JP5652248B2 - 曲げ加工性に優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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C:0.26〜0.35%
CはVCとして鋼中に析出し、鋼を高強度化する最も重要な元素である。C量が0.26%を下回ると1.5GPa級のTSが得られない。一方、C量が0.35%を超えると粗大なセメンタイトやパーライトが生成して曲げ加工性が著しく劣化する。そのため、C量は0.26〜0.35%とする。
Siはオーステナイト相からフェライト相への変態時にオーステナイト相からCの吐き出しを促進するため、フェライト相中での微細なVCの形成を抑制して高強度化や曲げ加工性の向上を阻害する。そのため、Si量の上限は0.5%とする。好ましくは0.1%以下である。
Mn量が0.4%を超えると偏析によるバンド状組織の形成を助長するため、曲げ加工性が劣化する。そのため、Mn量は0.4%以下、好ましくは0.3%以下とする。
Pは粒界に偏析して、加工性を著しく劣化させる。そのため、P量の上限は0.03%とする。
SはMnSを形成し、曲げ加工時にボイドの発生を促進し、曲げ加工性を劣化させる。そのため、S量の上限は0.01%とする。さらに好ましくは0.005%以下である。
Al量が0.07%を超えると粗大なAlNが形成され、曲げ加工性が劣化する。そのため、Al量の上限は0.07%とする。なお、Alは鋼の脱酸作用を有する元素なので、その量を0.015%以上とすることが好ましい。
Nは粗大な窒化物を形成し、曲げ加工時にその周辺から亀裂の発生を促進し、曲げ加工性を劣化させる。そのため、N量の上限は0.01%、好ましくは0.007%、より好ましくは0.005%とする。
Vは微細なVCを形成して、鋼を高強度化する最も重要な元素である。V量が1.5%を下回ると十分な量のVCが析出しないため、1.5GPa級のTSが得られなくなるとともに、セメンタイトやパーライトが生成するようになり曲げ加工性が劣化する。一方、V量が2.0%を超えると目的とする強度水準が得られなくなる。そのため、V量は1.5〜2.0%とする。
微量のTiは、VCの微細析出を促進し、高強度を得やすくするため添加することが好ましい。この場合、0.001%以上の添加が好ましい。一方、Ti量が0.015%を超えると1μm程度を超える粗大なTiNが形成され、曲げ加工時にTiNとマトリックスの界面から亀裂の発生が促進されるため、曲げ加工性が劣化する。そのため、Ti量の上限は0.015%とする。より好ましくは0.01%以下である。
Crは厚さ5μmを超えるようなスケール生成を抑制する効果がある。しかし、Cr量が1%を超えるとフェライト変態を遅滞させてベイナイト相やマルテンサイト相のような硬質相が形成されるため、曲げ加工性が劣化する。そのため、Cr量は1%以下とすることが好ましい。なお、上記したようなCrの効果を得るためには、Cr量は0.1%以上とすることが好ましい。
Bはフェライト粒界に偏析することでフェライト粒界を強化し、曲げ加工性をさらに向上させる。しかし、B量が0.0030%を超えるとフェライト変態を遅滞させてベイナイト相やマルテンサイト相のような硬質相が形成されるため、曲げ加工性が劣化する。そのため、B量は0.0030%以下とすることが好ましい。なお、上記したようなBの効果を得るためには、B量は0.0005%以上とすることが好ましい。
Moはパーライトの生成を抑制する効果を有する。しかし、Mo量が0.5%を超えるとフェライト変態を遅滞させてベイナイト相やマルテンサイト相のような硬質相が形成されるため、曲げ加工性が劣化する。そのため、Mo量は0.5%以下とすることが好ましい。なお、上記したようなMoの効果を得るためには、Mo量は0.03%以上とすることが好ましい。
Wも、Moと同様、パーライトの生成を抑制する効果を有する。しかし、W量が1%を超えるとフェライト変態を遅滞させてベイナイト相やマルテンサイト相のような硬質相が形成されるため、曲げ加工性が劣化する。そのため、W量は1%以下とすることが好ましい。なお、上記したようなWの効果を得るためには、W量は0.05%以上とすることが好ましい。
良好な曲げ加工性を確保するには、ベイナイト相、マルテンサイト相、センメンタイト、パーライトなどの粗大な硬質相の生成が極力回避されたフェライト相主体のマトリックスからなるミクロ組織にする必要がある。フェライト相主体とは、マトリックス全体に占めるフェライト相の面積率が95%以上のことであり、98%以上であることがより好ましい。これは、フェライト相以外のベイナイト相、マルテンサイト相、センメンタイト、パーライトなどが面積率で5%以下、好ましくは2%以下であれば存在しても本発明の効果を阻害することがないためである。
熱間圧延の仕上温度:900℃以上
仕上温度が900℃未満だと大きな伸びた粒と小さな粒がバンド状に層構造を形成するため、曲げ加工性が劣化する。そのため、仕上温度は900℃以上とする。
熱間圧延後は、粗大なVCの析出を抑制するために、平均冷却速度20℃/s以上で700℃以下まで冷却する必要がある。平均冷却速度が20℃/s未満だったり、この冷却速度による冷却を700℃を超える温度で止めるとVCが粗大化して、高強度化が阻害される。
巻取温度が500℃未満では大きさ10nm未満の微細なVCの析出が困難になるとともに、ベイナイト相などの硬質相が形成されやすく、曲げ加工性が低下する。また、680℃を超えるとVCが粗大化して、高強度化が阻害される。そのため、巻取温度は500〜680℃とする。
Claims (5)
- 質量%で、C:0.26〜0.35%、Si:0.5%以下、Mn:0.4%以下、P:0.03%以下、S:0.01%以下、Al:0.07%以下、N:0.01%以下、V:1.5〜2.0%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、マトリックス全体に占めるフェライト相の面積率が95%以上であり、前記マトリックスにはVCが分散析出しているミクロ組織を有し、かつ前記マトリックス全体に占める前記VCの合計の体積比が0.02〜0.03であり、前記VCを円盤と仮定して求めた平均厚みtと平均直径dの間には、(t+d)/2<10nmの関係が満足されることを特徴とする曲げ加工性に優れた高強度熱延鋼板。
- さらに、質量%で、Ti:0.015%以下を含有することを特徴とする請求項1に記載の曲げ加工性に優れた高強度熱延鋼板。
- さらに、質量%で、Cr:1%以下、B:0.0030%以下、Mo:0.5%以下、およびW:1%以下のうちから選ばれた少なくとも1種の元素を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の曲げ加工性に優れた高強度熱延鋼板。
- 鋼板表面にめっき層を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の曲げ加工性に優れた高強度熱延鋼板。
- 請求項1から3のいずれか1項に記載の成分組成を有する鋼を、900℃以上の仕上温度で熱間圧延後、20℃/s以上の平均冷却速度で700℃以下まで冷却し、500〜680℃の巻取温度で巻取ることを特徴とする、マトリックス全体に占めるフェライト相の面積率が95%以上であり、前記マトリックスにはVCが分散析出しているミクロ組織を有し、かつ前記マトリックス全体に占める前記VCの合計の体積比が0.02〜0.03であり、前記VCを円盤と仮定して求めた平均厚みtと平均直径dの間には、(t+d)/2<10nmの関係が満足される、曲げ加工性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
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