JP5674286B2 - 飲料水の製造方法 - Google Patents
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Description
すなわち、海洋深層水は、人や他の生物が生きるために不可欠なミネラル分を陸水よりも多種類含むだけでなく、陸水のようにダイオキシン等の有害化学物質に汚染されていないという特性を持っている。
そこで、様々な用途、とりわけ飲料水としての用途が開発されている。
しかし、飲料水に用いるために、海洋深層水をそのまま利用することはできない。
そこで、海洋深層水の濃縮水を0.5〜1.0%の濃度になるように河川源流水(陸水)で希釈するという特許文献1に係る製造方法を初めとして、幾多の試みが既になされている。
本発明者らは、このような従来技術により得られる飲料水よりも、さらに好適な飲料水の製造方法について鋭意検討を重ねた。
本発明に係る飲料水の製造方法は、好適な実施の形態で、上記伊豆赤沢海洋深層水が、伊豆赤沢沖の水深800mから汲み上げられた海洋深層水であることを特徴とする。
この飲料水は、好適には、6mg/L〜60mg/Lの硬度を有し、0.3mS/cm〜0.5mS/cmの電気伝導率を有する。
図1は、本発明に係る飲料水の製造方法について、その一実施の形態を説明する概念図である。
しかし一方で、首都圏に最も近いということは、京浜地域によって汚染された東京湾から太平洋に向けて流れ出た海水によって汚染されることが懸念される。ところが、伊豆半島付近の海洋表層には、北東方向に向けて黒潮が流れており、また、伊豆半島南東沖海底には高い海底火山群からなる伊豆・小笠原弧が形成されている。したがって、実際には、伊豆赤沢沖には、黒潮の流れ、そして、伊豆・小笠原弧によって、東京湾から流れ出た汚染された海水が流れ込むことはない。このため、伊豆赤沢沖は、首都圏・大都市圏に最も近い海洋深層水の取水地でありながら、汚染されていない清浄な海洋深層水を得ることが
できる場所となっている。
逆浸透膜法による淡水化は、従来知られている方法によって実施することができる。
例えば、中空糸膜モジュールを用いた逆浸透膜装置(RO装置)による逆浸透膜法を採用することができる。
このような中空糸膜モジュールは、中空糸を実質上同一方向に揃えて束ねた中空糸型選択透過膜エレメントを容器内に中空糸の長手方向に並べて配置している。
逆浸透膜装置を用いる方法は、エネルギー消費量が比較的少なく、かつ、ほぼ完全に溶存イオンを除去することができるという利点がある。
なお、電気透析(ED)法による場合は、電気エネルギーを過大に消費し、しかも溶存イオンを完全には除去することが困難であり、得られる飲料水のミネラルバランスを崩すおそれがある。
このように、海洋深層水から得られた淡水を希釈用水とし、かつ、この希釈用淡水に、好適には0.01〜5.0体積%、より好適には0.1〜0.9体積%の割合で海洋深層水の原水を添加することは、本発明に係る飲料水の製造方法の重要な特徴である。本発明者らは、鋭意検討することによって、このような特徴が最適であることに想到した。このことを、実施例を参照しながら、後に説明する。
海洋深層水を淡水化して得られる水を希釈用水として用いることは、本発明にとって不可欠である。この理由としては、海洋深層水が、水が最大密度を示す温度域(約4℃)において、長年にわたり高圧条件下[特に、800mの場合(伊豆赤沢深層水)、80気圧]で保存された水であるため、河川水や陸水起源のいわゆるミネラルウォーター、水道水、海洋表層水などに比べ、物理・化学的に水としての特性が高く維持されている。
ろ過滅菌は、従来知られている装置を用いて実施することができる。
このようなろ過滅菌装置としては、例えば、除菌ユニットと、殺菌ユニットを備えたものを用いる。
まず、除菌ユニットで除菌を行う。除菌ユニットは、0.2〜0.8μm程度の微細な孔を有するフィルターを備える。除菌ユニットでは、混合水をろ過して細菌等の微生物を除去する。
そして、殺菌ユニットで殺菌を行う。殺菌ユニットは、除菌ユニットで除去しきれなかった微生物をほぼ完全に死滅させる機能を果たす。
殺菌ユニットとしては、例えば、UV灯を備える殺菌ユニットを用いる。
すなわち、飲料水として提供するために、ペットボトル等に封入する。このための装置は、従来知られているものを用いることができる。
このことを、次に、以下の実施例について説明する。
正常ヒト皮膚由来線維芽細胞を各種の水で培養し、細胞活性の変化を評価した。
PBS(リン酸緩衝液)、水道水(東京都港区の上水道)、海洋深層水(原水、伊豆赤沢深層水)、同海洋深層水の逆浸透(RO)膜処理水、及び同海洋深層水の電気透析(ED)処理による2価陽イオン濃縮水
各種水を除菌ろ過(0.2μm)して試験に供した。
ヒト正常線維芽細胞を2万個/穴になるように96穴マイクロプレートに播種して24時間前培養(5%CO2、37℃)を行なった。
前培養終了後、培地を除去して各種の水に置換して、これらの水だけでさらに1時間評価培養(5%CO2、37℃)を行なった。
評価培養終了後、MTT還元法により細胞の活性を測定した。
なお、比較対象として通常培地作製に用いる再蒸留水で作製したPBS(等張リン酸緩衝液、pH6.9)を用いて同様に培養した細胞の活性を100として算出し、T検定により有意差を判定した。
なお、ここでMTT還元法とは、細胞の増殖、活性及び毒性を調べるために広く用いられているアッセイ方法である。細胞内に取り込まれたMTT[3−(4, 5−ジメチル−チアゾール−2−イル)−2, 5−ジフェニルテトラゾリウムブロマイド]は,ミトコンドリアにある脱水素酵素により還元され、ホルマザン色素が生じ、これを比色法(吸光度570nm)で定量する。色素量は代謝活性のある細胞数と相関するため、得られた値は生細胞数つまり活性のある細胞の数に対応する値である。
評価結果を図2に示す。
日常飲用されている水道水では、1時間後には細胞活性が半減した。
しかし、伊豆赤沢海洋深層水の原水(図中、原水)では、その細胞活性は低下しなかった。
一方、伊豆赤沢海洋深層水を逆浸透膜処理した淡水(図中、RO淡水)では、水道水同様1時間後に細胞活性は半減した。
また、伊豆赤沢海洋深層水を電気透析して得られる2価陽イオン濃縮水(図中、EDミネラル水)でも細胞活性は有意に低下した。
この結果から、伊豆赤沢海洋深層水(原水)のミネラル成分を全て除去する。または、人為的かつ適当に濃縮しただけでは身体に良い水はならないことが了解された。
コラーゲン合成量について、海洋深層水の添加割合による影響を試した。本実施例2は、海洋深層水を0〜50体積%の範囲で行った。
イーグルMEM培地(日水製薬製)
伊豆赤沢海洋深層水を逆浸透膜処理した淡水を希釈用水として、0(無添加)、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50体積%の各濃度で伊豆赤沢海洋深層水の原水を添加した。
各濃度の混合水が0.94体積%になるようにイーグルMEM培地を溶解し、200mM/Lグルタミン(和光純薬製)と5%牛胎仔血清(GIBCO社製)を添加混合した後、除菌ろ過(0.2μm)して試験に供した。
ヒト正常線維芽細胞を2万個/穴になるように96穴マイクロプレートに播種し、24時間前培養後各種の水で作製した培地に交換した。これに20μg/mlとなるようにビタミンC(水溶性安定化誘導体,リン酸‐アスコルビルマグネシウム)を添加してさらに48時間評価のための培養を行った。
評価培養終了後、各穴から培地を除去し、PBS(等張リン酸緩衝液)で洗浄後、コラーゲン・ステインキット(コスモバイオ社製)を用いて線維芽細胞が産生したコラーゲン及び非コラーゲン量を測定した。
なお、比較対象として通常培地作製に用いる再蒸留水で作製した培地を用いて同様に培養したビタミンC添加系で得られたコラーゲン及び非コラーゲン量を100として算出し、T検定により有意差を判定した。また、非コラーゲン量は、ビタミンCの添加以外の要因によるコラーゲンの増加がないことを確認するために算出を行なっている。
コラーゲンの合成量を、図3に示す。この結果から、コラーゲンの合成量は、高濃度側では、海洋深層水の添加による有意な差はなかった。
コラーゲン合成量について、海洋深層水の添加割合による影響を試した。本実施例3では、海洋深層水を0〜1.0体積%の範囲で添加した。
イーグルMEM培地(日水製薬製)
伊豆赤沢海洋深層水を逆浸透膜処理した淡水を希釈用水として、0(無添加)、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0体積%の各濃度で伊豆赤沢海洋深層水の原水を添加した。
各濃度の混合水が0.94体積%になるようにイーグルMEM培地を溶解し、200mM/Lグルタミン(和光純薬製)と5%牛胎仔血清(GIBCO社製)を添加混合した後、除菌ろ過(0.2μm)して試験に供した。
ヒト正常線維芽細胞を2万個/穴になるように96穴マイクロプレートに播種し、24時間前培養後各種の水で作製した培地に交換した。これに20μg/mlとなるようにビタミンC(水溶性安定化誘導体,リン酸‐アスコルビルマグネシウム)を添加してさらに48時間評価のための培養を行った。
評価培養終了後、各穴から培地を除去し、PBS(等張リン酸緩衝液)で洗浄後、コラーゲン・ステインキット(コスモバイオ社製)を用いて線維芽細胞が産生したコラーゲン及び非コラーゲン量を測定した。
なお、比較対象として通常培地作製に用いる再蒸留水で作製した培地を用いて同様に培養したビタミンC添加系で得られたコラーゲン及び非コラーゲン量を100として算出し、T検定により有意差を判定した。また、非コラーゲン量は、ビタミンCの添加以外の要因によるコラーゲンの増加がないことを確認するために算出を行なっている。
コラーゲンの合成量を、図4に示す。この結果から、コラーゲンの合成量は、低濃度側では、0.5〜1体積%の割合で海洋深層水を添加した場合に、はっきりと有意な結果を得ることができた。
実施例2と、実施例3の結果から、希釈用淡水に海洋深層水の原水を0.01〜5.0体積%の割合で添加することが好適であり、より好適には、0.1〜0.9体積%の割合で添加することが好適であると判断した。
コラーゲン合成量について、表層水の添加割合による影響を試した。本実施例4では、表層水を0〜1.0体積%の範囲で添加した。
イーグルMEM培地(日水製薬製)
伊豆赤沢で採取した表層水を逆浸透膜処理した淡水を希釈用水として、0(無添加)、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0体積%の各濃度で、伊豆赤沢で採取した表層水を添加した。
各濃度の混合水が0.94体積%になるようにイーグルMEM培地を溶解し、200mM/Lグルタミン(和光純薬製)と5%牛胎仔血清(GIBCO社製)を添加混合した後、除菌ろ過(0.2μm)して試験に供した。
ヒト正常線維芽細胞を2万個/穴になるように96穴マイクロプレートに播種し、24時間前培養後各種の水で作製した培地に交換した。これに20μg/mlとなるようにビタミンC(水溶性安定化誘導体,リン酸‐アスコルビルマグネシウム)を添加してさらに48時間評価のための培養を行った。
評価培養終了後、各穴から培地を除去し、PBS(等張リン酸緩衝液)で洗浄後、コラーゲン・ステインキット(コスモバイオ社製)を用いて線維芽細胞が産生したコラーゲン及び非コラーゲン量を測定した。
なお、比較対象として通常培地作製に用いる再蒸留水で作製した培地を用いて同様に培養したビタミンC添加系で得られたコラーゲン及び非コラーゲン量を100として算出し、T検定により有意差を判定した。また、非コラーゲン量は、ビタミンCの添加以外の要因によるコラーゲンの増加がないことを確認するために算出を行なっている。
コラーゲンの合成量を、図5に示す。この結果から、表層水では、その添加による有意な差はなかった。
なお、図6は、図4の海洋深層水の添加によるコラーゲン合成量への影響に関する結果と、図5の表層水の添加によるコラーゲン合成量への影響に関する結果を取り出して表したものである。
本実施例4により、海洋深層水の添加によるコラーゲン合成への優れた作用が明らかである。
各種の水で調製した培地に対する、安定化ビタミンC添加によるヒト皮膚由来線維芽細胞のコラーゲン合成促進作用を調べた。
イーグルMEM培地(日水製薬製)
伊豆赤沢海洋深層水を逆浸透膜処理した淡水を希釈用水として、0.5体積%の濃度で伊豆赤沢海洋深層水の原水を添加したもの(硬度32mg/L)を本発明で得られた海洋深層水として用いた。
その他は、各々、硬度が、24、60、38、304mg/Lの陸水起源のナチュラルミネラルウォーターを用いた。
各濃度の水が0.94体積%になるようにイーグルMEM培地を溶解し、200mM/Lグルタミン(和光純薬製)と5%牛胎仔血清(GIBCO社製)を添加混合した後、除菌ろ過(0.2μm)して試験に供した。
ヒト正常線維芽細胞を2万個/穴になるように96穴マイクロプレートに播種し、24時間前培養後各種の水で作製した培地に交換した。これに20μg/mlとなるようにビタミンC(水溶性安定化誘導体,リン酸‐アスコルビルマグネシウム)を添加してさらに48時間評価のための培養を行った。
評価培養終了後、各穴から培地を除去し、PBS(等張リン酸緩衝液)で洗浄後、コラーゲン・ステインキット(コスモバイオ社製)を用いて線維芽細胞が産生したコラーゲンを測定した。
なお、比較対象として通常培地作製に用いる再蒸留水で作製した培地を用いて同様に培養したビタミンC添加系で得られたコラーゲン量を100として算出し、T検定により有意差を判定した。
コラーゲンの合成量を、図7に示す。
本発明に係る飲料水では、他の陸水起源のいわゆるミネラルウォーターに比べて顕著に高いコラーゲン合成促進作用を示した。このことから本発明に係る飲料水は他の陸水起源の水よりもビタミンCの細胞内取り込みを亢進させることが示唆された。
各種の水で調製した培地で培養したB16細胞に対するアルブチン添加による美白作用を調べた。B16細胞は旺盛なメラニン産生能を持つことから、美白剤の開発にとって重要な培養細胞である。
イーグルMEM培地(日水製薬製)
伊豆赤沢海洋深層水を逆浸透膜処理した淡水を希釈用水として、0.5体積%の濃度で伊豆赤沢海洋深層水の原水を添加したもの(硬度32mg/L)を本発明で得られた海洋深層水として用いた。
その他は、各々、硬度が、24、60、38、304mg/Lの陸水起源のナチュラルミネラルウォーターを用いた。
各濃度の水が0.94体積%になるようにイーグルMEM培地を溶解し、200mM/Lグルタミン(和光純薬製)と5%牛胎仔血清(GIBCO社製)を添加混合した後、除菌ろ過(0.2μm)して試験に供した。
メラニン産生能が高いB16細胞を2万個/穴になるように96穴マイクロプレートに播種し、24時間前培養後各種の水で作製した培地に交換した。美白剤であるアルブチンを最終濃度が1.5mMになるように添加して48時間評価のための培養を行った細胞内のチロシナーゼ活性を測定した。
なお各種の水におけるアルブチンの細胞内チロシナーゼ活性(Dopa反応法で測定)抑制効果については、通常B16細胞用培地の調製に用いられる再蒸留水を用いて評価した際の効果を100として算出した。
試験結果を、図8に示す。
本発明に係る飲料水では、最も高い細胞内チロシナーゼ活性抑制効果を示し、その効果は他の陸水起源のいわゆるミネラルウォーターに比べて顕著であった。このことから、本発明に係る飲料水は他の陸水起源の水よりもアルブチンの細胞内への取り込みを亢進させることが示された。
伊豆赤沢海洋深層水を逆浸透膜処理した淡水を希釈用水として、0(無添加)、1.0体積%(試験例1)、0.9体積%(試験例2)、0.8体積%(試験例3)、0.7体積%(試験例4)、0.6体積%(試験例5)、0.5体積%(試験例6)、0.4体積%(試験例7)の各濃度で伊豆赤沢海洋深層水の原水を添加した。各々についてサンプルを3点採取した。
試験例1〜7について、電気電導率、硬度、pHを測定した。各試験例についてサンプルを3点採取し、平均値を取った。
そして、20代男性15人がおいしさの順位評点を付けた。順位評点は、1位に10点、以降順位が下がる毎に1点を減点して付与することとした。
その結果を表1に示す
0.01体積%に満たない割合で添加した場合、細胞に対する効果を期待することが困難である。また、320mg/Lを超える硬度の飲料水は、味の低下を引き起こすおそれがある。また、1mS/cmを超える電気電導度では、細胞に対する効果が減少するおそれがある。
102 逆浸透ろ過工程
104 希釈・均一混合工程
106 ろ過滅菌工程
108 ボトリング工程
Claims (1)
- 伊豆赤沢海洋深層水を逆浸透膜法で淡水化して希釈用淡水を得る工程と、該希釈用淡水に伊豆赤沢海洋深層水の原水を0.1〜0.9体積%の割合で添加する工程と、しかる後に、上記希釈用淡水と上記原水の混合水を、除菌ユニットによりろ過して微生物を除去することにより除菌し、さらに除菌後の上記混合水を、UV灯を備える殺菌ユニットにより殺菌する、ろ過滅菌工程とを備え、上記伊豆赤沢海洋深層水が、伊豆赤沢沖の水深800mから汲み上げられた海洋深層水であることを特徴とする飲料水の製造方法。
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