JP5594632B2 - 超伝導磁石用シミング装置 - Google Patents

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Description

本発明は、超伝導磁石の磁場について、核磁気共鳴(NMR)測定を高精度に行うときに要求されるような、均一度が大きくて安定度が高い磁場空間を得るための技術に関するものである。
超伝導磁石は、一般的には均一で安定した磁場(静磁場)を発生できるものとして知られているが、その磁場の均一度や安定度はそのままでは高分解能NMR測定に必要な精度を満たさない。非特許文献1で公知のように、高分解能NMR測定においては、測定精度への要求にも依存するが代表的な例として、静磁場の乱れは1cm3の空間内で0.01ppm以下であることが要求され、また、静磁場の時間変化は1時間に0.01ppm以下であることが要求される。磁場の大きさを表す単位として、しばしば、超伝導磁石の発生する静磁場の大きさとの比(ppm=1/1000000)が用いられる。
このためNMR用超伝導磁石においては、特許文献1で公知のように、磁場強度及び磁場均一度の補正が、超伝導磁石を一体となって設定されるシムコイルを用いて行われる。シムコイルにその動作条件を設定することをシムの設定と呼び、シムに設定される各種のパラメータをシムの項と呼ぶ。シムの項には、補正すべき磁場値や磁場勾配の方向や関数形に対応して、Z0(静磁場と平行方向の磁場値の補正)、Z1(静磁場と平行方向の磁場勾配の一次関数による補正)、X1(静磁場と垂直方向の磁場勾配の一次関数による補正)、Y1(静磁場とX1とに垂直方向の磁場勾配の一次関数による補正)などがある。すなわち、シムの項とは、測定空間における補正磁場を、その方向(X、Y、Z、XZ、YZ、・・・)とその方向における近似の次数(0、1、2、・・・)で表したものである。
なお、設定できるシムの項の数や種類は用いる装置に依存して決まっている。また、一般に、シムの設定値とは設定できるシムの項を組み合わせた配列(Z0、Z1、Z2、Z3、X1、Y1、XZ、YZ、・・・)のことをいう。
このように、NMR用超伝導磁石においては、シムコイルを用いて、磁場の絶対値(0次の項)や各種の不均一性(1次以上の項)の補正が一般的に行われる。なお、シムコイルにより磁場の安定度や均一度を制御することをシミングと呼ぶ。
シムコイルによって形成される磁場は超伝導コイルと相互作用しており、測定空間の磁場は、シムコイルの発生する磁場の値の履歴に対応して時間に依存した複雑な変動を示す。例えば、プローブの変更に伴ってシムの設定値を変化させると、超伝導磁石の磁場が安定するまでには、一週間以上の長時間を要することがある。
この現象は、強磁場NMR用超伝導磁石、その中でも我々が開発し用いている世界最高水準の磁場を発生する固体NMR用超伝導磁石(1H−930MHz=21.8T)において特に顕著に観察され、NMR測定に悪影響を及ぼしている。図1には、当該超伝導磁石において、実際にシムのZ0の項に、時刻(t1)において階段関数状の設定をし、また、時刻(t2)において矩形波状の値を設定したときの、磁場空間における磁場の経時変化をNMRによって測定した結果が示されている。図中の実線は実測値を示し、縦軸は磁場の値、横軸は時間を示すが、時刻(t1)と(t2)の間において、本来ならば水平であるべき磁場の値が、時間に依存して大いに変動している様子が窺われる。
NMR測定に際しては、プローブは測定核種ごとに変更されるので、それに伴ってシムの設定値も断続的に変化する。プローブの変更は、特に固体NMR測定において、しばしば行われる。すなわち、前回の磁場変動が緩和し切らないうちにシムに新たな設定がなされ、それに伴う磁場変動が重畳して生じる状況が、しばしば発生する。
磁場変動が発生する原理は、シムコイルによって発生した磁束が、磁石の超伝導体内をピン止めとホッピングとを繰り返しながら移動するのに、時間がかかるためであると推察されている。磁束の分布の非平衡状態が緩和して平衡状態に達すると、磁束の移動は終了し、磁場は安定する。この効果の大きさは用いられている超伝導体の性質に依存し、強磁場用の磁石であるほど顕著ではあるが、原理的には第二種超伝導体を用いて強磁場を発生する超伝導磁石においては、程度の大小はあっても、同様の効果が生じているものと思われる。この現象への対策は、今後、NMRの磁場がさらに強磁場化されて行くと、必須の技術となることが予想される。
測定対象が溶液試料である溶液NMR測定の場合は、溶媒として例えば重クロロホルムなどの重水素化された溶媒を用い、重水素のNMR信号を用いてシムの設定を制御する、NMR磁場ロックと呼ばれる手法が一般的に用いられ、上記の磁場変動を補償することが出来る。ところが、測定対象が固体である固体NMR測定においては、試料が溶媒を含まないためこの手法は使えない。このように、本発明は固体高分解能NMR測定に用いる超伝導磁石を主たる対象としている。但し、溶液NMR測定においても、本発明とNMR磁場ロックとを重ねて用いることにより、NMR磁場ロック機能に対する負担が軽減され、より高精度な測定が実現する。また、Z0以外の項に対する補償としては、本発明がもっとも有効な補償手段を与える。
本明細書においては、主に固体高分解能NMR測定に即して本発明の内容を説明しているが、本発明の応用はこれに限らない。
本発明は、核磁気共鳴画像法(MRI)に代表されるような、超伝導磁石の磁場の安定化が要求される用途でシムコイルによるシミングが可能なシステムに応用可能である。MRIの場合は変調用のコイルによって各種の磁場変調が行われるが、それらの各種の任意波形状の変調磁場の印加が超伝導磁石に与える影響を本発明により補償することができる。
また、溶液NMR測定に際しても、傾斜磁場用のシムコイルを用いて傾斜磁場を加えるような実験(グラジエントシム法)を行う場合、本発明を適用することにより、断続的な傾斜磁場の印加が超伝導磁石に与える影響を補償することができる。
本発明は、このような実情に鑑み、強磁場超伝導磁石において、超伝導コイルとシムコイルとの相互作用によって生じる磁場変動を補償し、測定空間の磁場を安定化することを目的とする。
本発明は、NMR用超伝導磁石において、為されたシムの設定の履歴を逐次記録しておき、その記録に応じた補償値を特徴的な関数を用いて時々刻々と動的に算出し、そのようにして得られた補償値を用いてシムコイルを動的に制御することにより、シムの設定に起因する超伝導磁石の磁場変動を補償し磁場を安定化するシミング方法、および、シミング装置である。シミング方法、および、シミング装置を総称してシミングシステムと呼ぶ。
ここで、シムの設定を為すとは、シムに対して設定すべき新たな設定値を与えるこという。シムの設定が為されると、シムの設定は、シムの設定が為される以前の状態を始状態とし、新たに為された設定に基づく状態を終状態として、始状態から終状態へと遷移する。始状態から終状態への遷移の過程では、始状態と終状態とを時間軸に沿って結ぶ任意波形の曲線が許される。始状態と終状態とを結ぶ波形の形または質的側面を特徴付けるものを、シム設定の動作の種類と言う。
最も単純なシム設定の動作の種類は、始状態と終状態とを無限小の時間で直線状に結ぶ階段関数である。動作の種類によっては、始状態と終状態とが同じであっても、その遷移の過程に意味をもつ場合がある。その遷移の過程の量的側面を特徴付けるものを、設定の動作量という。動作の種類が階段関数の場合は、設定の動作量は、階段の段差、すなわち、始状態と終状態との差に等しい。動作の種類が矩形波の場合は、設定の動作量は、矩形波の高さと時間軸上の幅とによって表される。このように、設定の動作量はスカラー量とは限らず、一般的にはベクトル量であり、配列により表現される。
為されたシムの設定は、シムの設定値とその動作の種類とその動作量とによって特徴付けられる。すなわち、本発明において、為されたシムの設定の履歴を逐次記録しておくことは、為されたシム設定の設定値とその動作の種類とその動作量とを、それらが為された時刻に関連付けて記録することを意味する。時刻とは時間軸上において、適当な定義によって定められた時間の絶対値のことであり、実用上の観点から一般的な暦に従うことができる。なお、時刻の原点は任意に定めてよい。また一般に、時刻と時刻との差は時間を与え、時刻の原点からの時間は時刻を与える。本明細書においては、時刻をt、時間をt’として記号「’」の有無で両者を区別して記すことを心がけたが、物理的な解釈を間違えなければ、両者の区別は必ずしも本質的ではない。
発明1のシミング装置は、超伝導磁石の磁場の安定度および均一度をシムコイルによって補償するシミング装置であって、シムの少なくとも1つの項についての制御が、下記(1)から(4)の手段により為されるように構成されることを特徴とする。
(1)シムの設定が為されたとき、シムの設定値uと、設定された動作の種類wと、設定の動作量sと、設定がなされた時刻tとを、設定が為された回数をNとして、0からN−1の値をとる指数nを用いて、最後に為された設定を指数N−1に対応付け、(wn、un、sn、tn)として参照できるようにして記録する、シム設定記録手段と、
(2)前記動作の種類wと前記動作量sと時間t’とを引数にもつ関数であって、時間t’が無限大のとき0となるような性質をもち、個別の設定に起因する磁場変動を近似的に補償することのできるように設定された、母補償関数「fw(s、t’)」を供給する、母補償関数供給手段と、
(3)記号「Σ」はn(0、1、2、・・・、N−1)についての和を表し、補償関数「g(t)」は前記母補償関数と時刻t以前になされたシムの設定により「g(t)=Σfwn(sn、t−tn)」として表現される時刻tの関数であって、当該補償関数を用いて時刻tにおける補償値を算出する補償値算出手段と、
(4)前記補償値算出手段により求められた補償値と直近の設定値uN−1との和を用いてシムコイルを駆動するシムコイル駆動手段。
発明2は、発明1のシミング装置において、設定の動作量sが特定の値sを持つときの母補償関数「f(s、t’)」を時間t’の関数である種補償関数「f s=s0(t’)」とし、設定の動作量sをsを用いて規格化し、規格化された動作量「s/s」による多項式関数hをh(s/s)として、母補償関数が「f s=s0(t’)×h(s/s)」として表されることを特徴とする。
発明1のシミング装置は、以下の方法を実現するものであって、シムの少なくとも一つの項について、以下の(1)〜(4)の構成要素によって構成される手段によって、シムの設定値に対して時間に依存した補償を施すことを特徴とする。
(1)シムの設定が為されたとき、為された設定の回数Nと、シムの設定値u(一般的には実数)とその動作の種類w(一般的には集合)とその動作量s(一般的には実数の要素を持つ配列)とそのときの時刻t(一般的には実数)とが、逐次記録される。これらの値は、一般的には配列(un、wn、sn、tn)として記録されるのが望ましい。ここで、nは個々の設定を区別するための整数の指数であり、nの範囲は(0、1、2・・・N−1)となる。この場合、最新の記録は指数N−1で指定される。
(2)母補償関数fw(s、t’)は、種類wと動作量sと時間t’(一般的には実数)の関数であり、個別の設定に対する補償量(一般的には実数)を表す関数として、予め求められ設定されている。母補償関数fは、t’が無限大の極限で0となるような性質をもつ関数である。
(3)時刻tにおける補償値(一般的には実数)は、時刻tの関数である補償関数g(t)=Σfwn(sn,t−tn)を用いて算出される。ここで記号Σはn(0、1、2・・・N−1)についての和を表す。補償関数g(t)は母補償関数fとシム設定の記録(wn、sn、tn)とによって表現される。時刻tにおける補償値は、補償関数g(t)に時刻tを代入することにより時々刻々と求められる。
(4)補償後の値u’(一般的には実数)は、直近の設定値と補償値との和として、式「u’=uN-1+g(t)」により得られる。シムコイルは、補償後の値u’を用いて駆動される。
一般的なNMR測定において多くの場合、シムの設定は、専ら磁場の絶対値や均一度を調整することに用いられる。このような場合は、シムの設定は終状態を指定することに意味があり、設定の動作の種類wは階段関数が用いられる。
一方、NMR測定において傾斜磁場法を用いる場合や、MRI測定の場合は、磁場変調用のコイルにより試料に磁場変調を印加することに意味がある。ここでいう変調用のコイルとは機能的にはシムコイルの一種に他ならない。すなわち、磁場変調の印加はシムの設定の一形態であり、本明細書におけるシムの設定は磁場変調を含むものである。このような場合は、一般に、シムの設定の始状態と終状態は同じで、その遷移の過程の波形に意味がある。変調磁場の形と大きさとは、設定の種類wと動作量sとによって指定することができる。
なお、本発明はシム設定の終状態と遷移の過程の両方に意味があるような場合にも対応できることは当然である。
このように本発明においては、母補償関数fがシム設定の動作の種類wを引数に持つことにより、多様な用途に対応できるように工夫されている。
もし、シム設定の動作の種類が一つに限られている場合、例えば、為される設定が専ら階段関数と決まっているような場合は、母補償関数fはそれ専用のものを用意すればよく、動作の種類wについての記録や指定を省略しても良い。
発明2は、発明1のシミング装置において、母補償関数および補償関数がそれぞれ下記の式で表されるシミング方法を実施する為のものである。
母補償関数=f(s、t’)=fs=s0(t’)×h(s/s0)、
補償関数=g(t)=Σf(sn,t−tn)、
(但し、記号Σはn(0、1、2・・・N−1)についての和を表す)
ここで、
補助関数1=h(x)=(ΣAk×xk)×h’(x)、
(但し、記号Σはkについての和を表す)
補助関数2=h’(x)=((α×exp(β×x)−(2−α)×exp(−β×x))/(exp(β×x)+exp(−β×x)))、
0は規格化に用いる定数であり、
k、α、βはそれぞれ近似のための適当な定数(フィッティングパラメータ)を表す。
本方法(発明2)は、シム設定の動作の種類が階段関数の場合に代表されるように、動作量sがスカラー量であることを前提としている。一般的には動作量は配列であるので、本方法を適用する場合は、暗黙の了解として、配列sをスカラー量s’に変換してから用いられる。シム設定の動作の種類が階段関数の場合は、動作量sの要素は1つであるので、それがそのままスカラー量s’に対応する。また、例えば動作の種類が矩形波の場合は、sの要素は高さhと幅dtの2つであるので、これらを用いて、s’=h×dtとして得られる面積s’をスカラー量として用いることができる。
本方法(発明2)においては、母補償関数は、特定の動作量s0によって規格化されて求められるので、母補償関数を簡便に得ることができる。また、関数形が簡略化されているので、補償値を算出するときの計算量が小さくなるという利点がある。
補償関数はその母補償関数を基に動作量sについての級数展開により表示されるので、補償値の連続性が自動的に保証される。また、補償値を少ない計算量で簡便に計算することができる。
特に補償関数が、比較的低次の級数展開で表され、引数に対して単調な関数であれば、広範囲の入力に対して保証値が予想外の値をとる心配がなく、保証関数の設定等に間違いが入り込んで大きな破綻をもたらす危険性が排除される。すなわち、少ない動作試験によって、広範囲の動作を保証することができる。
発明1〜2のシミング装置の主要部分はシムコイル制御装置の内部に実装される。シムコイル制御装置には、次に挙げる各手段が実装されており、それらの各手段の連携により上記シミング方法を実現している。
上記の各手段とは、すなわち、シムの設定を受け取る設定受信手段と、シムの設定の履歴を逐次記録しておく記録手段と、所定の母補償関数を供給する母補償関数供給手段と、その時々の時刻と記録されたシムの設定の履歴をもとに補償値を算出する補償値算出手段と、シムの設定値と補償値とを足し合わせる出力値演算手段と、その演算結果を外部に出力する出力発信手段とである。
発発明1〜2のシミング装置を用いることにより、強磁場超伝導磁石を用たNMR測定において、プローブ変更やシム値調整の前後における磁場変動が無くなって、良好な測定精度が得られるようになった。
また、発明3のNMRプローブ装置を用いることにより、Z0以外の項に対する補正母関数を効率的に求めることが出来るようになった。
超伝導磁石の磁場変動の実測値と近似曲線とを示すグラフである。 実施例1のシステム構成を示すブロック図である。 シムコイル制御装置の内部構成を示すブロック図である。 シムコイル制御装置の動作を表すフローチャートである。 超伝導磁石の磁場変動の実測値と近似曲線とを示すグラフである。 実施例5のNMRプローブ装置の共振器近傍を示す斜視図である。 実施例5のNMRプローブ素子を示す斜視図である。 実施例5のNMRプローブ素子の等価回路図である。
尚、図中の符号は次のものを表す。
(t1)(t2)(t3) 時刻
(E1) 磁場の曲線
(C1)(C2) 近似曲線
(ES) 測定空間
R00)(RX−)(RX+)(RY−)(RY+)(RZ−)(RZ+) 測定コイル

(LX)(LY)(LZ) 測定コイル間の距離
X X軸
Y Y軸
Z Z軸
(100) 総合制御コンピュータ
(200) シムコイル制御装置
(210) 母補償関数供給手段
(220) シム設定受信手段
(230) シム設定記録手段
(240) 補償値演算手段
(250) 出力値演算手段
(260) 同期信号発生手段
(270) 補償後設定出力手段
(300) シムコイル駆動装置
(400) シムコイル
(500) 高分解能NMR用超伝導磁石装置
(510) 超伝導磁石
(600) NMRプローブ装置
(610)(610b) 筒状筐体
(620) フランジ部
(630)(630b) 共振器架台
(640) 測定コイル
(650) 同調回路
(700) NMR分光計
(800) NMRプローブ素子
(810) 測定コイル
(820) 標準試料
(830) 同調用コンデンサ
(840) 整合用コンデンサ
(850) 同軸ケーブル
本発明は、電子計算機(コンピュータ)と、その動作を制御する一連のコンピュータ制御コード(プログラム)と、コンピュータとの通信によって動作するシムコイル駆動装置と、シムコイル駆動装置によって駆動されるシムコイルとによって実施することができる。コンピュータはNMR測定の制御用のものと兼用し、その中に必要なプログラムを設定し、それをNMR測定とは平行して同時に動作させることができる。また、コンピュータを機能部位ごとに設定し、機能を分散して耐障害性や処理能力を高めることもできる。
なお、本明細書においては、シムコイルを制御するための信号を出力する装置であって、前記プログラムの実装されたコンピュータと、それらの組合せ、および、その機能の一翼を担う周辺装置等を合わせた一式のことを、シムコイル制御装置と呼ぶ。また、シムコイルにより磁場の安定度や均一度を制御する装置であって、シムコイル制御装置とシムコイル駆動装置とシムコイルとを合わせたものの一式を、シミング装置と呼ぶ。
シムコイル駆動装置はシムの各項に対応した入力をもち、その入力に対応した磁場が生じるように、換算を行い、シムコイル内の具体的な各コイルに対して電流を出力する。シムコイルは様々な方向に巻かれた種々のコイルエレメントにより構成されている。換算式は、一般にテンソルで表され、そのテンソルはシムコイル内の各コイルエレメントの具体的な設定に依存しており、装置に固有の換算式として、予めシムコイル駆動装置内に設定されている。また、換算式のみならず、シムコイルとシムコイル駆動装置との間の結線の仕様は一般には公開されていないので、事実上、シムコイルとシムコイル駆動装置とは密接不可分のものとして扱われる。
シムコイル駆動装置とシムコイル制御装置との間は、多くの場合、デジタル回線によって結ばれる。デジタル回線で結ばれている場合は、シムコイル駆動装置は、シムコイル制御装置からの出力が入力されたときのみ反応するように設定できるので、シムコイル制御装置を一時的に切り離しても誤動作しないようにシステムを構成することができる。
シムコイル制御装置とシムコイル駆動装置との間の通信手順は、一般には公開されておらず、共通性が担保されないので、事実上、シムコイル駆動装置とシムコイル制御装置とは密接不可分な関係にある。
本発明の実施に際しては、シムコイルおよびシムコイル駆動装置については、各種の公知技術および既存装置を利用することができる。しかしながら、上記の理由により、それらは本発明の実施に際して密接不可分であるので、本発明のシミング装置は、シムコイルとシムコイル駆動装置とを含んだものとして、実現される。
NMR測定の精度に一番影響が大きいのはZ0の項に対応する変動であるので、多くの場合、Z0に対して本発明を適用することにより、測定精度は著しく向上し、満足な結果が得られる。さらに高精度な補償が必要な場合は、低次の項から順に(Z1、X1、Y1、XZ、YZ、Z2、X2、Y2、・・・)本発明を適用して行くのが望ましい。
本発明を適用する項を限定するときは、用いるプローブ装置や試料の対称性等を考慮することが望ましい。例えば、固体NMR測定においてマジックアングルスピニング(MAS)プローブ装置を用いる場合は、シムコイルのX軸とY軸との内、例えばX軸とMAS試料管とが略平行となるようにMASプローブ装置の取付け方向を設定することにより、Y方向の変動の影響を軽減できるので、Z0以外の項については、Z1、X1、XZの順で本発明を適用するのが望ましい。この場合は、これらの4つの項について本発明を適用すれば、十分満足な結果が得られることが期待される。
このように、用いるプローブ装置や求められる測定精度に対する必要に応じて、本発明を適用する項の数(チャンネル数)を設定すると良い。
試料空間の磁場は、超伝導磁石の発生する磁場と、シムコイルの発生する磁場との合成である。例えば、シムのZ0の項に着目すると、この項に対応する超伝導磁石の磁場は静磁場B0である。この場合、試料空間の磁場Bは、超伝導磁石の発生する磁場B0とシムコイルの発生する磁場uZ0との和となる。すなわち「B=B0+uZ0」である。
シムのZ0以外の項については、シムの項C(C=Z1、X1、Y1・・・)に対応する磁場の不均一成分をB//Cと記述することにする。また、超伝導磁石に由来するシムの項Cに対応する磁場成分をB0//Cと記述し、シムコイルの発生するシムの項Cに対応する磁場成分をuCと記述する。すなわち、試料空間における磁場の各方向の成分は「B//C=B0//C+uC」(C=Z1、X1、Y1・・・)と記述される。例えば、シムのX1の項に沿った磁場の成分は「B//X1」と記述され、その値は「B0//X1+uX1」の形で、超伝導磁石に由来するものとシムコイルに由来するものとに分解して記述することができる。
さらに、B//Z0=B、B0//Z0=B0と定義する。これにより、試料空間における磁場の各成分は、「B//C=B0//C+uC」(C=Z0、Z1、X1、Y1・・・)として、統一的に記述される。
シムの任意の1項に着目して議論する場合は、シムの設定値uCは、任意な指数であるCを省略して単にuと記述することがある。
以下の説明では、特に断らない限り、シムの一つ項に着目して説明してある。Z0とそれ以外の項(Z1、X1,Y1、・・・)とで、母補正関数を求めるときに適した測定装置の構成が異なるだけで、それ以外については原理的に同様に本発明を適用できる。
以下では、具体的な実施例を例示しながら、本発明の内容をさらに詳細に説明する。
まず、本実施例における、具体的な装置構成について、図2および図3を参照しながら説明する。図2はシステム全体を示すブロック図であり、図3はシムコイル制御装置内部のブロック図である。
総合制御コンピュータ(100)は、NMR測定装置やシムコイル制御を含む、NMR測定に関連する一切の制御を、総合的に管理している。総合制御コンピュータ(100)は実験者からシムの設定を受取り、与えられたシムの設定値をシムコイル制御装置(200)に設定する。なお、シムの設定は実験者に代わってコンピュータプログラムにより与えられることもある。例えば、プローブ交換に際しては、シムの設定は、プローブ毎に予め用意された設定ファイルによりその初期設定が与えられる。
シムコイル制御装置(200)は、本発明のシミングシステムにおけるシム値の補償において、核心的な役割を担うものである。シムコイル制御装置(200)は、総合制御コンピュータ(100)からシムの設定(u、w、s)を受け取り、所定の補償を施し、補償された後のシムの設定(u’)をシムコイル駆動装置(300)に対して出力する。施される補償の量は時刻の関数として変化する。シムコイル制御装置(200)は、総合制御コンピュータ(100)およびシムコイル駆動装置(300)とデジタル通信回線によって結ばれている。
シムコイル制御装置(200)内には、次に挙げる各手段が実装されており、それらの各手段が協調して動作することにより、全体として所定の動作を行う。
シム設定受信手段(220)は、シムの設定(u、w、s)を、デジタル通信回線を通じて総合制御コンピュータ(100)から受け取り、シム設定記録手段(230)に渡す。
シム設定記録手段(230)は、シム設定受信手段(220)からシムの設定を受け取る。受け取ったシムの設定の回数は変数Nに記録される。受け取ったシムの設定はそのときの時刻tN-1と関連付けて(uN-1、wN-1、sN-1、tN-1)として記録される。記録されたシムの設定(un、wn、sn、tn)(n=0、1、2・・・N−1)と為された設定の回数Nは、他の手段から参照することができる。
母補償関数供給手段(210)は、予め設定された種々の母補償関数を需要に応じて供給する。母補償関数は種類wと動作量sと時間t’の関数であり、個別の設定に起因する磁場変動を近似的に補償することのできるように設定された関数である。母補償関数は用いる装置固有のものであり、装置の使用に先立って予め外部から設定される(図3の点線)。関数形等の骨格についてはプログラム的に記述(ハードコード)され、一部のパラメータの設定は設定ファイルから読み込めるようになっている。
補償値演算手段(240)は、母補償関数供給手段(210)と、シム設定記録手段(230)とを参照し、それらにより構成された補償関数を用いて、その時々の時刻tについて補償値を演算し、その演算結果を出力する。補償関数「g(t)」は前記母補償関数と時刻t以前になされたシムの設定により「g(t)=Σfwn(sn、t−tn)」として表現される時刻tの関数である。ここで、記号「Σ」はn(0、1、2、・・・、N−1)についての和を表す。
出力値演算手段(250)は、シム設定記録手段(230)を参照して得たシムの設定値に、補償値演算手段(240)の出力を足し合わせ、出力する。補償後の設定値u’は、式「u’=uN-1+g(t)」により得られる。
同期信号発生手段(260)は、略一定の時間間隔で時刻情報を出力する。この出力頻度により、補償値の演算頻度が律速される。
補償後設定出力(270)は、補償の施された後のシム設定u’を、出力値演算手段(250)より受け取り、シムコイル駆動装置(300)に対して、デジタル通信回線を通じて受け渡す。
図3では矢印により情報の流れを示し、点線による囲いにより各手段の結びつきの強さを示している。例えば、シム設定受信手段(220)は総合制御コンピュータ(100)からの設定を待ち受けて受け取る部位なので、外部信号に同期して動作するという性質をもつ。
母補償関数供給手段(210)は、システム更新時等の初期設定のときに限り外部から設定を受け取る(図3に破線の矢印で示した経路)。
補償値演算手段(240)は、同期信号発生手段(260)によって律速されるので、結果として、出力値演算手段(250)はこれらに同期して、補償後の設定を出力することになる。
シムコイル駆動装置(300)はシムコイル制御装置(200)から受け取った設定値に従ってシムコイル(400)を駆動する。シムコイル(400)は超伝導磁石(510)と一体となって設定されており、全体として高分解能NMR用超伝導磁石装置(500)を形成しており、測定空間(ES)はその磁場中心近傍に設定されている。
高分解能NMR用超伝導磁石装置(500)にはNMRプローブ装置(600)を装着することができる。NMRプローブ装置(600)は、外形上は筒状筐体(610)とフランジ部(620)とからなり、フランジ部(620)により超伝導磁石装置(500)に取り付けられる。共振器架台(630)は筒状筐体(610)の内部に設定されている。筒状筐体(610)内においては、測定コイル(640)と同調回路(650)とによって共振器が構成され、それらは共振器架台(630)により支持されている。測定コイル(640)は、測定空間(ES)内において磁場中心に位置するように設定されており、そのコイル内に測定対象の試料を保持し、NMR測定を行うことができるようになっている。
NMR分光計(700)は、NMRプローブ装置(600)に接続され、各種の測定用高周波パルス列を照射し、それに対する電磁的な応答信号を受信することによりNMR測定が行われる。なお、NMR測定に際して行われる、高周波パルス列の照射や信号受信などの一連の手順のことを、パルスシーケンスと呼ぶ。NMR分光計(700)の動作は総合制御コンピュータ(100)により制御される。
総合制御コンピュータ(100)、シムコイル制御装置(200)、シムコイル駆動装置(300)、NMR分光計(700)は、相互に密接に通信しつつも自律的に動作しており、これらの装置相互間に通信異常等があっても、可能な限り動作が継続されるようになっている。
シムコイル制御装置(200)内に実装された各手段は、より具体的には、図4に示すフローチャートによって表されるプログラムによって実現している。各部の機能に応じて、図3に対応した記号が付けられている。図4に示すように、主たる機能は、与えられたシムの設定値の変化を逐次記録して行く主プログラム内のループと、補償値を自律的に逐次出力して行く副プログラム内のループによって実現されている。主プログラムと副プログラムとでは、主プログラムで定義される広域変数や広域定数や広域関数や時刻などが共有されている。副プログラムは、当初は主プログラムにより開始されるが、それ以降、主プログラムとは非同期に動作する。補償後の設定u’の出力は、副プログラムにより、逐次更新される。
副プログラムを、主プログラムのループ内に取り込んで同期動作とする構成も可能である。同期動作とした場合は、共有変数等の読み書き時における同期確認の処理が不要となり、プログラム作成上の間違いが生じ難くなるという利点があるが、その一方で、設定処理の遅延が出力に及んで出力のタイミングが安定しなくなる可能性があるので、これらの点を考慮して選択すると良い。
図4では特には図示しないが、装置の負荷を軽減するため、副プログラムのループの実行は、同期信号発生手段(260)より供給される同期信号により、適当な時間間隔で行われる。
広域変数や広域定数や広域関数などのデータは、半導体メモリ等の揮発性の主記憶ではなく、ディスク装置や半導体不揮発メモリ等の不揮発性の補助記憶に格納して共有することができ、多くの場合、その方が望ましい。不揮発性の補助記憶に格納した場合は、不意のシステム中断等に際しても、シムコイル駆動装置に障害が生じたりシステム時計が大幅に狂ったりしない限り、障害なく復帰することができる。補助記憶への参照は主記憶への参照に較べて時間がかかるが、大きな不都合のない場合も多い。主記憶と補助記憶との両者を用いて情報の格納を適宜多重化し、参照速度を確保しつつ、不意のシステム中断等に備えることは、さらに望ましい。
本実施例においては、具体的には、これらのデータは、ハードディスク装置に設定されたファイルシステム上にデータファイルとして格納することにより共有されており、各プログラムは、それらのファイルの更新状況を監視することで、主記憶上のデータとの同期を計るようになっている。
本実施例において具体的には、広域変数である、整数変数Nと、N−1個の要素(n=0、1、2・・・N−1)をもつ配列変数(un,wn、sn、tn)とからなるデータセットが、主プログラムと副プログラムとの間で、データファイルを媒介として共有されている。
シムの設定値は総合制御コンピュータ(100)により、デジタル通信を通じて、何らかの手段をもって設定される。本実施例においては、シム制御コンピュータ(200)のファイルシステムの一部は、総合制御コンピュータ(100)により、コンピュータネットワーク上で共有されており、その共有領域に設定されたデータファイルを書き換えることにより行われている。すなわち、本実施例においては、シムの設定はハードディスク装置上のデータファイル媒介としてプログラムに読み込まれる。
副プログラム中の手続き「補償後の設定(u’)出力」は、シムコイル駆動装置(300)に対して、所定の通信手順を用いて、補償後のシムの設定値u’を設定する手続きである。これにより、補償後のシムの設定値は、シムコイル駆動装置(300)へと送られ、シムコイル駆動装置(300)はそれに応じて、各コイルエレメントに合わせて換算された電流を出力することによりシムコイル(400)を駆動する。
母補償関数fw(s、t’)は時間t’が大きくなると0に漸近する性質をもつので、例えば、時間が経過してt−t0が十分に大きくなった場合は、fw(s0、t−t0)の寄与は無視できるようになる。このような古いデータは適宜破棄するのが望ましい。具体的には、ある時刻tにおいて、fw(s0、t−t0)の絶対値がある基準値以下となったとき、当該のデータ(u0、w0、s0、t0)を破棄し、以降を順次繰り上げ、N:=N−1、(ui、wi、si、ti):=(ui+1、wi+1、si+1、ti+1)、(i=0、1、・・・N−1)として新たに指数付けをし直すとよい。これにより、補償値を算出するときの計算量と変数格納のための記憶領域の両方を節約できる。
なお、補償値の更新のタイミングをNMR測定と同期して、測定に影響を及ぼさないような構成とすることは、さらに望ましいことである。具体的には、副プログラム内で、NMR測定のパルスシーケンスの実行状況を監視し、1測定のデータ収集が終わり、測定が緩和待ち時間に入ったのを見計らって、補償値を更新するようにするとよい。この場合、NMR測定のパルスシーケンス中に、補償値の更新の可否を表す同期信号を発生するコードを明示的に設定し、シム制御コンピュータ(200)はその同期信号を監視するように構成すると、さらに確実な動作が見込まれる。
母補償関数fw(s、t’)は、種類w(集合)と動作量s(配列または発明2を適用する場合は実数)と時間t’(実数)の3つの引数をもち、実数の値を返す関数としてプログラム内で予め定義されている。集合とは、例えば(階段関数、矩形波、三角波、のこぎり波・・・)といった動作の種類の集合のことであり、整数の部分集合(0、1、2、3・・・)に対応付けることもできる。集合の要素の数は、システムが対応すべき動作の種類の数となる。母補償関数を定義するパラメータの一部は補助記憶上の定義ファイルから読み込むことができるように設定される。母補償関数fの具体的な表現方法については、原理的には制約は無く、それぞれの種類wについて、十分に広範囲で密な動作量と時間(sn、t’n)の組(n=0、1、2、・・・)について「|磁場の設定値(=B0//C+uC)−磁場の実測値(=B//C)−f(sn、t’n)|<許容誤差」の関係を満たすような、適当な近似値を与える関数を用いることができる。但し、補償値は母補償関数を用いて時刻tごとに頻繁に再計算されるので、計算量が多くなりすぎないように留意しなければならない。
次に、本実施例における、母補償関数fw(s、t’)の具体的な設定方法について説明する。以下では、理解しやすいように、動作の種類を階段関数の場合に限定して、その場合の母補償関数をfw=0(s、t’)と記載して説明する。また、さらに「w=0」の部分を省略してf(s、t’)とも記述する。動作の種類が異なる場合に適用するには、「w=0」の部分を他のものに置き換えればよい。
また以下では、シムの項については、シムのZ0の項に着目して説明している。これをシムの他の項について適用するには、例えば以下において、B0=B0//Z0、u=uZ0等なので、このZ0の部分を一般の項C(C=Z1、X1、Y1、・・・)に読み替えればよい。
なお、対象の項によって、補正磁場の空間的な形状(関数形)が異なるので、基になるデータの測定方法が異なるのでこの点については注意されたい。例えば、磁場の値とは、対象がZ0の項の場合は磁場強度のことであり、対象が1次の項(Z1、X1、Y1)の場合はそれぞれの軸に沿った磁場勾配のことである。
時刻t=t0においてシムの設定値u0と種類w0=0(階段関数)と動作量s0からなるシムの設定が与えられたと仮定する。時刻t0の直前における磁場Bの実測値をp0、時刻t0以降の時刻tにおける磁場Bの実測値をp(t)とする。
このような定義の下に、母補償関数fw=0(s、t’)は「B0+u0=p(t)+fw=0(s0、t−t0)」の関係を許容される誤差の範囲内で満たす近似関数として定義される。すなわち、許容誤差の大きさをeとすると、満たすべき式は「|fw=0(s0、t−t0)+p(t)−B0−u0|<e」(数式A)である。
時間の経過とともに、p(t)は新たな設定値B0+u0に漸近し、fw=0(s0、t−t0)は0へと漸近する。なお、設定値と実測値の度量については、許容される誤差の範囲内で両者が一致するように予め較正されているものとする。ただし、母補償関数fw(s、t’)は、十分大きなt’については0となる性質をもつので、較正が不十分でもその誤差が蓄積して行くことはない。
母補償関数fw=0(s、t’)は、与えられる可能性のある、あらゆる(s、t’)について定義されていなければならない。
母補償関数を求める過程において、実測で求めることが出来るのは、離散的に設定された特定のsn(n=0、1、2、・・・)に対するf(sn、t’)であるので、この点を明示的にしてfs=sn(t’)と記述する。このように母補償関数のsをある特定の値snに固定した場合の関数fs=sn(t’)を種補償関数と呼ぶ。種補償関数は時間t’の関数であり、添字(s=・・・)によって特徴付けられ互いに区別される。
種補間関数は実測値を誤差の範囲内で近似していればよく、その具体的な関数形としては、適当な解析関数を組み合わせて用いても良いし、折れ線関数等の数値的に定義される非解析的な関数を用いても良い。また、定義域によってそれらの組み合わせ方を適当に変更したりして、誤差と計算量とのバランスに配慮するのことが望ましい。
仮に、s=0とした場合、自明なものとして、fs=0(t’)=0が得られる。また、s=±s0とした場合は、系の対称性から、fs=-s0(t’)=−fs=s0(t’)が概ね期待される。但し、Z0等のZ軸に関わる項については、符合の正負は、大きな静磁場に対して平行と反平行に対応し、磁石に蓄えられる全エネルギーを増やす方向と減らす方向とで違いが生じるので、この部分の対称性が悪い場合が多いので注意されたい。
あるs=s0について、fs=s0(t’)が得られた場合、f(s、t’)のs=s0以外の定義域における値については、これらの関数を用いて補間または補外により推定することができる。すなわち、母補償関数は種補償関数を用いた1次の展開による近似として、
f(s、t’)=fs=s0(t’)×(s/s0
・・・(数式1)
と表すことができる。これは、特定の種補償関数を用いて母補償関数を表す、最も簡単な近似方法である。
種補償関数fs=sn(t’)を多数のsn(n=0、1、2、・・・)について求めることにより、さらに高次の近似を用いた高精度な母補償関数f(s、t’)を設定することができる。また、母補償関数f(s、t’)として低次な近似を用いる場合においても、ある程度の数の種補償関数を余分に求めておくと、それを用いて誤差の検証等を行うことができるので望ましい。
母補償関数のsに対する非線形な効果を取り込みたい場合は、前式をさらに一般化して、
f(s、t’)=fs=s0(t’)×h(s/s0)、
h(x)=Σak×xk
ここで、記号Σはk(k=1、2、・・・K)についての和を表す
・・・(数式2)
と表すとよい。h(x)はxについてのK次多項式であり、次数Kは、許容される誤差や計算量に対する要請等に応じて適当に設定される。係数akは、種補償関数fs=sn(t’)を多数のsn(n=0、1、2、・・・)について求め、それらを良く近似するように最小自乗法等の方法により求められる。(数式1)は(数式2)でK=1とした特別な場合に相当する。
母補償関数のsの正負に対する非対称な効果を取り込みたい場合は、拡張された双曲線関数を用いて一般化して、
f(s、t’)=fs=s0(t’)×h’(s/s0)、
h’(x)=(α×exp(β×x)−(2−α)×exp(−β×x))
/(exp(β×x)+exp(−β×x))
・・・(数式3)
と表すとよい。ここでαは0〜2の実数値をとる。α=1のとき、h’は双曲線正接関数となり、xの正負に対して対称的な関数形となる。αとβは所謂フィッティングパラメータであり、近似上の要請により適当に設定される。(数式1)は(数式3)において、α=1、β=無限大とし特別な場合に相当する。
広範囲のs=snについて、多数の種補償関数fs=sn(t’)が得られている場合は、さらに高精度な母補償関数f(s、t’)は、sm<s<snなるsに対して、fs=sm(t’)とfs=sn(t’)との線形結合による補間により、
f(s、t’)={fs=sm(t’)×(sn−s)
+fs=sn(t’)×(s−sm)}
/(sn−sm
・・・(数式4)
と表すことができる。このように、任意の(s、t’)に対する母補償関数は、離散的に求められている近接の種補償関数を用いて、適当な補間により求められる。
近似の仕方はここに示した線形結合による近似に限らない。この問題は、2次元の格子点(または線)上で離散的に与えられる値に基づいて、それを近似する2次元の面上で連続的に定義される関数を求めるという一般的な問題に帰着されるので、このような問題に関する各種の近似法を利用することができる。格子上のマップを用いて扱う方法等も利用することができる。
以上、(数式2)(数式3)(数式4)に例示したように、種補償関数を用いて母補償関数を近似的に表すには、種々の方法がある。また、近似の具体的な方法はここで挙げたものに限らない。さらに、これらの近似方法を適宜組み合わせて用いることにより、近似精度と計算量とのバランスのより優れた母補償関数を設定することができる。
図5に示す実験データを参照して説明する。図5には図1に示したNMRにより測定された試料空間における磁場変動の測定結果を、原点とスケールとを変更して、別の観点から描いてある。横軸は時間を表し、単位は日であり、図の左端で時刻t=0となるように原点を設定している。縦軸は試料空間における磁場Bを表し、単位はppmであり、縦軸の原点は、シムの設定による変動が収まったときの値が0に漸近するように設定されている。図5で実線(E1)で示した部分は、補償を施さない場合の磁場の値B0に対応する。時刻t1とt2との間の区間(t1〜t2)、および時刻t3以降の区間(t3〜)は、B0は本来なら0であるべき区間である。ところが、実際には直前に為されたシムの設定の影響でこれらの区間でB0は有限の値を示しており、その値は時間に依存して変化している。補償関数にはこれらの区間(t1〜t2、t3〜)でB0の値を相殺することが期待される。以下では、このデータを基に、用いた装置で有効な補償関数を求める方法を具体的に書き下して例示する。
この実験では、以下に示すシムの設定(u、w、s、t)が時刻t1、t2、t3において与えられている。下の時刻t0における設定は、システムの初期状態を指定するダミーの設定である。ここでは、w=0は動作の種類として階段関数を示すものとして取り扱う。
(u0、w0、s0、t0)=(98.9、0、0、0)
(u0、w0、s1、t1)=(0、0、−98.9、75682)
(u0、w0、s2、t2)=(49.5、0、49.5、509086)
(u0、w0、s3、t3)=(0、0、−49.5、510006)
時刻t1において、s0=−99ppmの階段関数状の変動がZ0に設定されている。曲線(E1)は区間(t1〜t2)において、前記の磁場p(t)に対応する。このことに着目して、種補償関数fs0=-99(t’)を求めることが出来る。すなわち、種補償関数fs0=-99(t−t1)は、図の実線(E1)を区間(t1〜t2)において相殺する近似関数として求めることができる。
一般に、緩和を伴う現象の大きさは、その現象を特徴付ける緩和時間τを用いて、exp(−t’/τ)で表される時間t’の関数で表すことができる。図1においては、同様の測定結果に対して、τ=1日および3日の緩和曲線を短破線で示しているが、測定値はそれらの関数では表すことはできない。これは、シムコイルとの相互作用が、超伝導磁石中の超伝導体の位置ごとに異なるためと、超伝導磁石において、複数の超伝導体を用いているためであると推察される。
このような緩和現象は、様々な緩和時間τをもった緩和の総和として次のよう一般形で表すことができる。
s=s0(t’)=Σam×exp(−t’/τm
ここで、記号Σはm(m=0、1、・・・M−1)についての和を表す。
・・・(数式5)
mおよびτmはフィッティングパラメータであり、用いる次数Mは、許容される誤差を考慮して適当に定められる。これらは、超伝導磁石とシムコイルの具体的な構成に依存している。
(数式5)の関数形を用いて、関数が実験データを近似するようにフィッティングパラメータ(am、τm)を設定することにより、種補償関数fs0=-99(t’)を求めることが出来る。具体的には、磁場の単位をppm、時間の単位を秒として、次の式が実験データを良く近似している。
s=-99(t’)=0.04×exp(−t’/(3600×2))
+0.06×exp(−t’/(3600×8))
+0.46×exp(−t’/(3600×24))
+0.84×exp(−t’/(3600×72))
・・・(数式6)
ここでは、計算量を少なくすることを優先して次数M=4の近似とし、実験上の要請と解釈の容易さとを優先して緩和時間τmを2〜72時間の切りの良い4つの値に設定した。近似の精度をさらに上げるには、必要に応じて次数を大きくし、用いる緩和時間の組合せも任意に設定して最適化すると良い。
図5に(C1)の長破線で示した曲線は(数式6)のfs=-99(t’)を、時刻t1を原点にとって、(E1)と区別しやすいように0.2ppm上にずらして描いてある。すなわち図中の曲線(C1)はfs=-99(t−t1)+0.2ppmを示している。図に示した曲線は測定結果を0.01ppmの誤差の範囲でよく近似している。ずらさないで描いた場合は、区間(t1〜t2)において、(E1)と完全に重なってしまって区別できなくなる。
この種補償関数fs0=-99(t’)を用いて、広い範囲で実測値を近似するように、(数式3)に示した方法で非対称性等を取り込んで、良い近時を与えるようにフィッティングパラメータを設定することにより、本実施例におけるZ0の項に対する母補償関数f(s、t’)が求められる。次式は求められた母補償関数f(s、t’)を具体的に書き下したものである。
A(s、t’)=fs=-99(t’)×h’’(s/99)
h’’(x)=−0.96×
(1.04×exp(9.9×x)
−(0.96)×exp(−9.9×x))
/(exp(9.9×x)+exp(−9.9×x))
・・・(数式7)
このようにして求められた母補償関数fA(s、t’)を用いることにより、後に示されるように、シムの設定の履歴による磁場強度における変動を、0.01ppmの誤差の範囲で補償することができる。
なお、ここで示した母補償関数の具体例は、母補償関数の求め方および設定方法についての理解を深めるのを助けるために例示したものであり、条件を満たす母補償関数はこれに限定されるものでは無い点に留意されたい。
実際に、上で求めた母補償関数fAを用いて、補償関数gA(t)=ΣfA(sn,t−tn)の値を、時刻tの全区間について求めることができる。ここで、記号Σはn(0、1、・・・N−1)についての和を表す。また、設定の為された回数Nは、区間(t1〜t2)においてはN=2、区間(t3〜)においてはN=4である。
図5に(C2)で示された短破線は、このようにして算出された補償値を、負号反転して0.4ppm上にずらして描いたものである。すなわち、曲線C2は「−g(t)+0.4ppm」の曲線を表す。ずらさないで描いた場合は、区間(t1〜t2)および区間(t3〜)において、(E1)と完全に重なってしまって区別できなくなる。
このことは、シムの設定に補償関数g(t)で表される補正を加えることにより、図の実測値に見られる変動を補償することができることを示している。
以上をまとめて、各測定値と関数値について、具体的な数値を表1に掲げる。表1の最左列には時刻tが示されている。その他の列は、各々の時刻tにおける各測定値および関数値を示している。左から順に、補正を施さない場合の磁場の値「p(t)」と、(数式6)に示される種補償関数「fs=-99(t−t1)」と、補償値を符号反転したもの「−g(t)」と、補償を施した場合の磁場の値「p(t)+g(t)」の値が示されている。設定がなされた時刻である、t1、t2、t3については備考欄に注記することで示されている。
Figure 0005594632
表1からは、区間(t1〜t2)および区間(t3〜)において「p(t)+g(t)」の絶対値は0.01ppm以下であることを読み取ることができる。このことは、本発明による補償により、シムの設定の影響に起因する磁場変動を0.01ppm以下におさえることが出来ることを示している。
本実施例においては、シムの設定が連続的な変化として与えられる場合に、本発明を適用する方法を説明する。本実施例の方法は、連続的な設定の変化を小さな階段状の変化で近似することである。
これは、シムに連続的な変化が設定された場合、シムの変更履歴の記録を十分に小さな時間間隔で記録して行くことによって実現される。より具体的には、本実施例は、任意波形の設定が与えられたとき、それを多数の小さな階段状の設定の組合せにより近似し、その近似による階段状の設定を実施例1の方法に対して次々と与えることにより実施される。
この方法は、近似の精度を上げようとすると、設定履歴の記憶のための容量と、補償値を計算するときの計算量とが大きくなって行くので、注意が必要である。その一方で、階段関数状の設定について求められた実施例1の母補償関数をそのまま利用するので、事前の特別な準備が要らないという利点がある。
本実施例は、設定の動作の種類が矩形波の場合に、発明2の方法を適用した例である。発明2の方法では動作量wの値はスカラーでなければならない。
図5に示す実験例においては、時刻(t2)と(t3)との間で、矩形波(パルス)状のシム設定が為されている。このパルスは、実施例1では、時刻(t2)における階段状の変化と時刻(t3)における階段状の変化との2つの階段状の変化として、扱われた。一方で、2つの変化を合わせた1パルスを、シムの設定の一つと見なすことができる。この場合、母補償関数はパルス状のシムの設定に対して定義される。
パルスは波高(h)と幅(dt)とによって特徴付けられるので、動作量sはそれら2つを要素にもつ配列(h、dt)となる。また、パルスの大きさは波高×幅で特徴付けられるので、より簡便にはs’=h×dtで表されるスカラー化された動作量s’を用いることができる。よって、例えば、次のように表される母補償関数を利用することができる
f’(s、t’)=f’’(h、dt、t’)
=f’h=h0dt=dt0(t’)×g(s’/s0’)
g(x)=Σak×xk
・・・(数式8)
ここでは、簡便のため、(h=h0、dt=dt0)の場合を近似する種補償関数f’h=h0dt=dt0(t’)を用いた。
このような、パルス状の設定の動作量をその面積で代表して表示する方法は、矩形パルスではなく任意波形のパルスに対しても適用できる。すなわち、任意波形のパルスは矩形の場合のh×dtに換えて、波形の高さを時間で積分した値である面積s’によって特徴付けられる。
本実施例では、パルス状の設定に対する母補償関数f’’(h、dt、t’)は、時間t’をパルスの中心から測ることとすると、t’>dt/2を定義域として定義される。これは、階段関数に対する母補償関数をfとすると、fとf’’とは、
f’’(h、dt、t’)〜f(h、t’+dt/2)+f(−h、t’−dt/2)
・・・(数式9)
で表される関係にある。ここで、記号「〜」は式の両辺が誤差の範囲内で等しいことを表す。これは、式の左辺と右辺とは同じものを近似するものである点から、自明な関係である。
ここで、仮に系の応答が時間的な相関を持つ(直前の状態に依存して応答が変わる)ものとすると、式の右辺はdtが小さいほど、実測値との間にその相関の大きさに対応した誤差を生じることに注意されたい。すなわち、複数個のシムの設定が短時間に行われた場合は、右辺の式による補償(実施例1および実施例2の方法)は誤差を生じる可能性がある。そのため、特定の組み合わせの設定が繰り返し行われることが想定される場合は、本実施例に示すように、その一連の設定を1つのパルス状の設定として取り扱うことが有効である。
母補償関数f’は母補償関数fの場合と同様に実測値を近似する関数として定義される。データ処理等に関しては、実施例1における設定の動作量sを本実施例におけるスカラー量化された設定の動作量s’に読み替えることにより、実施例1の方法がそのまま適用できる。
このように、本発明のシミング方法は、シムの動作が、階段状であっても任意波形状であっても、それぞれに適した母補償関数を用いることで、同様な方法で実施できる。任意波形の場合においても、動作量sは、波形の高さhを時間tで積分して面積s’とすることによりスカラー量化することができるので、発明2の方法を適用できる。
一方、設定の動作量を波形の大きさだけでは表せない場合は、動作量を配列として扱い、それに対応する母補償関数を割り当てることにより、取り扱わなければならない。
シムのZ0の項に対する母補償関数は、実施例1で示したように、通常のNMR測定によって得ることが出来る。次に、シムのZ0以外の項に対する母補償関数を求める場合の測定方法について述べる。例えば、シムの1次の項(Z1、X1、Y1)は、それぞれの軸に沿っての磁場の勾配(単位長さ辺りの磁場の強さ)についての補正を与える項であるので、これらに関する母補償関数を得るには、測定空間内での磁場の分布の時間的化を測定しなければならない。
図6には、発明4のプローブ装置の一例として、測定空間内に7個のプローブ素子をもつNMRプローブ装置の共振器近傍の部分を示している。図6では、当該プローブ装置の特徴を分りやすくするため、筒状筐体(610b)の共振器架台(630b)よりも下の部分は省略されている。
個々のプローブ素子(800)は図7に示すように、測定コイル(810)と、測定コイル(810)内に設定された標準試料(820)と、測定コイル(810)と並列に接続され主に共振周波数を調整するのに用いられる同調用コンデンサ(830)と、測定コイル(810)と伝送線路との間に挿入され主にインピーダンス整合を調整するのに用いられる整合用コンデンサ(840)と、測定用高周波信号の伝送線路を担う同軸ケーブル(850)とによって構成されており、各部品は蝋付けによって相互に結合している。測定コイル(810)と同調用コンデンサ(830)とによって共振器が構成されている。これらの全ての部品は、NMR測定に影響を与えないように非磁性の素材で構成されている。非磁性とは、少なくとも強磁性ではなく、また、常磁性磁化率等についても大きな値を持たないものをいう。
プローブ素子(800)の共振器近傍の電気的な等価回路は図8に示される。同調用コンデンサ(830)と整合用コンデンサ(840)の各コンデンサは、可変コンデンサと固定容量コンデンサとを並列または直列に適宜接続することにより構成されており、ある程度の可変範囲をもつ。
プローブ素子(800)では最低限のNMR信号を得られれば良く、そのためコンデンサには耐電圧等は通常のNMRプローブ程には要求されないので、小型のチップ部品等を用いることができる。
同軸ケーブル(850)として、いわゆるセミリジット同軸ケーブルを用いることにより、測定コイル(810)は、同軸ケーブル(850)により支持されるようにすることができる。同軸ケーブル(850)は、共振器架台(630b)に固定される。
共振器の位置は、測定コイルの中心を基準点として示される。それぞれの共振器は原点およびX軸、Y軸、Z軸のそれぞれの軸上に対称的に設定されており、それぞれ、(R00)(RX−)(RX+)(RY−)(RY+)(RZ−)(RZ+)と符号付けられている。また、共振器(RX−)と共振器(RX+)との間の距離は(LX)であり、共振器(RY−)と共振器(RY+)との間の距離は(LY)、共振器(RZ−)と共振器(RZ+)との間の距離は(LZ)である。
標準試料としては、ある程度先鋭なNMR信号が得られるものであれば利用できる。その中でも、水(H2O)の水素原子(H)が重水素原子(D)で置換されたものである重水(D2O)は、取り扱いの容易さや、共鳴周波数の手ごろさなどから、最適な試料である。1H−930MHz磁石を用いたNMR装置の場合、重水素核のNMRの共鳴周波数は約143MHzとなる。この程度の周波数ならば、共振器をコイルとコンデンサで構成する場合、共振器の大きさが波長に較べて十分に小さくなり、いわゆる集中定数回路的な扱いが有効なため、共振器の設計や調整が容易であるという利点をもたらす。特に、プローブ素子と分光計との間に選択式の開閉器(スイッチ)を挿入して、測定対象のプローブ素子を簡便に選択できるようにする場合、スイッチによる挿入損を抑えるには、測定周波数は低い方が都合が良い。
本実施例では、標準試料として、重水を用いている。重水は樹脂製の管に樹脂を溶融することより封管されている。試料の封管方法は、樹脂の溶融に限らず、ゴム栓や接着剤等の樹脂によることができる。このように、重水素は天然存在比が小さいので、用いる容器等からの夾雑信号を心配しなくても良く、それらの素材に対する選択肢が広いという利点をもたらす。重クロロホルム等の重水素置換された溶媒も、同様に利用することが出来るが、それらの溶媒は沸点が低いため、封管に技術を要するという難点がある。
プローブ素子E(E=R00、RX−、RX+、・・・)を用いてNMR測定することにより、その位置における共鳴周波数をFEが得られる。X軸に沿った磁場勾配DFXは、DFX=(FRX+−FRX-)/LXで表される。このDFXがシムの項X1に対応する。
本実施例においては、磁場中心(原点)に置かれたプローブ素子(R00)は、Z0の項に対する母補償関数を求めるとき以外にも、高次の項についても測定値の検証用に用いることができる。本来ならば、高次の項のシムの設定による磁場の勾配に変化があっても、原点の磁場は変動しないはずである。もし、原点の磁場に大きな変動が見られた場合は、超伝導磁石とシムコイルとプローブの3者間の位置関係、または、シムコイル駆動装置内の換算式の設定がずれて設定されている可能性が大きいので、その設定のずれを修正すべきである。
本実施例の発展形として、原点にNMR測定用のコイルが配置された通常のNMRプローブにおいて、その空いた空間にプローブ素子を適宜配置して、通常測定と磁場勾配測定との両方に対応可能なプローブを構成することもできる。
プローブとNMR分光計との間には、高周波リレーを用いたセレクタスイッチを挿入することができる。さらに、プローブ素子の選択をパルスシーケンス中で指定し、その指定に基づいて、セレクタスイッチを制御することができる。これにより、複数のプローブ素子について、時分割で平行して測定を行うことができるようになり、測定時間が大幅に短縮される。
測定空間内の磁場分布を測定する装置の一つに、空間内を走査することにより磁場の分布を求めるシムロボットがある。ところが、本発明においては、磁場の絶対値ではなく経時変化が重要なので、シムロボットを流用して使用することは相応しくない。シムロボットのプローブ内での移動が測定に悪影響を与えるからである。
特開2001−218750
実験化学講座8「NMR・ESR」第5版、日本化学会編、(丸善、2006)

Claims (2)

  1. 超伝導磁石の磁場の安定度および均一度をシムコイルによって補償するシミング装置であって、シムの少なくとも1つの項についての制御が、下記(1)から(4)の手段により為されるように構成されることを特徴とするシミング装置。
    (1)シムの設定が為されたとき、シムの設定値uと、設定された動作の種類wと、設定の動作量sと、設定がなされた時刻tとを、設定が為された回数をNとして、0からN−1の値をとる指数nを用いて、最後に為された設定を指数N−1に対応付け、(w、u、s、t)として参照できるようにして記録する、シム設定記録手段と、
    (2)前記動作の種類wと前記動作量sと時間t’とを引数にもつ関数であって、時間t’が無限大のとき0となるような性質をもち、個別の設定に起因する磁場変動を近似的に補償することのできるように設定された、母補償関数「f(s、t’)」を供給する、母補償関数供給手段と、
    (3)記号「Σ」はn(0、1、2、・・・、N−1)についての和を表し、補償関数「g(t)」は前記母補償関数と時刻t以前になされたシムの設定により「g(t)=Σfwn(s、t−t)」として表現される時刻tの関数であって、当該補償関数を用いて時刻tにおける補償値を算出する補償値算出手段と、
    (4)前記補償値算出手段により求められた補償値と直近の設定値uN−1との和を用いてシムコイルを駆動するシムコイル駆動手段。
  2. 請求項1に記載のシミング装置において、設定の動作量sが特定の値sを持つときの母補償関数「f(s、t’)」を時間t’の関数である種補償関数「f s=s0(t’)」とし、設定の動作量sをsを用いて規格化し、規格化された動作量「s/s」による多項式関数hをh(s/s)として、母補償関数が「f s=s0(t’)×h(s/s)」として表されることを特徴とするシミング装置。
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