本発明にかかる吸水性樹脂の製造方法は、逆相懸濁重合法を採用した吸水性樹脂の製造方法であり、具体的には下記の3つの工程を含む方法である。
(1)界面活性剤が溶解した石油系炭化水素分散媒において水溶性エチレン性不飽和単量体を逆相懸濁重合させて、1次粒子が分散するスラリーを作製する工程1、
(2)工程1によって得られたスラリーを、撹拌翼を先端周速3.5〜6.5m/sで回転させて攪拌しながら冷却して、前記界面活性剤の一部を析出させた後に、水溶性エチレン性不飽和単量体を添加し、該単量体を重合させ、前記1次粒子を肥大化させる工程2、及び
(3)工程2によって得られた肥大化した1次粒子を含み、且つ前記界面活性剤が溶解したスラリーに水溶性エチレン性不飽和単量体を添加し、次いで該スラリーを冷却して、前記界面活性剤の一部を析出させた後に、該単量体を重合させて吸水性樹脂とする工程3。
工程1について
本発明にかかる製造方法における工程1は、界面活性剤が溶解した石油系炭化水素分散媒において水溶性エチレン性不飽和単量体を逆相懸濁重合させて、1次粒子が分散するスラリーを作製する工程である。
工程1では、逆相懸濁重合法における分散媒として石油系炭化水素分散媒を用いる。このような石油系炭化水素分散媒は、特に限定されるものではないが、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、n−オクタン等の炭素数6〜8の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン等の炭素数6〜8の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。これらの石油系炭化水素分散媒は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの石油系炭化水素分散媒のなかでも、工業的に入手が容易であり、品質が安定しており、かつ安価である観点から、炭素数が6〜8の脂肪族炭化水素、炭素数が6〜8の脂環族炭化水素等を、石油系炭化水素分散媒として用いることが好ましい。より好ましくは、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン等である。
上述の石油系炭化水素分散媒の使用量は、特に限定されないが、水溶性エチレン性不飽和単量体を均一に分散し、重合温度の制御を容易にする観点から、工程1にて使用する水溶性エチレン性不飽和単量体100質量部に対して、通常100〜1200質量部とすればよい。好ましくは200〜1000質量部である。
工程1にて用いる界面活性剤は、特に限定されるものではないが、例えばショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピルアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、N−アルキルグルコンアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルのリン酸エステル等が挙げられる。これらの界面活性剤は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの界面活性剤のなかでも、石油系炭化水素分散媒中における水溶性エチレン性不飽和単量体の分散安定性の面から、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が好ましく用いられる。
上述の界面活性剤の使用量は、石油系炭化水素分散媒中における水溶性エチレン性不飽和単量体の分散状態を良好に保ち、かつ使用量に見合う分散効果を得る観点から、工程1にて使用する水溶性エチレン性不飽和単量体100質量部に対して、通常は0.1〜5質量部とすればよい。好ましくは0.2〜3質量部である。
工程1では、上述の界面活性剤と共に、高分子系分散剤を併用してもよい。併用する高分子系分散剤は、特に限定されるものではないが、例えば無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸変性EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン・ターポリマー)、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、無水マレイン酸・エチレン共重合体、無水マレイン酸・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・ブタジエン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、酸化型ポリエチレン、酸化型ポリプロピレン、酸化型エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。これらの高分子系分散剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの高分子系分散剤のなかでも、石油系炭化水素分散媒中の水溶性エチレン性不飽和単量体の分散安定性の面から、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン共重合体、無水マレイン酸・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン・プロピレン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、酸化型ポリエチレン、酸化型ポリプロピレン、酸化型エチレン・プロピレン共重合体等が好ましく用いられる。
上述の高分子系分散剤の使用量は、石油系炭化水素分散媒中における水溶性エチレン性不飽和単量体の分散状態を良好に保ち、かつ使用量に見合う分散効果を得る観点から、工程1にて使用する水溶性エチレン性不飽和単量体100質量部に対して、通常は0.1〜5質量部とすればよい。好ましくは0.2〜3質量部である。
工程1にて用いる水溶性エチレン性不飽和単量体は、特に限定されるものではないが、例えば(メタ)アクリル酸(本明細書においては「アクリル」および「メタアクリル」を合わせて「(メタ)アクリル」と表記する。以下同様)、そのアルカリ塩;2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、そのアルカリ塩;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の非イオン性単量体;N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミノ基含有不飽和単量体、その4級化物等が挙げられる。これらの水溶性エチレン性不飽和単量体は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの水溶性エチレン性不飽和単量体のなかでも、工業的に入手が容易である観点から、(メタ)アクリル酸、そのアルカリ塩、メタアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド等が好ましく用いられる。より好ましくは、(メタ)アクリル酸、そのアルカリ塩、アクリルアミド等である。
なお、上記の水溶性エチレン性不飽和単量体は石油系炭化水素分散媒中での分散効率を上昇させるために水溶液として用いてもよい。このような水溶液における上記単量体の濃度は特に限定はされないが、通常20質量%〜飽和濃度とすればよく、25〜70質量%がより好ましい。更に好ましくは、30〜55質量%である。
上記の水溶性エチレン性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のように酸基を有する場合、必要に応じてその酸基を予めアルカリ性中和剤によって中和されたものを用いてもよい。このようなアルカリ性中和剤は、特に限定されるものではないが、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属塩;水酸化アンモニウム等のアンモニウム塩等の水溶液が挙げられる。これらのアルカリ性中和剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アルカリ性中和剤による全ての酸基に対する中和度は、特に限定されないが、得られる吸水性樹脂の浸透圧を高めることで吸収能力を高め、かつ余剰のアルカリ性中和剤の存在により、安全性などに問題が生じないようにする観点から、通常10〜100モル%の範囲とすればよく、30〜80モル%の範囲がより好ましい。
工程1において水溶性エチレン性不飽和単量体を逆相懸濁重合する際に、必要に応じて架橋剤を用いて前記単量体の重合により形成される1次粒子中のポリマー鎖を架橋しても良い。このような架橋剤(以下、内部架橋剤とする。)は、特に限定されるものではないが、例えば重合性不飽和基を2個以上有する化合物が用いられる。具体的には、(ポリ)エチレングリコール(本明細書において、例えば、「ポリエチレングリコール」と「エチレングリコール」を合わせて「(ポリ)エチレングリコール」と表記する。以下同様)、(ポリ)プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリンポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、(ポリ)グリセリン等のポリオール類のジ又はトリ(メタ)アクリル酸エステル類;前記のポリオールとマレイン酸、フマール酸等の不飽和酸類とを反応させて得られる不飽和ポリエステル類;N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド等のビスアクリルアミド類;ポリエポキシドと(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるジ又はトリ(メタ)アクリル酸エステル類;トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のポリイソシアネートと(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとを反応させて得られるジ(メタ)アクリル酸カルバミルエステル類;アリル化澱粉;アリル化セルロース;ジアリルフタレート;N,N’,N’’−トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
内部架橋剤としては、上述のような重合性不飽和基を2個以上有する化合物のほかに、その他の反応性官能基を2個以上有する化合物を用いてもよい。このような化合物の具体的として、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル等のグリシジル基含有化合物;(ポリ)エチレングリコール;(ポリ)プロピレングリコール、(ポリ)グリセリン;ペンタエリスリトール;エチレンジアミン、ポリエチレンイミン;グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの内部架橋剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの内部架橋剤のなかでも、低温での反応性に優れている観点から、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、N,N’−メチレンビスアクリルアミド等が好ましく用いられる。
内部架橋剤は分散媒に添加して用いてもよいが、内部架橋剤による効果をより効率的に発揮させるために、水溶性エチレン性不飽和単量体に添加して用いることが好ましい。
内部架橋剤の使用量は、得られる吸水性樹脂の吸収性能を十分に高める観点から工程1にて用いる前記単量体に対して、通常0〜1モル%とすればよく、0.0001〜0.5モル%とすることがより好ましい。
工程1において逆相懸濁重合法によって水溶性エチレン性不飽単量体を重合する際には、通常ラジカル重合開始剤を用いる。このようなラジカル重合開始剤は、特に限定されるものではないが、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、および過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類;メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシピバレート、および過酸化水素等の過酸化物類;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス〔2−(N−フェニルアミジノ)プロパン〕二塩酸塩、2,2’−アゾビス〔2−(N−アリルアミジノ)プロパン〕二塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−〔1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル〕プロパン}二塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−〔1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル〕プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド〕、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のアゾ化合物等を挙げることができる。これらラジカル重合開始剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのラジカル重合開始剤のなかでも、入手が容易で取り扱いやすいという観点から、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウムおよび2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩が好ましく用いられる。
ラジカル重合開始剤の使用量は、工程1にて用いる前記単量体に対して、通常0.005〜1モル%である。このような範囲の使用量とすることによって、重合反応に多大な時間を要することなく、また急激な重合反応も生じない。
なお、上述のラジカル重合開始剤は、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第一鉄、およびL−アスコルビン酸等の還元剤を併用して、レドックス重合開始剤として用いてもよい。
工程1では、得られる吸水性樹脂の吸水性能を制御するために、連鎖移動剤を用いてもよい。このような連鎖移動剤は、特に限定されるものではないが、例えば次亜りん酸塩類、チオール類、チオール酸類、第2級アルコール類、アミン類等が挙げられる。
工程1における逆相懸濁重合法では、攪拌翼を回転させて反応系を撹拌しながら重合反応を行う。ここで、攪拌翼の先端周速は、工程1において得られる1次粒子の粒径を適度に調整するために、通常は0.3〜2.5m/sとすればよい。このような範囲の先端周速とすることによって、粗粉、且つ微粉が少ない吸水性樹脂が得られ、結果としてゲルブロッキング現象を起こしにくい吸水性樹脂が得られる傾向となるので好ましい。
工程1において用いる撹拌翼の形状は、特に限定されるものではないが、例えばプロペラ翼、パドル翼、アンカー翼、タービン翼、ファウドラー翼、リボン翼、フルゾーン翼(神鋼パンテック株式会社製)、マックスブレンド翼(住友重機械工業株式会社製)、スーパーミックス翼(サタケ化学機械工業株式会社製)等が挙げられる。
工程1における逆相懸濁重合法の重合反応温度は、用いるラジカル重合開始剤によって異なるが、通常20〜110℃とすればよい。好ましくは40〜90℃である。このような範囲の重合反応温度とすることによって、重合速度が過度に遅くならず、重合にかかる時間も長くならないので経済的に好ましい。また、適度に反応重合熱が除去され、円滑に重合反応を行なうことできるので好ましい。
工程1における重合反応の終了は、重合反応温度が最高点に達しその温度が下降し始める現象を基準に確認することができる。重合反応にかかる時間は、通常0.1時間〜4時間である。
工程2について
本発明にかかる製造方法における工程2は、工程1によって得られたスラリーを、撹拌翼を先端周速3.5〜6.5m/sで回転させて攪拌しながら冷却して前記界面活性剤の一部を析出させた後に、水溶性エチレン性不飽和単量体を添加し、該単量体を重合させ、前記1次粒子を肥大化させる工程である。
工程2では、工程1にて得られた1次粒子が分散するスラリーを、攪拌翼を先端周速3.5〜6.5m/sで回転させ攪拌しながら冷却して界面活性剤の一部が析出した状態とし、その状態を維持しながら該スラリーに水溶性エチレン性不飽和単量体を添加し、前記単量体を重合するところに特徴を有する。
このような特徴を有する工程2を本発明の吸水性樹脂の製造方法に採用することによって、通液性能に優れ、且つ粗粉が少ない吸水性樹脂が得られる理由は詳らかではないが、以下の理由に基づくものと推測される。
工程1において得られた1次粒子が分散するスラリーを冷却し、界面活性剤の一部が該スラリー中に析出している状態にして水溶性エチレン性不飽和単量体を添加した場合、スラリー中の界面活性作用がほとんどないため、添加した該単量体が該1次粒子に吸収され、その後該単量体を重合させることによって、該1次粒子の粒径を肥大化させることができ、続く工程3にて得られる粒子が、肥大化した粒子同士が凝集されたものとなり、結果として粒子径が適度に大きい、優れた吸水性樹脂が得られると推測される。
また工程2では、工程1において得られた1次粒子が分散するスラリー中の界面活性剤の一部が析出した状態にした後に水溶性エチレン性不飽和単量体を添加するので、該スラリーに添加した該単量体が該1次粒子に吸収される際に、該界面活性剤が該単量体に包み込まれて水に対する濡れ性が改善され、結果として得られる吸水性樹脂が通液性能に優れたものになると推測される。
工程2において、工程1によって得られたスラリーを冷却することで、該スラリーに溶解している界面活性剤の一部を析出させる。界面活性剤の析出は、スラリーの白濁を目視する方法、濁度計による測定する方法等によって確認することができる。
具体的なスラリーの冷却温度は、上述のように界面活性剤の一部を析出させることができる範囲であれば、特に限定されないが、通常5〜40℃とすればよく、好ましくは10〜30℃である。スラリーの冷却にかかる時間は特に限定されない。
40℃以下の冷却温度とすることによって、前記界面活性剤が析出して該スラリー中の界面活性効果が低下するので、スラリーに添加する水溶性エチレン性不飽和単量体が分散して工程1によって得られた1次粒子に吸収される前に重合してしまうことが無く、結果として微粉が少ない吸水性樹脂が得られるので好ましい。
上述のようにして界面活性剤の一部を析出させた後のスラリーに水溶性エチレン性不飽和単量体を添加する際の温度は、冷却後の温度を維持することが好ましい。
工程2における一連の操作においては、攪拌翼を回転させて反応系を撹拌しながら重合反応を行う。ここで攪拌翼の先端周速は、3.5〜6.5m/sであり、好ましくは4.0〜6.0m/sである。
先端周速を3.5m/s以上とすることによって、水溶性エチレン性不飽和単量体を吸収した1次粒子同士が工程2にて凝集することなく、肥大化した1次粒子とすることができ、結果として通液性能に優れた吸水性樹脂が得られる。また先端周速を6.5m/s以下とすることで、工程2にて用いる前記単量体が1次粒子に吸収されずにスラリー中に分散してしまい、微粉粒子が生成することを防ぐ。
工程2において添加する水溶性エチレン性不飽和単量体は、具体的な単量体の種類、必要に応じて施す中和処理、水溶液にして用いる際の単量体としての濃度等において、工程1にて詳述したものと同様のものを用いればよい。
工程2における水溶性エチレン性不飽和単量体の使用量は、通液性能が良く、且つ粗粉の少ない吸水性樹脂を得る観点から、工程1にて用いる水溶性エチレン性不飽和単量体100質量部に対して、通常80〜200質量部とすればよい。好ましくは100〜160質量部である。
工程2における重合反応も、工程1と同様に通常はラジカル重合開始剤を用いて行う。具体的なラジカル重合開始剤は、上記工程1にて例示したものから適宜選択し、工程1と同様に工程2にて用いる単量体の量に応じた使用量とすればよい。
また、工程2にて用いる水溶性エチレン性不飽和単量体には、必要に応じて内部架橋剤、連鎖移動剤等を添加して用いてもよく、上記工程1にて例示したものから選択し、同様にして用いればよい。
工程2における重合反応温度は、上記工程1と同様に用いるラジカル重合開始剤によって異なるが、通常20〜110℃とすればよく、40〜90℃とすることが好ましい。工程2における重合反応の終了は、重合反応温度が最高点に達しその温度が下降し始める現象を基準に確認することができる。重合反応時間は、通常0.1時間〜4時間とすればよい。
工程3について
本発明にかかる製造方法における工程3は、工程2によって得られた肥大化した1次粒子を含み、且つ前記界面活性剤が溶解したスラリーに、水溶性エチレン性不飽和単量体を添加し、次いで該スラリーを冷却して前記界面活性剤の一部を析出させた後に、該単量体を重合させて吸水性樹脂とする工程である。
工程3において、工程2にて得られた肥大化した1次粒子を含むスラリーに、水溶性エチレン性不飽和単量体を添加する際、前記界面活性剤は、通常は該スラリー中に溶解した状態となっている。工程3において、前記スラリー中に前記界面活性剤が溶解した状態を維持しながら水溶性エチレン性不飽和単量体を添加し、引き続いて該スラリーを冷却して該界面活性剤の一部を析出させた後に前記単量体を重合するところに特徴を有する。
このような特徴を有する工程3を採用することによって、通液性能に優れ、且つ粗粉が少ない吸水性樹脂が得られる理由は詳らかではないが、以下の理由に基づくものと推測される。
界面活性剤が溶解した工程2によって得られたスラリーに添加した水溶性エチレン性不飽和単量体は、該スラリー中にて界面活性作用が働いているために、工程2にて得られた肥大化した1次粒子に吸収されずにスラリー中にて液滴の状態で分散する。引き続いて前記スラリーを冷却して前記界面活性剤を析出させると、前記単量体は分散した状態を維持しながら肥大化した前記1次粒子に均一に吸収されて、該1次粒子が凝集する。この状態で前記単量体を重合させることにより、粗粉が少ない吸水性樹脂が得られる。
工程3において、工程2にて得られた肥大化した1次粒子を含み、界面活性剤が析出した状態のスラリーに、水溶性エチレン性不飽和単量体を添加した場合、該スラリー中の界面活性効果が低下しているために、該単量体は該肥大化した1次粒子に不均一に吸収されて、結果として粗粉が多い吸水性樹脂が得られる傾向となる。
また工程3において、工程2にて得られたスラリー中の界面活性剤が溶解した状態で、水溶性エチレン性不飽和単量体の重合を実施してしまうと、該スラリー中では界面活性作用が働くために該単量体が分散された状態で重合され、結果として微粉が多い吸水性樹脂が得られて、ゲルブロッキング現象を起こす傾向になる吸水性樹脂が得られる。
工程3において単量体を添加する際のスラリーの温度は、界面活性剤が、該スラリー中にて溶解した状態を維持できる温度であればよく、特に限定はされないが、通常30℃を超えて80℃以下とすればよい。好ましくは35〜70℃、より好ましくは40〜60℃である。30℃超える温度とすれば、界面活性剤が該スラリー中にて好適に溶解している状態を保つことができるので好ましい。また、80℃以下とすることによって、該単量体が該スラリー中にて十分に分散される前に、重合反応が進行することを防ぐ傾向になるので好ましい。
工程3において、水溶性エチレン性不飽和単量体を工程2にて得られたスラリーに添加した後に該スラリーを冷却する。この操作によって、前記界面活性剤は、前記スラリー中にて一部が析出した状態となる。析出の確認は上述の工程2に記載したものと同様にすればよい。
スラリーの具体的な冷却温度は、前記界面活性剤の一部が析出する温度であればよく、特に限定されないが、通常30℃以下とすればよい。好ましくは10〜30℃であり、より好ましくは15〜27℃である。30℃以下とすることによって、前記界面活性剤の一部が該スラリー中に析出し、工程3にて添加する水溶性エチレン性不飽和単量体が、工程2にて得られた肥大化した1次粒子に吸収される前に重合反応が進行することを防ぐ傾向となり好ましい。スラリーを冷却する際にかかる時間は特に限定はされない。
工程3において添加する水溶性エチレン性不飽和単量体は、具体的な単量体の種類、必要に応じて施す中和処理、水溶液にして用いる際の単量体としての濃度等において、工程1にて詳述したものと同様のものを用いればよい。
工程3における水溶性エチレン性不飽和単量体の使用量は、通液性能が良く、粗粉の少ない吸水性樹脂を製造し、更に生産性を高める観点から、工程1にて用いる水溶性エチレン性不飽和単量体100質量部に対して、通常150〜600質量部とすればよい。好ましくは200〜500質量部である。
工程3における重合反応も、上述の工程1と同様に、通常はラジカル重合開始剤を用いて行う。具体的なラジカル重合開始剤は、上記工程1にて例示したものから適宜選択し、工程3にて用いる前記単量体の量に応じて、工程1と同様の使用量とすればよい。
工程3にて添加する水溶性エチレン性不飽和単量体にも、必要に応じて内部架橋剤、連鎖移動剤等を添加してもよく、具体的には上記工程1にて例示したものから適宜選択すればよい。
工程3においても前記工程2で用いた撹拌翼を回転させ、工程2によって得られるスラリーを撹拌しながらスラリーに添加した水溶性エチレン性不飽和単量体を重合させ、吸水性樹脂とする。ここで、攪拌翼の先端周速は、得られる吸水性樹脂の粒径を適度に調整するために、通常2.0〜4.5m/sとすればよい。
攪拌翼の先端周速を2.0m/s以上とすることによって、得られる吸水性樹脂の粒径が大きくなり過ぎることを防ぎ、粗粉の少ない吸水性樹脂が得られる傾向となるので好ましい。また4.5m/s以下とすることによって、工程2にて得られた肥大化した1次粒子に対する単量体が適度に吸収されるので、得られる吸水性樹脂は微粉が少なくなり、結果としてゲルブロッキング現象を起こしにくい吸水性樹脂が得られる傾向となるので好ましい。
工程3における重合反応温度は、上記工程1と同様に用いるラジカル重合開始剤によって異なるが、通常20〜110℃とすればよく、40〜90℃が好ましい。工程3における重合反応は、重合反応温度が最高点に達して、後にその温度が下降し始める際に終了する。重合反応時間は、通常0.1時間〜4時間とすればよい。
工程3において、重合反応が終了した後に乾燥工程を施してもよい。乾燥工程は、常圧下で行っても減圧下で行ってもよく、乾燥効率を高めるために窒素等の気流下で行ってもよい。例えば乾燥工程が常圧の場合、乾燥温度は通常70〜250℃とすればよく、80〜180℃が好ましい。更に好ましくは、80〜140℃であり、90〜130℃が最も好ましい。また、乾燥工程が減圧下の場合、乾燥温度は通常60〜100℃とすればよく、70〜90℃が好ましい。
乾燥後の水分率は、吸水性樹脂としての流動性を持たせる観点から通常は20%以下とすればよく、10%以下とすることが好ましい。また、流動性を向上させるために、非晶質シリカ粉末を添加してもよい。
上記工程3において、重合反応が終了した後から乾燥工程の間において、架橋剤を添加して後架橋処理を施してもよい。後架橋処理によって、表面架橋密度が高まり、加圧下吸収能、吸水速度、ゲル強度等の諸性能を高めた衛生材料用途に好適な吸水性樹脂を得ることができる。
このような架橋剤(以下、後架橋剤とする)としては、特に限定されるものではないが、例えば反応性官能基を2個以上有する化合物用いることができる。具体的には(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセロール(ポリ)グリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル等のジグリシジル基含有化合物;(ポリ)エチレングリコール;(ポリ)プロピレングリコール;(ポリ)グリセリン;ペンタエリスリトール;エチレンジアミン;ポリエチレンイミン等が挙げられる。これらの後架橋剤は単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの後架橋剤のなかでも、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル等が好ましく用いられる。
後架橋剤の使用量は、得られる吸水性樹脂の吸水能を低下させず、かつ表面近傍の架橋密度を強めて諸々の性能を高める観点から、全工程に用いた単量体の総量に対して、通常0.005〜1モル%の範囲とすればよい。好ましくは0.01〜0.5モル%である。
後架橋剤を用いた後架橋工程は、工程3における逆相懸濁重合の終了後に行えばよく、特に限定されないが、例えば工程3にて得られる反応物中の水分量が、その固形分100質量部に対し、通常1〜400質量部の範囲であるとき上記後架橋剤を添加すればよく、好ましくは5〜200質量部である。更に好ましくは、10〜100質量部である。なお、上述の反応物中の水分量には、後述するような後架橋剤の溶媒中の水の量も含まれる
このように、後架橋剤を用いた後架橋工程を、工程3にて得られる重合反応物中の水分量に応じて行うことによって、より好適に該反応物の表面近傍に架橋を施すことが可能となり、結果として優れた吸水性能を有する吸水性樹脂とすることができる。
なお、後架橋工程にて用いる後架橋剤は、必要に応じて親水性有機溶媒に溶解させたものを用いてもよい。このような親水性有機溶媒は、特に限定されるものないが、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類等が挙げられる。これら親水性有機溶媒は、単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、親水性有機溶媒には水が含まれていても良い。
後架橋処理における反応温度は、通常50〜250℃とすればよい。好ましくは60〜180℃であり、更に好ましくは60〜140℃である。最も好ましい範囲は70〜120℃である。
本発明にかかる製造方法によって得られる吸水性樹脂の通液性能は、例えば0.69質量%塩化ナトリウム水溶液の通液速度で表され、具体的には150g/10分以上、好ましくは200〜500g/10分を示す。このような数値範囲を満たす吸水性樹脂は、吸収体として用いた際に高い浸透速度、液拡散性等の優れた性能を示す。なお、吸水性樹脂の0.69質量%塩化ナトリウム水溶液の通液速度は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
また、本発明にかかる製造方法によって得られる吸水性樹脂の中位粒子径は、200〜600μm、好ましくは250〜500μm、更に好ましくは300〜450μmとなる。このような数値範囲を満たす吸水性樹脂は、衛生材料等の吸収体として好適に用いられる。なお、吸水性樹脂の中位粒子径は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
さらに、本発明にかかる製造方法によって得られる吸水性樹脂はその粒度分布として、600μm超える粒子径が15質量%以下となる。このような数値範囲を満たす吸水性樹脂は、吸収体として用いた場合に吸収体自体の肌触りを良好にし、柔軟性を与えることから、好ましく用いられる。なお、吸水性樹脂の粒度分布は、後述する実施例に記載の方法によって測定することができる。
このように、本発明にかかる製造方法によって、通液性能に優れ、且つ粗粉が少なく適度な中位粒子径を有し、吸収体として好適に用いられる吸水性樹脂を製造することが可能となる。
本発明にかかる製造方法により得られる吸水性樹脂を用いた吸収体は、前記吸水性樹脂と親水性繊維より構成される。このような吸収体の構造は、特に限定されるものではないが、例えば前記吸水性樹脂と親水性繊維を均一にブレンドしたミキシング構造、層状の親水性繊維の間に前記吸水性樹脂を保持したサンドイッチ構造、前記吸水性樹脂と親水性繊維とをティッシュで包んだ構造等が挙げられる。なお、このような吸収体には補強材として、合成繊維が含まれていてもよい。
さらに上述の吸収体には、吸収体の形態保持性を高めるために、熱融着性合成繊維、ホットメルト接着剤、接着性エマルジョン等の接着性バインダーを使用してもよい。
上述の親水性繊維としては、特に限定されるものではないが、例えば木材から得られる綿状パルプ、メカニカルパルプ、ケミカルパルプ、セミケミカルパルプ等のセルロース繊維;レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維;親水化処理されたポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン等の合成樹脂からなる繊維等が挙げられる。
以下に、本発明を実施例および比較例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
各実施例および比較例で得られた吸水性樹脂の、水分率、生理食塩水吸水能、中位粒子径、粒度分布および0.69質量%塩化ナトリウム水溶液の通液速度を、以下に示す方法により評価した。
<水分率>
吸水性樹脂約2gを、あらかじめ秤量したアルミホイールケース(8号)に精秤した(Wa(g))。上記サンプルを、内温を105℃に設定した熱風乾燥機(ADVANTEC社製)で2時間乾燥させた後、デシケーター中で放冷して、乾燥後の吸水性樹脂の質量Wb(g)を測定した。以下の式
水分率(%)=[Wa―Wb]/Wa×100
から、吸水性樹脂の水分率を算出した。
<生理食塩水吸水能>
500mL容のビーカーに、0.9質量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)500gを量り取り、600r/minで撹拌させながら、吸水性樹脂2.0gを、ママコが発生しないように分散させた。撹拌させた状態で60分間放置し、吸水性樹脂を十分に膨潤させた。その後、あらかじめ目開き75μm標準篩の重量Wc(g)を測定しておき、これを用いて、前記ビーカーの内容物をろ過し、篩いを水平に対して約30度の傾斜角となるように傾けた状態で、30分間放置することにより余剰の水分をろ別した。吸水ゲルの入った篩いの質量Wd(g)を測定し、以下の式
生理食塩水吸水能(g/g)=[Wd−Wc](g)/吸水性樹脂の質量(g)
により、生理食塩水吸水能を求めた。
<中位粒子径および粒度分布>
吸水性樹脂50gに、滑剤として、0.25gの非晶質シリカ(デグサジャパン(株)、Sipernat200)を混合した。
JIS標準篩を上から、目開き850μmの篩、目開き600μmの篩、目開き500μmの篩、目開き425μmの篩、目開き300μmの篩、目開き250μmの篩、目開き150μmの篩および受け皿の順に組み合わせ、組み合わせた最上の篩に、前記吸水性樹脂を入れ、ロータップ式振とう器を用いて20分間振とうさせて分級した。
分級後、各篩上に残った吸水性樹脂の質量を全量に対する質量百分率として計算し、粒子径の大きい方から順に積算することにより、篩の目開きと篩上に残った吸水性樹脂の質量百分率の積算値との関係を対数確率紙にプロットした。確率紙上のプロットを直線で結ぶことにより、積算質量百分率50質量%に相当する粒子径を中位粒子径とした。
また、目開き850μmの篩及び目開き600μmの篩(600μmを超えるもの)の各篩上に残った吸水性樹脂の重量を、全量に対する重量百分率として計算し、その値から粒度分布を求めた。
<0.69質量%塩化ナトリウム水溶液の通液速度>
(a)合成尿の調整
1L容の容器に、塩化カリウム2g、無水硫酸ナトリウム2g、塩化カルシウム0.19g、塩化マグネシウム0.23g、リン酸二水素アンモニウム0.85g、リン酸一水素アンモニウム0.15g及び適量の蒸留水を入れ、完全に溶解した。更に蒸留水を追加して、水溶液全体の体積を1Lに調整した。
(b)通液速度の測定
吸水性樹脂の0.69質量%塩化ナトリウム水溶液の通液速度は、図1に機略構成を示した測定装置を用いて測定した。
円筒状容器20に約0.9gの吸水性樹脂を均一に入れ、吸水性樹脂を合成尿中で2.07KPaの加圧下で60分間膨潤させ、ゲル層25を形成した。
次に、2.07KPaの加圧下で、0.69質量%塩化ナトリウム水溶液13を、一定の静水圧でタンク11から膨潤したゲル層25に通過させた。
通過開始から10分間のうちに、ゲル層25を通過し、捕集容器33に入った0.69質量%塩化ナトリウム水溶液13の重量を、通液速度として測定した。この測定は室温(20〜25℃)で行った。
[実施例1]
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管ならびに攪拌機として、翼径50mmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する撹拌翼を備えた内径110mm、2L容の丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコにn−ヘプタン340gをとり、HLB3のショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ(株)、リョートーシュガーエステルS−370)0.46g、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学(株)、ハイワックス1105A)0.46gを添加し、撹拌しつつ80℃まで昇温して界面活性剤後、50℃まで冷却した。
一方、300mL容の三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液46g(0.51モル)をとり、外部より冷却しつつ、21質量%の水酸化ナトリウム水溶液73.0gを滴下して75モル%の中和を行った後、ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.055g(0.20ミリモル)、内部架橋剤としてN,N’−メチレンビスアクリルアミド4.6mg(0.03ミリモル)を加えて溶解し、工程1の単量体水溶液を調製した。
攪拌翼の先端周速を1.6m/sとし、前記の工程1の単量体水溶液の全量を、前記セパラブルフラスコに添加して、系内を窒素で十分に置換した後、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、工程1の重合を30分間行い、工程1の反応混合物(スラリー)を得た。
一方、別の300mL容の三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液46g(0.51モル)をとり、外部より冷却しつつ、27質量%の水酸化ナトリウム水溶液56.6gを滴下して75モル%の中和を行った後、ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.055g(0.20ミリモル)、内部架橋剤としてN,N’−メチレンビスアクリルアミド4.6mg(0.03ミリモル)を加えて溶解し、工程2の単量体水溶液を調製した。
攪拌翼の先端周速を4.0m/sに変更した後、前記工程1のスラリーを14℃に冷却し、工程2の単量体水溶液を系内に添加した。系内を窒素で十分に置換しながら30分間吸収させた後、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、工程2の重合を30分間行い、工程2のスラリーを得た。
一方、別の500mL容の三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液128.8g(1.43モル)をとり、外部より冷却しつつ、27質量%の水酸化ナトリウム水溶液159.0gを滴下して75モル%の中和を行った後、ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.16g(0.59ミリモル)、内部架橋剤としてN,N’−メチレンビスアクリルアミド12.9mg(0.08ミリモル)を加えて溶解して、工程3の単量体水溶液を調製した。
攪拌翼の先端周速を2.6m/sに変更して、前記工程2のスラリーを、界面活性剤が溶解している状態を保持するため、スラリーの温度が40〜60℃の範囲内になるように制御しながら、工程3の単量体水溶液を系内に添加し、10分間攪拌した。次にスラリーを26℃に冷却し、系内を窒素で十分に置換した後、再度、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、工程3の重合を30分間行った。
工程3の重合後、125℃の油浴でスラリーを昇温し、n−ヘプタンと水との共沸蒸留によりn−ヘプタンを還流しながら224gの水を系外へ抜き出した後、エチレングリコールジグリシジルエーテルの2%水溶液8.17g(0.94ミリモル)を添加し、80℃で2時間、後架橋反応を行った。その後、125℃の油浴でスラリーを昇温し、n−ヘプタンを蒸発させて乾燥することによって、吸水性樹脂230.1gを得た。吸水性樹脂の中位粒子径は420μm、水分率は7.5%であった。各性能の測定結果を表1に示す。
[実施例2]
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管ならびに攪拌機として、翼径50mmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する撹拌翼を備えた内径110mm、2L容の丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコにn−ヘプタン340gをとり、HLB3のショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ(株)、リョートーシュガーエステルS−370)0.54g、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学(株)、ハイワックス1105A)0.54gを添加し、撹拌しつつ80℃まで昇温して界面活性剤を溶解した後、50℃まで冷却した。
一方、300mL容の三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液38g(0.42モル)をとり、外部より冷却しつつ、21質量%の水酸化ナトリウム水溶液60.0gを滴下して75モル%の中和を行った後、ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.045g(0.17ミリモル)、内部架橋剤としてN,N’−メチレンビスアクリルアミド3.8mg(0.03ミリモル)を加えて溶解し、工程1の単量体水溶液を調製した。
攪拌翼の先端周速を1.6m/sとし、前記の工程1の単量体水溶液の全量を、前記セパブルフラスコに添加して、系内を窒素で十分に置換した後、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、工程1の重合を30分間行い、工程1のスラリーを得た。
一方、別の300mL容の三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液54g(0.60モル)をとり、外部より冷却しつつ、27質量%の水酸化ナトリウム水溶液66.7gを滴下して75モル%の中和を行った後、ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.065g(0.24ミリモル)、内部架橋剤としてN,N’−メチレンビスアクリルアミド5.4mg(0.04ミリモル)を加えて溶解し、工程2の単量体水溶液を調製した。
攪拌翼の先端周速を4.0m/sに変更した後、前記工程1のスラリーを12℃に冷却し、工程2の単量体水溶液を系内に添加した。系内を窒素で十分に置換しながら30分間吸収させた後、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、工程2の重合を30分間行い、工程2のスラリーを得た。
一方、別の500mL容の三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液128.8g(1.43モル)をとり、外部より冷却しつつ、27質量%の水酸化ナトリウム水溶液159.0gを滴下して75モル%の中和を行った後、ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.16g(0.59ミリモル)、内部架橋剤としてN,N’−メチレンビスアクリルアミド12.9mg(0.08ミリモル)を加えて溶解して、工程3の単量体水溶液を調製した。
攪拌翼の先端周速を2.6m/sに変更して、前記工程2のスラリーを、界面活性剤が溶解している状態を保持するため、スラリーの温度が40〜60℃の範囲内になるように制御しながら、工程3の単量体水溶液を系内に添加し、10分間攪拌した。次にスラリーを24℃に冷却し、系内を窒素で十分に置換した後、再度、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、工程3の重合を30分間行った。
工程3の重合後、125℃の油浴でスラリーを昇温し、n−ヘプタンと水との共沸蒸留によりn−ヘプタンを還流しながら230gの水を系外へ抜き出した後、エチレングリコールジグリシジルエーテルの2%水溶液8.17g(0.94ミリモル)を添加し、80℃で2時間、後架橋反応を行った。その後、125℃の油浴でスラリーを昇温し、n−ヘプタンを蒸発させて乾燥することによって、吸水性樹脂228.7gを得た。吸水性樹脂の中位粒子径は440μm、水分率は7.8%であった。各性能の測定結果を表1に示す。
[実施例3]
実施例1において、工程2の攪拌翼の先端周速を5.0m/sに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、吸水性樹脂229.3gを得た。吸水性樹脂の中位粒子径は400μm、水分率は7.3%であった。各性能の測定結果を表1に示す。
[比較例1]
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管ならびに攪拌機として、翼径50mmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する撹拌翼を備えた内径110mm、2L容の丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコにn−ヘプタン340gをとり、ショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ(株)、リョートーシュガーエステルS−370)0.92g、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学(株)、ハイワックス1105A)0.92gを添加し、撹拌しつつ80℃まで昇温して界面活性剤を溶解した後、50℃まで冷却した。
一方、500mL容の三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液92g(1.02モル)をとり、外部より冷却しつつ、21質量%の水酸化ナトリウム水溶液146.0gを滴下して75モル%の中和を行った後、ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.11g(0.41ミリモル)、内部架橋剤としてN,N’−メチレンビスアクリルアミド9.2mg(0.06ミリモル)を加えて溶解し、工程1の単量体水溶液を調製した。
攪拌翼の先端周速を1.6m/sとし、前記の工程1の単量体水溶液の全量を、前記セパブルフラスコに添加して、系内を窒素で十分に置換した後、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、工程1の重合を30分間行い、工程1のスラリーを得た。
一方、別の500mL容の三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液128.8g(1.43モル)をとり、外部より冷却しつつ、27質量%の水酸化ナトリウム水溶液159.0gを滴下して75モル%の中和を行った後、ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.16g(0.59ミリモル)、内部架橋剤としてN,N’−メチレンビスアクリルアミド12.9mg(0.08ミリモル)を加えて溶解して、工程2の単量体水溶液を調製した。
攪拌翼の先端周速を2.6m/sに変更して、前記工程1のスラリーを、界面活性剤が溶解している状態を保持するため、スラリーの温度が40〜60℃の範囲内になるように制御しながら、工程2の単量体水溶液を系内に添加し、10分間攪拌した。次にスラリーを22℃に冷却し、系内を窒素で十分に置換した後、再度、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、工程2の重合を30分間行った。
工程2の重合後、125℃の油浴でスラリーを昇温し、n−ヘプタンと水との共沸蒸留によりn−ヘプタンを還流しながら222gの水を系外へ抜き出した後、エチレングリコールジグリシジルエーテルの2%水溶液3.97g(0.46ミリモル)を添加し、80℃で2時間、後架橋反応を行った。その後、125℃の油浴でスラリーを昇温し、n−ヘプタンを蒸発させて乾燥することによって、吸水性樹脂228.4gを得た。吸水性樹脂の中位粒子径は350μm、水分率は8.1%であった。各性能の測定結果を表1に示す。
[比較例2]
実施例1において、工程2の攪拌翼の先端周速を3.2m/sに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、吸水性樹脂228.2gを得た。吸水性樹脂の中位粒子径は390μm、水分率は7.7%であった。各性能の測定結果を表1に示す。
[比較例3]
実施例1において、工程2の攪拌翼の先端周速を6.8m/sに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、吸水性樹脂225.8gを得た。吸水性樹脂の中位粒子径は380μm、水分率は7.2%であった。各性能の測定結果を表1に示す。
[比較例4]
実施例2において、工程3の単量体水溶液を系内に添加した後、スラリーを冷却し、界面活性剤を析出する工程を行わずに、系内を窒素で十分に置換した後、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、第3段目の重合を30分間行うことに変更した以外は、実施例2と同様の操作を行い、吸水性樹脂227.8gを得た。吸水性樹脂の中位粒子径は230μm、水分率は7.3%であった。各性能の測定結果を表1に示す。
[比較例5]
実施例1において、工程2の逆相懸濁重合終了後のスラリーに、工程3の水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を添加する際に、界面活性剤を析出させるために工程2のスラリーを20℃に冷却し、同温度の前記工程3の単量体水溶液を系内に添加し、30分間吸収させると同時に系内を窒素で十分に置換した後、再度、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、工程3の重合を30分間行うことに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、吸水性樹脂227.5gを得た。吸水性樹脂の中位粒子径は530μm、水分率は8.1%であった。各性能の測定結果を表1に示す。
表1から明らかなように、実施例1〜3の製造方法では、通液性能に優れ、かつ粗粉が少なく適度な中位粒子径を有する吸水性樹脂が得られた。
一方、比較例においては、逆相懸濁重合を2段で行う製造方法の場合(比較例1)、0.69質量%塩化ナトリウム水溶液の通液速度が遅い吸水性樹脂が得られた。第2段目の単量体水溶液の添加及び逆相懸濁重合の攪拌における攪拌翼の先端周速が3.5m/s未満の場合(比較例2)、工程1の逆相懸濁重合で得られた含水ゲルが凝集し、0.69質量%塩化ナトリウム水溶液の通液速度が遅い吸水性樹脂が得られた。
工程2の単量体水溶液の添加及び逆相懸濁重合の攪拌における攪拌翼の先端周速が6.5m/sを超える場合(比較例3)、工程1で得られた含水ゲルの工程2の水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液の吸収が阻害され、微粉の粒子が比較的多く、0.69質量%塩化ナトリウム水溶液の通液速度が遅い吸水性樹脂が得られた。
界面活性剤を溶解させた状態で工程3の水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を添加し、逆相懸濁重合を行う製造方法の場合(比較例4)、微粉の粒子が多く、0.69質量%塩化ナトリウム水溶液の通液速度が遅い吸水性樹脂が得られた。また、工程3の水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を添加する際に、界面活性剤を析出させるために工程3のスラリーを冷却した製造方法の場合(比較例5)、粒度分布において粒子径が600μmを超えるものが15質量%以上あり、粗粉が多い吸水性樹脂が得られた。