JP5614086B2 - 耐久性に優れたコンクリート柱 - Google Patents

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Description

本発明は、コンクリート損傷時に内部鋼材の耐腐食性に優れたコンクリート柱に関し、特に耐腐食性を高めるため非緊張鋼材の表面に軟化層からなる腐食代を設けたことを特徴とするコンクリート柱に関するものである。
架空電力線や柱上変圧器を支える電力支持物にはコンクリート柱が一般的に使用されている。コンクリート柱内部には、コンクリート柱に圧縮応力(プレストレス)を付与するための緊張鋼材と、緊張鋼材に沿って配置される非緊張鋼材とが配筋されている。これらのコンクリート柱は遠心成型法で製造されるため、水セメント比が通常のコンクリート構造物よりも小さく、通常の屋外環境では中性化などの経年劣化をほとんど生じない。また、コンクリート柱内部の鋼材はコンクリートによりアルカリ環境に保持されるため腐食が生じにくく、長期間健全な状態が保持される。
電力支持物であるコンクリート柱は、通常供用時で想定される電力線や装柱機材からの荷重(許容荷重)に耐えうるように設計された上で建柱され、一定期間毎の巡視点検によりひび割れなどの状態を管理しながら使用される。
しかし、管理者に無許可でケーブルなどを設置され設計外の負荷を受けたり、自動車の衝突や台風などの自然災害などの想定外の荷重を受けて、コンクリート柱にひび割れが入る場合がある。ひび割れの状態によってはひびを介して雨水が侵入し鋼材の腐食劣化を生じ、腐食劣化が進行すると鋼材破断の要因となり得る。
コンクリート柱の損傷は、通常は巡視点検などの監視により発見され、補修や建て替えが行われる。コンクリート柱の建替えは、その場ですぐにできない場合もあり、建替え場所の確保、工事許可の申請、電線や架空機材などの移設を含めて1年以上の長期にわたる場合もある。海岸付近の険しい山中など、頻度の高い定期巡視が難しい場所での損傷は、発見自体に時間がかかる場合がある。このため、腐食による鋼材破断の進行を大幅に遅らせる技術は、少子高齢化などを見据えた将来的な保守の合理化と、突発的な自然災害に対する耐久性向上による安定供給確保の両面に大きな寄与が期待できる。
コンクリート柱の鋼材腐食による破断は、ゆっくりと腐食減肉して延性破断する場合と、腐食部を起点として応力が負荷された状態で脆性破断を生じる場合がある。特に、高強度鋼材に高い応力が負荷された状態では、脆性破断を生じる可能性のあることが知られている(非特許文献1参照)。
PC鋼線は、金属組織として脆性破断を生じにくいことが知られているが、高価であるためコンクリート柱内のすべての鋼材に適用することは難しい。現状のコンクリート柱は、応力のかかる緊張鋼材に脆性破断を生じにくい高価なPC鋼線を使用し、直接応力が作用しない非緊張鋼材には安価なPC鋼棒を適用することで、コストと耐久性を両立した設計となっている。
コンクリート柱の異常損傷時に緊張鋼材(PC鋼線)の優れた耐久性能を発揮するには、損傷を受けてから建替えまでの短期間の非緊張鋼材(PC鋼棒)の性能維持が重要となってくる。コンクリート柱が災害などにより受けた損傷状態によっては、非緊張鋼材にも応力が作用する場合があり、安価に非緊張鋼材の腐食ならびに脆性破断を遅延できる技術は安定供給の観点から重要である。
このような技術として、樹脂で被覆した鋼材を用いて鋼材腐食を抑制する手法が開示されている(特許文献1〜3参照)。また、材料にクロムを含有させた耐食性の優れたステンレス製鋼材を用いて腐食を抑制する手法が開示されている(非特許文献2参照)。さらに、表面軟質化処理を施した鋼材を用いて脆化を伴う腐食破断を抑制する手法が開示されている(特許文献4参照)。
特開平7−54441号公報 特開平4−212570号公報 特開昭62−267420号公報 WO2009/123227号公報
南雲道彦著、「水素脆化の基礎」、内田老鶴圃、2008年12月発行 白濱昭二ら、「2相ステンレスPC鋼材の基礎的諸特性およびこれを用いたプレストレストコンクリート部材の曲げ載荷特性に関する研究」、Journal of the Society of Materials Science, Japan 48(10)、1999年10月発行、pp.1199-1206
しかし、特許文献1〜3に記載の樹脂被覆による鋼材の腐食抑制方法では、樹脂はコンクリート柱の損傷時に疵がつき内部の鋼材が露出する恐れがある。また、非特許文献2に記載のステンレス鋼を用いた方法では、ステンレスはコンクリート柱を連続生産する際、加工性が現行の鋼材と異なるため鋼材の直線性が得られにくい。さらに、樹脂やステンレスなど高価な素材を用いるとコンクリート柱の製造コストが増加する。
特許文献4に記載の表面軟化処理を行う方法でも、表面軟質化を施した鋼材は軟質層が腐食により消失すると鋼材の腐食破断を生じる可能性がある。
そこで、本発明は、コンクリート柱に設計想定外のひび割れが入り、ひびを介して雨水が侵入する状態に非緊張鋼材がさらされても、非緊張鋼材の腐食劣化の進展や破断を低コストで抑制することが可能な耐久性に優れたコンクリート柱を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために本発明者らは、まずコンクリート柱にひび割れを導入した状態でコンクリート内の鋼材の腐食速度を調査した。その結果、鋼材のかぶり厚tが15mm以上を有していれば、波しぶきのかかる海岸付近の厳しい腐食環境下でコンクリートにひび割れが発生しても、鋼材の腐食速度を年間20μm程度に抑制できることを見出した。また、コンクリート柱製造後の鋼材に観察される表面疵は深さが20μm程度であることを確認した。
さらに、鋼材の損傷形態を観察した結果、次のことが明らかとなった。緊張鋼材として用いたPC鋼線は腐食で減肉しても延性的な破断を示しており、PC鋼線が降伏しても断面積が減少するまで長期間破断しないことが確認された。非緊張鋼材として市販のPC鋼棒を用いた場合には、コンクリート柱の損傷状態によって腐食部から脆性破断がみられ、腐食開始後比較的短い期間で破断する場合があった。一方、非緊張材のPC鋼棒の表層を軟化させると、腐食を呈しても脆性破断に至る時間が長くなった。非緊張鋼材の腐食破断までの期間が長くなると、緊張鋼材へ作用する応力が軽減されることから異常損傷に対するコンクリート柱の耐久性も向上する。
これらの知見より、緊張材のPC鋼線に加えて、コンクリート柱に負荷が集中し易い地際部には非緊張鋼材として表層に一定厚さの軟化した腐食代を付与した安価なPC鋼棒を補助的に併用する構成が効果的であることを見出し、本発明を完成するに至った。腐食代の厚さとしては、損傷後コンクリート柱の建て替えに要する期間を最長3年として約80μmの厚さがあれば非緊張鋼材に割れや破断が生じないと考えられる。
また、厳しい環境に適用されるコンクリート柱には、非緊張筋のPC鋼棒として鋼材中央部分と硬度がほぼ同一の母材部分が引張強さの70%を負荷したFIP試験で破断時間が80時間以上となる焼戻しマルテンサイト組織を有する鋼材を用いることにより割れや破断に対する耐久性を向上できることを見出した。
さらに、コンクリート柱には電線などの付属物を取り付た状態での風圧を考慮した設計荷重が規定されているが、設計荷重に対して一定量以上の鋼材を有していれば、ひび割れが生じてもひび割れ幅の増大を抑制できることを見出した。
すなわち本発明は次の通りである。
緊張鋼材としてPC鋼線を用い、非緊張鋼材としてPC鋼棒を用いて遠心成型で製造されるコンクリート柱であって、非緊張鋼材は、かぶり厚15mm以上35mm以下となるように配筋され、非緊張鋼材の中心部の平均硬度である中心硬度HVと表層から80μm位置の硬度である表層硬度HVとの差(HV−HV)が、ビッカース硬度で80超過200以下であることを特徴とする耐久性に優れたコンクリート柱である。
ここで、前記非緊張鋼材の中心部分と硬度が略同一の母材部分が、引張強度の略70%を負荷したFIP試験で破断時間が80時間以上となる焼戻しマルテンサイト組織を有することが好ましい。
また、前記コンクリート柱の地際断面の非緊張鋼材の総面積Sn(mm2)は、前記コンクリート柱の風圧荷重を考慮した設計荷重L(N)として、3L以上15L以下の応力を負担できる面積であることが好ましい。
また、前記コンクリート柱の地際断面の緊張鋼材の総面積Ss(mm2)は、前記コンクリート柱の風圧荷重を考慮した設計荷重L(N)として、Ssが5L以上25L以下の応力を負担できる面積であることが好ましい。
本発明によれば、コンクリート柱に設計想定外のひび割れが入り、ひびを介して雨水が侵入する状態に非緊張鋼材がさらされても、非緊張鋼材の腐食劣化の進展や破断を低コストで抑制することが可能な耐久性に優れたコンクリート柱を提供することができる。
本発明の実施形態に係わるコンクリート柱に作用する荷重のイメージ図である。 本発明の実施形態に係わるコンクリート柱の概要図である。 本発明の実施形態に係わる鋼材の表層から中心部までの硬度分布のイメージ図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。
図1は、本発明の実施形態に係わるコンクリート柱に作用する荷重のイメージ図である。本実施形態ではコンクリート柱1として、通常の送電、配電用に用いられるプレストレストコンクリートポールを例にして説明する。
コンクリート柱1は下端部が地中に固定されている。設計荷重として、上部の電力線装架位置には電力線からの荷重Tが点荷重として作用し、全長にわたり風荷重Lが分布荷重として作用する。さらに想定外の荷重も作用する場合もある。例えば、図1には、車両等の衝突荷重が電柱下部に点荷重として作用する場合を図示している。
コンクリート柱1には、通常想定される設計荷重に対して所定の安全率で曲げ耐力を有するように、十分な量の鋼材が配置されている。しかし、想定外の荷重が付加されると、図1に示すように曲げモーメントが最大となる地際でひび割れが発生する場合がある。
図2は、本発明の実施形態に係わるコンクリート柱の概要図である。図2(a)はコンクリート柱1の外観図であり、図2(b)は、コンクリート柱内に埋設される鋼材の組立図である。 図2(a)に示すコンクリート柱1では、ポール下端から上端の方へ行くに従って漸次直径が小さくなるように全長に沿った所定値のテーパーが設けられている。なお、コンクリート柱1はこれに限定されず、本発明はテーパーが無い柱にも適用することができる。
図2(b)に示すように、コンクリート柱内には、籠状に組み立てられた鋼材が埋設されている。これらの籠状鋼材2は、周方向に略均等位置に配置した複数の緊張鋼材3と、緊張鋼材3に沿って配置した複数の非緊張鋼材4と、周方向位置に固定するためのフープ筋5とが組み合わさっている。
緊張鋼材3は、柱全長にわたって配置されている。緊張鋼材が所定位置に組み上げられた後、プレストレスが与えられ、その後、コンクリートが遠心成型される。コンクリートが凝結した後に緊張鋼材3のストレスを開放することでコンクリートに対してプレストレスが与えられてコンクリート柱1を補強する。
緊張鋼材3はプレストレスをコンクリート柱1に導入するだけでなく、コンクリート柱の曲げ耐力を確保するための主筋としても機能する。緊張鋼材の配置本数は導入されるプレストレスや確保すべき曲げ耐力の大きさに応じて適宜設定すれば良い。図中では簡略化のため緊張鋼材を4本配置しているが、これ以上(例えば8本)配置しても良い。
緊張鋼材3には、JISに定めるPC鋼線を用いる。PC鋼線では損傷を受けたコンクリート柱内で腐食による断面減少に応じて延性的な破断を示しており、損傷後から破断まで長期間緊張を保持しうるためである。
非緊張鋼材4は、柱の長手方向の一部区間に配置されている。図中では、特にテーパーによりコンクリート柱1の下部の緊張鋼材3の周方向間隔が開くため、その間を埋めて補強するために下部に配置されている。また、図中では簡略化のため緊張鋼材の周方向略中間位置に非緊張鋼材を4本配置しているが、緊張鋼材の本数に合わせてこれ以上(例えば8本)配置しても良い。
非緊張鋼材4にはプレストレスは与えられず、設計上も曲げ耐力の算定に考慮されない場合が多い。しかし、想定外の荷重が作用する場合には非緊張鋼材にも応力が作用するため、実質的には非緊張鋼材4により曲げ耐力が増加する。
非緊張鋼材4にはコストの観点から焼き戻しマルテンサイト組織を有するPC鋼棒を用いる。ただし、本実施形態ではPC鋼棒の耐久性を高めるため、かぶり厚等について特段の配慮を行う。
非緊張鋼材4のコンクリート表層からのかぶり厚tは、15mm以上35mm以下とする。かぶり厚tが15mm未満ではひびが入った際に鋼材の腐食の進行が速いが、かぶり厚tが15mm以上では腐食の進行が遅く(腐食速度で20μm/年以下)、腐食抑制効果が認められるためである。また、かぶり厚tを35mm以下とすることで製造にかかるコストの増大を抑制し、経済的にコンクリート柱を製造できる。なお、緊張鋼材3の耐久性を高めるため、緊張鋼材3のかぶり厚tも同様に規定するのが好ましい。
さらに、かぶり厚tだけでなく、鋼材断面の硬度分布にも特徴を持たせることで、非緊張鋼材4の脆性破断に対する性能を向上させている。詳細には鋼材表面に低硬度の軟化層を設け、軟化層と鋼材中心との硬度差を所定値以上にすることで鋼材の脆性破断を抑制している。さらに、軟化層の厚さを所定値以上にすることで腐食代としての機能も持たせている。
鋼材断面の硬度分布の特徴について図3を用いて説明する。図3は、本発明の実施形態に係わる鋼材の表層から中心部までの硬度分布のイメージ図である。横軸は鋼材表面からの距離dであり、鋼材表面(d=0)から鋼材中心Cまでを表している。縦軸はビッカース硬度Hvである。
まず、軟化層と鋼材中心との硬度差について説明する。本実施形態で対象とする非緊張鋼材4は、非緊張鋼材4の中心部Cの平均硬度である中心硬度HVと表層から80μmの位置Aの硬度である表層硬度HVとの差(HV−HV)から求められる硬度差HVが、ビッカース硬度Hvで80超過200以下であることを特徴とする。
硬度差HVがビッカース硬度Hvで80を超過していれば、作用する応力レベルが高い場合にも腐食部の脆化を防止し、鋼材の脆性割れを抑制する効果が母材に対して期待できるためである。また、同200以下であれば、鋼材製造にかかるコストが過大とならず、経済的にコンクリート柱を製造できるためである。
つぎに、軟化層の厚さについて説明する。硬度が低い軟化層の部分は、鋼材の腐食代として機能する。低硬度部は、腐食しても腐食箇所を起点とした割れなどを生じにくいため腐食代として有効なためである。本実施形態では、軟化層厚(=腐食代)は表層から少なくとも80μmの位置Aまで考慮することができる。
腐食代の厚さは、表面疵やコンクリート柱1の建て替えに要する期間に進行する腐食厚を考慮して設定する。表面疵については、コンクリート柱製造後の鋼材に観察される表面疵深さを確認したところ、20μm程度であることが判明した。
また、コンクリート柱1の建て替えに要する期間は、最長3年程度と考えられる。この期間に非緊張鋼材4の腐食速度を乗じて算定することができる。
所要最低腐食代
=表面疵+建て替えに要する期間(3年間)に進行する腐食厚
=20+60
=80μm
よって、腐食代として機能する軟化層厚を80μm確保することで、最大3年間の建て替え期間でも非緊張鋼材が脆性破断に至ることはなく、建替え時までの耐久性劣化が抑制される。そのため、余裕を持って保守計画を立案でき、緊急工事を減らして工事負荷を平準化し保守管理コストを抑制できる。さらに、想定外の負荷を受けた場合にも一定期間は安定供給を維持でき、電力系統の信頼性を向上できる。
ただし、軟化層は80μmを大幅に超えた厚さにする必要はない。建替え期間を超えて耐久性を向上させても、鋼材製造にかかるコストが大きくなるだけで費用対効果に劣るためである。
鋼材表層に軟化層を設ける処理方法は、特に限定されず、公知の方法を適宜選択して採用すればよい。なかでも、特許文献4に記載の表面軟質化処理方法が好ましい。特許文献4の表面軟質化処理方法では、焼入れ工程後の焼戻し工程において、加熱手段として高周波誘導加熱を行う。高周波誘導加熱による焼戻しでは鋼材自体が発熱するが、この発熱部の深さは、焼戻加熱コイルのコイルターン数と周波数、入力電気エネルギー、加熱温度、加熱時間、放冷時間の組合せにより調節することができる。つまり、軟化層の硬度や厚さを一定範囲で制御しながら軟化層を形成することができる点が本実施形態に適している。
非緊張鋼材4の水素脆化試験としてFIP (Federation Internationale de la Precontrainte) 試験が知られている。この試験は50℃,20%チオシアン酸アンモニウム水溶液中で,鋼材に一定荷重を負荷し破断までの時間を評価する。
非緊張鋼材4は、その中心部分と硬度が略同一の母材部分が、引張強度の略70%を負荷したFIP試験で破断時間が80時間以上となる焼戻しマルテンサイト組織を有することが好ましい。FIP試験値を満足する焼戻しマルテンサイト組織を規定することにより、材料面から腐食部からの脆性割れを抑制することができる。ただし、コスト的な優位性は一般的に小さくなる。
非緊張鋼材4の引張強度は、緊張鋼材3の応力負荷を分担する必要があることから緊張鋼材3の引張強度と望ましくは同等、少なくとも80%以上であることが望ましい。
また、コンクリート柱1の地際断面の非緊張鋼材4の総面積Sn(mm2)は、コンクリート柱1の風圧荷重を考慮した設計荷重L(N)として、3L以上15L以下の応力を負担できる面積であることが好ましい。総面積Snが3L以上であれば、大きな負荷がかかり易い地際部分の応力を非緊張鋼材4でも十分に負担でき、緊張鋼材3を補助できる。また、同15L以上では鋼材量の増加に伴う効果が飽和するため、総面積Snの上限値を15Lと定めることで、鋼材を不必要に多量に使用することを防止し、コンクリート柱1のコストの増大を抑制できる。
さらに、コンクリート柱1の地際断面の緊張鋼材3の総面積Ss(mm2)は、5L以上25L以下の応力を負担できる面積であることが好ましい。総面積Ssが5L以上であれば、過大な負荷がかかりコンクリートにひび割れが発生しても、プレストレスによりひび割れ幅の増大を抑制できる。また、同25L以下とすることにより、非緊張鋼材4と同様に不必要なコスト増大を抑制できる。
以上説明の通り、本実施形態のコンクリート柱1によれば、自動車の衝突や台風などの自然災害により設計想定外のひび割れが入り、ひびを介して雨水が侵入する状態に非緊張鋼材がさらされても、非緊張鋼材の腐食劣化の進展や破断を低コストで抑制することが可能な耐久性に優れたコンクリート柱を提供することができる。
〔腐食速度試験〕
遠心成型したコンクリート柱に幅0.1mmと0.5mmのひび割れを導入し、実環境で暴露試験を行い、コンクリートをはつって鋼材表面からの腐食速度を測定した。なお、ひび割れ幅0.5mmは通常の管理基準を超える範囲から設定した。
検討に使用した鋼材の組成は、C:0.4%、Si:1.8%、Mn:0.6%、P:0.01%、S:0.05%、Ti:0.03%、B:0.001%、および、C:0.2%、Si:1.3%、Mn:0.7%、P:0.02%、S:0.03%、Ti:0.03%である。
実施例11〜16は、特許文献4に記載の方法で熱処理を行って軟化層を設けた鋼材をかぶり厚t15mm〜35mmの位置に配置した。比較例11〜12は、市販のJISG3137(細径異形PC鋼棒)に該当する鋼材(上記熱処理は実施せず)をかぶり厚t10mmの位置に配置した。結果を表1に記す。
かぶり厚t10mmの条件では、ひび割れ幅が0.1mmでは鋼材腐食は殆ど認められないが(比較例11参照)、通常の管理基準を大幅に超える0.5mmという大きなひび割れ幅の場合は40μm/年というかなりの速さで腐食が進む(比較例12参照)。一方、かぶり厚tは15mm以上では、ひび割れ幅が0.5mmでも腐食速度は20μm/年以下であり、腐食の抑制効果が認められる(実施例12参照)。
〔コンクリート柱の曲げ耐久試験〕
緊張鋼材および非緊張鋼材を配筋したコンクリート柱を、地際から約2m位置に約1.0mmのひび割れが発生するように柱頂部に水平方向の荷重を付与した状態で実環境に3年間保持した。
緊張鋼材には市販のJIS3538の異形PC鋼線(引張り強さ1570N/mm2)を使用した。非緊張鋼材には市販のJISG3137の細径異形PC鋼棒(引張り強さ 1470N/mm2)を使用した。実施例21〜実施例23の非緊張鋼材には、特許文献4に記載の方法で熱処理を実施した。その際、軟化層の厚さは約100μmであった。また、緊張鋼材、非緊張鋼材のかぶり厚は約19mmであった。
荷重を保持したコンクリート柱について、ひび割れ部分のコンクリートをはつり、鋼材の腐食箇所を圧延方向に平行に切断し、断面腐食深さと、割れあるいは破断の有無を確認した(評価1〜評価3)。また、荷重保持中のひび割れ拡大有無を測定した(評価4)。
表2に試験条件を、表3に評価結果をそれぞれ示す。両表において「−」は測定値がないものを示す。また、表3において評価4では、予め導入した1.0mmのひび割れ幅が、荷重保持開始から3年後に1.5mm以下であったものを○、同1.5mmを超えて拡大しているものを×とした。
比較例21では、非緊張鋼材に割れ・破断が生じた(表3評価2参照)。比較例21の硬度差Hdが0であり、実施例21〜実施例23の硬度差Hd(90〜130)よりも小さくなっており、この影響で脆性化して損傷が生じたものと想定される。
一方、比較例22および比較例23では、ひび割れ幅が1.5mm以上に拡大した(表3評価3参照)。比較例22の緊張鋼材総面積対設計荷重比S/Lは3(N/mm2)であり、また比較例23の非緊張鋼材総面積対設計荷重比S/Lは2(N/mm2)であり、それぞれ実施例21〜実施例23の値よりも小さくなっている。この影響で、損傷が著しく拡大したものと想定される。
1 コンクリート柱
2 籠状鋼材
3 緊張鋼材
4 非緊張鋼材
5 フープ筋

Claims (4)

  1. 緊張鋼材としてPC鋼線を用い、非緊張鋼材としてPC鋼棒を用いて遠心成型で製造されるコンクリート柱であって、
    非緊張鋼材は、かぶり厚15mm以上35mm以下となるように配筋され、
    非緊張鋼材の中心部の平均硬度である中心硬度HVcと表層から80μm位置の硬度である表層硬度HVfとの差(HVc−HVf)が、ビッカース硬度で80超過200以下であることを特徴とする耐久性に優れたコンクリート柱。
  2. 前記非緊張鋼材の中心部分と硬度が略同一の母材部分が、引張強度の略70%を負荷したFIP試験で破断時間が80時間以上となる焼戻しマルテンサイト組織を有することを特徴とする請求項1に記載の耐久性に優れたコンクリート柱。
  3. 前記コンクリート柱の地際断面の非緊張鋼材の総面積Sn(mm2)は、前記コンクリート柱の風圧荷重を考慮した設計荷重L(N)として、3L以上15L以下の応力を負担できる面積であることを特徴とする請求項1または2に記載の耐久性に優れたコンクリート柱。
  4. 前記コンクリート柱の地際断面の緊張鋼材の総面積Ss(mm2)は、前記コンクリート柱の風圧荷重を考慮した設計荷重L(N)として、Ssが5L以上25L以下の応力を負担できる面積であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の耐久性に優れたコンクリート柱。
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