JP5626679B2 - 表面温度の測定方法及び測定システム - Google Patents
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Description
さらに、微細な放射率分布が存在するとき、仮に測定各部位の物質放射率が既知であったとしても、熱画像装置の視野特性の限界から見掛けの放射率はこれとは異なるものになるという課題もある。
また、未知の放射率を補正する各種手法が試みられているが、高速に変化する対象温度に追従して測定するのに適した手法がないという課題もある。
(1)測定対象の放射率分布を知るために、対象をヒータで既知の温度に加熱して輝度分布を測定する方法。
(2)FLAにおける放射率補正技術として、スポット型の放射温度計測において2偏光を捉え、2偏光における対象反射率比を測定し、そこから放射率を補正する方法。(特許文献1参照)
(3)対象に黒体補助放射源からの反射光を重畳させ、対象からの熱放射光と反射光の輝度の和が補助放射源からの熱放射輝度と等しくなるように補助放射源温度を調節し、その時の補助放射源温度を接触型温度計で測定してそこから対象温度を知る方法。(非特許文献1参照)
(4)2つ以上の点を同時に測定可能な赤外放射温度計もしくはサーモグラフィーと、補助熱源として熱赤外線源の前にシャッタを付けるなどした環境放射温度切替え装置を用い、環境温度を変化させる前後の高放射率部と低放射率部の測定輝度から演算により真の対象温度を求める方法。(特許文献2参照)
(1)の方法は、対象をヒータで加熱するという追加の工程を必要とするほか、この時の対象温度を知る手段を必要とする。
(2)の方法は、偏光光学素子を必要とするため、低温の放射温度測定で使用する長波長赤外光に適用すると高価であり、また、面分布測定には不向きである。
(3)の方法では、補助放射源が黒体であることを求められるが、面状の良好な黒体を得るのは困難である。黒体でない場合は補正を必要としたが十分な精度が得られない。また、補助放射源と測定対象の両方を測定することが求められ、高速に変化する対象温度を測定する場合に適用できない。
(4)の方法では、環境温度をステップ状に切り替えながら測定することを求められ、従って高速に変化する対象温度を測定するのに適さない。
(1)放射率分布を持つ被測定面と、該被測定面の輝度分布を測定する放射計と、該被測定面に関して該放射計から鏡面反射位置に設置された補助熱源とを用意し、該被測定面の放射率の異なる2か所の輝度を2つの異なる補助熱源温度で測定し、該放射率の異なる2か所のそれぞれ2つの輝度測定値に基づいて該放射率の異なる2か所の反射率比を算出し、該反射率比と該放射率の異なる2か所のそれぞれの輝度の測定値を用いて該被測定面の温度を求めることを特徴とする表面温度の測定方法。
(2)放射率分布を持つ被測定面と、該被測定面の輝度分布を測定する放射計と、該被測定面に関して該放射計から鏡面反射位置に設置された補助熱源とを含み、該被測定面の放射率の異なる2か所の輝度を2つの異なる補助熱源温度で測定し、該放射率の異なる2か所のそれぞれ2つの輝度測定値に基づいて該放射率の異なる2か所の反射率比を算出し、該反射率比と該放射率の異なる2か所のそれぞれの輝度の測定値を用いて該被測定面の温度を求めることを特徴とする表面温度の測定システム。
(3)上記輝度分布を測定する放射計は、熱画像装置又は1次元走査型放射計であることを特徴とする(2)に記載の表面温度の測定システム。
また、熱画像装置の視野特性の限界に迫る微小な放射率パターンを有する電子デバイスなどの測定対象においても視野特性のにじみの影響を受けずに正しく対象温度を測定できる。
測定対象となる面の放射率分布の変化の大きい部分に着目し、輝度分布を熱画像装置で測定すると、放射率分布が輝度分布として捉えられる。このとき、対象の温度はある領域で一様であるか、温度分布は放射率分布と比べ空間的に十分なだらかであるものとする。
次に、高放射率部と低放射率部の輝度測定値及びそこから計算される反射率の比から下記に示す(9)式を用いて黒体輻射の放射輝度を計算し、放射率が1の黒体とみなしてプランクの輻射の法則を適用し対象温度を求める。これにより対象放射率分布を知る必要なく真の対象の温度を知ることができる。
放射率分布を持つ測定対象の放射率の異なる2か所についてより高放射率部とより低放射率部の放射率をそれぞれεHi、εLo、反射率をρHi、ρLoとする。対象が不透明体の場合、
キルヒホッフの法則よりεHi+ρHi=1、εLo+ρLo=1の関係が成り立つ。
補助熱源の熱放射輝度がLHeat-source,1のとき、高放射率部と低放射率部の熱放射輝度SHi,1、SLo,1は、下記の式でそれぞれ表わされる。
SHi,1=εHiL(T)+ρHiLHeat-source,1 (1)
SLo,1=εLoL(T)+ρLoLHeat-source,1 (2)
ここで、Tは測定対象温度、L(T)は温度Tの黒体の熱放射輝度である。
次に補助熱源の熱放射輝度をLHeat-source,2に変化させると、高放射率部と低放射率部の熱放射輝度SHi,2、SLo,2は、下記の式でそれぞれ表わされる。
SHi,2=εHiL(T)+ρHiLHeat-source,2 (3)
SLo,2=εLoL(T)+ρLoLHeat-source,2 (4)
Rρ=ρHi/ρLo=(SHi,2−SHi,1)/(SLo,2−SLo,1) (5)
SHi,2=L(T)+ρHi(−L(T)+LHeat-source,2) (6)
SLo,2=L(T)+ρLo(−L(T)+LHeat-source,2) (7)
(6)、(7)式の両辺からL(T)を引いてから比を取り(5)式を用いると(8)式が得られる。
(SHi,2−L(T))/(SLo,2−L(T))=Rρ (8)
(8)式を変形すると(9)式の形でL(T)をRρを用いて表すことができる。
L(T)=(SHi,2−RρSLo,2)/(1−Rρ) (9)
放射率を1として扱って測定輝度L(T)から正しい温度Tが求められる。すなわち未知の放射率を補正した測定が可能である。なお、(6)−(9)式は、SHi,2、SLo,2、LHeat-source,2の全てをSHi,1、SLo,1、LHeat-source,1に置き換えても成り立つ。
よって、高速で温度が変化する現象を測定する場合には対象の温度変化が開始される前の定常状態で2つの補助熱源温度での輝度測定からRρを求めておき、対象の温度変化が開始された後は補助熱源輝度一定のままこのRρの値を用い、(9)式で放射率を補正し変化する対象温度に追従して高速測定することができる。
着目する対象の放射率分布は、例えば回路基板やデバイス上の金属配線パターンや、デバイスの微細構造分布に起因するパターンであってもよい。また、利用できる放射率分布がない場合には対象表面に塗料や金属膜などを塗布したり貼付したりしてもよい。
熱画像装置は測定対象面上に焦点を合わせて2次元熱画像を撮像する。ここで、測定対象はプリント基板、半導体デバイスなどである。補助熱源としては表面を黒化した面黒体装置を使用している。まず最初に、対象温度をおよそ一定に保ちながら補助熱源の温度をステップ状に変化させて、もしくは補助熱源前面を覆うシャッタを開閉させて熱画像を測定する。次に、得られた熱画像中に、等温とみなせるなるべく近接した高放射率部と低放射率部をそれぞれ一か所づつ選定する。2水準の熱画像中の高放射率部と低放射率部の輝度を求め、(5)式に基づき反射率比Rρを求め、さらに(9)式を用いて輝度L(T)を求める。このときの測定された輝度から対象温度を放射率を1と仮定して求める。
図2は補助熱源温度が対象温度より低いときの熱画像で、プリント基板の樹脂材である高放射率部aが高輝度に明るく、金属配線のパターンが低放射率部bとして低輝度に暗く見えている。
図3は補助熱源温度が対象温度より高いときの熱画像で、高放射率部aが暗く、低放射率部bが明るく光っていて、図2の画像と比べ明暗が逆転しているのが分かる。ここで、補助熱源温度は対象温度より高い必要はなく、低くても本測定原理は成立する。
面積効果による輝度の増加・減少は高放射率部と低放射率部の輝度差に比例し、その割合は細線部分の測定個所である高放射率部aでrHiだけ輝度が低く、低放射率部bでrLoだけ輝度が高く観測される。
ここでrHi、rLoは面積効果を表す係数である。面積効果を考慮して式(1)−(4)を書き直して次の各式を得る。
SHi,1=(1−rHi)(εHiL(T)+ρHiLHeat-source,1)+rHi(εLoL(T)+ρLoLHeat-source,1)
SLo,1=(1−rLo)(εLoL(T)+ρLoLHeat-source,1)+rLo(εHiL(T)+ρHiLHeat-source,1)
SHi,2=(1−rHi)(εHiL(T)+ρHiLHeat-source,2)+rHi(εLoL(T)+ρLoLHeat-source,2)
SLo,2=(1−rLo)(εLoL(T)+ρLoLHeat-source,2)+rLo(εHiL(T)+ρHiLHeat-source,2)
Rρ=(SHi,2−SHi,1)/(SLo,2−SLo,1)=((1−rHi)ρHi+rHiρLo)/((1−rLo)ρLo+rLoρHi)
一方、(6)、(7)式と同様に展開するとSHi,2、SLo,2は次のようになる。
SHi,2=(1−rHi)(L(T)−ρHi(L(T)−LHeat-source,2))+rHi(L(T)−ρLo(L(T)−LHeat-source,2))=L(T)−ρHi((1−rHi)+ρLo rHi)(L(T)−LHeat-source,2))
SLo,2=L(T)−ρLo((1−rLo)+ρHi rLo)(L(T)−LHeat-source,2))
(8)式の導出と同様に展開すると、(SHi,2−L(T))/(SLo,2−L(T))=Rρを得る。
これは(8)式と同一である。よって、(9)式を用いて黒体輻射L(T)を求めて、真の温度Tを求めることができる。このように、面積効果により見掛けの輝度温度が変化していてもその影響を受けずに正しい温度を測定することが可能であることが分かる。
また、熱画像装置も高温対象を測定するのであれば可視・近赤外光を測定するCCDなどのカメラでもよい。また、2次元画像を用いる代わりにリニアセンサによる測定を用いてもよい。
Claims (3)
- 放射率分布を持つ被測定面と、該被測定面の輝度分布を測定する放射計と、該被測定面に関して該放射計から鏡面反射位置に設置された補助熱源とを用意し、該被測定面の放射率の異なる2か所の輝度を2つの異なる補助熱源温度で測定し、該放射率の異なる2か所のそれぞれ2つの輝度測定値に基づいて該放射率の異なる2か所の反射率比を算出し、該反射率比と該反射率比を算出した後の該放射率の異なる2か所のそれぞれの輝度の測定値を用いて、該被測定面の温度を温度変化に追従して求めることを特徴とする表面温度の測定方法。
- 放射率分布を持つ被測定面と、該被測定面の輝度分布を測定する放射計と、該被測定面に関して該放射計から鏡面反射位置に設置された補助熱源とを含み、該被測定面の放射率の異なる2か所の輝度を2つの異なる補助熱源温度で測定し、該放射率の異なる2か所のそれぞれ2つの輝度測定値に基づいて該放射率の異なる2か所の反射率比を算出し、該反射率比と該反射率比を算出した後の該放射率の異なる2か所のそれぞれの輝度の測定値を用いて、該被測定面の温度を温度変化に追従して求めることを特徴とする表面温度の測定システム。
- 上記輝度分布を測定する放射計は、熱画像装置又は1次元走査型放射計であることを特徴とする請求項2に記載の表面温度の測定システム。
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