JP5572738B1 - 予測装置、予測方法及びコンピュータプログラム - Google Patents

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Abstract

【課題】時系列的に変化する事象に係る値を予測するための予測装置、予測方法及びコンピュータプログラムの提供。
【解決手段】非周期的に変化する事象に係る値と、該事象に関連する複数の関連事象の夫々を項目とする各項目の項目値とを対応付けて時系列的に記録する記録手段、予測対象期間の直近の期間における前記値の経時変化傾向と同一傾向である期間を特定する手段、予測対象期間よりも所定期間前の期間における各項目値を用いて、各項目のマハラノビス距離を算出する手段、特定した期間内のマハラノビス距離の長短に基づき、前記事象に係る値を選択する手段、選択した値と、該値が属する期間よりも所定期間前の期間における項目値とを用いて相関の強さを導出する手段、及び導出した相関の強さに基づき、予測対象期間における前記事象に係る予測値を算出する手段を備える。
【選択図】図10

Description

本発明は、時系列的に変化する事象に係る値を予測するための予測装置、予測方法及びコンピュータプログラムに関する。
製品の需要予測及び販売予測等の経済予測は、会社経営における方向性及び戦略を検証する上で、極めて重要である。そして、予測した需要を販売、在庫、生産、物流、開発等の各部門の計画にどのように結び付けるかが経営課題となっている。更に、需要予測、販売予測等の経済的な事象に対する予測に限らず、経時的に変化する事象についてそれまでの情報を用いて以降の事象について予測することは様々な分野で重要な課題である。
製品の需要台数、又は販売台数等の時系列的に推移する事象の以後の変化を予測するための方法として、種々の時系列分析方法が提案されている。このような分析方法としては、重回帰分析、T法等の多変量解析が挙げられる(例えば、特許文献1、非特許文献1)。更に、これらの分析方法に対して種々の応用案が提案されている(非特許文献2等)。
特許第3141164号公報
立林和夫編著、手島昌一、長谷川良子著、「入門MTシステム」、日科技連出版社、2008年12月 増田雪也、「非線形成分を考慮したT法の研究」、第17回品質工学研究発表大会 論文集、p.422−425、2009年
T法は元来、時系列データの予測のための方法ではない。時間軸の概念は特に無く、多数の要因が関連する事象の値に対し、いずれの要因が最も影響があるかを選択するための方法である。T法を時系列データの予測方法に用いる場合、ある期間における各項目の項目値と信号値との関係を特定して、次の期間の信号値を予測するのである。このため、各項目の項目値における推定誤差が重なって、信号値の予測精度を悪化させるという問題点を有していた。
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、信号における経時変化の傾向を反映させて予測精度を向上させることができる予測装置、予測方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
本願の予測装置は、非周期的に変化する事象に係る値と、該事象に関連する複数の関連事象の夫々を項目とする各項目の項目値とを対応付けて時系列的に記録する記録手段を備え、該記録手段に記録されている期間内の第1期間における前記事象に係る値と、前記第1期間よりも所定期間前の第2期間における前記関連事象に係る項目値との相関の強さに基づき、予測対象期間における前記事象に係る値を予測する予測装置であって、前記予測対象期間の直近の期間における前記事象に係る値の経時変化傾向と同一傾向である期間を前記記録手段に記録されている期間から特定する期間特定手段と、前記予測対象期間よりも前記所定期間前の期間における項目値を含む各項目の項目値を用いて、各項目のマハラノビス距離を算出する手段と、前記期間特定手段により特定した期間内の前記マハラノビス距離の長短に基づき、前記相関の強さを導出する際に用いるべき前記事象に係る値を選択する選択手段と、該選択手段が選択した値と、該値が属する期間よりも前記所定期間前の期間における項目値とを用いて、前記相関の強さを導出する導出手段と、該導出手段により導出した相関の強さに基づき、前記予測対象期間における前記事象に係る予測値を算出する予測手段とを備えることを特徴とする。
本願の予測装置は、前記選択手段は、前記マハラノビス距離の正規確率及び該正規確率の経時変化傾向を示すトレンド曲線を算出する手段と、算出したトレンド曲線が示す正規確率を第1閾値と比較し、前記正規確率が前記第1閾値以上の第1トレンド区間と、前記正規確率が前記第1閾値未満の第2トレンド区間とを判別する判別手段と、前記予測対象期間の直近の期間を含み、連続する前記第1及び第2トレンド区間を夫々1つずつ選択する区間選択手段と、前記期間特定手段が特定した期間内であって、前記区間選択手段が選択した区間に対応する対応期間内の項目値を用いて、各項目のマハラノビス距離及び該マハラノビス距離の経時変化傾向を示すトレンド曲線を算出する算出手段と、前記予測対象期間の直近における前記トレンド曲線が示すマハラノビス距離を第2閾値と比較し、前記マハラノビス距離が前記第2閾値以上(前記第2閾値未満)である場合、前記対応期間内の前記事象に係る値のうち、前記第2閾値以上(前記第2閾値未満)の値を選択する手段とを備えることを特徴とする。
本願の予測装置は、前記導出手段は、前記事象に係る値の変化に対する各項目の相関の強さを示す要因効果値を算出する手段と、算出した要因効果値に基づき、前記事象に係る値の予測に用いるべき項目を選択する項目選択手段とを備えることを特徴とする。
本願の予測装置は、前記事象に係る値を対数変換する手段と、対数変換した値に対し、前記項目に係る項目値を2次変数変換する手段とを備え、変換後の前記事象に係る値及び前記項目に係る項目値を用いて前記要因効果値を算出するようにしてあることを特徴とする。
本願の予測方法は、非周期的に変化する事象に係る値と、該事象に関連する複数の関連事象の夫々を項目とする各項目の項目値とを対応付けて時系列的に記録する記録手段を備えたコンピュータにより、該記録手段に記録されている期間内の第1期間における前記事象に係る値と、前記第1期間よりも所定期間前の第2期間における前記関連事象に係る項目値との相関の強さに基づき、予測対象期間における前記事象に係る値を予測する予測方法であって、前記コンピュータは、前記予測対象期間の直近の期間における前記事象に係る値の経時変化傾向と同一傾向である期間を前記記録手段に記録されている期間から特定し、前記予測対象期間よりも前記所定期間前の対応期間における項目値を含む各項目の項目値を用いて、各項目のマハラノビス距離を算出し、特定した期間内の前記マハラノビス距離の長短に基づき、前記相関の強さを導出する際に用いるべき前記事象に係る値を選択し、選択した値と、該値が属する期間よりも前記所定期間前の期間における項目値とを用いて、前記相関の強さを導出し、導出した相関の強さに基づき、前記予測対象期間における前記事象に係る予測値を算出することを特徴とする。
本願のコンピュータプログラムは、非周期的に変化する事象に係る値と、該事象に関連する複数の関連事象の夫々を項目とする各項目の項目値とを対応付けて時系列的に記録する記録手段を備えたコンピュータに、該記録手段に記録されている期間内の第1期間における前記事象に係る値と、前記第1期間よりも所定期間前の第2期間における前記関連事象に係る項目値との相関の強さに基づき、予測対象期間における前記事象に係る値を予測させるコンピュータプログラムであって、前記コンピュータを、前記予測対象期間の直近の期間における前記事象に係る値の経時変化傾向と同一傾向である期間を前記記録手段に記録されている期間から特定する期間特定手段、前記予測対象期間よりも前記所定期間前の対応期間における項目値を含む各項目の項目値を用いて、各項目のマハラノビス距離を算出する手段、前記期間特定手段により特定した期間内の前記マハラノビス距離の長短に基づき、前記相関の強さを導出する際に用いるべき前記事象に係る値を選択する選択手段、該選択手段が選択した値と、該値が属する期間よりも前記所定期間前の期間における項目値とを用いて、前記相関の強さを導出する導出手段、及び該導出手段により導出した相関の強さに基づき、前記予測対象期間における前記事象に係る予測値を算出する予測手段として機能させる。
本願では、非周期的に変化する事象に係る値と、該事象に関連する複数の関連事象の夫々を項目とする各項目の項目値とを対応付けて時系列的に記録する記録手段から、前記事象に係る値及び各項目の項目値が読み出され、事象に係る値及び項目値の経時変化傾向が特定される。予測対象期間の直近の期間における経時変化傾向と同一傾向である期間を特定し、予測対象期間よりも所定期間前の対応期間における項目値を用いてマハラノビス距離を算出し、そのマハラノビス距離の長短に基づき相関の強さを求める際に用いる値が選択される。選択された値と対応する項目値とに基づき、予測対象期間における値が予測される。
本願によれば、予測対象の値における経時変化に周期性が見られない場合であっても、過去の信号における特徴的な経時変化の傾向(トレンド)を的確に抽出し、抽出した信号及び対応する各項目の項目値を予測に用いることで、信号が急増する場合又は急減する場合等において精度良く予測値を求めることができる。
T法で用いる信号及び各項目の内容例を示す説明図である。 T法で用いる各項目の比例定数β及びSN比η(2乗比)の一例を示す説明図である。 各メンバーの実際の信号値又は基準化した信号値の実値と、各メンバーについて求めた総合推定値を一覧形式で示した図である。 T法における各項目の総合推定値のSN比を示す要因効果図である。 T法における各項目の要因効果に対する影響を示すグラフである。 時間差モデルを概念的に説明する説明図である。 項目選択数を決定するための処理を概念的に示すグラフである。 項目選択数と総合推定値のSN比との対応を示すグラフである。 本実施の形態に係る予測装置の構成を示すブロック図である。 予測装置による予測処理手順の一例を示すフローチャートである。 信号期間の選択時に実行する処理の手順を示すフローチャートである。 本実施例における項目の内容を示す説明図である。 本実施例にて予測に用いる信号値の内容を示すグラフである。 予測対象の信号の標本自己相関関数を示すグラフである。 信号選択手順を説明する説明図である。 本実施例における予測結果の一例を示すグラフである。 従来のT法による予測結果との比較例を示すグラフである。 本実施例における予測結果の他の例を示すグラフである。 従来のT法による予測結果との比較例を示すグラフである。 本実施例における予測結果の他の例を示すグラフである。 従来のT法による予測結果との比較例を示すグラフである。
本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
本願の予測方法は、従前から利用されているMTシステム(例えば、T法)を用いた方法を基本として、非周期的に変化する事象に係る値(信号)の経時変化を予測するために、時間差モデルを導入したものである。本願では、信号の要因となり得る複数の関連事象の夫々を項目とした項目値を、信号に対応付けて時系列的に記録しておき、信号及び項目値の相関の強さに基づき、予測に用いる信号及び項目の取捨選択を行うことを特徴の1つとしている。
なお、以下の予測方法は、予測に用いるデータを記録している記録手段から各データを読み出すことができるコンピュータ(後述する予測装置)などの演算手段により実施されるものである。
まず、本願の予測方法の基本となるT法の概要について説明する。図1はT法で用いる信号及び各項目の内容例を示す説明図である。図1において、メンバーとは、単位期間毎のデータであることを示すインデックスであり、1,2,…,nとして示している。事象に係る値は、信号値Mとして記録される。「項目1」、「項目2」、…、「項目k」は、信号値Mに関連する複数の関連事象の夫々を示している。X11,X12,…,X1kは、メンバー1の信号値M1 に関連する各項目の項目値を示している。例えば、メンバーが月毎の電気使用量である場合、月毎の電気使用量(W)が信号値Mであり、項目値として、「月」、「気温」、「風速」、「降水量(月平均)」、「日照時間(月平均)」、「最高気温(月平均)」、「最低気温(月平均)」…等の電気使用量の上下に関連するであろう変量を記録する。
なお、信号値M及び各項目値Xは、実際の値を用いてもよいが、演算手段を用いて規準化しておいてから用いることが好ましい。規準化の方法は例えば、演算手段が、各項目の項目値X(例えば月平均の気温)から、当該項目の項目値の平均値(用いる全メンバーの月平均の気温の平均値)を減算しておくなどの方法がある。これにより、信号値に対して項目値をプロットした場合に(単位空間とよぶ)、原点を通る直線として予測式を表現することが可能となる。
T法では、各メンバーの信号値Mと、関連する多変数である項目値との関係を特定する特定式を求め、予測対象である次の単位期間の項目値を予測し、その予測した項目値を特定式にあてはめて、予測するものである。しかしながら、項目のデータは多変量である。例えばメンバーが12個であって、項目の数が20(k=20)存在する場合がある。このような場合、次の信号値を予測するのに特定式を求めることが難しくなる。T法は、多数の項目夫々に対して、信号値の変動に対する要因効果の強さを示す値を評価し、要因効果を示す値を重み付けする。これにより、効果的な項目を選択することにより、全ての項目のデータを使用せずとも、選択された項目を使用することで十分に精度の高い予測等を行うことができるというものである。
そこで、T法では、演算手段によって、信号値Mを持つメンバーを用いて、項目毎に比例定数βと、SN比η(2乗比)とを下記の式1及び式2を適用して算出する。SN比とは、式2に示すような分散の逆数を用いて示される値であり、各項目に対する信号値の感度であり、各項目と信号値との相関の強さを示す。
Figure 0005572738
なお、上述の式1及び式2は、項目1についての比例定数β及びSN比η(2乗比)を求める式である。演算手段は、項目2から項目kについても項目1と同様の計算を行なう。図2はT法で用いる各項目の比例定数β及びSN比η(2乗比)の一例を示す説明図である。図2では、上述の式1及び式2を各項目に適用することによって算出した項目毎の比例定数β及びSN比η(2乗比)を表形式で示している。
次に、項目毎の比例定数β及びSN比η(2乗比)を用いて、各メンバーについて、演算手段によって項目毎の出力の推定値を求める。第i番目メンバーについて、項目1による出力の推定値は、下記の式3にて示すことができる。また、同様に、演算手段により、項目2から項目kによる出力の推定値を求める。
Figure 0005572738
これにより、演算手段は、項目値と信号値の総合推定値との関係を示す予測式として、総合推定式(式4)を導出することができる。ただし、予測対象の信号値に対し、全ての項目(1〜k)を用いた総合推定式が最も予測精度が高いわけではない。そこで、予測対象への影響に対する寄与を高くし、予測精度を高めるべく、演算手段によって全ての項目のうちから適切な項目の組み合わせを選択する。
そこで、演算手段によって各項目の推定値についての推定精度であるSN比η1 ,η2 ,…,ηk (2乗比)を重み付け係数として用いた総合推定値を算出する。従って、第i番目のメンバーの総合推定値は、下記の式4にて示すことができる。
Figure 0005572738
図3は各メンバーの実際の信号値又は基準化した信号値の実値と、各メンバーについて求めた総合推定値を一覧形式で示した図である。そして、図3に示したように得られた各メンバーの実値と総合推定値とを用い、演算手段は下記式5によって、各項目について、総合推定値のSN比η(db)を算出する。
Figure 0005572738
T法では、上述したように求めた各項目についての総合推定値を用いて更に、要因効果値という値を求め、要因効果値を元に項目を選択するなどの方法がとられている。図4はT法における各項目の総合推定値のSN比を示す要因効果図であり、図5はT法における各項目の要因効果に対する影響を示すグラフである。
図4は、横軸に選択の対象となる項目を示し、縦軸に総合推定値のSN比をとって、各項目についてのSN比を示している。また図4では、各項目について、左側にその項目のデータを含む各データに対する総合推定値のSN比、即ち信号値との相関の強さを示し、右側にその項目のデータを除いた各データに対する総合推定値のSN比を示している。図4に示す例では、項目は36個あり、選択の組み合わせは236通り存在する。演算手段は、これらの各組み合わせについて1又は複数の項目に対する予測対象のSN比を導出する。そして、演算手段は、対象となる当該項目を含む組み合わせのSN比の平均値と、当該項目を含まない組み合わせのSN比の平均値とを算出する。図4では、このようにして算出された当該項目のデータを含むSN比の平均値を左側に、当該項目を含まないSN比の平均値を右側に、項目毎に示したものである。
図5は、横軸に選択の対象となる項目を示し、縦軸に要因効果値をとって、各項目についての要因効果値の度合いを示している。図5の縦軸の要因効果値は、図4における予測対象の相関の強さをdb単位で示した各項目の総合推定値のSN比について、右側の(項目を含まない)SN比に対する左側の(項目を含む)SN比の度合い、即ち、左側のSN比から右側のSN比を減じた値を示している。つまり、項目毎に、その項目を含む場合の、含まない場合に対するSN比への効果度を示している。したがって算出された要因効果値が正である項目は、その項目を使用することにより、総合推定値のSN比が上昇することを示している。両側T法と呼ばれる方法においては、このような要因効果値が正である項目のみを選択し、上述に示したようなT法による解析が行なわれる。
上述に示したようなT法(両側T法)を用いて予測を行なう場合には依然として、実際の予測精度が高まらない。そこで発明者はまず、上述のT法に、時間差モデルという考え方を適用し、信号値と項目のデータの値との非線形性を考慮した変換処理を行ない、更に、項目選択方法として、要因効果値の正負によって選択する方法ではなく、総合推定値のSN比を最大化する方法を用いることとした。
次に、本願の予測方法にて導入する時間差モデルについて説明する。
T法は元来、時系列データの予測のための方法ではない。時間軸の概念は特に無く、多数の要因が関連する事象の値に対し、いずれの要因が最も影響があるかを選択するための方法である。T法をそのまま予測方法に用いる場合、上述したように、各メンバーの項目毎の項目値と信号値との関係を特定して、次のメンバーの信号値を予測するのである。したがって、次のメンバーの信号値を予測するには、次のメンバーの項目毎の項目値を予測しなければならない。このときの各項目の項目値の推定誤差が重なって、信号値の予測精度を悪化させることは容易に想定される。また、時系列に推移していくデータを元に、次の信号値を予測する場合、特に経済予測又は販売予測のような分野では、未来に起こる事象には、過去にその予兆があるはずである。そこで、発明者は、上述したような信号値と項目毎の項目値との対応付けを、同時期のメンバーではなく、所定時間ずらしたものどうしで対応付けることとした。具体的には、本実施の形態の予測方法を実施する演算手段は、ある期間における項目毎の項目値に対し、所定期間後の信号値を対応づけ、これらの間で式1〜5の計算を行ない、結果得られた総合推定式を用い、現在(直近)の任意の期間の項目毎の項目値に基づき、所定期間後の信号値を推定(予測)する。
図6は時間差モデルを概念的に説明する説明図である。図6では、図の左から右へ向かって時間の経過を示している。図6の下部の各矩形は、1年毎の各項目の項目値を示し、上部の各矩形は、各項目と同時期の1年毎の信号を示している。時間差モデルでは、同時期の信号と各項目の項目値とを対応付けるのではなく、信号Mi に対して、所定期間前の各項目の項目値Xi-t 1 ,Xi-t 2 ,…,Xi-t k (図6の例では、t=1年)を対応付ける。
なお、図6に示す時間差モデルの例では、1年間の信号を前年の1年間の項目値に対応付ける構成としたが、これらの期間は図6に示す期間に限定されるものではなく、適宜設定し得るものである。
本実施の形態の予測方法では、演算手段は、時間差モデルを適用した信号及び各項目の項目値を、上述した式1〜式5における信号値M1 及び項目値X11,X12,…,X1kの関係に当てはめてT法を適用する。そして、予測対象期間の信号値は、所定期間前の各項目の項目値(図6に示す1990年1月から12月までの項目値)を総合推定式(式4)に入力することによって求める。つまり、本実施の形態の予測方法における時間差モデルでは、演算手段は、複数項目の項目値と所定期間後の信号値との関係を特定することにより、過去又は現在の項目値から、未来の信号値を予測することを可能とするものである。
以上の、本実施の形態では、予測対象期間である1991年の信号(未知信号)を予測するために、1976年〜1990年までの各年の信号(既知信号)と、1975年〜1989年までの各年の項目(既知項目)とを対応付ける時間差モデルを導入する構成とした。1990年の各項目(すなわち、予測対象期間よりも所定期間前の対応期間の項目)は、既に取得済みのデータではあるが、時間差モデルには使用していない項目であるため、以下の説明では「未知項目」と呼ぶこととする。
本実施の形態の予測方法では、上述した時間差モデルに加えて、最良予測スキームを採用する。最良予測スキームは、対数変換した信号に対して項目を2次変数変換し、信号及び項目の双方について分散の安定化を図り、T法計算で総合推定SN比が最大になる項目選択により予測値を得る方法である。
以下、最良予測スキームで実施する変数変換について説明する。従来のT法では、項目毎に、項目のデータと信号値との関係に対し、ゼロ点を通る直線が設定され、この直線からのずれに基づく重み付け(SN比として数値化)が行なわれる。このような線形変換では、直線に対するばらつきが少ない項目ほど、信号値の変化に対し寄与する項目であり、ばらつきが多い、すなわち項目値の変化と信号値の変化とに相関がない項目ほど、信号値の変化に寄与しない項目となる。しかしながら、全ての項目の項目値が、信号値との関係において直線、即ち線形な関係を有しているとは限らない。そこで、最良予測スキームでは、信号について対数変換を行うと共に、対数変換した信号に対して項目を2次変数変換を行う。
なお、上述した時間差モデルにおいて、未知項目に対応する未知信号は不明であるため、未知信号の変数変換はできない。このため、本実施の形態では、既知項目について変数変換を行ったときの変換係数(すなわち、2次項の係数、1次項の係数、及び定数)を流用して、未知項目における項目値の変数変換を実施するようにしている。
次に、項目選択について説明する。図7は項目選択数を決定するための処理を概念的に示すグラフである。まず、時間差モデルを適用し、変数変換処理を行なった信号値と項目毎の項目値について、式1〜式5を適用して各項目の総合推定値のSN比を算出する。そして図4及び図5について説明したように、演算手段が、総合推定値のSN比から、項目毎の要因効果値を算出する。図7に示すように、演算手段はまず、項目毎の要因効果値の最小値を初期的な閾値として設定する。演算手段は、要因効果値が閾値以上である項目を選択し、信号値(例えば1〜n全て)に対する総合推定値のSN比を算出する。閾値が初期値である場合、全項目が選択される。次に演算手段は、閾値に所定値を加算した値を次の閾値として設定し、同様にして要因効果値が閾値以上である項目を選択し、信号値に対する総合推定値のSN比を算出する。演算手段がこのような処理を、閾値が要因効果値の最大値以上、即ち図7のMAXとして示したラインに到達するまで繰り返すことにより、選択した複数の項目の項目値に対する総合推定値のSN比を、項目数毎に算出することが可能である。なお、演算手段は、閾値の初期値を最大値MAX以上に設定し、閾値を所定値ずつ小さくし、各閾値以上の要因効果値である項目を選択して総合推定値のSN比を算出していくようにしてもよい。
図8は項目選択数と総合推定値のSN比との対応を示すグラフである。図8において、黒丸で示す推移は、信号について対数変換を行い、対数変換した信号に対し、各項目の項目値を2次変数変換を行なった場合の総合推定値のSN比の一例を表している。SN比の値のうち、白抜きの四角は、要因効果値が正の項目を選択するという両側T法を用いて項目を選択した場合の総合推定値のSN比である。白抜きの菱形は、全項目を選択した場合の総合推定値のSN比を示す。白丸は総合SN比が最大となる項目数を示している。図8に示すように、要因効果値が正の項目を選択する方法では、総合推定値のSN比は最大とならず、図7に示した方法を実施することにより、総合推定値のSN比が最も高くなる項目を最適に選択することができる。
本願発明者は上述したように、T法に時間差モデルを適用し、信号値と各項目の項目値との非線形性を考慮した変換処理を行なった上で総合推定値のSN比を算出し、当該SN比を最大化する項目の選択方法を適用することによって、予測精度を向上させることができるという知見を得た。更に本願発明者は、上述の時間差モデル等の方法に加え、総合推定値のSN比を最大化する項目を選択するに際し、記録されている信号期間(メンバー1〜n)から、予測に適した信号期間を選択することで予測精度を向上させることができるとの知見を得た。予測に適した信号期間は、演算手段が、各項目の項目値に係るマハラノビスの汎距離(マハラノビス距離、以下MDという)を基に選択する。以下、予測精度を向上させることができる信号期間の選択方法について、具体的に開示する。
まず、本実施の形態に係る予測装置の構成について説明する。図9は本実施の形態に係る予測装置1の構成を示すブロック図である。予測装置1は、例えば、パーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ等のコンピュータであり、制御部10、記録部11、一時記憶部12、入力部13、及び出力部14を備える。
制御部10は、例えば、CPU(Central Processing Unit)を含む。制御部10は、以下に説明する予測プログラム2に基づき、上述したハードウェア各部の動作を制御し、本実施の形態に係る予測装置1としての機能を発揮させる。なお、制御部10は、上述した予測方法を実施する演算手段としての機能を有している。
記録部11は、ROM(Read Only Memory)、ハードディスクドライブ等の不揮発性メモリを用いる。なお、記録部11は、外付けのハードディスクドライブ、光学ディスクドライブ、通信網を介して接続される他の記録装置であってもよい。すなわち、記録部11とは、制御部10からアクセス可能な1又は複数の情報記録媒体の総称である。
記録部11には、本実施の形態の予測方法を実現するための各種手順を含む予測プログラム2が記録されている。また、記録部11の記録領域の一部は、信号値及び該値に対応する複数の項目のデータ(各項目の項目値)を記録するデータベース(DB)110として用いられる。制御部10は、データベース110に対し、信号値及び各項目の項目値の読み書きが可能である。データベース110は、例えば図3に示した形式にて各メンバーの信号値及び各項目の項目値を時系列に記録している。
なお、本実施の形態では、非周期的に変化する事象に係る値(信号値)を予測対象とし、予測装置1のデータベース110には、このような非周期的に変化する事象に係る値(信号値)と、複数の関連事象の夫々を項目とする各項目値とが対応付けられて時系列的に記録されているものとする。
一時記憶部12は、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory )等の不揮発性メモリである。一時記憶部12は、制御部10の処理によって発生した情報を一時的に記憶する。
入力部13は、キーボード、マウス等を用い、ユーザの操作入力を受け付ける。
出力部14は、液晶モニタなどの表示部、又はプリンタ等の印刷部を用い、制御部10による情報の処理結果を出力する。
このように構成される予測装置1にて、制御部10が予測プログラム2に基づく処理を実行することにより、未来の事象に係る信号値を予測する。図10は予測装置1による予測処理手順の一例を示すフローチャートである。
制御部10は、入力部13から、信号値及びこれに関連する各項目の項目値について入力を受付け、受付けた信号値及び項目毎の項目値を記録部11のデータベース110に記録する(ステップS11)。なお、データベース110に記録する信号値及び項目毎の項目値は、入力部13から入力されるもののみならず、通信網を介して他の装置から入力されてもよいし、他の情報記録媒体から入力されてもよい。
制御部10は、記録部11のデータベース110に記録した信号値及び項目毎の項目値に基づいて、時間差モデルを生成する(ステップS12)。ステップS12にて生成する時間差モデルとは、図6を参照して説明したように、項目毎の項目値と、該項目の項目値の所定期間後の信号値とを対応付けたモデルである。すなわち、制御部10は、ステップS12において、時系列に記憶された信号値と、項目毎の項目値とを、所定期間ずらして対応付ける。
なお、本実施の形態では、非周期的に変化する事象に係る値(信号値)と、複数の関連事象の夫々を項目とする各項目値とが対応付けられて時系列的にデータベース110に記録されているものとしたが、ステップS12の前に、データベース110から読み出した信号値が周期的に変化するか否かを判定するステップを設けてもよい。例えば、信号値について自己相関係数の分布を求め、この自己相関係数の分布におけるピークの有無を判断することにより、周期性の有無を判定することができる。具体的には、制御部10は、時系列の信号値から、所定の時点(例えば記録期間の起点)から長さを少しずつ変化させたサンプル時間分選択する。次いで、制御部10は、異なるサンプル時間毎に、選択したサンプル時間分における信号値の標本自己相関係数を算出し、サンプル時間の長さに対して標本自己相関関数をプロットし、ピークが存在するか否かを判断することにより、周期性の有無を判断する。本実施の形態では、周期性無しと判断した場合にステップS12以降の処理を実行し、周期性有りと判断した場合にステップS12以降の処理を停止する構成としてもよい。
制御部10は、生成した時間差モデルにおいて対応する信号値と項目毎の項目値との関係に基づき、信号値及び項目毎の項目値を変数変換する(ステップS13)。制御部10は、変数変換後の信号値及び項目毎の項目値を用いて、予測に用いる信号期間を選択する処理を行なう(ステップS14)。信号期間を選択する処理については、後述の図11のフローチャートを参照して詳細を説明する。
制御部10は、ステップS14にて選択した信号期間における信号値と、時間差モデルにて対応する各項目の項目値とに基づき、前述の式1及び式2を用いて、項目毎の比例定数β及びSN比η(2乗比)を算出する(ステップS15)。
制御部10は、式3を用いて項目毎の比例定数βとSN比η(2乗比)を用いて、選択された信号期間における各メンバーについて、式3により出力の推定値を算出する(ステップS16)。
制御部10は、式4により、推定値についての推定精度であるSN比(2乗比)を重み付け係数として用いた総合推定値を算出する(ステップS17)。
次に制御部10は、式5に基づき、信号値及び総合推定値に基づいて、各項目の総合推定値のSN比(db)を算出する(ステップS18)。
制御部10は、各項目について、要因効果値を導出する(ステップS19)。要因効果値は、上述したように、各項目について、当該項目を除いた各項目の項目値に対する総合推定値のSN比に対する、当該項目を含む各項目の項目値に対する総合推定値のSN比の差分を求めることによって算出される。総合推定値のSN比とは、信号値に対する当該項目の項目値の相関の強さであり、分散の逆数に比例する値の対数として示した値である。
次に制御部10は、要因効果値が大きいものから順に選択した複数の項目の項目値に対する総合推定値のSN比を、項目数毎に算出する(ステップS20)。ステップS20における処理の詳細は、上述にて図8を参照して説明したものである。
制御部10は、項目数毎の総合推定値のSN比に基づき、当該SN比を最大にする項目数を決定する(ステップS21)。
制御部10は、ステップS21にて決定した項目数分の項目を選択する(ステップS22)。そして制御部10は、時間差モデルにおける予測対象期間に対応付けられている所定期間前の項目毎の項目値、すなわち、予測対象期間の直近の対応期間における項目毎の項目値のうち、選択した項目の項目値を式4に当てはめ、予測値を算出する(ステップS23)。式4におけるβ及びηは、ステップS15にて算出したもの(時間差モデル、変数変換、信号期間選択後のデータによって算出されたもの)を用いる。ステップS23にて予測値は、出力部14から出力されるか、記録部11に記録される。なお、信号値が規準化されている場合は、逆変換を行なって求めればよい。
図11は信号期間の選択時に実行する処理の手順を示すフローチャートである。制御部10は、対数変換後の信号値を用いて、信号トレンドを算出する(ステップS141)。信号トレンドについては、状態空間モデルによる2次のトレンド成分を用いた計算手法など、公知の手法を用いて計算することができる。
次いで、制御部10は、予測対象期間の直近の信号トレンドと同じ信号区間を選択する(ステップS142)。ここで、制御部10は、予測対象期間の直近の信号トレンドを参照し、予測対象期間の直近の信号トレンドが増加傾向であれば、過去の期間において増加傾向の区間を選択し、予測対象期間の直近の信号トレンドが減少傾向であれば、過去の期間において減少傾向の区間を選択する。
次いで、制御部10は、未知項目を含む項目のMD(項目MD)を算出し(ステップS143)、算出した項目MDの正規確率及びそのトレンドを算出する(ステップS144)。
次いで、制御部10は、算出した項目MDの正規確率及びそのトレンドを基に、予測対象区間の直近の項目MDを含む1循環分の信号区間を選択する(ステップS145)。項目MDの正規確率は0〜1の間の数値をとる。そこで、閾値を0.5に設定し、正規確率が0.5以上の値となる第1トレンド区間と、0.5未満の第2トレンド区間とを判別する。そして、予測対象区間の直近の項目MDを含む1循環分の信号区間を選択する際、直近の区間が第1トレンド区間であれば、その第1トレンド区間と、1つ前の第2トレンド区間とを選択することで、1循環分の信号区間を選択する。また、直近の区間が第2トレンド区間であれば、その第2トレンド区間と、1つ前の第1トレンド区間とを選択することで、1循環分の信号区間を選択する。
次いで、制御部10は、選択した信号区間において、未知項目を含む項目MD及び該項目MDのトレンドを再計算する(ステップS146)。そして、制御部10は、未知MDと同じ符号の既知信号を選択する(ステップS147)。予測対象期間の直近におけるトレンド曲線が示すMDと閾値(例えば、1.0)とを比較し、トレンド曲線が示すMDが閾値以上であれば、閾値以上の信号値を選択し、トレンド曲線が示すMDが閾値未満であれば、閾値未満の信号値を選択する。ここで比較する閾値には、例えば、全MDの平均値である1.0の値を用いることができる。
次に、予測装置1による予測方法を適用した具体的な実施例について説明する。図12は本実施例における項目の内容を示す説明図である。図12に示す項目は、内閣府が公開している景気動向指数算出に使用される個別系列の項目であり、月次データとして記録される。本実施例では、予測対象の信号として、先行系列の中から「L4実質機械受注(船舶・電力を除く民需)」を選択し、それ以外の30系列の項目に基づき予測対象の信号を予測する構成とした。
図13は本実施例にて予測に用いる信号値の内容を示すグラフである。図13の横軸は年月を時系列に示し、縦軸は実質機械受注数(信号値)を示している。実質機械受注数は月次データであり、図13に示す例では、1975年1月〜1990年12月の間に192(16×12)個の信号値がプロットされている。1991年1月〜1991年12月の実質機械受注数を予測対象とした場合、例えば、1976年1月〜1990年12月の信号値と、信号時間より所定期間(1年)前の1975年1月〜1989年12月の各項目の項目値とを対応付けて時間差モデルを生成し、1990年1月〜12月の未知項目を基に1991年1月〜12月の実質機械受注数を予測する。
信号値の時間推移が周期性を示していない場合、図10のフローチャートにおけるステップS13以降の処理を実施する。図13に示す実質機械受注数の時系列データについて、自己相関係数の分布を求め、サンプル時間に対して標本自己相関関数をプロットした結果を以下に示す。
図14は予測対象の信号の標本自己相関関数を示すグラフである。図14の横軸はサンプル時間を示し、縦軸は標本自己相関係数を示している。標本自己相関係数はサンプル時間に対して単調に減少しており、サンプル時間に対してピークを検出することができない。この場合、信号に周期性はないと判断することができる。
なお、以上のような周期性の有無を判断する構成は、予測装置1が備えるものであってもよく、予測装置1の外部にて周期性の有無を判断し、外部にて周期性なしと判断された時系列データを予測装置1に取込む構成であってもよい。
予測装置1は、時間差モデルを生成し、変数変換を行った後、信号期間を選択するステップを実行する。図15は信号選択手順を説明する説明図である。図15(a)は信号値の時間推移を示すグラフである。横軸は信号値が対応する年月を示し、縦軸は対数変換後の信号値(実質機械受注数)を示している。図15(a)における丸印は実績値を示し、実線による曲線は信号トレンド(トレンド曲線)を示している。なお、信号トレンドについては、状態空間モデルによる2次のトレンド成分を用いた計算手法など、公知の手法を用いて計算することができる。
本実施例では、予測対象期間(1991年1月〜12月)の直近の信号トレンドと同じ信号区間を選択する。図15(a)に示す記号(+)は、信号トレンドが増加傾向(傾きがプラス)にある信号区間、記号(−)は、信号トレンドが減少傾向(傾きがマイナス)にある信号区間を表している。予測対象期間の直近の信号トレンドは、増加傾向であるため、過去の信号区間から、(−)の信号区間を除外し、(+)の信号区間を選択する。
次いで、選択した信号区間の信号及び対応する項目の項目値を用いて、未知項目を含む項目の項目MDを算出する。図15(b)は項目MDの時間推移を示すグラフである。図15(b)において、丸印は算出した項目MDの値、実線による曲線は項目MDのトレンドを示している。
次いで、算出したMDの正規確率とそのトレンドを求め、トレンドが示す正規確率を閾値(例えば、0.5)と比較する。図15(c)は項目MDの正規確率の時間推移を示すグラフである。図15(c)において、丸印は算出した正規確率の値、実線による曲線はそのトレンドを示している。制御部10は、正規確率のトレンドが閾値以上の区間(第1トレンド区間)と、トレンドが閾値未満の区間(第2トレンド区間)とを判別する。図15(c)に示す記号(+)は、判別した第1トレンド区間、記号(−)は、判別した第2トレンド区間を示している。
次いで、直近の未知項目MDを含む項目MDの1循環分の信号区間を選択する。図15(c)に示す例では、直近の信号区間は第2トレンド区間であるため、この第2トレンド区間と、1つ前の第1トレンド区間とを選択することで、1循環分の信号区間を選択する。
次いで、選択した信号区間において、未知項目を含む項目MD及び該項目MDのトレンド(トレンド曲線)を再計算し、未知項目のMDと同じ符号の既知信号を選択する。図15(d)は既知信号の選択例を説明するグラフである。ここでは、予測対象期間の直近におけるトレンド曲線が示すマハラノビス距離と閾値(例えば、1.0)とを比較し、トレンド曲線が示すマハラノビス距離が閾値以上であれば、閾値以上の信号値を選択し、トレンド曲線が示すマハラノビス距離が閾値未満であれば、閾値未満の信号値を選択する。
制御部10は、選択された期間における信号値及び項目毎の項目値(時間差モデル適用後)に基づき、両側T法を用いて項目毎の総合推定値のSN比を求め、SN比が最大となる項目数を選択する処理を行なう。そして、制御部10は、選択した項目数の項目を選択し、対応期間(1991年1月〜12月)における選択された項目のデータに基づき、予測値を算出する。
図16は本実施例における予測結果の一例を示すグラフである。図16に示すグラフは、制御部10が図10及び図11のフローチャートに示した処理手順を行って選択した期間の信号値及び項目毎の項目値に基づいて予測を行ったものである。図16の横軸は、信号値及び項目毎の項目値が対応する年月を示し、縦軸は、実質機械受注数を示す。1988年1月〜1990年12月までの黒丸で示す値は、実際の値を示している。また、図16に示す実線による曲線は、信号トレンド(トレンド曲線)を示している。図16中の白抜きの菱形で示されている各値が、選択された信号期間におけるデータに基づき制御部10によって予測された値である。
これに対し、1991年1月〜1991年12月までの黒丸で示す値は、その後に得られた実際の実質機械受注数を示している。図16に示すように、各予測値は、月毎に見れば、実際の値とは異なるものの、実績値の平均的な傾向を十分な精度で予測できていることが分かる。
図17は従来のT法による予測結果との比較例を示すグラフである。図17に示すグラフでは、本実施例における予測結果に加え、T法による予測結果を重ねて示したものである。図17において、1991年1月〜1991年12月までの白丸で示す値は、選択された信号期間におけるデータに基づき制御部10によって予測された値であり、白抜きの菱形で示されている各値は、T法による予測結果の値を示している。T法による結果は、予測対象期間の直近の期間が示す信号トレンドと同様に、実質機械受注数が時間と共に増加する傾向を示しており、1991年1月以降の下降傾向を予測できておらず、実測値と予測値とが大きく乖離するという問題点を有している。これに対し、本実施例における予測方法では、1991年1月以降の下降傾向を精度良く予測することが可能であった。
図18は本実施例における予測結果の他の例を示すグラフである。図18に示すグラフは、制御部10が図10及び図11のフローチャートに示した処理手順を行って選択した期間の信号値及び項目毎の項目値に基づいて予測を行ったものである。図16の横軸は、信号値及び項目毎の項目値が対応する年月を示し、縦軸は、実質機械受注数を示す。図16に示すものとは、選択する信号期間、及び予測対象期間が異なる。1995年1月〜2000年12月までの黒丸で示す値は、実際の値を示している。また、図18に示す実線による曲線は、信号トレンド(トレンド曲線)を示している。図18中の白抜きの菱形で示されている各値が、選択された信号期間におけるデータに基づき制御部10によって予測された値である。
これに対し、2001年1月〜2001年12月までの黒丸で示す値は、その後に得られた実際の実質機械受注数を示している。図18に示すように、各予測値は、実績値の平均的な傾向を十分な精度で予測できており、実績値の再現性も比較的に高い。
図19は従来のT法による予測結果との比較例を示すグラフである。図19に示すグラフでは、本実施例における予測結果に加え、T法による予測結果を重ねて示したものである。図19において、2001年1月〜2001年12月までの白丸で示す値は、選択された信号期間におけるデータに基づき制御部10によって予測された値であり、白抜きの菱形で示されている各値は、T法による予測結果の値を示している。T法による結果は、予測対象期間の直近の期間が示す信号トレンドと同様に、実質機械受注数が時間と共に増加する傾向を示しており、2001年1月以降の下降傾向を全く予測できていない。これに対し、本実施例における予測方法では、2001年1月以降の下降傾向を精度良く予測することが可能であった。
図20は本実施例における予測結果の他の例を示すグラフである。図20に示すグラフは、制御部10が図10及び図11のフローチャートに示した処理手順を行って選択した期間の信号値及び項目毎の項目値に基づいて予測を行ったものである。図20の横軸は、信号値及び項目毎の項目値が対応する年月を示し、縦軸は、実質機械受注数を示す。図16に示すものとは、選択する信号期間、及び予測対象期間が異なる。2004年1月〜2007年12月までの黒丸で示す値は、実際の値を示している。また、図20に示す実線による曲線は、信号トレンド(トレンド曲線)を示している。図20中の白抜きの菱形で示されている各値が、選択された信号期間におけるデータに基づき制御部10によって予測された値である。
これに対し、2008年1月〜2008年12月までの黒丸で示す値は、その後に得られた実際の実質機械受注数を示している。図20に示すように、各予測値は、その後の実績値からは乖離しているものの、平均的な傾向で見れば2008年1月以降の下降傾向を十分に予測できていることが分かる。
図21は従来のT法による予測結果との比較例を示すグラフである。図21に示すグラフでは、本実施例における予測結果に加え、T法による予測結果を重ねて示したものである。図21において、2008年1月〜2008年12月までの白丸で示す値は、選択された信号期間におけるデータに基づき制御部10によって予測された値であり、白抜きの菱形で示されている各値は、T法による予測結果の値を示している。T法による結果は、予測対象期間の直近の期間が示す信号トレンドと同様に、実質機械受注数が時間と共に増加する傾向を示しており、2008年1月以降の下降傾向を精度良く予測することはできていない。これに対し、本実施例における予測方法では、2008年1月以降の下降傾向を精度良く予測することが可能であった。
以上のように、本実施の形態では、予測対象の信号における時間推移に周期性が見られない場合であっても、過去の信号における特徴的な経時変化の傾向(トレンド)を的確に抽出し、抽出した信号及び対応する各項目の項目値を予測に用いることで、信号の急増予測や急減予測に対してロバストな予測システムを構築することができる。
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。また、各実施の形態で記載されている技術的特徴は、お互いに組み合わせることが可能である。
1 予測装置
2 予測プログラム
10 制御部
11 記録部
12 一時記憶部
13 入力部
14 出力部
110 データベース

Claims (6)

  1. 非周期的に変化する事象に係る値と、該事象に関連する複数の関連事象の夫々を項目とする各項目の項目値とを対応付けて時系列的に記録する記録手段を備え、該記録手段に記録されている期間内の第1期間における前記事象に係る値と、前記第1期間よりも所定期間前の第2期間における前記関連事象に係る項目値との相関の強さに基づき、予測対象期間における前記事象に係る値を予測する予測装置であって、
    前記予測対象期間の直近の期間における前記事象に係る値の経時変化傾向と同一傾向である期間を前記記録手段に記録されている期間から特定する期間特定手段と、
    前記予測対象期間よりも前記所定期間前の期間における項目値を含む各項目の項目値を用いて、各項目のマハラノビス距離を算出する手段と、
    前記期間特定手段により特定した期間内の前記マハラノビス距離の長短に基づき、前記相関の強さを導出する際に用いるべき前記事象に係る値を選択する選択手段と、
    該選択手段が選択した値と、該値が属する期間よりも前記所定期間前の期間における項目値とを用いて、前記相関の強さを導出する導出手段と、
    該導出手段により導出した相関の強さに基づき、前記予測対象期間における前記事象に係る予測値を算出する予測手段と
    を備えることを特徴とする予測装置。
  2. 前記選択手段は、
    前記マハラノビス距離の正規確率及び該正規確率の経時変化傾向を示すトレンド曲線を算出する手段と、
    算出したトレンド曲線が示す正規確率を第1閾値と比較し、前記正規確率が前記第1閾値以上の第1トレンド区間と、前記正規確率が前記第1閾値未満の第2トレンド区間とを判別する判別手段と、
    前記予測対象期間の直近の期間を含み、連続する前記第1及び第2トレンド区間を夫々1つずつ選択する区間選択手段と、
    前記期間特定手段が特定した期間内であって、前記区間選択手段が選択した区間に対応する対応期間内の項目値を用いて、各項目のマハラノビス距離及び該マハラノビス距離の経時変化傾向を示すトレンド曲線を算出する算出手段と、
    前記予測対象期間の直近における前記トレンド曲線が示すマハラノビス距離を第2閾値と比較し、前記マハラノビス距離が前記第2閾値以上(前記第2閾値未満)である場合、前記対応期間内の前記事象に係る値のうち、前記第2閾値以上(前記第2閾値未満)の値を選択する手段と
    を備えることを特徴とする請求項1に記載の予測装置。
  3. 前記導出手段は、
    前記事象に係る値の変化に対する各項目の相関の強さを示す要因効果値を算出する手段と、
    算出した要因効果値に基づき、前記事象に係る値の予測に用いるべき項目を選択する項目選択手段と
    を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の予測装置。
  4. 前記事象に係る値を対数変換する手段と、
    対数変換した値に対し、前記項目に係る項目値を2次変数変換する手段と
    を備え、
    変換後の前記事象に係る値及び前記項目に係る項目値を用いて前記要因効果値を算出するようにしてあることを特徴とする請求項3に記載の予測装置。
  5. 非周期的に変化する事象に係る値と、該事象に関連する複数の関連事象の夫々を項目とする各項目の項目値とを対応付けて時系列的に記録する記録手段を備えたコンピュータにより、該記録手段に記録されている期間内の第1期間における前記事象に係る値と、前記第1期間よりも所定期間前の第2期間における前記関連事象に係る項目値との相関の強さに基づき、予測対象期間における前記事象に係る値を予測する予測方法であって、
    前記コンピュータは、
    前記予測対象期間の直近の期間における前記事象に係る値の経時変化傾向と同一傾向である期間を前記記録手段に記録されている期間から特定し、
    前記予測対象期間よりも前記所定期間前の対応期間における項目値を含む各項目の項目値を用いて、各項目のマハラノビス距離を算出し、
    特定した期間内の前記マハラノビス距離の長短に基づき、前記相関の強さを導出する際に用いるべき前記事象に係る値を選択し、
    選択した値と、該値が属する期間よりも前記所定期間前の期間における項目値とを用いて、前記相関の強さを導出し、
    導出した相関の強さに基づき、前記予測対象期間における前記事象に係る予測値を算出する
    ことを特徴とする予測方法。
  6. 非周期的に変化する事象に係る値と、該事象に関連する複数の関連事象の夫々を項目とする各項目の項目値とを対応付けて時系列的に記録する記録手段を備えたコンピュータに、該記録手段に記録されている期間内の第1期間における前記事象に係る値と、前記第1期間よりも所定期間前の第2期間における前記関連事象に係る項目値との相関の強さに基づき、予測対象期間における前記事象に係る値を予測させるコンピュータプログラムであって、
    前記コンピュータを、
    前記予測対象期間の直近の期間における前記事象に係る値の経時変化傾向と同一傾向である期間を前記記録手段に記録されている期間から特定する期間特定手段、
    前記予測対象期間よりも前記所定期間前の対応期間における項目値を含む各項目の項目値を用いて、各項目のマハラノビス距離を算出する手段、
    前記期間特定手段により特定した期間内の前記マハラノビス距離の長短に基づき、前記相関の強さを導出する際に用いるべき前記事象に係る値を選択する選択手段、
    該選択手段が選択した値と、該値が属する期間よりも前記所定期間前の期間における項目値とを用いて、前記相関の強さを導出する導出手段、及び
    該導出手段により導出した相関の強さに基づき、前記予測対象期間における前記事象に係る予測値を算出する予測手段
    として機能させるためのコンピュータプログラム。
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