JP5582841B2 - 被検査体の放射線検査装置、放射線検査方法およびプログラム - Google Patents

被検査体の放射線検査装置、放射線検査方法およびプログラム Download PDF

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Description

本発明は被検査体の検査装置に関し、特に放射線を照射することにより得られる被検査体の透過像を利用して被検査体を検査する被検査体の検査装置に関する。
電子部品が実装された基板(以下「基板」という。)には、BGA(Ball Grid Array)やLGA(Land Grid Array)が実装されているものがある。これらの基板では、部品の電気接続部である端子は基板と部品との間に位置し、カメラを用いた従来の外観検査装置では部品と基板とを接合するはんだの状態を観察することが困難である。このため、基板に複数の異なる方向からX線を照射し、その透過画像に基づいて接合部分のはんだの立体形状を画像に再構成して検査する技術が提案されている(特許文献1参照)。
部品と基板とを接合するはんだの立体形状を画像に再構成するためには、その接合部分を含む基板上の領域に対して複数の異なる方向からX線を照射して、複数の放射線透過画像を撮像する必要がある。このため、X線検出器や基板を回転軌道上で回転させてX線を照射し、複数の放射線透過画像を撮像することが行われる。しかし、X線検出器を回転するには時間がかかり、被検査体である部品の接合部分が多くなると撮像時間が増加するという問題がある。
この問題を解決するために、例えば特許文献2には、基板とX線検出器とを動かす回転軌道上の複数の撮像ポイントで基板を平行移動させ、基板上の複数箇所に存在する接合部分それぞれの放射線透過画像を撮像する技術が開示されている。これによれば、基板とX線検出器とを一回転させる間に全ての撮像が終了する(特許文献2参照)。
特許文献2に開示されている技術では、X線検出器の回転にかかる時間と基板の平行移動にかかる時間とは考慮される。しかし、例えば部品毎にX線の線質を変更する場合にX線が安定するまでの時間は考慮されていない。また、X線検出器によって撮像されたX線透過データを蓄えるための画像バッファの制限も考慮されていない。検査装置全体としての撮像手順は最適化されているとまではいえず、計測速度には改善の余地があると考えられる。
特開2006−226875号公報 特開2008−116388号公報
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、被検査体に複数の方向からX線を照射して得られる複数の放射線透過画像を迅速に取得することのできる放射線検査装置を提供することにある。
本発明のある態様は放射線検査装置に関する。この装置は被検査体の複数の箇所に複数方向から放射線を照射し、複数の放射線透過画像を撮像する撮像手段と、放射線透過画像を撮像するための撮像条件に基づいて、前記複数の放射線透過画像を撮像するために要する時間が短くなる撮像経路を組み合わせ最適化問題を解くことで求める撮像経路取得手段とを備える。撮像手段は、組み合わせ最適化問題を解くことで求めた撮像経路にしたがって前記複数の放射線透過画像を撮像する。
本発明の別の態様は放射線検査方法に関する。この方法は、被検査体の放射線透過画像を撮像するための撮像条件をメモリから取得するステップと、撮像条件に基づいて被検査体の複数の箇所に複数方向から放射線を照射し、複数の放射線透過画像を撮像するために要する時間が短くなる撮像経路を組み合わせ最適化問題を解くことで求めるステップと、組み合わせ最適化問題を解くことで求めた撮像経路にしたがって前記複数の放射線透過画像を撮像するように放射線検査装置を制御するステップとをプロセッサに実行させる。
本発明のさらに別の態様はプログラムに関する。このプログラムは、被検査体の放射線透過画像を撮像するための撮像条件をメモリから取得する機能と、撮像条件に基づいて被検査体の複数の箇所に複数方向から放射線を照射し、複数の放射線透過画像を撮像するために要する時間が短くなる撮像経路を組み合わせ最適化問題を解くことで求める機能と、組み合わせ最適化問題を解くことで求めた撮像経路にしたがって前記複数の放射線透過画像を撮像するように放射線検査装置を制御する機能とをコンピュータに実現させる。
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本発明の表現を方法、装置、システム、コンピュータプログラム、データ構造、記録媒体等の間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
本発明によれば、被検査体に異なる複数の方向からX線を照射して得られる複数の放射線透過画像を迅速に取得することができる。
本発明の実施の形態に係る放射線検査装置の構成を模式的に示す図である。 図1のPCが処理する各機能ブロックを図示したものである。 実施形態に係る放射線検査装置の検査手順を説明するフローチャートである。 基板保持部に保持された基板上に存在する3つの部品を4つの撮像ポイントにて撮像する場合を図示したものである。 図4における12カ所の撮像ポイントに通し番号を付したものを模式的に表した図である。 図5に示す12カ所全てを撮像するときの撮像時間が短くなるような撮影経路を巡回セールスマン問題に置き換えることで求めた結果を模式的に示したものである。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態(以下、「実施形態」という。)について説明する。
図1は実施形態における放射線検査装置100を模式的に表した図である。放射線検査装置100は、PC(Personal Computer)10、モニタ12、線質変更部14、放射線発生器駆動部16、基板保持部駆動部18、検出器駆動部20、放射線発生器22、基板保持部24、検出器26を含む。
放射線発生器22はX線等の放射線を発生させる部分であり、これは例えば加速させた電子をタングステンやダイアモンド等のターゲットに衝突させることで放射線を発生する。
基板保持部24は被検査体である基板を保持する。基板保持部24に保持された基板に放射線発生器22で発生させた放射線を照射し、基板を透過した放射線を検出器26で画像として撮像する。以下、検出器26で撮像された基板の放射線透過画像を「透過画像」という。
透過画像はPC10に送られ、接合部分のはんだの立体形状を含む画像に再構成する。再構成された画像や透過画像は、PC10内のストレージや、図示しない外部のストレージに記憶される。以下、透過画像に基づいて接合部分のはんだの立体形状を含む3次元画像に再構成された画像を「再構成画像」という。また、再構成画像から任意の断面を切り出した画像を「スライス画像」という。再構成画像およびスライス画像はモニタ12に出力される。
線質変更部14は放射線発生器22で発生される放射線の線質を変更する。放射線の線質は、ターゲットに衝突させる電子を加速するために印加する電圧(以下「管電圧」という)や、電子の数を決定する電流(以下「管電流」という)によって定まる。線質変更部14は、これら管電圧と管電流とを制御する部分である。これは変圧器や整流器等、既知の技術を用いて実現できる。
放射線発生器駆動部16は図示しないモータ等の駆動機構を有しており、放射線発生器22をその焦点を通る軸に沿って上下に移動することができる。これにより放射線発生器22と基板保持部24に保持される被検査対象との距離を変えて照射野を変更し、検出器26に撮像される透過画像の拡大率を変更することが可能となる。
検出器駆動部20も図示しないモータ等の駆動機構を有しており、検出器回転軌道30に沿って検出器26を回転移動する。また、基板保持部駆動部18も図示しないモータ等の駆動機構を有しており、基板回転軌道28が張る平面上を、基板保持部24を平行移動させる。基板保持部24は、検出器26の回転移動と連動して、基板回転軌道28上を回転移動する構成となっている。これにより、基板保持部24が保持する基板と放射線発生器22との相対的な位置関係を変更させながら透過画像を撮像することが可能となる。
ここで、基板回転軌道28と検出器回転軌道30との回転半径は固定ではなく、自由に変更できる構成となっている。これにより、基板に配置される部品に照射する放射線の照射角度を変更することが可能となる。
PC10は、上記の放射線検査装置100の全動作を制御する。以下、PC10の諸機能について図を用いて説明する。なお、図示されていないが、PC10にはキーボードおよびマウスなどの入力装置が接続されている。
図2は、PC10が処理する各機能ブロックを図示したものである。PC10は、情報記憶部32、再構成画像生成部34、画像バッファ制御部36、放射線発生器制御部38、基板保持部制御部40、検出器制御部42、最適経路計算部44を含む。これらの各機能ブロックは、各種演算処理を実行するCPU、データの格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAMなどのハードウェア、およびソフトウェアの連携によって実現される。したがって、これらの機能ブロックはハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせによって様々な形で実現することができる。
情報記憶部32は基板の透過画像を撮像するための撮像条件や、被検査体である基板の設計等の情報を記憶する。情報記憶部32はまた、基板の透過画像や再構成画像、断面画像を記憶する。情報記憶部32はさらに、放射線発生器駆動部16が放射線発生器22を駆動する速度、基板保持部駆動部18が基板保持部24を駆動する速度および検出器駆動部20が検出器26を駆動する速度も格納されている。情報記憶部32には画像バッファ制御部36が制御対象とするバッファ46が保持することのできる最大のデータ容量や、透過画像の1枚あたりのデータ容量等も格納されている。
ここで「基板の設計情報」とは、ガーバーデータ(Gerber data)およびCAD(Computer Aided Design)データのことをいう。はんだ接合部分の座標を記録した情報をガーバーデータといい、搭載部品の種類および搭載位置の座標を記録した情報をCADデータという。はんだの接合部分および部品の搭載位置の座標は基板上に設定されたXY座標系の座標として記載される。ガーバーデータおよびCADデータを参照することで、基板上に存在する部品の種類やその大きさ、部品やはんだ接合部分の位置を得ることができる。また、「撮像条件」とは、ある部品と基板とを接合するはんだの再構成画像を計算するのに必要な透過画像を撮像するに際して、放射線検査装置100に設定されるパラメータのことをいう。これは例えば、基板上に実装された部品から見た放射線発生器22の仰角、再構成に要する透過画像の枚数、透過画像の拡大率、照射すべき放射線の線質等である。
部品から見た放射線発生器22の仰角は基板回転軌道28の回転半径を変更することで調整できる。再構成に要する透過画像の枚数は基板回転軌道28上の撮像ポイント(放射線を照射して透過画像を撮像するポイント)の数を変更することで調整できる。透過画像の拡大率は基板と放射線発生器22との距離を変更することで調整できる。照射すべき放射線の線質は管電圧および管電流を変更することで調整できる。
ここで、放射線の線質は、放射線の輝度と硬さ(放射線のスペクトル分布)とで定まる。管電流を大きくすればターゲットに衝突する電子の数が増え、発生する放射線の光子の数も増える。その結果、放射線の輝度が大きくなる。例えばコンデンサ等の部品の中には他の部品と比較して厚みがあるものもあり、これらの部品の透過画像を撮像するには輝度の大きな放射線を照射する必要がある。このような場合に管電流を調整することで放射線の輝度を調整する。また、管電圧を高くするとターゲットに衝突する電子のエネルギーが大きくなり、発生する放射線のエネルギー(スペクトル)が大きくなる。一般に、放射線のエネルギーが大きいほど物質の貫通力が大きくなり、物質に吸収されにくくなる。そのような放射線を用いて撮像した透過画像はコントラストが低くなる。このため、管電圧は透過画像のコントラストを調整するのに利用できる。また、透過画像の拡大率を変更するために放射線発生器22を上下に移動した場合、放射線発生器22と基板との距離の違いにより透過画像のコントラストに変化が生じる。この場合には、放射線の線質を変更することで透過画像のコントラストを調整する必要がある。
画像バッファ制御部36はバッファ46を有し、検出器26が撮像した透過画像を一時的に記憶する。画像バッファ制御部36はバッファ46に記憶された透過画像のデータ量を後述の最適経路計算部44に出力する。画像バッファ制御部36はまた、バッファ46に記憶された透過画像を情報記憶部32に転送する。
最適経路計算部44は、まず情報記憶部32から被検査体である基板の設計情報を取得する。次に取得した基板の設計情報に基づいて、その基板に実装されている部品の撮像条件を取得する。最後に、取得した部品の撮像条件に基づいて、再構成画像の計算に必要な透過画像を全て撮像するのに要する時間がなるべく短くなるような放射線検査装置100の動作手順を計算する。ここで動作手順とは、透過画像を撮像するために放射線発生器22、基板保持部24、検出器26を移動させる経路を調整する順番、および管電圧と管電流とを調整する順番のことをいう。以後、再構成画像の計算に必要な透過画像を全て撮像するのに要する時間がなるべく短くなるような動作手順を「最適経路」と呼ぶ。具体的な最適経路の計算の仕方は後述する。
放射線発生器制御部38は、最適経路計算部44が計算した最適経路に基づいて、線質変更部14に管電圧および管電流の値を指示する。また、放射線発生器制御部38は最適経路に基づいて放射線発生器駆動部16に放射線発生器を移動するよう指示する。
基板保持部制御部40は、最適経路に基づいて基板保持部駆動部18に基板の動作手順を指示する。また、検出器制御部42は最適経路に基づいて検出器駆動部20の動作手順を指示する。
このように最適経路計算部44が計算した最適経路に基づいて一括して動作手順を管理することで、放射線検査装置100全体として最適経路をたどるよう制御することが可能となる。
再構成画像生成部34は、以上の最適経路にて撮像され情報記憶部32に記憶された透過画像を読み出して、再構成画像を生成する。これは、例えばフィルタ補正逆投影法(Filtered−Backprojection法、FBP法)や最尤推定法等、既知の技術を用いて実現できる。再構成アルゴリズムが異なると、得られる再構成画像の性質や再構成に要する時間も異なる。そこで、あらかじめ複数の再構成アルゴリズムやアルゴリズムに用いられるパラメータを用意しておき、ユーザに選択させる構成としてもよい。これにより、再構成に要する時間が短くなることを優先したり、時間はかかっても画質のよさを優先したりするなどの選択の自由度をユーザに提供することができる。
なお、例えば再構成アルゴリズムがフィルタ補正逆投影法等、再構成に必要な全ての放射線透過画像が揃わなくても再構成画像の計算を開始できるアルゴリズムが存在する。再構成画像のみが必要で透過画像を保存する必要がないときには、このようなアルゴリズムを用いれば透過画像を撮像しつつ並行して再構成画像の計算を開始することができる。これにより、再構成画像の計算に用いられた放射線透過画像はバッファ46から削除することができ、バッファ46を節約して使用することができる。
図3は、実施形態に係る放射線検査装置100の検査手順を説明するフローチャートである。本フローチャートにおける処理は、例えば放射線検査装置100に設けられた検査開始のボタンがユーザによって押されたときに開始する。
PC10は、ワークエリアとして確保したRAM内に1ビットのフラグ(Flag)を用意し、当該Flagの値を0に設定する(S10)。このFlagは画像バッファ制御部36が制御するバッファ46に格納されている透過画像が所定量以下の場合は0に設定され、所定量を超えた場合には1に設定される。
ここでバッファ46の「所定量」とは、バッファ46がオーバーフローしないようにするために設定される警戒量のことをいう。例えば画像を1枚単位で転送する場合には、バッファ46が保持することのできる最大のメモリ容量から透過画像の1枚あたりのデータ容量を引いた容量を所定量とする。この場合、バッファ46の容量が所定量を超えている場合には、バッファ46に透過画像を追加することはできない。
最適経路計算部44は情報記憶部32から基板の設計情報と撮像条件とを取得し最適経路を計算する(S12)。最適経路が既に計算されて情報記憶部32に記憶されている場合には、最適経路計算部44は情報記憶部32から最適経路を読み出す。最適経路計算部44は、取得した最適経路に基づいて、放射線発生器制御部38、基板保持部制御部40、検出器制御部42に指示を出し、放射線検査装置100の撮像条件を設定する(S14)。撮像条件を設定したら、放射線発生器22から基板に放射線を放射し、検出器26を用いて透過画像を撮像する(S16)。
画像バッファ制御部36は、バッファ46に格納された透過画像が所定量を超えたかどうかを判定し、所定量を超えている場合には(S18N)、Flagに1を設定する(S30)。バッファ46に格納された透過画像が所定量を超えていない場合には(S18Y)、全ての撮像が終了したかどうかを判定する。判定の結果、全ての撮像が終了していない場合には(S20N)ステップS14に戻り、透過画像の撮像を続行する。全ての撮像が終了した場合(S20Y)、あるいはバッファ46の総量が所定量を超えている場合には、画像バッファ制御部36はバッファ46に格納されている透過画像を情報記憶部32に転送する(S22)。
透過画像を情報記憶部32に転送した時点で、Flagの値が1の場合には(S24N)、撮像の途中でバッファ46の総量が所定量を超えたことを意味する。この場合には全ての撮像は終了していないので、バッファ46を解放し(S32)、本フローチャートにおける先頭の処理(ステップS10)に戻る。この場合、最適経路計算部44は、既に撮像を終えた経路を除いた残りの経路について、最適経路を再計算する(ステップS12)。
検査対象の部品点数が多い場合や、再構成画像の計算に要する透過画像の枚数が多い場合には、撮像しなければならない透過画像の総数が多くなる。このような場合には、撮像しなければならない透過画像のデータ量が、バッファ46が格納することができる容量を超えることが起こりうる。このような場合にはバッファ46が所定量を超えた場合に進む経路(ステップS18Nの経路)をたどることになる。
なお、上記の説明ではFlagの値が1のときは最適経路を再計算する(ステップS12)場合について説明したが、最適経路を再計算するか否かはユーザがオプションで選択できるようにしてもよい。最適経路を再計算しない場合には、再計算に要する時間が省略でき撮像に要する時間が短くなるという利点が得られる。この場合、処理の開始当初の最適経路が維持される。また、上記の説明ではバッファ46に格納されている透過画像を情報記憶部32に転送するステップ(ステップS22)と最適経路を再計算するステップ(ステップS12)とを直列(前者が終了した後に後者を開始する)に実行される場合について説明したが、両者は並列に実行することができる。この場合、画像の転送中に最適経路の計算を開始できるため、撮像に要する時間を短縮することができる。これは画像バッファ制御部36にDMA(Direct Memory Access)の機能を持たせることで実現できる。
透過画像を情報記憶部32に転送した時点で、Flagの値が0の場合には(S24Y)、全ての撮像が終了しているので、再構成画像生成部34は情報記憶部32に格納された透過画像に基づいて、再構成画像を計算し(S26)。結果を情報記憶部32に格納する(S28)。再構成画像の格納が終わると本処理は終了である。以上の処理フローにより、検査対象の部品点数が多い場合やバッファ46の容量が少ない場合でも、再構成画像を計算するため必要な透過画像を全て撮像することができる。
次に最適経路の具体的な計算手法の一例について説明する。
再構成画像を計算するためには、はんだ接合部を含む領域に対して複数の角度から放射線を投射して得られる複数の透過画像が必要である。そこで、はんだ接合部を含む領域に対して複数の角度から放射線を投射するために、基板保持部24と検出器26とをそれぞれ回転軌道上に沿った複数の撮像エリアに移動する。それぞれの撮像エリアにおいて、基板保持部24を平行移動させ、放射線発生器22から放射される放射線の照射野をはんだ接合部を含む領域に合わせ撮像する。ここでは一例として、基板上にある3つの部品を4つの撮像エリアにおいて撮像する場合について考える。
図4は基板保持部24に保持された基板上に存在する3つの部品を、第1の撮像エリア48a、第2の撮像エリア48b、第3の撮像エリア48c、第4の撮像エリア48dの4つの撮像エリアにて撮像する場合を図示したものである。3つの部品はそれぞれ第1の部品50a、第2の部品50b、第3の部品50cであり、それらが4つの撮像エリアにおいて撮像されるので、全部で3×4=12箇所の撮像ポイントが存在することになる。
図5は、図4における12カ所の撮像ポイントに1〜12までの通し番号を付したものを模式的に表した図である。例えば第1の部品50aは、第1の撮像エリア48aにおいては、通し番号1番の撮像ポイントで、第2の撮像エリア48bにおいては、通し番号4番の撮像ポイントにて撮像されることを表している。一般に、撮像ポイントがN箇所のとき、通し番号のふり方はN!(Nの階乗)通りとなる。以後、撮像ポイントに対してふられる通し番号を単に「通し番号」と呼ぶ。
さて、あるひとつの通し番号がふられたとき、その通し番号にしたがって撮像条件を変更して撮像するときの、全ての撮像に要する合計時間Ttotalについて考える。ここで「撮影条件i」とは、通し番号がiの箇所における撮像条件を意味することとする。
まず撮像条件iから撮像条件jに変更する場合を考える。このとき、線質変更部14が管電圧や管電流を変更するのに要する時間をT(i,j)とする。ここで管電圧や管電流を変更するのに要する時間とは、管電圧や管電流を変更し、放射線発生器22が照射する放射線が安定するまでに要する時間である。また、放射線発生器駆動部16が放射線発生器22を移動するのに要する時間をT(i,j)、基板保持部駆動部18が基板保持部24を基板回転軌道28が張る平面上を平行移動するのに要する時間をT(i,j)とする。さらに、検出器駆動部20が検出器26およびそれと連動して基板保持部24を移動するのに要する時間をT(i,j)とする。こうすると、撮像条件iから撮像条件jに変更する時間T(i,j)は、max()を()内の最大の時間を表すものとして、T(i,j)=max(T(i,j),T(i,j),T(i,j),T(i,j))で表される。上記4つは独立して変更を開始できるから、最も長い時間を要する変更が終了したときには全ての変更が完了しているからである。
そうすると、あるひとつの通し番号が与えられたとき,その通し番号にしたがって全ての箇所に置いて撮像するときにかかる時間Ttotalは、通し番号にしたがって撮像条件を順番に変えたときの変更に要する時間の総和であり、下記式(1)で表される。
Figure 0005582841
撮像時間が最も短くなる最適な撮影経路を探す問題は、式(1)の左辺で表されるTtotalを最小とする通し番号のふり方を求める問題となる。すなわち、得られた通し番号の順に撮像を行えば撮像時間が最も短くなる。この問題は組み合わせ最適化問題と呼ばれる問題に属し、厳密な最適解を得るための計算時間はNが大きくなれば指数関数的に増加する。
ところで、異なるN個の地点に存在する町について、ある町から順に1回ずつ全ての町を訪れ、再び元の町に戻ることを考える。このとき、各町を巡回するときの道のりをできるだけ短くする経路を求める問題は、巡回セールスマン問題(Travelling Salesman Problem、TSP)として知られている。この問題も厳密な最適解を得るための計算時間はNが大きくなれば指数関数的に増加するが、まずまずの解であれば、例えばアニーリング法や遺伝的アルゴリズム等の既知の手法により、Nのべき乗程度の計算時間で得られることが知られている。実施形態におけるTtotalを最小とする通し番号のふり方を求める問題は、T(i,j)をi番目の町からj番目の町までの「距離」とみなせば、巡回セールスマン問題に完全に置き換えることができる。したがって、Ttotalを最小とする通し番号のふり方を求める問題も、アニーリング法や遺伝的アルゴリズム等の既知の手法により実用可能な計算時間で計算することができる。
放射線発生器駆動部16が放射線発生器22を移動するのに要する時間をT(i,j)、基板保持部駆動部18が基板保持部24を移動するのに要する時間T(i,j)、検出器駆動部20が検出器26およびそれと連動して基板保持部24を移動するのに要する時間T(i,j)はあらかじめそれらの移動速度を計測しておき、情報記憶部32に記憶しておけばよい。また、部品毎の最適な管電流や管電圧、部品と放射線発生器22との距離等は、あらかじめ実験で定めて情報記憶部32に記憶しておき、ガーバーデータおよびCADデータに基づいて適宜呼び出す構成とすればよい。線質変更部14が管電圧や管電流を変更するのに要する時間T(i,j)は、あらかじめ異なる複数通りの条件で時間を計測し、表の形で情報記憶部32に記憶しておき、表に存在しない値を参照する必要があるときは、適宜補間計算をして求めればよい。
上記の計測は、例えば工場での出荷前に計測してあらかじめ情報記憶部32に記憶しておけばよい。出荷後は、例えば装置を立ち上げる度に、あるいは適当な期間を定めて定期的にユーザまたはサービスエンジニアの手によりキャリブレーションするようにしてもよい。これにより、経年変化等の装置固有の条件に合致した最適経路を計算することができる。その場合は、誤ったデータが入力されてしまった場合に備え、工場出荷時のデータを復元できるようにそれらを読み出し専用メモリ等に格納しておいてもよいし、インターネット等の通信手段を用いてダウンロードできる構成としてもよい。
図6は図5に示す12カ所の撮像ポイント全てにおいて撮像するときの撮像時間が短くなるような撮影経路を巡回セールスマン問題に置き換えることで求めた結果を模式的に示したものである。図5において始めにふした通し番号に置き換えて読み直すと、通し番号1から撮像を始め、1→3→4→6→5→9→7→8→10→12→11→2の順番で撮像する経路を示していることになる。この順番で撮像条件を設定して撮像すれば、全ての透過画像を撮像するのに要する時間が短くなる。
以上説明したように実施形態によれば、放射線発生器22、基板保持部24、検出器26の移動にかかる時間、X線の線質を変更したときのX線が安定するまでの時間や、検出器26によって計測された透過画像を格納ためのバッファ46の制限等、放射線検査装置100全体としての最適な撮像経路を計算することが可能となる。
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
上記の説明においてはガーバーデータやCADデータおよび撮影条件に基づいて最適経路を計算することについて説明したが、一度計算で求めた最適経路は製品番号等の基板を特定できる情報とともに、情報記憶部32に記憶しておく構成としてもよい。これにより、将来同じ構成の部品を検査することになった場合に、再度最適経路の計算をする手間を省くことができる。また、汎用的でよく用いられる基板については、あらかじめ最適経路を計算して情報記憶部32に記憶しておき、検査の際にはそれを読み出す構成としてもよいし、インターネット等の通信手段を用いてダウンロードできる構成としてもよい。
上記の説明においては撮像に要するトータルの時間Ttotalを式(1)の形で定めたが、これは撮影条件iから撮影条件jへの移動を全て対等に扱う場合の式である。何か特別な事情、例えば消費電力を抑えるために管電圧や管電流をなるべく変更したくないという事情や、装置の耐久性の観点から検出器26をなるべく移動したくないという事情等がある場合には、式(1)に補助項を導入することにより、それらの事情を反映することができる。以下、このことについて説明する。
具体例として、管電圧や管電流をなるべく変更したくない場合について考える。撮像ポイントをN箇所としたとき、N個のパラメータμij(i,j=1,2,・・・,N)を補助項として用意する。例えば図5においてはN=12である。いま、撮像条件iから撮像条件jに変更する場合を考える。撮像条件iにおける管電圧および管電流がそれぞれV、I、撮像条件jにおける管電圧および管電流がそれぞれV、Iであるとすると、適当な正の値である第1の定数λおよび第2の定数λを用意してμij=(λ|V−V|+λ|I−I|)とする。すなわち、各撮像条件における管電圧どうしの差の絶対値および管電流どうしの差の絶対値を、それぞれ所定の定数倍して足し合わせた量を補助項μijとする。
もしVとVとに差がある場合またはIとIとに差がある場合には、補助項μijの値は正となる。そして、VとVとに差がある大きいほど、またはIとIとの差が大きいほど補助項μijの値は大きくなる。この補助項μijを用いて式(1)を以下の式(2)に書き換える。
Figure 0005582841
すなわち、撮像条件の変更に要する時間に補助項μijを加えた式でTtotalを計算すればよい。
上記の式により、補助項μijの値が大きくなるような通し番号のふり方、すなわち管電圧または管電流を変更する必要がある経路には補助項μijの項によるペナルティがかかり、結果としてそのような経路は選ばれにくくなる。第1の定数λおよび第2の定数λはペナルティ項の強さを定める値であり、第1の定数λまはた第2の定数λが大きいほどペナルティが大きいことを表す。具体的な第1の定数λおよび第2の定数λの値については諸事情を考慮しつつ実験により定めればよい。
なお、上記は電圧および管電流を変更する場合について説明したが、例えば検出器26をなるべく移動したくないという事情等についても同様の手法により対応することができる。
上記の説明では管電圧や管電流の変更、放射線発生器22の移動、基板保持部24をの平行移動、検出器26の移動を独立して実施できる場合について説明したが、独立でない場合でも式(1)および(2)の一部を修正することにより対応できる。例えば、放射線発生器22を移動している間は管電圧・管電流を変更できないというような事情がある場合には、T(i,j)とT(i,j)の双方を同時に配慮する。具体的にはそれらの和に注目すればよく、T(i,j)+T(i,j)としてTtotalを計算すればよい。
上記の説明では基板に実装された部品全てについて撮像ポイントが同数の場合、すなわち、再構成画像を生成するために要する透過画像の枚数が同数の場合について説明したが、部品によって撮像ポイントの数が異なっていてもよい。例えば基板に実装された部品は部品A、部品Bのふたつであり、部品Aの撮像ポイントが4カ所、部品Bの撮像ポイントが8カ所である場合には、通し番号の総数を4+8=12とすれば上記の説明と同様に計算できる。
上記の説明では撮像の最適経路を組み合わせ最適化問題の解として求めたが、撮像ポイントの数Nが十分小さい場合や、解を求めるための時間を十分に取れる等の事情がある場合には、全数探索をすることによって求めてもよい。
10 PC、 12 モニタ、 14 線質変更部、 16 放射線発生器駆動部、 18 基板保持部駆動部、 20 検出器駆動部、 22 放射線発生器、 24 基板保持部、 26 検出器、 28 基板回転軌道、 30 検出器回転軌道、 32 情報記憶部、 34 再構成画像生成部、 36 画像バッファ制御部、 38 放射線発生器制御部、 40 基板保持部制御部、 42 検出器制御部、 44 最適経路計算部、 46 バッファ、 48 撮像エリア、 50 部品、 100 放射線検査装置。

Claims (1)

  1. 被検査体の複数の箇所に複数方向から放射線を照射し、複数の放射線透過画像を撮像する撮像手段と、
    放射線透過画像を撮像するための撮像条件に基づいて、前記複数の放射線透過画像を撮像するために要する時間が短くなる撮像経路を組み合わせ最適化問題を解くことで求める撮像経路取得手段とを備え、
    前記撮像手段は、前記組み合わせ最適化問題を解くことで求めた撮像経路にしたがって前記複数の放射線透過画像を撮像し、
    前記撮像手段は、撮像した放射線透過画像を一時的に保持する画像バッファと長期間保存するための情報記憶手段、および画像バッファと情報記憶手段との間の入出力を制御する画像バッファ制御手段を含み、
    前記画像バッファに保持された放射線透過画像の総量が所定の量を超えた場合に、前記画像バッファ制御手段は画像バッファに保持されている放射線透過画像を前記情報記憶手段に転送して画像バッファを解放し、前記撮像経路取得手段は撮像を終了した経路を除いた残りの経路について組み合わせ最適化問題を解いて撮像経路を再設定することを特徴とする放射線検査装置。
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