JP5655383B2 - 溶接構造物用鋼板 - Google Patents

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Description

本発明は、造船、橋梁、建設機械などの分野、特にライフサイクル長期化が求められる橋梁などの分野で用いられる、溶接部の継手疲労強度に優れた溶接構造用鋼板に関し、特に引張強さが50〜60kgf/mm2級の鋼板に関する。
近年、溶接構造物に対し、ライフサイクルを長くする要求が強くなってきている。さらに、維持管理費用の低減要求も強い。ライフサイクル長期化の一例として、橋梁などの分野では100年を超える期間、維持・使用するという傾向が顕著になってきている。
このため、設計面および施工面に加えて、材料面からも長寿命化が求められている。すなわち、疲労損傷防止に向け、溶接構造用鋼材の母材部での長寿命化技術の開発はもちろんのこと、溶接部の長寿命化技術の開発も必要となる。特に橋梁などの構造物については、作用応力が極めて低いため、長寿命域よりさらに寿命の長い領域、すなわち、超長寿命域において優れた疲労特性が要求される。
すなわち、破断繰り返し数が2×106回を超える疲労寿命域を対象とする超長寿命疲労に対しては、破断繰り返し数が2×106回までの疲労寿命領域を対象とする長寿命疲労域での疲労試験で得られた損傷挙動と異なると考えられる。つまり、橋梁などの構造物に対して、破断繰り返し数が2×106回程度までの疲労試験で得られた挙動をそのまま外挿して、超長寿命域の疲労設計を進めると、危険側の結果に陥ることとなる可能性がある。したがって、2×106回を超える超長寿命域の疲労設計においては、それに相当する超長寿命域のデータを採取するのが望ましい。
溶接部の疲労破断寿命に関しては、たとえば、次の文献に開示がなされている。
特許文献1には、鋼板溶接部の疲労強度の向上を図ることを目的とし、疲労き裂の発生する溶接熱影響部の金属組織を規定したものが開示されている。具体的には、溶接熱影響部における疲労き裂の発生・伝播を抑制するためには、溶接熱影響部組織のフェライト面積率を高くすることが効果的であるとして、その面積率の範囲を15〜80%に規定している。
次に、特許文献2には、高張力の溶接構造用鋼板が開示されている。ここでは、母材組織としてマルテンサイトを含んだベイナイト主体の組織が最適であり、そして溶接熱影響部組織として面積率60%を超えるベイナイトが最適であるとしている。このような組織を実現することで、溶接継手の疲労強度に優れた高張力溶接構造用鋼板を実現できるとしている。
さらに、特許文献3および特許文献4には、疲労特性向上に関連した鋼材が開示されており、本発明で主要な働きをなす元素Snについて、任意添加元素の位置付けではあるが言及されている。
特開平9-95754号公報 特開平10-1743号公報 特開2007-197762号公報 特開2004-190123号公報
しかしながら、これらの文献には、超長寿命域での溶接継手の疲労損傷挙動を想定したものは開示されていない。
すなわち、特許文献1および特許文献2のいずれにも、本発明が課題としている超長寿命域における疲労特性改善に関する技術についての記載および示唆はない。
また、特許文献3におけるSn添加の目的は、生成錆緻密化作用やpH低下作用を助長するためであり、そして、特許文献4におけるSn添加の目的は、耐食性、特に、液相部での局部腐食の進展をさらに抑制するためである。さらに、特許文献3および特許文献4で改善を目指している疲労特性は、母材の疲労き裂進展特性であり、いずれも、溶接部の疲労特性向上についての記載はない。したがって、本発明で解決を目指している溶接継手の疲労き裂発生特性(溶接部の継手疲労特性)とは全く次元を異にしている。
本発明の目的は、超長寿命域における溶接部の継手疲労特性に優れた溶接構造物用鋼板を提供することにある。
本発明者らは、まず、溶接長400mm程度の溶接継手を製作し、試験片を採取後、疲労試験中での疲労き裂の発生・伝播挙動を、マクロとミクロの両面から詳細に観察した。その結果、以下の(a)〜(f)の知見が得られた。
(a) 破断繰返し数2×106回までの疲労寿命領域では、疲労き裂は溶接余盛り止端から多数発生し、合体成長を繰返しながら最終破断の主き裂を形成する。なお、この時の鋼材における疲労き裂の発生位置は、溶接継手の溶接熱影響部である。
(b) 一方、破断繰り返し数が2×106回を超える疲労寿命域を対象とする超長寿命域においては、疲労き裂の発生箇所は試験片断面内で1または2箇所と非常に少数であり、かつ疲労き裂は発生当初は極めてゆっくりと成長し、その時期に費やされる寿命は全寿命の大部分を占め、2×106回以上の繰返し負荷の後、疲労破断に到る。
(c) 前述したとおり、従来の溶接継手の疲労設計では、破断繰り返し数が2×106回までの疲労試験結果を基に評価した疲労特性をベースに検討が行われてきた。しかし、時間をかけ仔細に観察したところ、破断繰返し数が2×106回を超えて超長寿命域で破断する溶接継手では、異なるメカニズムで疲労き裂が進行することが分かった。
(d) 破断繰り返し数が2×106回を超える疲労寿命域を対象とする超長寿命疲労においては、負荷される応力はかなり低いレベルとなるので、疲労き裂発生個所は溶接長30mm〜50mm当りで1または2箇所程度になる。なお、その疲労き裂の発生は溶接熱影響部の疲労特性によって決定される。また、その溶接熱影響部の疲労特性は、適切な化学組成を有する母材を採用することによって大きく改善される。
(e) 溶接熱影響部における疲労強度は、溶接熱影響部の硬度、粒径、金属組織の面積率、転位密度などによって決定される。それに対し、母材鋼板の化学組成を厳密に制御することにより、これら溶接熱影響部における疲労強度影響因子を活用することができる。すなわち、母材鋼板の化学組成を限定することで、溶接によって生じる熱影響部の組織制御を可能になる。
(f) このように、鋼材の化学組成を厳密に制御することにより、溶接施工時に生成される溶接熱影響部の疲労特性を飛躍的に改善できることを初めて見出した。具体的には、Sn、GeおよびPbを含有させることで継手疲労強度の向上を図る一方で、これらを含有させることによる靭性の劣化をCr、MoおよびWを含有させることで補償するものである。
本発明は、上記の知見に基づいて完成したものであって、その要旨は下記の(1)〜(5)の溶接構造物用鋼板にある。
(1) 質量%で、C:0.01〜0.071%、Si:0.03〜0.60%、Mn:0.8〜2.0%、Cr:0.1%を超え1.0%以下、P:0.0145%以下、S:0.005%以下、sol.Al:0.005%を超えて0.10%以下を含有し、Sn、GeおよびPbから選択される1種以上を合計で0.02〜0.40%並びにCr、MoおよびWから選択される1種以上を合計で0.1%を超え1.0%以下を含み、残部はFeおよび不純物からなり、フェライト分率が40%以下であることを特徴とする溶接部の継手疲労特性に優れた溶接構造物用鋼板。
(2) Feの一部に代えて、質量%で、Nb:0.080%以下、Ti:0.030%以下およびV:0.080%以下から選択される1種以上を含有することを特徴とする、上記(1)の溶接構造物用鋼板
(3) Feの一部に代えて、質量%で、Cu:0.7%未満およびNi:3.0%以下から選択される1種以上を含有することを特徴とする、上記(1)または(2)の溶接構造物用鋼板
(4) Feの一部に代えて、質量%で、B:0.0030%以下を含有することを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれかの溶接構造物用鋼板
(5) Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.007%以下、Mg:0.007%以下、Ce:0.007%以下、Y:0.5%以下およびNd:0.5%以下から選択される1種以上を含有することを特徴とする、上記(1)〜(4)のいずれかの溶接構造物用鋼板
本発明によれば、超長寿命域における溶接部の継手疲労特性に優れた溶接構造物用鋼板を提供することができる。
継手疲労試験片の形状と寸法を示す。
1.鋼板の化学組成
以下、本発明に係る鋼板の化学組成について説明する。なお、含有量に関する「%」は「質量%」を意味する。
C:0.01〜0.10%
Cは、鋼の強度を高めるのに有効な元素であり、鋼の強度を得るために、0.01%以上含有させる。しかし、その含有量が0.10%を超えると、強度が高くなりすぎて母材靱性が劣化するだけでなく、優れた溶接疲労特性が実現しなくなる。すなわち、C含有量が0.10%を超えると溶接熱影響部の硬度が、母材あるいは溶接金属に対し高くなる。この時、疲労破壊起点となる溶接余盛り止端において硬度分布が急変し、材質ノッチによるひずみ集中が発生する。材質ノッチによるひずみ集中は、止端形状によるひずみ集中と重畳し、破壊起点での局所ひずみを著しく高めることとなり、継手の疲労強度を損なう。このため、C含有量は0.01〜0.10%とする。望ましい下限は0.03%超であり、望ましい上限は0.07%である。
Si:0.03〜0.60%
Siは、鋼の脱酸に有効な元素であり、その効果を得るために0.03%以上含有させる。しかしながら、0.60%を超えると、M−A組織の形成が促進される。M−A組織は極めて硬度が高いので、溶接継手の靱性を著しく劣化させることになる。なお、M−A組織とは、ベイナイト組織中に形成される島状マルテンサイトの一種で、残留オーステナイトを含むM−A変態生成物である。したがって、靱性劣化を避けるためにSi含有量は0.60%以下とする。このため、Si含有量は0.03〜0.60%とする。望ましい下限は0.30%、そして望ましい上限は0.50%である。
Mn:0.5〜2.0%
Mnは、焼入性向上に有効な元素であり、強度上昇と母材の疲労き裂進展抵抗性を向上させるために、0.5%以上含有させる。一方、2.0%を超えると靱性が劣化するので、Mn含有量の上限は2.0%とする。このため、Mn含有量は0.5〜2.0%とする。望ましい下限は0.8%、そして望ましい上限は1.6%である。
P:0.01%以下
Pは鋼中へ混入してくる不純物である。破壊靱性面からは少ないほど望ましい。ただし、Pを除去するにはコストがかかる。このため、許容上限を0.01%とした。
S:0.005%以下
Sも鋼中に混入してくる不純物である。Sは偏析率が高く、かつ低融点物質を形成して凝固割れの原因となるため、極力少ない方がよい。ただし、Sを除去するにはコストがかかる。このため、許容上限を0.05%とした。
sol.Al:0.005%を超えて0.10%以下
AlはSiとともに脱酸に必要な元素であり、その脱酸効果を得るために0.005%を超えるsol.Alを含有させる。他方、sol.Al含有量が0.10%を超えるとM−A組織の形成が促進されて、継手靱性が劣化する。これを避けるためにsol.Al含有量は0.10%以下とする。このため、sol.Al含有量は0.01〜0.10%とする。望ましい下限は0.015%、そして望ましい上限は0.05%である。
Sn、GeおよびPbから選択される1種以上:合計で0.02〜0.40%
Sn、GeおよびPbは鋼材の靭性を劣化させる元素として位置づけられており、特殊な用途の鋼材を除き、従来は可能な限り含有させない方向で検討が進められてきた。それに対し、発明者らは数多の試作材に対して疲労試験を行い、その継手疲労強度を評価した結果、溶接熱影響部の組織微細化を促進するため、継手疲労強度の向上に極めて有益であることを見出した。すなわち、Sn、GeおよびPbから選択される1種以上を製鋼段階で適切量含有させることにより、溶接熱影響部の粒径を顕著に細粒とすることができ、もって継手の疲労強度の向上を図ることができる。この効果を得るには、 これらの元素の含有量を合計で0.02%以上とすることが必要である。一方、これらの元素を含有させると、母材の靭性が劣化する傾向となる。特にその含有量が0.40%を超えると、鋼材の靭性が著しく劣化し、Cr、MoおよびWから選択される1種以上を共存させるという靭性回復手段を採っても、溶接構造用鋼材として適用できないレベルまで靭性が下がる。よって、Sn、GeおよびPbから選択される1種以上の含有量は合計で0.02〜0.40%とする。望ましい下限は0.05%、そして望ましい上限は0.20%である。
Cr、MoおよびWから選択される1種以上:合計で0.05〜1.0%
Cr、MoおよびWは、Sn、GeおよびPbから選択される1種以上を含有させることに起因して発生する鋼材の靭性劣化に対して、その靭性の回復手段となるため、Cr、MoおよびWから選択される1種以上を含有させる。ただし、Cr、MoおよびWから選択される1種以上の含有量が合計で0.05%未満の場合には、Sn、GeおよびPbから選択される1種以上を含有させることに起因して発生する鋼材の靭性劣化の回復を十分に期待することはできない。一方、Cr、MoおよびWから選択される1種以上の含有量が合計で1.0%を超えると、溶接性が損なわれるので、溶接構造物用鋼材としての適用が大幅に制限される。よって、Cr、MoおよびWから選択される1種以上の含有量は合計で0.05〜1.0%とする。望ましい下限は0.10%、そして望ましい上限は0.70%である。なお、製鋼コストの面からは、Crを単独で0.1%を超えて含有させることが好ましい。
本発明に係る鋼板は、上記の元素を有し、残部がFeおよび不純物からなる鋼板である。ここで、不純物とは、鋼板を工業的に製造する際に鉱石やスクラップ等のような原料をはじめとして製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
本発明に係る鋼板は、上記の元素の他に、さらにNb、Ti、V、Cu、B、Ca、Mg、Ce、YおよびNdから選択される1種以上を含有させてもよい。
これらの成分は、次の4つのグループに分類することができる。
(1) 第1グループ:Nb:0.080%以下、Ti:0.030%以下およびV:0.080%以下から選択される1種以上。
(2) 第2グループ:Cu:0.7%未満およびNi:3.0%以下から選択される1種以上。
(3) 第3グループ:B:0.0030%以下。
(4) 第4グループ:Ca:0.007%以下、Mg:0.007%以下、Ce:0.007%以下、Y:0.5%以下およびNd:0.5%以下から選択される1種以上。
これらの元素を含有させてもよい理由とそのときの含有量は、次の通りである。
(1) 第1グループ
Nb:0.080%以下
Nbは、必要に応じて含有させることができる。含有させれば、焼入性を増すので強度向上と母材の疲労き裂進展抑制に効果がある。また、細粒化作用を通じて靭性を向上させる効果がある。ただし、その含有量が0.080%を超えると靭性が劣化するので、その上限は0.080%とする。好ましくは0.060%以下である。なお、Nbを含有させることによる効果を安定的に得るためには、0.005%以上含有させるのが望ましい。
Ti:0.030%以下
Tiは、必要に応じて含有させることができる。含有させれば、強度向上と母材の疲労き裂進展抑制に効果がある。ただし、その含有量が0.030%を超えると靭性が劣化するので、その上限は0.030%とする。好ましくは0.020%以下である。なお、Tiを含有させることによる効果を安定的に得るためには、0.005%以上含有させるのが望ましい。
V:0.080%以下
Vは、必要に応じて含有させることができる。含有させれば、強度向上と母材の疲労き裂進展抑制に効果がある。特に厚肉材においては、Vを含有させることによる特性改善が顕著になる。ただし、その含有量が0.080%を超えると靭性が劣化するので、その上限は0.080%とする。好ましくは0.070%以下である。なお、Vを含有させることによる効果を安定的に得るためには0.005%以上含有させるのが望ましい。
(2) 第2グループ
Ni:3.0%以下
Niは、必要に応じて含有させることができる。含有させれば、鋼の強度を高める作用がある。また、疲労き裂進展抑制にも効果がある。ただし、その含有量が3.0%を超えると、含有させるNiによるコスト上昇に見合うだけの高強度化と母材の疲労き裂進展抑制効果が見られないので、その上限は3.0%とする。好ましくは2.5%以下である。なお、Niを含有させることによる効果を安定的に得るには0.2%以上の含有が望ましい。
Cu:0.7%未満
Cuは、必要に応じて含有させることができる。含有させれば、鋼の強度を高める作用がある。ただし、その含有量が0.7%以上になると鋼の靱性が劣化するので、その上限は0.7%未満とする。好ましくは0.5%未満である。なお、Cuを含有させることによる効果を安定的に得るには0.1%以上の含有が望ましい。
(3) 第3グループ
B:0.0030%以下
Bは、必要に応じて含有させることができる。含有させれば、焼入性を著しく高くすることで、強度上昇と母材の疲労き裂進展抵抗性を向上させる作用がある。ただし、その含有量が0.0030%を超えると靱性が劣化するので、0.0030%を上限とする。好ましくは0.0025%以下である。なお、Bを含有させることによる効果を安定的に得るには、0.0003%以上の含有が望ましい。
(4) 第4グループ
Ca:0.007%以下
Caは、必要に応じて含有させることができる。含有させれば、組織微細化を通して靱性改善に寄与する。ただし、Ca介在物の量が過剰になると、かえって靱性が劣化するので、0.007%を上限とする。好ましくは0.003%以下である。なお、Caを含有させることによる効果を安定的に得るには、0.0015%以上の含有が望ましい。
Mg:0.007%以下
Mgは、必要に応じて含有させることができる。含有させれば、組織微細化を通して靭性改善に寄与する。ただし、その含有量が0.007%を超えるとMg介在物の量が過剰となって、かえって靭性が劣化するので、0.007%を上限とする。好ましくは0.003%以下である。なお、Mgを含有させることによる効果を安定的に得るには0.0005%以上の含有が望ましい。
Ce:0.007%以下
Ceは、必要に応じて含有させることができる。含有させれば、組織微細化を通して靭性改善に寄与する。ただし、その含有量が0.007%を超えるとCe介在物の量が過剰となり、かえって靭性が劣化するので、0.007%を上限とする。好ましくは0.003%以下である。なお、Ceを含有させることによる効果を安定的に得るには0.0005%以上の含有が望ましい。
Y:0.5%以下
Yは、必要に応じて含有させることができる。含有させれば、組織微細化を通して靭性改善に寄与する。ただし、その含有量が0.5%を超えるとY介在物の量が過剰となり、かえって靭性が劣化するので、0.5%を上限とする。好ましくは0.05%以下である。なお、Yを含有させることによる効果を安定的に得るには0.01%以上の含有が望ましい。
Nd:0.5%以下
Ndは、必要に応じて含有させることができる。含有させれば、組織の微細化を通して靭性改善に寄与する。ただし、その含有量が0.5%を超えるとNd介在物の量が過剰となり、かえって靭性が劣化するので、0.5%を上限とする。好ましくは0.05%以下である。なお、Ndを含有させることによる効果を得るには0.01%以上の含有が望ましい。
2.鋼板の製造方法
本発明に係る溶接構造物用鋼板は、公知の熱間圧延設備、または公知の熱間圧延設備と公知の熱処理設備を使用して、例えば、以下の手順により製造できる。
前述の化学組成を有する鋳造スラブを1000℃〜1250℃に加熱した後に、熱間圧延を施す。次いで、これを冷却するに際し、その冷却工程において650℃〜400℃の間の平均冷却速度を5℃/秒以上、好ましくは5〜25℃/秒とする加速冷却を施し、この加速冷却を400℃以下の温度で停止する。その後、復熱温度幅が70℃以下となるようにして冷却を終了する。ここで復熱温度幅とは、冷却を停止した時の到達温度と、冷却停止後に鋼板内部の熱によって表面の温度が上昇し、安定した時の温度との差を意味する。
鋳造スラブの加熱温度が1000℃に満たない場合にはフェライト分率が高くなり、母材の疲労き裂進展速度が大きくなる。1250℃を超えると組織が粗大になり、靱性が劣化する。冷却過程の650℃〜400℃の間での平均冷却速度が5℃/秒に満たない場合には、フェライト分率が高くなり母材の疲労き裂進展速度が大きくなる。このとき、好ましい平均冷却速度は25℃/秒以下である。加速冷却停止後、冷却終了までの間の復熱温度幅が70℃を超える場合には転位密度が減少して母材の疲労き裂進展速度が大きくなる。加速冷却停止温度が400℃を超える温度の場合には、フェライト分率が高くなり、母材の疲労き裂進展速度が大きくなる。好ましい停止温度は350℃以上である。 以上のプロセスを通して形成されるフェライトのフェライト分率は40%以下とすることが好ましい。
復熱温度幅を小さくするには、冷却中の鋼板表層と中心部の温度差を小さくするとともに、冷却終了時において、少なくとも表層部の相変態を終了させておくのがよい。鋼板表層と中心部の温度差を小さくするためには、冷却帯の前段より後段の冷却速度を大きくするのがよい。また、加速冷却停止時に表層部の相変態を完了させるには、加速冷却の停止温度を400℃以下とするのが好ましい。
表1に示す化学組成の鋼を転炉で溶製してスラブを作製し、上述の好適な製造方法により12〜80mmの鋼板を製造した。
Figure 0005655383
製造した鋼板については、切り出した断面が被検面になるように樹脂に埋め込み、鏡面研磨した後、ナイタールで腐食して光学顕微鏡にて断面の中央の部位を観察し、ミクロ組織の観察を行い、その組織(相)を同定した。この結果、本発明の鋼板はすべてフェライト分率が40%以下であることが分かった。
鋼板母材としての特性を評価するために、各鋼板について引張特性および衝撃特性を調査した。すなわち、引張試験は、平行部の直径が12.5mmのJIS Z 2201(1998)に記載に基づいて、10号引張試験片を採取して室温で行い、降伏強さ(YS)と引張強さ(TS)を測定した。なお、上記の引張試験片は、鋼板の表面から板厚方向に1/4の板厚の部位から、圧延方向と平行に採取した。ただし、板厚が12mm、16mmと薄い鋼板に関しては試験片を前記の部位から採取できないので、引張試験片を平行部の直径が8.5mmで標点間距離が25mmの小型試験片に代えて評価した。
鋼板母材の引張特性の目標は、YSを235MPa以上とした。
衝撃試験は、JIS Z 2202(1998)に基づいて、幅10mmのVノッチ試験片を採取してシャルピー衝撃試験を行い、−5℃におけるシャルピー吸収エネルギー値−5を求めた。なお、上記のシャルピー衝撃試験片は、鋼板の表面から板厚方向に1/4の板厚の部位から、圧延方向と平行に採取した。ただし、板厚が12mm、16mmと薄い鋼板に関しては1/4の部位とせずに、鋼板の板厚中心から、圧延方向と平行に採取した。
鋼板のシャルピー吸収エネルギー値−5の目標は、母材については100J以上、継手については50Jとした。
続いて鋼板を適切な大きさに切り出し、溶接を行った。溶接した鋼板から上記と同様に衝撃試験用にVノッチ試験片を作成すると共に、荷重非伝達型十字溶接継手試験体を準備した。溶接条件の詳細を表2に示す。溶接は予熱なしで行ったが、溶接割れが発生したものについては、溶接継手の試験は行わなかった。
Figure 0005655383
超長寿命域の疲労データを効率良く採取できるように、疲労試験での繰返し速度を速くするため小型試験体を採用した。図1に荷重非伝達型十字溶接継手試験体の形状と寸法を示す。当該試験体形状では、繰返し速度はおおむね10Hz程度を確保することができ、1日当たりの繰返し数は約86万回で、2週間弱で繰返し数は打切り繰返し数の1千万回に達する。十字継手のリブ板厚については、主板の板厚にそろえ、リブ板の高さはリブ板厚さの2倍とした。なお、鋼板板厚が20mm未満のものは鋼板板厚のままで試験体を作製した。
また、鋼板板厚が20mmを超えるものは、継手疲労特性に及ぼす板厚効果を排除し、鋼材そのものの継手疲労特性を純粋に評価するため、片面から減厚加工を施し、減厚後の板厚を20mmとした。ここで、片面減厚としたのは、一般に溶接継手において疲労き裂は鋼板表面から発生するので、供試鋼板の表面を残すためである。鋼板表面側、すなわち黒皮側を評価部とし、減厚加工面側からの疲労き裂発生を防止するため、溶接施工後、減厚加工面側の溶接余盛り止端には、グラインダーにて形状を整え、応力集中を減らすとともに、ジェットタガネにて溶接によって発生した引張残留応力を減らした。この結果、いずれの試験体においても、疲労き裂は鋼板表面、すなわち黒皮側から発生した。
疲労試験は電気油圧式閉ループ型疲労試験機を用いて実施した。荷重容量は±10tonfから±50tonfの複数の試験機を使用した。試験片の試験機への装着は、油圧チャックあるいはボルト締結式治具で行い、繰返し荷重を付与した。繰返しの応力波形は、sin波で、最大応力を350MPa一定とし、最小応力を変化させることにより、応力範囲(=最大応力−最小応力)を設定した。ここで、最大応力を高い応力を降伏応力に近い、高いレベルで一定に固定したのは、小型試験片に加工する際に開放された溶接残留応力を、疲労試験の外力で補填するためである。このような応力波形を採用することにより、小型試験体を用いた疲労強度評価でありながら、実構造物あるいは大型溶接構造モデルと同等の疲労特性を再現することができている。疲労試験中は常に、試験片掴み部における変位を動的にモニターしておき、疲労試験開始時の最大変位に比べ、疲労試験中に最大荷重時の変位量が1mm増した時点を破断時と定義し、その時の繰返し数を破断寿命とした。なお、変位が1mm増して試験を終了したとき、評価断面の約半分の面積が疲労で破壊している状況であった。
準備した各鋼板から試験体を少なくとも3体は製作し、応力範囲を適宜設定して、継手疲労試験により疲労破断寿命を計測した。そして、鋼材毎に、破壊確率50%のSN線、すなわちSN平均線を実験により導出し、その線図を用いて繰返し数が1×10回における疲労強度(時間強度)を読取り、1×10回時間強度とした。
溶接継手のシャルピー吸収エネルギー値−5の目標値は、50J以上とした。溶接継手の疲労強度の目標値は100MPa以上とした。
表3に母材および溶接継手の試験結果を示す。表3で示された母材強度、母材靱性、溶接性、継手靱性、継手疲労特性、総合評価の判断基準は、次のとおりである。
[母材強度YS(MPa)]◎:315以上、○:235以上315未満、×:235未満。
[母材靱性−5(J)]◎:120以上、○:100以上120未満、×:100未満。
[溶接性]◎:予熱不要、×:予熱必要。
[継手靱性−5(J)]◎:100以上、○:50以上100未満、×:50未満。
[継手疲労特性:疲労限(MPa)]◎:120以上、○:100以上120未満、×:100未満。
[総合評価]◎:上記の5つの試験結果のすべてが◎であるもの。
○:上記の5つの試験結果が、◎または○であるもの。
×:上記の5つの試験結果のうち、一つでも×があるもの。
Figure 0005655383
本発明で規定した鋼板は、いずれもYSが120MPa以上となり超長寿命域で優れた継手疲労強度を示しており、かつ溶接構造用鋼として適している。一方、本発明を満足しない鋼板は、溶接継手の疲労強度がYS100MPa以上という目標値を満足しない、あるいは、母材強度、靭性などの目標値のうちの一つを満足しなかった。
本発明に係る溶接構造物用鋼板は超長寿命域まで継手疲労強度に優れている。このような構造物用鋼板は、造船、建設構造物、橋梁、建設機械などの産業分野に用いることができるので、これらの構造物の長期使用延長やメンテナンス軽減に大きく貢献する。

Claims (5)

  1. 質量%で、C:0.01〜0.071%、Si:0.03〜0.60%、Mn:0.8〜2.0%、Cr:0.1%を超え1.0%以下、P:0.0145%以下、S:0.005%以下、sol.Al:0.005%を超えて0.10%以下を含有し、Sn、GeおよびPbから選択される1種以上を合計で0.02〜0.40%並びにCr、MoおよびWから選択される1種以上を合計で0.1%を超え1.0%以下を含み、残部はFeおよび不純物からなり、フェライト分率が40%以下であることを特徴とする溶接部の継手疲労特性に優れた溶接構造物用鋼板。
  2. Feの一部に代えて、質量%で、Nb:0.080%以下、Ti:0.030%以下およびV:0.080%以下から選択される1種以上を含有することを特徴とする、請求項1に記載の溶接構造物用鋼板。
  3. Feの一部に代えて、質量%で、Cu:0.7%未満およびNi:3.0%以下から選択される1種以上を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の溶接構造物用鋼板
  4. Feの一部に代えて、質量%で、B:0.0030%以下を含有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれかに記載の溶接構造物用鋼板。
  5. Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.007%以下、Mg:0.007%以下、Ce:0.007%以下、Y:0.5%以下およびNd:0.5%以下から選択される1種以上を含有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれかに記載の溶接構造物用鋼板。
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