JP5603354B2 - 活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物、及び印刷物 - Google Patents

活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物、及び印刷物 Download PDF

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Description

本発明は、活性エネルギー線硬化型インクジェットインク、及び当該インクジェットインクを硬化させて形成された層を有する印刷物に関するものである。
近年、活性エネルギー線を用いたインクジェット印刷方式が活発に研究されている。この方式は、液状のインクを紙、プラスチックなどに塗布したのち、例えば紫外線を照射することにより、硬化・架橋させる方式であり、従来の熱で乾燥させるインクジェット印刷方式とは異なり、速乾性があり、無溶剤で、インクを吸収しない媒体への印刷が可能であるなどの利点がある。また、インクジェット方式は、印刷時に版を必要とせず、必要とされる画像部のみにインクを吐出し、被記録媒体上に直接画像形成を行うため、インクを効率よく使用でき、活性エネルギー線を用いたインクジェット印刷方式は注目されている。
活性エネルギー線硬化型インク組成物は、通常、当該インク組成物中に重合性化合物を含有するものであり、組成物中で発生するラジカル等により、保管中であっても重合反応が進行する場合があり、粘度の増加やゲル化の原因となる場合があった。
この問題を解決するために、重合禁止剤を添加して重合反応を抑制するインク組成物が提案されている。例えば特許文献1には、粘度安定性を改善する手法として、フェノチアジン類及びヒンダードフェノール類を重合禁止剤として含有する活性エネルギー線硬化型インク組成物が記載されている。
また、特許文献2には、長期間保存しても粘度安定性に優れ、クリア層に曇りや黄変が発生しないクリア層形成用インク組成物を得ることを目的として、重合禁止剤としてヒンダードアミン化合物、ニトロソアミン化合物及びキノン化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含むクリア層形成用インク組成物が記載されている。
しかしながら、特許文献1及び特許文献2の手法では、アルミパックなどの無酸素雰囲気下、及びボトルなどの酸素存在下のいずれにおいても長期間粘度安定性が良好で、且つ、硬化性に優れたインクが得られないという問題があった。また、使用時には、流路内やインクジェットヘッドにおいて、粘度が上がることにより、吐出安定性が悪くなり、均質な印刷物が製造できず、再現性が悪くなるという問題があった。
特開2011−201932号公報 特開2011−57744号公報
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、無酸素雰囲気下、及び酸素存在下のいずれの場合においても長期間安定で、且つ、硬化性に優れた、活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物、並びに、当該活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物を用いることにより、均質で再現性の高いインク層を有する印刷物を提供することである。
本発明に係る活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物は、少なくともエチレン性不飽和二重結合を有する化合物と、重合禁止剤と、光重合開始剤とを含有し、前記重合禁止剤が、フェノチアジン類重合禁止剤とニトロソアミン類重合禁止剤とを含み、前記ニトロソアミン類重合禁止剤が、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシアミンアンモニウム塩、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシアミンセリウム塩、及びN−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシアミンナトリウム塩よりなる群から選択される1種以上であり、インクジェットインク組成物全体における、前記フェノチアジン類重合禁止剤の含有量が0.001〜0.2質量%であり、前記ニトロソアミン類重合禁止剤の含有量が0.001〜0.2質量%であることを特徴とする。
また、本発明に係る活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物は、更に顔料を含有してもよい。
本発明に係る活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物においては、インクジェットインク組成物全体における、前記フェノチアジン類重合禁止剤の含有量が0.001〜0.2質量%であり、前記ニトロソアミン類重合禁止剤の含有量が0.001〜0.2質量%であるため、無酸素雰囲気下、及び酸素存在下のいずれの場合においても長期間安定で、且つ、硬化性に優れる
本発明に係る活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物においては、前記光重合開始剤が、アシルフォスフィンオキサイド類、α−ヒドロキシケトン類、及びα−アミノアルキルフェノン類よりなる群から選択される1種以上を含むことが好ましい。
また、本発明は、被記録媒体上に、前記本発明に係る活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物を硬化させて形成された層を有する印刷物を提供する。
本発明によれば、無酸素雰囲気下、及び酸素存在下のいずれの場合においても長期間安定で、且つ、硬化性に優れた、活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物、並びに、当該活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物を用いることにより、均質で再現性の高いインク層を有する印刷物を提供することができる。
以下、本発明について詳しく説明する。
なお、本発明において(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル及び/又はメタクリロイルを意味し、(メタ)アクリルとは、アクリル及び/又はメタクリルを意味し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。
また、本発明において、活性エネルギー線とは、可視及び非可視領域の波長の電磁波のみならず、電子線のような粒子線、及び、電磁波と粒子線を総称する放射線又は電離放射線が含まれる。
<活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物>
本発明に係る活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物は、少なくともエチレン性不飽和二重結合を有する化合物と、重合禁止剤と、光重合開始剤とを含有し、前記重合禁止剤が、フェノチアジン類重合禁止剤とニトロソアミン類重合禁止剤とを含むことを特徴とする。
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物は、実質的に溶剤を含有せず、活性エネルギー線の照射によって速乾する特性を有するため、溶剤に対する耐性のない媒体やインクを吸収しない媒体への印刷が可能である。また、無酸素雰囲気下、及び酸素存在下のいずれの場合においても長期間安定で、粘度変化を抑え、加熱時にもゲル化や増粘を防止することができ、且つ、硬化性に優れている。また、上記本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物を硬化させて形成されたインク層は均質なものとなるため、品質の高い印刷物を得ることができる。
上記特定の組み合わせにより、上記のような効果を発揮する作用としては、未解明であるが以下のように推定される。
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物は、フェノチアジン類重合禁止剤とニトロソアミン類重合禁止剤を組み合わせて用いるため、その相乗効果により、無酸素雰囲気下、及び酸素存在下のいずれの場合においてもインク組成物中のラジカルの発生を抑え、或いは発生したラジカルを補足し、エチレン性不飽和二重結合の重合反応を充分に抑制することができる。また、インク組成物を加熱する場合、ラジカルはより発生しやすくなり、ゲル化や増粘が起きやすくなる。本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物は、フェノチアジン類重合禁止剤とニトロソアミン類重合禁止剤を組み合わせて用いるため、加熱時であってもエチレン性不飽和二重結合の重合反応を充分に抑制することができる。このため、無酸素雰囲気下の保管中、酸素が存在する使用時、加熱時等、いずれの場合においても、インク組成物中のエチレン性不飽和二重結合は重合反応が抑制され、長期間安定で、粘度変化を抑えることができる。また、上述のような相乗効果により、本発明のインク組成物は、インク組成物中の重合禁止剤の含有割合を従来よりも低くした場合であっても、重合反応を充分に抑制することができる。このため、活性エネルギー線を照射した際には、光重合開始剤が効率よく機能するため、エチレン性不飽和二重結合の重合反応が充分に進行し、硬化性にも優れている。
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物は、上記のように酸素存在下及び無酸素雰囲気下のいずれの場合においても長期間安定しているため、インク使用時に流路内やヘッド内で、目詰まりを起こすことなく、吐出安定性に優れる。活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物を使用する場合は、インクジェットヘッド等を30〜50℃に加熱し、該インクジェットインク組成物の粘度を下げて吐出性を向上させることがよく行なわれるが、本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物は加熱時の安定性にも優れるため、このような手法を用いても、目詰まりを生ずることがない。これらのことから、当該インク組成物を用いて得られた印刷物はインク層が均質で、高品質な印刷物となる。
本発明に係る活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物は、少なくとも、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物と、重合禁止剤と、光重合開始剤とを含有するものであり、必要に応じて他の成分を含有しても良いものである。
以下、このような本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物の各成分について順に詳細に説明する。
(エチレン性不飽和二重結合を有する化合物)
本発明に係る活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物において用いられるエチレン性不飽和二重結合を有する化合物は、後述する光重合開始剤の作用によって重合可能なものであればよく、特に限定されない。
エチレン性不飽和二重結合は上記化合物中に1個のみ有していても2個以上有していてもよい。得られるインクの硬化性及び膜強度の点からは、エチレン性不飽和二重結合を2個以上有する化合物が好ましい。一方、硬化時の収縮が小さく、被記録媒体への密着性の点からは、エチレン性不飽和二重結合を1個のみ有する化合物が好ましい。
エチレン性不飽和二重結合を有する化合物におけるエチレン性不飽和二重結合の構造は、特に限定されない。例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等が挙げられる。中でも、エチレン性不飽和二重結合が(メタ)アクリロイル基であることが、インクの硬化性の点から好ましい。
本発明においては、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物としては、中でも、低粘度であって、得られるインクの硬化性に優れ、かつ硬化時の収縮が小さい点から、(メタ)アクリレート基を化合物中に1個のみ有する単官能(メタ)アクリレート、又は(メタ)アクリレート基を化合物中に2個有する二官能(メタ)アクリレートであることが好ましい。単官能(メタ)アクリレートは、低粘度で、かつ、硬化収縮が小さいため柔軟性を要する用途に特に適している。また二官能(メタ)アクリレートは、低粘度で、かつ、硬化時に架橋密度が高くなるため、耐性を要する用途に特に適している。
単官能(メタ)アクリレートは特に限定されない。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロへキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2,2’−オキシビス(メチレン)ビス−2−プロペノエート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
中でも、硬化収縮が小さく、密着性が良好な点から、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の芳香族炭化水素単官能(メタ)アクリレート、及び、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルシクロへキシル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の脂環式炭化水素単官能(メタ)アクリレートが好ましい。
二官能(メタ)アクリレートは特に限定されない。例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、長鎖脂肪族ジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、アクリル化イソシアヌレート、ビス(アクリロキシネオペンチルグリコール)アジペート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジ(メタ)アクリレート、リン酸ジ(メタ)アクリレート、亜鉛ジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
二官能(メタ)アクリレートとしては、低粘度かつ架橋密度が高くなる点から、中でも、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、及びプロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレートからなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
また、単官能(メタ)アクリレートと、二官能(メタ)アクリレートを適宜組み合わせて用いることもできる。単官能(メタ)アクリレートと、二官能(メタ)アクリレートを組み合わせて用いる場合の含有比率は、用途に応じて適宜調整すればよく、特に限定されない。中でも、密着性と膜強度を両立させる点から、単官能(メタ)アクリレート全量に対して、二官能(メタ)アクリレートが0〜60質量%であることが好ましく、0〜50質量%であることがより好ましい。
アクリロイル基以外では、ビニル基が好ましく用いられ、単官能ビニルモノマーとしてはN−ビニルカプロラクタムが低粘度かつ密着性良好であるためより好ましい。二官能ビニルモノマーとしては、トリエチレングリコールジビニルエーテルが低粘度かつ粘度を低下させる能力に長けているためより好ましい。
上記エチレン性不飽和二重結合を有する化合物は、1種単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。本発明のインクジェットインク組成物においては、無溶剤型、すなわち有機溶剤を含まないことが好ましいため、通常、当該エチレン性不飽和結合を有する化合物が溶媒乃至分散媒の代わりとなる。そのため、硬化性や、硬化後の膜物性の他に、溶媒乃至分散媒となり得、且つ、インクジェット適性を有する観点から、適宜選択して組み合わせることが好ましい。
また、上記エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の1g当たりの不飽和二重結合当量(以下、単に不飽和二重結合当量(g/eq)とする)は、特に限定されないが、硬化収縮が小さく、且つ、架橋密度が高くなる点から、50〜300g/eqであることが好ましく、100〜250g/eqであることがより好ましい。
上記溶媒乃至分散媒となり得るエチレン性不飽和二重結合を有する化合物としては、室温(25℃)で液状であるものの中から適宜選択すればよく、例えば、分子量が150〜400のものが好適に用いられる。
また、上記溶媒乃至分散媒となり得るエチレン性不飽和二重結合を有する化合物は、中でも、インクジェットインク組成物のゲル化を防ぐ観点から、水酸基やカルボキシ基を含まないものが好ましい。
また、顔料分散液の粘度の安定性の点から、上記エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の酸価が、アクリル酸換算で0.1質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以下であることがより好ましい。なお、アクリル酸換算した酸価(質量%)は、(上記エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の1g当たりの酸価(mgKOH/g))/1000×(アクリル酸の分子量)/(水酸化カリウムの分子量)×100により求めることができる。
上記溶媒乃至分散媒となり得るエチレン性不飽和二重結合を有する化合物として、好ましいものの具体例としては、例えば、フェノキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、t−ブチルシクロヘキシルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジビニルエーテル等が挙げられる。
上記エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の含有量は、特に限定されない。中でも、硬化性の点から、本発明のインクジェットインク組成物全体における上記エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の含有量が、30〜95質量%であることが好ましく、45〜95質量%であることがより好ましく、60〜90質量%であることが特に好ましい。
(重合禁止剤)
本発明において用いられる重合禁止剤は、フェノチアジン類重合禁止剤とニトロソアミン類重合禁止剤とを含むものである。重合禁止剤としてフェノチアジン類重合禁止剤とニトロソアミン類重合禁止剤とを組み合わせて用いることにより、無酸素雰囲気下、及び酸素存在下のいずれの場合においても長期間安定で、且つ、硬化性に優れた、活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物が得られる。
本発明において用いられる重合禁止剤は、少なくともフェノチアジン類重合禁止剤とニトロソアミン類重合禁止剤とを含むものであり、他の重合禁止剤を含んでいても良いものである。
以下、本発明において用いられる重合禁止剤の各成分について順に説明する。
(1)フェノチアジン類重合禁止剤
本発明において用いられるフェノチアジン類重合禁止剤は、フェノチアジン及びその誘導体からなる重合禁止剤をいう。
なお、フェノチアジン類重合禁止剤を用いることで、長期間保存後であっても黄変が少なく、特に顔料を含有しないインクジェットインク組成物を、黄変のないクリアなものとすることができる。
フェノチアジン類重合禁止剤の具体例としては、例えば、フェノチアジン、2−メトキシフェノチアジン、2−シアノフェノチアジン、ビス(α−メチルベンジル)フェノチアジン、3,7−ジオクチルフェノチアジン、ビス(α、α−ジメチルベンジン)フェノチアジン等が挙げられる。中でも、フェノチアジン類重合禁止剤は、フェノチアジン、2−メトキシフェノチアジン、又は2−シアノフェノチアジンであることが好ましい。
フェノチアジン類重合禁止剤は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせても良い。上記フェノチアジン類重合禁止剤の含有量は特に限定されない。中でも、上記エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の重合反応を効率的に抑え、且つインクの硬化性が良好な点から、インクジェットインク組成物全体に対して0.001〜0.2質量%であることが好ましく、0.01〜0.1質量%であることがより好ましく、0.02〜0.05質量%であることが更により好ましい。
(2)ニトロソアミン類重合禁止剤
本発明において用いられるニトロソアミン類重合禁止剤は、ニトロソアミン及びニトロソアミン誘導体からなる重合禁止剤をいう。ニトロソアミン類重合禁止剤は、無酸素雰囲気下でのラジカル補足性能に特に優れており、更にニトロソアミンが遊離酸を中和するため、酸による重合反応を抑制することができる。上記ニトロソアミン類重合禁止剤は加熱下においても、上記の機能を発揮し、重合反応を抑制することができる。
また、ニトロソアミン類重合禁止剤をフェノチアジン類重合禁止剤に組み合わせて用いることで、酸素存在下での安定性を更に向上し、無酸素雰囲気下での安定性を特に向上する。ニトロソアミン類重合禁止剤をフェノチアジン類重合禁止剤に組み合わせによる相乗効果により、インク組成物中の重合禁止剤の含有割合を従来よりも低くした場合であっても、重合反応を充分に抑制することがでる。このため、活性エネルギー線を照射した際には、光重合開始剤が効率よく機能するため、エチレン性不飽和二重結合の重合反応が充分に進行し、硬化性にも優れている。
本発明において用いられるニトロソアミン類重合禁止剤は、例えば、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシアミンアンモニウム塩、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシアミンセリウム塩、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシアミンナトリウム塩、N−ニトロソ−ジフェニルアミン、N−ニトロソ−N−シクロへキシルアニリン、N−ニトロソ−N−メチルアニリン、N−ニトロソジメチルアミン、等が挙げられる。中でも、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシアミンアンモニウム塩、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシアミンセリウム塩、及びN−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシアミンナトリウム塩であることが好ましい。
ニトロソアミン類重合禁止剤は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせても良い。上記ニトロソアミン類重合禁止剤の含有量は特に限定されない。中でも、上記エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の重合反応を効率的に抑え、且つインク層の硬化性が良好な点から、インクジェットインク組成物全体に対して0.001〜0.2質量%であることが好ましく、0.002〜0.1質量%であることがより好ましく、0.005〜0.05質量%であることが更により好ましい。
本発明において、フェノチアジン類重合禁止剤と、ニトロソアミン類重合禁止剤の含有割合は、適宜調整すればよく、特に限定されない。中でも、上記エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の重合反応を効率的に抑え、且つインク層の硬化性が良好な点から、フェノチアジン類重合禁止剤100質量部に対して、ニトロソアミン類重合禁止剤が5〜250質量部であることが好ましく、10〜200質量部であることがより好ましい。
(3)その他の重合禁止剤
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物においては、本発明の効果を損なわない限り、他の重合禁止剤を含んでいても良い。例えば、公知のヒンダードアミン類重合禁止剤、ヒンダードフェノール類重合禁止剤、キノン類重合禁止剤等が挙げられる。他の重合禁止剤の含有量は、重合禁止剤全体の10質量%以下であることが好ましく、実質的に含有していないことがより好ましい。
重合禁止剤全体の含有量としては、中でも、上記エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の重合反応を効率的に抑え、且つインク層の硬化性が良好な点から、本発明のインクジェットインク組成物全体に対して、0.002〜0.4質量%であることが好ましく、0.021〜0.150質量%であることがより好ましく、0.025〜0.120質量%であることが更により好ましい。本発明においては、重合禁止剤として、フェノチアジン類重合禁止剤とニトロソアミン類重合禁止剤を組み合わせて用いるため、上記のような少量であっても、重合反応を充分に抑制することができる。
(光重合開始剤)
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物において用いられる光重合開始剤は、活性エネルギー線の照射により前記エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の重合反応を促進するものであれば特に限定されず、従来公知の光重合開始剤を用いることができる。
光重合開始剤としては、例えば、チオキサントン等を含む芳香族ケトン類、α−アミノアルキルフェノン類、α−ヒドロキシケトン類、アシルフォスフィンオキサイド類、芳香族オニウム塩類、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物等が挙げられる。
本発明において、光重合開始剤としては、重合反応を促進し、硬化性を向上する点から、中でも、アシルフォスフィンオキサイド類、α−ヒドロキシケトン類、及びα−アミノアルキルフェノン類よりなる群から選択される1種以上を用いることが好ましい。
アシルフォスフィンオキサイド類としては、例えばビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニル−フォスフィンオキサイド(例えば、商品名:イルガキュア819、BASF社製)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(商品名:Lucirin TPO:BASF社製等)等が挙げられる。
また、α−ヒドロキシケトン類としては、例えば、2−ヒドロキシ−1−{4−〔4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル〕−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(例えば、商品名:イルガキュア127、BASF社製等)、2−ヒドロキシ−4’−ヒドロキシエトキシ−2−メチルプロピオフェノン(例えば、商品名:イルガキュア2959、BASF社製等)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(例えば、商品名:イルガキュア184、BASF社製等)、オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン}(例えば、商品名:ESACURE ONE、Lamberti社製等)等が挙げられる。
また、α−アミノアルキルフェノン類としては、例えば、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(例えば、商品名:イルガキュア369、BASF社製等)、2−ジメチルアミノ−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(例えば、商品名:イルガキュア379、BASF社製等)等が挙げられる。
上記の中でも、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドや2−ヒドロキシ−1−{4−〔4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル〕−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンは、酸素による重合阻害を発生し難いために、インクジェットで形成された薄膜の硬化性に特に有効である。
また、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−4’−ヒドロキシエトキシ−2−メチルプロピオフェノン、オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン}、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、及び2−ジメチルアミノ−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノンは内部硬化性に優れているため、厚膜での硬化性に特に有効である。特に、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドは活性エネルギー線に高感度で反応するため、インク組成物中1〜12質量%、好ましくは2〜8質量%含有させるとよい。
また、本発明においては、アシルフォスフィンオキサイド類とα−ヒドロキシケトン類とα−アミノアルキルフェノン類とを組み合わせて使用することが、薄膜と厚膜両方の硬化性に優れ、活性エネルギー線に対して高感度かつ短時間で硬化させることができる点から好ましい。
また、上記光重合開始剤の中でも、光増感作用を有するもの(以下、「増感剤」と称する場合がある。)を用いることも好ましい。このような光重合開始剤を単独で、或いは他の光重合開始剤と組み合わせて用いることにより、LED光源等のような、単位時間当たりの照射エネルギーが低い光源を用いた場合であっても、インクジェットインク組成物を高感度且つ短時間で硬化することができる。
上記光増感作用を有する光重合開始剤としては、特に限定されない。例えば、芳香族ケトン類、アルキルアミン化合物、チオ化合物等が挙げられる。
芳香族ケトン類の具体例としては、例えば、2,4−ジエチルチオキサントン(例えば、商品名:KAYACURE DETX−S、日本化薬社製等)、イソプロピルチオキサントン(例えば、商品名:Chivacure ITX、ダブルボンドケミカル社製等)等が挙げられる。
アルキルアミン化合物の具体例としては、例えば、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル(例えば、商品名:DAIDO UV−CURE EDB、大同化成工業社製等)、4,4‘−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(例えば、商品名:EAB−SS、大同化成工業社製等)等が挙げられる。
また、チオ化合物の具体例としては、例えば、4−ベンゾイル−4‘−メチルジフェニルスルフィド(例えば、商品名:SPEED CURE BMS、Lambson社製等)、2−メルカプトベンゾチアゾール(例えば、商品名:M、川口化学工業社製等)等が挙げられる。
増感剤としては、中でも、2,4−ジエチルチオキサントン、4,4‘−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、及び4−ベンゾイル−4‘−メチルジフェニルスルフィドからなる群より選択される1種類以上を用いることが好ましい。
本発明のインクジェットインク組成物においては、中でも、長波長域に吸収を持つアシルフォスフィンオキサイド類、その中でも、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドと、2,4−ジエチルチオキサントン、4,4‘−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、及び4−ベンゾイル−4‘−メチルジフェニルスルフィドからなる群より選択される1種類以上とを組み合わせることにより、385nm、395nmなどのLED光源に対して高感度かつ短時間で硬化させることができる点で好ましい。
本発明において光重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明において光重合開始剤の含有量は、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。中でも、硬化性と長期保存安定性を両立する点から、インクジェットインク組成物全体における、光重合開始剤の含有量が、2〜20質量%であることが好ましく、4〜15質量%であることがより好ましい。光重合開始剤を2種以上組み合わせて用いる場合には、光重合開始剤の合計の含有量が上記の範囲内であることが好ましい。
(他の成分)
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物は、更に他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、顔料や、顔料と共に用いられる顔料分散剤、シリコン系界面活性剤等を含む界面活性剤、可塑剤、表面調整剤、紫外線防止剤、光安定化剤、酸化防止剤、増感剤等が挙げられる。
中でも顔料を含有することにより、本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを所望の色に調整することができる。
(1)顔料
本発明において顔料は、従来インクジェットインクに使用されている顔料、例えば、酸化チタン、炭酸カルシウム、マイクロシリカ等の無彩色の無機顔料、又は有彩色の有機顔料、アルミペースト、マイカ等が挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。具体的な有機顔料としては、例えば、不溶性アゾ顔料、溶性アゾ顔料、染料からの誘導体、フタロシアニン系有機顔料、キナクリドン系有機顔料、ペリレン系有機顔料、イソインドリノン系有機顔料、ピランスロン系有機顔料、チオインジゴ系有機顔料、縮合アゾ系有機顔料、ベンズイミダゾロン系有機顔料、キノフタロン系有機顔料、イソインドリン系有機顔料、その他の顔料として、カーボンブラック、ニッケルアゾエロー、ジオキサジンバイオレット等が挙げられる。
有機顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーで例示すると、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、16、17、20、24、73、74、75、83、93、95、97、98、109、110、114、117、120、125、128、129、130、137、138、139、147、148、150、151、153、154、155、166、168、180、185、213、214
C.I.ピグメントレッド5、7、9、12、48、49、52、53、57、97、112、122、123、149、168、177、180、184、192、202、206、209、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、254、
C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、
C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50、
C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64、
C.I.ピグメントグリーン7、36、58
C.I.ピグメントブラウン23、25、26等が挙げられる。
また、前記無機顔料の具体例としては、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック、合成鉄黒、マイクロシリカ等を挙げることができる。
顔料の分散粒径は、所望の発色が可能なものであればよく、特に限定されない。用いる顔料の種類によっても異なるが、顔料の分散性及び分散安定性が良好で、充分な着色力を得る点から、メジアン径が10〜300nmの範囲内であることが好ましく、20〜250nmであることがより好ましい。メジアン径が上記の上限値以下であれば、インクジェットヘッドのノズル目詰まりを起こしにくく、再現性の高い均質な画像を得ることができ、得られる印刷物を高品質のものとすることができる。上記下限値以下では耐光性が劣ることがある。
なお、上記顔料の分散粒径は、分散体中に分散している顔料粒子の分散粒径であって、レーザー光散乱粒度分布計により測定されるものである。レーザー光散乱粒度分布計による粒径の測定としては、分散体の分散媒として用いられるモノマー等で、分散体をレーザー光散乱粒度分布計で測定可能な濃度に適宜希釈(例えば、1000倍など)し、レーザー光散乱粒度分布計(例えば、大塚電子株式会社製、濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000等)を用いて動的光散乱法により23℃にて測定することができる。
本発明において、顔料を用いる場合、その含有量は適宜調整されればよい。顔料の種類によっても異なるが、インクジェットインク組成物全体における、顔料の含有量は、分散性と着色力を両立する点から、有機顔料の場合、0.1〜20質量%が好ましく、0.2〜10質量%がより好ましい。また、分散性と着色力を両立する点から、無機顔料の場合、1〜40質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
(2)顔料分散剤
本発明において、顔料を用いる場合には、更に顔料分散剤を組み合わせて用いることが好ましい。本発明において、顔料分散剤は特に限定されない。例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、シリコン系、フッ素系等の界面活性剤を使用できる。界面活性剤の中でも、次に例示するような高分子界面活性剤(高分子分散剤)が好ましい。
高分子分散剤としては、例えば、ポリエステル系、ポリアクリル系、ポリウレタン系、ポリアミン系、ポリカプトラクトン系の主鎖を有し、側鎖に、アミノ基、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基等の極性基を有する分散剤等が挙げられる。このような高分子分散剤としては、例えば、ポリアクリル酸エステル等の不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体類;ポリアクリル酸等の不飽和カルボン酸の(共)重合体の(部分)アミン塩、(部分)アンモニウム塩や(部分)アルキルアミン塩類;水酸基含有ポリアクリル酸エステル等の水酸基含有不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体やそれらの編成物;ポリウレタン類;不飽和ポリアミド類;ポリシロキサン類;長鎖ポリアミノアミドリン酸塩類;ポリエチレンイミン誘導体(ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離カルボキシル基含有ポリエステルとの反応により得られるアミドやそれらの塩基);ポリアリルアミン誘導体(ポリアリルアミンと、遊離のカルボキシル基を有するポリエステル、ポリアミド又はエステルとアミドの共縮合物(ポリエステルアミド)の3種の化合物の中から選ばれる1種以上の化合物とを反応させて得られる反応生成物)等が挙げられる。
このような高分子分散剤としては、市販品を用いることができ、例えば、ルーブリゾール社製のSOLSPERSE、ビックケミー社製のDISPERBYK、BASF社製のEFKA等が挙げられる。
中でも、長期安定性の点からは、アミン価の小さい高分子分散剤を持つことが好ましい。具体的には、高分子分散剤のアミン価が20mgKOH/g以下であるものが好ましく、アミン価が17mgKOH/g以下であるものがより好ましい。アミン価の小さい高分子分散剤を用いることにより、アミノ基を誘因とした重合反応の促進を抑制ないし低減でき、粘度の上昇を抑えることができる。このような高分子分散剤としては、例えば、ビックケミー社製のDisperbyk−168、BYKJET−9150等が好適に用いられる。
なお、本発明においてアミン価とは、固形分1gを中和するのに必要な塩酸量に対して当量となる水酸化カリウム(KOH)の質量(mg)を表し、JIS K7237に記載の方法により測定することができる。
また、本発明においては、長期安定性の点から、顔料分散剤として、低極性の顔料親和性基と、分散媒との相溶性を有する部位とを有する高分子分散剤を好適に用いることができる。低極性の顔料親和性基を有する顔料分散剤を用いた場合には、極性基を有する顔料分散剤と比較して、顔料分散体の分散安定性が高く、粘度変化が小さいため、保存安定性に優れる。顔料親和性基とは、顔料との相互作用により、顔料表面に吸着し得る部位をいう。低極性の顔料親和性基としては、顔料と疎水性相互作用やπ−π相互作用を生じ得る基であって、特に顔料の疎水性を有する部分構造と類似の骨格を有することが好ましい。低極性の顔料親和性基としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環等の芳香族炭化水素基や、直鎖、分岐、又は環状の飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基が挙げられる。また、分散媒との相溶性を有する部位は、分散媒中で立体保護層を厚くできる点から、分散媒と共通の骨格を有するものが好ましい。
また、低極性の顔料親和性基と、分散媒との相溶性を有する部位とを有する高分子分散剤としては、保存安定性に優れる点から、アミン価が20mgKOH/g以下であることが好ましく、17mgKOH/g以下であることがより好ましい。また、低極性の顔料親和性基と、分散媒との相溶性を有する部位とを有する高分子分散剤としては、保存安定性に優れる点から、酸価が20mgKOH/g以下であることが好ましく、15mgKOH/g以下であることがより好ましく、10mgKOH/g以下であることが更により好ましい。
なお、本発明において酸価とは、固形分1gを中和するのに要するKOHの質量(mg)を表し、JIS K0070に記載の方法により測定することができる。
中でも、本発明においては、アミン価が20mgKOH/g以下、且つ酸価が20mgKOH/g以下の低極性の分散剤を用いることが好ましい。
酸性基及び塩基性基が少ない低極性の顔料分散剤を用いることで、加温した場合や、長期間保存した場合であっても極性基を誘因としたエチレン性不飽和二重結合の重合反応の促進を抑制ないし低減できると推定される。その結果、加温した場合や、長期間保存した場合であっても、粘度変化が小さいものと推定される。本発明においては、フェノチアジン類重合禁止剤、ニトロソアミン類重合禁止剤及び上記低極性の顔料分散剤を組み合わせることにより、活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物の保存安定性が特に優れたものとなる。
上記低極性の分散剤としては、中でも、アミン価が20mgKOH/g以下、且つ、酸価が10mgKOH/g以下であって、スチレン由来の繰り返し単位と、炭素数が12以上の不飽和脂肪酸由来の繰り返し単位と、エチレン性不飽和二重結合を有するポリアルキレンオキシド由来の繰り返し単位とを有する共重合体(以下単に「共重合体」と称する場合がある。)、前記共重合体のアルカリ金属塩、前記共重合体のアルカリ土類金属塩、前記共重合体のアンモニウム塩、及び前記共重合体のアミン誘導体よりなる群から選択される1種以上(以下単に「共重合体等」と称する場合がある。)であることが好ましい。
当該分散剤は、スチレン由来の芳香環が、顔料との間でπ−π相互作用を生じ、アルキレンオキサイドが分散媒となるエチレン性不飽和二重結合を有する化合物との相溶性に優れ、酸性基及び塩基性基が少ない低極性の顔料分散剤であるため、顔料同士の凝集を妨げることができる。また、当該低極性の分散剤を用いるとインクジェットヘッドのインク吐出面に対する付着も少なく、撥液性に優れるという効果も有する。
上記共重合体は、スチレン由来の繰り返し単位と、炭素数が12以上の不飽和脂肪酸由来の繰り返し単位と、エチレン性不飽和二重結合を有するポリアルキレンオキシド由来の繰り返し単位とを有するものであればよく、更に他の繰り返し単位を有していてもよい。上記特定の共重合体は、少なくともモノマーとして、(1)スチレン、(2)炭素数が12以上の不飽和脂肪酸、及び、(3)エチレン性不飽和二重結合を有するポリアルキレンオキシドを用いて、各モノマーのエチレン性不飽和二重結合により共重合されてなるものである。各モノマー由来の繰り返し単位とは、各モノマーのエチレン性不飽和二重結合が開いた構造(二重結合(C=C)が単結合(−C−C−)になった構造)を意味する。
以下、上記共重合体を構成する繰り返し単位について順に説明するが、(1)スチレンについては、その単位構造が明らかであるため、ここでの説明は省略する。
(2)炭素数が12以上の不飽和脂肪酸
炭素数が12以上の不飽和脂肪酸は、エチレン性二重結合を1つ以上有していればよく、特に限定されない。中でも、顔料の分散性及び分散安定性の点から、炭素数が12〜30の不飽和脂肪酸であることが好ましく、炭素数が15〜20の不飽和脂肪酸であることが好ましく、炭素数が16〜18の不飽和脂肪酸であることが更に好ましい。
上記不飽和脂肪酸の炭素鎖中におけるエチレン性二重結合の位置は、特に限定されない。顔料の分散性及び分散安定性の点から、末端の炭素原子、及び、カルボキシ基のα位(2位)の炭素原子がエチレン性二重結合を有しないことが好ましく、中央か中央付近、すなわち、例えば炭素数が16〜18の不飽和脂肪酸の場合、4位から12位のいずれかの隣接する炭素に二重結合を有することが好ましい。
炭素数が12以上の不飽和脂肪酸の具体例としては、例えば、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、アラキドン酸、エルカ酸、ネルボン酸等が挙げられる。中でも、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸が好ましい。
炭素数が12以上の不飽和脂肪酸は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記炭素数が12以上の不飽和脂肪酸由来の繰り返し単位は、末端のカルボキシ基がエステル化及び/又はアミド化されたものであってもよい。
エステル化に用いられるアルコールは、特に限定されない。例えば、炭素数1〜30の直鎖又は分岐のアルコールが挙げられ、更に芳香族基、脂環式基等の置換基を有していてもよく、炭素鎖中に、酸素原子等の異種原子が含まれていてもよい。エステル化に用いられるアルコールの具体例としては、例えば、2−ブトキシエタノール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、2−フェノキシエタノール、2−(2−フェノキシエトキシ)エタノール等が挙げられる。
上記アルコールは1種単独であっても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、アミド化に用いられる化合物は、特に限定されない。例えば、アンモニアの他、1級アミン、2級アミン、炭素数1〜20のアミノアルコール等が挙げられる。アミド化に用いられる化合物の具体例としては、例えば、シクロへキシルアミン、オクタデセニルアミン、ジブチルアミン、ベンジルアミン、ジイソトリデシルアミン等が挙げられる。
上記アミド化に用いられる化合物は、1種単独であっても2種以上組み合わせて用いてもよい。
カルボキシ基のエステル化及び/又はアミド化は、公知の方法を用いることができ、特に限定されない。また、カルボキシ基のエステル化及び/又はアミド化は、上記共重合体の重合前に行ってもよく、重合後に行ってもよい。
(3)エチレン性不飽和二重結合を有するポリアルキレンオキシド
エチレン性不飽和二重結合を有するポリアルキレンオキシドは、特に限定されない。中でも、顔料の分散性及び分散安定性の点から、下記一般式(1)で表されるポリアルキレンオキシアリルエーテルであることが好ましい。
一般式(1): CH=CH−CH−O−[AO]−R
一般式(1)中、AOは炭素数2〜10のアルキレンオキシ単位を表し、複数あるAOは互いに同一であっても異なっていてもよい。Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は−C(=O)−Rで表される基であって、Rは炭素数1〜6のアルキル基を表す。nはAOの繰り返し単位数を表し、nは2以上の整数である。
AOにおけるアルキレンオキシ単位としては、中でも、エチレンオキシ単位及び/又はプロピレンオキシ単位であることが好ましく、エチレンオキシ単位であることがより好ましい。
上記エチレン性不飽和二重結合を有するポリアルキレンオキシドの平均繰り返し単位数は、特に限定されない。中でも、顔料の分散性及び分散安定性の点から、不飽和脂肪酸由来の繰り返し単位1モルに対して、10〜60モルであることが好ましく、20〜50モルであることがより好ましく、30〜40モルであることが更により好ましい
エチレン性不飽和二重結合を有するポリアルキレンオキシドの具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンアリルメチルエーテル、ポリオキシプロピレンモノアリルメチルエーテル、ポリオキシプロピレンモノアリルエーテルモノアセテート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアリルメチルエーテル等が挙げられる。
エチレン性不飽和二重結合を有するポリアルキレンオキシドは1種単独であっても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
エチレン性不飽和二重結合を有するポリアルキレンオキシドは、例えば、アリルアルコールと、オキシラン環を有するアルキレンオキサイドとから、公知の方法で得ることができる。
(4)その他の繰り返し単位
顔料分散剤として用いられる、上記共重合体は、更にその他の繰り返し単位を有していてもよい。その他の繰り返し単位としては、エチレン性不飽和結合を有するジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位等が挙げられる。具体例としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等が挙げられ、無水マレイン酸、無水シトラコン酸等のような酸無水物となっていてもよい。
上記ジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位は、カルボキシ基がエステル化、アミド化、又はイミド化されたものであってもよい。エステル化に用いられるアルコール及び、アミド化又はイミド化に用いられる化合物は、特に限定されない。例えば、上記炭素数が12以上の不飽和脂肪酸におけるエステル化に用いられるアルコールやアミド化に用いられる化合物と同様のものを用いることができる。
また、その他の繰り返し単位として、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル;α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルシクロヘキサン;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ブタン酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、オクタン酸ビニル、デカン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アジピン酸ジビニル、セバシン酸ジビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニル等の脂肪族又は芳香族カルボン酸のビニルエステル類;酢酸アリル、プロピオン酸アリル、ブタン酸アリル、ヘキサン酸アリル、オクタン酸アリル、デカン酸アリル、ステアリン酸アリル、パルミチン酸アリル、サリチル酸アリル、乳酸アリル、シュウ酸ジアリル、ステアリン酸アリル、コハク酸ジアリル、グルタール酸ジアリル、アジピン酸ジアリル、ピメリン酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル等の脂肪族又は芳香族のアリルエステル類;ビニルエチルエーテル、ビニルポリエーテル等のアルキルビニルエーテル類が含まれていてもよい。
(5)上記共重合体の製造方法
顔料分散剤として用いられる上記共重合体は、上記スチレン由来の繰り返し単位と、上記炭素数が12以上の不飽和脂肪酸由来の繰り返し単位と、上記エチレン性不飽和二重結合を有するポリアルキレンオキシド由来の繰り返し単位と、必要に応じて他の繰り返し単位とを、例えば、エマルジョン、サスペンション、析出、溶液及びバルク重合のような公知の重合方法で製造することができる。中でも、フリーラジカル溶液重合及びバルク重合が好ましい。
顔料分散剤として上記の共重合体をそのまま用いてもよい。一方、上記共重合体中にカルボン酸が残存する場合には、当該カルボン酸を、水酸化アルカリ金属、水酸化アルカリ土類金属、アンモニア、又はアミノアルコールで中和することにより、前記共重合体のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、及びアミン誘導体として用いてもよい。
上記共重合体は、スチレン由来の繰り返し単位と、炭素数が12以上の不飽和脂肪酸由来の繰り返し単位と、エチレン性不飽和二重結合を有するポリアルキレンオキシド由来の繰り返し単位とが共重合されてなり、不飽和脂肪酸由来の炭化水素鎖、及び、ポリアルキレンオキシド鎖が側鎖となる櫛型構造を有することが好ましい。また、上記重合体は、各繰り返し単位がランダムに重合していてもよく、各繰り返し単位が、各々ブロックを構成したブロック共重合体であってもよい。中でも、局所的に顔料吸着が強くなり、また、立体保護層が厚くなることにより分散安定性を向上できる点から、スチレン由来の繰り返し単位及び炭素数12以上の不飽和脂肪酸由来の繰り返し単位と、ポリアルキレンオキシド由来の繰り返し単位が、それぞれ別のブロックとして配置していることが好ましい。
上記共重合体等において、各構成成分のモル比は、分散性及び分散安定性の点から、不飽和脂肪酸由来の繰り返し単位1モルに対して、スチレン由来の平均繰り返し単位数が1〜10モルであることが好ましく、2〜5モルであることがより好ましい。また、分散媒との相溶性を高め、顔料の分散性及び分散安定性を向上する点から、不飽和脂肪酸由来の繰り返し単位1モルに対して、エチレン性不飽和二重結合を有するポリアルキレンオキシド由来の平均繰り返し単位数が10〜60モルであることが好ましく、20〜50モルであることがより好ましく、30〜40モルであることが更により好ましい。繰り返し単位数を上記範囲内とすることにより、分散媒との相溶性を高め、分散媒中でポリアルキレンオキシド鎖が広がり、顔料の分散性及び分散安定性を向上することができる。
また、上記共重合体等分子量は特に限定されない。中でも、顔料の分散性、分散安定性、顔料分散液の粘度の点から、重量平均分子量が5000〜30000であることが好ましく、8000〜20000であることがより好ましく、10000〜15000であることが更により好ましい。なお、ここでの重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定される標準ポリスチレン換算で求めたものである。
また、上記共重合体等は、本発明の効果を損なわない範囲で、酸性基又は塩基性基を有していてもよいが含有量が少ない方が好ましい。なお、本発明において酸性基とは、水中でHを放出し酸性を示す基のことをいい、例えば、カルボキシ基、スルホ基等が挙げられる。また本発明において塩基性基とは、水中でHを受け取り塩基性を示す基のことをいい、例えば、アミノ基等が挙げられる。
酸性基又は塩基性基の含有量は、当該共重合体等中に、40質量%以下であることが好ましく、更に30質量%以下であることがより好ましい。
上記共重合体等として、例えば、ビックケミー社製のBYKJET−9150等を用いることができる。
本発明においては、上記の顔料分散剤を1種単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。本発明において、顔料分散剤を用いる場合、その含有量は特に限定されない。顔料の種類によっても異なるが、顔料100質量部に対して顔料分散剤は、通常20〜60質量部であり、分散性及び分散安定性の点から、25〜55質量部が好ましく、30〜50質量部がより好ましい。
(活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物の粘度及び表面張力)
本発明のインクジェットインク組成物の粘度は、インクジェットの吐出性、吐出安定性の点から、40℃での粘度が5〜20mPa・sであることが好ましい。
また、本発明のインクジェットインク組成物の表面張力は、インクジェットの吐出性、吐出安定性の点から、40℃での表面張力が20〜40mN/mであることが好ましい。
(活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物の製造方法)
本発明に係る活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物の製造方法は、特に限定されない。
インクジェットインク組成物が顔料を含有しない場合には、例えば、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物に、重合禁止剤と、光重合開始剤を加えて、均一になるまで攪拌することによりインクジェットインク組成物を得ることができる。
一方、インクジェットインク組成物が顔料を含有する場合には、通常、顔料分散工程を有する。
顔料分散工程は、例えば、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物に、顔料と、必要に応じて顔料分散剤を加えて、ディゾルバー等で攪拌した後、ビーズミルを用いて、ジルコニアビーズ等で分散することが挙げられる。必要に応じて、ビーズ径が比較的大きめなジルコニアビーズ等を用いて上記分散の前に予備分散をしてもよい。得られた分散体に、重合禁止剤と、光重合開始剤を加えて、均一になるまで攪拌することによりインクジェットインク組成物を得ることができる。
<印刷物>
本発明に係る印刷物は、被記録媒体上に、前記本発明に係る活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物を硬化させて形成された層を有することを特徴とする。
本発明の印刷物は、保存安定性に優れ、且つ、硬化性にも優れた前記本発明に係る活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物を用いることにより、再現性が良く、高品質なものとなる。
以下、本発明の印刷物について説明するが、活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物は前述したとおりであるため、ここでの説明は省略する。
(被記録媒体)
本発明の印刷物において、被記録媒体は特に限定されない。例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等、インク非吸収性樹脂や、合成紙、ガラス類、金属類、ゴムなどを挙げることができる。
(印刷物の製造方法)
上記印刷物の製造方法は特に限定されないが、被記録媒体上に、前記本発明に係るインクジェットインク組成物を吐出する工程、及び、吐出されたインクジェットインク組成物に活性エネルギー線を照射して、該インクジェットインク組成物を硬化させる工程を含む、インクジェット記録方法を用いることが好ましい。
以下、上記各工程について説明する。
(1)被記録媒体上に、インクジェットインク組成物を吐出する工程
本工程では、通常、インクジェット方式により被記録媒体上に、インクジェットインク組成物を吐出する。インクジェット組成物を吐出して、所望の像を描画してもよいし、比較的広範囲にクリア層を形成してもよい。本発明においては、安定性に優れ、粘度の変化が少ない前記本発明に係るインクジェットインク組成物を用いるため、吐出安定性に優れる。
(2)活性エネルギー線を照射して、インクジェットインク組成物を硬化させる工程
活性エネルギー線の線種は、上記光重合開始剤との組み合わせで、適宜選択されるものであり、特に制限されない。例えば、波長365nmの紫外線等が好適に用いられる。
活性エネルギー線の光源としては、紫外線を照射する場合には、例えば、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、低圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、紫外線レーザー、発光ダイオード(LED)等を用いることができ、特に制限されない。
インクジェットインク組成物が、被記録媒体に着弾後、直ちに活性エネルギー線を照射することが好ましい。
以下、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例中、「部」は「質量部」を表す。
(製造例1:黒色顔料分散体Aの調製)
フェノキシエチルアクリレート(SR339A、sartomer製)76部に高分子分散剤(byk168、ビックケミー製、アミン価11mgKOH/g、有効成分約30質量%)12部を溶解させ、カーボンブラック(degusa製 ブラック顔料)12部を加え、ペイントシェイカーで、1mm直径のジルコニアビーズを用いて顔料粒子径(メジアン径)が200nm以下となるように分散し、黒色顔料分散体Aを得た。粒子径は、大塚電子製 FPAR−1000によって測定した。
(製造例2:黒色顔料分散体Bの調製)
上記製造例1において、byk168の代わりに、スチレン由来の繰り返し単位と、炭素数が16及び18の不飽和脂肪酸由来の繰り返し単位と、エチレン性不飽和二重結合を有し不飽和脂肪酸由来の繰り返し単位1モルに対して10〜60モルのポリアルキレンオキシド由来の繰り返し単位とを有する共重合体、前記共重合体のアルカリ金属塩、前記共重合体のアルカリ土類金属塩、前記共重合体のアンモニウム塩、及び前記共重合体のアミン誘導体よりなる群から選択される1種以上を含む顔料分散剤(bykJET9150、ビックケミー社製、アミン価12mgKOH/g、酸価5mgKOH/g、有効成分約70質量%)5.1部を用いた以外は、製造例1と同様にして、黒色顔料分散体Bを得た。
(実施例1:活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物(1)の調製)
製造例1で得られた黒色顔料分散体Aに、エチレン性二重結合を有する化合物であるフェノキシエチルアクリレート(SR339A)、t−ブチルシクロへキシルアクリレート(LaromerTBCH、BASF社製)、及びイソボルニルアクリレート(ZA−IBXA、共栄社化学社製)と、光重合開始剤である、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(Lucirin TPO、BASF社製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(イルガキュア369、BASF社製)、及び1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュア184、BASF社製)と、シリコン系界面活性剤(Tegorad2300)を下記表1の黒色インクAの組成になるようにそれぞれ配合し、黒色インクAを調製した。次いで、重合禁止剤として、フェノチアジン類重合禁止剤であるフェノチアジン(TDP、精工化学社製)を0.02部、ニトロソアミン類重合禁止剤であるN−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩(Q−1301、和光純薬社製)を0.01部加えて攪拌した後、メンブランフィルターで濾過し、実施例1の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物(1)を得た。
Figure 0005603354
(実施例2:活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物(2)の調製)
実施例1において、TDPの配合量を0.05部とした以外は、実施例1と同様にして、実施例2の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物(2)を得た。
(実施例3:活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物(3)の調製)
実施例1において、TDPの配合量を0.1部とした以外は、実施例1と同様にして、実施例3の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物(3)を得た。
(実施例4:活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物(4)の調製)
実施例1において、TDPの配合量を0.05部とし、Q−1301の配合量を0.05部とした以外は、実施例1と同様にして、実施例4の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物(4)を得た。
(実施例5:活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物(5)の調製)
実施例1において、TDPの配合量を0.05部とし、Q−1301の配合量を0.1部とした以外は、実施例1と同様にして、実施例5の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物(5)を得た。
(比較例1:比較活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物(1)の調製)
実施例1において、TDPの配合量を0.1部とし、Q−1301を用いなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例1の比較活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物(1)を得た。
(比較例2:比較活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物(2)の調製)
実施例1において、Q−1301を用いなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例2の比較活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物(2)を得た。
(比較例3:比較活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物(3)の調製)
実施例1において、Q−1301の配合量を0.2部とし、TDPを用いなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例3の比較活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物(3)を得た。
(比較例4:比較活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物(4)の調製)
実施例1において、Q−1301の配合量を0.02部とし、TDPを用いなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例4の比較活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物(4)を得た。
(比較例5:比較活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物(5)の調製)
実施例1において、TDPの配合量を0.05部とし、Q−1301の代わりにヒンダードフェノール類重合禁止剤であるIRGANOX1010(BASF社製)を0.05部用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例5の比較活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物(5)を得た。
(比較例6:比較活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物(6)の調製)
実施例1において、TDPの配合量を0.05部とし、Q−1301の代わりにヒンダードフェノール類重合禁止剤であるIRGANOX1010(BASF社製)を0.5部用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例6の比較活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物(6)を得た。
(比較例7:比較活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物(7)の調製)
実施例1において、TDPの配合量を0.05部とし、Q−1301の代わりにヒンダードアミン類重合禁止剤であるTINUVIN292(BASF社製)を0.5部用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例7の比較活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物(7)を得た。
(比較例8:比較活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物(8)の調製)
実施例1において、TDPの配合量を0.05部とし、Q−1301の代わりにキノン類重合禁止剤であるMEHQ(精工化学社製)を0.5部用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例8の比較活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物(8)を得た。
(比較例9:比較活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物(9)の調製)
実施例1において、TDPの配合量を0.05部とし、Q−1301の代わりにキノン類重合禁止剤であるIRGASTAB UV22(BASF社製)を0.5部用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例9の比較活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物(9)を得た。
(比較例10:比較活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物(10)の調製)
実施例1において、Q−1301の配合量を0.05部とし、TDPの代わりにヒンダードアミン類重合禁止剤であるTINUVIN292(BASF社製)を0.05部用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例10の比較活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物(10)を得た。
(比較例11:比較活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物(11)の調製)
実施例1において、Q−1301の配合量を0.05部とし、TDPの代わりにヒンダードアミン類重合禁止剤であるTINUVIN292(BASF社製)を0.5部用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例11の比較活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物(11)を得た。
(比較例12:比較活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物(12)の調製)
実施例1において、Q−1301の配合量を0.05部とし、TDPの代わりにヒンダードフェノール類重合禁止剤であるIRGANOX1010を0.05部用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例12の比較活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物(12)を得た。
(実施例6:活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物(6)の調製)
実施例1において、前記表1の黒色インクBの組成になるように各成分をそれぞれ配合した以外は、実施例1と同様に黒色インクBを調製した。次いで、TDPを0.05部とし、Q−1301を0.05部とした以外は、実施例1と同様にして実施例6の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物(6)を得た。なお、表1中のV−CAPは、ISPジャパン社製、N−ビニルカプロラクタムを示す。
(実施例7:活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物(7)の調製)
実施例1において、顔料分散体Aの代わりに製造例2で得られた黒色顔料分散体Bを用い、前記表1の黒色インクCの組成になるように各成分をそれぞれ配合した以外は、実施例1と同様に黒色インクCを調製した。次いで、TDPを0.05部とし、Q−1301を0.05部とした以外は、実施例1と同様にして実施例7の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物(7)を得た。なお、表1中のBYKJET9150は、ビックケミー社製、顔料分散剤を示す。
<安定性評価>
上記実施例1〜7及び比較例1〜12で得られた活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物の粘度を、AntonPaar製AMVn粘度計を用いて40℃の条件下で測定した。
また、上記実施例1〜7及び比較例1〜12の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物を下記の2つの条件でそれぞれ保管し、保管後のインク組成物の粘度を上記と同様の方法で測定し、保管後の粘度の保管前の粘度に対する変化率を求め、安定性の評価を行った。評価結果を表2に示す。
[保管条件]
保管条件1(酸素存在下):50ccのガラス瓶にインク組成物を40cc充填し、60℃で4週間保管した。
保管条件2(無酸素雰囲気下):アルミパックにインク組成物を40cc充填し、脱気した後密封して、60℃で4週間保管した。
[安定性評価基準]
A:変化率が5%未満であった。
B:変化率が5%以上10%未満であった。
C:変化率が10%以上50%未満であった。
D:変化率が50%以上であった。
安定性評価がAであれば、当該インクジェットインク組成物は安定性が特に優れている。また、安定性評価がBであれば、当該インクジェットインク組成物は実用上問題なく使用できる。
<硬化性評価>
上記実施例1〜7及び比較例1〜12の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物をそれぞれ、インクジェットヘッド(KM512MHヘッド:コニカミノルタ製)を用いて360dpiになるようにPET原反(東洋紡績製A4300)に印字した。その後、UVランプ(LightHammer6:フュージョンUVシステムズ・ジャパン製)により積算光量30mJ/cm、ピーク照度90mW/cmとなるように紫外線照射し、塗膜を得た。結果は下記評価基準に従って判断した。評価結果を表2に示す。
[硬化性評価基準]
○:指触により、タックが確認されなかった。
×:指触により、タックが確認された。
Figure 0005603354
表2の結果から、重合禁止剤として、フェノチアジン類重合禁止剤とニトロソアミン類重合禁止剤とを組み合わせて用いた実施例1〜7のインクジェットインク組成物は、酸素存在下であっても、無酸素雰囲気下であっても、保存安定性に優れ、且つ硬化性にも優れていることが明らかとなった。
ニトロソアミン類重合禁止剤を用いない比較例1及び2と比べて、実施例1〜7は、酸素存在下での保存安定性が向上し、無酸素雰囲気下での保存安定性が著しく向上した。また、フェノチアジン類重合禁止剤を用いない比較例3及び4と比べて、実施例1〜7は、酸素存在下であっても無酸素雰囲気下であっても保存安定性が向上した。中でも、スチレン由来の繰り返し単位と、炭素数が16及び18の不飽和脂肪酸由来の繰り返し単位と、エチレン性不飽和二重結合を有し不飽和脂肪酸由来の繰り返し単位1モルに対して10〜60モルのポリアルキレンオキシド由来の繰り返し単位とを有する共重合体、前記共重合体のアルカリ金属塩、前記共重合体のアルカリ土類金属塩、前記共重合体のアンモニウム塩、及び前記共重合体のアミン誘導体よりなる群から選択される1種以上を含む顔料分散剤を用いた実施例7のインクジェットインク組成物は、特に保存安定性に優れていることがわかった。
比較例5において、ニトロソアミン類重合禁止剤の代わりに、ヒンダードフェノール類重合禁止剤を本願実施例と同様の含有量で用いたところ、無酸素雰囲気下における長期保存安定性は改善されなかった。比較例6において、特許文献1と同様の含有量でヒンダードフェノール類重合禁止剤を用いたところ、それでも無酸素雰囲気下における長期保存安定性は改善されず、硬化性は悪化した。比較例7〜9において、ニトロソアミン類重合禁止剤の代わりに、特許文献2と同様の含有量でヒンダードアミン類重合禁止剤やキノン類重合禁止剤を用いたところ、無酸素雰囲気下における長期保存安定性は改善されず、硬化性は悪化した。比較例5〜9の結果から、フェノチアジン類重合禁止剤にニトロソアミン類重合禁止剤以外の他の重合禁止剤を組み合わせても、無酸素雰囲気下における長期保存安定性は改善されないことが明らかにされた。
また、比較例10〜12の結果から、ニトロソアミン類重合禁止剤にフェノチアジン類重合禁止剤以外の他の重合禁止剤を組み合わせて用いても、酸素雰囲気下における長期保存安定性は改善されないことが明らかにされた。
フェノチアジン類重合禁止剤とニトロソアミン類重合禁止剤を組み合わせて用いた場合には、酸素存在下、及び無酸素雰囲気下のいずれの場合も粘度変化が5%未満となり、どちらか一方のみを用いた場合や、どちらか一方と他の重合禁止剤を組み合わせて用いた場合と比較して、保存安定性が格段に向上することがわかった。
(製造例3:藍色顔料分散体の調製)
上記製造例1において、カーボンブラックの代わりに、C.I.ピグメントブルー15:4(東洋インキ製造製 シアン顔料、以下、PB15:4と称する場合がある。)12部を用いた以外は製造例1と同様にして、藍色顔料分散体を得た。
(実施例8:活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物(8)の調製)
実施例1において、黒色顔料分散体の代わりに製造例3で得られた藍色顔料分散体を用い、下記表3の組成になるように各成分をそれぞれ配合し藍色インクを得た。次いで、重合禁止剤として、TDPを0.1部、ニトロソアミン系重合禁止剤であるN−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアンモニウム塩(Q−1300、和光純薬社製)を0.02部加えた以外は、実施例1と同様にして、実施例8の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物(8)を得た。
Figure 0005603354
(実施例9:活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物(9)の調製)
実施例8において、TDPの配合量を0.1部とし、Q−1300の代わりにQ−1301を0.02部とした以外は、実施例8と同様にして、実施例9の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物(9)を得た。
(実施例10:活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物(10)の調製)
実施例8において、TDPの代わりにフェノチアジン類重合禁止剤である2−メトキシフェノチアジン(2−MPTZ、SC有機化学社製)0.1部と、Q−1300の代わりにQ−1301を0.02部用いた以外は、実施例8と同様にして、実施例10の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物(10)を得た。
(実施例11:活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物(11)の調製)
実施例8において、Q−1300の代わりにニトロソアミン類重合禁止剤であるN−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩溶液(Genorad22、Rahn社製、有効成分約0.005質量%を0.5部用いた以外は、実施例8と同様にして、実施例11の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物(11)を得た。
実施例8〜11の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物について、上記と同様の方法により、安定性試験及び硬化性試験を行った。結果を表4に示す。
Figure 0005603354
表4の結果から、実施例1〜7とは顔料の種類が異なる藍色インクジェットインク組成物においても、酸素存在下、無酸素雰囲気下のいずれの環境下においても長期保存安定性に優れ、且つ、硬化性に優れていることがわかった。

Claims (4)

  1. 少なくともエチレン性不飽和二重結合を有する化合物と、重合禁止剤と、光重合開始剤とを含有し、前記重合禁止剤が、フェノチアジン類重合禁止剤とニトロソアミン類重合禁止剤とを含み、前記ニトロソアミン類重合禁止剤が、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシアミンアンモニウム塩、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシアミンセリウム塩、及びN−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシアミンナトリウム塩よりなる群から選択される1種以上であり、インクジェットインク組成物全体における、前記フェノチアジン類重合禁止剤の含有量が0.001〜0.2質量%であり、前記ニトロソアミン類重合禁止剤の含有量が0.001〜0.2質量%である、活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物。
  2. 前記光重合開始剤が、アシルフォスフィンオキサイド類、α−ヒドロキシケトン類、及びα−アミノアルキルフェノン類よりなる群から選択される1種以上を含む、請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物。
  3. 更に顔料を含有する、請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物。
  4. 被記録媒体上に、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物を硬化させて形成された層を有する印刷物。
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