本発明の第1の実施例に係る画像処理によるろ過膜板検査装置について、図1〜図11を参照して具体的に説明する。
本実施例に係る画像処理によるろ過膜板検査装置は、複数のろ過膜板が搭載されるろ過装置において、亀裂や膜形成不具合などの欠陥が有るろ過膜板を画像処理により特定する装置である。
ろ過膜板を用いたろ過装置100は、例えば、図1に示すように、複数枚(図示例では10枚)のろ過膜板102A〜102Jがモジュール(図示せず)を介して筐体(ユニット)101内に設置された構成になっている。モジュールは、複数枚のろ過膜板が所定の間隔にて組み付けられる枠組みであって、内外を液体が流通可能に形成されている。筐体101は、モジュールが格納される容器であって、内外を液体が流通可能に形成されている。複数枚のろ過膜板102A〜102Jは、筐体101内にて立設して配置されている。また、複数枚のろ過膜板102A〜102Jがこれらの面同士を十数ミリメータ間隔で横方向、具体的には、筐体101の前面部101aからこれに対向配置される後面部101bへの方向に隣接して配置されている。複数枚のろ過膜板102A〜102Jはそれぞれ矩形をなし、両面部には多数の膜孔が形成され、内部には上端から下端に延在する穴が形成されている。ろ過膜板の下端部には下端密閉具(図示せず)が取り付けられており、この下端密閉具によりろ過膜板の下端部側が密閉されている。ろ過膜板の上端部には集水ヘッダ(図示せず)が取り付けられている。集水ヘッダには図示しない配管などが接続されている。運転時には水の吸引が行われ、検査時にあっては、前記配管から前記集水ヘッダを介して前記ろ過膜板へ空気などの気体が圧送される。
本実施例に係る画像処理によるろ過膜板検査装置は、図2に示すように、撮影手段としての1台の上部カメラ11、画像入力部12、差分処理部13、二値化処理部14、変化分布計算部15、時系列変化グラフ作成部(時系列変化データ作成部)16、欠陥有無判断部17、記憶部18、処理設定部19、処理制御部20、検査結果出力部21で構成される。
上部カメラ11は、検査対象であるろ過装置が配置される水槽(液槽)の直上に配置され、鉛直直下の領域を撮影するように構成されている。すなわち、上部カメラ11は、水槽に収容した水(液体)に浸漬して配置されたろ過装置が具備する複数のろ過膜板を撮影するように構成されている。上部カメラ11は、上部カメラ11で撮影した画像の映像信号を画像入力部12へ出力可能に画像入力部12と接続される。これにより、装置を簡素に構成することができる。
画像入力部12は、上部カメラ11から入力された映像信号を画像データとして記憶部18へ送信可能に記憶部18と接続される。
差分処理部13は、画像データを入出力可能に記憶部18と接続される。差分処理部13は、記憶部18から基準画像(画像データ)と入力画像(画像データ)が入力され、これら画像データを比較し差分のある画像のみを抽出した差分画像を作成し、この差分画像を記憶部18へ出力している。
二値化処理部14は、処理パラメータおよび画像データを入力可能に、且つ画像データを出力可能に記憶部18と接続される。二値化処理部14は、記憶部18から処理パラメータと差分画像の画像データが入力され、処理パラメータと画像データを比較し、輝度閾値による二値化処理を行って二値画像を作成し、二値画像を記憶部18へ出力している。すなわち、二値化処理部14は、液体中に発生した気泡を強調した二値画像を作成し、二値画像を記憶部18へ出力している。
変化分布計算部15は、画像データを入力可能に、且つ分布データを出力可能に記憶部18と接続される。変化分布計算部15は、記憶部18から二値画像が入力され、計算により変化が発生した画素の分布(分布データ)を作成し、分布データを記憶部18へ出力している。
時系列変化グラフ作成部16は、処理パラメータおよび分布データを入力可能に、且つ時系列変化グラフを出力可能に記憶部18と接続される。時系列変化グラフ作成部16は、記憶部18から処理パラメータと分布データが入力され、各検査範囲に関する変化が発生した画素数の時系列変化グラフ(時系列変化データ)を作成し、時系列変化グラフを記憶部18へ出力している。
欠陥有無判断部17は、分布データ、時系列変化グラフ、および処理パラメータを入力可能に、且つ結果データを出力可能に記憶部18と接続される。欠陥有無判断部17は、記憶部18から分布データ、時系列変化グラフ、および処理パラメータが入力され、ろ過膜板の欠陥の有無の検出、および、欠陥の有るろ過膜板の特定を行い、結果データを記憶部18へ出力している。
記憶部18は、各種データ、例えば、基準画像や入力画像の画像データ、差分画像、処理パラメータ、二値画像、分布データ、時系列変化グラフ、結果データなどを保存する。
処理設定部19は処理パラメータを出力可能に記憶部18と接続される。処理設定部19は、二値化処理部14で用いる輝度閾値、時系列変化グラフ作成部16で用いる検査範囲、欠陥有無判断部17で用いる時系列変化グラフのパターンなどの処理パラメータを設定し、処理パラメータを記憶部18へ出力している。
処理制御部20は、制御信号を出力可能に、画像入力部12、差分処理部13、二値化処理部14、変化分布計算部15、時系列変化グラフ作成部16、欠陥有無判断部17、記憶部18、検査結果出力部21などと接続される。処理制御部20は、全体の処理動作を制御している。
検査結果出力部21は、結果データを出力可能に記憶部18と接続される。検査結果出力部21は、記憶部21から結果データが入力され、結果データをコンピュータの表示機器であるディスプレイなどに出力する。これにより、作業者が検査結果を確認することができる。
ここで、上述した、画像処理によるろ過膜板検査装置を用いて、複数のろ過膜板が搭載されるろ過装置を検査する手順、具体的には処理制御部20による全体の処理動作について説明する。
まず、検査前にろ過装置を所定の位置に配置すると共に、上部カメラおよび照明装置を所定の位置に配置する。具体的には、不純物の無い純水などの液体が溜められた水槽(図示せず)にて水に浸漬するようにろ過装置の複数のろ過膜板を設置し、図3に示すように、ろ過装置100(水槽)の上方に、ろ過装置100を上方から撮影する上部カメラ11を設置すると共に、上部カメラ11に隣接して、ろ過装置100を上方から照らす照明装置31,32を設置する。ろ過膜板102A〜102Jと上部カメラ11の画像軸が平行になるように上部カメラ11の光軸まわりの回転が調整される。ただし、これらの検査は、ろ過膜板102A〜102Jの全体を水に浸けた状態にて行われる。なお、詳細については後述するが、ある規定圧の空気を一定時間圧送し、気泡が発生しない場合には前記ろ過膜板に欠陥が無いと判定し、気泡が発生した場合には前記ろ過膜板に欠陥があると判定している。
続いて、基準画像を作成する。具体的には、上部カメラ11によりろ過装置100を撮影する。この撮影により、例えば、図4に示すようなろ過装置上面の画像が得られる。この画像は、画像入力部12を介して記憶部18に出力され、記憶部18に基準画像として保存される。なお、上部カメラ11によりろ過装置100を撮影する際、照明装置31,32によりろ過装置100を適宜照らすようにしても良い。
続いて、ろ過膜板102A〜102Jに予め設定しておいた圧力(規定圧力)で空気を一定時間圧送しつつ、上部カメラ11によりろ過装置を所定時間連続撮影する。この連続撮影により得られた画像は、画像入力部12を介して記憶部18に入力され、入力画像として保存される。ろ過膜板102A〜102Jに亀裂や膜形成不具合等の欠陥が有った場合、圧送した空気がろ過膜板から漏れ出し、図5に示すように、欠陥の有るろ過膜板(図示例ではろ過膜板102D)から小さな気泡103が発生する。
続いて、記憶部18に保存される基準画像と入力画像を差分処理部13へ出力する(図6(a)参照)。差分処理部13は、基準画像と入力画像を比較し、差分のある画像のみを抽出した差分画像を作成し(図6(b)参照)、差分画像を記憶部18へ出力する。この差分画像により、入力画像中の気泡による変化発生部分を検出することができる。
続いて、記憶部18に保存される処理パラメータと差分画像を二値化処理部14へ出力する。二値化処理部14は、処理パラメータと差分画像を比較し、輝度閾値による二値化処理を行って二値画像を作成し(図6(c)参照)、より具体的には液体中に発生した気泡を強調した二値画像を作成し、二値画像を記憶部18へ出力する。
続いて、記憶部18に保存される二値画像を変化分布計算部15へ出力する。変化分布計算部15は、二値画像に基づき変化が発生した画素の分布(分布データ)を計算して作成し(図6(d)参照)、分布データを記憶部18へ出力する。この分布データにより、気泡により変化が発生した画素の分布を求めることができる。
続いて、気泡により変化した画素の分布の時系列変化を求める。空気を圧送すると欠陥の有るろ過膜板から最初は小さな気泡が少量発生し、時間の経過に従って気泡の量が増加し、水面に気泡が到達する等の理由により気泡の消滅が始まると気泡の量が飽和する。そこで、図7に示すように、画像上にてそれぞれのろ過膜板102A〜102J近傍に検査範囲104A〜104Jを設け、気泡により変化が発生した画素の分布の時系列変化を調べる。つまり、記憶部18に保存される処理パラメータである各ろ過膜板の検査範囲104A〜104Jおよび分布データを時系列変化グラフ作成部16へ出力する。時系列変化グラフ作成部16は、各ろ過膜板の検査範囲104A〜104Jおよび分布データに基づき、各検査範囲104A〜104Jに関する変化が発生した画素数の時系列変化グラフを作成し、時系列変化グラフを記憶部18へ出力する。
検査範囲に配置されるろ過膜板に欠陥が有る場合、すなわち、欠陥の有るろ過膜板の検査範囲では、例えば図8に示すように、変化のある画素の数(変化が発生した画素数)が時間の経過に従って増加し所定時間経過した後では飽和して一定となる時系列変化グラフが作成される。
検査範囲に配置されるろ過膜板に欠陥が無く、この検査範囲に隣接する検査範囲に配置されるろ過膜板に欠陥が有る場合、すなわち、欠陥の有るろ過膜板の隣のろ過膜板の検査範囲では、例えば図9に示すように、欠陥の有るろ過膜板から発生した気泡の影響により、変化のある画素の数(変化が発生した画素数)が時間の経過に従って増加する時系列変化となるが、検査範囲に配置されるろ過膜板に欠陥が有る場合の時系列変化グラフよりも、変化が発生した画素数の増加の始まりが遅れた時系列変化グラフが作成される。
検査範囲に配置されるろ過膜板に欠陥が無く、この検査範囲に隣接する検査範囲に配置されるろ過膜板にも欠陥が無い場合、すなわち、欠陥の無いろ過膜板が並んでいるろ過膜板の検査範囲では、図10に示すように、変化のある画素の数(変化が発生した画素数)の増加が無い時系列変化グラフが作成される。
ろ過膜板に欠陥は無いが小さなゴミ等の何らかの浮遊物が存在するろ過膜板の検査範囲では、例えば図11に示すように、浮遊物の移動により変化のある画素の数(変化が発生した画素数)が増減する時系列変化グラフが作成される。
続いて、記憶部18に保存される時系列変化グラフを欠陥有無判断部17へ出力する。欠陥有無判断部17は、時系列変化グラフが上述した時系列変化グラフのパターン(図8〜図11参照)と同じであるか判断して、ろ過膜板の欠陥の有無を検査し、さらに、時系列変化グラフにおいて、変化が発生した画素数の増加の始まり時刻を調べることで、欠陥の有るろ過膜板を特定し、これらを結果データとして記憶部18へ出力している。よって、作業者の操作により、記憶部18に保存される結果データを検査結果出力部21に出力し、作業者により結果データを確認することができる。
したがって、本実施例に係る画像処理によるろ過膜板検査装置によれば、ろ過装置を上部カメラ11で撮影した画像を処理することで欠陥のあるろ過膜板を自動的に特定することができる。また、検査に不純物の混入した液体を使用しないため、ろ過膜板に不純物が付着する可能性が無い。
本発明の第2の実施例に係る画像処理によるろ過膜板検査装置について、図12〜図21を参照して具体的に説明する。
本実施例に係る画像処理によるろ過膜板検査装置は、複数のろ過膜板が搭載されるろ過装置において、亀裂や膜形成不具合などの欠陥が有るろ過膜板を画像処理により特定する装置である。
ろ過膜板を用いたろ過装置200は、例えば、図12に示すように、複数枚(図示例では10枚)のろ過膜板202A〜202Jがモジュール(図示せず)を介して筐体(ユニット)201内に設置された構成になっている。モジュールは、複数枚のろ過膜板が所定の間隔にて組み付けられる枠組みであって、内外を液体が流通可能に形成されている。筐体201は、モジュールが格納される容器であって、内外を液体が流通可能に形成されている。複数枚のろ過膜板202A〜202Jは、それぞれ略長方形状をなし長手方向が上下方向となるように配置されると共に、筐体101内にて立設して配置される。また、複数枚のろ過膜板202A〜202Jがこれらの面同士を十数ミリメータ間隔で横方向、具体的には、筐体201の前面部201aからこれに対向配置される後面部201bへの方向に隣接して配置されている。複数枚のろ過膜板202A〜202Jは、両面部には多数の膜孔が形成され、内部には上端から下端に延在する穴が形成されている。ろ過膜板の下端部には下端密閉具(図示せず)取り付けられており、この下端密閉具によりろ過膜板の下端部側が密閉されている。ろ過膜板の上端部には集水ヘッダ(図示せず)が取り付けられている。集水ヘッダには配管などが接続されている。運転時には水の吸引が行われ、検査時にあっては、前記配管から前記集水ヘッダを介して前記ろ過膜板へ空気などの気体が圧送される。
本実施例に係る画像処理によるろ過膜板検査装置は、図13に示すように、撮影手段としての1台の上部カメラ50および4台の側部カメラ51A〜51D、画像入力部52、差分処理部53、二値化処理部54、変化分布計算部55、時系列変化グラフ作成部(時系列変化データ作成部)56、欠陥有無判断部57、側部カメラ移動部(側部カメラ移動制御部)58、注目する側部カメラ画像選定部(側部画像選定部)59、記憶部60、処理設定部61、処理制御部62、検査結果出力部63で構成される。
上部カメラ50は、図14に示すように、検査対象であるろ過装置200が配置される水槽(図示せず)の直上に配置され、鉛直直下の領域を撮影するように構成されている。すなわち、上部カメラ50は、水槽(液槽)に収容した水(液体)に浸漬して配置されたろ過装置200が具備する複数のろ過膜板202A〜202Jを撮影するように構成されている。側部カメラ51A〜51Dは、水槽の側方に配置され、複数のろ過膜板202A〜202Jを側方から撮影するように構成されている。図示例では4台の側部カメラ51A〜51Dを用いてろ過膜板の側部を撮影しているが、側部カメラの数量が4台に限定されず、ろ過膜板の長さと側部カメラの視野に合わせて適宜必要な数量を設置すればよい。側部カメラ51A〜51Dは、並行移動機構(移動手段)70に設けられる。並行移動機構70は、水槽(ろ過装置200)の側方に配置され、上方および下方のそれぞれにて前後方向に延在する上方レール71および下方レール72と、上方レール71および下方レール72に沿って移動可能に設けられた上端摺動部73および下端摺動部74と、上端が上端摺動部73に接続される一方、下端が下端摺動部74に接続され、側部カメラ51A〜51Dが設置される支持部75とで構成されている。これにより、ろ過装置200の側方において、前方側から後方側に亘って水平方向に移動し所定の位置に側部カメラ51A〜51Dを配置することができる。なお、上部カメラ50・側部カメラ51A〜51Dに隣接して照明装置を適宜に設置することも可能である。上部カメラ50および側部カメラ51A〜51Dは、上部カメラ50および側部カメラ51A〜51Dで撮影された画像の映像信号を画像入力部52へ出力可能に画像入力部52と接続される。
画像入力部52は、図13に示すように、上部カメラ50および側部カメラ51A〜51Dから入力された映像信号を画像データ(上部画像および側部画像)として記憶部60へ送信可能に記憶部60と接続される。
差分処理部53は、画像データを入出力可能に記憶部60と接続される。差分処理部53は、記憶部60から基準画像(画像データ)と入力画像(画像データ)が入力され、これら画像データを比較し差分のある画像のみを抽出した差分画像を作成し、この差分画像を記憶部60へ出力している。
二値化処理部54は、処理パラメータおよび画像データを入力可能に、且つ画像データを出力可能に記憶部60と接続される。二値化処理部54は、記憶部60から処理パラメータと差分画像の画像データが入力され、処理パラメータと画像データを比較し、輝度閾値による二値化処理を行って二値画像を作成し、二値画像を記憶部60へ出力している。すなわち、二値化処理部54は、液体中に発生した気泡を強調した二値画像を作成し、二値画像を記憶部60へ出力している。
変化分布計算部55は、画像データを入力可能に、且つ分布データを出力可能に記憶部60と接続される。変化分布計算部55は、記憶部60から二値画像が入力され、計算により変化が発生した画素の分布(分布データ)を作成し、分布データを記憶部60へ出力している。
時系列変化グラフ作成部56は、処理パラメータおよび分布データを入力可能に、且つ時系列変化グラフを出力可能に記憶部60と接続される。時系列変化グラフ作成部56は、記憶部60から処理パラメータと分布データが入力され、各検査範囲に関する変化が発生した画素数の時系列変化グラフ(時系列変化データ)を作成し、時系列変化グラフを記憶部60へ出力している。
欠陥有無判断部57は、分布データ、時系列変化グラフ、後述の、注目する側部カメラ画像選定部58で選定された側部カメラによる側部画像、および処理パラメータを入力可能に、且つ結果データを出力可能に記憶部60と接続される。欠陥有無判断部57は、記憶部60から、分布データ、時系列変化グラフ、選定された側部画像、および処理パラメータが入力され、ろ過膜板の欠陥の有無の検出、および、欠陥の有るろ過膜板の特定を行い、結果データを記憶部60へ出力している。
側部カメラ移動部58は、結果データを入力可能に記憶部60と接続される。側部カメラ移動部58は、上部カメラ50により得られた画像データを処理して得られた結果データが記憶部60から入力され、結果データに保存されている気泡の有る検査範囲から、気泡が発生したろ過膜板間位置を求め、気泡が発生したろ過膜板間位置へ側部カメラ51A〜51Dを移動するように並行移動機構70を制御している。
注目する側部カメラ画像選定部59は、結果データを入力可能に、注目する側部カメラ番号を出力可能に記憶部60と接続される。注目する側部カメラ画像選定部59は、複数の側部カメラ51A〜51Dにより得られた画像データを処理して得られた結果データが入力され、気泡を検出した側部カメラ51A〜51Dの画像の内、最も下の高さに設定された側部カメラの番号を記憶部60へ出力している。
記憶部60は、各種データ、例えば、基準画像や入力画像の画像データ、差分画像、処理パラメータ、二値画像、分布データ、時系列変化グラフ、結果データなどを保存する。
処理設定部61は処理パラメータを出力可能に記憶部60と接続される。処理設定部61は、二値化処理部54で用いる輝度閾値、時系列変化グラフ作成部56で用いる検査範囲、欠陥有無判断部57で用いる時系列変化グラフのパターンなどの処理パラメータを設定し、処理パラメータを記憶部60へ出力している。
処理制御部62は、制御信号を出力可能に、画像入力部52、差分処理部53、二値化処理部54、変化分布計算部55、時系列変化グラフ作成部56、欠陥有無判断部57、側部カメラ移動部58、注目する側部カメラ画像選定部59、記憶部60、検査結果出力部63などと接続される。処理制御部62は、全体の処理動作を制御している。
検査結果出力部63は、結果データを出力可能に記憶部60と接続される。検査結果出力部63は、記憶部60から結果データが入力され、結果データをコンピュータの表示機器であるディスプレイなどに出力する。これにより、作業者が検査結果を確認することができる。
ここで、上述した、画像処理によるろ過膜板検査装置を用いて、複数のろ過膜板が搭載されるろ過装置を検査する手順、具体的には処理制御部62による全体の処理動作について説明する。
画像処理によるろ過膜板検査装置におけるろ過膜板の検査は次の手順となる。
(1)上部カメラの画像により気泡を検出する。
(2)気泡が発生したろ過膜板間の位置を検出する。
(3)気泡が発生したろ過膜板間の位置へ側部カメラを移動する。
(4)側部カメラ画像により気泡が発生したろ過膜板を特定する。
ただし、気泡が発生しないまま、規定圧力および規定時間を達成した(経過した)場合は、ろ過膜板に欠陥が無いものとして、ろ過膜板の検査を終了する。
まず、検査前にろ過装置を所定の位置に配置すると共に、上部カメラおよび側部カメラを所定の位置に配置する。具体的には、不純物の無い純水などの液体が溜められた水槽(図示せず)中にろ過装置を設置し、図14に示すように、ろ過装置200(水槽)の上方に、ろ過装置200を上方から撮影する上部カメラ50を設置すると共に、ろ過装置200を側面から撮影する複数の側部カメラ51A〜51Dをろ過装置200(水槽)の側方に配置される並行移動機構70に設置する。ろ過膜板202A〜202Jと上部カメラ50の画像軸が平行になるように上部カメラ50の光軸まわりの回転が調整される。ただし、これらの検査は、ろ過膜板202A〜202Jの全体を水に浸けた状態にて行われる。なお、詳細については後述するが、ある規定圧の空気を一定時間圧送し、気泡が発生しない場合には前記ろ過膜板に欠陥が無いと判定し、気泡が発生した場合には前記ろ過膜板に欠陥があると判定している。
続いて、上部基準画像および側部基準画像を作成する。具体的には、上部カメラ50によりろ過装置200を撮影する。この撮影により得られたろ過装置上面の画像は、画像入力部52を介して記憶部60に出力され、記憶部60に上部基準画像として保存される。また、側部カメラ51A〜51Dによりろ過装置200を撮影する。この撮影により得られたろ過装置側面の画像は、画像入力部52を介して記憶部60に出力され、記憶部60に側部基準画像として保存される。並行移動機構70により側部カメラ51A〜51Dを移動し、ろ過膜板202A〜202J全ての側部基準画像を得るまで行われる。
続いて、図15に示すように、ろ過装置の各ろ過膜板202A〜202Jに予め設定しておいた圧力(規定圧力)で空気を圧送する(空気圧送工程P1)。
続いて、上部カメラ画像による気泡検出工程P2が上述した第1の実施例と同様の方法で行われる。具体的には、上部カメラ50によりろ過装置を連続撮影する。この連続撮影により得られた画像は、画像入力部52を介して記憶部60に入力され、入力画像として保存される。そして、差分処理部53は、基準画像と入力画像を比較し、差分のある画像のみを抽出した差分画像を作成し、差分画像を記憶部60へ出力する。この差分画像により、入力画像中の気泡による変化発生部分を検出して、気泡発生の有無を判定する(気泡発生判定工程P3)。この工程P3にて、気泡の発生が無いと判定された場合には、空気の圧送が所定の条件を満たしたかを判定する空気圧送条件判定工程P4へ進む。気泡の発生が有ると判定された場合には、気泡発生ろ過膜板間位置検出工程P5へ進む。
空気圧送条件判定工程P4にて、空気の圧送が規定圧力および規定時間行われたかを判定し、これら条件を満たさない場合には、再び空気圧送工程P1に戻る。これら条件を満たした場合には、検査対象のろ過膜板には亀裂や膜形成不具合などの欠陥が無いと判定され、ろ過膜板の検査が終了となる。すなわち、ろ過膜板へ所定量の空気の圧送が完了するまで気泡検出工程P3が行われる。
続いて、気泡発生ろ過膜板間位置検出工程P5が上述した第1の実施例と同様の方法で行われる。ただし、本実施例では、気泡が発生したろ過膜板間位置を検出するため、図16に示すように、検査範囲204A〜204Kをろ過膜板202A〜202Jではなくろ過膜板間を囲むように設定する。具体的には、記憶部60に保存される処理パラメータと差分画像を二値化処理部54へ出力する。二値化処理部54は、処理パラメータと差分画像を比較し、輝度閾値による二値化処理を行って二値画像を作成し、二値画像を記憶部60へ出力する。そして、記憶部60に保存される二値画像を変化分布計算部55へ出力する。変化分布計算部55は、二値画像に基づき変化が発生し画素の分布を計算して作成し、分布データを記憶部60へ出力する。記憶部60に保存される分布データを側部カメラ移動部58へ出力する。側部カメラ移動部58は、分布データ(結果データ)に保存される気泡のある検査範囲から、気泡により変化が発生した画素の分布を求めて、気泡発生ろ過膜板間位置を検出する。
続いて、側部カメラ移動部58は、分布データ(結果データ)に基づき、並行移動機構70を制御して、側部カメラ51A〜51Dを前記気泡発生ろ過膜板間位置に配置する(側部カメラ移動工程P6)。例えば、図17に示すように、ろ過膜板202Bとろ過膜板202Cとの間に気泡203が発生している場合には、側部カメラ51A〜51Dを移動して、これら側部カメラの光軸81がろ過膜板202Bとろ過膜板202Cの間の中央に位置付けられる。
続いて、側部カメラ画像による気泡発生ろ過膜板特定工程P7が行われる。本工程P7では、側部カメラ51A〜51Dによりろ過装置を所定時間連続撮影し、この撮影で得られた入力画像に基づき注目する側部カメラ画像を選定した後に、上述した第1の実施例と同様の方法により、欠陥の有るろ過膜板を特定する。
ここで、気泡がろ過膜板から発生した場合のろ過装置を側部カメラの方向から見た模式図の一例を図18に示す。前の工程P6にて側部カメラ51A〜51Dを気泡発生ろ過膜板間位置の側方へ移動したため、複数の側部カメラ51A〜51Dそれぞれが撮影する範囲205A〜205Dは図19に示すようになる。すなわち、複数の側部カメラ51A〜51Dのうち最下方に配置される側部カメラ51Aが撮影する範囲205Aは、ろ過膜板202A〜202Dの下方側となる。側部カメラ51Aより上方に配置される側部カメラ51Bが撮影する範囲205Bは、側部カメラ51Aによる撮影範囲205Aの上端部に下端部が重なり、この撮影範囲205Aよりも上方となる。側部カメラ51Bより上方に配置される側部カメラ51Cが撮影する範囲205Cは、側部カメラ51Bによる撮影範囲205Bの上端部に下端部が重なり、この撮影範囲205Bよりも上方となる。複数の側部カメラ51A〜51Dのうち最上方に配置される側部カメラ51Dが撮影する範囲205Dは、側部カメラ51Cによる撮影範囲205Cの上端部に下端部が重なり、この撮影範囲205Cよりも上方となる。
これら側部カメラ51A、51B,51C,51Dにより、気泡が発生したろ過膜板間の隣り合うろ過膜板のどちらから気泡が発生したかを特定すればよい。このため、各側部カメラ51A、51B,51C,51Dで撮影した画像に対し、検査範囲を図20に示すように2箇所206A,206Bのみ設定する。すなわち、隣接する2つのろ過膜板202B,202Cにおいて、これらろ過膜板202B,202C間の中央から一方のろ過膜板202B側の検査範囲206Aと、これらろ過膜板202B,202C間の中央から他方のろ過膜板202C側の検査範囲206Bとを設定する。さらに、記憶部60に保存される側部カメラ51A〜51Dで撮影した画像205A〜205Dが注目する側部カメラ画像選定部59に入力される。注目する側部カメラ画像選定部59は、気泡を検出した側部カメラの画像の内、最も下の高さに設定した側部カメラの画像に注目し、気泡発生ろ過膜板の特定を行う(側部カメラ画像による気泡発生ろ過膜板の特定工程P7)。図19の例では、下から2番目の側部カメラ51Bにより撮影した画像205Bが注目する画像となる。側部カメラで撮影した注目する画像の例を図21に示す。図21のように、注目する画像205Bでは、欠陥の存在するろ過膜板202B側に気泡203が偏って存在する。
そこで、注目する画像205Bに関し、差分処理部53が基準画像と入力画像を比較し、差分のある画像のみを抽出した差分画像を作成する。続いて、二値化処理部54が処理パラメータと差分画像を比較し、輝度閾値による二値化処理を行って二値画像を作成し、より具体的には液体中に発生した気泡を強調した二値画像を作成する。続いて、変化分布計算部55は、二値画像に基づき変化が発生した画素の分布(分布データ)を計算して作成する。続いて、時系列変化グラフ作成部56が、検査範囲206A,206Bおよび分布データに基づき、変化が発生した画素数の時系列変化グラフを作成する。そして、欠陥有無判断部57は、時系列変化グラフおよび時系列変化グラフのパターン(パラメータ)に基づき、ろ過膜板の欠陥の有無を検査し、且つ、欠陥の有るろ過膜板を特定し、これらを結果データとして記憶部60へ出力している。よって、作業者の操作により、記憶部60に保存される結果データを検査結果出力部63に出力し、作業者により結果データを確認することができる。
したがって、本実施例に係る画像処理によるろ過膜板検査装置によれば、ろ過装置を上部カメラ50および側部カメラ51A〜51Dで撮影した画像を処理することで、欠陥の有るろ過膜板を自動的に特定することができる。また、上部カメラ50で撮影した画像に基づき気泡が発生したろ過膜板間位置を特定し、側部カメラ51A〜51Dで撮影した画像に基づき欠陥の有るろ過膜板を特定したことにより、ろ過膜板が長尺物であっても、欠陥の有るろ過膜板をより確実に特定することができる。
並行移動機構70により側部カメラ51A〜51Dを移動し、気泡が発生したろ過膜板に近接して配置することができるため、欠陥の有るろ過膜板を効率よく特定することができる。
なお、上述した第1の実施例では、欠陥有無判断部17が時系列変化グラフに基づき、ろ過膜板の欠陥の有無を検査し、且つ、欠陥の有るろ過膜板を特定する、画像処理によるろ過膜板検査装置について説明したが、欠陥有無判断部17が変化分布計算部15で作成した分布データに基づき、ろ過膜板の並んでいる方向に関して変化が発生した画素の分布を調べることで、欠陥の有るろ過膜板を特定する、画像処理によるろ過膜検査装置とすることも可能である。このような画像処理によるろ過膜板検査装置であっても、第1の実施例に係る画像処理によるろ過膜板検査装置と同様な作用効果を奏することに加え、時系列変化グラフ作成部が不要となり、装置を簡素に構成することができる。
上述した第2の実施例では、欠陥有無判断部57が時系列変化グラフに基づき欠陥の有るろ過膜板を特定する、画像処理によるろ過膜板検査装置について説明したが、欠陥有無判断部57が変化分布計算部55で作成した分布データに基づき、ろ過膜板の並んでいる方向に関して変化が発生した画素の分布を調べることで、欠陥の有るろ過膜板を特定する画像処理によるろ過膜検査装置とすることも可能である。このような画像処理によるろ過膜板検査装置であっても、第2の実施例に係る画像処理によるろ過膜板検査装置と同様な作用効果を奏することに加え、時系列変化グラフ作成部が不要となり、装置を簡素に構成することができる。
上述した第1および第2の実施例では、10枚のろ過膜板を検査する画像処理によるろ過膜板検査装置を用いて説明したが、ろ過膜板の数量は10枚に限らず9枚以下や11枚以上のろ過膜板を検査する画像処理によるろ過膜板検査装置とすることも可能である。
上述した第1および第2の実施例では、ろ過装置を水槽内に配置し、これをカメラで撮影して得られた撮影画像に基づき、亀裂や膜形成不具合等のあるろ過膜板を自動的に特定する画像処理によるろ過膜板検査装置について説明したが、複数枚のろ過膜板が組み付けられたモジュールを水槽内に配置し、これをカメラで撮影して得られた撮影画像に基づき、亀裂や膜形成不具合等のあるろ過膜板を自動的に特定する画像処理によるろ過膜板検査装置とすることも可能である。