本発明のマイクロバブル液体注入装置及び地盤へのマイクロバブル液体注入方法の実施形態を図面に基づき説明する。
図1には、地盤12に設置された液体注入システム10と、地盤12上に構築された構造物としての建物14が示されている。地盤12は、不透水層としての非液状化地盤16と、非液状化地盤16の上層にある軟弱地盤18とで構成されており、建物14は軟弱地盤18上に支持されている。
建物14の周囲の軟弱地盤18には、建物14を取り囲んで、コンクリートやソイルセメントなどの連続壁からなる止水壁22が構築されており、止水壁22の下端部は非液状化地盤16に到達している。また、建物14の一組の側壁14A、14Bに隣接した軟弱地盤18の一部には、側壁14A側にマイクロバブル液体注入用の孔部の一例としての注入孔部24が掘削により形成され、側壁14B側に揚水用の揚水孔部26が掘削により形成されている。
ここで、マイクロバブル液体とは、直径が10μm〜200μmのマイクロバブル(微細気泡)を含む液体の総称であり、本実施形態ではマイクロバブル液体の一例として、マイクロバブルを含む水(以後、マイクロバブル水という)を用いている。マイクロバブル水の製造方法としては、高圧下で気体を水に大量に溶解させ減圧により再気泡化する加圧減圧法、水の渦流を作って気体を巻き込みファン等により切断、粉砕させて気泡を発生させる気液せん断法が挙げられる。本実施形態では、一例として、後述するように、気液せん断法を用いてマイクロバブル水を製造し、軟弱地盤18へ供給する。
注入孔部24は、建物14を挟んで揚水孔部26と対向配置状態となっている。なお、注入孔部24及び揚水孔部26は図1の奥行き方向に複数形成されているが、それぞれ同様の掘削状態となっている。このため、以後の説明では1組の注入孔部24、揚水孔部26について説明し、他の注入孔部24、揚水孔部26の説明を省略する。
注入孔部24内には、塩化ビニルからなる断面円形状の有孔管28が、開口を上側に向けて立設されている。有孔管28は、注入孔部24の深さと同程度の長さとなっており、マイクロバブル水の注入を行う位置の側壁には、後述する貫通孔29(図5参照)が形成されている。なお、以後の説明では、図5を除いて有孔管28の貫通孔29の図示を省略する。
また、有孔管28の外径は、注入孔部24の孔径よりも小さくなっており、有孔管28と注入孔部24の間には、予め設定された幅の隙間が形成されている。ここで、軟弱地盤18(止水壁22の内側の軟弱地盤を18Aとする)には、マイクロバブル水の注入(空気注入)が必要とされる液状化対策層Sが設定されており、この液状化対策層Sの深度に合わせて、有孔管28と注入孔部24との隙間に砂利層25が形成されている。砂利層25は、上下が粘土層27で挟まれており、砂利層25を通るマイクロバブル水の微細気泡(空気)が上方へ漏れることなく液状化対策層Sに注入されるようになっている。
一方、液体注入システム10は、止水壁22で囲まれた軟弱地盤18Aに注入孔部24からマイクロバブル水を注入するマイクロバブル液体注入装置の一例としての液体注入装置20と、軟弱地盤18中の地下水を揚水孔部26から地上へ揚げる揚水装置30と、揚水装置30で地上に揚げられた地下水を注入孔部24の有孔管28に注入する注入配管(図示省略)とで構成されている。なお、液体注入装置20は、注入孔部24及び揚水孔部26の数に合わせて複数設けられている。
図2に示すように、液体注入装置20は、有孔管28内に吊り下げ手段(図示省略)により吊下げられた液体供給管32及び還流手段の一例としての液体還流管33と、液体供給管32にマイクロバブル水を供給するマイクロバブル発生手段の一例としての液体供給装置34と、液体供給管32及び液体還流管33の下端部よりも上方に吊下げられた上部閉塞手段の一例としての上部パッカー36と、液体供給管32及び液体還流管33の下端部よりも下方に吊下げられた下部閉塞手段の一例としての下部パッカー38と、を有している。なお、液体供給管32は、下端部のみ硬質材で構成されており、それ以外の部位はビニール製チューブで構成されている。
液体供給装置34は、箱状の筐体34Aを有しており、筐体34Aの側壁には、液体供給管32の一端が連結された連結部42が設けられている。また、液体供給装置34には、連結部42に連結された液体供給管32にマイクロバブル水を供給するためのマイクロバブル水発生装置44、供給配管46、圧力計48、制御部50、流量計52、電磁弁54、及びタイマー56が設けられている。
また、液体供給装置34には、上部パッカー36及び下部パッカー38に配管(図示省略)を介して空気の注入を行い、又は上部パッカー36及び下部パッカー38から空気を排出するパッカー作動装置60が設けられている。筐体34Aの側壁には、液体還流管33の一端が連結された連結部43が設けられている。さらに、液体供給装置34には、液体還流管33内を流れた水が一旦貯留される貯留タンク62が設けられている。そして、貯留タンク62に貯留された水は、液体供給装置34の外側へ排水されるか、又は必要に応じてマイクロバブル水発生装置44に供給(図2の破線T)されるようになっている。
液体供給装置34の筐体34A内では、連結部42とマイクロバブル水発生装置44が供給配管46で接続されている。供給配管46には、マイクロバブル水発生装置44側を上流側、連結部42側を下流側として、上流側から下流側に向けて順に、圧力計48、流量計52、及び電磁弁54が取付けられている。
マイクロバブル水発生装置44は、図示しない電源から電源供給されることにより作動して、供給配管46へマイクロバブル水を送出するようになっている。ここでは一例として、株式会社ニクニ製のマイクロバブルジェネレータを用いている。このマイクロバブルジェネレータでは、気液せん断法を用いており、渦流ターボミキサー(図示省略)によって、大気中から空気を吸引すると共に水の攪拌、水との混合、溶解を行い、気泡径10μm程のマイクロバブルを発生させている。そして、マイクロバブル水発生装置44で発生したマイクロバブル水は、供給配管46に加圧状態で供給されるようになっている。一例として、マイクロバブル水の注水圧を0.4MPaとしている。
圧力計48は、供給配管46内に送り込まれたマイクロバブル水の圧力が設定圧力となっているかどうかを確認するためのものであり、流量計52は、供給配管46をマイクロバブル水が流れていることを確認するためのものである。また、電磁弁54は、タイマー56が接続されており、タイマー56に設定されたマイクロバブル水供給の時間に合わせて電気的にスイッチのON、OFFが行われ、供給配管46を開放又は遮断させる。
制御部50は、マイクロバブル水発生装置44、電磁弁54、及びパッカー作動装置60の動作スイッチのON、OFFを、予め設定された動作プログラムに基づいて自動で行うようになっている。なお、タイマー56への時間設定は、制御部50を介して設定される。
一方、有孔管28内にクレーン等の吊下手段(図示省略)を用いて吊下げられた液体供給管32は、一端(地上側)が液体供給装置34の連結部42に連結されている。同様に、吊下手段を用いて吊下げられた液体還流管33は、一端(地上側)が液体供給装置34の連結部43に連結されている。なお、注入孔部24の深さ方向における液体還流管33の下端部は開口しており、この開口の位置が砂利層25の位置となるように配置されている。また、液体還流管33には、流量計68が設けられており、砂利層25に送り込めずに液体還流管33内を上昇したマイクロバブル水の流量を計測可能となっている。
ここで、有孔管28内の液体供給管32の下端は開口しており、放出口32Aが形成されている。そして、液体供給管32は、注入孔部24の深さ方向において、放出口32Aの位置が砂利層25の位置となるように配置されている。また、液体供給管32の放出口32Aを含む下端部には、開閉弁64が設けられている。
開閉弁64は、絞り弁であり、液体供給管32内のマイクロバブル水に作用する加圧力が設定加圧力を超えるまで放出口32Aを閉塞し、該設定加圧力を超えたときに放出口32Aを開放する構成となっている。さらに、開閉弁64の近傍には、放出口32Aから放出されたマイクロバブル水の圧力を計測する水圧計66が設けられている。水圧計66で得られた水圧データは、ケーブル(図示省略)を介して制御部50へ送られ保存される。
図3(A)に示すように、液体供給管32の開閉弁64よりも上側には、円筒状の上部パッカー36が外挿されており、液体供給管32の開閉弁よりも下側には、円筒状の下部パッカー38が設けられている。また、上部パッカー36と下部パッカー38の間には、前述の水圧計66が配置されている。
上部パッカー36は、全体が円筒状となっており、上端部と下端部に環状の円板部36A、36Bが設けられている。円板部36A、36Bの間には、膨張又は収縮が可能なゴム等の弾性素材からなる環状(チューブ状)のパッカー袋36Cが設けられている。パッカー袋36Cには、円板部36Aを貫通して上部パッカー用配管(図示省略)が接続されており、上部パッカー用配管の端部は、前述のパッカー作動装置60(図2参照)に接続されている。
また、円板部36Aの上面には、上部パッカー36を吊下げるための複数のワイヤー61の一端が取り付けられている。なお、ワイヤー61は円板部36Aの周方向で例えば4箇所に取り付けられるが、ここでは2本のワイヤー61のみを図示し、他のワイヤー61の図示を省略している。
図3(B)には、図3(A)の上部パッカー36を破線Dで切ったときの断面図が示されている。パッカー袋36Cは環状であり、内部空間36Dに空気が注入されることにより2点鎖線A、Bで示すように内外へ膨張するようになっている。また、パッカー袋36Cの穴部36E内には、液体供給管32と、下部パッカー38に空気を注入するための下部パッカー用配管41と、水圧計66(図2参照)の配線(図示省略)とが設けられている。
一方、図3(A)に示すように、下部パッカー38は、全体が円柱状となっており、上端部と下端部に円形の円板部38A、38Bが設けられている。円板部38A、38Bの間には、膨張又は収縮が可能なゴム等の弾性素材からなる環状(チューブ状)のパッカー袋38Cが設けられている。パッカー袋38Cには、円板部38Aを貫通して下部パッカー用配管41(図3(B)参照)が接続されており、下部パッカー用配管41の上端部は、前述のパッカー作動装置60(図2参照)に接続されている。なお、下部パッカー38に液体供給管32の下端は挿入されていない。
また、円板部38Aの上面には、下部パッカー38を吊下げるための複数の鎖63の一端(下端)が取り付けられている。なお、鎖63は円板部38Aの周方向で例えば4箇所に取り付けられるが、ここでは2本の鎖63のみを図示し、他の鎖63の図示を省略している。
ここで、上部パッカー36及び下部パッカー38は、パッカー作動装置60(図2参照)から気体が送り込まれ圧力がかけられることでパッカー袋36C、38Cが膨張する。また、上部パッカー36及び下部パッカー38は、パッカー作動装置60によってパッカー袋36C、38Cから気体が抜かれることで圧力が下がり収縮する。なお、有孔管28へ上部パッカー36及び下部パッカー38を吊下げるときは、パッカー袋36C、38Cが収縮状態となっている。
図2に示すように、上部パッカー36に一端(下端)が取り付けられたワイヤー61は、他端(上端)が、軟弱地盤18上に設けられた巻取装置65で巻き取られるようになっており、これにより、上部パッカー36が有孔管28内に吊下げられている。一方、下部パッカー38に一端(下端)が取り付けられた鎖63は、他端(上端)が上部パッカー36の円板部36Bの下面に取り付けられており、これにより、下部パッカー38が有孔管28内に吊下げられている。
ここで、巻取装置65を動作させることで、有孔管28内での深さ方向における上部パッカー36の設置位置と、下部パッカー38の設置位置とが変更される。なお、上部パッカー36は、砂利層25の上側の粘土層27と対応する位置に設置され、下部パッカー38は、砂利層25の下側の粘土層27と対応する位置に設置される。これにより、上部パッカー36と下部パッカー38とで挟まれた範囲が、砂利層25と対向して配置される。
水圧計66は、前述のように、上部パッカー36と下部パッカー38の間で且つ砂利層25と対応する位置に配置されており、この位置での水圧の変化を計測する。なお、水圧計66は、上部パッカー36及び下部パッカー38が有孔管28内に配置された後、地下水が有孔管28内に注入されることで水圧が計測可能となる。
また、水圧計66、前述の制御部50と電気的に接続されている。制御部50は、予め設定された圧力設定値と水圧計66測定された圧力測定値との差異に応じて、電磁弁54開放又は遮断して、マイクロバブル水の供給又は供給停止を行うようになっている。
一方、図1に示すように、揚水孔部26内には、塩化ビニルからなる断面円形状の有孔管31が、開口を上側に向けて立設されている。有孔管31は、揚水孔部26の深さと同程度の長さとなっており、揚水を行う位置の側壁には複数の貫通孔(図示省略)が形成されている。また、有孔管31の外径は、揚水孔部26の孔径よりも小さくなっており、有孔管31と揚水孔部26の間には、予め設定された幅の隙間が形成されている。この隙間は、砂利層25及び粘土層27で埋められているが、一部土砂も用いられている。
さらに、有孔管31内には、揚水孔部26内に流入した地下水を揚水する揚水ポンプ35が設けられている。揚水ポンプ35は、液体供給装置34の制御部50(図2参照)に電気的に接続されており、制御部50によってスイッチのON、OFFが行われる。また、揚水ポンプ35には、揚水孔部26内から地上へ向けて延設された揚水パイプ35Aの一端(下端)が接続されており、揚水パイプ35Aの他端(上端)は、地上に設けられた揚水装置30内の揚水タンク(図示省略)に接続されている。この揚水タンクは、前述の注入配管(図示省略)が接続されており、注入配管の接続部位には、内部に貯留された水を所定の圧力で注入配管へ送出する送出ポンプ(図示省略)が設けられている。ここで、揚水ポンプ35、揚水パイプ35A、及び揚水タンクにより揚水装置30が構成されている。
次に、本発明の実施形態の作用について説明する。まず、液体注入システム10の設置工程について説明する。
図1に示すように、建物14を囲むようにして軟弱地盤18から非液状化地盤16まで止水壁22を構築する。これにより、止水壁22の外側にある周辺地盤と、建物14の下側の軟弱地盤18Aとの水(地下水)の移動が遮断される。そして、地盤12上には、後述する設置工程を行い、液体供給装置34と揚水装置30を設置する。なお、止水壁22で囲まれた軟弱地盤18Aについては、予めどの深度に液状化対策層Sを設けるかが決められている。
続いて、図4(A)に示すように、オーガー等の掘削機(図示省略)により軟弱地盤18Aに複数の注入孔部24を形成する。そして、注入孔部24内に有孔管28を立設する。ここで、有孔管28と注入孔部24の間には隙間が形成されている。
続いて、図4(B)に示すように、有孔管28と注入孔部24の隙間に粘土を充填して、粘土層27Aを形成する。なお、形成される粘土層27Aの上面の高さが、軟弱地盤18Aの液状化対策層Sの下面の高さとなるまで粘土の充填を行う。
続いて、有孔管28と注入孔部24の隙間で粘土層27A上に砂利を充填して、砂利層25を形成する。なお、形成される砂利層25の上面の高さが、軟弱地盤18Aの液状化対策層Sの上面の高さとなるまで砂利の充填を行う。また、砂利層25は、空気の透過が十分可能となるように予め石及び砂が選定されているものとする。
続いて、有孔管28と注入孔部24の隙間で砂利層25上に粘土を充填して、粘土層27Bを形成する。これにより、有孔管28が固定される。なお、粘土層27Bについては、粘土を地上まで充填して形成しなくともよく、空気が上方に抜けない程度の層厚となった後に、注入孔部24掘削時の土砂で埋めるようにしてもよい。
続いて、図4(C)に示すように、有孔管28内に液体供給管32、液体還流管33、下部パッカー38、及び上部パッカー36を一体で挿入する。下部パッカー38は、予め鎖63の長さが調整されることにより上部パッカー36に対して位置調整されており、上面が液状化対策層Sの下面となる位置で保持される。また、上部パッカー36は、巻取装置65でワイヤー61が引き出され又は巻き取られることで位置調整され、下面が液状化対策層Sの上面となる位置で保持される。
このように、上部パッカー36と下部パッカー38が液体供給管32と独立して吊下げられているので、吊下げ長さを調整して上部パッカー36と下部パッカー38の間隔を変更することができる。これにより、マイクロバブル水を供給する軟弱地盤18Aの液状化対策層S(特定領域)を変更することができる。なお、上部パッカー36の位置は、巻取装置65において、ワイヤー61の巻取り量に基づいて検出される。
挿入された液体供給管32及び液体還流管33は、接続されたチューブ又は管そのものにスケールをつけておくことで位置検出が行われる。ここで、開閉弁64(放出口32A)が砂利層25と対向する位置まで挿入された状態で、液体供給管32の他端部(上端部)を液体供給装置34の連結部42(図2参照)に連結し、液体供給管32の高さ位置を固定する。同様にして、液体還流管33の他端部を連結部43に連結して固定する。
続いて、パッカー作動装置60(図2参照)を作動して、上部パッカー36、下部パッカー38のパッカー袋36C、38C(図3(A)参照)にそれぞれ空気を注入する。空気が注入されたパッカー袋36C、38Cは、膨張して有孔管28内を密閉すると共に、有孔管28に圧着され位置が固定される。なお、前述の水圧計66(図2参照)は、上部パッカー36と下部パッカー38の間に配置されている。
このように液体注入装置20の各部(液体供給管32、液体供給装置34、上部パッカー36、及び下部パッカー38)を軟弱地盤18Aに設置することで、図5に示すように、放出口32Aから、有孔管28に形成された貫通孔29、砂利層25を通して、液状化対策層Sへマイクロバブル(MB)が送り込み可能となる。また、注入したマイクロバブルMB(空気)は、有孔管28内の上部パッカー36、下部パッカー38の上部や下部へ抜けないようにしている。
一方、図1に示すように、建物14を挟んで注入孔部24と反対側において、オーガー等の掘削機(図示省略)により軟弱地盤18Aに複数の揚水孔部26を形成する。そして、揚水孔部26内に有孔管31を立設する。ここで、有孔管31と揚水孔部26の隙間に土砂等を充填して有孔管31を固定する。
続いて、クレーン(図示省略)等により揚水パイプ35A及び揚水ポンプ35を吊下げると共に、有孔管31内に挿入する。そして、揚水ポンプ35が地下水面より十分深い位置まで挿入された状態で、揚水パイプ35Aの端部(上端)を揚水タンク(図示省略)に接続し、揚水ポンプ35の高さ位置を固定する。なお、放出口32A(図2参照)と揚水ポンプ35は同じレベルでなくてもよい。揚水ポンプ35は放出口32Aと同じか、より深い位置がよい。
続いて、各揚水タンクを複数のパイプで連通させた状態で、注入配管(図示省略)の一方の端部を揚水タンクに接続する。ここで、注入配管の他方の端部は、予め複数の注入孔部24に合わせて分岐されており、各注入孔部24に挿入することで、揚水タンクから送出された水が有孔管28内に注入される。
次に、軟弱地盤18Aへのマイクロバブルの注入作用について説明する。
図6に示すように、開閉弁64の上方の有孔管28は、膨張した上部パッカー36によって塞がれており、開閉弁64よりも下方の有孔管28は、膨張した下部パッカー38によって塞がれている。ここで、液体供給装置34において、制御部50によりマイクロバブル水発生装置44(図2参照)が駆動されることにより、液体供給管32内にマイクロバブル水が供給される。なお、以後は、マイクロバブル水をW、マイクロバブル(微細気泡)をMBと記載して区別する。
図2に示すように、液体注入装置20では、上部パッカー36と下部パッカー38の間がマイクロバブル水W及び地下水(図示省略)で浸水されており、これらの水による水圧が水圧計66で計測される。そして、制御部50が、予め設定された圧力設定値と水圧計66で測定された圧力測定値との差異に応じて、液体供給管32へのマイクロバブル水Wの供給又は供給停止を行う。
ここで、軟弱地盤18Aが目詰まりしてマイクロバブル水Wを注入し難くなった場合、上部パッカー36と下部パッカー38の間の空間には、マイクロバブル水Wが過剰に注入されることになるが、液体還流管33があることで、マイクロバブル水Wの一部が地上に還流する。これにより、連続して供給されるマイクロバブル水Wによって、放出口32A付近の圧力(水圧)が過度に上昇するのを防ぐことができる。そして、軟弱地盤18Aに必要以上の負荷をかけなくて済む。
なお、制御部50は、流量計52で計測される流量と、流量計68で計測される流量との差に基づいて、軟弱地盤18Aに注入されるマイクロバブル水Wの注入量を管理している。また、制御部50は、水圧計66によって計測される水圧が設定値よりも高くなった場合に、電磁弁54を閉じてマイクロバブル水Wの供給を停止する。これらの作用により、軟弱地盤18Aには必要以上の負荷がかからなくなる。
一方、図6に示すように、液体供給管32では、供給されたマイクロバブル水Wに作用する加圧力が設定加圧力となるまでは開閉弁64が閉塞されており、設定加圧力を超えると開閉弁64が開放される。そして、開閉弁64が開放されることにより、放出口32A(図2参照)からマイクロバブル水Wが放出される。なお、マイクロバブル水Wは、開閉弁64が閉塞されて加圧されている状態では、マイクロバブルMBが視認できないほど小さくなっているが、開閉弁64が開放されて圧力開放された状態(大気圧)では、膨張して気泡径が拡大しているため、白濁状態として視認される。
続いて、放出口32Aから上部パッカー36及び下部パッカー38で仕切られた空間に放出されたマイクロバブル水Wは、有孔管28の貫通孔29(図5参照)及び砂利層25を通って、軟弱地盤18Aの液状化対策層Sに注入(供給)される。ここで、液状化対策層Sに近い領域で開閉弁64を開放しているので、マイクロバブル水中のマイクロバブルMBを喪失させることなく、液状化対策層Sにマイクロバブル水が供給される。これにより、マイクロバブル水Wが注入された軟弱地盤18Aの液状化対策層Sでは、マイクロバブル水Wに含まれるマイクロバブルMBによって、間隙の飽和度が100%から低下することになる。
図7(B)には、比較例として、マイクロバブル水発生装置100と、マイクロバブル水発生装置100から液状化対策層Sへ延設された液体供給管102とが示されている。また、図7(B)には、液体供給管102の上端と下端におけるマイクロバブルMBの存在状態が模式的に示されている。比較例では、液体供給管102内で圧力開放されてしまう。このため、マイクロバブル水発生装置100で発生したマイクロバブルMBは、圧力開放時には所定の気泡径で存在するものの、液体供給管102内を流れる途中で徐々に収縮し、液状化対策層Sに注入する時点では喪失してしまうか、あるいは、液状化対策に効果が無い大きさになって(小さくなって)しまう。
一方、図7(A)に示すように、本実施形態では、開閉弁64が所定の加圧力となるまで液体供給管32を閉塞するため、液体供給装置34で発生したマイクロバブルMBは、開閉弁64まで加圧状態が保持され、小さい気泡径のままで放出口32Aから放出され、圧力開放される。
マイクロバブル水Wは、圧力開放時に多くのマイクロバブル(気泡)が発生するという特徴を有しているため、本実施形態のように地盤の深部(液状化対策層S)に放出口32Aを配置して圧力開放する方が、比較例のように地上で圧力開放したマイクロバブル水Wを液状化対策層Sに注入する場合に比べて、より多くのマイクロバブルを液状化対策層Sに注入することができる。これにより、マイクロバブル水Wを液状化対策層Sに注入する時点でマイクロバブルMBが喪失することを抑制することができる。
ここで、図6に示すように、本実施形態では、液状化対策層Sの間隙にマイクロバブルMB(微細気泡)が存在し、飽和度が低下した状態において地盤12に地震が発生すると、液状化対策層Sでは、マイクロバブルMBの気泡が収縮することで間隙水圧の上昇が抑えられる。これにより、砂粒子同士が接触したままの状態が保持され、水中を砂粒子が自由に移動することが抑制されるので、軟弱地盤18Aの液状化を防止することができる。なお、マイクロバブルMBの特徴として、通常(mmオーダー)の気泡に比べて水中での上昇速度が遅いため、液状化対策層S内で存在する時間も長くなる。これにより、単に空気を軟弱地盤18Aに送り込む場合に比べて、液状化対策層Sでの気泡の滞留時間を長くすることができる。
また、揚水装置30側において、連続して地下水が汲み上げられることにより水位面の差(勾配)が生じるため、液状化対策層Sに供給されたマイクロバブル水Wは、揚水ポンプ35側へ浸透していき、軟弱地盤18Aの広い範囲に供給される。そして、地上に汲み上げられた地下水は、注入孔部24に注入される。
図8には、軟弱地盤18A(図6参照)へのマイクロバブル水Wの注入時間と軟弱地盤18Aの飽和度との関係がグラフで示されている。グラフGAは本実施形態のものであり、グラフGBは比較例(図7(B)参照)のものである。なお、軟弱地盤18Aの飽和度とは、軟弱地盤18A中の土砂の間隙を地下水がどの程度埋めているかを比率で表したものであり、土砂の間隙が全て地下水で埋まっている場合には飽和度が100%となる。飽和度は、一例として、軟弱地盤18Aの比抵抗を測定することにより得られる。
図8に示すように、グラフGAでは、軟弱地盤18A(図6参照)へのマイクロバブル水Wの注入時間が0からt1、t2(t1<t2)と長くなると、軟弱地盤18Aの飽和度は100%からA%、B%(A>B)と減少している。これにより、軟弱地盤18Aにマイクロバブル水W(マイクロバブルMB)を注入することで、軟弱地盤18Aが不飽和状態となることが分かる。なお、不飽和状態は、土砂の間隙にマイクロバブル(微細気泡)が入り込み、地下水による土砂の間隙空間の占有率が低減した状態である。
また、図8において、時間t3ではマイクロバブル水Wの注入が停止されることを示しており、時間t4ではマイクロバブル水Wの注入が再開されることを示している。時間t3から時間t4までの間は、マイクロバブル水Wの注入が停止されているため、マイクロバブルMBが徐々に喪失することで地盤の飽和度が上昇することになる。一方、時間t4以降は、マイクロバブル水Wの注入が再開されるため、地盤の飽和度が低下する。
一方、比較例のグラフGBでは、本実施形態に比べて飽和度の低下が小さくなる。これは、前述のように、マイクロバブル水発生装置100(図7(B)参照)側で圧力開放した後、マイクロバブル水が液体供給管102を流下する間にマイクロバブルMBが喪失または飽和度に影響を与えないほど微小径となってしまい、マイクロバブル水が液状化対策層Sに注入されたときには、既に、飽和度を十分低下させるほどのマイクロバブルMBが存在していない(不足している)ことによる。
ここで、前述のように、図6において、揚水ポンプ35によって有孔管31周辺の軟弱地盤18Aの地下水が汲み上げられると、軟弱地盤18A内の地下水の水位面Lは、注入孔部24側が高く揚水孔部26側が低くなる。このように、注入孔部24から揚水孔部26に向けて地下水の水位面Lに勾配が生じるため、注入孔部24周辺のマイクロバブル水Wを含む地下水は、揚水孔部26に向けて移動する。この地下水の流れによって、軟弱地盤18A中に注入されたマイクロバブルMBは、揚水孔部26に近い位置へ移動していく。これにより、液状化対策層Sの幅をより広く(より遠くまで設定)することができ、マイクロバブルMBを軟弱地盤18A内に保持できる。
揚水ポンプ35で揚げられた水は、注入配管(図示省略)によって注入孔部24の有孔管28内に注水され又は排水されるため、軟弱地盤18A内の合計の地下水量はあまり変化しない。このため、液体注入システム10では、揚水孔部26周辺の地下水の減少による地盤沈下を防止することができる。なお、注入側へ水を戻す動作は、必ず行われるものではない。例えば、注入孔部24と揚水孔部26が近ければ揚水量は少なくて済むので、揚水した水を注入側へ戻さないこともある。
なお、本発明は上記の実施形態に限定されない。
注入孔部24及び揚水孔部26の数は、1つ又は2つ以上の複数から自由に選択することができる。また、上部パッカー36、下部パッカー38におけるパッカー袋36C、38Cの膨張又は収縮は、空気だけでなく液体を用いて行ってもよい。さらに、液状化対策層Sを深さ方向に複数箇所設定すべきときには、液状化対策層Sの設定位置に合わせて上部パッカー36及び下部パッカー38を1セットとして、複数セット設けても良い。
軟弱地盤18Aへのマイクロバブル水の供給(注入)において、軟弱地盤18Aの目詰まりに問題が無い期間では、液体還流管33を用いていなくてもよい。また、液体供給管32の放出口32Aの深さ位置を液状化対策層Sの深さ位置に合わせて液体供給管32を固定したり、あるいは、放出口32A及び開閉弁64の上下において、液体供給管32の側面から外側へ拡がるフランジ部を設けた場合は、上部パッカー36及び下部パッカー38を用いなくてもよい。