JP5599069B2 - 水中堆積物流送用の吸引パイプ、水中堆積物の流送装置及びそれを用いた水中堆積物の流送方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、この吸引パイプ100を用いた水中堆積物の移送においては、水中堆積物の堆積深さが比較的浅い場合には、側部吸引孔155及び下部吸引孔154から水中堆積物を効率良く吸引することが可能であるものの、水中堆積物の堆積深さが深くなると、水中堆積物の吸引が困難となるという問題があった。
先ず、水中堆積物の堆積深さが比較的深い状況を設定した模擬試験において、出願人が先に出願した特許文献3に開示される吸引パイプを用いて水中堆積物の流送を行うと、流送を開始後、形成されるすり鉢状の窪みが浅い初期の段階では、水中堆積物の流送が可能であるものの、吸引パイプの折返し部に穿設される側部吸引孔及び下部吸引孔から水中堆積物の吸引が進むにつれ、吸引パイプの折返し部側が水中堆積物の中に潜行し、その潜行深さが水中堆積物の表面からある程度深くなった段階に至ると、側部吸引孔及び下部吸引孔からの水中堆積物の吸引がなくなり、吸引パイプからは、取水口から取水される水のみが流送される状況となることが確認された。
そのため、すり鉢状の窪みが深くなるにつれ、水中堆積物の吸引がなくなる問題を新たな技術的課題として、これを解決するべく本発明者らが試行錯誤した結果、折返し部で折り返された吸引パイプのシート部材が接着された部分から取水口に向けて延在する延在部において、その延在方向の下部に複数の孔を並設すると、吸引パイプの折返し部側が水中堆積物の中に潜行し、すり鉢状の窪みが深く進行した段階に至っても、安定して水中堆積物を吸引可能であることの知見が得られた。
このような吸引が可能となる要因としては、必ずしも定かではないが、以下のように推察される。即ち、すり鉢状の窪みが深く進行した段階において、吸引パイプに設けられる吸引孔が水中堆積物中に深く潜行した位置における吸引孔だけであると、管材内に水流を形成する負圧は維持されるものの、吸引孔近傍において水中堆積物を吸引するだけの負圧がなくなり、取水口から取り入れられる水のみが流送される。そのため、水中堆積物の吸引過程において、水中堆積物に深く潜行しない位置に吸引孔が常に存在するよう、シート部材が密着された部分から取水口に向けて延在する管材の延在部の延在方向に複数の孔を並設すると、水中堆積物に深く潜行していない位置の孔の働きにより、管材内に水中堆積物を吸引する負圧が維持され、吸引パイプの先端側に設けられる側部吸引孔をはじめとする水中堆積物に潜行した位置の各孔からの水中堆積物の吸引が補助されることとなり、水中堆積物の堆積深さが深い場合であっても、安定して水中堆積物の吸引・流送が可能になるものと推察される。
<1> 閉鎖的な水域の水底に堆積した水中堆積物を水と一緒に吸引して他の領域に流送するための水中堆積物流送用の吸引パイプであって、両端が開口した可撓性を有する管材から形成され、該管材の一端が水の取り入れ口である取水口とされ、他端が前記水中堆積物及び前記水を吐き出す吐出口側の接続端とされ、前記両端の中間部には、前記管材を折返して固定した折返し部が形成され、この折返し部を含む前記管材の水底側に位置する下部にシート部材が密着されており、前記シート部材及び該シート部材が密着される部分の前記管材には、下部吸引孔が連穿されるとともに、前記シート部材より水面側の上方にあって前記折返し部の先端部分にあたる前記管材の側部には、側部吸引孔が穿設され、更に、前記シート部材が密着された部分から前記取水口に向けて延在する前記管材の延在部が、前記吸引パイプによる吸引とともに変化する前記水中堆積物の形状に追随して変形可能な可撓性を有し、かつ、前記延在部の下部側には、その延在方向に前記下部吸引孔及び前記側部吸引孔の吸引を補助する複数の吸引補助孔が並設されていることを特徴とする水中堆積物流送用の吸引パイプ。
<2> 折返し部のある管材の下部が切り欠かれ、この切り欠かれた部分にシート部材が密着される前記<1>に記載の水中堆積物流送用の吸引パイプ。
<3> 吸引補助孔の孔径が、管材の管径をdとしたとき、0.2d〜0.7dである前記<1>から<2>のいずれかに記載の水中堆積物流送用の吸引パイプ。
<4> 管材の延在部に吸引補助孔を並設する間隔が、管材の管径をdとしたとき、2d〜5dである前記<1>から<3>のいずれかに記載の水中堆積物流送用の吸引パイプ。
<5> シート部材の外縁部には、その縁沿いに水中堆積物の表面形状の変化に追随可能な可撓性を有する錘が配設される前記<1>から<4>のいずれかに記載の水中堆積物流送用の吸引パイプ。
<6> 折返し部の先端部分からのシート部材の張出し長さが、管材の管径をdとしたとき、2.5d以下である前記<1>から<5>に記載の水中堆積物流送用の吸引パイプ。
<7> 折返し部の側面部分からのシート部材の張出し長さが、管材の管径をdとしたとき、1d〜3dであり、前記シート部材の前記管材の長手方向に沿った長さが、5d〜15dである前記<1>から<6>のいずれかに記載の水中堆積物流送用の吸引パイプ。
<8> 水中堆積物の堆積深さを予め把握し、その深さ及び前記水中堆積物の水中安息角から吸引終了時に前記水中堆積物に形成されるすり鉢状の窪みの最大形状を割り出して算出される前記最大形状の斜面長さに対し、延在部の管長が長く設定されるとともに、その長く設定された部分又はその部分の近傍まで吸引補助孔が並設される前記<1>から前記<7>のいずれかに記載の水中堆積物流送用の吸引パイプ。
<9> 取水口に屈曲したエルボー管が接続され、該エルボー管の開口端が上向きに設置される前記<1>から<8>のいずれかに記載の水中堆積物流送用の吸引パイプ。
<10> 閉鎖的な水域の水底に堆積した水中堆積物を水と一緒に吸引して他の領域に流送する水中堆積物の流送装置であって、前記<1>から<9>のいずれかに記載の吸引パイプと、該吸引パイプの管内に前記水中堆積物を吸引するための水流を発生させる水流発生手段と、を有することを特徴とする水中堆積物の流送装置。
<11> 前記<10>に記載の水中堆積物流送装置を用い、閉鎖的な水域の水底に堆積した水中堆積物を水と一緒に吸引して他の領域に流送する水中堆積物の流送方法であって、吸引パイプを前記水中堆積物の上に設置し、水流発生手段で前記吸引パイプの管内に水流を発生させ、その水流で前記吸引パイプの管内を負圧にすることにより、下部吸引孔、側部吸引孔及び吸引補助孔から前記水と一緒に前記水中堆積物を吸引させ、その負圧で前記吸引パイプの折返し部を先端として前記水中堆積物に潜行させ、該先端を中心に前記水中堆積物にすり鉢状の窪みを形成しながら前記水中堆積物を浚渫することを特徴とする水中堆積物の流送方法。
先ず、本発明に係る水中堆積物の流送装置の実施の形態について図3〜5を用いて説明する。図3〜5は、本発明に係る水中堆積物の流送装置の一実施の形態である流送装置の概略構成と、その浚渫作業の進行状況を鉛直断面で示す説明図であり、図3は、吸引開始前を、図4は、吸引作業中を、図5は、吸引終了時を示し、各図の(A)は、鉛直断面図、(B)は、平面図をそれぞれ示している。
なお、流送管2は、必ずしもダムDを貫通する必要はなく、ダムDの上端の上方に迂回するように配管されていても構わないが、サイホン現象を利用する場合には、取水口2aより所定の水頭圧が得られる分だけ上方に迂回して下流域B側へ配管される必要がある。
なお、吐出ゲート40は、勿論、バルブなどの調整弁であってもよく、流送管2の管内の有効開口面積を調整可能な機構であればよい。
次に、本発明に係る吸引パイプの一実施の形態について、図6〜図11を用いて説明する。図6は、本発明の一実施の形態に係る吸引パイプの平面図、図7は、図6に示す吸引パイプの側面図、図8は、図6に示す吸引パイプの折返し部を主に示す拡大平面図、図9は、図8に示す折返し部の底面図、図10は、図6に示す折返し部のX−X線切断端面図、図11は、図6に示す折返し部の先端部分の側面図である。
なお、折返し部52の管材の折返し形状は、平面視で楕円形や円形であってもよく、取水口2aと連通した管材が折返し固定されていればよい。
また、シート部材53は、管本体50の管径をdとして、図6〜8に示す管本体50の長手方向に沿った長さL1が5d〜15d、折返し部52の先端52aからの張出し長さL2が2.5d以下、図6,8に示す折返し部52の側面部分からの張出し長さL3が1d〜3dの大きさに設定されている。
L1及びL3の大きさとしては、模型実験等から管径dに対する水中堆積物Sの吸引量が最も多くなるように試行錯誤して設定されたものであり、シート部材53が水中堆積物Sの表面形状の変化に追随して吸引力を維持し続けることができるとともに、吸引パイプ5が水中堆積物Sに潜行する(潜り込む)のを妨げない最適な大きさとなっている。
また、L2が2.5d以下であると、シート部材53の折返し部52の先端52aからの張出し部分が、側部吸引孔55の吸引力で捲れ上がって側部吸引孔55を塞いでしまうおそれがなくなる。
また、L2としては、1/3d以下が特に好ましい。L2の長さが1/3dを超える場合、水中堆積物の堆積状況によっては、シート部材53の前記張出し部分が依然として側部吸引孔55を塞いでしまうおそれがあり、1/3d以下とすることで、より確実に側部吸引孔55の塞ぎ込みを抑制することができる。
なお、変形例として後述する、管本体50’の下部を切り欠いてシート部材53’を配する吸引パイプ5’(図12及び図13参照)においては、シート部材53’が管本体50’の下部に安定的に配されるため、L2の長さが1/3dを超える場合であっても、側部吸引孔55の塞ぎ込みを抑制することができる。
勿論、この錘56は、チェーン材に限られるものではなく、例えば、シート部材53の縁の周りに小さな所定間隔を空けて取り付けられたトビトビの錘などでもよく、水中堆積物Sの表面形状の変化に追随可能な可撓性を有し、シート部材53の縁を押えて下部吸引孔54の吸引力を密封できる錘であればよい。
なお、延在部60に対して吸引補助孔61を並設する箇所としては、下部側であれば特に制限はなく、具体的には、管状の延在部60を半割りしたときに、水底側であればよい。
このように延在部60を設定することで、水中堆積物Sの吸引作業の進行状況に応じて形状が変化するすり鉢状の窪みSaに対して、いずれかの吸引補助孔61が常に水中堆積物S中に潜り込まない位置に存在させることができ、潜行した位置に存在する各孔に対する水中堆積物Sの吸引補助を期待することができる。
また、延在部60の端部をなす取水口2aがすり鉢状の窪みSaより常に外に設置されていることとなり、崩落土砂等が詰まって吸引パイプ5の管内の水流がストップしてしますことを抑制することができる。
なお、D1は、以下の手順で設定することができる。先ず、水中堆積物Sの堆積深さT1をボーリング調査等で直接測定したり、土砂堆積の年平均の厚さなどから予測したりするなどして何らかの方法で予め把握しておく。水中堆積物Sの水中安息角θは、水中堆積物Sの組成などからある程度予測がつくので、図5に示すように、堆積深さT1と水中安息角θとから吸引終了時に形成されるすり鉢状の窪みSaの最大形状を割り出す。次に、そのすり鉢状の窪みSaの最大形状の斜面長さD2を算出する。そして、D1が斜面長さD2より長くなるよう設定する。
また、延在部60に吸引補助孔61を並設する間隔p(図6参照)としては、2d〜5dの範囲とされることが好ましい。即ち、吸引補助孔61は、延在部60の延在方向になるべく密に並設されることが好ましく、間隔pが5dを超えて疎になると、吸引作業が進行するにつれて、水中堆積物Sに潜り込まない位置に存在する数が少なくなり、十分な吸引補助の働きを確保できなくなることがあり、間隔pが2d未満で密に過ぎると、吸引パイプ61の強度が損なわれるおそれがある。
前記実施の形態の変形例として、吸引パイプの他の実施の形態を図12,13に示す。図12は、この実施の形態に係る吸引パイプの平面図であり、図13は、その側面図である。
この変形例に係る吸引パイプ5’では、折返し部52’のある管本体50’の下部が切り欠かれ、この切り欠かれた部分にシート部材53’が密着される構成とされる。
このように構成することで、吸引の初期段階において、すり鉢状の窪みSaの表面形状の変化に対し、安定した状態で追随し易くなるとともに、その後、折返し部52’のある先端側から吸引パイプ5’が水中堆積物Sに潜行し易くすることができる。
なお、これ以外の構成については、吸引パイプ50と同様の構成であるため、説明を省略する。
次に、流送装置1の動作及び水中堆積物の流送方法について、図3〜図5を用いて説明する。先ず、図3に示すように、流送管2の先端部分である吸引パイプ5をダム貯水池Aの底に溜まった水中堆積物Sの上に設置する。そして、水流発生手段3で吸引パイプ5(流送管2)の管内に水流を発生させる。水流が発生すると吸引パイプ5(流送管2)の管内は、周りと比べて負圧となるため、下部吸引孔54が穿設されているシート部材53が水中堆積物Sに吸い付きこれと密着して、水中堆積物Sの吸引が開始される。このとき、取水口2aからは、水流のもととなる清水(水中堆積物Sを含まないダム貯水池Aの水)を取水され、吐出口2bからは、水中堆積物Sと水との混合物を下流域Bへ排出される。
この際、側部吸引孔55をはじめとする水中堆積物S中に潜行する位置における各吸引孔に対し、水中堆積物Sに深く潜行しない位置に吸引補助孔61が常に存在することで、水中堆積物Sに潜行する位置の各吸引孔による吸引が補助され、吸引パイプ5からの水中堆積物Sの吸引がストップすることなく、すり鉢状の窪みSaが成長してゆく。
本発明の実施例との比較を行うための比較例として、図1及び図2に示す吸引パイプ100と同様の構成からなる吸引パイプを作製した。
この吸引パイプにおいては、後述する水中堆積物の流送実験のために作製した水槽の大きさに合わせ、管材の管径を10cmとし、折返し部から吐出口側の接続端までの管材長さを4mとし、折返し部から取水口までの管材長さを4m弱とし、取水口に接続されるエルボー管の湾曲高さを底部から40cmとした。ここで、シート部材が密着された部分から取水口に向けて延在する管材の延在部の長さは、水中堆積物の堆積深さと水中堆積物の水中安息角に基づき、吸引終了時に水中堆積物に形成されるすり鉢状の窪みの最大形状を割り出して算出される、該最大形状の斜面長さよりも長くなるように設定した。
なお、シート部材の大きさは、管材の長手方向における長さを1mとし、幅を60cmとした。また、この吸引パイプに穿設される側部吸引孔の孔径を33mm、下部吸引孔の孔径を45mmとした。
閉鎖水域のモデルとして、実際の閉鎖水域から中規模程度に縮尺した模擬実験水槽を準備した。模擬実験水槽の大きさは、長さ7.5m、幅7.5m、深さ3.5mとした。
この模擬実験水槽に水と水中堆積物とを流し入れ、表面が略水平で、堆積深さが2mとなるように水中堆積物を調整し、水面高さが水中堆積物の表面に対し、1.3m程度高くなるように調整した。
また、この実験系では、模擬実験水槽の側面上部に流送管を貫通させ、その流送管の一端を吸引パイプの接続端と接続するため模擬実験水槽の内部に配置し、他端(吐出口)を吸引パイプから吸引される水中堆積物及び水を吐出すため模擬実験水槽の外部に配置し、同時に水位差(高低差)を利用して水流が形成されるように流送管の配管調整を行った。
この状態で流送管の吐出ゲートを開いて吸引パイプ及び流送管内に水流を形成させ、吸引パイプから流送管を介して模擬実験水槽内の水中堆積物を水とともに模擬実験水槽外に流送する水中堆積物の流送実験を行った。その結果を図14に示す。
この図14に示されるように、比較例に係る吸引パイプを用いた水中堆積物の流送実験においては、水中堆積物にすり鉢状の窪みを形成するように水中堆積物を吸引・流送することができているものの、すり鉢状の窪みが最深部で標高−125.6cmにとどまり、水中堆積物の堆積深さである−200cmまで到達しない結果となった。
この実験では、吸引パイプの先端が模擬実験水槽の底面近くまで潜行していたことが確認され、その上方に60cm以上の水中堆積物が残存する状態であったが、すり鉢状の窪みが最深部で標高−125.6cmとなった時点で、水中堆積物の吸引が確認されなくなり、水のみの流送となることが確認された。
比較例の吸引パイプにおいて、シート部材が密着された部分から取水口に向けて延在する管材の延在部の下部側に、その延在方向にかけて複数の吸引補助孔を並設したこと以外は、略同様の構成として、実施例に係る吸引パイプを作製した。なお、その他の相違点としてこの実施例に係る吸引パイプにおいては、折返し部を有する管材の下部を切り欠かずに、シート部材を密着させることとし、折返し部から取水口に向けて2つの下部吸引孔を増設した(図6参照)。
また、吸引パイプにおける管材の管径と、折返し部から取水口までの管材長さとの関係から、吸引補助孔の孔径を4.5cm(管材の管径(10cm)をdとして、0.45d)とし、吸引補助孔を設ける間隔を25cm(管材の管径(10cm)をdとして、2.5d)とし、更に、この間隔で10箇所に吸引補助孔を並設し、最も取水口に近い位置に穿設される吸引補助孔がすり鉢状の窪みの最大形状の斜面長さよりも長く設定された管材延在部の部分に穿設されるように設定した。
模擬実験水槽に対し、比較例に係る吸引パイプと同様に実施例に係る吸引パイプを設置し、実施例に係る吸引パイプを用いた水中堆積物の流送実験を行った。その結果を図15に示す。
この図15に示されるように、実施例に係る吸引パイプを用いた水中堆積物の流送実験においては、水中堆積物にすり鉢状の窪みを形成するように水中堆積物を吸引・流送することができ、更に、すり鉢状の窪みが最深部で−195.0cmに到達し、水中堆積物の堆積深さである−200cmに略到達する結果となった。なお、すり鉢状の窪みが水中堆積物の堆積深さに到達しなかったのは、吸引パイプの先端側が模擬実験水槽の底面に到達したためであり、水中堆積物の堆積深さが−200cmを超える場合であっても、吸引パイプの先端が更に深い位置に潜行することで、その深さにおける水中堆積物の吸引・流送を十分期待することができる。
これらの結果から、比較例に係る吸引パイプを用いた水中堆積物の流送実験と比べて実施例に係る吸引パイプを用いた水中体積物の流送実験の方が、より深い位置の水中堆積物を吸引・流送可能であることが確認され、吸引パイプに吸引補助孔を設けると、水中堆積物の堆積深さが深い閉鎖水域中の水中堆積物の吸引が困難となる問題を解決できることが明らかとなった。
このような結果が得られる要因としては、以下のように推察される。即ち、水中堆積物の吸引を開始し、すり鉢状の窪みが形成されるにつれ、折返し部のある先端側から吸引パイプが水中堆積物の中に潜行していくが、この場合に吸引パイプに設けられる吸引孔が水中堆積物中に深く潜行した位置における吸引孔だけであると、管材内に水流を形成する負圧は維持されるものの、吸引孔近傍において水中堆積物を吸引するだけの負圧がなくなり、取水口から取り入れられる水のみが流送される。そのため、水中堆積物の吸引過程において、水中堆積物に深く潜行しない位置に吸引孔が常に存在するよう、シート部材が密着された部分から取水口に向けて延在する管材の延在部の延在方向に複数の吸引補助孔を並設すると、水中堆積物に深く潜行していない位置の吸引補助孔の働きにより、管材内に水中堆積物を吸引する負圧が維持され、吸引パイプの先端側に設けられる側部吸引孔をはじめとする水中堆積物に潜行した位置の各孔からの水中堆積物の吸引が補助されることとなり、水中堆積物の堆積深さが深い場合であっても、安定して水中堆積物の吸引・流送が可能になるものと推察される。
2,102 流送管
2a,2a’,102a,102a’ 取水口
2b 吐出口
3 水流発生手段
30 流体ポンプ
4 流量制御手段
40 吐出ゲート
5,5’,100 吸引パイプ
50,50’,150 管本体
51,151 接続端
52,52’,152 折返し部
52a 先端
53,53’,153 シート部材
54,54’,154 下部吸引孔
55,155 側部吸引孔
56 錘
57,157 エルボー管
60 延在部
61 吸引補助孔
S 水中堆積物
Sa すり鉢状の窪み
D ダム
A ダム貯水池(閉鎖的な水域)
B 下流域(他の領域)
Claims (11)
- 閉鎖的な水域の水底に堆積した水中堆積物を水と一緒に吸引して他の領域に流送するための水中堆積物流送用の吸引パイプであって、
両端が開口した可撓性を有する管材から形成され、該管材の一端が水の取り入れ口である取水口とされ、他端が前記水中堆積物及び前記水を吐き出す吐出口側の接続端とされ、
前記両端の中間部には、前記管材を折返して固定した折返し部が形成され、この折返し部を含む前記管材の水底側に位置する下部にシート部材が密着されており、
前記シート部材及び該シート部材が密着される部分の前記管材には、下部吸引孔が連穿されるとともに、前記シート部材より水面側の上方にあって前記折返し部の先端部分にあたる前記管材の側部には、側部吸引孔が穿設され、
更に、前記シート部材が密着された部分から前記取水口に向けて延在する前記管材の延在部が、前記吸引パイプによる吸引とともに変化する前記水中堆積物の形状に追随して変形可能な可撓性を有し、かつ、前記延在部の下部側には、その延在方向に前記下部吸引孔及び前記側部吸引孔の吸引を補助する複数の吸引補助孔が並設されていることを特徴とする水中堆積物流送用の吸引パイプ。 - 折返し部のある管材の下部が切り欠かれ、この切り欠かれた部分にシート部材が密着される請求項1に記載の水中堆積物流送用の吸引パイプ。
- 吸引補助孔の孔径が、管材の管径をdとしたとき、0.2d〜0.7dである請求項1から2のいずれかに記載の水中堆積物流送用の吸引パイプ。
- 管材の延在部に吸引補助孔を並設する間隔が、管材の管径をdとしたとき、2d〜5dである請求項1から3のいずれかに記載の水中堆積物流送用の吸引パイプ。
- シート部材の外縁部には、その縁沿いに水中堆積物の表面形状の変化に追随可能な可撓性を有する錘が配設される請求項1から4のいずれかに記載の水中堆積物流送用の吸引パイプ。
- 折返し部の先端部分からのシート部材の張出し長さが、管材の管径をdとしたとき、2.5d以下である請求項1から5に記載の水中堆積物流送用の吸引パイプ。
- 折返し部の側面部分からのシート部材の張出し長さが、管材の管径をdとしたとき、1d〜3dであり、前記シート部材の前記管材の長手方向に沿った長さが、5d〜15dである請求項1から6のいずれかに記載の水中堆積物流送用の吸引パイプ。
- 水中堆積物の堆積深さを予め把握し、その深さ及び前記水中堆積物の水中安息角から吸引終了時に前記水中堆積物に形成されるすり鉢状の窪みの最大形状を割り出して算出される前記最大形状の斜面長さに対し、延在部の管長が長く設定されるとともに、その長く設定された部分又はその部分の近傍まで吸引補助孔が並設される請求項1から7のいずれかに記載の水中堆積物流送用の吸引パイプ。
- 取水口に屈曲したエルボー管が接続され、該エルボー管の開口端が上向きに設置される請求項1から8のいずれかに記載の水中堆積物流送用の吸引パイプ。
- 閉鎖的な水域の水底に堆積した水中堆積物を水と一緒に吸引して他の領域に流送する水中堆積物の流送装置であって、
請求項1から9のいずれかに記載の吸引パイプと、該吸引パイプの管内に前記水中堆積物を吸引するための水流を発生させる水流発生手段と、を有することを特徴とする水中堆積物の流送装置。 - 請求項10に記載の水中堆積物流送装置を用い、閉鎖的な水域の水底に堆積した水中堆積物を水と一緒に吸引して他の領域に流送する水中堆積物の流送方法であって、
吸引パイプを前記水中堆積物の上に設置し、水流発生手段で前記吸引パイプの管内に水流を発生させ、その水流で前記吸引パイプの管内を負圧にすることにより、下部吸引孔、側部吸引孔及び吸引補助孔から前記水と一緒に前記水中堆積物を吸引させ、その負圧で前記吸引パイプの折返し部を先端として前記水中堆積物に潜行させ、該先端を中心に前記水中堆積物にすり鉢状の窪みを形成しながら前記水中堆積物を浚渫することを特徴とする水中堆積物の流送方法。
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