JP5637655B2 - マグネシウム合金と鋼の異種金属接合方法及び接合構造 - Google Patents
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しかも、Fe−Mg二元状態図は二相分離型を示し、互いの固溶限も非常に小さいことから、これら金属を主成分とする上記材料同士を直接接合することは、冶金的に極めて困難である。
そして、接合に際しては、抵抗スポット溶接装置による通電加熱及び加圧によって共晶溶融を生じさせ、その反応生成物を接合界面から排出するようにしているが、マグネシウム合金材側の電極として、その先端当接面の曲率半径Rがマグネシウム合金材の板厚tに応じて定まる最適なものを用いるようにしている。
言い換えると、マグネシウム合金材の板厚(t)が0.5mmに満たない場合は40mm以上100mm未満の曲率半径(R)の電極、板厚が0.5mm以上0.8mm未満の場合は50mm以上100mm未満の曲率半径の電極、板厚が0.8mm以上1.6mm未満の場合は50mm以上125mm未満の曲率半径の電極、板厚が1.6mm以上2.3mm未満の場合は50mm以上150mm未満の電極、板厚が2.3mm以上4.0mm以下の場合は100mm以上150mm未満の電極をそれぞれ使用する。
すなわち、Mg−Zn系合金は341℃及び364℃に2点、Mg−Cu系合金は485℃及び552℃に2点の共晶点をそれぞれ有している。また、Mg−Sn系合金及びMg−Ni系合金にはそれぞれ561℃及び506℃の共晶点があることが知られている。
これによって、新たにめっきを施したり、特別な準備を要したりすることもなく、防錆目的でめっきを施した通常の市販鋼材をそのまま使用することができ、極めて簡便かつ安価に、マグネシウム合金材との強固な接合を行うことができるようになる。
したがって、マグネシウム合金材としてこれらの合金を利用することによって、改めて合金調合することなく、Al含有のマグネシウム合金材を安価に入手し、本発明に適用することができる。
図1は、Mg−Zn系2元状態図を示すものであって、図に示すようにMg−Zn系には、共晶点が2点(Te1及びTe2)あり、それぞれ341℃及び364℃であり、マグネシウムの融点650℃よりも遙かに低い温度で共晶反応を生じる。
したがって、図に示した共晶点を利用してMgとZnの共晶溶融を作り出し、接合時の酸化皮膜除去に利用することによって、接合性を阻害するマグネシウムの酸化皮膜を低温で確実に除去できると共に、接合時の界面温度をより均一に保持できるようになり、安定した接合が実施できる。
したがって、両金属の清浄面を接触させ、共晶温度以上に加熱保持すると反応が生じ、これを共晶溶融といい、共晶組成は相互拡散によって自発的に達成されるため、組成のコントロールは必要ない。
まず、図2(a)に示すように、少なくとも接合界面側の表面に、Mgと共晶を形成する金属として亜鉛を含む亜鉛めっき層(第3の材料)1pが施された亜鉛めっき鋼板1と、マグネシウム合金材2を用意する。そして、図2(b)に示すように、これら亜鉛めっき鋼板1とマグネシウム合金材2を亜鉛めっき層1pが内側になるように重ねる。なお、マグネシウム合金材1には、予め適量のAl(例えば、6%程度)が添加されており、表面には酸化皮膜2fが生成している。なお、亜鉛めっき鋼板1に替えて、Zn−Al合金めっき鋼板を用いることも可能である。
このように酸化皮膜1fが破壊されると、MgとZnの局部的な接触が起こり、所定の温度状態に保持されると、図2(d)に示すように、MgとZnの共晶液相Eが生じ、これと共に、マグネシウム合金材2の表面の酸化皮膜2fが接合界面から順次、効果的に除去される。
このとき、接合界面における共晶溶融生成物や酸化皮膜等の残存は強度低下の要因となる。そこで、本発明においては、先端に曲面を備えた電極を使用することによって、これらの接合界面からの排出を促進するようにしている。
電極の先端曲率半径Rの増大は、均一な電流密度分布領域、加圧分布領域の増大に寄与し、強度向上に効果的である一方、亜鉛、共晶溶融物、除去された酸化皮膜等の排出性が損なわれる傾向があり、これらが接合界面に残存した場合には強度の低下を招く。したがって、これら均一性と排出性を両立させる領域の先端曲率半径Rの電極を用いることによって高強度を実現できる。
一方、Mg−Zn系合金の共晶点温度は、上記したように341℃、364℃と極めて低く、より低い温度から容易に接合界面から反応生成物を排出でき、排出工程の時間も長い。
したがって、電極先端の曲率半径を大きくすることにより、接合面内での電流密度、加圧力の分散、均一化による有効ナゲット径の拡大が実現でき、排出性と均一性とを両立することが可能となり、高い継手強度をえることができるようになる。
さらに、亜鉛めっき鋼板1のめっき層1p中のZnとMgの間に形成された共晶溶融物や、酸化皮膜2fに由来する酸化物などを含む排出物Wが接合部、すなわち化合物層3の周囲に排出され、両板材1,2間に介在している。なお、上記排出物Wには、接合界面の不純物や、被接合材に含まれる成分、余剰のZnなども含まれることがある。
すなわち、上記圧痕Dの曲率半径は、マグネシウム合金材2の板厚(t)が2.3mmに満たない場合には、(6.25t+37.5)mm以上、(31.25t+100)mm以下、板厚(t)が2.3mm以上の場合には100〜150mmのものとなる。
また、マグネシウム合金材としては、約6%のAlを含有するマグネシウム合金材(AZ61)であって、板厚0.4、0.6、0.8、1.0、1.2、1.6、2.0、2.3、3.0、3.2、4.0mmのものを用意した。
なお、電極11、12としては、図5に示すようなR型電極であって、電極先端の曲率半径Rが5、10、20、40、50、75、100、125、150、200mmの都合10種類のものをそれぞれ用いた。
このときの接合条件としては、マグネシウム合金材2及び鋼材1の板厚に応じて、加圧力を100〜300kgf、通電時間を10サイクル(200msec)〜25サイクル(500msec)、溶接電流を10000〜35000Aの範囲で調整した。
なお、表中においては、ナゲット径が5√t(tは板厚)となるように接合条件を設定し、マグネシウム合金材同士を溶接した場合の継手強度を継手強度基準とし、当該基準をクリアしたもの(上記基準の100%以上)を極めて良好として「◎」、上記基準と同等のもの(上記基準の90%以上)を良好として「○」、上記基準値に及ばないもの(上記基準の80%未満)を「×」、上記基準値に若干及ばないもの(上記基準の80%以上)を「△」と表した。
また、マグネシウム合金材2の板厚tが0.6mmの場合には、曲率半径Rが50mm〜100mmの場合に、板厚tが0.8mm、1.0mm及び1.2mmの場合には、曲率半径Rが50mm〜125mmの場合に、上記強度基準値と同等以上の強度が得られることが確認された。
また、マグネシウム合金材2の板厚tが2.3mm以上の場合においては、電極先端面の曲率半径Rが100〜150mmで良好な継手強度が得られると共に、曲率半径Rが100mmを超え、150mm未満のときに極めて良好な継手強度となることが確認された。
1c 亜鉛めっき層(第3の材料)
2 マグネシウム合金材
2f 酸化皮膜
3 化合物層
12 電極(マグネシウム合金材に当接する電極)
t マグネシウム合金材の板厚
R 曲率半径
Claims (5)
- 接合面に酸化皮膜が存在するマグネシウム合金材と鋼材との間に、Mg及びFeの少なくとも一方と共晶溶融を生じる金属を含有する第3の材料を介在させ、接合界面に共晶溶融を生じさせて上記マグネシウム合金材と鋼材を抵抗スポット溶接するに際して、
上記マグネシウム合金材及び第3の材料の少なくとも一方にAlを含有させると共に、マグネシウム合金材の板厚をtとし、マグネシウム合金材に当接する電極の当接面における曲率半径をRとするとき、以下の関係式を満たす電極を用い、上記酸化皮膜を含む上記共晶溶融による反応生成物を接合界面から排出すると共に、接合界面にAlとの金属間化合物を形成させ、Al−Mg系及び/又はFe−Al系金属間化合物を含む化合物層を介して接合することを特徴とするマグネシウム合金と鋼との異種金属接合方法。
t<2.3mmの場合、6.25t+37.5≦R≦31.25t+100
t≧2.3mmの場合、100≦R≦150 - 以下の関係式を満たす電極を用いることを特徴とする請求項1に記載の異種金属接合方法。
t<2.3mmの場合、15.625t+43.75≦R≦20.83t+83.33
t≧2.3mmの場合、100<R<150 - 接合面に酸化皮膜が存在するマグネシウム合金材と鋼材との間に、Mg及びFeの少なくとも一方と共晶溶融を生じる金属を含有する第3の材料を介在させ、接合界面に共晶溶融を生じさせて上記マグネシウム合金材と鋼材を抵抗スポット溶接するに際して、
上記マグネシウム合金材及び第3の材料の少なくとも一方にAlを含有させると共に、マグネシウム合金材の板厚をtとし、マグネシウム合金材に当接する電極の当接面における曲率半径をRとするとき、t<0.5mmの場合は40mm≦R<100mm、0.5mm≦t<0.8mmの場合は50mm≦R<100mm、0.8mm≦t<1.6mmの場合は50mm≦R<125mm、1.6mm≦t<2.3mmの場合は50mm≦R<150mm、2.3mm≦t≦4.0mmの場合は100mm≦R<150mmの電極を用い、上記酸化皮膜を含む上記共晶溶融による反応生成物を接合界面から排出すると共に、接合界面にAlとの金属間化合物を形成させ、Al−Mg系及び/又はFe−Al系金属間化合物を含む化合物層を介して接合することを特徴とするマグネシウム合金と鋼との異種金属接合方法。 - 上記第3の材料が鋼材に施された亜鉛めっき層であることを特徴とする請求項3に記載の異種金属接合方法。
- 請求項1〜4のいずれか1つの項に記載の方法によって得られる接合構造であって、マグネシウム合金材と鋼材の新生面同士がAl−Mg系及び/又はFe−Al系金属間化合物を含む化合物層を介して接合されていると共に、当該接合部の周囲に共晶溶融反応生成物を含む排出物が排出されており、マグネシウム合金材の表面には、その板厚tに応じた上記曲率半径Rの圧痕が形成されていることを特徴とするマグネシウム合金と鋼との異種金属接合構造。
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