JP5635443B2 - 新規化合物とその錯体並びに錯体の製造方法 - Google Patents

新規化合物とその錯体並びに錯体の製造方法 Download PDF

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本発明は、カップリング反応触媒の配位子の前駆体として有用な新規化合物(新規配位子前駆体)と構成成分としてその配位子と金属を含む錯体(新規な金属錯体又はカップリング触媒)、及び前記錯体の製造方法、並びにカップリング反応を利用した芳香族化合物の製造方法に関する。
クロスカップリング反応に有用なバラジウム錯体の配位子として、ホスフィン配位子が利用されている。例えば、特開2008−247880号公報(特許文献1)には、金属と配位するジシクロアルキルホスフィノ基とフェノール性ヒドロキシル基とを有するホスフィン化合物を配位子としたカップリング触媒が開示されている。また、特開2006−69931号公報(特許文献2)には、ジフェニルホスフィノ基を有する2’,3’,4’,5’− テトラフェニルビフェニル化合物を配位子としたカップリング触媒が開示されている。
さらに、特表2007−505945号公報(特許文献3)には、ホスフィノ基を有するN−フェニルピロール誘導体を配位子としたカップリング触媒が開示されている。
クロスカップリング触媒の配位子として、含窒素複素環カルベン(以下、NHCと称する)配位子(以下、NHC配位子と称する)も知られている。例えば、NHC配位子あるいはNHC配位子前駆体として、N,N−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾリジン−2−イリデン、N,N−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン、N,N−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾリニウム クロライドなどが利用されている。例えば、Organometallics,vol.29, No.6, (2010),144(非特許文献1)には、カップリング反応にPdCl(N,N−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン)P(OCHを用いることが記載されている。JACS,vol.131, No. 34,(2009),12240(非特許文献2)には、カップリング反応に2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)−4’−(N,N−ジメチルアミノ)−1,1’−ビフェニルを用いることが記載されている。
しかし、これらのホスフィン系配位子及び錯体は、安定性が低く、危険性がある。すなわち、水、空気との反応性があり、室温で安定性がなく、取り扱いにくい。
なお、Kuriyama, M.; Shimazawa, R.; Shirai, R. Tetrahedron 2007, 63, 9393-9400(非特許文献3)には、NHCを母核とするC−S二座型配位子を用いた鈴木−宮浦クロスカップリング反応では、十分な反応性が得られず、塩化アリールとアリールボロン酸のクロスカップリング反応には適用できなかったことが報告されている。
特開2008−247880号公報 特開2006−69931号公報 特表2007−505945号公報
Organometallics, vol.29, No.6, (2010),144 JACS,vol.131, No. 34,(2009),12240 Kuriyama, M.; Shimazawa, R.; Shirai, R. Tetrahedron 2007, 63, 9393-9400
従って、本発明の目的は、高活性で安定なカップリング触媒(又は錯体)の配位子前駆体として有用な新規化合物とその製造方法、この前駆体から発生させた配位子を含む錯体(又はカップリング触媒)を提供することにある。
本発明の他の目的は、カップリング反応において、遷移金属に対する配位部位を有していない基質(アリール化合物)のみならず、遷移金属に対する配位元素を含む基質(ヘテロアリール化合物など)であっても、効率よくカップリングできるカップリング触媒(又は金属錯体)とその配位子前駆体、及びカップリング反応を利用した芳香族化合物の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため、クロスカップリング触媒の配位子の構造について鋭意検討した結果、N−アリール−N−アリールアルキレンイミダゾール化合物においてN−アリール基にエーテル部位(アルコキシ基やフェノキシ基などに由来するエーテル結合)や水酸基を導入すると、二座配位子の形態となり、安定で活性の高い触媒が得られること、イミダゾール環の2つの窒素原子(結合部位)に異なる形態でアリール基を導入して非対称の構造にすると、立体的又は電子的に、さらに高活性で安定な構造の触媒が得られること、さらにはヘテロアリール化合物とのカップリング、特に、驚くべきことに、これまで反応例のないヘテロアリール化合物同士のカップリング反応でも高い活性を示す触媒が得られることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明の配位子前駆体として有用な新規化合物は下記式(1)で表される。
Figure 0005635443
(式中、Rはヒドロキシル基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基を示し、R及びRは、同一又は異なって、水素原子又はアルキル基を示し、R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子又はアルキル基を示し、Rはアルキレン基を示し、Xはアニオンを示し、前記アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アルキル基は置換基を有していてもよい)
前記化合物(配位子前駆体)において、Rは、直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルコキシ基(例えば、直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルコキシ基)、C5−10シクロアルコキシ基又はC6−10アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基)であってもよい。特に、Rは直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルコキシ基又はフェノキシ基であってもよい。
及びRは、同一又は異なって、水素原子又は直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基(例えば、直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基、特に、メチル基などのC1−2アルキル基)であってもよい。
、R及びRは、同一又は異なって、水素原子又は直鎖状C1−4アルキル基(例えば、C1−3アルキル基、特に、メチル基などのC1−2アルキル基)であってもよい。
は、直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキレン基(例えば、C1−3アルキレン基、特に、メチレン基などのC1−2アルキレン基)であってもよい。
さらに、前記式で表される化合物において、Rはベンゼン環のo−,m−,p−位のいずれに置換していてもよいが、o−位に置換しているのが好ましい。配位子として好ましい化合物は下記式(1a)で表すことができる。
Figure 0005635443
(式中、R7aはメチレン基又はエチレン基を示し、R〜R、及びXは前記に同じ)
本発明は、前記化合物(配位子前駆体)から発生させた配位子と遷移金属とで構成された錯体(前記配位子が金属に配位した金属錯体)も包含する。この錯体において、遷移金属はパラジウムであってもよい。また、前記錯体は、クロスカップリング反応での触媒活性が高く、カップリング触媒であってもよい。
前記化合物(配位子前駆体)は、下記式(5)で表される化合物と、下記式(6)で表される化合物とを反応させることにより得ることができる。
Figure 0005635443
(式中、R〜Rは前記に同じ。Xはハロゲン原子を示す)
さらに、前記錯体(又はカップリング触媒)は、遷移金属に前記配位子前駆体を塩基で処理しカルベンを生成させて配位させることにより製造できる。
本発明は、前記錯体(又はカップリング触媒)の存在下、ハロゲン原子を有する芳香族化合物と、芳香族ボロン酸とをカップリングさせ、ビスアリール化合物を製造する方法も包含する。
本発明に係る化合物は、カップリング触媒(又は錯体)の配位子前駆体として有用であり、高い活性を生じる力を保持しつつ安定で取り扱いやすい。また、前記化合物を金属錯体の配位子前駆体として用いると、遷移金属に対する配位部位を有していない基質(アリール化合物)のみならず、遷移金属に対する配位元素を含む基質(ヘテロアリール化合物など)であっても、効率よくカップリングでき、高い収率でアリール化合物を製造できる。特に、遷移金属に対する配位元素を含むヘテロアリール化合物同士であっても高い効率でカップリングできる。
[新規化合物(又は新規配位子前駆体)]
前記式(1)及び(2)で表される化合物において、Rはヒドロキシル基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基を示す。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状アルコキシ基が例示できる。これらのアルコキシ基のうち、直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルコキシ基、特に、直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基など)が好ましい。
で表されるシクロアルキルオキシ基としては、例えば、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロオクチルオキシ基などのC5−10シクロアルキルオキシ基が例示できる。
アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基などのC6−10アリールオキシ基が例示できる。好ましいアリールオキシ基はフェノキシ基である。アラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルオキシ基が例示できる。
は置換基を有していてもよい。Rの置換基(非反応性置換基)としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などのC5−10シクロアルキル基)、アリール基(フェニル基、ナフチル基などのC6−10アリール基、トリル基などの置換基を有していてもよいC6−10アリール基など)、ヒドロキシル基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルコキシ基など)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルコキシ−カルボニル基)、アシル基(アセチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル−カルボニル基)などであってもよい。置換基の種類はRの種類に応じて選択できる。具体的には、置換基を有するアルコキシ基としては、例えば、メトキシメトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルコキシ−C1−4アルコキシ基、フェニルメトキシ基などのC6−10アリール−C1−4アルコキシ基などが例示でき、置換基を有するアリールオキシ基としては、例えば、ヒドロキシフェノキシ基、メトキシフェノキシ基、エトキシフェノキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルコキシ−C6−10アリールオキシ基、トリルオキシ基(o−,m−,p−トリルオキシ基)、キシリルオキシ基(2,3−、2,6−、3,5−キシリルオキシ基など)などの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル−C6−10アリールオキシ基などが例示できる。
好ましいRは、アルコキシ基(メトキシ基、イソプロポキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルコキシ基、特に分岐鎖状アルコキシ基)、アリールオキシ基(フェノキシ基、トリルオキシ基、キシリルオキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基を有していてもよいC6−10アリールオキシ基)である。特に、Rが分岐鎖状アルコキシ基及び置換基を有していてもよいアリールオキシ基、中でもアリールオキシ基である化合物は高い活性を示す。
前記式(1)で表される化合物において、Rはベンゼン環のo−,m−,p−位のいずれに置換していてもよいが、Rがベンゼン環のo−位に置換した化合物(2)は、錯体(カップリング触媒)の形態で、安定で高い触媒活性を示す。
なお、Rが置換していない化合物、Rがアルキル基、アルキルチオ基である化合物は活性が低く、カップリング反応触媒の配位子として適していない。
及びRは、水素原子又はアルキル基を示し、アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基などが例示できる。好ましいR及びRは、水素原子又は直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基(例えば、直鎖状又は分岐鎖状C1−3アルキル基、特にメチル基などのC1−2アルキル基)である。R及びRの種類は同一であってもよく互いに異なっていてもよい。
、R及びRは、水素原子又はアルキル基を示し、アルキル基としては、上記R及びRと同様のアルキル基が例示できる。好ましいR、R及びRは、水素原子、特に、直鎖状C1−4アルキル基(例えば、C1−3アルキル基、特に、メチル基などのC1−2アルキル基)である。R、R及びRの種類は同一であってもよく互いに異なっていてもよい。なお、R、R及びRで表されるアルキル基が、嵩高い分岐鎖状アルキル基である場合、触媒の活性が低下しやすい。
〜Rで表されるアルキル基は置換基を有していてもよい。アルキル基の置換基(非反応性置換基)は、例えば、アリール基(フェニル基、ナフチル基などのC6−10アリール基、直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基、直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルコキシ基などの置換基を有するC6−10アリール基(トリル基など)など)、ヒドロキシル基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルコキシ基など)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルコキシ−カルボニル基)、アシル基(アセチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル−カルボニル基)などであってもよい。置換基の種類はR〜Rの種類に応じて選択できる。具体的には、置換基を有するアルキル基としては、例えば、フェニルメチル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基、メトキシメチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルコキシ−C1−4アルキル基などが例示できる。
はアルキレン基を示し、アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、ジメチルメチレン基、エチルメチレン基、テトラメチレン基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキレン基などが例示できる。好ましいRは、非対称構造とするため、アルキレン基は、直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキレン基(例えば、直鎖状又は分岐鎖状C1−3アルキレン基、特にメチレン基などのC1−2アルキレン基)である。
で表されるアニオンとしては、ハロゲンイオン(フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン)、ボレート(例えば、BF 、B(C など)、ホスフェート(例えば、PF など)、スルホネート(例えば、CFSO など)、アンチモネート(例えば、SbF など)などが例示できる。アニオンXは、通常、ハロゲン原子、例えば、塩素原子又は臭素原子である。
このような化合物(新規配位子前駆体)から生成されるNHC配位子は、イミダゾール骨格とRの酸素部位(ヒドロキシル基の酸素部位及びエーテル部位の酸素部位)との2つの配位部位を有しており、二座配位子として機能させることができる。そのためか、この化合物(新規配位子)を含む金属錯体は、安定で高い触媒活性が発現する。なお、NHC配位子は、前記式(1)で表される化合物において、HとアニオンXを除した化合物に対応する。
前記化合物(1a)を含む好ましい化合物(配位子前駆体)としては、例えば、以下の化合物が例示できる。
1−(2,4,6−トリメチルベンジル)−3−(2−メトキシフェニル)イミダゾリウムクロリド、1−(2,4,6−トリメチルベンジル)−3−(2−エトキシフェニル)イミダゾリウムクロリド、1−(2,4,6−トリメチルベンジル)−3−(2−イソプロポキシフェニル)イミダゾリウムクロリド、1−(2,4,6−トリメチルベンジル)−3−(2−ブトキシフェニル)イミダゾリウムクロリドなどの1−(2,4,6−トリC1−4アルキル−フェニル−C1−4アルキル)−3−(2−C1−4アルコキシフェニル)イミダゾリウムハライド;
1−(2,4,6−トリメチルベンジル)−3−(2−フェノキシフェニル)イミダゾリウムクロリド、1−(2,4,6−トリメチルベンジル)−3−(2−トリルオキシフェニル)イミダゾリウムクロリドなどの1−(2,4,6−トリC1−4アルキル−フェニル−C1−4アルキル)−3−(2−C6−10アリールオキシフェニル)イミダゾリウムハライド;
1−(2,4,6−トリメチルベンジル)−3−(2−メトキシフェニル)−4,5−ジメチルイミダゾリウムクロリド、1−(2,4,6−トリメチルベンジル)−3−(2−エトキシフェニル)−4,5−ジメチルイミダゾリウムクロリド、1−(2,4,6−トリメチルベンジル)−3−(2−イソプロポキシフェニル)−4,5−ジメチルイミダゾリウムクロリド、1−(2,4,6−トリイソプロピルベンジル)−3−(2−メトキシフェニル)−4,5−ジメチルイミダゾリウムクロリド、1−(2,4,6−トリメチルベンジル)−3−(2−ブトキシフェニル)−4,5−ジメチルイミダゾリウムクロリドなどの1−(2,4,6−トリC1−4アルキル−フェニル−C1−4アルキル)−3−(2−C1−4アルコキシフェニル)−4,5−ジC1−4アルキルイミダゾリウムハライド;
1−(2,4,6−トリメチルベンジル)−3−(2−フェノキシフェニル)−4,5−ジメチルイミダゾリウムクロリドなどの1−(2,4,6−トリC1−4アルキル−フェニル−C1−4アルキル)−3−(2−C6−10アリールオキシフェニル)−4,5−ジC1−4アルキルイミダゾリウムハライド;
これらの化合物に対応するボレート(例えば、BF など)、ホスフェート(例えば、PF など)、スルホネート(例えば、CFSO など)、アンチモネート(例えば、SbF など)など。
本発明の化合物は、通常、室温で安定な固体である。しかも、配位子前駆体として利用すると、錯体又は触媒は高い活性を保持する。
[新規化合物(又は配位子前駆体)の製造方法]
前記式(1)で表される新規化合物(又は配位子前駆体)は、下記反応工程式で表されるように、下記式(5)で表される化合物と、下記式(6)で表される化合物とを反応させることにより得ることができる。
Figure 0005635443
(式中、R〜Rは前記に同じ。Xはハロゲン原子を示す)
ハロゲン原子Xとしては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、通常、Xは、塩素原子又は臭素原子である。
化合物(5)の使用量は、化合物(6)1モルに対して、0.5〜5モル程度の範囲から選択でき、通常、0.7〜2.5モル、好ましくは0.8〜1.2モル程度であってもよい。化合物(5)と化合物(6)との反応は、通常、不活性溶媒中で行われる。溶媒としては、例えば、炭化水素類(ヘキサンなど脂肪族炭化水素、シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素、トルエンなどの芳香族炭化水素など)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノールなど)、エーテル類(ジメチルエーテル、ジイソプロピル、ジブチルエーテルなどの鎖状アルキルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル)、エステル類(酢酸エチルなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)、ニトリル類(アセトニトリルなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)などが例示できる。これらの溶媒は単独で又は混合溶媒として使用できる。なお、溶媒としては乾燥した溶媒を用いる場合が多い。反応は、還流温度以下の温度、例えば、30〜120℃、好ましくは50〜100℃(例えば、60〜80℃)程度で行うことができる。
反応は、酸素含有気体(例えば、空気)又は不活性ガス(窒素ガス、ヘリウムガスなど)の雰囲気中で行ってもよい。
反応により生成した化合物(1)は、慣用の方法、例えば、晶析、濾過、濃縮、溶媒抽出、再結晶、液体クロマトグラフィーなどの慣用の分離精製法を利用して単離することができる。
なお、アニオンXがハロゲン原子以外のアニオン(ボレート、ホスフェート、スルホネート、アンチモネートなど)である化合物は、慣用のイオン交換法により、ハロゲンアニオンを他のアニオンで置換することにより得ることができる。
前記イミダゾール環を有する化合物(5)は、慣用の方法、例えば、下記反応工程式に従ってワンポット合成できる。この反応については、文献「Liu, J.; Chen, J.; Zhao, J.; Zhao, Y.; Li, L.; Zhang, H. Synthesis 2003, 17, 2661-2666.」を参照できる。
Figure 0005635443
ジケト化合物(2)と化合物(3)(アニリン誘導体)との反応により生成した化合物(4)を反応系から単離して又は単離することなく、化合物(4)とホルムアルデヒドとアンモニア(又は塩化アンモニウム)との反応に供することにより化合物(5)を得ることができる。
化合物(4)は、ジケト化合物(2)(1,2−ジケトン)で化合物(3)(アニリン誘導体)を処理(又は反応)することにより生成できる。化合物(2)による化合物(3)の処理(又は反応)は、通常、有機溶媒中、撹拌することにより行うことができる。有機溶媒としては、前記と同様の反応に不活性な溶媒、例えば、炭化水素類、アルコール類、エーテル類、エステル類、ケトン類、アミド類、ニトリル類、スルホキシド類などが例示でき、これらの溶媒は単独で又は混合溶媒として使用できる。前記処理(又は反応)は、化合物(2)と化合物(3)とを、例えば、10〜100℃、好ましくは20〜50℃程度(例えば、20〜30℃程度の室温)で行うことができる。
なお、化合物(3)のアニリン誘導体は、アミノフェノールと式R−X(Xはヨウ素原子、臭素原子などのハロゲン原子を示し、Rは前記に同じ)で表される化合物とを反応させ、アミノフェノールのヒドロキシル基をRO−基に変換することにより得ることができる(Rodriguez, J. M.; Nevola, L.; Ross, N. T.; Lee, G.; Hamilton, A. D. ChemBioChem 2009, 10, 829-833.参照)。
化合物(4)は、通常、反応系から単離することなく、ホルムアルデヒドとアンモニア(又は塩化アンモニウムなどのアンモニウムハライド)との反応に供される。ホルムアルデヒド及びアンモニア(又は塩化アンモニウム)の使用量は、例えば、化合物(4)1モルに対して、それぞれ、0.5〜5モル、好ましくは0.8〜2.5モル(例えば、1〜1.5モル)程度である。この反応は、酸触媒、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ヘテロポリ酸などの無機酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸などの存在下で行うことができる。反応は、還流温度以下の温度、例えば、50〜120℃、好ましくは70〜100℃(例えば、80〜100℃)程度で行うことができる。反応は、酸素含有気体(例えば、空気)又は不活性ガス(窒素ガス、ヘリウムガスなど)の雰囲気中で行ってもよい。反応終了後、反応混合物から、化合物(5)を単離してもよい。化合物(5)の単離は、例えば、反応混合物の中和、濾過(セライトなどを用いた濾過)、濃縮、溶媒抽出、晶析、再結晶など慣用の方法で行うことができる。
上記のように、前記化合物(配位子前駆体又は二座型配位子前駆体)は、下記式(5)で表されるイミダゾール化合物のワンポット合成、および式(5)で表されるイミダゾール化合物と式(6)で表される化合物との反応という2ステップの反応により簡便に合成可能である。
[錯体(又は触媒)とその製造方法]
本発明は、前記新規化合物(配位子前駆体)を塩基で処理することにより生成させた配位子と遷移金属とで構成された錯体(前記配位子が金属に配位した金属錯体)も包含する。この錯体において、遷移金属としては、例えば、周期表8族元素(ルテニウム、鉄など)、周期表9族元素(コバルト、ロジウム、イリジウム)、周期表10族元素(ニッケル、パラジウム、白金)、周期表1B族元素(銅など)が例示できる。これらの遷移金属の中で、周期表8族元素、周期表9族元素、特に周期表10族元素が好ましく、周期表10族元素としてはニッケル又はパラジウム、特にパラジウムが有利である。これらの元素(遷移金属)の価数は、0〜6価、好ましくは0〜4価,特に0〜2価(例えば、0又は2価)程度であってもよい。
さらに、前記錯体(又はカップリング触媒)は、遷移金属に前記新規化合物(配位子前駆体)を塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウムなどのアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウムなどのアルカリ金属炭酸塩、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウムなどのアルカリ金属フッ化物、ナトリウムターシャリーブトキシド、カリウムターシャリーブトキシドなどのアルカリ金属アルコキシド、リン酸ナトリウム、リン酸カリウムなどのアルカリ金属リン酸塩などの無機塩基、アミン類などの有機塩基、金属アミド類など)で処理してカルベンとし、配位させることにより生成できる。例えば、前記錯体(又はカップリング触媒)は、遷移金属化合物と前記新規化合物(配位子前駆体)とを有機溶媒中で塩基で処理することにより生成できる。また、前記配位子は、遷移金属化合物と組み合わせて(又は共存させて)前記錯体(又はカップリング触媒)又は触媒系を形成してもよい。このような遷移金属化合物としては、例えば、パラジウム化合物を例にとって説明すると、ハロゲン化物(例えば、塩化パラジウム(II)、四塩化パラジウム(II)リチウムなどの塩化物、臭化パラジウム(II)などの臭化物など)、無機酸塩(例えば、硝酸パラジウム(II)、硫酸パラジウム(II)などの無機酸塩)、酢酸塩などの有機酸塩(例えば、酢酸パラジウム(II)、プロピオン酸パラジウム(II)などの有機酸塩)、アリル錯体(ジアリルクロロパラジウム(PdCl(allyl))など)、ジベンジリデンアセトン錯体(例えば、パラジウム(0)ジベンジリデンアセトン錯体、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムなど)、ホスフィン錯体(例えば、パラジウム(0)テトラキス(トリフェニルホスフィン)、パラジウム(0)ビス(トリ−o−トリルホスフィン)、パラジウム(II)ビス(トリフェニルホスフィン)ジクロリド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム、トリス(トリエチルホスフィン)パラジウムなど)、アセチルアセトン錯体(例えば、アセチルアセトンパラジウム(II)など)、ニトリル錯体(例えば、塩化パラジウム(II)ビス(アセトニトリル)、塩化パラジウム(II)ビス(ベンゾニトリル)など)などが挙げられる。
遷移金属化合物と配位子との割合は、遷移金属化合物1モルに対して配位子1〜100モル、好ましくは1〜50モル(例えば、1.2〜25モル)、さらに好ましくは1.5〜10モル(例えば、1.5〜5モル)、特に1.5〜2.5モル程度であってもよい。
なお、有機溶媒としては、例えば、不活性溶媒(アルコール類、エーテル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、トルエン、エステル類、アミド類、ニトリル類、スルホキシド類など)が使用できる。遷移金属化合物と前記配位子とは、適当な温度、例えば、10〜100℃、好ましくは15〜680℃程度の温度で混合できる。この温度は、下記のカップリング反応の反応温度であってもよい。
このような金属錯体又は触媒系は、クロスカップリング反応での触媒活性が高く、カップリング触媒として有用である。
[カップリング反応と芳香族化合物の製造]
本発明の化合物(1)を含む金属錯体又は触媒系は、遷移金属触媒(例えば、パラジウム触媒)を用いる種々の有機合成反応に利用でき、このような反応としては、カップリング反応、ヒドロシリル化反応、オレフィンメタセシス反応、C−H結合活性化反応などが例示できる。本発明の触媒はクロスカップリング反応、ヒドロシリル化用触媒として有用である。代表的なクロスカップリング反応としては、スズキカップリング反応(スズキ−ミヤウラカップリング反応)、ソノガシラカップリング反応などが例示できる。本発明の触媒は、芳香族化合物をカップリングして、ビスアリール化合物(ジアリールメタン化合物などを含む)を製造するのに有用であり、特に、スズキカップリング反応(スズキ−ミヤウラカップリング反応)として知られているアリールクロスカップリング反応に有利に使用される。この反応では、置換基を有してもよいハロアリール化合物と、置換基を有してもよいアリールボロン酸(又はアリールトリフルオロボレート又はその塩)とのカップリング反応により置換基を有してもよいビスアリール化合物(ジアリールアルカン化合物を含む)を高収率で製造できる。特に、本発明の化合物(1)を含む金属錯体又は触媒系は、ヘテロアリール化合物同士のカップリング反応でも高い活性を示し、ビスヘテロアリール化合物(ジヘテロアリールアルカン化合物を含む)を高い収率で得られるという特色がある。アリールボロン酸を用いた代表的な反応は、例えば、下記式で表すことができる。
Figure 0005635443
(式中、環Ar及び環Arは同一又は異なって芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を示し、Xはハロゲン原子を示し、Rはアルキレン基を示し、R及びR10は置換基を示し、nは0又は1を示す)
環Ar及び環Arで表される芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナンスレン環、ピレン環、トリフェニレン環などのC6−24アレーン環、ビフェニル環、ターフェニル環などの環集合C6−18アレーン環などが例示できる。芳香族複素環としては、窒素、酸素、硫黄原子から選択された少なくとも一種のヘテロ原子を5又は6員環の構成原子として含む単環式又は縮合環式複素環、例えば、チオフェン環、フラン環、ベンゾフラン環、クロメン環、クロマン環、ピロール環、ピリジン環、ピリミジン環、インドール環、イソキノリン環、キノリン環、ナフチリジン環、カルバゾール環、イミダゾール環、ベンゾチオフェン環などが例示できる。
環Ar及び環Arはそれぞれ芳香族炭化水素環又は芳香族複素環であってもよく、環Ar及び環Arの一方の環が芳香族炭化水素環であり、他方の環が芳香族複素環であってもよい。本発明の化合物(1)(特に、化合物(1a)のように、Rがフェニル基のo−位置に置換した化合物)は、基質(式(7)で表される化合物及び/又は式(8)で表される化合物)が遷移金属に対する配位性の元素又は基を有していても、高い反応促進能を有し、高い収率で目的化合物を得ることができる。
で表されるハロゲン原子としては、前記Xと同様のハロゲン原子が例示でき、通常、ヨウ素原子、臭素原子又は塩素原子である。
で表されるアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、ジメチルメチレン基、エチルメチレン基、テトラメチレン基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキレン基などが例示できる。好ましいアルキレン基は、直鎖状又は分岐鎖状C1−3アルキレン基、特にメチレン基などのC1−2アルキレン基である。nは0又は1の整数を示す。
及びR10で表される置換基の種類は、目的化合物(9)に応じて選択でき、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基)、ヒドロキシル基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルコキシ基など)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルコキシ−カルボニル基)、カルバモイル基、N−置換カルバモイル基(N−アルキルカルバモイル基、N−アシルカルバモイル基など)、アシル基(アセチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル−カルボニル基)、アミノ基、N−置換アミノ基(N,N−ジアルキルアミノ基、N,N−ジアシルアミノ基など)、ニトロ基、シアノ基などであってもよい。
なお、式(8)で表されるアリールボロン酸では、置換基R10として、式(7)で表されるハロアリール化合物のハロゲン原子よりも反応性の低いハロゲン原子、例えば、フッ素原子、塩素原子を含んでいてもよい。
式(7)で表されるハロアリール化合物の使用量は、式(8)で表されるアリールボロン酸1モルに対して、0.5〜2モル程度の範囲から選択でき、通常、0.7〜1.5モル、好ましくは0.8〜1.3モル、さらに好ましくは0.9〜1.1モル(例えば、0.95〜1.05程度のほぼ等モル)程度である。
なお、前記のように、式(8)で表されるアリールボロン酸に代えて、アリールトリフルオロボレート又はその塩を用いても、式(9)で表される化合物を効率よく生成できる。
反応は、通常、有機溶媒中で行われる。有機溶媒としては、例えば、水、炭化水素類(ヘキサンなど脂肪族炭化水素、シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素、トルエンなどの芳香族炭化水素など)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノールなど)、エーテル類(ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどの鎖状アルキルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル)、エステル類(酢酸エチルなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)、ニトリル類(アセトニトリルなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)などが例示できる。これらの溶媒は単独で又は混合溶媒として使用できる。
反応は、塩基の存在下で行うことができる。塩基としては、例えば、無機塩基(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウムなどのアルカリ金属炭酸塩又はアルカリ金属炭酸水素塩、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウムなどのアルカリ金属フッ化物塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、ナトリウムターシャリーブトキシド、カリウムターシャリーブトキシドなどのアルカリ金属アルコキシド、リン酸ナトリウム、リン酸カリウムなどのアルカリ金属リン酸塩など)、有機塩基(トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンなどの第三級アミンなど)、金属アミド類(リチウムヘキサメチルジシラシド、カリウムヘキサメチルジシラシドなどのアルカリ金属アミド)などが例示できる。これらの塩基の使用量は、反応により生成するハロゲン化水素を捕捉可能であればよく、通常、式(7)で表されるハロアリール化合物1モルに対して、少なくとも1モル(例えば、1〜10モル)程度であってもよく、通常、過剰モル使用される。
反応は、0〜150℃、好ましくは20〜120℃、さらに好ましくは30〜100℃程度で行うことができる。また、反応は酸素含有気体(例えば、空気)又は不活性ガス(窒素ガス、ヘリウムガスなど)の雰囲気中で行ってもよい。
反応により生成した化合物(9)は、前記と同様の慣用の方法で分離精製し単離することができる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
なお、構造決定ならびに物性値の測定には以下の機器を用いた。融点は、MICRO MELTING POINT APPARATUS(Yanaco)を用いて測定し、測定値は全て未補正値である。赤外吸収スペクトル(IR)は、島津製作所製IRAffinity-1を用いて測定した。核磁気共鳴スペクトル(H−NMR、13C−NMR)は、JEOL JNM-AL400(400MHz)を用いて測定した。内部標準物質としてテトラメチルシランを、測定溶媒としてCDClを用いて測定し、測定値は全てδ(ppm)値で示した。元素分析は、パーキンエルマー2400IIを用いて測定した。質量分析スペクトルは、日本電子JMS−700Nを用いて測定した。試薬は特に記さない限り、市販品をそのまま用いた。
また、下記の化学式及び表中、OMeはメトキシ基、O−i−Proはイソプロポキシ基、OPhはフェノキシ基、i−Proはイソプロピル基、SMeはメチルチオ基、Etはエチル基、Hは水素原子、CHはメチル基、−CH−はメチレン基を示す。また、Rについて、o−はオルト位、p−はパラ位の置換位置を示す(以下、同じ)。
実施例1(1−(2,4,6−トリメチルベンジル)−3−(2−メトキシフェニル)イミダゾリウムクロリド
Figure 0005635443
2,4,6−トリメチルベンジルクロリド(118mg,7.0mmol)を、1−(2−メトキシフェニル)−1H−イミダゾール(122mg,7.0mmol)の乾燥テトラヒドロフラン(30mL)溶液に添加した。混合物を70℃で12時間攪拌した。得られた固体を濾過し、テトラヒドロフランで洗浄して、標記化合物818mg(2.4mmol,34%)の白色固体物質として得た。
融点:185−186℃
H NMR(400MHz,CDCl):2.31(3H,s),2.36(6H,s),3.93(3H,s),5.96(2H,s),6.95(1H,s),7.01−7.02(1H,m),7.11(1H,d,J=8.0Hz),7.12−7.16(1H,m),7.37−7.38(1H,m),7.48−7.52(1H,m),7.62(1H,dd,J=1.5,8.0Hz),11.0(1H,s)
13C NMR(100MHz,CDCl):19.7,20.9,48.1,56.1,112.5,120.2,121.5,123.0,123.2,125.5,125.6,129.7,131.6,137.7,138.1,139.5,151.9
IR(neat):1010,1250,1500,3040cm−1
HRMS(FAB)m/z(C2023O(M−Cl)について):計算値307.1810;実測値:307.1808。
実施例2(1−(2,4,6−トリメチルベンジル)−3−(2−メトキシフェニル)−4,5−ジメチルイミダゾリウムクロリド
Figure 0005635443
2,4,6−トリメチルベンジルクロリド(280mg,1.38mmol)を、合成例1で得られた化合物4,5−ジメチル−1−(2−メトキシフェニル)−1H−イミダゾール(233mg,1.38mmol)の乾燥テトラヒドロフラン(10mL)溶液に添加した。混合物を70℃で12時間攪拌した。得られた固体を濾過し、テトラヒドロフランで洗浄して、標記化合物405mg(1.1mmol,79%)を白色固体物質として得た。
融点:213−214℃
H NMR(400MHz,CDCl):2.01(3H,s),2.17(3H,s),2.27(3H,s),2.34(6H,s),3.82(3H,s),5.84(2H,s),6.88(2H,s),7.07(1H,d,J=8.3Hz),7.11(1H,t,J=7.8Hz),7.46−7.55(2H,m),9.51(1H,s)
13C NMR(100MHz,CDCl):8.5,8.9,19.8,20.8,46.9,55.8,112.3,121.2,121.4,125.4,127.0,128.0,128.6,129.8,132.4,135.5,137.7,139.0,153.6
IR(neat):1020,1260,1290,1440,1500,1560,2950cm−1
HRMS(FAB)m/z(C2217O(M−Cl)について):計算値335.2123;実測値:335.2148
元素分析(C2227ClNO):計算値C,71.24;H,7.34;N,7.55;実測値C,71.52;H,7.55;N,7.52。
実施例3(1−(2,4,6−トリメチルベンジル)−3−(2−イソプロポキシフェニル)−4,5−ジメチルイミダゾリウムクロリド
Figure 0005635443
2,4,6−トリメチルベンジルクロリド(506mg,3.0mmol)を、合成例2で得られた化合物4,5−ジメチル−1−(2−イソプロポキシフェニル)−1H−イミダゾール(704mg,3.0mmol)の乾燥テトラヒドロフラン(10mL)溶液に添加した。反応混合物を70℃で12時間攪拌した。得られた固体を濾過し、テトラヒドロフランで洗浄して、白色固体物質として標記化合物1.04g(2.6mmol,87%)を得た。
融点:222−223℃
H NMR(400MHz,CDCl):1.24(3H,d,J=5.9Hz),2.02(3H,s),2.21(3H,s),2.27(3H,s),2.33(6H,s),4.58−4.64(1H,m),5.83(2H,s),6.88(2H,s),7.03(1H,d,J=8.3Hz),7.06(1H,t,J=7.6Hz),7.46−7.50(2H,m),9.33(1H,s)
13C NMR(100MHz,CDCl):8.6,9.0,20.1,20.9,21.7,47.0,71.0,113.8,120.9,122.1,125.8,127.0,128.5,128.6,129.9,132.3,135.6,137.8,139.1,152.1
IR(neat):950,1110,1130,1260,1450,1500,1550,2970cm−1
HRMS(FAB)m/z(C2431O(M−Cl)について):計算値363.2436;実測値363.2449
元素分析(C2227ClNO):計算値C,72.25;H,7.83;N,7.02;実測値:C,72.43;H,8.02;N,6.99。
実施例4(1−(2,4,6−トリメチルベンジル)−3−(2−フェノキシフェニル)−4,5−ジメチルイミダゾリウムクロリド
Figure 0005635443
2,4,6−トリメチルベンジルクロリド(314mg,1.9mmol)を、合成例3で得られた化合物4,5−ジメチル−1−(2−フェノキシフェニル)−1H−イミダゾール(492mg,1.9mmol)の乾燥テトラヒドロフラン(10mL)溶液に添加した。混合物を70℃で12時間攪拌した。得られた固体を濾過し、テトラヒドロフランで洗浄して、白色固体物質として標記化合物558mg(1.3mmol,69%)を得た。
融点:229−230℃
H NMR(400MHz,CDCl):2.15(6H,s),2.23(6H,s),2.25(3H,s),5.74(2H,s),6.82(2H,s),6.93(1H,d,J=8.6Hz),6.94(2H,t,J=8.5Hz),7.19(1H,t,J=7.6Hz),7.27(1H,t,J=7.6Hz),7.35(1H,d,J=8.1Hz),7.37(1H,d,J=7.8Hz),7.44−7.48(1H,m),7.77(1H,d,J=6.8Hz),9.57(1H,s)
13C NMR(100MHz,CDCl):8.7,8.9,19.9,20.8,47.0,118.2,119.0,123.5,124.2,124.9,125.6,127.1,128.4,129.0,129.8,130.2,132.4,136.3,137.3,139.0,152.0,154.7
IR(neat):1220,1250,1490,2950cm−1
HRMS(FAB)m/z(C2729O(M−Cl)について):計算値397.2280;実測値:397.2282
元素分析(C2729ClNO):計算値C,74.90;H,6.75;N,6.47;実測値C,74.62;H,7.05;N,6.36。
実施例5(1−(2,4,6−トリメチルベンジル)−3−(4−メトキシフェニル)−4,5−ジメチルイミダゾリウムクロリド
Figure 0005635443
2,4,6−トリメチルベンジルクロリド(256mg,1.5mmol)を、4,5−ジメチル−1−(4−メトキシフェニル)−1H−イミダゾール(307mg,1.5mmol)の乾燥テトラヒドロフラン(10mL)溶液に添加した。混合物を70℃で12時間攪拌した。得られた固体を濾過し、テトラヒドロフランで洗浄して、白色固体物質として標記化合物345mg(0.93mmol,62%)を得た。
融点:205−206℃
H NMR(400MHz,CDCl):2.13(3H,s),2.21(3H,s),2.27(3H,s),2.35(6H,s),3.85(3H,s),5.71(2H,s),6.90(2H,s),7.00−7.04(2H,m),7.41−7.45(2H,m),9.38(1H,s)
13C NMR(100MHz,CDCl):8.97,9.04,20.1,20.9,46.9,55.7,115.2,125.6,125.7,127.3,127.5,127.8,129.9,135.2,137.8,139.2,161.0
IR(neat):1030,1240,1250,1510,2930cm−1
HRMS(FAB)m/z(C2217O(M−Cl)について):計算値335.2123;実測値335.2126。
実施例6(1−(2,4,6−トリイソプロピルベンジル)−3−(2−メトキシフェニル)−4,5−ジメチルイミダゾリウムクロリド
Figure 0005635443
2,4,6−トリイソプロピルベンジルクロリド(252mg,1.0mmol)を、合成例1で得られた化合物4,5−ジメチル−1−(2−メトキシフェニル)−1H−イミダゾール(252mg,1.0mmol)の乾燥テトラヒドロフラン(10mL)溶液に添加した。反応混合物を12時間攪拌した。得られた固体を濾過し、テトラヒドロフランで洗浄して、白色固体物質として標記化合物777mg(0.78mmol,78%)を得た。
融点:203−204℃
H NMR(400MHz,CDCl):1.20(12H,d,J=6.6Hz),1.25(6H,d,J=6.8Hz),2.07(3H,s),2.48(3H,s),2.86−2.93(1H,m),3.14−3.21(2H,m),3.77(3H,s),5.69(2H,s),7.05−7.14(2H,m),7.08(2H,s),7.49(1H,d,J=8.1Hz),7.50−7.55(1H,m),8.37(1H,s)
13C NMR(100MHz,CDCl):8.7,9.5,23.7,24.2,29.8,34.2,44.8,55.9,112.4,121.4,121.5,122.0,122.1,127.8,128.3,129.3,132.7,133.6,148.7,151.1,153.7
IR(neat):1020,1260,1550,2960cm−1
HRMS(FAB)m/z(C2839O(M−Cl)について):計算値419.3062;実測値419.3064。
比較例1(1−(2,4,6−トリメチルベンジル)−3−(2−メチルチオフェニル)−4,5−ジメチルイミダゾリウムクロリド
Figure 0005635443
2,4,6−トリメチルベンジルクロリド(139mg,0.82mmol)を、4,5−ジメチル−1−(2−メチルチオフェニル)−1H−イミダゾール(180mg,0.82mmol)の乾燥テトラヒドロフラン(10mL)溶液に添加した。混合物を70℃で12時間攪拌した。得られた固体を濾過し、テトラヒドロフランで洗浄して、オフホワイト色固体物質として標記化合物43.3mg(0.11mmol,14%)を得た。
融点:212−213℃
H NMR(400MHz,CDCl):2.02(3H,s),2.26(3H,s),2.27(3H,s),2.38(6H,s),2.45(3H,s),5.47(1H,d,J=14.9Hz),6.03(1H,d,J=14.9Hz),6.89(2H,s),7.31(1H,d,J=8.0Hz),7.32(1H,t,J=8.0Hz),7.54(1H,dt,J=1.2,8.0Hz),7.65(1H,s,J=8.0Hz),9.14(1H,s)
13C NMR(100MHz,CDCl):8.54,9.09,14.9,20.1,20.9,47.0,125.4,126.0,126.3,127.6,128.4,128.7,129.9,130.4,131.8,135.1,137.0,138.1,139.3
IR(neat):770,1200,1440,1560,2910cm−1
HRMS(FAB)m/z(C2227S(M−Cl)について):計算値351.1895;実測値351.1897。
比較例2(1−(2,4,6−トリメチルベンジル)−3−フェニル−4,5−ジメチルイミダゾリウムクロリド
Figure 0005635443
2,4,6−トリメチルベンジルクロリド(590mg,3.5mmol)を、4,5−ジメチル−1−フェニル−1H−イミダゾール(611mg,3.5mmol)の乾燥テトラヒドロフラン(20mL)溶液に添加した。混合物を70℃で12時間攪拌した。トルエンを添加した後、生成物を結晶化するために、混合物を蒸発させた。得られた固体を濾過し、酢酸エチルで洗浄して、白色固体物質として標記化合物519mg(1.5mmol,43%)を得た。
融点:109−110℃
H NMR(400MHz,CDCl):2.16(3H,s),2.23(3H,s),2.27(3H,s),2.36(6H,s),5.74(2H,s),6.90(2H,s),7.52−7.57(5H,m),9.43(1H,s)
13C NMR(100MHz,CDCl):8.9,9.1,20.0,20.8,46.9,125.3,125.9,127.6,127.9,129.9,130.1,130.6,133.1,134.7,137.8,139.3
IR(neat):1550,2970cm−1
HRMS(FAB)m/z(C2125O(M−Cl)について):計算値305.2018;実測値:305.2021。
比較例3(1−(2,4,6−トリメチルベンジル)−3−(2−(エチル)フェニル)−4,5−ジメチルイミダゾリウムクロリド
Figure 0005635443
2,4,6−トリメチルベンジルクロリド(342mg,2.0mmol)を、4,5−ジメチル−1−(2−エチルフェニル)−1H−イミダゾール(406mg,2.0mmol)の乾燥テトラヒドロフラン(10mL)溶液に添加した。混合物を70℃で12時間攪拌した。得られた固体を濾過し、テトラヒドロフランで洗浄して、白色固体物質として標記化合物449mg(1.21mmol,60%)を得た。
融点:242−243℃
H NMR(400MHz,CDCl):1.13(3H,t,J=7.6Hz),1.99(3H,s),2.21(3H,s),2.27(3H,s),2.29−2.40(8H,m),5.68(1H,d,J=15.4Hz),6.06(1H,d,J=15.4Hz),6.89(2H,s),7.37−7.42(3H,m),7.50−7.54(1H,m),9.54(1H,s)
13C NMR(100MHz,CDCl):8.5,9.0,14.4,19.9,20.7,23.5,47.1,125.4,127.5,127.6,127.8,128.1,129.79,129.81,131.3,131.4,135.2,137.6,139.1,140.1
IR(neat):1450,1560,2970cm−1
HRMS(FAB)m/z(C2329(M−Cl)について):計算値333.2331;実測値333.2326。
試験例1(4−メトキシビフェニルの合成)
標記化合物を、Raders, A. M.; Kingston, J. V.; Verkade J. G. J. Org. Chem 2010, 75, 1744-1747に記載の方法に準じて合成した。反応式は以下の通りである。
Figure 0005635443
すなわち、アルゴン雰囲気下、反応チューブを酢酸パラジウム(II)1mol%、実施例及び比較例で得られたイミダゾリウム塩2mol%及び炭酸セシウム(652mg,2mmol)で充填した。次いで、2mLのジオキサンを添加した。混合物を80℃で15分間攪拌し、室温まで冷却した。次いで、4−クロロアニソール1.0mmol及びフェニルボロン酸1.5mmolを添加し、反応混合物を80℃で18時間攪拌した。なお、4−クロロアニソール1.0mmolに対して、酢酸パラジウム(II)1mol%及び実施例及び比較例で得られたイミダゾリウム塩2mol%を用いた。混合物を室温まで冷却し、水を添加して、次いで、エーテルで抽出した。合わせた有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥した。シリカゲルカラムクロマトグラフィで濃縮及び精製して、白色固体の標記化合物を得た。
融点:84−85℃
H NMR(400MHz,CDCl):3.85(3H,s),6.96−7.00(2H,m),7.28−7.32(1H,m),7.39−7.44(2H,m),7.51−7.57(4H,m)
13C NMR(100MHz,CDCl):55.3,114.2,126.6,126.7,128.1,128.7,133.7,140.8,159.1
IR(neat):1030,1250,2960cm−1
HRMS(EI)m/z(C1312O(M)について):計算値184.0888;実測値184.0865。
生成した4−メトキシビフェニルの収率を表1に示す。
Figure 0005635443
表1から明らかなように、Rがメチルチオ基(比較例1)、無置換(比較例2)及びエチル基(比較例3)である比較例の化合物を用いると、殆ど反応が進行せず、活性が極めて低かった。これに対して、Rがエーテル基を有するアルコキシ基及びフェノキシ基である実施例の化合物は高い活性を示した。
試験例2(3−フェニルピリジンの合成)
実施例で得られた化合物を、パラジウム触媒に対する配位性元素を有するカップリング反応へ適用した。すなわち、標記化合物を、試験例1に準じて合成した。反応式は以下の通りである。
Figure 0005635443
アルゴン雰囲気下、反応チューブを酢酸パラジウム(II)、実施例で得られたイミダゾリウム塩及び炭酸セシウム(652mg,2mmol)で充填した。次いで、2mLのジオキサンを添加した。混合物を90℃で15分間攪拌し、室温まで冷却した。次いで、3−クロロピリジン1.0mmol及びフェニルボロン酸1.5mmolを添加し、混合物を80℃で18時間(又は90℃で10時間)攪拌した。なお、3−クロロピリジン1.0mmolに対して、酢酸パラジウム(II)1mol%及び実施例で得られたイミダゾリウム塩2mol%を用いた。混合物を室温まで冷却し、水を添加して、次いで、エーテルで抽出した。合わせた有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥した。シリカゲルカラムクロマトグラフィで濃縮及び精製して、黄色油状物質として標記化合物を得た。
H NMR(400MHz,CDCl):3.85(3H,s),6.96−7.00(2H,m),7.28−7.32(1H,m),7.39−7.44(2H,m),7.51−7.57(4H,m)
13C NMR(100MHz,CDCl):55.3,114.2,126.6,126.7,128.1,128.7,133.7,140.8,159.1
IR(neat):1580,3030cm−1
HRMS(EI)m/z(C11N(M)について):計算値155.0735;実測値155.0727。
生成した3−フェニルピリジンの収率を表2に示す。
Figure 0005635443
表2から明らかなように、Rがエーテル基を有するアルコキシ基及びフェノキシ基である実施例の化合物は高い活性を示した。特に、Rがフェニル基のo−位に置換した化合物では、配位性元素を有する基質を用いても高い活性を示した。
試験例3(5−(3−チエニルメチル)−2−クロロピリジンの合成)
実施例で得られた化合物を、パラジウム触媒に対する配位性元素を有するカップリング反応へ適用した。反応式は以下の通りである。
Figure 0005635443
標記化合物を、試験例2に準じて合成した。すなわち、試験例2において、2−クロロ−5−(クロロメチル)ピリジン1.0mmol、3−チエニルボロン酸1.5mmol、ジアリルクロロパラジウム(PdCl(allyl))0.5モル%、実施例で得られたイミダゾリウム塩2モル%を用い、温度90℃で15時間撹拌する以外、試験例2と同様にして、標記化合物を得た。生成した目的化合物の収率を表3に示す。
Figure 0005635443
表3から明らかなように、配位性元素を有する基質、特にヘテロアリール化合物同士を用いても、実施例の化合物は高い活性を示した。
合成例1(4,5−ジメチル−1−(2−メトキシフェニル)−1H−イミダゾール)
Figure 0005635443
メタノール(25mL)中のo−アニシジン(5.6mL,50mmol)を、室温で16時間、ジアセチル(4.4mL,50mmol)で処理した。NHCl(5.35g,100mmol)に続いて37%水性ホルムアルデヒド(8mL,100mmol)を添加した。混合物をメタノール(200mL)で希釈し、得られた混合物を1時間還流した。HPO(7mL,85%)を添加した。次いで、得られた混合物を8時間還流で攪拌した。溶媒除去後、暗色の残渣を40%KOH水溶液でpH9まで中和し、次いで、セライトで濾過した。得られた混合物を、ジエチルエーテル(5×150mL)で抽出した。有機相を合わせ、水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を除去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン/酢酸エチル=1/3)で精製して、黄色固体物質として標記化合物1.49g(7.4mmol,15%)を得た。
融点:79−80℃
H NMR(400MHz,CDCl):1.97(3H,s),2.23(3H,s),3.80(3H,s),7.01−7.05(2H,m),7.17(1H,d,J=7.1Hz),7.39(1H,s),7.39−7.42(1H,m)
13C NMR(100MHz,CDCl):8.3,12.7,55.4,111.8,120.5,123.8,125.4,128.3,129.7,132.9,135.5
IR(neat):1020,1220,1500cm−1
HRMS(EI)m/z(C1214O(M)について):計算値202.1106;実測値202.1083。
合成例2(4,5−ジメチル−1−(2−イソプロポキシフェニル)−1H−イミダゾール)
Figure 0005635443
アルゴン雰囲気下、o−アミノフェノール(6.55g,60mmol)と炭酸セシウム(39.1g,120mmol)とのアセトン(170mL)懸濁液に、2−ヨードプロパン(11.7mL,120mmol)を添加した。得られた混合物を23時間還流し、室温まで冷却し、濃縮した。残渣を水で希釈し、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を食塩水(ブライン)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、蒸発させた。カラムクロマトグラフィ(ヘキサン/酢酸エチル=5:1)により、茶色の油状物質として2−イソプロピルオキシアニリンを収率72%で得た。メタノール(25mL)中の2−イソプロピルオキシアニリン(41mmol)を、室温で16時間、ジアセチル(3.6mL,41mmol)で処理した。NHCl(4.39g,100mmol)に続いて37%水性ホルムアルデヒド(6.6mL,100mmol)を添加した。混合物をメタノール(200mL)で希釈し、得られた混合物を1時間還流した。HPO(7mL,85%)を添加した。次いで、得られた混合物を8時間還流で攪拌した。溶媒除去後、暗色の残渣を40%KOH水溶液でpH9まで中和し、次いで、セライトで濾過した。得られた混合物をジエチルエーテル(5×150mL)で抽出した。有機相を合わせ、水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を除去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン/酢酸エチル=1/3)で精製して、標記化合物197mg(8.6mmol,21%)を橙色油状物質として得た。
H NMR(400MHz,CDCl):1.22(6H,d,J=6.1Hz),1.99(3H,s),2.23(3H,s),4.44(1H,septet,J=6.1Hz),6.98−7.02(1H,m),7.03(1H,d,J=8.6Hz),7.15−7.17(1H,m),7.33−7.38(1H,m),7.38(1H,s)
13C NMR(100MHz,CDCl):8.7,12.8,21.8,71.2,115.2,120.6,123.9,127.0,128.6,129.6,132.9,135.6,153.0
IR(neat):940,1120,1240,1500,2980cm−1
HRMS(EI)m/z(C1418O(M)について):計算値230.1419;実測値230.1419。
合成例3(4,5−ジメチル−1−(2−フェノキシフェニル)−1H−イミダゾール)
Figure 0005635443
メタノール(25mL)中の2−フェノキシアニリン(9.26g,50mmol)を、室温で16時間、ジアセチル(4.4mL,50mmol)で処理した。NHCl(5.35g,100mmol)に続いて37%水性ホルムアルデヒド(8mL,100mmol)を添加した。混合物をメタノール(200mL)で希釈し、得られた混合物を1時間還流した。HPO(7mL,85%)を添加した。次いで、得られた混合物を8時間還流で攪拌した。溶媒除去後、暗色の残渣を40%KOH水溶液でpH9まで中和し、次いで、セライトで濾過した。得られた混合物をジエチルエーテル(5×150mL)で抽出した。有機相を合わせ、水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を除去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン/酢酸エチル=1/3)で精製して、標記化合物1.08g(4.1mmol,8%)を橙色油状物質として得た。
H NMR(400MHz,CDCl):2.05(3H,s),2.18(3H,s),6.88−6.91(2H,m),7.04(1H,dd,J=1.2,8.0Hz),7.07−7.11(1H,m),7.19(1H,dt,J=1.2,8.0Hz),7.26−7.31(3H,m),7.35−7.39(1H,m),7.41(1H,s)
13C NMR(100MHz,CDCl):8.7,12.7,118.7,119.4,123.6,123.7,123.9,127.9,128.9,129.7,129.8,133.4,135.5,152.5,156.1
IR(neat):1220,1240,1500,2920cm−1
HRMS(EI)m/z(C1214O(M)について):計算値264.1263;実測値264.1258。
本発明は、カップリング反応を利用した種々の有用化合物の製造、例えば、液晶、医薬、農薬、有機薬品などの機能性材料などを製造するのに有効に利用できる。

Claims (10)

  1. 下記式(1)で表される新規化合物。
    Figure 0005635443
    (式中、Rはヒドロキシル基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基を示し、R及びRは、同一又は異なるアルキル基を示し、R、R及びRは、同一又は異なるアルキル基を示し、Rはアルキレン基を示し、Xはアニオンを示し、前記アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アルキル基は置換基を有していてもよい)
  2. が直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルコキシ基、C5−10シクロアルコキシ基又はC6−10アリールオキシ基であり、R及びRが、同一又は異なる直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基であり、R、R及びRが、同一又は異なる直鎖状C1−4アルキル基であり、Rが直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキレン基である請求項1記載の化合物。
  3. が直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルコキシ基又はフェノキシ基であり、R及びRが、同一又は異なる直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基であり、R、R及びRが、同一又は異なるC 1−2アルキル基であり、RがC1−3アルキレン基である請求項1又は2記載の化合物。
  4. 下記式(1a)で表される請求項1〜3のいずれかに記載の化合物。
    Figure 0005635443
    (式中、R7aはメチレン基又はエチレン基を示し、R〜R、及びXは前記に同じ)
  5. 下記式(1-1)
    Figure 0005635443
    (式中、R はヒドロキシル基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基を示し、R 及びR は、同一又は異なって、水素原子又はアルキル基を示し、R 、R 及びR は、同一又は異なって、水素原子又はアルキル基を示し、R はアルキレン基を示し、X はアニオンを示し、前記アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アルキル基は置換基を有していてもよい)
    で表される化合物から誘導される配位子と遷移金属とで構成されている錯体。
  6. 遷移金属がパラジウムである請求項5記載の錯体。
  7. カップリング触媒である請求項5又は6記載の錯体。
  8. 下記式(5)
    Figure 0005635443
    (式中、R、R及びR請求項5に同じ)
    で表される化合物と、下記式(6)
    Figure 0005635443
    (式中、R、R、R及びR請求項5に同じ。Xはハロゲン原子を示す)
    で表される化合物とを反応させ、請求項5の式(1-1)で表される化合物を製造する方法。
  9. 遷移金属に請求項5の式(1-1)で表される化合物から誘導される配位子を配位させ、請求項5〜7のいずれかに記載の錯体を製造する方法。
  10. 請求項5〜7のいずれかに記載の錯体の存在下、ハロゲン原子を有する芳香族化合物と、芳香族ボロン酸とをカップリングさせ、ビスアリール化合物を製造する方法。
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