JP5641086B2 - 量産打抜き性に優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば車体のメンバーやフレームなどの構造部材やサスペンションなどの足回り部材、さらにはトラックフレーム部品等の自動車部材用として好適な、高強度熱延鋼板に係り、とくに量産時の打抜き性(以下、量産打抜き性ともいう)の向上に関する。
近年、地球環境の保全という観点から、自動車の燃費向上が強く要望され、自動車車体の軽量化を図るために、自動車部材用として高強度鋼板の利用が積極的に行われている。この高強度鋼板の利用は、自動車の骨格部材だけでなく、足回り部材やトラックフレーム部品等に対しても行われている。一般に、鋼板の高強度化に伴い、鋼板の加工性は低下する。特に、自動車部品等は、厳しい加工により成形されるため、自動車部材用素材である鋼板には、高強度と優れた加工性とを両立させることが強く要望されている。
このような要望に対して、例えば、特許文献1には、質量%で、C:0.05〜0.15%、Si:1.50%以下、Mn:0.5〜2.5%、P:0.035%以下、S:0.01%以下、さらにAl:0.020〜0.15%、Ti:0.05〜0.2%を含む組成と、60〜95体積%のベイナイトと、さらに固溶強化あるいは析出強化されたフェライトまたはフェライトとマルテンサイトを含む組織とを有し、シャルピー衝撃試験の破面遷移温度が0℃以下となる穴拡げ加工性に優れた高強度熱延鋼板が記載されている。特許文献1に記載された技術では、熱間圧延後、400〜550℃の温度域まで平均冷却速度30℃/s以上で冷却しコイルに巻き取った後、300℃以下まで50〜400℃/hの冷却速度で冷却することにより、粒界へのPの拡散を防止でき、破面遷移温度が0℃以下となり靭性が向上し、穴拡げ加工性が向上するとしている。
一方、自動車部材の中で、とりわけ、トラックフレーム部品や足回り部品は、部品接続や軽量化のため、さらにはその後のバーリング加工や穴拡げ加工のために、多数の穴あけが必要となる。通常、この種の穴あけは、生産性の観点から打抜きで実施されるため、打抜き性の改善が強く要望されることが多い。
しかし、特許文献1に記載された技術では、Pの粒界偏析を防止して、穴拡げ加工性を向上させるとしているだけであり、特許文献1には、打抜き加工性についての言及はなく、また、Pの粒界への偏析防止が、直ちに打抜き端面の性状を改善し、打抜き加工性の向上に寄与するとは必ずしも言えない。
また、打抜き加工性の向上については、例えば、特許文献2に、質量%で、C:0.01〜0.07%、N:0.005%以下、S:0.005%以下、Ti:0.03〜0.2%、B:0.0002〜0.002%を含む組成と、フェライト又はベイニティックフェライトを主相とし、硬質第二相及びセメンタイトが面積率で3%以下である組織とを有し、打抜き加工性に優れた高強度熱延鋼板が提案されている。特許文献2に記載された技術では、Bを固溶状態に保持することにより、打抜き端面の欠陥が防止できるとしている。なお、特許文献2に記載された技術では、フェライト又はベイニティックフェライトを最大面積の相とし、穴拡げ性に悪影響を及ぼす硬質第二相を3%以下と制限している。
また、特許文献3には、質量%で、C:0.05〜0.15%、Si:0.1〜1.5%、Mn:1〜2%、P:0.03%以下、S:0.003%以下、Al:0.01〜0.08%, Ti:0.05〜0.15%、N:0.005%以下を含む組成を有し、ベイナイト相が面積率で95%超で、1/4tにおけるベイナイト組織の平均粒径が圧延方向に平行な板厚断面で5μm以下、圧延方向に直角方向の板厚断面で4μm以下で、板厚中央位置を中心に板厚の1/10である領域におけるアスペクト比が5以上の圧延方向に伸展した結晶粒が7個以下である組織を有し、引張強さ780MPa以上を有する打抜き性に優れた高強度熱延鋼板が提案されている。特許文献3に記載された技術では、ベイナイトの平均粒径を小さくし、かつ板厚中央部領域の伸展粒の数を低減することで、打抜き性が向上するとしている。
特許第3889766号公報 特開2004−315857号公報 特開2012-62562号公報
鋼板の打抜き性そのものを評価するための規定はとくになく、従来から、鋼板の打抜き性は、日本鉄鋼連盟規格(JFS T1001)に規定された穴拡げ試験方法で行っている、穴拡げ試験前の穴あけと同様の手法、条件で評価してきた。すなわち、実験室で、例えば鋼板から、100mm×100mm程度のブランク板を採取し、該ブランク板に対しクリアランス12%±1%(板厚2mm以上)の条件を厳守し、損耗のない円筒ポンチ(10mmφ)を用いて、ブランク板を均等に十分に押さえた状態で、10mmφの穴を打抜き、打抜かれた穴端面の破面状況を観察して、当該鋼板の打抜き性を評価することが多い。
しかしながら、このような方法で優れた打抜き性を有すると評価された鋼板でも、特に高強度鋼板では部品量産時の打抜き加工による穴あけ不良が発生することも多く、問題となっていた。
また、特許文献2、3に記載された技術では、JFS T1001に規定された打抜き時のクリアランスとは異なる、板厚の17〜23%、あるいは板厚の10〜20%のクリアランスで、10mmφの穴を打抜き、鋼板の打抜き性を評価している。しかし、特許文献2、3に記載された技術で打抜き性に優れた鋼板として製造された高強度鋼板でも、量産時の打抜き加工による穴あけ不良が発生することも多く、量産時の打抜き性に優れる鋼板であるとは言い難いという問題があった。
そこで、本発明は、かかる従来技術の問題を解決し、高強度を有し、かつ格段に部品の量産製造時の打抜き性に優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。なお、ここでいう「高強度」とは、引張強さTS:900MPa以上である場合をいうものとする。
本発明者らは、上記した目的を達成するために、高強度熱延鋼板の量産打抜き性に及ぼす各種要因について、検討した。
その結果、従来の規格に準拠した方法で評価した打抜き性と、実際の部品量産製造時の打抜き性には大きな乖離があることを初めて知見した。実際に部品を量産製造する際にも、金型交換のタイミングで打抜きクリアランスを調整している。しかし、打抜きクリアランスを適正条件範囲内に完全に調整管理することは非常に難しく、打抜き穴の円周方向位置によりクリアランス変動が生じることが普通となっている。さらに、量産製造中には、ポンチの欠け、損耗などが起こり、それを完全に保守管理することはほぼ不可能に近く、打抜き条件の変動に繋がる。さらに、実際の部品量産製造時には、上記した打抜き時のクリアランスの変動に加えて、部品形状や製造プロセスによっては、量産製造工程の途中で、打抜き加工による穴あけを必要とする場合がある。このような場合には、打抜き方向が、垂直方向でなく斜め方向となったり、穴のセンターリングが難しくなることに加え、板押さえ条件が不良になりやすい場合があることに思い至った。すなわち、量産製造時の打抜き加工では、実験室での打抜き加工と異なり、極めて厳しい条件下での打抜きとなるのに加え、上述した様々なプロセス変動を受けることになり、したがって、上記したような規格に準拠した実験室で行う打抜き性評価で、優れた打抜き性を有すると評価された鋼板でも、部品量産製造時の打抜き加工による穴あけが不良である場合が多々発生することになることを知見した。
このような量産製造時の打抜き加工状況に鑑み、量産打抜き性の評価方法について、本発明者らは、更なる検討を行った。その結果、量産製造時の打抜き加工においては、上記した打抜き時のクリアランスの変動に加えて、さらに、打抜き穴径や板押さえ条件が、打抜き端面性状に著しい影響を及ぼすことを初めて見出した。そして更なる検討の結果、打抜きポンチを50mmφの平底型として、打抜きクリアランスが30%となるように、ダイ側の穴径を決定し、さらに打抜きダイの上にスペーサーを置き、その上にブランク板を置いて上から板押さえで固定して打抜く方法が、量産打抜き性を評価できる最もよい方法であることを見出した。
本発明者らは、上記した評価方法を用いて、量産打抜き性に及ぼす鋼板組織の影響について鋭意検討した。その結果、ベイナイト相の大きさ(サイズ)を微細化するベイナイト相のサイズ制御のみでは、所望の量産打抜き性を達成するには十分でなく、別種の更なる組織制御を行う(組織制御の精緻化、進化)必要があることを知見し、さらなる検討により、量産打抜き性を支配している組織単位は、マクロなベイナイト組織のみならず、その下部組織であるベイナイトラスの間隔であることを突きとめた。
そこで、本発明者らは更なる検討を行い、スラブ加熱温度の調整に加えてさらに、仕上圧延の圧下率と仕上圧延終了温度、および仕上圧延終了後の冷却タイミングと冷却速度制御等を適正範囲に調整して、鋼板組織をベイナイト相を主体としたうえで、下部構造であるベイナイトラス間隔を小さくし、かつ鉄系炭化物の析出を粒内析出状態となるように調整することが、高強度熱延鋼板の量産打抜き性の顕著な向上に有効であることを知見した。
本発明は、かかる知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨はつぎの通りである。
(1)質量%で、C:0.07%超0.2%以下、Si:2.0%以下、Mn:1.0〜3.0%、P:0.05%以下、S:0.005%以下、Al:0.1%以下、N:0.01%以下、Ti:0.05〜0.3%、V:0.05〜0.3%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、ベイナイト相が体積率で90%超で、かつベイナイトラスの平均間隔が0.45μm以下であり、かつ全Fe系炭化物のうち粒内に析出したFe系炭化物の個数比率が10%以上である組織を有することを特徴とする、量産打抜き性に優れた高強度熱延鋼板。
(2)(1)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Nb:0.005〜0.2%、B:0.0002〜0.0030%のうちから選ばれた1種または2種を含有することを特徴とする高強度熱延鋼板。
(3)(1)または(2)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.005〜0.3%、Ni:0.005〜0.3%、Sn:0.005〜0.3%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする高強度熱延鋼板。
(4)(1)ないし(3)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Mo:0.002〜0.3%、Cr:0.002〜0.3%のうちから選ばれた1種または2種を含有することを特徴とする高強度熱延鋼板。
(5)(1)ないし(4)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.0002〜0.004%、REM:0.0002〜0.004%のうちから選ばれた1種または2種を含有することを特徴とする高強度熱延鋼板。
(6)(1)ないし(5)のいずれかに記載の高強度熱延鋼板の表面に溶融亜鉛めっき層または合金化溶融亜鉛めっき層を形成してなる溶融亜鉛めっき鋼板。
(7)鋼スラブを、加熱し粗圧延と仕上圧延とからなる熱間圧延を施して熱延鋼板とするに当たり、前記鋼スラブを、質量%で、C:0.07%超0.2%以下、Si:2.0%以下、Mn:1.0〜3.0%、P:0.05%以下、S:0.005%以下、Al:0.1%以下、N:0.01%以下、Ti:0.05〜0.3%、V:0.05〜0.3%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼スラブとし、前記熱間圧延を、前記鋼スラブを1100℃以上に加熱し、前記仕上圧延の最終2パスの合計圧下率を30%以上、該仕上圧延の圧延終了温度を(Ar3変態点)〜(Ar3変態点+120℃)の温度範囲とし、前記仕上圧延終了後、2s以内に冷却を開始し、平均冷却速度40℃/s以上で巻取り温度まで冷却した後、巻取り温度:300〜500℃で巻き取る圧延とし、ベイナイト相が体積率で90%超で、かつベイナイトラスの平均間隔が0.45μm以下であり、かつ全Fe系炭化物のうち粒内に析出したFe系炭化物の個数比率が10%以上である組織を有する鋼板とすることを特徴とする量産打抜き性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
(8)(7)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Nb:0.005〜0.2%、B:0.0002〜0.0030%のうちから選ばれた1種または2種を含有することを特徴とする高強度熱延鋼板の製造方法。
(9)(7)または(8)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.005〜0.3%、Ni:0.005〜0.3%、Sn:0.005〜0.3%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする高強度熱延鋼板の製造方法。
(10)(7)ないし(9)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Mo:0.002〜0.3%、Cr:0.002〜0.3%のうちから選ばれた1種または2種を含有することを特徴とする高強度熱延鋼板の製造方法。
(11)(8)ないし(10)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.0002〜0.004%、REM:0.0002〜0.004%のうちから選ばれた1種または2種を含有することを特徴とする高強度熱延鋼板の製造方法。
(12)(7)ないし(11)のいずれかに記載の高強度熱延鋼板の製造方法により製造された高強度熱延鋼板を酸洗したのち、焼鈍とめっき処理を施してめっき鋼板とするに当たり、前記焼鈍を均熱温度:730℃以下とする焼鈍とし、該焼鈍終了後に、前記めっき処理として溶融亜鉛めっき浴を通過させて、前記高強度熱延鋼板の表面に溶融亜鉛めっき層を形成し、あるいはさらに該溶融亜鉛めっき層を合金化する合金化処理を施すことを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
本発明によれば、自動車部品等の素材として、部品の量産製造時の厳しい打抜き加工にも耐えうる、優れた量産打抜き性を有する高強度熱延鋼板を容易に製造でき、産業上格段の効果を奏する。また、本発明になる高強度熱延鋼板は、トラックフレーム部品や自動車における車体のメンバーやフレームなどの構造部材やサスペンションなどの足まわり部材用として好適であり、部材等の軽量化に有効に寄与するという効果もある。
まず、本発明高強度熱延鋼板の組成限定理由について説明する。なお、「%」はとくに断わらないかぎり「質量%」を意味する。
C:0.07%超0.2%以下
Cは、鋼板の高強度化に有効に寄与する元素であり、また、ベイナイト変態を促進し、ベイナイト相形成に寄与する有用な元素である。また、適正量のC含有は、粒内の炭化物を増加させ、量産打抜き性を向上させる作用を有する。このような効果を発現させるためには0.07%超の含有を必要とする。一方、0.2%を超える過剰な含有は、加工性、溶接性を損なう。このようなことから、Cは0.07%超0.2%以下の範囲に限定した。なお、好ましくは0.1%超0.18%以下である。
Si:2.0%以下
Siは、固溶強化により鋼板強度を増加させるとともに、鋼板の延性向上にも寄与する元素である。このような効果を発現させるためには、0.05%以上含有することが望ましい。一方、過剰なSi含有は変態点を上昇させ、ベイナイト相形成を阻害する。また、2.0%を超えてSiを含有すると、鋼スラブの加熱段階で、表層の結晶粒界へのSi系複合酸化物の侵入が顕著となり、熱間圧延時にデスケーリングを多用しても除去することが困難となり、鋼板の量産打抜き加工時に打抜き端面性状を低下させ、量産打抜き性が低下する。このため、Siは2.0%以下に限定した。なお、好ましくは1.5%以下である。さらに好ましくは1.0%以下である。
Mn:1.0〜3.0%
Mnは、固溶強化および変態強化により、鋼板の高強度化に寄与する有効な元素である。さらに、Mnは、変態点を低下させて、ベイナイトラスを微細化する作用を有する。このような効果を得るためには1.0%以上の含有を必要とする。一方、3.0%を超えて過剰に含有すると、中心偏析が顕著になり、加工性が著しく低下する。このため、Mnは1.0〜3.0%の範囲に限定した。なお、好ましくは1.4〜2.6%である。
P:0.05%以下
Pは、固溶して鋼板の強度を増加させる作用を有する元素であるが、多量に含有すると粒界等に偏析しやすく、加工性等の低下を招く悪影響が懸念され、できるだけ低減することが望ましいが、0.05%までの含有は許容できる。なお、好ましくは、0.03%以下である。
S:0.005%以下
Sは、硫化物を形成し、とくに粗大な硫化物を形成すると、鋼板の延性、加工性が低下するため、できるだけ低減することが望ましいが、0.005%までは許容できる。このため、Sは0.005%以下に限定した。なお、好ましくは0.003%以下、より好ましくは0.0015%以下である。
Al:0.1%以下
Alは、鋼の脱酸剤として作用する重要な元素である。このような効果を発現させるためには、0.01%以上含有することが望ましい。一方、0.1%を超えて含有すると、鋳造性が低下したり、鋼中に多量の介在物(酸化物)が残存して、表面性状や加工性の低下を招く。このため、Alは0.1%以下に限定した。なお、好ましくは0.06%以下である。
N:0.01%以下
Nは、窒化物形成元素と結合し窒化物として析出して、結晶粒の微細化に寄与する。しかし、0.01%を超えてN含有量が多くなると、多量の窒化物を生成し、熱間延性の低下や、バーリング加工性の著しい低下の原因となるため、Nはできるだけ低減することが望ましいが0.01%までは許容できる。このため、Nは0.01%以下に限定した。なお、好ましくは0.006%以下、より好ましくは0.004%以下である。
Ti:0.05〜0.3%
Tiは、炭窒化物を形成しやすく、変態前のオーステナイト(γ)粒を微細化することにより、変態後のベイナイトラス間隔の微細化に寄与する、本発明で最も重要な元素の一つである。さらに、Tiは、微細な粒内炭化物(炭窒化物)を増加させ、析出強化を介して強度増加に寄与するとともに、打抜き加工に際しボイド生成サイトを増加させて、量産打抜き性向上に寄与する。このような効果を得るためには、0.05%以上の含有を必要とする。一方、0.3%を超えて過剰に含有すると、圧延荷重が非常に大きくなり圧延操業を難しくしたり、また析出物サイズを粗大にしすぎて加工性を低下させる。このため、Tiは0.05〜0.3%の範囲に限定した。なお。好ましくは0.07〜0.25%、より好ましくは0.07〜0.23%である。
V:0.05〜0.3%
Vは、強度−伸びバランス、強度−穴拡げ性バランスを向上させる作用を有し、本発明で最も重要な元素の一つである。また、Vは、ベイナイトラス間隔を小さくする作用も有し、これにより、打抜き時のマイクロボイド発生間隔が小さくなり、ボイド間の連結が起こりやすく、量産打抜き性を向上させる。また、Vは、粗大なFe系炭化物の析出を抑制する作用も有し、これにより、打抜き時の端面性状を向上させる。このような効果を得るためには、0.05%以上の含有を必要とする。一方、0.3%を超えて過剰に含有しても、効果が飽和し、製造コストの高騰を招き、経済的に不利となる。このため、Vは0.05〜0.3%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.07〜0.28%、より好ましくは0.07〜0.26%である。
上記した成分が基本の成分であるが、本発明では、この基本の組成に加えてさらに、選択元素として、Nb:0.005〜0.2%、B:0.0002〜0.0030%のうちから選ばれた1種または2種、および/または、Cu:0.005〜0.3%、Ni:0.005〜0.3%、Sn:0.005〜0.3%のうちから選ばれた1種または2種以上、および/または、Mo:0.002〜0.3%、Cr:0.002〜0.3%のうちから選ばれた1種または2種、および/または、Ca:0.0002〜0.004%、REM:0.0002〜0.004%のうちから選ばれた1種または2種、を必要に応じて選択して含有できる。
Nb:0.005〜0.2%、B:0.0002〜0.0030%のうちから選ばれた1種または2種
Nb、Bはいずれも、量産打抜き性の向上に寄与する元素であり、必要に応じて選択して1種または2種を含有できる。
Nbは、析出物(炭窒化物)の形成を介して、組織の微細化、さらに炭化物の微細分散化により、打抜き時のマイクロボイド発生間隔を小さくし量産打抜き性の向上に寄与する。このような効果を得るためには、0.005%以上含有することが好ましい。一方、0.2%を超えて過剰に含有すると、析出物の粗大化を招き加工性を低下させるとともに、製造コストの高騰を招く。このため、含有する場合には、Nbは0.005〜0.2%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.005〜0.15%である。
Bは、ベイナイトラス間隔の微細化を介して、量産打抜き性の向上に寄与する。このような効果を得るためには、0.0002%以上含有することが好ましい。一方、0.0030%を超えて過剰に含有すると、加工性の低下を招く。このため、含有する場合には、Bは0.0002〜0.0030%の範囲に限定することが好ましい。より好ましくは0.0003〜0.0020%である。
Cu:0.005〜0.3%、Ni:0.005〜0.3%、Sn:0.005〜0.3%のうちから選ばれた1種または2種以上
Cu、Ni、Snはいずれも、固溶強化を介して、強度増加に寄与する元素であり、必要に応じて選択して1種または2種以上を含有できる。このような効果を得るためには、Cu:0.005%以上、Ni:0.005%以上、Sn:0.005%以上、含有することが望ましい。一方、Cu:0.3%、Ni:0.3%、Sn:0.3%をそれぞれ超えて含有すると、熱間加工性が低下し、熱間圧延中に表層割れを起こす恐れがある。このため、含有する場合には、Cu:0.005〜0.3%、Ni:0.005〜0.3%、Sn:0.005〜0.3%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくはCu:0.005〜0.2%、Ni:0.005〜0.2%、Sn:0.005〜0.2%である。
Mo:0.002〜0.3%、Cr:0.002〜0.3%のうちから選ばれた1種または2種
Mo、Crはいずれも、炭化物(析出物)を形成しやすく、析出物形成を介して量産打抜き性の向上に寄与する元素であり、また、Mo、Crはいずれも、焼入れ性向上に寄与する元素であり、ベイナイト変態点の低下を介してベイナイトラスの微細化に寄与する元素でもあり、必要に応じて選択して1種または2種を含有できる。このような効果を得るためには、Mo:0.002%以上、Cr:0.002%以上、含有することが望ましい。一方、Mo:0.3%、Cr:0.3%を超える過剰の含有は、製造コストの高騰を招き、経済的に不利となる。このため、含有する場合には、Mo:0.002〜0.3%、Cr:0.002〜0.3%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくはMo:0.002〜0.2%、Cr:0.002〜0.2%である。
Ca:0.0002〜0.004%、REM:0.0002〜0.004%のうちから選ばれた1種または2種
Ca、REMは、いずれも、介在物の形態制御を介して加工性向上に有効に寄与する元素であり、必要に応じて選択して1種または2種を含有できる。このような効果を得るためには、Ca:0.0002%以上、REM:0.0002%以上含有することが望ましい。一方、Ca:0.004%、REM:0.004%を超えて含有すると、鋼中介在物の増加を招き、加工性が低下する。このため、含有する場合には、Ca:0.0002〜0.004%、REM:0.0002〜0.004%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくはCa:0.0002〜0.003%、REM:0.0002〜0.003%である。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物からなる。
つぎに、本発明高強度熱延鋼板の組織限定理由について説明する。
本発明高強度熱延鋼板は、ベイナイト相が体積率で90%超で、かつベイナイトラスの平均間隔が0.45μm以下であり、かつ全Fe系炭化物のうち粒内に析出したFe系炭化物の比率が10%以上である組織を有する。
所望の量産打抜き性の確保のためには、まず鋼板組織を、上記したように体積率で90%超の、ほぼベイナイト単相の組織にすることが肝要である。なお、好ましくは92%超、より好ましくは94%超である。ベイナイト相は、フェライトとFe系炭化物の混合組織であり、ほぼベイナイト単相の組織とすることにより、打抜き時に、フェライトとFe系炭化物の界面がミクロボイド生成の起点となり、適正なミクロボイド生成と、その後のボイド連結の両面において有利になる。
そして、本発明では、ベイナイト相を、その下部構造であるベイナイトラス間隔が0.45μm以下であるベイナイト相とする。これは、所望の量産打抜き性を確保するためには、ベイナイト相の大きさ(サイズ)を微細にし、その下部組織(ベイナイトラス間隔)を微細にすることが重要となることを見出したことに基づく。ベイナイトラス間隔が0.45μmを超えて大きくなると、所望の量産打抜き性を確保できなくなる。このため、ベイナイトラス間隔を0.45μm以下に限定した。なお、好ましくは0.40μm以下、さらに好ましくは0.35μm以下である。なお、ベイナイト相以外の第二相(残部)は、マルテンサイト、残留オーステナイト、フェライト、パーライトのうちの1種以上である。
さらに本発明では、所望の量産打抜き性を確保するために、ベイナイト相を相中に炭化物が生成したベイナイト相とし、さらに析出した全Fe系炭化物のうち、フェライト粒内に析出したFe系炭化物が個数比率で、10%以上である組織とする。粒内に析出したFe系炭化物の個数が析出した全Fe系炭化物の個数の10%未満では、所望の量産打抜き性を確保できない。このため、粒内に析出したFe系炭化物の個数は、全Fe系炭化物個数のうちの10%以上に限定した。なお、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上である。
つぎに、本発明高強度熱延鋼板の好ましい製造方法について説明する。
本発明では、上記した組成を有する鋼スラブを、加熱し粗圧延と仕上圧延とからなる熱間圧延を施し、熱延鋼板とする。
鋼スラブの製造方法は、とくに限定する必要はなく、上記した組成を有する溶鋼を、転炉や電気炉や誘導炉等の常用の溶製方法で溶製し、あるいはさらに真空脱ガス装置等で二次精錬を行い、連続鋳造等の常用の鋳造方法で所定寸法の鋼スラブとする。なお、造塊−分塊圧延法を用いてもなんら問題はない。また、鋼スラブは厚さ30mm程度の薄スラブとしてもよい。薄スラブであれば、粗圧延を省略することができる。
鋼スラブは、加熱温度:1100℃以上に加熱され、熱間圧延を施される。
鋼スラブの加熱温度:1100℃以上
本発明では、スラブ段階で析出している析出物を再固溶される必要がある。そのために、鋼スラブを1100℃以上の加熱温度に加熱する。加熱温度が1100℃未満では、析出物の再固溶が十分でなく、その後の工程で所望の析出物分布を確保できなくなる。なお、好ましくは1150℃以上である。また、加熱温度が過剰に高くなると、結晶粒が粗大化し、最終的にベイナイトラスが粗大化する。このため、鋼スラブの加熱温度は1300℃以下に限定することが望ましい。
加熱された鋼スラブは、粗圧延と仕上圧延からなる熱間圧延を施され、熱延鋼板とされる。粗圧延は、所望のシートバー寸法が確保できればよく、その条件はとくに限定する必要はない。
粗圧延に引続き、仕上圧延を施す。仕上圧延の条件は、所望のベイナイトラス組織を得るためには極めて重要である。
仕上圧延の最終2パスの合計圧下率:30%以上
所望のベイナイトラス組織を得るには、十分に歪が蓄積されたオーステナイト(γ)をベイナイト変態させることが必要である。そのために、本発明では、まず、仕上圧延の最終2パスの合計圧下率を限定する。仕上圧延の最終2パスの合計圧下率が30%未満では、γへの歪蓄積が不十分で、変態後に所望のベイナイトラス組織を確保できなくなる。このため、仕上圧延の最終2パスの合計圧下率を30%以上に限定した。なお、好ましくは40%以上、さらに好ましくは50%以上である。
仕上圧延の圧延終了温度:(Ar3変態点)〜(Ar3変態点+120℃)
十分に歪が蓄積されたオーステナイト(γ)からベイナイト変態させるために、仕上圧延の圧延終了温度の調整も重要となる。仕上圧延の圧延終了温度がAr3変態点未満では、所望の組織である、ほぼベイナイト単相の組織を確保することが難しくなる。一方、仕上圧延の圧延終了温度が(Ar3変態点+120℃)を超えて高温となると、微細なベイナイト相を得ることが難しくなる。このため、仕上圧延の圧延終了温度は(Ar3変態点)〜(Ar3変態点+120℃)の範囲の温度に限定した。なお、好ましくは(Ar3変態点)〜(Ar3変態点+80℃)である。ここで、仕上圧延の圧延終了温度は表面温度で表すものとする。また、ここでいう「Ar3変態点」は、加工フォーマスタ試験機で、加工付与後に冷却速度1℃/sで冷却して得られた熱膨張曲線から、その変化点により求めた変態温度とする。
仕上圧延終了後、冷却を施す。冷却の条件も、所望の組織を得るために極めて重要である。
冷却開始:仕上圧延終了後、2s以内
十分に歪が蓄積されたγからベイナイト変態させて、所望のベイナイトラス組織を得るためには、冷却開始時間を、仕上圧延終了後、2s以内に冷却を開始する必要がある。冷却開始が、仕上圧延終了後、2sを超えると、γの回復、再結晶が進行し、ベイナイト変態の核が減少し、所望のベイナイトラス組織を得ることができなくなる。このようなことから、冷却は、仕上圧延終了後、2s以内に開始することにした。なお、好ましくは1.5s以内、より好ましくは1s以内である。
平均冷却速度:40℃/s以上
仕上圧延終了温度から冷却停止温度までの平均冷却速度が40℃/s未満では、初析フェライトが析出して、体積率で90%超のベイナイト相を有し、かつ所望のベイナイトラス間隔を有する組織を確保することが困難となる。このため、仕上圧延終了後の冷却の平均冷却速度は40℃/s以上に限定した。なお、好ましくは50℃/s以上、より好ましくは60℃/s以上である。冷却速度の上限は、冷却設備の能力に依存して決定されるが、鋼板形状の観点から150℃/s以下程度にすることが好ましい。
冷却停止温度:300〜500℃
本発明では冷却停止後、直ちに巻き取る。このため、冷却停止温度を巻取り温度として巻き取る。冷却停止温度(巻取り温度)が、300℃未満、あるいは500℃超となると、ベイナイトラス間隔とFe系炭化物の分布状態をともに所望の最適範囲に調整することができなくなる。このようなことから、冷却停止温度(巻取り温度)を300〜500℃の範囲の温度に限定した。なお、好ましくは350〜500℃である。
巻取り後に、常法にしたがい、酸洗を施して表面に形成されたスケールを除去してもよい。また、酸洗処理後に、熱延鋼板に調質圧延を施してもよい。また、酸洗処理後、あるいは調質圧延後に、さらに、均熱温度:730℃以下で焼鈍処理を施し、溶融亜鉛めっき浴を通過させて、表面に亜鉛めっき層を形成し、溶融亜鉛めっき鋼板としてもよい。焼鈍処理の均熱温度が730℃を超えると、ベイナイトが焼き戻されるため、体積率で90%超のベイナイト相を有し、かつ所望のベイナイトラス間隔を有する組織を確保することが困難となる。したがって、焼鈍処理の均熱温度は730℃以下とする。なお、焼鈍温度の下限はとくに限定しないが、溶融亜鉛めっき層と下地鋼板との密着性の観点からは、焼鈍処理の均熱温度は600℃以上が好ましい。また、溶融亜鉛めっき槽に浸漬した後、さらに、該亜鉛めっき層の合金化処理を施し、合金化溶融亜鉛めっき鋼板としてもよい。
また、溶融亜鉛めっき鋼板のみならず、得られた熱延鋼板を用いて、電気亜鉛めっき鋼板等のめっき鋼板とすることもできる。
以下、実施例に基づき、さらに本発明高強度熱延鋼板について説明する。
表1に示す組成を有する鋼スラブに、表2に示す、加熱、仕上圧延、圧延後冷却を施し、熱延鋼板とした。なお、熱膨張曲線から求めた、各鋼スラブのAr3変態点を表1に併記した。なお、一部の熱延鋼板では、酸洗後、連続溶融亜鉛めっきラインに通板し、表2に示す条件で焼鈍処理を施したのち、溶融亜鉛めっき処理を施し、溶融亜鉛めっき鋼板(GI)とした。なお、溶融亜鉛めっき処理は、焼鈍処理後の熱延鋼板を480℃の亜鉛めっき浴(0.1%Al-Zn)中に浸漬し、片面当たり付着量45g/m2の溶融亜鉛めっき層を鋼板両面に形成する処理とした。また、一部の熱延鋼板については溶融亜鉛めっき処理ののち、さらに合金化処理を施し、合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA)とした。なお、合金化処理温度は520℃とした。
得られた熱延鋼板(一部、めっき鋼板を含む)から、試験片を採取し、組織観察、引張試験、量産打抜き性試験を実施した。試験方法はつぎの通りとした。
(1)組織観察
得られた熱延鋼板(めっき鋼板)から組織観察用試験片を採取し、圧延方向に平行な板厚断面(L断面)を研磨した後、3%ナイタール液で腐食して組織を現出した。そして、L断面の板厚1/4位置において、走査型電子顕微鏡(倍率:3000倍)で組織を観察し、10視野で組織を撮影し、画像解析処理で、ベイナイト相以外の相を分離して、ベイナイト以外の相の組織分率を決定し、ベイナイト相の面積率を算出した。このようにして得られた面積率をベイナイト相の体積率とした。
また、得られた熱延鋼板(めっき鋼板)の板厚1/4位置から、薄膜用試料を採取し、機械研磨、電解研磨により薄膜試片とし、透過型電子顕微鏡(倍率:約30000倍)を用いて組織を観察し、10視野で組織を撮影し、ベイナイトラス間隔を測定し、それらの平均値を求め、各熱延鋼板のベイナイトラス間隔とした。
また、得られた熱延鋼板(めっき鋼板)から組織観察用試験片を採取し、圧延方向に平行な板厚断面(L断面)を研磨した後、3%ナイタール液で腐食して組織を現出し、板厚1/4位置についてレプリカ試料を作製した。得られたレプリカ試料を用いて、透過型電子顕微鏡(倍率:約30000倍)で組織を観察し、10視野で組織を撮影した。得られた組織写真を用いて、Fe系析出物を、その析出箇所(粒界、粒内)ごとに個数を測定し、粒内に析出したFe系析出物の、全Fe系析出物の個数に対する比率を算出した。なお、Fe系析出物の判別は析出物の形態とEDX分析により行った。
なお、板厚方向の中心部についても同様の組織観察を行ったが、ほぼ同様の組織を有していることを確認している。
(2)引張試験
得られた熱延鋼板(めっき鋼板)から、引張方向が圧延方向に直角方向となるように、JIS 5号引張試験片を各3本採取し、JIS Z 2241の規定に準拠して引張試験を実施した。なお、引張速度は10mm/minとした。なお、得られた引張特性(引張強さTS、伸びEl)の平均値を、その鋼板の引張特性とした。
(3)量産打抜き性試験
得られた熱延鋼板(めっき鋼板)から、ブランク板(大きさ:150×150mm)を採取した。そして、打抜きポンチを50mmφの平底型として、打抜きクリアランスが30%となるように、ダイ側の穴径を決定し、さらに打抜きダイの上にスペーサーを置き、その上にブランク板を置いて上から板押さえで固定してポンチ穴を打ち抜いた。打ち抜き後、ポンチ穴の全周に亘り、打抜き端面の破面状況を走査型電子顕微鏡(倍率:100倍)で、割れ、欠け、脆性破面、2次せん断面等の有無を観察した。割れ、欠け、脆性破面、2次せん断面等のないものを○(合格)とし、それ以外を×(不合格)として、量産打抜き性を評価した。
得られた結果を表3に示す。
Figure 0005641086
Figure 0005641086
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本発明例はいずれも、引張強さTS:900MPa以上の高強度を有し、さらに優れた量産打抜き性を有する熱延鋼板(めっき鋼板)となっている。一方、本発明の範囲を外れる比較例は、量産打抜き性が低下している。

Claims (12)

  1. 質量%で、
    C :0.07%超0.2%以下、 Si:2.0%以下、
    Mn:1.0〜3.0%、 P :0.05%以下、
    S :0.005%以下、 Al:0.1%以下、
    N :0.01%以下、 Ti:0.05〜0.3%、
    V :0.05〜0.3%
    を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、ベイナイト相が体積率で90%超で、かつベイナイトラスの平均間隔が0.45μm以下であり、かつ全Fe系炭化物のうち粒内に析出したFe系炭化物の個数比率が10%以上である組織を有することを特徴とする、量産打抜き性に優れた高強度熱延鋼板。
  2. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Nb:0.005〜0.2%、B:0.0002〜0.0030%のうちから選ばれた1種または2種を含有することを特徴とする請求項1に記載の高強度熱延鋼板。
  3. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.005〜0.3%、Ni:0.005〜0.3%、 Sn:0.005〜0.3%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の高強度熱延鋼板。
  4. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Mo:0.002〜0.3%、Cr:0.002〜0.3%のうちから選ばれた1種または2種を含有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の高強度熱延鋼板。
  5. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.0002〜0.004%、REM:0.0002〜0.004%のうちから選ばれた1種または2種を含有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の高強度熱延鋼板。
  6. 請求項1ないし5のいずれかに記載の高強度熱延鋼板の表面に溶融亜鉛めっき層または合金化溶融亜鉛めっき層を形成してなる溶融亜鉛めっき鋼板。
  7. 鋼スラブを、加熱し粗圧延と仕上圧延とからなる熱間圧延を施して、熱延鋼板とするに当たり、
    前記鋼スラブを、質量%で、
    C :0.07%超0.2%以下、 Si:2.0%以下、
    Mn:1.0〜3.0%、 P :0.05%以下、
    S :0.005%以下、 Al:0.1%以下、
    N :0.01%以下、 Ti:0.05〜0.3%、
    V :0.05〜0.3%
    を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼スラブとし、
    前記熱間圧延を、前記鋼スラブを1100℃以上に加熱し、前記仕上圧延の最終2パスの合計圧下率を30%以上とし、該仕上圧延の圧延終了温度を(Ar3変態点)〜(Ar3変態点+120℃)の温度範囲とし、前記仕上圧延終了後、2s以内に冷却を開始し、平均冷却速度40℃/s以上で巻取り温度まで冷却した後、巻取り温度:300〜500℃で巻き取る圧延とし、ベイナイト相が体積率で90%超で、かつベイナイトラスの平均間隔が0.45μm以下であり、かつ全Fe系炭化物のうち粒内に析出したFe系炭化物の個数比率が10%以上である組織を有する鋼板とすることを特徴とする量産打抜き性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
  8. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Nb:0.005〜0.2%、B:0.0002〜0.0030%のうちから選ばれた1種または2種を含有することを特徴とする請求項7に記載の高強度熱延鋼板の製造方法。
  9. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.005〜0.3%、Ni:0.005〜0.3%、Sn:0.005〜0.3%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項7または8に記載の高強度熱延鋼板の製造方法。
  10. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Mo:0.002〜0.3%、Cr:0.002〜0.3%のうちから選ばれた1種または2種を含有することを特徴とする請求項7ないし9のいずれかに記載の高強度熱延鋼板の製造方法。
  11. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.0002〜0.004%、REM:0.0002〜0.004%のうちから選ばれた1種または2種を含有することを特徴とする請求項7ないし10のいずれかに記載の高強度熱延鋼板の製造方法。
  12. 請求項7ないし11のいずれかに記載の高強度熱延鋼板の製造方法により製造された高強度熱延鋼板を酸洗したのち、焼鈍とめっき処理を施してめっき鋼板とするに当たり、
    前記焼鈍を均熱温度:730℃以下とする焼鈍とし、該焼鈍終了後に、前記めっき処理として溶融亜鉛めっき浴を通過させて、前記高強度熱延鋼板の表面に溶融亜鉛めっき層を形成し、あるいはさらに該溶融亜鉛めっき層を合金化する合金化処理を施すことを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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