JP5666674B1 - 発光素子並びにポリ酸を含有する紙及びその製造方法 - Google Patents

発光素子並びにポリ酸を含有する紙及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5666674B1
JP5666674B1 JP2013215801A JP2013215801A JP5666674B1 JP 5666674 B1 JP5666674 B1 JP 5666674B1 JP 2013215801 A JP2013215801 A JP 2013215801A JP 2013215801 A JP2013215801 A JP 2013215801A JP 5666674 B1 JP5666674 B1 JP 5666674B1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
paper
polyacid
light
light emitting
emitting device
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2013215801A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2015079630A (ja
Inventor
利博 山瀬
利博 山瀬
光男 灰田
光男 灰田
Original Assignee
株式会社Moデバイス
三善製紙株式会社
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by 株式会社Moデバイス, 三善製紙株式会社 filed Critical 株式会社Moデバイス
Priority to JP2013215801A priority Critical patent/JP5666674B1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5666674B1 publication Critical patent/JP5666674B1/ja
Publication of JP2015079630A publication Critical patent/JP2015079630A/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Electroluminescent Light Sources (AREA)

Abstract

【課題】ポリ酸の機能を利用した製品を容易に製造することができる方法を提供する。【解決手段】ポリ酸の溶液を紙に塗布する。塗布後の紙を乾燥させる。ポリ酸を含有する紙410と、紙を挟む一対の電極420とを備える発光素子400。【選択図】図4

Description

本発明は、発光素子並びにポリ酸を含有する紙及びその製造方法に関する。
ポリ酸は、金属原子にいくつか〈通常は4個又は6個〉の酸素原子が結合したモノオキソ酸イオンが数多く集まって脱水縮合してできた金属酸化物のポリオキソ酸イオンで通常は陰イオンである。ポリオキソ酸イオンを構成する金属原子としてはモリブデン、タングステン、バナジウム及びチタン等が挙げられる。ポリオキソ酸イオンのサイズはおよそ1nmから10nmの範囲にあり、対イオンとしての陽イオン(アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン及びアルキルアンモニウムイオン等)と結合して安定な塩を形成する。ポリ酸については、例えば非特許文献1,2に詳しく記載されている。
ポリ酸は、様々な用途(例えば触媒、電気、磁気、電気化学、光学及び医薬用途)が知られている。また、化学的安定性、安全性、及び取り扱いの容易さの面から、工業材料への応用が近年ますます期待されている。例えば非特許文献3には、ポリ酸([EuW10369−)の層と電極とをマイラー(ポリエステル)フィルムを挟んで積層することにより、エレクトロルミネッセンス(EL)素子を作製することが記載されている。
従来、無機化合物蛍光体を用いたEL素子としては、高分子材料等のバインダー中に無機化合物を分散させた層を絶縁膜を介して透明電極で挟んだ構成を有する、いわゆる分散タイプのものが知られていた。これは、分散された蛍光体に高電圧を印加して電界の中を流れる電子の衝突により失われる大きな運動エネルギーを励起エネルギーに変換して発光させるタイプのものであって、絶縁膜層は蛍光体に高電圧を印加させるには必須であった。
このタイプのEL素子が有効に動作するためには、できるだけ低い電圧で駆動できることが好ましい一方で、蛍光体には高い電圧が印加されることが要求され、このため薄い分散層と高い絶縁性をもった薄い絶縁膜とを構築することが望まれていた。しかしながら、分散層が薄くなることにより蛍光体量が減少し、発光強度が低下するため、用いる蛍光体、バインダー材料、及び絶縁材料の最適化、並びに素子構成についての種々の工夫がなされてきた。
一方で、機能性デバイスを作製する際に、紙を基材として用いる例が報告されている。例えば特許文献1には、フォトクロミック性を示すポリ酸の皮膜を紙に積層する技術が開示されている。また、特許文献2には、イオン液体と発光物質とを含むゲルが含浸された紙を、発光表示装置の発光層として用いることが記載されている。
特開2011−184697号公報 特開2009−282452号公報
日本化学会編,ポリ酸の化学,季刊化学総説,学会出版センター,20号,1993年 山瀬利博,in Handbook on the Physics and Chemistry of Rare Earths, ed. Karl Gschneidner Jr., Jean-Claude Buenzli, and Vitalij Pecharsky, Elsevier B. V., vol. 39, pp. 297-356, 2009. 山瀬利博,上田恭太,Journal of The Electrochemical Society, vol. 140, issue 8, pp. 2378-2384, 1993.
しかしながら、非特許文献3に記載のデバイスは、ポリ酸層の不均一性及び機械的強度の弱さという課題を有しており、発光の動作性は不安定で再現性よく製造することは容易ではなかった。
本発明は、ポリ酸の機能を利用した製品を容易に製造することを目的とする。
本発明者は、ポリ酸を絶縁体としての紙に塗布することでポリ酸が紙に担持されて、ポリ酸が薄い絶縁膜で覆われた状態が簡単に得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の目的を達成するために、例えば、本発明の発光素子は以下の構成を備える。すなわち、
ポリ酸を含有する紙と、前記紙を挟む一対の電極と、を備えることを特徴とする。
ポリ酸の機能を利用した製品を容易に製造することができる。
一実施形態に係る、ポリ酸を含有する紙の製造方法を説明する図。 発光紙からの発光スペクトルの測定方法を示す図。 一実施形態に係る発光紙からの発光スペクトルを示す図。 一実施形態に係る発光素子の模式図。 一実施形態に係る発光素子からの発光スペクトルを示す図。 一実施形態に係る発光素子からの発光スペクトルを示す図。 一実施形態に係る、ポリ酸を含有する紙の製造方法のフローチャート。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ただし、本発明の範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
[ポリ酸を含有する紙及びその製造方法]
本発明の一実施形態に係る紙(以下、本実施形態に係る紙と呼ぶ)は、ポリ酸を含有している。
モノオキソ酸イオンが脱水縮合してできたポリオキソ酸イオンであるポリ酸は、単一種の金属のオキソ酸が縮合した多核構造のイソポリ酸と、2種以上の金属のオキソ酸が縮合した多核構造のヘテロポリ酸との双方を含む。ポリ酸の形態としては遊離酸であってもよいし、対イオンと塩を形成していてもよく、また水和物等の溶媒和物であってもよい。
ポリオキソ酸を構成する金属原子は、特に限定されないが、モリブデン、ユウロピウム、タングステン、アンチモン、バナジウム又はチタン等が挙げられる。また、ポリ酸が塩である場合、対イオンである陽イオンは特に限定されないが、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン又はアルキルアンモニウムイオン等の有機物陽イオンが挙げられる。
ポリ酸の例としては、[PrNH[Mo24]・3HO、Na[EuW1036]・32HO、K11H[(VO)(SbW33]・27HO、及びK[PTi1040]・6HO等が挙げられる。
ポリ酸は、複数種のポリ酸の混合物であってもよい。また、本実施形態に係る紙は、ポリ酸の他に任意の物質を含有していてもよい。
一実施形態において、本実施形態に係る紙は乾燥している。乾燥状態にある紙は、取り扱いが容易である。
紙は、繊維を層状にしたものである。一実施形態において、紙は植物繊維を層状にしたもの、又は植物繊維を含む材料を層状にしたものである。別の実施形態において、紙は合成繊維によって構成され、又は合成繊維を含んでいてもよい。紙の寸法は特に限定されない。
次に、本発明の一実施形態に係る、ポリ酸を含有する紙本実施形態に係る紙の製造方法(以下、本実施形態に係る製造方法と呼ぶ)について説明する。本実施形態に係る製造方法は、塗布工程と、乾燥工程と、を含み、これらの工程によりポリ酸を含有する紙が製造される。以下、これらの工程について、図7のフローチャートを参照して詳しく説明する。
ステップS710の塗布工程においては、ポリ酸の溶液を紙に塗布する。ポリ酸及び紙については、既に説明した通りである。ポリ酸の溶液は、ポリ酸を溶媒に溶解することにより調製できる。溶媒の種類は、ポリ酸が溶解可能であれば特に限定されない。溶媒の例としては、水及びその他の極性溶媒が挙げられる。一実施形態において、取り扱いの容易性の観点から、ポリ酸の溶液はポリ酸の水溶液である。
塗布方法は特に限定されず、例えば溶液を滴下した後にガラス棒等で塗布する方法、ハケ等で塗布する方法、溶液を噴霧する方法、又はインクジェット装置により溶液を吐出する方法、等が挙げられる。また、紙を溶液に浸漬することにより、塗布を行ってもよい。
ステップS720の乾燥工程においては、ポリ酸の溶液が塗布された紙が乾燥される。乾燥方法は特に限定されず、室温で乾燥してもよいし、加熱雰囲気中で乾燥してもよい。例えば、乾燥温度は15℃以上100℃以下でありうる。また、大気中で乾燥してもよいし、減圧下で乾燥してもよい。乾燥時間は、乾燥方法及び紙の厚さ等に応じて適宜選択できる。例えば、ポリ酸の水溶液を100μm程度の厚さの紙に塗布し、大気中で室温で乾燥させる場合、乾燥時間は例えば12時間以上120時間以下でありうる。
本発明者らは、本実施形態に係る製造方法によれば、ポリ酸を紙に均一に固定できることを見出した。ポリ酸の溶液を紙に塗布し、乾燥させると、ポリ酸が紙のマトリックス中にトラップされた状態で乾燥が進行するものと考えられる。
ナトリウム若しくはカリウム等のアルカリ金属塩、又はアンモニウム塩等の一価陽イオンとの塩の形態をとるポリ酸は、水に対する溶解度が比較的高い。一方で、カルシウム等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム、ケイ素若しくはジルコニウム等の三価以上の多価(例えば三価又は四価)の金属陽イオン、又は有機物陽イオンとの塩の形態をとるポリ酸は、水に対する溶解度が比較的低い。このため、形成される塩の溶解度の差を利用して、ポリ酸のアルカリ金属塩の水溶液を、二価のアルカリ土類金属塩、多価の金属陽イオン、又は有機物陽イオンを含有する紙に塗布すると、ポリ酸のアルカリ金属イオンと紙中の多価陽イオンとの交換が起こってポリ酸が不溶化するため、より効率的にポリ酸を紙のマトリックス中に固定することができる。
このような観点から、ポリ酸の水溶液は、ポリ酸のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩を含有していることが好ましい。一実施形態においては、ポリ酸の水溶液はポリ酸のアルカリ金属塩を含有している。また、紙は、二価のアルカリ土類金属塩、多価の金属陽イオン、又は有機物陽イオンを含有していることが好ましい。紙は、一般にアルカリ土類金属、アルミニウム、又はジルコニウムを含むことが多い。例えば、一般的な製紙工程により得られた紙には、紙質向上、調湿又はpH調整等のために加えられた、炭酸カルシウム(カルシウムを含有)、明礬若しくはゼオライト(アルミニウム含有)、ジルコン(ジルコニウム含有)、又はケイ酸塩(ケイ素含有)等が含まれているため、好適に用いることができる。
本実施形態に係る紙は、機能性紙として、ポリ酸の種類に応じて様々な用途に用いることができる。例えば、抗ウイルス作用を有するK11H[(VO)(SbW33]・27HOを含有する紙は、衛生用品に用いることができる。抗バクテリア作用を有するK[PTi1040]・6HOを含有する紙も、同様に衛生用品に用いることができる。一方で、発光性を示すNa[EuW1036]・32HOを含有する紙は、発光材料として用いることができる。
一実施形態に係るポリ酸を含有する紙は、上述の製造方法のために、紙のうちの少なくとも一部であるポリ酸含有部分にわたって、均一にポリ酸を含有している。このようなポリ酸を含有する紙は、発光素子のようなデバイス、特に面発光デバイスにおいて用いた際に、安定した性能を発揮することができる。例えば、一実施形態において、ポリ酸を含有する紙は、厚さ方向にわたって均一な濃度でポリ酸を含有している。
一実施形態において、紙は発光性を示すポリ酸を含有しており、この場合ポリ酸を含有する紙は発光紙として用いられる。発光性とは、エネルギーを与えた際に発光する性質のことを指す。例えば、発光性を示すポリ酸は、エックス線、紫外線、電子線又はベータ線を与えた際に発光しうる。また、発光紙は、電磁波、光、電子の照射以外に電圧を印加した場合にも発光しうる。このような発光紙は、折り曲げることが容易であり、デバイスに取り付けることも容易であることから、様々な用途に用いることができる。
一実施形態において、発光性のポリ酸を含有する発光紙は、厚さ方向にわたって均一な濃度でポリ酸を含有している。この場合、所定強度の励起光を照射した際の紙の発光強度は、表面と裏面とで同等である。具体的には、一実施形態において、紙の所定の一部分に紙の一方の面から紫外線を照射した際に観測される発光強度と、同じ部分に紙の他方の面から紫外線を照射した際に観測される発光強度との間に有意な差は認められない。
また、一実施形態に係るポリ酸を含有する紙においては、ポリ酸が固体状態と同様の機能を発揮することを、本発明者は見出した。従来、フルオレセインナトリウム又はローダミンビー等のキサンテン系有機化合物の蛍光染料を紙にコートしたものが知られている。しかしながら、キサンテン系色素は水又はアルコール等の溶液中で強く発光する一方、水分が少ない環境下では著しく発光効率が低下するため、紙にコートした色素周辺の環境を溶液中の環境に近づける必要があった。一方で、一実施形態においては、固体状態において発光性を示すポリ酸が、紙に含有された状態においても発光性を示すことが確認された。
[発光素子]
ポリ酸を含有する紙は、発光素子の活性層として使用することができる。以下、ポリ酸を含有する紙を用いた発光素子(以下、本実施形態に係る発光素子と呼ぶ)について、図4を参照して説明する。図4(A)には、無機エレクトロルミネッセンス素子400が示されている。
本実施形態に係る素子400は、ポリ酸を含有する紙410と、ポリ酸を含有する紙を挟む一対の電極420と、を備える。
ポリ酸を含有する紙410は、上述した本実施形態に係る紙であり、上述したように作製することができる。紙410は、通常は発光性のポリ酸を含有している。発光性のポリ酸としては、発光性を有するポリ酸の母体そのもの、又は発光センターとして働く希土類イオン〈Eu3+及びTb3+等〉や、Cr3+又はMn4+等の遷移金属イオンを含むポリ酸が挙げられる。
強い発光性のポリ酸母体としては、例えばCs[W1032]・20HO、K5.51.5[SbW24]・6HO、K[Mo24]・4HO等が挙げられる。また、発光センターを含むポリ酸としては、陰イオンとして[EuW10369−、[TbW10369−又は[SbW247−を含むポリ酸が挙げられる。このようなポリ酸の具体例としては、Na[EuW1036]・32HO、KNa[TbW1036]・20HO、Na19{[EuO(OH)(HO)Al(Nb19}・47HO、Na19{[TbO(OH)(HO)Al(Nb19}・47HO、K15[Eu(HO)(SbW33)(W18]・25.5HO、K15[Tb(HO)(SbW33)(W18]・25.5HO、[NH12[Eu(HO)16(MoO)(Mo24]・13HO、[NH12[Tb(HO)16(MoO)(Mo24]・13HO、[Eu(HO)12][Mo27]・6HO、K{[Eu(HO)[(GeTi37]}・13HO、K12[EuP30110]・54HO、[Eu(HO)[V1028]・8HO、Na[CrMo24]・8HO、KNa[MnW24]・12HO、K[MnMo32]・6HO、Na12[Mn(Nb19]・50HO等が挙げられる。
紙410は複数種類のポリ酸を含有していてもよく、複数種類のポリ酸を組み合わせることにより発光色を変化させることができる。取り扱いを容易とする観点から、紙410は乾燥していることが好ましく、具体的には上述のように乾燥工程を経て作製されていることが好ましい。
電極420は導電性材料で構成され、種類は特に限定されない。光を取り出すためには、一対の電極420のうちの少なくとも一方が透明電極であることが好ましい。透明電極としては、例えばITO電極等が挙げられる。
素子400は、紙410と電極420以外の構成要素を備えていてもよい。例えば、素子400は素子を封止する封止材(不図示)を備えていてもよい。また、素子400は紙410と電極420との間に絶縁層(不図示)を備えていてもよい。しかしながら、素子400は、紙410と電極420との間に絶縁層を有さなくても、良好な発光性能を示す。これは、紙410が絶縁層としての役割を果たしているためであると考えられる。すなわち、一実施形態において、紙410は、一対の電極420の少なくとも一方、好ましくは双方に直接接触している。このような構成を有する素子400は、塗布するポリ酸溶液のポリ酸濃度を制御することで容易に作製することが可能である。
一対の電極420の間に駆動電源430を接続し、パルス電圧を印加すると、紙410が発光する。一実施形態においては、両電極間に100〜1500V程度の電圧が印加される。また、一実施形態においては、20〜400ヘルツ程度の周波数を有するパルス電圧が印加される。
本実施形態に係る素子400は、一対の電極420で紙410を挟むことにより、容易に作製できる。一実施形態においては、一対の電極420で紙410を挟み、電極420をバネクリップ440で固定することにより、素子400が作製される。このように、本実施形態に係る素子400は容易にかつ安価に作製することができる。
[実施例1:ポリ酸の紙への固定]
紙としては、複写用紙(三善製紙社製,41.0g/m,製品名:連続伝票用紙,厚さ51μm)を5cm×5cmのサイズに裁断したものを用いた。この複写用紙は、製紙工程で用いられた硫酸アルミニウムを0.1%含んでいる。ポリ酸水溶液としては、ポリ酸A([PrNH[Mo24]・3HO)(2.0g)をビーカー内で蒸留水(100mL)に溶解させて調製したものを用いた。
図1に示すように、ビーカー110中のポリ酸水溶液0.2mLをピペット120で紙130に滴下し、ガラス棒140で紙全面に塗布した。こうして、ポリ酸水溶液が塗布された紙150が得られた。その後、紙150を室温で空気中に2日間置くことにより十分に乾燥させた。得られたポリ酸含有紙は白色であったが、紫外線照射により赤褐色に変化し、暗所では白色に戻ることが確認された。ポリ酸Aは、固体状態でこのようなフォトクロミズムを示すことが知られている。
また、ポリ酸Aの代わりに、ポリ酸B(Na[EuW1036]・32HO)を用いて、同様にポリ酸含有紙を作製した。得られたポリ酸含有紙は、室温下で紫外線を照射した際に、赤色の発光を示した。ポリ酸Bは、固体状態でこのような発光性を有していることが知られている。
ポリ酸A及びBを用いた同様の実験を、ゼオライト紙(三善製紙社製,製品名:FLS原紙,厚さ45μm,硫酸アルミニウム含有率0.6〜1.0%)、耐水紙(三善製紙社製,製品名:耐水紙(白),厚さ50μm,硫酸アルミニウム含有率0.6〜1.0%)、珪藻土紙(三善製紙社製,110g/m,製品名:サンシリカ,厚さ130μm,硫酸アルミニウム含有率0.1〜0.5%)、及び珪藻頁岩紙(三善製紙社製,製品名:珪藻頁岩紙,厚さ140μm,硫酸アルミニウム含有率0.1〜0.5%)を用いて行ったところ、同様の結果が得られた。これらの紙もまた、製紙工程で用いられた硫酸アルミニウムを微量に含んでいる。このように、ポリ酸水溶液を紙に含浸させて乾燥させることにより、固体状態のポリ酸と同様の機能性を有するポリ酸含有紙が得られることが確認された。
また、種々のポリ酸及び紙を用いて同様にポリ酸含有紙を作製し、その厚さを測定した。測定結果を表1に示す。ポリ酸としては、上述のポリ酸A及びB、並びに抗ウイルス作用を有するポリ酸C(K11H[(VO)(SbW33]・27HO)及び抗バクテリア作用を有するポリ酸D(K[PTi1040]・6HO)を用いた。紙としては、上述の複写用紙、珪藻頁岩紙、及び珪藻土紙を用いた。
Figure 0005666674
表1に示すように、ポリ酸の塗布により紙の厚みは変化しなかった。また、塗布を5回繰り返した場合であっても、やはりポリ酸含有紙の厚さは変化しなかった。さらに、ポリ酸の混合溶液を塗布した場合であっても、ポリ酸含有紙の厚さは変化しなかった。この結果は、ポリ酸が紙において結晶化しているわけではないことを示唆する。本実施例で用いた各ポリ酸の分子サイズはおよそ1〜2nmであり、紙厚の1/10〜1/10に相当する。このことから、ポリ酸は、紙のマトリックス内で陽イオン(例えばAl3+イオン)と結合し、水に不溶性の塩を作って固定化されているものと推測できる。
[実施例2:発光紙による発光の測定]
上記のポリ酸Bと、複写用紙、ゼオライト紙、耐水紙、珪藻頁岩紙及び珪藻土紙のそれぞれを用いて実施例1のように作製したポリ酸含有紙(発光紙)について、紫外線照射による室温下での赤色発光を測定した。ポリ酸Bは、白色の固体であって、水への溶解度は3.0g/100mL程度である。赤色発光は、可視光カットフィルターを介して500W超高圧水銀灯からの紫外線を照射した際に、肉眼で十分に観測できた。
図2に示す測定システムを用いて、発光紙210からの発光スペクトルを測定した。YAGレーザー220としては、最大出力9mJのNd:YAGレーザーシステム(Rayture System Co. Ltd製,CPY20−10FHG)を用い、第3高調波による266nmの紫外線を発光紙へと照射した。分光器230は発光紙210の裏面からの光を受け分光して、光電子増倍管240及びロックインアンプ250を介して、記録計260によって発光スペクトルを記録した。複写用紙を用いて作製した発光紙から得られた発光スペクトルを図3に示す。
594,620,652,700nm付近に観測される発光スペクトルは、[EuW10369−のEu3+に特徴的な、(J=1〜4)電子遷移に対応する発光である。その発光強度は、紙の一方の面から光を照射した場合と、同じ位置に他方の面から光を照射した場合とで発光強度比は1〜0.8であって大差なかった。このように、ポリ酸水溶液を紙に塗布することにより、両面から発光する二次元平面発光材料が簡単に得られることが確認された。
ポリ酸水溶液を塗布した面と裏面との間で発光強度及び発光スペクトルに大差が認められなかったことから、ポリ酸は紙の厚さ方向にほぼ均等に固定化されているものと推測できる。また、複写用紙を用いて作製した発光紙の室温での発光スペクトルの寿命は1.2ミリ秒であることが確認された。これは、固体状態でのポリ酸B(2.8ミリ秒)と比べて小さい。このことは、紙のマトリックス内部におけるポリ酸の環境は、固体状態でのポリ酸の環境とは異なっていることを示唆する。この結果も、ポリ酸を構成する陽イオンが紙のマトリックス内において他の陽イオン(例えばAl3+イオン)で置換された状態で固定化されていることを示唆している。
[実施例3:発光素子の作製]
ガラス上に酸化インジウムスズ膜を形成して得られたITO電極(In/SnO)(日本板硝子社製)を2枚用意した。上記のポリ酸Bと珪藻頁岩紙とを用いて実施例1と同様に作製した珪藻頁岩紙(厚さ130μm)を、2枚のITO電極で挟み、クリップを用いて固定することにより、発光素子を作製した。作製された発光素子の構造を図4(A)に示す。
ITO電極間に、図4(B)に示すパルス電位を印加すると、電圧印加と同時に、両方のITO電極を介して発光紙からの赤色発光が観測された。図5は、200ヘルツの周波数で−400V(duty cycle 20%)の電圧を印加した際に得られた発光スペクトルを示す。
やや厚みの大きな珪藻頁岩紙(厚さ160μm)を用いて同様に発光素子を作製し、試験したところ、−0.4kVでは発光せず、発光には−0.6kV以上の印加電圧を要した。例えば、それぞれ異なる180±10μm又は240±10μmの厚みを有する珪藻土紙にポリ酸Bを同様に担持させて作製した発光素子においては、前者が発光するためには−0.5kV以上の印加電圧を要したのに対し、後者では−1.4kV以上の印加電圧を要した。このことから、発光に必要となる印加電圧(閾値電圧)は発光紙の厚みに依存しており、発光紙の厚みが大きくなるに従いより高い電圧が必要であることがわかった。
また、電圧が高くなるとともに、赤色発光に加えて発光紙内部に含まれる空気中の窒素による淡青色のプラズマ発光も観測された。図6は、ポリ酸B担持の珪藻頁岩紙(厚さ130μm)に200ヘルツの周波数で−800Vの電圧を印加した際に得られた、窒素ガス由来の淡青色のプラズマ発光スペクトルを示す。
また、ポリ酸Bの代わりにポリ酸としてKNa[TbW1036]・20HOを用いることにより、緑色の発光が得られる発光素子を作製することができた。この緑色の発光は、Tb3+に由来する(J=5〜0)電子遷移に対応する発光と考えられる。
さらに、ポリ酸Bの代わりに希土類イオンを含まないポリ酸を用いて、同様に発光素子を作製した。ポリ酸としてK5.51.5[SbW24]・6HOを用いることにより、およそ490nmに発光スペクトルの幅広い極大を示す、O→W電荷移動による緑色の発光素子を作成できた。同様に、ポリ酸としてNa[IMo24]・3HOを用いることにより、およそ670nmに発光スペクトルの幅広い極大を示すO→Mo電荷移動による赤色の発光素子も作成できた。
さらに、複数種類のポリ酸を含有する紙を用いて発光素子を作製したところ、複数種類のポリ酸に由来する発光色が組み合わされた色の発光が得られた。例えば、ポリ酸BとK5.51.5[SbW24]・6HOとを組み合わせて用いた場合には、青白色の発光が得られた。

Claims (12)

  1. ポリ酸を含有する紙と、前記紙を挟む一対の電極とを備えることを特徴とする発光素子。
  2. 前記ポリ酸を含有する紙は乾燥していることを特徴とする、請求項1に記載の発光素子。
  3. 前記ポリ酸を含有する紙は前記一対の電極に接触していることを特徴とする、請求項1又は2に記載の発光素子。
  4. エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする、請求項1乃至3の何れか1項に記載の発光素子。
  5. 前記ポリ酸が、[EuW10369−、[TbW10369−又は[SbW247−を含むことを特徴とする、請求項1乃至4の何れか1項に記載の発光素子。
  6. ポリ酸の溶液を紙に塗布する塗布工程と、
    前記塗布後の紙を乾燥させる乾燥工程と、
    を有することを特徴とする、ポリ酸を含有する紙の製造方法。
  7. 前記ポリ酸の溶液は、ポリ酸の水溶液であることを特徴とする、請求項6に記載の製造方法。
  8. 前記ポリ酸の溶液は前記ポリ酸のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩を含有し、前記紙はアルカリ土類金属塩、三価以上の金属陽イオン、又は有機物陽イオンを含有していることを特徴とする、請求項6又は7に記載の製造方法。
  9. ポリ酸を含有する紙。
  10. 前記ポリ酸が前記紙のポリ酸含有部分にわたって均一に含有されていることを特徴とする、請求項9に記載の紙。
  11. 前記ポリ酸は発光性を有し、
    前記ポリ酸を含有する紙は発光紙であることを特徴とする、請求項9又は10に記載の紙。
  12. 前記紙の一部分に前記紙の一方の面から励起光を照射した際に観測される発光強度と、前記紙の前記一部分に前記紙の他方の面から前記励起光を照射した際に観測される発光強度と、が同等であることを特徴とする、請求項11に記載の紙。
JP2013215801A 2013-10-16 2013-10-16 発光素子並びにポリ酸を含有する紙及びその製造方法 Expired - Fee Related JP5666674B1 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013215801A JP5666674B1 (ja) 2013-10-16 2013-10-16 発光素子並びにポリ酸を含有する紙及びその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013215801A JP5666674B1 (ja) 2013-10-16 2013-10-16 発光素子並びにポリ酸を含有する紙及びその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP5666674B1 true JP5666674B1 (ja) 2015-02-12
JP2015079630A JP2015079630A (ja) 2015-04-23

Family

ID=52569474

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013215801A Expired - Fee Related JP5666674B1 (ja) 2013-10-16 2013-10-16 発光素子並びにポリ酸を含有する紙及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5666674B1 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016132840A (ja) * 2015-01-19 2016-07-25 株式会社Moデバイス 紙、発光素子、及び紙の製造方法

Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2012169494A1 (ja) * 2011-06-10 2012-12-13 理想科学工業株式会社 El素子、el発光パターン用シート、およびel素子の製造方法

Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2012169494A1 (ja) * 2011-06-10 2012-12-13 理想科学工業株式会社 El素子、el発光パターン用シート、およびel素子の製造方法

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016132840A (ja) * 2015-01-19 2016-07-25 株式会社Moデバイス 紙、発光素子、及び紙の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2015079630A (ja) 2015-04-23

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Zhu et al. Light-permeable, photoluminescent microbatteries embedded in the color filter of a screen
JP6441636B2 (ja) 画像表示装置用モジュール及び画像表示装置
Kuznetsov et al. Ag nanocluster functionalized glasses for efficient photonic conversion in light sources, solar cells and flexible screen monitors
US8901808B2 (en) Ultraviolet light-emitting material and ultraviolet light source
US9728393B2 (en) Target for ultraviolet light generation, electron beam-excited ultraviolet light source, and production method for target for ultraviolet light generation
Wu et al. Sol–gel synthesis of Eu 3+ incorporated CaMoO 4: the enhanced luminescence performance
Baekelant et al. Form follows function: warming white LEDs using metal cluster-loaded zeolites as phosphors
Zhu et al. Research on the afterglow properties of red-emitting phosphor: SrAl 2 O 4: Eu 2+, Dy 3+/light conversion agent for red luminous fiber
Wang et al. An electroswitchable fluorescence thin-film based on a luminescent polyoxometalate cluster
CN104269495A (zh) 一种高效率有机发光二极管及其制备方法
JP5666674B1 (ja) 発光素子並びにポリ酸を含有する紙及びその製造方法
Lv et al. Investigation of reversible photoluminescence switching driven by colorless-purple photochromism in Sr5 (PO4) 3F: Eu2+ for optical storage applications
Yan-bo et al. Synthesis and luminescence properties of YVO4: Eu nanocrystals grown in nanoporous glass
US11698399B2 (en) Electric conductivity-measuring material, electric conductivity-measuring film, electric conductivity-measuring device, and electric conductivity-measuring method, as well as electric resistivity-measuring material, electric resistivity-measuring film, electric resistivity-measuring device, and electric resistivity-measuring method
JP2008069290A (ja) 板状蛍光体とそれを使用したディスプレイ
KR20070026848A (ko) 형광체 및 그의 제조 방법 및 그것을 이용한 입자 분산형el 디바이스
CN110964523B (zh) 一种Cr3+离子激活的近红外荧光粉及其制备方法与应用
He et al. Tailoring the luminescence of europium ions in mesoporous AlPO4 monolithic glass
US4243909A (en) Fluorescent lamp alkaline earth halophosphate phosphor with protective NaCs2 PrCl6 coating
JP6038966B2 (ja) 紙、発光素子、及び紙の製造方法
JP4884409B2 (ja) 蛍光物質含有の色素増感型太陽電池及びその製造方法
Butler et al. Electroluminescence of zinc sulphide phosphors
KR100636495B1 (ko) 평판형 형광램프
Yu et al. Synthesis and multicolor luminescence of Tb 3+ and Sm 3+ co-doped LiGd (MoO 4) 2 phosphor
JP2020205148A (ja) 紙及び発光素子

Legal Events

Date Code Title Description
TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20141003

A602 Written permission of extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602

Effective date: 20141106

R155 Notification before disposition of declining of application

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R155

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20141210

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5666674

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees