(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態が適用された印刷システム10の概略構成の一例を示すブロック図である。図示するように、印刷システム10は、印刷装置100と、情報処理装置(ホストPC)200と、を備える。
情報処理装置200は、印刷装置100のホストコンピューターとして機能する。そして、情報処理装置200には、例えば、LAN等のコンピューターネットワークやUSBケーブルを介して通信可能に、印刷装置100が接続されている。
情報処理装置200は、不図示の、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)等の主記憶装置と、ROM(Read Only Memory)やハードディスク等の外部記憶装置と、ディスプレイ等からなる出力装置と、キーボード、マウス等からなる入力装置と、印刷装置100とデータの送受信を行う通信インターフェイスと、を備える一般的なコンピューターである。
そして、情報処理装置200は、図示するように、画像データ入力部210と、ラスタライズ処理部220と、を有する。なお、各機能部(210、220)は、外部記憶装置に記憶されている所定のプログラムを主記憶装置にロードしてCPUで実行することで実現可能である。
画像データ入力部210は、印刷対象の画像を入力する。印刷対象の画像には、例えば、文字データ、グラフィックデータ、イメージデータなどの画像データが含まれる。また、情報処理装置100で作成された画像に限らず、コンピューターネットワークやUSBケーブルを介して入力された画像、USBメモリーや携帯電話に内蔵されるメモリー等の可搬型メモリーから入力された画像、等を含む。
ラスタライズ処理部220は、例えば、オペレーティングシステムの特定の機能とプリンタードライバーにより構成される。ラスタライズ処理部220は、画像データ入力部210によって入力された画像データを、画素ごとに複数ビットの階調値を有する入力画像データに変換し、印刷装置100に出力する。入力画像データがモノクロデータであれば、例えば、8ビットの256階調値を有する。また、入力画像データがカラーデータであれば、RGB画像データまたはCMYK画像データ等であり、色ごとに8ビットの256階調値を有する。
上記の情報処理装置200の構成は、本願発明の特徴を説明するにあたって主要構成を説明したものであって、上記に限られない。また、一般的なコンピューターが備える他の構成を排除するものではない。また、情報処理装置200は、印刷装置100のホストコンピューターとして機能すれば、例えば、携帯端末などでもよい。
印刷装置100は、情報処理装置200から送信された入力画像データの印刷を行う。印刷装置100は、図示するように、画像処理回路110と、パルス幅変調部120と、印刷エンジン130と、を備える。また、印刷装置100は、不図示の、CPUと、RAM等の主記憶装置と、ROMやフラッシュメモリー等の外部記憶装置と、ネットワーク50に接続するための通信装置と、入力ボタン、タッチパネルなどからなる入力装置と、液晶ディスプレイなどからなる出力装置と、を備えた一般的なプリンターである。
図2は、画像処理回路110の概略構成の一例を示すブロック図である。図示するように、画像処理回路110は、色変換部111と、属性エッジ検出部112と、スクリーン処理部113と、パルス幅変換部114と、出力部115と、を有する。なお、各機能部(111〜115)は、専用のハードウェア(ASIC等)で実現してもよいし、外部記憶装置に記憶されている処理のプログラムを主記憶装置にロードしてCPUで実行することで実現してもよい。
色変換部111は、情報処理装置200から送信された入力画像データに対して、色変換を行う。例えば、入力画像データが色ごとに8ビット(256階調)の入力階調値を有するRGB画像データであれば、色変換部111は、色ごとに8ビット(256階調)の入力階調値を有するCMYK画像データに変換して出力する。
なお、画像処理回路110は、スクリーン処理に先立ち、情報処理装置200から送信された入力画像データを構成する各画素に、その属性を特定可能な情報(以下では「属性情報X」とよぶ)を付加しておく。
図3(A)は、属性情報Xの概略データ構造の一例を示す図である。図示するような属性情報Xが、入力画像データを構成する各画素に付加される。なお、各画素を正方形で表しており、正方形内の数字は、属性を識別するための値を表している。例えば、写真属性には「0」が割り当てられ、グラフィック属性には「1」が割り当てられ、文字属性には「2」が割り当てられ、線属性には「3」が割り当てられている。
そして、色変換部111は、入力画像データに付加されている属性情報X(例えば、2ビット)については、そのまま出力する。
属性エッジ検出部112は、属性情報Xを用いて、入力画像データに含まれるエッジ画素を検出する。
例えば、属性エッジ検出部112は、色変換部111から出力された属性情報Xに対応する画素を注目画素とした場合に、当該注目画素の属性情報Xと、当該注目画素からみて上下左右の各方向に隣接する画素の属性と、を比較する。そして、属性エッジ検出部112は、当該注目画素の属性情報Xと、当該注目画素からみて上下左右のいずれか1つの方向に隣接する画素の属性と、が異なれば、当該注目画素をエッジ画素として検出する。
なお、上記のエッジ検出の処理は、エッジ検出の対象となる属性を有する注目画素(例えば、線属性の画素)に対して実施される。
そして、属性エッジ検出部112は、エッジ検出の結果を反映させたエッジ信号を出力部115へ出力する。例えば、属性エッジ検出部112は、エッジ画素として検出された画素についてはエッジ信号「1」を出力し、非エッジ画素として検出された画素(すなわち、エッジ画素として検出されなかった画素)についてはエッジ信号「0」を出力する。
図3(B)は、図3(A)に示す属性情報Xを用いてエッジ検出が行われたときに属性エッジ検出部112が出力するエッジ信号を示す図である。図示するように、属性エッジ検出部112は、線属性の属性情報Xを有する画素(図3Aの黒塗り画素)のうち、線属性以外の属性情報Xを有する画素と隣接する画素(図3Bの黒塗り画素)については、エッジ画素とみなしてエッジ信号「1」を出力する。また、それ以外の画素については、非エッジ画素とみなしてエッジ信号「0」を出力する。
図2に戻り、スクリーン処理部113は、色変換部111から出力されたCMYK画像データに対して、スクリーン処理を施す。
具体的には、スクリーン処理部113は、図4(A)に示すような5×5のサイズからなる閾値マトリクスを用い、色変換部111から出力された入力階調値と、当該入力階調値を有する画素に対応する閾値と、を比較し、入力階調値が閾値よりも大きい場合に、当該画素の位置に印字する(出力ドットを形成する)ための2値化データを生成する。一方、入力階調値が閾値以下である場合には、当該画素の位置に印字しない2値化データを生成する。なお、ここで、スクリーン処理部113が出力する2値化データは、例えば、印字の場合にパルス幅変調部120から出力されるパルス信号のパルス幅と、非印字の場合にパルス幅変調部120から出力されるパルス信号のパルス幅と、のいずれかを指定するパルス幅データ(C’M’Y’K’)でよい。もちろん、2値化データは、印字、非印字を区別する1ビットの識別データでもよい。なお、図4(A)に示す例では、1画素のパルス幅の分解能を1ビットとしているが、パルス幅変調によりMビットの出力を行ってもよい。その場合には、1画素に対応する閾値がMビットで構成されることとなる。
図4(B)は、スクリーン処理後の2値化データ(C’M’Y’K’)の一例を示す図である。なお、正方形内の数字は、印字するか否かを示す値(「0」:非印字、「1」:印字)を表している。
図2に戻り、パルス幅変換部114は、色変換部111から出力されたCMYK画像データに対して、パルス幅変換処理を施す。
具体的には、パルス幅変換部114は、色変換部111から出力されたCMYK画像データの入力階調値に応じて、パルス幅変調部120から出力されるパルス信号のパルス幅を決定する。そして、パルス幅変換部114は、決定されたパルス幅を指定するパルス幅データ(C’’M’’Y’’K’’)を出力部115へ出力する。
なお、パルス幅変換部114から出力されるパルス幅データをM(=4)ビット精度とすると、パルス幅変調部120から出力されるパルス信号のパルス幅は2M段階まで可変となる。
図5は、パルス幅変調部120から出力されるパルス信号のパルス幅と、印字範囲の関係を示す図である。なお、画素内における黒塗り部分を印字範囲とし、画素内おける白塗り部分を非印字範囲とする。図示するように、パルス幅変換部114から出力されるパルス幅データに応じて、各画素の印字範囲が変更される。こうして、パルス幅変換部114からM(=4)ビット精度のパルス幅データが出力される場合には、各画素の印字範囲を2M段階で変更することができる。
ところで、パルス幅変換部114は、入力階調値と、出力すべきパルス幅と、を対応付けたパルス幅変換テーブルを用いて、パルス幅変調部120から出力されるパルス信号のパルス幅を決定する。具体的には、パルス幅変換部114は、CMYK画像データの入力階調値に対応付けられているパルス幅をパルス幅変換テーブルから抽出し、パルス幅変調部120から出力されるパルス信号のパルス幅として決定する。
図6(A)は、パルス幅変換テーブルの一例をグラフ化した図である。図示するように、パルス幅変換テーブルに格納されている、入力階調値と、出力すべきパルス幅と、の関係は非線形となる。
ここで、入力階調値と、出力すべきパルス幅と、の関係を非線形にしているのは、パルス幅変調部120から出力されるパルス信号のパルス幅に対して、実際に印刷媒体に印字される出力濃度が比例しないためである。以下では、パルス幅変調部120から出力されるパルス信号のパルス幅に対する、実際の出力濃度の関係を「出力濃度特性」とよぶ。
図6(B)は、出力濃度特性の一例をグラフ化した図である。図示するように、パルス幅変調部120から出力されるパルス信号のパルス幅と、実際に印刷媒体に印字される出力濃度と、の関係は非線形となる。このような、出力濃度特性は、装置(印刷装置100)固有のものであり、使用環境によっても異なる。
そのため、パルス幅変換テーブルには、印刷装置100の工場出荷時において、入力階調値とパルス幅の関係が最適となるように各値が格納される。ここで、最適な入力階調値とパルス幅の関係とは、入力階調値に対して、実際に印刷媒体に印字される出力濃度(印刷濃度)が比例する(リニアとなる)関係を指す。なお、パルス幅変換テーブルに格納された各値が最適である場合、エッジ画素を印字する場合(パルス幅変換部114から出力されたデータに基づく印字)の出力濃度は、非エッジ画素を印字する場合(スクリーン処理部113から出力されたデータに基づく印字)の出力濃度に一致する。
図6(C)は、入力階調値と、出力濃度と、の目標となる関係を示す図である。図示するように、入力階調値に対して、実際に印刷媒体に印字される出力濃度を比例させることができれば、高品質な印字結果を得ることができる。
なお、図7は、図6(A)に示すようなパルス幅変換テーブルの生成方法を説明するための図である。図示するように、パルス幅変換部114は、第1象限に、図6(B)に示すような出力濃度特性のグラフ(関係)をプロットし、第2象限に、図6(C)に示すような入力階調値と出力濃度の目標となる関係(グラフ)をプロットし、第3象限に、比例係数を「1」とする正比例の直線をプロットする。
そして、パルス幅変換部114は、パルス幅Nを出発点(図示するA点)として、その出発点のパルス幅Nに対応する出力濃度Rを第1象限のグラフ(出力濃度特性のグラフ)から特定する(図示するB点)。それから、パルス幅変換部114は、特定した出力濃度Rに対応する入力階調値を第2象限のグラフ(目標となる入出力関係)から特定する(図示するC点)。さらに、パルス幅変換部114は、特定した入力階調値(第3象限のD点で折り返した値)と、出発点のパルス幅Nと、を対応付けて(すなわち、図示するE点の値を)、パルス幅変換テーブルに格納する。
パルス幅変換部114は、以上のような入力階調値とパルス幅Nの対応付けを、出発点(パルス幅N)を変更して繰り返し行う。こうして、入力階調値に対して、実際に印刷媒体に印字される出力濃度を比例させるためのパルス幅変換テーブルを生成できる。そして、パルス幅変換部114は、生成したパルス幅変換テーブルを、パルス幅変換処理に先立って所定の記憶装置に格納しておく。
図2に戻り、出力部115は、スクリーン処理部113から出力されたパルス幅データ(C’M’Y’K’)と、パルス幅変換部114から出力されたパルス幅データ(C’’M’’Y’’K’’)と、のうち、いずれかのパルス幅データを選択して、パルス幅変調部120へ出力する。
例えば、出力部115は、非エッジ画素については、スクリーン処理部113から出力されたパルス幅データ(C’M’Y’K’)を出力し、エッジ画素については、パルス幅変換部114から出力されたパルス幅データ(C’’M’’Y’’K’’)を出力する。
そのため、出力部115は、非エッジ画素であることを示すエッジ信号「0」が属性エッジ検出部112から入力されている場合に、スクリーン処理部113から出力されたパルス幅データ(C’M’Y’K’)を、出力画像データ(C’’’M’’’Y’’’K’’’)として出力する。一方、出力部115は、エッジ画素であることを示すエッジ信号「1」が属性エッジ検出部112から入力されている場合には、パルス幅変換部114から出力されたパルス幅データ(C’’M’’Y’’K’’)を、出力画像データ(C’’’M’’’Y’’’K’’’)として出力する。
こうして、出力部115から出力された出力画像データ(C’’’M’’’Y’’’K’’’)は、パルス幅変調部120へ入力される。
そして、パルス幅変調部120は、入力された出力画像データ(C’’’M’’’Y’’’K’’’)を、画素ごとにレーザー駆動パルスに変換し、印刷エンジン130に出力する。
印刷エンジン130は、レーザードライバー(不図示)と、レーザーダイオード(不図示)やライン状発光素子(不図示)と、を備える。レーザードライバーは、パルス幅変調部120から出力されたレーザー駆動パルスに従ってレーザーダイオードやライン状発光素子を駆動し、感光体ドラム(不図示)に出力画像データに基づく画像を形成する。なお、印刷エンジン130は、電子写真方式以外にインクジェット方式や熱転写方式であってもよい。
図8(A)は、図3(B)のエッジ信号に対応した入力画像データの一例を示しており、図8(B)は、図8(A)の全ての画素を非エッジ画素としてスクリーン処理した場合の出力画像データの一例を示しており、図8(C)は、図8(A)のエッジ画素と非エッジ画素でスクリーン処理を変更した場合の出力画像データの一例を示す図である。図示するように、本実施形態では、非エッジ画素についてはスクリーン処理部113で処理されたデータに基づいて印字を行うが、エッジ画素についてはパルス幅変換部114で処理されたデータに基づいて印字を行うので、エッジ部分にジャギー等が発生するのを防げる。
さらに、入力画像データに付加した属性情報Xを用いて、エッジ画素と非エッジ画素を分離しているため、従来よりも簡単な構成で、かつ、正確にエッジ画素と非エッジ画素を分離できる。そのため、ハードウェア面、或いはソフトウェア面での負荷を抑えることができる。また、色情報を破棄してもエッジ画素と非エッジ画素を正確に分離できるため、グレイ画像を処理する場合であっても、エッジ部分にジャギー等が発生するのを防ぐことができる。
ところで、上記の印刷装置100には、温湿度の変動や、トナーや感光体などの消耗品の劣化に伴う経時変化が発生する。
図9は、工場出荷時の出力濃度特性(細線)と、経時変化後の出力濃度特性(太線)の一例を示す図である。図示するように、印刷装置100に経時変化が発生すると、出力濃度特性(すなわち、パルス幅変調部120から出力されるパルス信号のパルス幅に対して、実際に印刷媒体に印字される出力濃度の関係)にも変化が生じる。
こうなると、印刷装置100の工場出荷時において、図6(A)に示すパルス幅変換テーブルが最適化されていた(入力階調値に対して、実際に印刷媒体に印字される出力濃度がリニアになる値が格納されていた)としても、印刷装置100の経時変化に影響されて、期待される出力濃度で印字できないようになる。
そこで、本実施形態の印刷装置100は、下記のように構成することができる。すなわち、印刷装置100は、感光体(不図示)に内部センサーを備え、印刷に先だって、当該内部センサーの値を取得し、印刷時(現在)の出力濃度特性を予測しておく。そして、印刷装置100は、予測しておいた出力濃度特性に基づき、入力階調値(CMYK画像データ)に対して、実際に印刷媒体に印字される出力濃度がリニアになるように、CMYK画像データに対して階調変換する補正を施す。
このような補正を実現するために、本実施形態の画像処理回路110には、第1の階調変換処理部1125aと、第2の階調変換処理部1125bと、が追加される。
図10は、図2に示す画像処理回路110に、第1の階調変換処理部1125aと、第2の階調変換処理部1125bと、を追加したブロック図である。
図示するように、本実施形態の画像処理回路110は、色変換部111とスクリーン処理部113の間に、第1の階調変換処理部1125aを備える。これとともに、画像処理回路110は、色変換部111とパルス幅変換部114の間に、第2の階調変換処理部1125bを備える。
第1の階調変換処理部1125aは、スクリーン処理の前処理として、色変換部111から出力されたCMYK画像データに対して階調変換する補正を施す。
具体的には、第1の階調変換処理部1125aは、入力階調値(CMYK画像データ)に対して、実際に印刷媒体に印字される出力濃度がリニアになるように、色変換部111から出力されたCMYK画像データの入力階調値を階調変換する。すなわち、第1の階調変換処理部1125aは、色変換部111から出力されたCMYK画像データの入力階調値を、経時変化が発生する前のスクリーン処理部113に入力すべき値に相当する入力階調値に階調変換する。そして、第1の階調変換処理部1125aは、階調変換後の入力階調値(C1,M1,Y1,K1)を、スクリーン処理部113へ出力する。なお、第1の階調変換処理部1125aは、属性情報Xについては、そのままスクリーン処理部113へ出力する。
ところで、第1の階調変換処理部1125aは、入力階調値と、階調変換後の入力階調値と、を対応付けたスクリーン処理用の階調変換テーブルを用いて、階調変換を行う。具体的には、第1の階調変換処理部1125aは、CMYK画像データ(各画素)の入力階調値に対応付けられている階調変換後の入力階調値を、スクリーン処理用の階調変換テーブルから抽出してスクリーン処理部113へ出力する。
図11(A)は、スクリーン処理用(又はパルス変換処理用)の階調変換テーブルの一例をグラフ化した図である。図示するように、スクリーン処理用(又はパルス変換処理用)の階調変換テーブルに格納されている、入力階調値と、階調変換後の入力階調値と、の関係は非線形となる場合がある。
そして、スクリーン処理部113は、第1の階調変換処理部1125aで階調変換された入力階調値(C1,M1,Y1,K1)に対して、上記と同様のスクリーン処理を施す。
こうして、第1の階調変換処理部1125aは、入力階調値(CMYK画像データ)に対して、実際に印刷媒体に印字される出力濃度がリニアになるように、色変換部111から出力されたCMYK画像データの入力階調値を階調変換することができる。
なお、スクリーン処理用の階調変換テーブルの生成方法については、後述する。
また、第2の階調変換処理部1125bは、パルス幅変換処理の前処理として、色変換部111から出力されたCMYK画像データに対して階調変換する補正を施す。
具体的には、第2の階調変換処理部1125bは、入力階調値(CMYK画像データ)に対して、実際に印刷媒体に印字される出力濃度がリニアになるように、色変換部111から出力されたCMYK画像データの入力階調値を階調変換する。すなわち、第2の階調変換処理部1125bは、色変換部111から出力されたCMYK画像データの入力階調値を、経時変化が発生する前のパルス幅変換部114に入力すべき値に相当する入力階調値に階調変換する。そして、第2の階調変換処理部1125bは、階調変換後の入力階調値(C2,M2,Y2,K2)を、パルス幅変換部114へ出力する。なお、第2の階調変換処理部1125bは、属性情報Xについては、そのままパルス幅変換部114へ出力する。
ところで、第2の階調変換処理部1125bは、入力階調値と、階調変換後の入力階調値と、を対応付けたパルス幅変換処理用の階調変換テーブルを用いて、階調変換を行う。具体的には、第2の階調変換処理部1125bは、CMYK画像データ(各画素)の入力階調値に対応付けられている階調変換後の入力階調値を、パルス幅変換処理用の階調変換テーブルから抽出してパルス幅変換部114へ出力する。
そして、パルス幅変換部114は、第2の階調変換処理部1125bで階調変換された入力階調値(C2,M2,Y2,K2)に対して、上記と同様のパルス幅変換処理を施す。
こうして、第2の階調変換処理部1125bは、入力階調値(CMYK画像データ)に対して、実際に印刷媒体に印字される出力濃度がリニアになるように、色変換部111から出力されたCMYK画像データの入力階調値を階調変換することができる。
なお、階調変換処理用の階調変換テーブルの生成方法については、後述する。
図11(B)は、上記の階調変換(補正)による効果を説明するための図である。図11(B)の左図に示すように、上記の階調変換(補正)を行わない場合には、印刷装置100に経時変化が発生すると、入力階調値(CMYK画像データ)に対して、実際に印刷媒体に印字される出力濃度はリニアにならない(点線)。これに対し、図11(B)の右図に示すように、上記の階調変換(補正)を行う場合には、印刷装置100に経時変化が発生したとしても、入力階調値(CMYK画像データ)に対して、実際に印刷媒体に印字される出力濃度をリニアにする(目標に近づける)ことができる(太線)。
なお、図11(B)の左図および右図に示すように、入力階調値に対する出力濃度の目標として、最大濃度(出力濃度の上限値)が、印刷エンジン130で出力可能な最大濃度(100%)よりも低い濃度(例えば、90%)となるように設定しておく。これにより、印刷エンジン130で出力可能な最大濃度が、色(C,M,Y)ごとに異なる場合(例えば、シアン色Cのみ出力可能な最大濃度が低下したような場合)にも、上記の階調変換(補正)によって、入力階調値に対する出力濃度の関係をリニアに維持することができる。
<階調変換テーブルの生成処理>
次に、上記の階調変換(補正)で使用される階調変換テーブルの生成方法について説明する。
図12は、階調変換テーブルの生成処理を説明するためのフロー図である。第1の階調変換処理部1225aは、図示する階調変換テーブルの生成処理を実施することにより、スクリーン処理用の階調変換テーブルを生成する。また、第2の階調変換処理部1225bも、第1の階調変換処理部1225aとは独立して、図示する階調変換テーブルを実施することにより、パルス幅変換処理用の階調変換テーブルを生成する。
なお、第1の階調変換処理部1225aと、第2の階調変換処理部1225bは、それぞれ、定期的(例えば、印刷装置100に電源が投入される毎、或いは、印刷対象の入力画像データが印刷装置100に200ページ入力される毎)に、図示する階調変換テーブルの生成処理を実施して、現在の印刷装置100の状態(出力濃度特性)に応じた階調変換テーブルを生成できる。
本フローを開始すると、図示するように、印刷装置100は、パルス幅変調部(PWM)120の分解能で再現できるS個(S=2M)の階調パッチを印刷エンジン130の感光体上に像形成する(ステップS101)。
具体的には、第1の階調変換処理部1225aは、階調パッチ毎にそれぞれ異なる入力階調値を、スクリーン処理部113へ出力する。
そして、スクリーン処理部113は、第1の階調変換処理部1225aから出力された階調値に基づいてスクリーン処理を行い、スクリーン処理後の2値化データ(群)を、パルス幅変調部120へ出力する。
それから、パルス幅変調部120は、スクリーン処理部113から出力された2値化データ(群)に基づくパルス信号を、印刷エンジン130へ出力する。
こうして、印刷エンジン130の感光体上には、スクリーン処理によって、出力濃度の異なるS個(S=2M)の階調パッチが像形成される。
また、第2の階調変換処理部1225bは、階調パッチ毎にそれぞれ異なるパルス幅を指定するパルス幅データ(群)を、パルス幅変換部114へ出力する。
そして、パルス幅変換部114は、第2の階調変換処理部1225bから出力されたパルス幅データ(群)に基づいてパルス幅変換処理を行い、パルス幅変換処理後のパルス幅データ(群)を、パルス幅変調部120へ出力する。
それから、パルス幅変調部120は、パルス幅変換部114から出力されたパルス幅データ(群)に基づくパルス信号を、印刷エンジン130へ出力する。
こうして、印刷エンジン130の感光体上には、パルス幅変換処理によって、出力濃度の異なるS個(S=2M)の階調パッチが像形成される。
次に、第1の階調変換処理部1225a、第2の階調変換処理部1225bは、それぞれ、印刷エンジン130の感光体に備わる内部センサーからセンサー値を取得する(ステップS102)。
すなわち、第1の階調変換処理部1225aは、スクリーン処理によって感光体上に形成された階調パッチの紙上濃度(第1の紙上濃度)を取得する。また、第2の階調変換処理部1225bは、パルス幅変換処理によって感光体上に形成された階調パッチの紙上濃度(第2の紙上濃度)を取得する。
それから、第1の階調変換処理部1225aは、第1の紙上濃度に基づいて、スクリーン処理用の階調変換テーブルを生成する。また、第2の階調変換処理部1225bは、第2の紙上濃度に基づいて、パルス幅変換処理用の階調変換テーブルを生成する(ステップS103)。
図13は、ステップS103における、スクリーン処理用の階調変換テーブル、パルス幅変換処理用の階調変換テーブルの生成方法を説明するための図である。
図示するように、第1の階調変換処理部1225aは、ステップS102で取得したセンサー値を用いて、第1象限に、図11(B)の左図(点線)に示すグラフ(すなわち、階調変換(補正)を行わない場合における入力階調値と出力濃度の関係を示すグラフ)をプロットする。また、第1の階調変換処理部1225aは、第2象限に、図11(B)の左図(太線)又は右図(太線)に示すグラフ(すなわち、目標とする入力階調値と出力濃度の関係)をプロットする。また、第1の階調変換処理部1225aは、第3象限に、比例係数を「1」とする正比例の直線をプロットする。
そして、第1の階調変換処理部1225aは、第1象限の入力階調値を出発点(図示するA’点)として、その出発点の入力階調値に対応する出力濃度を第1象限のグラフ(センサー値から得られた入出力関係)から特定する(図示するB’点)。それから、第1の階調変換処理部1225aは、特定した出力濃度に対応する入力階調値を第2象限のグラフ(目標となる入出力関係)から特定する(図示するC’点)。さらに、第1の階調変換処理部1225aは、特定した入力階調値(第3象限のD’点で折り返した値)と、出発点の入力階調値と、を対応付けて(すなわち、図示するE’点の値を)、スクリーン処理用の階調変換テーブルに格納する。
第1の階調変換処理部1225aは、以上のような対応付けを、出発点(第1象限の入力階調値)を変更して繰り返し行う。こうして、入力階調値と出力濃度の関係をリニアにするためのスクリーン処理用の階調変換テーブルを生成できる。そして、第1の階調変換処理部1225aは、生成したスクリーン処理用の階調変換テーブルを、所定の記憶装置に格納しておく。なお、第4象限のグラフは、スクリーン処理用の階調変換テーブルをグラフ化したものに相当する。
また、同様に、第2の階調変換処理部1225bは、ステップS102で取得したセンサー値を用いて、第1象限に、図11(B)の左図(点線)に示すグラフ(すなわち、階調変換(補正)を行わない場合における入力階調値と出力濃度の関係を示すグラフ)をプロットする。また、第2の階調変換処理部1225bは、第2象限に、図11(B)の左図(太線)又は右図(太線)に示すグラフ(すなわち、目標とする入力階調値と出力濃度の関係)をプロットする。また、第2の階調変換処理部1225bは、第3象限に、比例係数を「1」とする正比例の直線をプロットする。
そして、第2の階調変換処理部1225bは、第1象限の入力階調値を出発点(図示するA’点)として、その出発点の入力階調値に対応する出力濃度を第1象限のグラフ(センサー値から得られた入出力関係)から特定する(図示するB’点)。それから、第2の階調変換処理部1225bは、特定した出力濃度に対応する入力階調値を第2象限のグラフ(目標となる入出力関係)から特定する(図示するC’点)。さらに、第2の階調変換処理部1225bは、特定した入力階調値(第3象限のD’点で折り返した値)と、出発点の入力階調値と、を対応付けて(すなわち、図示するE’点の値を)、パルス幅変換処理用の階調変換テーブルに格納する。
第2の階調変換処理部1225bは、以上のような対応付けを、出発点(第1象限の入力階調値)を変更して繰り返し行う。こうして、入力階調値と出力濃度の関係をリニアにするためのパルス幅変換処理用の階調変換テーブルを生成できる。そして、第2の階調変換処理部1225bは、生成したパルス幅変換処理用の階調変換テーブルを、所定の記憶装置に格納しておく。
それから、印刷装置100は、ステップS103で、スクリーン処理用の階調変換テーブルと、パルス幅変換処理用の階調変換テーブルが生成されると、本フローを終了する。
以上のような階調変換テーブルの生成処理が本実施形態の印刷装置100で行われる。
そして、上述したように、第1の階調変換処理部1225aは、以上の処理(フロー)によって生成されたスクリーン処理用の階調変換テーブルを用いて、色変換部111から出力された入力階調値(CMYK画像データ)を階調変換(補正)する。
また、第2の階調変換処理部1225bも同様に、以上の処理(フロー)によって生成されたパルス幅変換処理用の階調変換テーブルを用いて、色変換部111から出力された入力階調値(CMYK画像データ)を階調変換(補正)する。
こうした階調変換は、印刷時(現在)の出力濃度特性を予測して、入力階調値と出力濃度がリニアになるように入力階調値を補正していることを意味する。
従って、印刷装置100に経時変化が発生したとしても、入力階調値(CMYK画像データ)に対して出力濃度を安定してリニアにすることができる。
なお、上記実施形態におけるフローの処理単位は、印刷システム10を理解容易にするために、主な処理内容に応じて分割したものである。処理ステップの分類の仕方やその名称によって、本願発明が制限されることはない。印刷システム10が行う処理は、さらに多くの処理ステップに分割することもできる。また、1つの処理ステップが、さらに多くの処理を実行してもよい。また、処理ステップの順序についても、これに制限されるものではなく、可能な限り変更することができる。
また、上記の印刷装置100の構成は、本願発明の特徴を説明するにあたって主要構成を説明したものであって、上記に限られない。また、一般的なプリンターが備える他の構成を排除するものではない。また、印刷装置100は、印刷機能を有していれば、例えば、複合機、スキャナー装置、コピー機、FAX装置などでもよい。
本実施形態が適用された印刷システム10は、以上のような構成からなる。ただし、上記の印刷システム10の構成は、本願発明の特徴を説明するにあたって主要構成を説明したものであって、上記に限られない。また、他の構成の追加を排除するものではない。
また、上記した各構成要素は、印刷システム10の構成を理解容易にするために、主な処理内容に応じて分類したものである。構成要素の分類の仕方や名称によって、本願発明が制限されることはない。印刷システム10の構成は、処理内容に応じて、さらに多くの構成要素に分類することもできる。また、1つの構成要素がさらに多くの処理を実行するように分類することもできる。また、各構成要素の処理は、1つのハードウェアで実行されてもよいし、複数のハードウェアで実行されてもよい。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態と上記第1の実施形態との違いは、階調変換処理部(1125a、1125b)を配置する位置にある。具体的には、上記第1の実施形態では、色変換部111とスクリーン処理部113の間に第1の階調変換処理部1125aが配置され、色変換部111とパルス幅変換部114の間に第2の階調変換処理部1125bが配置されている。これに対して、本実施形態では、第1の階調変換処理部1125aと第2の階調変換処理部1125bを共通化し、共通の階調変換処理部1125cを1つだけ配置する。なお、以下では、上記第1の実施形態と同じ構成については、詳細な説明を省略する。
図14は、本発明の第2の実施形態が適用された画像処理回路110の概略構成の一例を示すブロック図である。
図示するように、本実施形態の画像処理回路110は、色変換部111とスクリーン処理部113の間、及び、色変換部111とパルス幅変換部114の間、に共通の階調変換処理部1125cを備える。
すなわち、色変換部111から出力された入力階調値(CMYK画像データ)は、共通の階調変換処理部1125cに入力され、共通の階調変換処理部1125cで階調変換(補正)された入力階調値は、スクリーン処理部113とパルス幅変換部114の両ユニットへ出力される。
共通の階調変換処理部1125cは、上記実施形態で説明した第1の階調変換処理部1125aや第2の階調変換処理部1125bと同様の機能を有する。
具体的には、共通の階調変換処理部1125cは、入力階調値(CMYK画像データ)に対して、実際に印刷媒体に印字される出力濃度がリニアになるように、色変換部111から出力されたCMYK画像データの入力階調値を階調変換する。そして、共通の階調変換処理部1125cは、階調変換後の入力階調値(C3,M3,Y3,K3)を、スクリーン処理部113とパルス幅変換部114へ出力する。なお、共通の階調変換処理部1125cは、属性情報Xについては、そのままスクリーン処理部113へ出力する。
ところで、共通の階調変換処理部1125cは、上記実施形態で説明したスクリーン処理用の階調変換テーブルを用いて、階調変換を行う。すなわち、本実施形態では、非エッジ画素に対して適用されるスクリーン処理によって感光体上に階調パッチを形成し、ここで得られたセンサー値に基づいて、スクリーン処理とパルス幅変換処理の両処理について、印刷エンジン130の出力濃度を補正することになる。従って、本実施形態では、非エッジ画素に対して適用されるスクリーン処理の濃度変動が、エッジ画素に対して適用されるパルス幅変換処理の濃度変動に近似できるものと仮定している。
そのため、スクリーン処理の濃度変動と、パルス幅変換処理の濃度変動にずれがある場合には、上記第1の実施形態の印刷装置100の方が、エッジ部分については安定した出力結果が得られる。
しかし、第2の実施形態の印刷装置100は、上記第1の実施形態の構成よりも簡単な構成によって同様の効果を得ることができ、製造コストも抑えることができる。
また、上記の実施形態は、本発明の要旨を例示することを意図し、本発明を限定するものではない。多くの代替物、修正、変形例は当業者にとって明らかである。
例えば、上記実施形態では、図5に示すように、パルス幅変調部120は、エッジ画素の位置に依存せずに、常に、印字領域が注目画素内の左端側(左寄り)となるようにパルス信号を出力している。
しかし、本発明は、これに限定されず、エッジ画素の位置に応じて、注目画素内における印字領域をずらすことができる。
例えば、パルス幅変調部120は、注目画素の右方向に隣接する画素についてのパルス幅データよりも、当該注目画素の左方向に隣接する画素についてのパルス幅データが大きい場合には、印字領域が注目画素内の左端側(左寄り)となるようにパルス信号を出力する。また、パルス幅変調部120は、注目画素の左方向に隣接する画素についてのパルス幅データよりも、当該注目画素の右方向に隣接する画素についてのパルス幅データが大きい場合には、印字領域が注目画素内の右端側(右寄り)となるようにパルス信号を出力する。また、パルス幅変調部120は、注目画素の左方向に隣接する画素についてのパルス幅データと、当該注目画素の右方向に隣接する画素についてのパルス幅データが等しい場合には、印字領域が注目画素内の中央位置となるようにパルス信号を出力する。
この場合には、図15に示すような出力画像データを得ることができる。従って、常に印字領域が注目画素内の左端側(左寄り)となるようにパルス信号を出力する場合と比較して、エッジ部分の画質が向上する。なお、図15は、図3(B)のエッジ信号に基づいて得られる出力画像データの一例である。