JP5606317B2 - メタボリック症候群又は心血管疾患のリスク検査法及びリスク検査用キット - Google Patents

メタボリック症候群又は心血管疾患のリスク検査法及びリスク検査用キット Download PDF

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Description

本発明はメタボリック症候群又は心血管疾患のリスク検査法、及び該リスク検査法に利用される検査キットに関する。
アディポネクチンは脂肪細胞より分泌されるタンパク質である。その血中濃度は肥満により減少し、肥満改善により増加することから、アディポネクチンはインスリン感受性の指標とされている。これまでに、メタボリック症候群(以下、「MetS」と称することがある)の状態でアディポネクチン濃度が低下する事が示されている(非特許文献1)。また、アディポネクチン濃度と心血管疾患との関連も報告されている(非特許文献2)。アディポネクチン遺伝子(以下、「ADIPOQ遺伝子」と称することがある)は3つのエクソンから構成され、その遺伝子座は第3染色体長腕にある。これまでに、ADIPOQ遺伝子の遺伝子多型とアディポネクチン濃度との関連が報告されている(非特許文献3、4)。
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本発明は、メタボリック症候群(MetS)又は心血管疾患を対象とした臨床上有用なリスク検査法(易罹患性の判定法)を提供することを課題とする。また、MetS又は心血管系疾患の予防(発症の阻止ないし遅延)又は改善に資する有益な情報を提供することを課題とする。
アディポネクチンを対象として数多くの研究が行われてきたものの、実際にアディポネクチン濃度に何が影響しているかは未解明な部分が残る。そこで本発明者らは、MetS及びMetSに引き続き発症する心血管疾患(非特許文献9を参照)のリスクの早期発見や予防に有効な手段の創出を目指し、鋭意研究した。その結果、MetS群と対照群(メタボリック症候群の各項目に一つも該当せず、心血管疾患の既往のない健康な参加者)を用いた比較研究より、MetS群では血中アディポネクチン濃度が有意に低値であることが示された。また、血中アディポネクチン濃度がMetSの各構成要素と強く相関することが明らかとなった。一方、多型解析の結果、3つの一塩基多型(ADIPOQ遺伝子の多型I164T、ADIPOQ遺伝子の多型G-450A、多型rs1656930)が血中アディポネクチン濃度と強く相関することが明らかとなった。この内の二つ、即ち多型I164T(非特許文献6)と多型G-450A(非特許文献7)はアディポネクチンとの関連性が過去に報告された多型であったが、多型rs1656930についてはアディポネクチンとの関連性は一切報告されていない。これら3多型に関して更に検討を進めたところ、いずれの多型も単独で血中アディポネクチン濃度に相関を示した。この事実と、上記の通り血中アディポネクチン濃度とMetSが関連したこと(非特許文献1も参照)、血中アディポネクチン濃度と心血管疾患が関連すること(非特許文献2)及びMetSが心血管疾患のリスク因子になることを総合すれば、上記3多型(単独又は組合せ)の検出結果は、MetSや心血管疾患のリスクを予測するために有用であるといえる。尚、新しく発見されたrs1656930多型は、頻度的にはI164T多型より多く、またG-450A多型よりアディポネクチン濃度に対する影響が大きい有用な多型である事が分かった。
さらに本発明者らは、血中アディポネクチン濃度の実測値は遺伝的要因と環境要因を反映したものであることに着目し、上記多型の検出結果とアディポネクチン濃度の実測値を併用すれば、MetSや心血管疾患について環境要因の影響(換言すれば生活習慣)を評価できると考えた。評価結果は、MetSや心血管疾患の予防や改善を促すための有益な情報となる。例えば、多型の検出結果からはアディポネクチン濃度が高いと予想されたにもかかわらず、アディポネクチンの実測値が低値を示したのであれば、環境要因の影響によってアディポネクチン濃度が低い状態が形成されていると判断できることから、生活習慣の改善を促すことが病態ないし症状の改善に有効となる。
本発明は、主として以上の知見に基づき完成されたものであり、以下の通りである。
[1]被験者から採取された核酸検体について、米国バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のSNPデータベースにおける登録番号1656930で特定される一塩基多型(rs1656930多型)を検出するステップを含む、メタボリック症候群又は心血管疾患のリスク検査法。
[2]以下の(a)〜(h)からなる群より選択される一以上の基準に従いリスクを判定することを特徴とする、[1]に記載のリスク検査法:
(a)塩基がAのアレルが検出されればリスクが高い;
(b)GG型のリスク < AA型のリスク;
(c)GG型のリスク < AG型のリスク;
(d)AA型又はAG型であればリスクが高い;
(e)被験者が男性の場合、GG型のリスク < AG型のリスク;
(f)被験者が男性の場合、GG型のリスク < AG型又はAA型のリスク;
(g)被験者が女性の場合、GG型のリスク < AG型のリスク;
(h)被験者が女性の場合、GG型のリスク < AG型又はAA型のリスク;
(i)被験者が男性の場合、AG型であればリスクが高い;
(j)被験者が男性の場合、GG型であればリスクが低い;
(k)被験者が女性の場合、AG型であればリスクが高い;
(l)被験者が女性の場合、GG型であればリスクが低い。
[3]アディポネクチン遺伝子のI164T多型、及び/又はアディポネクチン遺伝子のG-450A多型を検出するステップを更に含むことを特徴とする、[1]又は[2]に記載のリスク検査法。
[4]被験者から採取された血液検体中のアディポネクチン濃度を測定するステップをさらに含むことを特徴とする、[1]〜[3]のいずれか一項に記載のリスク検査法。
[5]血中アディポネクチン濃度範囲とリスクの程度とが関連付けられた複数の区分を設定しておき、以下のステップ(1)〜(6)を行うことを特徴とする、メタボリック症候群又は心血管疾患のリスク検査法:
(1)被験者から採取された核酸検体及び血液検体を用意するステップ;
(2)前記核酸検体について、米国バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のSNPデータベースにおける登録番号1656930で特定される一塩基多型(rs1656930多型)を検出し、該多型について遺伝子型を決定するステップ;
(3)決定した遺伝子型から、遺伝的要因によるリスクの程度を決定するステップ;
(4)前記血液検体中のアディポネクチン濃度を測定するステップ;
(5)前記複数の区分の中から、アディポネクチン濃度の測定値が含まれる区分を特定するステップ;
(6)特定した区分に関連付けられたリスクの程度と、(3)で決定したリスクの程度とを比較するステップ。
[6]ステップ(2)において、rs1656930多型に加えてアディポネクチン遺伝子のI164T多型、及び/又はアディポネクチン遺伝子のG-450A多型を検出し、各多型について遺伝子型を決定することを特徴とする、[5]に記載のリスク検査法。
[7]前記血液検体として血清又は血漿が用いられる、[1]〜[6]のいずれか一項に記載のリスク検査法。
[8]米国バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のSNPデータベースにおける登録番号1656930で特定される一塩基多型(rs1656930多型)を検出するための核酸であって、前記多型部位を含む一定領域に相補的な配列を含み、前記領域に対して特異的にハイブリダイズする核酸を含む、メタボリック症候群又は心血管疾患のリスク検査用の試薬。
[9][8]に記載の試薬を含む、メタボリック症候群又は心血管疾患のリスク検査用キット。
[10]アディポネクチン遺伝子のI164T多型を検出するための核酸、及び/又はアディポネクチン遺伝子のG-450A多型を検出するための核酸を更に含むことを特徴とする、[9]に記載のリスク検査用キット。
[11]血液検体中のアディポネクチン濃度を測定するための成分を更に含むことを特徴とする、[9]又は[10]に記載のリスク検査用キット。
血中アディポネクチン濃度とMetSの構成要素との相関を示した表。血中アディポネクチン濃度がMetSの構成要素と強い相関関係にあることがわかる。 血中アディポネクチン濃度と性差の関係。左欄は血中アディポネクチン濃度を示すグラフ。右欄には平均値及び95%信頼区間を示した。 血中アディポネクチン濃度と年齢の関係。上:年齢別に血中アディポネクチン濃度を示したグラフ(男性)、下:年齢別に血中アディポネクチン濃度を示したグラフ(女性)。 血中アディポネクチン濃度とMetSリスクの関係。血中アディポネクチン濃度をMetS群と対照群で比較した。左は男性についての比較、右は女性についての比較。 血中アディポネクチン濃度とMetSリスクの関係。男性と女性それぞれについて、MetS高リスク群を規定する血中アディポネクチン濃度、MetS低リスク群を規定する血中アディポネクチン濃度を示した。図中、JPNは日本のMetS診断基準を用いた場合を表し、IDFは国際糖尿病連合のMetS診断基準を用いた場合を表す。 MetS高リスク群とMetS低リスク群の比較。MetS高リスク群とMetS低リスク群の間のオッズ比を計算した。非常に高いオッズ比が得られることがわかる。 ADIPOQ遺伝子中又はその近傍に存在する一塩基多型(SNP)。図に示した30個のSNPを解析した。 単回帰分析の結果。log10血中アディポネクチン濃度を従属変数とし、各多型を独立変数として単回帰分析を行った。I164T多型、G-450A多型及びrs1656930多型が血中アディポネクチン濃度とよく相関した。尚、回帰係数は、マイナーアレルが一つ加わったときの血中アディポネクチン濃度(log)への影響を示す。また、標準回帰係数(R)は、log10血中アディポネクチン濃度への関与の強さが示される。図中、MAFはマイナーアレル頻度を表す。 図8の続き。 大規模関連解析の結果。多型別に各遺伝子型の血中アディポネクチン濃度(平均値±標準誤差)を比較した。nは対象の数を表す。 大規模関連解析の結果。多型別かつ男女別に各遺伝子型の血中アディポネクチン濃度(平均値±標準誤差)を比較した。nは対象の数を表す。 大規模関連解析の結果。rs1656930多型について男女別にドミナントモデルで解析し、血中アディポネクチン濃度(平均値±標準誤差)を比較した。nは対象の数を表す。 3つの多型(I164T多型、G-450A多型及びrs1656930多型)を組合せたときの血中アディポネクチン濃度(平均値±標準偏差)の比較。rs1656930多型を中心としてグラフ及び表にまとめた。 3つの多型(I164T多型、G-450A多型及びrs1656930多型)を組合せたときの血中アディポネクチン濃度(平均値±標準偏差)の比較。I164T多型を中心としてグラフ及び表にまとめた。
(メタボリック症候群又は心血管疾患のリスク検査法)
本発明の第1の局面はメタボリック症候群又は心血管疾患のリスク検査法に関する。本発明においてメタボリック症候群又は心血管疾患のリスクとは、メタボリック症候群又は心血管疾患の易罹患性(疾患への罹りやすさ)をいう。「メタボリック症候群」とは、肥満・内臓脂肪の蓄積を基盤としてインスリン抵抗性、動脈硬化惹起性リポ蛋白異常、高血圧値を合併し、心血管病に罹るリスクが高くなった状態をいう。メタボリック症候群の診断基準を以下に示す。尚、日本人に言及する場合には、本願明細書においては、日本内科学会・日本肥満学会など8学会より構成される、メタボリックシンドローム診断基準検討委員会の最新基準を優先的に適用する。
(1)日本内科学会等8学会による日本基準(非特許文献8を参照)
以下の(a)に加え、(b)〜(d)の中の二つ以上を満たす。
(a)腹囲: ≧85cm(男性)、≧90cm(女性)
(b)中性脂肪: ≧150mg/dl かつ/又はHDL-C: <40mg/dl
(c)血圧: ≧130/85mmhg
(d)空腹時血糖: >110mg/dl
(2)国際糖尿病連合(IDF)基準(非特許文献5を参照)
以下の(a)に加え、(b)〜(e)の中の二つ以上を満たす。
(a)腹囲: ≧90cm(男性)、≧80cm(女性)
(b)中性脂肪: ≧150mg/dl
(c)空腹時血糖: >100mg/dl
(d)HDL-C: <40mg/dl(男性)、<45mg/dl(女性)
(e)血圧: ≧130/85mmhg
本発明における「心血管疾患」とは、メタボリック症候群がリスク因子となる心血管疾患を指し、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症等を包含する。
本発明のリスク検査法の一態様では、被験者から採取された核酸検体について、特定の一塩基多型(慣例に従い、SNPともいう)を検出する。そして、検出結果に基づきリスクを判定・評価する。検出対照のSNPの詳細は後述する。
まず、被験者から採取された核酸検体を用意する。本発明では、メタボリック症候群又は心血管疾患のリスク判定を必要とする者(被験者)に由来する核酸検体を使用する。核酸検体は、被験者の血液、皮膚細胞、粘膜細胞、毛髪等から公知の抽出方法、精製方法を用いて調製することができる。検出対象の多型部位を含むものであれば任意の長さのゲノムDNAを核酸検体として用いることができる。
被験者は特に限定されない。即ち、メタボリック症候群又は心血管疾患のリスク判定が必要な者に対して広く本発明を適用することができる。例えば、メタボリック症候群又は心血管疾患の患者についての判定結果は、より適切な治療方針の決定に役立ち、治療効果の向上、患者のQOL(Quality of Life、生活の質)の向上を促す。一方、健常者又はメタボリック症候群を発症する世代ではない若年者についての判定結果はメタボリック症候群又は心血管疾患心筋梗塞の予防や早期診断に役立つ。即ち、リスクが高いとの情報に基づいて予防的措置や生活習慣の改善等を図れば、メタボリック症候群又は心血管疾患の発症可能性(罹患可能性)を低下させることができる。また、リスクが高いとの情報はメタボリック症候群又は心血管疾患の検診を受診させる契機となり、これによってメタボリック症候群又は心血管疾患の早期診断、早期発見が可能となる。尚、ここでの「健常者」とは、本発明のリスク検査法を適用する時点において、メタボリック症候群及び心血管疾患に罹患しているとの判断が行われていない者のことをいう。
本発明の適用範囲は日本人に限られない。即ち、日本人以外のモンゴロイドやその他の人種(コーカサイド等)に対しても本発明を適用可能である。但し、遺伝的に近い集団(例えば日本人集団に対して中国人集団や韓国人集団は近い)では多型の種類・頻度が同様の傾向を示すことが多いという事実を考慮すると、本発明における被験者は好ましくはモンゴロイド(日本人、中国人、韓国人など)であり、更に好ましくは日本人である。
本発明では、米国バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のSNPデータベースにおける登録番号1656930で特定される一塩基多型(rs1656930多型)を検出する。当該多型の染色体上の位置は3q27(188035551bp)である。また、添付の配列表の配列番号1の配列における1138番目の塩基が当該多型位置に相当する。
本発明において用語「多型を検出する」は、用語「多型を解析する」又は用語「アレルを検出する」と置換可能である。多型の検出によって多型位置の状態(即ち、塩基の種類や塩基の配列)が明らかとなる。
本発明では多型の検出結果、即ち検出されたアレルの種類又はアレルの組合せ(遺伝子型)を基にリスクを判定する。ここでの判定は、その判定基準から明らかな通り、医師や検査技師など専門知識を有する者の判断によらずとも自動的/機械的に行うことができる。
後述の実施例に示す通り、多型rs1656930ではAアレルがリスクアレルであることが判明した(メジャーアレル:G、マイナーアレル:A)。そこで、好ましくは以下の基準(a)に従ってリスクを判定・評価する。
(a)塩基がAのアレルが検出されればリスクが高い。
大規模関連解析の結果(図10)を踏まえると、遺伝子型を用いた以下の基準(b)、(c)に従ってリスクを判定・評価することにしてもよい。
(b)GG型のリスク < AA型のリスク
(c)GG型のリスク < AG型のリスク
(b)及び(c)から、次の基準(d)を導き出すことができる。この基準(d)を採用することにしてもよい。
(d)AA型又はAG型であればリスクが高い
一方、男女別で解析した結果(図11、図12)を踏まえると、遺伝子型を用いた以下の基準(e)〜(h)に従ってリスクを判定・評価することにしてもよい。
(e)被験者が男性の場合、GG型のリスク < AG型のリスク
(f)被験者が男性の場合、GG型のリスク < AG型又はAA型のリスク
(g)被験者が女性の場合、GG型のリスク < AG型のリスク
(h)被験者が女性の場合、GG型のリスク < AG型又はAA型のリスク
(e)〜(h)からそれぞれ以下の基準(i)〜(l)を導き出すことができる。これらの基準(i)〜(l)を採用することにしてもよい。
(i)被験者が男性の場合、AG型であればリスクが高い
(j)被験者が男性の場合、GG型であればリスクが低い
(k)被験者が女性の場合、AG型であればリスクが高い
(l)被験者が女性の場合、GG型であればリスクが低い
以上の(b)〜(l)の基準を採用する場合、多型の検出結果より遺伝子型(アレルの組合せ)を決定し、遺伝子型に基づきリスクを判定・評価する。具体的には、GG型(多型位置の塩基がGのアレルのホモ接合型)、GA型(多型位置の塩基がGのアレルと多型位置の塩基がAのアレルのヘテロ接合型)及びAA型(多型位置の塩基がAのアレルのホモ接合型)のいずれであるかを決定した後、上記基準に従ってリスクを判定・評価する。遺伝子型を用いた基準を採用すれば、より確度の高い判定・評価が可能になる。尚、上掲の基準を二つ以上併用することにしてもよい。
本発明の一態様では、rs1656930多型に加えて、アディポネクチン遺伝子のI164T多型又はアディポネクチン遺伝子のG-450A多型、或いはこの両者を検出する。このように2以上の多型を組み合わせることによって、信頼度の一層高いリスク検査が可能となる。I164T多型の詳細については非特許文献6を参照されたい。同様に、G-450A多型の詳細は非特許文献7を参照されたい。尚、G-450A多型は、NCBIのSNPデータベースに番号rs9882205で登録されている。
後述の実施例に示す通り、I164T多型ではCアレルがリスクアレルであることが判明した(メジャーアレル:T、マイナーアレル:C)。そこで、当該多型については、好ましくは以下の基準(m)に従ってリスクを判定・評価する。
(m)塩基がCのアレルが検出されればリスクが高い。
大規模関連解析の結果(図10)を踏まえると、遺伝子型を用いた以下の基準(n)に従ってリスクを判定・評価することにしてもよい。
(n)TT型のリスク < TC型のリスク < CC型のリスク
(n)から、次の基準(o)を導き出すことができる。この基準(o)を採用することにしてもよい。
(o)CC型又はTC型であればリスクが高い
一方、男女別で解析した結果(図11)を踏まえると、遺伝子型を用いた以下の基準(p)、(q)に従ってリスクを判定・評価することにしてもよい。
(p)被験者が男性の場合、TT型のリスク < TC型のリスク < CC型のリスク
(q)被験者が女性の場合、TT型のリスク < TC型のリスク
(p)から、以下の基準(r)を導き出すことができる。同様に(q)から、以下の基準(s)を導き出すことができる。これらの基準(r)、(s)を採用することにしてもよい。
(r)被験者が男性の場合、CC型又はTC型であればリスクが高い
(s)被験者が女性の場合、TC型であればリスクが高い
尚、上掲の基準(m)〜(s)の中の二つ以上併用することにしてもよい。
後述の実施例に示す通り、G-450A多型ではGアレルがリスクアレルであることが判明した(メジャーアレル:A、マイナーアレル:G)。そこで、当該多型については、好ましくは以下の基準(t)に従ってリスクを判定・評価する。
(t)塩基がGのアレルが検出されればリスクが高い。
大規模関連解析の結果(図10)を踏まえると、遺伝子型を用いた以下の基準(u)、(v)に従ってリスクを判定・評価することにしてもよい。
(u)AA型のリスク < GG型のリスク
(v)AG型のリスク < GG型のリスク
(u)及び(v)から、次の基準(w)を導き出すことができる。この基準(w)を採用することにしてもよい。
(w)GG型であればリスクが高い
一方、男女別で解析した結果(図11)を踏まえると、遺伝子型を用いた以下の基準(x)、(y)、(z)に従ってリスクを判定・評価することにしてもよい。
(x)被験者が男性の場合、AA型のリスク < GG型のリスク
(y)被験者が男性の場合、AG型のリスク < GG型のリスク
(z)被験者が女性の場合、AA型のリスク < GG型のリスク
(x)及び(y)から、以下の基準(A)を導き出すことができる。同様に、(z)から以下の基準(B)を導き出すことができる。これらの基準(A)、(B)を採用することにしてもよい。
(A)被験者が男性の場合、GG型であればリスクが高い
(B)被験者が女性の場合、GG型であればリスクが高い
尚、上掲の基準(t)〜(B)の中の二つ以上併用することにしてもよい。
多型の組合せを利用する態様の代表である、三つの多型(rs1656930多型、I164T多型及びG-450A多型)を検出する場合について、その判定・評価手法の具体例を以下に列挙する。
(1)rs1656930多型について塩基Aのアレルが検出されること(条件1)、I164T多型について塩基Cのアレルが検出されること(条件2)、G-450A多型について塩基Gのアレルが検出されること(条件3)の全てを満たす場合に高リスクと判定し、それ以外であれば低リスクと判定する。
(2)条件1〜3の全てを満たす場合に最高リスクと判定し、条件1〜3の中の二つを満たす場合に中程度リスクと判定し、条件1〜3の中の一つを満たす場合に低リスクと判定し、条件1〜3のいずれも満たさない場合に最低リスクと判定する。
(3)条件1〜3の中の二つ以上を満たす場合に高リスクと判定し、条件1〜3の一つを満たす場合に中程度リスクと判定し、条件1〜3のいずれも満たさない場合に低リスクと判定する。
(4)条件1〜3の中の二つ以上を満たす場合に高リスクと判定し、それ以外であれば低リスクと判定する。
(5)rs1656930多型について遺伝子型がAA型であること(条件4)、I164T多型について遺伝子型がCC型であること(条件5)、G-450A多型について遺伝子型がGG型であること(条件6)の全てを満たす場合に高リスクと判定し、それ以外であれば低リスクと判定する。
(6)条件4〜6の全てを満たす場合に最高リスクと判定し、条件4〜6の中の二つを満たす場合に中程度リスクと判定し、条件4〜6の中の一つを満たす場合に低リスクと判定し、条件4〜6のいずれも満たさない場合に最低リスクと判定する。
(7)条件4〜6の中の二つ以上を満たす場合に高リスクと判定し、条件4〜6の一つを満たす場合に中程度リスクと判定し、条件4〜6のいずれも満たさない場合に低リスクと判定する。
(8)条件4〜6の中の二つ以上を満たす場合に高リスクと判定し、それ以外であれば低リスクと判定する。
多型の検出法(解析法)は特に限定されるものではなく例えばアレル特異的プライマー(及びプローブ)を用い、PCR法による増幅、及び増幅産物の多型を蛍光又は発光によって検出する方法や、PCR(polymerase chain reaction)法を利用したPCR-RFLP(restriction fragment length polymorphism:制限酵素断片長多型)法、PCR-SSCP(single strand conformation polymorphism:単鎖高次構造多型)法(Orita,M. et al., Proc. Natl. Acad. Sci., U.S.A., 86, 2766-2770(1989)等)、PCR-SSO(specific sequence oligonucleotide:特異的配列オリゴヌクレオチド)法、PCR-SSO法とドットハイブリダイゼーション法を組み合わせたASO(allele specific oligonucleotide:アレル特異的オリゴヌクレオチド)ハイブリダイゼーション法(Saiki, Nature, 324, 163-166(1986)等)、TaqMan(登録商標、Roche Molecular Systems社)-PCR法(Livak, KJ, Genet Anal,14,143(1999),Morris, T. et al., J. Clin. Microbiol.,34,2933(1996))、Invader(登録商標、Third Wave Technologies社)法(Lyamichev V et al., Nat Biotechnol,17,292(1999))、FRET(Fluorescence Resonance Energy Transfer)を利用した方法(Heller, Academic Press Inc, pp. 245-256(1985)、Cardullo et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85, 8790-8794(1988)、国際公開第99/28500号パンフレット、特開2004-121232号公報など)、ASP-PCR(Allele Specific Primer-PCR)法(国際公開第01/042498号公報など)、プライマー伸長法を用いたMALDI-TOF/MS(matrix)法(Haff LA, Smirnov IP, Genome Res 7,378(1997))、RCA(rolling cycle amplification)法(Lizardi PM et al., Nat Genet 19,225(1998))、DNAチップ又はマイクロアレイを用いた方法(Wang DG et al., Science 280,1077(1998)等)、プライマー伸長法、サザンブロットハイブリダイゼーション法、ドットハイブリダイゼーション法(Southern,E., J. Mol. Biol. 98, 503-517(1975))等、公知の方法を採用できる。さらに、検出対象の多型部分を直接シークエンスすることにしてもよい。尚、これらの方法を任意に組み合わせて多型を検出してもよい。また、PCR法又はPCR法を応用した方法などの核酸増幅法により核酸試料を予め増幅(核酸試料の一部領域の増幅を含む)した後、上記いずれかの検出方法を適用することもできる。
多数の核酸検体を検出する場合にはアレル特異的PCR法、アレル特異的ハイブリダイゼーション法、TaqMan-PCR法、Invader法、FRETを利用した方法、ASP-PCR法、プライマー伸長法を用いたMALDI-TOF/MS(matrix)法、RCA(rolling cycle amplification)法、又はDNAチップ又はマイクロアレイを用いた方法等、多数の検体を比較的短時間で検出可能な検出法を用いることが特に好ましい。
以上の方法では、各方法に応じたプローブやプライマー等の核酸(本発明において「多型検出用核酸」ともいう)が使用される。プローブとして利用される多型検出用核酸の例としては、検出対象の多型位置を含む染色体領域(部分染色体領域)に特異的にハイブリダイズする核酸を挙げることができる。例えば、検出対象の多型がrs1656930多型であれば、位置:3q27(18803551bp)を含む染色体領域を標的としてプローブを設計すればよい。ここでの「部分染色体領域」の長さは、例えば16〜500塩基長、好ましくは18〜200塩基長、さらに好ましくは20〜50塩基長である。また、当該核酸は好ましくは部分染色体領域に相補的な配列を有するが、特異的なハイブリダイゼーションに支障のない限り、多少のミスマッチがあってもよい。ミスマッチの程度としては、1〜数個、好ましくは1〜5個、更に好ましくは1〜3個である。ここでの「特異的なハイブリダイゼーション」とは、核酸プローブによる検出の際に通常採用されるハイブリダイゼーション条件(好ましくはストリンジェントな条件)の下、標的の核酸(部分染色体領域)に対してハイブリダイズする一方で、他の核酸との間にクロスハイブリダイゼーションを有意に生じないことを意味する。尚、当業者であれば例えばMolecular Cloning(Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)を参考にしてハイブリダイゼーション条件を容易に設定可能である。
プライマーとして利用される多型検出用核酸の例としては、検出対象の多型位置を含む染色体領域(部分染色体領域)に相補的な配列を有し、当該多型部分を含むDNAフラグメントを特異的に増幅できるように設計された核酸を挙げることができる。プライマーとして利用される多型検出用核酸の他の例として、検出対象の多型部位がいずれかの塩基である場合にのみ当該多型部位を含むDNAフラグメントを特異的に増幅するように設計された核酸セットを挙げることができる。より具体的には、検出対象の多型部位を含むDNAフラグメントを特異的に増幅するように設計された核酸セットであって、多型部位がいずれかの塩基であるアンチセンス鎖の当該多型部位を含む染色体領域(部分染色体領域)に対して特異的にハイブリダイズするセンスプライマーと、センス鎖の一部領域(多型部位の近傍領域)に対して特異的にハイブリダイズするアンチセンスプライマーとからなる核酸セットを例示することができる。ここで、増幅されるDNAフラグメントの長さはその検出に適した範囲で適宜設定され例えば15〜1000塩基長、好ましくは20〜500塩基長、更に好ましくは30〜200塩基長である。
尚、プローブの場合と同様、プライマーとして利用される多型核酸用核酸についても、増幅対象(鋳型)に特異的にハイブリダイズし、目的のDNAフラグメントを増幅することができる限り、鋳型となる配列に対して多少のミスマッチがあってもよい。ミスマッチの程度としては、1〜数個、好ましくは1〜3個、更に好ましくは1〜2個である。
多型検出用核酸(プローブ、プライマー)には、検出法に応じて適宜DNA、RNA、ペプチド核酸(PNA:Peptide nucleic acid:)等が用いられる。多型検出用核酸の塩基長はその機能が発揮される長さであればよく、プローブとして用いられる場合の塩基長の例としては16〜500塩基長、好ましくは18〜200塩基長、さらに好ましくは20〜50塩基長である。他方、プライマーとして用いられる場合の塩基長の例としては10〜50塩基長、好ましくは15〜40塩基長、更に好ましくは15〜30塩基長である。
多型検出用核酸(プローブ、プライマー)はホスホジエステル法など公知の方法によって合成することができる。尚、多型検出用核酸の設計、合成等に関しては成書(例えばMolecular Cloning,Third Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press, New YorkやCurrent protocols in molecular biology(edited by Frederick M. Ausubel et al., 1987))を参考にすることができる。
本発明における多型検出用核酸を予め標識物質で標識しておくことができる。このような標識化核酸を用いることにより例えば、増幅産物の標識量を指標として多型を検出することができる。また、多型を構成する各遺伝子型の遺伝子における部分DNA領域をそれぞれ特異的に増幅するように設計された2種類のプライマーを互いに異なる標識物質で標識しておけば、増幅産物から検出される標識物質及び標識量によって核酸試料の遺伝子型を判別できる。このような標識化プライマーを用いた検出方法の具体例としては、多型を構成する各遺伝子型のセンス鎖にそれぞれ特異的にハイブリダイズする2種類の核酸プライマー(アレル特異的センスプライマー)をフルオレセインイソチオシアネートとテキサスレッドでそれぞれ標識し、これら標識化プライマーとアンチセンス鎖に特異的にハイブリダイズするアンチセンスプライマーとを用いて多型部位を含む部分DNA領域を増幅し、得られた増幅産物における各蛍光物質の標識量を測定して多型を検出する方法を挙げることができる。尚、ここでのアンチセンスプライマーを例えばビオチンで標識しておけば、ビオチンとアビジンとの特異的な結合を利用して増幅産物の分離を行うことができる。
多型検出用核酸の標識に用いられる標識物質としては7-AAD、Alexa Fluor(登録商標)488、Alexa Fluor(登録商標)350、Alexa Fluor(登録商標)546、Alexa Fluor(登録商標)555、Alexa Fluor(登録商標)568、Alexa Fluor(登録商標)594、Alexa Fluor(登録商標)633、Alexa Fluor(登録商標)647、CyTM 2、DsRED、EGFP、EYFP、FITC、PerCPTM、R-Phycoerythrin、Propidium Iodide、AMCA、DAPI、ECFP、MethylCoumarin、Allophycocyanin(APC)、CyTM 3、CyTM 5、Rhodamine-123、Tetramethylrhodamine、テキサスレッド(Texas Red(登録商標))、PE、PE-CyTM5、PE-CyTM5.5、PE-CyTM7、APC-CyTM7、オレゴングリーン(Oregon Green)、カルボキシフルオレセイン、カルボキシフルオレセインジアセテート、量子ドットなどの蛍光色素、32P、131I、125Iなどの放射性同位元素、ビオチンを例示でき、標識方法としてはアルカリフォスファターゼ及びT4ポリヌクレオチドキナーゼを用いた5'末端標識法、T4 DNAポリメラーゼやKlenow断片を用いた3'末端標識法、ニックトランスレーション法、ランダムプライマー法(Molecular Cloning,Third Edition,Chapter 9,Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)などを例示できる。
以上の多型検出用核酸を不溶性支持体に固定化した状態で用いることもできる。固定化に使用する不溶性支持体をチップ状、ビーズ状などに加工しておけば、これら固定化核酸を用いて多型の検出をより簡便に行うことができる。
アミノ酸の変化を伴う多型については、遺伝子発現産物であるペプチドないしタンパク質を用いて多型の検出を行うことにしてもよい。この場合、多型部位に対応するアミノ酸を含んでいる限り、発現産物の大きさ(長さ)は特に限定されない。遺伝子発現産物を用いた検出方法としては、多型部位のアミノ酸を直接検出する方法、又は立体構造の変化を利用して免疫学的に分析する方法などが挙げられる。前者としては、例えば、周知のアミノ酸配列分析法(エドマン法を利用した方法)を用いることができる。後者としては、多型を構成するいずれかの遺伝子型を有する遺伝子の発現産物に特異的な結合活性を有する抗体を用いた、ELISA法(酵素結合免疫吸着定量法)、ラジオイムノアッセイ、免疫沈降法、免疫拡散法等などを用いることができる。
標的(多型を構成するいずれかの遺伝子型を有する遺伝子の発現産物)に対する抗体は免疫学的手法、ファージディスプレイ法、リボソームディスプレイ法などを利用して調製することができる。標的に対する抗体はポリクローナルであってもモノクローナルであってもよい。免疫学的手法によるポリクローナル抗体の調製は次の手順で行うことができる。標的(又はその一部)を調製し、これを用いてウサギ等の動物に免疫を施す。標的(又はその一部)としては、生体材料から調製したもの(天然抗原)又は組換え抗原を用いることができる。免疫惹起作用を増強するために、キャリアタンパク質を結合させた抗原を用いてもよい。キャリアタンパク質としてはKLH(Keyhole Limpet Hemocyanin)、BSA(Bovine Serum Albumin)、OVA(Ovalbumin)などが使用される。キャリアタンパク質の結合にはカルボジイミド法、グルタールアルデヒド法、ジアゾ縮合法、MBS(マレイミドベンゾイルオキシコハク酸イミド)法などを使用できる。一方、CD46(又はその一部)を、GST、βガラクトシダーゼ、マルトース結合タンパク、又はヒスチジン(His)タグ等との融合タンパク質として発現させた抗原を用いることもできる。このような融合タンパク質は、汎用的な方法により簡便に精製することができる。
必要に応じて免疫を繰り返し、十分に抗体価が上昇した時点で採血し、遠心処理などによって血清を得る。得られた抗血清をアフィニティー精製し、ポリクローナル抗体とする。
一方、モノクローナル抗体については次の手順で調製することができる。まず、上記と同様の手順で免疫操作を実施する。必要に応じて免疫を繰り返し、十分に抗体価が上昇した時点で免疫動物から抗体産生細胞を摘出する。次に、得られた抗体産生細胞と骨髄腫細胞とを融合してハイブリドーマを得る。続いて、このハイブリドーマをモノクローナル化した後、目的タンパク質に対して高い特異性を有する抗体を産生するクローンを選択する。選択されたクローンの培養液を精製することによって目的の抗体が得られる。一方、ハイブリドーマを所望数以上に増殖させた後、これを動物(例えばマウス)の腹腔内に移植し、腹水内で増殖させて腹水を精製することにより目的の抗体を取得することもできる。上記培養液の精製又は腹水の精製には、プロテインG、プロテインA等を用いたアフィニティークロマトグラフィーが好適に用いられる。また、抗原を固相化したアフィニティークロマトグラフィーを用いることもできる。更には、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、硫安分画、及び遠心分離等の方法を用いることもできる。これらの方法は単独ないし任意に組み合わされて用いられる。
以上の方法で得られたポリクローナル又はモノクローナル抗体は必要に応じて標識化される。標識物質としては7-AAD、Alexa Fluor(登録商標)488、Alexa Fluor(登録商標)350、Alexa Fluor(登録商標)546、Alexa Fluor(登録商標)555、Alexa Fluor(登録商標)568、Alexa Fluor(登録商標)594、Alexa Fluor(登録商標)633、Alexa Fluor(登録商標)647、CyTM 2、DsRED、EGFP、EYFP、FITC、PerCPTM、R-Phycoerythrin、Propidium Iodide、AMCA、DAPI、ECFP、MethylCoumarin、Allophycocyanin(APC)、CyTM 3、CyTM 5、Rhodamine-123、Tetramethylrhodamine、テキサスレッド(Texas Red(登録商標))、PE、PE-CyTM5、PE-CyTM5.5、PE-CyTM7、APC-CyTM7、オレゴングリーン(Oregon Green)、カルボキシフルオレセイン、カルボキシフルオレセインジアセテート、量子ドットなどの蛍光色素、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、β−D−ガラクトシダーゼ等の酵素、ルミノール、アクリジン色素等の化学又は生物発光化合物、32P、131I、125Iなどの放射性同位元素、ビオチンを例示できる。
本発明の一態様では、更なるステップとして、被験者から採取された血液検体中のアディポネクチン濃度を測定するステップが行われる。即ちこの態様では、遺伝子多型と血中アディポネクチン濃度という二つの指標を併用してメタボリック症候群又は心血管疾患のリスクを判定する。このように血中アディポネクチン濃度をも考慮して判定すれば確度の更なる向上が図られる。
血液検体としては全血、血漿又は血清を用いる。好ましくは血漿又は血清を用いる。血漿や血清の調製は常法に従えばよい。尚、本明細書では、血液検体中のアディポネクチン濃度のことを「血中アディポネクチン濃度」という。用語「血中アディポネクチン濃度」は、用語「全血中アディポネクチン濃度」、用語「血漿アディポネクチン濃度」及び用語「血清アディポネクチン濃度」を包括する表現として使用される。
血中アディポネクチン濃度は、これに限定されるものではないが、好ましくは免疫学的手法を利用して測定する。免疫学的手法によれば迅速に且つ感度よくアディポネクチン濃度を測定できる。また、操作も簡便である。免疫学的手法によるアディポネクチン濃度の測定ではアディポネクチンに特異的結合性を有する物質が使用される。当該物質としては通常は抗アディポネクチン抗体が使用されるが、アディポネクチンに特異的結合性を有し、その結合量を測定可能な物質であれば抗アディポネクチン抗体に限らず使用することができる。
免疫学的手法により血中アディポネクチン濃度を測定する方法として、現在はELISA法(酵素免疫測定法 Enzyme −Linked Immuno Sorbent Assay)が主に用いられている。他にRIA法(放射性免疫測定法 Radio Immuno Assay)も使用されている。また、ラテックス凝集法を原理とするヒトアディポネクチン測定キット(例えば、Latex turbidometric immunoassay(Otsuka Pharmaceutical))も普及してきており、このようなキットを利用してアディネクチン濃度を測定してもよい。
血中アディポネクチン濃度の評価には、「血中アディポネクチン濃度が低いとリスクが高い」という基準が採用される。血中アディポネクチン濃度の高低を分ける境界値として、ある集団を対象として血中アディポネクチン濃度を測定したときの中央値又は平均値を用いることができる。ここでの「ある集団」とは例えば、特定の疾患(例えばメタボリック症候群、心筋梗塞)の患者集団、特定の疾患に罹患した特定の年齢層(例えば30代、40代、50代など)の集団、或いは病歴や年齢などに関係なく無作為に集めた集団などである。血中アディポネクチン濃度の高低を分ける境界値は例えば4μg/ml〜25μg/ml(血漿又は血清濃度)の範囲内において設定することができる。尚、アディポネクチン濃度の範囲を3以上に分けた上で区分の設定をしてもよい。
本発明は更なる態様として、メタボリック症候群又は心血管疾患の環境因子に関する有益な情報が得られるリスク検査法を提供する。この態様のリスク検査法によって得られる情報は、メタボリック症候群又は心血管疾患の予防や、メタボリック症候群又は心血管疾患に罹患した患者の生活の質(QOL)の向上を促す上で有用である。この態様のリスク検査法では、血中アディポネクチン濃度範囲とリスクの程度とが関連付けられた複数の区分を設定しておき、以下のステップ(1)〜(6)を行う。
(1)被験者から採取された核酸検体及び血液検体を用意するステップ;
(2)前記核酸検体についてrs1656930多型を検出し、該多型について遺伝子型を決定するステップ;
(3)決定した遺伝子型から、遺伝的要因によるリスクの程度を決定するステップ;
(4)前記血液検体中のアディポネクチン濃度を測定するステップ;
(5)前記複数の区分の中から、アディポネクチン濃度の測定値が含まれる区分を特定するステップ;
(6)特定した区分に関連付けられたリスクの程度と、(3)で決定したリスクの程度とを比較するステップ。
多型の検出、及びアディポネクチン濃度の測定に先立ち、血中アディポネクチン濃度範囲とリスクの程度とが関連付けられた複数の区分を設定しておく。換言すれば、リスクの程度毎にアディポネクチンの濃度範囲を区分けしておく。例えば、リスクが高い区分、リスクが中程度の区分(標準的区分)、リスクが低い区分の3区分を設定することにし、各区分にアディポネクチン濃度範囲を関連付ける。各血中アディポネクチン濃度範囲は、血中アディポネクチン濃度の境界値を決定する場合と同様に決定することができる。区分の設定の具体例を以下に示す。尚、以下の例は後述の実施例に示した研究成果を基に、前述した8学会によるメタボリック症候群の日本基準を考慮し、男性と女性に分けて区分を設定したものである。
(1)男性
区分1(リスクが高い区分):血中アディポネクチン濃度範囲 <4.4μg/ml
区分2(リスクが中程度の区分):血中アディポネクチン濃度範囲 4.4μg/ml−14.2μg/ml
区分3(リスクが低い区分):血中アディポネクチン濃度範囲 14.2μg/ml<
(2)女性
区分1(リスクが高い区分):血中アディポネクチン濃度範囲 <6.7μg/ml
区分2(リスクが中程度の区分):血中アディポネクチン濃度範囲 6.7μg/ml−20.6μg/ml
区分3(リスクが低い区分):血中アディポネクチン濃度範囲 20.6μg/ml<
尚、区分の数は特に限定されない。例えば、上記の例のような3区分ではなく、2区分、或いは4区分以上の区分を設定することにしてもよい。
この態様のリスク検査法ではまず、被検者の遺伝子多型を決定する(ステップ(1)及び(2))。この操作については、上に対応する記載があることから、その説明を省略する。続いて、決定した遺伝子型から、遺伝的要因によるリスクの程度を決定する(ステップ(3))。ここでのリスクの程度は、上掲の基準、即ち(a)塩基がAのアレルが検出されればリスクが高い、(b)GG型のリスク < AA型のリスク、(c)GG型のリスク < AG型のリスク、 (d)AA型又はAG型であればリスクが高い、(e)被験者が男性の場合、GG型のリスク < AG型のリスク、(f)被験者が男性の場合、GG型のリスク < AG型又はAA型のリスク、(g)被験者が女性の場合、GG型のリスク < AG型のリスク、(h)被験者が女性の場合、GG型のリスク < AG型又はAA型のリスク、(i)被験者が男性の場合、AG型であればリスクが高い、(j)被験者が男性の場合、GG型であればリスクが低い、(k)被験者が女性の場合、AG型であればリスクが高い、及び(l)被験者が女性の場合、GG型であればリスクが低い、の中から選択される一つ以上の基準に従って決定すればよい。
以上の操作と並行して、血液検体中のアディポネクチン濃度を測定する(ステップ(4))。続いて、予め設定した複数の区分(血中アディポネクチン濃度範囲とリスクの程度とが関連付けられている)の中から、アディポネクチン濃度の測定値が含まれる区分を特定する(ステップ(5))。
尚、「遺伝子型の決定」から「遺伝的要因によるリスクの程度の決定」までの操作と、「血中アディポネクチン濃度の測定」から「区分の特定」までの操作は、いずれを先に行ってもよい。勿論、これら二つの操作を同時に行ってもよい。
以上の操作の後、特定した区分に関連付けられたリスクの程度と、遺伝的要因によるリスクの程度とを比較する(ステップ(6))。比較結果は、メタボリック症候群又は心血管疾患の環境因子に関する有益な情報を与える。本発明では、このようにして得られた比較結果を基にメタボリック症候群又は心血管疾患について環境因子の影響を評価する。例えば、特定した区分に関連付けられたリスクの程度が低く、遺伝的要因によるリスクの程度が高いのであれば、環境要因によりリスクの低い状態が形成されていると判断できる。従って、「現在の生活様式(生活習慣)を維持するとよい」といった助言を行うことができる。特定した区分に関連付けられたリスクの程度が中程度であり、遺伝的要因によるリスクの程度が高い場合も同様の助言を行うことができる。一方、特定した区分に関連付けられたリスクの程度が高く、遺伝的要因によるリスクの程度が低い又は中程度であれば、環境要因が悪影響を及ぼしていると判断できる。従って、「生活様式(生活習慣)を改善する必要がある」といった助言を行うことができる。特定した区分に関連付けられたリスクの程度が中程度であり、遺伝的要因によるリスクの程度が低い場合も同様の助言を行うことができる。
一態様では、ステップ(2)において、rs1656930多型に加えてアディポネクチン遺伝子のI164T多型又はアディポネクチン遺伝子のG-450A多型、或いはこの両者を検出し、各多型について遺伝子型を決定する。続くステップ(3)では、遺伝子型の組み合わせから、遺伝的要因によるリスクの程度を決定することになる。このように、メタボリック症候群又は心血管疾患のリスクに関連する複数の多型を併用すれば、信頼度が一層高い判定・評価が可能となる。尚、二つの多型又は三つの多型を組み合わせた場合のリスクの程度は、例えば、上掲の基準(a)〜(x)を適宜組み合わせて決定すればよい。
(メタボリック症候群又は心血管疾患のリスク検査用試薬及びキット)
本発明の第2の局面は、本発明のリスク検査法に使用される試薬及びキット(メタボリック症候群又は心血管疾患のリスク検査用キット)を提供する。本発明の試薬は、rs1656930多型を検出するための核酸(多型検出用核酸)からなる。
本発明の試薬である多型検出用核酸は、それが適用される検出法(上述したアレル特異的核酸等を用いたPCR法を利用する方法、PCR-RFLP法、PCR-SSCP、TaqMan(登録商標)-PCR法、Invader(登録商標)法等)に応じて適宜設計される。多型検出用核酸の詳細については既述の通りであるが、キットの成分として利用可能な多型検出用核酸又は多型検出用核酸のセットの具体例を以下に示す。
(1)多型位置の塩基がGである染色体領域(部分染色体領域)に相補的な配列を有する非標識又は標識核酸
(2)多型位置の塩基がAである染色体領域(部分染色体領域)に相補的な配列を有する非標識又は標識核酸
(3)(1)の核酸と(2)の核酸との組合せ
(4)多型位置の塩基がGである場合にのみ、該多型部位を含むDNAフラグメントを特異的に増幅するように設計された核酸セット
(5)多型位置の塩基がAである場合にのみ、該多型部位を含むDNAフラグメントを特異的に増幅するように設計された核酸セット
(6)(4)の核酸セットと(5)の核酸セットとの組合せ
(7)多型位置を含むDNAフラグメントを特異的に増幅するように設計された核酸セットであって、多型位置の塩基がGである、当該多型位置を含む染色体領域(部分染色体領域)に対して特異的にハイブリダイズするセンスプライマー、及び/又は多型位置の塩基がAである、当該多型位置を含む染色体領域(部分染色体領域)に対して特異的にハイブリダイズするセンスプライマーと、当該部分染色体領域の近傍領域に対して特異的にハイブリダイズするアンチセンスプライマーと、からなる核酸セット
一態様では、本発明のキットは、rs1656930多型を検出するための核酸に加えて、アディポネクチン遺伝子のI164T多型を検出するための核酸、又はアディポネクチン遺伝子のG-450A多型を検出するための核酸、或いはこの両者を更に含む。以下、当該追加要素の具体例を以下に示す。
<I164T多型検出用核酸>
(1)多型位置の塩基がTである染色体領域(部分染色体領域)に相補的な配列を有する非標識又は標識核酸
(2)多型位置の塩基がCである染色体領域(部分染色体領域)に相補的な配列を有する非標識又は標識核酸
(3)(1)の核酸と(2)の核酸との組合せ
(4)多型位置の塩基がTである場合にのみ、該多型部位を含むDNAフラグメントを特異的に増幅するように設計された核酸セット
(5)多型位置の塩基がCである場合にのみ、該多型部位を含むDNAフラグメントを特異的に増幅するように設計された核酸セット
(6)(4)の核酸セットと(5)の核酸セットとの組合せ
(7)多型位置を含むDNAフラグメントを特異的に増幅するように設計された核酸セットであって、多型位置の塩基がTである、当該多型位置を含む染色体領域(部分染色体領域)に対して特異的にハイブリダイズするセンスプライマー、及び/又は多型位置の塩基がCである、当該多型位置を含む染色体領域(部分染色体領域)に対して特異的にハイブリダイズするセンスプライマーと、当該部分染色体領域の近傍領域に対して特異的にハイブリダイズするアンチセンスプライマーと、からなる核酸セット
<G-450A多型検出用核酸>
(1)多型位置の塩基がAである染色体領域(部分染色体領域)に相補的な配列を有する非標識又は標識核酸
(2)多型位置の塩基がGである染色体領域(部分染色体領域)に相補的な配列を有する非標識又は標識核酸
(3)(1)の核酸と(2)の核酸との組合せ
(4)多型位置の塩基がAである場合にのみ、該多型部位を含むDNAフラグメントを特異的に増幅するように設計された核酸セット
(5)多型位置の塩基がGである場合にのみ、該多型部位を含むDNAフラグメントを特異的に増幅するように設計された核酸セット
(6)(4)の核酸セットと(5)の核酸セットとの組合せ
(7)多型位置を含むDNAフラグメントを特異的に増幅するように設計された核酸セットであって、多型位置の塩基がAである、当該多型位置を含む染色体領域(部分染色体領域)に対して特異的にハイブリダイズするセンスプライマー、及び/又は多型位置の塩基がGである、当該多型位置を含む染色体領域(部分染色体領域)に対して特異的にハイブリダイズするセンスプライマーと、当該部分染色体領域の近傍領域に対して特異的にハイブリダイズするアンチセンスプライマーと、からなる核酸セット
血液検体中のアディポネクチン濃度を測定するための成分をキットに含めることにしてもよい。多型検出用核酸の場合と同様、当該成分についても、測定方法に応じた物質を採用すればよい。例えば免疫学的測定法の実施に必要な抗アディポネクチン抗体(例えばELISA法用として固相化抗アディポネクチン抗体と標識化抗アディポネクチン抗体の組合せ)をアディポネクチン濃度測定用成分として用いることができる。
多型検出用核酸を使用する際(即ち多型検出の際)に必要な試薬(DNAポリメラーゼ、制限酵素、緩衝液、発色試薬など)や容器、器具等、及び/又はアディポネクチン濃度測定用成分を使用する際(即ちアディポネクチン濃度の測定の際)に必要な試薬(緩衝液、ブロッキング用試薬、発色試薬など)や容器、器具等を本発明のキットに含めてもよい。尚、通常、本発明のキットには取り扱い説明書が添付される。
MetS及びMetSに引き続き発症する心血管疾患のリスクの早期発見や予防に有効な手段の創出を目指し、以下の検討を行った。
1.MetSとアディポネクチン濃度の関係
日本人一般住民3298名(男性1456人、女性1842人)から採取された血液を用い、ラテックス法(大塚製薬株式会社製)にて血中アディポネクチン濃度を測定し、メタボリック症候群の構成要素との相関を調べた。MetSの基準は日本内科学会基準を採用した。尚、一般健康診断時に説明を行い、同意の得られた者のみを対象とした。
血中アディポネクチン濃度はメタボリック症候群のそれぞれの構成要素と強く相関した(図1)。女性では男性に比べ明らかに高い濃度を示し(図2)、また若年者よりも高齢者で高値を示した(図3)。一方、対照群(373人(男性140人、女性233人))に比較してMetS群(415人(男性291人、女性124人))は有意に低値であった(P<0.0001、図4)。MetS群と対照群の血中アディポネクチン濃度はオーバーラップしている部分が多く、そこは境界域と考えられる。その境界域からはずれた部分のうち、MetSの血中アディポネクチン濃度の95%信頼区間より濃度が高い群はMetSになる可能性が低く、一方で対照群の95%信頼区間より濃度が低い群はMetSとなる可能性が高いと考えることができる。つまり、日本のMetS診断基準を用いた解析では、男性で4.4μg/ml未満、女性で6.7μg/ml未満がMetS高リスク群であると捉えることができる(図5、6)。同様に男性では14.2μg/ml以上、女性では20.6μg/ml以上がMetS低リスク群であると捉えることができる(図5、6)。
2.アディポネクチン濃度に関連する遺伝子多型の検索
ADIPOQ遺伝子を含む染色体領域(25kbp)に存在する30個のSNP(図7)について、無作為に抽出した500人のサンプルを用いてスクリーニング解析し、各多型と血中アディポネクチン濃度の関連を調べた。日本人において、頻度の無い多型も認められた。具体的には、頻度のある各多型につき、分散分析にて関連性を調べた。関連のありそうな多型に関してはBonferroni testにてその後の検定を行った。また、各多型間の連鎖不平衡を評価し、強い連鎖不平衡のある多型はその中から代表的な一つ(Tag SNP)を候補とした。
スクリーニング解析した30個のSNP中、I164T多型、G-450A多型及びrs1656930多型が血中アディポネクチン濃度とよく相関した(図8、9)。I164T多型及びG-450A多型はこれまでに報告のある多型であったが(非特許文献6、7)、rs1656930多型の報告はない。
3.遺伝子多型の大規模解析
強い相関が認められた多型(I164T多型、G-450A多型、rs1656930多型)について大規模解析を行った(全体3298名 男性1456名 女性1842名)。全例解析においても、まず分散分析にて評価し、その後の検定としてBonferroni testを施行した。全体での解析及び男女別での解析を施行した。その結果、I164T多型はマイナーアレル頻度が低いものの、血中アディポネクチン濃度の減少とかなり強い相関を示した(図10、11)。またG-450A多型、rs1656930多型もそれぞれ単独で血中アディポネクチン濃度と相関を示した(図10、11、12)。新しく発見されたrs1656930多型は、頻度的にはI164T多型より多く、またG-450A多型よりアディポネクチン濃度に対する影響が大きい非常に有用な多型である事が分かる。尚、これら3個の多型を組み合わせた場合の血中アディポネクチン濃度の比較を図13(rs1656930多型を中心としたもの)及び図14(I164T多型を中心としたもの)に示した。
以上の結果と、血中アディポネクチン濃度がメタボリック症候群のそれぞれの構成要素と強く相関したこと(1.の結果。非特許文献1にも同様の結果が示される)、及び血中アディポネクチン濃度と心血管疾患が関連する事実(非特許文献2)、更にはMetSが心血管疾患のリスク因子になるという事実を総合すると、上記3多型(単独又は組合せ)の検出結果は、MetSや心血管疾患のリスク予測に有用であるといえる。例えば、MetSを発症していない段階に上記多型を検出すれば、将来のMetSの発症リスクを予測することができる。MetSの発症リスクを把握することは心血管疾患の予防に有効である。また、上記3多型は、保有率が少ないがかなり強い相関を示す多型、保有率が5%を超え強い相関を示す多型、40%以上の保有率があり適度に相関を示す多型の組み合わせであり、スクリーニングとしての使用に非常に有用である。
ここで、図10に示した結果より、遺伝子型とリスクの程度(高低)に関して以下の関係があるといえる。
(I164T多型の場合)
TT型のリスク < TC型のリスク < CC型のリスク
(rs1656930多型)
GG型のリスク < AA型のリスク
GG型のリスク < AG型のリスク
(G-450A多型)
AA型のリスク < GG型のリスク
AG型のリスク < GG型のリスク
一方、男女別で血中アディポネクチン濃度を比較した結果を示す図11より、遺伝子型とリスクの程度(高低)に関して以下の関係があるといえる。
(I164T多型の場合(男性))
TT型のリスク < TC型のリスク < CC型のリスク
(I164T多型の場合(女性))
TT型のリスク < TC型のリスク
(rs1656930多型(男性))
GG型のリスク < AG型のリスク
(rs1656930多型(女性))
GG型のリスク < AG型のリスク
(G-450A多型(男性))
AA型のリスク < GG型のリスク
AG型のリスク < GG型のリスク
(G-450A多型(女性))
AA型のリスク < GG型のリスク
一方、rs1656930多型について男女別にドミナントモデルで解析した結果を示す図12より、遺伝子型とリスクの程度(高低)に関して以下の関係があるといえる。
(rs1656930多型(男性))
GG型のリスク < AG型又はAA型のリスク
(rs1656930多型(女性))
GG型のリスク < AG型又はAA型のリスク
ところで、血中アディポネクチン濃度の実測値は遺伝的要因と環境要因を反映したものである。したがって、上記多型の検出結果(遺伝的要因)と、血中アディポネクチン濃度の実測値を比較すれば、環境要因の影響(生活習慣)を評価できる。評価結果は、MetSや心血管疾患の予防や改善を促すための有益な情報となる。例えば、遺伝子多型の検出結果からは血中アディポネクチン濃度が高いと予想されたにもかかわらず、血中アディポネクチン濃度の実測値が低かった場合、環境要因が悪影響を及ぼし、リスクが高い状態が形成されていると判断できる。このように、上記多型の検出結果と、血中アディポネクチン濃度の実測値は、環境要因の評価に有用である。
本発明のリスク検査法は、MetS又は心血管疾患に関して確度が高く臨床上有用なリスク情報(易罹患性に関する情報)を与える。リスク情報は、MetS又は心血管疾患の予防や早期診断、より適切な治療方針の決定、治療効果の向上、患者のQOL(Quality of Life:生活の質)の向上などに役立つ。また、無駄な医療行為を未然に防止することによる医療経済への貢献も期待される。
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。

Claims (11)

  1. モンゴロイドである被験者から採取された核酸検体について、米国バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のSNPデータベースにおける登録番号1656930で特定される一塩基多型(配列表の配列番号1の配列における1138番目の塩基位置が相当するrs1656930多型)を検出するステップを含む、メタボリック症候群又は心血管疾患のリスク検査法。
  2. 以下の(a)〜(h)からなる群より選択される一以上の基準に従いリスクを判定することを特徴とする、請求項1に記載のリスク検査法:
    (a)塩基がAのアレルが検出されればリスクが高い;
    (b)GG型のリスク < AA型のリスク;
    (c)GG型のリスク < AG型のリスク;
    (d)AA型又はAG型であればリスクが高い;
    (e)被験者が男性の場合、GG型のリスク < AG型のリスク;
    (f)被験者が男性の場合、GG型のリスク < AG型又はAA型のリスク;
    (g)被験者が女性の場合、GG型のリスク < AG型のリスク;
    (h)被験者が女性の場合、GG型のリスク < AG型又はAA型のリスク;
    (i)被験者が男性の場合、AG型であればリスクが高い;
    (j)被験者が男性の場合、GG型であればリスクが低い;
    (k)被験者が女性の場合、AG型であればリスクが高い;
    (l)被験者が女性の場合、GG型であればリスクが低い。
  3. アディポネクチンのI164T変異をコードするアディポイネクチン遺伝子の多型、及び/又はアディポネクチン遺伝子のG-450A多型を検出するステップを更に含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のリスク検査法。
  4. 被験者から採取された血液検体中のアディポネクチン濃度を測定するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のリスク検査法。
  5. 血中アディポネクチン濃度範囲とリスクの程度とが関連付けられた複数の区分を設定しておき、以下のステップ(1)〜(6)を行うことを特徴とする、メタボリック症候群又は心血管疾患のリスク検査法:
    (1)モンゴロイドである被験者から採取された核酸検体及び血液検体を用意するステップ;
    (2)前記核酸検体について、米国バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のSNPデータベースにおける登録番号1656930で特定される一塩基多型(配列表の配列番号1の配列における1138番目の塩基位置が相当するrs1656930多型)を検出し、該多型について遺伝子型を決定するステップ;
    (3)決定した遺伝子型から、遺伝的要因によるリスクの程度を決定するステップ;
    (4)前記血液検体中のアディポネクチン濃度を測定するステップ;
    (5)前記複数の区分の中から、アディポネクチン濃度の測定値が含まれる区分を特定するステップ;
    (6)特定した区分に関連付けられたリスクの程度と、(3)で決定したリスクの程度とを比較するステップ。
  6. ステップ(2)において、rs1656930多型に加えて、アディポネクチンのI164T変異をコードするアディポイネクチン遺伝子の多型、及び/又はアディポネクチン遺伝子のG-450A多型を検出し、各多型について遺伝子型を決定することを特徴とする、請求項5に記載のリスク検査法。
  7. 前記血液検体として血清又は血漿が用いられる、請求項1〜6のいずれか一項に記載のリスク検査法。
  8. 米国バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のSNPデータベースにおける登録番号1656930で特定される一塩基多型(配列表の配列番号1の配列における1138番目の塩基位置が相当するrs1656930多型)を検出するための核酸であって、前記多型部位を含む一定領域に相補的な配列を含み、前記領域に対して特異的にハイブリダイズする核酸を含む、モンゴロイドを被検者とした、メタボリック症候群又は心血管疾患のリスク検査用の試薬。
  9. 請求項8に記載の試薬を含む、メタボリック症候群又は心血管疾患のリスク検査用キット。
  10. アディポネクチンのI164T変異をコードするアディポイネクチン遺伝子の多型を検出するための核酸、及び/又はアディポネクチン遺伝子のG-450A多型を検出するための核酸を更に含むことを特徴とする、請求項9に記載のリスク検査用キット。
  11. 血液検体中のアディポネクチン濃度を測定するための成分を更に含むことを特徴とする、請求項9又は10に記載のリスク検査用キット。
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