以下に、本発明に係る経路設定方法、又は経路設定装置を具備するミキシングシステムについて、添付図面を参照して、説明する。
〈ミキシングシステムの概要〉
図1は、本発明に係る経路設定方法、又は経路設定装置を具備するミキシングシステムの概略を示すブロック図である。
図1のミキシングシステムは、ミキシングコンソール1、ミキシングエンジン2、及び複数の入出力装置(I/O装置)3〜5により構成される。各装置は、オーディオネットワーク6により接続される。オーディオネットワーク6は、上記特許文献1(特開2008‐99264号公報)に開示された伝送方式により、複数の装置間でオーディオ信号を含む各種データを「伝送フレーム」単位で伝送するネットワークである。ネットワーク6は、複数の伝送チャンネルを具備しており、該複数伝送チャンネルを用いて、複数チャンネルのオーディオ信号を複数の装置間で略リアルタイムに伝送する能力を有する。また、「伝送フレーム」は、オーディオ信号の伝送と同時に、リモート制御用のデータを含む各種制御データを伝送することも可能である。
ミキシングコンソール1は、複数のチャンネルに対応するチャンネルストリップを含む多数の操作子を有し、オペレータによる操作を受け付ける「音響調整卓」である。オペレータ(音響システムのユーザ)は、コンソール1の操作子を用いて、複数チャンネルのオーディオ信号の音特性の調整(レベル調整等)を含む本ミキシングシステムの各種動作の制御やデータ入力等を行う。コンソール1においてオペレータが行った操作に応じた各種制御データは、ネットワーク6経由で他の装置(エンジン2、I/O装置3〜5)に伝送され、他の装置(エンジン2、I/O装置3〜5)は該伝送された制御データに基づき動作する。すなわち、コンソール1は、他の装置の動作をネットワーク6経由でリモート制御する制御装置である。
I/O装置3〜5は、図示外の複数チャンネルのオーディオ信号供給元SSから供給されたオーディオ信号をネットワーク6へ送信する機能、及び、ネットワーク6から受信した複数チャンネルのオーディオ信号を図示外の複数チャンネルのオーディオ信号供給先SDへ供給する機能を有する。なお、図1のミキシングシステムには、一例として、第1I/O装置(♯1I/O)3、第2I/O装置(♯2I/O)4及び第3I/O装置(♯3I/O)5の3台のI/O装置が接続されている。
ミキシングエンジン2は、デジタルオーディオ信号に対する信号処理を行うDSP(デジタルシグナルプロセッサ)により構成され、オペレータが制御装置(コンソール1)において行った操作内容に基づき、I/O装置3〜5やコンソール1からネットワーク6に送信された1又は複数チャンネルのオーディオ信号を受信して、該受信した1又は複数チャンネルのオーディオ信号に対する信号処理を行い、該処理結果の1又は複数チャンネルのオーディオ信号をネットワークに送信することができる。
また、コンソール1、エンジン2、I/O装置3〜5のいずれの装置に対してもパーソナルコンピュータ(PC)を接続することができる。図1においては、第3I/O装置5にPC7を接続した例を示している。装置に接続されたPC7は、ネットワーク6上の各装置の動作をリモート制御するための制御装置として利用することができる。該PC7が、制御装置として利用される場合、PC7から出力された制御データが第3I/O装置5からネットワーク6経由で他の装置に伝送される。
なお、図1に示すミキシングシステムの構成例は一例であって、各装置の数及び当該システムを構成する装置の種類等は、この限りではない。
図1において、ネットワーク6に接続された各装置1〜5は、ネットワークインターフェース(後述図3を参照)として、単方向に通信を行う受信インターフェースと送信インターフェースの組を2組有する。或る装置の1組の受信及び送信インターフェースと、別の装置の1組の受信及び送信インターフェースとを、それぞれイーサネット(登録商標)規格のネットワークケーブルを用いて接続することにより、2つの装置が接続される。1つの装置が2組の受信及び送信インターフェースを有するので、1つの装置は、2つの装置に接続されうる。例えば、エンジン2は、1組の受信及び送信インターフェースによりコンソール1に接続され、別の1組の受信及び送信インターフェースにより第2I/O装置4に接続される。
各装置(コンソール1、エンジン2及びI/O装置3〜5)が、それぞれ隣接する装置と接続されることで、各装置は、全体として2つの端部を有する直列状に接続される。図1の例では、第1I/O装置3と第3I/O装置5が端部である。そして、各装置は、2組の受信インターフェース及び送信インターフェースを有するので、伝送経路の上流から伝送フレームを受信しつつ、その伝送フレームを伝送経路の下流へ送信する転送処理を、往路と復路との2方向で行うことができる。これにより、図1において破線で示すように、伝送フレームを、ネットワーク6上の5つの装置(コンソール1、エンジン2及びI/O装置3〜5)の間で循環させるリング状のデータ伝送経路を形成することができる。
〈マスタノード〉
ネットワーク6上の5つの装置1〜5のうちいずれか1つが「マスタノード」となる。図1では、一例として、第2I/O装置4がマスタノードである。
マスタノードは、所定のサンプリング周波数の1サンプリング周期毎に伝送フレームを作成して、該作成した伝送フレームをネットワーク6上に送出する動作を行う。マスタノード以外の装置は、全てスレーブノードとなり、それぞれ、経路の上流から転送された伝送フレームを受信しつつ、経路の下流へ転送する転送処理を行う。なお、経路の端部は、伝送経路の折り返した点(ループバック)となるため、隣接する装置から転送された伝送フレームを、当該隣接する装置へ折り返して転送することになる。この転送処理は、各装置が伝送フレームを全て受信してから経路の下流の装置へ転送するのではなく、該伝送フレームを受信しつつ、その伝送フレームを先頭側から順次、経路の下流へ転送するように行われる。1つの伝送フレームのサイズを、サンプリング周期やネットワーク6の通信速度(伝送帯域幅)等の条件に基づき適切に設定することで、伝送フレームを、1サンプリング周期内に、ネットワーク6上の全ての装置の間を1巡させることが可能である。
マスタノードは、また、ネットワーク6上の各装置において、波形データを処理するサンプリング周期のタイミングを同期させるワードクロックのワードクロックマスタである。スレーブノードとなる各装置は、1つの伝送フレームの受信を開始したタイミングに同期して、波形データを処理するサンプリング周期を規定する信号であるワードクロックを発生することで、波形データの処理タイミングを、マスタノードにおけるサンプリング周期(ワードクロック)のタイミングに同期させる。
更に、この実施例では、後述する各装置に対する伝送チャンネルの割り当て状態の管理、詳しくは、各装置が確保する伝送チャンネル数の制御をマスタノードが一括して行っている。すなわち、マスタノードは、本ミキシングシステムにおいて、各装置が確保する伝送チャンネル数を制御する帯域管理部として機能する。なお、伝送チャンネルを確保する処理そのものは、後述の通り各装置が実行する。
〈伝送フレームの構成〉
図2(a)は、上記オーディオネットワーク6で伝送される伝送フレームの構成を示す。図2(a)において、図面左側がフレームの伝送方向の前方、すなわち、フレームの先頭となる。(a)に示すように、伝送フレームは、先頭からプリアンブル40、管理データCD記憶領域41、複数チャンネルのオーディオ信号を記憶可能な音声信号記憶領域42、イーサネットデータ領域43、ITP領域44、レベル表示メータ用のデータを記憶するメータ領域45、ネットワーク6のネットワーク構成を示すデータを記憶するNC領域46、及び、当該フレームのエラーチェックコードを記憶するフレームチェックシークエンス(FCS)領域47からなる。
プリアンブル40には、IEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers)802.3で規定されるプリアンブルとともに、SFD(Start Frame Delimiter)、宛先アドレス、送信元アドレス、或いは当該伝送フレームの長さ(データサイズ)等が記載される。また、CD記憶領域41には、当該伝送フレームに含まれるデータを管理するために、ネットワーク6に接続された各装置が利用するデータ(伝送フレームの番号や、サンプル)遅れ値などが記載される。
音声信号記憶領域42は、所定の複数の伝送チャンネル(例えば256チャンネル)を有する。該複数の伝送チャンネルは、オーディオ信号の伝送を行うために使用される伝送帯域であり、所定のサンプリング周波数でサンプリングされた複数チャンネルのデジタルオーディオ信号(波形データ)を記憶することができる。1つの伝送チャンネルには、1チャンネルの波形データが、1サンプルずつ記憶される。
伝送フレーム中の音声信号記憶領域42に複数の伝送チャンネルが設けられているので、ネットワーク6は、該複数伝送チャンネルを用いて複数チャンネルのオーディオ信号を伝送することができる。
かかる音声信号記憶領域42を有する伝送フレームを、1サンプリング周期毎に伝送フレームをネットワーク6上の各装置の間で循環させることにより、ネットワーク6に接続された各装置の間で、前記所定の複数の伝送チャンネル(例えば256チャンネル)分の波形データを略リアルタイムで伝送することが可能である。
イーサネットデータ領域43は、制御装置から送信されるリモート制御用の制御データや、各装置の接続状況や動作状況の情報等が記載される。イーサネットデータ領域43よりもサイズの大きいデータを伝送する場合には、周知の技術により、送信側でデータを分割して該分割したデータを複数の伝送フレームに分けて伝送し、受信側で複数の伝送フレームから取り出した複数のデータを所定の順番に結合することで、分割前のパケットを復元することができる。また、FCS47は、IEEE802.3で規定される、フレームのエラーを検出するデータを記憶した領域である。なお、レベル表示メータ用のデータを記憶する領域45やネットワーク構成に示すデータを記憶するNC領域46が設けられているのは、それらのデータを定常的に伝達するためである。
図2(b)は(a)に示す伝送フレームの伝送状況を説明する図である。(b)において、各装置は、図1のコンソール1、エンジン2及びI/O装置3〜5に対応しているが、説明の便宜上、5つの装置をアルファベット文字「A」、「B」、「C」、「D」、及び「E」により区別される。また、装置「D」はマスタノード(図において(M)はマスタを示す)である。また、装置「A」と装置「E」は、ループバック(LB)、すなわち伝送経路の折り返し端である。マスタノードである装置Dは、1サンプリング周期毎に伝送フレームを作成する。該作成された伝送フレームは、1サンプリング周期毎に、各装置A〜Eの間を、装置D→E→D→C→B→A→B→C→Dの順に循環する。各装置間を結ぶ矢印の向きは、伝送フレームの伝送方向を示す。
伝送フレームが装置A〜Eの間を一巡する過程において、各装置は、ネットワーク6上を伝送される伝送フレームから他の装置から受信すべき波形データや制御データ等を読み出し、また、他の装置へ送信すべき波形データや制御データ等を当該伝送フレームに書き込む。スレーブノードとなる各装置A〜C及びEは、伝送フレームの受信が開始し、音声信号記憶領域42以下のデータを読み書きすべき領域が到達し始めたら、その伝送フレームについて波形データ等の読み出し及び書き込みを開始する。そして、波形データ等の読み出し及び書き込みに並行して、その伝送フレームを先頭側から順次転送する。したがって、各装置A〜C及びEは、伝送フレームを通過させつつ、その伝送フレームに対する波形データ等の読み書きを実行することができる。また、マスタノードとなる装置Dは、ネットワーク6を一巡した伝送フレームの終端まで受信してから、次の伝送フレームの作成及び送信を開始するのが好ましい。
また、ループバックの装置Aと装置E以外の装置は、伝送フレームが装置A〜Eの間を一巡するうちに、伝送フレームを往路と復路の2度通過させることになるが、波形データ等の読み出し及び書き込みを行うのは、例えば伝送フレームを最初に通過させるときなど、いずれか1度の機会のみでよい。
ネットワーク6上のいずれの装置から伝送フレームに書き込まれたデータであっても、その伝送フレームが当該データを書き込んだ装置に戻ってくるまでには、ネットワーク6上の全ての装置を通過することになるので、いずれの装置によって書き込まれたデータであっても、それを全ての装置に伝送することが可能である。
〈各装置に対する伝送チャンネルの割り当ての様子〉
各装置は、伝送フレーム中の音声信号記憶領域42の伝送チャンネルに波形データのサンプルの書き込み、また、伝送チャンネルから自身で必要な波形データのサンプルを読み出す。各装置(図2(b)では装置A〜E)には、予めその装置で必要な数の伝送チャンネルが割り当てられる。各装置は、該伝送チャンネルの割り当てを受けることで、必要な数の伝送チャンネルを確保し、該確保した伝送チャンネルに対して波形データのサンプルを書き込むことができる。
図2(c)は、音声信号記憶領域42の伝送チャンネルを各装置A〜Eに割り当てた様子を説明する図である。(c)において、アルファベット文字が記された各区画は、そのアルファベット文字に対応する装置A〜Eに対して割り当てられた領域(1又は複数の伝送チャンネル)を表しており、区間の大きさは、その装置に割り当てられた伝送チャンネル数を表す。
ネットワーク6に接続された各装置は、その装置がネットワーク6に参加したときに、後述する図5及び図6の伝送チャンネル確保処理を実行することで、その装置で必要な数の伝送チャンネルを確保する。これにより、音声信号記憶領域42の複数の伝送チャンネルは、各装置に割り当てられる(図2(c)参照)。いずれの装置にも割り当てられていない伝送チャンネルは、「空きチャンネル(空きch)」である。装置に対して新たに伝送チャンネルを割り当てるときは、マスタノードの管理により空きチャンネル(空きch)の中から、前記必要な数の伝送チャンネルがその装置に割り当てられるようになっている。
各装置は、伝送フレームを受信及び転送を行いつつ、その装置で確保した1又は複数の伝送チャンネルに対して波形データのサンプルを書き込むことができる。各伝送チャンネルに対する波形データの書き込みは、その伝送チャンネルを確保した装置のみが排他的に行うことができる。例えば装置Bは、音声信号記憶領域42中の区間Bの伝送チャンネルに対して波形データのサンプルを書き込むことができる。他の装置は区間Bの伝送チャンネルに対して波形データのサンプルを書き込むことはできない。
また、他の装置から波形データを受信する場合は、各装置は、伝送フレームを受信及び転送を行いつつ、受信すべき波形データのサンプルを、その波形データが書き込まれた伝送チャンネルから読み出す。例えば装置Bから送信された波形データを、他の装置Cで受信する場合には、装置Cは、音声信号記憶領域42中の区間Bの伝送チャンネルから波形データのサンプルを読み出す。
なお、音声信号記憶領域42における伝送チャンネル数は、音声信号記憶領域42のサイズ及び波形データのビット数に応じて決定される有限の複数である。音声信号記憶領域42のサイズが同じ場合、波形データのビット数を少なくすれば、オーディオ信号の精度は落ちることになるが、伝送チャンネル数はより多く用意できる。
なお、本実施例に示すミキシングシステムに適用するネットワーク経由の伝送フレームの伝送方式は、上記特許文献1として引用した「特開2008‐99264号公報」に開示された技術により行うことができる。当該文献に開示された伝送フレームのサイズやネットワークの仕様等の各種技術的事項は、本実施例にも適用可能であるより、前記文献に開示された内容の全体が盛り込まれたものとする。
〈各装置の構成〉
図3(a)〜(c)は、ミキシングシステムを構成するコンソール1、エンジン2、及びI/O装置3〜5のハードウェア構成を示す。
〈コンソールの構成〉
(a)において、コンソール1は、CPU10、ROM及びRAMを含むメモリ11、オーディオ入出力部12(「A IO」。以下「オーディオI/O」と表記する)、ネットワークインターフェース13(「N I/O」。以下「ネットワークI/O」と表記する)、パーソナルコンピュータ(PC)を接続するためのインターフェース(PC I/O)14、及び、操作パネルに設けられた表示部(P表示)15、操作子(P操作子)16並びに音量レベル調整用操作子(電動F)17を含み、各部がCPUバス18を介して接続される。また、オーディオI/O12、及びネットワークI/O13はオーディオバス19を介して接続される。
CPU10は、メモリ(ROM及びRAM)11に記憶された制御プログラムを実行して、コンソール1の全体動作を制御する。メモリ11には、コンソール1の構成に関する情報等、ネットワーク6経由の通信に必要な各種データが記憶される。また、コンソール1のメモリ11には、ミキシングシステムの制御装置として動作するために必要な制御プログラムが記憶されるとともに、当該ミキシングシステムの現在の構成及び動作状態を記憶したカレントメモリが設けられている。カレントメモリに記憶されるデータには、ネットワーク6に接続された全ての装置の情報(各装置の種類、名称、構成、動作に必要な制御データ等を含む)や、該全ての装置が有する全てのポート(入力端子及び出力端子)の接続情報(ポート毎の供給先情報及び供給元情報)等が含まれる。
なお、ミキシングシステムの稼動中は、制御装置(コンソール1)のカレントメモリの内容は、各装置がそれぞれ有する動作や接続状況等に関する情報に同期化される。なお、ネットワーク経由で接続されたリモート制御主(制御装置)と、制御対象との間で同期化させる(一致させる)ことは、従来より知られる技術により行うことができる。
表示部15は、例えば液晶ディスプレイ等の表示器であって、CPU10からCPUバス18を介して与えられた表示制御信号に基づき各種情報を表示する。オペレータは、後述する「パッチ」の設定等を、表示部15に表示された画面から行うことができる。操作子16は、操作パネル上に配置された多数の操作子と、その操作を検出するための検出機構とを含む。操作子16の操作に応じた検出信号はCPUバス18を介してCPU10に供給される。CPU10は、該供給された検出信号に基づく各種データを発生する。また、音量レベル調整用操作子17は、オーディオ信号の音量を調整するための操作子であって、CPU10から与えられる駆動信号に基づきツマミ部の操作位置が電動制御される、いわゆる「電動フェーダ」により構成される。
ネットワークI/O14は、コンソール1をネットワーク6に接続するインターフェースであり、前述の通り、送信インターフェースと受信インターフェースの組を2組具備している。ネットワークI/O14は、ネットワーク6経由の伝送フレームの送受信、該伝送フレームからの必要なオーディオ信号(波形データ)及び制御データを含む各種データの読み出し、該伝送フレームに対する波形データ及び制御データを含む各種データの書き込み、オーディオバス19を介した波形データの送受信、及びCPUバス18を介した制御データ等の送受信などを行うもので、そのために必要な機構を有する。ネットワークI/O14は、上述した、1サンプリング周期内に伝送フレームをネットワーク6で循環させる通信を行う能力を有していれば、どのような通信方式でデータ通信を行うインターフェースで構成されてもよい。
オーディオバス19は、オーディオI/O12及びネットワークI/O13の間で、複数チャンネルのデジタルオーディオ信号(波形データ)を、サンプリング周期毎に、1サンプルずつ時分割伝送するローカルバスである。なお、オーディオI/O12及びネットワークI/O13は、ワードクロックを用いた周知の技術により、波形データを処理するタイミングを同期する。すなわち、オーディオI/O12及びネットワークI/O13のいずれか1つがワードクロックマスタとなり、該マスタ以外はスレーブとなり、スレーブはマスタが発生するワードクロックに同期したタイミングでワードクロックを生成し、該ワードクロックに基づくサンプリング周期のタイミングで波形データを処理する。
オーディオI/O12は、アナログオーディオ信号するアナログ入力部、アナログオーディオ信号を出力するアナログ出力部、又はデジタルオーディオ信号(波形データ)を入出力するデジタル入出力部により構成される。オーディオI/O12の詳細は、I/O装置の構成を説明するときに、詳しく述べる。
また、PCインターフェース14は、コンソール1にパーソナルコンピュータを接続するインターフェースである。前述のとおり、PCインターフェース14に接続されたPCをミキシングシステムの各装置(コンソール1、エンジン2、I/O装置3〜5)の動作をリモート制御するための制御装置として利用することができる。
〈I/O装置の構成〉
図3(b)において、I/O装置は、CPU20、メモリ(ROM及びRAM)21、オーディオI/O22、ネットワークI/O23、PCインターフェース24及び、簡易オペレータインターフェース(簡易UI)25を含み、各部がCPUバス26を介して接続される。また、オーディオI/O22、及びネットワークI/O23はオーディオバス27を介して接続される。CPU20、及びメモリ(ROM及びRAM)21は、I/O装置の全体動作を制御する制御部である。また、メモリ21には、当該装置の構成に関する情報や、当該装置の接続状態に関する情報(その装置が有する信号供給元に関する供給先情報、その装置が有する信号供給先に関する供給元情報を含む)等、ネットワーク6経由の通信や、及びリモート制御を受けるために必要な各種データが記憶される。オーディオバス27、オーディオI/O22、ネットワークI/O23、及びPCインターフェース24は、前記図3(a)を参照して説明したものと同様に構成される。
オーディオI/O22は、アナログオーディオ信号を入力するアナログ入力部、アナログオーディオ信号を出力するアナログ出力部、又はデジタルオーディオ信号(波形データ)を入出力するデジタル入出力部により構成される。
アナログ入力部は、例えばXLR端子やマイク入力端子等の複数のアナログ入力端子とAD変換回路を備え、外部のアナログオーディオ信号供給元SSから入力されたアナログオーディオ信号を、サンプリング周期毎にデジタル信号(波形データ)に変換してオーディオバス27に出力する。また、アナログ出力部は、例えばXLR端子やヘッドフォン端子等の数のアナログ出力端子とDA変換回路を備え、オーディオバス27から取り込んだデジタル信号(波形データ)を、サンプリング周期毎にアナログオーディオ信号に変換して、外部のアナログオーディオ信号供給先SDへ出力する。デジタル入出力部は、例えばAES/EBU端子やADAT(登録商標)端子等の複数のデジタルオーディオ用端子を備え、サンプリング周期毎に、デジタルオーディオ信号の供給元SS又は供給先SDとの間で波形データを入出力する。
オーディオI/O22は、コンソール1に備わるI/Oカード装着用スロットに着脱可能なカード式装置により構成される。この場合、コンソール1に装着するI/Oカード数により、オーディオI/O22の構成(端子数等)を変更することが可能である。なお、オーディオ信号供給元SSは、入力端子に接続されたマイク、楽器、或いは音楽再生装置(CDプレイヤー等)等、オーディオ信号の供給元となる音響機器である。また、オーディオ信号の供給先SDは、オーディオI/Oの出力端子に接続されたアンプやヘッドフォン等、オーディオ信号の供給先となる音響機器である。
簡易UI25は、後述の図19に示す比較的簡易な表示器及び操作子群からなり、CPU20からCPUバス26を介して与えられた表示制御信号に基づき各種情報を表示器に表示し、操作子の操作に応じた検出信号を、CPUバス26を介してCPU20に供給する。CPU20は、該供給された検出信号に基づく各種データを発生する。詳しくは後述する通り、オペレータは、各I/O装置の簡易UI25を用いて、そのI/O装置を供給先又は供給元とする「パッチ」の設定を行うことができる。
〈エンジンの構成〉
図3(c)において、エンジン2は、CPU30、メモリ(ROM及びRAM)31、A I/O)32、ネットワークI/O33、PCインターフェース34、信号処理部(DSP)35、及び簡易オペレータインターフェース(簡易UI)36を含み、各部がCPUバス37を介して接続される。また、オーディオI/O32、ネットワークI/O33、及びDSP35はオーディオバス38を介して接続される。CPU30は、メモリ(ROM及びRAM)31に記憶された制御プログラムを実行して、エンジン2の全体動作を制御する。エンジン2のメモリ31には、DSP35の信号処理に必要なマイクロプログラム等のほかに、当該装置の構成に関する情報や、当該装置の接続状態に関する情報等、ネットワーク6経由の通信や、及びリモート制御を受けるために必要な各種データが記憶される。また、オーディオバス38、オーディオI/O32、ネットワークI/O33、及びPCインターフェース34は、前記図3(a)を参照して説明したものと同様に構成される。また、簡易UI36は、電源スイッチや動作チェック用のLEDインジケータなどである。
DSP35は、コンソール1から与えられた制御データに基づき、マイクロプログラムを実行して、オーディオバス38から受信した複数チャンネルのオーディオ信号に対して、サンプリング周期毎に、ミキシング処理等の信号処理を行い、該信号処理した波形データを、オーディオバス38を介して、ネットワークI/O33及びオーディオI/O32に出力することができる。ミキシング処理の動作の概要は後述する。DSP35は、オーディオバス38を介してネットワークI/O33及びオーディオI/O32に接続されているので、ネットワークI/O33から受信した波形データ、及び自身のオーディオI/O32から入力する波形データのいずれもDSP35に供給できる。また、DSP35から出力する波形データは、ネットワークI/O33、及びオーディオI/O32のいずれにも供給されうる。
なお、図に示す通り、エンジン2には、DSP35が実行する信号処理の動作制御用のオペレータインターフェースがない。本実施例のミキシングシステムにおいては、エンジン2のDSP35が実行する信号処理は、コンソール1又はリモート制御用のPCにおけるオペレータの操作に基づき、ネットワーク6経由でリモート制御されるからである。
〈ミキシングシステムにおける信号処理の流れ〉
図4は、図1に示すミキシングシステムにおける信号処理の流れを説明するブロック図である。なお、図4において、コンソール1のオーディオI/O機能及び第1I/O装置3はネットワーク6に対するオーディオ信号の入出力に使用され、第2I/O装置4は同入力のみに使用され、そして、第3I/O装置5は同出力のみに使用される。また、図4において、各装置のオーディオI/O機能についてはオーディオ入力部と、オーディオ出力部に分けて描かれているので、入力側の符号には「i」を付加し、出力側の符号には「o」を付加して、その区別を示した。また、図4においては、オーディオネットワーク6経由で行われるオーディオ信号の流れを点線矢印で示し、各装置内のオーディオバス19,27,38経由で行われるオーディオ信号の流れを実線矢印で示す。
オーディオネットワーク6は、前述のとおり、所定の複数の伝送チャンネル(例えば256チャンネル)を有している。そして、ネットワーク6に接続された各装置は、予め、その装置で必要な数の伝送チャンネルを確保している(図2(c)参照)。各装置は、各々が確保した伝送チャンネルを実際に使用されているか否か(つまり、その伝送チャンネルを用いて実体的なオーディオ信号の送信が行われているか否か)に関わらず、当該確保した伝送チャンネルを使って信号をネットワーク6に送信する動作を行う。つまり、供給元から実体的なオーディオ信号が供給されていない場合には、当該確保された伝送チャンネルに音量レベルがゼロの無音信号(ゼロレベル信号)が供給される。したがって、図4に示していないが、各パッチ部50〜57にはゼロレベル信号の供給元(図示せず)が含まれる。
本ミキシングシステムにおいて、オーディオネットワーク6に対するオーディオ信号の入力側にコンソール1、第1I/O装置3及び第2I/O装置4が接続されている。各装置1、3及び4は、それぞれのオーディオI/O(「Ai(c)」60i、「Ai(♯1)」61i、及び「Ai(♯2)」62i)を介して、各入力端子に接続された信号供給元SS(図示せず)から入力されたアナログオーディオ信号を、サンプリング周期毎にデジタル信号(波形データ)に変換して取り込む。
パッチ部50、51、及び52は、後述する「送信接続」に基づき、各供給元SSに、その装置が確保した伝送チャンネルを1つずつ割り当てる。そして、入力側の各装置1、3及び4のネットワークI/O13,23(図3(a),(b)参照)は、サンプリング周期毎に、各供給元SSから入力された各波形データを、それぞれ割り当てられた伝送チャンネルに書き込む。これにより、各波形データは、それぞれ、割り当てられた伝送チャンネルに載ってネットワーク6上に送信される。
エンジン2は、ネットワークI/O33により、オーディオネットワーク6の複数の伝送チャンネルのうちから、当該エンジン2で必要な伝送チャンネルに載った波形データを受信する。受信すべき伝送チャンネルは、入力パッチ部53により入力チャンネルに接続された伝送チャンネルであって、これは後述する受信接続により特定される。入力パッチ部53は、後述する「受信接続」に基づく所望の伝送チャンネルから受信した信号の出力先として、入力チャンネル部64の1つの入力チャンネルを割り当てる。入力チャンネル部64は、複数の入力チャンネルを有しており、1つの入力チャンネルに対して1つの伝送チャンネルが割り当てられる。これにより、入力チャンネル部64の各入力チャンネルには、サンプリング周期毎に、前記入力パッチ部53により割り当てられた伝送チャンネルから受信した波形データが供給される。
入力チャンネル部64、混合バス65及び出力チャンネル部66は、エンジン2のDSP35(図3(c)参照)が実行するマイクロプログラムにより実現され、それぞれ、従来から知られるものと同様な動作をする。入力チャンネル部64は、各入力チャンネル毎に、入力された波形データに対して、レベル調整、イコライジング、エフェクト付与等の信号処理を行い、該処理済みの波形データを混合バス65に出力する。混合バス65は、複数のバスラインからなり、各バスライン毎に、入力チャンネル部64の1又は複数の入力チャンネルから供給された波形データを混合して、混合した結果を出力チャンネル部66へ出力する。出力チャンネル部66は、各バスラインに対応する複数の出力チャンネルを有しており、混合バスから出力された波形データに対して、出力チャンネル毎に、レベル調整、イコライジング、エフェクト付与等の信号処理を行う。
出力パッチ部54は、後述する「送信接続」に基づき、出力チャンネル部66の各出力チャンネルに、エンジン2が確保した伝送チャンネルを1つずつ割り当てる。そして、エンジン2のネットワークI/O33は、サンプリング周期毎に、エンジン2で信号処理された出力チャンネル毎の波形データを、それぞれ、割り当てられた伝送チャンネルに書き込む。これにより、エンジン2で信号処理した各出力チャンネルのオーディオ信号は、それぞれ、割り当てられた伝送チャンネルに載ってネットワーク6上に送信される。
オーディオネットワーク6に対するオーディオ信号の出力側にはコンソール1、第1I/O装置3及び第2I/O装置4がオーディオネットワーク6に接続されている。各装置1、3及び5のネットワークI/O13,23(図3(a),(b)参照)は、サンプリング周期毎に、ネットワーク6の複数の伝送チャンネルのうちの、その装置で必要な伝送チャンネルに載った波形データを受信する。受信すべき伝送チャンネルは、パッチ部55,56及び57により供給先SDに接続された伝送チャンネルであって、これは後述する受信接続により特定される。
パッチ部55,56及び57は、後述する「受信接続」に基づく所望の伝送チャンネルから受信した信号の出力先として、1つの信号供給先SDを割り当てる。そして、各装置1、3及び5は、それぞれオーディオI/O(「Ai(c)」60o,「Ai(♯1)」61o及び「Ai(♯2)」63o)を介して、ネットワーク6から受信した各伝送チャンネルの波形データを、サンプリング周期毎にアナログオーディオ信号に変換して、前記パッチ部55,56及び57により割り当てられた信号供給先SDへ供給する。
また、エンジン2は、自身の(ローカルの)オーディオI/O(Ai(Lo)67i及びAo(Lo)67o)も具備している。したがって、入力パッチ部53は、Ai(Lo)67iの各入力端子に接続された信号供給元SSに、入力チャンネル部64の入力チャンネルを割り当てることもできる。また、出力パッチ部54は、出力チャンネル部66の出力チャンネルに、Ao(Lo)67oの各出力端子に接続された信号供給元SSを割り当てることもできる。なお、ローカルのオーディオI/Oと入力チャンネル部64を接続するパッチ機能は、従来から知られるものと同様である。
各装置に設けられたパッチ部は、各装置のオーディオバス(図3(a)〜(c)を参照)をパッチとして動作させる構成、又は、各装置のネットワークI/O(図3(a)〜(c)を参照)にパッチ専用のハードウェアを設ける構成により実現することができる。図4に示す通り、エンジン2のみならず、コンソール1やI/O装置3〜5にもパッチ部が備わり、該パッチ部がネットワーク6と装置の間に配置される。
上記構成からなるミキシングシステムにおいて、ネットワーク6上の各装置1〜5は、各々に入力された1又は複数チャンネルのオーディオ信号を、各装置1〜5で確保した伝送チャンネルを用いて、オーディオネットワーク6に送信することができる。そして、エンジン2はオーディオネットワーク6から受信した伝送チャンネル毎のオーディオ信号(波形データ)をミキシング処理して、処理結果をオーディオネットワーク6から送信できる。エンジン2から出力された処理結果の信号は、ネットワーク6上の各装置1〜5から出力することが可能である。
〈伝送チャンネルの確保〉
ミキシングシステムが稼動する前提として、各装置がそれぞれ必要な数の伝送チャンネルを確保していなければならない。図5は、各装置がネットワークに参加したときに実行する処理を示すフローチャートである。この処理において、各装置は、それぞれ必要な数の伝送チャンネルを確保する処理を行う。各装置がネットワークに参加するときとは、例えば、その装置がネットワーク6に接続されたときや、ネットワークに接続された装置の電源がオンされたときなどである。
ネットークに参加した装置のCPUは、ステップS1において、当該装置のメモリに記憶されたパラメータDCNを、今回の処理で確保する伝送チャンネルの数xにセットする。各装置が確保すベき伝送チャンネル数(その装置で必要な伝送チャンネルの数)を決めたパラメータであって、各装置のメモリに不揮発的に記憶されている。DCNは、基本的には、その装置が有する入力ポート(入力端子)の数に対応する数である。
ステップS2において、当該該装置のCPUは、ネットワーク6を伝送されている伝送フレームから、当該ミキシングシステムの情報を取得して、該取得したミキシングシステムの情報を自身のメモリに記憶するとともに、当該装置の情報をネットワーク6上の他の装置に対して通知する。ミキシングシステムの情報は、ネットワークのマスタノードの情報や、後述するR信号リストの作成に必要な情報を含み、伝送フレームのNC領域46に記憶されている。また、「当該装置の情報」は、その装置の装置名、オーディオI/Oカード装着用スロットの数、スロットに装着されたカードが有する入力端子及び出力端子の数などである。なお、以下の説明において、何らかのデータを「通知する」という場合は、いずれもブロードキャストアドレスを付与して、ネットワーク6に接続された他の全ての装置宛てにデータを送信することを言う。
また、前記ステップS2において、当該装置のCPUは、前記取得したミキシングシステムの情報に基づき「R信号リスト」と「T信号リスト」を作成するとともに、該作成したR信号リスト及びT信号リストを、その装置のメモリに記憶する。「R信号リスト」と「T信号リスト」の詳細は後述する。
ステップS3において、当該装置のCPUは、前記ステップS1で設定した個数xの伝送チャンネル確保処理を実行する。図6は、x個の伝送チャンネル確保処理を示すフローチャートである。ステップS4において、当該装置のCPUは、x個の伝送チャンネルを確保したい旨のリクエストをマスタノードに送信し、マスタノードからの応答を受ける。
この実施例では、ネットワーク6のマスタノードが、各装置が確保する伝送チャンネルの数を制御する帯域管理部となる。マスタノードは、前記ステップS4のリクエストに応じて、伝送フレームの音声信号記憶領域42の空きチャンネルを調べて、該リクエストを発生した装置に割り当てるができる伝送チャンネルがあるかどうかチェックする。そして、当該リクエストを承認する場合には、該リクエストを発生した装置に割り当てる1又は複数の伝送チャンネルの番号(i)を記載した応答が、マスタノードから該リクエストを行った装置に返信される。番号「i」は、音声信号記憶領域42が有する所定の複数の伝送チャンネル(例えば256チャンネル)のそれぞれに与えられた番号である。
すなわち、マスタノードは、要求されたx個の伝送チャンネルを当該装置に割り当て可能であれば、x個の空き伝送チャンネルの番号(i)を応答に記載し、また、要求されたx個の伝送チャンネルの空きチャンネルがなくとも、当該装置に割り当てることができる限りの数の伝送チャンネルの番号(i)を、該応答に記載する。マスタノードは、空きチャンネルに1つも空きがない場合や、その他リクエストを承認しない場合(1つも伝送チャンネルを割り当てない場合)は、承認しない旨の返信を行うか、又は、応答せず(ステップS5のNO)、当該伝送チャンネル確保処理が終了する。
リクエストを承認する応答があった場合(ステップS5のYES)、当該装置のCPUは、該応答に記載された各番号(i)の伝送チャンネルを確保して、それら伝送チャンネル(i)を用いた信号の送信を開始するとともに、前記確保した伝送チャンネル数を、KNにセットする(ステップS6)。KNは、その装置で確保した伝送チャンネルの数を示すパラメータであり、その装置のメモリに不揮発的に記憶される。なお、この時点では、後述する「送信接続」を実現しておらず、供給元と伝送チャンネル(i)が未割り当て(実体的なオーディオ信号の供給がない)ので、その装置は当該確保した各伝送チャンネル(i)を用いてゼロレベルの信号(無音のオーディオ信号)の送信を開始する。
ステップS7において、当該装置のCPUは、前記ステップS6により確保した全ての伝送チャンネル(i)に対応するSSN(i)にnullをセットして、該SSN(i)をネットワーク6上の他の装置に通知する。
SSN(i)は、オーディオ信号供給元SSを特定する名称SSNと、伝送チャンネルの番号(i)のセットにより構成される情報、つまり、伝送チャンネル(i)に出力している信号の供給元SSNを示す信号出力情報である。各装置は、SSN(i)により、名称SSNによって特定されるオーディオ信号の供給元SSと、そのオーディオ信号SSNの送信に使用されている伝送チャンネルのチャンネル番号(i)を対応付けることができる。前記ステップS7において各SSN(i)にnullをセットするのは、現時点では、当該伝送チャンネル(i)には、オーディオ信号の供給元SSが未割り当てだからである。なお、SSN(i)の通知を受けた他の装置が実行する処理については、後述する。
上記図5及び図6の処理により、各装置は、それぞれ必要な数の伝送チャンネルを、予め確保する。前記図6のステップS4、S5で説明した通り、各装置は、常にDCN個の伝送チャンネルが確保できているとは限らない。
図7は、各装置のCPUが定期的に実行する伝送チャンネル確保処理を示すフローチャートである。ステップS100において、当該装置のCPUは、メモリに記憶されたDCNの値と当該装置で確保している伝送チャンネルの数KNの差分をxに設定する。そして、xの値が正(x>0)の場合は(ステップS101の「正」)、確保すべき伝送チャンネル数DCNが未だ確保できていなことになるので、当該装置のCPUは、ステップS102において、前記図6に示すx個の伝送チャンネルを確保する処理を実行し、確保できた伝送チャンネル数に応じてKNを更新する。一方、DCNがKNと同数の場合(前記ステップS101の「x=0」)、既に必要な数DCNの伝送チャンネルが確保されているのであるから、処理を終了する。ネットワーク6に接続された各装置は、定期的に、図7に示す処理を行い、DCN個の伝送チャンネルを確保するように努める。
〈R信号リスト及びT信号リスト〉
前記図5のステップS2において各装置が作成するR信号及びT信号について説明する。「T信号リスト」は、その装置がネットワーク6に送信している全オーディオ信号SSNに対応するSSN(i)からなるリストである。各装置は、T信号リストを参照することで、各自の入力端子に接続された供給元SSのオーディオ信号SSNと、その信号SSNの送信に使用している伝送チャンネル(i)を対応付けることができる。なお、前記ステップS2の時点では、その装置はまだオーディオ信号を送信していないので、T信号リストとして空のリストを作成することになる。
「R信号リスト」は、その装置がネットワーク6から受信している伝送フレームに含まれる全オーディオ信号SSNに対応するSSN(i)からなるリストである。すなわち、各装置が有するR信号リストは、他の装置が有する供給元SSのオーディオ信号SSNと、その信号SSNの送信に使用している伝送チャンネル(i)を対応付けたリストである。従って、或る装置が有するR信号リストには、他の全ての装置のT信号リストに登録されたSSN(i)が登録される。更に言えば、1つの装置が有するT信号リストとR信号リストをあわせれば、音声信号記憶領域42に記憶されている全ての信号と、それら信号が載った伝送チャンネルを対応付けたリストとなる。
各装置は、R信号リストを参照することで、他の装置が有する供給元SSのオーディオ信号SSNと、その信号SSNの送信に使用している伝送チャンネル(i)を対応付けることができる。前記ステップS2で各装置が取得するミキシングシステムの情報には、「R信号リスト」を作成するのに必要な情報(他の装置がネットワークに送信しているオーディオ信号の名称SSNと、該SSNの送信に使用している伝送チャンネル(i)を対応付けたSSN(i))が含まれる。
各装置は、それぞれ独自にR信号リスト及びT信号リストを作成して、各々のメモリに記憶する。したがって、各装置が有するR信号リスト及びT信号リストの内容は、装置毎に異なる。詳しくは後述する通り、各装置のR信号リストは、他の装置からSSN(i)が新たに通知されたときに更新され、また、各装置のT信号リストは、各装置において伝送チャンネル(i)に供給元SSのオーディオ信号を割り当てたときに更新される。
また、前記名称SSNは、信号供給元SS毎に設定される名称である。ネットワーク上の各装置は、名称SSNにより、信号供給元SS、当該供給元SSから供給されたオーディオ信号、及び該供給元SSが接続された入力ポートを特定することができる。すなわち、名称SSNは、供給元SSの名称であり、また、該供給元SSから供給されるオーディオ信号の名称といえる。
オペレータは、御装装置(コンソール1、又はPC7)、又はその信号供給元SSが接続された各装置において、各信号供給元SSの名称SSNを設定することができる。オペレータが設定する名称“ssn”は、例えば、そのオーディオ信号の種類を識別する普通名称的な名前(例えば、「BGM」や「Mic」など)、又は供給元SSが接続されたポート名などである。なお、オペレータが設定する名称“ssn”は、少なくとも、該名称SSNを設定する供給元SSが接続された装置内でユニークなものでなければなならない。そして、制御装置又は各装置は、オペレータが名称SSNを設定したとき、該名称SSNに対して、その供給元SSが有する装置ID(当該装置に固有のID)を自動付加することで、ミキシングシステム内でユニークな名称SSNを生成することができる。
〈パッチ設定画面〉
図8(a)〜(c)、及び図9(a),(b)は、制御装置の表示部に表示されるパッチ設定画面の構成例を示す図である。これらパッチ設定画面は、制御装置として用いるコンソール1のパネル表示部15(図3(a)参照)や、PC7のモニタに表示される。オペレータは、図1に示すミキシングシステムにおけるパッチ設定をパッチ設定画面から行うことができる。
本明細書においては、「パッチ」とは、例えば入力ポートの接続先に1つの入力チャンネルを割り当てること、つまり、1つの信号供給元の接続先に1つの信号供給先を割り当てることをいう。「パッチ」設定により、或る供給元と1つの供給先が接続され、該供給元と該供給先の間に信号を伝送する経路が設定される。また、「パッチ」の設定を行うことを「パッチング」という。更に、供給元に対して供給先を割り当てることを「入力パッチ」といい、供給先に対して供給元を割り当てることを「出力パッチ」という。
制御装置は、以下に説明するパッチ設定画面の表示を行うために、ネットワーク6に接続された全ての装置が有する全ポートの情報を取得して、メモリに記憶している。「装置が有する全ポートの情報」は、各装置の情報、入力端子及び出力端子の接続状況の情報、及び、各装置の動作状況に関する各種情報等を含む。制御装置のCPUは、メモリに記憶された「全ての装置が有する全ポートの情報」に基づき、パッチ設定画面に、以下に述べる各種情報を表示する。なお、各装置がネットワーク参加時に各装置の情報を通知する(前記図5のステップS2)ことは、既に述べた。また、各装置は、後述する接続更新処理の実行時等、各装置の接続状態や動作状況に変更があったときに、変更された接続状態や動作状況の情報を通知する。
〈入力パッチ設定画面〉
図8(a)は、エンジン2の入力パッチ部53のパッチ設定を行う入力パッチ設定画面である。(a)に示す入力パッチ設定画面は、縦列にエンジン2の入力チャンネル部64が有する入力チャンネル群を表示する行が配列され、横列に選択可能な全ての入力ポート(入力端子)群を表示する列が配列されてなるマトリクス図によって構成され、行列の交点(グリッド)により入力ポートと入力チャンネルの組み合わせを表す。
図8(c)は、(a)に示す入力パッチ設定画面の拡大図である。(c)に示す通り、縦列に表示された各入力チャンネルの行には、それぞれ、対応する入力チャンネルの名前(例えば「IN CH01」など)を表示するチャンネル名表示欄70が設けられている。入力パッチ設定画面の縦列には、当該エンジン2が有する全ての入力チャンネルが表示される。
また、横列に表示された各入力ポートの列には、選択可能な全ての入力ポート、すなわち、当該エンジン2が有する入力ポート(ローカルのポート)と、ネットワーク6に接続された他の全ての装置1〜5が有する入力ポート(リモートのポート)が表示される。図においては、図示の都合上、「engine」(エンジン2)が有する入力ポートと、「♯1I/O」(第1I/O装置3)が有するポートのみが描かれている。
各入力ポートの列には、図において上から順に、装置名表示欄71、スロット番号表示欄72、入力ポート名表示欄73が設けられている。装置名表示欄71には、「engine」,「♯1I/O」…のように各装置の名称が表示される。スロット番号表示欄72には、その装が有するI/Oカード装着用スロットの名称(番号)が表示される。各入力ポート名表示欄73には、対応する入力ポート(入力端子)に接続された供給元SSの名称が表示される。入力ポート名表示欄73に表示される名称は、当該入力ポート(入力端子)に接続された供給元SSの名称SSNに対応している。入力ポートの列には、ネットワーク6に接続された全ての装置が有する全ての入力ポートが表示されるので、供給元SSが接続されていない入力ポート(入力端子)も表示される。そして、供給元SSが接続されていない入力ポートの入力ポート名表示欄73は空欄になる。
更に、入力ポートのポート名表示欄73の下の伝送チャンネル割り当て状態表示欄74は、その入力ポートに伝送チャンネルが割り当て済みか否かを示す記号を表示する。該欄74において、記号「‐」は、当該入力ポートがエンジン2内の入力ポート(ローカルのポート)であるため伝送チャンネルが不要であることを示す。記号「×」は、当該入力ポート(供給元SS)からネットワーク6へのオーディオ信号の出力オン/オフがオフに設定されていることを示す。記号「*」は、入力ポート(供給元SS)に伝送チャンネルが割り当て済みであることを示す。そして、記号無しは、入力ポート(供給元SS)に伝送チャンネルが未割り当てであることを示す。
(c)の入力パッチ設定画面において、エンジン2が有する各入力ポート(入力端子)は、ローカルの入力ポートであるから、ネットワーク6の伝送チャンネルの割り当ては不要である。したがって、これら入力ポートの列には、記号「‐」が表示されている。
これに対して、第1I/O装置3等、他の装置の入力ポート(入力端子)は、リモートのポートのである。よって、これらリモートの入力ポートと当該エンジンの入力チャンネルとの接続には、各入力ポートの接続先となる伝送チャンネルの設定(「送信接続」の設定)が介在する。したがって、他の装置が有する各入力ポートの列には、その入力ポートに対する伝送チャンネルの割り当て状態が記号「×」、記号「*」又は記号無しにより伝送チャンネル割り当て状態表示欄74に表示される。
入力パッチ設定画面の各グリッドには、そのグリッドの接続状況に応じた接続記号が表示される。接続記号無しのグリッドは、パッチ設定されていない状態である。また、記号「●」は、同一装置内の接続、又は、異なる装置間の接続であって、当該入力ポート(供給元SS)に伝送チャンネルが割り当てられている状態(その入力ポートの欄74に記号「*」が表示されている状態)を示す。また、記号「○」は、異なる装置間のパッチングであって、当該入力ポート(供給元SS)に伝送チャンネルが未割り当ての状態(その入力ポートの欄74に記号「×」が表示されている状態)場合である。また、記号「×」は、供給元SSを有する装置、若しくは供給先SDを有する装置がネットワーク6に存在しない場合、入力ポートを有する装置に供給元SSの実ハードウェアが存在しない場合、又は出力ポートを有する装置内に供給先SDの実ハードウェアが存在しない場合を示す。なお、「実ハードウェアが存在しない」場合とは、入力ポート(入力端子)に供給元SSが接続されていない場合、又は出力ポート(出力端子)に供給先SDが接続されていない場合である。
図8(a),(c)に示す入力パッチ設定画面において、オペレータは、任意のグリットを指定する操作を行うことで、当該グリッドの接続指示を行い、当該行に表示された入力チャンネル(信号供給先)に、当該列に表示された入力ポート(信号供給元)を割り当てる入力パッチの設定、及びその解除を行うことができる。なお、グリッドを指定する操作は、例えばマウスポインタを用いたクリックにより行われるもので、以下、この接続指示の操作を「クリック」と呼ぶ。
〈出力パッチ設定画面〉
図8(b)は、エンジン2の出力パッチ部54のパッチ設定を行う出力パッチ設定画面であり、その表示内容は、行列に表示される供給元及び供給先が異なるだけで、(c)に示す入力パッチ設定画面と概ね同様である。
(b)に示す出力パッチ設定画面において、縦列にエンジン2が有する出力チャンネルの名称が表示される。出力パッチ設定画面では、縦列に配列されたか各行の名称表示欄の隣に、その出力チャンネルが伝送チャンネルに割り当て済みかどうかを示す記号(記号「×」、記号「*」又は記号無し)が表示される。出力チャンネルからネットワーク6越しにオーディオ信号を送信する、つまり、各出力チャンネルに対して、その接続先となる伝送チャンネルを設定するからである。また、横列には各装置の装置名、スロット名、及び出力ポート名が表示される。出力ポート名は、その出力ポートに接続された供給先SDの名称が表示される。各グリッドには、そのグリッドの接続状況を示す接続記号がそれぞれ表示される。
オペレータは、任意のグリットをクリックすることで、当該行に表示された出力チャンネル(信号供給元)に、当該列に表示された出力ポート(信号供給先)を割り当てる出力パッチの設定、及びその解除を行うことができる。
〈ネットワーク入力パッチ設定画面〉
また、制御装置は、ネットワーク6に接続された全ての装置について、パッチ設定画面を表示できる。
図9(a)は、各I/O装置3〜5におけるネットワーク入力パッチ設定画面である。図9(a)に示すネットワーク入力パッチ設定画面において、縦列の各行には、そのI/O装置が有するローカルの出力ポート(出力端子)群の出力ポート名(その出力ポートのポート番号、又は接続された供給先SDの名称)が表示される。
横列の各列には、そのI/O装置が有するローカルの入力ポート(入力端子)と、ネットワーク6に接続された他の全ての装置1〜5が有するリモートの入力ポート(入力端子)とが表示される。各入力ポートの列には、装置名、スロット名、及び入力ポート名(その入力ポートに接続された供給元SSの名称)が表示されるとともに、各入力ポートが伝送チャンネルに割り当て済みかどうかを示す記号が表示される。そして、各グリッドには、出力ポートと入力ポートの接続状況を示す接続記号がそれぞれ表示される。
オペレータは、任意のグリットをクリックすることで、当該行に表示された出力ポート(信号供給先)に、当該列に表示された入力ポート(信号供給元)を割り当てる入力パッチの設定、及びその解除を行うことができる。なお、この入力パッチ設定は、当該I/O装置からみると、当該行に表示された出力ポートの信号供給元として、ネットワークから入力されたオーディオ信号(当該列に表示された入力ポートに接続された供給元SSの信号)を割り当てるネットワーク入力パッチ設定である。
〈ネットワーク出力パッチ設定画面〉
また、図9(b)は、各I/O装置3〜5におけるネットワーク出力パッチ設定画面である。図9(a)に示すネットワーク出力パッチ設定画面において、縦列の各行に、そのI/O装置が有するローカルの入力ポート(入力端子)群の入力ポート名(その入力ポートのポート番号、又は接続された供給元SSの名称)が表示される。また、各入力ポートの行には、各入力ポートが伝送チャンネルに割り当て済みかどうかを示す記号が表示される。
横列の各列には、そのI/O装置が有するローカルの出力ポート(出力端子)と、ネットワーク6に接続された他の全ての装置1〜5が有するリモートの出力ポートとが表示される。各出力ポートの列には、装置名、スロット名、及び出力ポート名(その出力ポートに接続された供給先SDの名称)が表示される。そして、各グリッドには、入力ポートと出力ポートの接続状況を示す接続記号がそれぞれ表示される。
オペレータは、任意のグリットをクリックすることで、当該行に表示された入力ポート(信号供給元)に、当該列に表示された出力ポート(信号供給先)を割り当てるパッチの設定、及びその解除を行うことができる。なお、この出力パッチ設定は、当該I/O装置からみれば、当該行に表示された入力ポートの信号供給先として、ネットワークへの出力を割り当てるネットワーク出力パッチ設定である。
〈グリッドのクリック(接続指示)に応じた処理〉
図10は、パッチ設定画面でグリッドがクリックされたときに、制御装置のCPUが実行する処理である。ここでは、ネットワーク入力パッチ設定画面又はネットワーク出力パッチ設定画面において、供給元SS(入力ポート)と供給先SD(出力ポート)との交点がクリックされた場合を例に説明する。なお、以下の説明において、「供給元SSを有する装置」及び「供給先SDを有する装置」とは、それぞれ、供給元SS又は供給先SDが接続された端子を有する装置である。
供給元SSと供給先SDの交点のグリッドがオペレータによってクリックされたとき、制御装置のCPUは、ステップS8において、自身のメモリに記憶された情報に基づき、該クリックされたグリッドに既に接続があるかどうか判断する。パッチ設定画面上において当該グリッドに接続記号無しの場合は、接続無し(ステップS8のNO)であり、記号「●」、記号「○」、又は記号「×」があれば、既に接続有り(ステップS8のYES)である。
当該クリックされたグリッドに既に接続が有る場合(ステップS8のYES)、制御装置のCPUは、ステップS9において、後述の図12に示す接続クリア処理を行い、当該供給元SSと供給先SDの接続を解除する。そして、ステップS10において、制御装置のCPUは、グリッドの接続記号「●」、記号「○」、又は記号「×」を消去する。これにより、当該グリッドの表示は接続記号無しの状態に更新される。
当該クリックされたグリッドに接続がない場合(ステップS8のNO)、ステップS11において、制御装置のCPUは、当該クリックされたグリッドの供給先SDについて、他のグリッドに接続があるか、つまり当該SDが他の供給元SSと接続されているかどうかを調べる。当該SDが他のSSと接続されている場合(ステップS11のYES)、ステップS12において、前記他のグリッドについて、後述の図12に示す接続クリア処理を行い、当該SSと前記他のSDの接続を解除する。ステップS13において、制御装置のCPUは、前記接続を解除した他のグリッドについて接続記号を消去する。これにより、該他のグリッドの表示は接続記号無しの状態に更新される。
ステップS14において、制御装置のCPUは、後述の図11に示す接続設定処理を行い、当該クリックされたグリッドに対応する供給元SSと供給先SDを接続する。そして、ステップS15において、制御装置のCPUは、前記接続設定処理により設定された接続状態に応じた接続記号「●」、記号「○」、又は記号「×」を、当該クリックされたグリッドに表示する。これにより、当該グリッドの表示は、前記接続状態に応じた接続記号に更新される。
また、当該クリックされたグリッドの供給先SDについて、他のグリッドに接続がない、つまり当該SDが他のSSと接続されていない場合(ステップS11のNO)には、制御装置のCPUは、ステップS14及びステップS15の処理を実行し、後述の図11に示す接続設定処理により当該グリッドに対応するSSとSDを接続するとともに、前記接続設定処理により設定された接続状態に応じた接続記号を、当該クリックされたグリッドに表示する。
〈制御装置が実行する接続設定処理〉
図11は、前記ステップS14で行われる接続設定処理を示すフローチャートである。ステップS16において、制御装置のCPUは、接続設定処理の対象となるグリッド(前記クリックされたグリッド)に対応するSSとSDがそれぞれ同一の装置が有するポートに接続されたものかどうかを調べる。すなわち、供給元SSと供給先SDの接続が、オーディオネットワーク6越しに行なわれるものか、又は、オーディオネットワーク6を経由せずに行なわれるものかを判断する。
同一装置内の場合(ステップS16のYES)、制御装置のCPUは、ステップS17において、供給元SSと供給先SDを有する装置に、供給元SSと供給先SDの接続を設定する。前記接続の設定があったとき、供給元SSと供給先SDを有する装置は、後述の図13に示すイベント処理を実行して、自機内の供給元SSと供給先SDのパッチ設定を行う。
SSとSDの接続がネットワーク越しの接続の場合(ステップS16のNO)、ステップS18において、制御装置のCPUは、当該供給元SSから供給されたオーディオ信号が載った伝送チャンネル(当該供給元SSに割り当てられた伝送チャンネル)をサーチして、該当する伝送チャンネルがあれば、その番号を「i」にセットする。
供給元SSのオーディオ信号が載った伝送チャンネルが有る場合(ステップS19のYES)、その供給元SSを有する装置には既に、当該供給元SSに関する「送信接続」が設定されており、該供給元SSに伝送チャンネルが割り当てられている(つまり、当該供給元SSの信号はネットワーク6に送信されている)ので、ステップS20は行わずに、ステップS21に処理を進める。
供給元SSのオーディオ信号が載った伝送チャンネルがない場合(ステップS19のNO)、その供給元SSを有する装置において、当該供給元SSに対して伝送チャンネルが未割り当てである(パッチ設定画面の当該入力ポートについて「記号無し」の表示)。この場合、制御装置のCPUは、ステップS20において、供給元SSを有する装置に「送信接続」を設定する。ここで設定される「送信接続」は、当該供給元SSから供給されたオーディオ信号をネットワークへ送信する設定(つまり、供給元SSをネットワーク6の伝送チャンネルに割り当てる設定)である。制御装置のCPUは、自身のカレントメモリに記憶された当該供給元SSが接続された入力ポートの情報を、「送信接続」の内容に基づき書き換える。そして、「送信接続」の内容を、当該供給元SSを有する装置に通知して、該供給元SSを有する装置のメモリに記憶された供給先情報を書き換えるリモート制御を行う。供給先情報は、その供給元SSを接続すべき供給先SD(他の装置が有する供給先のうちの1つ)を示す情報である。
ステップS21において、制御装置のCPUは、供給先SDを有する装置に「受信接続」を設定する。ここで設定される「受信接続」は、前記供給元SSの名称SSNに対応するオーディオ信号をネットワークから受信して、該受信した信号SSNを供給先SDから出力する設定(つまり、供給先SDの接続された出力ポートに、該SSNが載った伝送チャンネルを割り当てる設定)である。制御装置のCPUは、自身のメモリに記憶された当該供給先SDが接続された出力ポートの情報を当該「受信接続」の内容に応じて書き換える。そして、「受信接続」の内容を、当該供給先SDを有する装置に通知して、該供給先SDを有する装置のメモリに記憶された「供給元情報」を書き換えるリモート制御を行う。「供給元情報」は、その供給先SDを接続すべき供給元SS(他の装置が有する供給元のうちの1つ)を示す情報である。
上記前記ステップS20及びS21により制御装置及び関係する各装置が行う動作を、まとめる。制御装置のCPUは、ステップS20及びS21により、オペレータによる接続指示に応じて、所望の供給元SSに所望の供給先SDを接続する設定(供給元SSを有する装置の「送信接続」及び供給先SDを有する装置の「受信接続」の設定)を行うことで、該供給元SSを有する装置と供給先SDを有する装置のメモリに記憶された供給先情報及び供給元情報を変更する接続設定部の動作を行う。供給先情報及び供給元情報の変更は、制御装置による各装置のリモート制御である。
制御装置は、前記接続設定部の動作により設定された接続内容を示す接続情報(供給元SSの「送信接続」及び供給先SD「受信接続」の設定)をカレントメモリに記憶する。
各装置は、それぞれが有するメモリに、その装置が有する各供給元に関する供給先情報、及びその装置が有する各供給先に関する供給元情報を記憶している。そして、前記リモート制御により、各装置のメモリ内に記憶された供給先情報及び供給元情報が変更される。
〈制御装置が実行する接続クリア処理〉
図12は、前記図10のステップS9又はステップS12において行われる接続クリア処理を示すフローチャートである。ステップS22において、制御装置のCPUは、接続クリア処理対象のグリッド(前記クリックされたグリッド、又は、前記ステップS12の「他のグリッド」)に対応する供給元SSと供給先SDが、同一装置内にあるかどうかを調べる。
SSとSDが同一装置内の場合(ステップS22のYES)、制御装置のCPUは、ステップS23において、供給元SSと供給先SDを有する装置に、供給元SSと供給先SDの接続をクリアする。すなわち、制御装置は、カレントメモリに記憶された供給元SSと供給先SDの接続情報をクリアし、且つ、供給元SSと供給先SDを有する装置のメモリに記憶された供給先SDの供給元情報及び供給元SSの供給先情報をクリアするリモート制御を行う。
また、SSとSDの接続がネットワーク越しの接続の場合(ステップS22のNO)、ステップS24において、制御装置のCPUは、供給先SDを有する装置に設定された当該供給先SDの受信接続をクリアする。すなわち、制御装置のメモリに記憶された供給先SDの供給元情報をクリアし、且つ、供給先SDを有する装置のメモリの該当する供給元情報をクリアするリモート制御を行う。
ステップS25において、制御装置のCPUは、前記受信接続をクリアした装置の他に、名称SSNを含む受信接続が設定された装置があるかどうかをチェックする。当該受信接続が設定された他の装置が無い場合(ステップS26のNO)、ステップS27において、制御装置のCPUは、供給元SSを有する装置に設定された当該供給元SSの送信接続をクリアする。すなわち、制御装置のメモリに記憶された供給元SSの供給先情報をクリアし、且つ、供給元SSを有する装置のメモリに記憶された供給元SSの供給先情報をクリアするリモート制御を行う。
名称SSNを含む受信接続が設定された他の装置が有る場合(ステップS26のYES)、供給元SSから供給されたオーディオ信号は、前記処理により受信接続をクリアした装置とは別の装置で受信されているので、前記ステップS27の送信接続クリアを行わずに、処理を終了する。
〈各装置が実行する同一装置内の接続設定及び解除〉
図13は、前記ステップS17において同一装置内の供給元SSと供給先SDの接続が設定されたきに、その装置が実行するイベント処理を示すフローチャートである。制御装置において、同一装置内の供給元SSと供給先SDの接続の設定があったとき、その装置は、供給元SSの信号の出力先を供給先SDに割り当てるパッチ設定を行う(図13のステップS28)。これにより、供給元SSの出力が供給先SDに接続される。かかる同一装置内のパッチ設定は、従来から知られる技術により行うことができる。
また、図14は、前記ステップS23において同一装置内の供給元SSと供給先SDの接続がクリアされたきに、その装置が実行するイベント処理を示すフローチャートである。制御装置において、同一装置内の供給元SSと供給先SDの接続のクリアがあったとき、その装置は、供給元SSの信号の出力先を供給先SDに割り当てたパッチ設定を解除する(図14のステップS29)。これにより、供給元SSから供給先SDへの接続が切断される。かかる同一装置内のパッチ設定の解除は、従来から知られる技術により行うことができる。
〈各装置における送信接続の実現〉
図15は、ネットワーク6に接続された各装置が定期的に実行する接続更新処理である。前記ステップS20により送信接続が設定された装置はメモリに、該送信接続の内容を示す供給先情報を、また、前記ステップS21により受信接続が設定された装置はメモリに該受信接続の内容を示す供給元情報をそれぞれ記憶する。そして、各装置が定期的に実行する接続更新処理により、前記記憶された供給先情報に基づき、ネットワーク入力パッチ設定(送信接続の実現)が行われ、また、前記記憶された供給元情報に基づいて、ネットワーク出力パッチ設定(受信接続の実現)が行われる。
ステップS30において、当該装置のCPUは、制御装置により設定された送信接続のうちで、信号出力がオンであり、且つ、伝送チャンネルが未割り当ての送信接続を検出するとともに、検出された送信接続を信号供給元SSの優先度に従いソートする。
本実施例では、信号供給元SS毎に、ネットワーク6に対するオーディオ信号の出力をオン・オフ設定できるよう構成されている。オペレータは、制御装置、又は、その供給元SSが接続された装置(I/O装置)から、各供給元SS毎の信号出力オン・オフを任意に設定できる。信号出力のオフの供給元SSは、以下に述べる送信接続の実現対象から除外される。なお、信号出力オフの供給元SS(入力ポート)については、パッチ設定画面の伝送チャンネル割り当て状態表示欄74に記号「×」が表示される(図4(c)等参照)。
また、本実施例では、オペレータは、制御装置から、信号供給元SS毎に「優先度」を設定することができる。優先度の詳細は後述する。当該ステップS30により優先度の高いものから順に送信接続をソートすることで、優先度の高い送信接続の実現を優先するよう制御できる。なお、ステップS30は当該装置のバックグラウンド処理で実行される。
ステップS31において、当該装置のCPUは、前記ステップS30で検出され、ソートされた送信接続の1つ目を用意する。そして、以下の処理により、当該装置のCPUは、供給元SSをネットワークの伝送チャンネルに接続する送信接続を実現する。ステップS32は、後述のループ処理のための確認である。ステップS33において、当該装置のCPUは、当該装置によって確保された伝送チャンネルのなかに、オーディオ信号の伝送に使用されていない伝送チャンネルがあるか(供給元SS(入力ポート)未割り当ての伝送チャンネルがあるか)をチェックする。当該装置が確保した伝送チャンネルに空きがなければ(ステップS32のNO)、当該装置のCPUは、今回の接続更新処理では、新たな送信接続の実現を行わずに、ステップS37に処理を進める。
当該装置が確保した伝送チャンネルのなかに、オーディオ信号の伝送に使用されていない伝送チャンネルがある場合(ステップS33のYES)、当該装置のCPUは、ステップS34において、送信接続を実現すべき供給元SSの実ハードウェアが入力端子に接続されているかどうかをチェックする。供給元SSの実ハードウェアが存在しない場合(ステップS34のNO)、次のステップS35による送信接続の実現を行わずに、ステップS36へ処理を進める。このように、各装置は、送信接続が設定されていたとしても、入力端子に供給元SSが接続されていない(当該装置内に供給元SSが存在しない)場合には、該供給元SSに対する伝送チャンネルの割り当てを行わずに、送信接続を未実現とすることで、伝送チャンネルの無駄遣いを防止できる。なお、供給元SSの実ハードウェアが存在しない場合には、パッチ設定画面の当該供給元SSに関するグリッドには、接続記号「×」が表示されることになる(図4(c)参照)。
ステップS35において、当該装置のCPUは、前記伝送チャンネル確保処理により自身が確保した伝送チャンネルのうちの使用されていない1つの伝送チャンネル(i)を、当該供給元SSのオーディオ信号の送信に使用する伝送チャンネルに割り当てる。すなわち、該伝送チャンネルのチャンネル番号を「i」にセットして、その伝送チャンネル(i)を当該送信接続に使用する伝送チャンネルに設定するとともに、送信接続を実現すべき供給元SSの名称SSNと、前記チャンネル番号(i)のセットを、SSN(i)にセットする。これにより、パッチ設定画面で行われたクリックにより指定された供給元SSに対して、当該装置が確保した伝送チャンネルのうちの1つが割り当てられる。
そして、当該装置のCPUは、前記伝送チャンネル(i)の送信ポートを生成し、パッチ部(図4の50、51又は52)により、供給元SS(当該SSが接続された入力端子)を前記伝送チャンネル(i)の送信ポートに接続するパッチ設定を行う。「送信ポート」は、当該装置がオーディオネットワーク6の伝送チャンネルにオーディオ信号を送信するために、ネットワークI/O(図3(a),(b)の符号13,23)に設定されるポートである。これにより、供給元SSを有する装置のCPUは、該供給元SSから供給されたオーディオ信号を当該割り当てた伝送チャンネル(i)に載せてネットワーク6に出力するよう設定する。すなわち、各装置のCPUは、ステップS35により、設定された送信接続(供給先情報)に基づいて、供給元SSに対して1つの伝送チャンネルを当てて、該割り当てた伝送チャンネルに載せてオーディオ信号を出力するよう設定する送信設定部の動作を行い、オペレータによってクリックされたグリッドのパッチ設定に関する送信接続を実現する。また、当該装置のCPUは、実現した送信接続に関する接続状況の情報(供給元SSの名称SSN、供給元SSが接続された入力端子、及び伝送チャンネル(i)の情報等)を、メモリに記憶する。
上記の送信接続の実現の過程によれば、供給元SSを有する装置は、当該装置のメモリに記憶された1つの供給先情報に基づいて、該供給元SSから供給されたオーディオ信号を、どの伝送チャンネル(i)から送信するかを設定するだけでよい。このため、供給元SSを有する装置は、供給先SDを有する装置の存否のチェック、さらには、該供給先SDを有するべき装置における供給先SDの実ハードウェアの存否のチェックを行わず、送信接続の実現の動作を行うことができる。
このため、供給元SSを有する装置は、供給先SDを有する装置等の存否状況に関わらず、同じ送信動作を行うことができるので、システムの一部の装置が不在になったとしても、各装置のオーディオ信号の送信動作は継続することができる。例えば、仮にミキシングシステムの中心となるエンジン2が、電源オフやネットワークの切断等により、ネットワーク6から存在しなくなったとしても、各装置のオーディオ信号の送信動作は継続することができる。つまり、本ミキシングシステムは、システムを構成する装置の一部が不在になった場合でも、ミキシングシステム全体でのオーディオ信号の送信は継続できる。
また、供給元SSを有する装置と供給先SDを有する装置との間でネットワーク6越しにネゴシエーションを行う必要が無く、また、それら供給先SDを有する装置等の存否状況に関わらず、同じ動作を行うことができるので、各装置が実行する送信接続の実現のための制御が極めて単純となる。よって、比較的簡素な制御手段のみを有する装置であっても、過度の負担なく、その動作を行うことができる。
更に、該ステップS35において、当該装置のCPUは、前記セットしたSSN(i)をネットワーク6上の他の全ての装置に通知するとともに、自身のT信号リストにSSN(i)を登録する。また、他の装置からSSN(i)の通知を受けた他の装置は、後述する処理により、各自のR信号リストに該通知されたSSN(i)を登録する。他の全ての装置に対してSSN(i)の通知が行われるので、伝送チャンネル(i)に書き込まれたオーディオ信号の供給元SSの名称SSNを、全ての装置が知ることになる。すなわち、各装置のCPUは、ステップS35により、伝送チャンネル(i)に出力している信号の供給元SSNを示す信号出力情報SSN(i)を、ネットワーク6に接続された他の全ての装置に通知する出力通知部の動作を行う。
上記処理により前記ステップS31で用意した1つ目の送信接続を実現した後、当該装置のCPUは、ステップS32〜S36のループ処理を行い、前記ステップS30で検出された全ての送信接続について、1つずつ順番に、上述した送信接続を実現する処理を行う。前述の通り、前記ステップS30では検出した送信接続を優先度に従ってソートしているので、その装置が確保した伝送チャンネルの数が検出された送信接続よりも少ない場合等であっても、優先度の高い送信接続については、比較的確実にその供給元SSに伝送チャンネルが割り当てられ、その送信接続を実現することができる。そして、実現すべき送信接続がなくなった場合(ステップS32のNO)、又は、当該装置が確保した伝送チャンネルに空きがなくなった場合(ステップS33のNO)、当該装置のCPUは、ステップS37に処理を進める。
また、前記ステップS32〜S36の送信接続の実現における優先制御は、送信接続を優先度に従ってソートするだけの装置中で閉じた制御である。優先制御は、該送信接続の供給先を有する他の装置との関係を考慮しない動作であり、送信接続の供給先を有する他の装置がいずれの装置であっても同じ動作であるため、極めて簡単な処理により実現される。通常のイーサネット(登録商標)規格等のネットワークにおける伝送チャンネルの割り当て処理は、ノード間の接続設定(供給元と供給先)に対して伝送チャンネルを割り当てる構成であり、本実施例のように接続設定の送信側(供給元)に対して伝送チャンネルを割り当てる構成(送信側ノードでの閉じた制御)ではない。このため、一般的なネットワークにおいてノード間の接続設定の優先制御を行う場合には、当該接続設定の供給先がどのノードであるかが、その優先制御に影響を与え、その結果、優先制御を行うための処理が複雑になる。これに対して、本実施例によれば、上述の通り、極めて簡単な処理による優先制御が可能である。
〈各装置における受信接続の実現〉
図15のステップS37において、当該装置のCPUは、制御装置により設定された受信接続のうちで、受信ポートが未接続の受信接続を検出する。受信ポートは、当該装置がオーディオネットワーク6の伝送チャンネルからオーディオ信号を受信するために、ネットワークI/O(図3(a),(b)の符号13,23)に設定されるポートである。「受信ポートが未接続の受信接続」とは、供給先SDに対して伝送チャンネルが割り当てられていない受信接続、つまり実現されていない受信接続である。なお、ステップS37は当該装置のバックグラウンド処理で実行される。
ステップS38において、当該装置のCPUは、前記ステップS37で検出した受信接続の1つ目を用意して、以下の処理により、供給元SSNを供給先SDに接続する受信接続を実現する。ステップS39は、後述のループ処理のための確認である。ステップS40において、当該装置のCPUは、受信接続を実現すべき供給先SDの実ハードウェアが出力端子に接続されているかどうかをチェックする。供給先SDの実ハードウェアが存在しない場合、当該装置のCPUは、今回の接続更新処理では、当該受信接続の実現を行わずに、ステップS47に処理を進める。なお、装置内に当該供給先SDの実ハードウェアが存在しない場合には、パッチ設定画面の当該供給先SDに対応するグリッドには、接続記号「×」が表示されることになる(図4(c)参照)。
ステップS41において、当該装置のCPUは、受信接続に示された名称SSNの供給元SSから送信されたオーディオ信号を受信中の受信ポートがあるかをサーチする。装置内のメモリには、その装置が有する各受信ポートに対応して、その受信ポートで受信しているオーディオ信号の供給元SSの名称SSNが記憶されている。当該装置のCPUはメモリを参照して、当該SSNの信号を受信中の他の受信ポートがあるかどうかを判断できる。SSNの信号を受信中の受信ポートがあれば(ステップS42のYES)、今回実現する受信接続にその受信ポートを使用すればよいので、処理をステップS46に進める。
SSNを受信中の受信ポートがない場合(ステップS42のNO)、ステップS43において、当該装置のCPUは、自身が持つR信号リストを参照して、該SSNに対応するSSN(i)をサーチする。これにより、信号SSNが載っている伝送チャンネルの番号(i)を特定する。R信号リストの中に、受信接続が示す供給元SSの名称SSNに対応するSSN(i)が登録されていない場合(ステップS44のNO)は、名称SSNの供給元SSのオーディオ信号がネットワーク6に送信されていない(その送信接続が実現されていない)ものと判断し、ステップS45,S46の処理による当該受信接続の実現を行わずに、ステップS47へ処理を進める。
R信号リストの中に、受信接続が示す供給元SSの名称SSNに対応するSSN(i)が登録されており、該SSNを載せた伝送チャンネルの番号(i)が特定されたら(ステップS44のYES)、当該装置のCPUは、前記特定した伝送チャンネル(i)のオーディオ信号を受信する受信ポートを生成して、該伝送チャンネル(i)からオーディオ信号を受信する設定を行う(ステップS45)。
ステップS46において、当該装置のCPUは、パッチ部(図4の55、56又は57)により、前記生成した受信ポートを供給先SD(当該SDが接続された出力端子)に接続する。これにより、供給先SDを有する装置は、伝送チャンネル(i)に載った名称SSNに対応するオーディオ信号を受信ポートから受信して、該受信した当該信号SSNを供給先SDへ供給できる。すなわち、各装置のCPUは、ステップS45,S46により、その装置が有する供給先SD毎に、設定された受信接続(供給元情報)と他の装置から通知された信号出力情報SSN(i)に基づいて、オーディオ信号を入力すべき伝送チャンネル(i)を決定し、該伝送チャンネル(i)からオーディオ信号を入力する受信設定部の動作を行い、オペレータによってクリック(接続指示)されたグリッドのパッチ設定に関する受信接続を実現する。また、装置のCPUは、実現した受信接続に関する接続状況の情報(供給先SD、供給先SDが接続された出力端子、受信ポートで受信しているオーディオ信号の供給元SSの名称SSN、及び伝送チャンネル(i)の情報等)を、メモリに記憶する。
上記処理により前記ステップS38で用意した1つ目の受信接続を実現した後、当該装置のCPUは、ステップS39〜S47のループ処理を行い、前記ステップS37で検出した全ての受信接続について、1つずつ順番に上述した受信接続を実現する処理を行う。
上記受信接続を実現する過程によれば、当該装置は、その装置のメモリに記憶された供給元情報に基づいて、その装置が有する供給先SD毎に、その供給先SDに対して信号を受信すべき伝送チャンネル(i)を決定し、該決定した伝送チャンネルからオーディオ信号を受信することができる。したがって、受信接続の実現においても、上述した送信接続の実現の場合と同様に、信号の供給先SDを有する装置は、信号の供給元SSを有する装置とのネゴシエーションを行うことなく、受信接続を実現して、オーディオ信号を受信する動作を開始することができる。
供給先SDを有する装置は、供給元SSの信号を載せた伝送チャンネルに供給先SDを接続することで、受信接続を実現するのであるから、ミキシングシステムの他の装置が電源オフやネットワークから切断されて、存在しなくなったとしても、受信の動作は継続できる。つまり、本ミキシングシステムは、システム中の一部の装置がオフされたときや、ネットワーク接続から切断されたときでも、ミキシングシステムに残っている各装置の間のオーディオ信号の送受信の動作は継続することができる。
制御装置においてオペレータが指示した1つのパッチ設定に対して、前記図15の接続更新処理により各装置で行われる動作をまとめる。
制御装置においてオペレータから1つのパッチ設定(供給元SSと供給先SDの接続)が指示されたとき、該指示されたパッチ設定により送信接続が設定された装置は、図15に示す接続更新処理を実行することで、その装置が確保した伝送チャンネルの中から、使用されていない1つの伝送チャンネルを、前記パッチ設定により指定された供給元SSに割り当てる処理(ステップS35)を行う供給元設定部として機能する。
また、該指示されたパッチ設定により受信接続が設定された装置は、図15に示す接続更新処理を実行することで、前記供給元設定部により供給元SSに割り当てられた伝送チャンネルのオーディオ信号を受信し(ステップS45)、受信したオーディオ信号を供給先SDへ供給させる供給先設定部として機能する。
従って、ネットワーク6越しに供給元SSと供給先SDを接続するパッチ設定であっても、オペレータが制御装置に表示されたパッチ設定画面から所望の供給元SSと供給先SDの接続をクリックするだけで、該オペレータによる接続指示(クリック)に応じて、供給元SSを有する装置が確保した伝送チャンネルの中から1つの伝送チャンネルが選択され、その選択された伝送チャンネルを用いて、供給元SSと供給先SDの接続が行われる。
また、オペレータによるパッチ設定の指示に応じて送信接続が設定された場合であっても、当該送信接続が設定された装置が確保した伝送チャンネルの中に、オーディオ信号の伝送に使用していない伝送チャンネルがなければ(伝送チャンネルに空きがなければ)、前記ステップS33をNOに分岐して、供給元SSに対する伝送チャンネルの割り当ては行われず、送信接続が実現されない。つまり、予め各装置が確保した伝送チャンネルの範囲内で送信接続の実現を行うことで、その装置の出力帯域(その装置がオーディオ信号の送信に用いる伝送帯域(伝送チャンネル))を制限することができる。このように、送信接続が設定された装置において未使用の伝送チャンネルが不足していたため(ステップS33のNO)、該送信接続が実現されなかった場合には、制御装置のCPU0は、図10のステップS15により当該グリッドに接続記号「○」を表示して、未使用伝送チャンネルが不足している旨をオペレータに警告する。
当該送信接続が実現されなければ、該送信接続に対応する受信接続が設定された装置が接続更新処理を行ったときに、その装置のR信号リスト中に供給元SSに対応するSSN(i)が登録されていないので、ステップS44をNOに分岐し、該送信接続に対応する受信接続も実現されない。したがって、前記パッチ設定の指示に基づく供給元SSと供給先SDの接続が実現されないことになる。この場合、当該供給元SSを接続すべき供給先SDを有する装置(供給元SSの供給先情報が示す装置)において、該供給先SDに対して、当該装置内の無音信号の供給元(図4を参照して説明した図示外のゼロレベル信号の供給元)をローカル接続して、該供給先から無音信号が出力されるよう構成するとよい。
送信接続が設定された装置及び受信接続が設定された装置が、それぞれ前記図15の接続更新処理を行った結果、オペレータによって指示したパッチ設定が実現された場合、制御装置の表示部に表示されたパッチ設定画面の当該パッチ設定に対応するグリッドには、前記図10のステップS15により、接続記号「●」が表示される。また、未使用の伝送チャンネルが不足していたため(ステップS33のNO)、送信接続が実現されなかった場合には、同じくステップS15により、接続記号「○」が該グリッドに表示される。送信接続が設定された装置又は受信接続が設定された装置が存在しない場合、供給元SS又は供給先SDの実ハードウェアが存在しない場合(ステップS34又はS40のNO)、同じくステップS15により、接続記号「×」が該グリッドに表示される。つまり、制御装置のCPUは、指示されたパッチ設定が実現された場合と実現されなかった場合とで、異なる表示態様の接続記号を表示する制御を行う。これにより、オペレータは、当該パッチ設定の結果を知ることができる。
また、オペレータによって指示されたものの、未使用の伝送チャンネルが不足していたため(ステップS33のNO)、送信接続が実現されず、未実現の状態であったパッチ設定(グリッドに接続記号「○」が表示されていたパッチ設定)がある装置において、その装置に確保された伝送チャンネル数KNが増加した場合(前記図7の処理や、後述する図27の処理によりにより新たに伝送チャンネルを確保した場合)には、当該パッチ設定は自動的に実現される。すなわち、前記未実現の送信接続が設定された装置は、接続更新処理が行われたときに、前記伝送チャンネル数KNの増加により生じた空き伝送チャンネルを、前記送信接続に対応する供給元SSに割り当てて、該送信接続を実現する。これに伴い、該供給元SSに接続すべき供給先SDを有する装置は、接続更新処理を実行したときに、前記未実現だった送信接続に対応する受信接続を実現する。ここで、接続更新処理は各装置で定期的に実行される処理のため、該送信接続が設定された装置に確保された伝送チャンネル数KNが増加すれば、自動的に未実現の状態であったパッチ設定が実現されるのである。
〈各装置における受信接続の解除〉
図16は、前記図12のステップS24において受信接続がクリアされたときに、該受信接続がクリアされた装置(供給先SDを有する装置)が実行するイベント処理を示すフローチャートである。ステップS48において、当該装置のCPUは、当該クリアされた受信接続に対応する供給先SDの供給元情報に基づき、当該供給先SDが接続された供給元SS(接続先)を確認し、該供給先SDが接続された受信ポートと、該受信ポートの伝送チャンネルiを特定する。受信ポートから供給先SDへの接続が無ければ(ステップS49のNO)、当該装置において受信接続がなされていないことになるので、当該装置のCPUは本処理を終了する。
受信ポートから供給先SDへの接続が有れば(ステップS49のYES)、ステップS50において、当該装置のCPUは、供給先SDと前記受信ポートの接続を切断する。そして、ステップS51において、当該装置のCPUは、前記切断した供給先SDの他に当該受信ポートに接続された供給先がなければ、当該装置における伝送チャンネルiの受信を解除して、該受信ポートを消滅させる。また、当該受信ポートに接続された他の供給先がある場合(ステップS49のNO)には、前記ステップS51において、当該装置のCPUは、伝送チャンネルiの受信を解除せずに、当該受信ポートを保持する。
本実施例では、各装置毎に生成する受信ポートの数に上限がある(各装置において供給先SDに接続可能な伝送チャンネル数に上限がある)ため、上述した各処理により、伝送チャンネルの受信の設定及び解除(受信ポートの生成及び消滅)を動的に制御している。すなわち、ある伝送チャンネルの受信の必要が生じたとき、前記図15のステップS45、S46によりその伝送チャンネルの受信を設定して受信ポートを生成し、また、ある伝送チャンネルの受信の必要が無くなったとき、前記図16のステップS51により伝送チャンネルの受信を解除して、受信ポートを消滅させている。
仮に、各装置がネットワーク6でオーディオ信号を受信するために用いる伝送帯域に制限がなく、受信ポートを無制限に生成できるなら、ネットワーク6が有する全伝送チャンネルのうち、その装置が確保していない伝送チャンネル、又は、R信号リストに記載の全伝送チャンネル(他の全ての装置が確保した伝送チャンネル)を常時受信するよう構成して、それら伝送チャンネルの受信を行うための受信ポートを全て生成してもよい。その場合、伝送チャンネルの受信の設定や解除を動的に行う必要が無くなり、図15に示す接続更新に含まれる受信接続の設定処理及び図16に示す受信接続のクリア処理をより単純にすることができる。
〈各装置における送信接続クリア〉
図17は、前記図12のステップS27において送信接続がクリアされたときに、該送信接続がクリアされた装置(供給元SSを有する装置)が実行するイベント処理を示すフローチャートである。ステップS52において、当該装置のCPUは、自身が持つT信号リストを参照して、クリアすべき送信接続の供給元SS(該SSの名称SSN)に対応するSSN(i)をサーチして、その信号SSNの送信に使用している伝送チャンネルのチャンネル番号(i)を特定する。
T信号リスト中に名称SSNに対応するSSN(i)があれば(ステップS53のYES)、ステップS54において、当該装置のCPUは、前記特定した伝送チャンネル(i)の送信ポートと該名称SSNの供給元SSの接続を切断するとともに、SSN(i)にnullを設定する。そして、自身のT信号リストから前記SSN(i)の記録を削除するとともに、前記nullをセットしたSSN(i)を、ネットワーク上の他の装置に通知する。これにより、送信接続が解除される。
〈R信号リストの更新処理〉
他の装置から通知されたSSN(i)を受信したときに、各装置が実行する処理を、図18のフローチャートを参照して説明する。ステップS55において、各装置のCPUは、通知されたSSN(i)の値がnullかどうかを判断する。通知されたSSN(i)に供給元SSの名称SSNがセットされている場合(ステップS55のNo)、各装置のCPUは、該通知されたSSN(i)を、自機が有するR信号リストに追加する(ステップS56)。これにより、各装置は、他の装置が送信しているオーディオ信号の供給元SSの名称SSnと、その送信に使用している伝送チャンネル(i)を対応付けて記憶する。
一方、SSN(i)がnullの場合(ステップS55のYes)、その装置が有するR信号リストに番号(i)のSSN(i)が既に登録されていた場合には、そのSSN(i)をリストから削除する(ステップS57)。例えば、他の装置で伝送チャンネル(i)の送信ポートと供給元SSの接続が切断された場合に、nullをセットしたSSN(i)が通知された場合(前記ステップS54等を参照)、各装置のR信号リストには当該SSN(i)が登録されているため、nullをセットしたSSN(i)の通知を受けた各装置は、R信号リスト中の当該SSN(i)を削除する。
なお、装置のネットワーク参加時に伝送チャンネル(i)を確保したときも、該確保した各伝送チャンネル(i)についてSSN(i)にnullをセットして、該nullをセットしたSSN(i)を通知しているが(前記図6のステップS7を参照)、この段階では、他の装置のR信号リストに当該SSN(i)が登録されていないので、該通知を受けた他の装置は何ら処理を行う必要はない。
なお、本実施例では、各装置のR信号リストにnullでないSSN(i)を記録するリスト構成としたが、nullのSSN(i)を含めて、他の装置で確保された全ての伝送チャンネルのSSN(i)を各装置のR信号リストに記録するように構成してもよい。また、T信号リストも同様であり、本実施例では、各装置のT信号リストに、nullでないSSN(i)を記録するようにしたが、nullのSSN(i)を含めて、その装置で確保された全ての伝送チャンネルのSSN(i)を記録するようにしてもよい。更に、本実施例では、各装置が持つR信号リストとT信号リストをそれぞれ別のリストとして構成する例を説明しているが、R信号リストとT信号リストを合体させて、ミキシングシステムの全伝送チャンネルのSSN(i)を記録した1つの信号リストを各装置が持つ構成とし、該信号リストの内で、その装置が確保した伝送チャンネルの部分をT信号リストとして使用し、それ以外の部分をR信号リストとして使用するようにしても良い。
〈エンジンの入力パッチ、出力パッチ〉
上記図10〜図17のフローチャートを参照したパッチ設定の説明では、供給元SS(入力ポート)と供給先SD(出力ポート)の接続について説明した。供給元SS(入力ポート)とミキシングエンジン2の入力チャンネルの接続を行う場合も概ね同様に動作するが、この場合は、上記供給元SSと供給先SDの接続の説明における「供給先SD(出力ポート)」を「入力チャンネル」に読み替える。
すなわち、供給元SS(入力ポート)と入力チャンネルの接続設定が行われるときには、制御装置のCPUは、供給元SSを有する装置の送信接続を設定する(図11のステップS20)とともに、入力チャンネルを有するエンジン2の受信接続を設定する(図11のステップS21)。そして、エンジン2のCPUは、供給元SSの信号が載った伝送チャンネルiの受信を設定し、その伝送チャンネルiの受信ポートを入力チャンネルに接続する(図15のステップS45,S46)。当該接続設定がクリアされた場合には、制御装置のCPUは、その入力チャンネルを有するエンジン2の受信接続をクリアする(図12のステップS24)とともに、必要に応じて供給元SSを有する装置の送信接続をクリアする(図12のステップ27)。そして、エンジン2のCPUは、伝送チャンネルiの受信ポートから入力チャンネルへの接続を切断して、当該受信ポートに接続された他の入力チャンネルがなければ、該伝送チャンネルiの受信を解除して、当該受信ポートを消滅させる(図16のステップS50,S51)。
また、ミキシングエンジン2の出力チャンネルと供給先SD(出力ポート)の接続を行う場合には、上記供給元SSと供給先SDの接続の説明における「供給元SS」を「出力チャンネル」と読み替える。すなわち、出力チャンネルと供給先SD(出力ポート)の接続設定が行われるときには、制御装置は、出力チャンネルを有するエンジン2の送信接続を設定する(図11のステップS20)とともに、供給先SDを有する装置の受信接続を設定する(図11のステップS21)。エンジン2は、自身で確保した伝送チャンネルの1つを「i」にセットして、伝送チャンネル(i)の送信ポートを生成し、伝送チャンネル(i)の送信ポートに当該出力チャンネルを接続する(図15のステップS35)。このとき、出力チャンネルの出力信号の名称SSN(この信号の供給元SSの名称SSN)と当該伝送チャンネル(i)を、SSN(i)にセットして、該SSN(i)をネットワーク上の他の装置に通知し、且つ、自身のT信号リストに登録する。
当該接続設定がクリアされる場合には、制御装置のCPUは、供給先SDを有する装置の受信接続をクリア(図12のステップS24)するとともに、その出力チャンネルを有するエンジンの送信接続をクリアする(図12のステップS27)。そして、エンジン2のCPUは、出力チャンネルから伝送チャンネルiの送信ポートへの接続を切断して、SSN(i)にnullをセットして、これをネットワーク上の他の装置に通知するとともに、T信号リストからSSN(i)を削除する(図17のステップS54)。
〈簡易UIの説明〉
上記の説明では、制御装置の表示部に表示されたパッチ設定画面からパッチ設定を行うことについて説明した。本ミキシングシステムにおいて、各I/O装置3〜5は、表示部と操作子を含む簡易オペレータインターフェース(簡易UI25)を具備しており、各I/O装置3〜5の簡易UI25を用いて、そのI/O装置のローカルのパッチ設定を行うことができるように構成されている。図19は、各I/O装置3〜5が有する簡易UI25の構成例を示す図である。
図19に示す通り、簡易UI25は、表示器75、及び操作子群からなる。表示器75は、例えばLED表示器などにより構成され、CPU20の制御に基づき、後述するパッチ設定画面を表示することができる。操作子群には、カーソルキー76、インクリメントスイッチ77、デクリメントスイッチ78、エンターキー79、及びキャンセルキー80が含まれる。図に示す通り、簡易UI25は非常にシンプルな構成である。
オペレータは、I/O装置の表示器75に供給先SDのパッチ設定画面又は供給元SSのパッチ設定画面を呼び出し、操作子76〜80を用いて、表示器75に表示されたパッチ設定画面から、供給先SDのパッチ設定、又は、供給元SSのパッチ設定を行うことができる。供給先SDのパッチ設定は、その装置が有する1つの供給先SD(出力ポート)に対して、その装置が有する供給元SS(入力ポート)の1つ又はネットワークの入力を接続するパッチ設定である。また、供給元SSのパッチ設定は、その装置が有する1つの供給元SS(入力ポート)に対して、その装置が有する供給先SD(出力ポート)の1つ又はネットワークの出力を接続するパッチ設定である。
〈供給先SDのパッチ設定画面〉
図20(a),(b)は、供給先SDのパッチ設定画面の構成例を示す。図20(a),(b)において、画面の最上段に表示された文字列「♯1I/O Device」「Out Port Patch」により、当該画面が第1I/O装置の出力ポート(当該出力ポートに接続された供給先SD)に対するパッチを設定する画面であることが示されている。
図20(a),(b)において、To欄81において、オペレータは、当該I/O装置が有する全出力ポートのリストから1つを選択することができる。To欄81には、選択された出力ポートのポート名が表示される。ポート名は、その出力ポート(出力端子)が装着されたスロット番号(図では「Slot2」)と、当該端子の端子番号(図では「Port3」)からなる。To欄81の右隣に配置されたFrom欄82において、オペレータは、To欄81で選択された出力ポート毎に、その接続先(オーディオ信号の供給元)として、当該I/O装置が有する全入力ポート(ローカルの入力ポート)のうちの1つ、又はネットワークからの入力を選択することができる。
図20(a)は、From欄82にローカルの入力ポートを選択した場合を示しており、From欄82には、選択された入力ポート(入力端子)の名称が表示される。この場合、オペレータは、パッチ設定画面から、To欄81で選択された出力ポート(供給先SD)に、From欄82で選択された入力ポート(供給元SS)を割り当てるローカルのパッチ設定(ローカル接続)を指示することができる。なお、From欄82に表示される入力ポートの名称も、スロット番号(図では「Slot1」)とポート番号(図では「Port3」)からなる。また、NAME欄83には、From欄82で選択された入力ポート(入力端子)に接続された供給元SSに与えられた名称SSNが表示される。なお、図20(a)のNAME欄83においては、From欄82で選択された入力ポートに対して1つの名称が決まるので、他の表示欄と違い、四角囲みが描かれていない。つまり、NAME欄83から名称を選択する構成になっていない。
図20(b)は、From欄82にネットワークの入力を選択した場合を示しており、From欄82には「ネットワーク(Network)」と表示される。この場合、更に、オペレータは、NAME欄83において、操作子群76〜80を用いて、当該I/O装置が持つR信号リストに登録された複数のSSN(i)の中から1つのSSNを選択する。SSNを選択することで、オペレータは、ネットワークから受信するオーディオ信号を指定することができる。すなわち、オペレータは、パッチ設定画面から、To欄81で選択された出力ポート(供給先SD)に、NAME欄83で選択されたオーディオ信号が載っている伝送チャンネルの受信ポートを割り当てる受信接続を指示することができる。
〈供給元SSのパッチ設定画面〉
また、図21(a),(b)は、供給元SSのパッチ設定画面の構成例を示す。図21(a),(b)おいて、画面の最上段に表示された文字列「♯1I/O Device」「Input Port Patch」により、当該画面が第1I/O装置の入力ポート(入力ポートに接続された供給元SS)のパッチを設定する画面であることが示されている。
SSのパッチ設定画面は、From欄82が画面左側に配置され、その右隣にTo欄81が配置される。From欄82において、オペレータは、当該I/O装置が有する全入力ポートの1つを選択することができる。From欄82には、選択された入力ポートのポート名が表示される。To欄81において、オペレータは、From欄82で選択された入力ポートの接続先(オーディオ信号の供給先)として、当該I/O装置が有する全出力ポート(ローカルの出力ポート)のうちの1つ、又はネットワークからの出力を選択することができる。
SSのパッチ設定画面では、オペレータは、NAME欄83において、From欄82で選択された入力ポート(供給元SS)に対して、名称SSNを設定する。名称SSNの設定は、各装置が有する名称リストに登録された複数の名称ssnの中から、1つの名称ssnを選択することにより行うことができる。各装置のCPUは、後述する処理により、選択されたssnに装置IDを付与して、ミキシングシステムでユニークな名称SSNを作成する。リストに登録される名称ssnは、前述のとおり、そのオーディオ信号の種類を識別する普通名称的な名前(例えば、「BGM」や「Mic」など)、又は供給元SSが接続されたポート名などである。
この名称設定を各I/O装置3〜5で行うために、制御装置は、予め、各I/O装置毎に、複数のssnを登録した名称リストを作成して、該作成した名称リストをI/O装置に転送して、そのI/O装置のメモリに保存させる。或る供給元SSから供給されたオーディオ信号を他の装置が受信するときには、該他の装置は、供給元SSの名称SSNに基づいて、当該オーディオ信号を受信する伝送チャンネル(i)を決定する。このため、名称SSNは、ミキシングシステムでユニークでなければならない。よって、何れかの供給元SSに対して設定されたSSNは、名称リスト中で無効となり、他の供給元SSに対しては設定できないようにする。
図21(a)は、To欄81にローカルの出力ポートを選択した場合を示しており、To欄81には選択された出力ポートの名称が表示される。この場合、From欄82で選択された入力ポート(供給元SS)を、To欄81で選択されたローカルの出力ポート(供給先SD)に割り当てるローカルのパッチ設定(ローカル接続)が行われる。なお、パッチ部の構造上は、1つの入力ポート(供給元SS)は、複数の接続先(複数の出力ポート又はネットワーク)に接続可能だが、I/O装置における供給元SSのパッチ設定画面は、1つの入力ポート(供給元SS)に対して1つの出力ポート(供給先SD)のみ接続可能に設計されている。
図21(b)は、To欄81にネットワークへの出力を選択した場合を示しており、To欄81には「ネットワーク(Network)」と表示される。この場合、From欄82で選択された入力ポート(供給元SS)を、伝送チャンネルの送信ポートに割り当てる送信接続が行われる。当該送信接続によりネットワーク6に送信されたオーディオ信号を受信する他の装置では、NAME欄83で選択された名称SSNに基づいて、その装置で受信する伝送チャンネルを決定する。この決定のために各装置のメモリに、その装置が有する各受信ポートに対応して、その受信ポートで受信するオーディオ信号の供給元SSの名称SSNが記憶されることは、前述の通りである。
To欄81にネットワークへの出力が選択された場合には、更に、信号出力オン/オフ設定部84が表示される。信号出力オン/オフ設定部84は、入力ポートから入力されたオーディオ信号SSN(図の例では信号名「BCast_#1@local」)を、ネットワークに出力するか(オン)、又は出力しないか(オフ)を、オペレータの操作により設定するGUIであって、例えばオン・オフを切り替えるボタン画像により構成される。信号出力オン/オフ設定部84がオンに設定されている場合、更に、信号出力オン/オフ設定部84の右隣に、伝送チャンネル割り当て状態がインジケータ85により表示される。当該入力ポートに伝送チャンネルが割り当て済みの場合、インジケータ85が点灯し、当該入力ポートに伝送チャンネルが未割り当ての場合、インジケータ85が消灯する。
〈SDとその接続先のパッチ設定処理〉
図22は、I/O装置の表示器75に表示されたSDのパッチ設定画面(図20(a),(b))において、供給先SD(出力ポート)の接続先が変更されたときに、該I/O装置のCPUが実行する処理を示すフローチャートである。
ステップS58において、当該I/O装置のCPUは、接続先が変更された供給先SD(出力ポート)に対して伝送チャンネルの受信ポートが接続されているかをチェックする。変更前の接続先がネットワークの入力であり、その受信接続が実現されている場合、出力ポートは受信ポートに接続中である。それ以外の場合、すなわち、変更前の接続先がローカルの入力ポートの場合、ネットワークからの入力の受信接続が実現されていない場合、又は接続先が選択されていなかった場合には、ステップS58はNOに分岐する。
当該出力ポート(供給先SD)が受信ポートに接続中の場合(ステップS58のYES)、CPUは、ステップS59において、出力ポート(供給先SD)と受信ポートの接続を切断し、該受信ポートの伝送チャンネルからのオーディオ信号の受信を停止する。これにより、当該出力ポートの既存の受信接続をクリアする。
供給先SDの新たな接続先が当該I/O装置内の入力ポートであれば(ステップS60の「デバイス内」)、ステップS61において、当該I/O装置のCPUは、供給先SDの接続先に今回選択された供給元SSを設定し、自身のメモリに記憶された供給元SSの供給先情報と、供給先SDの供給元情報を変更する。そして、該設定された接続に基づき、SDとSSを接続する。この処理は、前記図13のステップS28と同様である。なお、この接続の内容は、制御装置に通知され、制御装置は、自身のカレントメモリの接続情報(このI/O装置の供給元SSと供給先SDを接続する情報)を記憶する。
供給先SDの新たな接続先がネットワークの入力であれば(ステップS60の「ネットワーク越し」)、ステップS62において、当該I/O装置のCPUは、自身のメモリに記憶された当該SDの供給元情報を変更し、供給先SDに対して、NAME欄83で選択された名称SSNの信号を載せた伝送チャンネル(i)を接続する受信接続を設定する。そして、このI/O装置が前記図15の接続更新処理を行ったときに、前記設定された受信接続が実現される(前記図15のステップS40〜S46を参照)。なお、制御装置は、前記受信接続の内容に応じて、自身のカレントメモリの接続情報(このI/O装置の供給先SDの供給元情報と、該供給元情報に対応する他の装置の供給元SSの供給先情報)を変更する。
〈SSとその接続先のパッチ設定処理〉
図23は、I/O装置の表示器75に表示されたSSのパッチ設定画面(図21(a),(b))において、供給元SS(入力ポート)の接続先が変更されたときに、該I/O装置のCPUが実行する処理を示すフローチャートである。
ステップS63において、当該I/O装置のCPUは、接続先が変更された入力ポート(供給元SS)に対して伝送チャンネルの送信ポートが接続中かどうかをチェックする。当該入力ポートの接続先が「ネットワークへの出力」であり、その送信接続が設定されている場合、入力ポートは伝送チャンネルの送信ポートに接続中である。それ以外の場合、すなわち、直前の接続先がローカルの出力ポートの場合、当該SSに伝送チャンネルが割り当てられていない(送信接続が実現されていない)場合、又は直前まで接続先が選択されていなかった場合には、ステップS63はNOに分岐する。
当該入力ポート(供給元SS)が送信ポートに接続中の場合(ステップS63のYES)、ステップS64において、当該装置のCPUは、自身が持つT信号リストを参照して、供給元SSNの名称SSNに対応するSSN(i)をサーチして、当該供給元SSの信号を出力先となっている伝送チャンネルの番号(i)を特定する。そして、ステップS65において、当該装置のCPUは、前記特定した番号(i)に対応するSSN(i)にnullをセットするとともに、該番号(i)の伝送チャンネルの送信ポートと、当該入力ポート(供給元SS)との接続を切断して、該伝送チャンネル(i)の送信を停止する。また、当該装置のCPUは、nullをセットしたSSN(i)をネットワーク6上の他の装置に通知して、該SSN(i)を自身が持つT信号リストから削除する。
なお、前記ステップS63をYESに分岐する場合とは、入力ポートの接続先がネットワークへの出力が選択されている場合であるため、今回の新たな接続先は、必ず当該装置が有する出力ポートのいずれ1つとなる。従って、ステップS65の後、当該装置のCPUは、ステップS66による接続先の判断の過程を行わずに、ステップS67に処理を進める。
当該入力ポート(供給元SS)が送信ポートに接続されておらず(ステップS63のNO)、該供給元SSの新たな接続先が当該I/O装置内の出力ポート(供給先SD)の場合(ステップS66の「デバイス内」)、ステップS67において、当該I/O装置のCPUは、供給元SSの接続先に今回選択された供給先SDを設定し、自身のメモリに記憶されたSSの供給先情報と、SDの供給元情報を変更する。そして、該設定された接続に基づき、SDとSSを接続する。この処理は、前記図13のステップS28と同様である。なお、この接続の内容は、制御装置に通知され、制御装置は、自身のカレントメモリの接続情報(このI/O装置の供給元SSと供給先SDを接続する情報)を記憶する。
また、当該入力ポート(供給元SS)が送信ポートに接続されておらず(ステップS63のNO)、供給元SSの新たな接続先がネットワークの入力であれば(ステップS66の「ネットワーク越し」)、ステップS68において、当該I/O装置のCPUは、自身のメモリに記憶された当該SSの供給元情報を変更し、To欄81の出力ポート(供給先SD)に、NAME欄83で選択された信号を載せた伝送チャンネル(i)を接続する送信接続を設定する。そして、このI/O装置が前記図15の接続更新処理を行ったときに、前記設定された送信接続が実現されるとともに、当該SSの名称をセットしたSSN(i)が他の装置に通知され、且つ自身のT信号リストにSSN(i)が登録される(前記図15のステップS33〜S35を参照)。なお、制御装置は、前記送信接続の内容に応じて、自身のカレントメモリの接続情報(このI/O装置の供給元SSの供給先情報と、該供給元SSの信号を受信している他の装置が有する供給元SSの供給先情報)を変更する。
上記図22のステップS61、及び図23のステップS68によれば、各装置は、当該装置の供給元SSと他の装置とのネットワーク越しの接続(供給元SSの送信接続)、及び、当該装置の供給先SDと他の装置とのネットワーク越しの接続(供給先SDの受信接続)を、その装置の簡易UI25から設定でき、且つ、その接続の実現は、当該装置が実行する伝送チャンネル確保処理(図6参照)により確保した伝送チャンネルの範囲で行われる。つまり、ミキシングシステム全体を制御する制御装置が不在の場合(ネットワーク6に制御装置が接続されていない場合や、制御装置の電源がオフされている場合)であっても、各装置は各々に必要な信号経路を各自で制御することができる。
〈信号出力オン/オフ設定部84の操作に応じた処理〉
また、図21(b)のSSパッチ設定画面に表示された信号出力オン/オフ設定部84が操作されたとき、当該装置のCPUは、図24のフローチャートに示す処理を実行する。オペレータの操作に応じて、当該装置のCPUは、信号出力オン/オフ設定部84のオン・オフ設定状態を反転する(ステップS69)。
今回の操作により信号出力オフが設定された場合(ステップS70の「オフ」)、当該I/O装置のCPUは、信号出力オン/オフのパラメータをオフに変更して、該変更後の状態をメモリに記憶する。そして、信号出力がオフされた供給元SS(入力ポート)に伝送チャンネル(i)の送信ポートが接続中の場合(ステップS71のYES)、前記ステップS64及びS65と同様な処理を行う。すなわち、当該I/O装置のCPUは、当該入力ポートと送信ポート(伝送チャンネル(i))の接続を切断するとともに、当該入力ポートに接続された供給元SSについてSSN(i)にnullをセットし、該SSN(i)を他の装置に通知し、且つ、自身が持つT信号リストから削除する(ステップS72及びステップS73)。
また、今回の操作により信号出力オンが設定された場合(ステップS70の「ON」)、当該I/O装置のCPUは、信号出力オン/オフのパラメータをオンに変更して、該変更後の状態をメモリに記憶し、本処理を終了する。新たに信号出力オンされた供給元SSは、操作前までは信号出力がオフだったので、前述した図15のステップS30の検出対象になっておらず、送信接続が実現されていない。今回の操作により信号出力がオンに設定されたことで、この供給元SSに関する送信接続は、図15の接続更新処理により送信接続が実現されうる状態となる。
〈名称SSNが変更されたときの処理〉
また、図21(a),(b)のSSパッチ設定画面のNAME欄83において供給元SSの名称が変更されたとき、当該装置のCPUは、図25のフローチャートに示す処理を実行する。
ステップS74において、当該装置のCPUは、オペレータの操作により新たに設定された名称ssnに当該装置の装置IDを付与して、名称SSNを生成する。名称ssnが当該装置内で重複させないことを前提としているので、ssnに装置IDを付与することで名称SSNはミキシングシステムでユニークな名称となる。そして、当該名称が変更された供給元SSに対して伝送チャンネルの送信ポートが接続中の場合(ステップS75のYES)、ステップS76において、当該装置のCPUは、該供給元SSに接続された伝送チャンネルの番号を(i)にセットする。そして、ステップS77において、前記ステップS74でセットした新たな名称SSNと、前記ステップS75でセットしたチャンネル番号(i)とをSSN(i)をセットして、該新たにセットしたSSN(i)を他の装置に通知するとともに、自身が持つT信号リストに登録する。
〈供給元SS,供給先SDのロック(優先制御)〉
前記図20(a),(b)及び前記図21(a),(b)に示す各パッチ設定画面には、供給先SDの送信接続の設定、又は供給元SSの受信接続の設定について、ロックオン(変更不可)/オフ(変更可)の設定状態を示すロックマーク86が表示されている。図に示す例では、ロックマーク86は、いわゆる南京錠を模擬した形態の画像であって、ロックオフ(変更可)の場合には、図に示されているように、該南京錠画像のつる部分が開錠された形態で表示される。ロックオン(変更不可)の場合には該つる部分が施錠された形態で表示される。供給元SS又は供給先SDの接続の設定がロックされているとき、オペレータは、その供給元SS又は供給先SDに関するパッチ設定を各I/O装置の簡易UI25側のパッチ設定画面(前記図20(a),(b)及び前記図21(a),(b)の各画面)で変更することができない。
各供給先SD、及び各供給元SS毎のロックオン・オフ設定は、制御装置からの指示により行われる。すなわち、制御装置のメモリに設けられたミキシングシステムの現動作状態を記憶する領域(カレントメモリ)には、各装置に接続された複数の供給元SS(入力ポート)及び複数の供給先SD(出力ポート)毎に、各供給先SD、及び各供給元SS毎のロックオン・オフ設定のデータが記憶される。また、各装置のメモリには、その装置に接続された複数の供給元SS(入力ポート)及び複数の供給先SD(出力ポート)に対するロックオン・オフ設定のデータが記憶される。
〈ロックオン・オフ設定切り替え〉
図26は、1つの供給先SD又は供給元SSについてロックオン・オフを設定する指示が行われたときに、制御装置のCPUが実行する処理の手順の一例を示す。この処理は、例えばオペレータが、制御装置から、供給先SD又は供給元SSについてロックオン・オフを指定する操作を行ったときに実行される。
制御装置のCPUは、ロックオン・オフの設定指示により、当該供給先SD又は供給元SSのロックオン・オフ設定がオンに変更された場合(ステップS78のYES)、カレントメモリに記憶された当該供給先SD又は供給元SSのロックオン・オフ設定データを、オンに変更するとともに、その供給先SD又は供給元SSを有する装置に当該供給先SD又は供給元SSのロックを設定する(ステップS79)。供給先SD又は供給元SSを有する装置のCPUは、その装置のメモリに記憶された当該供給先SD又は供給元SSのロックオン・オフ設定のデータを、オンに変更する。これにより、パッチ設定画面のロックマーク86は、オンを示す表示態様で表示される。
ロックオン・オフ設定がオフに変更された場合(ステップS78のNO)、カレントメモリに記憶された当該供給先SD又は供給元SSのロックオン・オフ設定データを、オフンに変更するとともに、その供給先SD又は供給元SSを有する装置に当該供給先SD又は供給元SSのロックを解除する(ステップS80)。供給先SD又は供給元SSを有する装置のCPUは、その装置のメモリに記憶された当該供給先SD又は供給元SSのロックオン・オフ設定のデータを、オフに変更する。
〈供給元SSのロックと優先度〉
本実施例によれば、各装置に接続された供給元SS(入力ポート)及び複数の供給先SD(出力ポート)毎にロックオン・オフを設定することにより、各装置に接続された複数の供給元SS(入力ポート)及び複数の供給先SD(出力ポート)に「優先度(優先順位)」を与えることができる。すなわち、ロックのオン又はオフに応じて、各供給元SSの送信接続、及び各供給先SDの受信接続に、高低2段階の「優先度」が設定される。ロックオンの供給元SS又は供給先SDは、ロックオフのものに比較して優先度が高く、ロックオフの供給元SS又は供給先SDは、ロックオンのものに比較して優先度が低い。
〈伝送チャンネルの優先的割り当て〉
所望の供給元SSの送信接続をロックして、その優先度を高く設定することにより、該ロックされた供給元SSに対する伝送チャンネルの割り当ては、優先的に実現される。このことは、前述した各装置毎の接続更新処理(図15)におけるステップS30の処理に現れている。すなわち、前述の通り、ステップS30において、各装置のCPUは、実現すべき送信接続を検出して、検出結果を供給元SSの優先度に従ってソートしている。そして、各装置のCPUは、優先度の高い送信接続から順番に「送信接続の実現」を行う。よって、優先度の高い送信接続に対して、その装置が確保した有限個の伝送チャンネルを、より確実に割り当てることができる。更にいえば、その装置において、設定された全ての送信接続を実現するために必要な数の伝送チャンネルが確保されていない場合には、優先度の低い供給元SSの送信接続は、優先度の高い送信接続に比較して、積極的に未実現となる。
従って、所望の供給元SSのロックオン・オフ設定により優先度を与えることで、設定した複数の送信接続(前記図11のステップS14)のうちのいずれを優先的に実現し、また、どの送信接続を未実現とするかを、オペレータ自らが制御できるようになる。
〈DCN変更時の処理と一部送信接続の優先的保持〉
オペレータは、ネットワーク6に接続された任意の装置について、確保すべき伝送チャンネル数DCNに任意の数を設定する操作を行うことができる。DCNの設定操作は、例えば、新たに伝送チャンネルを確保するとき、又は、既に確保した伝送チャンネルを返却する(当該装置に割り当てられた伝送チャンネルを解放する)ときに行われる。オペレータは、制御装置又は、新たなDCNを設定する装置において、該DCNの数を設定する操作を行うことができる。
図27は、オペレータにより伝送チャンネル数DCNが設定されたときに、該伝送チャンネル数DCNが設定された装置のCPUが実行する処理を示すフローチャートである。ステップS81において、当該装置のCPUは、メモリに記憶されたDCNの値と現在当該装置で確保している伝送チャンネルの数KNの差分をxに設定する。xの値が正(x>0)の場合は(ステップS82の「正」)、オペレータによって新たに設定されたDCNがKNよりも多いのであるから、ステップS83において、当該装置のCPUは、前記図6に示すx個の伝送チャンネルを確保する処理を実行し、必要な数の伝送チャンネルを確保する。x個の伝送チャンネルを確保できれば、当該装置のCPUは、確保済み伝送チャンネル数KNを更新する。
一方、xの値が負(x<0)の場合は(ステップS82の「負」)、オペレータによって新たに設定されたDCNがKNよりも少ないので、当該装置で既に確保した伝送チャンネルの中から、絶対値xの個数の伝送チャンネルを返却(解放)する。なお、絶対値xとしているのは、この場合のxの値は負(−x)であり、それに対応する伝送チャンネル個数は絶対値xとなるためである。ステップS84において、当該装置のCPUは、確保した伝送チャンネルの中で、オーディオ信号の伝送に使用されていない伝送チャンネルの数と、返却すべき伝送チャンネル数xを比較する。
未使用の伝送チャンネル数が、前記ステップS81で設定されたxよりも小さい場合(ステップS84のNO)、オーディオ信号の送信に使用中の伝送チャンネルの中から、必要な数の伝送チャンネルを解放する。オーディオ信号の送信に使用中の伝送チャンネルとは、供給元SSに割り当てられている伝送チャンネルである。
すなわち、ステップS85において、当該装置のCPUは、使用中の各伝送チャンネルに割り当てられた各供給元SSの優先度に基づき、解放する伝送チャンネルを決定し、該決定した伝送チャンネルの番号を(i)にセットする。ここで、(i)は、不足した伝送チャンネルの数(未使用伝送チャンネル数とxの差分)に応じた、1又は複数個である。
当該ステップS85においては、信号供給元SSの優先度に基づき解放する伝送チャンネルを決定している。これにより、優先度が高い供給元SS(ロックがオンに設定された供給元SS)に接続された伝送チャンネルはできるだけ解放の対象から除外し、優先度の低い供給元SS(ロックがオフに設定された供給元SS)に接続された伝送チャンネルからから順次、解放すべき伝送チャンネルに決定する優先制御を行うことができる。この優先制御により、伝送チャンネルを減らすときも、優先度を高く設定した所望の供給元SSと伝送チャンネルの接続は比較的解除されにくくなる。なお、同じ優先度の伝送チャンネルのなかでの優先順位は、例えば伝送チャンネル番号順など、適宜のルールに従って決定すればよい。
ステップS86において、当該装置のCPUは、オペレータが操作している装置の表示部(P表示部15、簡易UI25、又はPC7のモニタ)において警告表示を行うよう制御する。この警告表示は、例えば、伝送チャンネルの解放を行う旨を提示し、且つ、処理を続けるか又はキャンセルするかを、オペレータに問い合わせるものである。また、伝送チャンネルの解放を行う旨の表示に、解放する伝送チャンネルの解放により切断される供給元SSの名称SSNを含めてもよい。この警告表示を受けて、オペレータが伝送チャンネルの返却処理をキャンセルした場合には、当該装置のCPUは、処理を中止して、前記オペレータの操作により更新されたDCNの値を直前の値(当該処理の開始前の値)に戻す。
ステップS87において、当該装置のCPUは、前記ステップS85により決定された全ての伝送チャンネル(i)について、その伝送チャンネルと供給元SSの接続を切断する(伝送チャンネルに対する供給元SSの割り当てを解除する)。そして、各伝送チャンネル(i)に対応するSSN(i)にnullをセットして、該nullをセットした各SSN(i)をネットワーク6上の他の装置に通知する。この通知に応じて他の装置は、前記図8の処理を実行し、図18のステップS57により、各々が持つR信号リスト中の各SSN(i)を削除する。
そして、ステップS88において、前記供給元SSの接続を切断したx個の伝送チャンネル(i)を用いたオーディオ信号の送信を停止する。これにより、当該装置は、これら伝送チャンネル(i)をネットワーク6に返却する。これら伝送チャンネル(i)は、当該装置に対する割り当てから解放されたので、以後は、空き伝送チャンネル(図2(c)参照)となる。
また、前記ステップS84において、未使用の伝送チャンネル数が、前記ステップS81で設定されたxよりも大きい場合(ステップS84のYES)、未使用の伝送チャンネルを解放すればよいので、ステップS85〜87による供給元SSと伝送チャンネルの接続の切断は不要である。この場合、当該装置のCPUは、ステップS88において、未使用の伝送チャンネルのうちのx個の伝送チャンネル(i)を用いたオーディオ信号の送信を停止して、これら伝送チャンネル(i)をネットワーク6に返却(解放)する。未使用の伝送チャンネル(供給元SSに接続していない伝送チャンネル)も、ゼロレベルの信号(無音の信号)の送信を行っているので、ステップS88では、そのゼロレベルの信号の送信を停止する。
なお、オペレータによって新たに設定されたDCNがKNと同数の場合(前記ステップS12の「x=0」)、伝送チャンネルの確保又は返却を行う必要がないので、処理を終了する。
〈稼動中ミキシングシステムへの制御装置の新規接続と優先制御〉
稼動中のミキシングシステムに、新たな制御装置が接続されたとき、新たに接続された該制御装置のカレントメモリの内容と、当該ミキシングシステム上の各装置のメモリとを同期化する。図28は、稼働中のミキシングシステムに、制御装置が新たに接続されたときに、該制御装置のCPUが実行する処理を示すフローチャートである。なお、新たに制御装置が接続された場合には、新たな制御装置がネットワーク6に物理的に接続された場合、及び電源がオフされた状態でネットワーク6に物理的に接続されていた制御装置の電源をオンした場合が含まれる。
ステップS89において、新たに接続された制御装置のCPUは、ネットワーク6に接続された全ての装置の情報を収集して、前記収集した全装置の情報に基づき、ミキシングシステム内に、他の制御装置が既に存在するかどうかをチェックする。他の制御装置が既に存在している場合(ステップS90のYES)、当該新たに接続された制御装置のCPUは、ステップS91において、既存の制御装置との間で、カレントメモリの記憶内容を同期化する処理を行う。すなわち、既存の制御装置が有するカレントメモリの記憶内容を、当該新たに接続された制御装置のカレントメモリに上書きする。これにより、当該新たに接続された制御装置のカレントメモリの記憶内容は、稼動中のミキシングシステムの現状に一致したものとなる。
他の制御装置が存在していない場合(ステップS90のNO)、新たに接続された制御装置のCPUは、ステップS92において、前記ステップS89で収集した全装置の情報に基づき、自身のカレントメモリに記憶されたデータと、ネットワーク6に接続された装置の対応付けを行う。すなわち、新たに接続された制御装置のカレントメモリに記憶された1又は複数の装置の情報のうち、ミキシングシステムに装置の実ハードウェアが存在するものと、実ハードウェアが存在しないものとを特定する。カレントメモリの装置の情報と、ミキシングシステム上の実ハードウェアが一致したものが対応付け済みの装置となる。また、ミキシングシステムに装置の実ハードウェアが存在するが、制御装置のカレントメモリに対応する装置の情報が記憶されていない場合は、前記収集した装置の情報に基づいて、当該装置に対応する情報を生成して、生成した情報と実ハードウェアとを対応付ける。
ステップS93において、新たに接続された制御装置のCPUは、前記ステップS92による対応付け済みの装置の1つを指定する。
ステップS94において、新たに接続された制御装置のCPUは、カレントメモリに記憶された前記指定した装置の情報にロックがオンに設定された供給元SS、及び供給先SDがあった場合、該ロックがオンに設定された供給元SS又は供給先SDに関する接続情報(供給元情報及び供給先情報)を、前記指定した装置のメモリに上書きする。これにより、前記指定した装置側のメモリに記憶された当該供給元SSの供給先情報、及び該ロックがオンに設定された供給先SDの供給元情報は、カレントメモリに記憶された接続情報に応じた設定に書き換えられる。つまり、制御装置を新たに接続したときには、ロックがオンに設定された供給元SSの送信接続の設定、及びロックがオンに設定された供給先SDの受信接続の設定は、装置内の設定(そのとき現に実現されている接続の設定内容)よりも、該新たに接続された制御装置側の設定が優先される。
ステップS95において、制御装置のCPUは、前記ロックがオンに設定された供給元SS以外の供給元SSの供給先情報、及び、前記ロックがオンに設定された供給先SD以外の供給先SDの供給元情報を、該指定された装置のメモリから、制御装置のカレントメモリの接続情報に上書きする。つまり、制御装置を新たに接続したときには、各ロックされていない各供給元SSの送信接続の設定、及び各供給先SDの受信接続の設定は、各装置内の設定(そのとき現に実現されている接続の設定内容)が優先される。
ステップS96において、制御装置のCPUは、制御装置のカレントメモリに記憶されている当該指定された装置に関するその他のデータを、制該指定された装置内のメモリに上書きする。すなわち、制御装置を新たに接続したときには、供給元SSの供給先情報、及び供給先SDの供給元情報以外の情報は、全て、各装置内の設定(そのとき現に実現されている設定)が優先される。
制御装置のCPUは、ステップS97において、前記ステップS92で対応付けをした別の装置を指定して、該指定した装置を対象に前記ステップS94以下の同期化処理を行う(ステップS94〜S98のループ処理)。そして、制御装置のCPUは、対応付け図時の全ての装置について、制御装置のカレントメモリと装置内のメモリとの間での同期化処理を行った後(ステップS98のYES)、本処理を終了する。
ここで、上記図28に示す処理の動作の要点を、ミキシングシステムに制御装置が新たに接続されたときに、特定の供給元SSの送信接続の設定、或いは、特定の装置間の接続設定について、新たな前記制御装置の接続前の設定状態を残す(各装置側の設定を優先する)という観点で、言い換えれば、ロックされていない供給元SSに関する接続の設定(供給先情報及び供給元情報)の同期化に注目して、まとめる。
先ず第1に、新たに接続された制御装置のCPUは、図26の処理により複数の装置1〜5が有する供給元SS又は供給先SDについて1つずつロックオン・オフを設定することで、ミキシングシステムの複数の装置(対応付け済みの装置)のうちの各装置のロックされていない供給元SSを特定する特定部として機能することができる。
そして、当該制御装置のCPUは、当該制御装置がミキシングシステムに新たに接続されたときに、自身のカレントメモリに記憶する接続情報に基づいて、各装置がそれぞれのメモリに記憶した各供給先情報、及び各供給元情報のうち、前記特定された供給元SSに関する供給先情報、及び供給先情報(つまり、該供給元SSの供給先を示す供給先情報と、該供給元SSの信号を受信する供給先の供給元情報)を除く全ての情報を更新し(各装置のメモリの内容を変更するステップS94の動作)、該特定された供給元SSに関する供給先情報、及び供給先情報に基づいて、該新たに接続された制御装置のカレントメモリに記憶された接続情報を更新する(カレントメモリの内容を変更するステップS95の動作)同期化部として動作することができる。
また、別の観点では、新たに接続された制御装置のCPUは、図26の処理により複数の装置1〜5が有する供給元SS又は供給先SDについて1つずつロックオン・オフを設定することで、ミキシングシステムの複数の装置(対応付け済みの装置)のうちの所定の2つの互いに接続された装置(ロックされていない供給元SSを有する装置と、該SSの接続先となるロックされていない供給先SDを有する装置)を特定する特定部として機能することができる。
そして、当該制御装置のCPUは、当該制御装置がミキシングシステムに新たに接続されたときに、自身のカレントメモリに記憶する接続情報に基づいて、各装置がそれぞれのメモリに記憶した各供給先情報、及び各供給元情報のうち、前記特定された2つの装置の間の接続に関する供給先情報、及び供給先情報(つまり、一方の装置のロックされていない供給元SSの供給先を示す供給先情報と、もう一方の装置が有するロックされていない供給先SDの供給元情報)を除く全ての情報を更新し(各装置のメモリの内容を変更するステップS94の動作)、該2つの装置の間の接続に関する供給先情報、及び供給先情報に基づいて、該新たに接続された制御装置のカレントメモリに記憶された接続情報を更新する(カレントメモリの内容を変更するステップS95の動作)同期化部として動作することができる。
また、更に別の観点では、新たに接続された制御装置のCPUは、図26の処理により複数の装置1〜5が有する供給元SS又は供給先SDについて1つずつロックオン・オフを設定することで、ミキシングシステムの複数の装置(対応付け済みの装置)のうちの所定の2つの互いに接続された装置(ロックされた供給元SSを有する装置と、該SSの接続先となるロックされた供給先SDを有する装置)を特定する特定部として機能することができる。
そして、当該制御装置のCPUは、当該制御装置がミキシングシステムに新たに接続されたときに、自身のカレントメモリに記憶する接続情報に基づいて、各装置がそれぞれのメモリに記憶した各供給先情報、及び各供給元情報のうち、前記特定された2つの装置の間の接続に関する供給先情報、及び供給先情報(つまり、一方の装置のロックされた供給元SSの供給先を示す供給先情報と、もう一方の装置が有するロックされた供給先SDの供給元情報)を更新し(各装置のメモリの内容を変更するステップS94の動作)、該2つの装置の間の接続に関する供給先情報、及び供給先情報に基づいて、該新たに接続された制御装置のカレントメモリに記憶された接続情報を更新する(カレントメモリの内容を変更するステップS95の動作)同期化部として動作することができる。
上記3つの観点によりまとめた図28の処理の動作によれば、ミキシングシステムに制御装置が新たに接続されたときに、特定部により特定された供給元SSの送信接続の設定、或いは、特定の装置間の接続設定について、新規に制御装置を接続する前の設定状態を残すことができるようになる。すなわち、本実施例によれば、制御装置が、上記図28の処理により、各装置と該制御装置との間のデータ同期化の方向を、自身のメモリに記憶された供給元SS毎のロックオン・オフ設定に基づき制御することで、特定の供給元SSの送信接続の設定、或いは、特定の装置間の接続設定について、新規接続前の設定状態(各装置のメモリに記憶されたデータ)を残しておくことができる。したがって、ミキシングシステムの所望の伝送経路の設定状態を維持することができる。
〈2重パッチモード〉
上記実施例では、上記図8(a)〜(c)、及び図9(a),(b)に示すパッチ設定画面でオペレータが指定したパッチ設定に関する送信接続の実現は、各装置が実行する接続更新処理により自動的に行われていた(ステップS35)。すなわち、装置が確保した伝送チャンネルのうちのいずれの伝送チャンネルを、実現すべき該送信接続に関する供給元SS(入力ポート)に割り当てるかは、自動的に決定されていた。
別の実施形態として、供給元と供給先の接続に加えて、伝送フレームの経路設定(供給元と伝送チャンネルの接続)も、パッチ設定画面からオペレータが指定できるよう構成してもよい。かかる2重のパッチ設定が可能な構成により、伝送チャンネルの管理(伝送帯域の管理)をオペレータ自ら行うことができる。
図29(a),(b)に、2重パッチ設定可能なパッチ設定画面を示す。(a)は、エンジン2の入力パッチ設定画面である。概ね図8(c)と同様な構成であるが、図8(c)において各入力ポート毎に設けられた伝送チャンネル割り当て状態表示欄74であったところ(図において符号87)に、図29(a)では、各入力ポートに接続された伝送チャンネルの番号が表示されている。グリッドには、図8(c)と同様に入力ポートと入力チャンネルのパッチ設定・解除を示す接続記号「○」が表示される。グレーアウトされた列(MTR7、MTR8の信号が供給されている入力ポート)は、当該入力ポートに伝送チャンネルが割り当てられていないことを示している。
オペレータが、各入力ポートに割り当てられた伝送チャンネルの番号が表示された欄87をクリック等により指定すると、該指定した入力ポートを有する装置(この例で第1I/O装置)における伝送チャンネルの出力設定、すなわち、入力ポートの信号をどの伝送チャンネルから、送信するかを設定する伝送チャンネル出力設定画面が開く。図29(b)は、伝送チャンネル出力設定画面の構成例を示す。図29(b)において、縦列の各行には、当該装置が確保した全ての伝送チャンネルが表示される。横列の各列には当該装置が有する全ての入力ポートが表示される。入力ポートを示す各列はスロット毎に区分されている。オペレータは行列の交点(グリッド)をクリックすることで、該グリッドに対応する入力ポートに伝送チャンネルを接続する指示を行う。これにより、任意の供給元(入力ポート)に、当該装置が確保した複数の伝送チャンネルを接続することができる。該指示により接続されたグリッドには接続記号「○」が表示される。未接続のグリッドには接続記号が表示されない。
〈ロック設定の別の例〉
上記実施例において、供給元SSの送信接続、及び供給先SDの受信接続のロックオン・オフ設定が、オペレータの操作により供給元SS、及び供給先SD毎に指示できることを説明した。別の例としては、供給元SS及び供給先SDの信号の種類によって自動的にロックをオンに設定する指示が発生してもよい。
例えば、供給元SS又は供給先SDの名称(入力ポート又は出力ポートの名称)に、モニタ用チャンネル(モニタ用信号の入出力)や、インカム用チャンネル(例えば構内放送用入出力など)など、固定的に経路を確保すべき特定の種類が設定されたときに、自動的にロックをオンに設定する指示を発生させることが考えられる。固定的に経路を確保すべき特定の種類の信号が供給元SSに設定されたときには、その信号の入出力経路を確保したいので、供給元SSの送信接続をロックするとともに、該供給元SSの信号を受信する供給先SD(つまり、供給元SSのパッチ設定の相手)の受信接続もロックするとよい。
更に、固定的に経路を確保すべき特定の種類の信号が設定された供給元SSについては、オペレータが該供給元SSに関するパッチ設定を行わずに、その送信接続が設定されなくても、当該供給元SSの信号出力オン・オフ設定がオンである限り(前記ステップS30で当該送信接続が検出される限り)、当該供給元SSが入力ポートに接続されているか否かに関わらず(つまりステップS34の判断を行わずに)供給元SSに伝送チャンネルを自動的に割り当てるよう構成するとよい。例えば、インカム用信号を伝送する伝送チャンネルは、入力ポートの供給元SSとして「インカム用」が設定されたときに自動的に、当該供給元SSに割り当てられる。また、モニタ用チャンネルについては、コンソール1等の各装置に固定的にモニタ出力用端子(出力ポート)が設けられており、その伝送チャンネルが必須であるため、自動的に該当する入力ポート及び出力ポートに伝送チャンネルが割り当てられ、必要な経路の確保が自動的に確保されるよう構成するとよい。
〈その他〉
なお、上記実施例では、供給元SS毎の優先度は、ロックオン・オフに応じた高低の2段階で設定する構成であったが、これに限らず、供給元SS毎に適宜の多段階の優先度をオペレータが設定できるよう構成してもよい。
また、上記実施例では、供給元SS及び供給先SDのロックオン・オフの設定は、制御装置から指示する構成であったが、これに限らず、各装置の簡易UI25からその装置が有する供給元SS及び供給先SDのロックオン・オフの設定を行えるよう構成してもよい。
また、上記実施例では、各I/O装置3〜5が有する簡易UI25の表示器75に、図20及び図21に示すパッチ設定画面が表示される例について説明したが、I/O装置に関わらず、ミキシングシステムを構成するいずれの装置においても、同様なパッチ設定画面の表示及び操作が可能なオペレータインターフェースを具備し、表示部と、その操作を行う操作部を具備し、各自が有する供給元SS及び供給先SD(入出力ポート)のパッチ設定を行い、その装置が確保した伝送チャンネルの範囲でそのパッチ設定に係る送信接続又は受信接続を実現することができる。
また、上記実施例では、図27の処理開始のトリガーとなる確保すべき伝送チャンネル数DCNを変更する操作が、制御装置から行われる構成を示したが、これに限らず、各装置の簡易UIで、その装置において確保すべき伝送チャンネル数DCNを変更する操作を行えるよう構成してもよい。
また、制御装置におけるパッチの設定は、上記実施例に示すような供給元及び供給先からなるマトリクス図(パッチ設定画面)によりパッチ設定を指示する構成に限らず、従来から知られる適宜の構成を適用してよい。
また、上記実施例では、オーディオネットワーク6のマスタノードが、各装置に対する伝送チャンネルの割り当て状態(各装置が確保する伝送チャンネルの数)を管理する伝送帯域管理部として機能する例、すなわち、ネットワーク6中の1つの装置が全ての装置の伝送帯域の管理を行う例について説明したが、これに限らず各装置がそれぞれの伝送チャンネルの割り当て状態を行う伝送帯域管理部を具備する構成であってもよい。この場合、図6の伝送チャンネル確保処理のステップS4では、その装置に具備された伝送帯域管理部にx個の伝送チャンネルを確保する旨のリクエストを送信し、該伝送帯域管理部からの応答を得る。
また、上記実施例では、コンソール1を制御装置として用いる例を説明した。また、ミキシングシステムの各装置に接続されたPC7を制御装置として用いることも述べた。すなわち、制御装置は、ミキシングシステムを構成する装置内に組み込まれた装置によって構成されていてもよいし、各装置とは独立した装置により構成されてもよい。ミキシングシステムを構成する装置内に組み込まれた装置によって制御装置を構成する場合、制御装置は、コンソール1に限らず、ミキシングシステムを構成する装置の何れの装置に内蔵されていてもよい。また、システム内で複数の装置に制御装置の機能が内蔵されていてもよい。また、独立した装置により制御装置を構成する場合、ネットワークに接続された装置のPCI/Oに制御装置(PC)を接続する構成に限らず、ネットワークに直接接続されたPCを制御装置として用いる構成であってもよい。
上記実施例のミキシングシステムは、例えば、コンサート会場や大規模イベントなどのPA(Public Address(パブリック・アドレス))システムに用いるもの、デパート、学校など施設内における構内放送用のシステム、音楽レコーディングスタジオのレコーディングシステムなど、種々のシーンで利用されるオーディオミキシング用システム(音響システム)であってよい。