JP5584875B2 - 成体膵由来膵幹細胞の製造方法 - Google Patents

成体膵由来膵幹細胞の製造方法 Download PDF

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本発明は、成体膵由来膵幹細胞の製造方法に関するものである。
人体における再生現象は古くから知られており、この現象には各臓器、組織に存在する幹細胞が大きな役割を果たしている。
幹細胞は胚性幹細胞(ES Cell)と成体幹細胞(Adult stem cell、organ stem cell、tissue stem cell)に大別される。
胚性幹細胞は人体又は動物のあらゆる細胞になりうる細胞であって、精子と卵子が受精してまもなくのblastcystと呼ばれる段階で、内細胞塊(inner cell mass)から得られる細胞をシャーレの上で(in Vitroで)培養したものである。マウス胚性幹細胞は1981年にEvansらによって、ヒト胚性幹細胞は1994年Bongsoらによって、初めて培養に成功した。
胚性幹細胞は上述のようにあらゆる細胞に分化しうる潜在能力をもっているため、この性質を利用して、神経細胞を作製しParkinson病やAlzheimer病、脊髄損傷などの治療や、膵β細胞を作製し糖尿病の治療に役立てようとする試みが行われている。実験段階で神経細胞やβ細胞を作製することに成功したとの報告は複数存在する。
しかしながら、胚性幹細胞は以下の技術的問題を抱えている。
(1)胚性幹細胞を未分化な状態で移植すると腫瘍(teratoma)が発生しやすい。
(2)ヒト胚性幹細胞株は染色体異常を起こしやすい。
(3)2001年以前に確立された胚性幹細胞株はマウス細胞(Feeder cells)とともに培養されており、マウスの細胞とのコンタミネーションが生じる可能性がある。
(4)完全に分化した細胞を作製するには多くのステップとコストが必要となる、という課題を有している。
また、胚性幹細胞研究の是非にはコンセンサスが得られておらず、アメリカでは2001年以前に確立された細胞株以外を利用した実験以外には連邦予算が交付されないなど新規の胚性幹細胞株の利用は非常に難しい状況にある。日本においても、実験に際しては文部科学省の承認が必要となる等の制限も多い。つまり胚性幹細胞研究は上記技術的問題に加え社会的課題をも抱えている。
一方、成体幹細胞は各臓器、組織に少数ではあるが存在し、組織再生のもとになると考えられている細胞であって、上記の胚性幹細胞研究における技術的課題、社会的課題を回避することができると期待されている。実際に成体幹細胞が分離されている臓器、組織としては骨髄(骨髄幹細胞)、神経(神経幹細胞)、骨格筋(衛星細胞)などが挙げられ、近いうちに各種臓器から幹細胞が分離されることが期待されている。
ところで、現在日本において糖尿病患者は約800万人いるといわれており、このうちインスリン注射が必要なインスリン依存型(IDDM)患者はそのうち約40〜50万人程度と考えられている。そしてインスリン依存型患者に対して行われている一般的な治療法はインスリン投与であり、これは不足したインスリンを補充するいわゆる“補充療法”である。この療法は患者に毎日のインスリン注射という負担を強いる上、合併症の発生率も決して少なくないため、根治的な治療(根治的治療)が望ましい。
現在糖尿病の根治的治療としては膵臓移植や膵島移植があるが、この治療を受けた患者は平成16年まででわずかに17例(脳死13例、生体2例、心停止2例)に過ぎず、ドナー臓器の逼迫も深刻な問題であり、またドナー臓器が今後大幅に増加することも期待できない。
一方これに対し、同じく根治的治療であるが、機能を果たさなくなった膵β細胞の代わりになる細胞を移植する治療(cell replacement therapy)が考えられており、上述の膵臓移植や膵島移植のようなドナー臓器に関する上記課題も少ない。
なお、発癌に関する研究ではあるが、膵腺房細胞の可塑性が報告されている。例えば下記非特許文献1には、膵腺房細胞をTGFα(Transforming Growth Factorα)刺激下でコラーゲンゲル三次元培養を行う際に腺房細胞から管上皮細胞に変化する現象が観察され、この過程の途中で成体膵由来膵幹細胞が検出できたという記載がある。この実験で生じた成体膵由来膵幹細胞は膵腺房細胞に由来しながら、別の種類の細胞である膵管上皮細胞に変化していることから、この成体膵由来膵幹細胞は、膵幹細胞の性質を持つと考えられる。下記非特許文献1に記載された方法は、コラーゲンゲル中に含まれている細胞を、コラゲネース酵素を用いてゲルを溶かして取り出し、スライドガラスの上で乾燥させた後(cytologic smer法)、管上皮細胞に特異的な抗体、抗サイトケラチン20抗体を用いて、免疫染色法で検出するものである。
Miyamotoら、Cancer Cell、2003年、3(6)、pp565−576
しかしながら、上記非特許文献1に記載の技術では、以下の課題を残している。
(1)コラーゲンゲル三次元培養は、コラーゲンゲル中で培養するため手間とコストがかかる。
(2)この実験系において出現する成体膵由来膵幹細胞は、約5日でほぼ全て管上皮細胞様細胞(duct like cell)に変化してしまう。この途中第3日頃に現れるNestin陽性細胞は連続的に変化し、Duct like cellになってしまう。つまり、上記非特許文献1に記載の技術では、この実験系は成体膵由来膵幹細胞を安定にしかも大量に得る点において課題を残している。
そこで、本発明は以上の課題を鑑み、成体膵由来膵幹細胞を簡便に製造する方法を提供することを目的とし、更には、その成体由来膵幹細胞を他の細胞種への分化に貢献することも目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る成体膵由来膵幹細胞の製造方法は、血清と増殖因子を含有する完全細胞培養液を、細胞外器質がコーティングされた細胞培養皿に塗布し、膵腺房細胞を培養することにより行われる。なおここで、成体膵由来膵幹細胞とは、胚細胞又は胎児(動物を含む)由来ではなく成体の分化した細胞、すなわち腺房細胞、膵管上皮細胞、膵内分泌細胞に由来する細胞で、幹細胞の性質を保持したままの増殖及び他の細胞種に分化する能力を有する細胞をいう。
また本発明に係る成体膵由来膵幹細胞の製造方法において、完全細胞培養液はLIF、βメルカプトエタノールの少なくとも一方を含んでいることも望ましい。なおこのβメルカプとエタノールを加える量としては1μM以下加えることが望ましい。
また本発明に係る成体膵由来膵幹細胞の製造方法における増殖因子は、完全細胞培養液に対して1〜100ng/mlの範囲内にあることが望ましい。また増殖因子としてはTGFα、EGF、HGF、FGF10の少なくともいずれかを含んでいることが望ましい。
また本発明に係る成体膵由来膵幹細胞の製造方法において細胞外器質は、ゼラチン、コラーゲン、フィブロネクチンの少なくともいずれかを含んでなることが望ましい。
また本発明に係る成体膵由来膵幹細胞の製造方法において血清は、完全細胞培養液に対して1〜20%の範囲内で含有されていることが望ましい。
また本発明にかかる成体膵由来膵幹細胞の製造方法は、TGFβスーパーファミリーと増殖因子とBMP2とを含有する完全細胞培養液を、細胞外器質がコーティングされた細胞培養皿に塗布し、膵腺房細胞を培養することにより行われる。
また本発明にかかる成体膵由来膵幹細胞の製造方法において完全細胞培養液は、LIFを含むことも望ましい。
また本発明にかかる成体膵由来膵幹細胞の製造方法において完全細胞培養液は、βメルカプトエタノールを含むことも望ましく、その場合、加える量としては1μM以下加えることが望ましい
また本発明にかかる成体膵由来膵幹細胞の製造方法において増殖因子は、TGFα、EGF、HGF、FGF10の少なくともいずれかを含んでなることが望ましい。またこの場合において増殖因子を加える量は、完全細胞培養液に対して1〜100ng/mlの範囲内であることが望ましい。
また本発明にかかる成体膵由来膵幹細胞の製造方法において細胞外器質は、ゼラチン、コラーゲン、フィブロネクチンの少なくともいずれかを含んでなることも望ましい。
また本発明にかかる成体膵由来膵幹細胞の製造方法において血清は、完全培養液に対して1〜20%の範囲内で含有されていることが望ましい。
そこで、本発明は以上の課題を鑑み、成体膵由来膵幹細胞を簡便に製造する方法を提供することが可能となり、更には、その成体由来膵幹細胞を他の細胞種への分化に貢献することができるようになる。
以下、本発明に係る成体膵由来膵幹細胞の製造方法の実施の形態について詳細に説明する。
(実施形態1)
(1)膵腺房細胞の分離
本実施形態に係る成体膵由来膵幹細胞の誘導に先立ち、まず膵腺房細胞の分離を行う。膵腺房細胞の分離については常法を用いることができ、例えば膵臓から手術による摘出、細切とコラゲネース処理、フィルター処理の後遠心分離によって行うことができる。これに要する期間としては概ね一日程度である。
(2)成体膵由来幹細胞の誘導
本実施形態ではゼラチンコート処理をした細胞培養皿を用い、この細胞培養皿に膵腺房細胞を加えた完全細胞培養液を塗布することにより行う。この成体膵由来膵幹細胞は概ね4〜7日で製造することができる。
本実施形態では細胞外器質であるゼラチンをコーティングした細胞培養皿を用いることにより成体膵由来幹細胞の製造を可能とする。細胞外器質を用いない場合、膵腺房細胞の培養は極めて困難である。なお細胞外器質としてはコラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン等種々のものを用いることができるが、分化誘能を最小限に抑えるにはゼラチンが特に有効である。
本実施形態に係る成体膵由来膵幹細胞の誘導は、細胞培養液、血清、増殖因子を少なくとも含んでなる完全細胞培養液に腺房細胞を加え、上記の細胞培養皿に塗布することによって行う。このようにすることで腺房細胞に脱分化を起こさせ、成体膵由来膵幹細胞を得ることができるようになる。
完全細胞培養液の要素として加えられる細胞培養液としては、市販されている様々な細胞培養液を用いることができ、水、アミノ酸、糖、電解質等を含むものであれば特段に限定はないが、例えばDMEM培地、IMDM培地、waymouth培地、FIZ培地、DMEM/FIZ培地等が好適である。
血清は、この中に含まれる成分が脱分化に関与すると考えられるため、本実施形態において膵腺房細胞の脱分化を促進するためには必須の成分である。血清としては種々のものを採用することができるが、血清によっては細胞を分化させてしまう傾向のある血清も存在するため、そのような傾向の少ない血清を用いることが有用である。これに適するものとしては、例えば動物結成FBS、FCS等が好適である。また加える血清の量としては、少なすぎると腺房細胞の脱分化が起こりにくくなる一方、血清量が多すぎると血清中のエンドトキシンの影響で細胞の活性に影響を及ぼす可能性があるため完全細胞培養液の全容量に対し1%以上20%以下の範囲内にあることが望ましく、より望ましくは10〜20%の範囲内である。
完全細胞培養液の要素として加えられる増殖因子としては種々のものを加えることができるが、EGFやTGFα等のEGFファミリーや、HGF、FGF10(Fibroblast Grouth Factor 10)などが好適である。増殖因子は成体膵由来幹細胞の誘導に重要な役割を果たすものであって、必須の成分である。また、加えられる増殖因子の量としては、少なすぎると成体膵由来幹細胞の誘導の効果が得られない一方、あまりに多すぎると非生理的な状態となり、正常な機能が損なわれる虞があるため、1ng/ml〜100ng/mlの範囲内にあることが好ましく、より望ましくは10ng/ml〜80ng/mlの範囲内である。最も典型的な量としては50ng/mlである。
また完全細胞培養液には、必須ではないが分化抑制因子LIF(Leukemia Inhibitory Factor)を加えることもできる。LIFは、脱分化維持に有用なサイトカインであって、成体膵由来膵幹細胞の誘導に補助的な役割を果たすと考えられる。より具体的には、LIFレセプター以下のSTAT3の活性化、およびp38 MAPKの活性化が、増殖因子のシグナリングと協調作用を起こすものと推察される。LIFを加える量としては50ng/ml程度あれば概ね十分量である。
更に、完全培養液にはβメルカプトエタノールも、細胞の分化を抑制し、脱分化状態の維持に補助的な役割を果たす。βメルカプトエタノールを加えることは必ずしも必要ではないが、脱分化の効率上昇の観点からは加えることが望ましい。加える量としては、濃度1.0μM以下、より望ましくは0.2μM以下であり、最も典型的な量としては0.1μM程度である。
以上、本実施形態では脱分化に重点を移し、細胞培養液、増殖因子、血清を使用し、ゼラチンなどの細胞外器質をコーティングした細胞培養皿を用いることで成体膵由来幹細胞を極めて効率よく製造することができる。また腺房細胞は、膵臓において極めて大量に存在するほか、ヒト膵島移植における膵島分離過程において廃棄していたものでもあり、これを利用することも可能となり、安定的かつ大量に成体膵由来膵幹細胞を得ることができるようにもなる。この効果の実証については後の実施例によっても明らかとなろう。また本実施形態では、細胞培養皿を用いて培養を行っているため、三次元培養のような複雑な培養ではなく、簡便な二次元培養で実現することができ、細胞の培養、継代、保存等の手段において非常に有用な手法となる。
なお、上記の方法により製造された成体膵由来膵幹細胞は、幹細胞の性質を保持したまま増殖することもでき、また他の細胞種に分化することができる。特に成体膵由来膵幹細胞はすい臓由来であるため、インスリン陽性の細胞へと分化させることができる。インスリン陽性の細胞への分化は、無血清培地をもちいた常法により概ね7〜14日で可能である。その際用いる培地には上記の細胞培養液にN2、B27サプリメントを添加したものが好適である。サプリメント中に含まれるretinoic acidが重要な役割を果たしていると思われるためである。これにより、成体膵由来膵幹細胞を得るだけでなく、様々に分化させることで細胞製剤として極めて有用な用途に応用することが可能になる。なお幹細胞の性質を保持したままの増殖は、上記完全細胞培養液において行うこともできるし、無血清培地のいずれにおいても行うことができる。ただし、無血清培地においては再分化が並行して行われることとなる。
(実施形態2)
実施形態1では血清を必須成分とした完全細胞培養液を用いているのに対し、本実施形態では血清を含まない無血清の完全細胞培養液を用いることが本実施形態の特徴のひとつである。それ以外の要素については実施形態1とほぼ同様であり、本実施形態では主として異なる要素についてのみ説明する。
本実施形態に係る完全細胞培養液は、上述のとおり、無血清の完全細胞培養液であって、細胞培養液と、TGFβスーパーファミリーと、糖代謝ホルモンと、増殖因子と、を含んでなることを特徴の一つとする。
TGFβスーパーファミリーとして例えばTGFβ、BMP2またはBMP4、アクチビンを用いることができる。ただし、得られる効果としてはBMP2またはBMP4を用いることが極めて望ましい。またTGFβスーパーファミリーの加える量としては10〜50ng/mlの範囲内にあることが望ましい。10ng/ml以下であると膵腺房細胞の脱分化の効果が得にくく、50ng/ml以上であれば効果の差異があまりみられなくなるためである。
ITS−Xは、細胞の糖代謝のために必要なホルモンであって、鉄イオンの輸送体であるとともに酵素ラジカルなどの毒性を低減させる役割がある。また、加えられるITS−Xの量としては、少なすぎると成体膵由来幹細胞の誘導の効果が得られない一方、あまりに多すぎると非生理的な状態となり、正常な機能が損なわれる虞があるため、1ng/ml〜100ng/mlの範囲内にあることが好ましく、より望ましくは10ng/ml〜80ng/mlの範囲内である。最も典型的な量としては50ng/mlである。
(実施例1)
次に、上記した実施形態1の例について図面を用いて更に詳細に説明する。なお本実施例ではマウスから採取した膵腺房細胞を用いて実験対象として用いているが、人体から採取した膵腺房細胞に対しても応用が可能であろうと考えられる。
(1)膵腺房細胞の分離
CD1マウス(4週齢)をisoflurenによる全身麻酔下で開腹し、膵臓を摘出した。膵臓は鋏を用いて約2ミリ角に細切した後collagenaseP(Rosche社)を0.2mg/mlの濃度で37度で10分間処理した。
次に、酵素を除くために5%のFBSを加えたHBSS(Hanks Balanced Buffer Solution、Invitrogen社)で2回洗浄した後、30%FBS HBSSにて遠心(1000rpm、1分間)することで膵腺房細胞を得た。
(2)成体膵由来膵幹細胞の誘導
あらかじめゼラチン(0.1%、Sigma)で細胞培養皿をコーティングした。そして上記の工程により得た腺房細胞を、IMDM培地90ml、FBS10ml、EGF50ng/ml含む完全細胞培養液に加え、上記細胞培養皿に塗布して培養を開始した。この開始時点における腺房細胞の状態を図1に示す。なお、腺房細胞の濃度は1×10acni cluster for 100mm dish程度とし、37度のCO incubaterで培養した。
この状態で約5日間静置したところ、腺房細胞は紡錘状に変化した。6日培養した後のこの状態を図2に示す。なおこの細胞に対し、マウス抗ネスチン抗体を用いた免疫細胞染色法により確認したところ、ほぼ100%Nestin陽性であって、この細胞が成体膵由来膵幹細胞に脱分化したことが確認できた。この染色の結果を図3に示す。
以上、腺房細胞より非常に効率よく成体膵由来膵幹細胞を得ることができるようになり、かつ細胞培養皿を用いた二次元培養が可能となり、非常に手続も簡単な成体膵由来膵幹細胞の製造方法が可能となった。
(3)幹細胞の性質を保持した状態における増殖及び他の細胞種への分化
本実施例では上記の方法により製造された成体膵由来膵幹細胞について、増殖及び他の細胞種への分化を行った。
(A)膵内分泌細胞への分化
膵内分泌細胞への分化は、無血清培地中で7−14日間培養することによって行った。なおこの場合において無血清培地は、DMEM/F12倍地(invitrogen社)を100ml、HGF500ng、ActibinAを500ng、Nicotanimide(NIC Sigma社)を1M溶液を1mlml含むものを用いた。この結果を図4に示す。なお図4はこの、無血清培地に移した後9日後(計15日後)の結果を示す図である。
この結果、細胞は増殖し、シート状になっていることが確認でき、更に、免疫細胞染色法により確認したところ、インスリン陽性である膵内分泌細胞が優位に発現していることが確認でき、膵内分泌細胞に分化したことが確認できた。この結果を図5に示す。
この結果より、膵内分泌細胞を成体膵由来膵幹細胞から約1週間、膵腺房細胞の分離から約2週間程度で得ることができ、しかもその効率は半分以上と非常に高いことが分かった。なお、NICを添加しない場合についても確認したところ、グルカゴン陽性細胞(α細胞)が優位に得られることが分かった。
以上、従来の幹細胞からの膵島細胞の誘導法と比較しても極めて少ない時間で細胞を作成することができ、しかも効率が極めて高いことが確認された。膵臓は90%以上の細胞が腺房細胞であり、ソースは極めて豊富である。ヒトへの応用を前提とした場合は、前述した倫理的法的問題が存在しないなど手技的にも規制の面からも、我々の方法は有利であると考えられる。
(B)神経細胞への分化
なお、本実施例においては神経細胞への分化についても試みた。神経細胞への再分化における無血清培地としては、DMEM/F12倍地(Iinvitrogen社)を100ml、N2 1ml、B27(Iinvitrogen社)1ml、Nicotinamideの1M溶液を1mlを含むものを用い、成体膵由来膵幹細胞は上記の方法により得られたものを用いた。
この無血清培地により約1週間の培養を行ったところ、neuron(MAP2陽性細胞)とastrocyte(GFAP陽性細胞)の二つの細胞が出現した。この結果を図6及び図7に示す。図6、7は無血清培地に移した後7日後(計15日後)の結果を示す図であり、図6は光学顕微鏡による観察結果を、図7は免疫細胞染色法による結果を示す図である。この結果から、本実施例で得られるNestin陽性細胞は、神経幹細胞の性質をも併せ持つことを見いだした。これによりNestin陽性細胞はTuj1陽性細胞であって、神経細胞分化へのPotentialを持つものと考えられる。
(実施例2)
本実施例では、TFGαの代わりにFGF10を用いた以外は実施例1とほぼ同じ条件で行った。FGF10も50ng/mlとなるように完全細胞培養液に加えている。なお、先ほどと同様、腺房細胞を培養6日後の結果を図8に示す。また本実施例においても免疫細胞染色法によりほぼ100%Nestin陽性であることを確認した。この結果を図9に示す。
本実施例においても、実施例1と同様、腺房細胞より非常に効率よく成体膵由来膵幹細胞を得ることができた。
(実施例3)
本実施例では、無血清培地による実施例である。
あらかじめゼラチン(0.1%、Sigma社)で細胞培養皿をコーティングした。そして上記の工程により得た腺房細胞を、DMEM/F12培地100ml、アルブミン(Sigma社)1g、EGF50ng/ml、BMP2 50ng/ml含む完全細胞培養液に加え、上記細胞培養皿に塗布して培養を開始した。なお、腺房細胞の濃度は1×104acni cluster for 100mm dish程度とし、37度のCO2 incubaterで培養した。
この状態で約5日間静置したところ、腺房細胞は紡錘状に変化しており、本実施例においても、実施例1と同様、腺房細胞より非常に効率よく成体膵由来膵幹細胞を得ることができた。
実施例1において培養開始時点における腺房細胞の状態を示す図。 実施例1において、6日培養した後の腺房細胞の状態を示す図。 実施例1において、6日培養した後の腺房細胞を染色した結果を示す図。 実施例1において培養した腺房細胞を膵内分泌細胞へ分化させた結果を示す図。 実施例1において培養した腺房細胞の分化を免疫細胞染色により確認した図。 実施例1において培養した腺房細胞を神経細胞へ分化させた結果を示す図。 実施例1において培養した腺房細胞の分化を免疫細胞染色により確認した図。 実施例2において、6日培養した後の腺房細胞の状態を示す図。

Claims (3)

  1. 血清と、TGFα、EGF、FGF10の少なくともいずれかを含む増殖因子と、を含有する完全細胞培養液を、ゼラチンを含んでなる細胞外器質がコーティングされた細胞培養皿に塗布し、膵腺房細胞を脱分化させてNestin陽性の成体膵由来膵幹細胞を製造する方法。
  2. 前記血清は、前記完全培養液に対して1〜20%の範囲内で含有されていることを特徴とする請求項1記載の成体膵由来膵幹細胞を製造する方法。
  3. 前記増殖因子は、前記完全培養液に対し1ng/ml〜100ng/mlの範囲内で含有されていることを特徴とする請求項1記載の成体膵由来幹細胞を製造する方法。
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