JP5664961B2 - 球状酸化タンタルメソ多孔体粒子およびその製造方法 - Google Patents

球状酸化タンタルメソ多孔体粒子およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、球状酸化タンタルメソ多孔体粒子およびその製造方法に関する。
酸化タンタルは、電解コンデンサの誘電体、光学材料や光触媒など、幅広い用途を有する半導体材料として知られている。また、界面活性剤を用いて合成された酸化タンタルはメソ多孔構造を有し、高い光触媒機能を示すことも知られている。
例えば、Chem.Mater.、1996年、第8巻、874−881頁(非特許文献1)には、界面活性剤であるアミン化合物の存在下でタンタル原料に少量の水を添加して酸化タンタル/界面活性剤複合粒子を調製し、これに水熱合成処理を施して多孔体前駆体粒子を生成させ、前記多孔体前駆体粒子から界面活性剤を除去することによって酸化タンタルメソ多孔体粒子を調製する方法が開示されている。また、Chem.Mater.、2001年、第13巻、1200−1206頁(非特許文献2)には、非特許文献1に記載の方法においてスプレーを用いて少量の水を添加することによって非特許文献1の酸化タンタルメソ多孔体粒子より粒子径の小さい酸化タンタルメソ多孔体粒子が得られることが開示されている。これらの酸化タンタルメソ多孔体粒子においては、比表面積が350〜400m/gと非常に高い値であったが、粒子径については、SEM写真から判断すると、粒子径が小さい非特許文献2の酸化タンタルメソ多孔体粒子であっても平均粒子径は500nmを超えるものであり、平均粒子径が500nm以下の酸化タンタルメソ多孔体粒子は得られていない。
また、Chem.Mater.、1999年、第11巻、2813−2826頁(非特許文献3)およびChem.Lett.、2005年、第34巻、第3号、394−395頁(非特許文献4)には、トリブロック共重合体界面活性剤を用いて合成した酸化タンタルメソ多孔体が開示されている。ここで得られる酸化タンタルメソ多孔体はフィルム状のものであるため、酸化タンタルメソ多孔体粒子を得るには粉砕する必要があるが、この場合、粒子の形状やサイズを制御することは容易ではなかった。
さらに、このような酸化タンタルメソ多孔体粒子においては触媒活性が十分ではなく、より触媒活性に優れた酸化タンタルメソ多孔体粒子が求められていた。
一方、特開2003−321211号公報(特許文献1)およびChem.Mater.、2008年、第20巻、5361−5367頁(非特許文献5)には、トリブロック共重合体界面活性剤を用いて合成したタンタル系酸化物メソ多孔体を、多孔構造を維持したまま結晶化させる方法が開示されており、特に、非特許文献5には、多孔構造を維持して結晶化させることにより光触媒活性が向上する(具体的には、NiOを担持させたタンタル系酸化物メソ多孔体において紫外線照射による水の分解能が約8倍に向上した)ことも開示されている。しかしながら、このタンタル系酸化物メソ多孔体においても触媒活性は十分なものではなく、より触媒活性に優れた酸化タンタルメソ多孔体粒子が求められていた。また、このようなタンタル系酸化物メソ多孔体は、紫外光に応答する触媒として有用であるが、可視光に対する応答性が低く、太陽光を利用する場合などにおいてはさらに改良の余地があった。
そこで、このような酸化タンタルを可視光応答性にする方法として、酸化タンタルに窒素原子を導入する方法が提案されている。例えば、特開2007−22858号公報(特許文献2)には、細孔構造を有するアモルファスの酸化タンタルを結晶化するとともに窒化することによって、結晶化した細孔構造を有する窒化タンタルを得る方法が開示されている。この窒化タンタルは可視光応答性を示し、光酸化反応においては有効な光触媒であるが、光還元反応における触媒活性は十分なものではなかった。
また、J.Phys.Chem.B、2004年、第108巻、15803−15807頁(非特許文献6)においては、市販の酸化タンタル粉末をアンモニア雰囲気中、600〜850℃で3時間アニーリングすることによって、窒素がドープされた酸化タンタルを得ている。さらに、Appl.Phys.Lett.、2010年、第96巻、142111−1〜3頁(非特許文献7)においては、塩化タンタルのエタノール溶液にアンモニア溶液を添加して酸化タンタルのコロイド溶液を調製し、沈殿物にアンモニア処理を施すことによって、窒素がドープされた酸化タンタルを得ている。しかしながら、これらの方法で合成した窒素ドープの酸化タンタルは光触媒活性が十分なものではなかった。
特開2003−321211号公報 特開2007−22858号公報
D.M.Antonelliら、Chem.Mater.、1996年、第8巻、874−881頁 J.N.Kondoら、Chem.Mater.、2001年、第13巻、1200−1206頁 P.Yangら、Chem.Mater.、1999年、第11巻、2813−2826頁 K.Nakajimaら、Chem.Lett.、2005年、第34巻、第3号、394−395頁 Y.Nodaら、Chem.Mater.、2008年、第20巻、5361−5367頁 T.Muraseら、J.Phys.Chem.B、2004年、第108巻、15803−15807頁 T.Morikawaら、Appl.Phys.Lett.、2010年、第96巻、142111−1〜3頁
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、平均粒子径が小さく且つメソ細孔構造を有し、触媒活性に優れた酸化タンタルメソ多孔体粒子およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、アルキルアミンの存在下、特定のアルコールを2種以上含有する水/アルコール混合溶媒中で、タンタル原料を反応させて酸化タンタル/界面活性剤複合粒子を形成させ、これに水熱処理を施した後、界面活性剤を除去することによって、粒子径が小さく、メソ細孔構造を有する球状の酸化タンタルメソ多孔体粒子が得られること、ならびに、この球状酸化タンタルメソ多孔体粒子が触媒活性に優れていることを見出した。また、本発明者らは、前記球状酸化タンタルメソ多孔体粒子のメソ細孔構造を維持したまま酸化タンタルを結晶化させることによって触媒活性が向上することも見出した。さらに、本発明者らは、結晶化させた球状酸化タンタルメソ多孔体粒子に窒素原子を含有させることによって可視光応答性を有する高活性な光触媒が得られることを見出した。そして、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の球状酸化タンタルメソ多孔体粒子は、水/エタノール混合溶媒に分散させ、得られた分散液をCu板に滴下して乾燥した場合に独立した状態で存在する粒子の平均粒子径が50〜500nmであり、前記独立した状態で存在する粒子のアスペクト比の平均値が1.20以下であり、中心細孔直径が1〜25nmであることを特徴とするものである。このような球状酸化タンタルメソ多孔体粒子においては、前記平均粒子径の±45%の範囲内の粒子径を有する粒子数の割合が全粒子数に対して80%以上であることが好ましい。
また、本発明の球状酸化タンタルメソ多孔体粒子はアモルファス粒子であっても結晶化した粒子であってもよい。本発明の球状酸化タンタルメソ多孔体粒子がアモルファス粒子である場合において、その中心細孔直径としては1〜5nmが好ましい。また、結晶化した粒子である場合においては、平均一次粒子径が1〜30nmであり、平均二次粒子径が50〜500nmであることが好ましい。さらに、結晶化した粒子においては、窒素原子を1.0〜49.9原子%の割合で含有していることが好ましい。
本発明の球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の製造方法は、
下記式(1):
[式(1)中、nは9〜25の整数である。]
で表される界面活性剤の存在下、
水と、メタノールおよびエタノールからなる群から選択される少なくとも1種の第一のアルコールと、ブタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、エチレングリコールおよびグリセリンからなる群から選択される少なくとも1種の第二のアルコールとを含有し且つ前記第一のアルコールの含有量と前記第二のアルコールの含有量の合計が30質量%以上90質量%未満である水/アルコール混合溶媒中で、
タンタル原料を反応させて酸化タンタル中に前記界面活性剤が導入された酸化タンタル/界面活性剤複合粒子を形成させる第一の工程と、
前記酸化タンタル/界面活性剤複合粒子に水熱処理を施して酸化タンタルメソ多孔体粒子中に前記界面活性剤が導入された多孔体前駆体粒子を形成させる第二の工程と、
前記多孔体前駆体粒子中の前記界面活性剤を除去して球状酸化タンタルメソ多孔体粒子を得る第三の工程と、
を含むことを特徴とする方法である。
このような球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の製造方法においては、前記タンタル原料および前記式(1)で表される界面活性剤を含有する溶液と、水と前記第一のアルコールと前記第二のアルコールとを含有する水/アルコール混合溶媒とを混合して前記タンタル原料を反応させることが好ましい。
また、本発明の球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の製造方法は、
第三の工程で得られた前記球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の細孔内に炭素源を吸着させて該球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の細孔内に炭素源が導入された酸化タンタルメソ多孔体/炭素源複合粒子を形成させる第四の工程と、
前記酸化タンタルメソ多孔体/炭素源複合粒子を700〜1000℃で30分〜6時間加熱して前記酸化タンタルを結晶化させるとともに前記炭素源を炭化させて結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子中に炭素が導入された結晶化多孔体前駆体粒子を形成させる第五の工程と、
前記結晶化多孔体前駆体粒子中の前記炭素を除去して結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子を得る第六の工程と、
をさらに含むことが好ましい。
さらに、本発明の球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の製造方法は、前記第六の工程で得られた前記結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子に、窒素源を含有する雰囲気中で加熱処理を施して、窒素原子を含有する結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子を得る第七の工程をさらに含むことが特に好ましい。
本発明によれば、平均粒子径が小さく且つメソ細孔構造を有し、触媒活性に優れた球状酸化タンタルメソ多孔体粒子を得ることが可能となる。
実施例1で得られた球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例2で得られた球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の走査型電子顕微鏡写真である。 比較例1で得られた酸化タンタルメソ多孔体粒子の走査型電子顕微鏡写真である。 比較例2で得られた酸化タンタルメソ多孔体粒子の走査型電子顕微鏡写真である。 比較例3で得られた酸化タンタルメソ多孔体粒子の走査型電子顕微鏡写真である。 比較例4で得られた酸化タンタルメソ多孔体粒子の走査型電子顕微鏡写真である。 比較例5で得られた酸化タンタルメソ多孔体粒子の走査型電子顕微鏡写真である。 比較例6で得られた酸化タンタルメソ多孔体粒子の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例1〜2、実施例4および実施例7〜8で得られた球状酸化タンタルメソ多孔体粒子のX線回折パターンを示すグラフである。 実施例2で得られた球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の透過型電子顕微鏡写真である。 実施例1〜2および実施例8で得られた球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の窒素吸着等温線を示すグラフである。 実施例1〜2および実施例8で得られた球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の細孔径分布を示すグラフである。 実施例1で得られた球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の粒子径分布を示すグラフである。 比較例2で得られた酸化タンタルメソ多孔体粒子の粒子径分布を示すグラフである。 実施例1〜3で得られた球状酸化タンタルメソ多孔体粒子、比較例1〜3で得られた酸化タンタルメソ多孔体粒子および比較例8〜9で得られた酸化タンタル粒子に、それぞれPtを担持させた触媒の触媒性能を示すグラフである。 実施例10で得られた結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例12で得られた結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例11で得られた結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の電界放出形走査電子顕微鏡写真である。 実施例14で得られた結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の電界放出形走査電子顕微鏡写真である。 実施例1で得られたアモルファス球状酸化タンタルメソ多孔体粒子および実施例10〜14で得られた結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子のX線回折パターンを示すグラフである。 実施例10〜14で得られた結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の窒素吸着等温線を示すグラフである。 実施例12で得られた結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の二次粒子径分布を示すグラフである。 比較例12で得られた結晶化酸化タンタルメソ多孔体粒子の二次粒子径分布を示すグラフである。 実施例12および実施例14で得られた結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子、比較例10および14で得られた結晶化酸化タンタル粒子並びにおよび比較例11〜13で得られた結晶化酸化タンタルメソ多孔体粒子に、それぞれPtを担持させた触媒の触媒性能を示すグラフである。 実施例17〜19で得られた、窒素原子を含有する結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子のX線回折パターンを示すグラフである。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
先ず、本発明の球状酸化タンタルメソ多孔体粒子について説明する。本発明の球状酸化タンタルメソ多孔体粒子は50〜500nmの平均粒子径を有するものである。なお、球状酸化タンタルメソ多孔体粒子が二次粒子を形成している場合(例えば、後述する結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子)には平均二次粒子径が本発明にかかる平均粒子径となる。前記平均粒子径が前記上限を超えると酸化タンタルメソ多孔体粒子の表面での物質の移動や拡散が起こりにくくなり、特に、酸化タンタルメソ多孔体粒子を触媒や触媒担体として使用した場合には反応物の吸着や生成物の脱離が起こりにくくなる。他方、平均粒子径が前記下限未満になると粒子が形状になりにくく、また、細孔が形成されにくくなる。また、粒子表面での物質の移動や拡散などの上記の現象が起こりやすくなるという観点から、前記平均粒子径としては50〜400nmが好ましい。
なお、前記平均粒子径は以下のようにして求められる。すなわち、酸化タンタルメソ多孔体粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)写真において無作為に抽出した粒子の最大径と最小径を測定し、これらの平均値を当該粒子の粒子径とする。この粒子径測定を無作為に抽出した50〜200個の粒子について実施し、これらの平均値を酸化タンタルメソ多孔体粒子の平均粒子径とする。
また、本発明の酸化タンタルメソ多孔体粒子の形状は球状である。ここで、「球状」には、真球状だけでなく、楕円球状も含まれるものとし、具体的には、後述するアスペクト比を満たすものである。このように、本発明の酸化タンタルメソ多孔体粒子は、その形状が球状であるため、平均粒子径が前記範囲(特に100nmを超える範囲)であっても、粒子表面での物質の移動や拡散などが起こりやすく、触媒活性が高くなる。なお、本発明においては、同一条件で製造された複数個の粒子の70%以上が球状である場合に「その粒子は球状粒子である」という。このような酸化タンタルメソ多孔体粒子の形状は走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察することができる。また、本発明において、複数個の酸化タンタルメソ多孔体粒子は互いに凝集して二次粒子を形成していてもよい。
さらに、本発明の球状酸化タンタルメソ多孔体粒子のアスペクト比(長径/短径)の平均値は1.20以下である。アスペクト比の平均値が前記上限を超えると粒子の形状が球状ではないため、粒子表面での物質の移動や拡散などが起こりにくく、高い触媒活性が得られにくい。
なお、前記アスペクト比の平均値は以下のようにして求められる。すなわち、酸化タンタルメソ多孔体粒子のSEM写真において無作為に抽出した粒子の最大径(長径)と最小径(短径)を測定し、この粒子のアスペクト比(長径/短径)を算出する。このアスペクト比の算出を無作為に抽出した50〜200個の粒子について実施し、これらの平均値を酸化タンタルメソ多孔体粒子のアスペクト比の平均値とする。
本発明の球状酸化タンタルメソ多孔体粒子は、孔径が1〜50nm程度のメソ細孔構造を有するものである。これにより、本発明の球状酸化タンタルメソ多孔体粒子は比表面積が大きくなり、反応物質の付着量または触媒担持量が増大して触媒活性が向上する。また、本発明の球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の中心細孔直径は1〜25nm(好ましくは1〜22nm)である。中心細孔直径が前記下限未満になると助触媒、色素、酵素などの分子量の大きな物質を細孔内に導入することが困難であり、他方、前記上限を超えると導入された物質を確実に保持することが困難となる。なお、球状酸化タンタルメソ多孔体粒子が後述するアモルファス粒子の場合には、大きな直径の細孔が形成されにくいため、中心細孔直径は通常1〜5nmとなる。
なお、酸化タンタルメソ多孔体粒子のメソ細孔構造形成は、X線回折パターンを測定したり、透過型電子顕微鏡により観察したりすることによって確認することができる。また、前記中心細孔直径は以下のようにして求められる。すなわち、酸化タンタルメソ多孔体粒子を液体窒素温度(−196℃)に冷却して窒素ガスを所定の圧力で導入し、定容量式ガス吸着法または重量法によりその平衡圧における窒素吸着量を求める。次に、導入する窒素ガスの圧力を徐々に増加させ、各平衡圧における窒素吸着量を求める。得られた窒素吸着量を平衡圧に対してプロットすることにより窒素吸着等温線が得られる。このようにして得られた窒素吸着等温線からCranston−Inklay法、Pollimore−Heal法またはBJH法などの計算法により細孔径分布曲線を求める。ここで得られる細孔径分布曲線は、細孔容積Vを細孔直径Dで微分した値(dV/dD)を細孔直径(D)に対してプロットしたものである。この細孔径分布曲線の最大ピークにおける細孔直径を酸化タンタルメソ多孔体粒子の中心細孔直径とする。
本発明の球状酸化タンタルメソ多孔体粒子においては、前記平均粒子径の±45%の範囲内の粒子径を有する粒子数の割合が全粒子数に対して80%以上であることが好ましく、83%以上であることがより好ましい。平均粒子径の±45%の範囲内の粒子径を有する粒子数の割合が前記下限未満になると酸化タンタルメソ多孔体粒子は粒子径が不均一であるため、特に大きな粒子では粒子表面での物質の移動や拡散などが起こりにくく、触媒活性が低下する傾向にある。
本発明の球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の比表面積としては30m/g以上が好ましい。比表面積が前記下限未満になると触媒活性サイトが少なく、高い触媒活性が得られない傾向にある。なお、酸化タンタルメソ多孔体粒子の比表面積は、上記のようにして得られた窒素吸着等温線からBET法により求められる。
本発明の球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の細孔容量としては0.04ml/g以上が好ましい。細孔容量が前記下限未満になると細孔内での反応物質の保持量または触媒担持量が少なく、高い触媒活性が得られない傾向にある。なお、酸化タンタルメソ多孔体粒子の細孔容量は、上記のようにして得られた窒素吸着等温線から求められる。
また、本発明の球状酸化タンタルメソ多孔体粒子は、アモルファスであっても結晶化されたものであってもよいが、酸化タンタル内で励起した電子が内部失活しにくく、反応物へ効率よく電子を渡すことができ、より高い触媒活性を示すという観点から、結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子が好ましい。なお、酸化タンタルメソ多孔体粒子の結晶性はX線回折パターンを測定することによって確認することができる。
次に、この結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子について説明する。本発明の結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子は、結晶構造を有する酸化タンタルからなり、上記のような特性(平均粒子径、アスペクト比、中心細孔直径、粒子径分布、比表面積および細孔容量)を有するものである。このような結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子は、紫外光応答性に優れており、紫外線を利用した光触媒反応(特に、光還元反応)における光触媒として有用である。
このような結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子は、通常、一次粒子が球状に凝集した二次粒子である。この一次粒子の平均粒子径(平均一次粒子径)としては1〜30nmが好ましく、1〜25nmがより好ましい。平均一次粒子径が前記下限未満になると半導体としての特性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の比表面積が小さくなるため、触媒活性サイトが少なく、高い触媒活性が得られない傾向にある。この一次粒子の粒子径は焼成温度を調整することによって変化させることができ、これにより二次粒子の細孔径をコントロールすることが可能となる。
また、前記結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子においては、窒素原子を含有していることが好ましい。このような窒素原子を含有する結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子は、上記のような特性(平均粒子径、アスペクト比、中心細孔直径、粒子径分布、比表面積および細孔容量)を有するとともに、可視光応答性に優れており、可視光(特に、太陽光)を利用した光触媒反応(特に、光還元反応)における光触媒として有用である。
前記窒素原子を含有する結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子における窒素含有量は、粒子中の全原子に対して1.0〜49.9(好ましくは、2.0〜30.0原子%)である。窒素含有量が前記下限未満になると、可視光応答性が十分に得られにくく、他方、前記上限を超えると、窒化タンタルとして作用し、その伝導体下端のエネルギーレベルがより低くなるため、光還元反応が十分に発現しにくい。
なお、結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子に窒素原子を導入することによって結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子が可視光応答性を示す理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子に窒素原子を導入することによって、結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の酸素原子サイトの一部が窒素原子に置換される。そして、酸素原子の2p軌道によって形成される価電子帯が、窒素原子の2p軌道との混成効果によって、より高いポテンシャルで形成され、その結果、バンドギャップが狭くなり、可視光応答性が発現すると推察される。
なお、このような二次粒子の平均二次粒子径、アスペクト比、中心細孔直径、粒子径分布、比表面積および細孔容量は、それぞれ上述した球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の平均粒子径、アスペクト比、中心細孔直径、粒子径分布、比表面積および細孔容量に相当するものである。
このような本発明の球状酸化タンタルメソ多孔体粒子は、アモルファスのもの、結晶化したもの、窒素原子を含有するもののいずれについても、そのまま使用してもよいが、必要に応じて所望の形状に成形して使用してもよい。成形手段としては特に制限はないが、押出成形、打錠成形、転動造粒、圧縮成形、CIPなどが好ましい。また、成形物の形状は使用箇所や方法に応じて適宜決めることができ、例えば、円柱状、破砕状、球状、ハニカム状、凹凸状。波板状などが挙げられる。
このような本発明の球状酸化タンタルメソ多孔体粒子は、より安定して製造できるという観点から、以下のような本発明の球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の製造方法により製造することが好ましい。
すなわち、本発明の球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の製造方法は、
界面活性剤であるアルキルアミンの存在下、水と第一のアルコールと第二のアルコールとの水/アルコール混合溶媒中で、タンタル原料を反応させて酸化タンタル中に前記界面活性剤が導入された酸化タンタル/界面活性剤複合粒子を形成させる第一の工程と、
前記酸化タンタル/界面活性剤複合粒子に水熱処理を施して酸化タンタルメソ多孔体粒子中に前記界面活性剤が導入された多孔体前駆体粒子を形成させる第二の工程と、
前記多孔体前駆体粒子中の前記界面活性剤を除去して球状酸化タンタルメソ多孔体粒子を得る第三の工程と、
を含む方法である。
このような方法により、従来は困難であった粒子径が小さく且つメソ細孔構造を有し、触媒活性に優れた球状酸化タンタルメソ多孔体粒子を得ることが可能となる。以下、第一〜第三の工程について工程ごとに説明する。
<第一の工程>
第一の工程では、界面活性剤であるアルキルアミンの存在下、水と第一のアルコールと第二のアルコールとの水/アルコール混合溶媒中で、タンタル原料を反応させる。その結果、酸化タンタル中に前記界面活性剤が導入された酸化タンタル/界面活性剤複合粒子が形成される。
本発明の球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の製造方法に用いられるタンタル原料としては、反応により酸化タンタルを形成するものであれば特に制限はないが、タンタルアルコキシドおよび塩化タンタルが好ましく、加水分解反応の制御が容易であるという観点からタンタルアルコキシドがより好ましい。タンタルアルコキシドを構成するアルコキシ基としては特に制限はないが、反応性の観点から、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基中の炭素数が比較的少ないもの(好ましくは炭素数が1〜4程度のもの)が好ましい。このようなアルコキシ基は加水分解により水酸基に変換され、これが縮合することによってタンタルアルコキシドから酸化タンタルが形成される。このようなタンタルアルコキシドの中でも、反応速度の観点から、タンタルメトキシド〔Ta(OCH〕、タンタルエトキシド〔Ta(OC〕が特に好ましい。また、タンタルアルコキシドは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
本発明の球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の製造方法に用いられる界面活性剤は、下記式(1):
で表されるアルキルアミンである。
前記式(1)中、nは9〜25の整数である。nが8以下になると球状酸化タンタル粒子は得られるが、界面活性剤の疎水性相互作用が弱く、ミセルを形成しにくいため、球状酸化タンタル粒子に細孔が形成されにくく、多孔体になりにくい。他方、nが26以上になると界面活性剤の疎水性相互作用が強くなりすぎるため、層状の酸化タンタルが形成しやすく、酸化タンタル粒子のアスペクト比が大きくなる。適度な疎水性相互作用を有する界面活性剤であるという観点からnは9〜17の整数であることが好ましい。
本発明の球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の製造方法に用いられる水/アルコール混合溶媒は、水と、メタノールおよびエタノールからなる群から選択される少なくとも1種の第一のアルコールと、ブタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、エチレングリコールおよびグリセリンからなる群から選択される少なくとも1種の第二のアルコールとを含有するものである。このようなアルコールはタンタル原料の加水分解を抑制する効果を有する。したがって、このような混合溶媒を用いることによってタンタル原料の加水分解速度をコントロールすることでき、球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の粒子径や粒子形状を制御することが可能となる。
具体的には、水/アルコール混合溶媒中のアルコール含有量(第一のアルコールと第二のアルコールの合計含有量)を調整することによってタンタル原料の加水分解速度をコントロールし、より均一な粒子径を有する球状の酸化タンタルメソ多孔体粒子を得る。本発明の球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の製造方法において、水/アルコール混合溶媒中のアルコール含有量(第一のアルコールと第二のアルコールの合計含有量)は30質量%以上90質量%未満である。アルコール含有量が前記下限未満になるとタンタル原料の加水分解速度が速いため、球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の粒子径は制御しにくく、大きくなり、均一になりにくい。他方、アルコール含有量が前記上限以上になると酸化タンタル/界面活性剤複合粒子が析出せず、球状酸化タンタルメソ多孔体粒子が得ることができない。また、より確実に酸化タンタル/界面活性剤複合粒子を析出させるためにはアルコール含有量は40質量%以上80質量%以下であることが好ましい。
また、本発明の球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の製造方法においては、アルコールとして前記第一のアルコールと前記第二のアルコールとが併用されている限り、これらの比率としては特に制限はないが、全アルコール量に対する第一のアルコールの含有量としては50質量%以上95質量%以下(第二のアルコールの含有量としては5質量%より多く50質量%未満)が好ましい。第一のアルコールおよび第二のアルコールの含有量が前記範囲内にあると、第二のアルコールの粘度が高いため、水または水と第一のアルコールとの混合溶媒に比べて本発明にかかる水/アルコール混合溶媒の粘度が増大してタンタル原料の加水分解が適度に抑制され、平均粒子径が500nm以下の球状酸化タンタルメソ多孔体粒子を得ることが可能となる。一方、第一のアルコールの含有量が前記下限未満になると、水/アルコール混合溶媒の粘度が高くなりすぎ、酸化タンタルメソ多孔体粒子の粒子径が大きくなるとともに粒子形状が制御しにくくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、界面活性剤が塩基性アミンであるため、タンタル原料の加水分解が十分に抑制されずに速く進行し、酸化タンタルメソ多孔体粒子の粒子径が大きくなるとともに粒子形状が制御しにくくなる傾向にある。
本発明の球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の製造方法において、前記界面活性剤の存在下、前記水/アルコール混合溶媒中でタンタル原料を反応させる場合、予め、前記界面活性剤と前記タンタル原料との複合体(以下、「タンタル原料/界面活性剤複合体」という)を形成させることが好ましい。これにより、タンタル原料が反応して酸化タンタルに変化した場合に、酸化タンタル中に界面活性剤が導入された複合粒子(以下、「酸化タンタル/界面活性剤複合粒子」という)がより確実に形成される。この複合粒子に水熱処理を施すことによって酸化タンタルメソ多孔体粒子中に界面活性剤が導入された多孔体前駆体粒子が形成され、この多孔体前駆体粒子中の界面活性剤を除去することによって界面活性剤が存在していた部分にメソ細孔が形成され、本発明の球状酸化タンタルメソ多孔体粒子が得られる。したがって、本発明にかかる界面活性剤は、メソ細孔形成のためのテンプレートとして機能する。本発明の球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の製造方法においては、界面活性剤は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよいが、界面活性剤がメソ細孔形成のためのテンプレートとして機能し、メソ細孔の形状に大きな影響を与えることを考慮すると、球状酸化タンタルメソ多孔体粒子中に均一なメソ細孔を形成させるためには1種類の界面活性剤を使用することが好ましい。
また、本発明の球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の製造方法においては、前記タンタル原料および前記界面活性剤は、前記水/アルコール混合溶媒と混合する前に、予め混合しておくことが好ましい。これにより、予め、前記タンタル原料/界面活性剤複合体をより確実に形成することができ、この複合体を前記水/アルコール混合溶媒と混合することによってタンタル原料が酸化タンタルに変化して酸化タンタル/界面活性剤複合粒子が形成され、その後、界面活性剤を除去することによってメソ細孔構造を有する本発明の球状酸化タンタルメソ多孔体粒子を得ることができる。一方、前記タンタル原料と前記界面活性剤をそれぞれ独立に水/アルコール混合溶媒に添加すると、界面活性剤が塩基性アミンであるため、タンタル原料の加水分解が速く進行し、酸化タンタル粒子の粒子径が大きくなるとともに、酸化タンタル/界面活性剤複合粒子が形成されにくく、メソ細孔構造が形成されにくい傾向にある。
タンタル原料と界面活性剤を予め混合する際、両者が溶解する溶媒を使用してもよい。このとき用いられる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノールが好ましい。これらのアルコール類は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
また、タンタル原料の加水分解反応を制御するための試薬を、タンタル原料および界面活性剤を含有する溶液に添加してもよい。このような試薬としては、例えば、アセチルアセトンなどのβ−ジケトン類、酢酸などのカルボン酸類、乳酸、マンデル酸、クエン酸、酒石酸、シュウ酸などのα−ヒドロキシカルボン酸類、アセトール、アセトインなどのα−ヒドロキシカルボニル誘導体、エチレングリコールなどのグリコール類、ジエタノールアミンなどのエタノールアミン類が挙げられる。これらの試薬がタンタル原料に配位したり、反応したりすることによって、タンタル原料が安定化し、タンタル原料の加水分解反応を制御することが可能となる。このような試薬の添加量としては、タンタル原料が溶解している状態が維持できれば特に制限はない。
本発明の球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の製造方法においては、メソ細孔構造を確実に形成するという観点から、前記タンタル原料および前記式(1)で表される界面活性剤を含有する溶液と、水と前記第一のアルコールと前記第二のアルコールとを含有し且つ所定のアルコール含有量を有する水/アルコール混合溶媒を混合することが好ましく、タンタル原料の加水分解反応を反応系内でより均一に且つより適度な速度で進行させるという観点から、前記水/アルコール混合溶媒にタンタル原料および界面活性剤を含有する前記溶液を添加して混合することがより好ましい。
また、本発明の球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の製造方法において、タンタル原料および界面活性剤を含有する溶液と水/アルコール混合溶媒は、混合後の溶液中のタンタル原子濃度が0.002〜0.03mol/L(より好ましくは0.003〜0.02mol/L)、界面活性剤濃度が0.002〜0.03mol/L(より好ましくは0.003〜0.02mol/L)となるように混合することが好ましい。このような濃度でタンタル原料を反応させることにより粒子径が比較的均一な球状酸化タンタルメソ多孔体粒子を得ることができる。タンタル原子濃度または界面活性剤濃度が前記下限未満になるとメソ細孔構造を有する粒子を高比率で得ることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると反応の均一性が低下するため、析出した酸化タンタル/界面活性剤複合粒子が凝集しやすく、所定の粒子径の球状酸化タンタルメソ多孔体粒子を得ることが困難となる傾向にある。
このように、前記界面活性剤の存在下、前記水/アルコール混合溶媒中でタンタル原料を反応させると酸化タンタル/界面活性剤複合粒子が形成される。このとき、タンタル原料の反応は撹拌状態で進行させることが好ましい。また、タンタル原料の反応条件(反応温度、反応時間など)としては特に制限はないが、例えば、反応温度としては−20〜100℃が好ましく、0〜80℃がより好ましく、10〜40℃が特に好ましい。また、反応時間としては1〜24時間が好ましい。
このようにして形成された酸化タンタル/界面活性剤複合粒子は、必要に応じて室温で一晩放置して系を安定化させ、得られた沈殿物を必要に応じてろ過および洗浄することによって回収される。
<第二の工程>
本発明の球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の製造方法における第二の工程では、第一の工程で得られた酸化タンタル/界面活性剤複合粒子に水熱処理を施して酸化タンタルメソ多孔体粒子中に前記界面活性剤が導入された多孔体前駆体粒子を形成させる。これにより、界面活性剤の安定なミセル形成が促進されるため、メソ細孔構造が確実に形成されるとともに、メソ細孔の規則性が向上する。また、タンタル原料の反応も促進される。
この第二の工程で用いられる溶媒としては、水、または水とアルコールとの混合溶媒が好ましい。前記アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。これらのアルコールは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、アルコール濃度としては80質量%以下が好ましい。
本発明の球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の製造方法において、水熱処理温度としては60〜250℃が好ましく、100〜200℃がより好ましい。水熱処理温度が前記下限未満になるとミセルが形成されにくく、メソ細孔構造が形成されにくい傾向にあり、他方、前記上限を超えると多孔体前駆体粒子の粒子径制御が困難となり、球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の粒子径分布が広くなる傾向にある。なお、水熱処理温度以外の水熱処理条件としては特に制限はない。
このようにして形成された多孔体前駆体粒子は、必要に応じて室温で一晩放置して系を安定化させ、得られた沈殿物を必要に応じてろ過および洗浄することによって回収される。
<第三の工程>
本発明の球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の製造方法における第三の工程では、第二の工程で得られた多孔体前駆体粒子中の界面活性剤を除去してメソ細孔を形成させ、本発明の球状酸化タンタルメソ多孔体粒子を得る。
多孔体前駆体粒子から界面活性剤を除去する方法としては、焼成による方法、有機溶媒で処理する方法、イオン交換法などが挙げられる。中でも、焼成による方法では加熱に伴って酸化タンタルが結晶成長するため、メソ細孔を閉塞させる場合があるため、より安定して球状酸化タンタルメソ多孔体粒子を得るという観点から有機溶媒で処理する方法またはイオン交換法が好ましい。
有機溶媒で処理する方法は、多孔体前駆体粒子中の界面活性剤を有機溶媒中に溶出させて除去する方法である。すなわち、用いた界面活性剤の溶解度が高い良溶媒に多孔体前駆体粒子を浸漬して撹拌する。これにより、多孔体前駆体粒子中の界面活性剤が溶媒中に抽出され、球状酸化タンタル粒子にメソ細孔が形成される。
イオン交換法は、多孔体前駆体粒子中の界面活性剤を水素イオンにイオン交換する方法である。すなわち、多孔体前駆体粒子を酸性溶液(少量の塩酸を含むエタノール溶液など)に浸漬し、例えば、50〜70℃で加熱しながら撹拌する。これにより、多孔体前駆体粒子中の界面活性剤が水素イオンで置換され、球状酸化タンタル粒子にメソ細孔が形成される。なお、イオン交換により球状酸化タンタルメソ多孔体粒子のメソ細孔中には水素イオンが存在することになるが、水素イオンのイオン半径は細孔直径に比べて十分に小さいため、細孔閉塞という問題は発生しない。
このように、本発明にかかる第一〜第三の工程を経て得られる球状酸化タンタルメソ多孔体粒子は、通常、アモルファス粒子である。このようなアモルファスの球状酸化タンタルメソ多孔体粒子においては、従来の酸化タンタルメソ多孔体粒子や酸化タンタル微粒子に比べて十分に高い触媒活性を得ることができるが、本発明の球状酸化タンタルメソ多孔体粒子においては、酸化タンタルを結晶化させることによって触媒活性をさらに向上させることが可能である。
本発明の球状酸化タンタルメソ多孔体粒子を結晶化させる方法としては、より安定して結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子を製造できるという観点から、以下のような本発明の結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の製造方法により製造することが好ましい。
すなわち、本発明の結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の製造方法は、
第三の工程で得られた前記球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の細孔内に炭素源を吸着且つ重合させて該球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の細孔内に炭素源が導入された酸化タンタルメソ多孔体/炭素源複合粒子を形成させる第四の工程と、
前記酸化タンタルメソ多孔体/炭素源複合粒子を加熱して前記酸化タンタルを結晶化させるとともに前記炭素源を炭化させて結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子中に炭素が導入された結晶化多孔体前駆体粒子を形成させる第五の工程と、
前記結晶化多孔体前駆体粒子中の前記炭素を除去して結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子を得る第六の工程と、
を含む方法である。
このような方法によれば、メソ細孔を閉塞させることなく、酸化タンタルを結晶化させることが可能であり、より優れた触媒活性を有する結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子を得ることが可能となる。なお、本発明の結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の製造方法においては、炭素源の吸着と重合と炭化をそれぞれ独立した工程で実施してもよいし、炭素源の吸着と重合、あるいは炭素源の吸着と重合と炭化を一工程で実施してもよい。以下、第四〜第六の工程について工程ごとに説明する。
<第四の工程>
第四の工程では、第三の工程で得られた球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の細孔内に炭素源である有機物を吸着させ、この球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の細孔内に炭素源が導入された酸化タンタルメソ多孔体/炭素源複合粒子を形成させる。これにより、酸化タンタルを結晶化させる際の細孔の閉塞を防ぐことが可能となる。
この第四の工程で用いられる炭素源である有機物としては、酸化タンタルの結晶化の際に細孔の閉塞を防ぐことができるものであれば特に制限はなく、熱分解によって炭素を生成し得る有機物であればよい。このような有機物として、具体的には、
(1)常温で液体であり且つ熱重合性の高いポリマー前駆体(例えば、フルフリルアルコール、アニリンなど)
(2)炭化水素(例えば、スクロース(ショ糖)、キシロース(木糖)、グルコース(ブドウ糖)などの単糖類、二糖類、多糖類など)を含む水溶液と、酸(例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸など)との混合物
(3)不飽和結合を有する重合性のガス(例えば、アセチレン、プロピレンなど)
(4)2液硬化型のポリマー前駆体の混合物(例えば、フェノールとホルマリンなど)
などが挙げられる。
このような有機物の中でも、溶媒で希釈することなく球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の細孔内に含浸させることが可能であり、相対的に多量の炭素を細孔内に生成させることができるという観点から、前記(1)ポリマー前駆体が好ましい。また、このようなポリマー前駆体は、重合開始剤が不要であり,取り扱いも容易であるという利点も有する。さらに、このようなポリマー前駆体の中でも、細孔内での炭素が生成しやすいという観点から、フルフリルアルコールが特に好ましい。
このような炭素源である有機物を細孔内に吸着させる方法としては特に制限はない。例えば、液体の炭素源または炭素源を含む溶液を用いて炭素源を吸着させる場合には、球状酸化タンタルメソ多孔体粒子が極めて吸着特性に優れたものであるため、球状酸化タンタルメソ多孔体粒子に所定量の液体または溶液を添加し、室温で外部から軽く振動を加えるだけで、細孔内に液体または溶液が含浸し、炭素源を細孔内に吸着させることができる。また、球状酸化タンタルメソ多孔体粒子を密閉可能な容器内に入れ、容器内を排気した後、容器に液体の炭素源または炭素源を含む溶液の蒸気を導入することにより、球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の細孔内に炭素源を吸着させることも可能である。なお、いずれの方法においても、液体の炭素源または炭素源を含む溶液の量としては、球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の全ての細孔が液体または溶液で満たされる量が好ましい。
このようにして炭素源である有機物を球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の細孔内に吸着させた後、有機物を重合させる。例えば、有機物が(1)ポリマー前駆体、(2)炭化水素を含む水溶液と酸との混合物、(4)2液硬化型のポリマー前駆体の混合物のいずれかである場合には、細孔内に有機物を吸着させた球状酸化タンタル多孔体粒子を所定温度で所定時間加熱することにより有機物を重合させる。このような有機物の重合における最適な温度および時間は、有機物の種類により異なるが、通常、重合温度は50〜400℃であり、重合時間は5分〜48時間である。
<第五の工程>
第五の工程では、第四の工程で得られた酸化タンタルメソ多孔体/炭素源複合粒子を加熱して前記酸化タンタルメソ多孔体粒子を結晶化させるとともに前記炭素源を炭化させ、結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子中に炭素が導入された結晶化多孔体前駆体粒子を形成させる。酸化タンタルメソ多孔体粒子を結晶化させることにより球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の触媒活性が向上する。
本発明の結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の製造方法における加熱温度は700〜1000℃である。加熱温度が前記下限未満になると酸化タンタルが十分に結晶化せず、他方、前記上限を超えると酸化タンタルは結晶化されるが、結晶化した粒子が成長して炭素源が細孔内から除去されるため、細孔が閉塞する。また、より安定した結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子を得るという観点から、加熱温度としては700〜900℃が好ましい。なお、この加熱温度を変化させることによって一次粒子径、細孔径、比表面積および細孔容量を変化させることが可能である。
加熱時間は30分〜6時間である。加熱時間が前記下限より短くなると酸化タンタルが十分に結晶化せず、他方、前記上限を超えると酸化タンタルは結晶化されるが、炭素源が細孔内から除去されるため、細孔が閉塞する。また、より安定した結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子を得るという観点から、加熱時間としては1〜3時間が好ましい。
また、このような加熱処理は非酸化雰囲気下(例えば、不活性な雰囲気中または真空中など)で実施することが好ましい。これにより細孔構造を維持したまま、より安定して酸化タンタルを結晶化させることが可能となる。一方、酸素を含む雰囲気下で前記加熱処理を行なうと、炭素が焼成されて細孔内から除去され、細孔が閉塞する傾向にある。
<第六の工程>
第六の工程では、第五の工程で得られた結晶化多孔体前駆体粒子中の炭素を除去してメソ細孔を形成させる。これにより、本発明の結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子が得られる。
結晶化多孔体前駆体粒子から炭素を除去する方法としては、焼成による方法が挙げられる。焼成温度としては300〜1000℃が好ましく、400〜700℃がより好ましい。焼成温度が前記下限未満になると炭素が十分に除去されずに細孔内に残存し、結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の触媒活性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると酸化タンタル粒子が成長し、細孔が閉塞する傾向にある。また、焼成時間としては30分間以上が好ましく、1時間以上がより好ましい。焼成時間が前記下限未満になると炭素が十分に除去されずに細孔内に残存し、結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の触媒活性が低下する傾向にある。焼成時間の上限としては特に制限はないが、経済的な面から10時間以下が好ましい。
また、このような焼成は、空気などの酸素を含有するガス雰囲気下で実施することが好ましい。これにより炭素を容易に除去することができる。一方、不活性ガス雰囲気下で焼成を行なうと、炭素が除去されにくい傾向にある。
上述したように、本発明にかかる第四〜第六の工程を経て得られる結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子は、紫外光応答性を示すものであり、従来の酸化タンタルメソ多孔体粒子や酸化タンタル微粒子に比べて十分に高い触媒活性を有するものであるが、窒素を含有させることによって可視光に対しても応答性を示し、高い触媒活性を有するものとなる。
本発明の結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子に窒素原子を含有させる方法としては、より安定して窒素原子を含有する結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子(以下、「窒素含有結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子」という。)を製造できるという観点から、以下のような本発明の窒素含有結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の製造方法により製造することが好ましい。
すなわち、本発明の窒素含有結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の製造方法は、前記第六の工程で得られた前記結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子に、窒素源を含有する雰囲気中で加熱処理を施して、窒素原子を含有する結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子を得る第七の工程を含む方法である。
第七の工程で用いられる窒素源である窒素化合物としては、結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子に窒素原子を導入できるものであれば特に制限はなく、例えば、アンモニア、尿素、チオ尿素、シアヌル酸、メラニンなどが挙げられる。窒素化合物が気体の場合、加熱処理雰囲気は気相であり、窒素化合物の濃度としては、0.5〜100体積%が好ましく、20〜100体積%がより好ましい。この場合の希釈ガスとしては、アルゴン、窒素、ヘリウムなどの非酸化性ガスが挙げられる。また、窒素化合物が固体の場合、窒素化合物の濃度としては、1〜300質量%が好ましく、25〜150質量%がより好ましい。
このような窒素源を含有する雰囲気中で行う加熱処理の条件としては、得られる窒素含有結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の窒素含有量が1.0〜49.9原子%(好ましくは、2.0〜30.0原子%)となる条件であれば特に制限はなく、例えば、加熱温度としては450〜800℃が好ましく、500〜750℃がより好ましい。また、加熱時間としては0.5〜24時間が好ましく、1〜8時間がより好ましい。加熱温度または加熱時間が前記下限未満になると、結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子に窒素原子が十分に導入されず、可視光応答性が発現しない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、窒素原子が導入されすぎて窒化タンタルが生成する傾向にある。
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
オクタデシルアミン1.65g(6.15mmol)、タンタルエトキシド5.0g(12.3mmol)、メタノール1.5gを混合し、室温で完全に溶解するまで攪拌して界面活性剤/タンタル原料混合溶液を調製した。また、水/メタノール/エチレングリコール混合溶液1000g(30/50/20=w/w/w)を恒温水槽中で25℃に保って攪拌した。その後、この水/メタノール/エチレングリコール混合溶液に前記界面活性剤/タンタル原料混合溶液を添加したところ、直ちに粒子の析出が見られ,溶液が白濁した。この溶液を約5時間攪拌した後、一晩静置して酸化タンタル/界面活性剤複合粒子を含有する溶液を得た。
この複合粒子をろ過により回収した後、テフロン(登録商標)製の密閉容器に入れ、水25mlを添加して分散させた。この分散液を室温で1日間、80℃で1日間、100℃で1日間、180℃で7日間放置することにより水熱処理を行い、多孔体前駆体粒子を含有する分散液を得た。この分散液を放冷後にろ過し、回収した多孔体前駆体粒子を水/アルコール溶液に再分散させた。この操作を2回繰り返した後、得られた多孔体前駆体粒子を45℃で3日間乾燥させた。
この多孔体前駆体粒子1gをエタノール100mlに分散させ、濃塩酸1mlを添加した。この分散液を60℃で3時間撹拌して多孔体前駆体粒子の細孔内の界面活性剤を除去した。その後、ろ過により酸化タンタル多孔体粒子を回収し、45℃で3日間乾燥させた。
(実施例2)
前記水/メタノール/エチレングリコール混合溶液(30/50/20=w/w/w)の代わりに水/メタノール/エチレングリコール混合溶液1000g(30/40/30=w/w/w)を用いた以外は実施例1と同様にして酸化タンタル多孔体粒子を得た。
(実施例3)
前記水/メタノール/エチレングリコール混合溶液(30/50/20=w/w/w)の代わりに水/メタノール/エチレングリコール混合溶液1000g(30/60/10=w/w/w)を用いた以外は実施例1と同様にして酸化タンタル多孔体粒子を得た。
(実施例4)
前記水/メタノール/エチレングリコール混合溶液(30/50/20=w/w/w)の代わりに水/エタノール/エチレングリコール混合溶液1000g(30/50/20=w/w/w)を用いた以外は実施例1と同様にして酸化タンタル多孔体粒子を得た。
(実施例5)
前記水/メタノール/エチレングリコール混合溶液(30/50/20=w/w/w)の代わりに水/メタノール/n−ブタノール混合溶液1000g(30/50/20=w/w/w)を用いた以外は実施例1と同様にして酸化タンタル多孔体粒子を得た。
(実施例6)
前記水/メタノール/エチレングリコール混合溶液(30/50/20=w/w/w)の代わりに水/メタノール/i−ブタノール混合溶液1000g(30/50/20=w/w/w)を用いた以外は実施例1と同様にして酸化タンタル多孔体粒子を得た。
(実施例7)
前記水/メタノール/エチレングリコール混合溶液(30/50/20=w/w/w)の代わりに水/メタノール/グリセリン混合溶液1000g(30/50/20=w/w/w)を用いた以外は実施例1と同様にして酸化タンタル多孔体粒子を得た。
(実施例8)
オクタデシルアミンの代わりにテトラデシルアミン1.31g(6.15mmol)を用いた以外は実施例1と同様にして酸化タンタル多孔体粒子を得た。
(実施例9)
オクタデシルアミンの量を2.2g(8.2mmol)に変更した以外は、実施例1と同様にして酸化タンタル多孔体粒子を得た。
(比較例1)
Chem.Mater.、1996年、第8巻、874−881頁に記載の方法に準じて酸化タンタル多孔体粒子を調製した。すなわち、オクタデシルアミン1.32g(6.15mmol)、タンタルエトキシド5.0g(12.3mmol)、メタノール1gを混合し、室温で完全に溶解するまで攪拌して界面活性剤/タンタル原料混合溶液を調製した。この混合溶液に水25mlを一括で添加したところ、直ちに粒子の析出が見られ、溶液が白濁した。この溶液を室温で5時間攪拌した後、一晩静置して酸化タンタル/界面活性剤複合粒子を含有する溶液を得た。
この複合体粒子を含有する溶液をテフロン(登録商標)製の密閉容器へ移し、80℃で1日間、100℃で1日間、180℃で7日間放置することにより水熱合成処理を行い、多孔体前駆体粒子を含有する溶液を得た。この溶液を放冷後にろ過し、回収した多孔体前駆体粒子を水/アルコール溶液に再分散させた。この操作を2回繰り返した後、得られた多孔体前駆体粒子を45℃で3日間乾燥させた。
この多孔体前駆体粒子1gをエタノール100mlに分散させ、濃塩酸1mlを添加した。この分散液を60℃で3時間撹拌して多孔体前駆体粒子の細孔内の界面活性剤を除去した。その後、ろ過により酸化タンタル多孔体粒子を回収し、45℃で3日間乾燥させた。
(比較例2)
Chem.Mater.、2001年、第13巻、1200−1206頁に記載の方法に準じて酸化タンタル多孔体粒子を調製した。すなわち、オクタデシルアミン1.32g(6.15mmol)、タンタルエトキシド5.0g(12.3mmol)、メタノール1gを混合し、室温で完全に溶解するまで攪拌して界面活性剤/タンタル原料混合溶液を調製した。この混合溶液に水をスプレーにより加えたところ、直ちに粒子の析出が見られた。この溶液を室温で5時間攪拌した後、一晩静置して酸化タンタル/界面活性剤複合粒子を含有する溶液を得た。
この複合粒子をろ過により回収した後、テフロン(登録商標)製の密閉容器に入れ、水25mlを添加して分散させた。この分散液を室温で1日間、80℃で1日間、100℃で1日間、180℃で7日間放置することにより水熱合成処理を行い、多孔体前駆体粒子を含有する分散液を得た。この分散液を放冷後にろ過し、回収した多孔体前駆体粒子を水/アルコール溶液に再分散させた。この操作を2回繰り返した後、得られた多孔体前駆体粒子を45℃で3日間乾燥させた。
この多孔体前駆体粒子1gをエタノール100mlに分散させ、濃塩酸1mlを添加した。この分散液を60℃で3時間撹拌して多孔体前駆体粒子の細孔内の界面活性剤を除去した。その後、ろ過により酸化タンタル多孔体粒子を回収し、45℃で3日間乾燥させた。
(比較例3)
Chem.Lett.、2005年、第34巻、第3号、394−395頁に記載の方法に準じて酸化タンタル多孔体粒子を調製した。すなわち、トリブロック共重合体界面活性剤P123(商品名、アルドリッチ社製、化学式:HO(CHCHO)20(CHCH(CH)O)70(CHCHO)20H)2gにエタノール20gを加え、室温で完全に溶解するまで攪拌した。この溶液に塩化タンタル4.3g(12mmol)を添加し、10分間激しく攪拌した。その後、水0.22ml(12mmol)を添加して1時間以上攪拌した。得られた反応溶液をシャーレに移し、40℃で7日間熟成を行なってゲル化させた。このゲル化物を、大気下、500℃で5時間焼成することにより鋳型を除去した後、乳鉢で粉砕して酸化タンタル多孔体粒子を得た。
(比較例4)
前記水/メタノール/エチレングリコール混合溶液(30/50/20=w/w/w)の代わりに水1000gを用いた以外は実施例1と同様にして酸化タンタル多孔体粒子を得た。
(比較例5)
前記水/メタノール/エチレングリコール混合溶液(30/50/20=w/w/w)の代わりに水/メタノール混合溶液1000g(50/50=w/w)を用いた以外は実施例1と同様にして酸化タンタル多孔体粒子を得た。
(比較例6)
前記水/メタノール/エチレングリコール混合溶液(30/50/20=w/w/w)の代わりに水/エチレングリコール混合溶液1000g(80/20=w/w)を用いた以外は実施例1と同様にして酸化タンタル多孔体粒子を得た。
(比較例7)
前記水/メタノール/エチレングリコール混合溶液(30/50/20=w/w/w)の代わりにメタノール/エチレングリコール混合溶液1000g(80/20=w/w)を用いた以外は実施例1と同様にして酸化タンタル多孔体粒子の調製を試みたが、粒子が全く析出しなかった。
(比較例8)
水/メタノール混合溶液1500g(60/40=w/w)に1mol/Lの水酸化ナトリウム溶液4.4gを添加して恒温水槽中で25℃に保って攪拌した。その後、この混合溶液にタンタルエトキシド5.0g(12.3mmol)を添加したところ、直ちに粒子の析出が見られ、溶液が白濁した。この溶液を約5時間撹拌した後、一晩静置して酸化タンタル/界面活性剤複合粒子を含有する溶液を得た。その後、実施例1と同様にして酸化タンタル粒子を得た。
(比較例9)
市販の酸化タンタル粉末(和光純薬工業(株)製)を入手した。
<特性評価>
実施例1〜9および比較例1〜6で得られた酸化タンタル多孔体粒子、比較例8で得られた酸化タンタル粒子、並びに比較例9の市販の酸化タンタル粉末(以下、これらをまとめて「酸化タンタル粒子」という。)の各特性を以下の方法により測定し、評価した。
(走査型電子顕微鏡(SEM)写真)
酸化タンタル粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を走査型電子顕微鏡((株)明石製作所製「SIGMA−V」)を用いて加速電圧19eVで撮影した。なお、SEM写真を撮影するにあたっては、粒子の形状を明確にするために、予め、粒子を水/エタノール混合溶媒に分散し、得られた分散液をSEM用Cu板に滴下して乾燥した後、Auコーティングを行い、粒子表面にAuを被覆した。図1A〜1Bおよび図2A〜2Fには、それぞれ実施例1〜2および比較例1〜6で得られた酸化タンタル多孔体粒子のSEM写真を示す。また、表1には、SEM写真により観察した実施例1〜9、比較例1〜6および比較例8〜9で得られた酸化タンタル粒子の形状を示す。
(X線回折パターン)
酸化タンタル粒子のX線回折パターンを粉末X線回折装置((株)リガク製「RINT−2200」)を用いて測定した。図3には、実施例1〜2、実施例4および実施例7〜8で得られた酸化タンタル多孔体粒子のX線回折パターンを示す。
(透過型電子顕微鏡(TEM)写真)
酸化タンタル粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を透過型電子顕微鏡(日本分光(株)製「Joel−200CX」)を用いて加速電圧200kVで撮影した。図4には、実施例2で得られた酸化タンタル多孔体粒子のTEM写真を示す。
(窒素吸着等温線)
自動比表面積/細孔分布測定装置(日本ベル(株)製「Belsorp−mini」)を用い、液体窒素温度(−196℃)条件で定容量式ガス吸着法により酸化タンタル粒子の窒素吸着等温線を求めた。なお、酸化タンタル粒子には測定前に120℃で2時間の真空脱気処理を施した。図5には、実施例1〜2および実施例8で得られた酸化タンタル多孔体粒子の窒素吸着等温線を示す。
(細孔径分布曲線、中心細孔直径)
前記窒素吸着等温線からBJH法により酸化タンタル多孔体粒子の細孔径分布曲線を求めた。図6には実施例1〜2および実施例8で得られた酸化タンタル多孔体粒子の細孔径分布曲線を示す。
また、前記細孔径分布曲線から酸化タンタル多孔体粒子の中心細孔直径を算出した。表1には、実施例1〜9および比較例1〜6で得られた酸化タンタル多孔体粒子の中心細孔直径を示す。なお、窒素吸着測定の結果、比較例8で得られた酸化タンタル粒子には細孔構造はみられなかった。
(比表面積)
前記窒素吸着等温線からBET法により酸化タンタル粒子の比表面積を算出した。表1には、実施例1〜9、比較例1〜6および比較例8で得られた酸化タンタル粒子の比表面積を示す。
(細孔容量)
前記窒素吸着等温線から酸化タンタル多孔体粒子の細孔容量を算出した。表1には、実施例1〜9および比較例1〜6で得られた酸化タンタル多孔体粒子の細孔容量を示す。
(粒子径分布、平均粒子径、アスペクト比)
酸化タンタル粒子のSEM写真において無作為に抽出した粒子の最大径(長径)と最小径(短径)を測定し、その平均値をその粒子の粒子径とした。この粒子径測定を無作為に抽出した50〜200個の粒子について行い、粒子径分布を求めた。また、これらの算術平均値を平均粒子径として以下の基準で判定した。
A:平均粒子径が500nm以下。
B:平均粒子径が500nmより大きい。
図7〜8には、実施例1および比較例2で得られた酸化タンタル多孔体粒子の粒子径分布を示す。また、表1には、実施例1〜9、比較例1〜6および比較例8〜9で得られた酸化タンタル粒子の平均粒子径の判定結果を示す(実施例1〜9については平均粒子径の値も示す)。さらに、実施例1〜9および比較例1〜2で得られた酸化タンタル多孔体粒子について、平均粒子径の±45%の範囲内の粒子径を有する粒子数の全粒子数に対する割合を示す。
また、前記長径と短径から各粒子のアスペクト比(長径/短径)を算出し、これらの平均値を求めた。表1には、実施例1〜9、比較例1〜6および比較例8〜9で得られた酸化タンタル粒子のアスペクト比の平均値を示す。
図1A〜1Bに示した結果から明らかなように、タンタル原料およびアルキルアミンを含有する溶液と、水と本発明にかかる第一のアルコールと第二のアルコールとを含有する水/アルコール混合溶媒とを混合した場合(実施例1〜2)には、粒子径が小さく、球状の酸化タンタル多孔体粒子が得られることが確認された。特に、実施例1で得られた酸化タンタル多孔体粒子は独立した球状粒子であった。また、図1Aおよび図7に示した結果から明らかなように、実施例1で得られた酸化タンタル多孔体粒子の粒子径は比較的均一であることが確認された。
一方、図2A〜2Cに示した結果から明らかなように、タンタル原料およびアルキルアミンを含有する溶液に水を一括添加した場合(比較例1)およびトリブロック共重合体界面活性剤を用いた場合(比較例3)には、実施例1〜2で得られた球状酸化タンタル多孔体粒子に比べて酸化タンタル多孔体粒子の粒子径が大きくなり(1μm以上)、形状も角張った不定形となることが分かった。また、タンタル原料およびアルキルアミンを含有する溶液に水をスプレーにより添加した場合(比較例2)には、様々な粒子径および形状の酸化タンタル多孔体粒子が混在していることが分かった。特に、粒子径はその分布が幅広く、不均一であることが分かった(図8参照)。さらに、粒子径が小さい粒子も生成したが、これらは連結していることが分かった。これは、比較例2においては多孔体前駆体粒子の濃度が高いため、大きな粒子が生成しやすく、また、生成した粒子同士が連結(凝集)したものと推察される。
また、図2D〜2Fに示した結果から明らかなように、本発明にかかる水/アルコール混合溶媒の代わりに、水のみを用いた場合(比較例4)、水と第一のアルコールとの混合溶媒を用いた場合(比較例5)および第一のアルコールと第二のアルコールとの混合溶媒を用いた場合(比較例6)にも、実施例1〜2で得られた球状酸化タンタル多孔体粒子に比べて酸化タンタル多孔体粒子の粒子径が大きくなり、形状も不定形となることが分かった。
図3に示した結果から明らかなように、タンタル原料およびアルキルアミンを含有する溶液と、水と本発明にかかる第一のアルコールと第二のアルコールとを含有する水/アルコール混合溶媒とを混合した場合(実施例1〜2、実施例4および実施例7〜8)には、X線回折パターンにおいて2θ=1.5〜2.5°付近にピークが観察されたことから、得られた酸化タンタル多孔体粒子はメソ細孔構造を有するものであることが確認された。また、このようなメソ細孔構造は、実施例2で得られた酸化タンタル多孔体粒子のTEM写真においても観察された(図4参照)。
また、図5に示した結果から明らかなように、タンタル原料およびアルキルアミンを含有する溶液と、水と本発明にかかる第一のアルコールと第二のアルコールとを含有する水/アルコール混合溶媒とを混合した場合(実施例1〜2および実施例8)には、窒素吸着等温線がIV型であることから、得られた酸化タンタル多孔体粒子はメソ多孔体であることが確認された。
さらに、図6に示した結果から明らかなように、実施例1〜2および実施例8で得られた酸化タンタル多孔体粒子は1〜5nmのメソ細孔を有するものであることが確認された。また、界面活性剤としてアルキル鎖が短いアルキルアミンを用いた場合(実施例8)には、アルキル鎖が長いアルキルアミンを用いた場合(実施例1〜2)に比べて細孔径が小さくなることが確認された(表1参照)。
表1に示した結果から明らかなように、タンタル原料およびアルキルアミンを含有する溶液と、水と本発明にかかる第一のアルコールと第二のアルコールとを含有する水/アルコール混合溶媒とを混合した場合(実施例1〜9)には、平均粒子径が500nm以下、アスペクト比の平均値が1.04〜1.12の球状の酸化タンタル多孔体粒子が得られることが確認された。一方、タンタル原料およびアルキルアミンを含有する溶液に水を一括添加した場合(比較例1)、タンタル原料およびアルキルアミンを含有する溶液に水をスプレーにより添加した場合(比較例2)、トリブロック共重合体界面活性剤を用いた場合(比較例3)、並びに本発明にかかる水/アルコール混合溶媒の代わりに、水のみを用いた場合(比較例4)、水と第一のアルコールとの混合溶媒を用いた場合(比較例5)および第一のアルコールと第二のアルコールとの混合溶媒を用いた場合(比較例6)には、得られる酸化タンタル多孔体粒子の平均粒子径は500nmより大きくなり、アスペクト比の平均値は1.26〜2.01であることが分かった。
また、実施例1〜9で得られた球状酸化タンタル多孔体粒子においては、平均粒子径の±45%の範囲内の粒子径を有する粒子数の割合が85〜92%であり、粒子径分布が狭く、粒子径が均一であることが確認された。一方、比較例1〜2で得られた酸化タンタル多孔体粒子においては、前記割合が31〜58%であり、粒子径分布が広く、粒子径が不均一であることが分かった。
表1に示した中心細孔直径の値から、界面活性剤を用いた場合(実施例1〜9および比較例1〜6)には、溶媒の種類によらず、メソ細孔構造が形成されることが確認された。
以上の結果から明らかなように、反応溶媒として水と本発明にかかる第一のアルコールと第二のアルコールとの混合溶媒を用いることによって平均粒子径が小さく(500nm以下)、粒子径が均一であり、メソ細孔構造を有する球状の酸化タンタル多孔体粒子が得られることが確認された。
(触媒性能)
酸化タンタル粒子0.3gにイオン交換水12mlを添加し、室温で1分間攪拌した。次に、Pt担持量が0.6質量%となるように、白金−Pソルト硝酸溶液(4.531質量%)を0.0397g(36μl)添加し、室温で1時間攪拌した。得られた分散液を1時間静置した後、上澄み液を除去し、固形物を50℃で30分間、45℃で一晩乾燥させた。その後、さらに40℃で24時間真空乾燥してPt担持酸化タンタル粒子を得た。
8mlの石英試験管に、20体積%のメタノール水溶液4mlと、前記Pt担持酸化タンタル粒子4mgを入れ、混合した。この分散液に窒素ガスを15分間通気して飽和させた後、石英試験管をゴム栓で密閉した。分散液をスターラーで攪拌しながら、メリーゴーラウンド方式の照射装置を用い、Xeランプ(ウシオ電機(株)製)を光源とする光を60時間照射した。光照射後、石英試験管内の気相部分のガスをガスクロマトグラフィで分析した。
図9には、実施例1〜3、比較例1〜3および比較例8〜9で得られた酸化タンタル粒子にそれぞれPtを担持させた触媒の触媒性能を示す。なお、図9には、対照実験として、20体積%のメタノール水溶液のみに光照射した結果も示した。
図9に示した結果から明らかなように、対照実験においては、酸化タンタルが存在しないため、ほとんど水素は発生しなかった。一方、本発明の球状酸化タンタルメソ多孔体粒子(実施例1〜3)を用いた場合には、水素発生量が非常に多く(4.1〜4.6μmol)、優れた触媒活性を示すことが確認された。他方、不定形の酸化タンタル多孔体粒子(比較例1〜3)を用いた場合には、比較例9の市販の酸化タンタル(水素発生量:1.1μmol)に比べて水素発生量は増大した(2.5〜2.8μmol)が、平均粒子径が500nm以下の細孔のない酸化タンタル粒子(比較例8)を用いた場合(水素発生量:3.0μmol)とほぼ同等であり、さらに、実施例1〜2で得られた球状酸化タンタルメソ多孔体粒子と比較すると、比表面積や中心細孔直径がほぼ同等であるにもかかわらず、水素発生量は少なく、触媒活性に劣っていることが分かった。
(実施例10)
テフロン(登録商標)製の容器に、実施例1で得られた酸化タンタル多孔体粒子1.0gと、この酸化タンタル多孔体粒子の細孔容量の1.5倍量のフルフリルアルコール0.66gを入れて均一に混合した。この混合物を150℃で24時間放置してフルフリルアルコールを重合させることにより、酸化タンタル多孔体粒子の細孔内にポリフルフリルアルコールが導入された酸化タンタル多孔体/ポリフルフリルアルコール複合粒子を得た。
この酸化タンタル多孔体/ポリフルフリルアルコール複合粒子0.3gを窒素雰囲気下、250℃で1時間、次いで700℃で1時間加熱することにより、酸化タンタルを結晶化させるとともにポリフルフリルアルコールを炭素化して結晶化多孔体前駆体粒子を得た。この結晶化多孔体前駆体粒子を大気下、550℃で5時間焼成することにより結晶化多孔体前駆体粒子の細孔内の炭素を除去して結晶化酸化タンタル多孔体粒子を得た。
(実施例11)
実施例10と同様にして得た酸化タンタル多孔体/ポリフルフリルアルコール複合粒子を窒素雰囲気下、250℃で1時間、次いで750℃で1時間加熱して酸化タンタルを結晶化させるとともにポリフルフリルアルコールを炭素化した以外は実施例10と同様にして結晶化酸化タンタル多孔体粒子を得た。
(実施例12)
実施例10と同様にして得た酸化タンタル多孔体/ポリフルフリルアルコール複合粒子を窒素雰囲気下、250℃で1時間、次いで800℃で1時間加熱して酸化タンタルを結晶化させるとともにポリフルフリルアルコールを炭素化した以外は実施例10と同様にして結晶化酸化タンタル多孔体粒子を得た。
(実施例13)
実施例10と同様にして得た酸化タンタル多孔体/ポリフルフリルアルコール複合粒子を窒素雰囲気下、250℃で1時間、次いで850℃で1時間加熱して酸化タンタルを結晶化させるとともにポリフルフリルアルコールを炭素化した以外は実施例10と同様にして結晶化酸化タンタル多孔体粒子を得た。
(実施例14)
実施例10と同様にして得た酸化タンタル多孔体/ポリフルフリルアルコール複合粒子を窒素雰囲気下、250℃で1時間、次いで900℃で1時間加熱して酸化タンタルを結晶化させるとともにポリフルフリルアルコールを炭素化した以外は実施例10と同様にして結晶化酸化タンタル多孔体粒子を得た。
(比較例10)
実施例10と同様にして得た酸化タンタル多孔体/ポリフルフリルアルコール複合粒子を窒素雰囲気下、900℃で10時間加熱して酸化タンタルを結晶化させるとともにポリフルフリルアルコールを炭素化した以外は実施例10と同様にして結晶化酸化タンタル粒子を得た。
(比較例11)
実施例1で得られた酸化タンタル多孔体粒子の代わりに比較例1で得られた酸化タンタル多孔体粒子1.0gを用いた以外は実施例12と同様にして結晶化酸化タンタル多孔体粒子を得た。
(比較例12)
実施例1で得られた酸化タンタル多孔体粒子の代わりに比較例2で得られた酸化タンタル多孔体粒子1.0gを用いた以外は実施例12と同様にして結晶化酸化タンタル多孔体粒子を得た。
(比較例13)
Chem.Mater.、2008年、第20巻、5361−5367頁に記載の方法に準じて結晶化酸化タンタル多孔体粒子を調製した。すなわち、比較例3で得られた酸化タンタル多孔体粒子1gとビス−トリメチルシロキシ−メチルシラン(BTMS)3gを混合し、アルゴン雰囲気下、70℃で12時間反応させた。反応溶液をろ過した後、残渣を45℃で一晩乾燥させた後、200℃で1時間真空乾燥させることにより未反応のBTMSを除去して酸化タンタル多孔体/シリカ複合粒子を得た。
この酸化タンタル多孔体/シリカ複合粒子を大気下、860℃で1時間加熱することにより酸化タンタルを結晶化して結晶化酸化タンタル多孔体/シリカ複合粒子を得た。この結晶化酸化タンタル多孔体/シリカ複合粒子0.4gを1mol/Lの水酸化ナトリウム溶液20mlに分散させ、70℃で1時間攪拌することにより複合粒子中のシリカを抽出した。この操作をシリカが検出されなくなるまで繰り返した後、ろ過により結晶化酸化タンタル多孔体粒子を回収し、45℃で3日間乾燥させた。
(比較例14)
比較例8で得られた酸化タンタル粒子を大気下、900℃で2時間加熱することにより結晶化酸化タンタル粒子を得た。
<特性評価>
実施例10〜14および比較例11〜13で得られた結晶化酸化タンタル多孔体粒子、並びに比較例10および比較例14で得られた結晶化酸化タンタル粒子(以下、これらをまとめて「結晶化酸化タンタル粒子」という。)の各特性を以下の方法により測定し、評価した。
(走査型電子顕微鏡(SEM)写真)
結晶化酸化タンタル粒子のSEM写真を走査型電子顕微鏡((株)明石製作所製「SIGMA−V」)を用いて加速電圧19eVで撮影した。なお、この場合も、粒子の形状を明確にするために予め粒子表面にAuを被覆した。図10A〜10Bには、それぞれ実施例10および12で得られた結晶化酸化タンタル多孔体粒子のSEM写真を示す。また、表2には、SEM写真により観察した実施例10〜14および比較例10〜14で得られた結晶化酸化タンタル粒子の形状を示す。
(電界放出形走査電子顕微鏡(FE−SEM)写真)
結晶化酸化タンタル粒子の電界放出形走査電子顕微鏡(FE−SEM)写真を電界放出形走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ(株)製「S−5500」)を用いて加速電圧20kVで撮影した。図11A〜11Bには、それぞれ実施例11および14で得られた結晶化酸化タンタル多孔体粒子のFE−SEM写真を示す。
(X線回折パターン)
結晶化酸化タンタル粒子のX線回折パターンを粉末X線回折装置((株)リガク製「RINT−2200」)を用いて測定した。図12には、実施例10〜14で得られた結晶化酸化タンタル多孔体粒子のX線回折パターンを示す。なお、図12には、実施例1で得られた酸化タンタル多孔体粒子のX線回折パターンも示した。
(窒素吸着等温線)
自動比表面積/細孔分布測定装置(日本ベル(株)製「Belsorp−mini」)を用い、液体窒素温度(−196℃)条件で定容量式ガス吸着法により結晶化酸化タンタル粒子の窒素吸着等温線を求めた。なお、結晶化酸化タンタル粒子には測定前に120℃で2時間の真空脱気処理を施した。図13には、実施例10〜14で得られた結晶化酸化タンタル多孔体粒子の窒素吸着等温線を示す。
(中心細孔直径)
前記窒素吸着等温線からBJH法により結晶化酸化タンタル多孔体粒子の細孔径分布曲線を求め、この細孔径分布曲線から結晶化酸化タンタル多孔体粒子の中心細孔直径を算出した。表2には、実施例10〜14および比較例11〜13で得られた結晶化酸化タンタル多孔体粒子の中心細孔直径を示す。なお、窒素吸着測定の結果、比較例10、14で得られた結晶化酸化タンタル粒子には細孔構造はみられなかった。
(比表面積)
前記窒素吸着等温線からBET法により結晶化酸化タンタル粒子の比表面積を算出した。表2には、実施例10〜14および比較例10〜14で得られた結晶化酸化タンタル粒子の比表面積を示す。
(細孔容量)
前記窒素吸着等温線から結晶化酸化タンタル多孔体粒子の細孔容量を算出した。表2には、実施例10〜14および比較例11〜13で得られた結晶化酸化タンタル多孔体粒子の細孔容量を示す。
(平均一次粒子径)
結晶化酸化タンタル粒子のFE−SEM写真において無作為に抽出した一次粒子の最大径と最小径を測定し、その平均値をその一次粒子の粒子径とした。この一次粒子径測定を無作為に抽出した50個の一次粒子について行い、これらの算術平均値を平均一次粒子径とした。表2には、実施例10〜14で得られた結晶化酸化タンタル多孔体粒子の平均一次粒子径を示す。
(粒子径分布、平均二次粒子径、アスペクト比)
結晶化酸化タンタル粒子のSEM写真において無作為に抽出した二次粒子の最大径(長径)と最小径(短径)を測定し、その平均値をその二次粒子の粒子径とした。この二次粒子径測定を無作為に抽出した50個の二次粒子について行い、二次粒子径分布を求めた。また、これらの算術平均値を平均二次粒子径として以下の基準で判定した。
A:平均二次粒子径が500nm以下。
B:平均二次粒子径が500nmより大きい。
図14〜15には、実施例12および比較例12で得られた結晶化酸化タンタル多孔体粒子の二次粒子径分布を示す。また、表2には、実施例10〜14および比較例10〜14で得られた結晶化酸化タンタル粒子の平均二次粒子径の判定結果を示す(実施例10〜14については平均粒子径の値も示す)。さらに、実施例10〜14、比較例10および比較例12で得られた結晶化酸化タンタル粒子について、平均二次粒子径の±45%の範囲内の二次粒子径を有する粒子数の全粒子数に対する割合を示す。
また、前記長径と短径から各二次粒子のアスペクト比(長径/短径)を算出し、これらの平均値を求めた。表2には、実施例10〜14および比較例10〜14で得られた結晶化酸化タンタル粒子のアスペクト比の平均値を示す。
図10A〜10Bに示した結果から明らかなように、実施例1で得られた球状酸化タンタルメソ多孔体粒子を、細孔を炭素源で保護しながら加熱した場合(実施例10および実施例12)には、得られた結晶化酸化タンタル多孔体粒子は球状を保持していることが確認された。また、得られた結晶化酸化タンタル多孔体粒子の粒子径は、実施例1で得られた球状酸化タンタル多孔体粒子に比べて小さくなることが確認された。
図11A〜11Bに示した結果から明らかなように、実施例1で得られた球状酸化タンタルメソ多孔体粒子を、細孔を炭素源で保護しながら加熱した場合(実施例11および実施例14)には、一次粒子が凝集した球状の二次粒子が形成されることが確認された。また、加熱温度が高いほど一次粒子径が大きくなることが確認された(表2参照)。
図12に示した結果から明らかなように、実施例1で得られた球状酸化タンタルメソ多孔体粒子は、X線回折パターンにおいて2θ=20〜60°付近にピークが観察されず、アモルファス粒子であることが確認された。一方、このアモルファスの球状酸化タンタルメソ多孔体粒子を、細孔を炭素源で保護しながら所定の温度および時間で加熱した場合(実施例10〜14)には、2θ=20〜60°付近に酸化タンタル結晶に由来のピーク(図中の*印)が観察され、球状酸化タンタル多孔体粒子は結晶化されたことが確認された。また、加熱温度が高いほど酸化タンタル結晶に由来のピークが高くなり、結晶化が促進されることが確認された。
図13に示した結果から明らかなように、実施例10〜14で得られた結晶化球状酸化タンタル多孔体粒子は、窒素吸着等温線がIV型であることから、メソ多孔体であることが確認された。また、加熱温度が高いほど、より低い相対圧P/Pで窒素吸着量が急激に増大することが確認された。このことから、加熱温度が高いほど中心細孔直径が大きくなることが分かった(表2参照)。
図14〜15に示した結果から明らかなように、実施例1で得られたアモルファスの球状酸化タンタルメソ多孔体粒子を、細孔を炭素源で保護しながら所定の温度および時間で加熱した場合(実施例12)には、粒子径分布が狭く(平均粒子径の±45%の範囲内の粒子径を有する粒子数の全粒子数に対する割合:86%)、粒子径が均一な結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子が得られることが確認された。一方、比較例2で得られたアモルファスの酸化タンタルメソ多孔体粒子を実施例12と同様の方法で加熱した場合(比較例12)には、粒子径分布が広く(平均粒子径の±45%の範囲内の粒子径を有する粒子数の全粒子数に対する割合:64%)、粒子径が不均一な結晶化酸化タンタルメソ多孔体粒子が得られることが分かった。
表2に示した結果から明らかなように、実施例1で得られたアモルファスの球状酸化タンタルメソ多孔体粒子を、細孔を炭素源で保護しながら所定の温度および時間で加熱した場合(実施例10〜14)には、平均粒子径が500nm以下、アスペクト比の平均値が1.09〜1.15の球状の結晶化酸化タンタル多孔体粒子が得られることが確認された。一方、細孔を炭素源で保護しても900℃で長時間(10時間)加熱して結晶化させた場合(比較例10)には、細孔が閉塞することが分かった。
また、実施例10〜14で得られた結晶化球状酸化タンタル多孔体粒子においては、平均粒子径の±45%の範囲内の粒子径を有する粒子数の割合が83〜87%であり、粒子径分布が狭く、粒子径が均一であることが確認された。一方、比較例12で得られた結晶化酸化タンタル多孔体粒子においては、前記割合が64%であり、粒子径分布が広く、粒子径が不均一であることが分かった。
表2に示した実施例10〜16および比較例11〜12の結果から明らかなように、酸化タンタルメソ多孔体粒子を、細孔を炭素源で保護しながら本発明にかかる温度および時間で加熱することによって、細孔を閉塞させずに酸化タンタルメソ多孔体粒子を結晶化できることが分かった。
(触媒性能)
酸化タンタル粒子の代わりに結晶化酸化タンタル粒子0.3gを用いた以外は前記方法と同様にして触媒性能を評価した。図16には、実施例12、実施例14および比較例10〜14で得られた結晶化酸化タンタル粒子にそれぞれPtを担持させた触媒の触媒性能を示す。
図9および図16に示した結果から明らかなように、実施例1で得られたアモルファスの球状酸化タンタルメソ多孔体粒子を用いた場合と、それを細孔を炭素源で保護しながら所定の温度および時間で加熱して結晶化させた結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子(実施例12および実施例14)を用いた場合とを比較すると、酸化タンタルを結晶化することによって水素発生量が増大し(4.1μmol→6.9〜7.0μmol)、触媒活性が向上することが確認された。
一方、比較例1〜2で得られた不定形の酸化タンタルメソ多孔体粒子を本発明にかかる方法で結晶化させた結晶化酸化タンタルメソ多孔体粒子(比較例11〜12)を用いた場合には、水素発生量(それぞれ5.4μmolおよび4.3μmol)が少なく、触媒活性に劣るものであった。また、比較例3で得られた不定形の酸化タンタルメソ多孔体粒子を、細孔をシリカで保護しながら加熱して結晶化させた結晶化酸化タンタルメソ多孔体粒子(比較例13)を用いた場合には、水素発生量(2.6μmol)はさらに少なくなり、触媒活性は非常に低いものであった。さらに、実施例1で得られたアモルファスの球状酸化タンタルメソ多孔体粒子を、細孔を炭素源で保護しながら900℃で10時間加熱して結晶化させた結晶化酸化タンタル粒子(比較例10)、または比較例8で得られた酸化タンタル粒子を900℃で2時間加熱して結晶化させた結晶化酸化タンタル粒子(比較例14)を用いた場合には、これらの粒子に細孔が存在しないため、実施例12および実施例14で得られた結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子を用いた場合に比べて、水素発生量(それぞれ3.8μmolおよび4.1μmol)は少なく、触媒活性は劣るものであった。
(実施例15)
実施例11で得られた白色の結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子0.6gを反応器に入れ、アンモニアを400ml/分、アルゴンを200ml/分の流量で反応器に供給しながら、600℃で5時間加熱して黄色の粒子を得た。
(実施例16)
実施例11で得られた結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の代わりに実施例12で得られた白色の結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子0.6gを用いた以外は実施例15と同様にして黄色の粒子を得た。
(実施例17)
加熱温度を575℃に変更した以外は実施例15と同様にして黄色の粒子を得た。
(実施例18)
加熱温度を650℃に、加熱時間を2.5時間に変更した以外は実施例15と同様にして橙色の粒子を得た。
(実施例19)
加熱温度を700℃に変更した以外は実施例18と同様にして朱色の粒子を得た。
(比較例15)
実施例11で得られた結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の代わりに比較例12で得られた白色且つ不定形の結晶化酸化タンタルメソ多孔体粒子0.6gを用いた以外は実施例15と同様にして黄色の粒子を得た。
(比較例16)
実施例11で得られた結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の代わりに比較例13で得られた白色且つ不定形の結晶化酸化タンタルメソ多孔体粒子0.6gを用いた以外は実施例15と同様にして黄色の粒子を得た。
<特性評価>
実施例15〜19および比較例15〜16で得られた粒子について、前記方法と同様にして、SEMによる観察、窒素吸着法による中心細孔直径および細孔容量の測定を行なったところ、アンモニア処理の前後で変化はほとんど見られなかった。また、その他の特性について、以下の方法により測定し、評価した。
(窒素原子含有量)
X線光電子分光分析装置(アルバック・ファイ(株)製「Quantera SXM」)を用いてX線光電子分光(XPS)により粒子のXPSスペクトルを測定した。X線源としてモノクロ化されたAl−Kαを使用した。得られたXPSスペクトルにおいて、Shirley法によりバックグランド処理を行なった後、窒素の1s軌道のピーク面積P、タンタルの4P3/2軌道のピーク面積PTaおよび酸素の1s軌道のピーク面積Pを求めた。これらのピーク面積から次式により感度補正をして窒素原子含有量を求めた。
窒素原子含有量=α×P/(α×P+β×PTa+γ×P
なお、前記式中のα、β、γは、装置固有の相対感度係数であり、例えば、前記XPS装置におけるαは0.499である。
算出された窒素原子含有量について、粒子中の不純物を含めた全元素量の合計が100%となるように規格化した。表3には、実施例15〜19および比較例15〜16で得られた粒子の窒素原子含有量を示す。
(X線回折パターン)
粒子のX線回折パターンを粉末X線回折装置((株)リガク製「RINT−2200」)を用いて測定した。図17には、実施例17〜19で得られた粒子のX線回折パターンを示す。
表3に示した結果から明らかなように、結晶化酸化タンタルメソ多孔体粒子にアンモニア処理を施すことによって、平均二次粒子径や粒子形状にかかわらず、窒素原子が導入され、窒素原子を含有する粒子が得られることが確認された(実施例15〜19および比較例15〜16)。また、実施例15〜19で得られた粒子においては、アンモニア処理時の加熱温度が高くなるにつれて窒素原子含有量が増加し、700℃(実施例19)では窒素含有量は18.4%になることが分かった。
図12および図17に示した結果から明らかなように、窒素原子を4.3%(実施例17)または7.1%(実施例18)含有する粒子のX線回折パターンは、窒素原子を含まない結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子(実施例11)のX線回折パターンと変わらないものであった。また、窒素原子を18.4%含有する粒子(実施例19)のX線回折パターンは、窒素原子を含まない結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子(実施例11)のX線回折パターンと異なるものの、結晶化酸化タンタルに基づくX線回折ピークが見られた。したがって、これらの結果から、結晶化酸化タンタルメソ多孔体粒子にアンモニア処理を施すことによって得られる粒子は、窒素原子を含有する結晶化酸化タンタルメソ多孔体粒子(化学構造:Ta(5−x)−N、以下、「窒素含有結晶化酸化タンタルメソ多孔体粒子」という。)であると考えられる。なお、実施例19で得られた粒子のX線回折パターンにおいては、窒化タンタル(Ta)に相当するピークも見られた。
また、図17に示した結果から明らかなように、実施例17〜19で得られた窒素含有結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子のX線回折パターンにおける各ピークはブロードなピークであった。このことから、実施例17〜19で得られた窒素含有結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子はナノ粒子であることが分かった。
(メチルビオロゲン還元性能)
8mlの石英試験管に、0.05mMのメチルビオロゲン溶液(メタノール/トリエタノールアミン=5/1(体積比))4mlと、窒素含有結晶化酸化タンタルメソ多孔体粒子10mgを入れ、混合した。この分散液にアルゴンガスを15分間通気して飽和させた後、石英試験管をゴム栓で密閉した。分散液をスターラーで攪拌しながら、メリーゴーラウンド方式の照射装置を用い、Xeランプ(ウシオ電機(株)製)を光源とし、熱線吸収フィルタ(旭硝子(株)製)と紫外線カットフィルタ(40L、シグマ光機製)を通した可視光を10分間照射した。光照射前後の石英試験管内の溶液の色の変化を目視により観察し、以下の基準により判定した。
A:溶液の色が無色透明から濃紺に変化(高還元活性)
B:溶液の色が無色透明から薄い青色に変化(低還元活性)
C:溶液の色は無色透明のまま変化なし(還元活性なし)
表4には、実施例15〜19および比較例15〜16で得られた窒素含有結晶化酸化タンタルメソ多孔体粒子のメチルビオロゲン還元性能を示す。なお、表4には、比較例2で得られた窒素原子を含有しない酸化タンタル多孔体粒子のメチルビオロゲン還元性能も示した。
表4に示した結果から明らかなように、平均二次粒子径が500nm以下の結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子に窒素原子を導入した場合(実施例15〜19)には、良好なメチルビオロゲン還元活性を示す窒素含有結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子が得られることが確認された。すなわち、平均二次粒子径が500nm以下の窒素含有結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子は可視光応答性の還元触媒として機能することが分かった。一方、平均二次粒子径が500nmを超える不定形の結晶化酸化タンタルメソ多孔体粒子に窒素原子を導入した場合(比較例15〜16)には、平均二次粒子径が500nm以下の窒素含有結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子に比べてメチルビオロゲン還元活性が低くなることが分かった。また、窒素原子を含有しない酸化タンタル多孔体粒子(比較例2)はメチルビオロゲン還元活性を示さないことが分かった。
以上説明したように、本発明によれば、平均粒子径が小さく且つメソ細孔構造を有し、触媒活性に優れた球状の酸化タンタルメソ多孔体粒子を得ることが可能となる。
したがって、本発明の球状酸化タンタルメソ多孔体粒子は、触媒活性に優れるため、触媒や触媒担体などとして有用であり、本発明の結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子は、さらに触媒活性に優れるため、特に有用な触媒材料である。

Claims (11)

  1. 水/エタノール混合溶媒に分散させ、得られた分散液をCu板に滴下して乾燥した場合に独立した状態で存在する粒子の平均粒子径が50〜500nmであり、前記独立した状態で存在する粒子のアスペクト比の平均値が1.20以下であり、中心細孔直径が1〜25nmであることを特徴とする球状酸化タンタルメソ多孔体粒子。
  2. 前記平均粒子径の±45%の範囲内の粒子径を有する粒子数の割合が全粒子数に対して80%以上であることを特徴とする請求項1に記載の球状酸化タンタルメソ多孔体粒子。
  3. アモルファス粒子であることを特徴とする請求項1または2に記載の球状酸化タンタルメソ多孔体粒子。
  4. 前記アモルファス粒子の中心細孔直径が1〜5nmであることを特徴とする請求項3に記載の球状酸化タンタルメソ多孔体粒子。
  5. 結晶化した粒子であることを特徴とする請求項1または2に記載の球状酸化タンタルメソ多孔体粒子。
  6. 前記結晶化した粒子の平均一次粒子径が1〜30nmであり、平均二次粒子径が50〜500nmであることを特徴とする請求項5に記載の球状酸化タンタルメソ多孔体粒子。
  7. 窒素原子を1.0〜49.9原子%の割合で含有することを特徴とする請求項5または6に記載の球状酸化タンタルメソ多孔体粒子。
  8. 下記式(1):
    [式(1)中、nは9〜25の整数である。]
    で表される界面活性剤の存在下、
    水と、メタノールおよびエタノールからなる群から選択される少なくとも1種の第一のアルコールと、ブタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、エチレングリコールおよびグリセリンからなる群から選択される少なくとも1種の第二のアルコールとを含有し且つ前記第一のアルコールの含有量と前記第二のアルコールの含有量の合計が30質量%以上90質量%未満である水/アルコール混合溶媒中で、
    タンタル原料を反応させて酸化タンタル中に前記界面活性剤が導入された酸化タンタル/界面活性剤複合粒子を形成させる第一の工程と、
    前記酸化タンタル/界面活性剤複合粒子に水熱処理を施して酸化タンタルメソ多孔体粒子中に前記界面活性剤が導入された多孔体前駆体粒子を形成させる第二の工程と、
    前記多孔体前駆体粒子中の前記界面活性剤を除去して球状酸化タンタルメソ多孔体粒子を得る第三の工程と、
    を含むことを特徴とする球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の製造方法。
  9. 前記タンタル原料および前記式(1)で表される界面活性剤を含有する溶液と、水と前記第一のアルコールと前記第二のアルコールとを含有する水/アルコール混合溶媒とを混合して前記タンタル原料を反応させることを特徴とする請求項8に記載の球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の製造方法。
  10. 第三の工程で得られた前記球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の細孔内に炭素源を吸着させて該球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の細孔内に炭素源が導入された酸化タンタルメソ多孔体/炭素源複合粒子を形成させる第四の工程と、
    前記酸化タンタルメソ多孔体/炭素源複合粒子を700〜1000℃で30分〜6時間加熱して前記酸化タンタルを結晶化させるとともに前記炭素源を炭化させて結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子中に炭素が導入された結晶化多孔体前駆体粒子を形成させる第五の工程と、
    前記結晶化多孔体前駆体粒子中の前記炭素を除去して結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子を得る第六の工程と、
    を含むことを特徴とする請求項8または9に記載の球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の製造方法。
  11. 前記第六の工程で得られた前記結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子に、窒素源を含有する雰囲気中で加熱処理を施して、窒素原子を含有する結晶化球状酸化タンタルメソ多孔体粒子を得る第七の工程をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の球状酸化タンタルメソ多孔体粒子の製造方法。
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