<A:第1実施形態>
<A−1:生体測定装置の構成>
図1は、本発明の第1実施形態に係る生体測定装置1の構成を示すブロック図である。この生体測定装置1は、生体の状態を測定するものであるが、その機能の一部は、被験者の右肺の換気能力、および、左肺の換気能力を測定する装置としての役割を担う。
生体測定装置1は、体重を測定するとともに装置全体の動作を管理する管理部100と、被験者の各部位の生体電気インピーダンスを測定する生体電気インピーダンス測定部200とを備える。管理部100は、体重計110、第1記憶部120、第2記憶部130、音声処理部140、スピーカ145、入力部150、並びに表示部160を備える。これらの構成要素は、バスを介してCPU(Central Processing Unit)170と接続されている。CPU170は、装置全体を制御する制御中枢として機能する。なお、CPU170は図示せぬクロック信号発生回路からクロック信号の供給を受けて動作する。また、各構成要素には図示せぬ電源スイッチがオン状態になると、電源回路から電源が供給される。
体重計110は、被験者の体重を測定し、その測定した体重データを、バスを介してCPU170に出力する。第1記憶部120は、不揮発性のメモリであって、例えばROM(Read Only Memory)で構成される。第1記憶部120には、装置全体を制御する制御プログラムが記憶されている。CPU170は、制御プログラムにしたがって所定の演算を実行する。
第2記憶部130は、揮発性のメモリであり、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等によって構成される。第2記憶部130はCPU170の作業領域として機能し、CPU170が所定の演算を実行する際にデータを記憶する。また、音声処理部140は、CPU170の制御の下、音声データをDA変換して得た音声信号を増幅してスピーカ145に出力する。スピーカ145は増幅した音声信号を振動に変換して放音する。これによって、呼吸方法の指導などのアドバイス情報を音によって被験者に報知することができる。
入力部150は、各種のスイッチから構成され、被験者がスイッチを操作すると、身長、年齢、および性別といった情報が入力される。表示部160は、体重や呼吸の種別といった測定結果や、腹式呼吸に導くための呼気と吸気のリズムやパターンなどのアドバイス情報を知らせる機能、あるいは被験者に各種の情報の入力を促すメッセージを表示する機能を有する。表示部160は、例えば、液晶表示装置などで構成される。
次に、生体電気インピーダンス測定部200は、被験者(人体)の生体電気インピーダンスを測定する。生体電気インピーダンス測定部200は、交流電流出力回路210、基準電流検出回路220、電位差検出回路230、A/D変換器240、電極切換回路251および252を備える。
交流電流出力回路210は基準電流Irefを生成する手段である。交流電流出力回路210は、基準電流Irefの実効値が予め定められた値となるように、当該基準電流Irefを生成する。基準電流検出回路220は、被測定対象に流れる基準電流Irefの大きさを検出して電流データDiとしてCPU170に出力するとともに、被験者に基準電流Irefを通電する。この場合、電極切換回路252は、電流電極X1〜X4の中から2つを選択して電流を供給する。
さらに、電位差検出回路230は、電圧電極Y1〜Y4の中から選択された2つの電圧電極の間の電位差を検出して電位差信号ΔVを生成する。A/D変換器240は電位差信号ΔVをアナログ信号からデジタル信号に変換し電圧データDvとしてCPU170に出力する。CPU170は電圧データDvと電流データDiとに基づいて生体電気インピーダンスZ(=Dv/Di)を計算する。
第1記憶部120は、各種データを予め記憶することができる。たとえば、各部位の生体電気インピーダンスを変数として体脂脂肪率や筋肉量を算出するための相関式又は相関テーブルが記憶されている。
CPU170は、体重、被験者の各種の部位の生体電気インピーダンス(例えば、上肢生体電気インピーダンス、下肢生体電気インピーダンス、体幹生体電気インピーダンス)、を演算し、かつ、各種の入出力、測定、演算等について制御する。なお、生体電気インピーダンスなどに基づいて、内臓脂肪/皮下脂肪、内臓脂肪量、皮下脂肪率、皮下脂肪量、全身の脂肪率、身体の各部位の脂肪率(上肢脂肪率、下肢脂肪率、体幹脂肪率など)を演算することもできる。
図2に、生体測定装置1の外観例を示す。生体測定装置1は、L字型の形状をしており、台座部20の上に柱状の筐体部30を備える。台座部20には、左足用の電流電極X1および電圧電極Y1と、右足用の電流電極X2および電圧電極Y2が設けられている。また、筐体部30の上部には、表示部160が設けられている。この表示部160は、タッチパネルで構成されており、入力部150としても機能する。さらに、筐体部30の左右の側面には、左手用の電極部30Lと右手用の電極部30Rが設けられている。
図3は筐体部30の上部を拡大した拡大図である。この図に示すように、左手用の電極部30Lは電流電極X3および電圧電極Y3を備え、右手用の電極部30Rは電流電極X4および電圧電極Y4を備える。被験者は、台座30の上に立ち、左右の手を下げた状態で電極部30Lおよび電極部30Rを握ることによって、測定を行う。
電極切換回路251および252は、CPU170の制御の下、両手および両足に装着される8個の電極を選択する。この8個の電極を適宜選択することによって、人体の所定の部位における生体電気インピーダンスZを計測することが可能となる。例えば、図4(A)に示すように基準電流Irefを左足用の電流電極X1と左手用の電流電極X3との間に供給し、左足用の電圧電極Y1と左手用の電圧電極Y3との間で電位差を計測すれば、全身の生体電気インピーダンスを計測することができる。なお、基準電流Irefを電流電極X2およびX4の間に流し、電圧電極Y2およびY4の間の電位差を計測しても全身の生体電気インピーダンスを計測することができる。さらに、図4(K)に示すように両掌を短絡させ、両足を短絡させ、両掌から両足までの生体電気インピーダンスを全身の生体電気インピーダンスとして測定してもよい。
また、図4(B)に示すように基準電流Irefを右足用の電流電極X2と右手用の電流電極X4との間に供給し、右足用の電圧電極Y2と左足用の電圧電極Y1との間で電位差を計測すれば、右下肢の生体電気インピーダンスZを計測することができる。また、図4(C)に示すように基準電流Irefを左足用の電流電極X1と左手用の電流電極X3との間に供給し、左足用の電圧電極Y1と右足用の電圧電極Y2との間で電位差を計測すれば、左下肢の生体電気インピーダンスZを計測することができる。
また、図4(D)に示すように基準電流Irefを右手用の電流電極X4と右足用の電流電極X2との間に供給し、右手用の電圧電極Y4と左手用の電圧電極Y3との間の電位差を計測すれば、右上肢(体幹上部)の生体電気インピーダンスZを計測することができる。ただし、これに限らず、基準電流Irefを左手用の電流電極X3と右手用の電流電極X4との間に供給し、右手用の電圧電極Y4と右足用の電圧電極Y2との間の電位差を計測することでも、右上肢(体幹上部)の生体電気インピーダンスZを計測することができる。
また、図4(E)に示すように基準電流Irefを左手用の電流電極X3と左足用の電流電極X1との間に供給し、右手用の電圧電極Y4と左手用の電圧電極Y3との間で電位差を計測すれば、左上肢(体幹上部)の生体電気インピーダンスZを計測することができる。ただし、これに限らず、基準電流Irefを左手用の電流電極X3と右手用の電流電極X4との間に供給し、左手用の電圧電極Y3と左足用の電圧電極Y1との間の電位差を計測することでも、左上肢(体幹上部)の生体電気インピーダンスZを計測することができる。
また、図4(F)に示すように基準電流Irefを右手用の電流電極X4と左手用の電流電極X3との間に供給し、右手用の電圧電極Y4と左手用の電圧電極Y3との間で電位差を計測すれば、両掌間の生体電気インピーダンスZを計測することができる。ここで、体幹を体幹上部と体幹中部に分けた場合、左上肢、右上肢、および掌間の生体電気インピーダンスは、いずれも体幹上部が含まれる。このため、左上肢、右上肢、および掌間の生体電気インピーダンスを体幹上部の生体電気インピーダンスとして取り扱うことも可能である。
さらに、図4(G)に示すように基準電流Irefを左手用の電流電極X3と左足用の電流電極X1との間に供給し、右手用の電圧電極Y4と右足用の電圧電極Y2との間で電位差を計測すれば、体幹中部の生体電気インピーダンスを計測することができる。また、図4(H)に示すように基準電流Irefを右手用の電流電極X4と右足用の電流電極X2との間に供給し、左手用の電圧電極Y3と左足用の電圧電極Y1との間で電位差を計測すれば、体幹中部の生体電気インピーダンスを計測することができる。また、図4(I)に示すように基準電流Irefを右手用の電流電極X4と左足用の電流電極X1との間に供給し、左手用の電圧電極Y3と右足用の電圧電極Y2との間で電位差を計測すれば、体幹中部を斜めに横切る生体電気インピーダンスを計測することができる。図4(J)に示すように基準電流Irefを右足用の電流電極X2と左手用の電流電極X3との間に供給し、右手用の電圧電極Y4と左足用の電圧電極Y1との間で電位差を計測すれば、体幹中部を斜めに横切る生体電気インピーダンスを計測することができる。
なお、体幹部の生体電気インピーダンスZxの測定方法は、上述した方法に限定されるものではなく、両手両足の電極のうち、基準電流Irefを供給する電極と電位差を検出する電極とを適宜選択することによって、手、足、あるいは全身といった人体の各部位の生体電気インピーダンスZを各々測定し、測定結果を加減算して体幹中部の生体電気インピーダンスZを算出すればよい。さらに、四肢以外に頭部の耳たぶなどを四肢のいずれかの代用として使用しても、体幹部の生体電気インピーダンスZxの測定は可能である。くわえて、体幹に接触電極を設ける場合には言うに及ばない。
<A−2:生体測定装置の動作>
図5は、生体測定装置1の動作を示すフローチャートである。まず、入力部150における電源スイッチ(図示省略)がオンされると、図示せぬ電力供給部から電気系統各部に電力を供給し、表示部160により身長を含む身体特定情報(身長、性別、年齢など)を入力するための画面を表示する(ステップS1)。
続いて、入力部150から身長、性別、年齢等が入力されると、体重計110により体重が測定され、CPU170は体重を取得する(ステップS2)。
ステップS2の後、CPU170は、呼吸レベル検出処理を実行する(ステップS3)。この処理では、CPU170は、被験者の右肺の換気能力を示す右肺呼吸レベルと、被験者の左肺の換気能力を示す左肺呼吸レベルとを求める。この詳細な内容については後述する。ステップS3の後、CPU170は、被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸における右肺呼吸レベルおよび左肺呼吸能力を表示する呼吸レベル表示処理を実行する(ステップS4)。
<A−3:呼吸レベル検出の原理>
次に、呼吸レベル検出の原理について説明する。図6は、体幹部の組織の概略を示す模式図である。図6に示すように、体幹部の組織は、横隔膜によって上下に分けられている。上部には、肺と、内外肋間筋などの胸部骨格筋とが形成されている。一方、下部には、内臓組織と、内外腹斜筋・腹横筋や腹直筋などからなる腹部骨格筋とが形成されている。
腹式呼吸および胸式呼吸のいずれにしても、呼気時に横隔膜は上昇して肺が圧縮され、吸気時に横隔膜は下降して肺は伸長拡大する。胸式呼吸に無い腹式呼吸の特徴は、腹直筋や内外腹斜筋・腹横筋などの腹部呼吸筋の伸縮により内臓組織と供に横隔膜を上下させる点にある。
ここで、体幹上部の生体電気インピーダンスZaと体幹中部の生体電気インピーダンスZbとは、図7に示す等価回路で表すことができる。図7に示すように、体幹上部の生体電気インピーダンスZaは、胸部骨格筋の生体電気インピーダンスZ1、および、肺の生体電気インピーダンスZ2の並列インピーダンスと、上肢骨格筋の生体電気インピーダンスZ3とが直列に接続されたものとなる。ここで、Z1およびZ2の並列インピーダンスは、肺の上葉部の生体電気インピーダンスに相当する。
また、図7に示すように、体幹中部の生体電気インピーダンスZbは、胸部骨格筋の生体電気インピーダンスZ4、および、肺の生体電気インピーダンスZ5の並列インピーダンスと、腹部骨格筋の生体電気インピーダンスZ6、および、内臓組織の生体電気インピーダンスZ7の並列インピーダンスとが直列に接続されたものとなる。ここで、Z4およびZ5の並列インピーダンスは、肺の中下葉部の生体電気インピーダンスに相当する。また、横隔膜の生体電気インピーダンスは、内臓組織に代表される生体電気インピーダンスZ7に含ませて考えることができる。
次に、図8を参照して、呼吸と生体電気インピーダンスの変化との関係を説明する。呼吸に連動した生体電気インピーダンスZaの変化は、肺に絶縁性の高い空気が出入りすることによる電気的特質(電気導電性、1/体積抵抗率)の変化が主な原因であると考えられる。つまり、呼気(呼息)では肺組織中に含まれる空気量が減るため肺の生体電気インピーダンスZ2は減少方向に変化する(ΔZlu<0)。一方、吸気(吸息)では空気量が増加するため、肺の生体電気インピーダンスZ2は増加方向に変化する(ΔZlu>0)。
胸式で胸郭を広げる呼吸法(胸式呼吸)では、内外肋間筋などの呼吸骨格筋の伸縮変化と肺の伸縮変化が同じ方向に作用するので、肺の生体電気インピーダンスZ2が増加すれば胸部骨格筋の生体電気インピーダンスZ1も増加し、肺の生体電気インピーダンスZ2が減少すれば胸部骨格筋の生体電気インピーダンスZ1も減少する。一方、腹式呼吸は胸郭の変化がほとんど見られない呼吸法なので、胸部骨格筋の生体電気インピーダンスZ1はほとんど変化せず、肺の生体電気インピーダンスZ2が呼吸に伴って大きく変化する。なお、生体電気インピーダンスZaには、上肢骨格筋の生体電気インピーダンスZ3が含まれているが、上肢骨格筋は、呼吸に直接的に寄与する筋肉ではない。本実施形態では、被験者は、図2に示す測定装置の台座部20の上に立ち、左右の腕を下げた状態で30Lおよび30Rを握り計測を行うので、計測中に上肢骨格筋(Z3)が動くことは殆ど無い。図9および図10に示すように、被験者の呼吸が、胸式呼吸および腹式呼吸の何れの場合であっても、吸気では体幹上部の生体電気インピーダンスZaは増加方向に変化し、呼気では体幹上部の生体電気インピーダンスZaは減少方向に変化するという具合である。
前述したように、体幹上部の生体電気インピーダンスZaには、右上肢の生体電気インピーダンスと左上肢の生体電気インピーダンスとが含まれる。本実施形態では、右上肢の生体電気インピーダンスを第1生体電気インピーダンスZaRと表記し、左上肢の生体電気インピーダンスを第2生体電気インピーダンスZaLと表記する。ここで、右上肢の第1生体電気インピーダンスZaRと左上肢の第2生体電気インピーダンスZaLとは、図11に示す等価回路で表すことができる。
図11に示すように、第1生体電気インピーダンスZaRは、右側胸部骨格筋の生体電気インピーダンスZ1R、および、右肺の生体電気インピーダンスZ2Rの並列インピーダンスと、右上肢骨格筋の生体電気インピーダンスZ3Rとが直列に接続されたものとなる。Z1RおよびZ2Rの並列インピーダンスは、右肺の上葉部の生体電気インピーダンスに相当する。つまり、第1生体電気インピーダンスZaRは、被験者の右肺の上部を含み、腹部を含まない体幹上部右側の生体電気インピーダンスである。
呼吸に伴って右肺に空気が出入りすることで、第1生体電気インピーダンスZaRは変化する。その変化の仕方は、上述の体幹上部の生体電気インピーダンスZaと同様であるが、右肺に出入りする空気量、つまりは右肺の換気量が多いほど、第1生体電気インピーダンスZaRの振幅値も大きくなる。本実施形態では、第1生体電気インピーダンスZaRの振幅値は、右肺の上部の換気能力に応じた値となる点に着目し、第1生体電気インピーダンスZaRの測定値に基づいて、右肺の上部の換気能力を示す第1の右肺呼吸レベルBR1を求めている。この詳細な内容については後述する。
また、図11に示すように、左上肢の第2生体電気インピーダンスZaLは、左側胸部骨格筋の生体電気インピーダンスZ1L、および、左肺の生体電気インピーダンスZ2Lの並列インピーダンスと、左上肢骨格筋の生体電気インピーダンスZ3Lとが直列に接続されたものとなる。Z1LおよびZ2Lの並列インピーダンスは、左肺の上葉部の生体電気インピーダンスに相当する。つまり、第2生体電気インピーダンスZaLは、被験者の左肺の上部を含み、腹部を含まない体幹上部左側の生体電気インピーダンスである。
呼吸に伴って左肺に空気が出入りすることで、第2生体電気インピーダンスZaLは変化する。その変化の仕方は、上述の体幹上部の生体電気インピーダンスZaと同様であるが、左肺に出入りする空気量、つまりは左肺の換気量が多いほど、第2生体電気インピーダンスZaLの振幅値も大きくなる。本実施形態では、第2生体電気インピーダンスZaLの振幅値は、左肺の上部の換気能力に応じた値となる点に着目し、第2生体電気インピーダンスZaLの測定値に基づいて、左肺の上部の換気能力を示す第1の左肺呼吸レベルBL1を求めている。この詳細な内容については後述する。
一方、呼吸に伴う体幹中部の生体電気インピーダンスZbの変化は、横隔膜の動きと連動している。上述したように腹式呼吸および胸式呼吸のいずれの場合も、横隔膜は呼気時上昇し、吸気時下降する。そして、腹式呼吸の特徴は、腹部呼吸筋の伸縮により内臓組織とともに横隔膜を上下させる点にある。より具体的には、腹式呼吸の呼気時のみ、腹筋を緊張させて内臓組織と伴に横隔膜を押し上げ上昇させることで、内臓組織と腹部骨格筋との並列部の生体電気インピーダンスが上昇する(ΔZst>0)。このとき、肺組織の生体電気インピーダンスは減少する(ΔZlu<0)。このため、横隔膜から上部の生体電気インピーダンスの減少を横隔膜から下部の生体電気インピーダンスの増加が打ち消すように作用する。このように、胸式呼吸と腹式呼吸とでは、横隔膜から下部にある腹部骨格筋と内臓組織の動きが異なる。
図9に示すように、被験者の呼吸が腹式呼吸の場合、吸気では体幹中部の生体電気インピーダンスZbは増加方向に変化する一方、呼気では、横隔膜から上部の生体電気インピーダンスの減少を横隔膜から下部の生体電気インピーダンスの増加が打ち消すように作用するので、体幹中部の生体電気インピーダンスZbは増加方向に変化する。また、図10に示すように、被験者の呼吸が胸式呼吸の場合は、上述の体幹上部の生体電気インピーダンスZaの変化と同様に、吸気では体幹中部の生体電気インピーダンスZbは増加方向に変化する一方、呼気では体幹中部の生体電気インピーダンスZbは減少方向に変化するという具合である。
<A−4:呼吸レベル検出処理>
次に、CPU170が実行する呼吸レベル検出処理について説明する。図12は、呼吸レベル検出処理の具体的な内容を説明するためのフローチャートである。本実施形態では、通常の1呼吸(=1回の吸気+1回の呼気)につき、10回の呼吸レベル検出処理を実行するように設定される。ここでは、通常の1呼吸に要する時間を4秒とみなし、CPU170は、0.4秒ごとに、呼吸レベル検出処理を実行するという具合である。以下では、呼吸レベル検出処理を実行するタイミング(0.4秒ごとのタイミング)をサンプリングタイミングと呼ぶ。なお、これは一例であり、呼吸レベル検出処理を実行するタイミングは任意に設定可能である。
図12に示すように、まず、CPU170は、サンプリングタイミングに到達したか否かを判定し(ステップS10)、ステップS10の結果が肯定である場合はステップS20に進む。ここでは、第n番目(n≧1)のサンプリングタイミングに到達した場合を想定して、ステップS20以下の各ステップの具体的な内容を説明する。ステップS20以下の各ステップの具体的な説明に先立ち、まずは、各ステップの内容の概略を簡単に説明する。
図12に示すように、ステップS10の後のステップS20において、CPU170は、体幹上部右側(右上肢)の第1生体電気インピーダンスZaRを測定する。ステップS20の後のステップS30において、CPU170は、体幹上部左側(左上肢)の第2生体電気インピーダンスZaLを測定する。ステップS30の後のステップS40において、CPU170は、ステップS20で測定した第1生体電気インピーダンスZaRおよびステップS30で測定した第2生体電気インピーダンスZaLの各々について、スムージング処理を実行する。ステップS40の後のステップS50において、CPU170は、第1生体電気インピーダンスZaRの測定値の振幅基準レベルを示す第1センタリング値ZaR0を生成する。第1センタリング値ZaR0とは、第1生体電気インピーダンスZaRの経時的変化を示す波形から、呼吸に起因した情報を抽出するための振幅基準レベルを示すものである。ステップS50の後のステップS60において、CPU170は、第2生体電気インピーダンスZaLの測定値の振幅基準レベルを示す第2センタリング値ZaL0を生成する。第2センタリング値ZaL0とは、第2生体電気インピーダンスZaLの経時的変化を示す波形から、呼吸に起因した情報を抽出するための振幅基準レベルを示すものである。ステップS60の後のステップS70において、CPU170は、第1生体電気インピーダンスZaRの測定値の第1センタリング値ZaR0に対する相対値である第1相対値ΔZaRを算出する。ステップS70の後のステップS80において、CPU170は、第2生体電気インピーダンスZaLの測定値の第2センタリング値ZaL0に対する相対値である第2相対値ΔZaLを算出する。ステップS80の後のステップS90において、CPU170は、右肺の上部の換気能力を示す第1の右肺呼吸レベルBR1を抽出する第1の右肺呼吸レベル抽出処理を実行する。また、ステップS90の後のステップS100において、CPU170は、左肺の上部の換気能力を示す第1の左肺呼吸レベルBL1を抽出する第1の左肺呼吸レベル抽出処理を実行するという具合である。以下、各ステップの具体的な内容を順番に説明していく。
図12に示すように、ステップS20において、CPU170は、体幹上部右側の第1生体電気インピーダンスZaRを測定する。例えば、CPU170は、左手用の電流電極X3と右手用の電流電極X4とを選択するように電極切換回路252を制御するとともに、右足用の電圧電極Y2と右手用の電圧電極Y4とを選択するように電極切換回路251を制御する。そして、CPU170は、右手と左手との間に流れる基準電流Irefの大きさを示す電流データDiと、右足用の電圧電極Y2と右手用の電圧電極Y4との間の電位差を示す電圧データDvとから、体幹上部右側の第1生体電気インピーダンスZaRを測定する。ここでは、第n番目(n≧1)のサンプリングタイミングにおける第1生体電気インピーダンスの実測値をZaR(n)’と表記する。
ステップS20の後、CPU170は、体幹上部左側の第2生体電気インピーダンスZaLを測定する。例えば、CPU170は、左手用の電流電極X3と右手用の電流電極X4とを選択するように電極切換回路252を制御するとともに、左足用の電圧電極Y1と左手用の電圧電極Y3とを選択するように電極切換回路251を制御する。そして、CPU170は、右手と左手との間に流れる基準電流Irefの大きさを示す電流データDiと、左足用の電圧電極Y1と左手用の電圧電極Y3との間の電位差を示す電圧データDvとから、体幹上部左側の第2生体電気インピーダンスZaLを測定する。ここでは、第n番目(n≧1)のサンプリングタイミングにおける第2生体電気インピーダンスの実測値をZaL(n)’と表記する。
ステップS30の後、CPU170は、ステップS20で測定した第1生体電気インピーダンスZaR(n)’およびステップS30で測定した第2生体電気インピーダンスZaL(n)’の各々について、スムージング処理を実行する(ステップS40)。まず、第1生体電気インピーダンスZaR(n)’のスムージング処理について具体的に説明する。CPU170は、第n−2番目のサンプリングタイミングにおける第1生体電気インピーダンスの実測値ZaR(n−2)’と、第n−1番目のサンプリングタイミングにおける第1生体電気インピーダンスの実測値ZaR(n−1)’と、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1生体電気インピーダンスの実測値ZaR(n)’とを用いた移動平均処理を行う。そして、その処理結果を、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1生体電気インピーダンスの測定値として採用する(スムージング処理)。ここでは、スムージング処理が行われた後の、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1生体電気インピーダンスの測定値を、ZaR(n)と表記する。
次に、第2生体電気インピーダンスZaL(n)’のスムージング処理について具体的に説明する。CPU170は、第n−2番目のサンプリングタイミングにおける第2生体電気インピーダンスの実測値ZaL(n−2)’と、第n−1番目のサンプリングタイミングにおける第2生体電気インピーダンスの実測値ZaL(n−1)’と、第n番目のサンプリングタイミングにおける第2生体電気インピーダンスの実測値ZaL(n)’とを用いた移動平均処理を行う。そして、その処理結果を、第n番目のサンプリングタイミングにおける第2生体電気インピーダンスの測定値として採用する(スムージング処理)。ここでは、スムージング処理が行われた後の、第n番目のサンプリングタイミングにおける第2生体電気インピーダンスの測定値を、ZaL(n)と表記する。
ステップS40の後、CPU170は、第1生体電気インピーダンスZaRの測定値の振幅基準レベルを示す第1センタリング値ZaR0を生成する第1センタリング処理を実行する(ステップS50)。ここでは、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1センタリング値をZaR0(n)と表記する。本実施形態では、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングよりも所定の時間長だけ前の時点を始点とし、第n番目のサンプリングタイミングを終点とするセンタリング期間内の複数のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスZaRの測定値に基づいて、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1センタリング値ZaR0(n)を生成する。センタリング期間の時間長は、第n番目のサンプリングタイミングにおける被験者の呼吸の速度に応じて可変に設定される。以下、その具体的な内容について詳細に説明する。
図13は、第1センタリング処理の具体的な内容を示すフローチャートである。図13に示すように、まず、CPU170は、10個のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスZaRの測定値の振幅基準レベルを示すMA10を抽出するMA10抽出処理を実行する(ステップS51)。より具体的には、CPU170は、第n−9番目〜第n番目の10個のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスZaRの測定値(ZaR(n−9)〜ZaR(n))を用いて移動平均処理を行い、その処理結果を、第n番目のサンプリングタイミングにおけるMA10(n)として抽出する([Za(n−9)+Za(n−8)+・・・+Za(n)]/10→MA10(n))。
ステップS51の後、CPU170は、20個のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスZaRの測定値の振幅基準レベルを示すMA20を抽出するMA20抽出処理を実行する(ステップS52)。より具体的には、CPU170は、第n−19番目〜第n番目の20個のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスZaRの測定値(ZaR(n−19)〜ZaR(n))を用いて移動平均処理を行い、その処理結果を、第n番目のサンプリングタイミングにおけるMA20(n)として抽出する([Za(n−19)+Za(n−18)+・・・+Za(n)]/20→MA20(n))。
ステップS52の後、CPU170は、10個のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスZaRの測定値のうち最大の値をMAX10として抽出するMAX10抽出処理を実行する(ステップS53)。より具体的には、CPU170は、第n−9番目〜第n番目の10個のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスZaRの測定値のうち最大の値を、第n番目のサンプリングタイミングにおけるMAX10(n)として抽出するという具合である。
ステップS53の後、CPU170は、10個のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスZaRの測定値のうち最小の値をMIN10として抽出するMIN10抽出処理を実行する(ステップS54)。より具体的には、CPU170は、第n−9番目〜第n番目の10個のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスZaRの測定値のうち最小の値を、第n番目のサンプリングタイミングにおけるMIN10(n)として抽出するという具合である。
ステップS54の後、CPU170は、20個のサンプリングタイミングの各々におけるMAX10とMIN10との平均値(第n番目のサンプリングタイミングにおける平均値をAV10(n)と表記)について移動平均処理を行い、その処理結果を、中央値として算出する中央値算出処理を実行する(ステップS55)。より具体的には、CPU170は、第n−19番目〜第n番目の20個のサンプリングタイミングの各々における平均値(AV10(n−19)〜AV10(n))について移動平均処理を行い、その処理結果を、第n番目のサンプリングタイミングにおける中央値CNT20(n)として抽出する([AV10(n−19)+AV10(n−18)+・・・+AV10(n)]/20→CNT20(n))。ここでは、説明を省略するが、中央値CNT20(n)は、体動などに起因するアーチファクト(データ波形の歪み)等による処理に適さない異常波形の抽出に用いられる。
ステップS55の後、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける被験者の呼吸のタイミングを抽出する呼吸タイミング抽出処理を実行する(ステップS56)。以下では、図14および図15を参照しながら、呼吸タイミング抽出処理の具体的な内容を説明する。図14および図15は、呼吸タイミング抽出処理の具体的な内容を示すフローチャートである。図14に示すように、まずCPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1生体電気インピーダンスZaRの微分係数dZaR(n)を抽出する微分係数抽出処理を実行する(ステップS201)。より具体的には、CPU170は、以下の式(3)にしたがって演算処理を実行することで、微分係数dZa(n)を抽出する。
[ZaR(n)−ZaR(n−2)]/1.2=dZaR(n) ・・・(3)
次に、CPU170は、ステップS201で抽出した微分係数dZaR(n)の絶対値が0.1より小さいか否かを判定する(ステップS202)。ステップS202の結果が肯定である場合、CPU170は、微分係数dZaR(n)の極性判別フラッグF0(n)を「0」に設定してステップS204に進む。極性判別フラッグF0(n)が「0」であるとは、第n番目のサンプリングタイミングにおいて、第1生体電気インピーダンスZaRの値は極大値(ピーク値)または極小値(ボトム値)であることを意味する。
一方、ステップS202の結果が否定である場合、CPU170は、微分係数dZaR(n)の値が0より大きいか否かを判定する(ステップS203)。ステップS203の結果が肯定である場合、CPU170は、極性判別フラッグF0(n)を「+1」に設定してステップS204へ進む。極性判別フラッグF0(n)が「+1」であるとは、第n番目のサンプリングタイミングにおいて、第1生体電気インピーダンスZaRの変化の方向は正側であることを意味する。ステップS203の結果が否定である場合、CPU170は、極性判別フラッグF0(n)を「-1」に設定してステップS204へ進む。極性判別フラッグF0(n)が「-1」であるとは、第n番目のサンプリングタイミングにおいて、第1生体電気インピーダンスZaRの変化の方向は負側であることを意味する。
ステップS204において、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける極性判別フラッグF0(n)の絶対値と、第n−1番目のサンプリングタイミングにおける極性判別フラッグF0(n−1)の絶対値とが等しく、かつ、F0(n−1)の値とF0(n)の値とが等しくないか否かを判定する。ステップS204の結果が肯定である場合、CPU170は、F0(n)を「0」に設定して、次のステップS206(図15参照)へ進む。ステップS204の結果が否定である場合、CPU170は、ステップS204の直前で設定したF0(n)の値を維持したまま、次のステップS206へ進む。
図15を参照しながら、呼吸タイミング抽出処理の具体的な内容の説明を続ける。CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける極性判別フラッグF0(n)が「0」であるか否かを判定する(ステップS206)。ステップS206の結果が否定である場合、CPU170は、ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)を「0」に設定して、ステップS209へ進む。ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)が「0」であるとは、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1生体電位インピーダンスの測定値Za(n)は、ピーク値またはボトム値ではないことを意味する。
一方、ステップS206の結果が肯定である場合、CPU170は、3個のサンプリングタイミングの各々における極性判別フラッグF0の和が「+1」よりも大きいか否かを判定する(ステップS207)。より具体的には、CPU170は、第n−2番目のサンプリングタイミング〜第n番目のサンプリングタイミングの各々における極性判別フラッグ(F0(n−2)〜F0(n))の和が「+1」よりも大きいか否かを判定する。
ステップS207の結果が肯定である場合、CPU170は、ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)を「+1」に設定して、ステップS209へ進む。ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)が「+1」であるとは、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1生体電気インピーダンスの測定値ZaR(n)はピーク値(最大値)であることを意味する。
ステップS207の結果が否定である場合、CPU170は、3個のサンプリングタイミングの各々における極性判別フラッグF0の和が「-1」よりも小さいか否かを判定する(ステップS208)。より具体的には、CPU170は、第n−2番目のサンプリングタイミング〜第n番目のサンプリングタイミングの各々における極性判別フラッグ(F0(n−2)〜F0(n))の和が「-1」よりも小さいか否かを判定する。
ステップS208の結果が肯定である場合、CPU170は、ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)を「-1」に設定して、ステップS209へ進む。ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)が「-1」であるとは、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1生体電気インピーダンスの測定値ZaR(n)はボトム値(最小値)であることを意味する。一方、ステップS208の結果が否定である場合、CPU170は、ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)を「0」に設定して、ステップS209へ進むという具合である。
ステップS209において、CPU170は、ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)が「+1」であるか否かを判定する。ステップS209の結果が否定である場合、CPU170は、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおけるサンプリングカウンタ値N(n−1)に1を加算する一方(ステップS210)、ステップS209の結果が肯定である場合、CPU170は、サンプリングカウンタ値Nを初期化する(ステップS211)。ここで、図9および図10からも理解されるように、被験者の呼吸が胸式呼吸および腹式呼吸の何れの場合であっても、呼吸に伴う第1生体電気インピーダンスZaRの変化を示す波形は略正弦波状であるところ、サンプリングカウンタ値Nは、第1生体電気インピーダンスZaRの測定値がピーク値に到達するたびに初期化(サンプリングカウンタ値=0)され、次のピーク値に到達するまでのサンプリングタイミングの回数が順次にカウントされていくという具合である。以上で、図13のステップS56における呼吸タイミング抽出処理が終了する。
再び図13に戻って説明を続ける。上述の呼吸タイミング抽出処理が終了すると、CPU170は、被験者の呼吸が速めの呼吸なのか遅めの呼吸なのかを判別する呼吸スピード判別フラッグを設定する(ステップS57)。以下、図16を参照しながら、ステップS57でCPU170が実行する呼吸スピード判別フラッグ設定処理の具体的な内容を説明する。図16は、呼吸スピード判別フラッグ設定処理の具体的な内容を示すフローチャートである。図16に示すように、まずCPU170は、極性判別フラッグF0(n)が「0」であるか否かを判定する(ステップS301)。ステップS301の結果が否定である場合、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける呼吸スピード判別フラッグFma(n)は、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおける呼吸スピード判別フラッグFma(n−1)に等しいとみなして処理を終了する。
ステップS301の結果が肯定である場合、CPU170は、ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)が「+1」であるか否かを判定する(ステップS302)。ステップS302の結果が肯定である場合、CPU170は、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおけるサンプリングカウンタ値N(n−1)が「10」よりも大きいか否かを判定する(ステップS303)。ここで、被験者の呼吸のスピードが遅ければ、第1生体電気インピーダンスZaRの測定値がピーク値に到達してから、次のピーク値に到達するまでの時間長は長くなり、次のピーク値に到達する直前のサンプリングカウンタ値Nも大きくなる。本実施形態では、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおいて第1生体電気インピーダンスZaRの測定値がピーク値に到達したと判断した場合は、その直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおけるサンプリングカウンタ値が「10」よりも大きいか否かを判定し、当該サンプリングカウンタ値が「10」よりも大きいと判定した場合は、被験者の呼吸は遅めの呼吸であると判断する。具体的には、ステップS303の結果が肯定である場合、CPU170は、呼吸スピード判別フラッグFma(n)を「20」に設定して処理を終了する。呼吸スピード判別フラッグFma(n)が「20」であるとは、被験者の呼吸が遅めの呼吸であることを意味する。また、ステップS303の結果が否定である場合、CPU170は、被験者の呼吸は速めの呼吸であると判断して呼吸スピード判別フラッグFma(n)を「10」に設定して処理を終了する。呼吸スピード判別フラッグFma(n)が「10」であるとは、被験者の呼吸が速めの呼吸であることを意味する。
一方、ステップS302の結果が否定である場合、CPU170は、ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)が「-1」であるか否かを判定する(ステップS304)。ステップS304の結果が否定である場合、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける呼吸スピード判別フラッグFma(n)は、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおける呼吸スピード判別フラッグFma(n−1)に等しいとみなして処理を終了する。ステップS304の結果が肯定である場合、CPU170は、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおけるサンプリングカウンタ値N(n−1)が「5」よりも大きいか否かを判定する(ステップS305)。本実施形態では、CPU170は、ボトム値に到達する直前のサンプリングカウンタ値N(n−1)が「5」よりも大きい場合は、被験者の呼吸は遅めの呼吸であると判断する一方、ボトム値に到達する直前のサンプリングカウンタ値N(n−1)が「5」よりも小さい場合は、被験者の呼吸は速めの呼吸であると判断する。具体的には、CPU170は、ステップS305の結果が肯定である場合は、呼吸スピード判別フラッグFma(n)を「20」に設定して処理を終了する一方、ステップS305の結果が否定である場合は、呼吸スピード判別フラッグFma(n)を「10」に設定して処理を終了するという具合である。以上で、図13のステップS57における呼吸スピード判別フラッグ設定処理が終了する。
再び図13に戻って説明を続ける。上述の呼吸スピード判別フラッグ設定処理が終了すると、CPU170は、第1センタリング値ZaR0(n)を抽出する第1センタリング値抽出処理を実行する(ステップS58)。以下、図17を参照しながら、ステップS58でCPU170が実行する第1センタリング値抽出処理の具体的な内容を説明する。図17は、第1センタリング値抽出処理の具体的な内容を示すフローチャートである。図17に示すように、まずCPU170は、呼吸スピード判別フラッグFma(n)が「10」であるか否かを判定する(ステップS401)。言い換えれば、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける被験者の呼吸が速めの呼吸であるか否かを判定するという具合である。
本実施形態では、被験者の呼吸速度に応じて可変に設定されるセンタリング期間内の複数のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスZaRの測定値に基づいて、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1センタリング値ZaR0(n)が生成される。上記ステップS401の結果が肯定である場合、つまりは第n番目のサンプリングタイミングにおける被験者の呼吸が速めの呼吸である場合は、その速めの1呼吸に要する時間長(ここでは約4.0秒)がセンタリング期間として設定される。すなわち、被験者の呼吸が速めの呼吸である場合は、第n−9番目のサンプリングを始点とし、第n番目のサンプリングタイミングを終点とする期間がセンタリング期間として設定され、第n−9番目〜第n番目のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスZaRの測定値を用いた移動平均処理の結果に基づいて第1センタリング値ZaR0(n)が生成される。より具体的には、ステップS401の結果が肯定である場合、CPU170は、図13のステップS51で求めたMA10(n)に基づいて、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1センタリング値ZaR0(n)を生成する(ステップS402)。さらに詳述すると、CPU170は、第n−2番目のサンプリングタイミングにおける第1センタリング値ZaR0(n−2)と、第n−1番目のサンプリングタイミングにおける第1センタリング値ZaR0(n−1)と、MA10(n)とを用いて移動平均処理を行い、その処理結果を、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1センタリング値ZaR0(n)として採用する([ZaR0(n−2)+ZaR0(n−1)+MA10(n)]/3→ZaR0(n))。
一方、上記ステップS401の結果が否定である場合、つまりは第n番目のサンプリングタイミングにおける被験者の呼吸が遅めの呼吸である場合は、その遅めの1呼吸に要する時間長(ここでは約8.0秒)がセンタリング期間として設定される。すなわち、被験者の呼吸が遅めの呼吸である場合は、第n−19番目のサンプリングを始点とし、第n番目のサンプリングタイミングを終点とする期間がセンタリング期間として設定され、第n−19番目〜第n番目のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスZaRの測定値を用いた移動平均処理の結果に基づいて第1センタリング値ZaR0(n)が生成される。より具体的には、ステップS401の結果が否定である場合、CPU170は、図13のステップS52で求めたMA20(n)に基づいて、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1センタリング値ZaR0(n)を生成する(ステップS403)。さらに詳述すると、CPU170は、ZaR0(n−2)と、ZaR0(n−1)と、MA20(n)とを用いて移動平均処理を行い、その処理結果を、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1センタリング値ZaR0(n)として採用する([ZaR0(n−2)+ZaR0(n−1)+MA20(n)]/3→ZaR0(n))。以上で、図12のステップS50における第1センタリング処理が終了する。
前述したように、被験者の呼吸が胸式呼吸であっても腹式呼吸であっても、体幹上部の生体電気インピーダンスZaの変化を示す波形は略正弦波状となるので、体幹上部右側の第1生体電気インピーダンスZaRの変化を示す波形も略正弦波状となる。CPU170は、体動などによる影響で、第1生体電気インピーダンスZaRの変化を示す波形が乱れても(アーティファクトが発生しても)、それに応じた第1センタリング値ZaR0が得られるように、所定数のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスZaRの測定値に基づいて第1センタリング値ZaR0を生成する。より具体的には、CPU170は、サンプリングタイミングごとに、当該サンプリングタイミングよりも所定の時間長だけ前の時点を始点とし、当該サンプリングタイミングを終点とするセンタリング期間内の複数のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスZaRの測定値を用いた移動平均処理を行い、その結果に基づいて、当該サンプリングタイミングにおける第1センタリング値ZaR0を求めるので、体動などによる影響で、第1生体電気インピーダンスZaRの変化を示す波形が乱れても、それに応じた第1センタリング値ZaR0を精度良く生成できる。そして、各サンプリングタイミングに対応するセンタリング期間の時間長は、当該サンプリングタイミングにおける被験者の呼吸速度に応じて可変に設定されるという具合である。
図12に示すように、ステップS50の後、CPU170は、第2生体電気インピーダンスZaLの測定値の振幅基準レベルを示す第2センタリング値ZaL0を生成する第2センタリング処理を実行する(ステップS60)。ここでは、第n番目のサンプリングタイミングにおける第2センタリング値をZaL0(n)と表記する。前述の第1センタリング値ZaR0(n)と同様に、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングよりも所定の時間長だけ前の時点を始点とし、第n番目のサンプリングタイミングを終点とするセンタリング期間内の複数のサンプリングタイミングの各々における第2生体電気インピーダンスZaLの測定値に基づいて、第n番目のサンプリングタイミングにおける第2センタリング値ZaL0(n)を生成する。第2センタリング値ZaL0(n)の生成方法の具体的な内容は、第1センタリング値ZaR0(n)の生成方法と同様であるので、詳細な説明は省略する。
図12に示すように、ステップS60の第2センタリング処理が終了すると、CPU170は、第1生体電気インピーダンスの測定値ZaR(n)の第1センタリング値ZaR0(n)に対する相対値である第1相対値ΔZaR(n)を算出する第1相対値算出処理を実行する(ステップS70)。より具体的には、CPU170は、ステップS40で求めた第1生体電気インピーダンスZaR(n)と、ステップS50で求めた第1センタリング値ZaR0(n)との差分を求め、その求めた差分値を、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1相対値ΔZaR(n)として採用するという具合である。
ステップS70の後、CPU170は、第2生体電気インピーダンスの測定値ZaL(n)の第2センタリング値ZaL0(n)に対する相対値である第2相対値ΔZaL(n)を算出する第2相対値算出処理を実行する(ステップS80)。より具体的には、CPU170は、ステップS40で求めた第2生体電気インピーダンスZaL(n)と、ステップS60で求めた第2センタリング値ZaL0(n)との差分を求め、その求めた差分値を、第n番目のサンプリングタイミングにおける第2相対値ΔZaL(n)として採用するという具合である。
例えば被験者が健常者である場合は、右肺と左肺との間に機能差(換気能力の差)はみられないので、図18に示すように、被験者の呼吸に伴う第1相対値ΔZaRの経時的変化を示す波形と、第2相対値ΔZaLの経時的変化を示す波形とは、ほぼ同じような波形となる。第1相対値ΔZaRの経時的変化を示す波形は、第1生体電気インピーダンスZaRの測定値の振幅基準レベルである第1センタリング値ZaR0をゼロ基準とするものであり、第2相対値ΔZaLの経時的変化を示す波形は、第2生体電気インピーダンスZaLの測定値の振幅基準レベルである第2センタリング値ZaL0をゼロ基準とするものである。図18に示すように、吸気では、第1相対値ΔZaRおよび第2相対値ΔZaLは正の値となる一方、呼気では、第1相対値ΔZaRおよび第2相対値ΔZaLは負の値となる。また、右肺の換気量が多いほど、第1相対値ΔZaRの振幅値は大きくなる。さらに言えば、右肺での吸気量が多いほど、第1相対値ΔZaRのピーク値(正の値の最大値)の絶対値は大きい値となり、右肺での呼気量が多いほど、ボトム値(負の値の最小値)の絶対値は大きい値となる。同様に、左肺の換気量が多いほど、第2相対値ΔZaLの振幅値は大きくなる。左肺の吸気量が多いほど、第2相対値ΔZaLのピーク値の絶対値は大きい値となり、左肺の呼気量が多いほど、ボトム値の絶対値は大きい値となるという具合である。
図12に示すように、ステップS80の後、CPU170は、右肺の上部の換気能力を示す第1の右肺呼吸レベルBR1を抽出する第1の右肺呼吸レベル抽出処理を実行する(ステップS90)。以下、図19を参照しながら、ステップS90でCPU170が実行する第1の右肺呼吸レベル抽出処理の具体的な内容を説明する。図19は、第1の右肺呼吸レベル抽出処理の具体的な内容を示すフローチャートである。図19に示すように、まずCPU170は、被験者の呼吸が吸気であるか否かを判定する(ステップS501)。具体的には、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1相対値ΔZaR(n)の値が正の値である場合には吸気であると判定する一方、負の値である場合には呼気であると判定するという具合である。CPU170は、吸気であると判定した場合は、吸気判別フラッグF2を「+1」に設定する一方、呼気であると判定した場合は、吸気判別フラッグF2を「0」に設定する。なお、初期状態においては、吸気判別フラッグF2は「+1」に設定される。また、ステップS501において、CPU170は、第1相対値ΔZaR(n)の代わりに、第2相対値ΔZaL(n)に基づいて、吸気であるか否かを判定してもよい。
ステップS501の結果が肯定の場合、CPU170は、ピークホールド処理を実行する(ステップS502)。より具体的には、CPU170は、吸気での複数のサンプリングタイミングの各々における第1相対値ΔZaRのうち最大の値をピーク値ΔZaR(MAX)として保持する。一方、ステップS501の結果が否定の場合、CPU170は、ボトムホールド処理を実行する(ステップS503)。より具体的には、CPU170は、呼気での複数のサンプリングタイミングの各々における第1相対値ΔZaRのうち最小の値をボトム値ΔZaR(MIN)として保持する。
次に、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングが、第1生体電気インピーダンスの測定値ZaR(n)と、第1センタリング値ZaR0(n)とが等しくなる第1ゼロクロスタイミングであるか否かを判定する(ステップS504)。より具体的には、CPU170は、第1ゼロクロスタイミング判定処理を実行し、その処理結果に基づいて、当該サンプリングタイミングが第1ゼロクロスタイミングであるか否かを判定する。以下、その詳細な内容について説明する。
図20は、ステップS504でCPU170が実行する第1ゼロクロスタイミング判定処理の具体的な内容を示すフローチャートである。図20に示すように、まずCPU170は、5個のサンプリングタイミングの各々における第1相対値ΔZaRのうち最小の値を抽出する(ステップS601)。より具体的には、CPU170は、第n−4番目〜第n番目のサンプリングタイミングの各々における第1相対値ΔZaRの絶対値|ΔZaR|(|ΔZaR(n−4)|〜|ΔZaR(n)|)のうち最小の値を、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1クロスポイント判定値ΔMIN5(n)として抽出するという具合である。
ステップS60の後、CPU170は、直前のサンプリングタイミングにおける第1クロスポイント判定値と、ステップS601で抽出した第1クロスポイント判定値とが等しく、且つ、直前のサンプリングタイミングが第1ゼロクロスタイミングであるか否かを判定する(ステップS602)。より具体的には、CPU170は、第n−1番目のサンプリングタイミングにおける第1クロスポイント判定値ΔMIN5(n−1)とΔMIN5(n)とが等しく、且つ、第n−1番目のサンプリングタイミングにおける第1クロスポイント判定フラッグF3(n−1)が「+1」に設定されているか否かを判定する。第1クロスポイント判定フラッグF3(n−1)が「+1」に設定されている場合は、第n−1番目のサンプリングタイミングが第1ゼロクロスタイミングであるとみなされる。なお、第1クロスポイント判定フラッグF3の初期値(デフォルト値)、つまりは第1番目のサンプリングタイミングにおける第1クロスポイント判定フラッグF3(1)の値は「0」に設定されている。
ステップS602の結果が肯定の場合、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングは第1ゼロクロスタイミングではないと判定し、第1クロスポイント判定フラッグF3(n)を「0」に設定してステップS74へ進む。ステップS602の結果が否定の場合、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1相対値ΔZaR(n)の絶対値が0.3以下であるか否かを判定する(ステップS603)。ステップS603の結果が否定の場合、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングは第1ゼロクロスタイミングではないと判定し、第1クロスポイント判定フラッグF3(n)を「0」に設定して処理を終了する。ステップS603の結果が肯定の場合、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングは第1ゼロクロスタイミングであると判定し、第1クロスポイント判定フラッグF3(n)を「+1」に設定して処理を終了する。以上で、第1ゼロクロスタイミング判定処理が終了する。
再び図19に戻って説明を続ける。ステップS504で、CPU170が、第n番目のサンプリングタイミングは第1ロクロスタイミングではないと判定した場合、すなわち、第1クロスポイント判定フラッグF3(n)が「0」である場合は、当該サンプリングタイミングにおける第1の右肺呼吸レベル抽出処理は終了する。一方、CPU170が、第n番目のサンプリングタイミングは第1ゼロクロスタイミングであると判定した場合、すなわち、第1クロスポイント判定フラッグF3(n)が「+1」である場合は、ステップS505へ進む。
ステップS505において、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1生体電気インピーダンスZaRの微分係数dZaRが正極性(>0)であるか否かを判定する。言い換えれば、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングが、呼気から吸気へと変化するタイミングであるか否かを判定する。
ステップS505の結果が肯定の場合、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングが、呼気から吸気へと変化するタイミングであると判断して、そのときホールドされているピーク値ΔZaR(MAX)とボトム値ΔZaR(MIN)との絶対値の和を、直前の1呼吸における第1の右肺呼吸レベルBR1として抽出する(ステップS506)。ステップS506で抽出された第1の右肺呼吸レベルBR1は、直前の1呼吸における右肺の上部の換気能力を示すものであり、その換気能力が高いほど、第1の右肺呼吸レベルBR1は大きな値を示すという具合である。その後、CPU170は、吸気フラッグ設定処理を実行する(ステップS507)。より具体的には、CPU170は、吸気判別フラッグF2を「+1」に設定する。そして、CPU170は、ピークホールド処理を初期化する(ステップS508)。より具体的には、CPU170は、ステップS502で保持していたピーク値ΔZaR(MAX)を、「0」に設定(初期化)して、当該サンプリングタイミングにおける第1の右肺呼吸レベル抽出処理を終了する。
一方、ステップS505の結果が否定の場合、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングが、吸気から呼気へと変化するタイミングであると判断して、呼気フラッグ設定処理を実行する(ステップS509)。より具体的には、CPU170は、吸気判別フラッグF2を「0」に設定する。そして、CPU170は、ボトムホールド処理を初期化する(ステップS510)。より具体的には、CPU170は、ステップS503で保持していたボトム値ΔZaR(MIN)を、「0」に設定(初期化)して、当該サンプリングタイミングにおける第1の右肺レベル抽出処理を終了する。以上で、図12のステップS90における第1の右肺呼吸レベル抽出処理が終了する。
図12に示すように、ステップS90の後、CPU170は、左肺の上部の換気能力を示す第1の左肺呼吸レベルBL1を抽出する第1の左肺呼吸レベル抽出処理を実行する(ステップS100)。この第1の左肺呼吸レベル抽出処理の具体的な内容は、上述の第1の右肺呼吸レベル抽出処理と同様であるので、詳細な説明は省略する。要するに、第n番目のサンプリングタイミングが、第2生体電気インピーダンスの測定値ZaL(n)と、第2センタリング値ZaL0(n)とが等しくなる第2ゼロクロスタイミングであって、かつ吸気から呼気へと変化するタイミングであると判定された場合は、そのときホールドされているピーク値ΔZaL(MAX)とボトム値ΔZaL(MIN)との絶対値の和が、直前の1呼吸における第1の左肺呼吸レベルBL1として抽出されるという具合である。そのようにして抽出された第1の左肺呼吸レベルBL1は、直前の1呼吸における左肺の上部の換気能力を示すものであり、その換気能力が高いほど、第1の左肺呼吸レベルBL1は大きな値を示すという具合である。
<A−5:呼吸レベル表示処理>
次に、CPU170が実行する呼吸レベル表示処理について説明する。本実施形態では、CPU170は、被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸における第1の右肺呼吸レベルBR1および第1の左肺呼吸レベルBL1を表示する呼吸レベル表示処理を実行する。図21に示すように、CPU170は、被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸における第1の右肺呼吸レベルBR1を第1バーグラフBG1で表示するとともに、当該1呼吸における第1の左肺呼吸レベルBL1を第2バーグラフBG2で表示するように、表示部160を制御する。より具体的には、CPU170は、前述の呼吸レベル検出処理で検出された直前の1呼吸における第1の右肺呼吸レベルBR1に応じて、着色表示すべき第1バーグラフBG1の段階数を決定するとともに、前述の呼吸レベル検出処理で検出された直前の1呼吸における第1の左肺の呼吸レベルBL1に応じて、着色表示すべき第2バーグラフBG2の段階数を決定する。そして、CPU170は、第1の右肺呼吸レベルBR1を構成するピーク値ΔZaR(MAX)およびボトム値ΔZaR(MIN)の各々の値に応じて、着色表示すべき第1バーグラフBG1の段階数を吸気と呼気とに割り振るとともに、第1の左肺呼吸レベルBL1を構成するピーク値ΔZaL(MAX)およびボトム値ΔZaL(MIN)の各々の値に応じて、着色表示すべき第2バーグラフBG2の段階数を吸気と呼気とに割り振る。
さらに言えば、第1の右肺呼吸レベルBR1を構成するピーク値ΔZaR(MAX)の値が大きいほど、第1バーグラフBG1の吸気側の段階数も大きくなり、ボトム値ΔZaR(MIN)の値が大きいほど、第1バーグラフBG1の呼気側の段階数も大きくなる。同様に、第1の左肺呼吸レベルBL1を構成するピーク値ΔZaL(MAX)の値が大きいほど、第2バーグラフBG2の吸気側の段階数も大きくなり、ボトム値ΔZaL(MIN)の値が大きいほど、第2バーグラフBG2の呼気側の段階数も大きくなるという具合である。
以上に説明したように、本実施形態では、CPU170は、被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸における第1の右肺呼吸レベルBR1および第1の左肺呼吸レベルBL1を表示するように制御するので、被験者は、自分の右肺の換気能力と左肺の換気能力との差異を容易に認識できる。被験者が健常者であれば、右肺と左肺との間に機能差は見られないので、第1バーグラフBG1に表示される段階数と、第2バーグラフBG2に表示される段階数との間にも差異は見られない。一方、被験者が、左右の肺の何れかに疾患等を抱えている者であれば、右肺と左肺との間に機能差が生じるので、第1の右肺呼吸レベルBR1と第1の左肺呼吸レベルBL1との間に差異が生じる。つまり、第1バーグラフBG1に表示される段階数と、第2バーグラフBG2に表示される段階数との間にも差異が生じるという具合である。被験者は、第1バーグラフBG1および第2バーグラフBG2を見ることで、自分の右肺の換気能力と左肺の換気能力との差異を容易に認識できるので、容易に疾患部を特定することができる。また、第1バーグラフBG1および第2バーグラフBG2による表示を、例えば手術後の肺の機能回復のためのバイオフィードバック情報として活用することもできる。
<B:第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態に係る生体測定装置の構成および動作は、上述の第1実施形態とほぼ同様であるので、重複する部分については説明を省略する。本実施形態では、CPU170は、被験者の1呼吸ごとに、第1の右肺呼吸レベルBR1および第1の左肺呼吸レベルBL1だけでなく、右肺の中下部の換気能力を示す第2の右肺呼吸レベルBR2と、左肺の中下部の換気能力を示す第2の左肺呼吸レベルBL2とを表示するように制御する点で、上述の第1実施形態と相違する。以下、具体的な内容について説明する。
前述の体幹中部の生体電気インピーダンスZbには、右肺の中下部および腹部を含む体幹中部右側の生体電気インピーダンスと、左肺の中下部および腹部を含む体幹中部左側の生体電気インピーダンスとが含まれる。以降、本明細書では、体幹中部右側の生体電気インピーダンスを第3生体電気インピーダンスZbRと表記し、体幹中部左側の生体電気インピーダンスを第4生体電気インピーダンスZbLと表記する。第3生体電気インピーダンスZbRは、右手と右足との間に流れる基準電流Irefの大きさを示す電流データDiと、左手と左足との間の電位差を示す電圧データDvとから求められる。また、第4生体電気インピーダンスZbLは、左手と左足との間に流れる基準電流Irefの大きさを示す電流データDiと、右手と右足との間の電位差を示す電圧データDvとから求められるという具合である。
呼吸に伴って右肺に空気が出入りすることで、第3生体電気インピーダンスZbRも変化する。その変化の仕方は、前述の体幹中部の生体電気インピーダンスZbと同様であるが、右肺の換気量が多いほど、第3生体電気インピーダンスZbRの振幅値も大きくなる。本実施形態では、第3生体電気インピーダンスZbRの振幅値は、右肺の中下部の換気能力に応じた値となる点に着目し、第3生体電気インピーダンスZbRの測定値に基づいて、右肺の中下部の換気能力を示す第2の右肺呼吸レベルBR2を求めている。この詳細な内容については後述する。
また、呼吸に伴って左肺に空気が出入りすることで、第4生体電気インピーダンスZbLも変化する。その変化の仕方は、前述の体幹中部の生体電気インピーダンスZbと同様であるが、左肺の換気量が多いほど、第4生体電気インピーダンスZbLの振幅値も大きくなる。本実施形態では、第4生体電気インピーダンスZbLの振幅値は、左肺の中下部の換気能力に応じた値となる点に着目し、第4生体電気インピーダンスZbLの測定値に基づいて、左肺の中下部の換気能力を示す第2の左肺呼吸レベルBL2を求めている。この詳細な内容については後述する。
次に、本実施形態における呼吸レベル検出処理の具体的な内容を説明する。図22および図23は、本実施形態における呼吸レベル検出処理の具体的な内容を説明するためのフローチャートである。図22に示すように、まずCPU170は、サンプリングタイミングに到達したか否かを判定し(ステップS700)、ステップS700の結果が肯定である場合はステップS710に進む。ここでは、第n番目のサンプリングタイミングに到達した場合を想定して、ステップS710以下の各ステップの具体的な内容を説明する。なお、第1実施形態と重複する部分については、適宜説明を省略する。
図22に示すように、ステップS710において、CPU170は、体幹上部右側の第1生体電気インピーダンスZaRを測定する。この内容は第1実施形態と同様であるので、詳細な説明は省略する。次に、CPU170は、体幹中部右側の第3生体電気インピーダンスZbRを測定する(ステップS720)。例えば、CPU170は、右足用の電流電極X2と右手用の電流電極X4とを選択するように電極切換回路252を制御するとともに、左足用の電圧電極Y1と左手用の電圧電極Y3とを選択するように電極切換回路251を制御する。そして、CPU170は、右手と右足との間に流れる基準電流Irefの大きさを示す電流データDiと、左足用の電圧電極Y1と左手用の電圧電極Y3との間の電位差を示す電圧データDvとから、体幹中部右側の第3生体電気インピーダンスZbRを測定する。ここでは、第n番目のサンプリングタイミングにおける第3生体電気インピーダンスの実測値をZbR(n)’と表記する。
ステップS720の後、CPU170は、ステップS710で求めた第1生体電気インピーダンスZaR(n)’およびステップS720で求めた第3生体電気インピーダンスZbR(n)’の各々について、スムージング処理を実行する(ステップS730)。スムージング処理の内容は第1実施形態と同様であるので、詳細な説明は省略する。スムージング処理が行われた後の、第n番目のサンプリングタイミングにおける第3生体電気インピーダンスの測定値をZbR(n)と表記する。
ステップS730の後、CPU170は、体幹上部左側の第2生体電気インピーダンスZaLを測定する(ステップS740)。この内容は第1実施形態と同様であるので、詳細な説明は省略する。次に、CPU170は、体幹中部左側の第4生体電気インピーダンスZbLを測定する(ステップS750)。例えば、CPU170は、左足用の電流電極X1と左手用の電流電極X3とを選択するように電極切換回路252を制御するとともに、右足用の電圧電極Y2と右手用の電圧電極Y4とを選択するように電極切換回路251を制御する。そして、CPU170は、左手と左足との間に流れる基準電流Irefの大きさを示す電流データDiと、右足用の電圧電極Y2と右手用の電圧電極Y4との間の電位差を示す電圧データDvとから、体幹中部左側の第4生体電気インピーダンスZbLを測定する。ここでは、第n番目のサンプリングタイミングにおける第4生体電気インピーダンスの実測値をZbL(n)’と表記する。
ステップS750の後、CPU170は、ステップS740で求めた第2生体電気インピーダンスZaL(n)’およびステップS750で求めた第4生体電気インピーダンスZbL(n)’の各々について、スムージング処理を実行する(ステップS760)。スムージング処理の内容は第1実施形態と同様であるので、詳細な説明は省略する。スムージング処理が行われた後の、第n番目のサンプリングタイミングにおける第4生体電気インピーダンスの測定値をZbL(n)と表記する。
図22に示すように、ステップS760の後のステップS770において、CPU170は、第1センタリング処理を実行する。ステップS770の後のステップS780において、CPU170は、第1相対値算出処理を実行する。ステップS780の後のステップS790において、CPU170は、第1の右肺呼吸レベル抽出処理を実行する。以上のステップS770〜ステップS790の各々における処理は、上述の第1実施形態において説明した内容と同様であるので、詳細な説明は省略する。
ステップS790の後、CPU170は、第3生体電気インピーダンスZbRの測定値の振幅基準レベルを示す第3センタリング値ZbR0を生成し、その生成した第3センタリング値ZbR0を用いて、第3生体電気インピーダンスZbRの測定値の第3センタリング値ZbR0に対する相対値である第3相対値ΔZbRを算出する(ステップS800)。第3センタリング値ZbR0とは、第3生体電気インピーダンスZbRの経時的変化を示す波形から、呼吸に起因した情報を抽出するための振幅基準レベルを示すものである。
ここで、前述したように、被験者の呼吸が腹式呼吸の場合、体幹中部の生体電気インピーダンスZbの変化は、体幹上部の生体電気インピーダンスZaの変化とは異なる態様(非正弦波状)を示すので、前述の第1センタリング値ZaR0または第2センタリング値ZaL0を求める場合と同様に、所定数のサンプリングタイミングの各々における第3生体電気インピーダンスZbRの測定値を用いた移動平均処理を行っても、これらの振幅基準レベル、すなわち、第3生体電気インピーダンスZbRの経時的変化を示す波形から、呼吸に起因した情報を抽出するための振幅基準レベルを精度良く求めることは困難である。
そこで、本実施形態では、図24に示すように、第1生体電気インピーダンスZaRの測定値と、第1センタリング値ZaR0とが等しくなる第1ゼロクロスタイミングを抽出し、当該第1ゼロクロスタイミングにおける第3生体電気インピーダンスZbRの測定値に基づいて、第3センタリング値ZbR0を生成している。これにより、被験者の呼吸が腹式呼吸であっても、第3生体電気インピーダンスZbRの測定値の振幅基準レベルを精度良く抽出できる。図24は、第3センタリング値ZbR0の生成方法を概念的に説明するための図である。以下では、図25を参照しながら、ステップS800でCPU170が実行する第3相対値算出処理の具体的な内容を説明する。
図25は、第3相対値算出処理の具体的な内容を示すフローチャートである。図25に示すように、まずCPU170は、前述の第1クロスポイント判定フラッグF3(n)が「+1」であるか否かを判定する(ステップS801)。ステップS801の結果が肯定の場合、つまりは、第n番目のサンプリングタイミングが第1ゼロクロスタイミングである場合、CPU170は、第3センタリング値ZbR0(n)を抽出する(ステップS802)。より具体的には、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける第3生体電気インピーダンスの測定値ZbR(n)を第3センタリング値ZbR0(n)として抽出する。さらに詳述すると、CPU170は、第n−2番目のサンプリングタイミングにおける第3センタリング値ZbR0(n−2)と、第n−1番目のサンプリングタイミングにおける第3センタリング値ZbR0(n−1)と、第n番目のサンプリングタイミングにおける第3センタリング値ZbR0(n)とを用いて移動平均処理を行い、その処理結果を、第n番目のサンプリングタイミングにおける第3センタリング値ZbR0(n)として抽出する([ZbR0(n−2)+ZbR0(n−1)+ZbR0(n)]/3→ZbR0(n))。
一方、ステップS801の結果が否定の場合、つまりは、第n番目のサンプリングタイミングが第1ゼロクロスタイミングではない場合、CPU170は、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおける第3センタリング値ZbR0(n−1)を、第n番目のサンプリングタイミングにおける第3センタリング値ZbR0(n)として採用する(ZbR0(n−1)→ZbR0(n))。
次に、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける第3相対値ΔZbR(n)を算出する(ステップS804)。より具体的には、CPU170は、第3生体電気インピーダンスの測定値ZbR(n)と、第3センタリング値ZbR0(n)との差分を、第n番目のサンプリングタイミングにおける第3相対値ΔZbR(n)として採用するという具合である。以上で、図22のステップS800における第3相対値算出処理が終了する。
再び図22に戻って説明を続ける。図22に示すように、ステップS800の後、CPU170は、右肺の中下部の換気能力を示す第2の右肺呼吸レベルBR2を抽出する第2の右肺呼吸レベル抽出処理を実行する(ステップS810)。以下、図26を参照しながら、ステップS810でCPU170が実行する第2の右肺呼吸レベル抽出処理の具体的な内容を説明する。図26は、第2の右肺呼吸レベル抽出処理の具体的な内容を示すフローチャートである。図26に示すように、まずCPU170は、被験者の呼吸が吸気であるか否かを判定する(ステップS900)。この内容は、前述の第1の右肺呼吸レベル抽出処理で説明した内容(図19のステップS501)と同じであるので、詳細な説明は省略する。
ステップS900の結果が肯定の場合、CPU170は、ピークホールド処理を実行する(ステップS901)。より具体的には、CPU170は、吸気での複数のサンプリングタイミングの各々における第3相対値ΔZbRのうち最大の値をピーク値ΔZbR(MAX)として保持する。一方、ステップS900の結果が否定の場合、CPU170は、ボトムホールド処理を実行する(ステップS902)。より具体的には、CPU170は、呼気での複数のサンプリングタイミングの各々における第3相対値ΔZbRのうち最小の値をボトム値ΔZbR(MIN)として保持する。
次に、CPU170は、前述の第1クロスポイント判定フラッグF3(n)が「+1」であるか否かを判定する(ステップS903)。ステップS903の結果が否定の場合、つまりは、第n番目のサンプリングタイミングが第1ゼロクロスタイミングではない場合は、当該サンプリングタイミングにおける第2の右肺呼吸レベル抽出処理は終了する。一方、ステップS903の結果が肯定の場合、つまりは、第n番目のサンプリングタイミングが第1ゼロクロスタイミングである場合は、ステップS904へ進む。ステップS904において、CPU170は、図10のステップS505と同様に、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1生体電気インピーダンスZaRの微分係数dZaRが正極性(>0)であるか否かを判定する。言い換えれば、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングが、呼気から吸気へと変化するタイミングであるか否かを判定する。
ステップS904の結果が肯定の場合、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングが、呼気から吸気へと変化するタイミングであると判断して、そのときホールドされているピーク値ΔZbR(MAX)とボトム値ΔZbR(MIN)との絶対値の和を、直前の1呼吸における第2の右肺呼吸レベルBR2として抽出する(ステップS905)。ステップS905で抽出された第2の右肺呼吸レベルBR2は、当該1呼吸における右肺の中下部の換気能力を示すものであり、その換気能力が高いほど、第2の右肺呼吸レベルBR2は大きな値を示すという具合である。その後、CPU170は、吸気フラッグ設定処理を実行する(ステップS906)。より具体的には、CPU170は、吸気判別フラッグF2を「+1」に設定する。そして、CPU170は、ピークホールド処理を初期化する(ステップS907)。より具体的には、CPU170は、ステップS812で保持していたピーク値ΔZbR(MAX)を、「0」に設定(初期化)して、当該サンプリングタイミングにおける第2の右肺呼吸レベル抽出処理を終了する。
一方、ステップS904の結果が否定の場合、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングが、吸気から呼気へと変化するタイミングであると判断して、呼気フラッグ設定処理を実行する(ステップS908)。より具体的には、CPU170は、吸気判別フラッグF2を「0」に設定する。そして、CPU170は、ボトムホールド処理を初期化する(ステップS909)。より具体的には、CPU170は、ステップS813で保持していたボトム値ΔZbR(MIN)を、「0」に設定(初期化)して、当該サンプリングタイミングにおける第1の右肺レベル抽出処理を終了する。以上で、図22のステップS810における第2の右肺呼吸レベル抽出処理が終了して、次のステップS820へ進む(図23参照)。
図23を参照しながら、呼吸レベル検出処理の具体的な内容の説明を続ける。図23に示すように、ステップS820において、CPU170は、第2センタリング処理を実行する。ステップS820の後のステップS830において、CPU170は、第2相対値算出処理を実行する。ステップS830の後のステップS840において、CPU170は、第1の左肺呼吸レベル抽出処理を実行する。以上のステップS820〜ステップS840の各々における処理は、上述の第1実施形態にて説明した内容と同様であるので、詳細な説明は省略する。
ステップS840の後、CPU170は、第4生体電気インピーダンスZbLの測定値の振幅基準レベルを示す第4センタリング値ZbL0を生成し、その生成した第4センタリング値ZbL0を用いて、第4生体電気インピーダンスZbLの測定値の第4センタリング値ZbL0に対する相対値である第4相対値ΔZbLを算出する(ステップS850)。第4センタリング値ZbL0とは、第4生体電気インピーダンスZbLの経時的変化を示す波形から、呼吸に起因した情報を抽出するための振幅基準レベルを示すものである。本実施形態では、第2生体電気インピーダンスZaLの測定値と、第2センタリング値ZaL0とが等しくなる第2ゼロクロスタイミングを抽出し、当該第2ゼロクロスタイミングにおける第4生体電気インピーダンスZbLの測定値に基づいて第4センタリング値ZbL0を生成する。第n番目のサンプリングタイミングにおける第4センタリング値ZbL0(n)の生成方法の具体的な内容は、前述の第3センタリング値ZbR0(n)の生成方法と同様であるので、ここでは詳細な説明は省略する。そして、CPU170は、第4生体電気インピーダンスの測定値ZbL(n)と、第4センタリング値ZbL0(n)との差分を、第n番目のサンプリングタイミングにおける第4相対値ΔZbL(n)として採用する。
図23に示すように、ステップS850の後、CPU170は、左肺の中下部の換気能力を示す第2の左肺呼吸レベルBL2を抽出する第2の左肺呼吸レベル抽出処理を実行する(ステップS860)。
この第2の左肺呼吸レベル抽出処理の具体的な内容は、前述の第2の右肺呼吸レベル抽出処理と同様であるので、詳細な説明は省略する。要するに、第n番目のサンプリングタイミングが、第2生体電気インピーダンスの測定値ZaL(n)と、第2センタリング値ZaL0(n)とが等しくなる第2ゼロクロスタイミングであって、かつ呼気から吸気へと変化するタイミングであると判定された場合は、そのときホールドされているピーク値ΔZbL(MAX)とボトム値ΔZbL(MIN)との絶対値の和が、直前の1呼吸における第2の左肺呼吸レベルBL2として抽出されるという具合である。そのようにして抽出された第2の左肺呼吸レベルBL2は、当該1呼吸における左肺の中下部の換気能力を示すものであり、その換気能力が高いほど、第2の左肺呼吸レベルBL2は大きな値を示す。以上で、第n番目のサンプリングタイミングにおける呼吸レベル検出処理が終了する。
次に、CPU170が実行する呼吸レベル表示処理について説明する。本実施形態では、CPU170は、被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸における第1の右肺呼吸レベルBR1および第1の左肺呼吸レベルBL1に加えて、当該1呼吸における第2の右肺呼吸レベルBR2および第2の左肺呼吸レベルBL2を表示する呼吸レベル表示処理を実行する。図27に示すように、CPU170は、被験者の1呼吸ごとに、第1の右肺呼吸レベルBR1を第1バーグラフBG1で表示し、第1の左肺呼吸レベルBL1を第2バーグラフBG2で表示し、第2の右肺呼吸レベルBR2を第3バーラフBG3で表示し、第2の左肺呼吸レベルBL2を第4バーグラフBG4で表示するように、表示部160を制御する。第1バーグラフBG1および第2バーグラフBG2による表示の態様は、上述の第1実施形態と同様であるので、詳細な説明は省略する。以下では、第3バーグラフBG3および第4バーグラフBG4による表示の態様について説明する。
CPU170は、前述の呼吸レベル検出処理で検出された直前の1呼吸における第2の右肺呼吸レベルBR2に応じて、着色表示すべき第3バーグラフBG3の段階数を決定するとともに、前述の呼吸レベル検出処理で検出された直前の1呼吸における第2の左肺の呼吸レベルBL2に応じて、着色表示すべき第4バーグラフBG4の段階数を決定する。そして、CPU170は、第2の右肺呼吸レベルBR2を構成するピーク値ΔZbR(MAX)およびボトム値ΔZbR(MIN)の各々の値に応じて、着色表示すべき第3バーグラフBG3の段階数を吸気と呼気とに割り振るとともに、第2の左肺呼吸レベルBL2を構成するピーク値ΔZbL(MAX)およびボトム値ΔZbL(MIN)の各々の値に応じて、着色表示すべき第4バーグラフBG4の段階数を吸気と呼気とに割り振るという具合である。
以上に説明したように、本実施形態では、CPU170は、被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸における第1の右肺呼吸レベルBR1、第2の右肺呼吸レベルBR2、第1の左肺呼吸レベルBL1、および、第2の左肺呼吸レベルBL2を表示するように制御するので、被験者は、自分の右肺の上部の換気能力および左肺の上部の換気能力だけでなく、右肺の中下部の換気能力および左肺の中下部の換気能力についても容易に認識できる。つまり、被験者は、第1バーグラフBG1〜第4バーグラフBG4を見ることで、自分の右肺の上部の換気能力と左肺の上部の換気能力との差異だけでなく、右肺の中下部の換気能力と左肺の中下部の換気能力との差異も容易に認識できるという具合である。
なお、上述の第2実施形態では、第1の右肺呼吸レベルBR1および第1の左肺呼吸レベルBL1に加えて、第2の右肺呼吸レベルBR2および第2の左肺呼吸レベルBL2が測定されているが、これに限らず、例えば第1の右肺呼吸レベルBR1および第1の左肺呼吸レベルBL1が測定されずに、第2の右肺呼吸レベルBR2および第2の左肺呼吸レベルBL2が測定される態様であってもよい。ただし、この態様(第3生体電気インピーダンスZbRおよび第4生体電気インピーダンスZbLの測定値のみに基づいて右肺呼吸レベルおよび左肺呼吸レベルを測定する態様)では、被験者の呼吸に伴う第3生体電気インピーダンスZbRおよび第4生体電気インピーダンスZbLの経時的変化を示す波形には、呼気時の腹式呼吸に起因した波形歪みが含まれるので、呼気と吸気とを判別して、呼気時の波形歪みを外した呼気情報を呼吸レベル情報として使用することも考えられる。なお、呼気と吸気との判別方法は任意である。例えば呼吸法を指導するための呼吸アシスト情報を用いて呼気と吸気とを判別することもできる。また、呼吸アシスト情報を用いなくても、腹式呼吸に起因した呼気時の波形歪みが無ければ正弦波と仮定して波形歪みを抽出し、その波形歪みの大きさに基づいて呼気と吸気とを判別することもできる。
<C:第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態では、CPU170は、被験者の1呼吸ごとに、右肺の換気能力を示す右肺呼吸レベル(第1の右肺呼吸レベルBR1、第2の右肺呼吸レベルBR2)および左肺の換気能力を示す左肺吸レベル(第1の左肺呼吸レベルBL1、第2の左肺呼吸レベルBL2)だけでなく、被験者の体幹右側の腹式呼吸および胸式呼吸の各々の大きさと、体幹左側の腹式呼吸および胸式呼吸の各々の大きさとを表示するように制御する点で上述の各実施形態と相違する。以下、具体的な内容について説明する。
まず、図28および図29を参照して、被験者の呼吸と、被験者の胸部の周囲径Ribおよび腹部の周囲径Abとの関係について説明する。まず、被験者の呼吸が腹式呼吸である場合を想定する。図28は、レスピトレース(米国A.M.I社製)で、被験者の腹式呼吸に連動した胸部および腹部の各々の周囲径変化を時系列的に捕捉した結果を示す図である。図28からも理解されるように、被験者の呼吸が腹式呼吸の場合は、その呼吸に応じて腹部の周囲径Abが変化する一方、胸部の周囲径Ribは殆ど変化しない。したがって、腹式呼吸の場合は、被験者の胸部の周囲径Ribの変化(Ribの測定値の基準レベルを示すRib基準値に対するRib(測定値)の相対値)ΔRibと、被験者の腹部の周囲径Abの変化(Abの測定値の基準レベルを示すAb基準値に対するAb(測定値)の相対値)ΔAbとの比を示すΔRib/ΔAbは、「1」を下回るという具合である。なお、レスピトレースの情報は、基準に対する相対値のピーク値(またはボトム値)の絶対値(0-P)、および、相対値のピーク値とボトム値との絶対値の和(P-P)のうちの何れかで検出される。ここでは、被験者の1呼吸ごとに、呼吸の種別の判定が行われるので、レスピトレースの情報は、P-Pの形で検出される。
次に、被験者の呼吸が胸式呼吸である場合を想定する。図29は、レスピトレース(米国A.M.I社製)で、被験者の胸式呼吸に連動した胸部および腹部の各々の周囲径変化を時系列的に捕捉した結果を示す図である。被験者の呼吸が胸式呼吸の場合は、その呼吸に応じた胸部の周囲径Ribの変化は、腹部の周囲径Abの変化よりも大きいので、上述のΔRib/ΔAbは、「1」を上回るという具合である。ここでは、ΔRib/ΔAbは、被験者の呼吸が腹式呼吸なのか胸式呼吸なのかを判別可能な判別情報であると捉えることができる。
本実施形態では、被験者の胸部の周囲径の変化ΔRibと腹部の周囲径の変化ΔAbとの比(=ΔRib/ΔAb)と、体幹上部の生体電気インピーダンスZaの測定値のセンタリング値Za0に対する相対値ΔZa、および、体幹中部の生体電気インピーダンスZbの測定値のセンタリング値Zb0に対する相対値ΔZbとの間には相関関係があることを見出し、その相関関係を表す式を用いて、相対値ΔZaおよび相対値ΔZbに対応するΔRib/ΔAbの値を求める。そして、その求めたΔRib/ΔAbの値に基づいて、被験者の腹式呼吸の程度が推定されるという具合である。上記センタリング値Za0は、生体電気インピーダンスZaの経時的変化を示す波形から、呼吸に起因した情報を抽出するための振幅基準レベルを示すものである。また、上記センタリング値Zb0は、生体電気インピーダンスZbの経時的変化を示す波形から、呼吸に起因した情報を抽出するための振幅基準レベルを示すものである。
図30は、複数の被験者の測定データから得られた、ΔRib/ΔAbと、ΔZb/ΔZaとの関係を示す相関図である。図30からも理解されるように、ΔRib/ΔAbと、ΔZb/ΔZaとの間には相関係数R=0.651、P<0.01という高い相関が得られ、以下の回帰式(1)が成立する。
ΔRib/ΔAb=a0×ΔZb/ΔZa+b0 ・・・(1)
a0:回帰係数,b0:定数。
また、上記回帰式(1)は以下のように変形できる。
ΔRib/ΔAb=(a0×ΔZb−ΔZa)/ΔZa+b1 ・・・(2)
b1:定数(=b0+1)。
本実施形態では、上記回帰式(2)を用いて、前述の第1相対値ΔZaRおよび第3相対値ΔZbRに対応するΔRib/ΔAbの値を求める。このΔRib/ΔAbは、被験者の体幹右側での呼吸の種別を判定可能な指標であると捉えることできる。また、本実施形態では、上記回帰式(2)を用いて、前述の第2相対値ΔZaLおよび第4相対値ΔZbLに対応するΔRib/ΔAbの値を求める。このΔRib/ΔAb値は、被験者の体幹左側での呼吸の種別を判定可能な指標であると捉えることできる。これらの詳細な内容については後述する。
次に、第3実施形態における呼吸レベル検出処理の具体的な内容を説明する。図31および図32は、第3実施形態における呼吸レベル検出処理の具体的な内容を説明するためのフローチャートである。図31に示すように、本実施形態における呼吸レベル検出処理では、ステップS810の第2の右肺呼吸レベル抽出処理の後、第1相対値ΔZaR(n)および第3相対値ΔZbR(n)に対応するΔRib/ΔAb(n)を推定する右側(体幹右側)のΔRib/ΔAb推定演算処理を実行する(ステップS815)。また、図32に示すように、ステップS860の第2の左肺呼吸レベル抽出処理の後、第2相対値ΔZaL(n)および第4相対値ΔZbL(n)に対応するΔRib/ΔAbを推定する左側(体幹左側)のΔRib/ΔAb推定演算処理を実行する(ステップS865)点で、上述の第2実施形態と相違する。その他の部分は、上述の第2実施形態における呼吸レベル検出処理の内容と同じであるので、詳細な説明は省略する。
図33は、ステップS815でCPU170が実行する右側のΔRib/ΔAb推定演算処理の具体的な内容を示すフローチャートである。図33に示すように、まずCPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1相対値ΔZaR(n)の値が「0」以上であるか否かを判定する(ステップS1000)。
ステップS1000の結果が否定の場合、CPU170は、被験者の呼吸が呼気であると判断し、第n番目のサンプリングタイミングにおける右側のΔRib/ΔAb(n)の推定演算を行う(ステップS1010)。より具体的には、CPU170は、上述の回帰式(2)にしたがって演算処理を実行することで、第1相対値ΔZaR(n)および第3相対値ΔZbR(n)に対応するΔRib/ΔAb(n)を求める。一方、ステップS1000の結果が肯定の場合、CPU170は、被験者の呼吸が吸気であると判断し、第n番目のサンプリングタイミングにおける右側のΔRib/ΔAb(n)の値を初期値に設定する。本実施形態では、ステップS1000の結果が肯定の場合、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける右側のΔRib/ΔAb(n)の値を、初期値である「1.0」に設定する。
次に、CPU170は、右側のΔRib/ΔAb(n)の値が、−2.5以上であり、且つ4.5以下であるか否かを判定する(ステップS1020)。ステップS1020の結果が否定の場合、CPU170は、右側のΔRib/ΔAbの値を、初期値である「1.0」に設定してステップS1030へ進む。ステップS1020の結果が肯定の場合、CPU170は、そのままステップS1030へ進む。
ステップS1030において、CPU170は、右側のΔRib/ΔAb(n)の絶対値と、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおける右側のΔRib/ΔAb(n−1)の絶対値との差分(|ΔRib/ΔAb(n)|−|ΔRib/ΔAb(n−1)|)が0.3よりも大きいか否かを判定する。ステップS1030の結果が否定である場合、CPU170は、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおける右側のΔRib/ΔAb(n−1)と、右側のΔRib/ΔAb(n)との平均を求め、その求めた平均値を、第n番目のサンプリングタイミングにおける右側のΔRib/ΔAb(n)として採用([ΔRib/ΔAb(n−1)+ΔRib/ΔAb(n)]/2→ΔRib/ΔAb(n))して次のステップS1040(図34参照)へ進む。一方、ステップS1030の結果が肯定である場合、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける右側のΔRib/ΔAb(n)の値を、初期値である「1.0」に設定して次のステップS1040へ進む。
図34を参照しながら、右側のΔRib/ΔAb推定演算処理の具体的な内容の説明を続ける。図34に示すように、ステップS1040において、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1相対値ΔZaR(n)が「0」よりも小さいか否かを判定する。ステップS1040の結果が肯定の場合、CPU170は、被験者の呼吸が呼気であると判断し、直前の積分回数のカウント値Niに1を加算する。より具体的には、CPU170は、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおける積分回数のカウント値Ni(n−1)に1を加算した値を、第n番目のサンプリングタイミングにおける積分回数のカウント値Ni(n)として採用する。
一方、ステップS1040の結果が否定の場合、CPU170は、被験者の呼吸が吸気であると判断し、積分回数のカウント値Niの値を「0」に初期化する。すなわち、この場合、第n番目のサンプリングタイミングにおける積分回数のカウント値Ni(n)は「0」に設定されるという具合である。
続いて、図34に示すように、CPU170は、第1相対値ΔZaR(n)が「0」よりも小さいか否かを再び判定する(ステップS1050)。ステップS1050の結果が肯定の場合、CPU170は、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおける右側のΔRib/ΔAbの積分値(ΣΔRib/ΔAb(n−1))と、第n番目のサンプリングタイミングにおける右側のΔRib/ΔAb(n)との和を求めることで、第n番目のサンプリングタイミングにおける右側のΔRib/ΔAbの積分値(ΣΔRib/ΔAb(n))を求めて次のステップS1060へ進む。一方、ステップS1050の結果が否定の場合、つまりは、被験者の呼吸状態が吸気であると判断した場合は、CPU170は、前述のピーク/ボトム判別フラッグF1(n)を「+1」に設定して次のステップS1060へ進む。
次に、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける積分回数のカウント値Ni(n)がゼロであるか否かを判定する(ステップS1060)。ステップS1060の結果が否定の場合、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける右側のΔRib/ΔAbの積分値[ΣΔRib/ΔAb(n)]を、第n番目のサンプリングタイミングにおける積分回数のカウント値Ni(n)で割ることで、右側のΔRib/ΔAbの平均値を求める。一方、ステップS1060の結果が肯定の場合、CPU170は、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおける右側のΔRib/ΔAbの平均値([ΣΔRib/ΔAb(n−1)]/Ni(n−1))を、第n番目のサンプリングタイミングにおける右側のΔRib/ΔAbの平均値として採用する。以上で、図31のステップS815における右側のΔRib/ΔAb推定演算処理が終了する。
被験者の呼吸が腹式呼吸の場合、上述のΔRib/ΔAbの平均値([ΣΔRib/ΔAb]/Ni)は、図35のように変化する。図35において、呼気におけるΔRib/ΔAbの値(平均値)が1.0以下である場合は腹式呼吸であると推定される一方、1.0を上回る場合は胸式呼吸であると推定されるという具合である。なお、図32のステップS865における左側(体幹左側)のΔRib/ΔAb推定演算処理の具体的な内容は、上述の右側のΔRib/ΔAb推定演算処理の内容と同様であるので、ここでは詳細な説明は省略する。
次に、CPU170が実行する呼吸レベル表示処理について説明する。本実施形態では、CPU170は、被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸における第1の右肺呼吸レベルBR1、第1の左肺呼吸レベルBL1、第2の右肺呼吸レベルBR2および第2の左肺呼吸レベルBL2を表示するように表示部160を制御するだけでなく(ここまでは上述の第2実施形態と同じ内容)、図36に示すように、被験者の体幹右側の腹式呼吸および胸式呼吸の各々の大きさを第5バーグラフBG5で表示するとともに、体幹左側の腹式呼吸および胸式呼吸の各々の大きさを第6バーグラフBG6で表示するように、表示部160を制御する点で上述の第2実施形態と相違する。より具体的には、以下のとおりである。
まず第5バーグラフBG5による表示の態様について説明する。本実施形態では、CPU170は、前述の呼吸レベル検出処理で検出された直前の1呼吸における第1の右肺呼吸レベルBR1に応じて、着色表示すべき第5バーグラフBG5の段階数を決定する。そして、CPU170は、直前の1呼吸における体幹右側のΔRib/ΔAbの平均値に応じて、着色表示すべき第5バーグラフBG5の段階数を胸式と腹式とに割り振るという具合である。
次に、第6バーグラフBG6による表示の態様について説明する。本実施形態では、CPU170は、前述の呼吸レベル検出処理で検出された直前の1呼吸における第1の左肺呼吸レベルBL1に応じて、着色表示すべき第6バーグラフBG6の段階数を決定する。そして、CPU170は、直前の1呼吸における体幹左側のΔRib/ΔAbの平均値に応じて、着色表示すべき第6バーグラフBG6の段階数を胸式と腹式とに割り振るという具合である。
以上に説明したように、本実施形態では、CPU170は、被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸における右肺の換気能力を示す右肺呼吸レベル(第1の右肺呼吸レベルBR1、第2の右肺呼吸レベルBR2)および左肺の換気能力を示す左肺吸レベル(第1の左肺呼吸レベルBL1、第2の左肺呼吸レベルBL2)だけでなく、被験者の体幹右側の腹式呼吸および胸式呼吸の各々の大きさ、および、体幹左側の腹式呼吸および胸式呼吸の各々の大きさを表示するように制御するので、被験者は、右肺呼吸レベルと左肺呼吸レベルとの差異だけでなく、自分の体幹右側における腹式呼吸の程度と体幹左側における腹式呼吸の程度との差異を容易に認識できる。これにより、被験者は、左右の換気能力差をより明確に認識できるという具合である。
なお、以上に説明した態様に限らず、例えば被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸における第1の右肺呼吸レベルBR1、第1の左肺呼吸レベルBL1、体幹右側の腹式呼吸の程度、および、体幹左側の腹式呼吸の程度が表示される一方、第2の右肺呼吸レベルBR2および第2の左肺呼吸レベルBL2は表示されない態様であってもよい。つまり、第2の右肺呼吸レベルBR2および第2の左肺呼吸レベルBL2は測定されず、第1の右肺呼吸レベルBR1、第1の左肺呼吸レベルBL1、体幹右側の腹式呼吸の程度、および、体幹左側の腹式呼吸の程度が測定される態様であってもよい。また、例えば被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸における第2の右肺呼吸レベルBR2、第2の左肺呼吸レベルBL2、体幹右側の腹式呼吸の程度、および、体幹左側の腹式呼吸の程度が表示される一方、第1の右肺呼吸レベルBR1および第1の左肺呼吸レベルBL1は表示されない態様であってもよい。つまり、第1の右肺呼吸レベルBR1および第1の左肺呼吸レベルBL1は測定されず、第2の右肺呼吸レベルBR2、第2の左肺呼吸レベルBL2、体幹右側の腹式呼吸の程度、および、体幹左側の腹式呼吸の程度が測定される態様であってもよい。
<D:第4実施形態>
第4実施形態では、被験者の呼吸が胸式呼吸なのか腹式呼吸なのかを判別する場合について説明する。なお、生体測定装置のハードウェア構成は基本的に第1実施形態で説明したものと同じであるので、第1実施形態と同一の符号を付し、説明を省略するものとする。
<D−1:生体測定装置の動作>
図37は、本実施形態に係る生体測定装置1の動作を示すフローチャートである。まず、入力部150における電源スイッチ(図示省略)がオンされると、図示せぬ電力供給部から電気系統各部に電力を供給し、表示部160により身長を含む身体特定情報(身長、性別、年齢など)を入力するための画面を表示する(ステップT1)。
続いて、入力部150から身長、性別、年齢等が入力されると、体重計110により体重が測定され、CPU170は体重を取得する(ステップT2)。
ステップT2の後、CPU170は、呼吸解析処理を実行する(ステップT3)。この処理では、CPU170は、被験者の呼吸が腹式呼吸なのか胸式呼吸なのかを判別可能な判別情報を求める。この詳細な内容については後述する。ステップT3の後、CPU170は、被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸における腹式呼吸および胸式呼吸の各々の大きさと余裕度とを表示する呼吸レベル表示処理を実行する(ステップT4)。この詳細な内容についても後述する。
<D−2:呼吸解析の原理>
次に、呼吸解析の原理について説明する。図6に示したように体幹部の組織は横隔膜によって上下に分けられている。上部には、肺と、内外肋間筋などの胸部骨格筋とが形成されている。一方、下部には、内臓組織と、内外腹斜筋・腹横筋や腹直筋などからなる腹部骨格筋とが形成されている。腹式呼吸および胸式呼吸のいずれにしても、呼気時に横隔膜は上昇して肺が圧縮され、吸気時に横隔膜は下降して肺は伸長拡大する。胸式呼吸に無い腹式呼吸の特徴は、腹直筋や内外腹斜筋・腹横筋などの腹部呼吸筋の伸縮により内臓組織と供に横隔膜を上下させる点にある。
また、図7に示したように、体幹上部の生体電気インピーダンスZaは、胸部骨格筋の生体電気インピーダンスZ1、および、肺の生体電気インピーダンスZ2の並列インピーダンスと、上肢骨格筋の生体電気インピーダンスZ3とが直列に接続されたものとなる。ここで、Z1およびZ2の並列インピーダンスは、肺の上葉部の生体電気インピーダンスに相当する。一方、図7に示したように、体幹中部の生体電気インピーダンスZbは、胸部骨格筋の生体電気インピーダンスZ4、および、肺の生体電気インピーダンスZ5の並列インピーダンスと、腹部骨格筋の生体電気インピーダンスZ6、および、内臓組織の生体電気インピーダンスZ7の並列インピーダンスとが直列に接続されたものとなる。ここで、Z4およびZ5の並列インピーダンスは、肺の中下葉部の生体電気インピーダンスに相当する。また、横隔膜の生体電気インピーダンスは、内臓組織に代表される生体電気インピーダンスZ7に含ませて考えることができる。
以降、本明細書では、体幹上部の生体電気インピーダンスZaを第5生体電気インピーダンスZaと表記し、体幹中部の生体電気インピーダンスZbを第6生体電気インピーダンスZbと表記する。
次に、呼吸と生体電気インピーダンスの変化との関係を図8を参照して説明する。呼吸に連動した第5生体電気インピーダンスZaの変化は、肺に絶縁性の高い空気が出入りすることによる電気的特質(電気導電性、1/体積抵抗率)の変化が主な原因であると考えられる。つまり、呼気(呼息)では肺組織中に含まれる空気量が減るため肺の生体電気インピーダンスZ2は減少方向に変化する(ΔZlu<0)。一方、吸気(吸息)では空気量が増加するため、肺の生体電気インピーダンスZ2は増加方向に変化する(ΔZlu>0)。
胸式で胸郭を広げる呼吸法(胸式呼吸)では、内外肋間筋などの呼吸骨格筋の伸縮変化と肺の伸縮変化が同じ方向に作用するので、肺の生体電気インピーダンスZ2が増加すれば胸部骨格筋の生体電気インピーダンスZ1も増加し、肺の生体電気インピーダンスZ2が減少すれば胸部骨格筋の生体電気インピーダンスZ1も減少する。一方、腹式呼吸は胸郭の変化がほとんど見られない呼吸法なので、胸部骨格筋の生体電気インピーダンスZ1はほとんど変化せず、肺の生体電気インピーダンスZ2が呼吸に伴って大きく変化する。なお、第5生体電気インピーダンスZaには、上肢骨格筋の生体電気インピーダンスZ3が含まれているが、上肢骨格筋は、呼吸に直接的に寄与する筋肉ではない。本実施形態において被験者は、図2に示した測定装置の台座部20の上に立ち、左右の腕を下げた状態で30Lおよび30Rを握り計測を行うので、計測中に上肢骨格筋(Z3)が動くことは殆ど無い。このため図9および図10に示したように、被験者の呼吸が胸式呼吸および腹式呼吸の何れの場合であっても、吸気では第5生体電気インピーダンスZaは増加方向に変化し、呼気では第5生体電気インピーダンスZaは減少方向に変化するという具合である。
一方、呼吸に連動した第6生体電気インピーダンスZbの変化は、横隔膜の動きと連動している。上述したように腹式呼吸および胸式呼吸のいずれの場合も、横隔膜は呼気時上昇し、吸気時下降する。そして、腹式呼吸の特徴は、腹部呼吸筋の伸縮により内臓組織とともに横隔膜を上下させる点にある。より具体的には、腹式呼吸の呼気時のみ、腹筋を緊張させて内臓組織と伴に横隔膜を押し上げ上昇させることで、内臓組織と腹部骨格筋との並列部の生体電気インピーダンスが上昇する(ΔZst>0)。このとき、肺組織の生体電気インピーダンスは減少する(ΔZlu<0)。このため、横隔膜から上部の生体電気インピーダンスの減少を横隔膜から下部の生体電気インピーダンスの増加が打ち消すように作用する。このように胸式呼吸と腹式呼吸とでは、横隔膜から下部にある腹部骨格筋と内臓組織の動きが異なる。
図9に示したように、被験者の呼吸が腹式呼吸の場合、吸気では第6生体電気インピーダンスZbは増加方向に変化する一方、呼気では、横隔膜から上部の生体電気インピーダンスの減少を横隔膜から下部の生体電気インピーダンスの増加が打ち消すように作用するので、第6生体電気インピーダンスZbは増加方向に変化する。また、図10に示したように、被験者の呼吸が胸式呼吸の場合は、上述した第5生体電気インピーダンスZaの変化と同様に、吸気では第6生体電気インピーダンスZbは増加方向に変化する一方、呼気では第6生体電気インピーダンスZbは減少方向に変化するという具合である。
また、図28に示したように、被験者の呼吸が腹式呼吸の場合は、その呼吸に応じて腹部の周囲径Abが変化する一方、胸部の周囲径Ribは殆ど変化しない。したがって、腹式呼吸の場合は、被験者の胸部の周囲径Ribの変化(Ribの測定値の基準レベルを示すRib基準値に対するRib(測定値)の相対値)ΔRibと、被験者の腹部の周囲径Abの変化(Abの測定値の基準レベルを示すAb基準値に対するAb(測定値)の相対値)ΔAbとの比を示すΔRib/ΔAbは、「1」を下回る。これに対し、図29に示したように、被験者の呼吸が胸式呼吸の場合は、その呼吸に応じた胸部の周囲径Ribの変化は、腹部の周囲径Abの変化よりも大きいので、上述のΔRib/ΔAbは、「1」を上回る。
本実施形態では、被験者の胸部の周囲径の変化ΔRibと腹部の周囲径の変化ΔAbとの比(=ΔRib/ΔAb)と、第5生体電気インピーダンスZaの測定値の第5センタリング値Za0に対する相対値である第5相対値ΔZa、および、第6生体電気インピーダンスZbの測定値の第6センタリング値Zb0に対する第6相対値ΔZbとの間には相関関係があることを見出し、その相関関係を表す式を用いて、第5相対値ΔZaおよび第6相対値ΔZbに対応するΔRib/ΔAbの値を求める。そして、その求めたΔRib/ΔAbの値から、被験者の呼吸の種別(胸式呼吸なのか腹式呼吸なのか)を推定する。なお、詳細な内容は後述するが、「第5センタリング値Za0」とは、第5生体電気インピーダンスZaの変化を示す波形から、呼吸に起因した情報を抽出するための振幅基準レベルを示すものであり、「第6センタリング値Zb0」とは、第6生体電気インピーダンスZbの変化を示す波形から、呼吸に起因した情報を抽出するための振幅基準レベルを示すものである。
また、図30に示したようにΔRib/ΔAbとΔZb/ΔZaとの間には相関係数R=0.651、P<0.01という高い相関が得られ、第3実施形態で説明した回帰式(1),(2)が成立する。ここで、呼吸に伴う第5生体電気インピーダンスZaの変化は、肺の上葉部の生体電気インピーダンス(Z1およびZ2の並列インピーダンス)の変化であると捉えることができる。一方、第6生体電気インピーダンスZbの変化は、肺の中下葉部の生体電気インピーダンス(Z4およびZ5の並列インピーダンス)の変化と、腹部の生体電気インピーダンス(Z6およびZ7の並列インピーダンス)の変化との和であると捉えることができる。肺の上葉部の生体電気インピーダンスの変化、および、肺の中下葉部の生体電気インピーダンスの変化は、同じ部位(胸部)の生体電気インピーダンスの変化であるとみなせば、第6生体電気インピーダンスZbの変化と第5生体電気インピーダンスZaの変化との差分は、腹部の生体電気インピーダンスの変化に相当する。そうすると、第3実施形態で説明した回帰式(2)は、腹部の生体電気インピーダンスの変化と胸部の生体電気インピーダンスの変化との比と、ΔRib/ΔAbとの関係を表す式であると捉えることもできる。また、第3実施形態で説明した回帰式(2)のa0は、肺の上葉部と中下葉部との測定感度の相違を補正するための補正係数であるとみなすことができる。
<D−3:呼吸解析処理>
次に、CPU170が実行する呼吸解析処理について説明する。図38は、呼吸解析処理の具体的な内容を説明するためのフローチャートである。本実施形態では、通常の1呼吸(=1回の吸気+1回の呼気)につき、10回の呼吸解析処理を実行するように設定される。ここでは、通常の1呼吸に要する時間を4秒とみなし、CPU170は、0.4秒ごとに、呼吸解析処理を実行するという具合である。以下では、呼吸解析処理を実行するタイミング(0.4秒ごとのタイミング)をサンプリングタイミングと呼ぶ。なお、これは一例であり、呼吸解析処理を実行するタイミングは任意に設定可能である。
図38に示すように、まず、CPU170は、サンプリングタイミングに到達したか否かを判定し(ステップT10)、ステップT10の結果が肯定である場合はステップT20に進む。ここでは、第n番目(n≧1)のサンプリングタイミングに到達した場合を想定して、ステップT20以下の各ステップの具体的な内容を説明する。ステップT20以下の各ステップの具体的な説明に先立ち、まずは、各ステップの内容の概略を簡単に説明する。ステップT10の後のステップT20において、CPU170は、体幹上部の第5生体電気インピーダンスZaを測定する。ステップT20の後のステップT30において、CPU170は、体幹中部の第6生体電気インピーダンスZbを測定する。ステップT30の後のステップT40において、CPU170は、ステップT20で測定した第5生体電気インピーダンスZaおよびステップT30で測定した第6生体電気インピーダンスZbの各々について、スムージング処理を実行する。ステップT40の後のステップT50において、CPU170は、第5生体電気インピーダンスZaの測定値の振幅基準レベルを示す第5センタリング値Za0を生成する。ステップT50の後のステップT60において、CPU170は、第5生体電気インピーダンスZaの測定値の第5センタリング値Za0に対する相対値である第5相対値ΔZaを算出する。ステップT60の後のステップT70において、CPU170は、第6生体電気インピーダンスZbの測定値の振幅基準レベルを示す第6センタリング値Zb0を生成し、その生成した第6センタリング値Zb0を用いて、第6生体電気インピーダンスZbの測定値の第6センタリング値Zb0に対する相対値である第6相対値ΔZbを算出する。ステップT70の後のステップT80において、CPU170は、前述した回帰式(2)にしたがって演算処理を実行することで、第5相対値ΔZaおよび第6相対値ΔZbに対応するΔRib/ΔAbの値を求めるという具合である。以下、各ステップの具体的な内容を順番に説明していく。
ステップT20において、CPU170は、体幹上部の第5生体電気インピーダンスZaを測定する。例えば、CPU170は、左手用の電流電極X3と右手用の電流電極X4とを選択するように電極切換回路252を制御するとともに、右足用の電圧電極Y2と右手用の電圧電極Y4とを選択するように電極切換回路251を制御する。そして、CPU170は、右手と左手との間に流れる基準電流Irefの大きさを示す電流データDiと、右足用の電圧電極Y2と右手用の電圧電極Y4との間の電位差を示す電圧データDvとから、右上肢(体幹上部)の第5生体電気インピーダンスZaを測定する。ここでは、第n番目(n≧1)のサンプリングタイミングにおける第5生体電気インピーダンスの実測値をZa(n)’と表記する。
ステップT20の後、CPU170は、体幹中部の第6生体電気インピーダンスZbを測定する(ステップT30)。例えば、CPU170は、左足用の電流電極X1と右手用の電流電極X4とを選択するように電極切換回路252を制御するとともに、左手用の電圧電極Y3と右足用の電圧電極Y2とを選択するように電極切換回路251を制御する。そして、CPU170は、左足と右手との間に流れる基準電流Irefの大きさを示す電流データDiと、左手用の電圧電極Y3と右足用の電圧電極Y2との間の電位差を示す電圧データDvとから、体幹中部の第6生体電気インピーダンスZbを測定する。ここでは、第n番目のサンプリングタイミングにおける第6生体電気インピーダンスの実測値をZb(n)’と表記する。
ステップT30の後、CPU170は、ステップT20で測定した第5生体電気インピーダンスZa(n)’およびステップT30で測定した第6生体電気インピーダンスZb(n)’の各々について、スムージング処理を実行する(ステップT40)。まず、第5生体電気インピーダンスZa(n)’のスムージング処理について具体的に説明する。CPU170は、第n−2番目のサンプリングタイミングにおける第5生体電気インピーダンスの実測値Za(n−2)’と、第n−1番目のサンプリングタイミングにおける第5生体電気インピーダンスの実測値Za(n−1)’と、第n番目のサンプリングタイミングにおける第5生体電気インピーダンスの実測値Za(n)’とを用いた移動平均処理を行う。そして、その処理結果を、第n番目のサンプリングタイミングにおける第5生体電気インピーダンスの測定値として採用する(スムージング処理)。ここでは、スムージング処理が行われた後の、第n番目のサンプリングタイミングにおける第5生体電気インピーダンスの測定値を、Za(n)と表記する。
次に、第6生体電気インピーダンスZb(n)’のスムージング処理について具体的に説明する。CPU170は、第n−2番目のサンプリングタイミングにおける第6生体電気インピーダンスの実測値Zb(n−2)’と、第n−1番目のサンプリングタイミングにおける第6生体電気インピーダンスの実測値Zb(n−1)’と、第n番目のサンプリングタイミングにおける第6生体電気インピーダンスの実測値Zb(n)’とを用いた移動平均処理を行う。そして、その処理結果を、第n番目のサンプリングタイミングにおける第6生体電気インピーダンスの測定値として採用する(スムージング処理)。ここでは、スムージング処理が行われた後の、第n番目のサンプリングタイミングにおける第6生体電気インピーダンスの測定値を、Zb(n)と表記する。
ステップT40の後、CPU170は、第5生体電気インピーダンスZaの測定値の振幅基準レベルを示す第5センタリング値Za0を生成する第5センタリング処理を実行する(ステップT50)。ここでは、第n番目のサンプリングタイミングにおける第5センタリング値をZa0(n)と表記する。本実施形態では、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングよりも所定の時間長だけ前の時点を始点とし、第n番目のサンプリングタイミングを終点とするセンタリング期間内の複数のサンプリングタイミングの各々における第5生体電気インピーダンスZaの測定値に基づいて、第n番目のサンプリングタイミングにおける第5センタリング値Za0(n)を生成する。センタリング期間の時間長は、第n番目のサンプリングタイミングにおける被験者の呼吸の速度に応じて可変に設定される。以下、その具体的な内容について詳細に説明する。
図39は、第5センタリング処理の具体的な内容を示すフローチャートである。図39に示すように、まず、CPU170は、10個のサンプリングタイミングの各々における第5生体電気インピーダンスZaの測定値の振幅基準レベルを示すMA10を抽出するMA10抽出処理を実行する(ステップT51)。より具体的には、CPU170は、第n−9番目〜第n番目の10個のサンプリングタイミングの各々における第5生体電気インピーダンスZaの測定値(Za(n−9)〜Za(n))を用いて移動平均処理を行い、その処理結果を、第n番目のサンプリングタイミングにおけるMA10(n)として抽出する([Za(n−9)+Za(n−8)+・・・+Za(n)]/10→MA10(n))。
ステップT51の後、CPU170は、20個のサンプリングタイミングの各々における第5生体電気インピーダンスZaの測定値の振幅基準レベルを示すMA20を抽出するMA20抽出処理を実行する(ステップT52)。より具体的には、CPU170は、第n−19番目〜第n番目の20個のサンプリングタイミングの各々における第5生体電気インピーダンスZaの測定値(Za(n−19)〜Za(n))を用いて移動平均処理を行い、その処理結果を、第n番目のサンプリングタイミングにおけるMA20(n)として抽出する([Za(n−19)+Za(n−18)+・・・+Za(n)]/20→MA20(n))。
ステップT52の後、CPU170は、10個のサンプリングタイミングの各々における第5生体電気インピーダンスZaの測定値のうち最大の値をMAX10として抽出するMAX10抽出処理を実行する(ステップT53)。より具体的には、CPU170は、第n−9番目〜第n番目の10個のサンプリングタイミングの各々における第5生体電気インピーダンスZaの測定値のうち最大の値を、第n番目のサンプリングタイミングにおけるMAX10(n)として抽出するという具合である。
ステップT53の後、CPU170は、10個のサンプリングタイミングの各々における第5生体電気インピーダンスZaの測定値のうち最小の値をMIN10として抽出するMIN10抽出処理を実行する(ステップT54)。より具体的には、CPU170は、第n−9番目〜第n番目の10個のサンプリングタイミングの各々における第5生体電気インピーダンスZaの測定値のうち最小の値を、第n番目のサンプリングタイミングにおけるMIN10(n)として抽出するという具合である。
ステップT54の後、CPU170は、20個のサンプリングタイミングの各々におけるMAX10とMIN10との平均値(第n番目のサンプリングタイミングにおける平均値をAV10(n)と表記)について移動平均処理を行い、その処理結果を、中央値として算出する中央値算出処理を実行する(ステップT55)。より具体的には、CPU170は、第n−19番目〜第n番目の20個のサンプリングタイミングの各々における平均値(AV10(n−19)〜AV10(n))について移動平均処理を行い、その処理結果を、第n番目のサンプリングタイミングにおける中央値CNT20(n)として抽出する([AV10(n−19)+AV10(n−18)+・・・+AV10(n)]/20→CNT20(n))。ここでは、説明を省略するが、中央値CNT20(n)は、体動などに起因するアーチファクト(データ波形の歪み)等による処理に適さない異常波形の抽出に用いられる。
ステップT55の後、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける被験者の呼吸のタイミングを抽出する呼吸タイミング抽出処理を実行する(ステップT56)。以下では、図40および図41を参照しながら、呼吸タイミング抽出処理の具体的な内容を説明する。図40および図41は、呼吸タイミング抽出処理の具体的な内容を示すフローチャートである。図40に示すように、まずCPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける第5生体電気インピーダンスZaの微分係数dZa(n)を抽出する微分係数抽出処理を実行する(ステップT201)。より具体的には、CPU170は、以下の式(3)にしたがって演算処理を実行することで、微分係数dZa(n)を抽出する。
[Za(n)−Za(n−2)]/1.2=dZa(n) ・・・(3)
次に、CPU170は、ステップT201で抽出した微分係数dZa(n)の絶対値が0.1より小さいか否かを判定する(ステップT202)。ステップT202の結果が肯定である場合、CPU170は、微分係数dZa(n)の極性判別フラッグF0(n)を「0」に設定してステップT204に進む。極性判別フラッグF0(n)が「0」であるとは、第n番目のサンプリングタイミングにおいて、第5生体電気インピーダンスZaの値は極大値(ピーク値)または極小値(ボトム値)であることを意味する。
一方、ステップT202の結果が否定である場合、CPU170は、微分係数dZa(n)の値が0より大きいか否かを判定する(ステップT203)。ステップT203の結果が肯定である場合、CPU170は、極性判別フラッグF0(n)を「+1」に設定してステップT204へ進む。極性判別フラッグF0(n)が「+1」であるとは、第n番目のサンプリングタイミングにおいて、第5生体電気インピーダンスZaの変化の方向は正側であることを意味する。ステップT203の結果が否定である場合、CPU170は、極性判別フラッグF0(n)を「-1」に設定してステップT204へ進む。極性判別フラッグF0(n)が「-1」であるとは、第n番目のサンプリングタイミングにおいて、第5生体電気インピーダンスZaの変化の方向は負側であることを意味する。
ステップT204において、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける極性判別フラッグF0(n)の絶対値と、第n−1番目のサンプリングタイミングにおける極性判別フラッグF0(n−1)の絶対値とが等しく、かつ、F0(n−1)の値とF0(n)の値とが等しくないか否かを判定する。ステップT204の結果が肯定である場合、CPU170は、F0(n)を「0」に設定して、次のステップT206(図41参照)へ進む。ステップT204の結果が否定である場合、CPU170は、ステップT204の直前で設定したF0(n)の値を維持したまま、次のステップT206へ進む。
図41を参照しながら、呼吸タイミング抽出処理の具体的な内容の説明を続ける。CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける極性判別フラッグF0(n)が「0」であるか否かを判定する(ステップT206)。ステップT206の結果が否定である場合、CPU170は、ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)を「0」に設定して、ステップT209へ進む。ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)が「0」であるとは、第n番目のサンプリングタイミングにおける第5生体電位インピーダンスの測定値Za(n)は、ピーク値またはボトム値ではないことを意味する。
一方、ステップT206の結果が肯定である場合、CPU170は、3個のサンプリングタイミングの各々における極性判別フラッグF0の和が「+1」よりも大きいか否かを判定する(ステップT207)。より具体的には、CPU170は、第n−2番目のサンプリングタイミング〜第n番目のサンプリングタイミングの各々における極性判別フラッグ(F0(n−2)〜F0(n))の和が「+1」よりも大きいか否かを判定する。
ステップT207の結果が肯定である場合、CPU170は、ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)を「+1」に設定して、ステップT209へ進む。ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)が「+1」であるとは、第n番目のサンプリングタイミングにおける第5生体電気インピーダンスの測定値Za(n)はピーク値(最大値)であることを意味する。
ステップT207の結果が否定である場合、CPU170は、3個のサンプリングタイミングの各々における極性判別フラッグF0の和が「-1」よりも小さいか否かを判定する(ステップT208)。より具体的には、CPU170は、第n−2番目のサンプリングタイミング〜第n番目のサンプリングタイミングの各々における極性判別フラッグ(F0(n−2)〜F0(n))の和が「-1」よりも小さいか否かを判定する。
ステップT208の結果が肯定である場合、CPU170は、ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)を「-1」に設定して、ステップT209へ進む。ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)が「-1」であるとは、第n番目のサンプリングタイミングにおける第5生体電気インピーダンスの測定値Za(n)はボトム値(最小値)であることを意味する。一方、ステップT208の結果が否定である場合、CPU170は、ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)を「0」に設定して、ステップT209へ進むという具合である。
ステップT209において、CPU170は、ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)が「+1」であるか否かを判定する。ステップT209の結果が否定である場合、CPU170は、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおけるサンプリングカウンタ値N(n−1)に1を加算する一方(ステップT210)、ステップT209の結果が肯定である場合、CPU170は、サンプリングカウンタ値Nを初期化する(ステップT211)。ここで、図9および図10からも理解されるように、被験者の呼吸が胸式呼吸および腹式呼吸の何れの場合であっても、呼吸に伴う第5生体電気インピーダンスZaの変化を示す波形は略正弦波状であるところ、サンプリングカウンタ値Nは、第5生体電気インピーダンスZaの測定値がピーク値に到達するたびに初期化(サンプリングカウンタ値=0)され、次のピーク値に到達するまでのサンプリングタイミングの回数が順次にカウントされていくという具合である。以上で、図39のステップT56における呼吸タイミング抽出処理が終了する。
再び図39に戻って説明を続ける。上述の呼吸タイミング抽出処理が終了すると、CPU170は、被験者の呼吸が速めの呼吸なのか遅めの呼吸なのかを判別する呼吸スピード判別フラッグを設定する(ステップT57)。以下、図42を参照しながら、ステップT57でCPU170が実行する呼吸スピード判別フラッグ設定処理の具体的な内容を説明する。図42は、呼吸スピード判別フラッグ設定処理の具体的な内容を示すフローチャートである。図42に示すように、まずCPU170は、極性判別フラッグF0(n)が「0」であるか否かを判定する(ステップT301)。ステップT301の結果が否定である場合、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける呼吸スピード判別フラッグFma(n)は、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおける呼吸スピード判別フラッグFma(n−1)に等しいとみなして処理を終了する。
ステップT301の結果が肯定である場合、CPU170は、ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)が「+1」であるか否かを判定する(ステップT302)。ステップT302の結果が肯定である場合、CPU170は、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおけるサンプリングカウンタ値N(n−1)が「10」よりも大きいか否かを判定する(ステップT303)。ここで、被験者の呼吸のスピードが遅ければ、第5生体電気インピーダンスZaの測定値がピーク値に到達してから、次のピーク値に到達するまでの時間長は長くなり、次のピーク値に到達する直前のサンプリングカウンタ値Nも大きくなる。本実施形態では、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおいて第5生体電気インピーダンスZaの測定値がピーク値に到達したと判断した場合は、その直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおけるサンプリングカウンタ値が「10」よりも大きいか否かを判定し、当該サンプリングカウンタ値が「10」よりも大きいと判定した場合は、被験者の呼吸は遅めの呼吸であると判断する。具体的には、ステップT303の結果が肯定である場合、CPU170は、呼吸スピード判別フラッグFma(n)を「20」に設定して処理を終了する。呼吸スピード判別フラッグFma(n)が「20」であるとは、被験者の呼吸が遅めの呼吸であることを意味する。また、ステップT303の結果が否定である場合、CPU170は、被験者の呼吸は速めの呼吸であると判断して呼吸スピード判別フラッグFma(n)を「10」に設定して処理を終了する。呼吸スピード判別フラッグFma(n)が「10」であるとは、被験者の呼吸が速めの呼吸であることを意味する。
一方、ステップT302の結果が否定である場合、CPU170は、ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)が「-1」であるか否かを判定する(ステップT304)。ステップT304の結果が否定である場合、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける呼吸スピード判別フラッグFma(n)は、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおける呼吸スピード判別フラッグFma(n−1)に等しいとみなして処理を終了する。ステップT304の結果が肯定である場合、CPU170は、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおけるサンプリングカウンタ値N(n−1)が「5」よりも大きいか否かを判定する(ステップT305)。本実施形態では、CPU170は、ボトム値に到達する直前のサンプリングカウンタ値N(n−1)が「5」よりも大きい場合は、被験者の呼吸は遅めの呼吸であると判断する一方、ボトム値に到達する直前のサンプリングカウンタ値N(n−1)が「5」よりも小さい場合は、被験者の呼吸は速めの呼吸であると判断する。具体的には、CPU170は、ステップT305の結果が肯定である場合は、呼吸スピード判別フラッグFma(n)を「20」に設定して処理を終了する一方、ステップT305の結果が否定である場合は、呼吸スピード判別フラッグFma(n)を「10」に設定して処理を終了するという具合である。以上で、図39のステップT57における呼吸スピード判別フラッグ設定処理が終了する。
再び図39に戻って説明を続ける。上述の呼吸スピード判別フラッグ設定処理が終了すると、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける第5センタリング値Za0(n)を抽出する(ステップT58)。以下、図43を参照しながら、ステップT58でCPU170が実行する第5センタリング値抽出処理の具体的な内容を説明する。図43は、第5センタリング値抽出処理の具体的な内容を示すフローチャートである。図43に示すように、まずCPU170は、呼吸スピード判別フラッグFma(n)が「10」であるか否かを判定する(ステップT401)。言い換えれば、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける被験者の呼吸が速めの呼吸であるか否かを判定するという具合である。
本実施形態では、被験者の呼吸速度に応じて可変に設定されるセンタリング期間内の複数のサンプリングタイミングの各々における第5生体電気インピーダンスZaの測定値に基づいて、第n番目のサンプリングタイミングにおける第5センタリング値Za0(n)が生成される。上記ステップT401の結果が肯定である場合、つまりは第n番目のサンプリングタイミングにおける被験者の呼吸が速めの呼吸である場合は、その速めの1呼吸に要する時間長(ここでは約4.0秒)がセンタリング期間として設定される。すなわち、被験者の呼吸が速めの呼吸である場合は、第n−9番目のサンプリングを始点とし、第n番目のサンプリングタイミングを終点とする期間がセンタリング期間として設定され、第n−9番目〜第n番目のサンプリングタイミングの各々における第5生体電気インピーダンスの測定値を用いた移動平均処理の結果に基づいて第5センタリング値Za0(n)が生成される。より具体的には、ステップT401の結果が肯定である場合、CPU170は、図39のステップT51で求めたMA10(n)に基づいて、第n番目のサンプリングタイミングにおける第5センタリング値Za0(n)を生成する(ステップT402)。さらに詳述すると、CPU170は、第n−2番目のサンプリングタイミングにおける第5センタリング値Za0(n−2)と、第n−1番目のサンプリングタイミングにおける第5センタリング値Za0(n−1)と、MA10(n)とを用いて移動平均処理を行い、その処理結果を、第n番目のサンプリングタイミングにおける第5センタリング値Za0(n)として採用する([Za0(n−2)+Za0(n−1)+MA10(n)]/3→Za0(n))。
一方、上記ステップT401の結果が否定である場合、つまりは第n番目のサンプリングタイミングにおける被験者の呼吸が遅めの呼吸である場合は、その遅めの1呼吸に要する時間長(ここでは約8.0秒)がセンタリング期間として設定される。すなわち、被験者の呼吸が遅めの呼吸である場合は、第n−19番目のサンプリングを始点とし、第n番目のサンプリングタイミングを終点とする期間がセンタリング期間として設定され、第n−19番目〜第n番目のサンプリングタイミングの各々における第5生体電気インピーダンスの測定値を用いた移動平均処理の結果に基づいて第5センタリング値Za0(n)が生成される。より具体的には、ステップT401の結果が否定である場合、CPU170は、図39のステップT52で求めたMA20(n)に基づいて、第n番目のサンプリングタイミングにおける第5センタリング値Za0(n)を生成する(ステップT403)。さらに詳述すると、CPU170は、Za0(n−2)と、Za0(n−1)と、MA20(n)とを用いて移動平均処理を行い、その処理結果を、第n番目のサンプリングタイミングにおける第5センタリング値Za0(n)として採用する([Za0(n−2)+Za0(n−1)+MA20(n)]/3→Za0(n))。以上で、図38のステップT50における第5センタリング処理が終了する。
前述したように、被験者の呼吸が胸式呼吸であっても腹式呼吸であっても、第5生体電気インピーダンスZaの変化を示す波形は略正弦波状となる。CPU170は、体動などによる影響で、第5生体電気インピーダンスZaの変化を示す波形が乱れても、それに応じた第5センタリング値Za0が得られるように、所定数のサンプリングタイミングの各々における第5生体電気インピーダンスZaの測定値に基づいて第5センタリング値Za0を生成する。より具体的には、CPU170は、サンプリングタイミングごとに、当該サンプリングタイミングよりも所定の時間長だけ前の時点を始点とし、当該サンプリングタイミングを終点とするセンタリング期間内の複数のサンプリングタイミングの各々における第5生体電気インピーダンスの測定値を用いた移動平均処理を行い、その結果に基づいて、当該サンプリングタイミングにおける第5センタリング値Za0を求めるので、体動などによる影響で、第5生体電気インピーダンスZaの変化を示す波形が乱れても、それに応じた第5センタリング値Za0を精度良く生成できる。そして、各サンプリングタイミングに対応するセンタリング期間の時間長は、当該サンプリングタイミングにおける被験者の呼吸速度に応じて可変に設定されるという具合である。
図38に戻って説明を続ける。図38に示すように、ステップT50の第5センタリング処理が終了すると、CPU170は、第5生体電気インピーダンスの測定値Za(n)の第5センタリング値Za0(n)に対する相対値である第5相対値ΔZa(n)を算出する第5相対値算出処理を実行する(ステップT60)。より具体的には、CPU170は、ステップT40で求めた第5生体電気インピーダンスの測定値Za(n)と、ステップT50で求めた第5センタリング値Za0(n)との差分を求め、その求めた差分値を、第n番目のサンプリングタイミングにおける第5相対値ΔZa(n)として採用するという具合である。
ステップT60の後、CPU170は、第6生体電気インピーダンスZbの測定値の振幅基準レベルを示す第6センタリング値Zb0を生成し、その生成した第6センタリング値Zb0を用いて、第6生体電気インピーダンスZbの測定値の第6センタリング値Zb0に対する相対値である第6相対値ΔZbを算出する(ステップT70)。
ここで、前述したように、腹式呼吸の呼気における第6生体電気インピーダンスZbの変化は、第5生体電気インピーダンスZaの変化とは異なる態様を示すので、第5センタリング値Za0を求める場合と同様に、所定数のサンプリングタイミングの各々における第6生体電気インピーダンスZbの測定値を用いた移動平均処理を行っても、これらの振幅基準レベル、すなわち、第6生体電気インピーダンスZbの変化を示す波形から、呼吸に起因した情報を抽出するための振幅基準レベル(第6センタリング値Zb0)を精度良く求めることはできない。
そこで、本実施形態では、図44に示すように、第5生体電気インピーダンスZaの測定値と、第5センタリング値Za0とが等しくなるゼロクロスタイミングを抽出し、当該ゼロクロスタイミングにおける第6生体電気インピーダンスZbの測定値に基づいて第6センタリング値Zb0を生成している。これにより、第6生体電気インピーダンスZbの測定値の振幅基準レベルを精度良く抽出できる。図44は、第6センタリング値Zb0の生成方法を概念的に説明するための図である。以下では、図45を参照しながら、ステップT70でCPU170が実行する第6相対値算出処理の具体的な内容を説明する。
図45は、第6相対値算出処理の具体的な内容を示すフローチャートである。図45に示すように、CPU170は、5個のサンプリングタイミングの各々における第5相対値ΔZaのうち最小の値を抽出する(ステップT71)。より具体的には、CPU170は、第n−4番目〜第n番目のサンプリングタイミングの各々における第5相対値ΔZaの絶対値|ΔZa|(|ΔZa(n−4)|〜|ΔZa(n)|)のうち最小の値を、第n番目のサンプリングタイミングにおけるクロスポイント判定値ΔMIN5(n)として抽出するという具合である。
ステップT71の後、CPU170は、直前のサンプリングタイミングにおけるクロスポイント判定値と、ステップT71で抽出したクロスポイント判定値とが等しく、且つ、直前のサンプリングタイミングがゼロクロスタイミングであるか否かを判定する(ステップT72)。より具体的には、CPU170は、第n−1番目のサンプリングタイミングにおけるクロスポイント判定値ΔMIN5(n−1)とΔMIN5(n)とが等しく、且つ、第n−1番目のサンプリングタイミングにおけるクロスポイント判定フラッグF2(n−1)が「+1」に設定されているか否かを判定する。クロスポイント判定フラッグF2(n−1)が「+1」に設定されている場合は、第n−1番目のサンプリングタイミングがゼロクロスタイミングであるとみなされる。なお、クロスポイント判定フラッグF2の初期値(デフォルト値)、つまりは第1番目のサンプリングタイミングにおけるクロスポイント判定フラッグF2(1)の値は「0」に設定されている。
ステップT72の結果が肯定の場合、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングはゼロクロスタイミングではないと判定し、クロスポイント判定フラッグF2(n)を「0」に設定してステップT74へ進む。ステップT72の結果が否定の場合、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける第5相対値ΔZa(n)の絶対値が0.3以下であるか否かを判定する(ステップT73)。ステップT73の結果が否定の場合、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングはゼロクロスタイミングではないと判定し、クロスポイント判定フラッグF2(n)を「0」に設定してステップT74へ進む。ステップT73の結果が肯定の場合、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングはゼロクロスタイミングであると判定し、クロスポイント判定フラッグF2(n)を「+1」に設定してステップT74へ進む。
次に、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおけるクロスポイント判定フラッグF2(n)が「+1」であるか否かを判定する(ステップT74)。ステップT74の結果が肯定の場合、CPU170は、第6センタリング値Zb0を抽出する(ステップT75)。より具体的には、CPU170は、第n−2番目のサンプリングタイミングにおける第6センタリング値Zb0(n−2)と、第n−1番目のサンプリングタイミングにおける第6センタリング値Zb0(n−1)と、第n番目のサンプリングタイミングにおける第6生体電気インピーダンスの測定値Zb(n)とを用いて移動平均処理を行い、その処理結果を、第n番目のサンプリングタイミングにおける第6センタリング値Zb0(n)として抽出する([Zb0(n−2)+Zb0(n−1)+Zb(n)]/3→Zb0(n))。一方、ステップT74の結果が否定の場合、CPU170は、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおける第6センタリング値Zb0(n−1)を、第n番目のサンプリングタイミングにおける第6センタリング値Zb0(n)として採用する(Zb0(n−1)→Zb0(n))。
そして、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける第6相対値ΔZb(n)を算出する(ステップT76)。より具体的には、CPU170は、第6生体電気インピーダンスの測定値Zb(n)と、第6センタリング値Zb0(n)との差分を、第n番目のサンプリングタイミングにおける第6相対値ΔZb(n)として採用するという具合である。以上で、図38のステップT70における第6相対値算出処理が終了する。
例えば被験者の呼吸が腹式呼吸であって、第5生体電気インピーダンスZaおよび第6生体電気インピーダンスZbが図9のように変化する場合、第5相対値ΔZaおよび第6相対値ΔZbの経時的変化を示す波形は、図46のようになる。第5相対値ΔZaの経時的変化を示す波形は、第5生体電気インピーダンスZaの測定値の振幅基準レベルである第5センタリング値Za0をゼロ基準とするものであり、第6相対値ΔZbの経時的変化を示す波形は、第6生体電気インピーダンスZbの測定値の振幅基準レベルである第6センタリング値Zb0をゼロ基準とするものである。両波形を重ねることで、吸気における第5相対値ΔZaおよび第6相対値ΔZbの各々の波形と、呼気における第5相対値ΔZaおよび第6相対値ΔZbの各々の波形とを判別することができる。本実施形態では、CPU170は、第5相対値ΔZaの値に基づいて、被験者の呼吸が吸気であるか呼気であるかを判定する。より具体的には、CPU170は、第5相対値ΔZaが正の値である場合は吸気であると判定し、負の値である場合は呼気であると判定するという具合である。また、吸気における第5相対値ΔZaおよび第6相対値ΔZbの各々の波形の振幅および積分値の違いに基づいて、前述の回帰式(2)の係数を補正してもよい。これにより、測定精度の向上が図られる。
再び図38に戻って説明を続ける。図38に示すように、ステップT70の第6相対値算出処理が終了すると、CPU170は、第5相対値ΔZa(n)および第6相対値ΔZb(n)に対応するΔRib/ΔAbを推定するΔRib/ΔAb推定演算処理を実行する(ステップT80)。以下、図47および図48を参照しながら、ステップT80でCPU170が実行するΔRib/ΔAb推定演算処理の具体的な内容を説明する。図47および図48は、ΔRib/ΔAb推定演算処理の具体的な内容を示すフローチャートである。図47に示すように、まずCPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける第5相対値ΔZa(n)の値が「0」以上であるか否かを判定する(ステップT81)。
ステップT81の結果が否定の場合、CPU170は、被験者の呼吸が呼気であると判断し、第n番目のサンプリングタイミングにおけるΔRib/ΔAb(n)の推定演算を行う(ステップT82)。より具体的には、CPU170は、上述の回帰式(2)にしたがって演算処理を実行することで、第5相対値ΔZa(n)および第6相対値ΔZb(n)に対応するΔRib/ΔAb(n)を求める。一方、ステップT81の結果が肯定の場合、CPU170は、被験者の呼吸が吸気であると判断し、第n番目のサンプリングタイミングにおけるΔRib/ΔAb(n)の値を初期値に設定する。本実施形態では、ステップT81の結果が肯定の場合、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおけるΔRib/ΔAb(n)の値を、初期値である「1.0」に設定する。
次に、CPU170は、ΔRib/ΔAb(n)の値が、−2.5以上であり、且つ4.5以下であるか否かを判定する(ステップT83)。ステップT83の結果が否定の場合、CPU170は、ΔRib/ΔAbの値を、初期値である「1.0」に設定してステップT84へ進む。ステップT83の結果が肯定の場合、CPU170は、そのままステップT84へ進む。
ステップT84において、CPU170は、ΔRib/ΔAb(n)の絶対値と、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおけるΔRib/ΔAb(n−1)の絶対値との差分(|ΔRib/ΔAb(n)|−|ΔRib/ΔAb(n−1)|)が0.3よりも大きいか否かを判定する。ステップT84の結果が否定である場合、CPU170は、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおけるΔRib/ΔAb(n−1)と、ΔRib/ΔAbとの平均を求め、その求めた平均値を、第n番目のサンプリングタイミングにおけるΔRib/ΔAb(n)として採用([ΔRib/ΔAb(n−1)+ΔRib/ΔAb(n)]/2→ΔRib/ΔAb(n))して次のステップT85(図48参照)へ進む。一方、ステップT84の結果が肯定である場合、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおけるΔRib/ΔAb(n)の値を、初期値である「1.0」に設定して次のステップT85へ進む。
図48を参照しながら、ΔRib/ΔAb推定演算処理の具体的な内容の説明を続ける。図48に示すように、ステップT85において、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける第5相対値ΔZa(n)が「0」よりも小さいか否かを判定する。ステップT85の結果が肯定の場合、CPU170は、被験者の呼吸が呼気であると判断し、直前の積分回数のカウント値Niに1を加算する。より具体的には、CPU170は、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおける積分回数のカウント値Ni(n−1)に1を加算した値を、第n番目のサンプリングタイミングにおける積分回数のカウント値Ni(n)として採用する。
一方、ステップT85の結果が否定の場合、CPU170は、被験者の呼吸が吸気であると判断し、積分回数のカウント値Niの値を「0」に初期化する。すなわち、この場合、第n番目のサンプリングタイミングにおける積分回数のカウント値Ni(n)は「0」に設定されるという具合である。
続いて、図48に示すように、CPU170は、第5相対値ΔZa(n)が「0」よりも小さいか否かを再び判定する(ステップT86)。ステップT86の結果が肯定の場合、CPU170は、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおけるΔRib/ΔAbの積分値(ΣΔRib/ΔAb(n−1))と、ΔRib/ΔAb(n)との和を求めることで、第n番目のサンプリングタイミングにおけるΔRib/ΔAbの積分値(ΣΔRib/ΔAb(n))を求めて次のステップT87へ進む。一方、ステップT86の結果が否定の場合、つまりは、被験者の呼吸状態が吸気であると判断した場合は、CPU170は、ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)を「+1」に設定して次のステップT87へ進む。
次に、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける積分回数のカウント値Ni(n)がゼロであるか否かを判定する(ステップT87)。ステップT87の結果が否定の場合、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおけるΔRib/ΔAbの積分値[ΣΔRib/ΔAb(n)]を、第n番目のサンプリングタイミングにおける積分回数のカウント値Ni(n)で割ることで、ΔRib/ΔAbの平均値を求める。一方、ステップT87の結果が肯定の場合、CPU170は、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおけるΔRib/ΔAbの平均値([ΣΔRib/ΔAb(n−1)]/Ni(n−1))を、第n番目のサンプリングタイミングにおけるΔRib/ΔAbの平均値として採用する。以上で、ΔRib/ΔAb推定演算処理が終了し、第n番目のサンプリングタイミングにおける呼吸解析処理が終了する。
被験者の呼吸が腹式呼吸であって、第5相対値ΔZaおよび第6相対値ΔZbが図46のように変化する場合、上述のΔRib/ΔAbの平均値([ΣΔRib/ΔAb]/Ni)は、図35に示したように変化する。図35において、呼気におけるΔRib/ΔAbの値(平均値)が1.0以下である場合は、被験者の呼吸は腹式呼吸であると推定される一方、1.0を上回る場合は、被験者の呼吸は胸式呼吸であると推定されるという具合である。
以上に説明したように、本実施形態では、CPU170が呼吸解析処理を実行することで、サンプリングタイミングごとに、当該サンプリングタイミングにおける第5相対値ΔZaおよび第6相対値ΔZbに対応するΔRib/ΔAbが求められるので、被験者の呼吸の種別(腹式呼吸なのか胸式呼吸なのか)をリアルタイムで正確に判別できるという利点がある。
<D−4:呼吸レベル表示処理>
次に、CPU170が実行する呼吸レベル表示処理について説明する。本実施形態では、CPU170は、被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸における腹式呼吸および胸式呼吸の各々の大きさと余裕度とを表示(報知)する呼吸レベル表示処理を実行する。より具体的には、CPU170は、被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸における呼吸の深さを示す呼吸深度と、当該1呼吸における呼吸解析処理の結果とから、当該1呼吸における胸式呼吸および腹式呼吸の各々の大きさと余裕度とを表示部160に表示するように制御する。図49に示すように、本実施形態では、1呼吸における胸式呼吸および腹式呼吸の各々の大きさと余裕度のほか、当該1呼吸に占める腹式呼吸の割合を示す腹式レベルを表示部160に表示するように制御する。図49に示す第7バーグラフBG7は、胸式呼吸および腹式呼吸の各々の大きさと余裕度とを表示するためのものである。一方、図49に示す第8バーグラフBG8は、被験者の腹式レベルを表示するためのものである。これらの詳細な内容については後述する。
呼吸レベル表示処理の具体的な説明に先立って、図50を参照しながら、CPU170が実行する呼吸深度抽出処理について説明する。図50は、CPU170が実行する呼吸深度抽出処理の具体的な内容を示すフローチャートである。後述するように、この呼吸深度抽出処理で抽出された被験者の呼吸深度(呼吸の深さ)は、呼吸レベル表示処理に用いられる。
図50に示すように、まずCPU170は、サンプリングタイミングに到達したか否かを判定し(ステップT501)、ステップT501の結果が肯定である場合は次のステップT502へ進む。ステップT502において、CPU170は、被験者の呼吸が吸気であるか否かを判定する。具体的には、CPU170は、当該サンプリングタイミングにおける第5相対値ΔZaの値が正の値である場合には吸気であると判定する一方、負の値である場合には呼気であると判定するという具合である。CPU170は、吸気であると判定した場合は、吸気判別フラッグF3を「1」に設定する一方、呼気であると判定した場合は、吸気判別フラッグF3を「0」に設定する。なお、初期状態においては、吸気判別フラッグF3は「1」に設定される(つまりはF3のデフォルト値は1に設定される)。
ステップT502の結果が肯定の場合、CPU170は、ピークホールド処理を実行する(ステップT503)。より具体的には、CPU170は、吸気での複数のサンプリングタイミングの各々における第5相対値ΔZaのうち最大の値をピーク値ΔZa(MAX)として保持する。一方、ステップT502の結果が否定の場合、CPU170は、ボトムホールド処理を実行する(ステップT504)。より具体的には、CPU170は、呼気での複数のサンプリングタイミングの各々における第5相対値ΔZaのうち最小の値をボトム値ΔZa(MIN)として保持する。
次に、CPU170は、当該サンプリングタイミングがゼロクロスタイミングであるか否かを判定する(ステップT505)。より具体的には、CPU170は、当該サンプリングタイミングにおけるクロスポイント判定フラッグF2が「+1」であるか否かを判定することで、当該サンプリングタイミングがゼロクロスタイミングであるか否かを判定するという具合である。ステップT505の結果が否定の場合、当該サンプリングタイミングにおける呼吸深度抽出処理は終了する。一方、ステップT505の結果が肯定の場合、CPU170は、当該サンプリングタイミングにおける第5生体電気インピーダンスZaの微分係数dZaが正極性(>0)であるか否かを判定する(ステップT506)。言い換えれば、CPU170は、当該サンプリングタイミングが、呼気から吸気へと変化するタイミングであるか否かを判定する。
ステップT506の結果が肯定の場合、CPU170は、当該サンプリングタイミングが、呼気から吸気へと変化するタイミングであると判断して、そのときホールドされているピーク値ΔZa(MAX)とボトム値ΔZa(MIN)との絶対値の和を、直前の1呼吸における呼吸深度ΔZap−p(両肺の換気能力を示す両肺呼吸レベル)として抽出する(ステップT507)。その後、CPU170は、吸気フラッグ設定処理を実行する(ステップT508)。より具体的には、CPU170は、吸気判別フラッグF3を「1」に設定する。そして、CPU170は、ピークホールド処理を初期化する(ステップT509)。より具体的には、CPU170は、ステップT503で保持していたピーク値ΔZa(MAX)を、「0」に設定(初期化)して、当該サンプリングタイミングにおける呼吸深度抽出処理を終了する。
一方、ステップT506の結果が否定の場合、CPU170は、当該サンプリングタイミングが、吸気から呼気へと変化するタイミングであると判断して、呼気フラッグ設定処理を実行する(ステップT510)。より具体的には、CPU170は、吸気判別フラッグF3を「0」に設定する。そして、CPU170は、ボトムホールド処理を初期化する(ステップT511)。より具体的には、CPU170は、ステップT504で保持していたボトム値ΔZa(MIN)を、「0」に設定(初期化)して、当該サンプリングタイミングにおける呼吸深度抽出処理を終了する。
次に、図51を参照しながら、CPU170が実行する呼吸レベル表示処理の具体的な内容を説明する。図51は、呼吸レベル表示処理の具体的な内容を示すフローチャートである。図51に示すように、CPU170は、直前の1呼吸における呼吸深度を正規化する(ステップT601)。ここで、「呼吸深度を正規化する」とは、前述の呼吸深度抽出処理で抽出された直前の1呼吸における呼吸深度の値を、被験者間における体格等の個人差の影響を取り除いた値に補正することを意味する。具体的には、ステップT601において、CPU170は、直前の1呼吸における呼吸深度ΔZap−pを、当該1呼吸における第6センタリング値Zb0(詳述すれば、当該1呼吸における複数のサンプリングタイミングの各々における第6センタリング値Zb0の平均値)で割った後に100を乗じて求めた値を、呼吸深度の正規化値%ΔZa(=(ΔZap−p/Zb0)×100)として採用する。
次に、CPU170は、ステップT601で求めた呼吸深度の正規化値%ΔZaの値に応じて、着色表示すべき第7バーグラフBG7の段階数(以下、「第1表示段階数」と呼ぶ)を決定する(ステップT602)。より具体的には、CPU170は、ステップT601で求めた呼吸深度の正規化値%ΔZaに対応する1回換気量の正規化値%ΔTVを求め、その求めた%ΔTVの値に応じて、第1表示段階数を決定する。ここで、「1回換気量」とは、被験者の1呼吸で肺に出入りする空気量を示すものであり、ΔTVと表記する。また、「1回換気量を正規化する」とは、スパイロなどで計測された1回換気量ΔTVの値(実測値)を、被験者間における体格等の個人差の影響を取り除いた値に補正することを意味する。本実施形態では、1回換気量ΔTVの正規化を行う際には、スパイロなどで計測された被験者の肺活量の値(実測値)VCを、標準肺活量を示す標準VCで割り算した形で表される係数%VC(=実測VC/標準VC)が用いられる。具体的には、計測された1回換気量ΔTVの値(実測値)を上述の係数%VCで割ることで、1回換気量の正規化値%ΔTV(=ΔTV/%VC)が求められる。なお、例えば男性の標準肺活量VCmale(ml)は、(27.63−0.112×年齢)×身長(cm)で表され、女性の標準肺活量VCfemale(ml)は、(21.78−0.101×年齢)×身長(cm)で表される。
図52は、男女合わせて20人で、各々の1回換気量ΔTVを3回ずつ(小程度の換気、中程度の換気、大程度の換気を各1回)測定したときの、1回換気量の正規化値%ΔTVと呼吸深度の正規化値%ΔZaとの関係を示す相関図である。図52に示すように、1回換気量の正規化値%ΔTVと呼吸深度の正規化値%ΔZaとは相関係数r=0.75という高い相関が得られ、以下の回帰式(4)が成立する。
%ΔZa=c0×%ΔTV ・・・(4)
c0:回帰係数。
CPU170は、上述の回帰式(4)にしたがって演算処理を実行することで、ステップT601で求めた呼吸深度の正規化値%ΔZaに対応する1回換気量の正規化値%ΔTVを求める。そして、CPU170は、その求めた1回換気量の正規化値%ΔTVに応じて、第1表示段階数を決定する。本実施形態では、第1表示段階数の最大値は、胸式5段階と腹式5段階とを合わせた「10」に設定されている(図49参照)。
図52に示すように、本実施形態では、1回換気量の正規化値%ΔTVの値が第1所定値α1以上である場合は、被験者の呼吸レベルは「最大」とみなされる。この場合、CPU170は、第1表示段階数を最大値である「10」に決定する。また、1回換気量の正規化値%ΔTVの値が第2所定値α2(<α1)以上であって、かつ第1所定値α1を下回る場合は、被験者の呼吸レベルは、「大程度」とみなされる(図52参照)。この場合、CPU170は、第1表示段階数を「8」に決定する。さらに、1回換気量の正規化値%ΔTVが第3所定値α3(<α2)以上であって、かつ第2所定値α2を下回る場合は、被験者の呼吸レベルは「中程度」とみなされる(図52参照)。この場合、CPU170は、第1表示段階数を「6」に決定する。また、1回換気量の正規化値%ΔTVの値が第4所定値α4(<α3)以上であって、かつ第3所定値α3を下回る場合は、被験者の呼吸レベルは「小程度」とみなされる(図52参照)。この場合、CPU170は、第1表示段階数を「4」に決定する。また、1回換気量の正規化値%ΔTVの値が第4所定値α4を下回る場合は、被験者の呼吸レベルは、安静時における必須レベル程度とみなされる(図52参照)。この場合、CPU170は、第1表示段階数を「2」に決定するという具合である。
再び図51に戻って説明を続ける。図51に示すように、ステップT602の段階数決定処理が終了すると、CPU170は、直前の1呼吸における腹式レベルを決定する(ステップT603)。具体的には、CPU170は、直前の1呼吸におけるΔRib/ΔAbの値(平均値)に応じて、腹式レベルの数値を決定する。腹式レベルの数値は0〜100までの値で表され、その値が0に近いほど腹式呼吸の程度は小さく(被験者の呼吸に占める腹式呼吸の割合は小さく)、100に近いほど腹式呼吸の程度は大きい(被験者の呼吸に占める腹式呼吸の割合は大きい)。
図51に示すように、ステップT603の後、CPU170は、ステップT602で決定した第1表示段階数を、腹式と胸式とに分割する段階数分割処理を実行する(ステップT604)。より具体的には、CPU170は、ステップT602で決定した第1表示段階数と、ステップT603で決定した腹式レベルとに基づいて、段階数分割処理を実行する。ここでは、全体の呼吸レベルを示す第1表示段階数が「6」である一方、腹式レベルは「70」である場合を想定して説明を続ける。腹式レベルが「70」であるとは、腹式呼吸と胸式呼吸との割合は、7:3であるとみなされるので、第1表示段階数「6」は、胸式で2段階、腹式で4段階に分割される。つまり、図49のように、胸式呼吸の大きさを示す第7バーグラフのBG7の表示段階数は「2」、腹式呼吸の大きさを示す第7バーグラフBG7の表示段階数は「4」になるように設定される。
図51に示すように、ステップT604の後、CPU170は、被験者の呼吸速度に応じたマージンレベルを決定する(ステップT605)。いま、直前の1呼吸が安静呼吸であって、当該1呼吸に要する時間長が4秒以上であった場合を想定する。本実施形態では、被験者の呼吸速度に応じた必須の呼吸レベルに対応する第7バーグラフBG7の段階数が予め定められており、安静呼吸時の呼吸速度に応じた必須の呼吸レベルに対応する第7バーグラフBG7の段階数は「2」に設定されている。CPU170は、その段階数「2」を、胸式と腹式に1段階ずつ割り振る。上述のステップT604で説明したように、ここでは、胸式呼吸の大きさを示す第7バーグラフBG2の表示段階数は「2」、腹式呼吸の大きさを示す第7バーグラフBG2の表示段階数は「4」となるように設定されているので、胸式呼吸については1段階分の余裕があり、腹式呼吸については3段階分の余裕があるという具合である。
この場合は、腹式呼吸の大きさを示す第7バーグラフBG7の表示段階数が「1」以上であれば、被験者の腹式呼吸の大きさは必須レベルを満たしていることを意味し、その表示段階数が「2」であれば、被験者の腹式呼吸の大きさは必須レベルを上回る「小程度」のレベルを満たしていることを意味し、その表示段階数が「3」であれば、さらに上の「中程度」のレベルを満たしていることを意味し、その表示段階数が「4」であれば、さらに上の「大程度」のレベルを満たしていることを意味し、その表示段階数が「5」であれば、被験者の腹式呼吸の大きさは「最大」レベルを満たしていることを意味するという具合である。前述したように、ここでは、腹式呼吸の大きさを示す第7バーグラフBG7の表示段階数数は「4」に設定されているので、被験者の腹式呼吸の大きさは「大程度」のレベルを満たしており、必須レベル(表示段階数「1」)に対して十分な余裕があることが分かる。胸式呼吸についても同様であり、ここでは、胸式呼吸の大きさを示す第7バーグラフBG7の表示段階数数は「2」に設定されているので、被験者の胸式呼吸の大きさは「小程度」のレベルを満たしており、必須レベル(表示段階数「1」)を上回っていることが分かる。
なお、被験者の呼吸速度が大きいほど、当該呼吸速度に応じた必須の呼吸レベルに対応する第7バーグラフBG7の段階数は増加するので、結果として、胸式呼吸および腹式呼吸の必須レベルに対応する段階数も増加する。例えば1呼吸に要する時間長が3秒以上であって、かつ4秒未満である場合は、必須の呼吸レベルに対応する第7バーグラフBG7の段階数は「4」に設定され、その段階数「4」は、胸式と腹式に2段階ずつ割り振られる。これに応じて、胸式呼吸および腹式呼吸の各々のマージンレベルが変化するという具合である。
ステップT605の後、CPU170は、被験者の胸式呼吸および腹式呼吸の各々の大きさと余裕度とを第7バーグラフBG7で表示する一方、被験者の腹式レベルを第8バーグラフBG8で表示する(ステップT606)。図49に示すように、CPU170は、着色表示すべき第7バーグラフBG7の段階数(胸式2段階、腹式4段階)のうち腹式呼吸および胸式呼吸の各々の必須レベルに対応する段階数と、マージン分に対応する段階数とを異なる色で表示するので、被験者は、自分の腹式呼吸および胸式呼吸の各々の大きさと余裕度とを容易に把握することができる。
また、図49に示すように、第8バーグラフBG8で表示される腹式レベルの段階数は「5」に設定され、上述のステップT603で求められた腹式レベルの数値に応じて、5つの段階のうちの何れかが選択的に着色表示される。具体的には、CPU170は、腹式レベルの数値が0〜20の場合は1段階目のみを着色表示するように制御し、腹式レベルの数値が21〜40の場合は2段階目のみを着色表示するように制御し、腹式レベルの数値が41〜60の場合は3段階目のみを着色表示するように制御し、腹式レベルの数値が61〜80の場合は4段階目のみを着色表示するように制御し、腹式レベルの数値が81〜100の場合は5段階目のみを着色表示するように制御する。前述したように、ここでは、腹式レベルは「70」である場合を想定しているので、図49に示すように、CPU170は、第8バーグラフBG8の4段階目のみを着色表示するように制御するという具合である。
以上に説明したように、本実施形態では、CPU170は、被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸における腹式呼吸および胸式呼吸の大きさと余裕度とを表示部160に表示するように制御するので、被験者は、自分の胸部呼吸筋および腹部呼吸筋の活用の強みと弱みとを認識できる。これにより、被験者に対して、自分の強みを自覚させつつも、自分の弱みを活性化させるための腹式呼吸等の呼吸筋トレーニングへのモチベーションを確保させることができる。また、本実施形態によれば、スパイロなどのように、被験者が最大の呼吸を行わなくとも、当該被験者の呼吸能力の余裕を把握できるので、被験者の安全を確保するという観点からも好ましいという利点がある。
<E:第5実施形態>
胸式呼吸と腹式呼吸の他に、腹を凹ませた状態を維持しながら呼息と吸息を行うドローイン呼吸がある。ドローイン呼吸は、普段の生活ではあまり使われることがない体幹部のインナーマッスル(例えば腹横筋や脊柱起立筋など)を効果的に鍛えることができる。インナーマッスルの強化は、呼吸機能を高めるだけでなく、背骨を支える筋肉が強化されて体幹部の筋肉が力を発揮し易くなることから、運動機能などの強化にもつながる。例えば、ドローイン呼吸は、運動機能の向上を目的としてアスリートのトレーニングに取り入れられている。また、理学療法やリハビリテーションの現場では、腰痛の改善や腰痛の予防対策としてドローイン呼吸が利用されている。また、ドローイン呼吸はダイエットにも効果がある。
第4実施形態で説明した生体測定装置1を応用すれば、被験者の呼吸が胸式呼吸なのか腹式呼吸なのかに加え、ドローイン呼吸なのかを判別することが可能になる。以下、ドローイン呼吸を判別する場合について説明する。なお、生体測定装置のハードウェア構成は基本的に第1実施形態で説明したものと同じであるので、第1実施形態と同一の符号を付し、説明を省略するものとする。
図53は、体幹上部の第5生体電気インピーダンスZaと体幹中部の第6生体電気インピーダンスZbの時間変化を示すグラフである。同図に示すようにドローイン呼吸の場合、吸気では第5生体電気インピーダンスZaおよび第6生体電気インピーダンスZbはともに増加方向に変化し、呼気では第5生体電気インピーダンスZaおよび第6生体電気インピーダンスZbはともに減少方向に変化する。この変化は胸式呼吸の場合と同じである。これはドローイン呼吸の場合、腹を凹ませた状態を維持しながら胸式呼吸によって呼息と吸息を行っているためである。但し、ドローイン呼吸の場合は、腹を凹ませるために腹部に力を入れているので、体幹中部の第6生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベルが胸式呼吸の場合よりも高くなる。
このようにドローイン呼吸の場合と胸式呼吸の場合では第6生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベルが異なるので、これを利用してドローイン呼吸を判別することが可能である。すなわち、第4実施形態で説明した呼吸解析処理(図38)を行った後、ΔRib/ΔAbの平均値が1.0を上回るため胸式呼吸であると判別した場合において、第6生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベル(第6センタリング値Zb0)が、胸式呼吸の場合における第6生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベルよりも所定値以上高い場合に、これをドローイン呼吸と判別すればよい。
但し、胸式呼吸の場合における第6生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベルは、被験者ごとに異なる。したがって、上述した方法でドローイン呼吸を判別するためには、胸式呼吸の場合における第6生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベルを事前に測定して第2記憶部130に記憶しておく必要がある。また、上述した所定値についても第1記憶部120に予め記憶しておく必要がある。
このため本実施形態に係る生体測定装置1(CPU170)は、例えば、被験者に対して胸式呼吸を行うよう指示するメッセージを報知し、被験者が胸式呼吸を行っている期間において取得した多数の第6センタリング値Zb0の平均値を算出し、これを胸式呼吸の場合における第6生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベルとして第2記憶部130に記憶する。以降、このようにして第2記憶部130に記憶された、胸式呼吸の場合における第6生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベルをZb1と表記する。一方、第1記憶部120に記憶しておく所定値は、予め多数の被験者から採取した、胸式呼吸の場合における第6生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベルと、ドローイン呼吸の場合における第6生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベルとの差分に基づいて、その値を設定することができる。以降、第1記憶部120に記憶されている所定値をΔZb1と表記する。
図54は、呼吸種別判別処理の処理内容を示すフローチャートである。
同図に示す処理は、第4実施形態で説明した呼吸解析処理を行った後に実行される。すなわち、本実施形態においてもCPU170は、図38に示した呼吸解析処理を行い、サンプリングタイミングごとに、第5生体電気インピーダンスZaの測定(ステップT20)と、第6生体電気インピーダンスZbの測定(ステップT30)と、スムージング処理(ステップT40)と、第5センタリング処理(ステップT50)と、第5相対値算出処理(ステップT60)と、第6相対値算出処理(ステップT70)と、ΔRib/ΔAb推定演算処理(ステップT80)を実行する。
この後、CPU170は、呼吸種別判別処理を開始し、まず、ΔRib/ΔAb推定演算処理(ステップT80)によって求められたΔRib/ΔAbの平均値([ΣΔRib/ΔAb]/Ni)が1.0以下であるか否かを判定する(ステップT701)。ステップT701の結果が肯定である場合、CPU170は、被験者の呼吸が腹式呼吸であると判別する(ステップT702)。
一方、ステップT701の結果が否定である場合、CPU170は、胸式呼吸の場合における第6生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベルZb1を第2記憶部130から読み出すとともに、所定値ΔZb1を第1記憶部120から読み出す(ステップT703)。なお、第1記憶部120に記憶されている所定値ΔZb1を標準値とし、この標準値を、事前に入力された身長、年齢、性別(図37のステップT1)や、事前に測定した体重(図37のステップT2)を用いた演算によって補正してもよい。
この後、CPU170は、第6相対値算出処理(ステップT70)において第6相対値ΔZbを算出する過程で生成された第6センタリング値Zb0が、胸式呼吸の場合における第6生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベルZb1と所定値ΔZb1との加算値以上であるか否かを判定する(ステップT704)。なお、ステップT704で使用する第6センタリング値Zb0は、例えば、直前の1呼吸における第6センタリング値Zb0の平均値や、直前の複数サンプリング期間における第6センタリング値Zb0の平均値などであってもよい。ステップT704の結果が肯定である場合、CPU170は、被験者の呼吸がドローイン呼吸であると判別する(ステップT705)。また、ステップT704の結果が否定である場合、CPU170は、被験者の呼吸が胸式呼吸であると判別する(ステップT706)。
以上説明したように本実施形態によれば、被験者の呼吸が腹式呼吸なのか胸式呼吸なのかドローイン呼吸なのかをリアルタイムで正確に判別することができる。なお、生体測定装置1は、胸式呼吸や腹式呼吸に加えてドローイン呼吸を判別するのではなく、ドローイン呼吸であるか否かのみを判別してもよい。
また、第2記憶部130に記憶しておくZb1(胸式呼吸の場合における第6生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベル)は、被験者が胸式呼吸を行っている期間において取得した複数の第6センタリング値Zb0の平均値に限らない。例えば、被験者が胸式呼吸を行っている期間中において任意のタイミングで取得した1個の第6センタリング値Zb0であってもよい。また、CPU170は、第2記憶部130から読み出したZb1に対し、所定値ΔZb1を加算するのではなく、1.0より大きい所定の係数(例えば1.035)を乗算して加算値(Zb1+ΔZb1)に相当する閾値を算出してもよい。この場合の係数も、所定値ΔZb1の場合と同様に、予め多数の被験者から採取した、胸式呼吸の場合における第6生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベルと、ドローイン呼吸の場合における第6生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベルとの差分に基づいて、その値を設定することができる。また、このようにして算出された閾値をZb1の代わりに第2記憶部130に記憶しておき、上述した呼吸種別判別処理のステップT704では、第6センタリング値Zb0が第2記憶部130から読み出した閾値以上であるか否かを判定してもよい。
また、第4実施形態で説明した呼吸深度抽出処理や呼吸レベル表示処理は、被験者の呼吸の種別によらず実行されるので、被験者がドローイン呼吸を行っている場合にも実行される。したがって、ドローイン呼吸の場合にも図49に示した第7バーグラフBG7や第8バーグラフBG8が表示される。よって、被験者は、第7バーグラフBG7のうち胸式呼吸の大きさを示すレベルメータを見ることで、自分が行っているドローイン呼吸の大きさを確認することができる。
なお、生体測定装置1は、以下に示す方法でドローイン呼吸の判別を行ってもよい。
[方法1]図53に示すように、ドローイン呼吸の場合、胸式呼吸や腹式呼吸の場合に比べ、体幹中部の第6生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベルのみが上方にシフトする。そこで、CPU170は、体幹上部の第5生体電気インピーダンスZaの振幅基準レベルを示す第5センタリング値Za0と、体幹中部の第6生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベルを示す第6センタリング値Zb0とを監視し、第6センタリング値Zb0のみが所定値(例えば0.5Ω)以上増加した場合に、ドローイン呼吸であると判別する。
[方法2]図53に示すように、ドローイン呼吸の場合、胸式呼吸や腹式呼吸の場合に比べ、第5生体電気インピーダンスZaの振幅値(最大値−最小値)と、第6生体電気インピーダンスZbの振幅値(最大値−最小値)がともに小さくなる。そこで、これらの振幅値からドローイン呼吸であるか否かを判別できるようにするため、振幅値について閾値を定めて第1記憶部120に記憶しておく。そして、CPU170は、第5生体電気インピーダンスZaの振幅値と、第6生体電気インピーダンスZbの振幅値とを監視し、両者の振幅値がともに閾値(例えば1.8Ω)以下となり、かつ、上述した[方法1]により第6センタリング値Zb0のみが所定値以上増加した場合に、ドローイン呼吸であると判別する。なお、第1記憶部120には、第5生体電気インピーダンスZa用と第6生体電気インピーダンスZb用の2つの閾値が記憶されていてもよいし、両者で共用する1つの閾値が記憶されていてもよい。
[方法3]ドローイン呼吸の場合、第5生体電気インピーダンスZaの測定波形と第6生体電気インピーダンスZbの測定波形は、胸式呼吸の場合と同様の特徴を示す。すなわち、吸気では第5生体電気インピーダンスZaおよび第6生体電気インピーダンスZbはともに増加方向に変化し、呼気では第5生体電気インピーダンスZaおよび第6生体電気インピーダンスZbはともに減少方向に変化する。そこで、CPU170は、第5生体電気インピーダンスZaの測定波形と、第6生体電気インピーダンスZbの測定波形とを監視し、両者の測定波形が胸式呼吸の場合と同様の特徴を示し、かつ、上述した[方法1]により第6センタリング値Zb0のみが所定値以上増加した場合に、ドローイン呼吸であると判別する。
<F:第6実施形態>
例えば、被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸における第5生体電気インピーダンスZaの波形と第6生体電気インピーダンスZbの波形とから得られるリサージュ図形を表示することで、現状の呼吸が、胸式呼吸および腹式呼吸のうちのどちらの依存性が高いのかを被験者に報知する態様とすることもできる。ここで、被験者の呼吸が胸式呼吸の場合、図10に示すように、吸気では第5生体電気インピーダンスZaおよび第6生体電気インピーダンスZbはともに増加方向に変化し、呼気では第5生体電気インピーダンスZaおよび第6生体電気インピーダンスZbはともに減少方向に変化する。したがって、この場合の1呼吸分のリサージュ図形は、例えば図55のようになる。すなわち、1呼吸に占める胸式呼吸の割合が極めて高い場合は、ほぼ直線状の軌跡を描くリサージュ図形が得られる。
一方、被験者の呼吸が腹式呼吸の場合、図9に示すように、吸気では第5生体電気インピーダンスZaおよび第6生体電気インピーダンスZbはともに増加方向に変化し、呼気では第5生体電気インピーダンスZaは減少方向に変化する一方、第6生体電気インピーダンスZbは増加方向に変化する。したがって、この場合のリサージュ図形は、例えば図56のようになる。すなわち、被験者の呼吸に腹式呼吸が含まれる場合は、例えば「ブーメラン」型など、屈曲した形状の軌跡を描くリサージュ図形が得られる。
この態様では、被験者の直前の1呼吸の様子を示すリサージュ図形を表示するようにすることで、被験者は、自分の呼吸が胸式呼吸なのか腹式呼吸なのかを容易に認識できる。そして、この態様では、上述の呼吸解析処理を行う必要が無いので、簡易な構成で、被験者の呼吸の種別を推定できるという効果を奏する。また、例えば被験者は、リサージュ図形の態様を直線状に近づけることを意識しながら呼吸することで、その呼吸を胸式呼吸に近付けることができる。つまり、リサージュ図形の表示は、呼吸法トレーニングのためのバイオフィードバック情報として活用できる。
ここでは、図55および図56に示すように、被験者の直前の1呼吸の様子を示すリサージュ図形を表示する態様を説明したが、これに限らず、例えば図57および図58に示すように、複数回の呼吸の各々のデータ(第5生体電気インピーダンスZa,第6生体電気インピーダンスZb)に基づくリサージュ図形を表示することもできる。被験者の呼吸のうち胸式呼吸の占める割合が高い場合(胸式呼吸の依存度が高い場合)は、例えば図57のようなリサージュ図形が得られる一方、被験者の呼吸に腹式呼吸が含まれる場合は、例えば図58のようなリサージュ図形が得られる。また、例えば被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸における第5相対値ΔZaの波形と第6相対値ΔZbの波形とから得られるリサージュ図形を表示してもよい。
以下に、リサージュ図形を表示する場合について詳述する。なお、生体測定装置のハードウェア構成は基本的に第1実施形態で説明したものと同じであるので、第1実施形態と同一の符号を付し、説明を省略するものとする。
<F−1:リサージュ図形の表示>
図59は、リサージュ図形表示処理の処理内容を示すフローチャートである。
同図に示すフローチャートのうち、ステップT801〜T804までの処理は、第4実施形態で説明した呼吸解析処理(図38)のステップT10〜T40までの処理と同じである。すなわち、本実施形態においてもCPU170は、サンプリングタイミングに到達すると(ステップT801:YES)、生体電気インピーダンス測定部200を制御して第5生体電気インピーダンスZaと第6生体電気インピーダンスZbを測定する(ステップT802,T803)。また、CPU170は、第5生体電気インピーダンスZaの測定値と第6生体電気インピーダンスZbの測定値に対し、スムージング処理を行う(ステップT804)。
この後、CPU170は、例えば、X軸を第6生体電気インピーダンスZbとし、Y軸を第5生体電気インピーダンスZaとするリサージュ図形の表示データを生成する(ステップT805)。ここで、第2記憶部130にはリサージュ図形描画領域が設けられている。このリサージュ図形描画領域は、表示部160に表示するリサージュ図形の表示データを一時的に記憶しておく記憶領域である。リサージュ図形の表示データを生成する場合、CPU170は、リサージュ図形描画領域のうち、第6生体電気インピーダンスZbの測定値(X座標値)と第5生体電気インピーダンスZaの測定値(Y座標値)によって定まる位置にドットをプロットし、リサージュ図形の軌跡を更新する。また、CPU170は、リサージュ図形描画領域からリサージュ図形の表示データを読み出して表示部160に出力し、リサージュ図形を表示部160に表示する(ステップT806)。なお、同図に示す処理はサンプリングタイミングごとに行われるので、ステップT805では、サンプリングタイミングごとにリサージュ図形の軌跡を更新することになる。また、リサージュ図形の表示もサンプリングタイミングごとに更新される。
したがって、表示部160には、被験者が呼吸を行っている場合、リアルタイムでリサージュ図形が表示される。例えば、胸式呼吸の占める割合が極めて高い場合、図55や図57に示すリサージュ図形が表示される。また、被験者の呼吸に腹式呼吸が含まれる場合、図56や図58に示すリサージュ図形が表示される。また、被験者の呼吸が胸式から腹式に徐々に変化する場合、例えば図60に示すように、リサージュ図形の軌跡は、右上がりの直線状から、徐々に下側の部分が右側に折れ曲がりながら伸び、屈曲した形状に変化する。
図55や図57に示したように、胸式呼吸の占める割合が極めて高い場合、リサージュ図形の軌跡は右上がりの直線状になる。また、胸式呼吸が浅ければリサージュ図形の軌跡は小さくなり、胸式呼吸が深ければリサージュ図形の軌跡は大きくなる。
一方、図56や図58に示したように、被験者の呼吸に腹式呼吸が含まれる場合、リサージュ図形の軌跡は屈曲した形状になる。なお、図56に示すリサージュ図形は、1呼吸に占める胸式呼吸と腹式呼吸の割合が50%ずつになる場合のものである。この場合、リサージュ図形の軌跡はブーメラン状(“く”の字状)になり、軌跡の形状が上下でほぼ対称になる。但し、腹式呼吸の占める割合が胸式呼吸よりも低ければ、リサージュ図形の軌跡は、胸式呼吸の場合の軌跡に相当する右上がりの直線部分の占める割合が大きくなり、そこから屈曲した部分(図56では右下がりの直線部分)の占める割合が小さくなる。逆に、腹式呼吸の占める割合が胸式呼吸よりも高ければ、リサージュ図形の軌跡は、胸式呼吸の場合の軌跡に相当する右上がりの直線部分の占める割合が小さくなり、そこから屈曲した部分の占める割合が大きくなる。このように被験者の呼吸に腹式呼吸が含まれる場合、リサージュ図形の軌跡は、胸式呼吸と腹式呼吸の割合に応じて屈曲形状が様々に変化する。
また、理論上、腹式呼吸の割合が100%になる場合、リサージュ図形の軌跡は、胸式呼吸の場合の軌跡とは反対方向に傾斜した直線状(図56の場合、右下がりの直線状)になる。しかしながら、例えば息を止めて胸式呼吸を全く行わないようにした状態で腹部を凹ませたり膨らませたりした場合であっても、横隔膜の上下に伴って肺が収縮したり拡張したりするため、疾患などで横隔膜が全く機能しない場合を除き、被験者が呼吸を行う場合には胸式呼吸が必ず含まれることになる。したがって、実際には、腹式呼吸の占める割合がどんなに高い場合であっても、リサージュ図形の軌跡には、胸式呼吸の場合の軌跡に相当する右上がりの直線部分が必ず含まれ、屈曲した形状となる。また、図56に示すように、胸式呼吸の場合の軌跡に相当する右上がりの直線部分(近似直線LN1)に対し、そこから折れ曲がった部分(近似直線LN2)がどれだけ屈曲しているのかを示す屈曲角度AGは、腹式呼吸が浅ければ小さくなり、腹式呼吸が深ければ大きくなる。また、腹式呼吸の場合も、呼吸が浅ければリサージュ図形の軌跡は小さくなり、呼吸が深ければリサージュ図形の軌跡は大きくなる。
このように胸式呼吸の場合と腹式呼吸の場合ではリサージュ図形の軌跡の形状が異なる。また、胸式呼吸や腹式呼吸の大きさ(深さ)によってリサージュ図形の軌跡の大きさや形状が変化する。したがって、被験者はリサージュ図形を見ることで、現在の自分の呼吸が胸式呼吸なのか腹式呼吸なのか、あるいは現在の自分の呼吸が胸式呼吸と腹式呼吸のうちどちらの占める割合が高いのかを把握することができる。また、胸式呼吸や腹式呼吸の大きさについてもリサージュ図形から把握することができる。
また、被験者は、胸式呼吸の訓練を行う場合、リサージュ図形の軌跡が右上がりの直線状になり、そのサイズが大きくなるように意識して呼吸を行えばよい。また、腹式呼吸の訓練を行う場合には、リサージュ図形の軌跡が屈曲した形状になり、そのサイズや屈曲角度AGが大きくなるように意識して呼吸を行えばよい。このようにリサージュ図形を見ながら呼吸の訓練を行うことができると、胸式呼吸や腹式呼吸が正しくできているか否かやその大きさを随時確認しながら訓練を進めることができる。
また、被験者の呼吸がドローイン呼吸の場合、第5実施形態において図53を用いて説明したように、吸気では第5生体電気インピーダンスZaおよび第6生体電気インピーダンスZbはともに増加方向に変化し、呼気では第5生体電気インピーダンスZaおよび第6生体電気インピーダンスZbはともに減少方向に変化する。この変化は胸式呼吸の場合と同じである。これはドローイン呼吸の場合、腹を凹ませた状態を維持しながら胸式呼吸によって呼息と吸息を行っているためである。但し、ドローイン呼吸の場合は、腹を凹ませるために腹部に力を入れているので、図53に示したように第6生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベルが胸式呼吸の場合よりも高くなる。このためドローイン呼吸の場合と胸式呼吸の場合のリサージュ図形を比較すると、図68に示すように、両者の軌跡はともに右上がりの直線状になるが、第6生体電気インピーダンスZbを割り当てた軸方向(図68ではX軸方向)に軌跡の位置がずれる。
したがって、被験者はリサージュ図形を見ることで、現在の自分の呼吸がドローイン呼吸であるか否かも把握することができる。また、ドローイン呼吸の場合も、呼吸が浅ければリサージュ図形の軌跡は小さくなり、呼吸が深ければリサージュ図形の軌跡は大きくなる。したがって、ドローイン呼吸の大きさについてもリサージュ図形から把握することができる。また、ドローイン呼吸の場合も、リサージュ図形を見ながら訓練を行うことで、ドローイン呼吸が正しくできているか否かやその大きさを随時確認しながら訓練を進めることができる。
以上のようにリサージュ図形を表示することができると、被験者は呼吸を訓練しながら、現在の自分の呼吸の種別やその大きさ、さらには胸式呼吸や腹式呼吸やドローイン呼吸が正しくできているか否かを把握することができる。また、呼吸の種別やその大きさ、あるいは胸式呼吸や腹式呼吸やドローイン呼吸が正しくできているか否かを、生体電気インピーダンスの測定値に基づいて客観的に把握することができる。したがって、呼吸を効率よく訓練することが可能になる。
また、呼吸を効率よく訓練することができると、呼吸筋(例えば、腹横筋、横隔膜、内肋間筋、外肋間筋、胸鎖乳突筋、前斜角筋、中斜角筋、後斜角筋、腹直筋、内腹斜筋、外腹斜筋など)を効果的に鍛えることができる。特に、呼吸筋に含まれる腹横筋は、呼吸だけでなく運動機能にも大きな影響を及ぼす体幹部の筋肉である。また、ドローイン呼吸は、呼吸筋だけでなく、例えば脊柱起立筋など、体幹部のインナーマッスルを強化することができる。したがって、呼吸の訓練は、呼吸機能を高めるだけでなく、運動機能の強化や、腰痛の改善/予防、ダイエットなどにも効果がある。また、例えば、深呼吸(深い腹式呼吸)を行ったり、呼息を吸息よりも長くしたりすることで、副交感神経の働きを高めてリラックスした状態に導くことができるなど、呼吸の訓練は心身の健康状態をよくする効果もある。
また、生体測定装置1は、第5生体電気インピーダンスZaと第6生体電気インピーダンスZbを測定して両者の経時的変化を示すリサージュ図形を表示するだけでよく、第4実施形態で説明した呼吸解析処理(図38)のうち、第5センタリング処理(ステップT50)、第5相対値算出処理(ステップT60)、第6相対値算出処理(ステップT70)、ΔRib/ΔAb推定演算処理(ステップT80)を行う必要がないので、生体測定装置1の制御構成を簡素化することもできる。
なお、呼吸の訓練には、例えば、呼吸器疾患の患者が低下した呼吸機能を回復する目的で行うリハビリや、アスリートが運動機能を強化する目的で行うトレーニング、健常者が呼吸機能や心身の健康状態を高める目的で行うトレーニング、健常者が、喫煙、生活習慣病、運動不足、加齢などで低下した呼吸機能を改善する目的で行うトレーニングなどが含まれる。
また、図55〜図58および図60には、X軸を第6生体電気インピーダンスZbとし、Y軸を第5生体電気インピーダンスZaとするリサージュ図形を例示したが、リサージュ図形はX軸とY軸を入れ替えたものであってもよい。例えば、図61は、X軸を第5生体電気インピーダンスZaとし、Y軸を第6生体電気インピーダンスZbとするリサージュ図形(腹式呼吸の場合)であるが、X軸とY軸を入れ替えてもリサージュ図形の軌跡は屈曲した形状になる。なお、このようにX軸とY軸を入れ替えたリサージュ図形において、被験者の呼吸が胸式から腹式に徐々に変化する場合、例えば図62に示すように、リサージュ図形の軌跡は、右上がりの直線状から、徐々に下側の部分が上側に折れ曲がりながら伸び、屈曲した形状に変化する。また、リサージュ図形は、図73に示すようにX軸とY軸をそれぞれ45度傾けたものであってもよい。要は、互いに直交する2軸のうち、一方の軸を第5生体電気インピーダンスZaとし、他方の軸を第6生体電気インピーダンスZbとするリサージュ図形であればよい。
<F−2:右肺用のリサージュ図形と左肺用のリサージュ図形の表示>
左右の肺の換気能力の違いを把握できるようにするため、右肺用のリサージュ図形と左肺用のリサージュ図形を表示してもよい。ここで、右肺用のリサージュ図形を生成するためには、体幹上部右側の第1生体電気インピーダンスZaRと、体幹中部右側の第3生体電気インピーダンスZbRを測定する必要がある。また、左肺用のリサージュ図形を生成するためには、体幹上部左側の第2生体電気インピーダンスZaLと、体幹中部左側の第4生体電気インピーダンスZbLを測定する必要がある。つまり、右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形を表示するためには、第1生体電気インピーダンスZaRと、第2生体電気インピーダンスZaLと、第3生体電気インピーダンスZbRと、第4生体電気インピーダンスZbLの4つを測定する必要がある。
このため右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形を表示する場合、CPU170は、リサージュ図形表示処理(図59)のステップT802,T803において、電流電極X1〜X4や電圧電極Y1〜Y4の選択を適宜切り換えながら、第1生体電気インピーダンスZaRと、第2生体電気インピーダンスZaLと、第3生体電気インピーダンスZbRと、第4生体電気インピーダンスZbLを測定する。
次に、CPU170は、ステップT804において、第1生体電気インピーダンスZaRの測定値と、第2生体電気インピーダンスZaLの測定値と、第3生体電気インピーダンスZbRの測定値と、第4生体電気インピーダンスZbLの測定値に対し、スムージング処理を行う。また、CPU170は、ステップT805において、例えば、X軸を第3生体電気インピーダンスZbRとし、Y軸を第1生体電気インピーダンスZaRとする右肺用のリサージュ図形と、X軸を第4生体電気インピーダンスZbLとし、Y軸を第2生体電気インピーダンスZaLとする左肺用のリサージュ図形とについて表示データを生成する。また、CPU170は、ステップT806において、右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形の表示データを表示部160に出力する。
この場合、右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形を表示することができるので、呼吸の種別やその大きさなどを左右の肺ごとに把握することができる。また、2つのリサージュ図形を見比べることで左右の肺の換気能力の違いを容易に把握することができる。また、右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形を表示することで、左右の肺ごとに呼吸の訓練を行うことが可能になる。健常者の場合、左右の肺で換気能力に差がでることはほとんどないが、例えば、片肺に疾患がある者は、左右の肺で換気能力が大きく異なる。また、過去に肺疾患を経験した者も、左右の肺で換気能力に差がでることがある。例えば、右肺に比べ左肺の換気能力が低い場合など、左肺の換気能力を高めたい場合は、左腕を右肩の後ろに回し、右手で左肘を後ろに押すようにして左肺に負荷を与え、この状態を維持しながら呼吸を行うことで、左肺の換気能力を集中的に鍛えることができる。
ところで、右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形を並べて表示してもよいが、左右の肺の換気能力の違いを把握し易くするためには、図63に示すように両者を重ねて表示するのがよい。この場合、CPU170は、リサージュ図形描画領域に右肺用のリサージュ図形と左肺用のリサージュ図形を重ねて描画すればよい。また、右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形を重ねて表示する場合には、両者を容易に見分けられるようにするため、右肺用のリサージュ図形の軌跡と、左肺用のリサージュ図形の軌跡との表示態様を変えるのがよい。例えば、CPU170は、右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形の表示データを生成する場合に、右肺用のリサージュ図形については軌跡の色を青にし、左肺用のリサージュ図形については軌跡の色を赤にすることができる。また、CPU170は、軌跡の色を変えることの他に、例えば、軌跡を示す線の太さや線種(例えば実線と破線など)を変えることができる。なお、右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形を並べて表示する場合に、両者の軌跡の表示態様を変えてもよい。
また、図64に示すように、右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形の差異を強調表示してもよい。この場合、CPU170は、例えば、サンプリングタイミングごとに、第3生体電気インピーダンスZbRの測定値(X座標値)と第1生体電気インピーダンスZaRの測定値(Y座標値)によって定まる右肺用のリサージュ図形上の座標(XR,YR)と、第4生体電気インピーダンスZbLの測定値(X座標値)と第2生体電気インピーダンスZaLの測定値(Y座標値)によって定まる左肺用のリサージュ図形上の座標(XL,YL)とを比較する。そして、CPU170は、両者が異なる場合に、座標(XR,YR)と座標(XL,YL)を結ぶバー(直線)の表示データを生成する。このように右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形の差異を強調して表示することができると、左右の肺の換気能力の違いを把握し易くなる。
なお、CPU170は、バーの色を呼気相と吸気相で変えてもよい。図24に示した第1生体電気インピーダンスZaRの測定波形において、第1センタリング値ZaR0よりも上側の部分は吸気相、第1センタリング値ZaR0よりも下側の部分は呼気相になる。したがって、例えば、直前の1呼吸における第1センタリング値ZaR0の平均値が図64において図中二点差線で示す直線の部分であった場合、この直線の上下でバーの色を変えればよい。但し、このように呼気相と吸気相でバーの色を変えるためには、第1生体電気インピーダンスZaRについて第1実施形態で説明した第1センタリング処理を行う必要がある。あるいは第1生体電気インピーダンスZaRの代わりに第2生体電気インピーダンスZaLについて、第1実施形態で説明した第2センタリング処理を行う必要がある。
また、CPU170は、同じサンプリングタイミングにおける座標(XR,YR)と座標(XL,YL)を比較し、一方のX座標値から他方のX座標値を減算した解が正か負かでバーの色を変えたり、一方のY座標値から他方のY座標値を減算した解が正か負かでバーの色を変えたりしてもよい。また、CPU170は、同じサンプリングタイミングにおける座標(XR,YR)と座標(XL,YL)を比較し、両座標間の距離に応じてバーの色のトーンを変えてもよい。例えば、両座標間の距離が大きければ色を濃くし、両座標間の距離が小さければ色を薄くすることができる。また、CPU170は、バーを表示する代わりに、バーを表示しているエリアを淡い色で塗りつぶしてもよい。
また、CPU170は、右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形の差分面積(図64においてバーが表示されているエリア)を求め、差分面積の大きさから左右の肺で換気能力がどの程度違うのかを例えば5段階にランク分けして被験者に報知してもよい。この場合、差分面積の代わりにバー(差分線)の総和を用いてもよい。また、CPU170は、図65に示すように、サンプリングタイミングごとに座標(XR,YR)と座標(XL,YL)の中間座標を算出してこの位置にドットをプロットし、右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形の平均値を表示するようにしてもよい。また、CPU170は、右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形を並べて表示する場合に、例えば、右肺用のリサージュ図形の軌跡のうち左肺用のリサージュ図形の軌跡と異なる部分をより太い線で強調表示する一方、左肺用のリサージュ図形の軌跡のうち右肺用のリサージュ図形の軌跡と異なる部分をより太い線で強調表示してもよい。
なお、右肺用のリサージュ図形や左肺用のリサージュ図形についても、X軸とY軸を入れ替えることなどが可能であり、互いに直交する2軸のうち、一方の軸を第1生体電気インピーダンスZaR(または第2生体電気インピーダンスZaL)、他方の軸を第3生体電気インピーダンスZbR(または第4生体電気インピーダンスZbL)とするリサージュ図形であればよい。また、図63〜図65には腹式呼吸の場合のリサージュ図形を示したが、胸式呼吸やドローイン呼吸の場合のリサージュ図形であってもよい。また、右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形のうち、いずれか一方のみを表示するようにしてもよい。例えば、被験者は、右肺について呼吸の訓練を行う場合、入力部150を操作して右肺用のリサージュ図形だけを表示するよう指示することができる。この場合、CPU170は、リサージュ図形表示処理において、第1生体電気インピーダンスZaRと第3生体電気インピーダンスZbRを測定し、右肺用のリサージュ図形のみを生成して表示部160に表示する。
<F−3:表示位置のセンタリング>
第4実施形態で説明した第5センタリング値Za0や第6センタリング値Zb0を使用してリサージュ図形の表示位置をセンタリングすることができる。以下、X軸を第6生体電気インピーダンスZbとし、Y軸を第5生体電気インピーダンスZaとするリサージュ図形の場合を例に説明を行う。
まず、CPU170は、図59に示したリサージュ図形表示処理においてスムージング処理(ステップT804)を終えた後、第4実施形態で説明した呼吸解析処理(図38)のステップT50〜ステップT70までの処理を行い、第5センタリング値Za0と第6センタリング値Zb0を抽出する。なお、図44からも明らかとなるように、第5センタリング値Za0は、第5生体電気インピーダンスZaの測定波形の振幅基準レベルを示し、第6センタリング値Zb0は、第6生体電気インピーダンスZbの測定波形の振幅基準レベルを示す。
また、CPU170は、リサージュ図形表示処理のステップT805においてリサージュ図形の表示データを生成する場合に、図66に示すように、第5センタリング値Za0と第6センタリング値Zb0によって定まるリサージュ図形上の座標C(Zb0,Za0)が、表示部160においてリサージュ図形を表示するリサージュ図形表示領域160Aの中心に位置するように、リサージュ図形描画領域に描画されているリサージュ図形の作図位置を修正する。このようにすればリサージュ図形表示領域160Aの中央にリサージュ図形を表示することができるので、リサージュ図形を見易くすることができる。
なお、第5センタリング値Za0や第6センタリング値Zb0は、移動平均処理を行って得られる値であるので、サンプリングタイミングごとに表示位置のセンタリングを行っても、リサージュ図形の表示位置が短い時間間隔で急激に変化するといった問題は起こらない。但し、サンプリングタイミングごとにリサージュ図形の表示位置をセンタリングすると処理負荷が増大する。したがって、例えば、1呼吸ごとに、直前の1呼吸における第5センタリング値Za0の平均値と第6センタリング値Zb0の平均値を使用して、リサージュ図形の表示位置をセンタリングしてもよい。また、予め定められた測定区間(例えば20秒)ごとに、直前の測定区間における第5センタリング値Za0の平均値と第6センタリング値Zb0の平均値を使用して、リサージュ図形の表示位置をセンタリングしてもよい。このようにリサージュ図形の表示位置をセンタリングするタイミングは、任意に定めることができる。
また、X軸の表示レンジとY軸の表示レンジを調整することでリサージュ図形の表示位置をセンタリングすることもできる。この場合、CPU170は、例えば1呼吸ごとに、第5生体電気インピーダンスZaの測定値の最大値と最小値を検出し、両者を第1振幅値(最大値,最小値)として取得する。また、CPU170は、第6生体電気インピーダンスZbの測定値についても、1呼吸ごとに最大値と最小値を検出し、両者を第2振幅値(最大値,最小値)として取得する。この後、CPU170は、第2振幅値を用いてX軸の表示レンジを調整する一方、第1振幅値を用いてY軸の表示レンジを調整する。
例えば、CPU170は、リサージュ図形表示領域160AのX軸方向の幅を10としたとき、第2振幅値の最大値と最小値の差分が8〜9程度の大きさとなり、かつ第2振幅値の最大値と最小値がともにリサージュ図形表示領域160A内に表示されるように、リサージュ図形描画領域に描画されているリサージュ図形のX軸方向の大きさや位置を調整する。同様に、CPU170は、リサージュ図形表示領域160AのY軸方向の幅を10としたとき、第1振幅値の最大値と最小値の差分が8〜9程度の大きさとなり、かつ第1振幅値の最大値と最小値がともにリサージュ図形表示領域160A内に表示されるように、リサージュ図形描画領域に描画されているリサージュ図形のY軸方向の大きさや位置を調整する。
このようにすれば、例えば図67に示すように、リサージュ図形表示領域160Aに対して丁度よい大きさでリサージュ図形を表示することができる。また、リサージュ図形表示領域160Aの中央にリサージュ図形を表示することもできる。このためリサージュ図形を見易くすることができる。なお、2軸の表示レンジを調整するタイミングについても任意に定めることができる。但し、少なくとも1呼吸分の軌跡の全体がリサージュ図形表示領域160Aに収まることが望ましいので、CPU170は、1呼吸分以上の測定波形から第1振幅値と第2振幅値を取得するのがよい。
ところで、ドローイン呼吸の場合と胸式呼吸の場合のリサージュ図形を比較すると、図68に示すように、両者の軌跡はともに右上がりの直線状になるが、第6生体電気インピーダンスZbを割り当てたX軸方向に軌跡の位置がずれる。ここで、センタリングを頻繁に行うと、リサージュ図形が常にリサージュ図形表示領域160Aの中央に表示されてしまうため、リサージュ図形からドローイン呼吸と胸式呼吸を見分けることができなくなってしまう。これを防ぐためには、X軸方向についてのセンタリングをあまり行わないようにすればよい。
つまり、例えば、第5センタリング値Za0と第6センタリング値Zb0を使用してリサージュ図形の表示位置をセンタリングする場合であれば、第5センタリング値Za0に基づいてリサージュ図形のY軸方向のセンタリングを行う処理を第1センタリング処理とし、第6センタリング値Zb0に基づいてリサージュ図形のX軸方向のセンタリングを行う処理を第2センタリング処理としたとき、CPU170は、第2センタリング処理を行う頻度を、第1センタリング処理を行う頻度よりも少なくすればよい。また、第1振幅値と第2振幅値を使用して表示位置をリサージュ図形のセンタリングする場合であれば、第1振幅値を用いてY軸の表示レンジを調整する処理を第1レンジ調整処理とし、第2振幅値を用いてX軸の表示レンジを調整する処理を第2レンジ調整処理としたとき、CPU170は、第2レンジ調整処理を行う頻度を、第1レンジ調整処理を行う頻度よりも少なくすればよい。
この場合、例えば、第1センタリング処理(または第1レンジ調整処理)は1呼吸ごとに行う一方、第2センタリング処理(または第2レンジ調整処理)は測定開始時などに1回だけ行って後は行わないようにすることができる。また、第1センタリング処理(または第1レンジ調整処理)は1呼吸ごとに行う一方、第2センタリング処理(または第2レンジ調整処理)は30呼吸ごとに行うようにしてもよい。また、第1センタリング処理(または第1レンジ調整処理)は8秒ごとに行う一方、第2センタリング処理(または第2レンジ調整処理)は5分ごとに行うようにしてもよい。
このように第6生体電気インピーダンスZbを割り当てたX軸方向についてのセンタリングをあまり行わないようにすれば、リサージュ図形の軌跡の形状が同じであっても、ドローイン呼吸の場合と胸式呼吸の場合では軌跡の表示位置がX軸方向にシフトすることになる。したがって、リサージュ図形からドローイン呼吸と胸式呼吸を見分けることができるようになる。また、第2センタリング処理や第2レンジ調整処理を行う頻度を少なくした分だけ生体測定装置1の消費電力を低減することができる。また、頻度が少ないとはいえ、第2センタリング処理や第2レンジ調整処理を行っているので、リサージュ図形表示領域160Aの中央にリサージュ図形を表示したり、リサージュ図形表示領域160Aに対して丁度よい大きさでリサージュ図形を表示したりすることができる。
なお、体幹中部の第6生体電気インピーダンスZbは、体幹上部の第5生体電気インピーダンスZaに比べ、腕などの四肢の動きによるアーティファクトの影響を受けにくく、測定値の変動範囲が比較的安定している。このため第6生体電気インピーダンスZbを割り当てたX軸方向についてのセンタリングをそれほど頻繁に行わなくても、リサージュ図形がリサージュ図形表示領域160A内に収まらない、などといった問題はほとんど起こらない。
また、X軸を第5生体電気インピーダンスZaとし、Y軸を第6生体電気インピーダンスZbとするリサージュ図形の場合であれば、Y軸方向についての表示位置のセンタリングをあまり行わないようにすればよい。要は、互いに直交する2軸のうち、第6生体電気インピーダンスZbを割り当てた軸方向についてのセンタリングの頻度を、第5生体電気インピーダンスZaを割り当てた軸方向についてのセンタリングの頻度よりも少なくすればよい。また、図66や図67には腹式呼吸の場合のリサージュ図形を示したが、胸式呼吸やドローイン呼吸の場合のリサージュ図形であってもよい。
また、体幹上部の第5生体電気インピーダンスZaは、体幹中部の第6生体電気インピーダンスZbに比べ、その変動範囲が比較的大きいが、これは腕などの四肢の動きによるアーティファクトの影響が大きいためであり、これを無視してセンタリングの頻度を少なくしてもさほど問題にはならない。そこで、第6生体電気インピーダンスZbを割り当てた軸方向についてのセンタリングを行う頻度(例えば30呼吸ごとや5分ごと)で、第5生体電気インピーダンスZaを割り当てた軸方向についてのセンタリングを行うようにしてもよい。つまり、第6生体電気インピーダンスZbを割り当てた軸方向と、第5生体電気インピーダンスZaを割り当てた軸方向とでセンタリングを行う頻度を同じにし、センタリングを行う時間間隔を30呼吸ごとや5分ごとなどに広げてもよい。
<F−4:軌跡表示処理>
図57や図58に示したように複数回の呼吸の様子を連続して示すリサージュ図形の場合、軌跡の表示態様が同じであると最新の1呼吸分の軌跡が把握しづらい。そこで、最新の1呼吸とそれ以外の過去の呼吸とでリサージュ図形の軌跡の表示態様を変えてもよい。
例えば、CPU170は、リサージュ図形の表示データを生成する場合に、図69に示すように、最新の1呼吸の軌跡の色を濃くし、それ以外の過去の呼吸の軌跡の色を薄くすることができる。また、CPU170は、最新の1呼吸の軌跡を実線にし、それ以外の過去の呼吸の軌跡を点線にしてもよい。また、CPU170は、最新の1呼吸とそれ以外の過去の呼吸とで軌跡の色を変えてもよい。例えば、CPU170は、第5生体電気インピーダンスZaや第6生体電気インピーダンスZbの測定波形に基づいて新たな1呼吸が始まったか否かを判定し、新たな1呼吸が始まると、新たに始まった呼吸についての軌跡の色を赤にし、前回の呼吸の軌跡の色を赤から青に変更する。
なお、CPU170は、経過時間に応じてリサージュ図形の軌跡の表示態様を変えてもよい。例えば、経過時間が増えるほど軌跡の色が薄くなるようにすれば、新しい軌跡ほど色が濃いので、最新の1呼吸分の軌跡など、新しい軌跡を容易に把握することができる。また、リサージュ図形は、図69に示したものに限らず、例えば、X軸とY軸を入れ替えたものや、直交した状態を保ったままX軸とY軸を任意の角度だけ回転させたものであってもよい。また、図69には腹式呼吸の場合のリサージュ図形を示したが、胸式呼吸やドローイン呼吸の場合のリサージュ図形であってもよい。
<F−5:アシスト表示>
図70に示すように、被験者の呼吸の様子を示すリサージュ図形MLに対し、目標とする呼吸の様子を示すリサージュ図形TLを重ねて表示してもよい。以下、この章では、被験者の呼吸の様子を示すリサージュ図形を実測リサージュ図形MLと表記し、目標とする呼吸の様子を示すリサージュ図形を目標リサージュ図形TLと表記する。
目標リサージュ図形TLは、例えば、被験者の直前の1呼吸の様子を示す実測リサージュ図形MLなど、被験者の過去の実測リサージュ図形MLを加工して生成することができる。例えば、被験者が胸式呼吸やドローイン呼吸の訓練を行っている場合、CPU170は、直前の1呼吸の様子を示す実測リサージュ図形ML(右上がりの直線状の軌跡)の大きさを1.1倍など所定の倍率で拡大し、これを目標リサージュ図形TLの表示データとすることができる。また、被験者が腹式呼吸の訓練を行っている場合、CPU170は、直前の1呼吸の様子を示す実測リサージュ図形ML(屈曲した形状の軌跡)の大きさを所定の倍率で拡大したり、屈曲角度AGの大きさを調整したりして、目標リサージュ図形TLの表示データを生成することができる。
また、CPU170は、目標リサージュ図形TLをリサージュ図形表示領域160Aに表示する一方、第5生体電気インピーダンスZaの測定値と第6生体電気インピーダンスZbの測定値に基づいて被験者の現在の呼吸の様子を示す実測リサージュ図形MLの表示データを生成し、これを目標リサージュ図形TLと重ねてリサージュ図形表示領域160Aに表示する。このようにすれば、被験者は、現在の自分の呼吸の様子を示す実測リサージュ図形MLと、目標とする呼吸の様子を示す目標リサージュ図形TLとを見比べながら、呼吸の訓練を行うことができる。また、被験者は、実測リサージュ図形MLの軌跡が目標リサージュ図形TLの軌跡と一致するように意識して呼吸を行うことで、目標とする呼吸を体得することができる。
また、CPU170は、過去の実測リサージュ図形MLを加工して目標リサージュ図形TLを生成するのではなく、被験者に行わせたい呼吸の種別(胸式呼吸、腹式呼吸、ドローイン呼吸など)やその大きさに応じた目標リサージュ図形TLを生成することもできる。例えば、呼吸を訓練するための訓練メニューとして、小程度の大きさの胸式呼吸を1回行った後、中程度の大きさの腹式呼吸を1回行うことが定められている場合、CPU170は、小程度の大きさの胸式呼吸に対応する目標リサージュ図形TLを生成してこれを表示し、被験者が最初の1呼吸を終えて次の1呼吸を行う前に、中程度の大きさの腹式呼吸に対応する目標リサージュ図形TLを生成してこれを表示する。なお、目標リサージュ図形TLを表示するタイミングを制御すれば、被験者の呼吸のリズムを指導することもできる。このように目標リサージュ図形TLを用いて被験者の呼吸を指導するアシスト表示を行えば、被験者に対し、呼吸の種別やその大きさ、呼吸のリズムなどを効果的に指導することができる。
なお、CPU170は、実測リサージュ図形MLと目標リサージュ図形TLとで軌跡の表示態様(例えば色や線種など)を変え、両者を容易に見分けられるようにしてもよい。また、CPU170は、図71に示すように、実測リサージュ図形MLの軌跡と目標リサージュ図形TLの軌跡とで相違する部分にバーを表示し、両者の差異を強調表示してもよい。また、CPU170は、実測リサージュ図形MLと目標リサージュ図形TLの差分面積(図71においてバーが表示されているエリア)を求め、差分面積の大きさから両者がどの程度違うのかを例えば5段階にランク分けして被験者に報知してもよい。この場合、差分面積の代わりにバー(差分線)の総和を用いてもよい。
また、必ずしも実測リサージュ図形MLと目標リサージュ図形TLを重ねて表示する必要はなく、両者を並べて表示してもよい。また、実測リサージュ図形MLや目標リサージュ図形TLは、図70や図71に示したものに限らず、例えば、X軸とY軸を入れ替えたものや、直交した状態を保ったままX軸とY軸を任意の角度だけ回転させたものであってもよい。
<F−6:肺の換気能力の良否判定>
リサージュ図形の軌跡の傾斜角から肺の換気能力の良否を判定することができる。例えば図72に示すように胸式呼吸の場合、CPU170は、1呼吸分の軌跡(サンプリングタイミングごとに得られる第5生体電気インピーダンスZaの測定値と第6生体電気インピーダンスZbの測定値によって定まるXY座標値)から、最小二乗法などによって近似直線LNを求める。次に、CPU170は、近似直線LNとX軸とのなす角αを算出し、これをリサージュ図形の軌跡の傾斜角αとする。
図72に示すように、X軸を第6生体電気インピーダンスZb、Y軸を第5生体電気インピーダンスZaとした場合、肺の換気能力が高いほど1呼吸分の軌跡を示す楕円が立ってくる(傾斜角αが大きくなり90度に近くなる)。逆に、肺の換気能力が低いほど1呼吸分の軌跡を示す楕円が寝てくる(傾斜角αが小さくなり0度に近くなる)。したがって、CPU170は、傾斜角αを予め定められた基準傾斜角βと比較し、傾斜角αが基準傾斜角β以上の場合は肺の換気能力が良いと判定し、傾斜角αが基準傾斜角βよりも小さい場合は肺の換気能力が悪いと判定することができる。なお、基準傾斜角βは、肺の換気能力の良否を判定するための閾値であり、予め多数の被験者から採取した1呼吸分の軌跡の傾斜角に基づいてその値を定めることができる。また、基準傾斜角βの値は第1記憶部120に記憶されている。
以上のようにすれば肺の換気能力の良否をリサージュ図形の軌跡から簡単に判定することができる。なお、立位、座位、仰臥位など、測定時の姿勢によって1呼吸分の軌跡の傾斜角は異なる。したがって、基準傾斜角βの値は、測定時の姿勢と対応付けて第1記憶部120に複数記憶されていてもよい。この場合、例えば、入力部150から測定時の姿勢を入力するようにして、入力された姿勢に対応する基準傾斜角βの値を第1記憶部120から読み出して使用すればよい。また、第1記憶部120に記憶されている基準傾斜角βを標準値とし、この標準値を、事前に入力された身長、年齢、性別(図37のステップT1)や、事前に測定した体重(図37のステップT2)などを用いた演算によって補正してもよい。
また、図73に示すように、座標変換処理によって基準傾斜角βを示す直線が垂直になるようにリサージュ図形を回転させた場合、1呼吸分の軌跡を示す楕円が、垂直方向と同じか垂直方向よりも左側に傾いている場合は肺の換気能力が良く、垂直方向よりも右側に傾いている場合は肺の換気能力が悪いと判定することができる。また、図74に示すように腹式呼吸の場合は、1呼吸分の軌跡のうち図中実線で示す楕円で囲んだ部分について近似直線LNを求めることで、胸式呼吸の場合と同じように肺の換気能力の良否を判定することができる。また、ドローイン呼吸の場合は、胸式呼吸の場合と同じようにして肺の換気能力の良否を判定することができる。
また、換気能力の良否判定に用いるリサージュ図形の軌跡は、必ずしも1呼吸分の軌跡に限らず、2呼吸分の軌跡や半呼吸分の軌跡であってもよい。また、X軸とY軸を入れ替えたリサージュ図形や、直交した状態を保ったままX軸とY軸を任意の角度だけ回転させたリサージュ図形などであっても、軌跡の傾斜角から肺の換気能力の良否を判定することができる。また、第1記憶部120に記憶されている基準傾斜角βの値を任意の値に設定し、被験者の肺の換気能力が予め定められた基準能力値よりも高いか否かを判定してもよい。
<F−7:呼吸深度グラフの時間軸圧縮表示>
CPU170は、第4実施形態で説明した呼吸深度抽出処理(図50)を行うことで、1呼吸ごとに呼吸の深さを示す呼吸深度(呼吸レベル)を抽出することができる。つまり、CPU170は、第5生体電気インピーダンスZaの測定値と第6生体電気インピーダンスZbの測定値に基づいて、1呼吸ごとに呼吸深度を抽出することができる。また、CPU170は、抽出した呼吸深度に対し、第4実施形態で説明した呼吸深度の正規化処理(図51:ステップT601)を行った後、呼吸深度の時間変化を示すグラフ(以降、呼吸深度グラフ)を生成して、これを表示部160に表示することができる。例えば呼吸深度グラフは図75(A)のようになる。
ところで、被験者は、訓練によって呼吸の大きさ(深さ)がどのように変化したのかを把握するため呼吸深度グラフを参照する。この際、呼吸の大きさの変化を把握する上で特に重要になるのは、直近の呼吸の大きさである。呼吸の訓練時間は1回あたり10分〜数十分と比較的長い時間になることが多いので、測定開始時から現在に到るまでのグラフ全体を表示部160に表示しようとすると、グラフを時間軸方向に圧縮しなければならない。この際、グラフ全体を均一に圧縮すると、測定区間全体に亘って一律に時間分解能が下がってしまうため、直近の呼吸の大きさについて詳細を把握しづらくなる。
そこで、CPU170は、呼吸深度グラフの表示データを生成する場合に、グラフの時間軸を非線形に圧縮し、任意の時間幅を1区間としたとき、少なくとも直近の1区間と測定開始時の1区間とで時間軸のレンジが異なり、直近の1区間の方が測定開始時の1区間よりも時間分解能が高くなるようにする。例えば、CPU170は、図75(B)に示すように時間軸を対数目盛にすることで(片対数グラフ化)、直近の測定区間ほど時間分解能を高くすることができる。また、CPU170は、図75(C)に示すように、測定開始時から現在に到る測定区間全体を3つの区間1〜3に分割し、直近の区間1が最も時間分解能が高くなるように時間軸のレンジを区間ごとに変えることができる。このようにすれば、呼吸深度グラフを時間軸方向に圧縮して表示しても、直近の呼吸の大きさについて詳細を容易に把握することができる。
なお、以上説明した第6実施形態において、右肺用や左肺用のリサージュ図形についても、表示位置のセンタリングや、軌跡表示処理、アシスト表示、肺の換気能力の良否判定を行うことができる。また、CPU170は、第4実施形態で説明した呼吸解析処理(図38)のステップT10〜ステップT70までの処理を行って第5相対値ΔZaと第6相対値ΔZbを算出し、第5相対値ΔZaと第6相対値ΔZbを用いてリサージュ図形の表示データを生成してもよい。つまり、CPU170は、互いに直交する2軸のうち、一方の軸を第5相対値ΔZaとし、他方の軸を第6相対値ΔZbとするリサージュ図形の表示データを生成してもよい。
また、本実施形態と第1〜第5実施形態を適宜組み合わせることができる。例えば、生体測定装置1は、リサージュ図形を表示するとともに、右肺の換気能力を示す右肺呼吸レベル(第1の右肺呼吸レベルBR1や第2の右肺呼吸レベルBR2)と、左肺の換気能力を示す左肺吸レベル(第1の左肺呼吸レベルBL1や第2の左肺呼吸レベルBL2)を表示してもよい。また、生体測定装置1は、リサージュ図形を表示するとともに図36に示したバーグラフBG5,BG6を表示してもよい。また、生体測定装置1は、リサージュ図形を表示するとともに被験者の呼吸が胸式呼吸か腹式呼吸かを判別して報知してもよい。また、生体測定装置1は、リサージュ図形を表示するとともに図49に示したバーグラフBG7,BG8を表示してもよい。また、生体測定装置1は、リサージュ図形を表示するとともに被験者の呼吸が胸式呼吸か腹式呼吸かドローイン呼吸かを判別して報知してもよい。
<G:変形例>
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下の変形が可能である。また、以下に示す変形例のうちの2以上の変形例を組み合わせることもできる。
(1)変形例1
第1〜第3実施形態では、CPU170は、被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸における第1相対値ΔZaRのピーク値ΔZaR(MAX)とボトム値ΔZaR(MIN)との絶対値の和を、第1の右肺呼吸レベルBR1として抽出しているが、これに限らず、例えばCPU170は、被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸の吸気における第1相対値ΔZaRの平均値と呼気における第1相対値ΔZaRの平均値との絶対値の和を、第1の右肺呼吸レベルBR1として抽出する態様であってもよい。第1の左肺呼吸レベルBL1、第2の右肺呼吸レベルBR2および第2の左肺呼吸レベルBL2についても同様である。
(2)変形例2
また、例えばCPU170が、被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸における第1の右肺呼吸レベルBR1と第1の左肺呼吸レベルBL1との差分を求め、その結果を表示する態様であってもよい。同様に、CPU170が、被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸における第2の右肺呼吸レベルBR2と第2の左肺呼吸レベルBL2との差分を求め、その結果を表示する態様であってもよい。
(3)変形例3
第1実施形態では、CPU170は、第1の右肺呼吸レベルBR1を第1バーグラフBG1で表示し、第1の左肺呼吸レベルBL1を第2バーグラフBG2で表示しているが(図21参照)、これに限らず、例えば図76に示すように、CPU170は、第1の右肺呼吸レベルBR1および第1の左肺呼吸レベルBL1をひとつのバーグラフBG0で表示する態様であってもよい。この態様では、表示すべきバーグラフBG0の段階数のうち右肺側の段階数は、第1の右肺呼吸レベルBR1の大きさに応じて決定される一方、左肺側の段階数は、第1の左肺呼吸レベルBL1の大きさに応じて決定されるという具合である。同様に、第2の右肺呼吸レベルBR2および第2の左肺呼吸レベルBL2が、ひとつのバーグラフで表示される態様であってもよい。
(4)変形例4
上述の第3相対値算出処理(図22および図31のステップS800)では、第1ゼロクロスタイミングにおける第3生体電気インピーダンスZbRの測定値に基づいて第3センタリング値ZbR0を求めているが、これに限らず、例えば第1センタリング値ZaR0または第2センタリング値ZaL0の生成方法と同様に、所定数のサンプリングタイミングの各々における第3生体電気インピーダンスZbRの測定値を用いた移動平均処理結果に基づいて、第3センタリング値ZbR0を求める態様であってもよい。つまり、第1生体電気インピーダンスZaRとは関連させずに、独立して第3センタリング値ZbR0を求める態様であってもよい。第4センタリング値ZbL0の生成方法についても同様である。
(5)変形例5
第4実施形態において、CPU170は、被験者の呼吸を指導するためのアシスト報知を行うことができる。例えば、吸気・呼気のリズムおよびパターンと、必要な呼吸の深さとを図77に示す第9バーグラフBG9の形で表示部160に表示する態様であってもよい。図77に示すように、第9バーグラフBG9で表示可能な段階数は「6」であり、吸気側に3段階、呼気側に3段階に振り分けられている。ここでは、表示される段階数が多いほど、必要な呼吸の深さも大きくなる。例えば吸気側の表示段階数が「1」である場合、つまりは、吸気側の1段階目のみが着色表示される場合は、被験者に対して小程度の吸気を行うべきであることを報知するものである。また、吸気側の表示段階数が「2」である場合、つまりは、吸気側の1段階目および2段階目が着色表示される場合は、被験者に対して中程度の吸気を行うべきであることを報知するものである。さらに、吸気側の表示段階数が「3」である場合、つまりは、吸気側の1段階目〜3段階目までが着色表示される場合は、被験者に対して大程度の吸気を行うべきであることを報知するものである。
一方、呼気側の表示段階数が「1」である場合、つまりは、呼気側の1段階目のみが着色表示される場合は、被験者に対して小程度の呼気を行うべきであることを報知するものである。また、呼気側の表示段階数が「2」である場合、つまりは、呼気側の1段階目および2段階目が着色表示される場合は、被験者に対して中程度の呼気を行うべきであることを報知するものである。さらに、呼気側の表示段階数が「3」である場合、つまりは、呼気側の1段階目〜3段階目までが着色表示される場合は、被験者に対して大程度の呼気を行うべきであることを報知するものである。
例えば、被験者に対し、中程度の吸気を2回行った後、中程度の呼気を2回行うようにアシスト報知する場合は、第9バーグラフBG9の表示は図78のように変化する。ここで、1回の呼吸に要する時間を2秒とすれば、4秒間で、2回の呼気および2回の吸気を、それぞれ指定の呼吸レベルで行うように指導していることに相当する。なお、これは一例であり、様々なアシスト情報(吸気・呼気のリズム、パターンおよび大きさ)を報知することが可能である。例えば被験者の呼吸を腹式呼吸に導くためのアシスト情報を報知することもできる。また、第9バーグラフBG9による表示の代わりに、音声によるアシスト報知を行う態様であってもよいし、両者を組み合わせる態様であってもよい。このようなアシスト報知を行うことで、被験者が、呼吸のリズム、パターン、深さを意識した呼吸を行うように導くことができる。
(6)変形例6
第4実施形態において、CPU170は、図79に示すように呼吸の大きさを示す肺の模式図を表示部160に表示してもよい。この場合、呼吸が大きくなるにつれ肺の色つき部分の面積が拡大し、呼吸が小さくなるにつれ肺の色つき部分の面積が減少する。これは測定結果に基づいて表示してもよいし、呼吸の指導情報として表示してもよい。
また、人や動物などのアニメーション画像を表示して呼吸の種別とその大きさを報知してもよい。例えば、小さな胸式呼吸の場合は、胸部が小さく膨張と収縮を繰り返すアニメーション画像を表示し、大きな胸式呼吸の場合は、胸部が大きく膨張と収縮を繰り返すアニメーション画像を表示する。また、小さな腹式呼吸の場合は、腹部が小さく膨張と収縮を繰り返すアニメーション画像を表示し、大きな腹式呼吸の場合は、腹部が大きく膨張と収縮を繰り返すアニメーション画像を表示する。また、小さなドローイン呼吸の場合は、腹部が小さく凹んだ状態で、胸部も小さく膨張と収縮を繰り返すアニメーション画像を表示し、大きなドローイン呼吸の場合は、腹部が大きく凹んだ状態で、胸部も大きく膨張と収縮を繰り返すアニメーション画像を表示する。このようなアニメーション画像についても測定結果に基づいて表示してもよいし、呼吸の指導情報として表示してもよい。
以上のようにすれば被験者に対してよりわかりやすく測定結果や指導情報を報知することができる。
(7)変形例7
第1実施形態において、CPU170は、図21に示したバーグラフBG1,BG2と同様のバーグラフを使用して、被験者の呼吸を指導するためのアシスト表示を行うことができる。例えば、呼吸を訓練するための訓練メニューとして、小程度の大きさの呼吸を1回行った後、中程度の大きさの呼吸を1回行うことが定められている場合、CPU170は、目標とする呼吸の大きさを示すバーグラフとして、小程度の大きさの呼吸に対応する右肺用のバーグラフBG1’と左肺用のバーグラフBG2’を生成して表示部160に表示し、被験者が最初の1呼吸を終えて次の1呼吸を行う前に、中程度の大きさの呼吸に対応する右肺用のバーグラフBG1’と左肺用のバーグラフBG2’を生成して表示部160に表示する。なお、目標とする呼吸の大きさを示すバーグラフBG1’,BG2’の表示タイミングを制御すれば、被験者の呼吸のリズムを指導することもできる。また、2つのバーグラフBG1’,BG2’のうちいずれか一方のみを表示してもよい。例えば、右肺について呼吸の訓練を行う場合であれば、右肺用のバーグラフBG1’のみを表示すればよい。また、被験者の呼吸の大きさを示すバーグラフBG1,BG2と、目標とする呼吸の大きさを示すバーグラフBG1’,BG2’の両方を表示し、被験者が自分の呼吸の大きさと目標とする呼吸の大きさを見比べながら呼吸の訓練を行えるようにしてもよい。また、図27に示したバーグラフBG1〜BG4や図36に示したバーグラフBG5,BG6についても、同様のバーグラフを使用して被験者の呼吸を指導するためのアシスト表示を行うことができる。
また、図80に示すように呼吸の大きさを示す肺の模式図を表示部160に表示してもよい。この場合、呼吸が大きくなるにつれ肺の色つき部分の面積が拡大し、呼吸が小さくなるにつれ肺の色つき部分の面積が減少する。なお、左右の肺で換気能力に差がある場合は、同図に示すように右肺と左肺で色つき部分の面積が異なる。この肺の模式図は、測定結果に基づいて表示してもよいし、呼吸の指導情報として表示してもよい。また、肺の模式図の代わりに、肺の膨張や収縮の様子を示すアニメーションを用いてもよい。
(8)変形例8
第4実施形態で説明した呼吸レベル表示処理において、CPU170は、直前の1呼吸における呼吸深度ΔZap−pを、当該1呼吸における第6センタリング値Zb0で割った後に100を乗じて求めた値を、呼吸深度の正規化値%ΔZa(=(ΔZap−p/Zb0)×100)として採用しているが、これに限らず、呼吸深度ΔZap−pの正規化方法は任意である。要するに、呼吸深度ΔZap−pの値を、被験者間における体格等の個人差の影響を取り除いた値に補正するものであればよい。例えば骨格筋量(骨格筋の発達具合)を示す指標をMV、被験者の身長や生体電気インピーダンスの測定区間の長さを示す指標をH、身体骨格筋の発達に有用な部位の生体電気インピーダンスをZxと表記すると、MV∝H2/Zxという関係が成り立つので、第6センタリング値Zb0の代わりに、H2/Zxを用いて呼吸深度ΔZap−pを正規化してもよい。また、上述の指標MVの推定には、重回帰分析による多変量項として性別や年齢や体重などを含めることで、精度向上を図ることができる。
(9)変形例9
上述した各実施形態では、電流電極および電圧電極の一例として、両手両足を電極の接点とする四肢誘導八電極法を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、被験者の体幹部に電流電極と電圧電極を直接貼り付けて第1生体電気インピーダンスZaR〜第6生体電気インピーダンスZbを測定してもよい。また、耳電極との四肢誘導法とを組み合わせて、体幹上部の生体電気インピーダンスを測定してもよい。この場合には、耳電極を用いることによって、体幹上部の生体電気インピーダンスの測定について両腕計測ではなく片腕計測が可能となる。なお、耳電極を用いる場合には、イヤホンやヘッドホンに耳電極を組み込むことによって、音声等の音報知・音刺激との組み合わせが効果的である。
また、上述した各実施形態では、立位での計測であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、便座での生体電気インピーダンスを計測するようにしてもよい。この場合には、便座や手摺に電極確保することができる。さらに、ポケッタブルやウェアラブルでのリラクゼーション姿勢(椅子座位等)で生体電気インピーダンスを計測するようにしてもよい。この場合には、マッサージチェアー等の手摺と足置き等に電極確保することができる。
さらに、入浴中の呼吸計測も可能である。この場合には、浴槽手摺部と浴槽底の御尻や足裏接触側面部に電極を設ける。浴槽内のお湯よりも、体幹の方が、生理食塩水でできているので電流通電が支配的になる。よって、入浴中にリラックスした状態で呼吸法のトレーニングを行うことができる。
くわえて、上述した各実施形態の生体測定装置1に、血圧計の腕帯と手で握る等で接触させる血圧計を付加し、血圧計に電極配置して呼吸変化や腕の筋の緊張具合を血圧測定時の補正情報として活用してもよい。
また、被験者がリラックスした状態で呼吸の訓練を行えることが望ましい。したがって、呼吸の訓練中に、のどかな風景の映像を表示したり、心のやすらぐ音楽や鳥の鳴き声、滝の音などを流したり、呼吸の訓練を行う場所の温度や湿度を調整したりすることも重要である。また、呼吸法の訓練ビデオを付加して訓練効率を高めてもよい。
(10)変形例10
例えば、ゲーム機を用いたシステムに本発明を適用することができる。
図81は、家庭用のゲーム機300を用いた生体測定システム5の構成を示す図である。同図に示すように生体測定システム5は、生体情報入力装置200’と、ゲーム機300と、コントローラ350と、モニタ400を備える。また、ゲーム機300のディスクスロットには光ディスク500が挿入される。
生体情報入力装置200’は、被験者を載せる載台20’と、左手用の電極部30Lと、右手用の電極部30Rを備える。この生体情報入力装置200’は、基本的に図1に示した生体電気インピーダンス測定部200と同様の構成を有し、これに体重計を加えた構成となっている。また、生体情報入力装置200’は、通信ケーブルによってコントローラ350と接続されており、被験者の各部位の生体電気インピーダンスや体重を測定し、これらの生体情報をコントローラ350を介してゲーム機300に供給する。
コントローラ350は、操作情報などを入力する入力装置である。コントローラ350は、Bluetooth(登録商標)などの無線通信によってゲーム機300と通信を行い、被験者が入力した操作情報や、生体情報入力装置200’から出力された生体情報をゲーム機300に送信する。例えば、身長、年齢、性別などの情報もコントローラ350を操作して入力することができる。モニタ400は、例えばテレビジョン受像機であり、通信ケーブルによってゲーム機300と接続されている。光ディスク500には、上述した第1〜第6実施形態や変形例(1)〜(9)で説明した各種の処理を制御するためのプログラムやデータが記憶されている。
なお、同図には、生体情報入力装置200’で測定された生体情報がコントローラ350を経由してゲーム機300に供給される場合を例示したが、生体情報入力装置200’は、生体情報を無線通信によってゲーム機300に直接供給してもよい。この場合、生体情報入力装置200’は、ゲーム機300と無線通信を行うための無線通信モジュールを備える。また、生体情報入力装置200’は、生体情報を有線通信によってゲーム機300に直接供給してもよい。この場合は、生体情報入力装置200’とゲーム機300を通信ケーブルで直接接続すればよい。また、左手用の電極部30Lの代わりに、電流電極X3と電圧電極Y3を設けた左手用のコントローラ350を備える一方、右手用の電極部30Rの代わりに、電流電極X4と電圧電極Y4を設けた右手用のコントローラ350を備えてもよい。
図82は、ゲーム機300の構成を示すブロック図である。
同図に示すようにゲーム機300は、ROM301と、RAM302と、ハードディスク303と、ディスクドライブ310と、無線通信モジュール320と、画像処理部330と、音声処理部340と、CPU360を備える。ROM301には、ゲーム機300の基本制御を司るプログラムなどが記憶されている。RAM302は、CPU360のワークエリアとして用いられる。ハードディスク303には、例えば後述する訓練メニュー管理テーブルTBL(図83)など、光ディスク500から読み出されたプログラムやデータなどが記憶される。ディスクドライブ310は、光ディスク500からプログラムやデータを読み出す。なお、プログラムやデータは、光ディスク500などの記録媒体によってゲーム機300に提供されるだけでなく、通信網を介してサーバなどからダウンロードされてもよい。この場合、ゲーム機300はネットワーク通信モジュールを備える。
無線通信モジュール320は、コントローラ350との間で行われる無線通信を制御する。なお、無線通信モジュール320は、生体情報入力装置200’が測定した生体情報をゲーム機300に入力するための入力部である。画像処理部330は、画像データを生成してモニタ400に出力する。音声処理部340は、効果音や音声などのオーディオデータを生成してモニタ400(スピーカ)に出力する。CPU360は、ROM301やハードディスク303などに記憶されている各種のプログラムを実行することでゲーム機300の全体を制御する。例えば、CPU360は、無線通信モジュール320を制御し、コントローラ350を介して生体情報入力装置200’と通信を行うことができる。また、CPU360は、生体情報入力装置200’に対し、電流電極X1〜X4や電圧電極Y1〜Y4の切り換え、生体電気インピーダンスの測定、体重の測定などを指示することができる。
また、CPU360は、例えば、第1実施形態で説明した呼吸検出処理や呼吸レベル表示処理を行い、右肺の上部の換気能力を示す第1バーグラフBG1と、左肺の上部の換気能力を示す第2バーグラフBG2をモニタ400に表示することができる(図21)。また、CPU360は、第2実施形態で説明した呼吸検出処理や呼吸レベル表示処理を行い、第1バーグラフBG1と第2バーグラフBG2に加え、右肺の中下部の換気能力を示す第3バーグラフBG3と、左肺の中下部の換気能力を示す第4バーグラフBG4をモニタ400に表示することができる(図27)。また、CPU360は、第3実施形態で説明した呼吸検出処理や呼吸レベル表示処理を行い、体幹部右側における胸式呼吸と腹式呼吸の各々の大きさを示す第5バーグラフBG5と、体幹部左側における胸式呼吸と腹式呼吸の各々の大きさを示す第6バーグラフBG6をモニタ400に表示することができる(図36)。
また、CPU360は、例えば、第4実施形態で説明した呼吸解析処理を行い、被験者の呼吸が胸式呼吸なのか腹式呼吸なのかを判別することができる。また、CPU360は、第4実施形態で説明した呼吸深度抽出処理や呼吸レベル表示処理を行い、胸式呼吸や腹式呼吸の大きさを示す第7バーグラフBG7や、腹式レベルを示す第8バーグラフBG8をモニタ400に表示することができる(図49)。また、CPU360は、第5実施形態で説明した吸種別判別処理を行い、被験者の呼吸が胸式呼吸なのか腹式呼吸なのかドローイン呼吸なのかを判別することができる。また、CPU360は、第6実施形態で説明したリサージュ図形表示処理を行い、リサージュ図形をモニタ400に表示することができる。また、CPU360は、バーグラフBG0〜BG9、リサージュ図形、肺の模式図などを利用して被験者の呼吸を訓練するための処理を行うことができる。このようにCPU360は、上述した第1〜第6実施形態や変形例(1)〜(9)で説明した各種の処理を行うことが可能である。
図83は、訓練メニュー管理テーブルTBLのデータ構成を示す図である。
訓練メニュー管理テーブルTBLは、被験者が自分の呼吸の能力に見合った訓練メニューで呼吸の訓練を行えるようにするためのものである。訓練メニュー管理テーブルTBLには、呼吸の能力に応じて定められた階級(ランク)ごとに、呼吸を訓練するための訓練メニューと、この階級をクリアして次の階級に進むためのクリア条件が記憶されている。例えば、同図に示す例では、ランク1〜ランク5までの5つの階級が設けられている。また、1階級ごとに20個の訓練メニューが用意されている。
例えば、訓練メニューの具体例として、胸式呼吸や腹式呼吸をマスターするための訓練、胸式呼吸と腹式呼吸を組み合わせた完全呼吸をマスターするための訓練、ドローイン呼吸をマスターするための訓練、腹式呼吸や完全呼吸によって肺の換気能力を高める訓練、左右の肺ごとに換気能力を高める訓練、ドローイン呼吸によって呼吸機能や運動機能を高める訓練、ヨガなどで用いられる様々なポーズを使用して呼吸筋に負荷を与えながら各種の呼吸を行って呼吸機能や運動機能を強化する訓練などを例示することができる。
なお、完全呼吸とは、腹部と胸部と肩甲部を使って肺の換気能力を最大限に活用しながら呼息と吸息を行う呼吸法である。完全呼吸を行う場合、例えば、吸息時には、まず腹を膨らませながら息を吸い、次に胸を前に突き出す感じで胸郭を広げながら息を吸い、最後に肩を上げながら息を吸っていく。これにより横隔膜が最大限に開いた状態になる。また、呼息時には、その逆で、まず肩を下げながら息を吐き、次に広げた胸郭を元に戻しながら息を吐き、最後に腹を凹ませながら息を吐いていく。
また、訓練メニューには、例えば、被験者の呼吸の様子を示すリサージュ図形(または被験者の呼吸の様子を示すバーグラフや肺の模式図)を使用し、被験者が自分の呼吸の様子を確認しながら訓練を行えるようにするもの、目標とする呼吸の様子を示すリサージュ図形(または目標とする呼吸の様子を示すバーグラフや肺の模式図)を使用し、被験者が目標とする呼吸の様子を確認しながら訓練を行えるようにするもの、被験者の呼吸の様子を示すリサージュ図形(または被験者の呼吸の様子を示すバーグラフや肺の模式図)と、目標とする呼吸の様子を示すリサージュ図形(または目標とする呼吸の様子を示すバーグラフや肺の模式図)の両方を使用し、被験者が自分の呼吸の様子と目標とする呼吸の様子を見比べながら訓練を行えるようにするものなどが含まれる。
また、クリア条件の具体例として、例えば、右肺呼吸レベル(第1の右肺呼吸レベルBR1、第2の右肺呼吸レベルBR2)や左肺吸レベル(第1の左肺呼吸レベルBL1、第2の左肺呼吸レベルBL2)が予め定められた基準値以上であること、片肺ごとの胸式呼吸や腹式呼吸の大きさが予め定められた基準値以上であること、両肺による胸式呼吸や腹式呼吸の大きさが予め定められた基準値以上であること、両肺の換気能力が予め定められた基準値以上であること、ドローイン呼吸ができること、腹式レベルが所定レベル以上であること、20個の訓練メニューを全て訓練し終えたことなどを例示することができる。なお、訓練メニュー管理テーブルTBLにおいて階級は2つ以上であればよいし、訓練メニューについても1階級ごとに1つ以上あればよい。また、階級分けや訓練内容の具体例として以下を例示することができる。
[ランク1/中高度呼吸器疾患患者向けトレーニング]
基本的な胸郭部呼吸運動を司る胸部呼吸筋を胸式呼吸によって鍛え、呼吸器疾患によって低下した呼吸機能を回復させるためのリハビリ用トレーニング。
[ランク2/軽度呼吸器疾患患者向けトレーニング]
横隔膜などの腹部呼吸筋を腹式呼吸によって鍛え、呼吸器疾患によって低下した呼吸機能を回復させるためのリハビリ用トレーニング。
[ランク3/健常者向け標準トレーニング]
胸式呼吸と腹式呼吸を組み合わせた完全呼吸によって胸部呼吸筋と腹部呼吸筋の両方を鍛え、呼吸機能の更なる向上や、喫煙、生活習慣病、運動不足、加齢などで低下した呼吸機能の改善を図るためのトレーニング。
[ランク4/軽度負荷トレーニング]
ドローイン呼吸によって体幹部のインナーマッスル(例えば腹横筋や脊柱起立筋など)を鍛え、呼吸機能の向上の他、腰痛予防や運動機能を高めるためのトレーニング。
[ランク5/アスリート向け中高度負荷トレーニング]
例えばヨガで用いられるポーズなど呼吸筋に負荷を与える姿勢とドローイン呼吸を組み合わせて運動機能を強化するためのトレーニング。
なお、ランク1,2として挙げた呼吸器疾患の患者向けトレーニングは、あくまで治療施設での医療指導の遵守が大前提である。また、疾患のレベルにもよるが、基本的には横隔膜がある程度機能し、呼吸を訓練することで呼吸機能の改善が期待できる者を対象者としている。また、ランク1〜5に対し、口をすぼめながら呼吸をするといった負荷を組み合わせることもできる。また、呼吸法とポーズの組み合わせ方やトレーニングの時間配分などは、適宜任意に定めることができる。
図84は、呼吸訓練管理処理の処理内容を示すフローチャートである。
同図に示す呼吸訓練管理処理は、例えば、被験者が本システム5を利用して呼吸の訓練を始める場合にCPU360によって実行される。CPU360は、呼吸訓練管理処理を開始すると、まず、被験者の呼吸の能力を検出する処理を行う(ステップT1201)。例えば、CPU360は、胸式呼吸や腹式呼吸を行うよう被験者に指示するメッセージを報知するとともに、第1〜第3実施形態のうちいずれかで説明した呼吸検出処理や呼吸レベル表示処理、あるいは第4実施形態で説明した呼吸解析処理や呼吸深度抽出処理、あるいは第6実施形態で説明したリサージュ図形表示処理や肺の換気能力の良否判定を行う。これにより、CPU360は、例えば、右肺の換気能力(右肺の上部や中下部の換気能力)、左肺の換気能力(左肺の上部や中下部の換気能力)、片肺ごとの胸式呼吸や腹式呼吸の大きさ、両肺による胸式呼吸や腹式呼吸の大きさ、両肺の換気能力、腹式レベルなどを被験者の呼吸の能力として検出する。
なお、被験者の呼吸の能力を通常時の呼吸から検出するため、呼吸の測定を行っていることを被験者に報知せずにステップT1201に示す処理を行ってもよい。また、ステップT1201では、第1生体電気インピーダンスZaRと第2生体電気インピーダンスZaLを測定して被験者の呼吸の能力を検出してもよいし、第3生体電気インピーダンスZbRと第4生体電気インピーダンスZbLを測定して被験者の呼吸の能力を検出してもよいし、第1〜第4生体電気インピーダンスZaR,ZaL,ZbR,ZbLを測定して被験者の呼吸の能力を検出してもよい。また、第5生体電気インピーダンスZaと第6生体電気インピーダンスZbを測定して被験者の呼吸の能力を検出してもよい。
次に、CPU360は、訓練メニュー管理テーブルTBLを参照し、ステップT1201で検出した被験者の呼吸の能力に応じた階級を特定する(ステップT1202)。また、CPU360は、特定した階級に対応する訓練メニューを訓練メニュー管理テーブルTBLから選択する(ステップT1203)。例えば、被験者の階級がランク3であった場合、CPU360は、図83に示す訓練メニュー管理テーブルTBLを参照し、メニュー41〜メニュー60を選択する。なお、左右の肺で換気能力に差がある場合は、左右の肺ごとに異なる訓練メニューを選択してもよい。
この後、CPU360は、ステップT1203で選択した訓練メニューを使用して、被験者の呼吸を訓練するための処理を行う(ステップT1204)。例えば、被験者の階級がランク3であった場合、CPU360は、メニュー41〜メニュー60を使用して呼吸を訓練するための処理を行う。また、ランク3が上述した健常者向けの標準トレーニングであった場合、CPU360は、訓練メニューに基づいて、胸式呼吸と腹式呼吸を組み合わせた完全呼吸をマスターするための訓練や、完全呼吸によって肺の換気能力を高める訓練などを行う。また、CPU360は、例えば、被験者の呼吸の様子を示すリサージュ図形(または被験者の呼吸の様子を示すバーグラフや肺の模式図)をモニタ400に表示し、被験者が自分の呼吸の様子を確認しながら訓練を行えるようにすることができる。また、CPU360は、目標とする呼吸の様子を示すリサージュ図形(または目標とする呼吸の様子を示すバーグラフや肺の模式図)をモニタ400に表示し、被験者が目標とする呼吸の様子を確認しながら訓練を行えるようにすることができる。また、CPU360は、被験者の呼吸の様子を示すリサージュ図形(または被験者の呼吸の様子を示すバーグラフや肺の模式図)と、目標とする呼吸の様子を示すリサージュ図形(または目標とする呼吸の様子を示すバーグラフや肺の模式図)の両方をモニタ400に表示し、被験者が自分の呼吸の様子と目標とする呼吸の様子を見比べながら訓練を行えるようにすることができる。
この後、CPU360は、被験者の現在の階級に対応するクリア条件を訓練メニュー管理テーブルTBLから読み出し、クリア条件が成立しているか否かを判定する(ステップT1205)。例えば、被験者の現在の階級がランク3であった場合、CPU360は、図83に示す訓練メニュー管理テーブルTBLから条件Cを読み出し、この条件Cが成立しているか否かを判定する。
例えば、条件Cが「右肺の換気能力と左肺の換気能力がともに予め定められた基準値以上」であった場合、CPU360は、第1〜第3実施形態のうちいずれかで説明した呼吸検出処理や呼吸レベル表示処理を行い、右肺の換気能力と左肺の換気能力がともに基準値以上であるか否かを判定する。また、条件Cが「両肺による腹式呼吸の大きさが予め定められた基準値以上」であった場合、CPU360は、第4実施形態で説明した呼吸解析処理や呼吸深度抽出処理を行い、被験者の腹式呼吸の大きさが基準値以上であるか否かを判定する。また、条件Cが「ドローイン呼吸ができること」であった場合、CPU360は、第5実施形態で説明した呼吸種別判別処理を行い、被験者の呼吸がドローイン呼吸であるか否かを判定する。また、条件Cが「20個の訓練メニューを全て訓練し終えたこと」であった場合、CPU360は、メニュー41〜メニュー60による訓練を全て終えている場合にクリア条件が成立したと判定する。
ステップT1205の結果が否定である場合は、ステップT1204に戻り、現在の階級における呼吸の訓練を継続する。一方、ステップT1205の結果が肯定である場合、CPU360は、被験者の階級を次の階級にランクアップさせた後(ステップT1206)、ステップT1203に戻る。例えば、被験者の階級がランク3であった場合、CPU360は、ステップT1206において被験者の階級をランク4に変更してステップT1203に戻る。これにより、訓練メニュー管理テーブルTBLからランク4に対応する訓練メニュー(メニュー61〜メニュー80)が選択され、新たな訓練が開始される。
なお、被験者がコントローラ350を操作して訓練の終了を指示すると、同図に示す呼吸訓練管理処理が終了する。この際、CPU360は、被験者の現在の階級を示すランク情報をハードディスク303に記憶し、被験者が次に呼吸の訓練を行う場合は、ハードディスク303に記憶してあるランク情報を読み出してステップT1203から処理を開始する。
以上説明したように本変形例によれば、ゲーム機300を用いることで、体重や体脂肪を測定するのと同じように家庭内で手軽に呼吸を測定することが可能になる。また、呼吸の訓練についても家庭内で手軽に行える。また、本変形例によれば、体幹部の生体電気インピーダンスの測定結果に基づいて被験者の呼吸の能力を検出することができるので、呼吸の訓練時に、呼吸センサを口にくわえたり鼻の下に取り付けたりする必要がないことに加え、口と鼻のいずれを使って呼吸を行ってもよい。このため呼吸の訓練を行い易くすることができる。また、被験者は、自分の呼吸の能力に見合った訓練メニューに基づいて呼吸の訓練を行うことができるので、効率よく呼吸を訓練することができる。また、訓練メニューを階級ごとに分けて用意し、1階級ごとにクリアしながら次の階級に進むといったゲーム性を持たすことで、楽しみながら呼吸の訓練を行うことができるので、呼吸の訓練に対する被験者のモチベーションを高めることもできる。
なお、第1〜第6実施形態で説明した生体測定装置1において呼吸訓練管理処理(図84)を行ってもよい。この場合、呼吸訓練管理処理を行うためのプログラムや呼吸訓練管理テーブルTBL(図83)などを第1記憶部120に記憶しておけばよい。また、ゲーム機300の代わりに、パーソナルコンピュータや携帯型電子機器(例えば携帯電話機など)を用いてもよいし、携帯型電子機器の場合には、表示装置としてヘッドマウントディスプレイを使用してもよい。
(11)変形例11
生体測定装置1は、表示部160を備えず、外部の表示装置にリサージュ図形やバーグラフなどを表示してもよい。また、生体測定装置1は、生体電気インピーダンス測定部200を備えず、外部の生体電気インピーダンス測定装置で測定された体幹部の生体電気インピーダンスを無線通信や有線通信によって入力する入力部を備えていてもよい。この場合、入力部は、例えば、無線通信モジュール、ネットワーク通信モジュール、USB(Universal Serial Bus)インターフェイスなどの通信インターフェイスになる。
(12)変形例12
本発明は、呼吸の訓練機能のみを有する装置やシステムに限定されない。例えば、フィットネス用のトレーニング装置など、呼吸の訓練機能がその一部に組み込まれた各種のトレーニング装置やトレーニングシステムに本発明を適用することができる。