JP5664939B2 - 強化ガラスの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、強化ガラスの製造方法に関し、具体的には、ディスプレイ用基板、タッチパネルディスプレイのカバーガラス、携帯電話のカバーガラス、太陽電池のカバーガラスおよび基板、外装部品等の高強度が要求されるデバイス・ツール等に好適な強化ガラスの製造方法に関する。
タッチパネルを搭載した携帯電話が普及しており、携帯電話のカバーガラスには、イオン交換等で強化処理したガラス(所謂、強化ガラス)が用いられつつある。強化ガラスは、未強化のガラスに比べて、機械的強度が高いため、本用途に好適である(特許文献1、非特許文献1参照)。
近年、携帯電話以外の用途でもタッチパネルが搭載されつつあり、用途によっては、特定形状、例えば曲面形状を有する外装部品が必要になる。これらの用途に強化ガラスを適用するためには、強化ガラスを特定形状、例えば曲面形状に加工する必要がある。特定形状の強化ガラスは、まず溶融ガラスを成形して平板形状のガラス等を作製し、次いで熱加工で特定形状に変形させた後、強化処理を行うことで作製することができる(特許文献2、3参照)。
したがって、これらの強化ガラスは、機械的強度が高いことに加えて、熱加工性に優れることが求められる。
特開2006−83045号公報 米国特許7168047号明細書 特開2001−247342号公報
泉谷徹朗等、「新しいガラスとその物性」、初版、株式会社経営システム研究所、1984年8月20日、p.451−498
表面に形成される圧縮応力層の圧縮応力値を高くし、且つ圧縮応力層の厚み(深さ)を大きくすれば、強化ガラスの機械的強度を高めることができる。
しかし、圧縮応力層の圧縮応力値を高めつつ、圧縮応力層の厚みを大きくすることは困難である。圧縮応力層の厚みを大きくするためには、イオン交換温度を高くする、或いはイオン交換時間を長くする必要があるが、このような処理を行うと、圧縮応力層の圧縮応力値が大幅に低下するからである。
従来、この問題を解決するために、ガラス組成中にAl等のイオン交換性能を向上させる成分を導入することが検討されてきた。しかし、これらの成分を多量に導入すると、ガラスの粘性が高くなり、ガラスを熱加工することが困難になる。
ところで、ハードディスクの一部には、強化ガラスが用いられており、この強化ガラスは、例えばガラスをプレス成形した後に強化処理することで作製されている。しかし、ハードディスクは、一旦、デバイスに組み込まれると、取り扱い傷が発生しないため、圧縮応力層の厚みを大きくする必要性がない。それどころか、ハードディスクは、表面の平滑性を重視するが故に、強化処理後に、表面を研磨して圧縮応力層を除去する場合もある。したがって、ハードディスクに用いられる強化ガラスは、そのまま外装部品に転用することが困難である。
そこで、本発明は、高い機械的強度が得られるように、圧縮応力層の圧縮応力値と厚みを適正化することができ、しかも熱加工を容易に行うことができる強化ガラスの製造方法を創案することを技術的課題とする。
本発明者は、種々の検討を行った結果、ガラスを構成する原子の網目構造の隙間が強化特性に影響を与えること、具体的には同一のガラス組成でも、熱加工後(或いは成形直後)に、特定温度範囲において特定の冷却処理を行えば、強化処理後に形成される圧縮応力層の圧縮応力値と厚みを適正化できることを見出した。すなわち、本発明の強化ガラスの製造方法は、ガラス組成として、質量%で、SiO 45〜75%、Al 5〜30%、LiO+NaO+KO 0.1〜30%、LiO 0〜2%、SrO+BaO 0〜5%、ZnO 0〜3%を含有するように、ガラス原料を調合した後、ガラス原料を溶融し、得られた溶融ガラスをガラスに成形する工程を備えると共に、徐冷点から歪点までの温度域を0.2〜200℃の冷却速度で冷却した後、圧縮応力層の圧縮応力値を700MPa以上とする強化処理を行う工程を備えることを特徴とする。ここで、「冷却」は、成形に引き続き、ガラスを冷却する場合のみならず、一旦、成形した後のガラスを再び徐冷点以上に熱処理し、冷却する場合も含む。「徐冷点」は、ASTM C336の方法に基づいて測定した値を指し、「歪点」もASTM C336の方法に基づいて測定した値を指す。
このようにすれば、ガラスの粘性を不当に上昇させずに、圧縮応力層の圧縮応力値と厚みを適正化、具体的には圧縮応力層の厚みを確保した上で、圧縮応力層の圧縮応力値を高めることができ、結果として、強化ガラスの機械的強度を高めることができるとともに、熱加工により特定形状、特に平板形状以外の形状の強化ガラスを容易に作製することができる。なお、強化処理を行った後に、徐冷点付近まで熱処理すると、ほとんどの圧縮応力層が消失し、強化ガラスの機械的強度が低下する。
本発明の強化ガラスの製造方法は、徐冷点から歪点までの温度域を2〜200℃/分の冷却速度で冷却することが好ましい。
発明の強化ガラスの製造方法は、ガラスを熱加工した後に冷却することが好ましい。このようにすれば、圧縮応力層の圧縮応力値を高めつつ、強化ガラスのデザイン性を高めることができる。
本発明の強化ガラスの製造方法は、強化処理がガラスの表面に圧縮応力層を形成する化学強化処理であり、且つ圧縮応力層の厚みが10μm以上になるように化学強化処理を行うことが好ましい。
本発明の強化ガラスの製造方法は、ガガラス組成として、質量%で、SiO 45〜75%、Al 12〜30%、LiO+NaO+K〜30%、LiO 0〜1%、NaO 8〜20%、SrO+BaO 0〜2.5%、ZnO 0〜3%を含有するように、ガラス原料(カレットを含む)を調合した後、ガラス原料を溶融し、得られた溶融ガラスをガラスに成形することが好ましい。
本発明の強化ガラスの製造方法は、ガラス組成として、質量%で、SiO 45〜75%、Al 12〜22%、B 0〜5%、LiO 0〜0.1%、NaO 8〜20%、KO 0〜10%、SrO+BaO 0〜1%、ZnO 0〜3%、As 0〜0.1%未満、Sb 0〜0.1%未満を含有するように、ガラス原料を調合することが好ましい。
発明の強化ガラスの製造方法は、オーバーフローダウンドロー法で溶融ガラスを平板形状のガラスに成形することが好ましい。このようにすれば、未研磨で表面精度が良好な平板形状のガラスを容易に作製することができ、またガラスを熱加工しやすくなる。
発明の強化ガラスの製造方法は、軟化点が860℃以下になるようにガラス原料を調合することが好ましい。このようにすれば、ガラスを熱加工しやすくなる。ここで、「軟化点」はASTM C338の方法に基づいて測定した値を指す。
発明の強化ガラスの製造方法は、熱膨張係数が60〜110×10−7/℃になるようにガラス原料を調合することが好ましい。ここで、「熱膨張係数」は、ディラトメーターで測定した値であり、30〜380℃の温度範囲における平均値を指す。
発明の強化ガラスの製造方法は、液相温度が1200℃以下になるようにガラス原料を調合することが好ましい。ここで、「液相温度」は、ガラスを粉砕し、標準篩30メッシュ(篩目開き500μm)を通過し、50メッシュ(篩目開き300μm)に残るガラス粉末を白金ボートに入れ、温度勾配炉中に24時間保持して、結晶の析出する温度を指す。
発明の強化ガラスの製造方法は、液相粘度が104.0dPa・s以上になるようにガラス原料を調合することが好ましい。ここで、「液相粘度」は、液相温度におけるガラスの粘度を白金球引き上げ法で測定した値を指す。
本発明の強化ガラスの製造方法は、ガラスをプレス成形した後、徐冷点から歪点までの温度域を0.2〜200℃/分の冷却速度で冷却することが好ましい。
発明の強化ガラスは、上記の製造方法により作製されてなることが好ましい
発明の強化ガラスは、平板形状以外の形状、例えば曲面形状、凹凸形状、波型形状、段付形状等であることが好ましい
発明の強化ガラスは、ディスプレイ用基板に用いることが好ましい
発明の強化ガラスは、タッチパネルディスプレイのカバーガラスに用いることが好ましい
発明の強化ガラスは、携帯電話のカバーガラスに用いることが好ましい
発明の強化ガラスは、太陽電池の基板またはカバーガラスに用いることが好ましい
発明の強化ガラスは、外装部材に用いることが好ましい
本発明の強化ガラスの製造方法は、徐冷点から歪点までの温度域を0.2〜200℃/分の冷却速度で冷却する工程を有し、100℃/分以下、50℃/分以下、10℃/分以下、5℃/分以下、特℃/分以下の冷却速度で冷却する工程を有することが好ましい。冷却速度が200℃/分より速いと、ガラスの構造が疎になり過ぎて、イオン交換処理を行っても高い圧縮応力値を得難くなる。一方、冷却速度が0.2℃/分より遅いと、強化ガラスの生産性が低下する。特に、熱加工によりガラスを特定形状に変形させた後、上記温度域において上記冷却速度で冷却すると、高い圧縮応力値が得られるとともに、強化ガラスのデザイン性を高めることができる。なお、ガラスを特定形状にプレス成形した後、上記温度域において上記冷却速度で冷却した場合も、圧縮応力層の圧縮応力値が高まるとともに、強化ガラスのデザイン性を高めることができる。
本発明の強化ガラスの製造方法は、強化処理を行う工程、つまりガラスに圧縮応力層を形成する工程を有する。ガラスに圧縮応力層を形成する方法には、物理強化法と化学強化法があるが、本発明の強化ガラスの製造方法は、化学強化法で圧縮応力層を形成することが好ましい。化学強化法は、ガラスの歪点以下の温度で、イオン交換によりガラスの表面にイオン半径の大きいアルカリイオン等を導入する方法である。化学強化法で圧縮応力層を形成すれば、ガラスの厚みが薄くても、イオン交換処理を行うことができ、所望の機械的強度を得ることができる。さらに、化学強化法で圧縮応力層を形成すれば、風冷強化法等の物理強化法とは異なり、強化処理後に強化ガラスを切断した場合でも、強化ガラスが容易に破壊することがない。
本発明の強化ガラスの製造方法において、イオン交換処理は、例えば400〜550℃の硝酸カリウム溶液中にガラスを1〜8時間浸漬することで行うことができる。イオン交換条件は、ガラスの粘度特性や、用途、板厚、内部の引っ張り応力等を考慮して最適な条件を選択すればよい。
本発明の強化ガラスの製造方法において、圧縮応力層の圧縮応力値が700MPa以上になるように化学強化処理を行う。圧縮応力値が大きくなるにつれて、強化ガラスの機械的強度が高くなる。一方、表面に極端に大きな圧縮応力が形成されると、表面にマイクロクラックが発生しやすくなり、逆に強化ガラスの機械的強度が低下する虞がある。また、表面に極端に大きな圧縮応力が形成されると、内部の引っ張り応力が極端に高くなる虞があるため、圧縮応力層の圧縮応力が1300MPa以下となるように化学強化処理を行うことが好ましい。なお、ガラス組成中のAl、TiO、ZrO、MgO、ZnOの含有量を増加、SrO、BaOの含有量を低減すると、圧縮応力層の圧縮応力値を高めることができる。また、イオン交換時間を短くしたり、イオン交換温度を下げると、圧縮応力層の圧縮応力値を高めることができる。
本発明の強化ガラスの製造方法において、圧縮応力層の厚みが10μm以上、20μm以上、30μm以上、40μm以上、50μm以上、特に60μm以上になるように化学強化処理を行うことが好ましい。強化ガラスを外装部品に用いる場合、強化ガラスの表面が直接接触される機会が多くなり、取り扱い傷により、強化ガラスの機械的強度が著しく低下することがある。そこで、圧縮応力層の厚みを大きくすれば、強化ガラスに深い傷がついても、強化ガラスが割れ難くなる。一方、切断加工しやすくするために、圧縮応力層の厚みを200μm以下とするのが好ましい。なお、ガラス組成中のAl、TiO、ZrO、MgO、ZnOの含有量を増加、SrO、BaOの含有量を低減すると、圧縮応力層の厚みを大きくすることができる。さらに、イオン交換時間を長くしたり、イオン交換温度を上げると、圧縮応力層の厚みを大きくすることができる。
本発明の強化ガラスの製造方法において、以下の数式1で計算される内部の引っ張り応力値が200MPa以下、150MPa以下、100MPa以下、特に50MPa以下になるように化学強化処理を行うことが好ましい。内部の引っ張り応力値が小さい程、内部の欠陥によって、強化ガラスが破損する確率が低くなる。ただし、内部の引っ張り応力値を極端に小さくし過ぎると、圧縮応力層の圧縮応力値が低下しやすくなり、また圧縮応力層の厚みが小さくなりやすいため、内部の引っ張り応力値は1MPa以上、10MPa以上、特に15MPa以上が好ましい。
本発明の強化ガラスの製造方法において、ガラス組成として、質量%で、SiO 45〜75%、Al 〜30%、LiO+NaO+K0.1〜30%、LiO 0〜2%、SrO+BaO 0〜5%、ZnO 0〜3%を含有するように、ガラス原料を調合することが好ましい。本発明の強化ガラスの製造方法において、上記のようにガラス組成範囲を規制した理由を下記に示す。
SiOは、ガラスのネットワークを形成する成分であり、その含有量は45〜75%、好ましくは50〜70%、より好ましくは50〜66%、更に好ましくは52〜63%、特に好ましくは54〜63%である。SiOの含有量が多過ぎると、溶融性や成形性が低下することに加えて、熱膨張係数が低くなり過ぎて、周辺材料の熱膨張係数に整合させ難くなる。一方、SiOの含有量が少な過ぎると、ガラス化し難くなることに加えて、熱膨張係数が高くなり過ぎて、耐熱衝撃性が低下しやすくなる。
Alは、イオン交換性能を向上させる成分であり、また歪点やヤング率を高める成分であり、その含有量は〜30%である。Alの含有量が多過ぎると、ガラスに失透結晶が析出しやすくなり、例えばオーバーフローダウンドロー法等でガラスを成形し難くなる。また、Alの含有量が多過ぎると、熱膨張係数が低くなり過ぎて、周辺材料の熱膨張係数に整合させ難くなったり、高温粘性が高くなり、ガラスを溶融し難くなったり、軟化点が高くなり過ぎて、熱加工・プレス成形時の温度が高くなり、成形金型の寿命が低下する虞がある。一方、Alの含有量が少な過ぎると、イオン交換性能を十分に発揮できない虞がある。上記観点を総合的に判断すると、Alの上限範囲は25%以下、23%以下、22%以下、20%以下、19%以下、18%以下、17%以下、特に16.5%以下が好ましい。また、Alの下限範囲は10%以上、12%以上、13%以上、特に14%以上が好ましい。
LiO+NaO+KOは、イオン交換成分であり、高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高める成分である。LiO+NaO+KOが多過ぎると、ガラスが失透しやすくなることに加えて、熱膨張係数が高くなり過ぎて、耐熱衝撃性が低下したり、周辺材料の熱膨張係数に整合させ難くなる。また、LiO+NaO+KOが多過ぎると、歪点が低下し過ぎて、圧縮応力層の圧縮応力値を高め難くなる場合がある。さらに、LiO+NaO+KOが多過ぎると、液相温度付近の粘性が低下し、高い液相粘度を確保し難くなる場合がある。よって、LiO+NaO+KOの含有量は30%以下、好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下である。一方、LiO+NaO+KOが少な過ぎると、イオン交換性能や溶融性が低下したり、軟化点が高くなり過ぎる場合がある。よって、LiO+NaO+KOの含有量は0.1%以上であり、好ましくは8%以上、10%以上、13%以上、特に15%以上である。
LiOは、イオン交換成分であり、高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高める成分である。また、LiOは、ヤング率を高める成分であるとともに、アルカリ金属酸化物の中では圧縮応力値を高めやすい成分である。しかし、LiOの含有量が多過ぎると、液相粘度が低下して、ガラスが失透しやすくなることに加えて、熱膨張係数が高くなり過ぎて、耐熱衝撃性が低下したり、周辺材料の熱膨張係数に整合させ難くなる。さらに、LiOの含有量が多過ぎると、低温粘性、特に歪点が低下し過ぎて、イオン交換時に応力緩和が起こりやすくなり、逆に圧縮応力層の圧縮応力値が低くなる場合がある。したがって、LiOの含有量は0〜2%、0〜1%、特に0〜0.1%が好ましい。
NaOは、イオン交換成分であり、ガラスの高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高める成分であるとともに、耐失透性を改善する成分であり、その含有量は8〜20%、8〜16%、8〜15%、9〜15%、10〜15%、11〜15%、特に12〜15%が好ましい。NaOの含有量が多過ぎると、熱膨張係数が高くなり過ぎて、耐熱衝撃性が低下したり、周辺材料の熱膨張係数に整合させ難くなる。また、NaOの含有量が多過ぎると、歪点が低下し過ぎたり、ガラス組成の成分バランスが損なわれて、逆に耐失透性が低下する傾向がある。一方、NaOの含有量が少な過ぎると、溶融性が低下したり、熱膨張係数が低くなり過ぎたり、軟化点が高くなり過ぎたり、イオン交換性能が低下する。
Oは、イオン交換性能を向上させる成分であり、アルカリ金属酸化物の中では圧縮応力層の厚みを大きくする効果が高い成分である。また、KOは、高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高める成分である。さらに、KOは、耐失透性を改善する成分でもある。KOの含有量が多過ぎると、熱膨張係数が高くなり過ぎて、耐熱衝撃性が低下したり、周辺材料の熱膨張係数に整合させ難くなる。また、KOの含有量が多過ぎると、歪点が低下し過ぎたり、ガラス組成の成分バランスが損なわれて、逆に耐失透性が低下する傾向がある。上記点を考慮すると、KOの上限範囲は10%以下、8%以下、7%以下、6%以下、特に5%以下が好ましい。一方、圧縮応力層の厚みを大きくするためには、KOの下限範囲は0.1%以上、0.5%以上、1%以上、特に2%以上が好ましい。
上記成分以外にも下記の成分をガラス組成中に導入してもよい。
MgO+CaO+SrO+BaO(MgO、CaO、SrO、BaOの合量)は、高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高めたり、歪点やヤング率を高める成分であり、その含有量は0〜15%、0〜10%、0〜6%、特に0〜5%が好ましい。しかし、MgO+CaO+SrO+BaOの含有量が多過ぎると、密度や熱膨張係数が高くなり過ぎたり、耐失透性が低下したり、イオン交換性能が低下する傾向がある。
MgOは、高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高めたり、歪点やヤング率を高める成分であり、特にアルカリ土類金属酸化物の中では、イオン交換性能を向上させる効果が高い成分であり、その含有量は0〜10%、0〜6%、0〜4%、特に0〜3%が好ましい。しかし、MgOの含有量が多過ぎると、密度や熱膨張係数が高くなり過ぎたり、ガラスが失透しやすくなる。
CaOは、高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高めたり、歪点やヤング率を高める成分である。また、アルカリ土類金属酸化物の中では、イオン交換性能を向上させる効果が比較的高い成分であり、その含有量は0〜10%、0〜8%、0〜6%、特に0〜3%が好ましい。しかし、CaOの含有量が多過ぎると、密度や熱膨張係数が高くなり過ぎたり、ガラスが失透しやすくなる。また、ガラス組成の成分バランスが損なわれて、逆にイオン交換性能が低下する場合がある。
SrOやBaOは、高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高めたり、歪点やヤング率を高める成分であり、その含有量は各々0〜5%が好ましい。SrOやBaOの含有量が多過ぎると、イオン交換性能が低下する傾向があることに加えて、密度や熱膨張係数が高くなり過ぎたり、ガラスが失透しやすくなる。SrOの含有量は3%以下、2%以下、1%以下、0.5%以下、特に0.1%以下が望ましい。また、BaOの含有量は3%以下、2%以下、1%以下、0.8%以下、0.5%以下、特に0.1%以下が望ましい。
SrO+BaO(SrO、BaOの合量)0〜5%であり、好ましくは0〜3%、0〜2.5%、0〜2%、0〜1%、特に0〜0.1%である。このように規制すれば、イオン交換性能がより効果的に向上する。既述の通り、SrO+BaOは、イオン交換反応を阻害する作用があるため、SrO+BaOが過剰であると、強化ガラスの機械的強度を高め難くなる。
MgO+CaO+SrO+BaOをLiO+NaO+KOで除した値、つまり質量分率(MgO+CaO+SrO+BaO)/(LiO+NaO+KO)が大きくなると、耐失透性が低下する傾向が現れる。よって、質量分率(MgO+CaO+SrO+BaO)/(LiO+NaO+KO)は0.5以下、0.4以下、特に0.3以下が望ましい。
ZnOは、イオン交換性能を向上させる成分であり、特に圧縮応力層の圧縮応力値を高める効果が大きい成分であるとともに、低温粘性を低下させずに高温粘性を低下させる成分であり、その含有量は0〜3%、特に0〜1%が好ましい。しかし、ZnOの含有量が多過ぎると、ガラスが分相したり、耐失透性が低下したり、密度が高くなり過ぎる。
以下のように質量分率を規制すれば、熱加工性(低い軟化点)と、耐失透性と、イオン交換性能を高いレベルで両立させることができる。
第一に、質量分率NaO/SiOは0.05〜0.5が好ましい。質量分率NaO/SiOが0.05より小さくなると、軟化点が高くなり過ぎたり、高温粘性が高くなり過ぎて、泡品位が低下したり、液相温度が高くなったり、イオン交換性能が低下しやすくなる。一方、質量分率NaO/SiOが0.5より大きくなると、熱膨張係数や密度が高くなり過ぎたり、歪点が低下し過ぎて、逆にイオン交換性能が低下する場合がある。質量分率NaO/SiOの下限範囲は0.1以上、0.15以上、0.2以上、0.22以上、特に0.24以上が好ましく、上限範囲は0.5以下、0.45以下、0.4以下、0.35以下、0.32以下、特に0.3以下が好ましい。
第二に、質量分率Al/SiOは0.05〜0.5が好ましい。質量分率Al/SiOが0.05より小さくなると、所望のイオン交換性能を得難くなる。また、質量分率Al/SiOが0.5より大きくなると、軟化点が高くなり過ぎたり、高温粘性が高くなり過ぎて、泡品位が低下したり、液相温度が高くなる。質量分率Al/SiOの下限範囲は0.1以上、0.15以上、0.2以上、0.22以上、特に0.24以上が好ましく、上限範囲は0.45以下、0.4以下、0.35以下、0.32以下、0.3以下、0.29以下、0.28以下、特に0.27以下が好ましい。
第三に、質量分率CaO/MgOは0〜3、0〜2、特に0〜1が好ましい。質量分率CaO/MgOが3より大きくなると、イオン交換性能が低下する傾向にあり、特に短時間で圧縮応力層の厚みを大きくすることが困難になる。
ZrOは、イオン交換性能を顕著に向上させるとともに、液相粘度付近の粘性や歪点を高める成分であり、その含有量は0〜10%、0〜9%、0.001〜8%、0.01〜7%、1〜7%、2〜7%、3〜6%、特に3〜5%が好ましい。ZrOの含有量が多過ぎると、耐失透性が極端に低下する場合がある。
は、液相温度、高温粘度、密度を低下させるとともに、イオン交換性能、特に圧縮応力層の圧縮応力値を高める成分であり、その含有量は0〜10%、0〜5%、0〜3%、特に0〜2%が好ましい。Bの含有量が多過ぎると、イオン交換処理によりガラスの表面にヤケが発生したり、耐水性が低下したり、液相粘度が低下する虞がある。また、Bの含有量が多過ぎると、圧縮応力層の厚みが小さくなる傾向がある。
TiOは、イオン交換性能を向上させる成分であるとともに、高温粘度を低下させる成分であるが、その含有量が多過ぎると、ガラスが着色したり、耐失透性が低下しやすくなるため、その含有量は1%以下、0.5%以下、特に0.1%以下が好ましい。
は、イオン交換性能を高める成分であり、特に圧縮応力層の厚みを大きくする効果が大きい成分であり、その含有量は8%以下、5%以下、4%以下、2%以下、0.5%以下、特に0.1%以下が好ましい。しかし、Pの含有量が多過ぎると、ガラスが分相したり、耐水性が低下しやすくなる。
清澄剤として、As、Sb、CeO、SnO、F、Cl、SOの群から選択された一種または二種以上を0〜3%添加することができる。ただし、As、Sb、F、特にAs、Sbは、環境的観点から、その使用を極力控えることが好ましく、各々の含有量は0.1%未満が好ましい。好ましい清澄剤は、SnO、SO、Clである。SnOの含有量は0〜1%、0.01〜0.5%、特に0.05〜0.4%が好ましい。SnOの含有量が1%より多いと、耐失透性が低下しやすくなる。SOの含有量は0〜0.1%、0.0001〜0.1%、0.0003〜0.08%、0.0005〜0.05%、特に0.001〜0.03%が好ましい。SOの含有量が0.1%より多いと、溶融時にSOがリボイルして、泡品位が低下しやすくなる。Clの含有量は0〜0.5%、0.005〜0.3%、0.01〜0.2%、0.01〜0.1%、特に0.01〜0.09%が好ましい。Clの含有量が0.5%より多いと、強化ガラス上に金属配線パターン等を形成した時に金属配線が腐食しやすくなる。
NbやLa等の希土類酸化物は、ヤング率を高める成分である。しかし、原料自体のコストが高く、また多量に添加すると、耐失透性が低下しやすくなる。よって、希土類酸化物の含有量は3%以下、2%以下、1%以下、0.5%以下、特に0.1%以下が好ましい。
Co、Ni等の遷移金属酸化物は、ガラスを強く着色させ、透過率を低下させる成分である。よって、遷移金属酸化物の含有量が0.5%以下、0.1%以下、0.05%以下になるように、ガラス原料の使用量を調整することが望ましい。
PbOやBiは、環境的観点から、使用は極力控えるべきであり、その含有量は0.1%未満が好ましい。
各成分の好適な含有範囲を適宜選択し、好適なガラス組成範囲とすることができるが、その中でも、より好適なガラス組成範囲は、以下の通りである。
(1)質量%で、SiO 45〜75%、Al 〜30%、LiO+NaO+K0.1〜30%、ZnO 0〜3%含有、
(2)質量%で、SiO 45〜75%、Al 10〜30%、LiO+NaO+K0.1〜30%、LiO 0〜2%、SrO+BaO 0〜5%、ZnO 0〜3%を含有し、且つ質量分率NaO/SiOが0.05〜0.5、質量分率Al/SiOが0.05〜0.5、質量分率CaO/MgOが0〜3、
(3)質量%で、SiO 45〜75%、Al 10〜30%、LiO+NaO+K0.1〜30%、LiO 0〜2%、SrO+BaO 0〜5%、ZnO 0〜3%を含有し、且つ質量分率NaO/SiOが0.1〜0.4、質量分率Al/SiOが0.1〜0.4、質量分率CaO/MgOが0〜2、
(4)質量%で、SiO 45〜75%、Al 10〜30%、LiO 0〜2%、NaO 5〜20% KO 0〜10%、SrO+BaO 0〜5%、ZnO 0〜3%を含有し、且つ質量分率NaO/SiOが0.2〜0.3、質量分率Al/SiOが0.2〜0.3、質量分率CaO/MgOが0〜1、
(5)質量%で、SiO 52〜70%、Al 10〜25%、LiO 0〜2%、NaO 5〜20%、KO 0〜10%、SrO+BaO 0〜5%、ZnO 0〜3%を含有し、且つ質量分率NaO/SiOが0.2〜0.3、質量分率Al/SiOが0.2〜0.3、質量分率CaO/MgOが0〜1、
(6)質量%で、SiO 52〜65%、Al 10〜20%、LiO 0〜2%、NaO 10〜20%、KO 0〜5%、ZnO 0〜1%,TiO 0〜0.1%、SrO+BaO 0〜5%を含有し、且つ質量分率NaO/SiOが0.21〜0.28、質量分率Al/SiOが0.21〜0.28、質量分率CaO/MgOが0〜1。
本発明の強化ガラスの製造方法において、密度が2.7g/cm以下、2.6g/cm以下、特に2.55g/cm以下になるようにガラス原料を調合することが好ましい。密度が小さい程、ガラスを軽量化することができる。ここで、「密度」とは、周知のアルキメデス法で測定した値を指す。密度を低下させるには、ガラス組成中のSiO、P、Bの含有量を増加、或いはアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、ZnO、ZrO、TiOの含有量を低減すればよい。
本発明の強化ガラスの製造方法において、歪点が450℃以上、460℃以上、480℃以上、500℃以上、510℃以上、特に520℃以上になるようにガラス原料を調合することが好ましい。歪点が高い程、耐熱性が向上し、強化ガラスを熱処理しても、圧縮応力層が消失し難くなる。また、歪点が高いと、イオン交換処理で応力緩和が生じ難くなるため、高い圧縮応力値を得やすくなる。歪点を高くするためには、ガラス組成中のアルカリ金属酸化物、特にLiOの含有量を低減、或いはアルカリ土類金属酸化物、Al、ZrO、Pの含有量を増加すればよい。
本発明の強化ガラスの製造方法において、軟化点が860℃以下、850℃以下、840℃以下、830℃以下、820℃以下、800℃以下、780℃以下、770℃以下、特に760℃以下になるようにガラス原料を調合することが好ましい。軟化点が低い程、熱加工しやすくなり、また熱加工を低温で行うことができる。また、プレス成形する場合においても、軟化点が低い程、成形金型の負担が小さくなるため、成形金型の寿命が長くなり、成形コストが低下しやすくなる。
本発明の強化ガラスの製造方法において、高温粘度102.5dPa・sに相当する温度が1500℃以下、1450℃以下、1430℃以下、1420℃以下、特に1400℃以下になるようにガラス原料を調合することが好ましい。高温粘度102.5dPa・sに相当する温度が低い程、溶融炉等のガラス製造設備に与える負担が小さくなるとともに、ガラスの泡品位を向上させることができ、結果として、ガラスの製造コストを低廉化することができる。なお、高温粘度102.5dPa・sに相当する温度は、溶融温度に相当しており、高温粘度102.5dPa・sに相当する温度が低い程、低温でガラスを溶融することができる。102.5dPa・sに相当する温度を低下させるには、ガラス組成中のアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、ZnO、B、TiOの含有量を増加、或いはSiO、Alの含有量を低減すればよい。
本発明の強化ガラスの製造方法において、熱膨張係数が70〜110×10−7/℃、75〜100×10−7/℃、特に80〜100×10−7/℃になるようにガラス原料を調合することが好ましい。熱膨張係数を上記範囲とすれば、金属、有機系接着剤等の部材の熱膨張係数に整合させやすくなり、金属、有機系接着剤等の部材の剥離を防止することができる。熱膨張係数を高めるには、ガラス組成中のアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物の含有量を増加すればよく、逆に熱膨張係数を低下させるには、ガラス組成中のアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物の含有量を低減すればよい。
本発明の強化ガラスの製造方法において、液相温度が1200℃以下、1050℃以下、1000℃以下、950℃以下、900℃以下、特に860℃以下になるようにガラス原料を調合することが好ましい。液相温度が低い程、耐失透性、熱加工性、成形性に優れている。特に、液相温度が低い程、ガラス中から結晶が析出し難いため、熱加工を比較的低温で行うことができ、これに伴い成形金型の寿命を高めることができる。液相温度を低下させるには、ガラス組成中のNaO、KO、Bの含有量を増加、或いはAl、LiO、MgO、ZnO、TiO、ZrOの含有量を低減すればよい。
本発明の強化ガラスの製造方法において、液相粘度が104.0dPa・s以上、104.5dPa・s以上、105.0dPa・s以上、105.2dPa・s以上、105.3dPa・s以上、105.5dPa・s以上、105.7dPa・s以上、105.8dPa・s以上、106.0dPa・s以上、106.2.dPa・s以上になるようにガラス原料を調合することが好ましい。液相粘度が高い程、耐失透性や成形性に優れている。液相粘度を高めるには、ガラス組成中のNaO、KOの含有量を増加、或いはAl、LiO、MgO、ZnO、TiO、ZrOの含有量を低減すればよい。
一般的に、ガラスは、ガラス原料を連続溶融炉に投入し、このガラス原料を1500〜1600℃で加熱溶融し、清澄した後、成形装置に供給した上で溶融ガラスを成形し、徐冷することにより製造することができる。
本発明の強化ガラスにおいて、オーバーフローダウンドロー法で溶融ガラスを平板形状のガラスに成形することが好ましい。このようにすれば、未研磨で表面品位が良好な平板形状のガラスを製造することができる。その理由は、オーバーフローダウンドロー法の場合、ガラスの表面となるべき面は樋状耐火物に接触せず、自由表面の状態で成形されるからである。ここで、オーバーフローダウンドロー法は、溶融ガラスを耐熱性の樋状構造物の両側から溢れさせて、溢れた溶融ガラスを樋状構造物の下端で合流させながら、下方に延伸成形して平板形状のガラスを製造する方法である。樋状構造物の構造や材質は、ガラスの寸法や表面精度を所望の状態とし、所望の品位を実現できるものであれば、特に限定されない。また、下方への延伸成形を行うためにガラスに対してどのような方法で力を印加するものであってもよい。例えば、充分に大きい幅を有する耐熱性ロールをガラスに接触させた状態で回転させて延伸する方法を採用してもよいし、複数の対になった耐熱性ロールをガラスの端面近傍のみに接触させて延伸する方法を採用してもよい。
また、本発明の強化ガラスの製造方法において、オーバーフローダウンドロー法以外にも、種々の成形方法、例えば、ダウンドロー法(スロットダウン法、リドロー法等)、フロート法、ロールアウト法、プレス法等を採用することができる。特に、プレス法でガラスを成形すれば、特定形状のガラスを効率良く製造できるとともに、上記の温度域において上記の冷却速度で冷却すれば、後の強化処理でガラスに高い圧縮応力を付与することができる。
本発明の強化ガラスの製造方法において、基板またはカバーガラスとして用いる場合、強化ガラスの軽量化を図るために、その板厚を3.0mm以下、1.5mm以下、0.7mm以下、0.5mm以下、特に0.3mm以下とするのが好ましく、外装部品として用いる場合、強化ガラスの機械的強度を維持するために、その厚みを0.3mm以上、0.5mm以上、0.7mm以上、1.0mm以上、1.3mm以上、1.5mm以上とする
のが好ましい。
本発明の強化ガラスの製造方法において、表面(切断面を除く)の研磨を省略することが好ましい。ガラスの理論強度は、本来非常に高いのであるが、理論強度よりも遥かに低い応力でも破壊に至ることが多い。これは、ガラスの表面にグリフィスフローと呼ばれる小さな欠陥が溶融ガラスの成形後の工程、例えば研磨工程等で生じるからである。よって、研磨を省略すれば、本来の機械的強度を損ない難くなり、強化ガラスが破壊し難くなる。また、本発明の強化ガラスの製造方法において、未研磨の表面の平均表面粗さ(Ra)が10Å以下、5Å以下、特に2Å以下になるように溶融ガラスを成形することが好ましい。外装部品として用いる場合、このような表面形状であれば、強化ガラスに適度な光沢を付与することができる。「平均表面粗さ(Ra)」は、SEMI D7−97「FPDガラス基板の表面粗さの測定方法」に準拠した方法で測定した値を指す。なお、本発明の強化ガラスにおいて、切断面から破壊に至る事態を防止するため、切断面に面取り加工等を施してもよい。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。
表1は、表2に示す実験で用いたガラス試料のガラス組成および特性を示している。
表1のガラス試料は、次のようにして作製した。まず、表1に示すガラス組成となるようにガラス原料を調合した後、ガラス原料を溶融し、得られた溶融ガラスをオーバーフローダウンドロー法で平板形状のガラスに成形した。得られたガラスにつき、表1に示す特性を測定した。成形体下部にアニーラーを配置し、アニーラー上部の温度を700℃、アニーラー下部の温度を450℃に設定し、アニーラー内を1200mm/分の速度で通過させた。
密度は、周知のアルキメデス法によって測定した値である。
歪点Ps、徐冷点Taは、ASTM C336の方法に基づいて測定した値である。
軟化点Tsは、ASTM C338の方法に基づいて測定した値である。
高温粘度104.0dPa・s、103.0dPa・s、102.5dPa・sに相当する温度は、白金球引き上げ法で測定した値である。
熱膨張係数は、ディラトメーターで測定した値であり、30〜380℃の温度範囲における平均値である。
液相温度は、ガラスを粉砕し、標準篩30メッシュ(篩目開き500μm)を通過し、50メッシュ(篩目開き300μm)に残るガラス粉末を白金ボートに入れ、温度勾配炉中に24時間保持して、結晶の析出する温度を測定した値である。
液相粘度は、液相温度におけるガラスの粘度を白金球引き上げ法で測定した値である。
表2は、本発明の実施例を示しており、表中の徐冷点から歪点までの温度域における冷却条件、イオン交換条件で処理した場合にガラス表面に形成される圧縮応力層の圧縮応力値と厚みを示している。なお、120℃/分の冷却速度は、本明細書の段落[0082]に示すアニーラーを通過した際の冷却速度を例示している。また、2℃/分の冷却速度は、一旦、成形した後のガラスを再び徐冷点以上に熱処理し、冷却する際の冷却速度を例示している。また、0.2℃/分の冷却速度は、一旦、成形した後のガラスを再び徐冷点以上に熱処理し、冷却する際の冷却速度、更に言えば、所謂、精密アニールを行ったときの
冷却速度を例示している。
表面応力計(株式会社東芝製FSM−6000)を用いて干渉縞の本数とその間隔を観察し、ガラス表面の圧縮応力値と圧縮応力層の厚みを算出した。算出に際し、各試料の屈折率を1.52、光学弾性定数を28[(nm/cm)/MPa]とした。
表2から明らかなように、同一のガラス組成、同一条件のイオン交換処理であっても、冷却速度を遅くすれば、圧縮応力層の圧縮応力値を高めることができる。なお、圧縮応力層の厚みは、冷却速度が遅くなると、多少小さくなる傾向にあるが、イオン交換処理の条件を調整すれば、圧縮応力層の圧縮応力値を高めつつ、圧縮応力層の厚みを大きくすることができる。
なお、本発明の説明の便宜上、オーバーフローダウンドロー法等で成形した平板形状のガラスを冷却しているが、平板形状のガラスを熱加工し、特定形状に変形させたガラス、またガラスを特定形状にプレス成形したガラスも同様の温度域において同様の冷却条件を付与すれば、同様の効果が得られるものと考えられる。
本発明の強化ガラスの製造方法は、携帯電話、デジタルカメラ、PDA、タッチパネルディスプレイ等のカバーガラスに用いられる強化ガラスの製造方法として好適である。また、本発明の強化ガラスの製造方法は、熱加工を施した携帯電話、モバイルPC、ポインティングデバイス等の外装部品、特に平板形状以外の形状を有する外装部品に用いる強化ガラスの製造方法として好適である。さらに、本発明の強化ガラスの製造方法は、これらの用途以外にも、高い機械的強度が要求される用途(例えば、窓ガラス、磁気ディスク用基板、フラットパネルディスプレイ用基板、太陽電池の基板およびカバーガラス、固体撮像素子用カバーガラス、食器)の強化ガラスの製造方法としても好適である。

Claims (15)

  1. ガラス組成として、質量%で、SiO 45〜75%、Al 5〜30%、LiO+NaO+KO 0.1〜30%、LiO 0〜2%、SrO+BaO 0〜5%、ZnO 0〜3%を含有するように、ガラス原料を調合した後、ガラス原料を溶融し、得られた溶融ガラスをガラスに成形する工程を備えると共に、徐冷点から歪点までの温度域を0.2〜200℃の冷却速度で冷却した後、圧縮応力層の圧縮応力値を700MPa以上とする強化処理を行う工程を備えることを特徴とする強化ガラスの製造方法。
  2. 徐冷点から歪点までの温度域を2〜200℃/分の冷却速度で冷却することを特徴とする請求項1に記載の強化ガラスの製造方法。
  3. 内部の引っ張り応力が200MPa以下になるように、強化処理を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の強化ガラスの製造方法。
  4. 強化処理がガラスの表面に圧縮応力層を形成する化学強化処理であり、且つ圧縮応力層の厚みが10μm以上になるように化学強化処理を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の強化ガラスの製造方法。
  5. ガラス組成として、質量%で、SiO 45〜75%、Al 12〜30%、LiO+NaO+KO 8〜30%、LiO 0〜1%、NaO 8〜20%、SrO+BaO 0〜2.5%、ZnO 0〜3%を含有するように、ガラス原料を調合した後、ガラス原料を溶融し、得られた溶融ガラスをガラスに成形することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の強化ガラスの製造方法。
  6. ガラス組成として、質量%で、SiO 45〜75%、Al 12〜22%、B 0〜5%、LiO 0〜0.1%、NaO 8〜20%、KO 0〜10%、SrO+BaO 0〜1%、ZnO 0〜3%、As 0〜0.1%未満、Sb 0〜0.1%未満を含有するように、ガラス原料を調合することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の強化ガラスの製造方法。
  7. オーバーフローダウンドロー法で溶融ガラスを平板形状のガラスに成形することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の強化ガラスの製造方法。
  8. 軟化点が860℃以下になるようにガラス原料を調合することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の強化ガラスの製造方法。
  9. 熱膨張係数が60〜110×10−7/℃になるようにガラス原料を調合することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の強化ガラスの製造方法。
  10. 液相温度が1200℃以下になるようにガラス原料を調合することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の強化ガラスの製造方法。
  11. 液相粘度が104.0dPa・s以上になるようにガラス原料を調合することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の強化ガラスの製造方法。
  12. 請求項1〜11のいずれかに記載の製造方法により作製されてなることを特徴とする強化ガラス。
  13. タッチパネルディスプレイのカバーガラスに用いることを特徴とする請求項12に記載の強化ガラス。
  14. 携帯電話のカバーガラスに用いることを特徴とする請求項12に記載の強化ガラス。
  15. 太陽電池の基板またはカバーガラスに用いることを特徴とする請求項12に記載の強化ガラス。
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