従来、電子写真方式を利用した画像形成装置は広く知られている。その画像形成プロセスは、像担持体である感光体ドラムの表面に静電潜像を形成し、感光体ドラム上の静電潜像を現像剤であるトナーによって現像して可視像化し、現像された画像を転写装置により記録媒体に転写してトナー像を担持させる。その後、記録媒体上の未定着のトナー像を定着装置によって加圧/加熱し、記録媒体上のトナー像を定着するものである。
定着装置には、対向するローラまたはベルトあるいはそれらの組み合わせにより構成された定着回転体が設けられており、記録媒体である記録紙をニップ部にて挟み込み、加圧/加熱して、トナー像を記録紙上に定着する。
この種の定着装置には、従来より各種方式のものがある。
図11は従来のベルト定着方式の定着装置を示す概略構成図であって、ベルト定着方式の定着装置は、加熱ヒータ201を有する加熱ローラ202と、表層にゴム層が設けられた定着ローラ203と、加熱ローラ202と定着ローラ203とに架設された定着ベルト204と、定着ベルト204を介して定着ローラ203に圧接して定着ニップNを形成する加圧ローラ205とを具備するものである。
そしてトナー像が転写された記録媒体の記録紙Pが、定着ベルト204と加圧ローラ205間の定着ニップNに搬送されると、記録紙Pが定着ニップNを通過する過程において記録紙P上のトナー像が加熱および加圧されて、記録紙Pに定着される。
図12は従来のフィルム加熱方式の定着装置を示す概略構成図であって、フィルム加熱方式の定着装置は、特許文献1に記載されているように、一般的に、セラミックヒータ211と加圧ローラ212との間に、耐熱性フィルム(定着ベルト)213を挟むようにして定着ニップNを形成する構成のものである。
そして、定着ニップNの耐熱性フィルム213と加圧ローラ212との間に記録紙を導入して、記録紙を挟持して耐熱性フィルム213と共に搬送させる。このとき定着ニップNにおいて、記録紙に対してセラミックヒータ211からの熱が耐熱性フィルム213を介して加えられると共に加圧されて、記録紙上のトナー像が定着される。
前記フィルム加熱方式の定着装置は、セラミックヒータと、フィルムからなる低熱容量の部材を用いてオンデマンドタイプの装置を構成することができると共に、画像形成装置の画像形成実行時のみ、セラミックヒータに通電して所定の定着温度に発熱させた状態にすればよく、画像形成装置の電源オンから画像形成実行可能状態までの待ち時間が短く、かつスタンバイ時の消費電力も大幅に小さいなどの利点がある。
また、特許文献2に記載されているような加圧ベルト方式の定着装置では、表面が弾性変形する回転可能な加熱定着ロールと、加熱定着ロールに接触したまま走行可能なエンドレスベルトと、エンドレスベルトの内側に非回転状態で配置され、エンドレスベルトを加熱定着ロールに圧接させてエンドレスベルトと加熱定着ロールとの間に記録紙が通過するベルトニップを設ける加圧パッドとを備えている。
前記加圧ベルト方式の定着装置によれば、加圧パッドの押圧により加熱定着ロールの表面を弾性変形させ、用紙と加熱定着ロールとの接触面積を広げることにより、熱伝導効率を大幅に向上させ、エネルギ消費を抑制すると同時に小型化を実現することが可能となる。
しかし、特許文献1に記載されているフィルム加熱方式の定着装置では、定着ベルト(耐熱性フィルム)における耐久性と温度の安定性とに問題があった。
すなわち、セラミックヒータと、耐熱性フィルムからなる定着ベルトとの摺動面の耐磨耗性が不十分であり、長時間運転すると連続摩擦を繰り返す面が荒れて摩擦抵抗が増大し、定着ベルトの走行が不安定になるか、もしくは、定着装置の駆動トルクが増大するなどの現象が生じる。
その結果、画像を形成する記録紙のスリップが生じて形成画像のずれが生じる。あるいは、駆動ギヤに加わる応力が増大し、ギヤの破損を引き起こすという不具合が発生する。
また、フィルム加熱方式の定着装置では、定着ベルトを定着ニップにおいて局所的に加熱しているため、回転する定着ベルトが定着ニップの入口に戻ってくる際に、ベルト温度は最も冷えた状態になり、特に、高速回転を行う場合、定着不良が生じやすいという問題がある。
前記のような定着ベルトとセラミックヒータなどの固定部材との摺動性の問題を改善する手段として、特許文献2には、圧力パッドの表層に低摩擦シート(シート状摺動材)としてPTFE(Polytetrafluoroethylene)を含浸させたガラス繊維シート(PTFE含浸ガラスクロス)を用いる方法が記載されている。
しかし、特許文献2,3に記載の加圧ベルト方式の定着装置では、定着ローラの熱容量が大きく昇温が遅いため、ウォームアップにかかる時間が長いという問題がある。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の実施形態を説明するための画像形成装置全体の概略構成図である。本例では画像形成装置としてタンデム型カラープリンタを示す。
図1において、画像形成装置本体1の上方に設置されたボトル収容部101には、各色(イエロー,マゼンタ,シアン,ブラック)に対応した4つのトナーボトル102Y,102M,102C,102Kが着脱自在(交換自在)に設置されている。
ボトル収容部101の下方には中間転写ユニット85が配設されている。中間転写ユニット85に設置された中間転写ベルト78に対向するように、各色(イエロー,マゼンタ,シアン,ブラック)に対応した作像部4Y,4M,4C,4Kが並設されている。
各作像部4Y,4M,4C,4Kには、それぞれ感光体ドラム5Y,5M,5C,5Kが配設されている。また、各感光体ドラム5Y,5M,5C,5Kの周囲には、それぞれ、帯電部75,現像部76,クリーニング部77,除電部(図示せず)などが配設されている。そして、各感光体ドラム5Y,5M,5C,5Kは回転し、各感光体ドラム5Y,5M,5C,5K上に対して、下記の作像プロセス(帯電工程,露光工程,現像工程,転写工程,クリーニング工程)が行われて、各感光体ドラム5Y,5M,5C,5K上に各色の画像が形成される。
以下に感光体ドラム5Y,5M,5C,5Kに対する作像プロセスについて説明する。
感光体ドラム5Y,5M,5C,5Kは、図示しない駆動モータによって、図1において時計方向に回転駆動される。そして、帯電部75(図1には感光体ドラム5Kに対応したもののみを示している)において、感光体ドラム5Y,5M,5C,5Kの表面が一様に帯電される(帯電工程)。
帯電された後、感光体ドラム5Y,5M,5C,5Kの表面は、露光部3から発せられるレーザ光により照射・露光され、各色に対応した静電潜像が形成される(露光工程)。潜像が形成された感光体ドラム5Y,5M,5C,5Kは、現像装置76(図1には感光体ドラム5Kに対応したもののみを示している)により静電潜像がトナー現像されて、各色のトナー像が形成される(現像工程)。
感光体ドラム5Y,5M,5C,5K上のトナー像は、中間転写ベルト78および第1転写バイアスローラ79Y,79M,79C,79Kにより、中間転写ベルト78上に転写される(1次転写工程)。このようにして中間転写ベルト78上に重ねてトナー像が転写されることにより、中間転写ベルト78上にカラー画像が形成される。
前記転写の後、感光体ドラム5Y,5M,5C,5Kは、クリーニング部77(図1には感光体ドラム5Kに対応したもののみを示している)に達して、感光体ドラム5Y,5M,5C,5Kの表面に残存した未転写トナーがクリーニング部77のクリーニングブレードによって機械的に回収される(クリーニング工程)。この後、除電部により感光体ドラム5Y,5M,5C,5Kの表面の残留電位が除去される。
こうして、感光体ドラム5Y,5M,5C,5Kに対する一連の作像プロセスが終了する。
次に、中間転写ベルト78上で行われる一連の転写プロセスについて説明する。
中間転写ユニット85は、無端状の中間転写ベルト78と、4つの1次転写バイアスローラ79Y,79M,79C,79Kと、2次転写バックアップローラ82と、クリーニングバックアップローラ83と、テンションローラ84と、中間転写クリーニング部80などにより構成されている。
中間転写ベルト78は、2次転写バックアップローラ82とクリーニングバックアップローラ83とテンションローラ84とに張架・支持され、2次転写バックアップローラ82の回転駆動によって、図1における矢印方向に移動される。
1次転写バイアスローラ79Y,79M,79C,79Kは、それぞれ中間転写ベルト78を感光体ドラム5Y,5M,5C,5Kとで挟み込むようにして1次転写ニップを形成している。1次転写バイアスローラ79Y,79M,79C,79Kには、トナーの極性とは逆の転写バイアスが印加される。
中間転写ベルト78は、矢印方向に走行して、中間転写ベルト78と感光体ドラム5Y、5M、5C、5K間の1次転写ニップを順次通過する。こうして感光体ドラム5Y,5M,5C,5K上の各色のトナー像が、中間転写ベルト78上に重ねて1次転写が行われる。
1次転写後、中間転写ベルト78は2次転写ローラ89との対向位置に達する。この位置で2次転写バックアップローラ82は、2次転写ローラ89とで中間転写ベルト78を挟み込むようにして2次転写ニップを形成している。2次転写ニップにおいて、中間転写ベルト78上に形成されている4色のトナー像が、搬送されてくる記録媒体P上に転写される。転写後、中間転写ベルト78は、中間転写クリーニング部80に達して、中間転写ベルト78上の未転写トナーが回収される。
こうして、中間転写ベルト78上で行われる一連の転写プロセスが終了する。
ここで、2次転写ニップの位置に搬送される記録媒体Pは、画像形成装置本体1の下方に配設された給紙部12から、給紙ローラ97およびレジストローラ98を経由して搬送されるものである。
すなわち、給紙部12には、転写紙などの記録媒体Pが複数枚重ねて収納される。そして、給紙ローラ97が図1において反時計方向に回転駆動されると、最上位の記録媒体Pから順にレジストローラ98に給送される。
レジストローラ98に搬送された記録媒体Pは、回転駆動を停止したレジストローラ98のローラニップの位置で一旦停止する。そして、中間転写ベルト78上のトナー像にタイミングを合わせて、レジストローラ98が回転駆動されることにより、記録媒体Pが前記2次転写ニップに向けて搬送される。このようにして、記録媒体P上にトナー像が転写される。
2次転写ニップでカラー画像が転写された記録媒体Pは定着装置20に搬送される。そして、記録媒体Pは、定着装置20において定着ベルト21と加圧ローラ31による加熱および加圧を受けて、表面に転写されたトナー像が記録媒体P上に定着される。
その後、記録媒体Pは、排紙ローラ99を経て装置本体1外へと排出され、スタック部100上に順次スタックされる。
図2は本発明の定着装置の実施形態1における要部を示す正面断面図である。
図2において、定着装置20内に、定着部材としての無端状のベルト状部材からなる定着ベルト21と、定着ベルト21内に設けられたパイプ状のガイド部材22と、加熱部材であるハロゲンヒータ25と、定着ベルト21に接して表面温度を検知する温度センサであるサーミスタ28と、定着ベルト21と接して定着ニップNを形成する加圧部材としての加圧ローラ31と、定着ベルト21の外周一部に対向設置された断面円弧状の放熱部材40などにより構成されている。
ガイド部材22は、定着ニップNに対向する位置に凹部22aが形成され、凹部22aに、ニップ形成部材26と、定着ベルト21とニップ形成部材26の間に配されたメッシュ状の潤滑シート23と、ガイド部材22の凹部22a底部とニップ形成部材26の間に配された断熱材27とが配設されている。
ニップ形成部材26は、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどの弾性体から構成されており、定着ベルト21の内面に対して摺動シート23を介して間接的に摺動するようになっている。なお、ニップ形成部材26が定着ベルト21の内面に直接摺動する構成であってもよい。
ガイド部材22の凹部22aの形状としては、この形状に限定されず、平坦形状やその他の形状であってもよい。ただし、凹形状にした方が、記録媒体P先端の排出方向が加圧ローラ31寄りになり、定着ベルト21からの分離性が向上するため、ジャムの発生が抑
加圧ローラ31は、中空の金属ローラにシリコーンゴム層が設けられ、外表面に離型性を得るために離型層(PFA樹脂層またはPTFE樹脂層)が設けられている。
また、加圧ローラ31は、画像形成装置に設けられたモータなどの駆動源からギヤ列などを介して駆動力が伝達され回転駆動される。さらに、加圧ローラ31は、スプリングなどにより定着ベルト21側に押し付けられており、加圧ローラ31のゴム層が押し潰されて変形することにより,定着ニップNにおいて所定のニップ幅が形成される。
加圧ローラ31は、中実のローラから形成してもよいが、中空の方が熱容量が少なくて好ましい。また、加圧ローラ31にハロゲンヒータなどの加熱源を設けるようにしてもよい。
加圧ローラ31におけるシリコーンゴム層はソリッドゴムでもよいが、加圧ローラ31内部にヒータなどの加熱源がない場合は、スポンジゴムを用いてもよい。スポンジゴムの方が断熱性が高まり、定着ベルト21の熱が加圧ローラ31に伝導し難くなるため望ましい。
定着ベルト21は、ニッケルやステンレスなどの金属ベルトや、ポリイミドなどの樹脂材料を用いた無端ベルト(もしくはフィルム)とする。定着ベルト21の表層はPFA樹脂層またはPTFE樹脂などの離型層を有し、記録媒体P上のトナーが付着しないように離型性をもたせている。
また、定着ベルト21の基材とPFA樹脂層(またはPTFE樹脂)との間には、シリコーンゴム層などの弾性層を形成するようにしてもよい。シリコーンゴム層がない場合は熱容量が小さくなり、定着性が向上するが、未定着トナー画像を押し潰してしまい、定着の際に定着ベルト21の表面の微妙な凹凸が画像に転写されて、画像のベタ部にユズ肌状の跡が残るという不具合が生じる。これを改善するには、シリコーンゴム層を100μm以上設ける必要がある。シリコーンゴム層の変形により、微妙な凹凸が吸収されユズ肌画像が改善する。
中空のガイド部材22は材質としてアルミ,鉄,ステンレスなどのパイプ状金属を用いる。本実施形態のガイド部材22は、定着ベルト21の直径より1mm程度直径の小さい円形としている。しかし、定着ベルト21の断面形状としては、円形に限定されず、角型であっても、その他の断面形状であってもよい。
ガイド部材22の凹部22aの内部には、ニップ部形成部材26と断熱材27が収納されており、ガイド部材22の内部には、これらを支持するための略T状の保持部材30が設けられている。この場合、ハロゲンヒータ25などからの輻射熱などにより、保持部材30が加熱されてしまう場合、保持部材30の表面に断熱処理あるいは鏡面処理を施して、過熱されることを防止する。これにより無駄なエネルギー消費を抑制することができる。
また、ガイド部材22を昇温させる熱源としては、図示したハロゲンヒータ25でもよいが、後述するようなIH(誘導加熱)方式にしてもよい。さらに、抵抗発熱体やカーボンヒータなども使用することができる。
定着ベルト21の加熱方法としては、図2に示すように、ガイド部材22を介して定着ベルト21を加熱する以外に、定着ベルト21を直接的に加熱するようにしてもよい。
加圧ローラ31は、本例では直径が30mmであって、中空構造の芯金32上に弾性層33を形成したものである。加圧ローラ31の弾性層33は、発泡性シリコーンゴム,シリコーンゴム,フッ素ゴムなどの材料で形成されている。なお、弾性層33の表層にPFA,PTFEなどの樹脂材からなる薄肉の離型層を設けることもできる。
定着ベルト21は加圧ローラ31により連れ回り回転する。図2に示す構成の場合は、加圧ローラ31が図示しない駆動源により回転し、定着ニップNで定着ベルト21に駆動力が伝達されることによって定着ベルト21が回転する。
定着ベルト21は、定着ニップNにおいてニップ部形成部材26と加圧ローラ31とで挟み込まれて回転するが、定着ニップN以外ではガイド部材22に移送ガイドされて、一定の距離以上に定着ベルト21の位置がガイド部材22から離れてしまわないようになっている。
定着ベルト21とガイド部材22との界面には、シリコーンオイルやフッ素グリスなどの潤滑剤を介在させている。そして、ガイド部材22の表面の表面粗さを潤滑剤の粒径以上として、潤滑剤を保持しやすくしている。
本実施形態において、図3の側面図に示すように、前記各部材は定着装置20の側板43に設けられている。側板43は、構成部材を支持する剛性が高い材質で、かつ位置決めの基準となっているものである。
加圧ローラ31には図示しない駆動機構の駆動ギアに噛合するギア45が設置されており、加圧ローラ31は、駆動機構により図2における矢印方向(時計方向)に回転駆動される。
また、加圧ローラ31は、その幅方向両端部が定着装置20の側板43に軸受42を介して回転自在に支持されている。なお、加圧ローラ31の内部にハロゲンヒータなどの熱源を設けることもできる。
加圧ローラ31の弾性層33を発泡性シリコーンゴムなどのスポンジ状の材料で形成した場合には、定着ニップNに作用する加圧力を減少させることができるために、保持部材22に生じる撓みをさらに軽減することができ、さらに、加圧ローラ31の断熱性が高められて、定着ベルト21の熱が加圧ローラ31側に移動しにくくなるために、定着ベルト21の加熱効率が向上する。
また、本実施形態では、定着ベルト21の直径が加圧ローラ31の直径と略同等になるように形成したが、定着ベルト21の直径が加圧ローラ31の直径よりも小さくなるように形成することもできる。その場合、定着ニップNにおける定着ベルト21の曲率が加圧ローラ31の曲率よりも小さくなるために、定着ニップNから送出される記録媒体Pが定着ベルト21から分離され易くなる。
図4,図5は実施形態1の定着装置の構成と動作を説明するための斜視図である。
放熱部材40は良熱伝導体にて構成することが望ましい。本例ではアルミの押出し材を用いた。放熱部材40は、複数を設置してもよいが、本例では定着ベルト21と軸方向に略同じ長さを有する1つの部材としている。放熱部材40の設置位置は、ガイド部材22がハロゲンヒータ25に加熱される部分であって、かつガイド部材22と定着ベルト21とのクリアランスの大きく定着ニップNから離れた位置としている。
図4は、ハロゲンヒータ25を作動させて定着処理を行っている状態(画像形成装置の画像形成動作中)を示している。放熱部材40は定着ベルト21に対し、あらかじめ設定されている所定の位置まで遠ざけて退避させ、加熱された定着ベルト21の熱が放熱部材40に伝わって逃げないようにしている。また、図5は、定着処理終了後、ジャム処理などのためにユーザにおいて所定の動作が必要とされたときに、定着ベルト21やガイド部材22を冷却している状態を示している。
より詳細には図6,図7に示す断面図に示すようになる。図6に示すように、定着ベルト21が回転していない間は、ガイド部材22と定着ベルト21との内面が僅かに離れている。これは、定着ベルト21が回転できるように、ガイド部材22と定着ベルト21との間に僅かに直径に差を設けているためである。
定着処理動作を行っているときは、前記のように定着ベルト21は加圧ローラ31によって連れ回る。このときは、図2に示す回転方向になり、定着ニップNの上流側(ハロゲンヒータ25で加熱される側)は定着ベルト21が引っ張り勝手になる。これにより、定着ベルト21の内面とガイド部材22が摺接するようになって、ガイド部材22を介して熱を定着ベルト21の全体に伝えることができる。
このとき、ガイド部材22の内部に設けられたハロゲンヒータ25によって、ガイド部材22は加熱されるため、定着ベルト21よりもガイド部材22の方が温度が高い。このように加熱された後に、定着ベルト21の回転が止まると、図6に示すように、定着ベルト21はガイド部材22に対してクリアランスを有して静止するようになる。
この状態では定着ベルト21よりもパイプ状金属体の方が高温であるため、定着ベルト21の外周は外気に触れて冷却されるといっても、ガイド部材22は外気に対して遮断された状態にあるので冷却されにくい。そのため、定着ベルト21とガイド部材22との温度差は時間と共に大きくなる。すなわち、定着ベルト21の温度が、図2に示すサーミスタ28の検知温度で下がっていたとしても、ガイド部材22はあまり温度が下がらない。
したがって、ユーザがサーミスタ28の検知温度が下がったことを確認して、ジャム処理や部品交換をするような使われ方をした場合、定着ベルト21に触れると僅かな押し圧で定着ベルト21とガイド部材22とが接触し、接触した瞬間に高温のガイド部材22の熱が定着ベルト21を介してユーザの手に伝わってしまい問題となる。
また、図6に示すような状態で、定着ベルト21の外周からファンなどで風を当てても同じことであって、定着ベルト21とガイド部材22との間のクリアランスが断熱機能を果たして熱伝導を妨げ、内部のガイド部材22の温度を下げることは難しい。
そこで、実施形態1では、図7に示すように、放熱部材40を定着ベルト21の外周から押圧し、ガイド部材22の外周面と定着ベルト21の内周面とが接触するように押し当てた状態にして、ガイド部材22の熱も定着ベルト21を介して放熱されるようにして、定着ベルト21を確実に冷却するようにしている。
放熱部材40は、ソレノイド装置などの図示していないアクチュエータにより定着ベルト21に対して接離可能の構成になっており、定着処理時などの通常稼動時は、図4,図6に示すように、定着ベルト21に対して離間させるように動作させて、定着可能状態にしておく。
そして、画像形成装置の停止時、定着ベルト21の冷却が必要とされる場合に、画像形成の所定のシーケンスにより、図5,図7に示すように、放熱部材40を定着ベルト21に当接させるように動作させる。
例えば、冷却前に放熱部材40は20℃〜30℃であるのに対し、加熱された定着ベルト21は150〜160℃であるので、放熱部材40が定着ベルト21に接触することにより定着ベルト21は冷却される。放熱部材40を熱伝導性が良好な部材で形成することにより、速やかに冷却することが可能である。
なお、放熱部材40における定着ベルト21に対する押圧力は、スプリングなどの弾性部材を介して押圧する方が、片辺りが発生せずに望ましい。また、放熱部材に、冷却ファンなどの冷却部材を配設して、冷却するようにしてもよい。
図8,図9は本発明の定着装置の実施形態2における要部の構成と動作を説明するための正面断面図である。なお、以下の説明において実施形態1にて説明した部材に対応する部材には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
実施形態2は、基本的には実施形態1の構成と同様であって、異なる点は定着ベルト21の外周とガイド部材22の内周とに、実施形態1の放熱部材40と同一機能を果たす外部放熱部材40aと、ガイド部材22の内部で移動可能に設けられた内部放熱部材40bを配設した構成である。
図8に示すように、パイプ状金属体からなるガイド部材22の内部に配置された内部放熱部材40bは、定着処理の動作時(加熱時)には、ハロゲンヒータ25に直接加熱されないように、保持部材30が内部放熱部材40bとハロゲンヒータ25との間に存在する位置に待避・移動している。
このように構成することにより、定着処理時に内部放熱部材40bが加熱されることが防止される。内部放熱部材40bが高温になってしまうと、ガイド部材22の内面と内部放熱部材40bとが接触した際に、内部放熱部材40bによる冷却/放熱が良好に行われなくなってしまう。
このため、内部放熱部材40bを温めないようにすることで、図9に示す内部放熱部材40bの接触による冷却効果を良好に発揮することが可能となる。
図9に示すように、定着処理あるいは画像形成動作が終了して、加熱されている部材を冷却するモードになった際、内部放熱部材40bは、図示しないアクチュエータ(ステッピングモータなど)で回転駆動されて、ハロゲンヒーター25にて加熱されていたガイド部材22の内面部分にまで移動し、この部分においてガイド部材22と接触する。一方、外部放熱部材40aは移動して定着ベルト21の外周面と接触する。
このように構成することにより、パイプ状金属体からなるガイド部材22が、薄肉で弾性変形してしまうような場合であっても、両放熱部材40a,40bとが定着ベルト21とガイド部材22とに当接して接触することになるため、ガイド部材22および定着ベルト21をムラなく確実に冷却することが可能となる。
なお、本実施形態において、図2に示すように、定着ベルト21の内周面に接触あるいは対向し、定着ベルト21を保持すると共に加熱するガイド部材22を、薄肉の金属板を曲げ加工してパイプ状に形成している。これにより、製造コストが比較的安価であって、定着ベルト21の加熱効率が高くなり、ウォームアップ時間やファーストプリント時間が短く、装置を高速化した場合であっても定着不良などが生じることを抑止することができる。
前記ガイド部材22において、図2に示す実施形態の構成のように、曲げ加工後の側端部分22bを開放したままであると、図10の説明図のように、スプリングバックが生じて側端部分22bが開き傾向になり、定着ベルト21との間に接触ムラや接触圧のムラを生じさせてしまう。
そこで、ガイド部材22の側端部分22bについては、ガイド部材22の幅方向(軸方向)の少なくとも一部を接合状態にしてスプリングバックにより側端部分22aが開くことがないようにする必要がある。例えば、側端部分22bに溶接を施して接合することが考えられる。
また、図2に示すガイド部材22では、ニップ形成部材26などを収納する凹部22aが形成されるが、凹部22aにおけるガイド部材22の角部22cおよびその近傍が、定着ベルト21を介して加圧ローラ31に接触すると、ガイド部材22に変形が生じ(特に加圧ローラ31との圧接状態にて生じやすい)、定着ベルト21とガイド部材22との間に接触ムラを生じさせてしまう。
そこで、本例では、ガイド部材22を、その角部22cを含めて定着ベルト21を介して加圧ローラ31には接触しない構成にしている。具体的には、加圧ローラ31に対して、ニップ部N近傍より離れてガイド部材22の角部22cが位置するように設定されている。
以上のように、本実施形態1,2によれば、冷却時に放熱部材40,40a,40bの押圧により定着ベルト21とガイド部材22とを接触させ、放熱部材40,40a,40bにより放熱を行うことによって、定着装置における高温となる部材の冷却が確実かつ効率的に行われることになる。このため、定着ニップNにおいて次動作の温度ムラなどがなくなり、良好な定着が行われ、しかも、ジャム処理,部品交換などのためにユーザが定着部接近あるいは接触するときにおける熱によるトラブル回避がなされるなど、安全性を確保することができる。
なお、本実施形態では、加圧部材として加圧ローラ31を用いた定着装置に対して本発明を適用したが、加圧部材として加圧ベルトや加圧パッドを用いた定着装置に対しても本発明を適用することができる。そして、その場合にも、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、本実施形態では、定着部材として複層構造の定着ベルト21を用いたが、定着部材としてポリイミド樹脂,ポリアミド樹脂,フッ素樹脂、あるいは薄板状金属などからなる無端状の定着フィルムを用いることもできる。そして、その場合にも、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、本実施形態に係る定着装置を搭載した画像形成装置によれば、良好で安定した定着処理による高品位な画像形成が実現すると共に、定着部に対する作業における熱によるトラブルを回避することができ、安全性が向上する。