[好適な実施形態の詳細な説明]
一般に、ここで使用する用語、および以下に記述する蛍光、コンピュータ、検出、化学および実験室手法の多くは、この技術分野において周知のものであって、一般的に採用されているものである。標準的な技術が、化学合成、蛍光、光学、分子生物学、コンピュータソフトウエアおよび統合化(インテグレーション)において、一般に用いられている。一般に、化学反応と細胞測定(セルアッセイ)と酵素反応とは、適切な場合には、製造者の仕様にしたがって実行される。技術および手順は、一般に、当該分野、および下記のものを含めた種々の一般的な参考文献における通常の方法にしたがって行われる。
蛍光技術に関して:Lakowicz, J. R., Topics in Fluorescence Specroscopy(蛍光分光分析のトピック)(全3巻), New York: Prenum Press(1991)、およびLakowicz, J. R., Emerging applications of fluorescence specroscopy to celluar imaging: lifetime imaging, metal-ligand probes, multi-photon exitation and light quenching(細胞イメージングへの蛍光分光分析の出現しつつある諸応用:寿命画像形成、金属−配位子プローブ、多光量子励起および消光), Scanning Microsc. Suppl., Vol. 10 (1996) pp. 213-24。
分子生物学的方法に関して:Sambrook et al, Molecular Cloning: A Labolatory Manual(分子クローニング:研究室マニュアル)(第2版), (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.。
細胞生物学的方法に関して:Cells: A Labolatory Manual(細胞:研究室マニュアル)(第1版), (1998) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.。
一般的な光学的方法について:Optics Guide 5(光学ガイド5), Melles Griot(R), Irvine CA;Optical Waveguide Theory(光導波路理論), Snyder & Love, Chapman & Hallにより出版。
一般的な電気生理学的方法およびイオンチャネルの諸特性について:Hille, B., Ionic Channels of Excitable membrane(励起できる膜のイオンチャネル)(第2版), (1992) Sinauer Associates, Inc., Sunderland, Mass.。
電子回路に関して:Horowitz and Hill, The Art of Electronics(エレクトロニクス技術)(第2版),(1992), Cambridge University Press,Cambridge, U.K.。
下記の諸定義は、ここで本発明を説明するために用いられる種々の用語の意味および範囲を示し、定義するために記述されている。
活性化(activation)という用語は、イオンチャネルの休止している(非導通)状態から活性化された(導通)状態への遷移を指す。
活性化しきい値という用語は、それより上ではチャネルの測定可能な開通が起きるような最低電位を指す。
アノードという用語は、外部電源により接地に対して正電位へ駆動された時の電極を指す。
細胞刺激領域という用語は、対象とする細胞がその中に置かれているような、大きな電気刺激(通常、5V/cmまたはそれ以上)を受けている2個の電極により画定される領域を意味する。通常は、細胞刺激領域は、観察領域よりも大きいか等しい。標準の96個のウェルをベースとする測定のためには、細胞刺激領域は、通常、約16mm2である。
観察領域という用語は、その上で測定が行われているような、システムの部分を意味する。観察領域は、複数ウェルプレート(マルチウェルプレート)に基づく測定のためには、最低0.5mm2の領域である。
生物発光タンパク質という用語は、化学反応の触媒作用によって光を生じさせることができるタンパク質を指す。この用語は、ルシフェリン(luciferin)を酸化させるなどの、生物発光または化学発光反応を触媒するタンパク質を包含する。生物発光タンパク質という用語は、天然に存在する生物発光タンパク質のみでなく、変更されたスペクトルまたは物理的諸特性を示す突然変異体も含む。
二相的(biphasic)という用語は、各々逆の極性を有する2つの部分を有するパルスを指す。
ボルツマン(Boltzman)関数という用語は、S字形(すなわち、階段に似た)応答関数
を指す。ここで、yは独立変数、
y0はx→∞となったときの関数の極限に等しい調整可能なパラメータ、
Aはステップサイズに等しい調整可能なパラメータ、
x50はステップの中点に関連する調整可能なパラメータ、
Δxはステップの幅を記述する調整可能なパラメータである。
カソードという用語は、外部電源により接地に対して負電位へ駆動された時の電極を指す。
消極(depolarize)という用語は、細胞のトランスメンブレンポテンシャルをゼロに接近させるようにすることを意味する。通常時には負の休止電位にある細胞の場合には、この用語は、トランスメンブレンポテンシャルが正の向きに変化することを意味する。
実効濃度(50%)すなわちEC50は、ある薬理学的化合物のその高い濃度における最大効果と比較して、その化合物が半分の効果を持つような濃度を指す。
電気的に励起可能であるという用語は、活動電位(action potential)を発生することによるあるしきい値を超える電気刺激に対して反応する細胞または組織を指す。電気的に励起可能な細胞は、内向きの電流を発生する少なくとも1つの電圧依存イオンチャネル型と、外向きの電流を発生する少なくとも1つの電圧依存イオンチャネル型とを含む。
電気刺激という用語は、細胞外の電流パルスを用いて細胞中に電圧変化を開始させることを意味する。
電極という用語は、機器と試験システムとの間の制御可能な伝導性インタフェースを指す。
電気的透過(electropermeablization)という用語は、膜に形成されている水和した孔が、水分子および小さい単原子イオンを通すには十分な大きさだけであるような、適度なエレクトロポレーション(electroporation)を指す。
エレクトロポレーションという用語は、細胞の膜に大きな電位を印加するとその膜が絶縁破壊して、水和した(hydrated)通路が膜に形成される現象を指す。
蛍光成分という用語は、光を吸収し、その後でそのエネルギーの少なくともある割合をある時間にわたって光として再放出することができる成分を指す。この用語は、個別化合物、分子、自然蛍光タンパク質および高分子錯体、または、蛍光および非蛍光化合物または分子の混合物を含む。蛍光化合物という用語は、さらに、光を吸収して、その後で何ミリ秒にもわたってエネルギーを再放出する、有機配位子増感体を添加されたランタニドイオンおよびランタニド錯体などの、減衰時間が長い蛍光を示す化合物を含みもする。
FRETという用語は、蛍光共鳴エネルギー伝達(fluorescence resonance energy transfer)を指す。本発明の目的のために、FRETは、2つの蛍光成分の間、蛍光成分と非蛍光成分の間、ルミネッセント成分と蛍光成分の間およびルミネッセント成分と非蛍光成分の間で起きるエネルギー伝達過程を含む。
ここで使用する遺伝子ノックアウト(gene knockout)という用語は、当業者にはなじみのどのようなトランスジェニック技術によっても達成されている、機能の完全な喪失した生体内(in vivo)での遺伝子の目標にされた分裂を指す。一実施形態では、遺伝子ノックアウトを持つトランスジェニック(形質転移)動物は、相同的組換えによって機能しないようにすべき遺伝子を目指した挿入によって、ターゲット遺伝子が機能しないようにされた動物である。
ヒル(Hill)関数という用語は、S字形(すなわち、階段に似た)応答関数
を指す。ここにyは独立変数、
y0はx→∞での関数の極限に等しい調整可能なパラメータ、
Aはステップサイズに等しい調整可能なパラメータ、
x0はステップの中点に関連する調整可能なパラメータ、
nはステップの鋭さを記述する調整可能なパラメータである。
ヒル(Hill)係数という用語は、ヒル関数中のパラメータnを指す。
ヒットという用語は、測定(アッセイ)において所望の特性を示す試験化合物を指す。
ホモログ(同族体:homolog)は、ALIGNプログラムを用いて最適に整列させられた時に、75%同一より大きいか、それに等しい、2つの配列またはそれの部分を指す。相同すなわち配列同一性は下記の事柄を指す。2つのアミノ酸配列は、それらの配列の間に部分的な同一性または完全な同一性が存在するならば、相同である。例えば、85%の相同は、2つの配列が最大限一致して整列されているとアミノ酸の85%が同一であることを意味する。ギャップ(一致させられている2つの配列のいずれかにおける)は、最大限の一致において、許される。5またはそれ以下のギャップ長さが好ましく、2またはそれ以下ではもっと好ましい。あるいは、好ましくは、突然変異データマトリックスと6またはそれより大きいギャップペナルティでもって、プログラムALIGNを用いて、2つのタンパク質配列(または、長さが少なくとも30アミノ酸であるタンパク質から得られたポリペププチド配列)が5(標準偏差単位で)より大きい整列スコアを持つならば、ここでこの用語が使用されているように、それらは相同である。Dayoff, M.O., in Atlas of Protein Sequence and Structure(タンパク質配列および構造の地図において), 1972, 第5巻, National Biomedical Research Foundation, pp.101-110およびその巻のSupplement 2, pp. 1-10を参照。
過分極(hyperpolarize)という用語は、細胞のトランスメンブレンポテンシャルをゼロからさらに大きく動かすことを意味する。通常時は負の休止電位にある細胞の場合には、この用語は、トランスメンブレンポテンシャルが負の向きに変化することを意味する。
不活性化という用語は、イオンチャネルが不活性化された状態に動くことを意味する。
活性でなくなったという用語は、特定の非導通のコンホメーション(立体配座)状態にある電圧依存イオンチャネルを指す。活性でなくなった状態への、およびそれからの遷移は、他のコンホメーション状態の間の遷移より一般に遅い。活性でなくなった状態は、高くされたトランスメンブレンポテンシャルにおいては、通常、好ましい状態である。低いトランスメンブレンポテンシャルでは、活性でなくなった状態は不安定で、休止状態に緩和する。
カーネル(Kernel)という用語は、1つまたは複数の他の時間的に変化する関数で畳み込まれることを意図されている数学的関数を意味する。理論的には、カーネルは、独立変数が±∞に接近するにつれてゼロになるような任意の関数とすることができる。実際には、カーネルは、任意の波形関数発生器にプログラムでき、またはコンピュータで制御されるデジタル−アナログ(D/A)変換器により発生できる、任意の波形とすることができる。
ルミネッセント成分という用語は、電気的エネルギー(例えばエレクトロルミネッセンス)、化学的エネルギー(例えば化学発光)または音響エネルギーなどのエネルギーを吸収でき、その後でそのエネルギーの少なくとも一部分を光としてある時間にわたって放出できる成分である。成分という用語は、光を放出させる個別化合物、分子、生体発光タンパク質および高分子錯体、またはルミネッセントおよび非ルミネッセント化合物または分子の混合物を含む。
トランスメンブレンポテンシャルモジュレータという用語は、細胞区画または細胞下区画の休止または刺激されたトランスメンブレンポテンシャルを変更できる成分を指す。この用語は、個別化合物、イオンチャネル、受容体、孔(ポア)を形成するタンパク質、またはそれらの成分の任意の組合わせを含む。
膜時定数すなわちτMという用語は、膜抵抗(RM)と容量(キャパシタンス)(CM)の積を意味する。
単相的(monophasic)という用語は、極性が逆の極性に変化しないようなパルスを指す。
天然蛍光タンパク質という用語は、タンパク質内の内部アミノ酸の環化(cyclization)または酸化により、あるいは蛍光コファクターの酵素添加により、高蛍光、固有発色団を形成できるタンパク質を指す。この用語は、変更されたスペクトルまたは変更された物理的特性を示す野生型蛍光タンパク質および人工的な突然変異体を含む。この用語は、タンパク質内の修飾されていないチロシン基、トリプトファン基、ヒスチジン基およびフェニルアラニン基の蛍光寄与によってのみ弱い蛍光を示すタンパク質は含まない。
天然に存在するという用語は、人工的な遺伝修飾またはその他の修飾がない時にその細胞により発生される成分を指す。
マルチウェルプレートという用語は、ほぼ平らな表面上に配置されているアドレス可能なウェルの二次元アレイを指す。マルチウェルプレートは、任意の数の個別のアドレス可能なウェルを含むことがあり、かつ任意の幅および任意の深さのアドレス可能なウェルを含む。マルチウェルプレートの一般的な例は、96個のウェルのプレートと、384個のウェルのプレートと、3456個のウェルのNanoplates(商標名)とを含む。
操作可能にリンクされているという用語は、そのように記述されている構成要素が意図されているやり方で機能できるようにする関係に、それらの構成要素があるような並置を指す。符号化配列に操作可能にリンクされている制御配列が、符号化配列の発現がその制御配列に適合できる諸条件の下にあるようにして連結される。
分極された細胞という用語は、それの細胞膜を横切って電位差を持つ細胞を意味する。
整流という用語は、コンダクタンスが非直線的であって、好適な向きを持つことを意味する。
不活性からの解放という用語は、不活性にされている閉じられているチャネルの、今や開くことができる休止して閉じられているチャネルへの転換を指す。
繰り返しという用語は、最低2回繰り返すことを意味する。
再分極という用語は、細胞のトランスメンブレンポテンシャルをそれの休止電位に接近させることを意味する。
休止または休止状態という用語は、電圧依存イオンチャネルが閉じられているが、不活性ではないことを指す。
細胞に対する休止電位という用語は、外部からの影響を受けていないときの細胞の平衡トランスメンブレンポテンシャルを指す。
特定のイオンに対する逆電位という用語は、そのイオンの内向きフラックスと外向きフラックスが等しいようなトランスメンブレンポテンシャルを指す。
ほぼ平行であるという用語は、相互に面している2つの物体の表面の間の距離が、各物体の関連する表面上のあらゆる点において測定された時に、10%より小さく、好ましくは5%より小さいだけ異なることを意味する。
目標にできるという用語は、ある条件の下で特定の場所に局在化される能力を持つ成分を指す。例えば、2か所またはそれ以上の場所に存在でき、ある条件の下で定められている場所に転移することができる能力を有するタンパク質は、その場所を目標にできる。一般的な例は、細胞の活性化の際のプロテインキナーゼCの原形質膜への転移や、タンパク質を含んでいるSH2ドメインのホスホリル化されているチロシン残基への結合を含む。この用語は、ほとんどの条件の下では、1つの特定の場所すなわちサイトに永続的に関連付けられている成分を含む。
しきい値エレクトロポレーションという用語は、それより上では生きている細胞の検出可能なエレクトロポレーションが起きるような、外部から加えられる電界の強さを指す。
試験化合物(test compound)という用語は、推定上のモジュレータとして本発明の1つまたは複数のスクリーニング法によって試験すべき化学物質を指す。試験化合物は、無機化合物、有機化合物、タンパク質、ペプチド、炭水化物、脂質またはそれらの混合物などの任意の化学物質とすることができる。通常は、スクリーニング(選別)のために、0.01マイクロモル、1マイクロモル、10マイクロモルなどの、種々の所定の濃度の試験化合物が使用される。試験化合物のコントロール(対照)は、試験化合物が存在しない時の信号の測定、またはターゲットを変調することが知られている化合物との比較を含むことができる。
変換された(transformed)という用語は、組み換え核酸技術により、異型核酸分子が中に入れられているような細胞(またはそれの子孫)を指す。
トランスジェニック(transgenic)という用語は、それの全ての細胞内の外因性遺伝物質を含む有機体を記述するために、用いられる。この用語は、初期の胚すなわち受精卵の生体外(in vitro)操作によって、またはトランスジェニック技術によってゲノムが変化させられて特定の遺伝子ノックアウトを生ずるような任意の有機体を含む。
トランスジェン(導入遺伝子:transgene)という用語は、細胞中に人工的に挿入されて、その細胞から発現する有機体のゲノムの一部(すなわち、安定に統合された、または安定な染色体外要素)になるようなDNAの任意の断片である。そのようなトランスジェンは、トランスジェニック有機体に対して部分的または全面的に非相同である(すなわち外来)遺伝子を含むことがあり、または有機体の内因性遺伝子と相同な遺伝子を表わすことがある。この定義には、DNAに転写されてその後でゲノムに包含されるRNA配列を供給することによって形成されるトランスジェンが含まれる。本発明のトランスジェンは、トランスジェニック非ヒト動物で発現されることができる蛍光タンパク質または生体発光タンパク質を符号化するDNA配列を含む。
トランジスタ−トランジスタロジックすなわちTTLという用語は、ほぼ+5Vの電圧が真(TRUE)で、ほぼ0Vの電位が偽(FALSE)であるような電子論理システムを指す。
一様な電界は、任意の時刻に、観察領域内の平均強さから電界が15%より大きくないだけしか変動しないような電界を意味する。
電圧センサという用語は、トランスメンブレンポテンシャルを指示できる、FRETをベースとする電圧センサ、エレクトロクロミックトランスメンブレンポテンシャル染料、トランスメンブレンポテンシャル再分配染料、細胞外電極、電界効果トランジスタ、放射性イオン、イオン感応性蛍光染料またはイオン感応性ルミネッセント染料、およびイオン感応性蛍光タンパク質またはイオン感応性ルミネッセントタンパク質を含む。
以下の用語、すなわち、基準配列(reference sequencs)、比較ウィンドウ(comparison window)、配列同一(sequence identity)、ある配列との同一の百分率、および実質的同一(substantial identity)は、2つまたはそれ以上のポリヌクレオチドの間の配列関係を記述するために用いられる。
基準配列は、配列比較のための基準として用いられるための定められた配列である。基準配列は、大きな配列のサブセット、たとえば全長cDNA配列すなわち遺伝子配列のセグメントとすることができ、あるいは、完全なcDNA配列すなわち遺伝子配列を含むことがある。一般に基準配列は、長さが少なくとも20ヌクレオチド、しばしば長さが少なくとも25ヌクレオチドであって、たいていは長さが少なくとも50ヌクレオチドである。2つのポリヌクレオチドは、それぞれ、(1)2つのポリヌクレオチドの間で類似する配列(すなわち、完全なポリヌクレオチド配列の一部)を備えることができ、(2)2つのポリヌクレオチドの間で異なる配列をさらに備えることができるから、2つのポリヌクレオチドの配列を比較ウィンドウ上で比較して、配列の類似性の局部的な領域を同定し比較することによって、2つ(またはそれ以上)のポリヌクレオチドの配列の配列比較がが、通常、実行される。比較ウィンドウは、ここで使用されるように、少なくとも20の連続するヌクレオチド位置の概念的なセグメントを指し、ここでは、あるポリヌクレオチドの配列を少なくとも20の連続するヌクレオチドの基準配列と比較でき、かつ比較ウィンドウ内のポリヌクレオチド配列の部分は、2つの配列の最適な整列のために基準配列(これは付加または削除を含まない)と比較して、20パーセントまたはそれより少ない付加または削除(すなわち、ギャップ)を備えることができる。比較ウィンドウを整列するための配列の最適な整列は、SmithおよびWaterman((1981) Adv. Appl. Math., 2:482)のローカル相同アルゴリズムにより、NeedlemanおよびWunch((1970) J. Mol. Bio., 48:443)の相同整列アルゴリズムにより、PearsonおよびLipman((1988) Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.), 85:2444)の類似性検索法により、それらのアルゴリズムのコンピュータ化された実装(Wisconsin Genetics Software Package Realease 7.0, Genetics Computer Group, 575 Science Dr.,Madison, WIにおけるWIGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)により、または検査により行うことができ、種々の方法によって発生される最良の整列(すなわち、比較ウィンドウ上で相同の最高の百分比となる)が選択される。
配列同一という用語は、2つのポリヌクレオチド配列が比較ウィンドウの上で同一である(すなわち、ヌクレオチドごとを基にして)ことを意味する。
配列との同一の百分率という用語は、2つの最適に整列されている配列を比較ウィンドウ上で比較し、同一の核酸塩基(すなわち、A、T、C、G、UまたはI)が両方の配列で生じた位置の数を求めて、一致した位置の数を求め、一致した位置の数を比較ウィンドウ内の位置の総数(すなわちウィンドウサイズ)で除算し、その結果に100を乗じて配列一致の百分比を得ることによって計算される。ここで使用する実質的な一致という用語は、ポリヌクレオチド配列の特性を示すものであって、ポリヌクレオチドは、少なくとも20ヌクレオチド位置の比較ウィンドウ上の、しばしば少なくとも25〜50ヌクレオチド位置のウィンドウ上の基準配列と比較して、少なくとも30パーセント配列一致、好ましくは少なくとも50ないし60パーセント配列一致、もっと普通には少なくとも60パーセント配列一致を有する配列を含む。ここで、配列主体の百分率は、基準配列を、比較ウィンドウ上の基準配列の全部で20パーセントまたはそれ以下である削除または付加を含むことがあるポリンクレオチド配列と比較することによって計算される。
ポリペプチドに適用される時は、実質的一致という用語は、2つのペプチド配列が、デフォールトのギャップ重みを用いるプログラムGAPまたはBESTFITによるなどして最適に整列させられた時に、少なくとも30パーセント配列一致、好ましくは少なくとも40パーセント配列一致、より好ましくは少なくとも50パーセント配列一致、およびもっと好ましくは少なくとも60パーセント配列一致を共有することを意味する。好ましくは、同一でない残基位置は、保存的アミノ酸置換だけ異なる。保存的アミノ酸置換は、同様な側鎖を持つ残基の互換可能性を指す。例えば、脂肪族側鎖を持つアミノ酸の群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンであり、脂肪族−ヒドロキシル側鎖を持つアミノ酸の群はセリンおよびトレオニンであり、アミド含有側鎖を持つアミノ酸の群はアスパラギンおよびグルタミンであり、芳香族側鎖を持つアミノ酸の群はフェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンであり、塩基性側鎖を持つアミノ酸の群はリシン、アルギニンおよびヒスチジンであり、硫黄含有側鎖を持つアミノ酸の群はシステインおよびメチオニンである。好適な保存的アミノ酸置換群は、バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リシン−アルギニン、アラニン−バリン、グルタミン酸−アスパラギン酸、およびグルタミン−アスパラギンである。
技術および科学用語のリストは全てを包含することはできないので、定義されていない用語はどのようなものであっても、本発明が属している技術分野の当業者によって普通に理解されているのと同じ意味で解すべきである。さらに、単数形"a"、"an"および"the"は、異なることを文脈で明確に述べていなければ、複数の対象物を含む。例えば、制限酵素または高忠実度酵素についての言及は、そのような酵素、および述べられている基準に適合するその他の酵素の混合物を含むことがあり、方法についての言及は、当業者に知られているであろう、あるいはこの明細書を読んだ時に当業者に知ることになるであろう、cDNA配列を得るための1つまたは複数の方法への言及を含んでいる。
I.諸言:
本発明は、少なくとも1つの電圧が規制された(voltage regulated)イオンチャネルを含んでいる完全な(無損傷の)生きている細胞のトランスメンブレンポテンシャルが、それらの細胞を浸している流体に電気刺激パルスを繰り返し加えることによって、精密に変調できることを最初に認識した。本発明は、完全な生きている細胞の本来の完全性(integrity)を大きく乱すことなく、それらの細胞のトランスメンブレンポテンシャルの正確かつ確実な変調をもたらすための装置および方法を含む。
本発明の広がりについての限定されない前置きとして、本発明は下記のものを含めたいくつかの一般的かつ有用な様相を含んでいる:
1)水溶液中の生きている細胞の培養基に一様な電界を確実に発生するための電極と、電極アレイを含んでいる装置;
2)高いスループットおよび小型化された刺激のための、イオンチャネルまたは細胞の活動度の分析のための表面電極を有しているマルチウェルプレート;
3)イオンチャネルおよび細胞の活動度の高スループット分析のための、および薬剤発見、分析、スクリーニングおよびプロファイリングのためのシステム;
4)繰り返し電気刺激の使用による、生きている細胞のトランスメンブレンポテンシャルを変調する方法;
5)電圧が規制されているまたは電圧が規制されていないイオンチャネルの活動度、トランスポータおよび漏れ電流に対する試験化合物の作用をスクリーニングする方法。イオンチャネルおよびトランスポータタンパク質に対する化合物の状態に依存する薬理学的活性の決定を含む;
6)電気刺激に対する細胞またはクローンの反応に基づく、それら細胞またはクローンをプロファイルリングし選別する方法;
7)細胞およびイオンチャネルパラメータを高いスループット態様で定量的に決定し、それらのパラメータに対する化合物の薬理学的作用を定量化する方法;
8)細胞の細胞間空間中への外因性化合物の導入方法;
9)細胞間オルガネラのトランスメンブレンポテンシャルを変調し、それらのオルガネラにおけるイオンチャネルに対して試験化合物をスクリーニングする方法;
10)遺伝子発現、酵素機能、タンパク質活性および配位結合を含めた、生理学的および生化学的反応の機能および調整に対するトランスメンブレンポテンシャルの生理学的作用を測定(キャラクタライズ)する方法;
11)特定の機能または論理的反応のための適応ニューラルネットワークまたはバイオコンピュータをプログラミングし、あるいは訓練する方法;
12)ヒトを含めた動物に埋め込まれた補綴装置のための効率的な神経インタフェースを提供する方法。
ここで説明する本発明のそれらの様相およびその他の様相は、ここで説明する方法および装置を用いて達成できる。本発明の範囲を十分に正しく理解するために、本発明の種々の様相を組合わせて本発明の望ましい実施形態を得ることができることが、さらに理解されるであろう。そのような組合わせによって、本発明の特に有用で強固な実施形態が得られる。
II.電極および電極アレイ:
一実施形態では、本発明は、観察領域にわたって電界を発生するために、電極および電極アレイを含む。通常は、これは一対の導電性電極を使用することによって達成される。重要な設計上の特徴は、電極対がよく画定された電界を生ずることである。好適な電極の設計は、観察下の細胞が受ける電界の一様性を最大にする電極配置を含む。
観察領域にわたって一様な電界を発生することは、いくつかの理由から、電気刺激のために重要である。まず、細胞の反応は局部的な電界の大きさに敏感であるから、一様でない電界は、通常、異なる領域に一様でない反応を起こさせて、結果のばらつきを大きくする。第2に、電気的浸透性(electropermeablization)のしきい値は、通常、電気刺激膜のために要するトランスメンブレンポテンシャルよりも2ないし5倍大きいだけである(TeissieおよびRols, 1993, Biophys. J., 65:409-413参照)。したがって、電界が非常に不均一であると、観察領域内の細胞のいくらかを電気的に浸透もさせることなく、それらの細胞の全てを刺激することが可能ではないことがある。
固定された領域における電界の一様性は、(1)領域内の平均電界大きさで除した電界の大きさの標準偏差、および(2)領域内の平均電界大きさに対して正規化した、最高電界大きさと最低電界大きさの間の差、の二通りのやり方で記述できる。
a)電極の設計:
導電性媒体内に一様な電界を発生する最も簡単なやり方は、相互にほぼ平行に整列されている表面を持つ2つの同一の平らな電極を使用することである。一般的には、電極がそれの横方向の幅に対して互いにより接近するにつれて、電界の一様性はより大きくなる。しかし、典型的な円形マルチウェルプレートのウェルは、ウェル内に挿入できる電極の幅を制限するとともに、かつ電界の一様性を減ずる2つの他の作用をもたらす。
ウェルが丸いために、2つの電極で1つの向きを指す一様な電界を形成するということが難しくなるという問題が生じ、電極の間の塩化ナトリウム水溶液の幅は定常的に変化する。さらに、水の高い表面張力が、ディッパー(dipper)電極が挿入された時に、ウェルを横切る塩化ナトリウム水溶液の高さを変化させる。湾曲した表面すなわちメニスカスは、ウェルの容積全体にわたって電界の強さを乱すことがある。96個ウェルプレート内の100μLの塩化ナトリウム水溶液の深さは、ウェルの中心部で通常約3.0mm深さであって、ウェルの縁部で約2.9mm深さである。2枚のステンレス鋼製の平行平板電極が挿入されると、塩化ナトリウム水溶液が電極の間に吸い上げられ、ウェルの壁が観察領域にわたって深さを変化させ、塩化ナトリウム水溶液の容積全体にわたる電流経路が中心の周囲で曲がって、電界を一様でなくすることを示唆する。
1つの様相では、本発明は、改良した電極設計と、観察領域にわたってほぼ一様な電界を生ずるためにそれらの問題に対処する電気刺激のための装置とを含む。
一実施形態(図9A)では、電極対は、その電極対に取り付けられて画定された領域へ電流が流れることを制限する電気絶縁体を含む2個のほぼ平行な電極を有し、これにより、極めて一様な電界を生ずる。
他の実施形態(図9B)では、電極対は、さらに、より一様な電界を生成するためのサテライト(衛星)電極を含む。
他の実施形態(図9D)では、電極対は薄い絶縁分割体によって分離されたいくつかの片に細分化されている。この場合には、各電極に印加される、最も中心の片に印加された電位に対する部分割合として表わされる電位は、個々に調整されて、観察領域内の電界一様性を最大にできる。
他の様相では、本発明は、メニスカス効果の解消または減少によって観察領域にわたる改善された電界一様性を示す改良された電極設計(図9C)を含む。
他の様相では、多数の電位センサをマルチウェルプレートにおけるウェルの表面あるいは壁に造り込むことができ、またはこの多数の電位センサは、ディッパー電極組立体にアレイとして取り付けられる。電界の一様性を最大にするように、個々の電極を手動または自動的に調整するために、それらのセンサを監視できる。この構成は、刺激電極アレイが、ウェルの形状、塩化ナトリウム水溶液の体積、電極製造プロセスにおけるばらつき、電極組立体に対する損傷等の変化や不完全さを補償できるようにするので、有用であろう。
b)ウェル内への電極の配置:
ディッパー電極については、理想的な状況(一様な電界の形成における)は、電極の底をウェルの底に接触させることである。このやり方では、垂直電流路に関連する縁部電界または電界の不均一はない。しかし、取り外し可能な構造の場合には、電極が表面に接触することを求めることは望ましくない。プレートの形状の小さいずれが、ある電極を表面に押しつけて、プレート、細胞または電極に損傷を及ぼすことがある。また、あるウェルでは、電極は表面まで延びないことがある。これらの理由から、電極の底とウェルの底との間に小さい隙間を設けることが望ましいことがある。
したがって、1つの様相では本発明は、ウェルの中間にある観察領域がウェルの周縁部の周囲の、電極が置かれる領域に対して、持ち上げられるようになっているマルチウェルプレートを含む。
縁部電界は、電極の底とウェルの底の間のギャップにほぼ等しい電極間距離にわたって、不均一をひき起こす。したがって、このギャップは、実際上可能なまでに小さく、好ましくは0.1ないし0.5mmの範囲に保たなければならず、観察領域は、通常、電極からこの距離以内にあるウェルのどの部分も含んではならない。
c)電極の製作:
どのような導電性物質も電極として使用できる。好適な電極材料は、次の諸特性の多くを持つ。(1)それらは塩化ナトリウム水溶液で腐食されない、(2)それらは有毒なイオンを発生または放出しない、(3)それらは可撓性で強い、(4)それらは比較的安価に製作される、(5)それらは多孔質でない、(6)それらは容易に清浄にされる。好適な材料には、貴金属(金、白金およびパラジウムを含む)、耐熱金属(チタン、タングステン、モリブデンおよびイリジウムを含む)、耐食性合金(ステンレス鋼を含む)および炭素その他の有機導電体(黒鉛およびポリピロールを含む)が含まれる。多くの実施形態ではステンレス鋼が好適な電極材料である。この材料は、安価で、機械加工が容易であり、かつ塩化ナトリウム水溶液中で非常に不活性である。ステンレス鋼は、塩化ナトリウム水溶液中で電流が流れた時に徐々に酸化して酸化鉄を生ずるが、これは装置の性能に影響を及ぼすようにはみえない。酸化鉄は水中での溶解度が非常に低く、毒性レベルの鉄が放出されるようには見えない。また、どのような酸化鉄堆積物も、10%硝酸水溶液中に2時間浸し、その後で蒸留水で完全に水洗いすることによって、容易に除去できる。
中実の銅電極と銀電極は、いくつかの用途で使用できるが、それらは塩化ナトリウム水溶液中で迅速に腐食されるので、日常の(ルーチンとしての)使用には好ましくない。金めっき銅電極は、比較的不活性であるが、長期間の電気刺激中に金めっきが失われるようである。
電極の表面をゼラチン、ポリアクリルイミドまたはアガロースゲルなどの保護被覆で被覆することにより、電解生成物を抑制しまたはなくすことができる。その他の潜在的に有用な電極材料は、銀/塩化銀電極などの、電気化学的半電池である。
d)電極アレイ:
ディッパー電極は、通常、マルチウェルプレートの1つまたは複数のウェルの中に、かつそれから、抜き出し可能に動かすことができるアレイ中に配置されている1つまたは複数の電極対で構成される。ディッパー電極は、プレートの様式および密度に合致するアレイに合わせることができるが、任意の形状または向きのアレイにできる。例えば、標準の96個ウェルプレートでは、1つまたは複数の行または列を同時に選択的に励起するための電極アレイ構成をおそらく含む、何種類かの電極は位置が可能である。
この種の電極アレイの一実施形態の一例が図1に示されている。この例では、12×8の電極対のアレイが、標準の96ウェルマルチウェルプレートに適合するように、形成されている。この場合には、電極(10)は、おおよそ、幅が4mm、長さが1cm、厚さが0.2mmであって、スイッチを介して大電力ファンクションジェネレータ(関数発生器)の出力段の一方の側に接続されている導電性櫛(50)から延びている。電極は、4mm離れて、その間に非導電性ナイロンスペーサー(20)を挟んで、相互に平行に装着されている。この場合には、スイッチ(330)は、96ウェルプレートの1つの行を1度に選択的に刺激できるようにするが、スイッチング、結線および電力関数発生器の適切な構成が与えられるならば、刺激プロトコルのいかなる時間的または空間的組合わせも潜在的に可能である。
電極アレイの全体は、各電極対を正しく隔てられるように維持して標準の96ウェルマルチウェルプレートの配置に正確に一致させる、強固な非導電性部材(30)により、正確に位置合わせ状態に保たれる。非導電性部材(30)は、マルチウェルプレートとの位置合わせを正確に維持しつつ、電極を上下に動かせるようにする。
電極アレイのマルチウェルプレートとの正確な位置合わせを行うために、電極組立体は、オプションとして、標準の96ウェルマルチウェルプレートを収容できて正確なプレート位置合わせを可能にする外枠すなわちフランジ(40)を備えることができる。いくつかの実施形態では、枠(40)は、あいまいでないプレート位置合わせを行うために、位置合わせノッチすなわちくぼみ(80)をさらに含むことができる。
好適な実施形態(図1Aにも示されている)では、電極アレイは、さらに、電極アレイをマルチウェルプレートのウェル内に引き抜き可能に挿入する手段を備えている。この構成の一実施形態では、電極アレイは、さらに、電極(10)が取り付けられる上側の可動支持部材(90)を備えている。可動支持部材(90)は、4本のアライメントピン(70)上で滑ることによって、非導電性部材(30)に対して、上下動できる。それらの図には示されていないが、下向きの力がもはや加えられない時に可動支持層(90)が上側位置に自動的に戻ることができるようにするスプリング(ばね)がある。スペーサ(60)が、可動支持層(90)と電極(10)を完全に低い方の位置に固定することができるようにする。この装置によって電気刺激器を手動スクリーニングモードおよび/または自動(ロボット)スクリーニングモードで使用できるようにされる。
III.電気刺激のためのマルチウェルプレート:
本発明のマルチウェルプレートは、細胞の効率的な電気刺激を行うと同時に、トランスメンブレンポテンシャル変化の光学的分析を可能にするように、主として設計されている。これを行うために、導電性表面電極をマルチウェルプレートの壁、底またはふたの中または上に向けることができる。
一般に、そのようなマルチウェルプレートは、正方形、長方形、円形、長円形、三角形、豆形またはその他の幾何学的もしくは非幾何学的な形状などの、任意の形状または任意の寸法のフットプリント(平面形状)を持つことができる。そのフットプリントは、標準の96ウェルマイクロタイチー(microtiter)プレートなどの既存のマルチウェルプレートのフットプリントにほぼ類似する形を持つことができる。マイクロタイター(微量滴定器)のフットプリントは、おおよそ、幅85.5mm、長さ127.5mmであり、または現行または将来の工業規格を表わすその他の寸法である(T. Astle, Standards in Robotics and Instrumentation(ロボティックスおよびインスツルメンテーションにおける規格), J. of Biomolecular Screening, Vol. 1, pp.163-168, 1996を参照)。このフットプリントを持つ本発明のマルチウェルプレートは、この技術分野で知られているマルチウェルプレートトランスロケーターおよびリーダーなどのロボティックスおよびインスツルメンテーションに適合できる。
通常、ウェルは、マルチウェルプレート上に二次元直線形アレイとして配置される。しかし、ウェルは、幾何学的アレイまたは非幾何学的アレイなどの、任意の種類のアレイとして提供できる。マルチウェルプレートは、任意の数のウェルを有することができる。大きな数のウェルあるいは高められたウェル密度は、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の方法を用いて、容易に受け入れることができる。一般的に用いられるウェルの数は、6、12、96、384、1536、3456および9600を含む。
ウェルの容積は、一般に、ウェルの深さと断面積に依存して変化できる。好ましくはウェルの容積は、約0.1マイクロリットルと約500マイクロリットルの間である。
ウェルは、正方形、円形、六角形、その他の幾何学的形状または非幾何学的形状、およびそれらの組合わせ(ウェル内およびウェル間)を含めた任意の断面形状(平面図で)で製作できる。好適なものは、底が平らな正方形または円形のウェルである。
壁は面取り(例えば、抜き勾配を有する)できる。好ましくは、角度は約1度と10度の間、より好ましくは約2度と8度の間、最も好ましくは約3度と5度の間である。
ウェルは、ウェルの中心間距離を約0.5mmと約100mmの間にできるような構成で置くことができる。ウェルは、直線−直線アレイなどの任意の配置、または六角形パターンなどの幾何学的パターンで置くことができる。ウェルからウェルまでの距離は、96ウェルプレートの場合には、約9mmとすることができる。より小さい容積の場合には、より小さいウェルの中心間距離が好ましい。
ウェルの深さは約0.5mmと100mmの間にできる。好ましくは、ウェルの深さは約1mmと100mmの間、より好ましくは約2mmと50mmの間、最も好ましくは約3mmと20mmの間である。
ウェルの直径(ウェルが円形の場合)または最大対角線距離(ウェルが円形でない場合)は、約0.2mmと100mmの間にできる。好ましくは、ウェルの直径は約0.5mmと100mmの間、より好ましくは約1mmと50mmの間、最も好ましくは約2mmと20mmの間である。
マルチウェルプレートは、通常は、電気的に非導電性材料で構成でき、ウェルの壁またはウェルの底を通じて、光などの放射の透過を妨げることができる光学的に不透明な材料で構成できる。そのような光学的に不透明な材料は、光学的検出法に関連するバックグラウンド(背景)を減少できる。光学的に不透明な材料は、染料、顔料またはカーボンブラックなどのこの技術分野で知られているもの、または将来開発されるどのようなものでもよい。光学的に不透明な材料は、測定(アッセイ)の感度および確度を高くするように、1つのウェルから他のウェルへ放射が通ることを阻止でき、またはウェルの間のクロストークを阻止する。光学的に不透明な材料は、薄い金属層、鏡被覆または鏡面研磨などの、この技術分野で知られているような反射性とすることもできる。光学的に不透明な材料は、マルチウェルプレートのどのような表面にも被覆でき、またはプレートや底が製作される際にそれらと一体部分とすることができる。光学的に不透明な材料は、入射光の約100%ないし約50%の間、好ましくは約80%と95%より大きい間、より好ましくは99%より大きい、透過を阻止できる。
ほとんどの測定は、通常、ウェルの壁を光が透過することを通常要しないので、ポリマーなどの物質は、ウェルの壁を黒くしあるいは光を吸収する顔料を含むことができる。顔料をそのように添加は、背景(バックグラウンド)蛍光を減少させることを助けるだろう。顔料は、材料の製造中またはマルチウェルプレートの製作中に、被覆あるいは混合するなどのこの技術分野で知られているいかなる手段によっても導入できる。顔料の選択は、ポリマーに固有の全てのバックグラウンドを減少する顔料の混合物、または所望の波長で光をフィルタしまたは吸収するために選択された単一の顔料または顔料の組合わせに基づいて行うことができる。
表面電極は、種々の形態や配置で、例えばいくつかの狭い垂直電極帯として、壁に埋め込まれ、そうでなければ取り付けることができる。各帯の相対的な電位を適切に調整することによって、観察領域内に一様な電界を発生できる。さらに、円形インサートを用いて、または垂直帯状電極をウェルの全周に埋め込むことにより、ウェルを横切って任意の向きの一様な電界を発生できる。1つの向きに一様な電界を発生し、それに続いて別の向きの一様な電界を発生することも可能である。これは、神経細胞または筋肉細胞などの電気的特性が異方性であるような細胞タイプ、または大きな縦横比を持つ細胞タイプにとって有用なことがある。
各ウェルは、高い透過率部分を有するとともに、かつ前記底の厚さの少なくとも90%のポリスチレンより少ない蛍光を生ずる底を有する。この特性は、適切な対照底材料の蛍光を試験物質の蛍光と比較することによって決定できる。それらの手順は、周知の方法を用いて実行できる。底は、この技術分野でそれらの項が知られているので、好ましくは、プレートまたは膜である。底の厚さは、特定の用途で指定されることがあるプレート底に求められる全体としての特性に依存して、変化できる。そのような特性は、プレートに使用される材料に関連する固有蛍光の量と、剛性と、破壊強さおよび製作上の要求を含む。ウェルの底は、通常、約10μmと約1000μmの間の厚さを有する。好ましくは、ウェルの底のは約10μmと450μmの間、より好ましくは約15μmと300μmの間、最も好ましくは約20μmと100μmの間の厚さを有する。
ウェルの底は、高い透過率の部分を持つことができ、通常は、ウェルの底の全てまたは一部が光を透過できることを意味する。底は、円形、正方形、長方形、腎臓形(豆形)、多角形、またはその他の幾何学的形状あるいは非幾何学的形状、もしくはそれらの組合わせなどの、任意の形の光学的に不透明な部分と高い透過性の部分を持つことができる。
好ましくは、マルチウェルプレートの底は十分平らにでき、たとえば、表面のテクスチャ(平坦さ)が約0.001mmと2mmの間、好ましくは約0.01mmと0.1mmの間にできる(Surface Roughness(表面粗さ), Waviness, and Lay, Am. Soc. of Mech. Eng. #ANSI ASME B46.1-2985 (1986)を参照)。底が十分平らでないとすると、底とウェルの光学的性質が、一方または両方の変化した光学的および物理的特性のために、低下することがある。
表面電極の実施形態では、底は、好ましくは、マルチウェルプレートのウェルの縁部に重なり合い、ウェルの内容物に電気的に接触する、導電性材料の帯または被覆を有する。導電性帯は、通常、以前に述べた大電力ファンクションジェネレータの出力段への容易な取り付けを可能にする電気コネクタで終端する。導電性帯が、それの長さ全体にわたる過大な電圧降下なしに刺激電流を運ぶことができるように、導電性帯の抵抗値は十分に低くなければならない。コネクタ端部から最も遠いウェル端部までの抵抗値は10Ωより低くなければならず、より好ましくは1Ωより低くなければならず、更に好ましくは0.1Ωより低くなければならない。導電性帯の断面積は、抵抗値に対する要求を満たすために十分大きくなければならない。一般的に採用されている導電体の場合には、この断面積は、少なくとも10-4mm2、より好ましくは少なくとも10-3mm2でなければならない。
実際には、どのような導電性材料でも、塩化ナトリウム水溶液に不活性な導電性材料がそれにかぶせられる限り、使用できる。それらの材料には、貴金属(金、白金およびパラジウムを含む)および耐火金属(クロム、モリブデン、イリジウム、タングステン、タンタルおよびチタンを含む)ならびにそれらの合金が含まれる。表面電極用の導電性材料として好適な材料には、透明な底層に容易に埋め込むこと、または透明な底層の表面に容易に電着できる、クロム、銅、金およびインジウム−すず−酸化物(indium-tin-oxide)の組合わせが含まれる。電解生成物は、電極の表面を、ゼラチン、ポリアクリルイミドまたはアガロースゲルなどの保護被覆で被覆することにより、抑制しまたは除去することができる。
他の潜在的に有用な電極材料は、銀/塩化銀電極などの電気化学的半電池である。
導電性材料被覆または表面改質は、真空蒸着、電着、印刷、吹付け(スプレー)、放射エネルギー、イオン化技術または浸漬を含めた、この技術分野で知られている任意の適当な方法を用いて、底に導入できる。表面改質は、マルチウェルプレートの製作の前、最中または後に、ポリマーまたはガラスや石英などのその他の材料を適切に被覆し、また、適切な被覆されたポリマーまたはその他の材料を底層中に含めることによって導入することもできる。その後で、被覆されたポリマーまたはその他の材料を、プレートの取り付けに使用される化学的部分(chemical moiety)と反応させることできる。化学的部分との反応の前に、そのようなポリマーまたはその他の材料は、ポリマーまたはその他の材料の上に共有結合または非共有結合サイトを設けることができる。ポリマーまたはその他の材料の表面内または表面上のそれらのサイトは、導電層をプレートに取り付けるために使用できる。被覆されたポリマーまたはその他の材料の例には、米国特許第5,583,211号(Coassin et al.)に記載されたもの、この技術分野で知られている他のもの、または今後開発されるものが含まれる。
材料および製作:
マルチウェルプレートを製作する材料は、通常、ポリマー材料である。その理由は、これらの材料が大量生産技術に向いているからである。しかしながら、ガラスや石英などのその他の材料も、マルチウェルプレートの底を製作するために使用できる。底は、同じ材料または異なる材料で製作でき、かつ底は、ポリスチレンまたはその他の材料を含むことができる。好ましくは、低い蛍光性と高い透過率を持つポリマーを選択する。ポリマー材料は、インサート成型や射出成型などの、この技術分野で知られている成型法および将来開発される成型法によって、プレート製作を特に容易にできる。
本発明のマルチウェルプレートは1つまたは複数の部品で製作できる。例えば、プレートおよび底は1つの個別部品として製作できる。あるいは、プレートを1つの個別部品とし、底を第2の個別部品とすることができ、それらを組合わせてマルチウェルプレートを構成する。この場合には、プレートと底を、接着剤、音波溶接、加熱溶接、融解、インサート射出成型またはこの技術技術で知られているもの、または将来開発されるものなどの、封止手段によって相互に取り付けることができる。プレートと底は同じ材料または異なる材料で製作できる。例えば、プレートはポリマーで製作でき、底は、ポリスチレン、シクロオレフィン、Aclar、ガラスまたは石英で製作できる。
微小化した表面電極の設計が、標準的なプレート構成(96、384、1536)および3456またはそれ以上の高いプレート密度で可能である。そのような装置のスループット(時間当り処理数)は潜在的に極めて高い。例えば、おのおの3456個のウェルが設けられているプレートが1時間当り30枚スクリーニングされると仮定すると、1日8時間当りの全体の処理数は約800,000のウェルに相当し、これは、プレート読出し時間が等しいと仮定して、現在利用できるものよりもおよそ8倍速い。
表面電極を有するマルチウェルプレートの一実施形態の一例が、図2Aに示されている。この例では、導電帯(200)の対が、ガラス、またはCOC(1999年6月8日に発行された米国特許第5,910,287号参照)などのプラスチックなどの光学的に透明な底層(210)に平行に、96ウェルプレート構成で取り付けられている。この例では、導電材料の帯(ストリップ)(200)は、おおよそ、幅が2mm、厚さが10μmであって、電極の間で光学的に透明な底層(210)を通じて、ウェル(220)内に配置されている細胞の光学的分析を行えるようにするために、約4mmの距離だけ隔てられている。他の実施形態では、導電材料の帯は、ステンレス鋼ワイヤ(直径が約0.001から約0.010)を有することができる。光学的に透明な底層(210)は、96ウェルマルチウェルプレートアレイ(230)に取り付けられて、通常のプレート底を置き換える。導電材料の帯(200)は、96ウェルマルチウェルプレートのウェル(220)の周縁(エッジ)に重なって、ウェルの内容物に電気的に接触する。導電材料帯(200)は電気接点で終端して、以前に述べた大電力ファンクションジェネレータの出力段への容易な取り付けを可能にする。この例では、行の最初のウェル中の8ウェル列当り2つの電極接点がある。これによって、細胞の培養中の取扱いをより簡単にするために、標準の96ウェルプレートの配列を使用できるようにされる。それらのウェルの内部には細胞または塩化ナトリウム水溶液は入れられない。この設計によって、単一の列中の7つのウェルを同時に刺激できる。アッセイ中は、オペレータまたはロボットは、例えば、プッシュピン試験電極で、ワイヤを接点に一時的に取り付ける。
表面電極を持つマルチウェルプレートの別の実施形態が図2Bに示されている。この実施形態では、透明な底層(210)がマルチウェルプレート(230)の縁部を越えて延長している。この構成では、全てのウェルは細胞および化合物で使用するために利用可能である。さらに、接点(240)への外部の結線の取り付けが簡単にされる。プッシュピン接点、回路基板のエッジコネクタ、または差し込み力不要(ゼロシンサーションフォース)ソケットを電極との接触を形成するために使用できる。延長させられている底層(210)は、日常(ルーチン)の使用中に取扱いを不便にすることがある。これは、製作作業中に電極トレース(200)を底層(210)の底の反対側にもっていくことによって解決できる。これはいくつかの方法によって行うことができる。例えば、接点領域を形成するためにプレートの2側面処理を用いて貫通孔(スルーホール)を設けて電気めっきすることができ、または導電性トレースを底層の縁部の周囲に巻き付けることができる。他の例として、底層を可撓性の絶縁材料で製作できる。そして、図2Bに示されているような構造を製作した後で、底層のうちプレートの縁部から突き出ている部分を折り曲げてプレートの下側に取り付けることができる。
表面電極を有するマルチウェルプレートの他の実施形態が図2Cに示されている。この実施形態では、電極(200)は、細いビア線(205)で接点パッド(240)に取り付けられている。これによって、細胞の培養中の取扱いをより簡単にするために、標準の96ウェルプレート配列を使用できるようにされる。この実施形態では、一方の極性の電極の全ては一緒に短絡されている。1つの列の選択は、電流パルスを他の極性のただ1つの電極に供給することにより行われる。この実施形態では、細胞、塩化ナトリウム水溶液または化合物は、接点パッドがある最後の列内には置かれない。アッセイ中は、オペレータまたはロボットは、例えばプッシュピン試験電極を用いて、ワイヤを接点に一時的に取り付ける。
表面電極を持つマルチウェルプレートの他の実施形態が図2Dに示されている。この実施形態では、電極(200)は、96ウェルプレートの長辺に平行に並べられている。この設計は、行中の11のウェルが同時に刺激されることを除いて、図2Aに示されている設計にほぼ類似する。
表面電極用の導電性材料に好適な材料には、透明な底層に容易に埋め込むこと、取り付けること、または電着することができる、クロム、銅、金およびインジウム−すず−酸化物の組合わせが含まれる。実際には、どのような導電性材料でも、塩化ナトリウム水溶液に不活性な導電性材料がそれにかぶせられる限り、使用できる。それらの不活性な材料には貴金属(金、白金およびパラジウムを含む)、耐火金属(クロム、モリブデン、イリジウム、タングステン、タンタルおよびチタンを含む)、耐蝕性合金(ステンレス鋼を含む)、および炭素またはその他の有機導電体(黒鉛およびポリピロールを含む)ならびにそれらの材料の組合わせまたは合金が含まれる。
IV.電気刺激および分光測定のための装置:
本発明は、少なくとも1つの電極組立体と、電気刺激のための手段と、光検出器と、電気刺激の発生、データの収集およびマルチウェルプレートの動きを調整するコンピュータ制御手段とを備えている、自動化された電気刺激および分光測定装置を含む。この装置は、流体添加のための手段も有する。1つの様相では、それらの装置は、生きている細胞の表面の内部または上部に存在するイオンチャネル、トランスポーター、漏れ電流の活動度を変調し、測定(キャラクタライズ)しおよび測定(アッセイ)し、チャネルまたは細胞の活動度に対する試験化合物の効果を迅速にスクリーニングするように、設計されている。本発明は、また、本発明のワークステーションの動作によって発生または発見された化学的実体(chemical entity)および情報(例えば、モジュレータ、あるいは化学薬品の化学的または生物学的活動度)にも向けられている。
図3は、自動化された電気刺激および分光測定装置の一実施形態のための主要な電気的および光学的構成要素のブロック図を示す。この例では、電気刺激のために、96ウェルマルチウェルプレートディッパー電極アレイ(図1)を用いた。本願出願人が所有する、1998年7月24日に出願された米国特許出願No. 09/118,728に詳細に記述されているように、刺激器電極アレイに加えて、この装置は、いくつかの追加の電気的、光学的および機械的部品を有する。
この実施形態では、コンピュータ(300)に組み込まれている、National Instruments社(テキサス州オースチン(Austin,TX))のPC−DIO 24デジタル入力/出力カードが、1対12スイッチ(330)(National Instruments ER-16)における適切なチャネルを設定するために使用される。蛍光プレート読取り器(リーダー)を制御しているコンピュータ(300)は、刺激を開始するようにプログラムされる時にTTL信号を送り出して、ファンクションジェネレータ(310)をトリガする。刺激信号は2つの任意波形発生器310によって発生される。ファンクションジェネレータは、Tektronix社(オレゴン州ビーバートン(Beaverton, OR))の型番AFG310である。最初のものは第2のものへの一連のTTLパルスをトリガし、第2のものは、個々の刺激波形でプログラムされている。多数の波形発生器を直列におよび/または並列に接続することによって、一層複雑な波形列を発生できる。それらの波形発生器は、コンピュータが発生したTTLパルスによってトリガされ、または相互にトリガされる。あるいは、コンピュータに組み込まれているA/D変換器またはサウンドカードを用いて、刺激列を発生できる。この場合には、市販されているソフトウエアまたはカスタムソフトウエアを用いて、波形列をプログラムでき、またはその列中の波形を変化できる。
刺激列は、大電力増幅器(320)とスイッチ(330)とを介して、刺激器ヘッド(370)に送られる。この場合、増幅器は、APEX PA93チップ(Apex Microtechnology Corp.、アリゾナ州タスコン(Tuscon, AZ))を用いて、製作会社により提供された回路にしたがって製作された。この用途に好適な増幅器は、通常、次の仕様を満たしまたはそれを超える。入力±100V DC、入力インピーダンス100GΩ、電圧利得20倍、出力±90V、出力±3A、出力インピーダンス10Ω。
電流の多数が、通常はある時刻に微量滴定プレート(350)の単一の8ウェル列中の、電極の間の塩化ナトリウム水溶液を通って流れる。400±7.5nmの励起光が、染色された細胞を下から照明し、放出された蛍光が検出器モジュール(340)で、460±20nmの青と、580±30nmの橙色、の2組の波長で測定される(Gonzalez et al., Drug Discovery Tody 4: 431-439, 1999を参照)。細胞の列がひとたび刺激されると、コンピュータ(300)はモーター(360)をトリガして、マルチウェルプレート(350)を、次の刺激のために準備されている位置へ動かす。
典型的な96ウェルマルチウェルプレートでは、電極の幅は4mm、ギャップ(g)は4mmである。刺激は、通常、ウェル内の100μLの体積の生理食塩水中で行われる。この食塩水の体積では、深さは平均約3.0mmである(この深さは、メニスカス効果のために、ウェルを横切って20%も変化する)。電極はウェルの底から約0.5mm離れて位置する。細胞に加えられる電界(E)は、電極に加えられている電圧(V0)を電極ギャップ(g)で除算したものとして、すなわちE=V0/gとして表わされる。これは実際の電界よりも大きく過大評価される。その理由は、約1.5Vを消費する各電極における電気化学的反応の影響のためである。刺激のために用いられる典型的な電圧範囲(10〜60V/cm)では、この過大見積もりは約10%のオーダーである。電界の正確な測定と較正は、電流が流された時にウェル内の電位をマッピングすることによって実行できる。
本発明は、各ワークステーションにおける処理時間を最短にするためにプログラム可能に制御され、電気刺激および分析のために液体試料の処理時間を最短にするために統合できる、自動化されたワークステーションも含む。
通常は、本発明の装置は、次のものを1つまたは複数個含む。すなわち、A)アドレス可能な化学ウェル内部の溶液中の複数の化学薬品を保存するための記憶場所と、化学ウェル検索器とを備え、アドレス可能な化学ウェルのプログラム可能な選択および検索を有し、かつ少なくとも100,000のアドレス可能なウェルのための記憶容量を有する、記憶および検索モジュール、B)選択されたアドレス可能な化学ウェルから溶液を吸い出しまた分配する液体ハンドラを備えた試料分配モジュールであって、この化学薬品分配モジュールは、選択されたアドレス可能な化学ウェルのプログラム可能な選択とその化学ウェルからの吸い出しと、選択されたアドレス可能な試料ウェル内へのプログラム可能な分配(平方センチメートル当りのアドレス可能なウェルの種々の密度でのアドレス可能なウェルのアレイ中への分配を含めて)とを有する試料分配モジュール、C)選択されたアドレス可能な化学ウェルを試料分配モジュールへ輸送するとともに、オプションとして、選択されたアドレス可能な化学ウェルの輸送のプログラム可能な制御(適応経路指定および並列処理を含めて)を行う試料トランスポーター、D)マルチウェルプレート内の細胞を自動的に洗浄し、染色し、時機にかなった培養を行う装置、E)細胞プレートと試験化合物プレートを種々のワークステーションの間で自動的に輸送する装置、F)自動化した電気刺激と分光測定のための装置、およびデータ処理および統合モジュール、G)上記サブシステムのいずれかの動作を調整するマスター制御装置。
記憶および検索モジュールと、試料分配モジュールと、自動化した電気刺激および分光測定装置とは、データ処理および統合モジュールによって統合され、プログラム可能に制御される。記憶および検索モジュールと、試料分配モジュールと、試料トランスポーターと、自動化した電気刺激および分光測定装置と、データ処理および統合モジュールとは、アドレス可能な試料ウェルの迅速な処理を容易にするために動作可能に結合されている。通常、本発明の装置は、少なくとも100,000のアドレス可能なウェルを24時間で処理できる。この種の装置は1999年11月16日に発行付与された米国特許第5,985,214号に記述されている。
微小流体装置
本発明は、微小流体チップに組み込まれて、高度に微小化された電気刺激および分析のために設けられている電極の使用も含む。そのような装置は、例えば、Chow et al.への1998年9月1日に発行された米国特許第5,800,690号、Perc et al.によって1997年5月5日に出願されたヨーロッパ特許出願EP0810438A2、およびParce et al.によって1997年6月24日に出願されたPCT出願WO98/00231に記述されているものを含む。それらの装置は、通常、ガラスまたはシリコンチップに存在する微小毛管内の小さい流体体積を取り扱うために、電位勾配(electrogenic)流体運動を使用する。これらの微小流体チップをベースとする分析装置は、微小化された分析を多数並列に行うことができる。そのような装置は、微小化された分析を要するいくつかの場合における好適な分光測定装置である。
例えば、Fu et al.(Nature Biotechnology 17:1109〜11, 1999)によって記述されている超小型に製作された(microfabricated)蛍光活性化細胞分類機は、光学的質問領域内にまたはその近くに置かれた一対の電極を有するように、容易に変更できる。ここで説明している方法を用いて、個々の細胞は、電気的に刺激でき、かつ刺激に対するそれら細胞の反応を基にして個々に分類できる。この方法は、チャネルの所望の発現を含んでいる安定なクローンを得る過程を極めて簡単にする。他の様相では、単細胞における試験化合物のスクリーニングは、1つまたは複数の追加の流体注入ポートが設けられている微小流体装置と、ここで説明している方法を基にして組み立てられ、かつ動作させられる1つまたは複数の埋め込まれた電気刺激装置とによって、実行できる。
V.電気刺激法:
a)諸言:
どのような作用機序にも結び付けられることなしに、本発明者らは、細胞のトランスメンブレンポテンシャルに対する電気刺激の作用についての下記の説明を行う。
典型的な電圧依存イオンチャネルは、細胞の局部的な相対的トランスメンブレンポテンシャルによって規制される各種の導通状態および非導通状態を持つ。外部電界を細胞に適切に加えることによって、細胞膜の部分を任意の所望のトランスメンブレンポテンシャルへ駆動でき、それによって細胞内に存在する電圧依存イオンチャネルの導通状態の規制を可能にする。加えられる電界が適切に変えられるならば、ほとんどのイオンチャネルのいくつかの導通状態をサンプルすることが可能であり、それによってそれらを休止状態、活性化状態、不活性状態の間で循環させる。
問題のイオンチャネルに依存して、イオンチャネルの活性化は、細胞の全体的なトランスメンブレンポテンシャル変化をもたらすことがある細胞内へのイオンの解放または取り込みを導くことができる。膜時定数より小さい時間間隔によって隔てられている、電気刺激の繰り返し列を加えることによって、大きな持続した膜電圧変化を、イオンの階段状の蓄積または消失を通じて生じさせることができる。この過程によって、多数のイオンチャネルの直接測定が行えるようにされ、細胞のトランスメンブレンポテンシャルを外部から制御できる容易な方法を提供する。したがって、このやり方は高スループットスクリーニングに適合できる、改良した薬剤発見法を提供する。
b)典型的な刺激プロトコルの概観;
電圧で活性化するナトリウムチャネルを発現するある細胞系統への典型的な二相電気刺激プロトコルのシミュレーションによる作用を、以下に簡略化した形式で示す。以下の説明は、細胞系統が他のイオンチャネルの大きい発現を持たないこと、および細胞の休止トランスメンブレンポテンシャルが、問題としているナトリウムチャネルの不活性化のためのしきい値より上であること、を仮定している。図4において、上のパネル(枠状区画)は、加えられた電界(E)の時間的経過を示し、中間のパネルは加えられた電界に応答するシミュレーションされた内向きナトリウム電流(INa)を示し、下のパネルは、細胞の理想化した平均トランスメンブレンポテンシャル(Vm)を示す。この例では、それらの記録は、加えられた電界の中央に置かれている単細胞が、通常、電気刺激波列中に経験することを予測されるそれらのパラメータの変化に関連する。
最初のパルスを参照して、最初の電界を形成すると、電界に最も近い細胞の縁部に、細胞の休止トランスメンブレンポテンシャルに関して、細胞にまたがる最大の電位降下が生じる(Hibino et al., Biophysical Journal 64:1789-1800,1993;Gross et al., 1986, Biophys. J., 50:339-348を参照)。理想化した球状細胞の膜の所与の点における、電界によって誘起されたトランスメンブレンポテンシャルの変化ΔVmの大きさは、下記式によって記述できる(Ehrenberg et al., Biophys. J., 51:833-837, 1987)。
式1において、fは膜の導電度に依存する係数、gはオーダー1の幾何学的係数、rは電界に平行な細胞の直径の半分、Eは電界の局所的な大きさ、そしてθは、電界の局所的な向きと細胞の中心から表面の考察されている点まで引いた線との間の角度である。ほとんどの完全な(無損傷の)哺乳動物細胞では、膜導電度は、細胞を浸している溶液の導電度と比較して非常に低く、係数は
である。実際には、細胞は基質に付着した時には球状であることはまれであり、電界が誘起したトランスメンブレンポテンシャル変化の実際の大きさの正確な評価は、経験的に決定できる。
加えられた電界の結果として、アノードに最も近い側の膜は負に駆動され、カソードに最も近い側の膜は正に駆動される。1つの縁部が十分負に駆動されてトランスメンブレンポテンシャルを問題としているイオンチャネルに対して不活性の解放のためのしきい値電位より低く局所的に下げるような細胞では、加えられた電界は、この縁部に配置されているナトリウムチャネルを休止状態に入らせる。細胞の他の側では、トランスメンブレンポテンシャルは、休止電位の正側に駆動される。細胞の休止トランスメンブレンポテンシャルは不活性のためのしきい値より上であると仮定されているので、細胞のこの側のナトリウムチャネルは不活性にされたままであって電流を通さない。その代わりにもし、休止トランスメンブレンポテンシャルが不活性化しきい値より下であるならば、細胞のこの側のチャネルは活性になって電流を通す。
加えられている電界が反転すると、トランスメンブレンポテンシャル変化のプロファイルも逆になる。細胞の最も端の縁部における膜のパッチ(patch)での電界により誘起されたトランスメンブレンポテンシャル変化は、極性を変える。最初の刺激段階中に負へ駆動された側のチャネルは、今や、正へ駆動される。刺激パラメータが適正に選択されるとすると、それらのチャネルは、今度は、活性化電位より上に駆動されてナトリウムイオンの流れ込みを許し始める。これが、細胞内へのナトリウムの流れの最初のより小さいピークとして、図4に示されている。ナトリウムチャネルは特性時間の後で迅速に不活性になる。その間に、細胞の他の側では、ナトリウムチャネルが不活性から解放されて休止状態に動くように、トランスメンブレンポテンシャルは負へ駆動される。
第2の刺激段階が終わると、膜の全ての部分は、新しい平均トランスメンブレンポテンシャルへ迅速に戻る。平均トランスメンブレンポテンシャルが、今は、ナトリウムチャネルの活性電位より上であるとすると、第2の刺激段階中に負へ駆動された細胞の側のチャネルは、活性化して、ナトリウムイオンの流れ込みを許し始める。これが、細胞内へのナトリウムの流れ込みの第2のより大きいピークとして、図4に示されている。ナトリウムチャネルは特性時間の後で迅速に不活性になる。この場合には、ナトリウムの流れ込みは、第1の側より第2の側からの方が通常大きい。その理由は、膜のこの部分が電界により一層正に駆動されるときに、ナトリウム流れ込みのための駆動力が大きいからである。
ナトリウムチャネル流れ込みの各パルスは、細胞の平均トランスメンブレンポテンシャルを高くする(図4の下のパネル)。トランスメンブレンポテンシャルのこの上昇は、ここで説明している方法のいずれによっても検出できるが、FRETをベースとする電圧感応性染料の蛍光放出比変化によって測定する方が便利である。全ての細胞に存在する漏れ電流のために、この平均トランスメンブレンポテンシャルのシフトは、元の休止トランスメンブレンポテンシャルへ指数的に減少する。この反応の時間依存性すなわち膜の時定数(τm)は、膜の容量と膜の抵抗値に依存し、1つの細胞タイプと別の細胞タイプとの間で極めて変化し得る。例えば時定数は、セルの種類に依存して、100マイクロ秒から1秒を越えるまで変化することがある。通常、膜の時定数は、取り扱われている(engineered)ほとんどの細胞系統ではほぼ100msである。
ナトリウム流れ込みの正味の累積を行うために、トランスメンブレンポテンシャルが休止トランスメンブレンポテンシャルまで減少する時間に達する前に、刺激パルスは繰り返される。電気刺激の引き続くラウンド(周期)中、正電荷が細胞中に着実に蓄積されて平均トランスメンブレンポテンシャルを電気刺激の各繰り返しごとにほぼ階段状に上昇させる。電気刺激の各パルスの後で、平均トランスメンブレンポテンシャルがナトリウムイオン反転電位に接近するにつれて、ナトリウムイオンの流れ込みの大きさは着実に小さくなる。最後には、細胞からの電流の漏れが電気刺激による電流の流れ込みに等しいような、平衡トランスメンブレンポテンシャルが生ずる。
c)刺激波形のための調整可能なパラメータ:
本発明は、生きている細胞中のイオンチャネルを選択的に活性化できる任意の繰り返し手順を有する任意の波形カーネルの使用を含む。カーネルは、刺激列の基礎を形成する繰り返し可能な構造である。図4において、カーネルは二相方形パルスであるが、原則的には、時間が限定された任意の波関数である。カーネルの持続時間は、それが繰り返すことができる最高速度を設定する。繰り返し手順は、カーネルがどのようにして、かついつ試料に提示されるかを支配する。図4において、繰り返し速度は固定され、全部で10サイクル継続する。しかしながら、繰り返し速度は固定される必要はない。
また、刺激列中にカーネルを変更できるので、繰り返し手順が刺激パルスを呼び出すたびに、異なる波関数を使用できる。さらに、カーネルおよび/または繰り返し手順を装置の測定された応答を基にして変更するために、フィードバック機構を使用できる。
刺激カーネルと刺激列を発生するために任意の波形発生器を使用することにより、電気刺激を特定の細胞タイプまたは特定のイオンチャネルに合わせるために、波形をほぼ制限なしに変化できる。パルス列は、いくつかの別々に制御可能な成分の変化を通じて、容易に変調できる。
1.個々のパルスの形:
刺激列中に繰り返される波形カーネルは、Tektronix AFG310などの任意のデジタル波形発生器を用いて、ほぼ無限の順列で変化できる。図5は、変調できる変数のいくつかを示すための二相方形波形の概略図を示している。図5においてパルス列は、時間t1の間持続する出発電界E1(400)と、時間t3の間持続する第1の刺激電界E2(420)に達するまでの、時間t2を要する電位の急速な上昇(410)と、時間t5の間持続する第2の刺激電界E3(440)に達するまでの、時間t4を要する電位の急速な降下(430)と、サイクルが繰り返されるまで時間t7の間持続する終了電界E4(470)に達するまでの、時間t6を要する電位の急速な上昇(460)とで構成されている。電界E1〜E4の大きさと極性は別々に制御可能であり、下記のように、静的および動的に変化できる。電位が細胞に加えられる時間すなわち時間t1、t3、t5およびt7も別々に制御可能であり、波形列中において0と10秒の間に下記のように静的および動的に変化できる。最後に、時間t2、t4およびt6にわたって生ずる電位の変化は、0と100ミリ秒の間の可変の時間期間にわたって起きることがあり、かつ可変形の波形を生ずるために、直線形または非直線形のことがある。
波形の変化のそれらのタイプのいくつかの例が、図6に示されている。(a)図5に示されているように、速度fで繰り返される二相波形。(b)変更された二相波形。その波形列の刺激段階の間に短いインターバルが付加されている。これによって、第1のパルス中に不活性から解放されたチャネルを通じて電流が流れるようにされる。(c)単相波形。細胞のアノードに面している側にあるチャネルのみが不活性から解放される。(d)傾斜(ランプ)波形。アノードに面しているチャネルが方形波により不活性から解放される。それらのチャネルは活性化して傾斜中に電流を流す。傾斜部によってより負の局部電位においてチャネルは開いて、電流を流すことができるようにされるので、細胞がナトリウムイオンに対する反転電位に近い時でさえも、大きい電流が依然として流れることができる。チャネルが開く点である傾斜部に沿う点は変化する。(e)二相三角波形または鋸歯状波形。傾斜によって状態間の電圧依存遷移が、全体的な膜電位が変化するにつれて、より一様に起きるようにすることができる。単相三角波形も可能である。(f)正弦波形。この種の波形は、高周波刺激中に電気的ノイズを減少させることができる。(g)正弦波形の短いバースト。(h)おのおの異なる基本周波数を持つ、正弦波形のバースト。この種の刺激は可塑性効果(plasticity effect)を研究するために有用であることが判明することがある。第1のバーストは、装置を訓練するためまたはプロセスを開始するために用いられ、以後のバーストは装置をアッセイするために用いられる。
波形の変形は、パルス列中の固定された刺激条件を維持するのに有用であることがある。例えば、高度に分極されている細胞が経験するトランスメンブレンポテンシャルの行程は、刺激サイクルの開始時のほぼ−90mVからいくつかの繰り返し刺激サイクルの後の+60mVまで、それの平均トランスメンブレンポテンシャル変化として、変化する。その結果、イオンチャネルを不活性状態から効率的に解放するために要する印加電界は、いくつかの刺激サイクルの行程中に細胞の平均電位が変化するにつれて、変化する。この効果を考慮に入れるためには、ある環境の下では、波形列が進むにつれて刺激の正(E2)段階と負(E3)段階の間の相対的平衡を変化すると有用なことがある。
いくつかの細胞系統、例えばHEK−23は、電圧で活性化させられるいくつかのナトリウムチャネルの活性化しきい値より下の休止平均トランスメンブレンポテンシャルを有する。それらの細胞では、ナトリウムイオン流れ込みの結果として刺激中にトランスメンブレンポテンシャルが上昇するにつれて、加えられている電気刺激とは独立に、ナトリウムチャネルを開くことができる。これは傾斜を有する電流パルスを用いることにより(すなわちt2とt4での上昇により)改良できる。その後で、チャネルは、活性電圧のすぐ上で定められた時間の間に、細胞の平均トランスメンブレンポテンシャルとは独立に、電流を流すことができる。
2.個々のパルスの全体の振幅(E 2 とE 3 ):
パルス振幅の大きさと極性は、刺激パルス中に細胞が経験する相対的なトランスメンブレンポテンシャル行程を制御する。下でより詳細に説明するように、種々のチャネルと細胞タイプとに適応できるようにするために、パルス振幅は全体の列に対して、または個々のパルスに対して変更できる。一般に、E2とE3の大きさは、各刺激サイクル中において、対象とするイオンチャネルが効率的に活性化され、不活性から解放されることを確実にするように、同時に、細胞の不可逆的エレクトロポレーションをひき起こすほどの大きさでないことを確実にするように、選択される。E2とE3の好適なパルス振幅は、通常、平均寸法が10ないし25μmである励起できない哺乳動物の細胞で発現される時は、ほとんどのイオンチャネルに対して5なし60V/cmの範囲にあり、接地(アース)に対して正または負に変化することがある。上記のように、刺激の振幅は、平均トランスメンブレンポテンシャルが変化しても安定な刺激条件を維持するために、パルス列中で変化することができる。好適なパルス振幅は、平均細胞寸法に逆依存する。したがって、パルス振幅を変化することによって、10ないし25μmより小さいか大きい細胞に対して、この技術を使用することもできる。
3.個々のパルスの持続時間(t 3 とt 5 ):
多くのチャネルは、開通する前に、不活性からそれらを解放するために、トランスメンブレンポテンシャルを延長された時間期間の間変更することを求める。例えば、多くの電圧依存ナトリウムチャネルは、一般に、それらが不活性から解放される前に、−90mVより低いトランスメンブレンポテンシャルを何ミリ秒間か経験することを必要とする。したがって、電気刺激プロトコルの効率的な使用は、通常、パルスの持続時間t3とt5が、対象とするイオンチャネルに対して不活性からの完全なまたはほとんど完全な解放を可能にするために十分であることを要求する。ある場合には、いくつかのイオンチャネル型を発現する細胞における1つのクラスの不活性化からの選択的解放を可能にするが他のクラスのイオンチャネルではそうではないように、t3とt5の大きさを調整することが必要なことがある。他の場合には、チャネルの不活性からの解放のレベルが低くなるように、t3とt5を非常に小さくすることが望ましいことがある。通常は、好適なパルス持続時間は、対象とするイオンチャネルの所望の電圧依存状態の間の遷移のための特性時間に合致させられ、それらは、通常は、ほとんどのイオンチャネルに対しては約0.1ないし100ミリ秒の範囲にある。
水の過剰な電気分解とそれに伴う気泡発生を避けるために、t3とt5の持続時間はできるだけ短く保たなければならず、しかも所望の電気刺激を依然として達成しなければならない。金属/水界面における水の電気分解は、通常、金属と水の間の電圧差の大きさが約0.8Vを超えた時に起きる。ある場合には、細胞刺激を起こすために求められる刺激パラメータも、水の電気分解をひき起こす。電極における気体のいくらかの発生は、単一のパルスの任意の単一極性中に供給される電極/水界面の単位面積当りの電荷が約100μC/mm2より少ない限り、通常、受け容れられる。この限度を超えると、通常、電界の一様性に大きく影響する気体放出と気泡形成がひき起こされる。電極表面での気泡の存在は、電極のその部分をふさいで、電界の一様性を変化させることがある。大量の気体の発生は、ウェル内の細胞および染料に酸化性の損傷を与えることもある。
抵抗率が70Ω・cmである生理食塩水100μLを含んでいる96ウェルプレートでは、ウェル内にウェルの底から0.5mm以内に挿入されている、間隔が4mmである2つの平行平板電極の間の食塩水の抵抗値は、約230Ωである。各電極は、食塩水に対する約24mm2の接触面積を有する。したがって、刺激プロトコルの任意の単一極性位相は、約2.4mCを超える電荷を供給してはならない。プレートの間に加えられる約10Vの電圧差は、食塩水中に約25V/cmの電界を発生する。この電圧は、約43mAの電流をひき出す。したがってこの電極構成に対して、電荷を2.4mCより少なく制限するためには、方形波、単一極性パルスは、持続時間において約55ミリ秒を超えてはならない。
4.引き続く刺激の間の間隔(t1とt7):
列に対してt1とt7の値を全体的に変えること、または列中の個々の各パルスに対してそれを調整することは、特定のイオンチャネルに対する刺激プロトコルを最適にするために有用である。またこのやり方は、チャネル開放時間とチャネルの活性化および不活性化の時間的経過を含めた、ある細胞特性およびあるチャネル特性を決定するために有用でもある。
例えば、電圧規制されたナトリウムチャネルを含んだアッセイのために、平均開放ナトリウムチャネル時間に等しいか、それより短いパルス間遅延時間(t1+t7)の挿入によって、チャネルの不活性化運動の定量的測定を行えるようににされる。不活性化運動は、平均開放チャネル時間に直接関連付けられる。したがって、短いパルス間間隔を用いるアッセイによって、主要な作用が不活性化反応速度に対するものであるような化合物の検出を行えるようにされる。不活性化運動は、これ以外の場合には、高スループット技術を用いては到達できない機構である。
ほとんどの場合、引き続く刺激の間の遅延時間は、トランスメンブレンポテンシャルを持続して上昇させるためには膜の時定数よりも小さい。通常は、刺激の最適周波数(f)は、τM -1≦f≦τb -1の範囲内である。ここで、τMはトランスメンブレンポテンシャル変化の減衰に対する時定数、τbは平均チャネル開放時間である。いくつかのチャネルは不活性にならず、それらの細胞に対しては刺激周波数は経験的に決定されることがある。また、刺激周波数fは、刺激カーネルの持続時間の逆数を超えることはできない。
また、ある細胞タイプに対しては、よりゆっくりと刺激することが望ましいことが判明することがある。例えば、高いチャネル密度を持つ細胞に対して、またはより高い薬理学的感度が求められるアッセイのためには、刺激頻度は低いことが好適なことがある。あるいはこれらの場合に対しては、単極刺激を使用できる。これは、細胞の1つの側におけるナトリウムチャネルを不活性から解放するだけであるが、刺激の最高周波数は2倍になり得る。
5.パルス列の持続時間、または列中のパルスの数:
細胞およびチャネルの特性は、動的モード(すなわち、立ち上がりおよび立ち下がり時間、反応形状における変化など)および静的モードでアッセイできる。両方のモードは、対象とする全ての事象を調べるために十分長いが、アッセイを終了するために必要なものよりも長くない、刺激列持続時間を必要とする。典型的な刺激時間は、20Hzの周波数で3秒間にわたって繰り返される、25V/cmで10msecのパルスを有する。これらのパラメータを調整することによりアッセイ時間を短縮でき、または高速および低速時間スケールでプロセスを調べることができるようにされる。
6.多数パルス列:
ある場合には、パルス列を繰り返すこと、または同じ細胞に対して2つの異なるパルス列を用いて測定することが、有用である。1つの例は、多数の刺激列を受ける細胞の単一プレートを用いて、刺激周波数および持続時間の関数としての反応を測定することにより、チャネルの諸特性を完全にキャラクタライズすることである。他の例は、反応の柔軟性(すなわち、反応の活性依存する変化)を調べることである。1つまたは複数の刺激列が反応を整え、一方、整える前または後の測定列の組が、活性に起因する変化を決定する。
反応の動的測定を基づいた刺激パラメータのフィードバック:
本発明は、平均トランスメンブレンポテンシャルを予め設定されている値に維持するために動的帰還ループを用いることにより、電圧クランプ装置を形成するためにも使用することができる。下で説明するように、高速蛍光出力を用いてトランスメンブレンポテンシャルを測定し、その後でトランスメンブレンポテンシャルのいかなる変化も補償するように刺激パラメータを変化することにより、細胞のトランスメンブレンポテンシャルを動的に制御することが可能である。そして、その電位を維持するために必要な電流は、刺激パラメータのコンピュータ制御によって決定される。
電気分解を避けるための高周波数刺激の使用:
典型的な刺激パラメータ中、約50mAのピーク電流が、電極の間の溶液中を流れる。この時間中、種々の電気化学的反応が起こり、それらの電気化学的反応は、通常、細胞にとって有毒な化学種を発生する。予備実験によって、ほとんどの哺乳動物の細胞が、通常は、ステンレス鋼電極を使用しての約2分間の電気刺激に対して正常に反応することが示されている。しかし、より長い時間にわたる延長された刺激は、細胞の健全さと生存能力を損なうことをもたらすようである。十分に高いパルス周波数では、金属−食塩水界面が水の電気分解のための電位(食塩水中のステンレス鋼に対しては約±1V)に達しないように、電流を容量的に流すことができ、それにより有毒な生成物は発生しないだろう。各電極の食塩水に接触している面積が約24mm2である、図1に示されている電気刺激器では、電極当りの容量は約1〜10μFである(Robinnson, 1968, Proc. IEEE, 56:1065-1071)。50mAでは、この容量は、約20〜200マイクロ秒で1Vまで充電する。これは、有用なパルス持続時間の下限である。
あるいは、電解生成物を発生することなく電気刺激を行うことが可能である。金属−食塩水界面の容量を2〜100倍だけ増加できるいくつかの処理を利用できる。それらは表面を粗くする、白金黒または金黒での電気めっき、イリジウム/イリジウム酸化物、チタン/チタン窒化物、またはポリピロール膜の付着および活性化を含む。不可逆電気化学反応を避ける刺激パラメータを用いると、それらの表面処理は、電流が流れても劣化しない。
VI.イオンチャネルの発現:
a)細胞タイプの選択:
本発明は、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、バクテリア細胞、酵母および哺乳動物細胞を含めて、任意のタイプの細胞で使用できる。ヒトの治療のためのスクリーニングには、哺乳類の細胞系統が好ましく、そのような細胞系統は、比較的容易に成長でき、かつ高い効率で容易にトランスフェクションできる組織培養細胞系統を含む。多くの組織細胞系統は、American type culture collection (ATCC)(http://www.atcc.orgを参照)、およびEuropean collection of cell cultures (ECACC)(http://www.camr.org.ukを参照)を通じて商業的に入手できる。
またある場合には、固有の生理学的コンテキストにおいて対象とするイオンチャネルの反応を表わすまたは測定することを求められた時に、1次細胞系統または組織切片(slice)がスクリーニングのためにまた好適なことがある。この手法は、候補治療の特異性、選択性、毒性をスクリーニングするための第1のスクリーニングまたは第2のスクリーニングとして有用なことがある。これについてはX節で詳しく述べる。
培養された細胞系統に対して行われるアッセイに関し、主な選択基準は、細胞系統の休止トランスメンブレンポテンシャル、および内生的に発現されたイオンチャネルの存在である。対象とする特定のイオンチャネルについての適切な細胞系統の選択は、対象とするイオンチャネルの電圧依存特性とイオン選択性に依存する。それらの考察は、VIII「刺激プロトコル」において、いくつかのイオンチャネルについて詳細に再検討する。
ある場合には、他のイオンチャネルの検出可能な内生的発現を持たない(または非常にわずかに有する)細胞系統を使用することが望ましい。このタイプの細胞は、CHO−K1細胞、CHL細胞、およびLTK(−)細胞を含む。それらの細胞は+10ないし−30mVの範囲の休止電位を本来有する。それはほとんどの電圧依存チャネルの活性しきい値および不活性しきい値より上である。それらの細胞系統を使用することは、スクリーニングアッセイデータが一般に容易かつあいまいでなく解釈されるように、対象とするイオンチャネルが細胞内のトランスメンブレンポテンシャルの大きなモジュレーターである、という利点を有する。
ある場合には、他のイオンチャネルを持たない細胞系統は、実行可能なアッセイを行うためには実際的ではないようである。たとえば、電圧を規制されたイオンを高度に分極されたトランスメンブレンポテンシャルに維持することが必要かもしれない。この場合には、2次イオンチャネルの発現を通じてトランスメンブレンポテンシャルを制御することが必要である。例えば、休止状態にあるラットの脳タイプIIaナトリウムチャネルをアッセイするためには、トランスメンブレンポテンシャルをナトリウムチャネルのしきい値活性電位、この場合にはおよそ−60mVより下に維持することを要する。これを行うためには、細胞の休止トランスメンブレンポテンシャルをほぼ−90mVに維持できる、カリウム内向きレクチファイヤ(整流器:rectifier)などのイオンチャネルを共発現(co-express)すること、または類似のイオンチャネルを内生的に発現する細胞系統を特定することが必要である。このタイプの細胞タイプは、RBL細胞およびHEK−293細胞を含む。
他の場合には、対象とする1次イオンチャネルのアッセイを可能にするために、細胞膜を特定のトランスメンブレンポテンシャルへ駆動する電気刺激とともに、2次イオンチャネルの発現を使用することが必要なことがある。この状況の例は、配位子ゲートされたチャネルなどの電圧が規制されていないイオンチャネルをアッセイする時に起きる。電圧を規制されているナトリウムチャネルの共発現を、例えばば電気刺激とともに用いて、トランスメンブレンポテンシャルを約+10ないし+60mVの間のトランスメンブレンポテンシャルに設定することができる。比較すると、電気刺激と共同しての電圧を規制されているカリウムチャネルの共発現は、トランスメンブレンポテンシャルを約−90ないし−30mVの間のトランスメンブレンポテンシャルに設定することができる。したがって、これらの手法は、トランスメンブレンポテンシャルを比較的広い範囲にわたって実効的に取り扱うことを可能にし、それによりほぼどのようなイオンチャネルの分析も可能にする。
通常、この共発現手法を用いると、両方のイオンチャネルを共発現している細胞系統と、トランスメンブレンポテンシャルを設定するために用いられるイオンチャネルのみを発現している細胞系統とで得られるどのヒットも再スクリーニングする必要がある。これによって、この2次イオンチャネルに影響を及ぼす薬品を、対象とするイオンチャネルに実際に影響を及ぼす薬品から識別可能にする。あるいは、TTXなどの選択性毒素を用いて、1つのクラスのイオンチャネルを選択的に阻害することができる。
b.イオンチャネルのトランスフェクション:
対象とするイオンチャネルの発現のために配列符号で細胞をトランスフェクトするために用いられる核酸は、通常、チャネルの発現のためのヌクレオチド配列符号に作動的にリンクされている発現制御配列を含めた発現ベクターの形態である。使用されているように、チャネルの発現のためのヌクレオチド配列符号という用語は、mRNAの転写および翻訳に際し、チャネルを生ずる配列を指す。これは、例えばイントロンを包含している配列を含んでいる。ここで使用しているように、発現制御配列という用語は、それが作動的にリンクされている核酸配列の発現を規制する核酸配列を指す。発現制御配列は、発現制御配列が核酸配列の転写と適切であれば翻訳とを制御および規制する時に、核酸配列に作動的にリンクされる。したがって、発現制御配列は、適切なプロモーター、エンハンサー、転写ターミネーター、タンパク質符号化遺伝子の前の出発コドン(すなわちATG)、イントロンのための切り継ぎ信号、mRNAの適切な翻訳を許すためのその遺伝子の正確な読出しフレームの維持、および終止コドンを含むことができる。
この技術分野の当業者に周知の方法を、適切な局所化ドメインまたは目標とするドメインおよび適切な転写/翻訳制御信号に作動的に結合されている、イオンチャネル符号化配列を含んでいる発現ベクターを構成するために使用できる。たとえば、配列取得番号(accession number)を参照して、または表1ないし表3を参照して、この技術分野の当業者は、対象とするイオンチャネルの配列を特定できる。それらの方法は生体外(in vitro)組換えDNA技術、合成技術および生体内(in vivo)組換え/遺伝子組換えを含む。(例えば、Maniatis et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual(分子クローニング、研究室マニュアル), Cold Spring Harborr Laboratory, N.Y. 1989を参照)。多数の商業的に入手できる発現ベクターを、Clontech社(カリフォルニア州パロアルト(Palo Alto,CA))、Stratagene社(カリフォルニア州サンジエゴ(San Diego,CA))、およびInvitrogen社(カリフォルニア州サンジエゴ(San Diego,CA))、ならびにその他の多数の企業から入手できる。
この方法の意図されている変更例は、例えば、チャネルの発現を誘導することにより、対象とするイオンチャネルの発現において急増を生ずるために、誘導可能な制御ヌクレオチド配列を使用することである。誘導可能な装置の例は、Bujardおよびその協力者により最初に発表されたテトラサイクリン誘導可能な装置(Gossen and Bujard, (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA ,89, 5547-5551; Gossen et al., (1997) Science, 268, 1766-1769)および米国特許第5,464,758号に記述されている。
組換え体DNAを持つ宿主細胞の形質転換は、この技術分野の当業者に周知の従来の技術により行うことができる。宿主がE. coliなどの原核生物である場合には、DNA取込みができる能力細胞を、指数的成長期の後に収穫し、その後で、この技術分野で周知のCaCl2法により処理された細胞から用意できる。あるいは、MgCl2またはRbClを使用できる。形質転換は、宿主細胞の原形質体を形成した後で、またはエレクトロポレーションにより、実行することもできる。
宿主が真核生物であると、リン酸カルシウム共沈体などのDNAのトランスフェクション法、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、リポゾーム中に入れられているプラスミドの挿入、またはウィルスベクターなどの従来の機械的な手順を使用できる。真核生物細胞は、イオンチャネルを符号化するDNA配列と、単純性疱疹チミジンキナーゼ遺伝子などの、選択可能な発現型を符号化する第2の外部DNA分子とコトランスフェクトすることもできる。他の方法は、サルウィルス40(SV40)または牛乳頭腫瘍ウィルスなどの、真核生物ウィルスベクターを用いて、真核生物細胞を一時的に感染または形質変換することである。(Eukaryotic Viral Vectors, Cold Spring Harbor Laboratory, Gluzman ed.,1982)。好ましくは、真核生物宿主はここで説明するように宿主細胞として利用する。
安定なクローンの選択は、通常、対象とするイオンチャネルの容易な検出を可能にする十分なレベルにおいてそのイオンチャネルの成功した発現を基にして行われる。多くの場合には、この分析は、対象とするクローンの発現と一致する適切な電気生理学的諸特性を示すものを特定するために、個々のクローンの機能的なキャラクタライザーションを要する。この分析は、パッチクランプの使用を通じて、または下で説明するようにトランスメンブレンポテンシャル感応性染料を用いるトランスメンブレンポテンシャルの測定を通じて完了できる。この後の方法を使用することの利点は、蛍光で活性化された細胞分類に適合でき、1秒間に何千もの個々のクローンを迅速に分析できることである。休止している細胞でナトリウムチャネルが電気的に静止している場合には、発現の確認を、天然のイオンチャネルに対して育てられた抗体を用いる免疫化学法で、または上で説明したように、分子技術を介してイオンチャネル中に導入された定められたエピトープを用いて、容易に達成することもできる。
対象とする1次イオンチャネルと、トランスメンブレンポテンシャルを設定する2次イオンチャネルとで細胞がトランスフェクトされている場合には、両方のイオンチャネルの相対的な発現の最適化が重要である。通常、2つのイオンチャネルの最適な相対的発現は、クローンのうち、クローンの反応中で最大のダイナミックレンジと最小の統計的な変動を与えるクローンを選択することによって、経験的に決定される。
VII.トランスメンブレンポテンシャルの測定:
本発明の使用によるトランスメンブレンポテンシャル変化と特定のイオンチャネルのコンダクタンスの測定とは、トランスメンブレンポテンシャルまたはイオンの運動の既知の測定手段のいずれかを用いて検出できる。それらの方法は、たとえば、パッチクランピング(Hamille et al., Pfluegers Arch., 391:85-100, 1981)、FRETをベースとする電圧センサ、エレクトロクロミック・トランスメンブレンポテンシャル染料(Cohen et al., Annul Reviews of Neuroscience, 1:171-82, 1978)、トランスメンブレンポテンシャル再分配染料(Freedom and Laris, Spectroscopic membrane probes Ch 16, 1968)、細胞外電極(Thomas et al., Exp. Cell Res., 74:61-66, 1972)、電界効果トランジスタ(Fromherz et al., Science, 252:1290-1293, 1991)、放射性フラックスアッセイ、イオン感応性蛍光またはルミネッセント染料、イオン感応性蛍光またはルミネッセントタンパク質、内生タンパク質の発現またはリポーター遺伝子または分子の使用を含む。
高スループットスクリーニングの好適な分析法は、トランスメンブレンポテンシャル、またはイオンチャネルコンダクタンスの光学的読出しの使用を含む。これらの方法は、イオンチャネルコンダクタンスやトランスメンブレンポテンシャルの変化の結果として蛍光特性またはルミネッセント特性の変化を通常示す、トランスメンブレンポテンシャルまたはイオン感応性染料または分子の使用を含む。
本発明に使用する好適な光学的分析法が、米国特許第5,661,035号(1997年8月26日発行)に記述されている。このやり方は、通常、エネルギー伝達を行ってトランスメンブレンポテンシャルに依存する比率測定法蛍光読出しを行う2種類の試薬を備えている。通常、このやり方は電圧感応性脂肪親和性染料と、細胞膜に関連させられている電圧を感知しない蛍光団とを使用する。(Gonzalez et al., Drug Discovery Today, 4:431-439, 1999を参照)。
一実施形態では、2種類の染料分子、すなわちクマリンにリンクされたホスホリピド(CC2−DMPE)およびビス−(1,2−ジブチルバルビツール酸)トリメチンオキシノール[DiSBAC4(3)]が、細胞の原形質膜内にロードされる。CC2−DMPEは原形質膜の外側葉状部(outer leaflet)内に区画し、そこでそれは、動きうる電圧感応性オキシノール受容体への固定されたFRETドナーとして動作する。内側が比較的負の電位である細胞は負に帯電しているオキシノールを原形質膜の外側葉状部へ押して、効率的なFRETの結果となる(すなわち、クマリンドナーのクエンチングおよびオキシノール受容体の励起)。消極によってオキシノールは原形質膜の内面へ迅速に移動して、FRETを減少する結果となる。FRETは100オングストロームより小さい距離にわたって起きることができるだけであって、クマリンが励起されると原形質膜内のオキシノールの動きの特定のモニタが行われる結果となる。
それらのアッセイのための反応時間は、オキシノールの疎水性を増加または減少することによって容易に変化する。例えば、疎水性が高いジブチルオキシノールDiSBAC4(3)は約10msの時定数を持つ。これは疎水性が小さいジエチルオキシノールDiSBAC2(3)より非常に速い。
染料のローディングは、通常、トランスメンブレンポテンシャルの測定の開始前に室温で行われる。通常、細胞にはクマリン脂質が、それに続いてオキシノールが、順次ロードされる。クマリン脂質の典型的なローディング濃度は約4ないし15μM(最終濃度)で、染色溶液は、通常、ほぼ7.2ないし7.4のpHで、10mMのHEPES、2g/Lのグルコースおよび約0.02%のPluronic−127のHanks Balanced塩溶液中で用意される。ローディングは、通常、約30分のインキュベーションの後で許容でき、その後で所望により過剰の染料を除去できる。オキシノール染料は、通常、室温において2と10μMの間の濃度で25分間ロードされ、より高い疎水性のDiSBAC4(3)は、通常、2〜3μMのPluronic−127の存在下でロードされる。最適なローディング濃度は細胞タイプ間で変わり、日常の実験によって経験的に決定できる。通常、そのような最適化実験は、第1の試薬の濃度を系統的に滴定し、その後で試験された各濃度に対して、第2の試薬の濃度を滴定する。このようにすると、各試薬についての両方の最適なローディング濃度と、最適な相対比を得て、最高の信号対ノイズ比を達成可能である。
たとえば、本願出願人が所有している、1998年7月17日付けで出願された米国特許出願No. 09/118,497、1998年7月21日付けで出願された米国特許出願No. 09/120,515、1998年7月23日付けで出願された米国特許出願No. 09/122,477に記述されているように、ある場合には、望ましくない光放出を減少するために、1つの、またはほとんどのFRET試薬に1つまたは複数の光吸収物質を添加またはロードすることが好ましいことがある。
FRETをベースとする電圧センサは、他の膜を目標とされている発蛍光団の使用から、可動性の疎水性のドナーまたは受容体とともに得ることもできる。他のそのような組成が、例えば、1999年12月13日に出願された米国特許出願No. 09/459,956に記述されている。
光学的方法によりトランスメンブレンポテンシャルの変化の測定するのに適した装置は、顕微鏡、マルチウェルプレート読み取り器、および迅速かつ感度の高い比率測定法蛍光検出が可能な他の装置を含む。この種の好適な装置が、1998年6月17日に出願された米国特許出願No. 09/118,728に記載されている。この装置(電圧/イオンプローブ読取り器またはVIPRTM)は96個またはそれより多いウェルのマルチウェルプレート用の統合された液体ハンドラおよび反応速度蛍光読取器である。VIPRTM読取器は、8チャネル液体ハンドラと、マルチウェル配置ステージと、光ファイバ照明および検出装置とを統合している。この装置は、他の微量滴定プレートまたはトラフから得られた液体を入れる前、最中および後に、8ウェルの行からの蛍光を同時に測定するように設計されている。VIPRTM読取器は、8つの三つ又に分かれている光バンドル(各ウェルごとに1本のバンドル)を採用することによって、マルチウェルプレートの底からの発光信号を励起し、検出する。三つ又に分かれているファイバの1つの脚が励起源として用いられ、三つ又に分かれているファイバの他の2つの脚が蛍光放出を検出するために用いられる。ファイバの端部に設けられている球面レンズが光の励起および収集の効率を高める。二又に設けられている発光ファイバによって読取器が2つの発光信号を同時に検出できるようにし、かつそれらはFRETをベースとする電圧染料によって発生された迅速信号に適合する。その後で光電子増倍器が放出蛍光を検出し、ミリ秒以下での発光比検出を可能にする。
VIII刺激プロトコル:
1つの様相では、本発明は、生きている細胞のトランスメンブレンポテンシャルを電気刺激を通じて変調する方法と、ほぼ任意のイオンチャネルまたはトランスポーターシステムの活動度をアッセイするためにそれらの方法を使用することを含む。
a)特定のチャネルのコンダクタンスの測定:
1.ナトリウムチャネルのアッセイ:
哺乳類の電圧依存ナトリウムチャネルの各種のアイソフォーム(isoform)が特定され、下の表1に要約されている。これらのチャネルは3つの主な群に分類できる(総説として、Goldwin, Annals N.Y. Academy of Sciences, 868:38-50, 1999を参照)。
表1の電圧依存ナトリウムチャネルの電圧依存性と、不活性および活性化キネティクスとは、大きくばらついている。電圧ゲートされているナトリウムチャネルは、多くの異なる立体配座(コンホメーション)を有する。それらは3つの状態に分類できる。(1)休止状態。この状態ではチャネルは閉じられて電流は流れることができない。これは、ナトリウムチャネルが、休止トランスメンブレンポテンシャルが約−60mVより下である細胞で発現されるときの典型的な状態である。チャネルは、消極により、開放状態、通常は約−50mVより上のトランスメンブレンポテンシャルへと迅速に駆動できる。(2)活性化された状態。この状態ではチャネルは開き、イオンは通ることができる。ナトリウムの細胞内濃度は、正常な休止している細胞では低く、細胞外濃度は高いので、ナトリウムイオンは細胞内に流れ込み、トランスメンブレンポテンシャルをより一層正に駆動する。開放状態の寿命は短く、一般に1ミリ秒のオーダーである。その後でそれは不活性状態に入る。(3)不活性状態。この状態ではチャネルは閉じられていてイオンはチャネルを通ることができない。チャネルはひとたび不活性状態になると、直接は開くことはできない。それはまず休止状態になる。これは、トランスメンブレンポテンシャルが数ミリ秒の間、非常に負(一般に−80mVより下)に保持されると起きる。それら3つの状態の間の遷移のための時定数としきい値電位とは、チャネルのサブタイプの間で非常に大きく変化する。
それらの実験の最中、反応が活性チャネルを持つ細胞に対して、およびチャネルが薬理学的にふさがれている(ブロックされている)細胞に対して行われる。適切な薬理学的試薬を利用できない場合は、ブロックされた状態をトランスフェクトされていない細胞系統でエミュレートできる。最適な刺激パラメータは、2つの細胞の集団の信号の違いの最小係数を与える。
i)不活性状態にある電圧依存ナトリウムチャネルのアッセイ:
好適な細胞は、対象とするイオンチャネルの活性しきい値より上の休止トランスメンブレンポテンシャルを持つものを含み、そのような細胞では、他のイオンチャネルは発現されない。これらの基準に合致する細胞は、CHL細胞とLTK(−)細胞を含む。目標イオンチャネルを選択した後で、細胞は、トランスフェクトされクローンがIII節で説明したように選択される。あるいは、対象とするチャネルと低レベルでの他のチャネルとを内生的に発現する細胞系統を使用できる。例えば、CHO−K1細胞系統は電圧ゲートされたナトリウムチャネルと、非常に低いレベルの他のチャネルとを発現する。細胞は、IV節に説明されているように、電気刺激を開始する前に、マルチウェル微量滴定プレートに付着され、培養され、電圧感応性染料で染色される。最初の実験は、通常、各ウェル内に等しい数の細胞を有する96ウェルマルチウェルプレートで行われる。一般に、8個のウェルの行が同一の条件の下に同時に電気的に刺激されて、細胞の反応の変化について統計的に重要なデータを提供する。
最適な電気刺激プロトコルが、多数の細胞の原形質膜の部分を、活性化消極を行う前に、細胞をエレクトロポレートすなわち殺すことなく、ナトリウムチャネルを不活性状態から解放するために十分長く、過分極すべきである。通常、これには、約0.5から約20msまでの範囲の期間にわたって、約−60ないし−80mVの持続されるトランスメンブレンポテンシャルを細胞内に生ずることを要する。
この効果を達成する好適な刺激プロトコルは二相であるので、細胞の両方の端縁部にあるイオンチャネルは、二相波形が極性を反転するにつれて不活性から解放される。通常、一相当り5ミリ秒で、振幅が25V/cmである二相方形波カーネルを用いる最初の条件からスタートする。カーネルは、約3秒の総列持続時間の間、約20Hzの一定の率で反復される。その後で、パルス振幅(最大約60V/cmまで)と、持続時間(0.1ないし50msの範囲)と、それから周波数(0ないし1kHzの範囲)とを最適にする。必要があれば、それらで一層効率的な電気刺激を行えるかどうかを判定するために、パルスの形の変化を調べることもできる。最適な刺激パラメータは、最低の電界強さと、電極を流れる電流の最小デューティサイクルとにおいて、異なる試験ウェルの間の信号の変動の最小係数で最大細胞刺激(チャネルがブロックされているか、存在しないような細胞と比較して)を生ずる。特定のパラメータの組が選択された後で、信号のサイズと反応の変化係数とをさらに最適にするために、電圧センサ染料の染色濃度の滴定を上記のようにして行うべきである。それらの手順(染料濃度、電界の強さ、および刺激の持続時間と周波数)は、信号を一層最適にするために反復できる。
ii)通常は休止状態にあるナトリウムチャネルのアッセイ:
好適な細胞は、対象とするイオンチャネルの活性化しきい値より下の休止トランスメンブレンポテンシャルを持つものを含み、その細胞では、他のイオンチャネルの発現は少数のキャラクタライズされているイオンチャネルタイプに大きく限られる。このタイプの細胞は、HEK−293細胞およびRBL細胞と、F11細胞とHL5細胞を含む。目標とするイオンチャネルの選択の後、上述したように、細胞は、対象とするイオンチャネルでトランスフェクトされ、クローンが選択される。あるいは、F11細胞とHL5細胞の場合におけるように、内生的なナトリウムチャネルを使用できる。選択およびキャラクタライザーションの後で、上記のように細胞クローンがマルチウェル微量滴定プレートに付着され、電圧感応性染料で染色される。前のように、最初の実験は、典型的には、各ウェルに等しい数の細胞がある、96ウェルマルチウェルプレートで行われる。一般に、8つのウェルの行が同一の条件の下で同時に刺激されて、細胞の反応の変化についての統計的に重要なデータを提供する。
いくつかのアッセイ手法が、細胞内の対象とするナトリウムチャネルの発現レベルに依存して可能である。高レベルの電圧依存ナトリウムチャネルの発現については、ナトリウム電流は、単一チャネル活性化/不活性化シーケンスの後で大きなトランスメンブレンポテンシャル変化を生ずるのに十分大きくなることができる。それらの場合には、電気刺激で生じさせられるトランスメンブレンポテンシャルの小さい正の乱れは、以後のナトリウムイオンの入り込みが細胞全体を消極することにより全てのナトリウムチャネルを活性化するように十分なナトリウムチャネルを活性化するために、十分なことがある。刺激電界は、チャネルを活性化するために、通常、十分長く加えるべきであるが、以後のイオン流を妨害するほど長くてはならない。細胞のトランスメンブレンポテンシャルが再分極された後で、刺激手順は反復できる。引き続く刺激事象は、最初のものと同一にでき、または、チャネルの時間依存特性を調べるために変更できる。
通常、一相当り500μsで、振幅が10V/cmである二相方形波カーネルを用いる初期条件からスタートする。その後で、パルス振幅(5および60V/cmの間)と、持続時間(0.1および1msの範囲)を最適にする。必要があれば、それらで一層効率的な電気刺激を行えるかどうかを判定するために、パルス形状の変化を調べることもできる。最適な刺激パラメータは、最低の電界強さと、電極を流れる電流の最小デューティサイクルとにおいて、異なる試験ウェルの間の信号の変化の最小係数で最大細胞刺激を生ずる。特定のパラメータの組が選択された後で、信号のサイズと反応の変化係数とをさらに最適にするために、電圧センサ染料の染色濃度の滴定を上記のようにして行うべきである。それらの手順(染料濃度、電界の強さ、および刺激の持続時間と周波数)は、信号を一層最適にするために反復できる。
低すぎて許容信号サイズを単一の刺激から与えることができないようなナトリウムチャネルの発現を有する細胞を使用することがしばしば必要であろう。また、ひき延ばされた時間期間にわたって大きな信号を維持することが望ましいこともある。それらの場合には、活性化電位より上に維持されているチャネルについて述べたように、細胞にパルス列を与えることができる。二相刺激パルスで、ナトリウムチャネルを開始トランスメンブレンポテンシャルとは独立に活性化できる。パルス間の間隔を膜時定数より短く保つことによって、内向き電流と外向き電流の間に平衡が成り立つまで、各刺激は電流を細胞中へ駆動する。この電圧の偏移は、刺激列が継続している限り維持される。
この場合の刺激プロトコルは、不活性化しきい値より上の休止電位をもつ細胞について説明したのとほとんど同じである。一般に、最初の一連の実験が、固定されている列持続時間で一定の頻度で反復される二相方形波カーネルを用いて行われる。パルスの持続時間は約1μsから約1秒まで、より好ましくは約100μsから約20msまで変化する。パルス振幅は、約0V/cmから約60V/cmまで、より好ましくは約10V/cmから約50V/cmまで変化する。刺激の周波数は、0Hz(すなわち単一パルス)と100kHzの間で、より好ましくは0Hzから約1kHzまでの間で変化する。パルス列は0s(すなわち、単一パルス)と約100sの間で、より好ましくは0sと10sの間で変化する。最適な刺激パラメータは、最低の電界強さにおいて、最大トランスメンブレンポテンシャル変化(チャネルがブロックされているまたは存在しない細胞と比較して)と試験ウェルの間の信号の変化の最小係数を生ずる。特定のパラメータの組が選択された後で、通常、信号のサイズと反応の変化係数とをさらに最適にするために、電圧センサ染料の染色濃度の滴定が上記のようにして行われる。それらの手順(染料濃度、電界の強さ、および刺激の持続時間と周波数)は、信号を一層最適にするために反復できる。
b)カリウムチャネル:
電圧依存カリウムチャネルは、動作電位消極の後で、神経細胞および筋肉細胞を再び分極する。それらは、神経、筋肉、分泌器官および排出器官において重要な調整役割を演じもする。ほとんどの細胞は、高い細胞内カリウム濃度を積極的に維持するので、カリウムに対する反転トランスメンブレンポテンシャルは、およそ−90mVである。カリウムは、通常、細胞から流れ出るので、よりカリウム選択性のチャネルを開くと、トランスメンブレンポテンシャルを一層正へと通常は駆動するナトリウムチャネルの開放と対照的に、トランスメンブレンポテンシャルを一層負へと駆動しようとする。
数多くのカリウムチャネルのサブタイプの概要を下の表2に示す。
カリウムチャネルは、活性化および不活性化時定数と電圧依存性の面で、数多くの多様性を示す。一般には、電圧依存カリウムチャネルは、ナトリウムチャネルに類似する電圧依存性を示し、非常に負の電位で閉じられ、あるしきい値より上で開く。カリウムチャネルは、多数の休止状態と、多数の不活性状態と、通常は単一の活性状態とを有する。電圧依存ナトリウムチャネルとは異なって、遷移は、ほとんどの状態の間で許される。それらの遷移は、活性化(休止から開放状態へ動く)と、脱活性化(開放状態から休止状態へ動く)と、不活性化(休止状態または開放状態から不活性状態に動く)と、不活性からの解放(不活性状態から休止状態へ動く)と、フリッカーリング(不活性状態から開放状態へ動く)とである。遷移のしきい値と遷移速度の電圧依存性とには大きな多様性がある。活性化時定数は、0.1から1000msの範囲であり、しきい値活性化電位は−80から+20mVの範囲である。不活性化時定数は、0.1から無限(すなわち不活性化しない)の範囲であり、しきい値電位は−60から0mVの範囲である。不活性からの解放のための時定数は、0.5msから100msの範囲であり、しきい値電位は−70から0mVの範囲である。
測定可能なチャネル依存信号を得るために必要な刺激プロトコルは、問題のチャネルの特定の性質にいくらか依存する。電圧依存カリウムチャネルにおけるパラメータの多様性のために、電気刺激プロトコルの最適化は、いくつかの反復を取ることがある。
それらの実験中に、活性チャネルを持つ細胞と、チャネルが薬理学的にブロックされている細胞とで、反応が比較される。適切な薬理学的試薬を利用できないときは、ブロックされた状態を、トランスフェクトされない細胞系統でエミュレートできる。最適な刺激パラメータは、2つの細胞の集団の信号の違いの変化の最小係数を生ずる。
カリウムチャネルの直接刺激を用いるアッセイ:
電圧規制されたカリウムチャネル:
カリウムチャネルは外向き電流を生ずるので、チャネルの活性化は、負のトランスメンブレンポテンシャル変化を生じる。生理学的諸条件の下では、カリウムの反転電位は−90mVくらいである。電圧依存カリウムチャネルのみを発現している細胞は、活性化しきい値に近い休止電位を一般に有するので、直接刺激は、約−50mVより上の活性化しきい値を持つそれらの電圧依存カリウムチャネルに対して働き掛けねばならない。トランスメンブレンポテンシャルの小さな負の偏移(40mVの変化より小さい)をFRET電圧感応性染料を用いて確実に検出できるが、より大きい信号で高いスループットのスクリーニングを行うことがしばしば好ましい。
好適な細胞タイプは、CHO−K1、CHLおよびLTK(−)などの、最小レベルの他のイオンチャネルを発現する細胞を含む。対象とするイオンチャネルを発現するクローンのトランスファクションと選択は、通常は休止状態にあるナトリウムイオンチャネルについて、上で説明したようにして、一般に、実行される。あるいは、対象とするチャネルを内生的に発現する細胞系統を使用できる。トランスメンブレンポテンシャル染料でのラベル付けおよび測定は、通常は休止状態にあるナトリウムイオンチャネルについて、上で説明したようにして、一般に、実行される。
刺激プロトコルは、原形質膜の部分を、電圧依存カリウムチャネルを活性化するために十分長く消極するので有利である。電圧依存ナトリウムチャネルの場合とは異なって、電圧依存カリウムチャネルは、刺激パルスの減極段階中に、通常、電流を流す。細胞のうちトランスメンブレンポテンシャルが負の向きに駆動される側では、カリウムチャネルは不活性状態から解放される(問題のチャネルが電圧依存不活性を経験するならば)。細胞のうちトランスメンブレンポテンシャルが正の向きに駆動される側では、カリウムチャネルは活性化して外向き電流を流す。したがって、刺激パルスの持続時間は、不活性時間を大幅に越えてはならない。カリウム電流は、休止電位よりも負へと平均トランスメンブレンポテンシャルを駆動しようとする。刺激パルスの後で、トランスメンブレンポテンシャルは、休止電位へ指数関数的に緩和する。膜の時定数より短い時間の後で刺激を繰り返すことにより、平均細胞膜をさらに負へ駆動できる。刺激列を用いて、大きな持続された信号を得ることができる。
この効果を達成する好適な刺激プロトコルは二相的であるので、細胞の両端部に存在するイオンチャネルは、カリウムイオンの動きを可能にすることに関与できる。通常、一相当り5ミリ秒で、振幅が25V/cmの二相方形波カーネルを用いる初期条件で着手する。カーネルは、約3秒の総列持続時間にわたって約20Hzの一定のレートで反復する。その後で、パルスの振幅、持続時間、およびその後で周波数を最適にする。必要があれば、パルスの形状がより効率的な電気刺激となるかどうかを判定するために、パルスの形状の変化を調べることもできる。最適な刺激パラメータは、最低の電界強さと、電極を流れる電流の最小デューティサイクルとにおいて、異なる試験ウェルの間での信号の変化の最小係数で最大平均トランスメンブレンポテンシャル変化(チャネルがブロックされているか存在しないような細胞と比較して)を生ずる。特定のパラメータの組が選択された後で、信号のサイズと反応の変化の係数とをさらに最適にするために、電圧センサ染料の染色濃度の滴定を上記のようにして行うべきである。それらの手順(染料濃度、電界の強さ、および刺激の持続時間と周波数)は信号を一層最適にするために反復できる。
2)内向きレクチファイヤカリウムチャネル:
それの名称とは反対に、内向きレクチファイヤチャネルの機能は、カリウムを細胞内に入れないようにすることである。カリウムの内向きの流れは、(1)トランスメンブレンポテンシャルがカリウム平衡電位より下に降下した時、または(2)細胞外部のカリウム濃度が上昇する時、にのみ生ずることができる。いずれの状況も通常は起きない。その理由は、(1)正常な生理学的諸条件の下では、カリウムは最も負の反転電位を持つイオンであるので、どのイオン電流も電位をカリウム反転電位よりも一層負に駆動できず、(2)病理学的諸条件下を除いて、細胞外部のカリウム濃度は厳しく制御される、からである。しかし、電気刺激を用いると、細胞膜の部分をVKより下に駆動できて、カリウムイオンの細胞内への入り込みを促進する。これによってトランスメンブレンポテンシャルは正味の正変化を起こさせられ、それは正信号として検出できる。内向きレクチファイヤのブロッカーについてのアッセイを行いかつ最適にするために、したがって、下記の手順に従うことができる。
好適な細胞タイプは、CHO−K1、CHLおよびLTK(−)などの、最小レベルの他のイオンチャネルを発現する細胞を含む。対象とするイオンチャネルを発現するクローンのトランスファクションと選択は、通常は休止状態にあるナトリウムイオンチャネルについて上で説明したようにして、一般に実行される。あるいは、対象とするチャネルを内生的に発現する細胞系統を使用できる。トランスメンブレンポテンシャル染料でのラベル付けおよび測定は、通常は休止状態にあるナトリウムイオンチャネルについて上で説明したようにして、一般に実行される。
好適な刺激プロトコルは二相カーネルを用いるので、細胞の両端部に存在するイオンチャネルが関与する。通常、一相当り5ミリ秒で、振幅が25V/cmの二相方形波カーネルを用いる初期条件で着手する。カーネルは、約3秒の総列持続時間にわたって約20Hzの一定のレートで反復される。その後でパルスの振幅、持続時間、およびその後で周波数を最適にする。必要があれば、パルスの形状がより効率的な電気刺激となるかどうかを判定するために、パルスの形状の変化形を調べることもできる。最適な刺激パラメータは、最低の電界強さと、電極を流れる電流の最小デューティサイクルとにおいて、異なる種々の試験ウェル間の信号の変化の最小係数で最大細胞刺激(チャネルがブロックされているか存在しないような細胞と比較して)を生ずる。特定のパラメータの組が選択された後で、信号のサイズと反応の変化係数とをさらに最適にするために、電圧センサ染料の染色濃度の滴定を上記のようにして行うべきである。それらの手順(染料濃度、電界の強さ、および刺激の持続時間と周波数)は信号を一層最適にするために反復できる。
iii)電圧依存ナトリウムカウンターチャネルを用いるアッセイ:
この方法は、対象とする電圧依存カリウムチャネルを発現し、かつ電圧依存ナトリウムチャネルも発現する細胞系統の使用を含む。この方法では、やり方は、電圧依存ナトリウムチャネルを特に活性化するために構成されている電気刺激プロトコルを使用することである。この場合には、電気刺激は、ナトリウムイオンを細胞内に入らせて、正電圧変化を起こさせる。対象とするカリウムチャネルが存在することにより、カリウムイオンが細胞を離れることができるようにすることによって、ナトリウムチャネルの正の反応が抑制される傾向が生じる。アッセイは、試験化学薬品がカリウムチャネルをブロックする時に外向き電流が存在しないことを利用することにより、ナトリウムチャネルの活性化により通常ひき起こされる大きな正電圧反応を回復する。電流の平衡の最適化は、アッセイがカリウムチャネルの閉塞に敏感であることを確保するために、この方法では重要である。ナトリウム電流がカリウム電流に対して小さすぎるとすると、カリウムチャネルブロッカーについての服量反応曲線は、より高い濃度へ向かって移動する。例えば、カリウム電流がナトリウム電流より100倍大きいという極端な場合には、ナトリウム電流から50%の反応を得るためには、カリウムシャネルの99%をもブロックしなければならない。
この方法は、電圧依存ナトリウムチャネルを繰り返しパルスで駆動することを含むので、プロトコル展開は、電圧で活性化される不活性状態にあるナトリウムチャネルについて上で述べたことと、本質的に同じである。通常、一相当り5ミリ秒で、振幅が25V/cmの二相方形波カーネルを用いる初期条件で着手する。カーネルは約3秒間の総列持続時間にわたって約20Hzの一定のレートで反復される。その後でパルスの振幅、持続時間、およびその後で周波数を最適にする。必要があれば、パルスの形状がより効率的な電気刺激となるかどうかを判定するために、パルスの形状の変化形を調べることもできる。最適な刺激パラメータは、最低の電界強さと、電極を流れる電流の最小デューティサイクルとにおいて、異なる試験ウェル間での信号の変化の最小係数で最大細胞刺激(チャネルがブロックされているか、存在しないような細胞と比較して)を生ずる。特定のパラメータの組が選択された後で、信号のサイズと反応の変化の係数とをさらに最適にするために、電圧センサ染料の染色濃度の滴定を上記のようにして行うべきである。それらの手順(染料濃度、電界の強さ、および刺激の持続時間と周波数)は信号を一層最適にするために反復できる。
このアッセイの形態では、理想的には、チャネルブロックが存在しない中での刺激に対する反応は存在しない(または非常に小さい)。その理由は、カリウム電流がナトリウム電流を打ち消すからである。したがって、刺激条件を最適にするためには、カリウムチャネルの活動が存在する時およびしない時の反応を比較する必要がある。理想的には、これはカリウムチャネルの選択性ブロッカーを用いて行われる。そのようなブロッカーがまだ知られていない場合には、ナトリウムカウンターチャネルのみを含んでいる細胞系統を使用することが可能である。
このアッセイの形態は2つのイオンチャネルを含むので、いずれかのチャネルのモジュレーターが電圧反応に影響する。この場合には、ヒット(カリウムチャネルのブロッカー)が電圧反応を回復する。スクリーニングの形態は、ナトリウムチャネルのみをブロックする化合物を自動的に無視する。しかし、両方のチャネルをブロックする化合物が存在する中での細胞の刺激によって、電圧が偏移しない結果ももたらされて、化合物が機能しないことを示唆する。この種の化合物は興味のあることがあるので、それらをあらわにする方法も使用できる。ナトリウムチャネルは含むがカリウムチャネルは含まない親細胞系統を用いて同一の化合物スクリーニングを行うことによって、ナトリウムチャネルのブロッカーを見つけることができる。ナトリウムチャネルをブロックするとして見つけられた化合物は、それらがカリウムチャネルに対して活性を持つかどうかを調べるために、後で別々に試験できる。
c)カルシウムチャネルのアッセイ:
カルシウムチャネルは、多くの細胞内で一般に見出される。カルシウムチャネルは、細胞内で、他の機能のうちで、信号形質導入という重要な役割を演ずる。励起可能な細胞では、細胞内のカルシウムは、長い消極反応のために維持された内向き電流を供給し、消極機構とその他の細胞内部信号形質導入機構との間のリンクとして作用する。電圧ゲートされたナトリウムチャネルのように、電圧ゲートされたカルシウムチャネルは、多数の休止、活性および不活性状態を有する。
多数のタイプのカルシウムチャネルが、骨格筋肉、心臓筋肉、肺、平滑筋および脳を含めた種々の組織からの哺乳類の細胞内で特定されている[例えば、Bean, B. P., (1989) Ann. Rev. Physiol., 51:367-384およびHess, P.,(1990), Ann. Rev. Neurosci., 56:337を参照]。異なる型のカルシウムチャネルが、電流のキネティクス、保持電位感度、カルシウムチャネルアゴニストおよび拮抗体に対する感度によって識別されるL−、T−、N−およびP−型の4つのクラスに大きく分類されている。神経電圧依存カルシウムチャネルの4つのサブタイプが提案されている(Swadulla, D. et al., Trends in Neuroscience, 14:46, 1991)。
ラビットの骨格筋肉カルシウムチャネルのα1、α2、βおよびγのサブユニットのcDNAおよび対応するアミノ酸配列が決定されている[Tanabe et al., (1987) Nature, 328:313-318;Ruth et al., (1989) Science 245:1115-1118;および米国特許第5,386,025号を参照]。また、ラビットの心臓筋肉[Mikami et al., (1989) Nature, 340:230-233]および肺[Biel, M.,(1990) FEBS Letters, 269:409-412]のα1サブユニットカルシウムチャネルのcDNAおよび対応するアミノ酸配列が決定されている。また、ラビットの脳カルシウムチャネルを符号化するcDNAクローン(BIチャネルと命名されている)が分離されている[Mori, Y.et al.,(1991) Nature, 350:398-402]。
カルシウムチャネルα1サブユニットのいくつかの異なるサブタイプの部分を符号化する部分cDNAクローン(ラットの脳クラスA、B、C、Dと呼ばれている)が、ラット脳cDNAライブラリから分離されている[Snutch, T. et al., (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:3391-3395]。もっと最近、全長ラット脳クラスA[Starr, T., et al., (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:5621-5625]およびクラスC[Snutch, T., et al., (1991) Neuron, 7:45-57]のcDNAクローンが分離されている。ラットの脳クラスCのDNAで符号化されたアミノ酸配列は、ラビットの心臓筋肉カルシウムチャネルα1サブユニット符号化DNAにより符号化されたものに約95%同じであるが、ラットの脳クラスAのDNAにより符号化されたアミノ酸配列は、僅かに33%の配列同一性を、ラビットの骨格または心臓筋肉カルシウムチャネルα1サブユニット符号化DNAにより符号化されたアミノ酸配列と共有するだけである。別のラットの脳カルシウムチャネルα1サブユニットを符号化するcDNAクローンも得られている[Hui et al., (1991) Neuron, 7:35-44]。このクローンにより符号化されたアミノ酸配列は、ラビットの骨格および心臓筋肉カルシウムチャネルDNAにより符号化されたタンパク質にほぼ70%相同である。ラットの脳クラスC α1サブユニット符号化cDNAに緊密に関連するcDNAと、明らかに異なるカルシウムチャネルα1サブユニットを符号化する他の部分cDNAクローンに緊密に関連する部分cDNAクローンの配列も分離されている[Snutch, T., et al., (1991) Neuron, 7:45-57;Perez-Zeyes, E., et al., (1990) J. Biol., 265:20430;およびHui et al., (1991) Neuron, 7:35-44を参照]。
キャラクタライズされた既知のカルシウムチャネルについては、活性化時定数は、しきい値電位−80から−20mVで、0.1から10msまでの範囲である。不活性化時定数は、しきい値電位−60から−20mVで、0.1から∞(すなわち不活性でない)までの範囲である。不活性からの解放のための時定数は、しきい値電位−70から−40mVで、0.5から100msまでの範囲である。
細胞系統の選択と電圧依存カルシウム電流の導入は、ナトリウムチャネルについて上で説明した一般的なガイドラインとやり方を用いて行われる。
好適な細胞タイプは、CHO−K1、CHLおよびLTK(−)などの最低レベルの他のイオンチャネルを発現する細胞を含む。対象とするイオンチャネルを発現するクローンのトランスフェクションと選択は、通常は休止状態にあるナトリウムイオンチャネルについて上で述べたようにして、一般に行われる。あるいは、対象とするチャネルを内生的に発現する細胞系統を使用できる。トランスメンブレンポテンシャル染料での細胞のラベル付けと測定は、通常は休止状態にあるナトリウムイオンチャネルについて上で述べたようにして、一般に行われる。あるいは、細胞にCalcium Green,fluo3AM、またはindo−1などのカルシウム感応性蛍光染料をロードできる。
小さなバックグラウンド電流を有する細胞では、チャネルを不活性から解放するために十分負である膜の部分を駆動することにより、強い内向きのカルシウム電流を発生できる。その後で、外部電界を反転またはなくすことにより、チャネルはチャネルを活性化する電位を受けて、カルシウム電流が細胞に流れ込むことができるようにする。ほとんどの細胞におけるカルシウムの反転電位は、一般に、+60ないし+100mVであるので、カルシウムの流れ込みに起因する大きな電圧変化が可能である。メンブレンに結び付けられた電圧感応性染料または細胞内カルシウム染料のいずれかを用いて、細胞の活動度をモニタできる。カルシウムおよびナトリウムチャネルの性質の類似性により、ナトリウムチャネルについて概略を述べたのと同じ一般的なアッセイ最適化手順が、カルシウムチャネルに適用される。
通常、一相当り5ミリ秒で、振幅が25V/cmの二相方形波カーネルを用いる初期条件で着手する。カーネルは約3秒間の総列持続時間にわたって約20Hzの一定のレートで反復される。その後で、パルスの振幅、持続時間およびその後で周波数を最適にする。必要があれば、パルスの形状がより効率的な電気刺激となるかどうかを判定するために、パルスの形状の変化形を調べることもできる。最適な刺激パラメータは、最低の電界強さと、電極を流れる電流の最小デューティサイクルとにおいて、異なる試験ウェル間での信号の変化の最小係数で最大細胞刺激(チャネルがブロックされているか、存在しないような細胞と比較して)を生ずる。特定のパラメータの組が選択された後で、信号のサイズと反応の変化係数とをさらに最適にするために、電圧センサ染料の染色濃度の滴定を上記のようにして行うべきである。それらの手順(染料濃度、電界の強さ、および刺激の持続時間と周波数)は信号を一層最適にするために反復できる。
それらの実験中は、活性チャネルを持つ細胞と、チャネルが薬理学的にブロックされている細胞とに対する反応が、比較される。適切な薬理学的試薬を使用できないときには、ブロックされた状態は、トランスフェクトされない細胞系統でエミュレートできる。最適な刺激パラメータは、2つの細胞集団の信号の間の差の変化の最小係数を生ずる。
d)電圧依存塩化物チャネルのアッセイ:
塩化物チャネルは、体内のほぼあらゆる細胞の原形質膜中で見出される。塩化物チャネルは、トランスメンブレンポテンシャルの規制と、上皮膜を横切るイオンの吸収および分泌を含めた、各種の細胞機能を仲介する。ゴルジ装置および細胞内分裂小嚢の細胞内膜中に存在する時は、塩化物チャネルは、細胞小器官pHの調整もする。総説として、Greger, R., (1988) Annu. Rev. Physiol., 50:111-122を参照。
3つの異なるクラスの塩化物チャネルが、それらの調整および構造立体配座のタイプ(表3)に基づいて明らかである。第1のクラスは、GABAおよびグリシン受容体スーパーファミリーを含み、第2のクラスは、CFTR(嚢性小器官トランスメンブレンコンダクタンスレギュレーター)を含み、第3のクラスは、電圧規制された塩化物チャネルを含む。
ナトリウムに似たイオン、特にカルシウムとは対照的に、原形質膜を横切る塩化物の電気化学的勾配は、一般に、平衡とは遠くない。したがって、細胞の休止電位においては、塩化物チャネルが開いても原形質膜電圧の大きな行程または細胞内塩素濃度の劇的な変化を生ずることはない。電気刺激は、通常、細胞膜を横切る対称的な電圧変化を生ずるので、チャネルの導電度が非線形でなければ、正味の塩素流れを発生できない。線形な漏れコンダクタンスのために、一様な電界は、塩素を一方の側では細胞の内部へ、他方の側では細胞の外部へと駆動する。
非線形コンダクタンス曲線(レクチファイヤ)または電圧で起動させられるゲーティングを有する塩化物チャネルの直接電気刺激が、正味のイオン流れを発生できる。これは、検出可能なトランスメンブレンポテンシャル変化を生じさせる。コンダクタンスおよびゲーティングの電圧依存性に応じて、トランスメンブレンポテンシャル変化は正または負のことがある。典型的な塩化物チャネル(上昇させられた電位で活性化し、より負の電位で閉じる)および外向きレクチファイヤに対しては、塩素は、細胞内に流れ込んでトランスメンブレンポテンシャルを負に駆動する。内向きレクチファイヤに対しては、塩素は、細胞から押し出されてトランスメンブレンポテンシャルは正に駆動される。
塩素反転電位と休止トランスメンブレンポテンシャルの間の小さい差のために、電圧ゲートされた塩素チャネルの直接刺激によって、不十分なトランスメンブレンポテンシャル変化となることがある。内向き電流と外向き電流を発生するために、ナトリウムまたはカルシウムカウンタチャネルの共発現および電気刺激を用いて、それらのイオンチャネルのアッセイを展開できる。その後で、カウンタチャネルが電気的に刺激された時に、トランスメンブレンポテンシャル変化の不在または存在によって、塩素電流の存在または不在を決定できる。
好適な細胞タイプは、CHO−K1、CHL、LTK(−)などの最低レベルの他のイオンチャネルを発現する細胞を含む。対象とするイオンチャネルを発現するクローンのトランスフェクションと選択は、通常は休止状態にあるナトリウムイオンチャネルについて上で述べたようにして、一般に行われる。あるいは、対象とするチャネル(またはカウンタチャネル)を内生的に発現する細胞系統を使用できる。トランスメンブレンポテンシャル染料での細胞のラベル付けと測定は、通常は休止状態にあるナトリウムイオンチャネルについて上で述べたようにして、一般に行われる。
通常、一相当り5ミリ秒で、振幅が25V/cmの二相方形波カーネルを用い
る初期条件で着手する。カーネルは、約3秒間の総列持続時間にわたって約20Hzの一定のレートで反復される。その後でパルスの振幅、持続時間、およびその後で周波数を最適にする。必要があれば、パルスの形状がより効率的な電気刺激となるかどうかを判定するために、パルスの形状の変化形を調べることもできる。最適な刺激パラメータは、最低の電界強さと、電極を流れる電流の最小デューティサイクルとにおいて、種々の試験ウェル間での信号の変化の最小係数で最大細胞刺激(チャネルがブロックされているか、存在しないような細胞と比較して)を生ずる。特定のパラメータの組が選択された後で、信号のサイズと反応の変化係数とをさらに最適にするために、電圧センサ染料の染色濃度の滴定を上記のようにして行うべきである。それらの手順(染料濃度、電界の強さ、および刺激の持続時間と周波数)は信号を一層最適にするために反復できる。
それらの実験中は、活性チャネルを持つ細胞と、チャネルが薬理学的にブロックされている細胞とに対して、反応が比較される。適切な薬理学的試薬を使用できないときは、ブロックされた状態は、トランスフェクトされていない細胞系統でエミュレートできる。最適な刺激パラメータは、2つの細胞の集団の信号の差における変化の最小係数を生ずる。
e)配位子依存チャネルの検定:
配位子(リガンド)依存イオンチャネルファミリーは大きくて多様である。配位子依存イオンチャネルは、特定の分子の結合に反応して開く。それらは、典型的には、ニューロンの間と、ニューロンから筋肉細胞へとの高速シナプス伝達を仲介する。それらは低速シナプス伝達も仲介し、種々の調整機構を制御する。配位子ゲートされたイオンチャネルは、一般に、電荷選択的なだけである。すなわち、それらはある範囲のアニオンまたはカチオンの流れを許すが特異性は持たない。それらは活性、脱活性、および感度低下キネティクスにおいて数多くの変形を有し、それらの全てはミリ秒以下から秒までの時定数まで変化できる
配位子がチャネルの受容体に結合すると、チャネルはコンホメーション変更を行ってチャネルを活性化する。配位子が食塩水浴から除かれると、結合されている配位子が解離してチャネルは閉じる。配位子が食塩水浴中に留まっているならば、いくつかの配位子を保持することによりチャネルは感度を下げるが、チャネルが閉じられる状態である異なるコンホメーション状態へ動く。活性化状態と、脱活性化状態と、感度を低下させられている状態との間の平衡分布は、チャネルの間で非常に大きく変動する。
現在のアッセイの形態では、細胞のトランスメンブレンポテンシャルは、配位子が加えられている間にモニタされる。チャネルが開いた時のコンダクタンスの急上昇によって、トランスメンブレンポテンシャルは新しい反転電位へ向かって駆動される。不幸なことに、多数の配位子ゲートされたチャネルに対しては、新しい反転電位は、通常、休止電位の15mVの範囲内である。この小さい変化は、細胞内で信号伝達するために使用するのには十分であるが、それは薬理学的アッセイを困難にする。
配位子ゲートされたイオンチャネルの電気刺激アッセイにおいて、1つのやり方は、電圧ゲートされたナトリウムカウンタチャネルを対象とする配位子ゲートされたイオンチャネルと共発現させることである。このやり方によって、電気刺激を通じてトランスメンブレンポテンシャル変調できる。電気刺激の最中またはそれに先立って試験化合物が加えられるとすると、この方法は、配位子ゲートされたチャネルが開かれているか、閉じられているかの分析を可能にする。配位子ゲートされたチャネルが開いているとすると、細胞の高い休止コンダクタンスが電気刺激に対する電圧反応を抑制する。しかし、配位子ゲートされたチャネルがブロックされているとすると、細胞は電気刺激に対して大きな反応を行う。電気刺激パラメータにおける大きな柔軟性のために、休止コンダクタンスを広い範囲にわたってアッセイできるようにされる。これは、配位子ゲートされたチャネルの場合に重要である。その理由は、配位子が存在する場合の休止コンダクタンスが、平衡感度低下に非常に敏感だからである。感度低下とチャネル発現の変化を考慮にいれて、10MΩから10GΩのどの範囲にも及ぶ休止膜抵抗値を持つことがある。カウンタチャネルとしてのラットの脳型IIaナトリウムチャネルでによって、この全範囲をカバーできる。アゴニストと拮抗体の両方をスクリーニングすることも可能でなければならない。反応が半分の大きさであるように刺激パラメータを選択することにより、アゴニストは反応を減少し、一方、拮抗体はそれを増加する。より高い(アゴニストアッセイ)またはより低い(拮抗体アッセイ)周波数で刺激することによって、よりよいスクリーニングウィンドウを得ることができる。なお、チャネルコンダクタンスのモジュレーター、開放時間、感度低下、および不活性化は、全て検出できることに注目されたい。
好適な細胞タイプは、CHO−K1、CHLおよびLTK(−)などの最低レベルの他のイオンチャネルを発現する細胞を含む。対象とするイオンチャネルを発現するクローンのトランスフェクションと選択は、通常は休止状態にあるナトリウムイオンチャネルについて上で述べたようにして、一般に行われる。あるいは、対象とするチャネル(またはカウンタチャネル)を内生的に発現する細胞系統を使用できる。トランスメンブレンポテンシャル染料での細胞のラベル付けと測定は、通常は休止状態にあるナトリウムイオンチャネルについて上で述べたようにして、一般に行われる。
通常、一相当り5ミリ秒で、振幅が25V/cmの二相方形波カーネルを用いる初期条件で着手する。カーネルは約3秒の総列持続時間にわたって約20Hzの一定のレートで反復される。その後でパルスの振幅、持続時間、およびその後で周波数を最適にする。必要があれば、パルスの形状がより効率的な電気刺激となるかどうかを判定するために、パルスの形状の変化形を調べることもできる。最適な刺激パラメータは、最低の電界強さと、電極を流れる電流の最小デューティサイクルとにおいて、異なる試験ウェル間の信号の変化の最小係数で最大細胞刺激(ブロックされている配位子ゲートチャネルを有するか、存在しないような細胞と比較して)を生ずる。特定のパラメータの組が選択された後で、信号のサイズと反応の変化係数とをさらに最適にするために、電圧センサ染料の染色濃度の滴定を上記のようにして行うべきである。それらの手順(染料濃度、電界の強さ、および刺激の持続時間と周波数)は信号を一層最適にするために反復できる。
それらの実験中は、活性チャネルを持つ細胞と、チャネルが薬理学的にブロックされている細胞とに対して、反応が比較される。適切な薬理学的試薬を使用できないときは、ブロックされた状態は、トランスフェクトされていない細胞系統でエミュレートできる。最適な刺激パラメータは2つの細胞集団の信号の差における変化の最小係数を生ずる。
e)受動チャネルの検定:
多くのチャネルは、遅い、または電圧で活性化されないコンダクタンス変化を有する。主要な例は、包嚢繊維症に関連させられているチャネルのいくらか、特に包嚢繊維症トランスメンブレンレギュレーター(CFTR、塩素チャネル)、上皮ナトリウムチャネル(ENaC)および4TMカリウムチャネルファミリーメンバー(Wang et al., Ann. N.Y. Acad. Sci., 868:286-303, 1999)である。それらのチャネルのいずれかにアゴニストとして作用する小さい分子は、包嚢繊維症を緩和する薬品の候補である。現在、この型のチャネルに対する便利に動作できる高スループットのスクリーニング法はない。
この型の対象とするイオンチャネルのための提案されているアッセイ形態は、電圧依存ナトリウムチャネルを発現もする細胞中の対象とする漏れチャネルを発現する細胞を含む。対象とするチャネルは、電圧依存ナトリウムチャネルを持つ細胞中にクローンされる。細胞が刺激された時は、受動電流の存在がナトリウムチャネルの正の反応を抑制する。受動チャネルをブロックすると、大きな正の電圧反応が回復する。この方法では電流の平衡の最適化が重要である。野生型CHO細胞はこの目的には有用なことがあるが、より大きいナトリウム電流を持つ細胞(内生の、または処理された)が好ましい。ナトリウム電流がカリウム電流に対して小さすぎるとすると、受動チャネルブロッカーの服量反応曲線は、より高い濃度へ向かってシフトする。例えば、受動チャネルのナトリウム電流より100倍も大きいという極端な場合には、ナトリウムチャネルから50%の反応を得るために、受動チャネルの99%をブロックしなければならないであろう。
好適な細胞型は、CHO−K1、CHLおよびLTK(−)などの最低レベルの他のイオンチャネルを発現する細胞を含む。対象とするイオンチャネルを発現するクローンのトランスフェクションと選択は、通常は休止状態にあるナトリウムイオンチャネルについて上で述べたようにして、一般に行われる。あるいは、対象とするチャネル(またはカウンタチャネル)を内生的に発現する細胞系統を使用できる。トランスメンブレンポテンシャル染料での細胞のラベル付けと測定は、通常は休止状態にあるナトリウムイオンチャネルについて上で述べたようにして、一般に行われる。
好適な刺激プロトコルは二相カーネルを使用する。一般に、最初の一連の実験が、固定されている列持続時間の間に一定の率で繰り返される二相方形波カーネルを用いて行われる。パルスの持続時間は約1μsから約1sまで変化し、より好ましくは約100μsから約20msまで変化する。パルスの振幅は0V/cmから約60V/cmまで変化し、より好ましくは10V/cmから50V/cmまで変化する。刺激の周波数は、0Hz(すなわち単一パルス)と100kHzの間で変化し、より好ましくは0Hzから約1kHzまで変化する。パルス列は0s(すなわち単一パルス)と約100sの間で変化し、より好ましくは0sと約10sの間で変化する。
通常、一相当り5ミリ秒で、振幅が25V/cmの二相方形波カーネルを用いる初期条件で着手する。カーネルは約3秒の総列持続時間にわたって約20Hzの一定のレートで反復される。その後でパルスの振幅、持続時間、およびその後で周波数を最適にする。必要があれば、パルスの形状がより効率的な電気刺激となるかどうかを判定するために、パルスの形状の変化形を調べることもできる。最適な刺激パラメータは、最低の電界強さと、電極を流れる電流の最小デューティサイクルとにおいて、異なる試験ウェル間で信号の変化の最小係数で最大細胞刺激(配位子ゲートチャネルがブロックされているか、存在しないような細胞と比較して)を生ずる。特定のパラメータの組が選択された後で、信号のサイズと反応の変化係数とをさらに最適にするために、電圧センサ染料の染色濃度の滴定を上記のようにして行うべきである。それらの手順(染料濃度、電界の強さ、および刺激の持続時間と周波数)は信号を一層最適にするために反復できる。
アゴニストと拮抗体の両方をスクリーニングすることも可能でなければならない。反応が最大の半分であるように刺激パラメータを選択することにより、アゴニストは反応を減少し、一方、拮抗体はそれを増加する。より高い(アゴニストアッセイ)またはより低い(拮抗体アッセイ)周波数で刺激することによって、より良いスクリーニングウィンドウを得ることができる。
それらの実験中は、活性チャネルを持つ細胞と、チャネルが薬理学的にブロックされている細胞とに対して、反応が比較される。適切な薬理学的試薬を使用できないときは、ブロックされた状態は、トランスフェクトされていない細胞系統でエミュレートできる。最適な刺激パラメータは、2つの細胞の集団の信号の差における変化の最小係数を生ずる。
本発明は、細胞およびイオンチャネルパラメータの定量的に測定する方法と、電気刺激を用いてそれらのパラメータに対する試験化合物の薬理学的効果を定量化する方法も含む。
b)膜抵抗値の定量的測定
電気刺激が終った後で、細胞のトランスメンブレンポテンシャルは新しい休止電位に緩和する。電圧依存チャネルのアッセイでは、チャネルは、一般に、閉じているか不活性であり、最終的な休止平衡電位は、刺激前と同じである。ほとんどの場合には、膜容量に蓄積される電荷は、膜の抵抗値を通じて指数関数的に散逸する。膜の時定数は、簡単にいえば、膜の容量と膜の抵抗値との積、すなわちτ=RmCmである。それは、膜の容量と膜の時定数を測定することにより容易に決定できる。
これらのアッセイで一般に使用される細胞の平均の膜容量は、外因性のチャネルとは独立であり、パッチクランプ法によって容易に測定できる。膜の時定数は、トランスメンブレンポテンシャルの減衰率を測定し、このデータを指数減衰関数にフィッティングすることによって容易に測定される。したがって、所与の細胞タイプに対して膜の時定数を平均膜容量で除算することにより、休止膜抵抗値すなわち漏れ膜抵抗値を定量的に決定できる。
電圧に依存するチャネルが開かれている間に、膜抵抗値を定量的に測定するために、同様の解析を行うことができる。電気刺激の間に、トランスメンブレンポテンシャルは、新しい平衡電位へ向かってほぼ指数関数的に緩和もする。したがって、刺激の開始時における電圧変化の膜時定数は、時間的に平均された膜抵抗値の測定値を構成する。チャネルが実際に開いている時間部分を考慮に入れるために適切なスケーリング係数を用いると、チャネル開放膜抵抗値の定量的測定を行うことができる。
c)不活性からの解放の時定数の測定:
不活性イオンチャネルを開くには、トランスメンブレンポテンシャルをしきい値より下に数ミリ秒のオーダーの時間、保持することを要する。この不活性からの解放は、重要な生理学的意味を持つ。例えば、不活性からの解放は、動作電位の後戻り伝播を阻止する御し難い期間を強制して、ニューロンの最高興奮率を制限する。この性質の薬理学的取扱いは治療的に関連する。
繰り返し電気刺激を用いて、不活性からの解放の平均を定めることができる。これは可変幅の電界パルスを用いて行うことができる。パルス幅が、不活性からの解放の時間より短くなると、より少ないチャネルが活性化されて、刺激に反応するトランスメンブレンポテンシャルの上昇が低下する。
d)開放チャネル時間の測定:
開放チャネル時間τopenは、チャネルの不活性特性の関数である。非常に高い周波数で刺激することにより、このパラメータの薬理学的取扱いを、非常に高い頻度で刺激することによって検出できる。例えば、多重刺激法を用いる電圧依存ナトリウムチャネルのアッセイについて考えることにする。定常レートで繰り返される固定した単相方形波刺激カーネルでは、電圧反応は、刺激繰り返し率が高くなるにつれて増加する。その理由は、より高い周波数では、ナトリウムチャネルが、開放している時間をより多く過ごすからである。しかし、パルス同士の間隔がチャネル開放時間よりも短くなるとすると、活性化されたナトリウムチャネルは負へ駆動されるので、以後の刺激パルスによって不活性にされる。反応が平坦になる刺激バースト周波数はチャネル開放時間に関連する。
e)細胞外電流クランプ装置としての電気刺激:
全細胞記録において、電流クランプは、トランスメンブレンポテンシャルを記録している間に指令電流を細胞内へ駆動できるようにするモードである。パッチクランプ記録は極めて正確ではあるが、スループットが非常に小さい技術である。完全な条件の下における絶対最大数で、高度に訓練された科学者は、細胞のパラメータを1時間当り細胞10個の率で決定できる。しばしば、パッチクランプ技術で得られる結果は詳細すぎて、薬品のスクリーニングのためには必要ではないほどであるのに、それを簡単にして測定の速さを高くする方法は現在のところない。大規模な化合物ライブラリをスクリーニングするためには、高い速度は絶対に重要である。
ここで説明している電界刺激技術によって、我々が細胞外電流クランプと呼ぶ新規な種類の電流クランプ電気生理学技術が得られる。指令電流を細胞培養体中に駆動して、いくつかの細胞およびチャネル特性を決定できるようにするために、電圧依存チャネルを使用できる。細胞外電流クランプのスループットは非常に高いので、特定の対象とするイオンチャネルに対する化合物ライブラリの薬理学的効果の高い情報内容を得ることが可能である。チャネルの薬理学および生理学を直接調べることができ、またはそのチャネルを細胞膜自体または第2のイオンチャネルの研究のための電流発生器として使用できる。
細胞外電流クランプで得ることができる顕微鏡的パラメータの最終的な確度は、まだパッチクランプ法には達していないが、今や、スループットのために情報内容を交換できる能力を有する。すなわち、測定を行う確度は任意に設定できる。刺激パラメータの単一の組で、大きなライブラリを潜在的な興味ある化合物のためにスクリーニングできる。化合物濃度の滴定を用いる中間的なスループットの第2のスクリーニングをヒットに対して実行して効能と特異性を決定できる。最後に、化合物の存在する中で刺激パラメータを変更することにより、使用依存性および動作の機構などの治療に関連する諸特性を決定できる。あらゆる段階で、測定は多数の細胞にわたって自動的に平均されて、細胞間の可変性に関連する不確定さを大きく減少する。
パッチクランプ分析と比較して、細胞外電流クランプには、最低2つのさらなる利点がある。まず、細胞膜の完全性が電界刺激中に変更されない。細胞内流体は全細胞パッチクランプ記録中にピペット溶液で完全に置換される。細胞内の、イオンチャネルを含めた、多数のタンパク質は、モジュレーター、細胞内メッセンジャー、およびイオン環境に極めて敏感である。細胞質の成分は不完全に知られているだけであるので、細胞内部空間内の可溶性成分は常に変更される。したがって、細胞の「正常な」生理学的状態は、全細胞パッチクランプ分析中に近似されるだけであるが、細胞外電流クランプを使用する時は、完全に保たれる。
第2に、ほとんどの細胞は、他の細胞に接触した時に遺伝子発現と挙動の劇的な変更を経験する。ほとんどの細胞は、また、近くの細胞と間隙接合接続を行うので、全細胞パッチクランプ分析は、細胞が相互に完全に分離されている時に信頼できるだけである。細胞外電流クランプは、細胞の集合度とは独立に細胞に対して使用できる。細胞は、生理学的により関連している。チャネル電気生理学において細胞と細胞の接触のいかなる影響があるかどうかを見出すために、細胞外電流クランプを使用できる。その後で、遺伝子発現分析に関連して、それらの変化を細胞の調整成分に関連できる。
f)細胞外電圧クランプ装置としての電気刺激:
電圧クランプでは、細胞のトランスメンブレンポテンシャルは、電流の流れをモニタしている間に制御される。電圧クランプは、フィードバックループを電流クランプ回路に加えることによって、一般に達成される。全細胞法の場合には、これは、同じ細胞に同時に取り付けられている2つのピペットを用いて容易に達成できる。1つのピペットは指令電流を通し、他方は電圧を検出する。フィードバック回路が測定電圧を指令電圧と比較し、それにしたがって指令電流を調整する。一般に、細胞膜抵抗値はピペットのアクセス抵抗値と比較して高いので、同じピペットを用いて電流を指令し、電圧を測定できる。電流クランプと比較して、電圧クランプは、一般に、電気生理学的分析のためのより強力な方法である。イオンチャネルはトランスメンブレンポテンシャルに極めて敏感であるので、データの分析は、固定されている電圧での電流測定を取り扱う時には、はるかに直接的である。
細胞外電流クランプは、電圧測定(センサ染料の蛍光)と電流発生器(刺激パラメータ)の間にフィードバックループを加えることによって、電圧クランプ法に転換できる。この場合、十分な速さを持つトランスメンブレンポテンシャル染料が求められる。染料の組合わせCC2−DMPE/DiSBAC6(3)は、サブミリ秒の時定数を持ち、最速の細胞事象を除いて全てを捕捉するために十分に速いであろう。指令電圧とトランスメンブレンポテンシャル測定の差を基づいて、コンピュータが刺激パラメータを変更する。刺激パラメータは、細胞中に駆動される電流に関連させられているので、電流の時間的経過を指令電圧の関数として決定できる。この方法は、イオンチャネルターゲットに対する薬理学的試薬の作用機構の決定に有用であることが、証明されるであろう。
g)細胞内区画のアッセイ:
ここで説明している刺激法は、ミトコンドリアおよび核を含めて、リン脂質膜を有する細胞内オルガネラのトランスメンブレンポテンシャルを変調するために使用することもできる。これは、電気的透過性(electropermeablization)により、またはバリノマイシンあるいはグラミシヂンAなどのイオン透過担体を加えることにより、まず原形質膜のコンダクタンスを上昇させることにより達成できる。そうすると、細胞内空間が、もはや、加えられている電界から分離されない。これによって、食塩水に加えられた電界は、細胞内オルガネラの膜を横切ってトランスメンブレンポテンシャルの変化を生じさせることができるようになる。その後で、イオン濃度またはトランスメンブレンポテンシャルに敏感で、対象とする特定のオルガネラ膜にのみターゲットにされている染料で細胞を染色することにより、ここに提示した方法を用いて、それらのオルガネラのイオンチャネルを変調およびアッセイできる。ターゲットにすることは、例えば、この技術で知られている適切な細胞下位置信号を含んでいる天然の蛍光タンパク質の使用を通じて達成できる。
IX.外因性分子の導入:
哺乳類の細胞膜の絶縁破壊は、膜の両側の電位が約200mVを超えると起きる(Teissie and Rols, 1993, Biophys. J., 65:409-413)。膜が絶縁破壊すると、膜を通じて孔が形成されて、細胞内部空間と細胞外部空間を結びつける。孔の数と大きさはトランスメンブレンポテンシャルの上昇とtもに増大する(Kinoshita and Tsong, 1977, Nature, 268:438-441)。典型的な哺乳類の細胞系統に加えられる電界の強さが約60V/cmより強くなると、細胞は電気的に透過できることになる。比較的低い電界では、小さいイオンを通すのに明らかに十分大きいが、DNAほどの大きさの分子を通すには十分大きくない、小さな穴が細胞膜に形成される(Tsong, 1991, Biophys. J., 60:297-306)。これらの孔は、細胞を全面的に消極して、トランスメンブレンポテンシャルをゼロ近くに駆動する。細胞を電気的に透過できるようにし、電圧感応性染料でトランスメンブレンポテンシャルの変化をモニタすることによって、本発明は、細胞の休止トランスメンブレンポテンシャルを決定するために使用できる。これは、一次スクリーニングまたは二次スクリーニングとして、細胞またはイオンチャネルとの薬理学的相互作用を決定するのに有用である。例えば、電圧依存ナトリウムチャネルに対する化合物スクリーニングにおいて、チャネルの活動度を決定するために、多数の刺激プロトコルを実行できる。その後で、透過プロトコルでしたがうことによって、細胞膜が化合物が存在する中で正常な休止電位を持っていたか否かを決定できる。
また、RBL細胞などの高度に分極された細胞系統を用いて、電圧感応性染料は電気的透過化(electropermeablization)によって容易に較正できる。種々の条件(例えば、細胞外カリウムの種々の濃度)の下における出発トランスメンブレンポテンシャルと、電気的透過化の後の最後のトランスメンブレンポテンシャルとはゼロである。
また、電気的透過化により形成された孔の寸法は、加えられた電界の関数として増大する。50V/cmより下では、孔は形成されない。約60V/cmと100V/cmの間では、一価イオンを通すのに十分な大きさの孔が形成される。約600V/cmより上では、DNAを通すために十分に大きい孔が形成される(Tsong, 1991, Biophys. J., 60:297-306)。したがって、本発明は、細胞膜に定められた大きさの孔を、高いスループットの形態で形成するために使用できる。これは、透過しないイオン、透過しない試験化合物またはその他のモジュレーター、過渡的トランスフェクションまたは安定なトランスフェクションのためのDNAまたはRNA、および蛍光その他の指示染料、の細胞内空間への送り出しを含めて、多数の用途のために有用なことがある。
X.薬品発見およびスクリーニング:
a)薬品スクリーニング:
本発明は、従来のアッセイ装置よりもはるかに多用途でロバストな、イオンチャネル機能を変調する試験化合物の確実な検出を行う。重要なことに、本発明は、パッチングクランピングにおけるような、薬理学的試薬、または膜の破壊、および細胞内内容物の喪失の要求なしに、損なわれていない細胞内のトランスメンブレンポテンシャルを変調する性能を提供する。生きている細胞のトランスメンブレンポテンシャルを外部で変調する性能を提供することにより、本発明は広範囲なイオンチャネルのアッセイを可能にするものである。
さらに、イオンチャネルの電圧依存状態を正確に変調するこの性能は、1つの状態と選択的に相互作用する化合物(すなわち、用途に依存するブロッカー)をスクリーニングする機会を提供するという、薬品の発見のために大きな利点を有する。例えば、いくつかの既知の治療に有用な薬品(抗不整脈剤、抗けいれん剤、および局部麻酔薬を含む)が、電圧に依存するナトリウムチャネルおよび/またはカリウムチャネルの用途に依存するブロッカーとして機能することが知られている。各場合に、目標とされたチャネルの全面的なブロックは、死をもたらす結果となることが普通である。慢性の痛み、不整脈、およびけいれんなどのある状態は、細胞が過度な活性状態になった場合に起きる。これらの条件は、細胞が余りにしばしば開き始めるならば、チャネルをブロックすることにより、軽減または解消できる。チャネルをブロックできるが、休止状態ではなくてむしろ活性状態または不活性状態に選択的に結び付く化合物は、筋肉およびニューロンの興奮性を低下できる。それらの薬品は効果がある。その理由はそれらが正常な環境にあるチャネルに作用せず、角の興奮性を阻止する必要がある場合にのみチャネルをブロックするからである。しかし、高スループットスクリーニングに適合する既存の分析法は、イオンチャネルの活性状態を実時間(リアルタイム)でルーチンに制御する性能は提供しない。
特に、本発明は、細胞内の定められた機能状態にあるイオンチャネルに対する試験化合物の作用をスクリーニングする方法を提供する。この方法は、対象とするイオンチャネルの活性化サイクルを通じてそのイオンチャネルを循環させ、トランスメンブレンポテンシャルを特定の活性状態または状態の間の遷移に適切な所望のレベルに設定するために、電気刺激を繰返し使用することにより、細胞のトランスメンブレンポテンシャルを変調することを含む。そして、このプロセスの最中または後で試験化合物を細胞に加え、トランスメンブレンポテンシャルを測定する。
通常は、試験化合物が存在する中で得られた結果を、試験化合物が存在しない時に培養された対照群試料と比較する。対照測定は、推定される薬品を除いた試験試料に関し、全ての成分を含んでいる試料を用いて同じ刺激条件の下で行われる。追加の対照研究を、状態に特有の試験化合物を特に特定するために、他の電圧依存状態にあるイオンチャネルで行うことができる。対照群に対する、試験試薬の存在する中でトランスメンブレンポテンシャルの変化を検出することは、試験試薬がその状態にある、または1つの状態から別の状態へ遷移している最中のイオンチャネルに対して活性を有して特効性を有する。
トランスメンブレンポテンシャルは、既知の活性を持つ薬理学的試薬(すなわち、標準試薬)または推定上の活性を持つ薬理学的試薬(すなわち、試験試薬)が存在する中または存在しない中で、決定することもできる。ここで開示している方法により検出されたトランスメンブレンポテンシャルの違いによって、試験試薬の活性を標準試薬のそれと比較できる。薬品スクリーニングプロトコルの多数の順列組合わせが当業者に知られており、それらは、イオンチャネルおよび/またはトランスメンブレンポテンシャルに作用を与える化合物を特定するため、ここで開示している本発明ともに使用するように容易に適合できようにすることができる。そのような方法の全てに組合わせて使用することは、本発明により意図されていることである。
本発明の他の様相は、休止トランスメンブレンポテンシャルまたは刺激されたトランスメンブレンポテンシャルを所定の値に設定することにより対象とする第1のイオンチャネルをアッセイできるようにするために、ここで開示している方法によって第2のイオンチャネルを使用することを含む。一実施形態では、第2のイオンチャネルは、持続されている正のトランスメンブレンポテンシャルの発生を可能にする、電圧を規制されているナトリウムチャネルまたはカルシウムチャネルである。他の実施形態では、第2のイオンチャネルは電圧を規制されているカリウムチャネルであって、負のトランスメンブレンポテンシャルの発生を可能にする。それら第2のイオンチャネルを使用することにより、トランスメンブレンポテンシャルをほぼ任意の所定レベルに設定するために、この電気刺激法を使用できる。
このアッセイ形態は2つのイオンチャネルを使用するので、いずれかのチャネルのモジュレーターが電圧反応に影響を及ぼす。この場合には、トランスメンブレンポテンシャルを設定するために使用される第2のイオンチャネルのみを発現する母細胞系統で追加の対照群研究を行うことができる。第1のイオンチャネルをブロックする化合物が2次イオンチャネルに対して活性を持つかどうかを見出すために、その後でそれらの化合物を別々に再試験できる。
通常、スクリーニングされる試験化合物は、関連する化合物または多様な化合物のライブラリに存在する。そのライブラリは個々に試験され、または組合わせで試験される個々のメンバーを有することができ、またはライブラリは個々のメンバーの組合わせとすることができる。そのようなライブラリは、最低2つのメンバー、好ましくは約100以上のメンバーまたは約1,000以上のメンバー、より好ましくは約10,000以上のメンバー、最も好ましくは約100,000または1,000,000以上のメンバーを持つことができる。
b)候補モジュレーターの選択性および毒物学:
ひとたび特定されると、候補モジュレーターは、選択性および毒性作用を既知の方法を用いて評価されることができる(Lu, Basic Toxicology, Fundamentals, Target Organs, and Risk Assessment, Hemisphere Publishing Corp., Washington (1985);Culbrethに付与された米国特許第5,196,313号(1993年3月23日発行)およびBenetに付与された米国特許第5,567,952号(1996年10月22日発行)を参照)。
例えば、対象とするイオンチャネルのその自然の生理学的状況において、そのイオンチャネルの反応に対する候補モジュレーターの影響をスクリーニングするために、1次細胞系統または組織切片を用いることができる。例えば、心臓細胞に対する特定および/または選択性な作用を示す薬品をスクリーニングするために、ミオサイトまたはその他の生体外(in vitro)細胞培養モデル細胞系統を使用することが好ましいことがある。この場合には、1次スクリーニングは、ミオサイトから導出した細胞系統で完了して、電気的に誘導された活動電位を短くし、長くし、またはブロックする化合物を特定できる。
その後で、体に及ぼす潜在的な悪影響を示す化合物を特定するために、2次スクリーニングが設計される。例えば、これは、心臓組織または神経組織、あるいはそれらの組織から抽出した不死化された細胞培養などの電気的に刺激できる組織に対する候補薬品の作用をスクリーニングすることにより、行うことができる。それらの組織は、有機体内で重要な役割を演じ、電気的に刺激すべきそれらの組織の能力に対する候補薬品の望ましくないいかなる作用も、与えられた時に潜在的な重大な副作用を生ずるものと予測される。その結果、それらの組織が機能する能力をまた損なった活性化合物は、初期の段階で薬品候補としての考察から除去でき、または副作用を減少するために実施される医学的化学的方法を有する。
哺乳類(ヒトが好ましい)の細胞系統などの細胞系統に対する生体外(in vitro)毒性を判定することによって、候補モジュレーターの追加の毒物学的分析を行うことができる。候補モジュレーターは、本願出願人が特許を受ける権利を有する、1999年4月28日に出願された米国特許出願No. 09/301,525、1999年4月28日に出願された米国特許出願No. 09/301,395、1999年12月10日付の米国特許出願No. 09/458,927に記述されているように、全生物体により代謝された後で、またはチトクロムP450システムによって劣化させされるべき能力を介して、化学物質の増加させられまたは減少させられた毒物学的諸特性を判定するために、ミクロソーム標本などの肝臓の標本などの組織抽出物で処理できる。それらのタイプの研究の結果は、ヒトを含めた哺乳類などの動物における化学物質の毒物学的諸特性をしばしば予測する。
毒物学的活性は、毒物学的活動中に活性化されるリポーター遺伝子を用いて、または細胞溶菌により、測定できる(1998年4月2日に発行されたWO98/13353参照)。好適なリポーター遺伝子は蛍光またはルミネッセント並進生成物(例えば、緑蛍光タンパク質(1998年4月29日に発行のTsien et al.に付与された米国特許第5,625,048号、1998年7月7日に発行のTsien et al.に付与された米国特許第5,777,079号、1996年8月8日に発行のTsienのWO96/23810、1997年8月7日に発行のWO97/28261、1997年7月16日に出願されたPCT/US97/12410、1997年8月15日に出願されたPCT/US97/14595を参照))、または、酵素劣化生成物などの蛍光生成物あるいはルミネッセント生成物(例えば、ベータ−ラクタマーゼなど(1998年4月21日に発行されたTsienに付与された米国特許第5,741,657号、および1996年10月3日に発行されたWO96/30540を参照))を生成できる並進生成物を生成する。細胞溶菌は、本発明において、少なくとも1種類の光子還元試薬の存在する中で細胞内の少なくとも1種類の光子発生試薬からの蛍光信号における減少として検出できる。そのような毒物学的判定は、1994年1月21日に出願されたPCT/US94/00583(WO94/17208)、1997年11月25日に発行されたドイツ特許No. 69406772.5-08、1994年1月14日に発行されたEPC 0680517、1996年12月31日に発行された米国特許第5,589,337号、1998年1月14日に発行されたEPO 651825、および1996年12月17日に発行された米国特許第5,585,232号に記述されているものなどの、原核生物細胞または真核生物細胞を用いて、オプションとして毒物学的分析手法を用いて、行うことができる。
あるいは、またはそれらの生体外(in vitro)研究に加えて、マウス、ラット、ラビットまたはサルなどの動物モデルにおける候補モジュレーターの生物学的使用可能性および毒物学的諸特性を、確立されている方法を用いて判定できる(Lu, 前掲, (1985);およびCreasey, Drug Disposition in Humans, The Basis of Clinical Pharmacology, Oxford University Press, Oxford (1979);Osweiler, Toxicology, Williams and Wilkins, Baltimore, MD (1995);Yang, Toxicology of Chemical Mixtures; Case Studies Mschanisms, and Novel Approaches, Academic Press, Inc., San Diego, CA(1994);Burrel et al., Toxicology of the Immune System; A human Approach, Van Nostarnd Reinhld, Co. (1997);Niesink et al., Toxicology; Principles and Applications, CRC Press, Boca Raton, FL (1996)を参照)。候補モジュレーターの毒性、ターゲット器官、組織、遺伝子座、推定機構に依存して、当業者は、候補モジュレーターの毒物学的諸特性を決定するために適切である、適切な用量、LD50値、投与経路および管理を決定するという負担は負わされない。動物モデルに加えてヒトの臨床試験を、合衆国食品医薬品局(USFDA)またはそれと同等のその他の政府機関により規定されているものなどの、規定の手順にしたがって実行できる。それらの毒性研究は、生体内(in vivo)での候補モジュレーターの治療の有用性を判定する基礎を提供する。
c)候補モジュレーターの有効性:
候補モジュレーターの有効性は、生体外(in vitro)法、動物モデルまたはヒトの臨床試験などのこの分野で認識されているいくつかの方法を用いて判定できる(Creasey, supra, (1979)を参照)。認識されている生体外モデルは、いくつかの疾患すなわち異常に対して存在する。例えば、HIVに感染している生体外の細胞の寿命を延長するための化学薬品の効能は、HIV感染すなわちエイズを治療するために効果があると予測される化学薬品を特定するための許容できるモデルとして認識されている(Daluge et al., Antimicro. Agents Chemother., 41:1082-1093(1995)を参照)。さらに、生体外のT細胞の増殖を阻止するためのシクロスポリンA(CsA)の効能は、免疫抑制剤として効果があることが予測される化学薬品を特定するために許容できるモデルとして確立されている。(Sauthanthiran et al., supra, (1996)を参照)。ほとんどあらゆる種類の治療、疾患または異常に対して、許容できる生体外モデルまたは動物モデルを利用できる。それらのモデルは、例えば、胃腸の異常、癌、心臓学、神経生物学、および免疫学のために存在する。また、それらの生体外法は、候補モジュレーターに対する代謝の影響の確実な指標を与えるために、ミクロソーム標本などの肝臓の標本などの、組織抽出物を使用できる。同様に、許容できる動物モデルを種々の疾患および異常を治療する化学薬品の有効性を確立するために使用できる。例えば、ラビットの膝は、関節炎の治療に有効な化学薬品を試験するための受け容れられるモデルである(Shaw and Lacy, J. Bone Joint Surg., (Br)55:197-205 (1973)を参照)。関節炎の治療のためにヒトに使用することが承認されているヒドロコルチゾンは、このモデルの有効性を裏付けるこのモデルにおいて有効である(McDonough, Phys. Ther., 62:835-839(1982)を参照)。候補モジュレーターの有効性を判定するために適切なモデルを選択する場合は、当業者は、適切なモデル、用量、投与経路、養生法および終点を選択するために、技術の現状を頼りにすることができ、したがって、過度に負担が掛かることはない。
動物モデルに加えて、ヒトの臨床試験を、ヒトにおける候補モジュレーターの有効性を判定するために使用できる。USFDAまたはそれと同等の政府機関がそのような研究の手順を設定している(www.fda.govを参照)。
d)候補モジュレーターの選択性:
上記の生体外(in vitro)法および生体内(in vivo)法は、候補モジュレーター
の選択性をも定める。本発明は、候補モジュレーターの特効性を判定する迅速な方法を提供するものである。例えば、関連するイオンチャネルファミリーメンバーを含んでいる細胞系統を用いて、関連するイオンチャネルを阻害する効能と、イオンチャネルの異なる電圧依存状態を変調する相対的な性能との両方に関して、試験化学薬品の選択性を迅速にプロファイリングすることができる。そのような装置は、最初に、簡単で微小化された高スループット態様で、候補モジュレーターのイオンチャネル選択性を系統的に評価するために、多数の試験化学薬品を迅速にプロファイルする性能を提供する。
e)特定された化学薬品、モジュレーターまたは治療および組成物:
本発明は、新規な化学物質などの組成品と、ここで説明している方法、装置または成分の実施による活性を有するものとして本発明の少なくとも1つの方法により特定される治療と、を含む。新規な化学物質は、ここで使用されているように、この出願の出願日における技術で既に公然と知られている化学物質は含まない。通常は、化学物質は、本発明を使用することから活性を有することが示され、その後で化学構造の専用のあるデータベースからその構造が明らかされ、または質量分光分析などの分析技術からその構造が決定される。
本発明の一実施形態は、上で説明した方法によって特定される化学物質を有する、有用な活性を持つ化学物質である。そのような組成物は、小さな有機分子と、核酸と、ペプチドと、この技術分野で利用できあるいは将来開発される技術で容易に合成できるその他の分子を含む。例えば、次の組合わせ化合物がスクリーニングに適する:ペプトイド(PCT公開No. WO91/19735,1991年2月26日)、エンコードされたペプチド(PCT公開No. WO93/20242,1993年2月26日)、ランダムなバイオオリゴマー(PCT公開No. WO92/00091,1992年1月9日)、ベンゾジアゼピン(米国特許第5,288,514号)、ヒダントイン、ベンゾジアゼピンおよびジペプチドなどのジバーソマー(Hobbs DeWitt, S., et al., Proc. Nat. Acad. sci. USA, 90:6909-6913(1993))、ビニルロガスポリペプチド(Hagihara et al., J. Amer. Chem. Soc., 114:6568(1992))、β−D−グルコースのスカフォールディングを有するノンペプチダルペプチドミメチック(Hirschmann, R., et al., J. Amer. Chem. Soc., 114:9217-9218(1992))、小規模な化合物ライブラリの類縁有機合成(Chen, C., et al., J. Amer. Chem. Soc., 116:2661(1994))、オリゴカルバメイト(Cho, C. Y., et al., Science, 261:1303(1993))および/またはペプチジルホスホナート(Campbell, D. A., et al., J. Org. Chem., 59:658(1994))。一般に、Gordon, E.M., et al., J.
Med. Chem., 37:1385(1994)を参照されたい。
本発明は、貯蔵およびそれに引き続く投与のために用意されている薬学的に受け容れることができる担体(キャリア)を含む薬学的組成物における、特定された組成物をも包含する。それは、製品の上で開示された薬学的に有効な量を、薬学的に受け容れることができる担体または希釈剤中に有する。治療に使用するための受け容れることができる担体または希釈剤は、薬学分野において周知であって、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mark Publishing Co.(A. R. Gennaro, edit., 1985)に記載されている。防腐剤、安定剤、染料および芳香剤さえも、薬剤組成物中に含めることができる。例えば、安息香酸ナトリウム、アスコルビン酸、およびp−ヒドロキシ安息香酸のエステルを防腐剤として添加できる。また、酸化防止剤および懸濁化剤を使用できる。
本発明の組成物は調合でき、経口投与のために錠剤、カプセルまたはエリキシルとして、直腸投与のための座薬として、注射投与のための滅菌溶液、懸濁液として、などとして使用できる。注射可能薬は、溶液または懸濁液として、注射前に液体に溶解または懸濁させるのに適する固体の形として、またはエマルジョンとして、従来の形態で製造できる。適切な賦形剤は、例えば、水、食塩水、デキストロース、マニトール、乳糖、レシチン、アルブミン、グルタミン酸ナトリウム、塩酸シスチンなどである。また、所望によっては、注射できる薬剤組成物は、湿潤剤、pH緩衝剤などの毒性のない補助物質を少量含むことがある。所望によっては、吸収増進製品(例えば、リポソーム)を利用できる。
1用量として求められる組成物の薬学的に有効な量は、投与経路と、治療される動物の種類と、考察している特定の動物の身体特性とに依存する。1用量は、所望の効果を達成するために調整できるが、体重、食事、同時に投薬されて医薬、および医学分野における当業者が認識しているその他の要因などの諸要因に依存する。本発明の方法の実施に際しては、製品または組成物は単独で、または相互に組合わせて、あるいは、他の治療剤や診断薬との組合わせで使用できる。それらの製品は生体内(in vivo)で、通常は、哺乳類内、好ましくはヒト内で、または生体外(in vitro)で利用できる。それらを生体内で採用するには、製品または組成物は、各種の用量形態を採用して、非経口的に、静脈注射で、皮下注射で、筋肉注射で、結腸的に、直腸的に、鼻でまたは腹膜内を含めて、種々のやり方で哺乳類に投与される。それらの方法は、生体内の化学物質の活性を試験するために適用することもできる。
当業者には容易に明らかになるであろうが、投与すべき有用な生体内用量および特定の投与態様は、年齢、体重および治療される哺乳類の種、採用される特定の化合物、およびそれらの化合物を採用する特定の使用法に依存して変化する。効果的な用量水準、すなわち所望の結果を達成するために必要な用量水準は、ルーチンの薬学的方法を採用する当業者によって達成できる。通常、製品のヒト臨床応用は、低い用量水準で開始され、所望の効果が達成されるまで用量水準を高めて行く。あるいは、確立されている薬学的方法を用いるこの方法により特定された組成物の有用な用量および投与経路を定めるために、許容できる生体外研究を使用できる。
ヒト以外の動物の研究においては、見込みのある製品の適用は、より高い用量水準で開始され、所望の効果がもはや達成されないか、悪い副作用が消えるまで用量を減少する。本発明の製品の用量は、所望の作用と治療指針に依存して、広い範囲にわたることができる。通常、用量は、約10μg/kg体重と100mg/kg体重の間、好ましくは約100μg/kg体重と10mg/kg体重の間とすることができる。投与は、毎日経口とすることが好ましい。
正確な調合、投与経路および用量は、患者の状態を考慮して個々の医師が選択できる。(例えば、Fingl et al., in The Pharmacological Basis of Therapeutics, 1975を参照)。なお、付き添いの医師は、毒性または器官の機能障害のために、投与の中止、中断または調整をいつどのようにして行うかを知っている。逆に、付き添いの医師は、臨床反応が適切でないならば(毒性を排除して)、治療をより高い水準へ調節することをも知る。対象とする障害の管理における投与される用量の大きさは、治療すべき状態の厳しさと、投与経路とともに変化する。状態の厳しさは、例えば、標準予後評価法によって、部分的に、評価できる。さらに、用量とおそらく服用頻度は、年齢、体重および個々の患者の反応にしたがってまた変化する。上で述べたプログラムに匹敵するプログラムを獣医でも使用できる。
治療されている特定の状態に応じて、そのような薬剤を系統的にまたは局所的に調合および投与できる。調合および投与の技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18 ed., Mack Publishing Co., Easton,PA (1990)で見出すことができる。適切な経路は、口、直腸、皮膚、腟、粘膜または腸管を経由する投与;筋肉内注射、皮下注射、髄内注射や、クモ膜下注射、直接心室内注射、静脈注射、腹腔内注射、鼻内注射または眼内注射を含めた非経口投与を含むことができる。
注射のために、本発明の薬剤は、水溶液中で、好ましくはHanksの溶液、Ringerの溶液、または生理食塩水バッファーなどの生理学的に適合する緩衝液中で調合できる。そのような粘膜を通じる投与の場合には、浸透させられるバリヤに適切な浸透剤が調合に使用される。そのような浸透剤は、この技術分野において一般に知られている。本発明の実施のためにここで開示されている化合物を系統的な投与のために適する用量に調合するために、薬学的に許容できる担体の使用することは、本発明の範囲内である。担体と適切な製造技術とを適切に選択すると、本発明の組成物、特に、溶液として調合されているものは、心室内注射などのように、非経口的に投与できる。化合物は、この技術で周知の薬学的に許容できる担体を用いて、経口投与に適する用量に容易に調合できる。そのような担体によって、本発明の化合物を、治療を要する患者の経口摂取のための錠剤、丸薬、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁などとして調合可能にする。
細胞を通じて投与すべき薬品は、当業者に周知の技術を用いて投与できる。例えば、そのような薬品は、リポソーム中に封入でき、その後で上記のように投与される。リポソーム形成時に水溶液中に存在する全ての分子は、水を含んでいる内部に包含される。リポソーム内容物は、外部の微小な環境から保護され、かつ、リポソームは細胞膜に融着するので、細胞質中に効率的に送り込まれる。また、それらの疎水性のために、小さい有機物分子を細胞内に直接投与できる。
本発明に使用するのに適する薬学的組成物は、活性成分が、それの意図されている目的を達成するために効果的な量だけ含まれているような組成物を含む。その効果的な量の決定は、特にここで提供されている詳細な開示にかんがみて、当業者の能力の十分な範囲内である。活性成分に加えて、それらの薬学的組成物は、薬学的に使用できる製品に活性化合物を入れる処理を容易にする賦形剤および補助物質を含む適切な薬学的に許容できる担体を含むことがある。経口投与のために調合された製品は、錠剤、糖衣錠、カプセルまたは溶液の形とすることができる。本発明の薬学的組成物は、それ自体知られているやり方、例えば、従来の混合法、溶解法、顆粒化法、糖衣錠製造法、空中浮揚(levitating)法、懸濁化法、カプセル封入法、エントラップ(entrapping)法、凍結乾燥法により、製造できる。
非経口的な投与のための薬学的調合は、水に溶解できる形態での活性化合物の水溶液を含む。また、活性化合物の懸濁液は、適切な油性注射懸濁液として製造される。適切な親油性溶剤すなわち媒体は、ごま油などの脂肪油、またはオレイン酸エチルまたはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、またはリポソームを含む。水性注射懸濁液は、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールまたはデキストランなどの懸濁液の粘度を高める物質を含むことがある。所望によっては、懸濁液は、高濃度の溶液の製造を行えるようにするために、化合物の溶解度を高くする適切な安定剤や試薬を含むこともできる。
経口使用のための薬学的調製品は、活性化合物を固体賦形剤に組合わせ、所望によってはその結果得られた混合物を粉砕し、所望により適切な補助剤を添加した後で、錠剤または糖衣錠のコアを得るために顆粒物の混合物を処理することにより、得ることができる。適切な賦形剤は、特に、乳糖、ショ糖、マニトールまたはソルビトールを含む糖類などの増量剤、例えば、とうもろこし澱粉、小麦澱粉、米澱粉、馬鈴薯澱粉、ゼラチン、トララガントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロースおよび/またはポリビニルピロリドン(PVP)などのセルロース製品である。所望によっては、架橋結合しているポリビニルピロリドン、寒天またはアルギン酸またはナトリウムアルギン酸塩などのそれの塩などの、崩壊剤を添加できる。糖衣錠のコアには適切な被覆が設けられる。このために、濃縮された砂糖溶液を使用できる。その砂糖溶液は、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポルゲル、ポリエチレングリコールおよび/または二酸化チタンと、ラッカー溶液、および適切な有機溶剤または溶剤混合物とを所望により含む。活性化合物用量の種々の組合わせの特定または特徴付けのために、染料または顔料を錠剤や糖衣錠の被覆に添加できる。このために濃縮砂糖溶液を使用できる。濃縮砂糖溶液は、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポルゲル、ポリエチレングリコールおよび/または二酸化チタンと、ラッカー溶液、および適切な有機溶剤または溶剤混合物を所望により含む。活性化合物用量の種々の組合わせの特定または特徴付けのために、染料または顔料を錠剤や糖衣錠の被覆に添加できる。そのような調合は、この技術で知られている方法を用いて行うことができる(例えば、米国特許第5,733,888号(注射できる組成物)、第5,726,181号(貧水溶性化合物)、第5,707,641号(治療に活性なタンパク質またはペプチド)、第5,667,809号(親油性の物質)、第5,576,012号(可溶性ポリマー物質)、第5,707,615号(抗ウィルス製剤)、第5,683,676号(微粒子状薬物)、第5,654,286号(局所剤)、第5,688,529号(経口懸濁液)、第5,445,829号(徐放性製剤)、第5,653,987号(液体製剤)、第5,641,515号(放散が制御された製剤)および第5,601,845号(球状製剤)参照)。
XI発明の実施例:
本発明の実施例のいくつかは次の通りである。
候補化合物の生物学的活動度を測定する方法であって、
1または複数の細胞を前記化合物に曝すことと、
前記1または複数の細胞のトランスメンブレンポテンシャルにおいて制御された変化がもたらされるように、前記1または複数の細胞に1または複数の電界を繰り返し加えることと、
パッチクランプを使用することなしに、前記1または複数の細胞のトランスメンブレンポテンシャルの変化をモニタすることと、
を有する方法。
モニタすることは、前記1または複数の細胞を含んでいる観察領域からの蛍光放出を検出することを含む、上記方法。
電界は二相的である、上記方法。
不可逆的な細胞のエレクトロポレーション(electroporation)を最小にするように、電界の強さの空間的変動を制限することをさらに備える、上記方法。
1または複数の電界は、対象とするイオンチャネルを異なる電圧依存状態の間で循環させる、上記方法。
1または複数の電界は、対象とするイオンチャネルを開かせる、上記方法。
1または複数の電界は、対象とするイオンチャネルを非活動状態から解き放つ、上記方法。
1または複数の細胞は、FRETをベースとする電圧センサ、エレクトロクロミックトランスメンブレンポテンシャル染料、トランスメンブレンポテンシャル分布染料、イオン感応性蛍光またはルミネッセント分子、および放射性イオンからなる群から選択された電圧センサを備えている、上記方法。
1または複数の細胞は、電圧が規制されたイオンチャネルを備えている、上記方法。
電圧が規制されたイオンチャネルは、カリウムチャネル、カルシウムチャネル、塩化物チャネル及びナトリウムチャネルよりなる群から選択される、上記方法。
電界は、観察領域内で、強度において、その領域内の平均強さの約25%より小さい空間的変動を示す、上記方法。
1または複数の電界は、観察領域にわたって、任意の一時刻における平均電界の約15%以下だけしか変動しない、上記方法。
1または複数の電界は、観察領域にわたって、任意の一時刻における平均電界から約5%以下だけしか変動しない、上記方法。
1または複数の電界は、方形波形、正弦波形または鋸歯状波形のいずれかによる刺激を備えている、上記方法。
1または複数の電界は、約10V/cmから約100V/cmまでの範囲内の振幅を有する、上記方法。
1または複数の電界は、約20V/cmから約80V/cmまでの範囲内の振幅を有する、上記方法。
1または複数の電界は、前記1または複数の細胞のトランスメンブレン時定数の逆数より大きいかそれに等しい刺激周波数で繰り返される、上記方法。
1または複数の電界は、0から1kHzまでの範囲内の刺激周波数で繰り返される、上記方法。
1または複数の電界は、約100マイクロ秒から約20ミリ秒までの範囲内のパルス持続時間を有する、上記方法。
トランスメンブレンポテンシャルは、前記1または複数の細胞の原形質膜の両側の間で発生する、上記方法。
目標とするイオンチャネルに対する化合物の生化学的活性を測定する方法であって、
前記目標とするイオンチャネルの選択された電圧依存状態に対応する正常な休止トランスメンブレンポテンシャルを有する細胞系統を選択することと、
前記選択された細胞系統の細胞の集団において前記目標とするイオンチャネルを発現させることと、
前記細胞の集団を前記化合物に曝すことと、
前記1または複数の細胞のトランスメンブレンポテンシャルにおいて制御された変化がもたらされるように、前記細胞の集団に1または複数の電界を繰り返し加えることと、
前記1または複数の細胞のトランスメンブレンポテンシャルの変化をモニタすることと、
を有する方法。
目標とするイオンチャネルは前記細胞系統において外因的に発現される、上記方法。
細胞系統は、前記目標とするイオンチャネルをコードする核酸でトランスフェクトされる、上記方法。
細胞系統は、他のイオンチャネルの顕著でないレベルを発現する、上記方法。
細胞系統は、CHL、LTK(−)およびCHO−K1からなる群から選択される、上記方法。
目標とするイオンチャネルはナトリウムチャネルであり、前記細胞の集団は、CHL細胞、LTK(−)細胞およびCHO−K1細胞からなる群から選択される、上記方法。
目標とするイオンチャネルはナトリウムチャネルであり、前記細胞の集団は、HEK−293細胞、RBL細胞、F11細胞およびHL5細胞からなる群から選択される、上記方法。
目標とするイオンチャネルはカリウムチャネルであり、前記細胞の集団は、CHL細胞、LTK(−)細胞およびCHO−K1細胞からなる群から選択される、上記方法。
目標とするイオンチャネルはカルシウムチャネルであり、前記細胞の集団は、CHL細胞、LTK(−)細胞およびCHO−K1細胞からなる群から選択される、上記方法。
イオンチャネルの活動度を測定する方法であって、
トランスメンブレンポテンシャルにおける制御された変化を発生させ、かつ対象とするイオンチャネルを活性化するように、複数の電界パルスを少なくとも1つの細胞に加えることと、
パッチクランプを使用することなく、トランスメンブレンポテンシャルの1または複数の変化を検出することにより、イオンチャネルの活動度を検出することと、
を有する方法。
少なくとも1つの細胞は、FRETをベースとする電圧センサ、エレクトロクロミックトランスメンブレンポテンシャル染料、トランスメンブレンポテンシャル分布染料、イオン感応性蛍光またはルミネッセント分子、および放射性イオンからなる群から選択された電圧センサを備えている、上記方法。
電圧センサはFRETをベースとする電圧センサである上記方法。
対象とするイオンチャネルは、電圧が規制されたイオンチャネルである、上記方法。
複数の電界パルスは、前記対象とするイオンチャネルを異なる電圧依存状態の間で循環させる、上記方法。
少なくとも1つの細胞は真核生物細胞である上記方法。
少なくとも1つの細胞は興奮可能でない細胞である上記方法。
少なくとも1つの細胞は原核生物細胞である上記方法。
少なくとも1つの細胞は組織培養細胞である上記方法。
少なくとも1つの細胞は1次細胞系統である上記方法。
少なくとも1つの細胞は無損傷生存器官の一部である上記方法。
イオンチャネルの活動度を測定する方法であって、
少なくとも1つの細胞中で、選択された目標とするイオンチャネルを発現させることと、
前記少なくとも1つの細胞中で、選択された対イオンチャネルを発現させることと、
トランスメンブレンポテンシャルの制御された変化を発生させ、かつ前記対イオンチャネルを活性化するように、複数の電界パルスを少なくとも1つの細胞に加えることと、
前記少なくとも1つの細胞のトランスメンブレンポテンシャルをモニタすることと、
を有する方法。
トランスメンブレンポテンシャルの変化は、前記対象とするイオンチャネルがブロックされたときに検出される、上記方法。
対象とするイオンチャネルは、配位子ゲーテッドイオンチャネルである、上記方法。
対チャネルはナトリウムチャネルである上記方法。
細部のトランスメンブレンポテンシャルを変化させる方法であって、二相電界パルスを前記細胞に繰り返し加えることを備え、前記パルスは約90V/cmより小さい最大振幅を有し、前記パルスは1秒あたり少なくとも1回の割合で加えられ、各パルスの総持続時間は少なくとも1ミリ秒である、方法。
最大振幅は約20乃至40V/cmである上記方法。
パルス持続時間は1相あたり約2乃至10ミリ秒である上記方法。
パルスは1秒あたり約20乃至100個のパルスの割合で加えられる上記方法。
候補化合物の生物学的活性をキャラクタライズする方法であって、
1つまたは複数の細胞を試料ウェル中の観察領域内に置くことと、
前記1つまたは複数の細胞を候補化合物に曝すことと、
前記観察領域内において強さにおけるその空間的変動がその領域内の平均強さの約25%より小さい限られており、かつ前記1つまたは複数の細胞のトランスメンブレンポテンシャルの制御された変化を生ずるような電界で、一連の二相電界を、1秒間当り約20ないし100パルスの率で前記1つまたは複数の細胞に繰り返し曝すことと、
前記1つまたは複数の細胞のトランスメンブレンポテンシャルの変化を、前記1つまたは複数の細胞を含んでいる観察領域からの、FRETをベースとする電圧センサの蛍光放出を検出することによりモニタすることと、
を備えている方法。
1または複数の電界は、対象とするイオンチャネルを開かせる、上記方法。
1または複数の電界は、対象とするイオンチャネルを非活動状態から解き放つ、上記方法。
1または複数の細胞は、電圧が規制されたイオンチャネルを備えている、上記方法。
電圧が規制されたイオンチャネルは、カリウムチャネル、カルシウムチャネル、塩化物チャネル及びナトリウムチャネルよりなる群から選択される、上記方法。
1または複数の電界は、観察領域にわたって、任意の一時刻における平均電界の約15%以下だけしか変動しない、上記方法。
1または複数の電界は、観察領域にわたって、任意の一時刻における平均電界から約5%以下だけしか変動しない、上記方法。
1または複数の電界は、方形波形、正弦波形または鋸歯状波形のいずれかによる刺激を備えている、上記方法。
ウェルの内部に存在する細胞を観察領域内で光学的に観察できるようにする、高い透過率の部分を有する複数のウェルと、
前記複数のウェルのおのおのの内部の2個の電極と、
前記高い透過率の部分を通じて前記ウェルから出る光を検出するように構成されている光検出器と、
前記電極に接続された電源であって、前記電源および前記電極は前記観察領域内のウェルに一連の電界を加えるように構成されており、前記電界は、前記観察領域内において、その領域内での平均強さの約25%よりも小さい空間的変動を有して、前記細胞の一部のトランスメンブレンポテンシャルを制御可能に変える、電源と、
前記ウェルから前記高い透過率の部分を通って出る前記光を、前記トランスメンブレンポテンシャルの変化の結果としてのイオンチャネル活動として解釈するデータ処理器と、
を備える、高スループットスクリーニング装置。
複数のウェルがマルチウェルプレート内に配置されている、上記高スループットスクリーニング装置。
高い透過率の部分は、ガラス、石英、シクロオレフィン、Aclar、ポリプロピレン、ポリエチレンおよびポリスチレンで構成されている群から選択される材料から製作される、上記高スループットスクリーニング装置。
高い透過率の部分は、250nmないし400nmの範囲内のUV光で励起された時に、ポリスチレンよりも少ない蛍光を示す上記高スループットスクリーニング装置。
電極は前記複数のウェルの壁内に配置されている、上記高スループットスクリーニング装置。
電極は前記複数のウェルの底層内に配置されている、上記高スループットスクリーニング装置。
マルチウェルプレートは96個までのウェルを有する、上記高スループットスクリーニング装置。
マルチウェルプレートは96個よりも多いウェルを有する、上記高スループットスクリーニング装置。
マルチウェルプレートは384個よりも多いウェルを有する、上記高スループットスクリーニング装置。
電極は、金、白金と、パラジウム、クロム、モリブデン、イリジウム、タングステン、タンタルおよびチタンとよりなる群から選択される材料で製作される、上記高スループットスクリーニング装置。
マルチウェルプレートは、光の透過を減少するために光学的に不透明な材料または顔料を含む、上記高スループットスクリーニング装置。
電極は約1ないし4mmの範囲内の間隙により分離されている、上記高スループットスクリーニング装置。
電極は約0.1ないし1mmの範囲内の間隙により分離されている、上記高スループットスクリーニング装置。
電極は約0.01ないし0.1mmの範囲内の間隙により分離されている、上記高スループットスクリーニング装置。
電極は前記間隙を横切って5ないし100V/cmの間の電界強さを生ずるように充電され、ウェルの内部に流体接続されている、導電性物質の表面積を横切って移動させられる全電荷は100μC/mm2より小さいか等しい、上記高スループットスクリーニング装置。
複数のウェルは、前記少なくとも2つの導電性物質条が充電されて前記間隙を横切って5ないし100V/cmの間の電界強さを生ずる時に、平均電界強さから10%より大きくないだけしか内部の電界強さが変動しないような観察領域を前記ウェル内部に形成するように向けられて構成された絶縁体をさらに備え、ウェルの内部に流体接続されている、導電性物質の表面積を横切って移動させられる全電荷は100μC/mm2より小さいか等しい、上記高スループットスクリーニング装置。
複数のウェルは少なくとも2つのサテライト導電体をさらに備えている、上記高スループットスクリーニング装置。
試料ウェルと、
試薬および/または細胞を前記試料ウェルに加える液体ハンドリング部と、
イオンチャネルの活動を選択的にひき起こさせるように、前記試料ウェル内部の細胞のトランスメンブレンポテンシャルを制御する手段と、
前記トランスメンブレンポテンシャルの変化を光学的にモニタする手段と、
を備える高スループットスクリーニング装置。
手段は、観察領域内における平均電界強さの約25%よりも小さいだけの空間的変動を有する電界を生ずるために構成されている電極を備える、上記スループットスクリーニング装置。
トランスメンブレンポテンシャルを制御する手段は電極アレイ組立体を備えている上記スループットスクリーニング装置。
電極アレイ組立体は8個の電極組立体を有する上記スループットスクリーニング装置。
電極アレイ組立体は96個の電極組立体を有する上記スループットスクリーニング装置。
電極アレイ組立体は96個より多い電極組立体を有する上記スループットスクリーニング装置。
装置は、前記電極組立体をマルチウェルプレートのウェルの内部へ、および内部から引き込み可能に動かす手段をさらに備えている、上記スループットスクリーニング装置。
トランスメンブレンポテンシャルを制御する手段は、ほぼ平行な2つの平らな表面を有する導電体を備えている、上記スループットスクリーニング装置。
導電体は1ないし4mmの範囲内の間隙により分離されている上記スループットスクリーニング装置。
導電体は0.1ないし1mmの範囲内の間隙により分離されている上記スループットスクリーニング装置。
導電体は第1の絶縁体をさらに備えている上記スループットスクリーニング装置。
第1の絶縁体は、前記導電体の前記ほぼ平行で平らな表面に垂直に向けられていて、相互にほぼ平行な2つの平らな表面を備えている上記スループットスクリーニング装置。
導電体は、前記少なくとも2つの導電体に取り付けられている第2の絶縁体をさらに備え、前記第2の絶縁体は、前記少なくとも2つの導電体の間の間隙内に置かれて、前記少なくとも2つの導電体の間に前記水溶液の深さを定める、上記スループットスクリーニング装置。
第1の絶縁体は低蛍光物質で構成され、前記低蛍光物質は、250nmないし400nmの範囲内のUV光で励起された時に、匹敵する寸法のポリスチレンよりも少ない蛍光を示す上記スループットスクリーニング装置。
第1の絶縁体は、プラスチック、ガラスとおよびセラミックとよりなる群から選択される絶縁体を備えている、上記スループットスクリーニング装置。
プラスチックは、ナイロン、ポリスチレン、テフロン(登録商標)(ポリテトラフロロエチレン)、ポリプロピレン、ポリエチレン、塩化ポリビニルおよびシクロオレフィンとよりなる群から選択される上記スループットスクリーニング装置。
導電体は、金、白金、チタン、タングステン、モリブデン、イリジウム、バナジウム、Nb、Ta、ステンレス鋼および黒鉛とよりなる群から選択される導体を備えている、上記スループットスクリーニング装置。
導電体は電気分解を減少する表面処理を含む、上記スループットスクリーニング装置。
電気分解を減少する表面処理は、白金黒、金黒、イリジウム/イリジウム酸化物、チタン/チタン窒化物、またはポリピロール膜とを備えている、上記スループットスクリーニング装置。
電界の強さは、前記少なくとも2つの導電体が充電されて前記間隙を横切って5ないし100V/cmの間の電界強さを生ずる時に、平均電界強さから10%より大きくないだけしか変動せず、前記水溶液に接触している導電体の表面積を横切って移動させられる全電荷は100□C/mm2より小さいか等しい、上記スループットスクリーニング装置。
電界の強さは、前記少なくとも2つの導電体が充電されて前記間隙を横切って5ないし100V/cmの間の電界強さを生ずる時に、平均電界強さからその5%より大きくないだけしか変動せず、前記水溶液に接触している導電体の表面積を横切って移動させられる全電荷は100μC/mm2より小さいか等しい、上記スループットスクリーニング装置。
複数の薬品候補化合物をターゲットイオンチャネルに対してスクリーニングする方法であって、
前記ターゲットイオンチャネルを宿主細胞の集団で発現することと、
複数の前記宿主細胞を複数の試料ウェルのおのおのの内部に置くことと、
候補薬品化合物を前記複数の試料ウェルの少なくとも1つに加えることと、
前記トランスメンブレンポテンシャルを前記ターゲットイオンチャネルの予め選択された電圧依存状態に対応するレベルに設定するように、前記複数の試料ウェル内の宿主細胞のトランスメンブレンポテンシャルを電界の繰り返し印加で変調することと、
を備える方法。
前記ターゲットイオンチャネルの予め選択された第2の電圧依存状態に対応する正常な休止トランスメンブレンポテンシャルを有する宿主細胞を選択することをさらに備えている上記方法。
電界は二相的である上記方法。
電界は対象とするイオンチャネルを異なる電圧依存状態の間で循環させる、上記方法。
電界は対象とするイオンチャネルを開かせる、上記方法。
電界は対象とするイオンチャネルを不活性から解放させる上記方法。
1または複数の細胞は、FRETをベースとする電圧センサ、エレクトロクロミックトランスメンブレンポテンシャル染料、トランスメンブレンポテンシャル分布染料、イオン感応性蛍光またはルミネッセント分子、および放射性イオンからなる群から選択された電圧センサを備えている、上記方法。
ターゲットイオンチャネルは、カリウムチャネル、カルシウムチャネル、塩化物チャネル及びナトリウムチャネルよりなる群から選択される、上記方法。
1つまたは複数の電界は、方形波形、正弦波形または鋸歯状波形のいずれかによる刺激を備えている、上記方法。
1つまたは複数の電界は、約10V/cmないし約10010V/cmの範囲内での振幅を備える、上記方法。
1つまたは複数の電界は、約20V/cmないし約80V/cmの範囲内の振幅を備える、上記方法。
内部に電極が置かれている少なくとも1つの試料ウェルを備え、前記電極はウェルの底面に関して配置されて、前記底面の表面積の少なくとも約20%にわたる平均電界強さからその約10%より小さいだけしか変動しない電界を前記底面付近に与える、アッセイプレートおよび電極組立体。
電極は、前記電極の底端部が前記底面の近くであるが、前記底面に接触しないように前記ウェル内に下方へ延長するプレート電極を備えている、上記組立体。
試料ウェルごとに2つの電極を備えている上記組立体。
試料ウェルごとに2つより多くの電極を備えている上記組立体。
電極が前記ウェルの前記底面上にめっきされている上記組立体。
底面が高い光透過率部分を備えている上記組立体。
高い透過率部分は、ガラス、石英、シクロオレフィン、Aclar、ポリプロピレン、ポリエチレンおよびポリスチレンとよりなる群から選択される材料から製作される、上記組立体。
高い透過率の部分は、250nmないし400nmの範囲内のUV光で励起された時に、ポリスチレンよりも少ない蛍光を示す上記組立体。
電極は前記複数のウェルの壁内に配置されている上記組立体。
プレートは96個までのウェルを有する上記組立体。
プレートは96個より多いウェルを有する上記組立体。
プレートは384個より多いウェルを有する上記組立体。
電極は、金、白金、パラジウム、クロム、モリブデン、イリジウム、タングステン、タンタルおよびチタンとよりなる群から選択される材料で製作される、上記組立体。
電極は約1ないし4mmの範囲内の間隙により分離されている、上記組立体。
電極は約0.1ないし1mmの範囲内の間隙により分離されている、上記組立体。
電極は約0.01ないし0.1mmの範囲内の間隙により分離されている、前記組立体。
ウェルの場所に対応する位置を持つ少なくとも1列の高透過率領域と、
前記列に沿って延長し、前記ウェルの場所の第1の部分の上に重なり合う導電性物質の第1の条と、
前記列に沿って延長し、前記ウェルの場所の第2の部分の上に重なり合う導電性物質の第2の条と、
を備えているマルチウェルプレート用の底パネル。
前記第1の条の端部に近接している第1の電気接点と、前記第2の条の端部に近接している第2の電気接点とをさらに備えている上記底パネル。
試料ウェルと、
前記試料ウェル内部に配置されている第1の対の電極と、
前記試料ウェル内部に配置されている少なくとも1つの追加のサテライト電極と、
を備えているアッセイ装置。
少なくとも1つの追加のサテライト電極は、第2の対の電極と第3の対の電極を備えている上記アッセイ装置。
サテライト電極は、第1の対の電極の電位より低い電位まで充電される上記アッセイ装置。
電極は、ウェルの底面に関して配置されて、前記底面の表面積の少なくとも約20%にわたる平均電界強さからその約10%より小さくしか変動しない電界を前記底面付近に与える上記アッセイ装置。
実施例:
本発明は添付した実施例を参照すると一層良く理解できる。それらの実施例は示すことだけを目的とするものであって、ここに添付されている特許請求の範囲で定められている本発明の範囲を限定するものとは、いかなる意味においても解してはならない。
実施例1:標準丸形ウェル内の平行プレートの電界の一様性の解析:
種々の電極とウェルの設計との作用を解析するために、電界の一連の二次元数値シミュレーションを、ソフトウエア解析パッケージQuickfieldTM4.1, (Student's Version, Tera Analysis, http://www.tera-anaiysis.com)を用いて発生した。このソフトウエアパッケージは、二次元での有限要素解析法でポアソンの方程式を解くことによって目の粗い網型の電界強度マップを生ずる。この解析のために、電界の底とウェルの底の間の間隙に起因する端効果は無視し、電極から食塩水までの電圧降下も無視できるものと仮定した。モデルの空間分解度は約0.5mmである。
図7Aは、96個の標準の円形ウェルの内部に配置されている、間隙が4mmで、標準電位差が2Vである4mm幅の平行プレート電極(710)を用いたシミュレーションの結果を示す。この図では、外側の円(700)はウェルの縁部で、2本の垂直線(710)は電極であり、中間の破線の円(720)は観察領域である。灰色の領域(740)は、電界が観察領域内の平均電界の±10%以内に維持される領域である。白い領域(730)では、電界は平均からその10%よりも小さく、黒い領域(750)では、電界は平均電界からその10%よりも大きい。観察領域内では、電界の強さの標準偏差は平均の2%であり、最大電界と最小電界の間の差は平均の10%である。したがって、この構成は本発明に使用するための電界一様性について述べた諸要求を満たす。
実施例2:標準円形ウェル内のピン電極の電界一様性の解析:
標準の直径6.2mmのウェル内部に置かれて、4.0mmの距離で隔てられている、直径1.0mmの2本の丸ピン電極について予測される電界の一様性を決定するために、実施例1において説明したのと同じ条件および同じ仮定でシミュレーションを行った。
図7Bで、外側の実線の円(705)はウェルの縁部で、2つの小さい円(715)は電極であり、中間の破線の円は観察領域である。灰色の領域(745)は、電界が観察領域内の平均電界の±10%以内に維持される領域である。白い領域(735)では、電界は平均よりその10%よりも小さく、黒い領域(755)では、電界は平均電界よりその10%よりも大きい。観察領域(725)内では、電界の強さの標準偏差は平均の15%であり、最大電界と最小電界の間の差は平均の87%である。したがって、この構成は一様な電界を生ぜず、その結果、本発明での使用には適さない。
実施例3:正方形ウェル内の平行プレートの電界一様性の解析:
図8Aは、6.2mmの正方形ウェル内部の4mmの間隙を持つ2枚の6mm幅の平行プレート電極の電界プロファイルのシミュレーションを示す。この図で、外側の正方形(800)はウェルの縁部である。2本の垂直線(810)は電極である。中間の破線の円(820)は観察領域である。特に注目すべきことは、電界の強さの変化に対比をつけるために、図8の電界のスケールが、図7と比較して非常に大きくされていることである。灰色の領域(840)は電界が観察領域内の平均電界の±1%以内に維持される領域である。白い領域(830)では、電界は平均よりその1%よりも小さい。このシミュレーションでは、平均電界よりその1%よりも大きい点はない。観察領域内では、電界の強さの標準偏差は平均の0.02%であり、最大電界と最小電界の間の差は平均の0.12%である。したがって、この構成は電界の一様性を極めて大きく改善する。
シミュレーションの結果は、図7Aに示されている平行プレート系における電界の非一様性の主な源が、ウェルの丸くされている壁から得られることを示す。円形断面を有する標準ウェルでは、電流密度が一方の電極から他方の電極へ通るにつれて拡がり、その後で縮み、この拡がりが非一様性を生ずる。これは正方形ウェルを持つマルチウェルプレートを用いて修正できる。
実施例4:ウェルの丸くされている領域を覆い隠すための絶縁体要素の付加の影響の解析:
図8Bは、図1において説明した標準の状態と解析手順を用いて、6.2mmの直径の円形ウェル内部の4mmの間隙を持つ2枚の4mm幅の平行プレート電極の電界プロファイルのシミュレーションを示す。図9Aに示されているように、絶縁体が電極に取り付けられて、電極の間のウェルの丸くされている領域を覆い隠す。図8Bで、外側の円(802)はウェルの縁部である。2本の垂直線(812)は電極である。中間の破線の円(822)は観察領域である。クロスハッチされている領域(862)は電極に取り付けられている絶縁体である。灰色の領域(842)は、電界が観察領域内の平均電界の±1%以内に維持されている領域である。白い領域(832)内では、電界は平均よりその1%よりも小さい。このシミュレーションでは、平均電界よりその1%よりも大きい点はない。観察領域内では、電界の強さの標準偏差は平均の0.2%であり、最大電界と最小電界の間の差は平均の1.0%である。したがって、この構成は、絶縁体が使用されていない場合よりも電界の一様性を極めて大きく改善するが、正方形ウェルの場合におけるほど大きくはない。
この結果は、標準的な円形ウェルプレートにおける電界の一様性は、電極により定められている領域の外側の領域に絶縁物質を充填することにより、極めて大きくできることを示している。実際には、ナイロン、テトラフロロエチレン、ポリカーボネートまたはその他の任意の非多孔質ポリマーなどの不活性なプラスチック、またはガラスが水溶液に対して比較的安定で、容易に製造でき、好ましくは非蛍光発光性でないならば、それらの物質を絶縁体物質として使用できる。絶縁体は、通常、電極に取り付けられ、電極により定められる領域のいずれも見えなくすることはない。
実施例5:電界の一様性に及ぼすサテライト電極の影響の解析:
ウェルの湾曲している縁部内への電流の損失をサテライト電極の使用によって補償することが可能かどうかを判定するために、各種の電極構成でシミュレーションを行った。図9Bはこの概念の1つの可能な実施形態を示し、図8Cはこの構成が、実施例1で説明したQuickfieldTMを用いて解析された時の電界プロファイルを示す。この実施例では、余分の0.7mm幅の平行平板電極の2対を2mm間隙をおいて設けた。それらの電極は観察領域の外部にあって、それの親電極の電位の半分に保たれていた。
図8Cで、外側の実線円(804)はウェルの縁部である。2本の長い実線垂直線(814)は親電極であり、4本の短い実線垂直線(816)はサテライト電極である。中間の破線の円(824)は観察領域である。灰色の領域(844)は、電界が観察領域内の平均電界の±1%以内に維持される領域である。白い領域(834)内では、電界は平均よりその1%よりも小さく、黒い領域(854)内では、電界は平均電界よりその1%よりも大きい。観察領域内では、電界の強さの標準偏差は平均の0.2%であり、最大電界と最小電界の間の差は平均の1.2%である。したがって、この構成は、絶縁体が使用されていない場合より電界の一様性を極めて大きく改善するが、正方形ウェルの場合におけるほど大きくはない。
この実施例は、特定の構成において4つのサテライト電極を使用することを示している。観察領域の外部により多くのサテライト電極を付加することにより、かつそれらの電極の電位を親電極に加えられている電位の関数として適切に割当てることによって、電界の一様性を原理的に任意の精度まで改善できる。
例えば、円形ウェル構成では、観察領域の中心における電界の一様性は、平行平板電極を、図9Dに示されているように、薄い絶縁分割要素により分離されているいくつかの片に分割することによって改善できる。各電極に加えられる電位(最も中心の片に加えられている電位に対する分数比のとして表わされている)を個々に調整して、観察領域内の電界の一様性を最高にできる。
この概念は、おのおの独立に制御できるいくつかの垂直導電性条を有する、平行でないディッパー電極の使用を許すために拡張できる。
実施例6:電界の一様性に及ぼすメニスカスの影響の解析:
ウェル内に挿入された時にディッパー電極により形成されるメニスカスは、観察領域にわたってほぼ10%、生理的食塩水の深さを変化させる。そうすると観察領域にわたってほぼ10%の電界変化が生ずる。それらの変化は、電極の構造が完全な電界一様性を生ずると予測されていたとしても存在する。したがって、メニスカス効果を解消すると実際の電界一様性が改善される。これを行う1つの可能な方法は、電極の間に絶縁バリアを付加することである。図9Cは、1つのそのような実施形態を示すものであって、絶縁バリアが、ウェル内の液体に対して平らな上表面を形成するために用いられている。このバリアの底が、電極がウェル内に挿入された時に、ウェルの底の約2.5mm上に位置するように設計されている。したがって、バリアは、生理食塩水中に部分的に浸され、それの底面が、導電性の室の上部を平らに、かつ電極表面に垂直に画定する。このようにして電界は、導電性容積の表面の凹凸によって乱されることはない。
実施例7:ディッパー電極電気刺激器の製造:
電気刺激器の一実施形態では、装置は、ディッパー電極を96ウェルマルチウェルプレート形態におけるウェルのアレイ中に配置する自己位置決めフレームで構成されている(図1)。図1は電極アレイの挿入された位置を示す。この例では、電気刺激装置は、3つの機能部品から製作できる。第1の部品は、装置をプレートウェルに対して配置する位置決めフレーム(40)である。このフレームは金属で製作され、マルチウェルプレートにぴったりはめ込まれる。このフレームは、装置の第2の機能部品すなわち引き込み機構の位置決め基準として機能する。
引き込み装置は、肩ボルト(70)と復帰ばね(見えない)で構成されている。ばねは、肩ボルトの周囲に巻き付けられ、位置決めフレーム(40)と絶縁カバー(90)の底を押す。復帰ばねは、電極がプレートウェル内に下げられるまで、電極組立体を引き込められた位置に保持する。引き込み機構は、装置の第3の機能部品、すなわち電極アレイの位置を決定する。
装置の第3の機能部品は、電極アレイである。電極アレイは八対の同一の電極くし(10)で構成されている。電極くしは、ステンレス鋼で製作され、歪みを避けるために精密レーザ切断されている。各くしは、マルチウェルプレートウェルの直径をほぼさしわたすのに十分な幅のタブを8つ有する。くしのバックボーンは、タブ(50)への電気接続を構成している。それらのくしのうちの2つが、8つのウェルの行内に挿入される電極対を形成している。くしは、電極を位置決めフレームに対して配置する、精密に孔あけされている絶縁プレート(30)により相対的に配置されている。絶縁スペーサー(20)が電極の分離している状態を維持し、ピンにより留められているインターフェースにより、くしに対し、孔が開けられているプレートに対する位置を指示する。第2の組のスペーサー(25)が、プレート(30)に対する電極(10)の精密な位置決めを確実に行う。安定性を一層高めるために、アライメント軸(15)がスペーサー(20)と電極くし(10)に設けられているアライメント穴に挿入されている。くしとスペーサーは、絶縁カバー(90)により、孔あけされているプレートに対して所定の場所に保持されている。
装置をマルチウェルプレートの上に置き、電極組立体に対して押し下げて電極をウェルの内部に降ろすというようにして、装置を手動で使用できる。電極が十分に延ばされると、一対の固定バー(60)が挿入されて電極をウェル内部に延ばされた状態に保持する。あるいは、この技術で知られている標準的な機械的制御装置あるいはロボット制御装置を用いて、ウェルに対する電極の出し入れを自動的に行うこともできる。
図3は、主な電気部品と光学部品のブロック図を示す。電気刺激は、一対のデジタルファンクションジェネレータ(380,310)により駆動される大電力増幅器(320)で発生される。一実施形態では、スイッチ(330)は、VIPRTM読取器制御コンピュータ(300)に挿入されているNational Instruments社(Austin TX) PC−DIO24デジタル入力/出力カードにより制御されるNational Instruments ER−16であった。スイッチ(330)は、96ウェルプレート内の定められたウェルを、任意の与えられた時間プロトコルで電気的に刺激することを許された。この場合には、1つの8ウェル行が同時に刺激された。増幅器(320)は、APEX PA93チップ(Apex Microtechnology Corp, Tuscon,AZ)を用い、製造者により提供された回路にしたがって組立てられた。この増幅器は次のような仕様であった:入力±100VDC、入力インピーダンス100GΩ、電圧ゲイン20倍、出力±90V、出力±3A、出力インピーダンス10Ω。ファンクションジェネレータは、Tektronix (Beaverton,OR) AFG310型であった。ファンクションジェネレータ(380)は、刺激パルス列が開始を求められた時に、VIPRTM読取器ソフトウエアによりトリガされ、一連のTTLパルスを発生して第2のファンクションジェネレータ(310)をトリガした。第2のファンクションジェネレータは、刺激波形カーネルでプログラムされていた。
実施例8:電気刺激の電圧依存性:
野生型のチャイニーズハムスターの卵巣細胞(CHO細胞)は、電圧依存ナトリウムチャネルを内生的に発現し、電気刺激パラメータの妥当性検証と最適化のために便宜に使用できる。このナトリウムチャネル以外に、それらの細胞は、付近の細胞との間の間隙接合接続と、非常に小さい(〜20pA)電圧依存外向き電流を有するように見える。
これらの細胞における電圧依存ナトリウムチャネル(以後NaV1と呼ぶ)は、ラットの脳型IIaナトリウムチャネルに類似する電気生理学的特性を有する。このチャネルの電流/電圧特性を標準の電気生理学で解析すると、典型的な野生型CHO細胞は−20mVにおいて細胞当り100pAの平均ピーク電流を有することが明らかになった。これは、約800MΩの膜抵抗率(RNa)に相当する。単一チャネルのコンダクタンスが10pSであると仮定すると、これは、細胞当りたった〜125個のナトリウムチャネルが存在することを示唆する。我々の場合には、CHO細胞は、典型的には、休止トランスメンブレンポテンシャル(Rm)が約−35mV、休止膜抵抗値が>10GΩ、細胞膜容量(Cm)が15pFであることを示す。
電気刺激の電圧依存性を試験するために、野生型CHO細胞を96ウェル微量滴定プレート内に入れ、成長媒体中で24〜48時間培養した。その後で、それらを浴溶液1中でリンスし、それぞれ、10μM CC2−DMPE(クマリン)と、その後で3μM DiSBA2(3)(付録A1に記載されているようにエチルオキソノール)とでそれぞれ30分間染色した。96対のステンレス鋼電極(幅4mm、間隙4mm)を持つ刺激器組立体が、実施例7で記述されているように、アッセイプレートの上に置かれた。電極は、細胞を覆っている食塩水の上に降ろされ、ウェルの底から0.5mmの所に保持された。上記のように、電気刺激中に、比率測定法蛍光測定をVIPRTM読取器を用いて行い、データを付録A2中の手順にしたがって分析した。任意の1時刻には、8ウェル行のたった1つの行をアッセイ(検定)した。残りのウェルは、励起光または電気刺激を受けなかった。各プレートをアッセイした後で、電極を蒸留水で完全に洗浄し、圧縮空気で乾燥して、プレートの間の相互汚染(クロスコンタミネーション)を避けた。
電気刺激の結果として細胞中に起きるトランスメンブレンポテンシャルの変化を測定するために、細胞を含んでいるマルチウェルプレートをVIPRTM読取器で分析した。電極間の中間に位置する直径が3mmの観察領域内の細胞を400±7.5nmの光で励起した。その光は、300Wのキセノンアーク灯で発生されたもので、正確な励起波長を選択するために、一対の誘電体干渉帯域通過フィルタの対を通された。光は三つ又に分けられた光ファイバケーブルを介して細胞へ向けられ、細胞から戻された。その光ファイバケーブルのうち1本を励起光のために使用し、他の2本を蛍光放出のために使用した。青(460±20nm)信号と橙(580±30nm)信号を各ウェルから50Hzで記録し、デジタル化してコンピュータに保存した。最初のアッセイには15秒間を要し、それは、示されている電気振幅での2秒間で始まる、6秒間の刺激繰り返し(90Hz繰り返し頻度)二相(5ms/相)方形波刺激で構成されていた。刺激バーストの2秒前および7秒後の間は、電流は電極を流れない。図10は、32V/cmまでの種々の電界強さにおける比率測定反応を示す。この場合には、記録されている反応の見掛けの立上がり時間は、反応時定数がおよそ1秒であるDiSBAC2(3)の反応時間によって制限される。10V/cmより小さいパルス振幅では、反応は検出できない。20V/cmより上では、反応はしっかりしていて、電圧が32V/cmまでさらに上昇させられるにつれてわずかだけ増大する。図11に示されているように、より高い電圧では、ピーク反応(約5秒後に測定された)は、反応におけるさらに少しだけの増加を示す。図11のデータは、ボルツマン関数にフィッティングできる。ボルツマン関数の中点は、18.0V/cmで、幅が2.0V/cmである。出だしが鋭いことと、高い電界における反応の平坦さは、しきい値現象を強く示唆するものである。反応が最大の半分(18V/cm)である電界は、以前に出版された式(式1、Tsong, 1991, Biophys. J., 60:297-306を参照;細胞の平均直径が30μmであると仮定している)を用いて、細胞の最も端におけるトランスメンブレンポテンシャルの約±30mVの偏差に対応する。したがって、これは、通常は不活性状態にある電圧ゲートされているナトリウムチャネルについて上で述べた刺激機構と、定量的に調和する。
高い強さの電界では、細胞膜がエレクトロポレーションを生じてトランスメンブレンポテンシャルが大きな比較的特異でない変化をする(Tsong, 1991, Biophys. J., 60:297-306)。これがここで用いられているより低い電界強さに対する細胞の反応における大きな要因でもあるか否かを判定するために、ナトリウムチャネルに特有の毒素であるテトロドトキシン(TTX)で実験を行った。電気刺激の作用を毒素でブロックできるものとすると、これは、電気刺激の作用がナトリウムチャネルの活動によって主として成立させられることを示唆する。この実験の結果を図12に示す。データは33V/cmの電界の強さで得たもので、TTXは電気刺激の作用を完全にブロックできることを示しており、典型的な薬学的特性はナトリウムチャネルのブロックに一致している。このデータへのフィッティングからのEC50は9nMであって、ラットの脳型IIaにおけるTTXについて報告された値(8nM, West et al., 1992, Neuron, 8:59-70)に類似する。この信号がTTXによりブロックされるという通常の薬学での事実は、電気刺激により発生された信号がほとんど完全にNaV1に起因することの強力な証拠である。
実施例9:刺激パルスの幅および周波数の変化に対する細胞の反応の変動:
刺激パルスの幅と周波数が変えられた際の細胞反応の挙動を調べるために、上で実施例8において説明したように野生型CHO細胞を用いて、一定の電界強さ25V/cmで、パルスの持続時間と周波数を変化させて実験を行った。
その結果が図13に示されている。各データ点は、野生型CHO細胞の5枚の別々のプレートから得た実験からの同時に刺激された8つのウェルの平均を表わす。結果は、刺激の周波数が高くなるにつれて反応の大きさが増大することを全体として示している。トランスメンブレンポテンシャルがナトリウムの反転電位(VNa)まで駆動されるにつれてこの作用は飽和するに違いないことを予測されるであろう。この場合には、ナトリウムチャネル密度が低すぎるためにこれは起きない。
パルスの持続時間を長くすると、約10msまでのより低い刺激周波数におい
て相対的な電気刺激の度合いがより高くなる結果となる。その約10msを超えるとそれ以上の増大は顕著でなくなる。非常に短いパルス持続時間(1msより短い)でも反応が制限される。その理由は明らかに、チャネルが不活性から実効的に解放されないためである。大きな細胞反応を効果的にひき起こすために、最良の刺激パラメータでは、通常は、パルス持続時間は、不活性を回復するための時定数より大きいか等しい範囲内にあり、かつ刺激の周波数は膜の時定数よりも大きいように、十分に小さい。また、刺激の最適周波数は、通常は、平均チャネル開放時間の逆数より小さい。
これらの実験は、電気刺激は、比較的低いレベルの電圧依存チャネルを発現する細胞においてさえもうまく使用できることを示し、かつ大きなエレクトロポレーションすなわち細胞の死をもたらさない諸条件の下でうまく終了できることを示す。これらの実験は、所望の大きさの反応を生ずるために、刺激パルスの持続時間と繰り返し周波数を最適にできる方法も示す。
実施例10:外因性ナトリウムチャネルを発現するCHO細胞の分析:
VI節で説明したように、電圧依存ナトリウムチャネル(以後、NaV2と呼ぶ)を符号化するプラスミドでチャイニーズハムスターの卵巣細胞を安定にトランスフェクトした。電気刺激による分析前に、このチャネルの電気生理学的特性および薬学的特性を確認するために、細胞全体のパッチクランプ分析を用いた。−20mVにおけるピーク過渡ナトリウム電流は、600±300pA(N=5)で、平均細胞膜容量は15±5pfであると測定された。静止細胞膜抵抗値は、高すぎて正確に測定することができなかった(RL>10GΩ)。休止トランスメンブレンポテンシャルは−31±3mVであった。
刺激のしきい値電界を決定するために、ナトリウムチャネルを安定して発現する細胞は96ウェルプレート内に塗布され、付録A1のぷろとこるにしたがって染色された。電気刺激プロトコルは、可変電界強さでの、実施例7で述べた電気刺激器を用いた、20Hz、二相刺激(5ms/相)の3秒間のバーストを含んでいた。
図14は、種々の電界強さにおける代表的な時間トレースを示す(各カーブは8つの細胞の平均である)。低い電界強さでは、検出可能な細胞反応はなく、平均トランスメンブレンポテンシャル変化が約1mVより小さいことを示唆する。35V/cmと90V/cmの間では、反応は定型的なものであって、形と振幅が固定されている。90V/cmより上では、ピーク反応は比較的一定のままであるが、刺激が除かれた後の反応減衰時間はかなり引き延ばされたものになる。
図8に示されている実験に一致して、85V/cmまでの電界強さによりひき起こされる反応はTTXにより阻害できるが、90V/cmより上で刺激された細胞から得られた反応は、そうはできない(データは示されていない)。したがって、速い反応は、上で概説したナトリウムチャネル開放機構によるものであるが、遅い反応は電界による膜の電気的透過化により主としてひき起こされるものと、結論される。
この効果は、電界強さを増大させながら、速い反応の挙動(刺激の4秒後)と遅い反応(刺激の10秒後)を比較することにより、より容易に知られる。このデータが図15に示されている。速い反応をボルツマン関数にフィッティングすると、速い反応の中点がE50=26V/cmで、幅がΔE=3.5V/cmであった。反応は、40と80V/cmの間の電界強さとは独立しており、電気的透過化が90V/cmより上に設定された時に、わずかかに増加した。
透過化(permeablization)に起因するより遅い反応は、90V/cmで最初に検出可能であって、それ自体は、ある用途では潜在的に有用であった。例えば、透過化は、トランスメンブレンポテンシャルをゼロにリセットするために使用でき、または透過化が特定のイオンに対して選択性であるならば、トランスメンブレンポテンシャルをそのイオンの平衡値にリセットするために使用できる。これは、例えば、トランスメンブレンポテンシャルを設定するチャネルのアッセイにおいて有用である。例には、カリウム漏れチャネルおよび塩化物漏れチャネル、カリウム内向きレクチファイヤ、および低電圧で活性化された電圧ゲートされたカリウムチャネルが含まれる。
それらの結果は、細胞タイプには依存せずに、電気的透過化がおよそ±200mVのしきい値トランスメンブレンポテンシャルで始まるという、刊行されている諸研究にしたがうものである(Teissie and Rols, 1993, Biophys. J., 65:409-413)。その論文で報告されかつ文献において広く引用されている式に基づいて、平均直径が30μmのCHO細胞は、90V/cmの細胞外電界を受けた時に、±200mVのトランスメンブレンポテンシャル変化を経験する。
実施例11:不活性からの解放の実効的な時間の決定と、実効的な開放チャネルナトリウムコンダクイタンス:
いかなる特定の作用機構にもしばられることなく、不活性からの解放の実効的な時間および開放チャネルコンダクタンスの定量的な評価を行うために、実験的検証のために下記の理論を発展させた。
開放の後では、ナトリウムチャネルは、1ミリ秒のオーダーの電圧依存時定数で不活性になる。開いているナトリウムチャネルを通る電流は、電圧と時間に強く依存しているので、1回の刺激の後での電圧変化に対する解析的表現を発生することは可能ではない。しかし、いくつかの簡略化した近似を行うことにより、平均の理想化した反応をモデル化して試験可能な理論を構成できる。ここでの目的のために、開いた時にナトリウムチャネルは、反転電位がENa=+60mVの時に、Vt=−40mVより上で、直線形のコンダクタンスとして挙動すると仮定する。コンダクタンスgNaは、全細胞パッチクランプ実験において、−20mVで得られる最大電流として決定される。ナトリウムチャネルコンダクタンスの時間依存性は、チャネルが活性化すると固定されている時間τNa=1.0msに対して固定されたコンダクタンスgNa=1/RNaを有すると仮定することにより、簡略化される。その時間の後で、チャネルは不活性になる。
二相方形波刺激カーネル(各相は時間t1を有し、周波数f=1/Tで繰り返される)を用いて、期間Tの間に細胞に入る電流は、
となる。
ここに、τNaは、ナトリウムチャネルが開いている時間である。RNa=1/gNaは、ナトリウムチャネルが開いている時の膜抵抗値である。RLは、通常の(漏れ)膜抵抗値である。VLは、漏れ反転電位(すなわち休止膜電位)である。VNaは、ナトリウム反転電位である。τrは不活性から回復するための時定数である。これは実際には、パルス中に達成される過分極電圧の関数であるが、ここではそれが定数であると仮定する。
実際には、細胞の異なる部分からのナトリウムチャネルは、異なる膜電位変化を経験し、パラメータτNa、τrおよびRNaは、膜電位に強く依存している。完全なモデルは、細胞の形態(morphology)と、細胞の向きのランダムな分布と、それらのパラメータの電位および時間に対する依存性を考慮に入れる。そうすると、それらの依存性を畳み込んでそれらのパラメータの実効値を生ずることが可能である。それらの手順も、ここでの説明のために含まれる。その代わりに、それらの式へのフィッティングから抽出された値が、その基礎をなしているチャネルの諸特性の複雑な平均を表わすことを認識する。
式(2)を刺激(V−VL)中のトランスメンブレンポテンシャル変化について解くと、
が得られる。
新しいトランスメンブレンポテンシャルに達するように、十分に長い時間にわたって刺激が行なわれるすると、定常状態式は
である。
不活性からの解放の実効的な時間および開放チャネルコンダクタンスを決定するために、変化する周波数での一定振幅43V/cmで、20ms、10ms、5ms、2msおよび0.3msのパルス持続時間を有する二相方形波カーネルを用いて、実施例8で説明したように実験を行った。図16に示されるように、その結果が、いくつかのパルス持続時間に対する刺激周波数の関数としての反応を示す。この場合には予測されるように、反応は、トランスメンブレンポテンシャルがナトリウム反転電位に明らかに接近するにつれて、高い周波数では飽和する。不活性からの解放の実効時間およびチャネル開放時間を決定するために、反応Rが、下の修正されたヒル方程式に対してフィッティングされた。
式(5)は、トランスメンブレンポテンシャル変化がない場合に対して比率測定反応がR=1であること、およびそれが較正されていない比例定数Aを有してトランスメンブレンポテンシャル変化に直線形であることを認識することにより、式(4)から導出することができる。
式(5)において、Aとf0は調整可能なパラメータである。フィッティングは、Origin 6.0ソフトウエア(Microcal,Northampton MA)を用いる非線形最小二乗解析を用いて行った。
上の式(5)からのパラメータT0=1/f0は、それらのフィッティングから得られたもので、パルス持続時間に対してプロットされ、図17に示されている。この図の線は、指数関数的減衰へのフィッティングであり、このフィッティングから、不活性からの解放の時定数(τr)がτr=5.7msであり、RLτNa/RNa=0.134が導かれる。
τNa=1msおよびRL=45GΩであると仮定すると、RNa=140MΩとなる。これは、ピークナトリウムコンダクタンスが100mV/140MΩ=700pAとなることを意味する。これは全細胞パッチクランプで測定された値に極めてよく一致する。
実施例12:他の内因性イオンチャネルを持つ細胞系統における外因性ナトリウムチャネルの分析:
野生型HEK−293細胞は、通常、種々の内因性のカリウム電流および塩化物電流を発現するので(Zhu et al,. 1998, J. Neurosci. Meth., 81:73-83)、それらの細胞の休止膜抵抗は5〜10GΩである。その結果、それらの細胞の膜時定数は、対応してより小さいために、細胞を最適に刺激するためには、匹敵する信号を発生するために、内因性カリウムチャネルのない細胞と比較して、電気刺激プロトコルを比較的より高い周波数で繰り返すべきであることが予測される。
この細胞バックグラウンドにおいて、電圧規制されたナトリウムチャネルを本発明を用いて効率的に電気刺激できるかどうかを試験するために、HEK−293細胞を、以後NaV3と称する電圧依存ナトリウムチャネルで、安定にトランスフェクトした。細胞をVI節において説明したようにトランスフェクトおよび選択し、かつ実施例8で述べたようにFRET染料でラベル付けした。細胞を付着させ、15μMのCC2−DMPEおよび2μMのDiSBAC6(3)でロードし、その後で25V/cmの、90Hzの周波数で繰り返される、パルス持続時間が5ms/相である二相刺激列を加えた。刺激パルス列は、3秒の全持続時間の間生じ、データ収集のためのデジタル化レートは50Hzであった。
時間の関数としての反応(図18)は、約40msの時定数で安定なプラトー(平坦部)まで減衰する迅速な(<20ms立上がり時間)初期段階を示す。スパイクとプラトーの間にも小さいはね返り(リバウンド)電位も存在する。我々は、この挙動を、最初の刺激パルスの後で起きる内因性電圧依存カリウムチャネル(KV)の活性化によるものと解釈する。実験データと一致するように、それらの内因性カリウムチャネルの活性化は、カリウムが細胞を離れるにつれて、トランスメンブレンポテンシャルを低下をもたらすことが予測される。電気刺激が続行されると、トランスメンブレンポテンシャルが、細胞へのナトリウムの流入と細胞からのカリウムの流出のバランスにより設定される新たな平衡に達する。刺激が終わったときに、反応の減衰時定数は約143msであって、約9GΩの漏れ抵抗値に対応する。
この全体的なより小さい反応を薬品発見のために確実に使用できるかどうかの判定を行って、TTXまたはテトラカインの作用を正確にキャラクタライズすることができるかどうかの判定を行った。図19に示されている結果は、本発明を用いるそれらの薬品の薬理学的阻害プロファイルが、これらの試薬でのNAV3ナトリウムチャネルの既知の挙動に一致することを示す。TTXについての用量反応曲線を、EC50=25nMおよびヒル係数1.1のヒル関数にフィッティングできる。テトラカインについての用量反応曲線を、EC50=11μMおよびヒル係数0.97のカーブにフィッティングできる。それらの結果は、反応がナトリウムチャネルの活性によりひき起こされること、および既知および未知の化合物についての薬理学的情報をこの方法を用いて得ることができることを示唆する。
実施例13:NaV4ナトリウムチャネルを発現するHEK−293細胞の分析:
この方法を広い範囲の種々のナトリウムチャネルに一般に適用できるかどうかを判定するために、HEK−293細胞を別の電圧依存ナトリウムチャネル、以後NAV4と呼ぶ、で安定にトランスフェクトした。それらの細胞をVI節および実施例8で説明したように、トランスフェクトし、選択し、FRET染料でロードした。このチャネルでのテトラカインについての用量反応曲線の結果を図20に示す。ここでは、データ点は、8つのウェルでの平均と標準偏差であり、実線は、見積もられたEC50=351nMおよびヒル係数1.35でのヒル関数へのフィッティングである。それらの結果は、このイオンチャネルの既知の薬理学と矛盾せず、細胞反応が主としてナトリウムチャネルの活性によりひき起こされることを再度示している。
実施例14:電圧活性化された塩化物チャネルとカリウムチャネルの混合を発現するHEK−293細胞の分析:
電圧依存塩化物チャネルと電圧依存カリウムチャネルの直接刺激の実証を野生型HEK−293細胞を用いて行った。それらの細胞は、いくつかの電圧で活性化された塩化物チャネルおよびカリウムチャネルの混合したものを内生的に発現する(Zhu, Zhang et al., 1998)。野生型細胞は、96ウェル微小滴定プレート内で成長させられ、付録A1におけるプロトコルにしたがって、FRET染料で染色された後、全面で(コンフルエンス)でアッセイされた。最初の刺激パラメータは、20Hzでの、パルス持続時間が約5ms/相の二相方形波刺激電気カーネルでの3秒の長さの電気刺激を含んでいた。刺激は、変化する電界強度で行って、カリウムチャネルブロッカーが存在する間または存在しない間に、測定可能な細胞反応についてのしきい値電界強さを決定した。
図21は、この実験中に得られた細胞電圧反応を示す。この図では、各パネルは、単一のウェルについての反応の10秒時間トレースを含む。パネルは、プレート上でのそれらの相対位置に合致するように配置されている。各パネルの垂直軸は、FRET電圧感応性染料の組合わせCC2−DMPE/DiSBAC2(3)の、バックグラウンドを除去して正規化した蛍光比である。この量の変化は、膜電位の変化にほぼ比例する。各列は、同一の刺激条件を有し、プレートを横切って左から右へ電界の強さが増大している。96ウェルプレートの12列目(示されていない)は細胞を含んでおらず、バックグラウンド除去のために使用された。行6〜8は、電圧依存カリウムチャネルをブロックするために、10mMのTEAを含んでいた。試験した最小の電界強さでは、検出可能な反応はなかった。中間の電界では、刺激が除去された時に、迅速に減衰する負電圧反応を見ることができる。最高電界では、大きな正の反応が顕在化している。この挙動は、50V/cmより上で始まる。これは、NaV1を発現するCHO細胞で見られる電気透過化しきい値(実施例8)に類似する。
図22は、刺激の4.5秒と5.0秒の間で電界強度の関数として平均化された反応を示す。チャネル依存負反応を示すために、60V/cmより上の大きな正の反応は除外されている。反応の変動の係数は一般に極めて小さく、例外的に大きなスクリーニングウィンドウを生ずる(付録A3参照)。20〜40V/cmに対するブロックされていないデータに対しては、刺激されたウェルと刺激されないウェルとの間の違いは、20標準偏差以上である。
周知のカリウムチャネルブロッカー(Hille, 1992, Ionic Channels of Exicitable Membranes)であるテトラエチルアンモニウム(TEA)を、10mMの完全にブロックする濃度で行6、7、8に加えた。この処置は、反応を部分的にブロックする。この結果は、電気刺激に反応するそれらの細胞中のカリウムチャネル(TEAにより遮断される)と塩化物チャネル(TEAにより作用されない)の存在に合致する。カリウムチャネルの作用は、4,4’−ジイソチオシアノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸(DIDS)または4−アセタミド−4−イソチオシアノスチルベン−2,2′−ジスルホン酸(SITS;Hille, 1992, Ionic Channels of Exicitable Membranesを参照)で塩化物チャネルを遮断することにより、分離できる。その後で、同じ細胞系統を用いて2つのチャネルクラスをスクリーニングできる。
実施例15:状態依存ブロッカーの特定:
提案されているいかなるスクリーニング装置も、受け入れられた方法により決定された既知化合物の薬理学を再現すべきであることが好ましい。これが本発明の場合であったことを検証するために、定められた活性の一連の試験化合物を、NaV2チャネルを発現するCHO細胞系統を用いて分析した。これを行うために、細胞を96ウェルプレートで培養し、付録A1に述べられているように電圧感応性染料で染色した。試験化合物をオキシノールローディングバッファとともに細胞に加えた。特に記載がなければ、化合物は、アッセイプレートの11の列にまたがって1/3希釈して、8の繰り返しとして試験した。
図23は、ナトリウムチャネルブロッカーであるテトロドトキシン(TTX)およびテトラカインの選択された濃度に対する時間トレースを示している。
テトロドトキシンは、強力な、可逆であって、状態に特有でないナトリウムチャネル拮抗体である。これと比べるとテトラカインは、種々のナトリウムチャネル状態とは異なる親和性を示す、用途依存のナトリウムチャネルブロッカーである。
結果は、本発明が、試料の間またはプレートの間で変化することが比較的少なくて、再現性が高い結果を提供することを示す。図23において、TTXの作用を、反応の形状が大きく変化することなく反応が次第に低下して行くこととして、見ることができる。テトラカインと比べると、反応は低下するばかりでなく、濃度が変化するにつれて形が変化する。それらの実験のためのC.V.は、同じ電圧染料を用いる典型的なCVと比較して、10%(TTX)および9%(テトラカイン)であった。ただし、伝統的な液体添加は、16%(TTX)および18%(テトラカイン)であった。
重要なことに、それらの結果は、本発明がテトラカインによるナトリウムチャネルの状態依存ブロックを特定できることも示す。テトラカインの使用依存ブロックは、図24に示されている用量反応曲線では一層明らかである。TTXに対しては、チャネルブロックは、反応の計算のために用いられる時間ウィンドウとは独立している。しかし、テトラカインに対しては、ブロックは、1秒におけるよりも3秒において1桁強い。同じ刺激条件の下で、他の使用依存ブロッカー(リドカインおよびブピビカイン)は、用量反応曲線のより小さい移動を示した。リドカインに対する電気刺激プロトコルによって得られたEC50値は、文献(表4参照)に報告されている高周波値に類似していた。これは、リドカインおよびブピビカインが、ここで使用されている20Hz刺激において完全に飽和させられるのに十分に速い使用依存性を有することを示唆している。これはまた、刺激周波数を変えることにより、局部麻酔の使用依存特性を開発できることを示唆している。
表4はいくつかのナトリウムチャネル拮抗体についてのブロッキング濃度を掲げたものである。報告されている文献値は、全て、全細胞パッチクランピングを用いて測定されたものであるので、ナトリウムチャネル電流の直接測定に基づいている。
表4において、表のエントリは、各アッセイからの用量反応曲線へのフィッティングのためのEC50値(マイクロモルで)である。各実験は2回行なわれ、実験ごとの薬品濃度当り、4つのウェルを用いた。各実験において、11種類の濃度を使用し、濃度範囲は5桁にまで及んだ。報告された値は、各実験からの計算されたEC50の平均である。使用依存ブロッカーの場合には、記録された最小の値は引用されたものである。
WIN−17317およびTTXは、各種のナトリウムチャネルの強力なトニックブロッカーである。それらの化合物は、電気刺激形態を用いて検出できる。それは文献値に近いブロッキング効果を生ずる。
初めの4つの薬品(リドカイン、ブピビカイン、テトラカインおよびフェニトイン)は、使用依存のブロッカーである。すなわちそれらは、チャネルの種々の状態に対して種々の親和性を持つ。それらは、大きな治療関連性のものである。その理由は適切な濃度で、それらは損傷を与えるような神経細胞と筋肉細胞の繰り返しバースティングをブロックでき、しかも正常な低周波活性を影響を受けないままにするからである。全ての場合に、電気刺激で測定された実測ブロッキング濃度は、報告された文献濃度に近い。電気刺激アッセイ形態は、アゴニスト、拮抗体および使用依存ブロッカーを含めたナトリウムチャネルの全てのモジュレーターを検出する信頼できる唯一の高スループット法である。
実施例16:高スループットスクリーニングの応用可能性:
高スループットスクリーニングの目的のためには、反応は、活性化合物と不活性化合物との間の違いを確信をもって語るために十分に信頼できるものでなければならない。これは、同一の刺激条件の下で得た反応の分布を調べ、もともとのチャネルを完全にブロックされたチャネルと比較することによって、定量化できる。実験上の不確定性と装置内の雑音のために、反応にいくらかの乱れが存在するであろう。我々はこの乱れを統計的に定量化し、偽陽性または偽陰性として反応を誤って識別する確率を予測するために、それを使用したいものである。
それを行うために、NaV2電圧依存ナトリウムチャネルを発現する細胞のプレートが、FRET染料でロードされた。1列当り1つのウェルが、1μMのTTXすなわち半遮断濃度の約200倍で、「無作為に」スパイクされた。細胞は、20Hz、25V/cmの3秒バースト、5ms/相、二相刺激でアッセイされた。結果が図25に示されている。TTXでスパイクされたウェルは、検出できる反応をほとんどまたは全く生じないので、肉眼で容易に判別できる。
刺激が始まってから2秒後の比率測定反応が、図26に示されている。2つの集団(ブロックされているものとブロックされていないもの)は、容易に識別できる。平均のブロックされた反応は1.011±0.004であり、平均のブロックされていない反応は2.67±0.21であった。ブロックされていない反応に対する変動の係数は13%である。スクリーニングウィンドウ(すなわち、標準偏差に対して正規化された集団の間の差、付録A3参照)は7.8(σ1+σ2)である。ここにσ1=0.21はブロックされていない反応の標準偏差であり、σ2=0.004はブロックされている反応の標準偏差である。ブロッカーを非ブロッカーから区別するためのカットオフ点を、集団の間の中間(1.042)に取るものとすると、(正規分布を仮定して)統計的な偽陰性と偽陽性の率は1−prob(7.75)=10-14である。これは、大きな化合物ライブラリ(108種類の化合物)のスクリーニング中に、全体のスクリーニングにおける単一の偽陽性または偽陰性に遭遇する確率は100万中のたった1つであることを示唆する。比較のために、集団の間の違いが僅かに3で、カットオフが最適に置かれていたとすると、偽陽性/陰性の率は、0.3%すなわち1011高いファクタとなる。完全なブロックを与えない化合物もヒットとして含めたいような実際のスクリーニングに対しては、弱い薬理学的活性の検出と偽陽性の率との間に二律背反性が存在する。例えば、偽陽性の率として0.1%を希望したとすると、このスクリーニングでは、スクリーニングのカットオフをブロックされていない反応の平均より3.3標準偏差下、すなわち1.97に置くことができる。この場合には、偽陰性の率は実効的にはゼロで、反応の50%だけをブロックする化合物はヒットとして識別される。
数学的には、ブロックされた集団とブロックされていない集団とが非常に少ししか重なり合わない2つの理由がある。第1に、ブロックされていない反応の変動の係数が比較的小さいことである。すなわち各反応は、他のあらゆる反応とほぼ同一である。第2に、そしておそらくより重要なことに、ブロックされたウェルからの反応は、絶対的に検出できないことである。ブロックされたウェルからの散乱はしたがって極めて小さいために、集団を区別するために境界を非常に低く置くことができる。
刺激のために液体添加プロトコルを用いて行われるアッセイでは、一般に、追加のアーティファクトが、いくらかの小さい反応を与え、それに散乱が伴う。ブロックされた反応の散乱は、スクリーニングウィンドウを小さくして、偽陽性および偽陰性の確率を高くし、スクリーニング者の部分ブロッカーを特定する能力を限定する。
実施例17:複雑な細胞系統におけるスクリーニング:
多数のチャネルを発現する細胞の電気刺激の可能性は、HL5細胞系統の培養を用いて示された。それらの細胞は、心筋細胞を不死化することにより発生された(Claycomb et al., 1998,PNAS 95:2979-84)。それらは電圧で活性化されるいくつかのナトリウム、カルシウムチャネルおよびカリウムチャネルと、強い内向きレクチファイヤカリウム電流と、カリウムおよび塩化物漏れ電流を含む。細胞は96ウェル微少滴定プレート内で成長させられ、コンフルエンスでアッセイされた。それらは、付録A1におけるプロトコルにしたがって染色された。電気刺激中に、上記のようにVIPRTMを用いて比率測定法蛍光測定を行い、データを付録A2における手順にしたがって解析した。刺激パラメータを:パルス持続時間が5ms/相である二相方形波刺激カーネルで、10Hzの3秒長さのバースト、であるように随意に選択した。刺激は、しきい値電界を決定するために、変化する電界で行った。2行のウェルが心臓ナトリウムチャネルを部分的にブロックするために10μMのTTXを含んでおり、2行が電圧依存カリウムチャネルをブロックするために、10mMのTEAを含んでいた。図27は、各ウェルの正規化された反応を示す。一般に、電界の強さが増大するにつれて、細胞の反応は大きくなる。最後の3つの列は、電圧が上昇するにつれた電気的透過化の符号を示す。列6、7、8では、比は実際には出発比よりも下にはね返り(リバウンドし)、後過分極(電圧依存カリウムチャネルのゆっくりとした閉鎖によりひき起こされる現象)を示唆する。
細胞反応の速さは極めて速く、膜内で迅速に再分配するためのエチルオキソノルの能力により明らかに制限されることがある。迅速な反応は、漏れ電流に起因する細胞の高い休止コンダクタンスおよびカリウム内向きレクチファイヤチャネルの発現に一致する。TTXは、正の反応を部分的にブロックする。これは、それが少なくとも部分的には電圧依存ナトリウム電流に起因することを示す。
図28は、加えられた電界の関数としての、処理されていない細胞(行1〜4)の反応を示す。反応は、電界に応じてS字形(シグモイダル)に増大する。50V/cmより上では、TTXにより影響を受けない持続信号が存在する。既に述べたようにこの挙動は、高い電界強さにおける細胞膜の電気的透過化に、合致する。また図28に示されているのは、刺激での関数としてのスクリーニングウィンドウである(付録A3参照)。
これらの結果は、電気刺激技術を用いてHL5細胞を効果的にアッセイできることを示す。種々のイオンチャネルを修飾することが知られている化合物は、反応に検出可能な変化をひき起こす。それらのイオンチャネルは心臓により発現されているイオンチャネルと同一であるので、そのようなアッセイは、2次スクリーニングとして有用であり、正常な心臓機能を妨害するかもしれないそれらの化合物による修飾をなくすか、目立たせる。心臓イオンチャネルのいずれか1つ(または組合わせ)に望ましい作用を及ぼすことがある化合物を発見することが、1次スクリーニングとして有用なこともある。
実施例18:表面電極を用いる細胞培養の電気刺激:
表面に装着されている電極は、クロム(付着層として)および金(導電層として)によって被覆されたガラスカバーリップ上に用意された。金属を被覆されたカバーリップは、Thin Film Devices, Inc.社(カリフォルニア州アナハイム(Anaheim CA))により特注で製作された。カバーリップは、1インチ(25.4mm)四方で、厚さ0.17mmのCorning(コーニング)7059ガラス製であった。金属付着は、真空スパッタリング付着により行なわれた。クロム層の厚さは約1000オングストロームで、付着層として機能した。金層の厚さは約5000オングストロームで、導電層として機能した。付着された金属の抵抗率は、0.1Ω/平方より小さかった。耐薬品性ポリマー(S1400−27,Shipley Co., Marlborough MA)によって金属の表面を手作業で覆い、その後で、金エッチング剤TFAで金属層を5分間エッチングし、それに続いてクロムエッチング剤TFD(Transene Co., マサチューセッツ州ダンバース(Danvers MA))で5分間エッチングすることにより、金属に4mmの間隙(ギャップ)をエッチングで形成した。カバーリップは、96ウェルプレートの底にシリコーンエラストマー(Sylgard184 (Corning)、70℃で90分間硬化した)で取付けられた。30分間の365nmのUV放射で滅菌し、細胞付着分子ポリ−D−リシンを付着した後で(分子量300,000、Dulbeccoのリン酸塩で緩衝された食塩水中で1mg/mLで30分間浸し、その後で蒸留水で3回リンスした)、生きている細胞を電極表面上で成長および培養することに成功した。
表面電極刺激器を有効にするために、約1000細胞/mm2の初期密度のCHO細胞を96ウェルプレートのウェル内に付着させ、そのまま約16時間放置した。それらの細胞をトランスフェクトして、カリウムチャネル、それはトランスメンブレンポテンシャルをほぼ−80mVに設定した、とNaV3ナトリウムチャネルを発現した。コンフルエンスに達した後で、付録A1に述べられているように、電圧感応性FRET染料の組合わせであるCC2−DMPEとDiSSBAC2(3)を細胞にロードした。金属表面電極をパルスジェネレータの出力端子に接続した。パルスジェネレータは、この場合には指数関数的に減衰するエレクトロポレータ(electroporator)(Gene Pulser II, Bio-Red Corp.,カリフォルニア州ハーキュリーズHercules CA))であった。75Wのキセノンアーク灯光源を装着されているZeiss Axiovert TV顕微鏡で、比率測定法蛍光画像形成を行った。405±10nm誘電体干渉フィルタおよび445 DXCRダイクロイックミラーを用いて、励起光をフィルターした。放出光を第2の525XRダイクロイックミラーで分割し、一対の浜松HC124光電子増倍管(PMT)で測定した。一方のPMTは、その前面に475±40nmの誘電体干渉フィルタを設けて青色の蛍光信号をモニタした。第2のPMTは、その前面に580±35nmの誘電体干渉フィルタを設けて、橙色の蛍光信号をモニタした。光学フィルタおよびダイクロイックミラーは、Chroma Technology Corp.社:バーモント州バトルボロー(Battleboro VT)所在から購入した。比率測定法蛍光画像形成を約100の細胞を含んでいる視野について行った。バックグラウンド蛍光の修正を、細胞を含んでいない視野内で青信号と橙信号を測定し、その後でそれらを細胞から得た信号からさし引くことによって行なった。そして、トランスメンブレンポテンシャル変化に比例する比率測定法信号を付録A2に述べられているようにして計算した。
刺激プロトコルは、振幅が可変である単一の一相電界パルスを使用した。パルスは、指数関数的に減衰する波形のもので、その減衰時定数は4.3msであった。パルスの開始時の振幅は、ゼロから56V/cmまで変化させられた。
3つの別々の45V/cm刺激反応の後でのカリウムチャネルとNaV3ナトリウムチャネルを発現するCHO細胞の典型的な電圧反応が、同じ細胞野について示されており、反応の反復可能性を示している。この場合の反応の速さは、動きやすい疎水性の染料の反応時間によって主として制限される。その反応時間は、使用されるエチルオキソノールでは約0.5秒である。
電界の強さが変化する一相刺激で刺激される96ウェルマルチウェルプレート内で成長させられた細胞の集団の平均比率測定反応が、図30に示されている。この曲線中の点は、同じ培養体における4つの刺激の平均ピーク反応である。活動電位型の反応カーブから予測されるように、約18V/cm以下では検出可能な反応はない。しきい値領域は比較的狭い。約20V/cmと約40V/cmの間では、電界の強さが増すにつれて反応は増す。約40V/cmより上では反応は平坦である。
実施例19: IRK1を発現している野生型RBL細胞の分析:
ラット好塩基球性白血病(RBL)細胞は、カリウム内向きレクチファイヤチャネルIRK1を内生的に発現する(Wischmeyer et al., Pfluger Arch., 429:809-819, 1995)。このチャネルは、カリウムイオンを選択的に導き、高い非線形コンダクタンス特性を持つ。コンダクタンスはカリウムの反転電位VK以下ではほぼ直線形であり、VKよりおよそ10mV正で始まってゼロ近くまで降下する。多数の内向きレクチファイヤチャネルを発現している細胞は、VKの数ミリボルト以内である休止トランスメンブレンポテンシャルを有する傾向にある。
細胞のうち、IRK1と少数の他のイオンチャネルを発現している細胞に加えられる外部電界によりトランスメンブレンポテンシャルが正に駆動される側では、IRK1チャネルは急速に閉じて導通を止める。細胞のうち、トランスメンブレンポテンシャルが負に駆動される側では、IRK1チャネルは開いてカリウム電流を流す。細胞のこの側が十分負に駆動されて、局部的なトランスメンブレンポテンシャルがVKよりも一層負にされるものとすると、正味の内向きカリウム電流が存在する。この電流は、正の全体としてのトランスメンブレンポテンシャル変化を生じさせる。IRK1チャネルは不活性ではないので、この電流は、外部電界が加えられている限り持続するするにちがいない。
付録A1に述べられているように、付着性のRBL細胞が96ウェルプレート内に播種されて、FRET染料をロードされた。3行のウェルが、IRK1チャネルをブロックするために400μMの塩化バリウムを含んだ。VIPRTM読取器を用いて、パルス持続時間が5ms/相で、50Hzの周波数で繰り返される二相刺激列で電気的に刺激しながら、プレートを分析した。刺激パルス列は、全持続時間の5秒間にわたって生じ、データ収集のためのデジタル化速度は50Hzであった。加えた電界を8つのウェルの各列に対して固定し、7.2V/cmから72V/cmまで変化した。データを付録A2に述べられている手順にしたがって解析した。3秒間の刺激の後での正規化された比を計算し、2つのウェルの集団(バリウムブロックのあるものとないもの)について平均し、図31において、加えられた電界の関数としてプロットした。誤差バーは、反応の標準偏差である。白い四角は、バリウムブロックなしの反応であり、黒丸がバリウムブロックを伴う反応である。バリウムブロックを伴う細胞からのデータは、電界が80V/cmに達するまでの刺激中は検出可能な電圧変化がないことを示している。80V/cmでは電気的透過化がいくらか起きている。ブロックされていない細胞は、ほぼ20V/cmであるしきい値より上ではほぼ直線的な反応を示している。この例は、本発明を、刺激パラメータおよび細胞により発現されているイオンチャネルの特性に依存して、トランスメンブレンポテンシャルを正の向きまたは負の向きに変調するために使用できることを明らかに示している。
本発明は電気刺激の適用可能性を、大きなエレクトロポレーションをひき起こすことなしにトランスメンブレンポテンシャルの効果的かつ段階的な制御を可能にする装置および方法を得ることにより、励起できない細胞を包含するまで拡張するものである。本発明は、細胞を囲んでいる媒体に加えられる極めて一様な、繰り返し電気刺激パルスを使用することにより、この結果を達成する。加えられる電界は、通常は、細胞の平均トランスメンブレンポテンシャルを直接に変化させることはないが、その代わりに、細胞のうちカソードとアノードにそれぞれ面している側に、対称的な正と負のトランスメンブレンポテンシャル変化を生ずる。
このやり方は、イオン選択性と、電圧依存性イオンチャネルの非線形ゲーティングおよびコンダクタンス特性を利用する。このやり方は、典型的な無損傷の細胞がトランスメンブレンポテンシャル変化の減衰に関して長い時定数を有するという事実も利用もする。単一の刺激パルスにより細胞内に注入される電荷が小さすぎて確実に検出できない場合でも、適切に加えられた多数の刺激パルスが、大きな正味でのトランスメンブレンポテンシャル行程を構成することができる。パルスの数、持続時間、形および振幅を変えることにより、生きている細胞のトランスメンブレンポテンシャルを、パッチクランピングに類似するやり方で、人為的に設定しまたは変えることが可能である。古くは電圧依存であるとは考えられていなかった他のチャネル、漏れ電流またはトランスポーターを、第2の電圧依存チャネルを用いてトランスメンブレンポテンシャルの変化を誘起させ、ターゲットチャネルまたはトランスポーターの活性化の結果として電流の流れまたはトランスメンブレンポテンシャル変化を検出することにより、アッセイすることもできる。
この方法は、ロバストであって、光学的検出方法に適合でき、薬品発見に使用するための高スループットスクリーニングを含めた広範囲の潜在的な用途に対応できるように容易に修正できる。多くのアッセイ形態では、直接電気刺激が液体添加の要求を避けて、アッセイを容易にしている。トランスメンブレンポテンシャルの複雑な取扱いを、刺激プロトコルにおける変更を用いて、容易に達成できる。したがって、非活性化状態または電圧依存状態とは無関係に、ほとんどすべての電圧依存性チャネルを開かせることができる。高スループットでの薬品発見のために、これは特殊化された細胞タイプに対する要求を緩め、容易に入手できる細胞系統でアッセイを迅速に実行できるようにする。
[付録]
A.1 電圧FRET染料の染色プロトコル:
試薬:
アッセイ緩衝液(バッファ)#1:
140mM MaCl
4.5mM KCl
2mM CaCl2
1mM MgCl2
10mM HEPES
10mMグルコース pH7.40,330mOs/kg
プルロニック(pluronic)ストック(1000倍)
乾燥DMSO中の100mg/mL pluronic 127
オキソノール(oxonol)ストック(3333倍)
乾燥DMSO中の10mM DiSBAC2(3)
クマリン(coumarin)ストック(1000倍)
乾燥DMSO中の10mM CC2−DMPE
ESS−CY4ストック(400倍)
水中の200mM ESS−CY4
ローディングおよびアッセイプロトコル:
1.CC2−DMPEローディングバッファの用意。通常は、96ウェルプレートに対して、10mLの染色溶液をプレートごとに用意する:
i) 等体積(10μL)のクマリンストックとプルロニックストックとを試験管内で混合する;
ii) 試験管内を緩やかにかきまぜながら、10mLのアッセイバッファ#1を試験管に加える;
ローディング濃度:10μMのCC2−DMPEおよび0.1μg/mlのプルロニック。
2.オキソノールローディングバッファの用意:
i) 等体積(3.3μL)のオキソノールストックとプルロニックストックとを試験管内で混合する;
ii) 試験管内を緩やかにかきまぜながら、10mLのアッセイバッファ#1を試験管に加える;
iii) かきまぜながら25μLのESS−CY4を加える;
ローディング濃度:3μMのDiSBAC2(3),0.2μg/mlのプルロニックおよび0.5mMのESS−CY4。
iv) 要求があれば、この時に試験化合物にローディングバッファを加える。
3.細胞をアッセイバッファ#1で2回リンスし、そのたびにウェルから全ての流体を除去する。
4.100μLのCC2−DMPEローディングバッファを各ウェルに加える。室温で30分間インキュベートする。明るい光を避ける。
5.細胞をアッセイバッファ#1で2回リンスし、そのたびにウェルから全ての流体を除去する。
6.100μLのオキソノールローディングバッファを各ウェルに加える。
7.明るい光を避けて室温で30分間インキュベートする。直ちに使用する。
A2.VIPR TM 読取器データの解析:
データは、460nmと580nmチャネルで測定された強度の正規化された比として、解析および報告された。それらの比を計算する過程は、以下のようにして行われた。全てのプレートにおいて、列12は、細胞プレートで用いられている濃度と同じDiSBAC2(3)およびESS−CY4濃度のアッセイバッファ#1を含んでいたが、列12には細胞は含まれていなかった。各波長における強度値は、最初の(刺激前)ウィンドウと最後の(刺激後)ウィンドウで平均された。それらの平均値は、全てのアッセイウェルにおいて、同じ時間期間にわたって平均された強度値から差し引かれた。最初のウィンドウの標本(Ri)と最後のウィンドウの標本(Rf)とから得られる比は、
として定義される。
最後のデータは、各ウェルの出発比に正規化されて、Rf/Riとして報告された。
A3.スクリーニングウィンドウ:
反応に対するスクリーニングウィンドウWは、次のようにして定義される。同一の刺激条件における多数のウェルからのデータが求められる。対照ウェルは、薬理学的に遮断されているものか、またはフル電界で刺激された、トランスフェクトされていない細胞である。あるいは、刺激されていないトランスフェクトされた細胞を使用するかもしれない。
実験ウェルおよび対照ウェルからの反応が測定される。実験ウェルにおける反応の平均および標準偏差(R±ΔR)と、対照ウェルにおける反応の平均および標準偏差(C±ΔC)が計算される。スクリーニングウィンドウは、標準偏差の和に正規化された、実験信号と対照信号の間の差として定義される。
許容できるスクリーニングウィンドウに対する、一般的な親指法則はW>3である。これによって、偽陰性/陽性の率が1%より小さいように確実にする、対照反応と実験反応の間の中間のカットオフ線を選択できるようになる。正規分布を仮定すると、スクリーニングウィンドウWの関数としての偽陽性/陰性の率は、
である。