ましくは、有機炭素とリン酸塩形態のリンとのモル比は、1250:1(モルC:モルP)以下である。
第13の態様では、本発明は、高純度EPA組成物の製造における、第12の態様の方法により生成する珪藻類の使用を提供する。
第14の態様では、本発明は、EPAを含有する脂質物質を生成する方法であって、
a.1:1〜30:1のモル比の利用可能な炭素と窒素、ならびに生物が利用可能なケイ素源を含む栄養液を含有する発酵槽中で珪藻類を培養する工程と、
b.前記栄養液の温度を約12℃〜約35℃に維持し、前記栄養液のpHを約pH7.0〜約pH8.7に維持する工程と、
c.発酵槽から珪藻類を採取する工程と、
d.採取した珪藻類からEPAを含有する脂質物質を回収する工程と
を含む方法を提供する。
好ましくは、利用可能な炭素と窒素のモル比が1〜30である新たな栄養液を培養中に発酵槽に加える。
好ましくは、利用可能な炭素と窒素のモル比が1〜30である新たな栄養液で、採取した容量を置換する(replace)場合に、発酵槽中の珪藻類の平均数が経時的に一定になるような割合で発酵槽から珪藻類を採取する。
好ましくは、生物が利用可能なケイ素源はケイ酸塩の形態である。
好ましくは、ケイ酸塩濃度が150μM未満に低下しないように、ケイ酸塩を発酵槽に加える。
好ましくは、炭素とケイ酸塩源形態のケイ素とのモル比は、100:1〜850:1である。
好ましくは、栄養液はリン酸塩形態のリンを含む。
好ましくは、炭素とリン酸塩形態のリンとのモル比は、100:1〜1250:1である。
第15の態様では、本発明は、少なくとも14:1の比のエイコサペンタエン酸とアラキドン酸とを含有し、エイコサペンタエン酸が乾燥細胞重量の少なくとも1.5%を形成する珪藻類を生成する方法であって、恒久的な表現型変化を誘導するように設計された条件下で従属栄養珪藻類を培養する工程と、エイコサペンタエン酸とアラキドン酸との比が少なくとも14:1である単離物を求めて、得られた珪藻類集団をスクリーニングする工程とを含む方法を提供する。
好ましくは、この条件は突然変異誘発物質を含む。
好ましくは、この条件はEPA生産性の増加に対して選択的な薬剤を含む。
好ましくは、この条件はARA生産性の減少に対して選択的な薬剤を含む。
本発明の実施形態は、実施例のみを介して、添付の図面に関連して以下に説明される。
バイオマス中のEPA:ARA比と、バイオマスが形成される培地中の最小メタケイ酸ナトリウム濃度との間の関係を示す図である。
予想外なことに、本発明者らは、EPAとARAとの比が約11:1以上であると同時にさらに、共濃縮脂肪酸すべてを合わせた量の8倍を超えるEPAを含有する、EPAを含む組成物を従属栄養微生物から得ることが可能であることを発見した。このような微生物は、5mgEPA/L/時を上回る生産速度で培養物中にて生成させることが可能であり、総乾燥細胞重量の1.5%を超えるEPA含量は、この微生物を工業的方法に適するものにする。
さらに想定外に、本発明者らは、EPAとARAとの比が約14:1以上である、EPAを含む組成物を従属栄養珪藻類から得ることが可能であることを発見した。このような微生物は、5mgEPA/L/時を上回る生産速度で培養物中にて生成させることが可能であり、総乾燥細胞重量の1.5%を超えるEPA含量は、この微生物を工業的方法に適するものにする。
本発明の一部は、微生物の従属栄養培養物中に蓄積し得る共濃縮脂肪酸(本明細書に定義した)の量をEPAに対して制御することが、脂肪酸混合物を濃縮する目的にとって望ましいだけでなく、これらの微生物の増殖条件を制御することにより、そうすることも実行可能であるという認識である。
本発明の別の一部は、微生物の従属栄養培養物中に蓄積し得る、EPAに生理化学的かつ構造的に類似した分子の相対量を制御することが、EPA精製の目的にとって望ましいだけでなく、これらの微生物の増殖条件を制御することにより、そうすることも実行可能であるという認識である。
本発明のさらなる一部は、濃縮および精製にとって重要なことは、EPAに生理化学的かつ構造的に類似した分子の絶対レベルではなく相対レベルであること、および、驚くべきことに、バイオマス中のEPAの最大生成量は必ずしも高純度EPAの最大生成量と等しくないという認識である。
したがって、本発明は、以下の脂肪酸プロフィール、すなわち、
−エイコサペンタノン酸(EPA)とアラキドン酸(ARA)との比が約11:1以上、および
−EPAと共濃縮総脂肪酸との比が約8:1以上
のプロフィールを示す、従属栄養発酵から生成される微生物バイオマスを提供する。
本発明は、
−少なくとも14:1の比のエイコサペンタノン酸とアラキドン酸とを含み、エイコサペンタエン酸が、珪藻類の乾燥重量の少なくとも1.5%を形成する、従属栄養的に増殖した珪藻類と、
−少なくとも14:1のエイコサペンタエン酸とアラキドン酸との比、ならびにエイコサペンタエン酸として乾燥細胞重量の少なくとも1.5%を含む珪藻類を生成する方法であって、
a.以下のもの、すなわち、
(i)初期濃度が少なくとも0.5M炭素の有機炭素源、
(ii)有機炭素と窒素とのモル比が30:1(モルC:モルN)以下、
(iii)生物が利用可能な(bioavailable)ケイ素の非制限的供給源
を含むことを特徴とする栄養液を含有する従属栄養培養物中で珪藻類を培養する工程;
b.従属栄養培養物から珪藻類を回収する工程
を含む方法をさらに提供する。
定義および略語
オメガ−3脂肪酸は、分子のn−メチル末端から3番目の炭素原子に最初の二重結合を有する脂肪酸である。オメガ−3は、n−3と短縮されることが多い。
オメガ−6脂肪酸は、分子のn−メチル末端から6番目の炭素原子に最初の二重結合を有する脂肪酸である。オメガ−6は、n−6と短縮されることが多い。
脂肪酸はCX:Yの形で記載され、ここで、数字Xは脂肪酸中の炭素原子の数を記載し、数字Yは脂肪酸中の二重結合の数を記載する。Yがゼロに等しい場合は、脂肪酸は飽和として記載され、Yがゼロを超える場合は、脂肪酸は不飽和として記載される。二重結合の位置およびタイプは、例えば「cis5、11、14」と指定することができ、ここで、数字は、分子のカルボン酸末端から数えた、炭素−炭素二重結合の位置を表わす。
C20:5などの用語は、遊離脂肪酸ならびにエステルの脂肪酸部分のみを参照した場合の炭素原子および二重結合の数を有する脂肪酸のエステル形態の両方を含むと理解される。
EPA、C20:5 n−3、エイコサペンタエン酸は、20の炭素原子および5つの二重結合を有するオメガ−3脂肪酸である。
ARA、C20:4 n−6、アラキドン酸は、20の炭素原子および4つの二重結合を有するオメガ−6脂肪酸である。
共濃縮脂肪酸は、20以上の炭素を含み、かつ少なくとも1つの二重結合を含有する、EPAおよびARA以外の脂肪酸として定義される。これらには、C20:1、C20:2、C20:3、C20:4、C22:5、C22:6、およびC24:1の種々の形態が含まれるが、これらに限定されない。
DHA、C22:6 n−3、ドコサヘキサエン酸は、22の炭素原子および6つの二重結合を有するオメガ−3脂肪酸である。
DPA、C22:5 n−3、ドコサペンタエン酸は、22の炭素原子および5つの二重結合を有するオメガ−3脂肪酸である。
DGLA、C20:3 n−6、ジホモ−ガンマ−リノール酸は、20の炭素原子および3つの二重結合を有するオメガ−6脂肪酸である。
ETAn−3、C20:4n−3、エイコサテトラエン酸は、20の炭素原子および4つの二重結合を有するオメガ−3脂肪酸である。
TFA、総脂肪酸は、組成物または混合物中のすべての脂肪酸の合計を意味する。
DCW、乾燥細胞重量は、一旦すべての水が除去された場合の、バイオマスの重量を意味する。
従属栄養培養は、培養のためのエネルギー供給の少なくとも90%が、通常は、一形態または複数形態の有機炭素(例えば、グルコース、アセテートacetate)である供給栄養素に由来する生物培養を意味する。したがって、エネルギー供給の最大10%は、光エネルギーに由来する。好ましくは、エネルギー供給の5%未満または1%未満が、光エネルギーに由来する。より好ましくは、エネルギー供給全体が、供給栄養素由来である。
光独立栄養培養は、唯一のエネルギー源が光である生物培養を意味する。
混合栄養培養は、エネルギー源が10%以上の光エネルギーと90%未満の供給栄養素由来エネルギーの混合である、生物培養を意味する。
栄養素の制限は、問題とする栄養素の欠如または低レベルにより、その栄養素が高レベルで存在する場合より、生物がゆっくり増殖するようになることを意味する。したがって、非制限的な栄養素供給は、問題とする栄養素以外の因子が生物の増殖に関して制限しており、問題とする栄養素を多量に供給しても、増殖の促進効果が得られないことを意味する。したがって、この栄養素は、バイオマスの中への取り込みによって、枯渇することがないほど十分な量で存在し、その結果、栄養液中のその遊離濃度はゼロにならない。
本発明の組成物
従属栄養培養で生成される場合に、遺伝子改変微生物は、大量のEPAを潜在的に蓄積することができる。Damudeらは、米国特許出願公開第20060115881号明細書において、遺伝子改変酵母株で生成されたEPAを含む組成物を提供している。しかしながら、これらでは、EPAと、EPAに生理化学的かつ構造的に類似した他の分子との比が比較的低く、その結果、濃縮および精製にあまり適さないものになっている。著者は、共濃縮脂肪酸と精製EPAの製造との関係についてまったく教示しておらず、この問題に対処できる方法も示唆していない。
Xueらは、米国特許出願公開第2009/0093543号明細書において、遺伝子改変酵母株で生成されたEPAを含む組成物を提供している。これらの組成物の1つは、すでに市販されており、Futurebiotics Newharvest OMEGA-3として現在販売されている。記載の組成物では、EPAの含量が特に高く(ある場合には、総脂肪酸の50%を上回る)、ARAの含量は低いが、共濃縮するC20脂肪酸の含量が大きく、その結果、本目的にあまり適さないものになっている。さらに、著者は、少なくとも1つの遺伝子改変酵母株の脂肪酸プロフィールにおいてジュニペロン酸(C20:4 cis5,11,14,17)の存在を開示している。この脂肪酸は、EPAに生理化学的かつ構造的に類似しているために、分離するのが特に困難になっているだけでなく、ヒトの食事にも通常は見出されることがなく、そのため、ヒトでの使用に対して、いかなる精製EPAにおいても汚染物質として具体的に問題となっている。著者は、共汚染している脂肪酸の割合の低減と精製EPAの製造との関係について、またはこのような組成物を得られうる方法について教示していない。
米国特許第5683898号明細書および米国特許第5798259号明細書において、Yazawaらは、EPAが総脂肪酸の約1.5%を占める遺伝子組換え大腸菌(E.coli)培養物を提供している。著者は、それらの物質中の他の脂肪酸の有無を明示しておらず、それらの物質からのEPAの精製も論述していない。著者は、共濃縮脂肪酸と精製EPAとの関係についてまったく教示しておらず、この問題に対処できる方法も示唆していない。
Damudeら、Xueら、Yazawaら、および他のいずれの著者も、EPAと、生理化学的または構造的に類似した他の脂肪酸との比が十分高く、同時に濃縮および精製に適したものになっている、遺伝子組換え微生物で生成されたEPAを含む組成物を提供していない。
さらに、Damudeら、Xueら、Yazawaら、および他のいずれの著者も、培養微生物は、本明細書に教示のように、EPAと、生理化学的または構造的に類似した他の分子との比について、所定範囲を含むべきであると教示しておらず、また、そのような分子の除去を達成する方法も具体的には教示していない。
これに限定されないが、非遺伝子改変(非GE)海洋細菌の特定株を含む特定の原核微生物は、EPAをデノボ生成する固有の能力を有し、遺伝子改変に頼ることなく、培養物中に多量のEPAを蓄積することができる。例えば、Yazawaら(J.Biochem.103:5-7 1988)は、非GE SCRC−8132細菌由来のEPAを含む組成物を提供している。著者は、「かなり驚くべきことに、アラキドン酸(C20:4)...などの他の多価不飽和脂肪酸は、[培養細菌では]まったく検出されなかった」こと、および「このユニークな脂肪酸組成物により、この菌株の培養物からEPAを単離することが容易になる」ことを述べているが、他のC20脂肪酸および濃縮におけるそれらの役割に関して論評していない。さらに、著者は、高レベルのEPAおよび低レベルのARAを真核生物の培養物で達成し得る方法を教示していない。Bowmanら(Int J Syst Bacteriol 47:1040-1047,1997)は、総脂肪酸の割合として高レベルのEPAを有する原核微生物を含む組成物を提供している。著者は、EPAおよびARA以外のC20脂肪酸を記録しておらず、ある場合には、ARAを測定していないように見えるため、我々の組成物の開示はない。著者は、このような組成物と濃縮および精製との関係についても、このような組成物が真核生物の培養物で得られうる方法も示唆していない。
これら原核生物源はいずれも収率が低レベルであるため商業化ができていない。例えば、Yazawaらの報告による最大生産速度は、1.1mgEPA/L/時であるが、EPAの形成は乾燥細胞重量の0.5%未満である。非GE原核生物は、EPAの相対的に低い乾燥重量のため、EPAの供給源として真核微生物と競合することができず、そのため、本目的にはあまり適していない。原核生物と真核生物は基本的に異なるので、一方からの教示を他方に直接適用することはできず、そのため、天然の原核生物のEPA含量に関する、Yazawaら、もしくはBowmanらの観察も、または他のいずれの著者の観察も、真核生物のEPA生成をさらに進展させるために使用することができるという期待は根拠のあるものとはなり得ない。
幾人かの著者が、増殖のための主要エネルギー源として光を利用する天然の真核微生物の培養物中に生成された微生物成分としてのEPAを含む組成物を提供している。光が唯一のエネルギー源である場合、これらの培養物は、光合成的または光独立栄養的であると考えられる。有機炭素を光合成培養物に加えて、混合栄養的にすることができる。これらの培養物は、池もしくは開放水路中、または大量の人工光が内部に供給され、かつ/または光が培養物の中に進行することを可能にするために高い表面積対体積比を有する透明材料から構成された光バイオリアクター中で、一般に製造される。低収率、高資本費用、及び/またはこのような製造に付随した技術的困難ならびにこのようにEPAを製造する結果生ずる費用により、これらの培養物は本目的に適さないものとなる。
例えば、VazhappillyおよびChen(JAOCS 75:393-397,1998)は、光独立栄養条件下で増殖した微細藻類のいくつかの種において、EPAを含む組成物を提供しており、これらの中で最良の種のみが、1日当たり約256mg細胞の平均増殖速度を示し、多くの種がはるかに低い速度を示した。著者は、「ARAが健康への有害作用およびEPA回収における問題を引き起こし得るので、EPAまたはDHAと一緒にアラキドン酸(ARA,C20:4n−6)の蓄積が高まることは不利である」と指摘しているが、従属栄養培養物中のARA含量を低減する手段を示唆していない。さらに、著者は、「ポルフィリジウム・クルエンタム(Por[phyridium] cruentum)以外の20の微細藻類すべてにおいて、ARA培養物は比較的少なかった」と述べている。上述の種の多くは、この2つの脂肪酸をほとんど同量有し、2種においてはEPAよりもARAの方が多くさえあったので、これは、ARAの絶対量がEPAとARAとの比よりもむしろ重要であると著者が考えていることを示唆する。いずれの脂肪酸の絶対量よりもむしろ重要なのはEPAとARAとの比であることを我々は教示しているので、この教示は我々の発明からは遠く離れている(阻却事由を有する)。
これらに限定されないが、特定の微細藻類、真菌、および酵母を含む特定の非GE真核微生物は、従属栄養的に増殖させることができ、従属栄養培養で生成される場合に、大量のEPAを蓄積することができる。これらには、光バイオリアクターに比較して、相対的に低い表面積対体積比を有する従来の蒸気滅菌可能な反応器中で屋内にてこれらの微生物を生成することができるという利点がある。
Yongmanitchai and Ward(Process Biochemistry 24:117-125,1989)は、EPAおよびDHAを生成する微生物のリストを提供している。著者は、従属栄養的に増殖させることができる生物か、または光合成的に増殖させなければならない生物かを識別しておらず、そのため、これらの生物がEPAの工業生産に適しているか否かを、この参考文献から予想することはできない。また、開示の脂肪酸組成データが従属栄養的に増殖させた培養物に由来するものか否かを判断することもできない。いずれの場合にも、生物の脂肪酸含量に関して提供されるデータによって、ARAおよび他の共濃縮脂肪酸に対するEPAの含量を、本発明の組成物を記載するように、完全に確認することは不可能である。著者は、高純度EPAの製造については論述しているが、EPAが精製され得る容易さに対して、他の多価不飽和脂肪酸が及ぼす影響については論述していない。この文献では、本明細書に記載の組成についても、そのような組成が濃縮および精製に適していることも、また、そのような組成を成功裡に得られうるという期待があることも示唆されていない。
Barclayは、米国特許第5130242号明細書および米国特許第5908622号明細書において、いくつかの藻類株の単離、従属栄養増殖、および脂肪酸プロフィールについて報告している。EPAの存在およびARAの欠如が同時に起こることが、これらの藻類株のいくつか(標準スクリーニング条件下で増殖する)に関して報告されている一方、もっと多数の株が、EPAと比較して、ARAレベルが低い。これらの大多数は、EPA:DHA比が8未満であり、本目的にはあまり適していない。
BRBG株について、米国特許第5130242号明細書の表3に、AA(ARA)がなく、EPAとDHAとの比が12であること、また表4に、EPAとDHAとの比が10.9であることが報告されている。同じデータが米国特許第5908622号明細書に使用されている。
しかしながら、ジホモ−ガンマ−リノール酸(DGLA)またはエイコサテトラエン酸(ETA)については報告がなく、そのため、著者は、濃縮および精製の目的に対する、20以上の炭素の他の長鎖脂肪酸の相対レベルの重要性について明らかに認識していない。脂肪酸プロフィール中のEPA量が相対的に低い場合、これらまたは他のC20化合物が少量でもあれば、EPAと共濃縮脂肪酸との比に対して顕著な影響を及ぼし得る。これらの株の増殖に関する生産性データは提供されていない。
著者は、1つの群としてオメガ−3脂肪酸の精製を検討しているが、個々の脂肪酸の精製については検討しておらず、そのため、組成と個々の脂肪酸の濃縮および精製の関係について教示していない。
ARAを含むオメガ−6脂肪酸は、食事療法目的には不利であることを明記する一方、著者は、「一部の用途にとっては望ましくないC20:4n−6およびC22:5n−6 HUFAを1%未満(総脂肪酸の%として)有する株もまた単離することができる」と述べており、これにより、この著者は、ARAの相対量よりもむしろ総量が重要であると考えていることが示される。この教示は、いずれの脂肪酸の絶対量よりもむしろ重要なのはEPAとARAとの比であることを教示する本発明からは遠く離れている(阻却事由を有する)。
幾人かの著者は、珪藻類で生成されたEPAを含む組成物を提供している。例えば、Tan and Johns(Journal of Applied Phycology 8:59-64,1996)は、数種の珪藻類の従属栄養増殖について報告しているが、細胞のARA含量またはC20:3以外の他の共濃縮脂肪酸については、記録も言及もしていない。この文献では、本明細書に記載の組成についても、そのような組成が濃縮および精製に適していることも、また、そのような組成を成功裡に得られうるという期待があることも示唆されていない。
Kitanoら(Journal of Applied Phycology 9:559-563,1997)は、珪藻類のナビキュラ・サプロフィラ(Navicula saprophila)の従属栄養増殖について報告しているが、得られたEPAとC20:4との比は10未満である。20以上の炭素他の長鎖脂肪酸の含量については、開示も、精製に関するいかなる検討もなされていない。この文献では、我々の組成についても、そのような組成が濃縮および精製に適していることも、また、そのような組成を成功裡に得られうるという期待があることも示唆されていない。
米国特許第5244921号明細書および同第5567732号明細書において、KyleおよびGladueは、従属栄養培養で珪藻類のニッチア・アルバ(Nitzschia alba)からエイコサペンタエン酸を生成する方法を開示している。この方法により生成された細胞では、EPAとC20:4との比はわずか4:1である。EPAと他の共濃縮脂肪酸との比も、精製に対するその影響の可能性も検討されていない。この文献では、我々の組成についても、そのような組成が濃縮および精製に適していることも、また、そのような組成を成功裡に得られうるという期待があることも示唆されていない。
Chuら(Journal of Applied Phycology 8:389-396,1996)は、アセテートおよびグルコース上での珪藻類のニッチア・インコンスピクア(Nitzschia inconspicua)の従属栄養培養について報告している。著者は、EPAおよびARA以外の、20以上の炭素の長鎖脂肪酸含量を開示していない。これら2種の脂肪酸の比は、いかなる場合も、従属栄養条件下で2未満である。この文献では、本明細書に記載の組成についても、そのような組成が濃縮および精製に適していることも、また、そのような組成を成功裡に得られうるという期待があることも示唆されていない。
WenおよびChenは、いくつかの論文(Biotechnology Letters 22:727-733,2000;Journal of Industrial Microbiology & Biotechnology 25:218-224,2000;Enzyme and Microbial Technology 29:341-347,2001;Biotechnol Bioeng 75:159-169,2001.;Biotechnol.Prog.18:21-28,2002;Process Biochemistry 37:1447-1453,2002;Process Biochemistry 38:523-529,2002)において、珪藻類のニッチア・ラエビス(Nitzschia laevis)に対する従属栄養増殖条件の最適化を記載している。著者はEPA生成の最大化に取り組んでいるが、EPAとARAとの比が重要であることも、その比を最適化することの検討も指摘していない。同様に、EPAと共濃縮脂肪酸との相対レベルについても、濃縮または精製についても検討していない。この文献は、本明細書に記載の組成についても、この組成が濃縮および精製に適していることも教示していない。
Pahlら(J Bioscience and Bioeng 109:235-239,2010)では、著者は、水産養殖産業で使用するための飼料を製造する目的で、珪藻類のキクロテラ・クリプティカ(Cyclotella cryptica)の従属栄養増殖を報告している。著者は、精製EPAを製造する可能性についても、EPAと他の長鎖脂肪酸との相対レベルが濃縮または精製に及ぼす影響についても検討していない。特に、ARAの量については論文では報告もされていない。著者は、窒素源、リン酸塩、およびケイ酸塩は豊富であるが、炭素が相対的に低量である培地を使用する。その結果、細胞のEPA含量は乾燥細胞重量の1.5%未満にとどまる。この文献では、本明細書に記載の組成についても、そのような組成が濃縮および精製に適していることも、また、そのような組成を成功裡に得られうるという期待があることも示唆されていない。
GriffithsおよびGeiringerは、国際公開第2008004900号パンフレットにおいて、EPAに類似した構造的および生理化学的特性を有する分子が低レベルである、EPAを含む珪藻類に由来する組成物を提供している。これらの著者は、特定の脂肪酸が低レベルである、EPAを含む薬物治療用途のための組成物が一般的に望ましいことを開示している。特に、「EPAの所望の有益な健康への効果に対して、拮抗し、競合し、遮断し、撤回し、媒介し、相乗的に作用し、またはさもなければ変化させ得る作用を介して所望の効果を減少させ得る」ARAおよび他のオメガ−3およびオメガ−6脂肪酸を望ましくないと見なしている。著者はまた、後の薬物治療用途のために精製する目的にとって、前述の望ましくない脂肪酸が低レベルである、EPAを含む組成物が一般的に望ましいことを開示している。著者は、EPAの有益な健康への効果に対して影響を及ぼさないが、可能な濃縮度または精製度に影響するであろう他のC20脂肪酸について検討していない。
著者は、治療目的にとってARAが低レベルであるEPA組成物が望ましいことを教示しているが、彼らの組成物がバイオマスからの最初の単離工程を必要とし、かつ彼らの組成物がすべての共濃縮脂肪酸ではなく、EPAの生物活性に対して影響するもののみを考慮に入れているため、本発明の組成物を示唆していない。さらに、本発明の組成物を得られうる方法またはその工業的用途について教示していない。
さらに、GriffithsおよびGeiringerも、また他の著者も、本明細書に教示のような、EPAとARAまたは共濃縮脂肪酸分子との所定範囲の比が、高度の濃縮、次いで精製を可能にする組成物を得るために、微生物の従属栄養培養において重要であることを教示していない。
微生物、特に天然の真核微細藻類の従属栄養培養物が、培養物中への大量のEPA蓄積を通して取り出す代替のオメガ−3脂肪酸源として働き得る可能性がある一方、高度な濃縮および精製が可能になるほど十分に、EPAに生理化学的または構造的に類似した分子が同時に含まれない、EPAのこのような供給源の開発に、あったとしても比較的小さな組織的努力しか向けられなかったことは驚くべきことと思われるかもしれない。
第1の幅広い態様では、本発明は、重量対重量に基づいた比を用いた場合、EPAとARAとの比が少なくとも11:1であり、かつEPAと共濃縮脂肪酸との比が少なくとも8:1である、従属栄養増殖した微生物を含む組成物を提供する。
好ましくは、組成物は、少なくとも12:1のEPAとARAとの比で構成され、より好ましくはその比は少なくとも13:1であり、より好ましくは少なくとも14:1であり、さらにより好ましくは少なくとも15:1である。
好ましくは、組成物は、少なくとも9:1のEPAと共濃縮脂肪酸との比で構成され、より好ましくはその比は少なくとも10:1であり、より好ましくは少なくとも11:1であり、さらにより好ましくは少なくとも12:1である。
好ましくは、総脂肪酸の1%w/w未満が、ジュニペロン酸(共濃縮脂肪酸)である。より好ましくは、組成物は、0.5%w/w未満のジュニペロン酸を含む。最も好ましくは、ジュニペロン酸は組成物中に存在しない。
好ましくは、総脂肪酸の1%w/w未満が、スシアドン酸(共濃縮脂肪酸)である。より好ましくは、組成物は、0.5%w/w未満のスシアドン酸を含む。最も好ましくは、スシアドン酸は組成物中に存在しない。
好ましくは、従属栄養増殖した微生物は真核生物である。典型的には、微生物は同定された微細藻類または真菌を含む。好ましくは、微生物は微細藻類で構成される。より好ましくは、微生物は珪藻類、好ましくは海洋性珪藻類で構成され、より好ましくは、微生物はニッチア(Nitzschia)属由来の海洋性単細胞珪藻類で構成され、さらにより好ましくは、微生物はニッチア・ラエビス(Nitzschia laevis)として知られる海洋性単細胞珪藻類で構成される。
好ましくは、培養条件下で、回収可能なEPAの収率の改善に対して選択された微生物株。好ましくは、微生物は、培養条件下で、EPAに対して回収可能なARAの収率が低減していることに対して選択された微生物株を含む。好ましくは、微生物は、培養条件下で、EPAに対して回収可能な共濃縮脂肪酸の収率が低減していることに対して選択された微生物株を含む。
一態様では、上記組成物は微生物バイオマスである。
好ましくは、バイオマス組成物は、総乾燥重量のある割合で脂肪酸を含む;その割合の5〜80%の間の範囲にある割合はEPAである;EPAの割合は2〜80%の間の範囲にあり(脂肪酸の乾燥重量基準で)、より好ましくはこの割合は10%超であり、より好ましくは20%超であり、さらにより好ましくは30%超である。典型的には、総脂肪酸のEPAである割合(乾燥重量基準で)は、10〜80%、20〜80%、または30〜80%の範囲にある。
したがって、本発明は、従属栄養発酵から生成される微生物バイオマスであって、
−エイコサペンタエン酸(EPA)とアラキドン酸(ARA)との比が約11:1以上;
−EPAと共濃縮総脂肪酸との比が約8:1以上
を示す脂肪酸プロフィールを有するバイオマスを提供する。
好ましくは、ジュニペロン酸(JPA)もスシアドン酸もバイオマス中に存在しない。
典型的には、微生物バイオマスは真核微生物バイオマスであり、最も典型的には、微細藻類バイオマスである。最も好ましくは、微細藻類バイオマスはニッチア・ラエビス(Nitzschia laevis)バイオマスなどの海洋性珪藻類バイオマスである。
典型的には、微生物バイオマスは、従属栄養培地から微生物を採取し、場合によっては細胞を加熱またはさもなければ死滅させ(例えば、内在性酵素を変性させるために)、そして細胞をバイオマスに成型する(例えば、バイオマスのケーキ)ことにより、微生物培養物から生成される。バイオマスは、場合によっては乾燥させて、水を低減または除去する。本発明のバイオマスの形成には、脂肪酸、または水以外の物質を回収するための抽出または精製の工程が含まれない。しかしながら、本発明のバイオマスのEPA:ARA比のお陰で、治療目的のためにEPAを濃縮するために使用される、その後の抽出および精製の工程が容易になる。本発明の微生物バイオマスを、バイオマスから脂肪酸を抽出する、1つまたは複数の抽出工程に付して、脂肪酸組成物を得られうる。適切な抽出手法が当技術分野で周知である。例えば、バイオマスを、非選択的な脂質溶媒(例えば、臨界近傍のジメチルエーテルまたはエタノール)で抽出して、残査として溶媒から回収することができる。
抽出後、前記脂肪酸組成物中のEPAレベルは、組成物中の脂肪酸重量を基準として5〜90%、5〜75%、または5〜50%である。EPAとARAとの比は、抽出前と実質的に同じレベルに、好ましくは少なくとも11:1に保持することができる。EPAと総共濃縮脂肪酸との比は、抽出前と実質的に同じレベルに、好ましくは少なくとも約8:1に保持することができる。
抽出後、EPAに関し脂肪酸組成物を濃縮するかまたは脂肪酸組成物からEPAを精製するさらなる工程は、当技術分野で周知の手法を使用して実施することができる。例えば、抽出物を、アルコールまたは水の存在下で、酸、アルカリ、および/または酵素で処理して、脂肪酸または脂肪酸アルキルエステル混合物を形成させることができる。次いで、この混合物を、純度の要求基準を満たすためにさらに濃縮および精製してもよい。組成物中のEPAとARAとの比は、濃縮および/または精製の前と実質的に同じレベルに、好ましくは少なくとも11:1に保持することができる。組成物中のEPAと総共濃縮脂肪酸との比は、濃縮および/または精製の前と実質的に同じレベルに、好ましくは少なくとも約8:1に保持することができる。より好ましくは、EPAとARAとの比およびEPAと総共濃縮脂肪酸との比は、濃縮および/または精製の工程の後に、増加することになる。しかしながら、ARAおよび共濃縮脂肪酸からEPAを分離することが相対的に困難でありかつコストがかかる場合、濃縮および/または精製の工程の前に、組成物中のEPAとARAとの比およびEPAと共濃縮脂肪酸との比が相対的に高いことが利点となる。
濃縮または精製の後、前記脂肪酸中のEPAレベルは、組成物中の脂肪酸重量基準で、少なくとも30%もしくは少なくとも50%であり、または少なくとも60%、少なくとも約70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも97%の高純度EPA組成物である。本明細書の目的のための高純度EPA組成物は、適宜定義することができる。本発明の別の態様を形成するそのような高純度EPA組成物。
関連する態様では、本発明は、EPAとARAとの比が少なくとも11:1であり、EPAと共濃縮脂肪酸との比が少なくとも8:1である、従属栄養増殖した微生物を含む組成物に由来する脂肪酸と脂質の混合物を提供する。
さらに別の態様では、本発明は、ヒトまたは動物の消費用製品の製造における、EPAとARAとの比が少なくとも11:1であり、EPAと共濃縮脂肪酸との比が少なくとも8:1である、従属栄養増殖した微生物を含む組成物の使用を提供する。このような製品は、公知の手法を使用して、当業者により製剤化可能であり、例えば、充填剤、担体、緩衝剤、安定剤、および防腐剤を含むことができる。それは、例えば、錠剤、カプセル剤、液剤、溶液の形態を取ることが可能であり、さらに、パンおよびシリアルなどの食品、ジャム、および乳製品、他の製品と組み合わせることもできる。
関連する態様では、本発明は、他の脂肪酸または脂肪酸アルキルエステルとブレンドされた組成物を含む製品の製造における、EPAとARAとの比が少なくとも11:1であり、EPAと共濃縮脂肪酸との比が少なくとも8:1である、従属栄養増殖した微生物を含む組成物の使用を提供する。
さらに別の態様では、本発明は、これらに限定されないが、糖尿病(I型およびII型)、糖血症障害、糖尿病関連高血圧症、癌、骨関節炎、自己免疫性疾患、慢性関節リウマチ、関節炎以外の炎症性および自己免疫性疾患、呼吸器疾患、神経障害、神経変性障害(ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、アルツハイマー病、統合失調症、大うつ病、単極性うつ病、双極性うつ病、強迫性障害、境界性人格障害、産後うつ病、器質性脳障害、および外傷性脳損傷を含む)、腎および尿路障害、心臓血管障害、脳血管障害、眼の変性疾患、精神障害、生殖性障害、内臓障害、筋疾患、代謝障害、前立腺肥大症および前立腺炎、インポテンスおよび男性不妊、乳房痛、男性型脱毛症、骨粗鬆症、皮膚障害、失読症および他の学習障害、癌性悪液質、肥満症、潰瘍性大腸炎、クローン病、神経性食欲不振症、熱傷、骨関節炎、骨粗鬆症、注意欠陥/多動性障害、ならびに初期段階の結腸直腸癌、肺および腎臓疾患、ならびに成長異常および発達異常に関連した障害から選択されるものを含む、特定の医学的症状または障害に冒された患者の治療のための医薬品の製造における、EPAとARAとの比が少なくとも11:1であり、EPAと共濃縮脂肪酸との比が少なくとも8:1である、従属栄養増殖した微生物を含む組成物の使用を提供する。好ましくは、障害の医学的症状は、心臓血管障害または肥満症関連症状である。
第2の幅広い態様では、本発明は、EPAとARAとの比が少なくとも14:1である、従属栄養増殖した珪藻類を含む組成物を提供する。
好ましくは、組成物は、少なくとも15:1のEPAとARAとの比で構成され、より好ましくはその比は少なくとも16:1であり、より好ましくは少なくとも17:1であり、さらにより好ましくは少なくとも18:1である。
好ましくは、珪藻類はニッチア(Nitzschia)属由来の海洋性単細胞珪藻類で構成される。好ましくは、珪藻類はニッチア・ラエビス(Nitzschia laevis)として知られる海洋性単細胞珪藻類で構成される。
珪藻類は、培養条件下で、回収可能なEPAの収率の改善に対して選択された珪藻類株を含む。
別の態様では、珪藻類は、培養条件下で、EPAに対して回収可能なARAの収率が低減していることに対して選択された珪藻類株を含む。
好ましくは、珪藻類組成物は、総乾燥重量のある割合で脂肪酸を含む;EPAである割合は5〜80%の範囲にある;脂肪酸のEPAの割合(乾燥重量基準で)は、2〜80%の範囲にあり、より好ましくはこの割合は10%超であり、より好ましくは20%超であり、さらにより好ましくは30%超である。
関連する態様では、本発明は、EPAとARAとの比が少なくとも14:1である、従属栄養増殖した珪藻類を含む組成物に由来する脂質と脂肪酸の混合物を提供する。
さらに別の態様では、本発明は、ヒトまたは動物消費用の製品の製造における、EPAとARAとの比が少なくとも14:1である、従属栄養増殖した珪藻類を含む組成物の使用を提供する。
関連する態様では、本発明は、他の脂肪酸または脂肪酸アルキルエステルとブレンドされた組成物を含む製品の製造における、EPAとARAとの比が少なくとも14:1である、従属栄養増殖した珪藻類を含む組成物の使用を提供する。
さらに別の態様では、本発明は、これらに限定されないが、糖尿病(I型およびII型)、糖血症障害、糖尿病関連高血圧症、癌、骨関節炎、自己免疫性疾患、慢性関節リウマチ、関節炎以外の炎症性および自己免疫性疾患、呼吸器疾患、神経障害、神経変性障害(ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、アルツハイマー病、統合失調症、大うつ病、単極性うつ病、双極性うつ病、強迫性障害、境界性人格障害、産後うつ病、器質性脳障害、および外傷性脳損傷を含む)、腎および尿路障害、心臓血管障害、脳血管障害、眼の変性疾患、精神障害、生殖性障害、内臓障害、筋疾患、代謝障害、前立腺肥大症および前立腺炎、インポテンスおよび男性不妊、乳房痛、男性型脱毛症、骨粗鬆症、皮膚障害、失読症および他の学習障害、癌性悪液質、肥満症、潰瘍性大腸炎、クローン病、神経性食欲不振症、熱傷、骨関節炎、骨粗鬆症、注意欠陥/多動性障害、ならびに初期段階の結腸直腸癌、肺および腎臓疾患、ならびに成長異常および発達異常に関連した障害から選択されるものを含む、特定の医学的症状または障害に冒された患者の治療のための医薬品の製造における、EPAとARAとの比が少なくとも14:1である、従属栄養増殖した珪藻類を含む組成物の使用を提供する。好ましくは、障害の医学的症状は、心臓血管障害または肥満症関連症状である。医薬品の製造は当業者には周知である。このような医薬品は、公知の手法を使用して、当業者により製剤化可能であり、例えば、医薬として許容される充填剤、担体、緩衝剤、安定剤、および/または防腐剤を含むことができる。それは、例えば、錠剤、カプセル剤、液剤、および/または溶液の形態を取ることができる。
本発明の方法
幾人かの著者は、珪藻類を増殖させてEPAを生成することができる方法を教示している。
例えば、TanおよびJohns(Journal of Applied Phycology 8:59-64,1996)は、数種の珪藻類の従属栄養増殖について報告しているが、細胞のARA含量またはC20:3以外の20超の炭素原子を有する脂肪酸含量については、記録も言及もしていない。光合成および混合栄養の増殖方法の検討以外、著者は、栄養素のいかなる変更も試みず、またこれが脂肪酸組成物に影響を及ぼし得るという事実についても論評していない。これらの著者は、炭素、窒素、ケイ酸塩、およびリン酸塩栄養素の相対比が脂肪酸組成物に影響することを認識していないため、本発明の方法を示唆していない。また、著者は、増殖培地の栄養素含量を介してバイオマス中のEPAとARAとの相対比に影響を及ぼすことが望ましい場合があることも開示していない。
Kitanoら(Journal of Applied Phycology 9:559-563,1997)は、珪藻類のナビキュラ・サプロフィラ(Navicula saprophila)の従属栄養増殖について報告しているが、得られたEPAとC20:4との比は10未満である。光合成および混合栄養の増殖方法の検討以外、著者は、栄養素のいかなる変更も試みず、またこれが脂肪酸組成物に影響を及ぼすという事実についても論評していない。これらの著者は、炭素、窒素、ケイ酸塩、およびリン酸塩栄養素の相対比が脂肪酸組成物に影響することを認識していないため、本発明の方法を示唆していない。また、著者は、増殖培地の栄養素含量を介してバイオマス中のEPAとARAとの相対比に影響を及ぼすことが望ましい場合があることも開示していない。
米国特許第5244921号明細書および同第5567732号明細書において、KyleおよびGladueは、従属栄養培養で珪藻類のニッチア・アルバ(Nitzschia alba)からエイコサペンタエンを生成する方法を開示している。この明細書で、著者は、採取前に、細胞から最初に窒素を、次いでケイ酸塩を欠乏させるという、本発明からは遠のく教示を行っている(阻却事由を有する)。細胞は脂質を蓄積するが、EPAとC20:4との比はわずか4:1である。EPAと20以上の炭素の他の長鎖脂肪酸との比も、精製に対するその影響の可能性も検討されていない。
WenおよびChenは、いくつかの論文(Biotechnology Letters 22:727-733,2000;Journal of Industrial Microbiology & Biotechnology 25:218-224,2000;Enzyme and Microbial Technology 29:341-347,2001;Biotechnol Bioeng 75:159-169,2001.;Biotechnol.Prog.18:21-28,2002;Process Biochemistry 37:1447-1453,2002;Process Biochemistry 38:523-529,2002)において、珪藻類のニッチア・ラエビス(Nitzschia laevis)に対する従属栄養増殖条件の最適化を記載している。著者は、流加培地中の栄養素レベルを操作して、EPAの生成を最大化したが、グルコース以外のいかなる残存栄養素を測定することも試みておらず、したがって、培養物自体の中の窒素、リン酸塩、またはケイ酸塩栄養素の欠乏による制限の効果を研究していない。著者は、EPAとARAとの十分高い比を得られうる、本明細書に教示のような所定範囲の栄養素成分比を得ていない。
これらの著者は、窒素またはケイ酸塩栄養素の欠乏による制限がバイオマスにおけるEPAとARAとの相対比に影響を及ぼすことを認識していないため、本発明の方法を示唆していない。また、著者は、増殖培地の栄養素含量を介してバイオマス中のEPAとARAとの相対比に影響を及ぼすことが望ましい場合があることも開示していない。
Pahlら(J Bioscience and Bioeng 109:235-239,2010)では、著者は、水産養殖産業で使用するための飼料を製造する目的で、珪藻類のキクロテラ・クリプティカ(Cyclotella cryptica)の従属栄養増殖を報告している。著者は、窒素源、リン酸塩、およびケイ酸塩に富むが、炭素が相対的に低量の培地を使用し、その結果、本明細書に教示のような所定の栄養素組成物を得ていない。著者は、精製EPAを製造する可能性についても、EPAとARAとの相対レベルが濃縮または精製に及ぼす影響についても検討していない。ARAの量については論文では報告もされていない。著者は、ケイ酸塩の制限により、不飽和度が低い脂肪酸の割合が増加すると予測され得ることを言及しているが、培地中の栄養素比の変化が異なる高度不飽和長鎖脂肪酸間の比に影響を及ぼし得ることは検討していない。これらの著者は、炭素、窒素、ケイ酸塩、およびリン酸塩栄養素の相対比がバイオマスにおけるEPAとARAとの相対比に影響を及ぼすことを認識していないため、本発明の方法を示唆していない。また、著者は、増殖培地の栄養素含量を介してバイオマス中のEPAとARAとの相対比に影響を及ぼすことが望ましい場合があることも開示していない。
Roessler(J Phycol 24:394-400,1988)は、珪藻類のキクロテラ・クリプティカ(Cyclotella cryptica)の光独立栄養培養におけるケイ素欠乏の影響を検討している。著者は、ケイ素欠乏が細胞物質中の脂質量を増加させるが、PUFAの相対的な割合を減少させることを言及しており、バイオマスをPUFAの製造のために生成する場合、増殖培地は栄養素で満たすべきであるとさえ示唆している。しかしながら、著者は、ケイ酸塩欠乏が引き起こすPUFA間の比のいかなる変化に関しても論評していない。さらに、材料からのEPAの濃縮または精製について、またこの目的に対する、EPAと20以上の炭素の他の長鎖脂肪酸との相対レベルの重要性について検討していない。著者は、彼らの方法が培養のための主要エネルギー源として光を使用するため、本発明の方法を示唆していない。また、著者は、炭素、窒素、ケイ酸塩、およびリン酸塩栄養素の相対比が、バイオマスにおけるEPAとARAとの相対比に影響を及ぼすという認識がないため、主要エネルギー源に光を使用しない方法の成功も示唆していない。また、著者は、増殖培地の栄養素含量を介してバイオマス中のEPAとARAとの相対比に影響を及ぼすことが望ましい場合があることも開示していない。
Taguchiら(J Phycol 23:260-267,1987)は、光独立栄養条件下のケイ酸塩欠乏条件下で海洋性珪藻類の脂質含量を検討している。「藻類が硝酸塩およびリン酸塩よりもケイ酸塩を最初に確実に利用することができるように、決定的なN:P:Si比を確立することが不可欠である。培地からケイ酸塩が枯渇したことにより藻類がさらに増殖することができない場合でも、硝酸塩およびリン酸塩を低濃度に保つことにより、藻類は生存し続けて、細胞当たりより多くの脂質を生成する。」と著者は述べており、したがって、ケイ酸塩の欠乏が有益であると彼らが信じていることが示され、その教示は本発明からは遠く離れている(阻却事由を有する)。著者は、細胞の脂肪酸組成の開示も検討もしていない。著者は、彼らの方法が培養のための主要エネルギー源として光を使用するため、本発明の方法を示唆していない。また、細胞からケイ酸塩を欠乏させて脂質収率を増加させるという著者の教示が本発明からは遠く離れている(阻却事由を有する)ため、主要エネルギー源に光を使用しない方法の成功も示唆していない。
Chuら(Journal of Applied Phycology 8:389-396,1996)は、アセテートおよびグルコース上での珪藻類のニッチア・インコンスピクア(Nitzschia inconspicua)の従属栄養培養について報告しており、さらに、光合成培養物中の利用可能なケイ素および窒素レベルの変化が及ぼす影響を検討している。著者は、これらの変化がEPAとARAとの間の比に対して及ぼす影響に関して論評しておらず、また、材料からのEPAの濃縮または精製についても、この目的に対する、EPAと20以上の炭素の他の長鎖脂肪酸との相対レベルの重要性についてもまったく検討していない。さらに、著者は、「窒素欠乏が、N.インコンスピクア(N.inconspicua)の総脂肪酸含量を高め、低レベルのNaNOで増殖させると、20:5(n−3)が最高収率で生成された」と述べている。これは、本発明とは反して、EPA収率が増殖条件を決定する最も重要な因子であると著者が考えていることを示す。彼らの方法の大部分が培養のための主要エネルギー源として光を使用するため、著者は本発明の方法を示唆していない。また、細胞から窒素を欠乏させて脂質収率を増加させるという著者の教示が本発明からは遠く離れている(阻却事由を有する)ため、主要エネルギー源に光を使用しない方法の成功も示唆していない。
Barclayは、米国特許第5130242号明細書および米国特許第5908622号明細書において、いくつかの藻類(非珪藻類)株の単離、従属栄養増殖、および脂肪酸プロフィールについて報告している。著者は、「脂質およびオメガ−3高度不飽和脂肪酸が顕著に高い製品が所望される場合、栄養素が制限されるように、好ましくは、適切な時間窒素が制限されるように培養が行われ得る...」ことを教示しており、したがって、本発明からはまったく遠く離れている(阻却事由を有する)ことを教示している。さらに、著者は、オメガ−3脂肪酸の精製についてグループとして検討しているが、個々の脂肪酸の精製については検討していない。ARAを含むオメガ−6脂肪酸は、食事療法目的には不利であることを明記する一方、著者は、「一部の用途にとっては望ましくないC20:4n−6およびC22:5n−6 HUFAを1%未満(総脂肪酸の%として)有する株もまた単離することができる」と述べており、これは、本発明とは反して、この著者が、ARAの相対量よりもむしろ総量が重要であると考えていることを示す。著者は、その方法が非珪藻類培養物を使用するため、本発明の方法を示唆していない。また、細胞から栄養素を欠乏させて脂質収率を増加させるという著者の教示が本発明からは遠く離れている(阻却事由を有する)ため、珪藻類培養物の成功も示唆していない。
従属栄養増殖した珪藻類中のEPAが、十分に高いEPAとARAとの比で得られて、濃縮および精製が可能になる方法について提供している著者は他にいない。
さらに、培養珪藻類を生成する方法は、十分に高いEPAとARAとの比を得ることができるように、好ましくは、本明細書で教示のように、所定範囲の栄養素成分比を使用することにより、窒素制限を回避しかつ培養物中の最小ケイ酸塩濃度を維持することを含むべきであると教示している著者は他にいない。
微生物、特に天然の真核珪藻類の従属栄養培養物を含む方法が、培養物中への大量のEPA蓄積を通して、魚の代替となるオメガ−3脂肪酸源を提供し得る可能性がある一方、高度な濃縮および精製が可能になるほど十分に、EPAに生理化学的または構造的に類似した分子が同時に含まれない、EPAのこのような供給源の開発に、あったとしても比較的小さな組織的努力しか向けられなかったことは驚くべきことと思われるかもしれない。実際、現行の方法論は、EPAの絶対量を最大化することを強調するが、最大化の際に多くの場合、生理化学的または構造的に類似した分子の絶対量が不釣り合いに増加し、そのためEPAの精製が困難になる。
したがって、第3の幅広い態様では、本発明は、上記の組成物を得る方法であって、この方法が従属栄養増殖の能力およびEPAの生成能力ならびにEPAに生理化学的または構造的に類似した分子の相対的低含量に対して選択された微生物タイプの培養物を使用し;この方法がエネルギー源として有機炭素が使用される条件下で、細胞が増殖する培養相を含み;好ましくは、その条件がリン、窒素、および/またはケイ素を含むある範囲から選択される非制限の栄養素を含み;前記手順が、EPAとARAとの比が少なくとも11:1(好ましくは14:1)であり、EPAとすべての共濃縮脂肪酸との比が少なくとも8:1である回収可能なバイオマス量を最大化するために行われる方法を提供する。
しかしながら、本発明者らは、非制限レベルのリン酸塩が好ましい一方、窒素および/またはケイ酸塩レベルの影響に比較して、リン酸塩濃度レベルの影響がEPAとARAとの比ならびにEPAと共濃縮脂肪酸との比に対して少ないことを見出した。非制限レベル(または大過剰)の栄養素が、最終生成物中のEPA:ARA比を実質的に増加させる効果を及ぼし得るため、非常に好ましい(例えば、図1を参照のこと)。
培養または発酵の種々の方法が可能である。このうち最も簡単なものは、細胞を栄養培地に播種し、一定時間増殖させた後、採取する回分発酵である。流加回分発酵は、回分に類似しているが、濃縮栄養素を増殖期に培養物に供給する点が異なる。連続発酵は、発酵容器からバイオマスおよび栄養液を含む培養物を連続的に採取し、新たな栄養液と交換することを含む。培養物中の細胞密度が一定であるように、連続発酵の採取速度が選ばれる。半連続発酵は、採取が連続的というよりむしろ間欠的であること以外は連続発酵に類似している。連続発酵または半連続発酵が、本発明の微生物バイオマスの製造のために好ましいが、回分または流加回分発酵も使用することができよう。
EPAの工業生産にとっては、コスト効率の良い方法を提供するために生産速度が重要である。この理由により、高い製造速度が好ましい。5mgEPA/L/時を下回る製造速度でも有用となり得るが、本発明者らは、連続または半連続発酵/培養手法を使用する本発明の方法および工程を使用して、5mgEPA/L/時を超える製造速度を達成することができることを示した。好ましい選択肢では、培養物1リットル当たり少なくとも5mgEPAが毎時生成される。より好ましい選択肢では、培養物1リットル当たり少なくとも10mgEPAが毎時生成される。
生産速度に加えて、バイオマス内部のEPA(w/w)レベルも、本発明の工程および方法の工業的な適用可能性にとって重要である。好ましい選択肢では、EPAは、バイオマスの乾燥細胞重量の少なくとも1.5%を形成する。より好ましい選択肢では、EPAは、バイオマスの乾燥細胞重量の少なくとも2%を形成し、さらにより好ましい選択肢では、EPAは、バイオマスの乾燥細胞重量の少なくとも3%を形成する。
関連する態様では、本発明は、微生物の培養物が、同定された微細藻類または真菌を含む、このセクションで上述された方法を提供する。好ましくは、微生物は微細藻類で構成される。より好ましくは、微生物は珪藻類、より好ましくは海洋性珪藻類で構成され、より好ましくは、微生物はニッチア(Nitzschia)属由来の海洋性単細胞珪藻類で構成され、さらにより好ましくは、微生物はニッチア・ラエビス(Nitzschia laevis)として知られる海洋性単細胞珪藻類で構成される。
関連する態様では、本発明は、このセクションで上述された、培養物に由来する脂質混合物および脂肪酸混合物を生成するための方法であって、これらの混合物が、
培地から細胞を採取する工程と、
場合によっては、加熱またはさもなければ細胞を殺して内在性酵素を変性させる工程と、
バイオマスのケーキに細胞を成型する工程と、
場合によっては、バイオマスを乾燥させて水を低減または除去する工程と、
非選択的脂質溶媒を用いてバイオマスのケーキを抽出し、残査として溶媒から抽出物を回収する工程と(例えば、臨界近傍のジメチルエーテルの使用が1つの選択肢であり、エタノールの使用が別の選択肢である)、
場合によっては、アルコールまたは水の存在下で、酸、アルカリ、および/または酵素で抽出物を処理し、脂肪酸または脂肪酸アルキルエステル混合物を形成させ、場合によってはさらに、純度の要求基準を達成するために前記混合物を濃縮および精製する工程と
を含む採取方法によって得られる方法を提供する。
バイオマスは、当業者に公知となる多くの方法によって、培養物から採取または回収することができる。これらの方法には、遠心分離法、濾過法、沈降法、およびデカンテーション法が含まれる。あるいは、培養物全体を集めて、乾燥または脂質抽出手順に付することができる。
第4の幅広い態様では、本発明は、珪藻類を培養するための方法であって、この方法が従属栄養増殖の能力およびEPAの生成能力ならびにEPAに生理化学的または構造的に類似した分子の相対的低含量に対して選択された珪藻類の培養物を使用し;この方法が、
初期濃度が少なくとも0.5M炭素の有機炭素源、
窒素制限が生じないことを保証するのに十分高い初期濃度の1種または複数の窒素源(有機炭素と窒素とのモル比は30(モルC:モルN)以下が好ましい)、
ケイ素制限が生じないほど十分な量の生物が利用可能なケイ素濃度(好ましくは、生物が利用可能なケイ素はケイ酸塩の形態であり、好ましくは、ケイ酸塩濃度は150μMを下回らない)
を含む栄養液中で細胞が増殖する培養相を含む方法を提供する。
好ましい態様では、有機炭素源の初期濃度は、0.5M〜10M、1M〜10M、または5M〜10Mである。
好ましい態様では、有機炭素と窒素との比は、1〜30、5〜30、10〜30、または15〜30である。
好ましい態様では、有機炭素とリン酸塩形態のリンとのモル比は、1250以下(モルC:モルP)であり、より好ましい態様では、このモル比は750以下である。典型的には、このモル比は、100〜1250、250〜1250、250〜750、または350〜650(モルC:モルP)である。
生物が利用可能なケイ素は、取り込まれてバイオマスに組み込まれ得るケイ素の化合物を意味する。これは、ケイ酸またはアルカリ金属ケイ酸塩の形態を取ることができる。好ましくは、メタケイ酸ナトリウムまたはメタケイ酸カリウムが使用される。
好ましい態様では、ケイ酸塩形態のケイ素濃度は、培養中常に150μM以上であり、より好ましい態様では、この濃度は200μM以上である。典型的には、最低濃度は、150μM〜1.3mM、200μM〜1mM、200μM〜750μM、または200μM〜500μMである。本発明者らは、培養物中のケイ酸塩の遊離濃度が培養中150μMを超えていることが有益であることを見出したが、この濃度を若干下回っても、得られるEPAとARAとの比に顕著な影響はないと思われる。したがって、ケイ酸塩濃度が短時間150μMを下回る場合に、本発明のこの態様から逸脱していると考えるべきではない。表7および図1に示されるように、11:1〜13:1の範囲にあるEPAとARAとの比は、培養物中に遊離ケイ酸塩がない場合に得られ得るものである。しかしながら、濃度が150μMを上回ると、EPAとARAとの比は顕著に増加する。培養物中の遊離ケイ酸塩の最も好ましい維持濃度は、200〜700μMの範囲であり、より好ましくは400〜600μMの範囲である。図1および実施例3に示される結果から、これらの最も好ましい濃度範囲でEPAとARAとの比が驚くほど高くなることがわかる。この驚くべき結果は予期されたものではなく、成分間の相乗的相互作用の存在が示される。
最も好ましくは、栄養液は、0.5M〜10Mの有機炭素源の初期濃度、1〜30の有機炭素と窒素とのモル比、常に150μM以上のケイ酸塩形態のケイ素濃度を含む。
一選択肢では、培養物は、時間を通して、それが増殖する速度と同じ速度でバイオマスが取り出されるような平均速度で連続的または不連続的に採取される。
好ましい選択肢では、培養物1リットル当たり少なくとも5mgEPAが毎時生成されるような速度でバイオマスが生成される。より好ましい選択肢では、培養物1リットル当たり少なくとも10mgEPAが毎時生成される。
別の好ましい選択肢では、EPAは、バイオマスの乾燥細胞重量の少なくとも1.5%を形成する。より好ましい選択肢では、EPAは、バイオマスの乾燥細胞重量の少なくとも2%を形成し、さらにより好ましい選択肢では、EPAは、バイオマスの乾燥細胞重量の少なくとも3%を形成する。
関連する態様では、本発明は、このセクションで上述された、培養物に由来する脂質混合物および脂肪酸混合物を生成するための方法であって、これらの混合物が、
培地から細胞を採取する工程と、
場合によっては、加熱またはさもなければ細胞を殺して内在性酵素を変性させる工程と、
バイオマスのケーキに細胞を成型する工程と、
場合によっては、バイオマスを乾燥させて水を低減または除去する工程と、
非選択的脂質溶媒を用いてバイオマスのケーキを抽出し、残査として溶媒から抽出物を回収する工程と(臨界近傍のジメチルエーテルの使用が1つの選択肢であり、エタノールの使用が別の選択肢である)、
場合によっては、抽出物を、アルコールまたは水の存在下で、酸、アルカリ、および/または酵素で処理して、脂肪酸または脂肪酸アルキルエステル混合物を形成させる工程と、
場合によってはさらに、純度の要求基準を達成するために前記混合物を濃縮および精製する工程と
を含む採取方法によって得られる方法を提供する。
以下の一般実験技術を使用する。
バイオマス乾燥重量の測定
バイオマス乾燥重量は、以下のとおりに、前秤量したガラス繊維フィルター法を使用して測定する。細胞および細胞凝集物を幅広く均一に分散させるために撹拌しながら、大きな代表試料から試料10mlを取り出す。この試料10mlを遠心管に入れ、Heraeus Sepatech Megafuge 1.0中でスイングアウト式ローターを用いて、3000rpmで4分間回転させ、液体をデカントして細胞ペレットを得る。リン酸塩緩衝生理食塩水を用いて細胞ペレットを洗浄し、再度遠心分離する。脱イオン水100mlを通してSartoriusガラス繊維フィルターを洗浄し、次いで、秤量前に60℃のオーブンに2時間入れられる。真空濾過装置中で、前秤量したフィルターに試料10mlを通し、脱イオン水50mlで洗浄し、次いで、60℃で2時間オーブン中に放置した後、再秤量する。前後の重量差(グラム)を100倍したものを、1リットル当たりの乾燥重量の測定値とする。
脂質含有物質の採取および抽出
細胞を採取し、洗浄して過剰な培地を除去する。乾燥細胞重量0.75gに相当する湿潤細胞物質を使用して、細胞抽出物を生成する。脂質含有細胞抽出物は、BlighおよびDyer(1959)の方法に従って、Folch抽出により得られうる。
総脂肪酸分析
細胞抽出物試料の総脂肪酸を分析して、培養物質の組成を同定する。C23:0などの内部標準を反応に加えることにより、細胞の総脂肪酸含量の測定が可能になる。脂肪酸生成の方法は、メタノール中の0.5Mメトキシドによる塩基性エステル転移反応の後に、メタノール中の乾燥HClを使用した酸性エステル転移反応を必要とする。脂肪酸メチルエステルは、ヘキサンで抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥させることにより回収した後、ガスクロマトグラフィーを使用して分析する。この試料は、Shimadzu2010GC内部にある30m×0.25mmID Famewax(crossbondポリエチレングリコール)ガラスキャピラリーカラムにて、自動注入により分析する。脂肪酸の同定は、標準動作条件下のピーク保持時間を、Sigma Aldrich供与の既知標準物質の保持時間と比較して行った。
栄養素比の計算
種々の炭素源および窒素源を含む培地を比較可能にするために、培地内の栄養素比を構成原子のモル比に換算する。例えば、グルコース1molは炭素を6mol含有するが、酢酸1molは炭素を2molのみ含有する。
これらの計算のために、グルコースの分子量を180.16とすると、グルコース100gは炭素を6×100/180.16mol含有する。
これらの計算のために、酵母抽出物が少なくとも約10%(w/w)の総窒素含量を有すると仮定すると、酵母抽出物100gは窒素を少なくとも約(10/100)×100/14mol含有する。同様に、トリプトンの窒素含量は少なくとも約13%(w/w)である。
これらの計算のために、酵母抽出物およびトリプトンでは、エネルギー源としての炭素量の寄与は無視できると仮定する。
硝酸塩からのモル窒素含量およびケイ酸塩からのモルケイ素含量は、各化合物の分子量を使用して直接計算することができる。
実施例1
ニッチア・ラエビス(Nitzschia laevis)株In1の培養物3g(乾燥重量)を、作業容量19.4Lの撹拌型タンク発酵槽の中に移した。容器には、グルコースを30g/L、酵母抽出物を1.2g/L、硝酸ナトリウムを1.3g/L、リン酸二水素カリウムを40mg/L、およびメタケイ酸ナトリウム五水和物を270mg/Lの濃度で含む栄養素と共に、表1に詳述される塩類およびビタミン類を含む増殖培地が含有されていた。
Figure 0005678180
培養物に、毎分1容器容量の無菌空気を通気し、溶存酸素含量が50%を超えるように撹拌制御した。0.4N NaOHを添加して、pHを8.0に維持した。発酵槽容器のまわりのジャケットを通して、熱水または冷却水を循環させて、要求どおり温度を20℃に維持した。
細胞から培地を分離するように設計された沈降装置を、反応器に装着した。培養物をこの装置に送り込み、細胞を主要発酵槽容器に戻す一方、使用済み培地を吸引して廃棄することができた。開始培地と同じ組成の新たな無菌培地を発酵槽容器に加えて、容器容量を19.4Lで一定に維持した。
廃棄のために取り出す培地量を、増殖期間にわたって徐々に増加させ、培養物密度が約10.5g/L乾燥重量の採取密度に到達する24時間にわたって19.4Lの培地を取り出した。
一旦培養物が採取密度に到達したならば、藻類細胞を含有する培養物を、培養物の乾燥重量が10〜11g/Lの間に保持される割合で採取物として取り出した。廃棄するために取り出す使用済み培地の容量を調整して、1日あたりに反応器から取り出す総容量を19.4Lとして一定に維持した。発酵槽から取り出した容量は、開始培地と同じ組成の新たな培地で補充した。
細胞密度、採取、および組成が安定している定常状態が得られた。廃棄培地中のグルコース濃度は5g/Lを超えており、細胞が炭素制限状態ではなかったことが示された。
次いで、他の成分はすべて前のレベルを維持しながら、2.1g/Lの硝酸ナトリウムおよび80mg/Lのリン酸二水素カリウムを含有するように、容器中に投入する新たな培地の栄養素含量を変化させた。
連続培養をさらに48時間維持して、細胞が新しい栄養素レベルに順応できるようにした。この時間の間、同じ培養物乾燥重量を維持するのに必要な採取速度は約25%増加し、高レベルの窒素および/またはリン酸塩が供給された場合に、培養物の増殖速度がより高くなることが示され、培養物がそれまで窒素および/またはリン酸塩制限状態にあったことが示された。廃棄培地中のグルコース濃度は5g/Lを超えたままであり、細胞が再度炭素制限状態ではなかったことが示された。
バイオマスの無菌試料を、栄養素の変化前および変化後の両方の培養物から得て、それらから脂質を抽出した。抽出物内の脂肪酸プロフィールおよび成分比を表2に示し、培養条件の変化が、EPA:ARA比に関する組成の改善およびEPAと共濃縮成分との比の改善をどのようにもたらすかを示す。EPAは、栄養素変化後の乾燥細胞重量の2.3%を形成した。
この試料の後に続いて、培地の硝酸ナトリウム含量をさらに増加しても、増殖速度の顕著な増加は生じず、培養物はもはや窒素制限状態にはなかったことが示された。
Figure 0005678180
Figure 0005678180
実施例2
ニッチア・ラエビス(Nitzschia laevis)株In1の培養物3g(乾燥重量)を、作業容量18Lの撹拌型タンク発酵槽の中に移した。容器には、グルコースを30g/L、酵母抽出物を1.6g/L、硝酸ナトリウムを2.98g/L、リン酸二水素カリウムを80mg/L、およびメタケイ酸ナトリウム五水和物を270mg/Lの濃度で含む栄養素と共に、表1に詳述される塩類およびビタミン類を含む増殖培地が含有されていた。
培養物に、毎分1容器容量の無菌空気を通気し、溶存酸素含量が50%を超えるように撹拌制御した。0.4N NaOHを添加して、pHを8.0に維持した。発酵槽容器のまわりのジャケットを通して、熱水または冷却水を循環させて、温度を20℃に維持した。
細胞から培地を分離するように設計された沈降装置を、反応器に装着した。培養物をこの装置に送り込み、細胞を主要発酵槽容器に戻す一方、使用済み培地を吸引して廃棄することができた。新たな無菌培地を発酵槽容器に加えて、容器容量を18Lで一定に維持した。培地には、グルコースを30g/L、酵母抽出物を1.6g/L、硝酸ナトリウムを2.98g/L、リン酸二水素カリウムを80mg/L、およびメタケイ酸ナトリウム五水和物を530mg/Lの濃度で含む栄養素と共に、表1の塩類が含有されていた。培地には、窒素制限を回避するように、30:1未満のモル比C:N(表5を参照のこと)が含有されていた。
廃棄のために取り出す培地量を、増殖期間にわたって徐々に増加させ、培養物密度が約10g/L乾燥重量の採取密度に到達する24時間にわたって18Lの培地を取り出した。
一旦培養物が採取密度に到達したならば、藻類細胞を含有する培養物を、培養物の乾燥重量が10〜11g/Lの間に保持される割合で採取物として取り出した。廃棄するために取り出す使用済み培地の容量を調整して、1日あたりに反応器から取り出す総容量を18Lとして一定に維持した。発酵槽から取り出した容量は、開始培地と同じ組成の新たな培地で補充した。
細胞密度、採取、および組成が安定している定常状態が得られた。この時点で、培養物1リットル当たり乾燥細胞重量6.1gが24時間で採取された。g乾燥重量当たり約325μmolのケイ酸塩が必要とすると、バイオマス合成のための毎日のケイ酸塩必要量は、1986μmolL−1day−1であった。ケイ酸塩の供給は、505μmolの過剰Si濃度を与える2491μmolL−1day−1であった。
バイオマスの無菌試料を培養物から得て、それから脂質を抽出した。抽出物内の脂肪酸プロフィールおよび成分比を表4に示す。EPAは、これらの条件下で乾燥細胞重量の2%を形成し、毎時培養物1リットルあたり5.1mgEPAのEPA生産速度がもたらされた。
Figure 0005678180
Figure 0005678180
実施例3
ニッチア・ラエビス(Nitzschia laevis)株In1の培養物3g(乾燥重量)を、作業容量14Lの撹拌型タンク発酵槽の中に移した。容器には、グルコースを50g/L、酵母抽出物を1.9g/L、硝酸ナトリウムを4.0g/L、およびリン酸二水素カリウムを170mg/Lの濃度で含む栄養素と共に、表1に詳述される塩類およびビタミン類を含む増殖培地が含有されていた。メタケイ酸ナトリウム五水和物は、143mg/Lの濃度に濃縮された原液として別に加えられた。
培養物に、毎分1容器容量の無菌空気を通気し、溶存酸素含量が50%を超えるように撹拌制御した。0.4N NaOHを添加して、pHを8.0に維持した。発酵槽容器のまわりのジャケットを通して、熱水または冷却水を循環させて、温度を20℃に維持した。
培地には、窒素制限を回避するように、30:1未満のモル比C:N(表6を参照のこと)が含有されていた。採取された培地中のレベル測定ではすべて、培養物中の硝酸塩が80mg/L以上であることが確認された。発酵槽は採取直後に新たな培地で補充されるので、この測定は、発酵槽中の最低硝酸塩濃度を示すため、窒素は、この実施例を通して制限的ではなかった。
Figure 0005678180
一旦培養物が採取密度に到達したならば、培養物の乾燥重量が約7.5g/Lを保持する種々の容量で、藻類細胞を含有する培養物を6時間ごとに採取した。発酵槽から取り出した容量は、開始培地と同じグルコース、硝酸ナトリウム、酵母抽出物、およびリン酸二水素カリウムを含む新たな培地で補充した。
ケイ素は、メタケイ酸ナトリウムの濃縮水溶液として、他の培地とは別個に加えられ、培地補充時にすべてではなく、高濃度による沈殿の問題を回避するためにその日を通して一定間隔で加えられた。メタケイ酸ナトリウム添加の頻度を変えて、培地中のケイ素濃度を変化させた。
脂肪酸分析のために試料を毎日取り出し、バイオマス内のEPA:ARA比を算出した。
発酵槽中の利用可能なメタケイ酸ナトリウムレベルは、残存ケイ酸塩レベルを得て、添加ケイ酸塩量を加算し、バイオマスに組み込まれた量(g乾燥重量当たり325μmolケイ素で)を減算し、発酵槽が採取され、ケイ酸塩フリーの培地で補充された場合に生じる希釈を補正して算出した。
表7および図1に示す結果から、利用可能なケイ酸塩とEPA:ARA比との間に強い相関があり、培養物中のケイ酸塩レベルが制限されるようになる(すなわち、ゼロに低下する)場合はすべて、EPA:ARA比は14:1未満であることがわかる。驚くべきことに、メタケイ酸ナトリウムの最小レベルが150μMを超えるまで、14:1を超える比は認められなかった。
測定が行われたすべての試料(表7の試料3〜11)で、EPAは、バイオマスの乾燥重量の少なくとも3%を形成した。
Figure 0005678180
実施例4
上記方法に従ってバイオマスを生成し、凍結乾燥バイオマスから脂質を抽出した。エタノール:水(2:1)中でKOHを使用して、脂質を遊離脂肪酸に変換し、乾燥させて水を除去し、次いでエタノール中でHSOを使用してエチルエステルに変換した。
得られたエチルエステルを、W.B.Nilsson(“Supercritical Fluid Technology in Oil and Lipid Chemistry” Editors J.W.King & G.R.List,AOCS Press,ISBN0-935315-T1-3,1996,pp.180-212)により開示の方法に従って濃縮した。濃縮前および濃縮後における、20以上の炭素を有する脂肪酸の濃度を表8に示す。
これらの脂肪酸それぞれの相対的な割合は数倍増加したが、EPAとARAとの比はわずかに変化したのみであり、したがって、EPAとARAとの比が高い出発原料を生成することの利点が実証されたことに留意されたい。
Figure 0005678180
実施例5
モルティエラ(Mortierella)属の真菌であるモルティエラ・レニスポラ(Mortierella renispora)を、約11:1以上のEPAとARAとの比および約8:1以上のEPAと総共濃縮脂肪酸との比を含む脂肪酸組成物を有するバイオマスを生成するために選ばれた条件下で従属栄養培養する。バイオマスを採取し、脂質を抽出する。抽出した脂質をエステル転移反応に供してエチルエステルを形成する。次いで、エチルエステルを処理して、EPAが総脂肪酸の少なくとも60重量%を形成する脂肪酸エチルエステル濃縮物を生成し、次いで、この濃縮物を精製して90%を超える純度のEPAエチルエステルを生成する。
実施例6
クロレラ(Chlorella)属の藻類であるクロレラ・ミヌティシマ(Chlorella minutissima)を、約11:1以上のEPAとARAとの比および約8:1以上のEPAと総共濃縮脂肪酸との比を含む脂肪酸組成物を有するバイオマスを生成するために選ばれた条件下で従属栄養培養する。バイオマスを採取し、脂質を抽出する。抽出した脂質をエステル転移反応に供してエチルエステルを形成する。次いで、エチルエステルを処理して、EPAが総脂肪酸の少なくとも60重量%を形成する脂肪酸エチルエステル濃縮物を生成し、次いで、この濃縮物を精製して90%を超える純度のEPAエチルエステルを生成する。
実施例7
ナノクロロプシス(Nannochloropsis)属の藻類であるナノクロロプシス・オシアニカ(Nannochloropsis oceanica)を、約11:1以上のEPAとARAとの比および約8:1以上のEPAと総共濃縮脂肪酸との比を含む脂肪酸組成物を有するバイオマスを生成するために選ばれた条件下で従属栄養培養する。バイオマスを採取し、脂質を抽出する。抽出した脂質をエステル転移反応に供してエチルエステルを形成する。次いで、エチルエステルを処理して、EPAが総脂肪酸の少なくとも60重量%を形成する脂肪酸エチルエステル濃縮物を生成し、次いで、この濃縮物を精製して90%を超える純度のEPAエチルエステルを生成する。
実施例8
総脂肪酸の百分率としてのEPAレベルが、ARAおよび共濃縮脂肪酸の割合に比べて高いスラウストキトリッド(Thraustochytrid)種を同定するためのBarclay(米国特許第5130242号明細書)の方法に従って、スクリーニングを実施する。次いで、微生物を、約11:1以上のEPAとARAとの比および約8:1以上のEPAと総共濃縮脂肪酸との比を含む脂肪酸組成物を有するバイオマスを生成するために選ばれた従属栄養条件下で増殖させる。バイオマスを採取し、脂質を抽出する。抽出した脂質をエステル転移反応に供してエチルエステルを形成する。次いで、エチルエステルを処理して、EPAが総脂肪酸の少なくとも60重量%を形成する脂肪酸エチルエステル濃縮物を生成し、次いで、この濃縮物を精製して90%を超える純度のEPAエチルエステルを生成する。
実施例9
珪藻類のキクロテラ・クリプティカ(Cyclotella cryptica)を、約14:1以上のEPAとARAとの比を含む脂肪酸組成物を有するバイオマスを生成するために選ばれた条件下で従属栄養培養する。バイオマスを採取し、脂質を抽出する。抽出した脂質をエステル転移反応に供してエチルエステルを形成する。次いで、エチルエステルを処理して、EPAが総脂肪酸の少なくとも60重量%を形成する脂肪酸エチルエステル濃縮物を生成し、次いで、この濃縮物を精製して90%を超える純度のEPAエチルエステルを生成する。
実施例10
真正の光独立栄養生物である珪藻類のフェオダクチラム・トリコルヌタム(Phaeodactylum tricornutum)を、Aptら(米国特許第7939710号明細書)の方法に従って形質転換し、エネルギーおよび炭素の供給源としてグルコースを使用して従属栄養増殖する能力を付与する。形質転換した生物を、約14:1以上のEPAとARAとの比を含む脂肪酸組成物を有するバイオマスを生成するために選ばれた条件下で従属栄養培養する。バイオマスを採取し、脂質を抽出する。抽出した脂質をエステル転移反応に供してエチルエステルを形成する。次いで、エチルエステルを処理して、EPAが総脂肪酸の少なくとも60重量%を形成する脂肪酸エチルエステル濃縮物を生成し、次いで、この濃縮物を精製して90%を超える純度のEPAエチルエステルを生成する。
全般
したがって、実施例は、総脂肪酸の20重量%の範囲(またはそれ以上)のEPAを含有し、EPAとARAとの比が11:1以上であり、EPAと共濃縮脂肪酸との比が8:1以上である組成物(微生物バイオマスおよび脂肪酸組成物を含む)を示す。この組成物はさらに、組成物中のEPAとARAとの比を少なくとも維持しながら、EPAが総脂肪酸の70重量%を超えるまで精製され得ることが示されている。
文脈上他のことが明確に要求されない限り、本明細書および特許請求の範囲全体を通して、単語「含む(comprise)」、「含む(comprising)」等は、排他的または網羅的な意味とは反対に、包括的な意味に解釈すべきである。すなわち、「含むが、これに限定されない」の意味に解釈すべきである。
本明細書においていかなる従来技術に言及しても、その従来技術が世界のいずれの国においても当技術分野の一般常識の一部を形成していると認識するものでも、または何らかの形で示唆するものでもなく、また、そのように解釈されるべきものでもない。
本発明は、個々にまたは集合的に、本願明細書に言及または指摘の部品、要素、および特徴に、2つ以上の前記部品、要素、または特徴の任意またはすべての組合せに存すると幅広く述べることができる。
前述の説明において、周知の等価物を有する完全体または構成要素に言及がなされた場合、それらの完全体は、あたかも個々に記載されたように本明細書に組み込まれる。
本明細書に記載の現在好ましい実施形態に対する種々の変形および修正が当業者には明らかであることに留意されたい。このような変形および修正は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、かつそれに付随する利点を減ずることなく行うことができる。したがって、このような変形および修正は、特許請求の範囲のとおりに、本発明の範囲内に含まれることを意図する。

Claims (14)

  1. 珪藻類を生成する方法であって、
    a.以下のもの、すなわち、
    (i)窒素源と、初期濃度が少なくとも0.5M炭素の有機炭素源
    (ii)有機炭素と窒素とのモル比が30以下:1(モルC:モルN)、および
    (iii)濃度が培養中常に150μM〜1.3mMであるケイ酸塩の非制限的供給源
    を含む栄養液を含有する従属栄養培養物中で珪藻類を培養する工程と、
    b.前記従属栄養培養物から前記珪藻類を回収する工程と
    を含む方法であり、
    培養条件が、エイコサペンタエン酸として乾燥細胞重量の少なくとも1.5%(w/w)を有しかつエイコサペンタエン酸とアラキドン酸の比として少なくとも14:1を有する珪藻類の生成をもたらす、
    方法。
  2. 前記珪藻類が、発酵槽の従属栄養培養物中で培養される、請求項1に記載の方法。
  3. 前記培養が、連続発酵を含む、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記珪藻類が、ニッチア(Nitzschia)種である、請求項1〜3のいずれか1に記載の方法。
  5. 前記培養が、2℃〜5℃の温度で実施される、請求項1〜4のいずれか1に記載の方法。
  6. 前記培養が、.0〜.7のpHで実施される、請求項1〜5のいずれか1に記載の方法。
  7. 前記炭素源が、グルコースを含む、請求項1〜6のいずれか1に記載の方法。
  8. 前記炭素源が、グルコース、加水分解デンプン、または加水分解乳漿から選択される、請求項1〜6のいずれか1に記載の方法。
  9. 前記窒素源が、硝酸ナトリウムまたは硝酸カリウムの形態である、請求項1〜8のいずれか1に記載の方法。
  10. 前記窒素源が、アミノ酸源で補充される、請求項1〜9のいずれか1に記載の方法。
  11. 前記アミノ酸源が、コーンスティープリカー、酵母抽出物、トリプトン、ペプトン、リジン、およびグルタメートから選択される、請求項10に記載の方法。
  12. 前記ケイ酸塩が、メタケイ酸ナトリウムまたはカリウムの形態である、請求項1〜11のいずれか1に記載の方法。
  13. 前記栄養液が、リン酸塩形態のリンを含む、請求項1〜12のいずれか1に記載の方法。
  14. 有機炭素とリン酸塩形態のリンとのモル比が、1250以下:1(モルC:モルP)である、請求項13に記載の方法。

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