発明を実施するための最良の形態の電力監視制御装置は、直流電流路を切断または導通するブレーカと、ブレーカを制御する制御器と、を備える。ブレーカは、電子的開閉スイッチと、機械的開閉スイッチと、電子的開閉スイッチおよび機械的スイッチを制御するスイッチ制御回路と、直流電流路に流れる直流電流の大きさを検出する電流検出器と、を具備する。制御器は、ブレーカの許容電流またはブレーカの導通する時間を制御し、電流検出器が過電流を検出したときに、電子的開閉スイッチと、機械的開閉スイッチと制御して、アークが発生しないようにブレーカを切断する。
発明を実施するための最良の形態のブレーカは、電子的開閉スイッチと、機械的開閉スイッチと、電子的開閉スイッチおよび機械的スイッチを制御するスイッチ制御回路と、直流電流路に流れる直流電流の大きさを検出する電流検出器と、を備え、電流検出器が過電流を検出したときに、電子的開閉スイッチと、機械的開閉スイッチと制御して、アークが発生しないようにブレーカを切断する。
[電力監視制御装置の構成の概略]
発明を実施するための実施形態の電力監視制御装置について、図面を参照して以下に説明をする。
図1は電力監視制御装置1とその周辺に接続される装置を示す図である。発電所11に備えられた直流発電機10から発生される直流電力が供給される電力系統に電力監視制御装置1の入力側は接続される。電力監視制御装置1は、各家庭、各工場、各施設等に設置される。図1に示す電力監視制御装置1は、ブレーカ2、入力電力・出力電力計3、制御器4、送受信器5を備える。
図1では、電力監視制御装置1を介して、直流発電機10から負荷L1、負荷L2、負荷L3、負荷L4の各々に直流電力が供給される。直流電力は、プラス側の母線12およびマイナス側の母線13によって、直流発電機10から各負荷まで電力が供給される。また、太陽光パネルTtによって得られた電力が負荷L1〜負荷L4、または、直流発電機10を末端に備える直流の電力系統に対して供給される。
負荷L1に対してはブレーカ21、負荷L2に対してはブレーカ22、負荷L3に対してはブレーカ23、負荷L4に対してはブレーカ24の各々が接続されている。各ブレーカは、各負荷に対する電力をオンとオフ(切断と導通)し、過電流を検出した場合には負荷に供給する電力を切断するためのものである。ここで、ブレーカ21、ブレーカ22、ブレーカ24は、電力監視制御装置1のブレーカ2の出力側(出力端子C1、出力端子D1)に対して各々のブレーカの入力側(入力端子A21、入力端子B21、入力端子A22、入力端子B22、入力端子A24、入力端子B24)が接続されている。一方、ブレーカ23は、電力監視制御装置1のブレーカ2の入力側(入力端子A1、入力端子B1)に対してブレーカ23の入力側(入力端子A23、入力端子B23)が並列に接続されている。また、太陽光パネルTtに対してはブレーカ25の入力側(入力端子A25、入力端子B25)が接続され、ブレーカ25の出力側(出力端子C25、出力端子D25)に対しては、ブレーカ21、ブレーカ22、ブレーカ24の入力側が接続されている。
図1に示すように、ブレーカ2の入力側には、入力電力・出力電力計3が接続される。なお、上述したように、ブレーカ2の出力側には、ブレーカ21、ブレーカ22、ブレーカ23、ブレーカ24、およびブレーカ25が接続されている。しかしながら、ブレーカ2の入力側に直接に電力系統を接続し、ブレーカ2の出力側に直接に負荷L1、負荷L2、負荷L4の各負荷および太陽光パネルTtを接続してもブレーカ2の機能は変わるものではない。
入力電力・出力電力計3は、直流発電機10から負荷に向かう入力電力を検出する電力計と、太陽光パネルTtからの余剰電力であって直流発電機10に向かう出力電力を検出する電力計と、の両方を有する電力計である。
送受信器5は、直流発電機10が備えられる発電所11と電力監視制御装置1との間において相互に送受信の通信をするための装置である。送受信は、プラス側の母線12とマイナス側の母線13を用いた有線通信によっておこなわれる。
制御器4は、ブレーカ2と入力電力・出力電力計3と送受信器5とを制御し、さらに、ブレーカ21、ブレーカ22、ブレーカ23、ブレーカ24、ブレーカ25を制御する。制御器4は、中央演算装置(CPU)とラム(RAM)とロム(ROM)と周辺機器およびバスライン26とのインターフェイス回路とを有して構成されている。
制御器4と各ブレーカとの間の通信はバスライン26を通じておこなわれる。具体的には、制御器4は、ブレーカ2に対して、ブレーカ2の電流設定(何アンペア(A)の電流を過電流であるとしてブレーカが動作するかの設定)をおこなう。また、ブレーカ2の状態、すなわち、過電流が発生してブレーカ2が切断した状態、ブレーカ2を制御器4が意図的に切断した状態、ブレーカ2が導通している状態のいずれの状態であるかを検出する。また、制御器4は、ブレーカ21、ブレーカ22、ブレーカ23、ブレーカ24、ブレーカ25に対する制御も同様におこなう。制御器4は、所定時間毎の割り込み処理によって、ブレーカ2、ブレーカ21、ブレーカ22、ブレーカ23、ブレーカ24、ブレーカ25の状態を定期的に監視する。
制御器4と各ブレーカとの通信は、バスライン26を介しておこなわれる。電流信号I2sはブレーカ2の直流電流路を流れる直流電流の大きさを示す信号である(図2を参照)。電流信号I2sはデジタル信号であり、電流信号I2sを検出する電流検出器143は直接にバスライン26に接続される。電流信号I21s、電流信号I22s、電流信号I23s、電流信号I24s、電流信号I25sについても同様にしてバスライン26を介して制御器4に送られる。
バスライン26を介して制御器4との間で、ブレーカ制御信号B2s、ブレーカ制御信号B21s、ブレーカ制御信号B22s、ブレーカ制御信号B23s、ブレーカ制御信号B24s、ブレーカ制御信号B25sの各々は双方向に送受される。
制御器4は、入力電力・出力電力計3から得られる、入力電力と出力電力とを検出する。制御器4は、入力電力、出力電力、ブレーカ2、ブレーカ21、ブレーカ22、ブレーカ23、ブレーカ24、ブレーカ25の状態、その他の情報を、取捨選択して、送受信器5を介して発電所11に送る。また、制御器4は発電所11からの指令を、送受信器5を介して受け取る。
「ブレーカの構成」
後述する第1実施形態のブレーカは、直流電流が流れる直流電流路を開路または閉路とするために直流電流路に挿入される電子的開閉スイッチと、この電子的開閉スイッチに対して並列に接続される並列機械的開閉スイッチと、並列機械的開閉スイッチと電子的開閉スイッチとの相互の開閉時間差を制御するスイッチ制御回路と、直流電流路に流れる直流電流の大きさを検出する電流検出器と、を備える。そして、スイッチ制御回路は、電子的開閉スイッチが閉路とされた所定時間後に、並列機械的開閉スイッチを閉路とする。そして、スイッチ制御回路は、電流検出器で検出する直流電流が所定の許容電流の値を超えたときに直流電流が流れる直流電流路を開路とするに際して、並列機械的開閉スイッチを開路とし、並列機械的開閉スイッチが開路とされることによって生じるチャタリングが収まる時間よりも長い時間以上であって、電子的開閉スイッチの温度が予め定める所定温度に上昇する時間よりも短い時間以内において、電子的開閉スイッチを開路とするものである。
後述する第2実施形態のブレーカは、直流電流が流れる直流電流路を開路または閉路とするために直流電流路に挿入される電子的開閉スイッチと、この電子的開閉スイッチに対して並列に接続される並列機械的開閉スイッチと、この電子的開閉スイッチとこの並列機械的開閉スイッチとに対して直列に接続される直列機械的開閉スイッチと、並列機械的開閉スイッチと直列機械的開閉スイッチと電子的開閉スイッチとの相互の開閉時間差を制御するスイッチ制御回路と、を備える。そして、スイッチ制御回路は、直流電流が流れる直流電流路を閉路とするに際して、直列機械的開閉スイッチが閉路とされた所定時間後に、電子的開閉スイッチを閉路とし、最後に並列機械的開閉スイッチを閉路とする。そして、電流検出器で検出する直流電流が所定の許容電流の値を超えたときに直流電流が流れる直流電流路を開路とするに際して、並列機械的開閉スイッチを開路とし、並列機械的開閉スイッチが開路とされることによって生じるチャタリングが収まる時間よりも長い時間以上であって、電子的開閉スイッチの温度が予め定める所定温度に上昇する時間よりも短い時間以内において、電子的開閉スイッチを開路とし、最後に直列機械的開閉スイッチを開路とするものである。
後述する第3実施形態のブレーカは、直流電流が流れる直流電流路を開路または閉路とするために直流電流路に挿入される電子的開閉スイッチと、この電子的開閉スイッチに直列に接続される直列機械的開閉スイッチと、電子的開閉スイッチとこの直列に接続される機械的開閉スイッチとで形成される直列接続回路に対して並列に接続される並列機械的開閉スイッチと、並列機械的開閉スイッチと直列機械的開閉スイッチと電子的開閉スイッチとの相互の開閉時間差を制御するスイッチ制御回路と、直流電流路に流れる直流電流の大きさを検出する電流検出器と、を備える。そして、スイッチ制御回路は、直流電流が流れる直流電流路を閉路とするに際して、直列機械的開閉スイッチが閉路とされた所定時間後に、電子的開閉スイッチを閉路とし、最後に並列機械的開閉スイッチを閉路とする。また、直流電流が流れる直流電流路を開路とするに際して、並列機械的開閉スイッチが開路とされた所定時間後に、電子的開閉スイッチを開路とし、最後に直列機械的開閉スイッチを開路とするものである。
実施形態の変形の形態(以下実施形態の変形例と記載する)のブレーカは、第1実施形態ないし第3実施形態のブレーカに対して、さらには、電子的開閉スイッチと直列機械的開閉スイッチのみを有するブレーカに対して転流ダイオードの付加、または、回生ダイオードの付加をするものである。転流ダイオードの付加は、ブレーカを切断した直後における逆起電圧の発生を防止することを解決課題とする。回生ダイオードの付加は、負荷であるモータに生じた電力を、ブレーカを介して電力回生をおこなうことを解決課題とする。
以下に第1実施形態ないし第3実施形態、さらには、これらの実施形態の変形の形態について詳細に説明をするが、第1実施形態では並列機械的開閉スイッチ、第2実施形態および第3実施形態では並列機械的開閉スイッチ、直列機械的開閉スイッチをブレーカの一構成要素とし、実施形態の変形例においても、これらを一構成要素としているのでこれらの機械的開閉スイッチについてまず説明をする。
機械的開閉スイッチは、導電体で形成された2つの接点を有し、電流が流れる経路である直流電流路に機械的開閉スイッチは挿入され、機械的開閉スイッチの各々の接点は2つに分断された直流電流路に各々接続されている。2つの接点が相互に接触して閉状態となることによって直流電流路が形成され、2つの接点が離間して開状態となることによって直流電流路が切断されるようになされている。
以下に図を引用して具体的な実施形態について説明をする。図1に示す電力監視制御装置1における、ブレーカ2、ブレーカ21、ブレーカ22、ブレーカ23、ブレーカ24、ブレーカ25の各々は、以下の実施形態に示すような種々の構成とすることができる。そして、用途に合わせて、以下の、ブレーカ20a、ブレーカ20b、ブレーカ20c、ブレーカ20d、ブレーカ20e、ブレーカ20f、ブレーカ20g、ブレーカ20h、ブレーカ20i、ブレーカ20jのいずれをも適宜に用いることができる。
(第1実施形態のブレーカ)
図2は、第1実施形態のブレーカ20aを示す図である。図1に示すブレーカ2としてブレーカ20aを用いる場合について以下に説明をする。ブレーカ20aは、負荷L1、負荷L21、負荷L22、負荷L24および太陽光パネルTtと直流の電力系統との間の電流経路に挿入して用いることができる。図2では、ブレーカ20aは、入力端子A1と入力端子B1と出力端子C1と出力端子D1とを有する四端子回路として記載されているが、入力端子A1と出力端子C1とは電気的には同一箇所であり、出力端子C1を設けることなく入力端子A1と入力端子B1と出力端子D1とを有する三端子回路であっても同様の作用効果を生じる。電力系統は、入力端子A1(+側)と入力端子B1(−側)とに対して接続されている。負荷L1、負荷L2、負荷L3、負荷L4の各負荷は、ブレーカ21、ブレーカ22、およびブレーカ25を介して四端子回路の出力端子C1(+側)と出力端子D1(−側)とに対して接続されている。また、図示はしないが、入力端子(入出力端子)A1と入力端子B1と出力端子D1とを有する三端子回路である場合には、入力端子(入出力端子)A1(+側)と出力端子D1(−側)とに対して接続される。太陽光パネルTtはブレーカ24を介して四端子回路の入力端子A1(+側)と入力端子B1(−側)とに対して接続されている。
ブレーカ20aは、並列機械的開閉スイッチ16と、電子的開閉スイッチ15と、スイッチ制御回路14と、を備えている。そして、この並列機械的開閉スイッチ16と電子的開閉スイッチ15とは並列に接続され、並列機械的開閉スイッチ16および電子的開閉スイッチ15の並列接続回路が、電力系統と負荷との間の直流電流路に挿入されている。
負荷は、電気機器である。電気機器は静止機器(例えば、テレビジョン受像機)のみならず、回転機器(例えば、冷蔵庫のコンプレッサ)であっても良く、回転機器としては、例えば、直流モータ、インバータなどの電力変換器を介して駆動する交流モータが、例として挙げられる。ブレーカ20aの並列機械的開閉スイッチ16および電子的開閉スイッチ15は、負荷に対して、直流電流が流れる直流電流路を開路(直流電流路が形成されない状態)または閉路(直流電流路が形成される状態)とするために挿入されている。
すなわち、並列接続された並列機械的開閉スイッチ16および電子的開閉スイッチ15は、並列機械的開閉スイッチ16および電子的開閉スイッチ15のいずれもが、入力端子B1の側のマイナス側の母線13に挿入され電力系統と負荷との間に直列に接続されている。このために、並列機械的開閉スイッチ16または電子的開閉スイッチ15のいずれか一方を閉(導通)とすると直流電流路は導通(閉路)とされ、並列機械的開閉スイッチ16および電子的開閉スイッチ15の両方を開(切断)とすると直流電流路は切断(開路)とされる。この開閉の動作によって、負荷への電力供給を絶ち、または、負荷に電力系統からの電力を供給することができる。なお、図2では並列機械的開閉スイッチ16および電子的開閉スイッチ15が、マイナス側の母線13に挿入されているが、入力端子A1の側のプラス側の母線12に挿入しても同様な作用効果を奏する。
スイッチ制御回路14は、並列機械的開閉スイッチ16と電子的開閉スイッチ15との両者の相互の開閉時間差を制御する。このとき、ブレーカ制御信号B2sは、スイッチ制御回路14に対して、並列機械的開閉スイッチ16および電子的開閉スイッチ15の開閉の契機となるトリガー信号を与える。
並列機械的開閉スイッチ16および電子的開閉スイッチ15の閉(導通)の契機となるトリガー信号であるブレーカ制御信号B2sは、バスライン26を介して制御器4から出力され、スイッチ制御回路14に供給される。並列機械的開閉スイッチ16および電子的開閉スイッチ15の開(切断)の契機となるトリガー信号である。電流検出器143から出力される電流信号I2sは、バスライン26を介して制御器4に供給される。電流検出器143は内部にA/D変換器(エーディ変換器)を有しておりデジタル信号として電流信号I2sはバスライン26に供給される。
図3は、ブレーカ制御信号B2s、並列機械的開閉スイッチ16および電子的開閉スイッチ15の開閉の手順をタイミングチャートで示す図である。図3(A)はブレーカ制御信号B2sの指令が、ブレーカ20aが開である切断(切断状態)と閉である導通(導通状態)を示し、図3(B)は電子的開閉スイッチ15が開である切断(切断状態)と閉である導通(導通状態)を示し、図3(C)は並列機械的開閉スイッチ16が開である切断(切断状態)と閉である導通(導通状態)を示すものである。横軸は時刻tを示すものである。図3を参照して、ブレーカ制御信号B2sに対する、電子的開閉スイッチ15および並列機械的開閉スイッチ16の開閉の動作を説明する。まず、ブレーカ20aによって直流電流路を閉路とする場合の手順を説明する。
制御器4がブレーカ制御信号B2sを送出して切断から導通に変化させるトリガーを発生させる(図3(A)の時刻t1を参照)。スイッチ制御回路14は、ブレーカ制御信号B2sの指令によって発生するトリガー信号に基づき並列機械的開閉スイッチ16および電子的開閉スイッチ15を切断から導通に変化させる(図3(B)の時刻t1、図3(C)の時刻t2を参照)。すなわち、図3(B)に示すように、ブレーカ制御信号B2sの指令が導通(閉)となると、電子的開閉スイッチ15は、原理的には動作遅れなく、実際の半導体素子ではごく僅かの動作遅れを有して導通(閉)となる。一方、図3(C)に示すように、ブレーカ制御信号B2sの指令が導通(閉)となると、並列機械的開閉スイッチ16は予め定めた所定時間τ1の後に導通(閉)となる。ここで、時刻t1と時刻t2の間の所定時間τ1の間は、電子的開閉スイッチ15のみが導通する。そして所定時間τ1の間は電子的開閉スイッチ15において電力損失が発生するので、電子的開閉スイッチ15の温度が予め定める所定温度以上(例えば、60℃以上)に上昇しないような短い時間に所定時間τ1は設定されている。
所定時間τ1は電子的開閉スイッチ15の動作遅れ以上であれば良い。所定時間τ1の長さを長くすることによって、電子的開閉スイッチ15が十分に導通した後(電子的開閉スイッチ15のオン電圧が十分に低くなった後)に並列機械的開閉スイッチ16を導通させることを確保できる。このように所定時間τ1を設定することによって並列機械的開閉スイッチ16の接点に高電圧が印加されたまま回路を閉とし、その結果として、接点に熱損失が生じるようなことはない。
つまり、所定時間τ1の最大許容時間は、電子的開閉スイッチ15の許容温度によって定まり、所定時間τ1の最小許容時間は電子的開閉スイッチ15の導通速度によって定まる。さらに、所定時間τ1が長くなればなるほど、直流電流路中の電子的開閉スイッチ15に生じる電力損失は大きくなる。以上を勘案して、所定時間τ1は定められる。
このようにして、並列機械的開閉スイッチ16が電子的開閉スイッチ15よりも先に導通しないようにしている。並列機械的開閉スイッチ16が電子的開閉スイッチ15よりも先に導通する場合には、並列機械的開閉スイッチ16の接点にアークが発生して接点の損傷を生じるおそれがある。特に、接点のチャタリングによってアークが発生する可能性は倍加する。ここで、チャタリングとは、並列機械的開閉スイッチ16の接点が切り替わった際に、微細で非常に速い機械的振動によって、接点が接触と非接触とを繰り返し直流電流路に流れる電流を切断・導通させようとする現象であり、例えば、1〜100ms(ミリセカンド)程度持続する現象である。
次に、ブレーカ20aによって直流電流路を開路とする場合の手順を説明する。制御器4が導通から切断に変化させるブレーカ制御信号B2sを送出する(図3(A)の時刻t3を参照)。ここで、制御器4が導通から切断に変化させる信号を送出するのは、電流信号I2sによって検出される電流の大きさが、規定の電流量(例えば、50A(アンペア))を超えたことを制御器4が検出した場合である。ここで、制御器4は、CPUを有しているので、CPUは、RAMに格納された規定の電流量とデジタル信号である電流信号I2sとの大小比較をして、電流信号I2sによって検出される電流の大きさが規定の電流量を超えたことを検出できる。
スイッチ制御回路14は、ブレーカ制御信号B2sの指令によって発生するトリガー信号に基づき並列機械的開閉スイッチ16を導通から切断に変化させる(図3(C)の時刻t3を参照)。また、スイッチ制御回路14は、ブレーカ制御信号B2sの指令によって発生するトリガー信号に基づき並列機械的開閉スイッチ16を導通から切断に変化させてから所定時間τ2後の時刻t4に電子的開閉スイッチ15を導通から切断に変化させる。ここで、時刻t3と時刻t4との間の所定時間τ2は、並列機械的開閉スイッチ16のチャタリングが収まる時間よりも長い時間以上に設定されるとともに、所定時間τ2は、電子的開閉スイッチ15の温度が予め定める所定温度に上昇する時間よりも短い時間以内に設定する。
図示はしないが、温度検出器を電子的開閉スイッチ15に圧接して電子的開閉スイッチ15の温度を検出するようにしても良い。そして、スイッチ制御回路14は、温度検出器で検出する温度が予め定める所定温度に達したら電子的開閉スイッチ15を切断するようにして、十分に所定時間τ2の長さを確保するようにしても良い。
なお、ブレーカ制御信号B2sはCPUによってスイッチ制御回路14に対して送信されるだけではない。制御器4のCPUは、ブレーカ2のスイッチ制御回路14に対してブレーカ2の状態を問い合わせて、それに対する応答を受信する。具体的には、制御器4のCPUは、スイッチ制御回路14が電子的開閉スイッチ15を導通とする制御をしているのか、切断とする制御をしているのかをブレーカ制御信号B2sの内容として受信する。また、スイッチ制御回路14が並列機械的開閉スイッチ16を導通とする制御をしているのか、切断とする制御をしているのかをブレーカ制御信号B2sの内容として受信する。さらに、後述するスイッチ制御回路141、スイッチ制御回路114を制御する場合には、直列機械的開閉スイッチ161を導通とする制御をしているのか、切断とする制御をしているのかをブレーカ制御信号B2sの内容として制御器4のCPUは受信する。また、上述したようにして、温度検出器で検出する温度を制御器に送るようにしても良い。他のブレーカについても同様の通信が制御器4との間でおこなわれる。
このような手順で、導通から切断とする場合においては、所定時間τ2は、並列機械的開閉スイッチ16のチャタリングが収まる時間よりも長い時間に設定されている。よって、並列機械的開閉スイッチ16のチャタリングが収まった後、並列機械的開閉スイッチ16が完全に開となった時点において、未だ電子的開閉スイッチ15は閉となっている。そのために、所定時間τ2以内の時間において、電子的開閉スイッチ15が、例えば、MOS−FETの場合には、電子的開閉スイッチ15の抵抗値は小さく、電子的開閉スイッチ15の両端に生じる電圧は小さい。よって、所定時間τ2以内の時間において、並列機械的開閉スイッチ16の接点にチャタリングが生じたとしても、並列機械的開閉スイッチ16の接点間におけるアークの発生はない。
また、電子的開閉スイッチ15が、例えば、バイポーラトランジスタの場合には、接点の両端には、電子的開閉スイッチ15のオン電圧以上の電圧が生じることはない。よって、並列機械的開閉スイッチ16の接点間におけるアークの発生はない。
また、所定時間τ2は、電子的開閉スイッチ15の温度が予め定める所定温度(例えば、安全規格で定める温度、半導体の定格で定める温度)に上昇する時間よりも短い時間に設定されるので、電子的開閉スイッチ15は、安全な低い温度を維持し、また、熱破壊することがない。そして、電子的開閉スイッチ15を開とする時点で直流電流路は切断(開)の状態とされる。
つまり、所定時間τ2の最大許容時間は、電子的開閉スイッチ15の許容温度によって定まり、所定時間τ2の最小許容時間は、並列機械的開閉スイッチ16のチャタリング持続時間であり、所定時間τ2はチャタリング持続時間以上の時間とされる。さらに、所定時間τ2が長くなればなるほど、直流電流路中の電子的開閉スイッチ15に生じる電力損失は大きくなる。以上を勘案して、所定時間τ2は定められる。
ここで、並列機械的開閉スイッチ16を設けた第1実施形態のブレーカ20aの利点をまとめる。機械的開閉スイッチ16の接点抵抗は、例えば、数mΩ(ミリオーム)程度であるが、電子的開閉スイッチ15の接点抵抗は、例えば、数百mΩ程度となる場合がある。そのために、このようなブレーカが長時間に渡り電流路を導通(閉)とする場合には、電子的開閉スイッチ15における抵抗損(電力損)は無視できないものであり、抵抗損に応じた発熱も無視できないものである。
電子的開閉スイッチ15の接点抵抗を低下させるために、半導体で形成された電子的開閉スイッチ15のチップサイズを大きくして、導通時の抵抗を低くする解決策が考えられる。また、導通時におけるオン電圧を低くする解決策が考えられる。さらに、電子的開閉スイッチ15で生じる発熱に対しては、発熱自体を阻止できないものの、熱伝導度の高い材料で形成した放熱板を用いて電子的開閉スイッチ15の温度上昇を防止することができる。しかしながら、チップサイズを大きくする場合には、電子的開閉スイッチ15の価格が高価なものとなる。また、放熱板を用いる場合には、ブレーカの大型化は避けられないこととなる。第1実施形態のブレーカ20aでは、電子的開閉スイッチ15のチップサイズを大きくせず、ブレーカ20aのサイズの小型化を同時に測るものである。
要するに第1実施形態のブレーカ20aでは、並列機械的開閉スイッチ16の導通する時間を前後方向(より前の時刻から(前方向)より後の時刻まで(後方向))に覆うように、電子的開閉スイッチ15の導通する時間を定めるものである。そして、前方向に覆う時間である所定時間τ1と後方向に覆う時間である所定時間τ2とは、電子的開閉スイッチ15の温度が予め定める所定温度に上昇する時間よりも短い時間以内に設定するとともに、電子的開閉スイッチ15に生じる電力損失が無視できる時間とする。また、所定時間τ2は、並列機械的開閉スイッチ16のチャタリングが収まる時間よりも長い時間以上に設定するものである。このようにして、電子的開閉スイッチ15が導通している間は、このブレーカ20aは導通とされる。
図4は、図2に示すブレーカ20aの実施例を示す図である。図4を参照して、ブレーカ20aのより具体的な構成の一例を説明する。並列機械的開閉スイッチ16の一実施例である並列機械的開閉スイッチ16aは、電気接点を機械的に開閉する継電器(リレー)50と、継電器50を駆動するバイポーラトランジスタ51を有して、バイポーラトランジスタ51を介して、継電器50のコイル巻線に流す電流を制御することができるようになされている。例えば、コイル巻線に電流を流す場合に接点が閉とされ、コイル巻線に電流を流さない場合に接点が開とされる。
電子的開閉スイッチ15の一実施例である電子的開閉スイッチ15aは、MOS−FET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transisitor:モスエフイーテー)53と、バイポーラトランジスタ54とを主要な構成部品とし形成される。抵抗R1および抵抗R2の接続点とバイポーラトランジスタ54のコレクタとをMOS−FET53のゲートに接続して、MOS−FET53は、直流電流路を開閉するようになされている。ここで、電子的開閉スイッチ15aを開路とする場合には、ゲート電圧を下げて、ドレインとソースとの間を高抵抗とし、電子的開閉スイッチ15aを閉路とする場合には、ゲート電圧を上げて、ドレインとソースとの間を低抵抗とするようになされている。
スイッチ制御回路14の一実施例であるスイッチ制御回路14aは、デジタルロジック回路18と周辺回路で構成される。抵抗R4は、デジタルロジック回路18に対して動作電圧を供給するためのものであり、動作電圧は、ゼナーダイオードZDとコンデンサCとで定電圧化が図られている。ブレーカ制御信号B2sはデジタルロジック回路18の信号入力端子Iに入力される。デジタルロジック回路18は信号出力端子O1と信号出力端子O2とを具備し、信号出力端子O1からの信号は、バイポーラトランジスタ51のベースに印加され、信号出力端子O2からの信号は、バイポーラトランジスタ54のベースに印加されるようになされている。このようなスイッチ制御回路14の一実施例であるスイッチ制御回路14aによって、図3のタイミングチャートに示す動作を実現できる。なお、信号出力端子O1からの信号のレベルがハイレベルのときに継電器50の接点が閉とされ、信号出力端子O2からの信号のレベルがローレベルのときには、MOS−FET53のドレインとソースとの間を低抵抗とするように、すなわち、電子的開閉スイッチ15aを閉路とするようになされている。
上述した回路例において、電子的開閉スイッチとして、MOS−FETを用い、このMOS−FETを駆動する回路部としてバイポーラトランジスタを用いたが、この両者の組み合わせにおいて、MOS−FET、バイポーラトランジスタ、IGBT等の半導体デバイスをいかなるように組み合わせても同様な効果を得ることができる。例えば、電子的開閉スイッチとして、バイポーラトランジスタを用い、このバイポーラトランジスタを駆動する回路部としてMOS−FETを用いることもできるものである。
(第2実形態のブレーカ)
図5は第2実形態のブレーカを示す図である。第2実形態のブレーカ20bは、直流電流が流れる直流電流路を開路または閉路とするために直流電流路に挿入される並列機械的開閉スイッチ16および直列機械的開閉スイッチ161と、電子的開閉スイッチ15と、スイッチ制御回路141と、を備えている。ここで、直列機械的開閉スイッチ161は、電子的開閉スイッチ15と直列に接続されるので、上述したように直列機械的開閉スイッチと称される。
第2実形態のブレーカの特徴は、第1実施形態における直流電流路の閉路状態における電力損失が小さいという特徴を維持しながら、さらに、直流電流路の電子的開閉スイッチ15に対して直列に直列機械的開閉スイッチ161を挿入して、直流電流路の切断をより確実なものとして、より安全性を向上するものである。
第2実形態のブレーカ20bにおける並列機械的開閉スイッチ16および直列機械的開閉スイッチ161は、第1実施形態のブレーカ2における並列機械的開閉スイッチ16と同様の構成を有しており、第2実形態のブレーカ20bにおける電子的開閉スイッチ15は、第1実施形態のブレーカ2における電子的開閉スイッチ15と同様の構成を有している。
そして、この並列機械的開閉スイッチ16と電子的開閉スイッチ15とは並列に接続され、この並列接続回路と直列機械的開閉スイッチ161とは直列に接続されている。よって、並列機械的開閉スイッチ16と電子的開閉スイッチ15との並列接続回路とこの並列接続回路に対して直列接続される直列機械的開閉スイッチ161とで形成される直列接続回路が、電力系統と負荷との間に直列となるように配置されている。
図6は、ブレーカ制御信号B2sの指令、並列機械的開閉スイッチ16、電子的開閉スイッチ15および直列機械的開閉スイッチ161の開閉の手順をタイミングチャートで示す図である。図6(A)は、ブレーカ制御信号B2sの指令の切断(切断状態)と導通(導通状態)を示し、図6(B)は、直列機械的開閉スイッチ161の切断(切断状態)と導通(導通状態)を示し、図6(C)は、電子的開閉スイッチ15の切断(切断状態)と導通(導通状態)を示し、図6(D)は、並列機械的開閉スイッチ16の切断(切断状態)と導通(導通状態)を示すものである。横軸は時刻tを示すものである。このような制御はスイッチ制御回路141によって行われる。
ここで、図6(C)と図6(D)に表された、電子的開閉スイッチ15の切断(切断状態)および導通(導通状態)と並列機械的開閉スイッチ16の切断(切断状態)と導通(導通状態)との相互の関係は、図3(B)と図3(C)に表されたものと同様である。つまり、図6と図3とに示す並列機械的開閉スイッチ16は、図6と図3とに示すに示す電子的開閉スイッチ15に対して同様の時間関係を有して動作する。
つまり、電子的開閉スイッチ15が導通となる時刻t6から所定時間τ4の後である時刻t7に並列機械的開閉スイッチ16は導通するが、所定時間τ4(図6を参照)と所定時間τ1(図3を参照)とは同じ基準に基づき定められる。また、並列機械的開閉スイッチ16が切断となる時刻t8から所定時間τ5の後である時刻t9に電子的開閉スイッチ15は切断するが、所定時間τ5(図6を参照)と所定時間τ2(図3を参照)とは同じ基準に基づき定められる。
図6を参照して、まず、ブレーカ20bによって直流電流路を閉路とする場合の手順を説明する。
ブレーカ制御信号B2sが出力される(図6(A)の時刻t5を参照)。スイッチ制御回路141は、ブレーカ制御信号B2sの指令によって発生するトリガー信号に基づき直列機械的開閉スイッチ161を切断から導通に変化させる(図6(B)の時刻t5を参照)。すなわち、図6(B)に示すように、ブレーカ制御信号B2sの指令が導通(閉)となると、直列機械的開閉スイッチ161は導通(閉)となる。ここで、直列機械的開閉スイッチ161が導通しても、電子的開閉スイッチ15、並列機械的開閉スイッチ16のいずれもが開であるので、直列機械的開閉スイッチ161に電流が流れることはない。そして、スイッチ制御回路141は、時刻t5から所定時間τ3後に電子的開閉スイッチ15を導通させる。
直列機械的開閉スイッチ161と電子的開閉スイッチ15とが導通する時刻t6において直流電流路は閉となり負荷に電力が供給される。ここで、時刻t5と時刻t6との間の所定時間τ3の長さは、直列機械的開閉スイッチ161の接点のチャタリングが収まる(消滅する)までの時間よりも長くしている。このようにして、直列機械的開閉スイッチ161の接点にアークが生じることを防止している。
このような手順で、切断から導通とする場合においては、直列機械的開閉スイッチ161を閉とする時点では、未だ電子的開閉スイッチ15は開となっており、直列機械的開閉スイッチ161の接点に電圧が加わることはないのでチャタリングが生じたとしても、直列機械的開閉スイッチ161の接点にアークが生じることはない。
上述したように、電子的開閉スイッチ15と並列機械的開閉スイッチ16との相互の動作の時間関係は、第1実施形態におけると同様であるが、以下に説明をする。電子的開閉スイッチ15が導通となる時刻t6から予め定めた所定時間τ4の後の時刻t7に並列機械的開閉スイッチ16は導通(閉)となる。ここで、所定時間τ4は、電子的開閉スイッチ15の温度が予め定める所定温度以上に上昇しないような短い時間であることが望ましい。
電子的開閉スイッチ15の動作遅れが全く無く、スイッチ制御回路141からの制御信号によって直に導通状態となる場合には、所定時間τ4は、0であっても良いが、所定時間τ4の長さを長くすることによって、電子的開閉スイッチ15が十分に導通した後(電子的開閉スイッチ15のオン電圧が十分に低くなった後)に並列機械的開閉スイッチ16を導通させることを確保できる。仮に、並列機械的開閉スイッチ16が電子的開閉スイッチ15よりも先に導通する場合には、並列機械的開閉スイッチ16の接点のチャタリングによってアークが発生する可能性があり、このような制御は採用できない。
次に、ブレーカ20bによって直流電流路を開路とする場合の手順を説明する。制御器4が導通から切断に変化させるブレーカ制御信号B2sを送出する(図6(A)の時刻t8を参照)。ここで、制御器4が導通から切断に変化させる信号を送出するのは、電流信号I2sによって検出される電流の大きさが、規定の電流量(例えば、50A(アンペア))を超えたことを制御器4が検出した場合である。
スイッチ制御回路141は、ブレーカ制御信号B2sの指令によって発生するトリガー信号に基づき並列機械的開閉スイッチ16を導通から切断に変化させる(図6(C)の時刻t8を参照)。また、スイッチ制御回路141は、ブレーカ制御信号B2sの指令によって発生するトリガー信号に基づき並列機械的開閉スイッチ16を導通から切断に変化させてから所定時間τ5後の時刻t9に電子的開閉スイッチ15を導通から切断に変化させる。ここで、所定時間τ5は、並列機械的開閉スイッチ16のチャタリングが収まる時間よりも長い時間以上に設定されるとともに、電子的開閉スイッチ15の温度が予め定める所定温度に上昇する時間よりも短い時間以内に設定される。さらに、所定時間τ5が長くなればなるほど、直流電流路中の電子的開閉スイッチ15に生じる電力損失は大きくなる。以上を勘案して、所定時間τ5は定められる。
そして、電子的開閉スイッチ15を開路とした後である所定時間τ6の後に、直列機械的開閉スイッチ161を開路とする。ここで、所定時間τ6は0であっても良いが、所定時間τ6の長さを長くすることによって、電子的開閉スイッチ15が十分に切断した後に直列機械的開閉スイッチ161を切断させることを確保できる。
このような手順で、導通から切断とする場合においては、並列機械的開閉スイッチ16を開とする時点では、未だ電子的開閉スイッチ15は閉となっており、並列機械的開閉スイッチ16の接点にチャタリングが生じたとしても、並列機械的開閉スイッチ16の接点の両端には、電子的開閉スイッチ15のオン電圧以上の電圧が生じることはなく、この接点間におけるアークの発生はない。そして、電子的開閉スイッチ15を開とする時点で直流電流路は切断(開)の状態とされる。
そして、最後に、直列機械的開閉スイッチ161を切断(開)とすることによって直流電流路の切断をより確実なものとする。直列機械的開閉スイッチ161の切断は、時刻t9よりも所定時間τ6遅れた時刻t10に行われるようにスイッチ制御回路141が制御をする。電子的開閉スイッチ15の切断(開)が十分の行われた後(電子的開閉スイッチ15が完全にオフ状態となった後)に行うように、所定時間τ6の長さを選択するのが望ましい。つまり、電子的開閉スイッチ15の動作遅れが大きい場合には、所定時間τ6を長くして、直列機械的開閉スイッチ161の接点がダメージを受けないようにする。
要するに第2実形態のブレーカでは、並列機械的開閉スイッチの導通する時間を前後方向に覆うように、電子的開閉スイッチの導通する時間を定める。また、電子的開閉スイッチの導通する時間を前後方向に覆うように、直列機械的開閉スイッチの導通する時間を定める。ここで、直列機械的開閉スイッチの接点のチャタリングが収まる時間、電子的開閉スイッチの導通する時間を前方向に覆うにしている。このようにして、電子的開閉スイッチ15が導通している間は、このブレーカは導通とされる。
(第3実施形態のブレーカ)
図7は、第3実施形態のブレーカを示す図である。図7に第3実施形態のブレーカとしてのブレーカ20cを示す。第3実形態のブレーカ20cは、直流電流が流れる直流電流路を開路または閉路とするために直流電流路に挿入される並列機械的開閉スイッチ16および直列機械的開閉スイッチ161と、電子的開閉スイッチ15と、スイッチ制御回路141と、を備えている。第3実施形態のブレーカの特徴は、第1実施形態における直流電流路の導通状態における電力損失が小さいという特徴を維持しながら、さらに、直流電流路に直列に直列機械的開閉スイッチ161を挿入して、直流電流路の切断をより確実なものとして、より安全性を向上するものである。
第3実形態のブレーカ20cにおける並列機械的開閉スイッチ16および直列機械的開閉スイッチ161は、第1実施形態のブレーカ2における並列機械的開閉スイッチ16と同様の構成を有しており、第3実形態のブレーカ20cにおける電子的開閉スイッチ15は、第1実施形態のブレーカ2における電子的開閉スイッチ15と同様の構成を有している。
そして、この直列機械的開閉スイッチ161と電子的開閉スイッチ15とは直列に接続され、この直列接続回路と並列機械的開閉スイッチ16とは並列に接続されている。よって、直列機械的開閉スイッチ161と電子的開閉スイッチ15との直列接続回路とこの直列接続回路に対して並列接続される並列機械的開閉スイッチ16とで形成される並列接続回路が、電力系統と負荷との間に直列となるように配置されている。
母線13に挿入されている機械的開閉スイッチと電子的開閉スイッチの接続態様に着目して、図5に示す第2実形態のブレーカと図7に示す第3実施形態のブレーカとを対比する。図5に示す第2実形態のブレーカと図7に示す第3実施形態のブレーカのいずれにおいても直列機械的開閉スイッチ161と電子的開閉スイッチ15とは直列に接続されている。また、図5に示す第2実形態のブレーカでは、並列機械的開閉スイッチ16は、電子的開閉スイッチ15と並列に接続されており、図7に示す第3実施形態のブレーカでは、並列機械的開閉スイッチ16は、直列機械的開閉スイッチ161を介して、電子的開閉スイッチ15と並列に接続されている。
第2実形態のブレーカ20bと第3実形態のブレーカ20cのこのような接続態様の共通性から、第3実施形態における、ブレーカ制御信号B2sの指令、並列機械的開閉スイッチ16、電子的開閉スイッチ15および直列機械的開閉スイッチ161の開閉の手順を示すタイミングチャートは図6と同様なものとなるので、再び図6を参照して説明をする。
図6(A)は、ブレーカ制御信号B2sの指令の切断(切断状態)と導通(導通状態)を示し、図6(B)は、直列機械的開閉スイッチ161の切断(切断状態)と導通(導通状態)を示し、図6(C)は、電子的開閉スイッチ15の切断(切断状態)と導通(導通状態)を示し、図6(D)は、並列機械的開閉スイッチ16の切断(切断状態)と導通(導通状態)を示すものである。横軸は時刻tを示すものである。このような制御はスイッチ制御回路141によって行われる。
つまり、電子的開閉スイッチ15が導通となる時刻t6から所定時間τ4の後である時刻t7に並列機械的開閉スイッチ16は導通するが、所定時間τ4(図6を参照)と所定時間τ1(図3を参照)とは同じ基準に基づき定められる。また、第1機械的開閉スイッチが切断となる時刻t8から所定時間τ5の後である時刻t9に電子的開閉スイッチ15は切断するが、所定時間τ5(図6を参照)と所定時間τ2(図3を参照)とは同じ基準に基づき定められる。また、所定時間τ3(図6を参照)と所定時間τ6(図6を参照)とは、第2実施形態におけると同様の意味内容を有する時間である。
第3実形態のブレーカ20cの開閉の手順は、第2実施形態に示したものと同様であるので説明を省略する。
要するに第3実施形態のブレーカでは、並列機械的開閉スイッチ16の導通する時間を前後方向に覆うように、電子的開閉スイッチ15の導通する時間を定める。また、電子的開閉スイッチ15の導通する時間を前後方向に覆うように、直列機械的開閉スイッチ161の導通する時間を定める。ここで、機械的開閉スイッチ(直列機械的開閉スイッチ)の接点のチャタリングが収まる時間、電子的開閉スイッチの導通する時間を前方向に覆うにしている。
上述した、第1実施形態のブレーカないし第3実施形態のブレーカのいずれにおいても、ブレーカは、直流電流が流れる直流電流路を開路または閉路とするために、直流電流路に挿入される電子的開閉スイッチと、電子的開閉スイッチに対して並列に接続される並列機械的開閉スイッチと、並列機械的開閉スイッチと電子的開閉スイッチとの相互の開閉時間差を制御するスイッチ制御回路と、を備えており、スイッチ制御回路は、電子的開閉スイッチが閉路とされた所定時間後に、並列機械的開閉スイッチを閉路とするものである。
このようにすることによって、並列機械的開閉スイッチを閉路とするに際して、チャタリングによって、並列機械的開閉スイッチの接点にアークを生じさせることがない。また、電子的開閉スイッチが閉路とされた所定時間後に、並列機械的開閉スイッチを閉路とするので、この所定時間の間のみ電子的開閉スイッチには電流が流れ、電子的開閉スイッチの温度上昇が防止できる。そして、並列機械的開閉スイッチおよび電子的開閉スイッチの小型化、さらには、電子的開閉スイッチに設けられるヒートシンクの小型化が図られる。
また、スイッチ制御回路は、直流電流路を開路とするに際しては、並列機械的開閉スイッチを開路とし、並列機械的開閉スイッチが開路とされることによって生じるチャタリングが収まる時間よりも長い時間以上であって、電子的開閉スイッチの温度が予め定める所定温度に上昇する時間よりも短い時間以内において、電子的開閉スイッチを開路とするものである。
また、上述した、第2実形態のブレーカおよび第3実施形態のブレーカのいずれにおいても、ブレーカは、電子的開閉スイッチと並列機械的開閉スイッチとに加えて、電子的開閉スイッチに直列に接続される直列機械的開閉スイッチを備えており、直流電流が流れる直流電流路を閉路とするに際しては、直列機械的開閉スイッチが閉路とされることによって生じるチャタリングが収まる時間よりも長い所定時間後に、電子的開閉スイッチを閉路とするものである。
また、直流電流が流れる直流電流路を開路とするに際しては、電子的開閉スイッチを開路とした後に、直列機械的開閉スイッチを開路とするものである。
このようにすることによって、第2実形態のブレーカおよび第3実施形態のブレーカのいずれにおいても、第1実施形態のブレーカと同様に、電子的開閉スイッチが閉路とされた所定時間後に、並列機械的開閉スイッチを閉路とするので、並列機械的開閉スイッチを閉路とするに際して、チャタリングによって、並列機械的開閉スイッチの接点にアークを生じさせることがない。また、この所定時間の間のみ電子的開閉スイッチには電流が流れ、電子的開閉スイッチの温度上昇が防止できる。そして、並列機械的開閉スイッチおよび電子的開閉スイッチの小型化、さらには、電子的開閉スイッチに設けられるヒートシンクの小型化が図られる。加えて、直列機械的開閉スイッチと電子的開閉スイッチとが直流電流路に直列に配置されるので、直列機械的開閉スイッチを開とすることによって、直列機械的開閉スイッチの2つの接点は離間され、物理的に直流電流路が切断されブレーカとしての安全性がより高まる。さらに、直列機械的開閉スイッチは最後に開とされるので、直列機械的開閉スイッチの接点にアークを生じさせることがない。
「第1実施形態ないし第3実施形態のブレーカの変形例」
(電力回生回路付ブレーカ)
第1実施形態のブレーカないし第3実施形態のブレーカにおいて、ブレーカの出力端子C1と出力端子D1から負荷までの配線が長く配線がインダクタンスを有する場合、ブレーカ20bの出力端子C2と出力端子D2から負荷までの配線が長く配線がインダクタンスを有する場合、または、ブレーカ20cの出力端子C3と出力端子D3から負荷までの配線が長く配線がインダクタンスを有する場合においては、負荷の側、母線の側、または、ブレーカ2、ブレーカ20b、ブレーカ20cの側、のいずれかに逆起電圧の発生に対する特別の配慮を払うことがブレーカに対して高電圧の印加を防止する観点より解決すべき課題となる。また、負荷がモータ等のインダクタンス成分を有する負荷である場合には、配線が短くとも同様の配慮をすることが望ましい。さらに、負荷がモータである場合には、生じる起電力をどのようにして有効活用するかが解決すべき課題となる。
つまり、各ブレーカの出力側にインダクタンス負荷(インダクタンス成分を有する負荷)が接続される場合には、上述した各ブレーカの切断直後において、大きな逆起電圧が、出力端子C1と出力端子D1との間、出力端子C2と出力端子D2との間、出力端子C3と出力端子D3との間に印加されることとなる。この逆起電圧によって、各ブレーカおよび線路上の他の機器が影響を受け、各ブレーカおよび他の機器が破壊に至る場合もあり得る。
このような逆起電圧が発生することを防止するためには、負荷の内部に転流ダイオードを設けておくことが望ましい。転流ダイオードの作用により大きな逆起電圧の発生を防止することができる。なお、負荷の内部に転流ダイオードを設けるか否かは、負荷である電気機器の製造者の意思によるので、電気機器の内部に転流ダイオードが設けられない場合もあり得る。この場合には、ブレーカから負荷に至るまでの線路中、または、ブレーカの内部に逆起電圧に対する対策を施すこととなる。
さらに、負荷がモータ(電動機)である場合には、起電力を電力系統の側に戻す回生ダイオードを設けることが、より望ましい。転流ダイオード自体、回生ダイオード(電力回生ダイオード)自体は、公知技術である。しかしながら、電子的開閉スイッチ、または、機械的開閉スイッチによって電力系統と負荷との間の直流電流路が切断されてしまうブレーカにおいて、どのようにして、転流ダイオード、回生ダイオードの技術を利用するかについては、まだ、知られていない。
以下における実施形態の変形例は、上述したブレーカに、さらに、転流ダイオード、回生ダイオードを付加するブレーカを提供するものである。そして、逆起電圧の発生を防止し、起電力を電力系統の側に戻すという課題を解決するものである。
各ブレーカにおける逆起電圧に対する対策としては、各ブレーカの内部であって、出力端子C1と出力端子D1との間、出力端子C2と出力端子D2との間、出力端子C3と出力端子D3との間に転流ダイオードを予め設けるようにすることができる。
以下の説明における符号については、第1実施形態の変形例においては、入力端子A1、入力端子B1、出力端子C1、出力端子D1の符号を付して原型が認識できるようにする。また、第2実施形態の変形例においては、入力端子A2、入力端子B2、出力端子C2、出力端子D2の符号を付して原型が認識できるようにする。また、第3実施形態の変形例においては、入力端子A3、入力端子B3、出力端子C3、出力端子D3の符号を付して原型が認識できるようにする。直列機械的開閉スイッチ161と電子的開閉スイッチ15からなるスイッチで構成される新たな実施形態の変形例においては、入力端子A4、入力端子B4、出力端子C4、出力端子D4の符号を付して原型が認識できるようにする。
図8は、ブレーカの第1変形例を示す図である。図8示すブレーカ20dでは、ブレーカの内部に転流ダイオードとして機能するダイオードDfを設けた図である。図8に示すブレーカ20dの各部については、ダイオードDf以外は図2に示すブレーカ2と同様であるので、説明を省略する。ダイオードDfは、出力端子C1と出力端子D1との間に逆バイアスとなるように設ければよく、その位置は厳密に特定されるものではない。このように、ブレーカ20dの内部にダイオードDfを逆バイアスとなるように設けることによって、インダクタンスを有する負荷の直流電流路を開とした直後にダイオードDfに順方向電流を流し、逆起電圧の発生を防止して、ブレーカ20dが破壊することを防止できる。
回生ダイオードについては、ブレーカ20dでは、電子的開閉スイッチとしてMOS−FETを用いる場合には、MOS−FETの逆バイアスとされるボディダイオード(図2を参照)が回生ダイオードの作用を果すことになる。よって、必ずしも、回生ダイオードを付加する必要はない。電子的開閉スイッチとしてバイポーラトランジスタを用いる場合には、ボディダイオードと同位置に回生ダイオードを設けることになる。このようにして、ブレーカ20dが開となった直後には、通常動作時には逆バイアスとされるボディダイオードに、回生電流を流して負荷に生じる電力を電力系統に回生することができる。
図9は、ブレーカの第2変形例を示す図である。図9に示すブレーカ20eは、図5に示すブレーカ20bに対して、転流ダイオードとして機能するダイオードDfと回生ダイオードとして機能するダイオードDrとを接続している。ダイオードDrは、入力端子B2と出力端子D2との間に逆バイアスとなるように接続されている。また、ダイオードDfは、出力端子C2と出力端子D2との間に逆バイアスとなるように接続されている。
このような構成を採用して、インダクタンスを有する負荷の直流電流路を開とした直後に、ダイオードDfに順方向電流を流し、逆起電圧の発生を防止して、ブレーカ20eが破壊することを防止することができる。また、ダイオードDrに順方向電流を流して負荷に生じる電力を電力系統に回生することができる。
図10は、ブレーカの第3変形例を示す図である。図10に示すブレーカ20fは、図7に示すブレーカ20cに対して、転流ダイオードとして機能するダイオードDfと回生ダイオードとして機能するダイオードDrとを接続している。ダイオードDrは、入力端子B3と出力端子D3との間に逆バイアスとなるように接続されている。また、ダイオードDfは、出力端子C3と出力端子D3との間に逆バイアスとなるように接続されている。
このような構成を採用して、インダクタンスを有する負荷の直流電流路を開とした直後に、ダイオードDfに順方向電流を流し、逆起電圧の発生を防止して、ブレーカ20fが破壊することを防止することができる。また、ダイオードDrに順方向電流を流して負荷に生じる電力を電力系統に回生することができる。
図11は、ブレーカの第4変形例を示す図である。図11に示すブレーカ20gは、電子的開閉スイッチ15と機械的開閉スイッチ16に対して、転流ダイオードとして機能するダイオードDfと回生ダイオードとして機能するダイオードDrとを接続している。ダイオードDrは、入力端子B4と出力端子D4との間に逆バイアスとなるように接続されている。また、ダイオードDfは、出力端子C4と出力端子D4との間に逆バイアスとなるように接続されている。
ブレーカ20gでは、スイッチ制御回路114は、直流電流が流れる直流電流路を閉路とするに際しては、直列機械的開閉スイッチ161が閉路とされた後に、電子的開閉スイッチ15を閉路とし、直流電流が流れる直流電流路を開路とするに際しては、電子的開閉スイッチ15が開路とされた後に、直列機械的開閉スイッチ161を開路とするものである。このようにして直列機械的開閉スイッチ161にアーク放電が生じるのを防止できる。このようにして、電子的開閉スイッチ15が導通している間は、このブレーカは導通とされる。
このような構成を採用して、インダクタンスを有する負荷の直流電流路を開とした直後に、ダイオードDfに順方向電流を流し、逆起電圧の発生を防止して、ブレーカ20gが破壊することを防止する。また、ダイオードDrに順方向電流を流して負荷に生じる電力を電力系統に回生することができる。
図12は、ブレーカの第5変形例を示す図である。図12に示すブレーカ20hは、図5に示すブレーカ20bに対して、転流ダイオードとして機能するダイオードDfと回生ダイオードとして機能するダイオードDrとを接続している。ダイオードDrは、直列機械的開閉スイッチ161に並列に逆バイアスとなるように接続されている。また、ダイオードDfは、出力端子C2と出力端子D2との間に逆バイアスとなるように接続されている。
このような構成を採用して、インダクタンスを有する負荷の直流電流路を開とした直後に、ダイオードDfに順方向電流を流し、逆起電圧の発生を防止して、ブレーカ20hが破壊することを防止できる。また、ダイオードDrと電子的開閉スイッチ15のボディダイオードとに順方向電流を流して負荷に生じる電力を電力系統に回生することができる。
図13は、ブレーカの第6変形例を示す図である。図13に示すブレーカ20iは、図7に示すブレーカ20cに対して、転流ダイオードとして機能するダイオードDfと回生ダイオードとして機能するダイオードDrとを接続している。ダイオードDrは、直列機械的開閉スイッチ161に並列に逆バイアスとなるように接続されている。また、ダイオードDfは、出力端子C3と出力端子D3との間に逆バイアスとなるように接続されている。
このような構成を採用して、インダクタンスを有する負荷の直流電流路を開とした直後に、ダイオードDfに順方向電流を流し、逆起電圧の発生を防止して、ブレーカ20iが破壊することを防止できる。また、ダイオードDrと電子的開閉スイッチ15のボディダイオードとに順方向電流を流して負荷に生じる電力を電力系統に回生することができる。
図14は、ブレーカの第7変形例を示す図である。図14に示すブレーカ20jは、電子的開閉スイッチ15と直列機械的開閉スイッチ161に対して、転流ダイオードとして機能するダイオードDfと回生ダイオードとして機能するダイオードDrを接続している。ダイオードDrは、直列機械的開閉スイッチ161に並列に逆バイアスとなるように接続されている。また、ダイオードDfは、出力端子C4と出力端子D4との間に逆バイアスとなるように接続されている。
ブレーカ20jでは、スイッチ制御回路114は、直流電流が流れる直流電流路を閉路とするに際しては、直列機械的開閉スイッチ161が閉路とされた後に、電子的開閉スイッチ15を閉路とし、直流電流が流れる直流電流路を開路とするに際しては、電子的開閉スイッチ15が開路とされた後に、直列機械的開閉スイッチ161を開路とするものである。このようにして直列機械的開閉スイッチ161にアーク放電が生じるのを防止できる。このようにして、電子的開閉スイッチ15が導通している間は、このブレーカは導通とされる。
また、上述の構成を採用して、インダクタンスを有する負荷の直流電流路を開とした直後に、ダイオードDfに順方向電流を流し、逆起電圧の発生を防止して、ブレーカ20jが破壊することを防止できる。また、ダイオードDrと電子的開閉スイッチ15のボディダイオードとに順方向電流を流して負荷に生じる電力を電力系統に回生することができる。
上述した、実施形態の変形例では、ブレーカの出力端の両端に、逆バイアスとなるように接続されるダイオードDf(転流ダイオード)を備える。さらに、電子的開閉スイッチに対して逆バイアスとなるように並列に接続されるダイオードDr(回生ダイオード)、または、電子的開閉スイッチと直列機械的開閉スイッチの直列接続回路に対して逆バイアスとなるように並列に接続されるダイオードDr(回生ダイオード)、もしくは、機械的開閉スイッチに対して逆バイアスとなるように並列に接続されるダイオードDr(回生ダイオード)を備えるようにしている。
上述した、実施形態の変形例では、転流ダイオードとして機能するダイオードDfと、回生ダイオードとして機能するダイオードDrとの両方を設けるとして説明をした。しかしながら、負荷がインダクタンス成分(例えば、転流ダイオードの両端から負荷までの配線インダクタンス成分、負荷自体のインダクタンス成分)を有する場合においては、転流ダイオードのみを設ける場合でも、ブレーカの出力端子間に生じる逆起電圧の発生を防止することができる。また、負荷がモータ(電動機)で起電力を生じる場合においては、回生ダイオードのみを設ける場合でも、回生電力を電力系統に戻すことができる。
転流ダイオードと回生ダイオードとの両方を設ける場合には、上述したように、負荷がインダクタンス成分を有する場合、負荷がモータである場合を含み、さらに、広範囲な種類の負荷に対して、ブレーカの出力端子間に生じる逆起電圧の発生を防止し、または/および、回生電力を電力系統に戻すことができる。
例えば、負荷がモータである場合には以下のように転流ダイオードと回生ダイオードの各々が時間差を有して動作をする。ブレーカを切断した直後に、配線インダクタンス成分およびモータの巻線のインダクタンス成分に起因する逆起電圧が発生しようとするが、転流ダイオードによってこの逆起電圧の発生を防止することができるとともに、転流ダイオードに流れる順方向電流によってモータは回転させられる。その後、転流ダイオードの順方向電流が無くなれば、モータは発電機となり、回生ダイオードに順方向電流が流れて回生電力を電力系統に戻すことができる。
(スイッチの挿入箇所の変形例)
第1実施形態のブレーカないし第3実施形態のブレーカ、および、転流ダイオード、回生ダイオードを有する実施形態のブレーカの変形例においては、機械的開閉スイッチと電子的開閉スイッチは、いずれも、入力端子B1と出力端子D1との間、入力端子B2と出力端子D2との間、入力端子B3と出力端子D3との間、入力端子B4と出力端子D4との間、に挿入されるものとして説明をした。しかしながら、機械的開閉スイッチと電子的開閉スイッチと回生ダイオードとは、入力端子A1と出力端子C1との間、入力端子A2と出力端子C2との間、入力端子A3と出力端子C3との間、入力端子A4と出力端子C4との間、に挿入するようにしても、所望の効果を生じさせることができる。つまり、母線12と母線13のいずれの側に、直列機械的開閉スイッチまたは/および並列機械的開閉スイッチと、電子的開閉スイッチと、回生ダイオードと、を挿入しても、同一の効果を得ることができる。
(第4実施形態のブレーカ)
図15は第4実施形態のブレーカを示す図である。図15に沿って第4実施形態のブレーカ20kについて説明する。ブレーカ20kは、図2に示すブレーカ20aと主要部を共通として、制御器4からの制御を受けることなく、スイッチ制御回路14の制御でブレーカとして機能するものである。ブレーカ20kは、負荷と直流の電力系統との間に挿入して用いられる。ブレーカ20kは、図入力端子A1と入力端子B1と出力端子C1と出力端子D1とを有する四端子回路である。電力系統は、入力端子A1(+側)と入力端子B1(−側)とに対して接続されている。負荷は、四端子回路の出力端子C1(+側)と出力端子D1(−側)とに対して接続される。
ブレーカ20kは、並列機械的開閉スイッチ16と、電子的開閉スイッチ15と、スイッチ制御回路14と、リセットスイッチ17と、を備えている。ここでそして、この並列機械的開閉スイッチ16と電子的開閉スイッチ15とは並列に接続され、並列機械的開閉スイッチ16および電子的開閉スイッチ15の並列接続回路が、電力系統と負荷との間の直流電流路に挿入されている。
ブレーカ20kはブレーカ20aと同様に、並列接続された並列機械的開閉スイッチ16および電子的開閉スイッチ15は、並列機械的開閉スイッチ16および電子的開閉スイッチ15のいずれもが、入力端子B1の側のマイナス側の母線13に挿入され電力系統と負荷との間に直列に接続されている。このために、並列機械的開閉スイッチ16または電子的開閉スイッチ15のいずれか一方を閉(導通)とすると直流電流路は導通(閉路)とされ、並列機械的開閉スイッチ16および電子的開閉スイッチ15の両方を開(切断)とすると直流電流路は切断(開路)とされる。この開閉の動作によって、負荷への電力供給を絶ち、または、負荷に電力系統からの電力を供給することができる。なお、図15では並列機械的開閉スイッチ16および電子的開閉スイッチ15が、マイナス側の母線13に挿入されているが、入力端子A1の側のプラス側の母線12に挿入しても同様な作用効果を奏する。
スイッチ制御回路14は、並列機械的開閉スイッチ16と電子的開閉スイッチ15との両者の相互の開閉時間差を制御する。リセットスイッチ17は、押圧すると閉(導通)となり、押圧しないと開となる、開閉をおこなうプッシュスイッチである。リセットスイッチ17は、ブレーカ20kが過電流によって切断した後に、再び、ブレーカを導通とするために、スイッチ制御回路14に対して、並列機械的開閉スイッチ16および電子的開閉スイッチ15の閉の契機となるトリガー信号を与える。リセットスイッチ17は、人によって操作されるスイッチである。
図16は、図15に示す第4実施形態における、リセット信号Rsの状態、電流信号I2sの状態、並列機械的開閉スイッチ16および電子的開閉スイッチ15の開閉の状態をタイミングチャートで示す図である。図16(A)は、リセット信号Rsを示す。ブレーカ20kが切断の動作をした後に再びブレーカ20kを導通とするために、リセットスイッチ17を押圧して閉とするとリセットスイッチ17の両端の電圧が変化する。このときに生じる電圧変化の一方のエッジ(例えば、立上エッジ)をリセット信号Rsとしてスイッチ制御回路14の内部で用いる。ブレーカ20kの具体的な実施例は、図4に示すものと同様の回路が用いられる。
図16(B)は、電流信号I2sによって検出される直流電流路を流れる電流(図16(B)中の一点鎖線)が、予め設定される許容電流(図16(B)中の二点鎖線)を超えた場合に、スイッチ制御回路14の内部で発生するブレーカ切断信号Bcsを示す。図16(C)は、電子的開閉スイッチ15が開である切断と閉である導通を示す。図16(D)は並列機械的開閉スイッチ16が開である切断と閉である導通を示すものである。横軸は時刻tを示すものである。図16を参照して、ブレーカ20kの開閉の動作を説明する。まず、ブレーカ20kによって直流電流路を閉路とする場合の手順を説明する。
一旦、ブレーカ20kが切断した状態において、リセットスイッチ17の操作者が、リセットスイッチ17を押圧すると立上エッジを有するパルス信号であるリセット信号Rsが発生する(図16(A)の時刻t61を参照)。スイッチ制御回路14は、リセットスイッチ17によって発生するリセット信号Rsに基づき並列機械的開閉スイッチ16および電子的開閉スイッチ15を切断から導通に変化させる(図16(C)の時刻t61、図16(D)の時刻t62を参照)。すなわち、図16(C)に示すように、リセット信号Rsが発生すると、電子的開閉スイッチ15は、原理的には動作遅れなく、実際の半導体素子ではごく僅かの動作遅れを有して導通(閉)となる。一方、図16(D)に示すように、リセット信号Rsが発生すると、並列機械的開閉スイッチ16は予め定めた所定時間τ61の後に導通(閉)となる。ここで、時刻t61と時刻t62の間の所定時間τ61の間は、電子的開閉スイッチ15のみが導通する。そして所定時間τ61の間は電子的開閉スイッチ15において電力損失が発生するので、電子的開閉スイッチ15の温度が予め定める所定温度以上(例えば、60℃以上)に上昇しないような短い時間に所定時間τ61は設定されている。
所定時間τ61は電子的開閉スイッチ15の動作遅れ以上であれば良い。所定時間τ61の長さを長くすることによって、電子的開閉スイッチ15が十分に導通した後(電子的開閉スイッチ15のオン電圧が十分に低くなった後)に並列機械的開閉スイッチ16を導通させることを確保できる。このように所定時間τ1を設定することによって並列機械的開閉スイッチ16の接点に高電圧が印加されたまま回路を閉とし、その結果として、接点に熱損失が生じるようなことはない。
つまり、所定時間τ61の最大許容時間は、電子的開閉スイッチ15の許容温度によって定まり、所定時間τ61の最小許容時間は、並列機械的開閉スイッチ16の接点の許容熱損失と電子的開閉スイッチ15の導通速度とによって定まる。さらに、所定時間τ61が長くなればなるほど、直流電流路中の電子的開閉スイッチ15に生じる電力損失は大きくなる。以上を勘案して、所定時間τ61は定められる。
このようにして、並列機械的開閉スイッチ16が電子的開閉スイッチ15よりも先に導通しないようにしている。並列機械的開閉スイッチ16が電子的開閉スイッチ15よりも先に導通する場合には、並列機械的開閉スイッチ16の接点にアークが発生して接点の損傷を生じるおそれがある。特に、接点のチャタリングによってアークが発生する可能性は倍加する。
次に、ブレーカ20kによって直流電流路を開路とする場合の動作を説明する。過電流を検出してブレーカ切断信号Bcsが発生する(図16(B)の時刻t63を参照)。スイッチ制御回路14は、ブレーカ切断信号Bcsに基づき並列機械的開閉スイッチ16を導通から切断に変化させる(図16(D)の時刻t63を参照)。また、スイッチ制御回路14は、ブレーカ切断信号Bcsに基づき並列機械的開閉スイッチ16を導通から切断に変化させてから所定時間τ62後の時刻t64に電子的開閉スイッチ15を導通から切断に変化させる。ここで、時刻t63と時刻t64との間の所定時間τ62は、並列機械的開閉スイッチ16のチャタリングが収まる時間よりも長い時間以上に設定されるとともに、所定時間τ62は、電子的開閉スイッチ15の温度が予め定める所定温度に上昇する時間よりも短い時間以内に設定する。
このような手順で、導通から切断とする場合においては、所定時間τ62は、並列機械的開閉スイッチ16のチャタリングが収まる時間よりも長い時間に設定されている。よって、並列機械的開閉スイッチ16のチャタリングが収まった後、並列機械的開閉スイッチ16が完全に開となった時点において、未だ電子的開閉スイッチ15は閉となっている。そのために、所定時間τ62以内の時間において、電子的開閉スイッチ15が、例えば、MOS−FETの場合には、電子的開閉スイッチ15の抵抗値は小さく、電子的開閉スイッチ15の両端に生じる電圧は小さい。よって、所定時間τ62以内の時間において、並列機械的開閉スイッチ16の接点にチャタリングが生じたとしても、並列機械的開閉スイッチ16の接点間におけるアークの発生はない。
また、電子的開閉スイッチ15が、例えば、バイポーラトランジスタの場合には、接点の両端には、電子的開閉スイッチ15のオン電圧以上の電圧が生じることはない。よって、並列機械的開閉スイッチ16の接点間におけるアークの発生はない。
また、所定時間τ62は、電子的開閉スイッチ15の温度が予め定める所定温度(例えば、安全規格で定める温度、半導体の定格で定める温度)に上昇する時間よりも短い時間に設定されるので、電子的開閉スイッチ15は、安全な低い温度を維持し、また、熱破壊することがない。そして、電子的開閉スイッチ15を開とする時点で直流電流路は切断(開)の状態とされる。
つまり、所定時間τ62の最大許容時間は、電子的開閉スイッチ15の許容温度によって定まり、所定時間τ62の最小許容時間は、並列機械的開閉スイッチ16のチャタリング持続時間であり、所定時間τ62はチャタリング持続時間以上の時間とされる。さらに、所定時間τ62が長くなればなるほど、直流電流路中の電子的開閉スイッチ15に生じる電力損失は大きくなる。以上を勘案して、所定時間τ62は定められる。
要するに第4実施形態では、ブレーカ20kが自ら判断して、直流電流路を切断し、リセットスイッチ17を操作することによって、再び、ブレーカ20kを導通とすることができる。そして、並列機械的開閉スイッチ16の導通する時間を前後方向(より前の時刻から(前方向)より後の時刻まで(後方向))に覆うように、電子的開閉スイッチ15の導通する時間を定めるものである。そして、前方向に覆う時間である所定時間τ61と後方向に覆う時間である所定時間τ62とは、電子的開閉スイッチ15の温度が予め定める所定温度に上昇する時間よりも短い時間以内に設定するとともに、電子的開閉スイッチ15に生じる電力損失が無視できる時間とする。また、所定時間τ62は、並列機械的開閉スイッチ16のチャタリングが収まる時間よりも長い時間以上に設定するものである。
第4実施形態は、第1実施形態の変形例であり、ブレーカの内部に、ブレーカを切断する判断機構を有するものである。判断機構は、電流路に流れる電流の大きさと、所定の許容電流の大きさを比較し、電流路に流れる電流が許容電流を超えるときにブレーカを切断する。そして、リセットスイッチを押圧することによって、ブレーカを再び導通とすることができる。第2実施形態、第3実施形態、および、これらの変形例である、ブレーカ20b、ブレーカ20c、ブレーカ20d、ブレーカ20e、ブレーカ20f、ブレーカ20g、ブレーカ20h、ブレーカ20i、ブレーカ20jにおいても、第4実施形態におけるとどうようにして、ブレーカの内部に、ブレーカを切断する判断機構と再びブレーカを導通とするリセット機構とを、その内部に配することができる。
「電力監視制御装置の制御方法」
上述した実施形態のブレーカを用いて、図1に示す電力監視制御装置1をどのように制御するかについて説明をする。
以下に説明する、ブレーカ2、ブレーカ21、ブレーカ22、ブレーカ23、ブレーカ24、ブレーカ25は、いずれも、上述した、ブレーカ20a、ブレーカ20b、ブレーカ20c、ブレーカ20d、ブレーカ20e、ブレーカ20f、ブレーカ20g、ブレーカ20h、ブレーカ20i、ブレーカ20jのいずれか、一つを適宜に用いることができる。ブレーカ20a〜ブレーカ20jとして示すように、内部に制御器4(図1を参照)によって制御されるスイッチ制御回路を有しているので、このスイッチ制御回路の機能を用いて、許容電流の設定をすることができる。
(第1実施形態の電力監視制御装置およびその制御方法)
実施形態の電力監視制御装置1(図1を参照)において採用される、第1実施形態の電力監視制御装置の技術について説明をする。
第1実施形態の電力監視制御装置1の制御技術では、制御器4によって制御される送受信器5は、発電所11に対してブレーカの電流容量の設定の許諾を求める。ここで、許諾を求める電流容量の設定値は、例えば、制御器4の操作パネルに設けられたキーボードを用いて入力される。発電所11に対して許容電流の設定を求めることができるブレーカは、他のブレーカを経由することなく電力系統に接続されるブレーカ(主ブレーカ)だけである。
電力監視制御装置1では、主ブレーカである、ブレーカ2とブレーカ23とが発電所11に対して許容電流の設定を求めることができるブレーカである。許容電流の設定が発電所11によって許可されない場合にはブレーカは導通されることがない。以下においては、ブレーカ2とブレーカ23とは、ブレーカ20aによって構成されているとして説明をするが、上述したように当然に、ブレーカ20a以外のブレーカ20b〜ブレーカ20jのいずれか一つを用いることもできる。
ブレーカ2とブレーカ23との各々のブレーカのスイッチ制御回路14(図2を参照)には、パスワードを記録したロム(ROM)が装着され、または、パスワードを記録した記録媒体が装着可能とされている。このパスワードは、発電所11が予め指定するものである。よって、制御器4は、バスライン26を経由して、各ブレーカのパスワードを検索して、予め、発電所11が許可したパスワードを有するブレーカを特定することができる。
例えば、制御器4は、ブレーカ2に対しては50Aの許容電流、ブレーカ23に対しては10Aの許容電流を設定することを発電所11に対して要求する。発電所11が、この要求を認める場合には、発電所11の送受信器(図示せず)が、電力監視制御装置1の送受信器5に対して、発電所11から送出されるパスワードを付して発電所が特定する許容電流の設定の許可を送信する。
送受信器5に対しての設定の許可を受け取った制御器4は、ブレーカ2に対しては50Aの許容電流、ブレーカ23に対しては10Aの許容電流を設定する。具体的には、発電所11からのパスワードと、ユーザの要望に基づいた許容電流(50A)をブレーカ制御信号B2sの中に含めてブレーカ2の許容電流を設定する。また、発電所11からのパスワードと、ユーザの要望に基づいた許容電流(10A)をブレーカ制御信号B23sの中に含めてブレーカ23の許容電流を設定する。
このようにして、発電所11は、直流発電機10の発電能力を判断して、各家庭、各工場、各施設に許容電流を割り当て(例えば、ある家庭には、50Aの許容電流のブレーカ1台、10Aの許容電流のブレーカ1台を割り当てる)、許容電流の大きさに応じて、基本電気料金(消費した電力量に関係なく許容電流量に応じて課される料金、または、消費した電力の単価を許容電流量に応じて定める料金)を課金する。
また、補助ブレーカ(主ブレーカ以外のブレーカ)である、ブレーカ21、ブレーカ22、ブレーカ24、ブレーカ25については、発電所11の許可を得ることなく、制御器4が許容電流を割り当てる。具体的には、制御器4の操作パネルを操作して出力される、ブレーカ制御信号B21s、ブレーカ制御信号B22s、ブレーカ制御信号B24s、ブレーカ制御信号B25sによって、これらのブレーカに対して許容電流が設定される。例えば、ブレーカ21、ブレーカ22、ブレーカ24、ブレーカ25の各々の許容電流は17Aに設定される。
ブレーカ21、ブレーカ22、ブレーカ24、の作用によって、ブレーカ2による保護に加えて、さらに、細かく、負荷L1、負荷L2、負荷L4の各々に対して過大電流が流れることを防止して、負荷L1、負荷L2、負荷L4を保護することができる。また、ブレーカ23の作用によって、負荷L3に対して過大電流が流れることを防止して、負荷L3を保護することができる。また、ブレーカ25の作用によって、太陽光パネルTtから過大電流が流れることを防止して、太陽光パネルTtを保護することができる。
入力電力・出力電力計3は、電力系統から流入する入力電力を積算し、電力系統へ戻す電力量を積算する。ここで、入力電力は、太陽光パネルTtからの電力ではまかなえない負荷で消費される電力に対応する。また、出力電力は、太陽光パネルTtの余剰電力と負荷から得られる回生電力の余剰電力と負荷に発生する逆起電圧電力の余剰電力の和に対応する。余剰電力とは、負荷で消費しても余る電力をいうものである。
すなわち、第1実施形態の電力監視制御装置の制御技術では、実施形態のブレーカを用いて、ブレーカに設定された許容電流を超える負荷に対する過電流を防止して負荷の保護をすることができる。ここで、ブレーカに回生ダイオードを採用する場合には、電力系統に回生電力を戻すことができ、ブレーカに転流ダイオードを採用する場合には、負荷のインダクタンスに応じた逆起電力を直流電力系統に戻すことができる。
また、第1実施形態の電力監視制御装置の制御技術では、他のブレーカを介することなく電力系統に接続されるブレーカ(主ブレーカ)については、予め、許可を受けたパスワードとともに所望する許容電流の値を発電所に送信する。そして、発電所から許可を受けた許容電流の値をパスワードとともに受け取り、他のブレーカを介することなく電力系統に接続されるブレーカ(主ブレーカ)については、その許容電流の値を設定する。
(第2実施形態の電力監視制御装置およびその制御方法)
実施形態の電力監視制御装置1において採用される、第2実施形態の電力監視制御装置の技術について説明をする。
第2実施形態の電力監視制御装置1の制御技術では、発電所11の指令によって、ブレーカの許容電流の値を変更する。発電所11がこのような制御をすることを許容する旨の契約(最大電力可変契約)を電力供給会社とユーザとが予め結ぶことによって、ユーザは基本料金の割引を受けることができる。
発電所11の電力供給能力には限界があり、直流発電機10の発電効率もある一定の電力を供給し続けた場合に最も効率が良い。そこで、発電所11は、供給電力の総量を監視し、電力供給能力の限界に発電する電力量が接近すると、最大電力可変契約を結んだ、各家庭、各工場、各施設のブレーカの許容電流の値を一方的に段階的に減少させる。例えば、50A、40A、30Aのように3段階に減少させる契約を結んだ家庭に対しては、電力需要に応じて、50Aから40Aにブレーカの許容電流を減少させる設定をし、さらに、電力需要が増加する場合には、40Aを30Aに減少させる設定をする。
図1を参照して、電力監視制御装置1における処理の内容を説明する。送受信器5は、発電所11からのブレーカ2の許容電流制御の指令を受信する。この指令が発電所11からの指令であることは、パスワードによって確認される。制御器4は、ブレーカ2の許容電流を50Aから40Aに設定変更する指令が発せられたことを解読すると、ブレーカ制御信号B21sをブレーカ2に対して送信して、ブレーカ2の許容電流を変更する。制御器4は、ブレーカ2の許容電流の設定の変更がされた後に、許容電流の設定変更完了の通知を、送受信器5を介して発電所11に送信する。そして、制御器4は、制御器4の操作パネルの液晶の表示板(図示せず)に50Aから40Aに許容電流が変更された旨を表示する。必要に応じて音声アラームによって許容電流の変更を音響で知らせるようにしても良い。
上述した許容電流の変更をいきなりすると、40A以上の電流をブレーカ2が流している場合には、ブレーカ2が切断してしまうことになる。このような事態を防止するために、制御器4は、現在のブレーカ2を流れる電流を検出する信号である電流信号I2sを電流検出器143(図2を参照)によって検出して、電流信号I2sが40Aに近いか、それ以上である場合には、制御器4の操作パネルの液晶の表示板に警告表示をするとともに、アラーム音で警告して、所定時間後に許容電流の変更をするようにしても良い。
また、上述した許容電流の変更をする前に、ブレーカ21、ブレーカ22、ブレーカ24(補助ブレーカ)の許容電流の設定を変更する。許容電流の設定は、予め設定変更の優先順位が付けられたブレーカの順番(ブレーカが切断してもその影響がより少ない機器が接続されたブレーカをより設定変更の優先順位が高い順番とする)、例えば、ブレーカ21、ブレーカ22、ブレーカ24の順番で許容電流を減らす設定をする。具体的には、例えば、ブレーカ21、ブレーカ22、ブレーカ24の電流が、各々17Aに設定されている場合に、最も設定変更の優先順位が高いブレーカ21の電流設定を17Aから5Aに設定変更をする。
このようにして、主ブレーカであるブレーカ2に先立ち、補助ブレーカであるブレーカ21、ブレーカ22、ブレーカ24のいずれかが先に電流路を切断するようにして、ブレーカ2の切断を防止して、屋内配線のすべてに対する給電が断たれることを防止することができる。
すなわち、第2実施形態の電力監視制御装置の制御技術では、実施形態のブレーカを用いて、他のブレーカを介することなく電力系統に接続されるブレーカ(主ブレーカ)に設定される許容電流を発電所からの指令によって変更することができる。また、ブレーカに回生ダイオードを採用する場合には、電力系統に回生電力を戻すことができ、ブレーカに転流ダイオードを採用する場合には、電力系統に逆起電力を戻すことができる。
また、第2実施形態の電力監視制御装置の制御技術では、主ブレーカの許容電流の設定変更にともない、さらに、予め定める優先順位に従って、補助ブレーカの許容電流の設定変更をおこなうことができる。
(第3実施形態の電力監視制御装置およびその制御方法)
実施形態の電力監視制御装置1において採用される、第3実施形態の電力監視制御装置の技術について説明をする。
第3実施形態の電力監視制御装置1の制御技術では、発電所11の指令によって、ブレーカの導通の時間と切断の時間とを定める。発電所11がこのような制御をすることを許容する旨の契約(供給時間制限契約)を電力供給会社とユーザとが予め結ぶことによって、ユーザは基本料金の割引を受けることができる。
上述したように、発電所11の電力供給能力には限界があり、直流発電機10の発電効率もある一定の電力を供給し続けた場合に最も効率が良い。そこで、発電所11は、供給電力の平準化を図るために、供給時間制限契約を結んだ、各家庭、各工場、各施設のブレーカの導通と切断とをおこなう。例えば、夜間の午前2時から午前5時までは、供給時間制限契約を結んだ家庭に対しては、特定の主ブレーカの導通を指令する。
図1を参照して、電力監視制御装置1における処理の内容を説明する。送受信器5は、午前2時に発電所11からのブレーカ23の導通の指令を受信する。この指令が発電所11からの指令であることは、パスワードによって確認される。制御器4は、ブレーカ23の許容電流を、例えば、10Aに設定する指令が発せられたことを解読すると、ブレーカ制御信号B23sをブレーカ23に対して送信して、ブレーカ23の許容電流を10Aに設定する。
制御器4は、ブレーカ23の許容電流の設定がされた後に、許容電流の設定完了の通知を、送受信器5を介して発電所11に送信する。そして、制御器4は、制御器4の操作パネルの液晶の表示板(図示せず)に許容電流が設定された旨を表示する。
ここで、例えば、ブレーカ23から供給される電力は、電池で走行する電気自動車の蓄電池を充電するための電力である。このような用途に用いる電力は常時、使用するものではなく、ユーザのライフスタイルに応じて異なるものである。よって、夜間の午前2時から午前5時までに限ることなく、電気自動車の蓄電池に充電をする時間帯を、ユーザの希望に合わせて、各家庭、各工場、各施設でずらすことができる。このときに、発電所11の電力供給能力に対してより需要が少ない時間帯における電気料金をより安く設定することによって、発電所11から供給する電力の量を平準化することができる。
また、第3実施形態の電力監視制御装置の技術によれば、電力需要が少なく、供給時間制限契約によって電気料金が安い時間に電気自動車の蓄電池に充電し、電力需要が大きく、供給時間制限契約によって電気料金が高い時間に電気自動車の蓄電池からの電力を発電所11に対して供給することによって、電力需要の不足を補い、ユーザに対しては電気料金の差額の利益を与えることができる。これによって、発電所11における直流発電機10に対する過剰な設備投資を抑え、電気料金も下げることが可能とできる。
ここで、回生ダイオードを採用するブレーカを用いることによって、電気自動車の蓄電池からの電力を発電所11に対して供給することが可能とできる。
すなわち、第3実施形態の電力監視制御装置の制御技術では、実施形態のブレーカを用いて、他のブレーカを介することなく電力系統に接続されるブレーカ(主ブレーカ)を導通とする時間を発電所からの指令によって設定することができる。
また、電気自動車の蓄電池を用いて、電力需要の平準化を図ることができるので、電力会社とユーザの両方に利益を与えることができる。なお、発電所と電力監視制御装置との間における通信は、電力系統を用いるのみならず、電話回線、インターネット、無線回線のいずれを用いるものであっても良い。
上述した種々の実施形態に開示された個々の技術を組み合わせた、新たな実施形態も実施可能である。また、本発明は上述した実施形態およびこれらを組み合わせた実施形態の範囲に限られるものではない。