以下、本発明の実施形態を、図面を用いて説明する。尚、以下の図面においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてある。
(定義)
まず、本願で使用される言葉を次の様に定義する。
情報表示端末とは、情報を表示する機能を有する電子機器で、一例としては電子書籍やインターネット閲覧機器、パーソナルコンピューター、携帯電話、ビデオ映像観賞器、デジタルフォトフレーム、ナビゲーションシステム、パーソナルデジタルアシスタンツなどである。
表示装置とは、いわゆるディスプレイで、電力や所定の信号などを入力すると画像を表示する装置である。
筐体とは、表示装置を制御するための主回路基板や電池などを納めた箱である。
(実施形態1)
「情報表示端末の概要」
図1は、本実施形態の情報表示端末を模式的に示しており、(a)は正面図、(b)は背面図である。又、図2は、本実施形態の情報表示端末を模式的に示しており、(a)は保持部と筐体下部とを一体形成した形態の断面図で、(b)は保持部と筐体下部とを別々に形成した形態の断面図である。両図とも図1(a)のA−A’の断面に相当する。以下、図1と図2とを用いて、まず情報表示端末の概要を説明する。
図1(a)に示す様に、情報表示端末1は少なくとも表示装置2と筐体3とを構成要素として有している。表示装置2は柔軟性を有する平板状の長方形であり、表示部21を有して、各種の情報を表示部21に表示する。筐体3は、図2(a)に示す様に、筐体上部31と筐体下部32と保持部36とを備え、筐体上部31と、筐体下部32及び保持部36とで表示装置2を挟持している。筐体上部31は表示装置2を覆い、表示装置2の正面を粘着剤326で固定している。一方、筐体下部32は表示装置2の外縁部の一部に配置されている。表示装置2の外縁部の一部とは、長方形の一辺である事が好ましい。後に詳述する様に、使用時には筐体下部32が使用者の手で握られる。従って、筐体下部32は情報表示端末1のグリップ部でもある。又、筐体上部31は情報表示端末1の正面側表面に設けられ、情報表示端末1の表面部でもある。図1(a)に示す様に、筐体上部31の内で表示部21に対応する部位は透明とされ、それ以外の周辺部は適当な色が塗られ、デザイン性に優れた情報表示端末1となっている。筐体上部31の長さ方向の中央付近には操作スイッチ4が設けられており、スイッチ操作を通じて表示部21に表示される情報が更新される。
情報表示端末1は長辺と短辺とを有する長方形をなしており、以降、図1を含む各図において、長辺(長さ)方向をy軸方向とし、長辺にほぼ直交する短辺(幅)方向をx軸方向とし、情報表示端末1の厚さ方向をz軸方向としている。更に、正面視にて、筐体下部32が設けられている一辺を情報表示端末1の右側の長辺(右辺)と定義する。尚、右辺に平行なもう一つの長辺を左辺と称する。y軸は筐体下部32の左辺32Lに合わせられ、x軸は手前の短辺(前辺と称する)に合わせられ、x軸とy軸との交点を原点Oとする。前辺に平行なもう一つの短辺を奥の短辺と称する。又、正面視にて、x軸の正の方向は右から左への向きとし、y軸の正の方向は手前から奥への向きとする。更に、図2(a)に示す様に、z軸の正の方向は背面(下)から正面(上)への向きとする。尚、筐体下部32が設けられている辺を右側の長辺と定義するので、実際の辺の長短は「長辺」や「短辺」と云った名称と合わない事もあり得る。
図2(a)に示す様に、筐体3は薄い平板状であり、表示面となる正面には筐体上部31が配置され、図1(b)と図2(a)に示す様に、表示面と反対の背面には筐体下部32と保持部36とが設けられている。筐体上部31も筐体下部32も薄い平板状で両者が重ね合わされて、保持部36と共に筐体3となる。保持部36は筐体下部32に接し、筐体下部32の外側に設けられて、表示装置2の背面を固定する。一方、筐体上部31には、図1(a)に示す様に、操作スイッチ4を除いて人工的な凹凸が存在せず、情報表示端末1の正面は美観に優れる平面となっている。
図2(a)に示す様に、筐体下部32は内部が箱状にくり貫かれており、底面37と底面37とに角度をなす側壁とを有する。本実施形態では底面と側壁との角度はほぼ90°であるが、90°から135°程度の鈍角としても良い。側壁は第一側壁35を含み、保持部36は第一側壁35から筐体下部32の外側へと延伸している。即ち、保持部36は第一側壁35の外側と表示装置2の背面とを架橋する様に設置されている。表示装置2も筐体上部31も保持部36も柔軟であるので、これらは、第一側壁35に対して、その法線方向に屈曲可能である。本実施形態では、図1(b)に示す様に、第一側壁35がy軸に平行なので、図2(a)に示す様に、表示装置2はx−z平面内で屈曲させる事ができる。この屈曲に対して情報表示端末1の耐久性を高めるべく、第一側壁35と保持部36との上面38における断面幅は、第一側壁35の底面37における断面幅よりも広くなっており、第一側壁35の上面38と保持部36の上面38とが表示装置2の背面を固定している。
筐体下部32内には表示装置2を制御する各種回路(制御回路)や電源などが収納されており、その結果、筐体下部32は情報表示端末1の重量の内で、半分以上といった主要な割合を占めている。好適例においては、筐体下部32が全体の58%の重量を占めている。こうした事などから、情報表示端末1の重心は、筐体下部32内に位置する。
表示装置2は軽くて、柔軟性を有する。加えて第一側壁35の上面38と保持部36の上面38とが比較的広い面積で表示装置2の背面を固定するので、表示装置2が屈曲させられたり、或いは筐体下部32と表示装置2との間に力が加えられたりしても(表示装置2に対してz方向に力が加えられても)、情報表示端末1が破損する可能性が著しく小さくなっている。この為に、情報表示端末1は外部衝撃に対して比較的強く、従来の様に表示装置2の全体を外箱に収納して保護する必要はない。こうして筐体下部32を表示装置2の外縁部に設ける事ができる。表示装置2は軽く、筐体下部32が表示装置2の全体を収納せず、更に金属製の補強部材等を配置する必要もないので、情報表示端末1の全体が薄くて軽く作製されている。
以下、情報表示端末1に関する技術的な詳細を説明するが、本実施形態では好適例として、表示装置2に電気泳動ディスプレイ(EPD:Electrophoretic Display)を適応した場合に付いて説明する。従って情報表示端末1の好適例は電子書籍となる。
「情報表示端末の断面構造」
まず、図2を用いて、情報表示端末の断面構造を説明する。
筐体下部32を成す側壁は第一側壁35と第二側壁34とに分類される。第一側壁35とは、表示装置2の表示部21を横切るように配置されている側壁で、第一側壁35には保持部36が接続されている。これに対して、第二側壁34とはその外側に表示装置2が存在しない側壁であり、第二側壁34の外側に保持部36は設けられない。本実施形態では、図1(b)に示す様に、筐体下部32の左辺32Lが第一側壁35であり、筐体下部32の右辺32Rと前辺と奧の短辺とが第二側壁34である。図2(a)に示す様に、第一側壁35の上面38は粘着剤326にて表示装置2の背面に固定される。一方、第二側壁34の上面38は、表示装置2のサイズに応じて、表示装置2の背面乃至は筐体上部31に固定される。表示装置2が筐体上部31の内側に配置されていれば、第二側壁34の上面38は筐体上部31に固定する事ができる。例えば図2(a)に示す様に、表示装置2の右辺が筐体上部31の右辺よりも内側に位置すれば、筐体下部32の右辺32Rをなす第二側壁34の上面38は筐体上部31に固定される。表示装置2のエッジと筐体上部31のエッジとが同位置に有れば(表示装置2のエッジと筐体下部32のエッジとが一致すれば)、第二側壁34の上面38は表示装置2の背面を固定する。例えば、本実施形態では表示装置2の長さと筐体上部31の長さとが等しく、其々の短辺が合わせられているので、筐体下部32の前辺32Dと奥の短辺32Uとをなす第二側壁34は表示装置2の背面を固定している。
筐体上部31は厚さが0.4mmのシクロオレフィンポリマーシートであり、表示装置2の正面とは透明な粘着剤326にて固定されている。このシートは厚みが3mmの時に全光線透過率が92%と、高い透明度を示している。筐体上部31には、この様に厚みが0.2mmから0.8mmの範囲にあり、3mm厚の全光線透過率が90%以上の柔軟なプラスチックシートを使用するのが好ましい。筐体上部31は表示装置2の全面を漏れなく被覆して、情報表示端末1の美観を増していると同時に、表示装置2に対する補強部材の役割をも演じている。厚みが0.2mm以上有れば、表示装置2と同程度かそれ以上の弾性を示す事になり、補強部材として十分に機能するようになる。又、3mm厚の全光線透過率が90%以上であるので、厚みが0.8mm以下で有れば、シートの全光線透過率は97%以上となり、表示品質を損なう恐れがなくなると共に、柔軟性も維持する事ができる。尚、筐体上部31にはここで用いたオレフィン系ポリマーの他に、アクリル系ポリマー(例えばポリメタクリル酸メチル樹脂)やポリカーボネートなどの透明度に優れたプラスチックシートを使用しても良い。この様に筐体上部31は、柔軟性を有する板状の透明部材であって、この後に説明する箱状の筐体下部32と組み合わせる事により、主回路基板324や電池などの電子部品を納める為の空間を作る。この空間を単純化して直方体と考えた時、本実施形態では、直方体の内で、正面の一面だけを筐体上部31が構成している。尚、直方体の他の面、或いは他の面の一部を、筐体上部31で構成する事も可能であり、デザイン性や操作性に優れる様に、筐体上部31は自由に設計できる。
筐体下部32はABS樹脂(アクリロニトリルとブタジエン、及びスチレンの共重合合成樹脂)などの外観性が良く、じん性に優れた強固なプラスチックから構成され、高い耐衝撃性を備えている。図2(a)に示す様に、筐体下部32の内側には主回路基板324が収納されている。主回路基板324には二次電池や制御回路が搭載されており、制御回路は各種の電子素子325によって組まれている。電子素子325とはICチップやコンデンサー、抵抗、変圧器などである。これらの電子素子325は主回路基板324の両面に実装され得る。主回路基板324の裏面は筐体下部32の内側の底面37に接し、主回路基板324の表面は粘着剤326と回路保護フィルム327とを介して表示装置2の背面に接している。粘着剤326は筐体下部32の側壁及び保持部36の上面38にも設けられている。この様に、表示装置2は筐体上部31と、筐体下部32及び保持部36とで挟まれると共に、筐体上部31や筐体下部32、保持部36とは粘着剤326でも固定されている。尚、筐体下部32としてはABS樹脂の他に、アイゾット衝撃強さが300J/m以上のじん性に優れた樹脂を使用でき、具体的にはポリスチレンや塩化ビニル樹脂、ポリカーボネートなどを使用しても良い。
保持部36は第一側壁35の法線方向に対して柔軟性を有しており、その上面38と第一側壁35の上面38とが単一な平面をなして表示装置2の背面を固定する様に、第一側壁35の上面38付近に設けられている。保持部36と筐体下部32とは同材料(即ちABS樹脂)にて一体形成されている。保持部36と筐体下部32との一括形成には、極めて簡単にこれらを作製できるとの利点が認められる他に、保持部36の上面38と第一側壁35の上面38とが同じ材料なので、粘着剤326に対する塗れ性が等しく、接着強度が上面38全体で均一になるとの利点が認められる。
尚、図2(b)に示す様に、保持部36と筐体下部32とは別材料として、異なった材質から成る保持部36を筐体下部32に取り付けても良い。即ち、保持部36は粘着剤326にて表示装置2の背面に接着されており、その保持部36に対して第一側壁35の上面38が接着剤328にて接合されている。表示装置2と保持部36とは柔軟性を有している為に、これらの接着には粘性流動し得る柔らかい粘着剤326を使用するのが好ましい。一方、保持部36と第一側壁35上面38との接合は、接合強度を高めるべく、硬化反応後に強い接着力を有する接着剤328を使用するのが好ましい。粘着剤326の接着力は接着剤328の接着力に劣る場合があるが、この場合でも、保持部36と表示装置2の背面との接着面積は、保持部36と第一側壁35の上面38と接着面積よりも遙かに広い為、筐体下部32と表示装置2とは強力に接着される。又、後述する様に、保持部36に合成ゴムを使用すると、筐体下部32と表示装置2との間にz軸方向の圧縮力が加えられても、保持部36が圧縮力を緩和する。即ち、固い接着剤328や第一側壁35の上面38が表示装置2の背面にくい込む事が抑制され、表示装置2の破損を防ぐ事ができる。
保持部36を筐体下部32とは別材料で形成すると、外観が高級感に満ちた情報表示端末1とできる。或いは、最適な材料を選択する事で、情報表示端末1の屈曲に対する耐久性を最大限に高める事ができる。外観が高級感に満ちた情報表示端末1とするには、保持部36に合成皮革や人工皮革を用いる。合成皮革とは動物の皮革に合成樹脂を塗布した物であり、人工皮革とは不織布などに合成樹脂(例えばポリウレタン樹脂や塩化ビニル樹脂)を含浸させて天然皮革を模造した物である。屈曲に対する最適材料として保持部36には、合成ゴムが使用される。具体的には、アクリルゴム(Acrylic rubber、アクリル酸エステルと2−クロロエチルビニルエーテルと共重合体(ACM)や、アクリル酸エステルとアクリロニトリルとの共重合体(ANM))、ニトリルゴム(nitrile rubber、アクリロニトリルと1、3−ブタジエンとの共重合体(NBR))、イソプレンゴム(Isoprene rubber)、ウレタンゴム(Urethane rubber)、エチレンプロピレンゴム(エチレンとプロピレンの共重合体(EPM)や、EPMに更に少量の第三成分を含む三元重合体(EPDM))、エピクロルヒドリンゴム(epichlorohydrin rubber、エピクロロヒドリンの単独重合体(CO)や、エピクロロヒドリンとエチレンオキシドの共重合体(ECO))、クロロプレンゴム(polychloroprene、クロロプレンの重合体)、シリコーンゴム(silicone rubber、シリコーンを主成分とするゴム状合成樹脂)、スチレン・ブタジエンゴム(styrene−butadiene rubber、スチレンと1、3−ブタジエンとの共重合体)、ブタジエンゴム(butadiene rubber)、フッ素ゴム(部分フッ素樹脂やフッ素樹脂の共重合体)、ポリイソブチレン(Polyisobutylene、イソブテンの重合体)などが保持部36に使用され得る。
筐体下部32の内部には主回路基板324が収納されており、主回路基板324と表示装置2との間には回路保護フィルム327が配置されている。主回路基板324に搭載されている電子素子325のサイズは様々で、高さも素子毎に異なる。又、主回路基板324の表面には半田も載せられており、これらの電子素子325や半田が主回路基板324の表面を凸凹にしている。その為に、もし回路保護フィルム327が配置されていないと、主回路基板324の表面に実装された背の高い電子素子325や半田の頂点と表示装置2背面とが点接触する事になる。この状況で、表示装置2と筐体下部32とを情報表示端末1へと組み立てると、組み立て時に筐体下部32に加えられた力が点接触している凸部の頂点に集中する事があり得る。即ち、表示装置2に局所的に(点状に)極めて強い圧力が加えられ、その為に表示装置2が破損する恐れがある。これを回避すべく、回路保護フィルム327が主回路基板324と表示装置2との間に配置されている。回路保護フィルム327は、透明乃至は非透明の軟性エラストマーシートを用いる事ができ、ここでは熱可塑性ウレタンエラストマーシートを使用した。
回路保護フィルム327の厚みは、使用されている電子素子325で最も背が高い(厚い)物の厚み以上とする。電子素子325の厚みは0.1mmから0.3mm程度なので、回路保護フィルム327の厚みは0.3mm以上とする。その一方で、余りにも厚いと筐体下部32が厚くなって、操作性が低下するので、最大でも1mm以下とする。又、主回路基板324に実装する半田の高さは最も厚い電子素子325の厚み(0.3mm程度)以下とする。本実施形態で使用した熱可塑性ウレタンエラストマーシートの厚みは0.4mmであった。
回路保護フィルム327には、主回路基板324の凹凸に相補的な凹凸が設けられている。主回路基板324上に相補的な凹凸を有する回路保護フィルム327を配置する事で、主回路基板324の凹凸を吸収する。回路保護フィルム327に設けられる相補的な凹凸として最も簡単な物は、凹部として回路保護フィルム327に穴や切り欠き(以下、これらを相補孔と称する)を設ける物である。相補孔は、主回路基板324に回路保護フィルム327を配置した際に、電子素子325や半田が存在する場所、或いは背の高い電子素子325や半田が位置する場所に設ける。回路保護フィルム327が電子素子325の厚みよりも厚いと、相補孔を設ける事で簡単に主回路基板324の凹凸を吸収して、組み立て時における表示装置2の破損確率をほぼゼロ%に低減する事ができる。相補孔は、回路保護フィルム327を、電子素子325や半田の位置に応じた部位の打ち抜きで形成できる。この方法は簡単な上に、量産性も高い。
回路保護フィルム327に相補的な凹凸を作製する方法としては、熱可塑性エラストマーシートを主回路基板324上に配置した後に、その上にポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂フィルムを配置する。これを上から平滑で均一に熱圧着し、最後にフッ素樹脂フィルムを剥がす方法がある。熱圧着は90℃、0.2MPa、30秒程度の条件で良く、これにより熱可塑性エラストマーは粘性流動し、その表面は平坦となる。この他にも主回路基板324の型を作っておき、これに高温で液体の熱可塑性樹脂を流し込み、冷却後に固化した樹脂を剥がして回路保護フィルム327としても良い。
主回路基板324の裏面にはテープ配線9を繋ぐコネクターが設けられており、このコネクターを通じて表示装置2には電源や信号が供給されている。尚、コネクターも含め、電子素子325の大半は主回路基板324の裏面に配置される。表面はできるだけ電子素子325の実装点数を減らすのが好ましい。又、背の高い電子素子325を主回路基板324の裏面に配置し、表面に実装する部品は、背の低い電子素子325とする。尖鋭な凸部は、筐体3と表示装置2とを組み合わせる際に、表示装置2を破損する恐れがある。従って、できるだけ主回路基板324表面を平滑とし、表示装置2背面との接触を面状にして、組み合わせ時における不良発生確率を低減させる。本実施形態では、主回路基板324の表面には厚みが0.3mmのチップコンデンサーが数個だけ搭載されていたので、熱可塑性ウレタンエラストマーシートでコンデンサーに対応する箇所に相補孔を設けて回路保護フィルム327とした。
操作スイッチ4は短い棒状で、図1(a)に示す様に、平面視で棒の前後左右方向に四接点を有すると共に(操作方向入力)、中央が押しボタン接点となっている。四接点と中央接点のいずれかが、棒の傾斜動作にて、スイッチ本体の接点と接すると、操作入力の信号が中央演算子に伝えられ、主回路基板324が所定の回路を動作させる事で、表示部21の情報が更新される。図2(a)に示す様に操作スイッチ4は主回路基板324から筐体上部31へと伸長しており、筐体上部31表面で唯一の凸部となっている。尚、図2(a)は、図1(a)のA−A’における断面図であるが、理解を容易にする為に、操作スイッチ4も描いてある。
「保持部の断面形状」
図3は、筐体下部と保持部とを模式的に示す断面図で、図2(a)のQ部を拡大した図である。又、図4は保持部の厚みと距離との関係を説明する図である。更に、図5は保持部のたわみと距離との関係を説明する図である。ここでは保持部36の断面形状を、図3と図4と図5とを用いて、説明する。尚、本実施形態では保持部36と第一側壁35とを一体形成してあるが、図3では、判り易くする為に、保持部36と第一側壁35とを実線で囲み、其々分けて描いてある。
図3に示す様に、保持部36は、その断面幅が底面37側から上面38側に向かうに従って(z軸に沿って、下から上に向かうに従って)広がっており、保持部36の上面38にてその幅を最大にしている。即ち、x軸方向に対しては、保持部36の厚みは第一側壁35から離れるに従って、薄くなっている。これ以降に、保持部36の厚さt(x)を第一側壁35からの距離xの関数で表した際に、どう云った関数としたら好ましいかを示す。即ち、好適例として、厚さが距離の一次式で表現される形態と、平方根で表現される形態、立方根で表現される形態、距離に対して一定である形態が示される。保持部36の幅WHが同じ場合、最も強い荷重に耐えられ、最も柔軟性に富むのは一次式の形態である事や、応力を保持部全体で均一に受け止めるのが平方根の形態である事、曲率半径が保持部全体で同一になるのが立方根の形態である事、等が示される。
(好適例1)厚さが距離の一次式で表現される形態
第一の具体例では、保持部36の厚さt(x)が第一側壁35からの距離xに対して線型関係にあり、
と記述される。ここでW
Hは保持部36の幅であり、αは傾斜パラメーター、保持部36の厚さは第一側壁35に接している箇所(x=0)にてt
0であり、先端(エッジ、x=W
H)にてt
E=αt
0である。図4には実線Lにて数式1にて表される距離(x/W
H)と厚み(t(x)/t
0)との関係を、α=0.2として描いてある。
保持部36に荷重Fが垂直に(z軸に平行に)加えられた際に、荷重が先端部に集中しているとの近似で、モーメントの釣り合いから導かれる基本方程式は、
である。尚、ここでRは保持部36がたわんだ際の曲率半径、zは保持部36のz方向へのたわみ量、Eは保持部36のヤング率、L
Hは保持部36の長さである。数式2に対する境界条件は、
が得られる。これが保持部36に荷重Fが垂直に加えられた際の、距離(x)とたわみ(z(x))との関係である。図5にこの関係を、α=0.2として、縦軸を規格化されたたわみ量(z(x)/(FW
H 3/(EL
Ht
0 3)))で、横軸を規格化された距離(x/W
H)として、実線Lにて描いてある。荷重Fに対し、保持部36が優れた柔軟性を有している事が判る。情報表示端末1の耐久性に悪影響を与えるくい込み圧力に関して後に詳述するが、荷重Fに対して柔軟である程(良くたわむ程)、保持部36の端部(x=W
H)が表示装置に及ぼすくい込み圧力は小さくなる。従って、図5から、好適例1の形態だと情報表示端末1はくい込み圧力が極めて小さく、表示装置の屈曲に対して優れた耐久性を示す事が判る。保持部36の端部におけるたわみz
Eは、数式4でx=W
Hと置いて、
となり、曲げ応力が最大となるのはx=(1−2α)/(1−α)・W
Hで、0≦α<0.5の時に、
となる。保持部36をなす材料の曲げ強さ(国際標準化機構のISO178が定め、三点曲げ試験から得られる曲げ強さ)をσ
bとすると、σ
Maxがσ
bよりも小さくなる条件
を満たしている限り、保持部36は破断しない。従って、保持部36は、使用時に想定される荷重の線密度(F/L
H)と保持部36の曲げ強さσ
bとを元に、数式8を満たす様に幅W
Hや第一側壁35における厚みt
0、傾斜パラメーターαを定める。或いは、使用時に想定される最もきつい曲率半径をR
Minとし、それが曲げ応力の最大になる場所での曲率半径に一致しても保持部36が破断しない条件とする。曲げ応力が最大になる場所での保持部36の厚みをt
Mとして、σ
Maxがσ
bよりも小さくなる条件は
である。従って、数式9を満たす様に厚みt
0と傾斜パラメーターαとを定める。即ち、保持部36の先端での厚みt
E=αt
0を、数式9を満たす様にすると、使用時に保持部36が破断する事はない。本実施形態では、保持部36はABS樹脂からなり、そのヤング率はE=2000MPで、曲げ強さはσ
b=50MPaである。使用時に想定される最もきつい曲率半径は10mmであるので、先端での厚みは、数式9に従って、0.25mm未満でなければならない。実際には、t
0=1mmでα=0.2、先端部の厚みは0.2mm、W
H=5mmであったので、数式9を満たしているにのみならず、曲率半径を8mmに小さくされるまで保持部36は破断しない様にされている。尚、表示装置2を強く屈曲させて、その結果として保持部36がたわみ、保持部36での最小曲率半径が8mm未満になった際に破断が生ずる恐れのある位置はおおよそ、x=0.889W
Hである。又、数式8より、保持部36が破断しない条件は、曲げ強さをMPa単位で表記し、厚みをmm単位で表記した時に、FW
H/L
H<0.107σ
b(N)となり、極めて強い荷重に対しても保持部36は破断しない事が判る。一般に、弾性体では数式9から判る様に薄いほど柔軟になる(曲率半径R
Minを小さくできる)。しかしながら、弾性体を薄くすると、数式8から判る様に、破断しやすくなる(薄いほどσ
Maxがσ
bを超えやすい)。従って、柔軟性と強靱性(破断しにくい性質)とを両立させるには、本好適例が示す様に断面形状を線型関係とし、数式9を満たす様に先端での厚みを小さくし、数式8を満たす様にt
0を大きくする事である。即ち、保持部36の断面の厚さが距離の一次式で表され、数式8と数式9とを満たす様にすると、柔軟性を有すると共に強靱とする事ができる。
尚、0.5≦α<1の場合には、曲げ応力が最大に成るのはx=0で、その値σMaxと曲率半径R0とは、其々
となる。使用時に想定される最も厳しい荷重線密度(F/L
H)や最もきつい曲率半径をR
Minに対して、
を満たす様にW
Hやt
0を定める。例えば先と同じABS樹脂で保持部36を作成し、同じ最小曲率半径を想定すると、数式11に則り、t
0<0.5mmとする。尚、この時に数式11より、保持部36が破断しない条件は、曲げ強さをMPa単位で表記し、厚みをmm単位で表記した時に、FW
H/L
H<0.042σ
b(N)となり、比較的強い荷重に対しても保持部36は破断しない事が判る。
(好適例2)厚さが距離の平方根で表現される形態
第二の具体例では、保持部36の厚さt(x)が第一側壁35からの距離xに対して平方根の関係にあり、
と記述される。図4には点線SRにて数式12にて表される距離(x/W
H)と厚み(t(x)/t
0)との関係を描いてある。
保持部36に荷重Fが垂直に(z軸に平行に)加えられた際に、荷重が先端部に集中しているとの近似で、モーメントの釣り合いから導かれる基本方程式は、
である。境界条件は具体例1と同じで、数式3にて与えられる。数式13を数式3の元に解くと、
が得られる。これが保持部36に荷重Fが垂直に加えられた際の、距離(x)とたわみ(z(x))との関係で、図5にこの関係を点線SRにて描いてある。荷重Fに対し、保持部36が柔軟性を有している事が判る。保持部36の端部におけるたわみz
Eは、
となり、曲げ応力は保持部36の幅方向で均一となる。即ち、幅方向の特定の位置で破断し易い様な事はなくなる。情報表示端末1の使用時に表示装置2を屈曲させると、表示装置2の屈曲に伴う応力が発生し、その応力の一部を保持部36が曲げ応力として受け持つ事になるが、それが保持部36上面38で均一になる。換言すれば、保持部36の特定箇所に応力が集中する事がなくなるので、その意味から情報表示端末1の機械的耐久性が向上する事になる。保持部36が曲げ応力で破断されない条件は、
である。使用時に想定される最も厳しい荷重線密度(F/L
H)に対して、数式17を満たす様にt
0やW
Hを定める。厚みが距離に対して平方根の関係にある場合、最も曲がりにくい点はx=0であるから、x=0における曲率半径R
0を用いて、R
0=R
Minとされた時に、x=0における曲げ応力σ
0が曲げ強さσ
bよりも小さく、次式を満たせば、
表示部21が屈曲されても保持部36は破断しない。即ち、使用時に想定される最もきつい曲率半径R
Minに対して、数式18を満たす様にt
0を定める。例えば先と同じABS樹脂で保持部36を作成し、同じ最小曲率半径を想定すると、数式18に則り、t
0<0.5mmとすれば、使用時に保持部36が破断する恐れはない。尚、この時に数式17より、保持部36が破断しない条件は、曲げ強さをMPa単位で表記し、厚みをmm単位で表記した時に、FW
H/L
H<0.042σ
b(N)となり、比較的強い荷重に対しても保持部36は破断しない事が判る。
尚、プラスチックにて保持部36を作製する際に、厚みを正確に数式12にて表される平方根の関係に加工するのは大変である。この場合は具体例1で示した線型関係で近似させる事ができる。即ち、
とする。一例として、α=0.395とした際のたわみを図5の実線L2にて描く。実線L2と点線SRとが良く一致している事が判る。この線型近似で、曲げ応力は保持部36の幅方向でほぼ均一となり、厚みが線型関係の時の効果に加え、平方根の時と同様な効果が期待でき、更に製造加工も容易になる。保持部36の厚さと距離とが数式19で表され、且つ、数式8と数式9とを満たすと柔軟性と強靱性とを兼ね備え、且つ曲げ応力は保持部全体で均一となり、理想的である。
(好適例3)厚さが距離の立方根で表現される形態
第三の具体例では、保持部36の厚さt(x)が第一側壁35からの距離xに対して立方根の関係にあり、
と記述される。図4には一点鎖線CRにて数式20にて表される距離(x/W
H)と厚み(t(x)/t
0)との関係を描いてある。
保持部36に荷重Fが垂直に(z軸に平行に)加えられた際に、荷重が先端部に集中しているとの近似で、モーメントの釣り合いから導かれる基本方程式は、
である。この場合、曲率半径は長さxに依存せず、一定となる。即ち保持部36の何処も同じ曲率半径を有しながら均一に変形する。表示装置2を屈曲させた際に、保持部36においては表示装置2が同一の曲率半径で綺麗に曲がり、表示装置2内の曲げ応力は保持部36の厚みに比例する事になる。保持部36が厚い箇所で曲げ応力が強く、薄いところで曲げ応力は弱くなる。その結果、保持部36の特定箇所が特別に破断し易くなると云う状態を避けられ、表示装置2の曲げに対する耐久性を向上させる事ができる。境界条件は具体例1と同じで、数式3にて与えられる。数式21を数式3の元に解くと、
が得られる。これが保持部36に荷重Fが垂直に加えられた際の、距離(x)とたわみ(z(x))との関係で、図5にこの関係を一点鎖線CRにて描いてある。荷重Fに対し、保持部36が柔軟性を有している事が判る。保持部36の端部におけるたわみz
Eは、
となり、x=0にて歪みも曲げ応力も最大となる。保持部36が曲げ応力で破断されない条件は、
である。使用時に想定される最も厳しい荷重線密度(F/L
H)に対して、数式25を満たす様にt
0やW
Hを定める。厚みが距離に対して立方根の関係にある場合、屈曲時に最も破断しやすい点はx=0であるから、R
0=R
Minとされた時に、x=0における曲げ応力σ
0が曲げ強さσ
bよりも小さく、次式を満たせば、
表示部21が屈曲されても保持部36は破断しない。即ち、使用時に想定される最もきつい曲率半径R
Minに対して、数式26を満たす様にt
0を定める。例えば先と同じABS樹脂で保持部36を作成し、同じ最小曲率半径を想定すると、数式26に則り、t
0<0.5mmとすれば、使用時に保持部36が破断する恐れはない。尚、この時に数式25より、保持部36が破断しない条件は、曲げ強さをMPa単位で表記し、厚みをmm単位で表記した時に、FW
H/L
H<0.042σ
b(N)となり、比較的強い荷重に対しても保持部36は破断しない事が判る。
尚、プラスチックにて保持部36を作製する際に、厚みを正確に数式20にて表される立方根の関係に加工するのは大変である。この場合は具体例1で示した線型関係で近似させる事ができる。即ち、
とする。一例として、α=0.58とした際のたわみを図5の実線L3にて描く。実線L3と一点鎖線CRとが良く一致している事が判る。この線型近似で、表示装置2の曲率半径は保持部36の幅方向でほぼ均一となり、厚みが線型関係の時の効果に加え、立方根の時と同様な効果が期待でき、更に製造加工も容易になる。
(好適例4)厚さが距離に対して一定である形態
第四の具体例では、保持部36の厚さt(x)が第一側壁35からの距離xに対して一定の関係にあり、
と記述される。図4には二点鎖線Ctにて数式28にて表される距離(x/W
H)と厚み(t(x)/t
0)との関係を描いてある。
保持部36に荷重Fが垂直に(z軸に平行に)加えられた際に、荷重が先端部に集中しているとの近似で、モーメントの釣り合いから導かれる基本方程式は、
である。境界条件は具体例1と同じで、数式3にて与えられる。数式29を数式3の元に解くと、
が得られる。これが保持部36に荷重Fが垂直に加えられた際の、距離(x)とたわみ(z(x))との関係で、図5にこの関係を二点鎖線Ctにて描いてある。荷重Fに対し、保持部36が柔軟性を有している事が判る。保持部36の端部におけるたわみz
Eは、
となり、x=0にて歪みも曲げ応力も最大となる。保持部36が曲げ応力で破断されない条件は、
である。使用時に想定される最も厳しい荷重線密度(F/L
H)に対して、数式33を満たす様にt
0やW
Hを定める。厚みが距離に対して一定の関係にある場合、屈曲時に最も破断しやすい点はx=0であるから、R
0=R
Minとされた時に、x=0における曲げ応力σ
0が曲げ強さσ
bよりも小さく、次式を満たせば、
表示部21が屈曲されても保持部36は破断しない。即ち、使用時に想定される最もきつい曲率半径R
Minに対して、数式34を満たす様にt
0を定める。例えば先と同じABS樹脂で保持部36を作成し、同じ最小曲率半径を想定すると、数式34に則り、t
0<0.5mmとすれば、使用時に保持部36が破断する恐れはない。尚、この時に数式33より、保持部36が破断しない条件は、曲げ強さをMPa単位で表記し、厚みをmm単位で表記した時に、FW
H/L
H<0.042σ
b(N)となり、比較的強い荷重に対しても保持部36は破断しない事が判る。
尚、保持部36と第一側壁35の上部を前述の人工皮革や合成ゴムで作製し、第一側壁35の下部(第一側壁35の上部を除く筐体下部32全体)をポリスチレンや塩化ビニル樹脂、ポリカーボネートなどのじん性に優れた樹脂で作製し、第一側壁35の上部に第一側壁35の下部を接着する場合には、合成ゴムの厚みtR0とヤング率ERとの積を、保持部36を筐体下部32の材料にて形成した場合に数式9や数式11、数式18、数式26、数式34にて計算される厚みt0とヤング率Eとの積に概ね等しくなるようにする。即ち、
を満たす様にする。これは合成ゴムでは、曲げ強さσ
bが測定不能であったり、著しく大きくなったりする為と、曲げに対する弾性(厚み×ヤング率)を筐体上部31と保持部36とで揃える為である。本実施形態では、筐体下部32と保持部36とを一体形成してあり、其々の材質や厚みを前述の如く調整してあるので、筐体上部31の曲げに対する弾性と保持部36の曲げに対する弾性が概ね等しくなっている。その結果、表示装置2を上側にも下側にも同程度の荷重で曲げられて、情報表示端末1は使用し易くなっている。この関係を維持する為に保持部36と第一側壁35の上部とを人工皮革や合成ゴムで作製した場合には、数式35を満たす様にするのである。尚、「概ね等しい」とは両者の比が10倍未満であり、それらの値が同じ桁数にある事を意味する。
図6は、本実施形態の効果を説明する断面図であり、(a)は比較例の情報表示端末1に上向きの荷重を加えた状態で、(b)は本実施形態の情報表示端末1に上向きの荷重を加えた状態を表す。又、図7は、本実施形態の効果を説明する断面図であり、(a)は比較例の情報表示端末1に下向きの荷重を加えた状態で、(b)は本実施形態の情報表示端末1に下向きの荷重を加えた状態を表す。
図6(a)と図7(a)とに示す比較例の情報表示端末1には保持部36が設けられていない。この比較例に対し、図6(b)と図7(b)とに示す本実施形態の情報表示端末1には保持部36が設けられており、第一側壁35と保持部36との断面における幅が底面37から上面38に向かうに従って広がっている。即ち、第一側壁35の底面37における幅よりも第一側壁35と保持部36との上面38における幅の方が広い。こうする事で、第一側壁35の上面38と表示装置2と接着力を増す事ができる。その結果、図6(a)と(b)とに示す様に、表示装置2に上向きの荷重Fが加えられても、表示装置2が第一側壁35の上面38から剥がれる不良を抑制できる。比較例の情報表示端末1では、図6(a)に示す様に表示装置2が剥離する恐れが残るが、本実施形態の情報表示端末1では、図6(b)に示す様に表示装置2が剥離する可能性を非常に低くする事ができる。
更に、図7に示す様に、情報表示端末1に下向きの荷重Fが加えられ、表示装置2が凸型に屈曲しても、表示装置2に発生する曲げ応力BSの一部を保持部36が受け持つ事ができ、情報表示端末1の機械的耐久性を向上させる事ができる。図7では、曲げ応力BSの強さを矢印の長短で表現してある。表示装置2の幅方向に平行な曲げ応力BSは、保持部36が弾性変形する事で荷重Fの一部を引き受ける事になり、図7(b)に示す様に、本実施形態の情報表示端末1に発生する曲げ応力BSは、図7(a)に示す比較例の情報表示端末1に発生する曲げ応力BSよりも弱くなる。強い曲げ応力BSは、後に詳述する薄膜回路80や電気光学材料55を破壊する恐れがあるので、曲げ応力BSを弱くする事は情報表示機器の製造時における破壊を抑制して生産性を高めると共に、使用時における機械的信頼性を高める事になる。
又、比較例の情報表示端末1では、図7(a)に示す様に、表示装置2が凸型に屈曲された際に、第一側壁35の上面38と外側の側面との角が表示装置2にくい込み、局所的に極めて強いくい込み圧力Pを表示装置2に及ぼす。図7では、くい込み圧力Pの強さを矢印の長短で表現し、くい込み圧力Pの及ぶ範囲を矢印の幅の広さで表現してある(従って数学的には矢印の長さと幅との積がくい込み力になり、図7(a)と図7(b)とでこの積の値は一致する)。これに対して、本実施形態の情報表示端末1では、図7(b)に示す様に、表示装置2が凸型に屈曲されても、保持部36が面で幅広く、弱いくい込み圧力Pを表示装置2に及ぼす。この為に、比較例の情報表示端末1はくい込み圧力Pに依って破損される恐れを無視できないが、本実施形態の情報表示端末1はくい込み圧力Pに依って破損される可能性は殆どゼロになる。更に、幅方向においては、保持部36は第一側壁35から離れるに従い厚みを減じているので、筐体下部32と表示装置2との間にz軸方向の圧縮力が加えられても保持部36の先端(エッジ)では殆どくい込み圧力Pが発生せず、端部への応力集中に伴う表示装置2の破損を防ぐ事ができる。強いくい込み圧力は、後に詳述する薄膜回路80や電気光学材料55を破壊する恐れ(薄膜回路80にクラックが入って配線が断線したり、電気光学材料55がつぶれたりする等の恐れ)があるので、これを弱くする事は情報表示機器の製造時における破壊を抑制して生産性を高めると共に、使用時における機械的信頼性を高める事になる。
「表示装置の平面構造」
図8(a)は、情報表示端末の構成要素である表示装置を正面視にて模式的に示した図であり、(b)は、情報表示端末の構成要素である筐体上部を正面視にて模式的に示した図である。ここでは表示装置の平面構造とその筐体への固定方法とを説明する。
図8(a)に示す様に、表示装置2は、電気光学パネル5と保護部6などから構成されている。電気光学パネル5はテープ配線9を付随しており、いわゆる裸のディスプレイである。保護部6は透明で、電気光学パネル5を被覆して、表示性能を損なう事なく、電気光学パネル5の機械的或いは化学的な耐久性を向上させている。テープ配線9は一方の端が電気光学パネル5に接続し、他方の端は主回路基板324に接続される。この他方の端を除いたテープ配線9と電気光学パネル5全体とを内包する様に保護部6が設けられる。従って、正面視において、保護部6の面積は電気光学パネル5の面積よりも広くなり、保護部6の外周部が、テープ配線9を除いて、そのまま表示装置2の外縁部となっている。又、正面視において、電気光学パネル5の大半は表示部21となっている。
図8(b)に示す様に、筐体上部31は、長さが表示装置2にほぼ等しく、幅は表示装置2よりも広くなっている。筐体上部31の正面には透明な表示部21が設けられ、表示装置2の表示部21と平面視で一致させられる。
図8(a)に戻る。保護部6の右辺には、固定用切り欠き部71が形成されている。固定用切り欠き部71が形成されている場所は、電気光学パネル5と正面視にて重ならぬ外縁部である。図8(a)では、固定用切り欠き部71は直径3.5mmの円形となっており、表示装置2の右辺の上下に二箇所設けられている。この様に、固定用切り欠き部71は複数個設けられる。複数個設ける事で、表示装置2を表示面に平行な方向で固定できる。固定用切り欠き部71が余りに沢山あると、筐体下部32に納める主回路基板324に制約が増えるので、固定用切り欠き部71は二箇所から四箇所程度とするのが好ましい。尚、表示装置2に設けられた固定用切り欠き部71に対応すべく、筐体下部32の内側には固定用突起が設けられる。固定用突起は直径3mmの円柱で、固定用突起が表示装置2に設けられた固定用切り欠き部71にはめ合わされる。こうして、図2(a)に示す様に、筐体上部31と筐体下部32とが表示装置2の外縁部の一部を挟持する事になる。
図8(a)に示す様に、保護部6の右辺には、スイッチ用切り欠き部42が形成されている。スイッチ用切り欠き部42が形成されている場所は、電気光学パネル5と正面視にて重ならない部位である。即ち、スイッチ用切り欠き部42とは、保護部6がそこだけ取り除かれている部位である。図8(a)では表示装置2の右側の外縁部にある保護部6が、中央付近で台形状に切り取られており、これがスイッチ用切り欠き部42となっている。これに対応して、図8(b)に示す様に、筐体上部31には穴が開けられ、スイッチ孔41をなしている。図2(a)に示した様に、情報表示端末1は筐体下部32内に主回路基板324や電池を有し、操作スイッチ4も筐体下部32内の主回路基板324から伸長する。こうして操作スイッチ4は、表示装置2に設けられたスイッチ用切り欠き部42と、筐体上部31に設けられたスイッチ孔41を介して、情報表示端末1の正面に取り出される。
尚、表示装置2に設けられるスイッチ用切り欠き部42は円形乃至は多角形の穴であっても構わず、同様に筐体上部31に設けられるスイッチ孔41も穴に限らず、切り欠き状で有っても構わない。又、図1に示されている様に、操作スイッチ4が筐体3の長手方向中央に位置しているので、スイッチ用切り欠き部42も表示装置2の長手方向の中央に設けられ、スイッチ孔41も筐体上部31の長手方向中央に設けられているが、スイッチ用切り欠き部42もスイッチ孔41も操作スイッチ4の位置に合わせて形成されていれば良い。
「筐体のサイズ」
ここでは、まず筐体上部31と筐体下部32の各辺の名称を定義する。図1に示す様に、筐体下部32は表示装置2の右辺に設置されるが、この辺に平行な筐体下部32の辺を「筐体下部32の長辺」と呼ぶ。又、筐体下部32の長辺に直交し、表示装置2の短辺に平行な辺を「筐体下部32の短辺」と呼ぶ。筐体下部32の長辺で、表示装置2の内側に位置する辺(表示装置2の中心に近い方の辺)を「左辺32L」と呼び、筐体下部32の長辺で、表示装置2の外側に位置する辺(表示装置2の中心から離れた方の辺)を「右辺32R」と呼ぶ。筐体下部32の短辺で奥の辺を、「奥の短辺32U」と呼び、筐体下部32の短辺で手前の辺を、「前辺32D」と呼ぶ。筐体上部31に関しても、図8(b)に示す様に、これらと同様な名称を用いる。尚、長辺と短辺の定義を上記とするので、実際の辺の長短は「長辺」や「短辺」と云った名称と合わない事もあり得る。又、奥の短辺と前辺の定義を上記とするので、これらの短辺の前後関係が名称と合わない事もあり得る。
図8(b)に示す様に、筐体上部31は平板状で、長さLFと幅WFとを有する。同じく図1(b)に示す様に、筐体下部32は平板状で、長さLBと幅WBとを有する。長さLFとは、筐体上部31の長辺の長さである。同様に幅WFとは、筐体上部31の短辺の幅である。長さLBと幅WBに関してもこれらと同じ関係にある。
長さLFと長さLBとは共にほぼ等しく、それぞれの一つの長辺を表示装置2と反対側の辺で合わせる。即ち、右辺31Rと右辺32Rとを合わせる。又、筐体上部31の短辺と筐体下部32の短辺もそれぞれ合わせる。その結果、筐体3の奥の短辺と前辺、及び右辺とで、筐体上部31の三つの端辺(エッジ)と筐体下部32の三つの端辺(エッジ)とがそれぞれ揃い、一体感のある筐体3となる。又、図1(a)に示す様に、表示部21をなす各辺が表示装置2の各辺と平行であり、更にこれらの辺が筐体3をなす各辺と平行とされている。こうした事から情報表示端末1は優れた美観を呈している。尚、本実施形態では、長さLFと長さLBが共に181mmである。
筐体上部31の幅WFに関しては、それを表示装置2の幅よりも広くし、図1(a)に示す様に、情報表示端末1を組み立てた際に筐体上部31が表示装置2全体を覆う様にする。本実施形態では、幅WFは151mmであり、表示装置2の幅149mmよりも2mm広くされている。表示装置2の左辺と左辺31Lとが一致させられ、図2(a)に示される様に、表示装置2の右辺は右辺31Rよりも2mm内側に位置する。
幅WBに関しては、図1(b)に示す様に、筐体下部32は表示部21の背面と、背面視において、重なる。即ち左辺32Lが表示部21の背面を縦断し、左辺32Lは第一側壁35となる。これは、情報表示端末1を制御する主回路基板324や電池などを筐体下部32に組み入れると共に、筐体3を手で保持しやすくする為である。筐体下部32に主要部品を組み入れるので、前述の如く筐体上部31を単純な平板にする事ができる。尚、本実施形態では、幅WBが45mmである。又、情報表示端末1は幅が151mmで、長さが181mm、情報表示端末1の正面視における面積は27331mm2である。又、表示部21は幅が125mmで、長さが169mm、正面視における面積は21125mm2である。従って情報表示端末1に対する表示部21の面積割合は77%となり、極めて機能的な情報表示端末1となっている。
「筐体下部幅と操作スイッチの位置」
図9(a)は情報表示端末の使用時における正面斜視図の一例であり、図9(b)は情報表示端末の使用時における背面斜視図の一例である。ここでは図9を用いて、情報表示端末を使いやすくする構成要件を説明する。
情報表示端末1を使用する際に、図9(a)に示す様に、筐体3の右辺を手のひらの下部(親指の近位指節間関節筋肉部)に当て、図9(b)に示す様に、手を軽く丸めて人差し指や中指の先或いは薬指先を左辺32Lに引っ掛けると、情報表示端末1を片手で保持しやすい。この時に、親指を除く四本の指と手のひらとで情報表示端末1を固定するので、親指は自由に使える。即ち、片手で情報表示端末1を安定に保持しつつ、筐体上部31に設けられた操作スイッチ4を親指で自由に操作できる様になる。これを実現するには、まず幅WBを、手のひら下部から手を軽く丸めた際の中指の先或いは薬指の先までの距離と等しくする必要がある。大人の平均的なこの距離はおおよそ30mmから60mmである。従って幅WBは30mmから60mmとするのが好ましい。
又、筐体下部32の前辺32Dと右辺32Rとの交点をなす角を、手のひらの下部で押さえ込むと、情報表示端末1をより保持しやすくなる。この際に親指で操作スイッチ4を操作するには、手のひらの下部から親指の先までの距離が、この角から操作スイッチ4までの距離とほぼ同じにならねばならない。大人の手のひら下部から親指までの距離は、平均的にはおおよそ50mmから100mmなので、前辺32Dと右辺との角から操作スイッチ4までの距離を50mmから100mmとするのが好ましい。尚、本実施形態では、その距離は83.5mmとされ、操作スイッチ4は筐体上部31の長辺方向で中央に位置する。
「電気光学パネル」
図10は電気光学パネルを模式的に示す正面図である。又、図11は、図2(a)から表示装置を抜粋した断面図で、図1(a)のA−A’の断面に相当する。尚、参考の為に、固定用切り欠き部71を破線にて描いてある。ここでは図10と図11とを用いて、情報表示端末に使われる電気光学パネルを説明する。
図10に示す様に、電気光学パネル5は表示装置2から保護部6を取り除いた物で、いわゆる裸のディスプレイである。電気光学パネル5はテープ配線9を付随している。テープ配線9とは、主回路基板324と電気光学パネル5とを電気的に接続する柔軟な部品で、フレキシブル・プリント・サーキット(FPC:Flexible Print Circuit)の様に配線だけからなっていても良いし、或いは、チップ・オン・フィルム(COF:Chip−On−Film)やテープ・キャリアー・パッケージ(TCP:Tape−Carrier−Package)の様にFPCにICチップを積んでいてもよい。電気光学パネル5には実装部91が設けられており、この実装部91にテープ配線9を接続する。
図11に示す様に、電気光学パネル5は第一基板53と第二基板54とを有し、両基板間に電気光学材料55が挟持されている。第一基板53の表面には薄膜回路80が形成されている。薄膜回路80は画素回路81と駆動回路とを含んでいる。この為に、第一基板53はしばしばアクティブマトリックス基板とも称せられる。又、第二基板54の表面には共通電極541が形成されている。尚、第一基板53が有する複数の面のうち電気光学材料55が設けられる側の面を表面と定義し、表面の反対側の面を裏面と定義する。第二基板54の表面と裏面も同様に定義される。電気光学材料55は両基板の表面に均一にほぼ全面に渡って配置されている。又、共通電極も第二基板54の表面のほぼ全面に形成されている。その為に図10では電気光学材料55と第二基板54を省略した電気光学パネル5(要するにアクティブマトリックス基板)を描いてある。
図10に戻る。
電気光学パネル5は表示部21と周辺部52とに分けられる。表示部21は電気光学材料55の光学特性を変調できる部位で、ここに情報が表示される。電気光学パネル5の内で表示部21以外を周辺部52と称する。同時に、電気光学パネル5を画素領域511と非画素領域とに分ける事もできる。画素領域511とは複数の画素513が行列状に配置されている領域で、各画素513の光学特性を制御する事で画素領域511に情報が表示される。非画素領域とは電気光学パネル5で画素領域511でない箇所を指す。画素領域511の概念を用いると、表示部21は画素領域511と余白領域512とからなり得る。余白領域512とは、画素領域511に隣接する非画素領域(画素領域511の外周部)に設けられた額縁状の領域である。ここには精細な情報を表示する事はできないが、画素領域511の外周部に配置された駆動回路や配線を隠して、白(明)黒(暗)乃至はこれらの中間階調の表示をなして、余白とされている領域である。尚、余白領域512はなくても構わず、その場合は表示部21と画素領域511とが一致し、周辺部52と非画素領域とが一致する事になる。
第一基板53に形成されている薄膜回路80は薄膜トランジスター(TFT:Thin Film Transistor)や薄膜キャパシター、薄膜ダイオード、薄膜抵抗などの薄膜素子から構成されている。第一基板53は柔軟性を有するプラスチック(典型的にはポリエステルフィルム)の平滑な基板である。又、TFTの半導体層は結晶性のシリコン膜である(これを結晶シリコンTFTと称す)。第一基板53の表面には、画素領域511に設けられた画素回路81や、配線、駆動回路(走査回路82や信号回路83)などが薄膜素子にて形成されている。これらの薄膜素子は、後述する転写技術を用いて、プラスチックフィルム上に接着されている。表示領域は典型的には長方形などの四角形となるが、その他の多角形や円形、楕円形、ハート型などであっても良い。
第一基板53にて画素領域511には、複数の画素513が行列状に配置され、各画素513に画素電極が形成されている。画素電極は各画素513に設けられた画素回路81に接続され、画素毎に独立に制御される。具体的一例としては、画素回路81は一つのTFT(画素TFT)と一つのキャパシターからなり、画素TFTのゲート電極は行線に相当する走査線に接続され、ドレイン電極は列線に相当する信号線に接続され、ソース電極は画素電極に接続される。複数の走査線は走査回路82により駆動され、複数の信号線は信号回路83によって駆動される。走査回路82や信号回路83は薄膜トランジスターで構成されている。尚、画素回路81としては、この他にスタティック・ランダム・アクセス・メモリー(SRAM:Static Random Access Memory)構成やダイナミック・ランダム・アクセス・メモリー(DRAM:Dyanamic Random Access Memory)構成などの記憶素子型の構成としても良い。
「第一基板における駆動回路」
画素領域511の外周には走査回路82や信号回路83が設けられ、その他にも実装部91や配線が設けられる。実装部91はテープ配線9を介して主回路基板324に接続される。主回路基板324は駆動回路等に電源や信号を供給し、電気光学パネル5を制御する。配線には、駆動回路間を結ぶ配線や、駆動回路と画素領域511とを結ぶ配線、及び実装部91と駆動回路等を結ぶ配線が含まれている。画素領域511に隣接する外周部位には余白領域512が形成される。即ち、余白電極にて駆動回路の一部や配線の一部を覆う。余白電極は画素電極と同じ材料(例えば透明導電膜)で同じ層上(例えばTFTの最上層)に形成される。余白電極は、主回路基板324内の制御回路に電気的に接続される。制御回路は余白電極の電位を変調する事によって、余白電極上に設けられた電気光学材料55の光学特性を制御する。
走査回路82や信号回路83の内で、余白電極は、比較的低速で動作する領域(低速動作回路831)とは平面視で重なっており、比較的高速で動作する領域(高速動作回路832)とは平面視で重ならない事が好ましい。低速動作回路831とは、回路の動作クロック周波数が概ね1MHz程度未満の領域であり、具体的には走査線を選択する走査回路82や、信号回路83の出力部分などが相当する。信号回路83の出力部分とは、シフトレジスターやデコーダーといった選択回路からの出力以降の回路で、例えば、各信号線に入力される信号を作製する信号処理回路である。一方、高速動作回路832とは、通常1MHz以上の高速動作が必要とされる回路で、例えば信号回路83のクロック回路や選択回路(シフトレジスター回路やデコーダー回路)がこれに相当する。余白電極は低速動作回路831と平面視で重なっているが、高速動作回路832とは平面視で重なっていない。これは余白電極と高速動作回路832との間に寄生容量を発生させぬ為である。寄生容量の発生を防ぐ事で、高速動作回路832は設計通りに、高速に回路を動作させる。尚、上述の構成をなす為に、図10に示す様に、画素領域511の外側に低速動作回路831が設けられ、更にその外側に高速動作回路832が設けられる。
尚、本実施形態では、好適例として、画素領域511に1024×768=786432個の画素が形成されているが、駆動回路をTFTにて内蔵した為に、実装部91における接続端子数は、検査端子も含めて50本とされた。実装不良は柔軟性を有する表示装置2における主要課題であるが、駆動回路を内蔵させる事で接続端子数を大幅に削減し、この課題を解決している。
「第一基板上への薄膜素子の形成方法」
第一基板53は柔軟性を有するプラスチックフィルムであるが、ここでは第一基板53上への薄膜素子の形成方法を述べる。具体的には、最初にガラス基板に形成された薄膜回路80を剥離して、プラスチックフィルムに転写する方法である。
第一工程として、製造元基板となるガラス基板上に剥離層を設ける。剥離層は厚みが50nm程の水素化非晶質シリコン膜である。この剥離層上に下地絶縁膜となる酸化硅素膜を成膜した後に、TFTなどからなる薄膜回路80を製造する。薄膜回路80は、公知の低温工程多結晶シリコンTFTの製造方法を適応する。具体的には、下地絶縁膜上にレーザー結晶化された多結晶シリコン半導体層を設け、その後に、酸化硅素膜を用いたゲート絶縁層と、アルミニウム又はアルミニウムに添加物を加えた金属を用いたゲート電極とを作製する。更に、酸化硅素膜を用いた第1層間絶縁層、アルミニウム又はアルミニウムに添加物を加えた金属を用いたソースコンタクト及びドレインコンタクト、ポリイミド系の樹脂を用いた第2層間絶縁層、インジウム錫酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)を用いた画素電極及び余白電極を作製する。
次に第二工程として、仮接着剤を薄膜回路80表面に塗布し、製造元基板を仮転写基板に貼り付ける。仮接着剤としては、アクリル系の樹脂に水溶性を与えるべくポリビニルピロリドン樹脂を混合したものを用いる。仮転写基板は平滑なガラス基板である。
次に第三工程として、製造元基板を取り外し、薄膜回路80を仮転写基板に移す。製造元基板を取り外す方法としては、製造元基板裏面からレーザー光を照射して剥離層の内部又は界面における密着力を弱め、次いで製造元基板と仮転写基板とを引き剥がす。こうする事で薄膜回路80は仮転写基板に移される。
次に第四工程して、薄膜回路80の裏面に残る剥離層を除去し、例えばイオナイザーを用いて薄膜回路80の裏面に存在する電荷を除去する。此に依り剥離帯電や乾燥時の空気との摩擦帯電を或る程度除去できる。
次に第五工程として、例えばアクリル系の樹脂からなる永久接着剤を用いてプラスチックフィルムの第1面側に薄膜回路80の裏面を貼り付ける。プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンナフタレート(PEN:Polyethylene naphthalate)などのポリエステルフィルムを用いる事ができる。
次に第六工程として、プラスチックフィルムを貼り付けた後、一時接着剤を用いてプラスチックフィルム第2面側(第1面側と反対の面)に支持基板を取り付ける。支持基板にガラスを使用すると、この後の工程に、ガラス基板に作製されたTFTに適応される製造工程を流用できる。即ち、開発要素を削減できる為、好適である。一時接着剤は紫外線照射に依り接着力を喪失する物を使用する。
次に第七工程として、仮接着剤を溶解する溶媒(この場合には水)を用いて仮転写基板を外す。その後、仮接着剤を洗浄して除去する。
次に第八工程として、各種実装作業を行う。まず、実装部91にテープ配線9を実装する。この際には異方性導電ペーストや異方性導電フィルム(これらを併せて異方性導電接着剤と呼ぶ)を実装部91とテープ配線9との間に配置して両者を接着する。次に共通電極が形成された第二基板54と第一基板53との間に電気光学材料55を挟持させる。具体的にはポリエチレンテレフタレート(PET:Polyethyleneterephtalate)フィルムが第二基板54であり、この表面にITOにて共通電極が形成されており、このITO上に電気光学材料55が配置されているシートを準備し、これを第一基板53に貼り合わせる。
最後に第九工程として、一時接着剤に紫外線を照射して接着力を喪失させる事で、プラスチックフィルムから支持基板を外し、電気光学パネル5が完成する。
「表示装置の断面構造」
図11を用いて、表示装置2の断面構造を説明する。表示装置2は電気光学パネル5と保護部6とを構成要素として含む。保護部6は少なくとも保護シート61と封止材62とを含んでおり、保護シート61の外周部に封止材62が配置されている。保護シート61は主として表示面に垂直な方向からの防水性やガスバリアー性の機能を有し、封止材62は主として表示面に平行な方向からの防水性やガスバリアー性の機能を有している。
保護部6は、図8(a)に示す様に正面視において、電気光学パネル5をテープ配線9の他方の端を除いて完全に覆うと共に、図11に示す様に、断面図においても、電気光学パネル5をテープ配線9の他方の端を除いて完全に覆っている。即ち、本実施形態の表示装置2は、保護シート61と封止材62とで電気光学パネル5の上下左右前後の総てを固定している。一般には、第一基板53が柔軟性を有するプラスチックフィルムで、薄膜回路80がシリコン系のTFTを含むと、薄膜回路80は端部より割れ目が入って、壊れ易い。これに対して本実施形態の表示装置2は、電気光学パネル5の上下左右の外周縁と正面及び背面の総てを固定しているので、薄膜回路80の機械的耐久性を著しく向上させる事ができる。
電気光学材料55は、実装端子911が存在する位置には配置されておらず、テープ配線9と異方性導電接着剤との厚み合計は電気光学材料55の厚みとほぼ等しくされている。実装端子911上から電気光学材料55を除去し、代わってここに同じ厚みになる様にテープ配線9を実装する事で、表示装置2を全体で均一な厚みとしている。これに依り電気光学材料55が塗布された第二基板54を第一基板53に貼り合わせる時や、保護シート61貼り合わせ時、並びに封止材62硬化時に、実装端子911部から薄膜回路80に亀裂が入って回路を破壊する事を防いでいる。
「保護部の材質」
保護シート61はポリエステルフィルムやポリプロピレンフィルム等が基材となり、その一面乃至は両面に酸化硅素膜や窒化硅素膜が水や酸素に対するバリアー層として成膜されている。保護シート61の内側面(第一基板53裏面や第二基板54裏面に接する面)には熱可塑性樹脂がホットメルト接着剤として塗布されており、電気光学パネル5と保護シート61とを接着している。表示装置2を作製する際には、電気光学パネル5にホットメルト接着剤が塗布された面を合わせ、真空中にて熱圧着して、保護シート61と電気光学パネル5とを接着する。熱可塑性樹脂を利用する事で樹脂が電気光学パネル5の総てに隙間なく流動し、電気光学パネル5の上下左右前後を満遍なく固定する。もし僅かな隙間が存在して、その隙間で電気光学パネル5が固定されていないと、柔軟性を有する薄膜回路80はその部位から壊れる恐れが高い。熱可塑性樹脂を保護シート61の接着剤として使用する事でこの課題は回避され、機械的強度が著しく向上したフレキシブルな表示装置2が実現する。
熱可塑性樹脂としては、オレフィン系樹脂やオレフィン系共重合体樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミドなどが使用される。オレフィン系樹脂は、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリブテンなどである。又、オレフィン系共重合体樹脂は、エチレンプロピレンやエチレンブテン、エチレンビニルアセテート(EVA:Ethylene−vinyl acetate)、エチレンエチルアクリレート(EEA:Ethylene−ethyl acrylate)などである。保護シート61の基材と電気光学パネル5との接着力を高め、且つ接着後に柔軟性を持たせるには熱可塑性樹脂を二層に塗布するのが好ましい。この場合、基材フィルムにまず高融解温度の樹脂を塗布した後に、その上に低融解温度の樹脂を塗布して接着剤層とする。一例として、高融解温度の樹脂としては融解温度が90℃から120℃である低密度ポリエチレン樹脂を用い、低融解温度の樹脂としては融解温度が70℃から90℃であるEVA樹脂を用いる。尚、ここでの融解温度とは、示差走査熱量測定にて昇温速度10℃/分として測定した際の、融解の吸熱ピークトップ温度である。
尚、保護シート61の内側面に塗布される接着剤は熱可塑性樹脂の他に熱硬化性樹脂や紫外光硬化性樹脂などで有っても構わない。
封止材62は上述の熱可塑性樹脂をそのまま用いても構わないし、別に熱硬化性樹脂や紫外線硬化樹脂を新たに配置しても良い。図11の表示装置2では封止材62に保護シート61の熱可塑性樹脂をそのまま用いた。熱可塑性樹脂をそのまま使用するには、基材のフィルム内側面全面に熱可塑性樹脂を塗布し、この保護シート61で単純に電気光学パネル5を挟み込む。こうすると、極めて簡単な工程で表示装置2が製造される。熱圧着の条件は、真空ラミネータにて真空引きを30秒間行って250Paの真空とした後、90℃で30秒間に渡り、0.2MPaの圧力を加えて圧着した。
封止材62として熱硬化性樹脂や紫外線硬化樹脂を使用する場合、保護シート61を電気光学パネル5の上下に配置し、熱圧着する前に、外縁部に封止材62を塗布する。粘度が10mPas未満の低粘度の封止材62を用いると、毛管現象で上下の保護シート61間に封止材62が入って行く。その状態で熱圧着を施して保護シート61を接着すると共に、封止材62が熱硬化性樹脂ならば、同時に封止材62も硬化させる。封止材62が紫外線硬化樹脂の場合には、熱圧着に続き紫外線を照射して封止材62を硬化させる。熱硬化性樹脂としてはフェノール樹脂やメラミン樹脂、ポリウレタンなどが使用され、紫外線硬化樹脂としてはエポキシ樹脂やイミド系樹脂、アクリル系樹脂などが用いられる。これらの熱硬化性樹脂や紫外線硬化樹脂は、上述の熱可塑性樹脂よりも高温時における粘性流動性が低い為に、高温時での防水性やガスバリアー性に優れている。取り分け、熱硬化性樹脂はこの傾向が強く、高温高湿時に表示装置2の化学的耐久性を高める事になる。
フレキシブルな表示装置2の機械的耐久性を高め、併せて表示面に平行な方向の化学的耐久性を高める理想的な断面構造は、封止材62の内側(電気光学パネル5に接する方)に熱可塑性樹脂を配置して電気光学パネル5を隙間なく固定し、その外側(封止材62の外側で外気に接する方)を熱硬化性樹脂で固める事である。封止部に熱硬化性樹脂を用いる場合には、固定用切り欠き部71やスイッチ用切り欠き部42は、熱硬化性樹脂が配置された場所に設けるのが好ましい。熱硬化性樹脂の方が熱可塑性樹脂よりも高温時における防水性やガスバリアー性が優れる為に、これらの切り欠き部が熱可塑性樹脂部に設けられた時よりも、水平方向からの化学的耐久性を高められるからである。
尚、本実施形態の表示装置2では、第一基板53が厚さ25μmのPENフィルムで、第二基板54が厚さ25μmのPETフィルム、上下の保護シート61が厚さ50μmのPETフィルム、保護シート61表面に設けられた熱可塑性樹脂の厚みが10μm、電気光学材料55とテープ配線9の実装部91の厚みが50μmで、総厚は凡そ0.22mmであった。プラスチックフィルムを主体とした厚さが1mm未満の表示装置2は十分な柔軟性を備えており、曲率半径10mm程度に曲げても表示装置2は破損する事はない。
「情報表示端末の重心」
図12は情報表示端末の使用状態を模式的に示す平面図である。これ迄説明して来た様に、情報表示端末の重心は、端末の中心を外れて、筐体下部32内に位置する。ここでは図12を用いて、これを具体的に検証すると共に、情報表示端末1の使用し易さを実証する。
図12に示す様に、情報表示端末1の前辺をx軸とし、便宜上、右辺をy‘軸とする。前辺と右辺との交点を原点O’とする。
この座標系を用いて、情報表示端末1の重心Cの位置を求める。情報表示端末1の幅(x方向)、即ち、筐体上部31の幅WFは151mmで、長さ(y‘方向)は181mmである。表示装置2の幅は149mmで、筐体下部32の幅WBは45mm、保持部36の幅WHは5mm、筐体3右辺と表示装置2右辺とはx方向に2mm離間している。これらの値から、表示装置2の重心Pは、(x、y)座標を用いて、P=(76.5、90.5)となる。同様に筐体下部32の重心Bは、B=(22.5、90.5)、保持部36の重心Hは、H=(46.9、90.5)、筐体上部31の重心Fは、F=(75.5、90.5)となる。尚、筐体下部32の重量は、筐体下部32内での一様分布を考えてといる。一方それぞれの重量は、表示装置2が8.34gで、筐体下部32が28.60g、保持部36が0.55g、筐体上部31が11.04gである。従って、情報表示端末1の総重量は48.53gである。重心の合成則により、情報表示端末1の重心Cは、C=(44.1、90.5)に位置する。情報表示端末1の重心Cは、幅方向で情報表示端末1の右側の外縁部から44.1mm(筐体下部32の左辺32Lから筐体下部32の中心方向へ0.9mmの位置)、長さ方向で情報表示端末1の中央、となる位置で、筐体下部32内に位置する。
情報表示端末1の重心が筐体下部32内にあり、筐体下部32を握る(右辺32Rを手のひらの下部に当て、手を軽く丸めて人差し指や中指の先或いは薬指先を左辺32Lに引っ掛けて、情報表示端末1を保持する)と、情報表示端末1の重心は手の上に位置する事になる。即ち、この様に情報表示端末1を保持すると、トルクは殆どゼロになる。情報表示端末1を保持した際のトルクは全く感じられず、手のひら全体が受ける荷重も僅か48.45gとなる。情報表示端末1を片手で保持しても、疲労する事なく、長時間使用できるのである。
次に、図12に示す様に、情報表示端末1の右下を親指TBと人差し指IFとで掴んで持つ場合を考える。原点O’から内側に1cmの位置Tに親指TBを掛け、親指TBから重心方向に1cmの位置Iの背面に人差し指IFを置いたとする。こうすると人差し指IFの位置Iから情報表示端末1の重心C迄の距離は77mmとなる。その為に、この状態で親指TBに掛かるトルク(親指TBが情報表示端末1を押さえる力)は373g重となる。又、人差し指IFに掛かる荷重は422gとなる。従来は、全く同じ面積の従来の情報表示端末1を同じ様に掴んだ場合、親指TBに掛かるトルクが3760g重で、人差し指IFに掛かる荷重は4160gであったから、本実施形態により、親指TBに掛かるトルクも人差し指IFに掛かる荷重も、従来から90%程度削減された事になる。即ち、従来は情報表示端末1の角を掴んで使用する事はできなかったが、本実施形態により、それが可能となった。
「情報表示端末の重心が筐体下部内に位置する条件」
図13は情報表示端末の横方向における断面図で、構成要素別に重心と座標とを描いてある。前述の如く、情報表示端末1の重心は、筐体下部32内に位置する。ここでは図13を用いて、その条件を示す。尚、本実施形態で筐体3は表示装置2とその長さが等しく、表示装置2の重心Pのy座標Pyは、筐体上部31の重心Fのy座標Fyや筐体下部32の重心Bのy座標By等と重なる。即ち、縦方向では情報表示端末1の重心Cは筐体下部32内に位置している。従って、ここでは横方向に関して検討する。又、保持部36の幅が30mm以内であると、保持部36は軽くて、重心の位置に殆ど影響しないので、ここでは保持部36の重量を筐体下部32の重量に組み入れる近似を取る。
まず、表示装置2の重量をmPとし、筐体上部31の重量をmFとし、筐体下部32の重量をmBとする。更に、情報表示端末1全体に対する表示装置2の重量の割合をα(α=mP/(mP+mF+mB))で表し、情報表示端末1全体に対する筐体上部31の重量の割合をβ(β=mF/(mP+mF+mB))で表す。又、表示装置2の幅をWPとする。筐体3の幅に関しては、先と同様に、WFとWBとで表現する。更に、表示装置2と筐体上部31との重なり部の幅をWOLとする。
表示装置2の重心Pのx座標は、Px=WP/2+WF−WOLとなる。同様に、筐体上部31の重心Fのx座標は、Fx=WF/2となり、筐体下部32の重心Bのx座標は、Bx=WB/2となる。これらを用いると情報表示端末1の重心Cのx座標Cxは、
と記される。情報表示端末1の重心Cが筐体下部32内に位置する条件は、図13より、
である。数式36を数式37に代入し、α又はβに関して解くと、W
F>W
Bの際に、
となる。この数式38から数式40が筐体下部32内に情報表示端末1の重心Cが位置する条件となる。先にも述べた様に筐体下部32の幅W
Bには最適値が存在し、表示装置2の重さm
Pや幅W
Pは表示装置2の大きさで定まるので、筐体上部31の幅W
Fや重なり部の幅W
OL、或いはm
Fやm
Bを調整して数式38から数式40の条件を満たすようにする。尚、本実施形態の様に筐体上部31が表示装置2全体を覆う場合には、数式38でW
OL=W
Pとして、
が、筐体下部32内に情報表示端末1の重心Cが位置する条件となる。本実施形態ではW
F=151mm、W
B=45mm、W
P=149mm、α=0.17、β=0.23で、数式41を当然満たしている。
数式38から数式40の条件を満たすようにすると情報表示端末1の重心Cが筐体下部32の内側に位置するので、図9に示す様に、情報表示端末1を片手で保持した際にトルクはゼロになり、極めて楽に情報表示端末1を使用できる。
「筐体下部を設置する場所」
筐体下部32は表示装置2の外縁部に設置される。これ迄の説明では長方形の表示装置2の長辺に筐体下部32を設置してきたが、これに限らず、長辺以外の辺に設置しても構わない。例えば長方形の表示装置2の短辺に筐体下部32を設置しても良い。又、これ迄は長方形を表示装置2の例として説明してきたが、表示装置2は長方形や正方形といった四角形に限らず、三角形や五角形、六角形、八角形などの多角形であっても構わず、いずれの辺に筐体下部32を設置する構成であっても良い。この際に、操作スイッチ4は、情報表示端末1の幅方向で重心付近に設置する。
上述した通り、本実施形態に係わる情報表示端末1によれば、以下の効果を得る事ができる。
表示装置2が柔軟性を有して軽く、筐体下部32が表示装置2の外縁部の一部に配置されて強固である為に、情報表示端末1全体を薄く且つ軽くできる。特に重量に関しては、従来と同じ表示面積を有していても、十分の一程度とできる。面積が同等で重量が十分の一程度になった事から、情報表示端末1を誤って落下させた際には、空気抵抗により落下速度が従来の物よりも遅くなる。この為に床との衝突の際に情報表示端末1が受ける衝撃が小さくなり、情報表示端末1の耐衝撃性を向上させる事ができる。又、表示装置2が柔軟である為に、落下などの衝撃が加わっても、表示装置2自体の緩衝作用により、破損し難くなる。加えて第一側壁35の上面38と保持部36の上面38とが比較的広い面積で表示装置2の背面を固定するので、表示装置2が屈曲しても情報表示端末1が破損する可能性が著しく小さくなる。即ち、従来の様に補強部材を用いて表示装置2全体を外箱に収納しなくても、筐体3を表示装置2の外縁部の一部に配置し、第一側壁35上部に保持部36を設けるだけで、実用強度を確保する事ができる。その結果、情報表示端末1全体を薄く且つ軽くできるので、疲労感を覚える事なく、長時間に渡って使用できる。又、表示装置2を大きくしても重量は僅かしか増えないので、比較的大きな表示面積を有して、且つ長時間使用可能な携帯用の情報表示端末1が実現できる。換言すれば、使い勝手の良い情報携帯端末を実現する事ができる。
更に情報表示端末1の重心が外縁部に位置する為に、情報表示端末1を誤って落下させても、多くの場合は筐体3が下向きとなって落ちて行き、筐体3が最初に床と衝突し、表示装置2は余り強い衝撃を受けない。即ち、表示装置2への補強部材が不要と化し、薄くて軽く、丈夫な情報表示端末1とする事ができる。
加えて、情報表示端末1の重心が外縁部に位置するので、使用者が情報表示端末1の筐体3を手でつかみ持つと、即ちそれは情報表示端末1の重心近傍をつかむ事になる。重心の近傍をつかむので、使用者が受ける情報表示端末1のトルクは極めて小さくなる。こうして情報表示端末1を片手で保持しても、疲労せずに長時間使用する事が可能となる。
又、筐体下部32をなす第一側壁35の上面38が表示装置2の背面を固定しているので、筐体下部32をくり貫く事ができ、主回路基板324や電池を筐体下部32に組み入れられる。それに伴い、正面視では情報表示端末1の大きさを表示部21の大きさと同程度にする事ができると共に、その表面を単一平面とする事ができ、美観に優れた情報表示端末1を実現できる。
又、第一側壁35と保持部36との断面における幅が底面37から上面38に向かうに従って広がっているので、即ち、第一側壁35の底面37における幅よりも第一側壁35と保持部36との上面38における幅の方が広いので、保持部36の上面38と第一側壁35の上面38とが広くなり、筐体3と表示装置2との接触面積を増す事ができる。その結果、両者間の密着力が高まり、表示装置2が筐体下部32から剥がれる不良を抑制できる。更に、表示装置2が屈曲しても表示装置2に発生する曲げ応力の一部を保持部36が受け持つ事ができ、情報表示端末1の機械的耐久性を向上させる事ができる。又、幅方向においては、保持部36は第一側壁35から離れるに従い厚みを減じているので、筐体下部32と表示装置2との間に力が加えられても保持部36の先端(エッジ)では殆ど応力が発生せず、端部への応力集中に伴う表示装置2の破損を防ぐ事ができる。
又、保持部36が筐体下部32の外側に設けられているので、表示装置2を凸型に屈曲させた際に、屈曲の支点を第一側壁35の上面38と保持部36の上面38へと分散させられる。その結果、表示装置2を凸型に屈曲させても表示装置2が壊れる可能性は著しく小さくなり、フレキシブルな表示装置2を有する情報表示端末1の耐久性を向上させる事ができる。
又、筐体下部32の底面37幅が30mm以上60mm以下であるので、情報表示端末1を容易に保持する事できる。と同時に、情報表示端末1の重心が手のひらの上となり、使用者は殆どトルクを感じなくなる。即ち、手や指に疲労感を覚えさせる事なく、情報表示端末1を活用できる。
又、筐体上部31と保持部36とが柔軟性を有するので、筐体下部32以外は柔軟な情報表示端末1を実現できる。加えて、情報表示端末1の落下に対する耐久性を向上させる事ができる。情報表示端末1が落下した際に、希に表示装置2が最初に床と衝突する自体も生じ得るが、この場合でも、柔軟性を有する表示装置2と筐体上部31と保持部36とが弾性変形する事で衝撃を受け止められるからである。
又、表示装置2は平板状の多角形であり、外縁部の一部は、多角形をなす一辺であるので、正面視では情報表示端末1の大半を表示部21とできると共に、重心を外縁部近傍に位置させる事が可能になる。
又、電気光学パネル5は、第一基板53にTFTを用いた薄膜回路80(画素回路81等)を形成しているので、表示部21に設けられた複数の画素513を独立に制御でき、高品位な表示を可能とする。
又、TFTの半導体層は結晶性のシリコン膜であり、薄膜回路80は画素回路81と駆動回路とを含でいるので、実装部91における配線数を著しく減少させる事ができ、その結果として製造歩留まりが向上し、同時に製品寿命を延ばす事ができる。
又、第一基板53はプラスチックフィルムであり、薄膜回路80は、ガラス基板に薄膜回路80を形成した後に、この薄膜回路80をガラス基板から剥離して、プラスチックフィルムに接着されているので、柔軟性を有する表示装置2を比較的容易に製造できる。
又、筐体3を長方形の表示装置2の短辺に設置すると、筐体下部32の幅方向に人差し指を添えさせ、筐体上部31の表面を親指で挟む様に持つ事ができる。片手でこうした持ち方をしても、情報表示端末1は軽量で、重心が筐体下部32内或いはその近傍に位置するので、疲労感を覚える事なく、長時間に渡って情報表示端末1を使用し続ける事ができる。従って、例えば、混雑する列車の中で、片手で吊革を掴み、他方の手で情報表示端末1を握りながら操作する事ができる。この際に、操作スイッチ4は、情報表示端末1の幅方向で重心付近に設置されているので、スイッチ近傍を親指で掴むと、自然に重心付近を掴む事になり、幅方向のトルクを殆どゼロにする事ができると共に親指の僅かな移動にて、自由に情報表示端末1を操作できる事になる。
又、主回路基板324表面と表示装置2背面との間に回路保護フィルム327を挟んだので、表示装置2と筐体3とを組み立てる際に情報表示端末1が破損される確率が小さくなり、生産性(歩留まり)を向上させる事ができる。
(実施形態2)
「第一側壁の上面と第一側壁の内側の側壁との角が円弧状である形態」
図14は、実施形態2に係わる情報表示端末の断面図であり、図1(a)のA−A’の断面に相当する。尚、操作スイッチ4も、参考の為に、描いてある。
以下、本実施形態に係わる情報表示端末1について説明する。尚、実施形態1と同一の構成部位については、同一の番号を附し、重複する説明は省略する。
本実施形態(図14)は実施形態1(図2(a))と比べて、第一側壁35の上面38と第一側壁35の内側の側壁との交差部の角(内側の角)が円弧状になっている点が異なっている。それ以外の構成は、実施形態1とほぼ同様である。本実施形態では、内側の角が曲率半径1mmの円弧状に面取りされている。円弧状にする際の曲率半径は第一側壁35の幅の3割から7割程度とする。ここでは第一側壁35の幅が2mmであったので、その5割とされた。この他にも、この角は斜めに削り取られる面取り加工であっても良い。
上述した通り、本実施形態に係わる情報表示端末1によれば、実施形態1での効果に加え、以下の効果を得る事ができる。
内側の角が円弧状で有るので、表示装置2を凹型に屈曲させた際に発生するくい込み圧力を円弧で受けさせる事になり、くい込み圧力を分散できる。即ち、表示装置2を凹型に屈曲させても、表示装置2が壊れる可能性を小さくでき、フレキシブルな表示装置2を有する情報表示端末1の耐久性を向上させる事ができる。
同様に、表示装置2と筐体下部32との間にz軸方向の押しつけ力が掛けられても、内側の角が強いくい込み圧力を発生させる事はなく、表示装置2が壊れる可能性を小さくでき、フレキシブルな表示装置2を有する情報表示端末1の耐久性を向上させる事ができる。
(実施形態3)
「第一側壁が外側に保持部を有し、内側にも第二保持部を有する形態」
図15は、実施形態3に係わる情報表示端末の断面図であり、図1(a)のA−A’の断面に相当する。尚、操作スイッチ4も、参考の為に、描いてある。
以下、本実施形態に係わる情報表示端末1について説明する。尚、実施形態1と同一の構成部位については、同一の番号を附し、重複する説明は省略する。
本実施形態(図15)は実施形態1(図2(a))と比べて、第一側壁35が内側にも第二保持部362を有している点が異なっている。それ以外の構成は、実施形態1とほぼ同様である。第二保持部362の形状や材質は、実施形態1にて詳述した保持部36の形状や材質と同じである。具体的には、第二保持部362はABS樹脂にて筐体下部32と一体形成され、厚さと距離とは線型関係にあり、t0=1mm、α=0.2、WH=2.5mmとされた。
上述した通り、本実施形態に係わる情報表示端末1によれば、実施形態1での効果に加え、以下の効果を得る事ができる。
第一側壁35がその内側に第二保持部362を有しているので、表示装置2を凹型に屈曲させた際に発生するくい込み圧力を第二保持部362の上面38で受けさせる事になり、くい込み圧力を分散できる。即ち、表示装置2を凹型に屈曲させても、表示装置2が壊れる可能性を小さくでき、フレキシブルな表示装置2を有する情報表示端末1の耐久性を向上させる事ができる。
同様に、表示装置2と筐体下部32との間にz軸方向の押しつけ力が掛けられても、第二保持部362が強いくい込み圧力を発生させる事はなく、表示装置2が壊れる可能性を小さくでき、フレキシブルな表示装置2を有する情報表示端末1の耐久性を向上させる事ができる。
加えて、保持部36の上面38と第一側壁35の上面38と第二保持部362の上面38と云った広い面積で筐体3と表示装置2とを接着するので、密着力が高まり、表示装置2が筐体下部32から剥がれる不良を抑制できる。
(実施形態4)
「保持部がパネル全体に及ぶ形態」
図16は、実施形態4に係わる情報表示端末の断面図であり、図1(a)のA−A’の断面に相当する。尚、操作スイッチ4も、参考の為に、描いてある。
以下、本実施形態に係わる情報表示端末1について説明する。尚、実施形態1と同一の構成部位については、同一の番号を附し、重複する説明は省略する。
本実施形態(図16)は実施形態1(図2(a))と比べて、保持部36がパネル全体に及んでいる点が異なっている。それ以外の構成は、実施形態1とほぼ同様である。本実施形態では、保持部36は、筐体下部32が配置されていない表示装置2の外縁部にまで及んでいる。即ち、表示装置2の裏面は筐体下部32か保持部36のどちらかで覆われる。
図17は、実施形態4に係わる情報表示端末の断面図であり、図1(a)のA−A’の断面に相当する。尚、操作スイッチ4も、参考の為に、描いてある。図17は、実施形態2で、保持部36を筐体下部32が配置されていない表示装置2の外縁部にまで及ばせた形態であり、内側の角が円弧状に面取りされている。
図18は、実施形態4に係わる情報表示端末の断面図であり、図1(a)のA−A’の断面に相当する。尚、操作スイッチ4も、参考の為に、描いてある。図18は、実施形態3で、保持部36を筐体下部32が配置されていない表示装置2の外縁部にまで及ばせた形態であり、第一側壁35がその内側に第二保持部362を有している。
上述した通り、本実施形態に係わる情報表示端末1によれば、実施形態1での効果に加え、以下の効果を得る事ができる。
保持部36が、筐体下部32が配置されていない表示装置2の外縁部にまで及んでいるので、情報表示端末1の機械的耐久性を著しく向上させる事ができる。
(実施形態5)
「保持部の最も厚い部位の厚みが筐体下部の厚みに等しい形態」
図19は、実施形態5に係わる情報表示端末の断面図であり、図1(a)のA−A’の断面に相当する。尚、操作スイッチ4も、参考の為に、描いてある。
以下、本実施形態に係わる情報表示端末1について説明する。尚、実施形態1と同一の構成部位については、同一の番号を附し、重複する説明は省略する。
本実施形態(図19)は実施形態1(図2(a))乃至実施形態4(図14から図18)と比べて、保持部36の最も厚い部位の厚みが筐体下部32の厚みに等しくなっている点が異なっている。それ以外の構成は、実施形態1とほぼ同様である。本実施形態では、保持部36と筐体下部32とを一体形成せず、其々別材料で形成する。即ち、筐体下部32はABS樹脂などのじん性に優れた強固なプラスチックにて形成し、保持部36乃至は第二保持部362はアクリルゴムなどの合成ゴムにて形成する。合成ゴムは三点曲げ試験で破壊されないので、屈曲により保持部36が破損される事はなくなる。
図19に示す様に、第一側壁35の上部と外側の側面は保持部36に接着され、第一側壁35の上面38が接着される箇所での保持部36の厚さは1mm以上とされる。こうする事で第一側壁35の内側乃至は外側の角が屈曲時に及ぼすくい込み圧力を保持部36内に分散し、表示装置2がくい込み圧力で破壊される事態を防げる。
保持部36の上面38における断面幅は、第一側壁35と保持部36の底面37における断面幅よりも広くなっている。即ち、第一側壁35と保持部36との断面幅は底面37から上面38に向かうに従って広がっている。
上述した通り、本実施形態に係わる情報表示端末1によれば、実施形態1での効果に加え、以下の効果を得る事ができる。
保持部36で最も厚い部位の厚みが筐体下部32の厚みに等しいので、表示装置2を屈曲させた際に表示装置2に発生する応力を、それが一番強い場所で最も大きく減ずる事ができ、情報表示端末1の機械的耐久性を著しく向上させる事ができる。
(実施形態6)
「筐体下部が表示装置よりも短い形態」
図20は、実施形態6に係わる情報表示端末を模式的に示しており、(a)は正面図で、(b)は背面図である。
以下、本実施形態に係わる情報表示端末1について説明する。尚、実施形態1と同一の構成部位については、同一の番号を附し、重複する説明は省略する。
本実施形態(図20)は実施形態1(図1)と比べて、筐体下部32が表示装置2よりも短くなっており、右辺の縦方向で手前側に配置されている点が異なっている。それ以外の構成は、実施形態1とほぼ同様である。表示装置2がA4サイズ(210mm×297mm)やB4サイズ(257mm×364mm)以上と大きくなった際などに、図20に示す様に、筐体下部32を表示装置2の長さよりも短くし、右辺で中央からずらして設置しても良い。この場合、筐体下部32を構成する側壁の内で、左辺と前辺と奥の短辺とが第一側壁35となり、その外側に保持部36が設けられる。右辺は第二側壁34である。操作スイッチ4は、実施形態1と同様に、筐体下部32を握った際に親指で操作し得る位置に配置される。以下、この様に筐体下部32の重心が表示装置2の重心と縦方向で一致しない際に、情報表示端末1の重心Cが筐体下部32内に位置する為の条件を説明する。尚、筐体下部32は右辺で中央より上方に設置しても良い。
図21は、実施形態6に係わる情報表示端末の縦方向における断面図で、構成要素別に重心と座標とを描いてある。実施形態1と同様に、保持部36は筐体下部32に比べて十分に軽く(概ね筐体下部32の重量の十分の一以下で)、保持部36の重量を筐体下部32の重量に組み入れる近似を用いる。まず、表示装置2の長さをLPとし、筐体上部31の長さをLFとし、筐体下部32の長さをLBとし、原点から筐体下部32までの距離をLEとする。それ以外の記号や表記方法は実施形態1と同じである。
表示装置2の重心Pのy座標は、Py=LP/2である。LP=LFなので筐体上部31の重心Fのy座標も同じく、Fy=LP/2である。筐体下部32の重心Bのy座標は、By=LB/2+LEである。これらを用いると情報表示端末1の重心Cのy座標Cyは、
と記載される。情報表示端末1の重心Cが筐体下部32内に位置する条件は、筐体下部32の重心が表示装置2の重心より前方に位置する場合には、
となり、筐体下部32の重心が表示装置2の重心より奥の方に位置する場合には、
ある。数式42を数式43乃至は数式44に代入して、α+βに関して解くと、情報表示端末1の重心Cが縦方向で筐体下部32内に位置する為の条件が、筐体下部32の重心が表示装置2の重心より前方に位置する場合には、
と記述され、筐体下部32の重心が表示装置2の重心より奥の方に位置する場合には、
と記述される。これらの数式45乃至数式46を満たす様に、表示装置2の長さL
Pや、筐体上部31の長さL
F、筐体下部32の長さL
B、原点から筐体下部32の前辺32Dまでの距離L
E、情報表示端末1全体に対する表示装置2の重量の割合と筐体上部31の割合の和α+βを定める。
α+βは必ずゼロから1の間にあるので、筐体下部32の重心が表示装置2の重心より前方に位置する場合には、
が成り立てば、どんなα+βに対しても情報表示端末1の重心のy座標Cyは、必ず筐体下部32内に位置する事になる。具体的に記すと、
を満たす様にする。同様に、筐体下部32の重心が表示装置2の重心より奥の方に位置する場合には、
数式45乃至は数式46、又は数式48乃至は数式49を満たす事で、筐体下部32の重心が表示装置2の重心と縦方向で一致しない際にも、情報表示端末1の重心Cは、縦方向にて、筐体下部32内に位置する様になる。
上述した通り、本実施形態に係わる情報表示端末1によれば、実施形態1での効果に加え、以下の効果を得る事ができる。
表示装置2が大型化した際に、筐体下部32を表示装置2の長さに合わせる必要がないので、操作性に優れた情報表示端末1とする事ができる。
(実施形態7)
「筐体上部が幅狭で表示装置の右辺に設置されている形態」
図22は、実施形態7に係わる情報表示端末の断面図であり、図1(a)のA−A’の断面に相当する。尚、操作スイッチ4も、参考の為に、描いてある。
以下、本実施形態に係わる情報表示端末1について説明する。尚、実施形態1と同一の構成部位については、同一の番号を附し、重複する説明は省略する。
本実施形態(図22)は実施形態1(図2(a))などと比べて、筐体上部31が幅狭で表示装置2の右辺に設置されている点が異なっている。それ以外の構成は、これ迄説明してきた実施形態とほぼ同様である。表示装置2は、実施形態1で詳述した様に、保護部6を有している。この保護部6が製造時や使用時における機械的及び化学的な信頼性を十分に確保しておれば、筐体上部31が表示装置2全体を覆う必要はなくなる。この場合には、図22に示す様に、筐体上部31は筐体下部32とで表示装置2を挟持するだけの狭い幅とする事ができる。
上述した通り、本実施形態に係わる情報表示端末1によれば、実施形態1乃至6での効果に加え、以下の効果を得る事ができる。
筐体上部31が幅狭で表示装置2の右辺に設置されているので、表示装置2はより柔軟になる。又、情報表示端末1の重心はより外縁部側に位置し、使用性に優れた情報表示端末1とする事ができる。
(実施形態8)
「表示装置が衝撃緩衝シートを備える」
図23は、実施形態8に係わる表示装置の断面図であり、図2(a)から表示装置2を抜粋した図に相当する。尚、参考の為に、固定用切り欠き部71も破線にて描いてある。
以下、本実施形態に係わる情報表示端末1について説明する。尚、実施形態1と同一の構成部位については、同一の番号を附し、重複する説明は省略する。
本実施形態(図23)は実施形態1(図11)と比べて、表示装置2の構造が異なっている。それ以外の構成は、実施形態1とほぼ同様である。本実施形態では、保護部6は保護シート61と封止材62に加え、背面衝撃緩衝シート631を含んでおり、背面衝撃緩衝シート631は電気光学パネル5の背面を被覆している。更に保護部6は正面衝撃緩衝シート632を含んでいても良く、正面衝撃緩衝シート632は電気光学パネル5の正面を被覆している。背面衝撃緩衝シート631は第一基板53と同形状(この場合、長方形)でほぼ同面積であり、第一基板53の裏面を覆っている。同様に、正面衝撃緩衝シート632は第二基板54と同形状(この場合、長方形)でほぼ同面積であり、第二基板54の裏面を覆っている。背面衝撃緩衝シート631の外側には、背面側の保護シート61の内側面が接着されており、正面衝撃緩衝シート632の外側には、正面側の保護シート61の内側面が接着されている。尚、以下では、正面衝撃緩衝シート632と背面衝撃緩衝シート631とを特に区別する必要がない場合には、単に両者を含めて衝撃緩衝シートと呼ぶ。本実施形態の様に表示装置2が衝撃緩衝シートを備える場合には、実施形態7で説明した様に、筐体上部31の幅を狭くし、筐体上部31を表示装置2の右辺に設置するのが好ましい。
背面衝撃緩衝シート631は第一基板53より若干大きくても構わず、具体的には第一基板53の各辺よりも背面衝撃緩衝シート631の対応する各辺は1mmから3mmの範囲内で大きくして、第一基板53を完全に内包しても良い。同様に、正面衝撃緩衝シート632は第二基板54より若干大きくても構わず、具体的には第二基板54の各辺よりも正面衝撃緩衝シート632の対応する各辺は1mmから3mmの範囲内で大きくして、第二基板54を完全に内包しても良い。第一基板53乃至は第二基板54からはみ出た衝撃緩衝シートは表示に寄与しないので、はみ出した部位はできるだけ狭い方が好ましい。図23では、第二基板54が第一基板53よりも1mm大きく、衝撃緩衝シートは第二基板54と同じ大きさとされた。即ち、背面衝撃緩衝シート631各辺は第一基板53の対応する辺よりも1mm長く、正面衝撃緩衝シート632は第二基板54と同じ大きさである。尚、保護シート61は、筐体下部32が設置されていない各辺においては、衝撃緩衝シートよりも1mmから9mmの範囲内で大きくされ、筐体下部32が設置されている辺においては、衝撃緩衝シートよりも5mmから13mmの範囲内で大きくされる。
衝撃緩衝シートには透明な軟性エラストマーシートを使用する。軟性エラストマーシートとはゴム状の高い弾力性を示す高分子物質で、ゲルシートや熱硬化性エラストマーシート、熱可塑性エラストマーシートなどである。これらは衝撃エネルギー吸収性に優れてり、フレキシブルな電気光学パネル5を外部からの衝撃や応力から保護する。ゲルシートとしてはウレタンゲルシートやスチレン系ゲルシートなどが使用できる。又、熱硬化性エラストマーシートとしてはウレタンゴムシートやシリコーンゴムシート、フッ素ゴムシートなどが使用できる。熱可塑性エラストマーシートとしては、アクリル系エラストマーシート(メタクリル酸メチルとアクリル酸ブチルのブロック共重合体)やポリウレタンエラストマーシート(長鎖グリコールと短鎖グリコール、及びジイソシアネートの重合体)などが使用できる。熱可塑性エラストマーシートを使用する場合には、これを保護シート61のホットメルト接着剤として兼用しても良い。本実施形態ではウレタンゲルシートを使用した。
衝撃緩衝シートは厚いほど衝撃吸収性を増し、情報表示端末1の機械的耐久性を増すが、それに伴って光の透過率が落ちて表示性能を損ない兼ねない。又、余りにも厚いと、情報表示端末1が重くなり、その操作性が損なわれる恐れもある。これらの事柄を総合的に鑑みると、衝撃緩衝シートの厚みは0.1mmから0.5mmとするのが好ましい。加えて、正面衝撃緩衝シート632の厚みと背面衝撃緩衝シート631の厚みとをほぼ等しくする事が好ましい。本実施形態では正面衝撃緩衝シート632も背面衝撃緩衝シート631も0.25mmの厚みであった。
尚、本実施形態では第一基板53のPENフィルムの厚みを25μm、第二基板54のPETフィルムの厚みを25μm、保護シート61のPETフィルムの厚みを25μmとしたため、表示装置2の厚みは0.67mmとなった。又、表示装置2の重量は22.1gとなったが、筐体上部31の幅を20mmとした為に、情報表示端末1の総重量は52.8gであった。表示装置2に衝撃緩衝シートを配置した上で、表示装置2が薄くて柔軟で、機器全体が軽くて操作性に優れ、而も耐久性も十分な情報表示端末1が作製された。
上述した通り、本実施形態に係わる情報表示端末1によれば、実施形態1乃至7での効果に加え、以下の効果を得る事ができる。
電気光学パネル5の背面を背面衝撃緩衝シート631が被覆するので、表示装置2に背面から衝撃や応力が加えられても破損する恐れを低くできる。加えて、表示部21が曲げられた際に第一側壁35の上面38と保持部36の上面38とが表示装置2に局所的な応力を加える恐れがあるが、背面衝撃緩衝シート631がこの応力を緩和するので、曲げ応力による表示装置2の破損を防ぐ事ができる。更に、主回路基板324に実装された電池や電子素子325が表示装置2の背面に押しつけられても、背面衝撃緩衝シート631がこれらの凹凸とそれに伴う空間的圧力分布を緩和する。この結果、製造途中で情報表示端末1が破損される確率が小さくなり、生産性(歩留まり)を向上させる事ができる。
又、電気光学パネル5の正面を正面衝撃緩衝シート632が被覆するので、表示装置2に正面から衝撃や応力が加えられても破損する恐れを低くできる。更に、表示装置2が凹型に曲げられた際に、筐体上部31の端部が表示装置2に加える応力を正面衝撃緩衝シート632が緩和するので、局所応力による表示装置2の破損を防ぐ事ができる。
又、衝撃緩衝シートが第一基板53乃至は第二基板54よりも1mm以上大きいので、製造時に多少のアライメントずれが生じても衝撃緩衝シートが電気光学パネル5を完全に被覆する事ができ、機械的耐久性を高める事ができる。又、衝撃緩衝シートの大きさが第一基板53乃至は第二基板54の大きさよりも3mm以下なので、表示に寄与しない衝撃緩衝シート部と保護部6とを狭くする事ができ、機器全体に対する表示面積が大きい、コンパクトで使用し易い情報表示端末1が実現できる。
又、正面衝撃緩衝シート632の厚みと背面衝撃緩衝シート631の厚みとがほぼ等しく、正面衝撃緩衝シート632と背面衝撃緩衝シート631は同じ材質乃至は似通った材質とされるので、表示装置2の正面と背面とで応力が同等となり、自然な状態で表示装置2を平らにできる。又、表示装置2を意図的に曲げたり、或いは丸めたりした際にも、応力中性面が、表示装置2の断面方向にて、中央付近で薄膜回路80近傍に来るので、表示装置2が破損しにくくなる。即ち、柔軟な表示装置2の曲げに対する耐久性を向上させる事ができる。
尚、本発明は上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良などを加える事が可能である。変形例を以下に述べる。
(変形例1)
「駆動回路がTFTにて内蔵されない例」
図24は変形例1に係わる情報表示端末に用いられる電気光学パネルを模式的に示す正面図である。本変形例(図24)は実施形態1(図10)と比べて、駆動回路がTFTにて内蔵されていない点などが異なる。それ以外の構成は、実施形態1とほぼ同様であり、重複する説明は省略する。尚、図24も図10と同様に電気光学材料55と第二基板54とを省略して描いてある。
実施形態1(図10)では、結晶シリコンTFTが薄膜素子に使用され、薄膜回路80は画素回路81と駆動回路とを含んでいたが、薄膜素子に用いられるTFTはこれに限られず、例えば、薄膜回路80が駆動回路を含んでいなくても良い。更に、本変形例に示す様に、TFTの半導体層は非晶質シリコン膜や有機半導体、亜鉛又は錫を含む酸化物であっても構わない。半導体層が非晶質シリコン膜の場合は非晶質シリコンTFTと呼ばれ、有機半導体膜の場合は有機TFTと呼ばれ、亜鉛又は錫を含む酸化物の場合は酸化物TFTと呼ばれる。薄膜素子に用いられるTFTは、これらの非晶質シリコンTFTや有機TFT、酸化物TFTで有っても構わない。
薄膜回路80は画素回路81を含み、必ずしも駆動回路が内蔵されていなくても構わない。これはこれらのTFTでは相補性金属酸化物半導体(CMOS:Complementary Metal−Oxide−Semiconductor)構成を取るのが困難であり、而も半導体層の移動度が小さい為である。これを反映して、本変形例では、図24に示す様に、駆動回路はTFTにて内蔵されておらず、薄膜回路80として画素回路81が表示部21内の画素領域511に形成され、画素回路81が形成された領域の外周部には画素回路81に信号を供給する基板配線84が形成されている。複数の走査線は一箇所に集められて走査線用実装部912とされ、この走査線用実装部912にシリコンチップよりなる集積回路を接続して走査回路82とする。同様に信号線も一箇所に集められて信号線用実装部913とされ、この信号線用実装部913にシリコンチップよりなる集積回路を接続して信号回路83とする。表示装置2は外縁部の一部に筐体3を持つ為に、走査線に連なる外周走査配線群と信号線に連なる外周信号配線群が、共に基板配線84として、第一基板53の一辺(図24では右辺)にまとめられ、この辺に走査線用実装部912と信号線用実装部913とを合わせた実装部91が設けられている。この例では画素数が少ないので、基板配線84(外周走査配線群と外周信号配線群)は画素領域511の前辺の非画素領域と右辺の非画素領域にしか設けられていないが、画素数が多くなれば、基板配線84は総ての辺の非画素領域に設けられても良い。こうした基板配線84が配置された非画素領域を余白電極が額縁状に覆って余白領域512とし、画素領域511と余白領域512とを合わせて表示部21となっている。尚、実装部91にはCOFやTCPと云ったテープ配線9を接続する。
基板配線84の部分を余白領域512とするのは、走査線や信号線に各種の信号を加えた際に、基板配線84上の電気光学材料55が意図せぬ無秩序な表示をする恐れを取り除く為である。これにより、美しい外観を呈する表示装置2とされる。
非晶質シリコンTFTや有機TFT、酸化物TFTは製造温度を比較的容易に下げられるので、第一基板53をプラスチックフィルムや薄い金属板として、これらのTFTを直接形成しても良い。この場合、製造途中での第一基板53の取り扱いを容易にする為に、ガラス基板にプラスチックフィルムや金属板を固定し、このフィルムや金属板の上に薄膜回路80を直接形成する。こうすると、柔軟性を有する表示装置2を比較的容易に製造できる。この他にも印刷法を用いてこれらのTFTをプラスチックフィルムや金属板に直接形成しても良いし、ロールツウロール(Roll−to−Roll)法で直接形成しても良い。
非晶質シリコンTFT技術は既に汎用的であるので、この技術を利用すると、大型の表示装置2を有する情報表示端末1を比較的容易に作製できる。又、有機TFTを利用すると、TFTを印刷法で作製する事も可能で、製造コストや時間を大幅に削減する事が可能となる。
尚、本変形例では、TFTとして下ゲート型が使用され、第一基板53側から第一配線によるゲート電極、その上にゲート絶縁膜、その上に半導体膜との構成を取っている。
(変形例2)
「駆動回路がTFTにて一部内蔵されている例」
図25は変形例2に係わる情報表示端末に用いられる電気光学パネルを模式的に示す正面図である。本変形例(図25)は実施形態1(図10)と比べて、駆動回路の一部(走査回路82)がTFTにて内蔵されており、駆動回路の他の部分(信号回路83)はTFTで内蔵されていない点などが異なる。それ以外の構成は、実施形態1とほぼ同様であり、重複する説明は省略する。尚、図25も図10と同様に電気光学材料55と第二基板54とを省略して描いてある。
本変形例では、変形例1と同様に、薄膜素子に用いられるTFTは、非晶質シリコンTFTや有機TFT、酸化物TFTである。変形例1で説明した様に、これらのTFTで高級な駆動回路を形成する事は困難であるが、簡単な低速動作回路831ならば内蔵できる。例えば、図25に示す様に、動作クロック周波数が数百kHz程度の走査回路82(走査線選択回路)ならば、これらのTFTでも内蔵可能である。
図25では、薄膜回路80は画素回路81と走査回路82とを含んでいる。これにより実装部91の端子数を削減する事が可能になり、変形例1よりは実装不良を低減する事ができる。
(変形例3)
「表示装置が薄いガラスに形成されている例」
図11を用いて説明する。
本変形例は実施形態1と比べて、第一基板53が薄いガラスである点が異なる。それ以外の構成は、実施形態1とほぼ同様であり、重複する説明は省略する。
実施形態1では、薄膜回路80はガラス基板からプラスチックフィルムに転写されていたが、柔軟性を有する表示装置2はこの構成に限られない。例えば、0.5mmから1.1mmの厚みを有するガラス基板表面に通常のTFT工程にて薄膜回路80を形成した後に、ガラス基板裏面をエッチングなどで削り、0.1mm以下に薄くしても良い。ガラス基板の厚みを0.1mm以下にすると柔軟性を示す様になる。
こうすると、薄膜回路80の製造時には0.5mmから1.1mmと云った通常の厚みを有するガラス基板を使用でき、その後、ガラスを薄くするだけで柔軟性を有する表示装置2を比較的容易に製造できる。
(変形例4)
「表示装置が薄い金属板に形成されている例」
図11を用いて説明する。
本変形例は実施形態1と比べて、第一基板53が薄い金属板である点などが異なる。それ以外の構成は、実施形態1とほぼ同様であり、重複する説明は省略する。
実施形態1では、薄膜回路80はガラス基板からプラスチックフィルムに転写されていたが、柔軟性を有する表示装置2はこの構成に限られない。例えば、薄いステンレス基板を酸化硅素膜や酸化窒素膜などの無機絶縁膜、或いはポリイミドなどの有機絶縁膜で覆い、これらの絶縁膜上に薄膜回路80を形成しても良い。薄膜回路80は実施形態1の様に金属板に転写しても良いし、金属板に直接形成しても良い。取り分け金属板を無機膜で覆うと製造温度を600℃以上と高められるので、通常のTFT工程を利用する事ができ、柔軟性を有する表示装置2を比較的容易に製造できる。
(変形例5)
「電気光学材料が電気泳動材料以外の例」
図11を用いて説明する。
本変形例は実施形態1と比べて、電気光学材料55として電気泳動材料に代わり液晶材料などが用いられている点が異なる。それ以外の構成は、実施形態1とほぼ同様であり、重複する説明は省略する。
実施形態1では電気光学材料55として電気泳動材料を使用していたが、電気光学材料55としては、その他にも液晶材料や有機又は無機のエレクトロ・ルミネッセンス材料、エレクトロ・クロミック材料等を使用しても良い。これに応じて表示装置2は液晶ディスプレイ(LCD)や有機又は無機のエレクトロ・ルミネッセンス・ディスプレイ(別名をライト・エミッティング・ダイオード・ディスプレイ、LEDディスプレイともいう)、エレクトロ・クロミック・ディスプレイ(ECD)等となる。これらの表示装置2を有する情報表示端末1は電子書籍やテレビ、携帯電話やパーソナルコンピューターなどの電子機器に使用される。
(変形例6)
「共通電極が第一基板側に作製される例」
図11を用いて説明する。
本変形例は実施形態1(図11)と比べて、共通電極541が第一基板53側に作られる点が異なる。それ以外の構成は、実施形態1とほぼ同様であり、重複する説明は省略する。
実施形態1(図11)では、共通電極541は第二基板54に形成されているが、これは必須ではなく、共通電極は第一基板53に形成されても良い。この場合、共通電極541は第一基板53の各画素513内に設けられ、第一基板53の面と平行な電界成分を持つ電界が電気光学材料55に印加される所謂インプレーンスイッチ型の電気光学装置となる。横方向に電気泳動させるEPDや広視野角液晶ディスプレイなどに適応される。
尚、これ迄の説明では、表示領域をアクティブマトリックスとして説明したが、表示領域はパッシブマトリックスで有っても構わない。