図1は本発明による第1実施例を示している。図1を参照すると、1は圧縮着火式内燃機関の本体、2は各気筒の燃焼室、3は各燃焼室2内にそれぞれ燃料を噴射するための電子制御式燃料噴射弁、4は吸気マニホルド、5は排気マニホルドをそれぞれ示す。吸気マニホルド4は吸気ダクト6を介して排気ターボチャージャ7のコンプレッサ7cの出口に連結され、コンプレッサ7cの入口はエアフローメータ8を介してエアクリーナ9に連結される。吸気ダクト6内には電気制御式スロットル弁10が配置され、更に吸気ダクト6周りには吸気ダクト6内を流れる吸入空気を冷却するための冷却装置11が配置される。一方、排気マニホルド5は排気ターボチャージャ7の排気タービン7tの入口に連結され、排気タービン7tの出口は排気後処理装置20に連結される。
排気マニホルド5と吸気マニホルド4とは排気ガス再循環(以下、EGRと称す)通路12を介して互いに連結され、EGR通路12内には電気制御式EGR制御弁13が配置される。また、EGR通路12周りにはEGR通路12内を流れるEGRガスを冷却するための冷却装置14が配置される。一方、各燃料噴射弁3は燃料供給管15を介してコモンレール16に連結される。このコモンレール16内へは電子制御式の吐出量可変な燃料ポンプ17から燃料が供給され、コモンレール16内に供給された燃料は各燃料供給管15を介して燃料噴射弁3に供給される。本発明による第1実施例ではこの燃料は軽油からなる。別の実施例では、内燃機関は火花点火式内燃機関から構成される。この場合には燃料はガソリンからなる。
排気後処理装置20は排気タービン7tの出口に連結された排気管21と、排気管21に連結された触媒コンバータ22と、触媒コンバータ22に連結された排気管23とを具備する。触媒コンバータ22内にはウォールフロー型のパティキュレートフィルタ24が配置される。
触媒コンバータ22には、パティキュレートフィルタ24の温度を検出するための温度センサ25が設けられる。別の実施例では、パティキュレートフィルタ24に流入する排気ガスの温度を検出するための温度センサが排気管21に配置される。更に別の実施例では、パティキュレートフィルタ24から流出する排気ガスの温度を検出するための温度センサが排気管23に配置される。これら排気ガスの温度はパティキュレートフィルタ24の温度を表している。
触媒コンバータ22には更に、パティキュレートフィルタ24の圧力損失を検出するための圧力損失センサ26が設けられる。本発明による第1実施例では、圧力損失センサ26はパティキュレートフィルタ24の上流及び下流の圧力差を検出するための圧力差センサから構成される。別の実施例では、圧力損失センサ26は排気管21に取り付けられて機関背圧を検出するセンサから構成される。
一方、排気マニホルド5には燃料添加弁27が取り付けられる。この燃料添加弁27にはコモンレール16から燃料が添加され、燃料添加弁27から排気マニホルド5内に燃料が添加される。別の実施例では、燃料添加弁27が排気管21に配置される。
電子制御ユニット30はデジタルコンピュータからなり、双方向性バス31によって互いに接続されたROM(リードオンリメモリ)32、RAM(ランダムアクセスメモリ)33、CPU(マイクロプロセッサ)34、入力ポート35及び出力ポート36を具備する。エアフローメータ8、温度センサ25、及び圧力差センサ26の出力信号はそれぞれ対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。また、アクセルペダル39にはアクセルペダル39の踏み込み量Lに比例した出力電圧を発生する負荷センサ40が接続され、負荷センサ40の出力電圧は対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。更に入力ポート35にはクランクシャフトが例えば15°回転する毎に出力パルスを発生するクランク角センサ41が接続される。CPU34ではクランク角センサ41からの出力パルスに基づいて機関回転数Neが算出される。一方、出力ポート36は対応する駆動回路38を介して燃料噴射弁3、スロットル弁10駆動装置、EGR制御弁13、燃料ポンプ17、及び燃料添加弁27に接続される。
図2A及び図2Bはウォールフロー型パティキュレートフィルタ24の構造を示している。なお、図2Aはパティキュレートフィルタ24の正面図を示しており、図2Bはパティキュレートフィルタ24の側面断面図を示している。図2A及び図2Bに示されるようにパティキュレートフィルタ24はハニカム構造をなしており、互いに平行をなして延びる複数個の排気流通路70,71を具備する。これら排気流通路70,71は、上流端が開放されかつ下流端が栓72により閉塞された排気ガス流入通路70と、上流端が栓73により閉塞されかつ下流端が開放された排気ガス流出通路71とにより構成される。なお、図2Aにおいてハッチングを付した部分は栓73を示している。したがって排気ガス流入通路70及び排気ガス流出通路71は薄肉の隔壁74を介して交互に配置される。云い換えると排気ガス流入通路70及び排気ガス流出通路71は各排気ガス流入通路70が4つの排気ガス流出通路71によって包囲され、各排気ガス流出通路71が4つの排気ガス流入通路70によって包囲されるように配置される。別の実施例では、排気流通路は、上流端及び下流端が開放された排気ガス流入通路と、上流端が栓により閉塞されかつ下流端が開放された排気ガス流出通路とにより構成される。
パティキュレートフィルタ24は例えばコージェライトのような多孔質材料から形成されており、したがって排気ガス流入通路70内に流入した排気ガスは図2Bにおいて矢印で示されるように周囲の隔壁74内を通って隣接する排気ガス流出通路71内に流出する。
図3Aは隔壁74の拡大断面図を示している。図3Aに示されるように、隔壁74は排気ガス流入通路70から排気ガス流出通路71に到る複数の細孔75を有する。本発明による第1実施例では、パティキュレートフィルタ24の平均細孔径は10μmから25μmである。
更に図3Aに示されるように、パティキュレートフィルタ24の表面上、すなわち隔壁74の両側表面上及び細孔75の内壁面上には、酸化機能を有する触媒77及びアッシュ微粒化剤78が担持されている。すなわち、図3Bに示されるように、隔壁74を構成する基材76上に、触媒77及びアッシュ微粒化剤78のコーティングが形成される。
酸化機能を有する触媒77は、例えばアルミナAl2O3、セリアCeO2、酸化プラセオジムPr6O11、酸化ネオジムNd2O3、酸化ランタンLa2O3のような卑金属酸化物から形成された担体と、この担体に担持された白金Pt、パラジウムPd、銀Agのような貴金属とから形成される。一実施例では触媒77はセリアCeO2から形成された担体と、担体に担持された銀Agとから形成される。別の実施例では触媒77はアルミナAl2O3から形成された担体と、担体に担持された白金Ptとから形成される。
一方、アッシュ微粒化剤78は、亜硫酸H2SO3の酸強度よりも高くかつ硫酸H2SO4の酸強度よりも低い酸強度を有する固体酸から形成される。一実施例では、アッシュ微粒化剤78は無定形のシリカ(SiO2)・アルミナ(Al2O3)から形成される。
図3Bに示されるように、アッシュ微粒化剤78ないし固体酸は複数の酸点79を有しており、これら酸点79は互いに分散されている。
燃焼室2では酸素過剰のもとで燃焼が行われている。したがって、燃料噴射弁3及び燃料添加弁27から燃料が2次的に供給されない限り、パティキュレートフィルタ24は酸化雰囲気にある。言い換えると、機関吸気通路、燃焼室2及び触媒コンバータ22上流の排気通路内に供給された空気及び燃料(炭化水素)の比である触媒コンバータ22への流入排気ガスの空燃比は、通常はリーンに維持されている。
排気ガス中には主として固体炭素から形成される粒子状物質が含まれている。この粒子状物質はパティキュレートフィルタ24上に捕集される。また、パティキュレートフィルタ24は酸化雰囲気にあり、パティキュレートフィルタ24は酸化機能を有する触媒77を備えているので、パティキュレートフィルタ24に捕集された粒子状物質は順次酸化される。しかしながら、捕集される粒子状物質の量が酸化される粒子状物質の量よりも多くなると粒子状物質がパティキュレートフィルタ24上に次第に堆積し、粒子状物質の堆積量が増大すると機関出力の低下を招いてしまう。したがって粒子状物質の堆積量が増大したときには堆積した粒子状物質を除去しなければならない。この場合、酸化雰囲気のもとでパティキュレートフィルタ24の温度を上昇させると堆積した粒子状物質が酸化され、除去される。
そこで本発明による第1実施例では、パティキュレートフィルタ24上に堆積した粒子状物質の量が許容上限量を越えたときに、パティキュレートフィルタ24上の粒子状物質を酸化除去するために、パティキュレートフィルタ24の状態を、酸化雰囲気のもとでパティキュレートフィルタ24の温度がPM除去温度まで上昇された状態にするPM除去処理が一時的に行われる。その結果、パティキュレートフィルタ24上の粒子状物質が除去され、パティキュレートフィルタ24の圧力損失が低減される。
ところが、排気ガス中にはアッシュも含まれており、このアッシュも粒子状物質と共にパティキュレートフィルタ24に捕集される。この場合、アッシュの粒径は0.1μmから0.5μm程度であり、パティキュレートフィルタ24の平均細孔径(10μmから25μm)よりもかなり小さい。しかしながら、アッシュは、パティキュレートフィルタ24の隔壁の表面もしくは細孔内壁面、又はパティキュレートフィルタ24に捕集されている粒子状物質又はアッシュに衝突し、それによって捕集される。このアッシュは主として硫酸カルシウムCaSO4、リン酸亜鉛カルシウムCa19Zn2(PO4)14のようなカルシウム塩から形成されることが本願発明者により確認されている。カルシウムCa,亜鉛Zn,リンP等は機関潤滑油に由来し、イオウSは燃料に由来する。すなわち、硫酸カルシウムCaSO4を例にとって説明すると、機関潤滑油が燃焼室2内に流入して燃焼し、潤滑油中のカルシウムCaが燃料中のイオウSと結合することにより硫酸カルシウムCaSO4が生成される。
PM除去処理が行われても、アッシュは燃焼せず又は気化しない。また、PM除去処理が行われる毎に、アッシュ粒子同士の間に存在していた粒子状物質が除去され、しかもアッシュ粒子が高温に晒されるので、アッシュ粒子同士が凝集しやすくなる。したがって、パティキュレートフィルタ24上のアッシュの粒径が大きくなるので、アッシュがパティキュレートフィルタ24の細孔を通過するのが困難になる。このようにしてアッシュがパティキュレートフィルタ24上に残留する。その結果、機関運転時間が長くなるにつれて、パティキュレートフィルタ24上のアッシュ量が次第に増大し、パティキュレートフィルタ24の圧力損失が次第に大きくなる。このため、PM除去処理が繰り返し行われても、機関出力が低下するおそれがある。
そこで本発明による第1実施例では、パティキュレートフィルタ24にアッシュ微粒化剤78が担持される。このアッシュ微粒化剤78は、パティキュレートフィルタ24への流入排気ガス中の酸素濃度が低下されかつパティキュレートフィルタ24の温度が上昇された状態においてパティキュレートフィルタ24上のアッシュを微粒化すると共に保持し、酸化雰囲気のもとでパティキュレートフィルタ24への流入排気ガス中にSOxが含まれている状態において保持している微粒化されたアッシュを放出する性質を有する。
その上で、パティキュレートフィルタ24からアッシュを除去するために、パティキュレートフィルタ24の状態をパティキュレートフィルタ24への流入排気ガス中の酸素濃度が低下されかつパティキュレートフィルタ24の温度が上昇された状態にするアッシュ微粒化処理が一時的に行われる。
その結果、パティキュレートフィルタ24上のアッシュがパティキュレートフィルタ24から除去される。したがって、アッシュによるパティキュレートフィルタ24の圧力損失の増大が抑制される。このことを図4Aから図5Bを参照して更に説明する。
図4Aはパティキュレートフィルタ24にアッシュ80が捕集されている状態を示している。
次いで、アッシュ微粒化処理が行われると、図4Bに示されるように、アッシュが微粒化され、微粒化されたアッシュ81がアッシュ微粒化剤78に分散状に保持される。より詳細には、図5Aに示されるように、大粒径のアッシュ80から微粒化されたアッシュ81が形成され、微粒化されたアッシュ81はアッシュ微粒化剤78の酸点79に保持される。
次いで、アッシュ微粒化処理が完了され、通常運転に戻される。すなわち、パティキュレートフィルタ24への流入排気ガスの空燃比がリーンに戻される。また、このとき排気ガス中にはSOxが含まれている。したがって、パティキュレートフィルタ24の状態が、酸化雰囲気のもとでパティキュレートフィルタ24への流入排気ガス中にSOxが含まれている状態にされる。その結果、微粒化されたアッシュ81がアッシュ微粒化剤78から放出される。より詳細には、図5Bに示されるように、微粒化されたアッシュ81がアッシュ微粒化剤78の酸点79から放出される。アッシュ微粒化剤78から放出された微粒化されたアッシュ81は、図4Cに示されるように、排気ガス流れEGFによりパティキュレートフィルタ24の細孔を通過して排気ガス流出通路71へ流出する。
したがって、パティキュレートフィルタ24にアッシュ微粒化剤78を担持し、アッシュ微粒化処理を一時的に行うと、パティキュレートフィルタ24からアッシュを除去できるのである。このようにアッシュを微粒化してパティキュレートフィルタから除去するという考え方はこれまで存在していない。
アッシュ微粒化剤78によるアッシュ除去作用は次のようなメカニズムによると考えられている。以下では、アッシュが硫酸カルシウムCaSO4から形成されている場合を例にとって説明する。しかしながら、アッシュが他の物質から形成されている場合も同様である。
アッシュ微粒化処理が行われると、すなわちパティキュレートフィルタ24の状態がパティキュレートフィルタ24への流入排気ガス中の酸素濃度が低下されかつパティキュレートフィルタ24の温度が上昇された状態にされると、図6Aに示されるように、アッシュを形成する硫酸カルシウムCaSO4と例えば亜硫酸カルシウムCaSO3との間の平衡が亜硫酸カルシウムCaSO3が生成される方向に傾く(CaSO4→CaSO3)。言い換えると、硫酸カルシウムCaSO4が不安定化される。なお、このときアッシュ微粒化剤78の酸点79には水素イオンH+が保持されている。
上述したように、アッシュ微粒化剤78の酸強度は亜硫酸H2SO3の酸強度よりも高い。酸強度が高いということは水素イオンH+を放出しやすいということを意味している。このため、図6Bに示されるように、アッシュ微粒化剤78は酸点79において、水素イオンH+を放出し、亜硫酸カルシウムCaSO3からカルシウムイオンCa2+を受け取る。このようにしてアッシュがカルシウムイオンCa2+の形に微粒化され、アッシュ微粒化剤78に保持される。一方、亜硫酸カルシウムCaSO3はアッシュ微粒化剤78から水素イオンH+を受け取り、カルシウムイオンCa2+を放出し、したがって亜硫酸H2SO3が形成される。この亜硫酸H2SO3は次いで水H2O及び二酸化硫黄SO2に分解され、パティキュレートフィルタ24から流出する。
次いで、アッシュ微粒化処理が完了されると、すなわちパティキュレートフィルタ24の状態が、酸化雰囲気のもとでパティキュレートフィルタ24への流入排気ガスにSOxが含まれている状態に戻されると、図6Cに示されるように、排気ガス中に含まれるSOx及び水H2Oから硫酸H2SO4が生成される(SOx+H2O→H2SO4)。上述したように、アッシュ微粒化剤78の酸強度は硫酸H2SO4の酸強度よりも低い。このため、図6Dに示されるように、硫酸H2SO4は水素イオンH+を放出し、アッシュ微粒化剤78からカルシウムイオンCa2+を受け取り、したがって硫酸カルシウムCaSO4が形成される(Ca2++SO4 2−→CaSO4)。一方、アッシュ微粒化剤78は酸点79において、水素イオンH+を受け取り、カルシウムイオンCa2+を放出する。このようにしてアッシュが酸点79から離脱し、アッシュ微粒化剤78から放出される。言い換えると、酸点79が再生ないし再活性化される。
ここで注目すべきは、1つの酸点79に1つのカルシウムイオンCa2+が保持され、1つのカルシウムイオンCa2+から1分子の硫酸カルシウムCaSO4が生成されるということである。このことは、アッシュが1分子の大きさまで微粒化されることを意味している。このように微粒化されたアッシュ81の粒径は1nm以下であり、したがってパティキュレートフィルタ24の細孔を容易に通過することができる。また、微粒化されたアッシュ81がアッシュ微粒化剤78に保持されている状態でも、パティキュレートフィルタ24の圧力損失を十分に低減することができる。
なお、微粒化されたアッシュがパティキュレートフィルタ24の細孔内で再凝集するおそれがある。しかしながら、微粒化されたアッシュは極めて小さいので、再凝集したとしても、パティキュレートフィルタ24を容易に通過できる。
上述のメカニズムは次の実験結果によっても支持されている。
硫酸カルシウム粒子と、固体酸粒子とを混合し、第1のサンプルを用意した。固体酸粒子として、シリカ・アルミナ(日揮触媒化成株式会社製のN633HN(アルミナ含有率:25wt%、Si/Al比:2.3、比表面積:380m2/g))を用いた。第1のサンプルを反応管内に配置し、反応管に窒素ガスを供給しつつ、反応管の温度TRが約600℃まで上昇され保持されるように反応管を加熱した。このとき反応管から流出するガス中のSOx量QSOxを測定した。また、硫酸カルシウム粒子及び固体酸粒子を分離した比較サンプルを反応管内に配置し、同様の処理を行い、SOx流出量QSOxを測定した。
測定結果を図7Aに示す。図7AにおいてTRは反応管温度を示している。図7Aからわかるように、無酸素雰囲気のもとで約600℃まで加熱されると、実線Sで示されるように第1のサンプルからSOxが放出された。このことから、硫酸カルシウムCaSO4がカルシウムとSOxに分解されたことがわかる。これに対し、破線Rで示されるように比較サンプルからはSOxが放出されなかった。
また、上記処理前後における第1のサンプルの酸量QACD、すなわちカルシウムを保持していない酸点である活性酸点の数を測定した。
測定結果を図7Bに示す。図7Bからわかるように、S1Bで示される処理前の酸量QACDに比べて、S1Aで示される処理後の酸量QACDが減少した。このことから、固体酸の酸点にカルシウムが保持されたことがわかる。
更に、カルシウムを保持した固体酸から形成される第2のサンプルを用意した。固体酸粒子は第1のサンプルと同様であった。第2のサンプルを反応管内に配置し、酸素過剰でかつSOxを含むガスを反応管に供給しつつ、反応管の温度を約350℃に加熱し一定時間保持した。当該処理前後における第2のサンプルの酸量を測定した。
測定結果を図7Cに示す。図7Cからわかるように、S2Aで示される処理前の酸量QACDに比べて、S2Bで示される処理後の酸量QACDが増加した。このことから、固体酸の酸点からカルシウムが放出されたことがわかる。
このように、パティキュレートフィルタ24にアッシュ微粒化剤78を担持し、アッシュ微粒化処理を一時的に行うと、パティキュレートフィルタ24からアッシュを除去することができる。このため、パティキュレートフィルタ24の圧力損失が増大するのが抑制され、機関出力が低下するのが抑制される。また、燃料消費率が増大するのが抑制される。
次に、アッシュ微粒化剤78について更に説明する。上述したように、アッシュ微粒化剤78は、亜硫酸H2SO3の酸強度よりも高くかつ硫酸H2SO4の酸強度よりも低い酸強度を有する固体酸から形成される。
酸強度は、例えばハメットの酸度関数、水素イオン指数、酸解離定数、アンモニアを用いた昇温離脱法(NH3−TPD法)による測定値から選ばれた1つ又は複数により表される。
酸強度がハメットの酸度関数H0で表される場合、ハメットの酸度関数H0が小さくなるほど酸強度が高くなる。標準状態(25℃、1気圧(105Pa))において、100%亜硫酸H2SO3のハメットの酸度関数H0は−0.83であり、100%硫酸H2SO4のハメットの酸度関数H0は−12である。
そうすると、標準状態におけるアッシュ微粒化剤78のハメットの酸度関数H0が−0.83よりも小さく−12よりも大きいという見方もできる。
具体的には、アッシュ微粒化剤78は、シリカ(SiO2)・アルミナ(Al2O3)(H0=−8.2)、シリカ(SiO2)・チタニア(TiO2)(H0=−8.2)、チタニア(TiO2)・ジルコニア(ZrO2)(H0=−8.2)、シリカ(SiO2)・ジルコニア(ZrO2)(H0=−8.2)、シリカ(SiO2)・酸化ガリウム(Ga2O3)(H0=−7.9)、チタニア(TiO2)・アルミナ(Al2O3)(H0=−5.8)、シリカ(SiO2)・酸化イットリウム(Y2O3)(H0=−5.8)、アルミナ(Al2O3)・ジルコニア(ZrO2)(H0=−5.8)、シリカ(SiO2)・酸化ランタン(La2O3)(H0=−4.6)、チタニア(TiO2)・酸化カドミウム(CdO)(H0=−3.0)、チタニア(TiO2)・酸化スズ(SnO2)(H0=−3.0)、チタニア(TiO2)・酸化亜鉛(ZnO)(H0=−3.0)、酸化亜鉛(ZnO)・シリカ(SiO2)(H0=−3.0)、及び酸化亜鉛(ZnO)・酸化カドミウム(CdO)(H0=−3.0)から選択された1つ又は複数の複合酸化物から形成される。なお、複合材料名の後のハメットの酸度関数(H0)は、金属のモル比が1:1の場合のハメットの酸度関数(H0)を示している。
このようなアッシュ微粒化剤は、例えば下記の参考文献1に記載のように、一般的に知られている電気陰性度を参照して選択することができる。参考文献1のFig.4を図8として本件明細書に添付する:Katsue Shibata, Tadamitsu Kiyoura, Jun Kitagawa, Takashi Sumiyoshi, Kozo Tanabe, ”Acidic properties of Binary Metal Oxides”, Bulletin of the Chemical Society of Japan, Vol. 46 (1973) No. 10 P 2985−2988。
別の観点によれば、亜硫酸H2SO3の酸強度よりも高くかつ硫酸H2SO4の酸強度よりも低い酸強度を有する固体酸をパティキュレートフィルタ24に担持しているということになる。
更に別の観点によれば、標準状態におけるハメットの酸度関数H0が−0.83よりも小さく−12よりも大きい固体酸をパティキュレートフィルタ24に担持しているということになる。この酸度関数H0の上限は例えば、−1、−2、−3、−4、−5、−6、又は−7である。また、この酸度関数H0の下限は例えば、−12、−11、−10、又は−9である。別の実施例では、標準状態におけるハメットの酸度関数H0が例えば−2<H0<−11又は−4<H0<−10又は−6<H0<−9の条件を満たす固体酸がパティキュレートフィルタ24に担持される。
なお、100%亜硫酸H2SO3のハメットの酸度関数H0は次のように定義される。すなわち、100%亜硫酸H2SO3の電離度は0.1mol/Lにおける亜硫酸H2SO3の電離度と同等であり、100%亜硫酸H2SO3の密度は100%硫酸H2SO4の密度と同等である、と仮定する。標準状態における0.1mol/Lの亜硫酸H2SO3水溶液中の水素イオン濃度は3.1x10−2mol/Lであり、標準状態における100%硫酸H2SO4の密度は1840(g/L)である。そうすると、亜硫酸H2SO3の分子量が82であるから、100%亜硫酸H2SO3の濃度は22mol/L(=1840/82)と考えることができる。したがって、標準状態における100%亜硫酸H2SO3のハメットの酸度関数H0は次式で表される。
H0=−log(0.031/0.1・22)=−0.83
図9は本発明による第1実施例の排気浄化制御を示している。図9を参照すると、時間ta1において、パティキュレートフィルタ24に捕集された粒子状物質の量QPMが許容上限量UPMを越えると、PM除去処理が開始される。すなわち、パティキュレートフィルタ24への流入排気ガスの空燃比AFEがリーンに維持されつつ、パティキュレートフィルタ24の温度TFがPM除去温度TPMまで上昇される。その結果、粒子状物質量QPMが次第に減少する。次いで、時間ta2において粒子状物質量QPMが許容下限量まで減少されると、PM除去処理が終了される。図9に示される例では、許容下限量LPMはほぼゼロに設定されている。
次いで、時間ta3において、パティキュレートフィルタ24に捕集された微粒化されていないアッシュの量、すなわち未処理アッシュ量QUAが許容上限量UUAを越えると、アッシュ微粒化処理が開始される。すなわち、パティキュレートフィルタ24への流入排気ガスの空燃比が例えば理論空燃比AFSまで低下され、パティキュレートフィルタ24の温度TFがアッシュ微粒化温度TAAまで上昇される。その結果、パティキュレートフィルタ24上のアッシュが微粒化され、未処理アッシュ量QUAが次第に減少する。また、微粒化されてパティキュレートフィルタ24に保持されているアッシュの量QAAが次第に増加する。次いで、時間ta4において、アッシュ微粒化処理があらかじめ定められた設定時間行われると、アッシュ微粒化処理が終了される。図9に示される例では、アッシュ微粒化処理により未処理アッシュ量QUAが許容下限量LUAまで減少されるように設定時間が設定されており、許容下限量LUAはほぼゼロに設定されている。
アッシュ微粒化処理が終了されると、パティキュレートフィルタ24の状態が酸化雰囲気のもとでパティキュレートフィルタ24への流入排気ガス中にSOxが含まれている状態にされる。その結果、微粒化されたアッシュがパティキュレートフィルタ24から放出されるので、微粒化されたアッシュの量QAAが次第に減少する。
次いで、時間ta5において粒子状物質量QPMが許容上限値UPMを越えると、再びPM除去処理が行われる。
なお、PM除去処理及びアッシュ微粒化処理が行われていない通常運転時においてパティキュレートフィルタ24の温度TFは150℃から350℃程度である。PM除去温度TPM及びアッシュ微粒化温度TAAは通常運転時におけるパティキュレートフィルタ24の温度TFよりも高く設定される。
パティキュレートフィルタ24への流入排気ガス中の酸素濃度を低下させるために、一実施例では、燃料添加弁27から排気マニホルド5に燃料が添加される。別の実施例では、燃焼室2で燃焼される混合気の空燃比が低下される。更に別の実施例では、膨張行程又は排気行程に燃料噴射弁3から燃料が2次的に噴射される。
一方、パティキュレートフィルタ24の温度を上昇させるために、一実施例では、燃料添加弁27から添加された燃料が排気通路又はパティキュレートフィルタ24で燃焼される。別の実施例では、燃料噴射弁3から2次的に噴射された燃料が燃焼室2、排気通路、又はパティキュレートフィルタ24で燃焼される。
本発明による第1実施例では、粒子状物質量QPMに基づいてPM除去処理を行うべきか否かが判別される。粒子状物質量QPMは、一実施例では、単位時間当たりに増大する粒子状物質量dQPMiと単位時間当たりに減少する粒子状物質量dQPMdとを機関運転状態に基づきそれぞれ求め、増大分dQPMi及び減少分dQPMdの合計を積算して得られるカウンタ値により表される。別の実施例では、圧力損失センサ26(図1)により検出されるパティキュレートフィルタ24の圧力損失によって粒子状物質量QPMが表される。更に別の実施例では、PM除去処理が行われたときに粒子状物質量QPMがゼロにリセットされる。
また、本発明による第1実施例では、未処理アッシュ量QUAに基づいてアッシュ微粒化処理を行うべきか否かが判別される。未処理アッシュ量QUAは、一実施例では、単位時間当たりに増大する未処理アッシュ量dQUAiと単位時間当たりに減少する未処理アッシュ量dQUAdとを機関運転状態に基づきそれぞれ求め、増大分dQUAi及び減少分dQUAdの合計を積算して得られるカウンタ値により表される。別の実施例では、PM除去処理が完了した時点でのパティキュレートフィルタ24の圧力損失によって未処理アッシュ量QUAが表される。このようにすると、粒子状物質の影響を受けない。更に別の実施例では、車両走行距離によって未処理アッシュ量QUAが表される。更に別の実施例では、アッシュ微粒化処理が行われたときに未処理アッシュ量QUAがゼロにリセットされる。
アッシュ微粒化温度TAAはアッシュ微粒化剤78の種類に応じて定まる。アッシュ微粒化処理剤78がシリカ・アルミナから形成される場合には、アッシュ微粒化温度TAAは約600℃である。
PM除去温度TPMは酸化機能を有する触媒77の種類に応じて定まる。触媒77がセリアCeO2及び銀Agから形成される場合には、PM除去温度は300から500℃程度である。触媒77がアルミナAl2O3及び白金Ptから形成される場合には、PM除去温度は600℃程度である。
ここで、パティキュレートフィルタ24上に捕集された粒子状物質の50%を除去するのに必要なパティキュレートフィルタ24の温度を50%除去温度TPM50と称すると、図10は、PM除去処理が行われるときの未処理アッシュ量QUAと50%除去温度TPM50との関係の実験結果を示している。図10からわかるように、未処理アッシュ量QUAが少なくなるにつれて、50%除去温度TPM50が低くなる。
これまでの説明からわかるように、パティキュレートフィルタにアッシュ微粒化剤を担持しアッシュ微粒化処理を繰り返し行えば、パティキュレートフィルタ上の未処理アッシュ量を少なく維持することができる。したがって、本発明による第1実施例では、PM除去温度TPMを低い温度に設定することができる。言い換えると、低いPM除去温度でもってPM除去処理を行うことができる。その結果、PM除去処理に必要なエネルギを低減できる。特に、触媒77がセリアCeO2及び銀Agから形成された場合には、PM除去温度TPMを300℃から500℃程度に設定できることが確認されている。この場合のPM除去温度TPMはアッシュ微粒化温度TAAよりも低くなっている。
図11は本発明による第1実施例の排気浄化制御を実行するルーチンを示している。図11を参照すると、ステップ101ではPM除去処理を行うべきか否かが判別される。本発明による第1実施例では、粒子状物質量QPMが許容上限量UPMを越えたときにPM除去処理を行うべきと判別され、それ以外はPM除去処理を行うべきと判別されない。PM除去処理を行うべきと判別されたときには次いでステップ102に進み、PM除去処理が一時的に行われる。次いでステップ103に進む。ステップ101においてPM除去処理を行うべきと判別されないときにはステップ103にジャンプする。ステップ103ではアッシュ微粒化処理を行うべきか否かが判別される。本発明による第1実施例では、未処理アッシュ量QUAが許容上限量UUAを越えたときにアッシュ微粒化処理を行うべきと判別され、それ以外はアッシュ微粒化処理を行うべきと判別されない。アッシュ微粒化処理を行うべきと判別されたときには次いでステップ104に進み、アッシュ微粒化処理が一時的に行われる。次いで処理サイクルを終了する。ステップ103においてアッシュ微粒化処理を行うべきと判別されないときにも処理サイクルを終了する。なお、電子制御ユニット30(図1)はPM除去処理を行うようにプログラムされている。また、電子制御ユニット30はアッシュ除去処理を行うようにプログラムされている。
別の観点によれば、内燃機関の排気系にパティキュレートフィルタを配置した、内燃機関の排気浄化装置であって、パティキュレートフィルタが、表面上に固体酸をコーティングしたパティキュレートフィルタであり、固体酸の酸強度が、亜硫酸H2SO3の酸強度よりも大きく硫酸H2SO4の酸強度よりも小さい内燃機関の排気浄化装置が提供される。また、この排気浄化装置は、パティキュレートフィルタ内に堆積したアッシュを除去するアッシュ除去運転の制御を備え、アッシュ除去運転の制御が、パティキュレートフィルタの温度を上昇させる制御と、パティキュレートフィルタ内の雰囲気の空燃比の制御と、を備え、パティキュレートフィルタ内の雰囲気の空燃比の制御が、パティキュレートフィルタの温度を上昇させる制御の間に、先に理論空燃比又は空燃比リッチ雰囲気とし、次に空燃比リーン雰囲気に変化させる制御である。
更に別の観点によれば、酸素過剰のもとで燃焼が行われる内燃機関の排気通路内に配置されるのに適した、排気ガス中の粒子状物質を捕集するためのウォールフロー型パティキュレートフィルタであって、アッシュを粒子状物質と共に捕集するパティキュレートフィルタにおいて、パティキュレートフィルタに固体酸が担持され、固体酸の酸強度は亜硫酸の酸強度よりも高くかつ硫酸の酸強度よりも低い、ことを特徴とするパティキュレートフィルタが提供される。
更に別の観点によれば、酸素過剰のもとで燃焼が行われる内燃機関の排気通路内に配置された、排気ガス中の粒子状物質を捕集するためのウォールフロー型パティキュレートフィルタから、パティキュレートフィルタに担持された固体酸を用いて、アッシュを除去する方法において、パティキュレートフィルタの状態を、パティキュレートフィルタへの流入排気ガス中の酸素濃度が低下されかつパティキュレートフィルタの温度が上昇された状態にし、それによりアッシュを微粒化し、微粒化されたアッシュを固体酸に分散状に保持し、次いで、パティキュレートフィルタの状態を、酸化雰囲気のもとでパティキュレートフィルタへの流入排気ガス中にSOxが含まれている状態にし、それにより固体酸に保持されている微粒化されたアッシュを固体酸から放出し、パティキュレートフィルタから放出させる、方法が提供される。
ところで、従来では、パティキュレートフィルタ上にアッシュが堆積してもパティキュレートフィルタの圧力損失が大幅に増大しないように、パティキュレートフィルタの容量が大きく設定されていた。しかしながら、本発明による第1実施例では、パティキュレートフィルタからアッシュが除去されるので、パティキュレートフィルタの容量を小さく設定することができる。その結果、パティキュレートフィルタの製造コストを低減でき、PM除去処理に必要なエネルギを低減できる。また、パティキュレートフィルタを搭載するために必要な空間を小さくでき、車両重量も低減できる。
次に、本発明による第2実施例を説明する。以下では、主として、第2実施例と第1実施例との相違点を説明する。
本発明による第1実施例では、アッシュ微粒化処理はPM除去処理から独立して、或いはパティキュレートフィルタ24上の粒子状物質量QPMと無関係に、実行される。このため、アッシュ微粒化処理が行われるときにパティキュレートフィルタ24上に粒子状物質が存在している場合がある。ところが、この場合、図12Aに示されるように、アッシュ微粒化剤78の酸点79又はアッシュ80が粒子状物質82により覆われているおそれがある。その結果、アッシュ80が酸点79に到達できず、アッシュ微粒化処理が行われてもアッシュ80が微粒化されないおそれがある。
そこで、本発明による第2実施例では、PM除去処理に引き続いてアッシュ微粒化処理を行うようにしている。その結果、図12Bに示されるように、アッシュ微粒化処理を開始すべきときに酸点79とアッシュ80との間に粒子状物質が介在しなくなる。したがって、アッシュ80を確実に微粒化することができる。
また、アッシュ微粒化処理を開始すべきときに、パティキュレートフィルタ24の温度TFがPM除去温度TPMまで上昇されている。したがって、パティキュレートフィルタ24の温度TFをPM除去温度TPMからアッシュ微粒化温度TAAまで上昇させるだけでよい。あるいは、アッシュ微粒化温度TAAがPM除去温度TPMとほぼ同じ場合には、パティキュレートフィルタ24の温度TFがほぼ維持される。その結果、アッシュ微粒化処理を行うのに必要なエネルギを低減することができる。言い換えると、アッシュ微粒化処理を効率的に行うことができる。
すなわち、図13の時間tb1において、未処理アッシュ量QUAが許容上限量UUAを越えてもアッシュ微粒化処理は開始されない。次いで、時間tb2において粒子状物質量QPMが許容上限量UPMを越えると、PM除去処理が開始される。次いで、時間tb3において粒子状物質量QPMが許容下限量まで減少されると、PM除去処理が終了され、PM除去処理に引き続いてアッシュ微粒化処理が開始される。すなわち、アッシュ微粒化処理を行うべきと判別された後に初めて行われたPM除去処理に引き続いてアッシュ微粒化処理が行われる。次いで、時間tb4において、アッシュ微粒化処理があらかじめ定められた設定時間行われると、アッシュ微粒化処理が終了される。
なお、PM除去処理が行われる頻度はアッシュ微粒化処理が行われる頻度よりも高いと考えられる。したがって、アッシュ微粒化処理を行うべきと判別されたときに直ちにアッシュ微粒化処理を行わなくても、パティキュレートフィルタ24上の未処理アッシュ量QUAが過度に多くなることはない。
図13は酸化機能を有する触媒77がセリアCeO2及び銀Agから形成されている場合を示している。この場合には、上述したように、PM除去温度TPMは450℃から500℃程度であり、アッシュ微粒化温度TAAは600℃程度である。酸化機能を有する触媒77がアルミナAl2O3及び白金Pt形成されている場合には、PM除去温度TPM及びアッシュ微粒化温度TAAは共に600℃程度である。したがって、この場合にはPM除去処理が開始されてからアッシュ微粒化処理が終了されるまでパティキュレートフィルタ24の温度が600℃程度に維持される。
図14は本発明による第2実施例の排気浄化制御を実行するルーチンを示している。図14を参照すると、ステップ111ではPM除去処理を行うべきか否かが判別される。PM除去処理を行うべきと判別されたときには次いでステップ112に進み、PM除去処理が行われる。続くステップ113では、アッシュ微粒化処理を行うべきか否かが判別される。アッシュ微粒化処理を行うべきと判別されたときには次いでステップ114に進み、アッシュ微粒化処理が行われる。次いで処理サイクルを終了する。ステップ111においてPM除去処理を行うべきと判別されないとき、及びステップ113においてアッシュ微粒化処理を行うべきと判別されないときには処理サイクルを終了する。
次に、本発明による第3実施例を説明する。以下では、主として、第3実施例と第2実施例との相違点を説明する。
図15を参照すると、触媒コンバータ22内にはパティキュレートフィルタ24の上流においてNOx吸蔵還元触媒28が収容される。別の実施例では、パティキュレートフィルタ24の下流にNOx吸蔵還元触媒28が設けられる。
NOx吸蔵還元触媒28はハニカム構造をなしており、薄肉の隔壁により互いに分離された複数個の排気流通路を具備する。これら排気流通路は上流端及び下流端が互いに開放されている。各隔壁の両側表面上には例えばアルミナAl2O3からなる触媒担体が担持されており、触媒担体の表面上には貴金属触媒及びNOx吸収剤が形成されている。本発明による第3実施例では貴金属触媒として白金Ptが用いられており、NOx吸収剤を構成する成分としては例えばカリウムK、ナトリウムNa、セシウムCsのようなアルカリ金属、バリウムBa、カルシウムCaのようなアルカリ土類、ランタンLa、イットリウムYのような希土類から選ばれた少なくとも一つが用いられている。
NOx吸収剤はNOx吸蔵還元触媒28への流入排気ガスの空燃比がリーンのときにはNOxを吸収し、流入排気ガス中の酸素濃度が低下すると吸収したNOxを放出するNOxの吸放出作用を行う。
すなわち、NOx吸収剤を構成する成分としてバリウムBaを用いた場合を例にとって説明すると、流入排気ガスの空燃比がリーンのとき、すなわち排気ガス中の酸素濃度が高いときには排気ガス中に含まれるNOは白金Pt上において酸化されてNO2となり、次いでNOx吸収剤内に吸収されて酸化バリウムBaOと結合しながら硝酸イオンNO3 −の形でNOx吸収剤内に拡散する。このようにしてNOxがNOx吸収剤内に吸収される。流入排気ガス中の酸素濃度が高い限り白金Ptの表面でNO2が生成され、NOx吸収剤のNOx吸収能力が飽和しない限りNO2がNOx吸収剤内に吸収されて硝酸イオンNO3 −が生成される。
これに対し、流入排気ガスの空燃比がリッチ又は理論空燃比にされると排気ガス中の酸化濃度が低下するために反応が逆方向(NO3 −→NO2)に進み、NOx吸収剤内の硝酸イオンNO3 −がNO2の形でNOx吸収剤から放出される。次いで放出されたNOxは流入排気ガス中に含まれるHC,COによって還元される。
本発明による第3実施例でも、本発明による第1実施例及び第2実施例と同様に、内燃機関において酸素過剰のもとで燃焼が行われている。したがって、燃料噴射弁3及び燃料添加弁27から燃料が2次的に供給されない限り、NOx吸蔵還元触媒28への流入排気ガスの空燃比はリーンに維持され、このとき流入排気ガス中のNOxはNOx吸蔵還元触媒28内に吸蔵される。しかしながら、機関運転時間が長くなると、NOx吸蔵還元触媒28内に吸蔵されているNOx量が多くなり、ついにはNOx吸蔵還元触媒28がNOxを吸蔵できなくなってしまう。
そこで本発明による第3実施例では、NOx吸蔵還元触媒28からNOxを放出させて還元するために、流入排気ガスの空燃比をリッチ又は理論空燃比にするNOx放出還元処理を一時的に行うようにしている。その結果、NOx吸蔵還元触媒28内に蓄えられているNOx量が減少する。
ところが、排気ガス中にはイオウ分がSOxの形で含まれており、NOx吸蔵還元触媒28内にはNOxばかりでなくSOxも吸収される。このSOxのNOx吸蔵還元触媒28内への吸収メカニズムはNOxの吸収メカニズムと同じであると考えられる。すなわち、NOx吸収剤を構成する成分としてバリウムBaを用いた場合を例にとって簡単に説明すると、流入排気ガスの空燃比がリーンのときには上述したように酸素O2がO2 −又はO2−の形で白金Ptの表面に付着しており、排気ガス中のSO2は白金Ptの表面に付着し白金Ptの表面上でO2 −又はO2−と反応し、SO3となる。次いで生成されたSO3は白金Pt上でさらに酸化されつつNOx吸蔵還元触媒28に吸収されて酸化バリウムBaOと結合しながら、硫酸イオンSO4 2−の形でNOx吸蔵還元触媒28内に拡散する。この硫酸イオンSO4 2−は次いでバリウムイオンBa2+と結合して硫酸塩BaSO4を生成する。ところが、この硫酸塩BaSO4は分解しにくく、排気ガスの空燃比をただ単にリッチにしてもNOx吸蔵還元触媒28内の硫酸塩BaSO4の量は減少しない。このため、時間が経過するにつれてNOx吸収剤内の硫酸塩BaSO4の量が増大し、その結果NOx吸蔵還元触媒28が吸収しうるNOxの量が減少することになる。
一方、NOx吸蔵還元触媒28の温度をSOx放出温度(例えば600℃)以上に維持しつつ排気ガスの平均空燃比を理論空燃比又はリッチにすると、NOx吸蔵還元触媒28内の硫酸塩BaSO4が分解してSO3の形でNOx吸蔵還元触媒28から放出される。この放出されたSO3は排気ガス中のHC,COと反応してSO2に還元せしめられる。このようにしてNOx吸蔵還元触媒28内に硫酸塩BaSO4の形で吸収されているSOxの量が次第に減少する。
そこで本発明による第3実施例では、NOx吸蔵還元触媒28からSOxを放出させるために、NOx吸蔵還元触媒28の状態を、NOx吸蔵還元触媒28への流入排気ガスの空燃比がリッチでありかつNOx吸蔵還元触媒28の温度がSOx放出温度に上昇された状態にするSOx放出処理を一時的に行うようにしている。その結果、NOx吸蔵還元触媒28内に蓄えられているSOx量が減少する。
図16は本発明による第3実施例の排気浄化制御の一例を示している。図16を参照すると、時間tc1において、パティキュレートフィルタ24上の未処理アッシュ量QUAが許容上限量UUAを越えてもアッシュ微粒化処理は開始されない。次いで、時間tc2において粒子状物質量QPMが許容上限量UPMを越えると、PM除去処理が開始される。次いで、時間tc3において粒子状物質量QPMが許容下限量まで減少されると、PM除去処理が終了され、PM除去処理に引き続いてアッシュ微粒化処理が開始される。その結果、未処理アッシュ量QUAが減少する。
NOx吸蔵還元触媒28の温度はパティキュレートフィルタ24の温度とほぼ等しく、NOx吸蔵還元触媒28への流入排気ガスの空燃比はパティキュレートフィルタ24への流入排気ガスの空燃比AFEに等しいと考えることができる。したがって、アッシュ微粒化処理が行われると、NOx吸蔵還元触媒28内に吸蔵されているSOxの量QNSSが減少する。次いで、時間tc4において、アッシュ微粒化処理があらかじめ定められた設定時間行われると、アッシュ微粒化処理が終了される。
次いで、時間tc5において、NOx吸蔵還元触媒28のSOx吸蔵量QNSSが許容上限量UNSSを越えてもSOx放出処理は開始されない。次いで、時間tc6において粒子状物質量QPMが許容上限量UPMを越えると、PM除去制御が開始される。次いで、時間tc7においてPM除去処理が終了され、PM除去処理に引き続いてSOx放出処理が開始される。すなわち、NOx吸蔵還元触媒28への流入排気ガスの空燃比がリッチAFRにされると共にNOx吸蔵還元触媒28の温度がSOx放出温度TNSSに上昇される。その結果、SOx吸蔵量QNSSが減少する。また、このときパティキュレートフィルタ24の未処理アッシュ量QUAが減少する。次いで、時間tc8において、SOx放出処理があらかじめ定められた設定時間行われると、SOx放出処理が終了される。図16に示される例では、SOx放出処理によりSOx吸蔵量QNSSが許容下限量LNSSまで減少されるように設定時間が設定されており、許容下限量LNSSはほぼゼロに設定されている。
このように、PM除去処理に引き続いてSOx放出処理及びアッシュ微粒化処理がそれぞれ行われる。その結果、SOx放出処理及びアッシュ微粒化処理を行うのに必要なエネルギを低減できる。
図17は本発明による第3実施例の排気浄化制御の別の例を示している。図17を参照すると、時間td1において、未処理アッシュ量QUAが許容上限量UUAを越えてもアッシュ微粒化処理は開始されない。次いで、時間td2において、SOx吸蔵量QNSSが許容上限量UNSSを越えてもSOx放出処理は開始されない。次いで、時間td3において、粒子状物質量QPMが許容上限量UPMを越えると、PM除去処理が開始される。次いで、時間td4において粒子状物質量QPMが許容下限量まで減少されると、PM除去処理が終了され、PM除去処理に引き続いてSOx放出処理が開始される。すなわち、SOx放出処理及びアッシュ微粒化処理を行うべきと判別された後に初めて行われたPM除去処理に引き続いてSOx放出処理が行われ、アッシュ微粒化処理は行われない。SOx放出処理が行われると、SOx吸蔵量QNSSが減少する。
また、本発明による第3実施例では、SOx放出温度TNSSはアッシュ微粒化温度TAAとほぼ同じである。したがって、SOx放出処理が行われると、パティキュレートフィルタ24の状態が、パティキュレートフィルタ24への流入排気ガスの空燃比が理論空燃比又はリッチでありかつパティキュレートフィルタ24の温度がアッシュ微粒化温度TAAである状態にされる。その結果、未処理アッシュ量QUAも減少する。次いで、時間td5において、アッシュ微粒化処理があらかじめ定められた設定時間行われると、SOx放出処理が終了される。図17に示される例では、SOx吸蔵量QNSSが許容下限量LNSSまで減少され、未処理アッシュ量QUAが許容下限量LUAまで減少される。
このように、SOx放出処理及びアッシュ微粒化処理を同時に行うべきときに、SOx放出処理が行われ、アッシュ微粒化処理が省略される。その結果、アッシュ除去作用を行うのに必要なエネルギを低減できる。
本発明による第3実施例では、SOx吸蔵量QNSSに基づいてSOx放出処理を行うべきか否かが判別される。SOx吸蔵量QNSSは、一実施例では、単位時間当たりに増大するSOx吸蔵量dQNSSiと単位時間当たりに減少するSOx吸蔵量dQNSSdとを機関運転状態に基づきそれぞれ求め、増大分dQNSSi及び減少分dQNSSdの合計を積算して得られるカウンタ値により表される。別の実施例では、車両走行距離によってSOx吸蔵量QNSSが表される。更に別の実施例では、SOx放出処理が行われたときにSOx吸蔵量QNSS及び未処理アッシュ量QUAがそれぞれゼロにリセットされる。
なお、NOx放出還元処理が行われると排気ガスの空燃比AFEが一時的にリッチにされる。図16及び図17ではこのようなNOx放出還元処理による排気ガスの空燃比AFEの変化の図示が省略されている。
図18は本発明による第3実施例の排気浄化制御を実行するルーチンを示している。図18を参照すると、ステップ121ではPM除去処理を行うべきか否かが判別される。PM除去処理を行うべきと判別されたときには次いでステップ122に進み、PM除去処理が行われる。次いでステップ123に進む。ステップ121においてPM除去処理を行うべきと判別されないときには処理サイクルを終了する。ステップ123ではSOx放出処理を行うべきか否かが判別される。本発明による第3実施例では、SOx吸蔵量QNSSが許容上限量UNSSを越えたときにSOx放出処理を行うべきと判別され、それ以外はSOx放出処理を行うべきと判別されない。SOx放出処理を行うべきと判別されたときには次いでステップ124に進み、SOx放出処理が行われる。ステップ123においてSOx放出処理を行うべきと判別されないときにはステップ125に進み、アッシュ微粒化処理を行うべきか否かが判別される。本発明による第3実施例では、未処理アッシュ量QUAが許容上限量UUAを越えたときにアッシュ微粒化処理を行うべきと判別され、それ以外はアッシュ微粒化処理を行うべきと判別されない。アッシュ微粒化処理を行うべきと判別されたときには次いでステップ126に進み、アッシュ微粒化処理が行われる。次いで処理サイクルを終了する。ステップ125においてアッシュ微粒化処理を行うべきと判別されないときにも処理サイクルを終了する。なお、電子制御ユニット30はNOx放出還元処理を行うようにプログラムされている。また、電子制御ユニット30はSOx放出処理を行うようにプログラムされている。
次に、本発明による第4実施例を説明する。以下では、主として、第4実施例と第2実施例との相違点を説明する。
本発明による第4実施例では、酸化機能を有する触媒77がセリアCeO2及び銀Agから形成される。セリアCeO2は、酸化雰囲気のもとで酸素O2を貯蔵し、流入排気ガス中の酸素濃度が低下すると貯蔵している酸素O2を放出する酸素貯蔵能力を有している。したがって、本発明による第4実施例では、パティキュレートフィルタ24に酸素貯蔵能力を有する触媒、あるいは酸化機能及び酸素貯蔵能力を有する触媒77が担持されているということになる。
この場合、アッシュ微粒化処理が開始されてパティキュレートフィルタ24への流入排気ガス中の酸素濃度が低下されると、酸素貯蔵能力を有する触媒77から酸素O2が放出される。その結果、パティキュレートフィルタ24の表面では局所的に酸素濃度が高く維持される。このため、アッシュ微粒化処理が開始されても、未処理アッシュの微粒化作用が開始されないおそれがある。したがって、アッシュ微粒化処理が一定時間だけ行われる場合には、十分な量のアッシュを微粒化できず、パティキュレートフィルタ24から十分な量のアッシュを除去するのが困難になる。このため、パティキュレートフィルタ24の圧力損失が十分に低減されないおそれがある。
一方、アッシュ微粒化処理の開始時にパティキュレートフィルタ24に粒子状物質が存在していると、酸素貯蔵能力を有する触媒77から放出された酸素O2によって粒子状物質が酸化される。すなわち、触媒77から放出された酸素O2が粒子状物質により消費される。
一方、本発明による第4実施例でも、本発明による第2実施例と同様に、粒子状物質量QPMが許容下限量LPMになるとPM除去処理が終了され、PM除去処理に引き続いてアッシュ微粒化処理が行われる。この許容下限量LPMはPM除去処理が終了されたときにパティキュレートフィルタ24に残留している粒子状物質の量を表している。
そこで、本発明による第4実施例では、許容下限量LPMを、アッシュ微粒化処理開始時に触媒77に貯蔵されているほぼ全ての酸素O2を消費するのに必要な量QPMOX(>0)以上に設定している。その結果、アッシュ微粒化処理が開始され触媒77から酸素O2が放出されると、この酸素O2のほぼ全てがパティキュレートフィルタ24に残留している粒子状物質により消費される。このため、パティキュレートフィルタ24の表面での酸素濃度が速やかに低下され、アッシュ微粒化作用が速やかに開始される。また、許容下限量LPMがほぼゼロに設定される場合に比べて、PM除去処理に必要な時間が短くなる。したがって、PM除去処理に必要なエネルギを低減することができる。
すなわち、図19に示されるように、時間te1において、パティキュレートフィルタ24上の粒子状物質量QPMが許容上限量UPMを越えると、PM除去処理が開始される。その結果、粒子状物質量QPMが次第に減少する。次いで、時間te2において、粒子状物質量QPMが許容下限量LPMまで減少されると、PM除去処理が終了され、PM除去処理に引き続いてアッシュ微粒化処理が開始される。図19に示される例では、許容下限量LPMが上述の量QPMOXに設定されている。したがって、アッシュ微粒化処理の開始時にパティキュレートフィルタ24に量QPMOXの粒子状物質が残留している。
アッシュ微粒化処理が開始されると、パティキュレートフィルタ24への流入排気ガスの空燃比が例えば理論空燃比まで低下される。その結果、酸素貯蔵能力を有する触媒77から酸素O2が放出されるので、触媒77に貯蔵されている酸素の量QOXは減少する。一方、パティキュレートフィルタ24に残留している粒子状物質がこの酸素O2により酸化されるので、粒子状物質量QPMも減少する。
次いで、時間te3になると、酸素貯蔵量QOXがほぼゼロになる。その結果、パティキュレートフィルタ24の表面における酸素濃度が十分に低下される。また、図19に示される例では、このとき粒子状物質量QPMがほぼゼロになる。
アッシュ微粒化処理が行われている間は、パティキュレートフィルタ24への流入排気ガスの空燃比がほぼ理論空燃比であるので、酸素貯蔵量QOXはほぼゼロに維持される。一方、このときパティキュレートフィルタ24に流入する排気ガス中には粒子状物質が含まれているので、粒子状物質量QPMは次第に増加する。次いで、時間te4において、アッシュ微粒化処理が終了される。その結果、パティキュレートフィルタ24への流入排気ガスの空燃比がリーンに戻されるので、酸素貯蔵量QOXが次第に増加する。
図20はPM除去処理終了時におけるパティキュレートフィルタ24の表面を示している。図20に示されるように、パティキュレートフィルタ24上の未処理アッシュ80が粒子状物質82によって覆われている。その結果、未処理アッシュ同士が凝集するのが抑制される。
図21は本発明による第4実施例のPM除去処理を実行するルーチンを示している。このルーチンは例えば図14のステップ112で実行される。図21を参照すると、ステップ131では目標フィルタ温度TTFがPM除去温度TPMに設定される。続くステップ132では、パティキュレートフィルタ24の温度を目標フィルタ温度TTFまで上昇させる昇温制御が行われる。続くステップ133では粒子状物質量QPMが更新される。続くステップ134では粒子状物質量QPMが許容下限量LPM以下であるか否かが判別される。QPM>LPMのときにはステップ131に戻る。QPM≦LPMのときには次いでステップ135に進み、昇温制御が終了される。すなわち、PM除去処理が終了される。
上述したように、粒子状物質量QPMは、一実施例では、増大分dQPMi及び減少分dQPMdの合計を積算して得られるカウンタ値により表される。増大分dQPMiは例えば燃料噴射量QF及び機関回転数Neの関数としてあらかじめ実験により求められており、図22Aに示されるマップの形でROM32(図1)に記憶されている。また、減少分dQPMdは例えば吸入空気量Ga及びパティキュレートフィルタ24の温度TFの関数としてあらかじめ実験により求められており、図22Bに示されるマップの形でROM32に記憶されている。ここで、燃料噴射量QFは機関負荷を表しており、吸入空気量Gaはパティキュレートフィルタ24への流入排気ガス量を表している。
次に、本発明による第5実施例を説明する。以下では、主として、第5実施例と第4実施例との相違点を説明する。
本発明による第2実施例では、許容下限LPMがほぼゼロに設定され、したがってPM除去処理終了時にパティキュレートフィルタ24上に粒子状物質がほとんど存在していない(図12B参照)。
しかしながら、アッシュの除去の観点から見ると、未処理アッシュがアッシュ微粒化剤78の酸点79に到達できれば十分であり、パティキュレートフィルタ24上のほぼ全ての粒子状物質を除去する必要はない。
図23は、PM除去処理終了時、すなわちアッシュ微粒化処理の開始時にパティキュレートフィルタ24に残留している粒子状物質の量QPMRと、アッシュ除去効率EFFRとの関係を示している。アッシュ除去効率EFFRはパティキュレートフィルタ24に流入したアッシュ量に対するパティキュレートフィルタ24から除去されたアッシュの量の比で表される。図23からわかるように、粒子状物質残留量QPMRが多いときには未処理アッシュがアッシュ微粒化剤78の酸点に到達しにくいので、アッシュ除去効率EFFRは低くなる。粒子状物質残留量QPMRが少なくなると、未処理アッシュと酸点との間に介在する粒子状物質量が少なくなり、したがってアッシュ除去効率EFFRが高くなる。図23に示される例では、粒子状物質残留量QPMRがQPMELのときにアッシュ除去効率EFFRが許容下限効率LEFFRになり、粒子状物質残留量QPMRがQPMELよりも少ないとアッシュ除去効率EFFRが許容下限効率LEFFRよりも高くなる。
そこで、本発明による第5実施例では、許容下限量LPMを、アッシュ除去効率EFFRを許容下限効率LEFFRにするのに必要な量QPMEL以下に設定される。その結果、アッシュ除去効率EFFRが許容下限効率LEFFR以上に維持される。
すなわち、図24に示されるように、時間tf1においてPM除去処理が開始されると、粒子状物質量QPMが次第に減少する。次いで、時間tf2において、粒子状物質量QPMが許容下限量LPMまで減少されると、PM除去処理が終了され、PM除去処理に引き続いてアッシュ微粒化処理が開始される。図24に示される例では、許容下限量LPMが上述の量QPMELに設定されている。言い換えると、アッシュ微粒化処理の開始時にパティキュレートフィルタ24に量QPMELの粒子状物質が残留している。
この場合、図25に示されるように、パティキュレートフィルタ24上に粒子状物質82が残留しているけれども、未処理アッシュ80とアッシュ微粒化剤78の酸点79との間には粒子状物質82はほとんど介在していない。言い換えると、未処理アッシュ80及び酸点79が粒子状物質82により覆われていない。したがって、未処理アッシュ80を確実に微粒化することができる。
再び図24を参照すると、アッシュ微粒化処理中においてもパティキュレートフィルタ24への流入排気ガス中には粒子状物質が含まれているので、粒子状物質量QPMは次第に増加する。次いで、時間tf3において、アッシュ微粒化処理が終了される。なお、図24に示される例では、触媒77は酸素貯蔵能力を有していない。
次に、本発明による第6実施例を説明する。以下では、主として、第6実施例と第4実施例との相違点を説明する。
本発明による第6実施例では、パティキュレートフィルタ24に酸素貯蔵能力を有する触媒77が担持される。また、許容下限量LPMが上述した量QPMOX及び量QPMELの合計に設定される(LPM=QPMMOX+QPMEL)。
図26に示されるように、時間tg1においてPM除去処理が開始されると、粒子状物質量QPMが次第に減少する。次いで、時間tg2において、粒子状物質量QPMが許容下限量LPMまで減少されると、PM除去処理が終了され、PM除去処理に引き続いてアッシュ微粒化処理が開始される。アッシュ微粒化処理の開始時にパティキュレートフィルタ24に量QPMEL+QPMELの粒子状物質が残留している。アッシュ微粒化処理が開始されると、酸素貯蔵能力を有する触媒77から酸素O2が放出され、パティキュレートフィルタ24に残留している粒子状物質がこの酸素O2により酸化されるので、粒子状物質量QPMが減少する。
次いで、時間tg3になると、酸素貯蔵量QOXがほぼゼロになり、粒子状物質量QPMが量QPMELまで減少される。すなわち、粒子状物質量QPMがQPMOXだけ減少される。この時点で、パティキュレートフィルタ24に量QPMELの粒子状物質が残留している。この場合、未処理アッシュ80とアッシュ微粒化剤78の酸点79との間には粒子状物質82はほとんど介在していない。したがって、未処理アッシュ80を確実に微粒化することができる。
アッシュ微粒化処理中においてもパティキュレートフィルタ24への流入排気ガス中には粒子状物質が含まれているので、粒子状物質量QPMは次第に増加する。次いで、時間tg4において、アッシュ微粒化処理が終了される。
なお、PM除去処理が終了した時点で、パティキュレートフィルタ24上に粒子状物質がわずかに残留している場合がある。このような残留分はPM除去処理の期間を延長し又はPM除去温度TPMを高めたとしても、燃焼せず、パティキュレートフィルタ24から除去することができない。したがって、粒子状物質の不燃分と考えることができる。一方、上述のようにパティキュレートフィルタ24に意図的に残留された粒子状物質はPM除去処理が行われればパティキュレートフィルタ24から除去される。したがって、パティキュレートフィルタ24に残留された粒子状物質は粒子状物質の不燃分とは性質を異にするものである。
本発明による第4実施例から第6実施例をまとめると、パティキュレートフィルタ24に捕集された粒子状物質を除去するためにパティキュレートフィルタ24の状態を酸化雰囲気のもとでパティキュレートフィルタ24の温度が上昇された状態にするPM除去処理が一時的に行われ、PM除去処理はパティキュレートフィルタ24上にあらかじめ定められた設定残留量の粒子状物質が残留するように終了され、PM除去処理に引き続いてアッシュ微粒化処理が行われる、ということになる。
その上で、本発明による第4実施例及び第6実施例では、設定残留量が、アッシュ微粒化処理開始時に触媒77に貯蔵されているほぼ全ての酸素を消費するのに必要な量QPMOX以上に設定される。また、本発明による第5実施例及び第6実施例では、設定残留量が、アッシュ除去効率を許容下限効率にするのに必要な量QPMEL以下に設定される。量QPMOX,QPMELはそれぞれ、例えば実験によりあらかじめ求められる。
次に、本発明による第7実施例を説明する。以下では、主として、第7実施例と第2実施例との相違点を説明する。
図27は、本発明による第2実施例のようにPM除去処理に引き続いてアッシュ微粒化処理を行った場合の、パティキュレートフィルタ24の圧力損失PLの変化を示している。上述したように、パティキュレートフィルタ24の圧力損失PLは例えばパティキュレートフィルタ24の上流及び下流の圧力差によって表される。なお、図27においてVDは車両走行距離を表している。
図27を参照すると、機関運転が開始され車両走行距離VDが長くなるにつれて、パティキュレートフィルタ24上の粒子状物質量が増大するので、Xで示されるように圧力損失PLが増大する。次いで、PM除去処理が行われると、Yで示されるように圧力損失PLが減少する。次いで、通常運転に戻されると圧力損失PLが再び増大する。次いで、PM除去処理が再び行われると、圧力損失PLが再び減少する。このように圧力損失PLの増大及び減少が繰り返される。
上述したように、PM除去処理が行われた後のパティキュレートフィルタ24には、粒子状物質の不燃分及びアッシュが残留している。このため、図27に示されるように、粒子状物質不燃分による圧力損失部分PLPMX及びアッシュによる圧力損失部分PLUAが存在している。すなわち、圧力損失PLはゼロまで戻らない。アッシュによる圧力損失部分PLUAは車両走行距離VDが長くなるにつれて増大する。一方、粒子状物質不燃分による圧力損失部分PLPMXは車両走行距離VDが短いときには車両走行距離VDが長くなるにつれて大きくなり、車両走行距離VDがある程度長くなるとほぼ一定値に収束する。
次いで、PM除去処理に引き続いてアッシュ微粒化処理が行われると、図27にZで示されるようにアッシュによる圧力損失部分PLUAがほぼゼロになる。したがって、圧力損失PLが更に減少する。
これまで述べてきた本発明による各実施例では、おおまかに言うと、未処理アッシュ量QUAが許容上限量UUAになる毎に、アッシュ微粒化処理が行われる。したがって、アッシュ微粒化処理が、許容上限量UUAに応じて定まる設定インターバルINTSを隔てて繰り返し行われるという見方もできる。これまで述べてきた本発明による各実施例では許容上限量UUAないし設定インターバルINTSは例えば一定値に設定されている。
上述したように、アッシュ微粒化処理が終了すると、すなわちパティキュレートフィルタ24の状態が、酸化雰囲気のもとでパティキュレートフィルタ24への流入排気ガス中にSOxが含まれている状態にされると、アッシュ微粒化剤78に保持されている微粒化されたアッシュが次第にアッシュ微粒化剤78から放出される。その結果、アッシュ微粒化剤78の酸点79が再生される。再生された酸点79、すなわち活性酸点79は次のアッシュ微粒化処理の際に未処理アッシュを微粒化するのに用いることができる。言い換えると、酸点79が十分に再生されていなければ、アッシュ微粒化処理を行なっても未処理アッシュを十分に微粒化することができない。
パティキュレートフィルタ24の未処理アッシュによる圧力損失を小さく維持することを考えると、許容上限量UUAを少なく設定し、すなわち設定インターバルINTSを短く設定するのが好ましい。
しかしながら、許容上限量UUAを少なく設定しすなわち設定インターバルINTSを短く設定すると、後続のアッシュ微粒化処理を開始すべき時点でアッシュ微粒化剤78に多量の微粒化されたアッシュが保持されており、アッシュ微粒化剤78の酸点79が十分に再生されていない場合がある。この場合、アッシュ微粒化処理を行なっても、十分な量の未処理アッシュを微粒化するのは困難である。また、設定インターバルINTSを短く設定すると、アッシュ微粒化処理が頻繁に行われるので、アッシュ微粒化処理に必要なエネルギが増大する。
したがって、許容上限量UUAないし設定インターバルINTSを、パティキュレートフィルタ24の圧力損失を小さく維持しつつ未処理アッシュを十分に微粒化するのに最適な値に設定する必要がある。
一方、微粒化されたアッシュの放出速度は流入排気ガス中のSOx量に応じて変動し、流入排気ガス中のSOx量は機関運転状態や燃料中のイオウ濃度などに応じて変動する。すなわち、流入排気ガス中のSOx量が多いときには、微粒化されたアッシュが短時間のうちに放出され、流入排気ガス中のSOx量が少ないときには、微粒化されたアッシュが放出されるのに長時間を要する。このため、許容上限量UUAないし設定インターバルINTSの最適値をあらかじめ実験などで求めて設定したとしても、機関運転時間が長くなると、設定された許容上限量UUAないし設定インターバルINTSが最適でなくなっているおそれがある。
そこで、本発明による第7実施例では、アッシュ微粒化処理により処理された未処理アッシュの量を求め、求められたアッシュの量に基づいて、許容上限量UUAないし設定インターバルINTSを更新するようにしている。
次に、本発明による第2実施例のようにPM除去処理に引き続いてアッシュ微粒化処理が行われる場合における許容上限量UUAないし設定インターバルINTSの更新作用を、図28を参照しながら説明する。本発明による第1実施例のようにアッシュ微粒化処理がPM除去処理から独立して行われる場合における許容上限量UUAないし設定インターバルINTSの更新作用も同様である。
図28を参照すると、先のアッシュ微粒化処理から次のアッシュ微粒化処理までのインターバルINTが互いに異なる複数のインターバルI1,I2(>I1),I3(>I2),I4(>I3),I5(>I4)に設定され、アッシュ微粒化処理が繰り返し行われる。図28に示される例では、インターバルI1,I2,I3,I4,I5はそれぞれ、PM除去処理のインターバル1つ分、2つ分、3つ分、4つ分、及び5つ分に相当する。
その上で、それぞれのアッシュ微粒化処理により処理された未処理アッシュの量が求められる。このアッシュ処理量は、アッシュ微粒化処理により減少されたパティキュレートフィルタ24の圧力損失によって表され(図27のZ)、この減少された圧力損失DPLはアッシュ微粒化処理開始時における圧力損失PLSとアッシュ微粒化処理終了時における圧力損失PLEの差(PLS−PLE)によって求められる。図28に示されるDPL1,DPL2,DPL3,DP4,DPL5はそれぞれ、インターバルINTがI1,I2,I3,I4,I5に設定された場合に求められた圧力損失差DPLを表している。
圧力損失差DPLをインターバルINTの関数として表すと図29のようになる。図29には更に、圧力損失差DPLの変化率Rも示される。変化率RはインターバルINTの変化量DINTに対する圧力損失差DPLの変化量DDPLの比で表される(R=DDPL/DINT)。すなわち、変化率R1はインターバルINTの変化量(I2−I1)に対する圧力損失差DPLの変化量(DPL2−DPL1)の比(=(DPL2−DPL1)/(I2−I1))である。同様に、R2=(DPL3−DPL2)/(I3−I2)、R3=(DPL4−DPL3)/(I4−I3)、R4=(DPL5−DPL4)/(I5−I4)である。
図29からわかるように、インターバルINTがI4よりも短いときにはインターバルINTが長くなるにつれて圧力損失差DPLが大きくなり、インターバルINTがI4よりも長くなると圧力損失差DPLは一定値に収束する。言い換えると、インターバルINTがI4よりも短いときには、圧力損失差DPLの変化率Rが比較的大きな正値であり、インターバルINTがI4よりも長くなると変化率Rはほぼゼロになる。したがって、インターバルINTをI4よりも短く設定すると、酸点79が十分に再生されていない状態でアッシュ微粒化処理が行われることになる。その結果、未処理アッシュを十分に微粒化することができない。一方、インターバルINTをI4よりも長く設定しても、圧力損失差DPLは増大せず、すなわちアッシュ微粒化処理により微粒化されるアッシュの量は増大しない。むしろ、パティキュレートフィルタ24上の未処理アッシュ量が増大してしまう。
そこで、本発明による第7実施例では、新たな設定インターバルINTSがインターバルI4に設定される。すなわち、インターバルINTをI1から増大させた場合には、変化率Rが上限値URよりも小さくなったときのインターバルI5の、一つ前のインターバルI4に設定される。このようにして、設定インターバルINTSが更新される。その結果、許容上限量UUAないし設定インターバルINTSを最適に維持することができる。言い換えると、アッシュの十分でかつ効率的な除去を継続して行うことができる。
図30及び図31は設定インターバルINTSの更新制御を実行するルーチンを示している。図30及び図31を参照すると、ステップ141では設定インターバルINTSの更新条件が成立しているか否かが判別される。例えば、設定インターバルINTSが更新されてから車両走行距離VDがあらかじめ定められた一定値だけ増大したときに更新条件が成立したと判別され、それ以外は更新条件が成立しないと判別される。更新条件が成立しないと判別されたときには処理サイクルを終了する。更新条件が成立したと判別されるとステップ142に進み、前回の処理サイクルにおける圧力損失差DPL0及びインターバルINT0がそれぞれゼロに設定される。続くステップ143では、インターバルINTの目標値INTTが初期値INTT0に設定される。図28及び図29に示される例ではINTT0はI1に等しい。
続くステップ144では、PM除去処理を行うべきか否かが判別される。PM除去処理を行うべきと判別されないときにはステップ144に戻る。PM除去処理を行うべきと判別されたときには次いでステップ145に進み、PM除去処理が行われる。続くステップ146では、先のアッシュ微粒化処理からのインターバルINTが目標インターバルINTT以上であるか否かが判別される。インターバルINTは図32に示されるルーチンで更新される。INT<INTTのときにはステップ144に戻る。INT≧INTTのときには次いでステップ147に進み、この時点、すなわちアッシュ微粒化処理の開始時におけるインターバルINTがINTAとして記憶される。続くステップ148ではインターバルINTがゼロにリセットされる。
続くステップ149では、この時点、すなわちアッシュ微粒化処理の開始時におけるパティキュレートフィルタ24の圧力損失DLがPLSとして記憶される。続くステップ150ではアッシュ微粒化処理が行われる。続くステップ151では、この時点、すなわちアッシュ微粒化処理の終了時における圧力損失DLがPLEとして記憶される。続くステップ152では、圧力損失差DPLが算出される(DPL=PLS−PLE)。続くステップ153では、圧力損失差DPLの変化量DDPLが算出される(DDPL=DPL−DPL0)。続くステップ154では、今回の処理サイクルにおける圧力損失差DPLが前回の処理サイクルにおける圧力損失差DPL0として記憶される。続くステップ155では、インターバルINTの変化量DINTが算出される(DINT=INTA−INT0)。続くステップ156では、今回の処理サイクルにおけるインターバルINTAが前回の処理サイクルにおけるインターバルINT0として記憶される。続くステップ157では、圧力損失差DPLの変化率Rが算出される(R=DDPL/DINT)。
続くステップ158では、変化率Rが上限値URよりも小さいか否かが判別される。R≧URのときには、次いでステップ159に進み、目標インターバルINTTが変更される。図28及び図29に示される例では、目標インターバルINTTが例えばI1からI2に延長される。次いでステップ144に戻る。R<URのときにはステップ160に進み、前回の処理サイクルにおけるインターバルINT0が設定インターバルINTSに設定される。このようにして、設定インターバルINTSが更新される。
図32はインターバルINTの更新ルーチンを示している。図32を参照すると、ステップ171では前回の処理サイクルから今回の処理サイクルまでの車両走行距離dVDが算出される。続くステップ172ではインターバルINTに車両走行距離dVDが加算される。すなわち、図32に示される例では車両走行距離によってインターバルINTが表される。
次に、本発明による第8実施例を説明する。以下では、主として、第8実施例と第1実施例との相違点を説明する。
図33を参照すると、触媒コンバータ22内にはパティキュレートフィルタ24の上流においてSOx貯蔵剤29が収容される。なお、SOx貯蔵剤29の温度はパティキュレートフィルタ24の温度とほぼ等しく、SOx貯蔵剤29への流入排気ガスの空燃比はパティキュレートフィルタ24への流入排気ガスの空燃比AFEに等しいと考えることができる。
SOx貯蔵剤29はハニカム構造をなしており、薄肉の隔壁により互いに分離された複数個の排気流通路を具備する。これら排気流通路は上流端及び下流端が互いに開放されている。各隔壁の両側表面上に担持された、例えばアルミナAl2O3、セリアCeO2、酸化プラセオジムPr6O11、酸化ネオジムNd2O3、酸化ランタンLa2O3のような卑金属酸化物から形成された担体と、この担体に担持された白金Pt、パラジウムPd、銀Agのような貴金属とを備える。
SOx貯蔵剤29は、SOx貯蔵剤29の温度が低いとき又はSOx貯蔵剤29への流入排気ガス中の酸素濃度が高いときに流入する排気ガス中のSOx例えばSO2を貯蔵し、SOx貯蔵剤29の温度が高くなると又はSOx貯蔵剤29への流入排気ガス中の酸素濃度が低くなると貯蔵しているSOxを放出する性質を有する。本発明による第8実施例では、SOx貯蔵剤29ないしパティキュレートフィルタ24の温度が200℃から250℃程度ではSOxがSOx貯蔵剤29に貯蔵される。一方、SOx貯蔵剤29ないしパティキュレートフィルタ24の温度が例えば300℃以上になるとSOx貯蔵剤29から貯蔵されているSOxが放出される。SOx貯蔵剤29でのSOx貯蔵作用はSOxが担体又は貴金属粒子に吸着されることによるものと考えられる。
図34は、SOx貯蔵剤29から単位時間当たり放出されるSOx量、すなわちSOx放出速度qSRを示している。図34からわかるように、SOx放出速度qSRはパティキュレートフィルタ24の温度TFが高くなるにつれて多くなり、流入排気ガスの空燃比AFEが小さくなるにつれて、すなわちリーン度合いが小さくなるにつれて多くなる。
上述した第1実施例では、アッシュ微粒化処理が終了し通常運転に戻されると、酸化雰囲気のもとでパティキュレートフィルタ24にSOxが供給される。その結果、保持されている微粒化されたアッシュがアッシュ微粒化剤78から放出され、パティキュレートフィルタ24から除去される。この場合、微粒化されたアッシュの放出速度はパティキュレートフィルタ24への流入排気ガス中のSOx濃度に応じて定まる。すなわち、パティキュレートフィルタ24への流入排気ガス中のSOx濃度が高いときには微粒化されたアッシュの放出速度は高くなり、SOx濃度が低いときには微粒化されたアッシュの放出速度は低くなる。
ところが、通常運転では、機関から排出される排気ガス中のSOx濃度は必ずしも高くない。その結果、アッシュ微粒化処理が終了した後の通常運転において、微粒化されたアッシュがアッシュ微粒化剤78から速やかに放出されないおそれがある。言い換えると、アッシュ微粒化剤78の酸点が十分に再生されるまでに長時間を要するおそれがある。アッシュ微粒化剤78の酸点が十分に再生されていなければ、アッシュ微粒化処理を行ったとしても、未処理アッシュを十分に微粒化することはできない。その結果、パティキュレートフィルタ24上の未処理アッシュ量が増大してパティキュレートフィルタ24の圧力損失が増大するおそれがある。
そこで、本発明による第8実施例では、パティキュレートフィルタ24上流にSOx貯蔵剤29を配置し、パティキュレートフィルタ24への流入排気ガス中のSOx濃度を一時的に高めるようにしている。このことを図35を参照して説明する。
図35において、時間th1はアッシュ微粒化処理が終了した時点を示している。PM除去処理及びアッシュ微粒化処理が行われていない通常運転時には、SOx貯蔵剤29の温度は比較的低く、SOx貯蔵剤29への流入排気ガス中の酸素濃度は比較的高い。その結果、このときSOx貯蔵剤29への流入排気ガス中のSOxはSOx貯蔵剤29に貯蔵される。
次いで、時間th2において、PM除去処理が行われると、酸化雰囲気のもとでパティキュレートフィルタ24ないしSOx貯蔵剤29の温度TFがPM除去温度TPMまで上昇される。PM除去温度TPMは上述したように、触媒77がセリアCeO2及び銀Agから形成される場合には300から500℃程度であり、触媒77がアルミナAl2O3及び白金Ptから形成される場合には600℃程度である。その結果、SOx貯蔵剤29のSOx放出速度qSRが大幅に上昇する。すなわち、パティキュレートフィルタ24への流入排気ガス中のSOx濃度が高められ、アッシュ微粒化剤78に供給されるSOx量が増大される。その結果、アッシュ微粒化剤78上の微粒化されたアッシュの量QAAが減少する。すなわち、アッシュ微粒化剤78から微粒化されたアッシュが放出される。次いで、時間th3においてPM除去処理が終了される。その結果、SOx貯蔵剤29からSOxがほとんど放出されなくなる。
次いで、時間th4において、PM除去処理が再び行われると、SOx貯蔵剤29からSOxが再び放出され、アッシュ微粒化剤78上の微粒化されたアッシュの量QAAが更に減少する。図35に示される例では、微粒化されたアッシュの量QAAがほぼゼロまで減少される。
その結果、微粒化されたアッシュをパティキュレートフィルタ24から速やかに放出させることができる。言い換えると、微粒化されたアッシュのパティキュレートフィルタ24からの除去が促進される。したがって、先のアッシュ微粒化処理が行われてから次のアッシュ微粒化処理が行われるまでのインターバルを短く設定することができる。このことは、パティキュレートフィルタ24上の未処理アッシュの量を少なく維持できることを意味している。
次に、本発明による第9実施例を説明する。以下では、主として、第9実施例と第8実施例との相違点を説明する。
図35を参照して説明したように、PM除去処理が行われるとSOx貯蔵剤29からSOxが放出される。ところが、この場合、SOx貯蔵剤29ないしパティキュレートフィルタ24の温度TFがPM除去温度TPMまで大幅に上昇される。その結果、図34からわかるように、短時間のうちにSOx貯蔵剤29から多量のSOxが放出される場合がある。この場合、パティキュレートフィルタ24から放出されるべき微粒化されたアッシュの量に対してSOxが過剰になり、過剰のSOxがパティキュレートフィルタ24から流出するおそれがある。
そこで、本発明による第9実施例では、SOx貯蔵剤29からSOxを放出させてアッシュ微粒化剤78へのSOx供給量を増大するSOx増量処理をPM除去処理に先立って一時的に行うようにしている。特に、本発明による第9実施例では、SOx貯蔵剤29からSOxを放出させるためにSOx貯蔵剤29の温度TFを上昇するSOx増量温度処理がPM除去処理に先立って一時的に行われる。言い換えると、PM除去処理を行うべきときにはまずSOx増量温度処理が行われ、SOx増量温度処理に引き続いてPM除去処理が行われる。このことを図36を参照して説明する。
図36において、時間ti1はアッシュ微粒化処理が終了した時点を示している。次いで、時間ti2において、SOx増量温度処理が開始される。具体的には、酸化雰囲気のもとでSOx貯蔵剤29ないしパティキュレートフィルタ24の温度TFがSOx放出温度TSRまで上昇される。その結果、SOx貯蔵剤29からSOxが放出され、パティキュレートフィルタ24へのSOx供給量が増大される。したがって、パティキュレートフィルタ24からの微粒化されたアッシュの放出が促進される。SOx放出温度TSRはPM除去温度TPMよりも低い温度、例えば300℃から450℃に設定される。別の実施例では、SOx放出温度TSRはPM除去温度TPMとほぼ同じかそれよりも高く設定される。
次いで、時間ti3になると、すなわちSOx増量温度処理が時間tSRだけ行われると、SOx増量温度処理が終了され、引き続いてPM除去処理が開始される。すなわち、酸化雰囲気のもとでSOx貯蔵剤29ないしパティキュレートフィルタ24の温度TFがPM除去温度TPMまで上昇される。その結果、SOx貯蔵剤29からのSOxの放出が継続される。
次いで、時間ti4において、PM除去処理が終了される。その結果、SOx貯蔵剤29ないしパティキュレートフィルタ24の温度TFの上昇制御が終了され、SOx貯蔵剤29からのSOxの放出が終了される。図36に示される例では、このときパティキュレートフィルタ24上に保持されている微粒化されたアッシュの量QAAはほぼゼロになっている。
次いで、時間ti5においてSOx増量温度処理が再び開始され、時間ti6においてPM除去処理が再び開始される。このように、本発明による第9実施例は、パティキュレートフィルタ24上の微粒化されたアッシュの量QAAがほぼゼロであっても、SOx増量温度処理が行われる。別の実施例では、微粒化されたアッシュの量QAAがほぼゼロになると、SOx増量温度処理が行われない。
図37は、本発明による第9実施例におけるSOx貯蔵剤29のSOx放出速度qSRの変化を詳しく示している。図37を参照すると、時間tj1において、SOx増量温度処理が開始されると、SOx貯蔵剤29ないしパティキュレートフィルタ24の温度TFがSOx放出温度TSRまで上昇される。その結果、SOx貯蔵剤29のSOx放出速度qSRは急激に上昇する。次いで、SOx貯蔵剤29ないしパティキュレートフィルタ24の温度TFがSOx放出温度TSRに維持されると、SOx放出速度qSRは時間の経過と共に減少する。
次いで、時間tj2において、SOx増量温度処理がSOx放出時間tSRだけ行われると、SOx増量温度処理が終了され、PM除去処理が開始される。すなわち、SOx貯蔵剤29ないしパティキュレートフィルタ24の温度TFがPM除去温度TPMまで上昇される。その結果、SOx放出速度qSRが再び上昇する。次いで、SOx貯蔵剤29ないしパティキュレートフィルタ24の温度TFがPM除去温度TPMに維持されると、SOx放出速度qSRは時間の経過と共に減少する。次いで、時間td3においてPM除去処理が終了される。
SOx放出速度qSRの挙動はSOx放出温度TSR及びSOx放出時間tSRによって定まる。本発明による第9実施例では、SOx増量温度処理が開始されてからPM除去処理が終了されるまでにおけるSOx貯蔵剤29のSOx放出速度qSRが、許容下限値LSR及び許容上限値USRにより画定される許容範囲内にほぼ維持されるように、SOx放出温度TSR及びSOx放出時間tSRの一方又は両方が設定される。
SOx放出速度qSRが許容上限値USRよりも高いと、パティキュレートフィルタ24上の微粒化されたアッシュに対してSOxが過剰となる。SOx放出速度qSRが許容下限値LSRよりも低いと、微粒化されたアッシュをパティキュレートフィルタ24から速やかに放出させることができない。その結果、図37に示されるように、パティキュレートフィルタ24から放出される微粒化されたアッシュの量QARを高いレベルでほぼ一定に維持しつつ、パティキュレートフィルタ24から流出するSOxの量QSRをほぼゼロに維持することができる。また、SOx増量温度処理に引き続いてPM除去処理が行われるので、PM除去処理に必要なエネルギを低減することもできる。
図38は本発明による第9実施例の排気浄化制御を実行するルーチンを示している。図38を参照すると、ステップ101ではPM除去処理を行うべきか否かが判別される。PM除去処理を行うべきと判別されたときには次いでステップ101aに進み、SOx増量処理、例えばSOx増量温度処理が行われる。次いでステップ102に進み、PM除去処理が行われる。次いでステップ103に進む。ステップ101においてPM除去処理を行うべきと判別されないときにはステップ103にジャンプする。ステップ103ではアッシュ微粒化処理を行うべきか否かが判別される。アッシュ微粒化処理を行うべきと判別されたときには次いでステップ104に進み、アッシュ微粒化処理が行われる。次いで処理サイクルを終了する。ステップ103においてアッシュ微粒化処理を行うべきと判別されないときにも処理サイクルを終了する。なお、電子制御ユニット30はSOx増量処理ないしSOx増量温度処理を行うようにプログラムされている。
次に、本発明による第10実施例を説明する。以下では、主として、第10実施例と第9実施例との相違点を説明する。
微粒化されたアッシュがアッシュ微粒化剤78から放出されたとしても、パティキュレートフィルタ24上に留まっている場合がある。このようにパティキュレートフィルタ24上に残留している微粒化されたアッシュが再凝集すると、パティキュレートフィルタ24から除去できなくなるおそれがある。
一方、パティキュレートフィルタ24への流入排気ガス量が多いときには、微粒化されたアッシュが排気ガス流れによってパティキュレートフィルタ24の細孔内を容易に進行し、すなわちパティキュレートフィルタ24から容易に除去される。
そこで、本発明による第10実施例では、パティキュレートフィルタ24への流入排気ガス量QEXがあらかじめ定められた設定量QEXSよりも多いか否かを判別し、流入排気ガス量QEXが設定量QEXSよりも多いと判別されたときに、SOx増量処理を行うようにしている。特に、本発明による第10実施例では、流入排気ガス量QEXが設定量QEXSよりも多いと判別されたときに、SOx貯蔵剤29からSOxを放出させるためにパティキュレートフィルタ24を酸化雰囲気に維持しつつSOx貯蔵剤29への流入排気ガス中の酸素濃度を低下させるSOx増量酸素濃度処理が行われる。その結果、SOx貯蔵剤29からアッシュ微粒化剤78へのSOx供給量が増大されるので、微粒化されたアッシュがアッシュ微粒化剤78から容易に放出される。このときパティキュレートフィルタ24への流入排気ガス量QEXが多いので、アッシュ微粒化剤78から放出された微粒化されたアッシュが速やかにパティキュレートフィルタ24から除去される。
すなわち、図39における時間tk1において、パティキュレートフィルタ24への流入排気ガス量QEXが設定量QEXSを越えると、SOx貯蔵剤29ないしパティキュレートフィルタ24への流入排気ガスの空燃比AFEがわずかばかりのリーン空燃比AFLSまで減少され、保持される。その結果、SOx貯蔵剤29のSOx放出速度qSRが増大し、すなわちSOx貯蔵剤29からSOxが放出される。次いで、時間tk2において、流入排気ガス量QEXが設定量QEXSよりも少なくなると、流入排気ガスの空燃比AFEが元に戻される。
なお、アッシュ微粒化処理では、流入排気ガスの空燃比AFEを理論空燃比AFS又はリッチに維持する必要がある。したがって、アッシュ微粒化処理中は上述のSOx増量処理が禁止される。
流入排気ガス量QEXは機関加速度合いによって表される。本発明による第10実施例では、機関加速運転が行われたときに流入排気ガス量QEXが設定量QEXSよりも多いと判別される。この場合、アクセルペダル39の踏み込み量が対応するしきい値を越えたときに機関加速運転が行われたと判別される。別の実施例では、燃料噴射量が対応するしきい値を越えたときに機関加速運転が行われたと判別される。更に別の実施例では、吸入空気量が対応するしきい値を越えたときに機関加速運転が行われたと判別される。
図40は本発明による第10実施例の排気浄化制御を実行するルーチンを示している。図40を参照すると、ステップ181ではアッシュ微粒化処理が行われていないか否かが判別される。アッシュ微粒化処理が行われていないときには次いでステップ182に進み、流入排気ガス量QEXが設定量QEXSよりも多いか否かが判別される。QEX>QEXSのときには次いでステップ183に進み、SOx増量処理、例えばSOx増量酸素濃度処理が行われる。すなわち、流入排気ガスの空燃比AFEがわずかばかりのリーン空燃比AFLSに切り換えられる。QEX≦QEXSのときには処理サイクルを終了する。ステップ121においてアッシュ微粒化処理が行われているときには処理サイクルを終了する。すなわち、アッシュ微粒化処理中はSOx増量処理が行われない。なお、電子制御ユニット30はSOx増量処理ないしSOx増量酸素濃度処理を行うようにプログラムされている。
なお、別の実施例では、本発明による第9実施例のSOx増量温度処理に換えて、SOx増量酸素濃度処理が行われる。
更に別の実施例では、本発明による第10実施例のSOx増量酸素濃度処理に換えて、SOx増量温度処理が行われる。しかしながら、SOxが放出される温度までSOx貯蔵剤29の温度を上昇させるには一定の時間を要する。これに対し、流入排気ガスの空燃比AFEは速やかに切り換えることができる。したがって、SOx増量酸素濃度処理を行うと、速やかにSOx貯蔵剤29からSOxを放出させることができる。その結果、微粒化されたアッシュをパティキュレートフィルタ24から速やかにかつ確実に除去することができる。
次に、本発明による第11実施例を説明する。以下では、主として、第11実施例と第10実施例との相違点を説明する。
本発明による第11実施例では、PM除去処理が行われているときに流入排気ガス量QEXが設定量QEXSよりも多いか否かが判別され、PM除去処理が行われているときに流入排気ガス量QEXが設定量QEXSよりも多いと判別されたときにSOx増量処理、例えばSOx増量酸素濃度処理が行われる。
すなわち、図41に示されるように、時間tm1において、PM除去処理が開始されると、パティキュレートフィルタ24ないしSOx貯蔵剤29の温度TFが上昇される。その結果、SOx貯蔵剤29のSOx放出速度qSRが増大する。すなわち、SOx貯蔵剤29からSOxが放出される。このSOxは次いでアッシュ微粒化剤78に供給され、したがってアッシュ微粒化剤78から微粒化されたアッシュが放出される。
次いで、時間tm2において、流入排気ガス量QEXが設定量QEXSを越えると、SOx増量酸素濃度処理が行われる。すなわち、SOx貯蔵剤29ないしパティキュレートフィルタ24への流入排気ガスの空燃比AFEがわずかばかりのリーン空燃比AFLSまで減少される。その結果、SOx貯蔵剤29のSOx放出速度qSRが再び増大する。すなわち、PM除去処理が開始されてからの経過時間が長くなるにつれて減少したSOx放出速度qSRが再び増大する。その結果、アッシュ微粒化剤78から微粒化されたアッシュが更に放出され、パティキュレートフィルタ24から更に除去される。
次いで、時間tm3において、流入排気ガス量QEXが設定量QEXSよりも少なくなると、流入排気ガスの空燃比AFEが元に戻される。次いで、時間tm4において、PM除去処理が終了される。
図42は本発明による第11実施例の排気浄化制御を実行するルーチンを示している。図42を参照すると、ステップ191ではPM除去処理が行われているか否かが判別される。PM除去処理が行われているときには次いでステップ192に進み、流入排気ガス量QEXが設定量QEXSよりも多いか否かが判別される。QEX>QEXSのときには次いでステップ193に進み、SOx増量処理、例えばSOx増量酸素濃度処理が行われる。QEX≦QEXSのときには処理サイクルを終了する。ステップ191においてPM除去処理が行われていないときには処理サイクルを終了する。
別の実施例では、PM除去処理が行われているときに流入排気ガス量QEXが設定量QEXSよりも多いと判別されたときにSOx増量温度処理が行われる。この場合、SOx貯蔵剤29ないしパティキュレートフィルタ24の温度TFはPM除去温度TPMよりも上昇される。
次に、本発明による第12実施例を説明する。以下では、主として、第12実施例と第1実施例との相違点を説明する。
図43を参照すると、触媒コンバータ22内にはパティキュレートフィルタ24の上流においてアンモニア生成触媒50が収容される。なお、アンモニア生成触媒50の温度はパティキュレートフィルタ24の温度とほぼ等しく、アンモニア生成触媒50への流入排気ガスの空燃比はパティキュレートフィルタ24への流入排気ガスの空燃比AFEに等しいと考えることができる。更に、パティキュレートフィルタ24下流の排気管23には、パティキュレートフィルタ24からの流出排気ガス中のNOx量を検出するためのNOxセンサ51が取り付けられる。
アンモニア生成触媒50はハニカム構造をなしており、薄肉の隔壁により互いに分離された複数個の排気流通路を具備する。これら排気流通路は上流端及び下流端が互いに開放されている。また、アンモニア生成触媒50は各隔壁の両側表面上に担持された、例えばアルミナAl2O3のような卑金属酸化物から形成された担体と、この担体に担持された白金Pt、パラジウムPdのような貴金属とを備える。
アンモニア生成触媒50は、流入排気ガスの空燃比AFEがリッチのときに流入する排気ガス中のNOxからアンモニアNH3を生成する。すなわち、流入排気ガス中の空燃比AFEがリッチのときにはこのとき流入排気ガス中に含まれる一酸化炭素COから水素H2が生成される(CO+H2O→CO2+H2)。次いで、水素H2が流入排気ガス中のNOxと反応してアンモニアNH3が生成される(2NO+5H2→2NH3+2H2O)。一方、流入排気ガスの空燃比AFEがリーン又は理論空燃比であると、アンモニア生成触媒50はNOxからアンモニアNH3を生成しない。
上述したように、アッシュ微粒化処理が行われると、アッシュ微粒化剤78の酸点に微粒化されたアッシュが保持される。次いで、アッシュ微粒化処理が終了され通常運転に戻されると、微粒化されたアッシュがアッシュ微粒化剤78の酸点から徐々に放出される。したがって、酸点78が徐々に再生される。この点、微粒化されたアッシュを保持していない酸点である活性酸点の数、すなわちアッシュ微粒化剤78の酸量QACDに着目すると、アッシュ微粒化処理が行われることにより酸量QACDが減少する。次いで、通常運転に戻されると、酸量QACDが徐々に増大する。
一方、アッシュの微粒化作用は、未処理アッシュがアッシュ微粒化剤78の活性酸点に到達することによって行われる。したがって、アッシュ微粒化処理が行われた後、アッシュ微粒化剤78の活性酸点の数、すなわち酸量QACDが少ないときに次のアッシュ微粒化処理を行なっても、未処理アッシュを十分に微粒化できないおそれがある。
そこで、本発明による第12実施例では、アッシュ微粒化処理が行われた後にアッシュ微粒化剤78の酸量QACDを求め、酸量QACDがあらかじめ定められた設定量QACDSよりも多いときに次のアッシュ微粒化処理を行うようにしている。
すなわち、図44に示されるように、時間tn1において、アッシュ微粒化処理が開始されると、アッシュ微粒化剤78の酸量QACDが減少する。次いで、時間tn2においてアッシュ微粒化処理が終了され通常運転に戻されると、酸量QACDが徐々に増大する。次いで、時間tn3において、酸量QACDが設定量QACDSを越えると、アッシュ微粒化処理が再び実行される。
その結果、次のアッシュ微粒化処理を最適な時期に行うことができる。したがって、アッシュ微粒化処理により未処理アッシュを十分にかつ効率的に処理することができる。
アッシュ微粒化剤78の酸量QACDはアッシュ微粒化剤78のアッシュ微粒化能力を表している。したがって、アッシュ微粒化処理が行われた後にアッシュ微粒化剤78のアッシュ微粒化能力が求められ、求められたアッシュ微粒化能力に基づいて次のアッシュ微粒化処理を行うか否かが判別されるということになる。具体的には、アッシュ微粒化剤78のアッシュ微粒化能力があらかじめ定められた設定能力よりも高いときに次のアッシュ微粒化処理が行われる。
アッシュ微粒化剤78のアッシュ微粒化能力すなわち酸量QACDの求め方を図45を参照して説明する。図45を参照すると、時間tp1において、アンモニア生成触媒50ないしパティキュレートフィルタ24への流入排気ガスの空燃比AFEがリッチに切り換えられる。その結果、アンモニア生成触媒50において、流入排気ガス中のNOxからアンモニアNH3ガスが生成され、アッシュ微粒化剤78に供給される。このため、パティキュレートフィルタ24からの流出排気ガス中のNOx量QNは、アンモニアNH3の供給前NOx流出量すなわち初期量QN0よりも大幅に減少する。
このときアッシュ微粒化剤78は還元雰囲気にある。その結果、図46Aに示されるように、アッシュ微粒化剤78の活性酸点79にアンモニアNH3が例えば吸着により保持される。カルシウムイオンCa2+を保持している酸点79にはアンモニアNH3は保持されない。
次いで、時間tp2になると、すなわちアンモニアNH3の生成及び供給があらかじめ定められた設定時間tAMだけ行われると、アンモニアNH3の生成及び供給が終了される。すなわち、流入排気ガスの空燃比AFEがリーンに戻される。設定時間tAMはアッシュ微粒化剤78のほぼすべての酸点79にアンモニアNH3を保持させるのに必要な時間であり、例えば実験によりあらかじめ求められている。
流入排気ガスの空燃比AFEがリーンに戻されると、アッシュ微粒化剤78は酸化雰囲気にあり、流入排気ガス中にはNOxが含まれている。その結果、図46Bに示されるように、アッシュ微粒化剤78に保持されているアンモニアNH3がNOxと反応する(4NH3+4NO+O2→4N2+6H2O)。言い換えると、アッシュ微粒化剤78に保持されたアンモニアNH3が流入排気ガス中のNOxにより除去される。このため、図45に示されるように、流入排気ガスの空燃比AFEがリーンに戻された直後は、流出NOx量QNが少なくなる。しかしながら、時間の経過と共に、アッシュ微粒化剤78に保持されているアンモニア量が次第に減少し、したがって流出NOx量QNが次第に増大する。
次いで、時間tp3になると、流出NOx量QNが初期量QN0にほぼ等しくなる。このことは、アッシュ微粒化剤78に保持されたほぼすべてのアンモニアNH3がNOxにより除去されたことを意味している。
流出NOx量QNと初期量QN0との差dQN(=QN0−QN)はアンモニアNH3と反応したNOxの量を表しており、したがってアッシュ微粒化剤78の活性酸点に保持されたアンモニア量を表している。したがって、時間tp2から時間tp3までの差dQNの積算値はアッシュ微粒化剤78の活性酸点の数、すなわち酸量を正確に表している。なお、差dQNの積算値は図45においてハッチングが付された領域Wに相当する。
したがって、還元雰囲気のもとでアッシュ微粒化剤78にアンモニアが一時的に供給され、アッシュ微粒化剤78に保持されたアンモニア量が求められ、求められたアンモニア量に基づいてアッシュ微粒化能力が求められるということになる。更に、アッシュ微粒化剤にアンモニアが供給された後に、酸化雰囲気のもとでパティキュレートフィルタ24から流出するNOx量に基づいて、アッシュ微粒化剤78に保持されたアンモニア量が求められるということになる。
図47は本発明による第12実施例の排気浄化制御を実行するルーチンを示している。図47のルーチンはアッシュ微粒化処理が行われた後に実行される。図47を参照すると、ステップ201では、アッシュ微粒化剤78の酸量QACDがゼロにリセットされる。続くステップ202では、アンモニアNH3の供給前の流出排気ガス中のNOx量QN0が読み込まれる。続くステップ203では、アッシュ微粒化剤78にアンモニアNH3が一時的に供給される。続くステップ204では、アンモニアNH3の供給後の流出排気ガス中のNOx量QNが読み込まれる。
続くステップ205では、酸量QACDが更新される(QACD=QACD+(QN0−QN))。続くステップ206では、流出排気ガス中のNOx量QNがアンモニアNH3供給前のNOx量QN0にほぼ等しいか否かが判別される。QN≒QN0になるまではステップ204及び205が繰り返される。QN≒QN0になると次いでステップ207に進む。このとき酸量QACDはアッシュ微粒化剤78の酸量を正確に表している。ステップ207では、酸量QACDが設定量QACDSよりも多いか否かが判別される。QACD>QACDSのときには次いでステップ208に進み、アッシュ微粒化処理が行われる。これに対し、QACD≦QACDSのときには処理サイクルを終了する。すなわち、この場合にはアッシュ微粒化処理が行われない。
本発明による第12実施例では、アンモニア生成触媒50においてアンモニアNH3が生成され、アッシュ微粒化剤78に供給される。別の実施例では、尿素又は固体アンモニアからアンモニアガスが生成され、アッシュ微粒化剤78に供給される。
図48は、本発明による各実施例における、パティキュレートフィルタ単位体積当たりのアッシュ微粒化剤78の担持量qAAAの一例を示している。すなわち、図48に示される例では、パティキュレートフィルタ24の流入端24iから流出端24oまでの長手方向位置LPF全体にわたり、アッシュ微粒化剤78の担持量qAAAがほぼ一定に設定される。
ところが、パティキュレートフィルタ24上における未処理アッシュの分布はパティキュレートフィルタ24の長手方向にわたり一様ではない。すなわち、パティキュレートフィルタ単位体積あたりの未処理アッシュ量qAUを示す図49からわかるように、パティキュレートフィルタ24の上流側部分における未処理アッシュ量qUAに比べてパティキュレートフィルタ24の下流側部分における未処理アッシュ量qUAが多い。言い換えると、未処理アッシュ量qUAはパティキュレートフィルタ24の流入端24i周りでは少なく、排気ガス流れ下流に向かうにつれて多くなり、パティキュレートフィルタ24の流出端24o周りで最も多くなる。
このため、パティキュレートフィルタ24の下流端24o周りでは、未処理アッシュが十分にアッシュ微粒化処理されず、パティキュレートフィルタ24に残留するおそれがある。したがって、アッシュ微粒化剤78の担持量qAAAを未処理アッシュ量qUAに応じて設定する必要がある。
そこで、図50A,図50B,図50Cに示される例では、パティキュレートフィルタ24の上流側部分におけるアッシュ微粒化剤78の担持量qAAAに比べてパティキュレートフィルタ24の下流側部分におけるアッシュ微粒化剤78の担持量qAAAが多くなるように、アッシュ微粒化剤78の担持量qAAAを設定している。その結果、未処理アッシュをパティキュレートフィルタ24から確実にかつ効率的に除去することができる。
更に説明すると、図50Aに示される例では、パティキュレートフィルタ24の上流端24iからパティキュレートフィルタ24の下流端24oに向かうにつれてアッシュ微粒化剤78の担持量qAAAが連続的に増大される。
図50Bに示される例では、流入端24iから中間位置24xまでにおけるアッシュ微粒化剤78の担持量qAAAに比べて、中間位置24xから流出端24oまでにおけるアッシュ微粒化剤78の担持量qAAAが多く設定される。
図50Cに示される例では、流入端24iから中間位置24xまでにおけるアッシュ微粒化剤78の担持量qAAAに比べて、中間位置24xから流出端24oまでにおけるアッシュ微粒化剤78の担持量qAAAが多く設定される。更に、流入端24iから中間位置24xまでにおけるアッシュ微粒化剤78の担持量qAAAがほぼゼロに設定される。
図50A,図50B,図50Cに示される例に関し、パティキュレートフィルタ24の上流側部分においてアッシュ微粒化剤78の担持量qAAAが少なくされていると考えることもできる。この見方によれば、パティキュレートフィルタ24の上流側部分においてパティキュレートフィルタ24の圧力損失が小さくされる。
また、図48,図50A,図50B,図50Cに示される例に関し、パティキュレートフィルタ24の下流側部分におけるアッシュ微粒化剤78の担持量qAAAがパティキュレートフィルタ24の上流側部分におけるアッシュ微粒化剤78の担持量qAAAとほぼ同じかそれ以上になるように、アッシュ微粒化剤78の担持量qAAAが設定されると考えることもできる。
別の実施例では、これまで述べてきた本発明による実施例同士が適宜互いに組み合わされる。例えば、パティキュレートフィルタ24上流にSOx貯蔵剤が配置され、SOx増量処理に引き続いてPM除去処理が行われ、PM除去処理に引き続いてアッシュ微粒化処理が行われる。
本願は国際出願第PCT/JP2011/065632号、第PCT/JP2011/065633号、第PCT/JP2011/065635号、第PCT/JP2011/065636号、第PCT/JP2011/065637号、第PCT/JP2011/065638号、第PCT/JP2011/065639号、第PCT/JP2011/065642号、及び第PCT/JP2011/065648号の利益を主張し、その開示全体はここに援用される。