JP5570280B2 - かつら取付部及びその形成方法並びにかつらの固定方法 - Google Patents

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Description

本発明は、かつら装着者の頭髪を利用して形成したかつら取付部の構造と、このかつら取付部の形成方法、並びに当該かつら取付部を利用してかつらを固定する方法に関するものである。
かつらは、かつらベースとこのかつらベースに植設した擬毛とを有して構成される。かつらベースは、一般に、合成樹脂や布等からなり、擬毛は人毛や合成繊維で作った人工毛からなっている。
ところで、かつらを頭部に固定する場合、かつら内面に設けたストッパを用いてかつら装着者自身の薄毛部周辺の頭髪に当該ストッパを所定間隔で係着する方式、或いは、接着剤や両面テープにより頭部に直接貼着する方式などが知られている。これらの方式は、通常、手軽にかつらの装着脱が行えるという利便性を備えている。
一方、頭部の薄毛個所の周辺に残った頭髪の複数本を取り纏めて毛束を作り、この毛束をかつらの輪郭に沿って、順次、複数個所で作っていき、これらの毛束を利用して、かつら取付糸を毛束と共に編み込むことで、かつら装着者の頭部上でかつらを取り付けるための取付部を形成し、このかつら取付部を利用してかつらを固定する方式も知られている。この方式では、かつらを頭部に正しく載せかつらベースの端とかつら取付部とをかがり糸で緊縛していくことで、かつら装着者の頭部に固定するものである。この方式では、通常、数十日から1か月余程度かつらの装着を継続することができるので、かつらを頻繁に装着脱する手間を省くことができる。
後者、すなわち、かつら取付部を利用したかつらの固定方式にあっては、従来、例えば特許文献1〜4に記載した技術が提案されている。
特許文献1のかつら取付部の形成方法は、1本の括り糸と、2本の撚り糸(かつら取付糸)との端に結び目を形成し、編込み開始位置から10〜15本程度の毛束を取り出し、この毛束を3本の糸の結び目に密着させて括り糸と2本の撚り糸の間に下方から挟み込んで編込みを開始する。この編込み方式では、3本の糸と毛束とで三つ網よりも難しい特殊な四つ網を行うものである。この編込みは、次の毛束を取り出す距離までの間に、4〜5回、毛束を3本の糸の間に通して順次編み込んでいき、次の毛束を取り出す手前で2個の結び目を形成して1サイクルを完了する。この1サイクルの編込みを反復して頭部を捲回していき、最後に結び目を作るものである。
特許文献2によれば、「頭部の無毛箇所等の周辺に残った毛体を2本の糸で撚り合わせて編込む1サイクル毎の結び目間に於いて、毛束を2本の糸で捲回して編込む工程と、その糸で玉結びの中間の結び目を形成する工程と、毛束を引締め且つ2本の糸で固定する工程と、結び目を2本の糸で形成する工程とから成るかつら取付部の形成方法」を提案している。この方法によれば、1サイクル毎に結び目を2つずつ作ることになり、各結び目は、毛束を堅く締め結んでおらず片側へ寄せている。
特許文献3によれば、「頭部の無毛箇所および薄毛箇所の周辺に残った毛髪を複数本束ねた毛髪束に2本の糸を編み込んでかつら取付部を形成する方法であって、2本の糸によって形成される1サイクル毎の結び目間において、毛髪束を2本の糸の間に挿通した状態で2本の糸を撚りループを形成しループに毛髪束が通った状態にする工程と、毛髪束を2本の糸の間に挿通しない状態で糸を撚りループを形成する工程と、ループを引き絞る工程と、一方の糸に他方の糸を巻き付けて結び目を形成する工程とから成る、かつら取付部の形成方法」を提案している。この方法によれば、2本のかつら取付糸が額部に巻回されている状態になる。
特許文献4で提案しているかつら取付部の形成方法は、最初に例えば3本のかつら取付糸の先端部を編込み開始位置を通り越して適宜に結び付けておく。この場合、かつら取付糸の先端部を、額部を通り越して頭部の編込終了予定位置より取り纏めた毛束に結び付けるか、または、頭部と離れた壁や柱など固定部に結び付けておく。そして、頭部の編込開始位置より取り纏めた毛束をかつら取付糸に対して編み込んで編込み部を作り、かつらベースの輪郭に沿った適宜間隔で取り纏めた毛束を用いてかつら取付糸を順次頭部に固定させる。必要に応じ、かつら取付糸の1本を括り糸とし、毛束のセット毎に結び目をつくる。最後に、最初の1〜10本のかつら取付糸と連結し、かつら取付糸の先端部の余分を切除する。この方法によれば、かつら取付糸が額部に巻回されている状態になる。
特許第2579666号公報 特開2002−220721号公報 特開2003−113518号公報 特許第3686998号公報
特許文献1のかつら取付部の形成方法によれば、一の毛束と2本の撚り糸(かつら取付糸)との撚り合わせが終わったら、次の毛束を取り出して2本の撚り糸との撚り合わせを行うものであり、しかも1サイクルの編込み回数が多いので、一の毛束の取出し位置と次の毛束の取出し位置との1サイクルの距離を長く取る必要があることから、編込みをどんなにきつくしても1サイクルの距離の中間位置ではどうしてもゆるい感じなってしまう。この課題は、特許文献2,3でも解決できない。
特許文献1〜3によれば、技術者が最初の編込み時、2本の取付糸の先端から編み込み部までがピーンと張った状態でなければ、毛束をつかんでうまく編み込むことができないので、取付糸の先端を別の技術者か又はかつらを取り付けてもらっている人に持ってもらって、取付糸にテンションをかけて展張状態を保ちながら編み込みの作業を行い、少なくとも編み込み部を5個程度作ってある程度固定しなければ作業ができない、という課題がある。
特許文献4によれば、取付糸の先端を壁や柱に固定する方法は、被編込者の頭部と壁などの位置によっては、被編込者に無理な姿勢を強いたり、編込み時の取付糸の緩みを気にするあまり、取付糸のテンションが強くなり、頭髪が引っ張られて過度の痛みを生じる。また、編込み進行方向とは逆の被編込者の頭部に固定する方法は、編込み作業中ずっと、取付糸にテンションが掛かった状態で頭部に接しており、編込み自体以外に不快感を与えると共に、編込み作業が取付糸を固定した位置に差し掛かった時に、取付糸のテンションを緩ませずにその固定を解除することは困難である、という課題がある。
上記特許文献1〜4に記載の何れの技術にあっても、各毛束のそれぞれが個々に取付糸で編み込まれているにすぎない。言い換えれば、毛束を連続して編み込んでいくものではなく毛束毎の編込み方式(1サイクル独立完結編込み方式)であるので、個々の編込み部がきつく編み込まれているために頭部の不快の度合いが高い。さらに、毛束は、一つの毛束毎に編み込まれる1サイクル独立編込み式であるため、毛束と毛束との間は取付糸で結着されているにすぎず不連続であるので毛束同士が各々独立している状態であるが、編込みしている取付糸は連続しているので、緩んだ場合の補修が不可能であること、さらに、取付部の緩みが生じ易くなると共に、かつら取付部の形成作業も煩雑にならざるを得ない。
本発明は、かつらを固定するためのかつら取付部をかつら装着者の頭髪を利用して形成し、このかつら取付部にかつらを固定するものであるが、このかつら取付部の形成作業に熟練を必要とせず簡単に遂行でき、且つ、緩んだり解けたりせずに確実に且つ強固に形成し得る、かつら取付部とその形成方法を提供することを一目的とする。
本発明は、さらに、頭髪が過度に引っ張られることが無くかつらとの自然な一体感を得ることができるかつらの固定方法を提供することを他の目的とする。
上記一目的を達成するため、本発明は、かつらの輪郭の少なくとも一部に沿ってかつら装着者の頭部に形成されたかつら取付部であって、複数本の毛髪を取り纏めて毛束とし該毛束を順次一方向に重ね合わせることで連接して形成する集束毛と、集束毛の全長に沿って配設する芯糸と、集束毛を結束する編込み用糸と、で成り、編込み開始端の毛束を編込み用糸で結着すると共に、集束毛と芯糸とを纏めてその外周を編込み用糸で結束することで、連鎖状に連続した編込み部を備えたことを特徴とする。
上記一目的を達成するための本発明のかつら取付部の形成方法は、頭部のかつら取付部の形成を開始する位置の複数本の毛髪を取り纏めて第1の毛束とする工程と、第1の毛束の根元付近に編込み用糸を結着する工程と、第1の毛束に芯糸を添わせる工程と、第1の毛束に隣接した位置の複数本の毛髪を取り纏めて第2の毛束とする工程と、第1の毛束及び芯糸と、第2の毛束とを一方向に重ね合わせることで毛束を連接させて集束毛とする工程と、集束毛を纏めて外側から編込み用糸で結束して編込み部とする工程と、を備え、以後同様に、順次、後続する毛束を取り込んで編込み用糸で結束することで、かつら取付部の形成を終了する所定位置まで編込み部を連鎖状に連続して形成することを特徴とする。
上記他の目的を達成するための本発明のかつらの固定方法は、上記かつら取付部の形成方法によって形成されたかつら取付部に対し、かつらの周縁部をかがり糸によって括り付けることで、かつらを頭部に固定することを特徴とする。
なお、本出願で使用している「結束」の語は、何れかで特段の定義づけをしていない限り、毛髪同士を或いは糸同士を又は糸と毛髪とを緊縛することを含むほか、緊縛することなく、これらを撚り合わせ、捻じり、重ね合わせ、縫合、捲回、或いは接着又はこれらを組み合わせるなどにより、ばらけないよう束ねて、互いに拘束し束縛して固定する行為又は状態を広く含むものとする。
本発明のかつら取付部によれば、編込み部の始端から終端に至るまで芯糸が通っていて、且つ各毛束が順次連接して集束毛を形成しているので、この集束毛を順次連接した数多くの毛束で頭髪に固定でき、従来よりも数多く取り出す毛束によって芯糸を頭部に強固に支持することができることから、毛髪が過度に引っ張られることが無いかつら取付部を提供することができる。
本発明のかつら取付部の形成方法によれば、かつら取付部の形成の開始時に芯糸に張力をかけておく必要が無く、編込みに熟練を必要とせず、従来よりも数多く取り出す毛束によって芯糸を頭部に強固に支持することができる。よって、互いに隣り合う毛束の間隔が広くなりすぎないから、毛束間において芯糸を頭部表面に近接させることができて緩みが生じにくく毛髪が過度に引っ張られることが無い、綱状又は連鎖状に連続したかつら取付部を形成することができる。
上記かつら取付部及びその形成方法によれば、編込み部は、多数本の毛髪を集めて連続した綱状体又は連鎖体になり、かつ芯糸を絡み通しているので非常に強度が大きいものとなる。
そして、各毛束間で、芯糸と共に連接した集束毛を編込み用糸で外周から結束して編込み部を構成したものであるから、位置を異にして取り纏めた毛束と毛束が密着され、また毛束と芯糸が密着され、編込み部に外力が加わっても、毛束と毛束の相互間に、また毛束と芯糸の相互間にずれが生じることがない。
また、各毛束間で行う編込み用糸による結束は、従来のような毛束間で編込みを何回も繰り返して距離を長くとってしまうことはないので、毛束の間隔を小さくすることができるから、従来に比べて毛束を数多く設けることができ、該多数の毛束によってかつら取付部を頭部に強固に固定することができる。
このように、従来に比べて多数の毛束によって連接した集束毛を頭部に強固に固定できるから、かつら取付部にかつらをかがり糸で取り付ける際に加わる外力やかつら取付後にかつらに外力が加わる場合、この外力は、連続した集束毛によって多くの毛束に伝わるように分散され、各毛束に係る引張力が小さく抑制され、頭皮に突っ張り感を与えることが無く、かつらとの一体感が損なわれることがない。
本発明のかつらの固定方法によれば、上記形成方法によって、従来よりも数多く取り出す毛束によって芯糸を頭部に強固に支持してなるかつら取付部に対し、かつらをかがり糸でかがって固定するものであるから、一部の毛髪だけが過度に引っ張られることが無くかつらとの自然な一体感を得ることができる。
本発明のかつら取付部の第1の実施形態に係り、頭部上方から視た斜視図である。 図1のかつら取付部の両端部分を拡大し中間を省略した全体の模式的側面図である。 (a)は第1の実施形態に係るかつら取付部の形成方法を示す概略斜視図、(b)は概略平面図、(c),(d),(e)はかつら取付部の形成方法における第1段階を示す図である。 かつら取付部の形成方法を示す工程図である。 図4に続くかつら取付部の形成方法を示す工程図である。 (a),(b)は図5に続くかつら取付部の形成方法を示す工程図、(c)はかつら取付部へかつらを固定する方法を示す図である。 第2の実施形態に係るかつら取付部を頭部上方から視た図である。 第3の実施形態に係るかつら取付部を頭部上方から視た図である。 第4の実施形態に係るかつら取付部を頭部上方から視た図である。 第5の実施形態に係るかつら取付部を頭部上方から視た図である。 かつら取付部の形成方法の第6の実施形態に係り、(a)は かつら取付部の形成途中を示す斜視図、(b)は編込み部の斜視図である。
以下、本発明の実施形態に係るかつら取付部とその形成方法、並びにかつらの固定方法について、それぞれ図面を参照して説明する。
〔第1の実施形態〕
この実施形態に係るかつら取付部100は、図1に示すように、かつら装着者の薄毛状態が前額部から頭頂部に亙っておりその周辺に存在する自毛を利用することで、略U状に形成されている。この場合、図示しないかつらは、このかつら取付部100と実質的に一致する外周を有するよう、通常、ほぼ縦長の楕円状に形成されるが、かつらの周縁部がこのかつら取付部100を僅かに覆う外形を有するように作製されていてもよい。
このかつら取付部100は、図2に示すように、複数本の頭髪(以下、適宜、自毛又は毛髪と称する場合がある。)を取り纏めて毛束とし該毛束を順次一方向に重ね合わせることで、毛髪の束が順次連接された集束毛10と、集束毛10の全長に沿って配設する芯糸11と、集束毛10を結束する編込み用糸12と、で予め設定した形状、図示の例ではU状に形成されている。そして、編込み開始端の第1の毛束1は編込み用糸12で結着されて結着部13Aが形成されると共に、集束毛10と芯糸11とを纏めてその外周を編込み用糸12で結束することで、所定形状のかつら取付部となるよう、連続した編込み部20を備えて形成されている。
図2において、1,2,3,・・・,n−3,n−2,n−1,nはいずれも毛束である。 毛束1,2,3,・・・,n−3,n−2,n−1,nは、予め設定した略U状の形状に合わせた線(図3において、点線bで示すかつらの輪郭線)に沿って、複数本、例えば5〜20本程度の頭髪を取り纏める、すなわち捕捉することで形成される。捕捉した毛束を緊縛することなどは不要であり、単に一纏めに束ねるだけでよい。
ここで、かつら取付部の形成を開始する編込み開始位置A1(図3(b)参照)において、複数本の頭髪を捕捉し取り纏めて第1の毛束1とし、次いで、第1の毛束1に隣接した複数本の頭髪を取り纏めて第2の毛束2とし、同様にして、編込み終了位置B1(図3(b)参照)迄、順次、適宜の間隔で複数本の自毛を取り纏めて次段の毛束とすることで、多数の毛束が構成される。
互いに隣り合う毛束は適宜の間隔を有するよう間欠的に設定してもよいが、本発明では、少なくとも後段に続く毛束を集束毛に取り込みながら連接していく方式であるので、集束毛10に隣接して生えている毛髪を次段の毛束とし、以下順次、隣接した自毛を捕捉していくことで密接して毛束を形成すると好ましい。
集束毛10は、編込み開始位置A1から編込み終了位置B1に至り、かつらの周縁に対応するU状のかつら取付部を形成するよう、多数の毛束1,2,3,・・・・,n−3,n−2,n−1,nを一方向に重ね合わせることで連接して形成される。この集束毛10に沿ってその全長に亙り芯糸11が配設されており、この芯糸11と集束毛10とを纏めてこれらの外周を編込み用糸12で結束していくことで、順次、編込み部20が形成される。この編込み部20を1本の綱状に連続して延出して所定の長さに形成していくことで、編込み開始位置A1から編込み終了位置B1に至るかつら取付部100となる。芯糸11と編込み糸12とは、それぞれ別個の糸を用いてもよいが、本実施形態では、後述するように、同一の糸で構成されている。
編込み用糸12は、最初に、その先端を編込み開始端の第1の毛束1に結着されて結着部13Aが形成されている。本実施形態では、第1の毛束1の結着部13Aは、編込み用糸12だけを用いて形成されているが、芯糸11の基端を編込み糸12と共に第1の毛束1に結着することで結着部13Aを形成してもよい。この結着部13Aは、編込み用糸12又は該編込み用糸12と芯糸11による結び目13Aを第1の毛束1のなるべく根元付近に近づけることで形成する。
編込み用糸12による結束は、詳細は後述するが、この実施形態では、2本の編込み用糸12に撚りを掛けて広がり部12bと該広がり部12bの前後に撚り部12a及び12cを作り、広がり部12bに集束毛10と2本の芯糸11とを通して広がり部を縮径して締め付け結束してから、さらに、編込み用糸12のVのコーナーに上から下に通される。かつら取付部100は、編込み終了端B1で後述する編込み張出部20Aを網掛けし結束してから折り返され、編込み用糸12で束ねられている。
次に、上記かつら取付部100の形成方法の一例を説明する。
このかつら取付部100を形成するには、下記に詳述するが、かつら装着者の頭部の薄毛領域の周辺に生えている頭髪を複数本取り纏めて毛束とし、この毛束をかつらベースの輪郭に沿って適宜間隔で順次に取り出し、各毛束同士を一方向に向けて互いに重ね合わせることで線状に連接して集束毛を形成する。そして、例えば2本の芯糸を全長に亙って集束毛と重ね合わせると共に、重ね合わせた集束毛と芯糸との外周を、例えば2本の編み込み用糸で結束することで、連続した編込み部を形成するものである。
この実施形態によるかつら取付部の形成方法により取付部を形成すれば、芯糸11と毛束の重ね合わせの連続である集束毛10とが、例えば2本の編込み用糸12で結束され、所定の編込み開始位置A1から編込み終了位置B1に至り1本の綱状に連続する編込み部20をかつら装着者の頭部に形成することができる。従って、毛束1,2,3,・・・・,n−3,n−2,n−1,nを介して芯糸11が頭部にしっかりと固定され、且つかつらをかがり糸でかがる場合に、編込み部20の中から芯糸11のみが括られてしまうことが無いかつら取付部100が形成される。
この実施形態に係るかつら取付部の形成方法では、かつら装着者の頭部の薄毛領域が図1に示すU形状である場合に、符号100で示すU状にかつら取付部を形成する手順を示す。この実施形態では、かつら取付部の形成開始端(編込み開始端)A1は、左側のこめかみの上の生え際とし、かつら取付部の形成終了端(編込み終端)B1は、右側のこめかみの上の生え際付近、又はこれより例えば10mm程度引っ込んだ位置とする。
この実施形態に係るかつらの固定方法は、上記かつら取付部の形成方法によって形成されたかつら取付部100を利用してかつらを固定するものである。
第1の実施形態に係るかつら取付部の形成方法は、次の工程を有している。
第1の工程:かつら装着者の頭部にかつら取付部を形成する領域を決定する。
第2の工程:頭部のかつら取付部の形成を開始する位置の複数本の毛髪を取り纏めて第1の毛束とする。
第3の工程:糸巻冶具(リール)から巻き糸を引き出して、先端側の糸部を芯糸とし、芯糸に続く糸巻冶具側の糸部を編込み用糸とし、これらの境目で輪を形成して第1の毛束の根元に縛ることで、結着部を形成する。
第4の工程:第1の毛束に沿って芯糸を重ね合わせる。
第5の工程:第1の毛束に隣接した位置の複数本の毛髪を取り纏めて第2の毛束とする。
第6の工程:第2の毛束を第1の毛束及び芯糸に重ね合わせこれらの集合を集束毛とする。
第7の工程:集束毛と芯糸とを外側から編込み用糸で締め付けて束ねることで、編込み部を形成する。
第8の工程:以後同様に、順次、次の毛束を取り込んで集束毛及び芯糸と共に編込み用糸で結束していき、終端のかつら取付部の形成を終了する所定位置まで、同様の作業を繰り返して、一本の綱状に連続する編込み部を形成する。
第9の工程:かつら取付部の形成を終了する位置に形成された棒状の編込み張出部を折り返して末端側の編込み部に縫い合わせることで、かつら取付部を完成する。
第10の工程:形成したかつら取付部を利用してかがり糸によりかつらを固定する。
以下、各工程について詳述する。
〔第1の工程〕
まず、顧客の頭部に、図示しないかつらを正しい装着位置となるように載せ、額の中央にマーカーで例えば十字に印aを付け、かつらの内面にも対応する位置に印を付ける。
かつらを頭部に載せたまま位置ずれが生じないように注意深く押さえ、図1、図3(a)に示すように、頭皮にかつらの輪郭を示す線bを例えば破線にてマーカーで印し、線bをもってかつら取付部の形成位置と決定する。
そして、図3(a)に示すように、かつらの輪郭線bより上側の自毛を水を入れたトリガースプレー等で湿らせ櫛で梳かしてから、かつらの輪郭線bを境にその上側の自毛をシングルピンcでブロッキングする。
図3(a)及び(b)に明瞭に示されているように、顧客頭部のかつら取付部の形成開始端側(編込み開始端側)A1から離隔した側方に例えば支柱30を立て、支柱30に二つの糸巻冶具、例えばリール31,32を上下配置に設ける。この際、A1点の接触表面に対するリール31,32から繰り出す糸の平面角αが余り大きく開かないようにセットする。
次に、図3(b)に示すように、各リール31,32からそれぞれリール糸Sを引き出し、該2本のリール糸Sの先端を揃え、2本のリール糸Sを合わせて適宜の中程を顧客の編込み開始端にあてがい固定した状態で、2本のリール糸Sの先端側をマーカーで印されたかつらの輪郭線bに沿って編込み終端B1まで導き、さらに、この編込み終端B1から2本のリール糸Sの先端までの距離を例えば100〜200mm程度長く採寸する。
上記のようにして、2本のリール糸について編込み開始端A1にあてがう位置を決定する。本明細書においては、リール糸Sの編込み開始端A1より先端側にあるリール糸を芯糸11、編込み開始端A1よりリール側にあるリール糸を編込み用糸12とする。編込み用糸12の先端部、すなわち、芯糸11の基端を編込み開始端A1にあてがい、この位置がずれないように、図3(c)に示すように、編込み用糸12で輪13を作る。輪13の作り方は、第1の毛束1を緩みが生じないようしっかり縛れる二重或いは三重の輪とするのがよい。輪13は縮径できればよく、作り方はこれに限定されない。リール糸は、天然繊維、化学繊維、金属繊維、ゴム状繊維などの撚り糸、テグス、ワイヤーもしくはこれらの組合せからなるものを適宜選択し得る。
〔第2の工程〕
第2の工程では、顧客頭部のかつら取付部の形成開始端A1において、複数本の毛髪を取り纏めて第1の毛束1とするが、毛束を結着することは要しない。
かつら取付部の形成を開始する位置は、顧客の左こめかみ部付近に設定し、これをかつら取付部形成開始端側(編込み開始端側)A1とする。この領域に生えている複数本の自毛をコームで掬い取って纏めることで第1の毛束1とする。
〔第3の工程〕
第3の工程では、図3(d)に示すように、第1の毛束1の根元を、各リールから引き出した2本のリール糸Sで作った輪13で取り囲み、図3(e)に示すように、この輪13を縮径していき第1の毛束1のできるだけ根元付近を緊縛して結着部13Aとする。緊縛位置が第1の毛束1の根元から上方へ位置ずれしてしまう虞がある場合には瞬間接着剤を少量塗って位置ずれを止める。
図3(a)に示すように、2本のリール糸Sで第1の毛束1を縛った状態で、先端側部分を芯糸11として垂れさせる。リール31,32から結着部13Aまで繰り出された2本の糸は編込み用糸12として、後述する以後の編込み操作において毛束1,2,3,・・・・,n−3,n−2,n−1,nの重ね合わせからなる集束毛10と芯糸11とを結束するために用いる。この構成によれば、芯糸11と編込み用糸12は2本のリール糸Sで結着部13Aを境界として前後に形成されている。
〔第4の工程〕
第4の工程は、第1の毛束1に沿って芯糸11を重ね合わせる段階である。
図4(a)に示すように、第1の毛束1に芯糸11を添わせてこれらを重ね合わせ、図4(b)に示すように、頭皮から離れた位置で保持する。頭皮から垂直方向に離れるように保持するのは、次の第5の工程における第2の毛束2を取り込む際に邪魔にならないようにする配慮からであり、必要的な手順ではない。なお、第1の毛束1と芯糸11とを重ね合わせた段階で、矢印dに示すように指で右回り(時計回り)の捻りを入れて保持するようにしてもよい。
〔第5の工程〕
第5の工程は、第1の毛束1に隣接した位置の複数本の毛髪を取り纏めて第2の毛束2とする段階である。
図4(c)に示すように、かつらの輪郭線bに沿って第1の毛束1から隣接した位置の複数本の自毛を取り纏めて第2の毛束2とする。第2の毛束2及びそれ以降の毛束は、第1の毛束1よりも自毛数が少なくてよい。
〔第6の工程〕
第6の工程では、第2の毛束2を第1の毛束1及び芯糸11に重ね合せた毛束同士の集合を集束毛10として形成する。図4(d)に示すように、第2の毛束2を、上記第1の毛束1及び芯糸11に重ね合わせる。ここで、2つ以上の毛束の重ね合わせを集束毛10という。第1の毛束1と第2の毛束2の重ね合わせ、すなわち集束毛10は、かつらの輪郭線bに沿って寝かせながら行う。そして、矢印eに示すように集束毛10に右回り(時計回り)の捻りを加える。このとき、集束毛10に沿って配置した芯糸11も一緒に捻りが加えられる。従って、集束毛10は第2の毛束2の上に重なる。以後、集束毛10に第3の毛束、第4の毛束、・・・と重ねていくことで、連接状態で集束毛10は延長されていく。 毛束1,2,3,・・・・,n−3,n−2,n−1,nの重ね合わせからなる集束毛10は、各毛束が数センチメートル、例えば自毛を5cmとすれば、各毛束も約5cmの長さであることが前提である。従って、毛束1と毛束2とが重なって最初の集束毛10を構成し、次々に毛束が重ね合わされていき集束毛10が延長されていく。例えば、第1の毛束1は第4〜第5の毛束の付近で途絶え、第2の毛束2は第5〜第6の毛束の付近で途絶え、そのようにして、先に重ね合わされた毛束は次々に途絶えるが、新しい毛束が重ね合わされることで互いに連接されていき、全体として1本の線状に連続した集束毛10が延長されていく。この際、芯糸11は、互いに連接されて延長される集束毛10に沿って、各毛束の集束を支持し且つ連接を補強しながら集束毛10と共に、重ね合わされて共に捻じり合わされつつ巻き込まれて、連続して延長されていくことになる。
〔第7の工程〕
第7の工程は、集束毛10と芯糸11とを外側から編込み用糸12で結束し、編込み部20を形成する段階である。
図5(a)〜(g)に示すように、集束毛10に捻りを入れた部分に対して2本の編込み用糸12で外側から締め付けて束ねる。このとき、集束毛10と芯糸11を外側から締め付けて束ねた状態でかつらの輪郭線bに沿うように、技術者の一方の手で保持し、他方の手で編込み用糸12に撚りを入れる操作を行う。この場合、2本の編込み用糸12で束ねる前に、第1の毛束1及び芯糸11と、第2の毛束2とを重ね合わせた時点で右回り(時計回り)に捻りを加える(図4(b),(d)参照)。これによって、集束毛10を第1の毛束1及び第2の毛束2の根元に可能な限り近づけた状態に保つことができ、集束毛10は第1の毛束1及び第2の毛束2の上に限りなく重なる。
ここで、2本の編込み用糸12によって集束毛10と芯糸11を外側から結束する手順について説明する。
図3(a)に示すように、2本の編込み用糸12は、上下2つのリールによってそれぞれにテンションをかけられて頭部方向へ間隔を次第に狭めた鋭角となるように繰り出される。技術者は、一方の手、例えば左手でのあや取り操作によって、図5(a)に示すように2本の編込み用糸12に複数回撚りを掛ける。図5(a)では3回撚っている。このように、2本の編込み用糸12に撚りを加えて、中間に広がり部12bをもたせかつ該広がり部12bの前側に一方向の撚り部12aを形成するとともに、後側に逆方向の撚り部12cを形成する。ここでは、撚り部12a,12cは3巻きとなる。左手でのあや取り操作において、広がり部12bに対し集束毛10と芯糸11とを矢印fのように引き入れる。この場合、広がり部12bに差し入れた左手の指を第1、第2の毛束1,2の根元に近づけることで前の撚り部12aを第1、第2の毛束1,2の根元に密着させ指で押さえて集束毛10と芯糸11とを矢印fのように引き入れる。次いで、前の撚り部12aを第1、第2の毛束1,2の根元への密着を確保したままで、図5(b)に示すように、後の撚り部12cを最も近い毛束、ここでは第2の毛束2の根元近傍に移行させて、広がり部12bを縮径させることで2本の編込み用糸12により集束毛10と芯糸11とを外周から締め付けて結束する。
続いて、後の撚り部12cを第1、第2の毛束1,2の根元へ密着させたまま、図5(c)に示すように、リール方向にVに広がる2本の編込み糸12のVのコーナー12dに、第1、第2の毛束1,2及び芯糸11を矢印gのように上から下に通し、図5(d)に示すように、第1、第2の毛束1,2及び芯糸11を2本の編込み糸12のVのコーナーに押さえ付ける。
〔第8の工程〕
第8の工程は、第3の毛束3の取り纏めから図3(b)に示す編込み終了位置B1に至る迄、同様の作業を繰り返して、一本の綱状に連続する編込み部20を形成する段階である。この工程では、第7の工程と同様の作業を繰り返し、第3以降の毛束3,・・・,n-3,n-2,n-1,nについて、順次、毛束の連接により、毛束の重ね合わせを行いながら、芯糸11を絡めつつ集束毛10を延長し、毛束を重ね合わせる毎に編込み用糸12で第7の工程と同様の作業を繰り返し結束して編込み部20を形成していく。
すなわち、第7段階の以降において、図5(e)〜(g)に示すように、集束毛10及び芯糸11と共に編込み用糸12で結束した編込み部20に、さらに第3の毛束3を取り込み、編込み用糸12で芯糸11と共に結着することで、編込み部20をさらに延長して形成し、以後、かつら取付部の形成を終了する位置まで、かつらの輪郭線bに沿って適宜間隔で第4の毛束、第5の毛束、・・・第nの毛束を順次に取り出し、各毛束を取り出す毎に、かつらの輪郭線bに沿わせた集束毛10及び芯糸11に重ね合わせて編込み部20を延長させる。
この編込み作業の際、上述したように、2本の編込み用糸12で中間に広がり部12bをもたせ、該広がり部12bの前後に3回の撚り部12a,12cを形成し、広がり部12bに集束毛10と芯糸11とを矢印fのように通して広がり部12bを縮径することを1回行って、編込み用糸12で外側から締め付けて結束したら、2本の編込み用糸12に撚りを加えないで、編込み用糸12のVのコーナー12dに集束毛10と芯糸11とを矢印gのように上から下へ通して押さえ付ける。こうして、次々に新しい毛束を取り纏めて集束毛10と芯糸11とに重ね合わせたら、これらを右回り(時計回り)に捻ってから編込み用糸12で外側から締め付けて束ねると、かつらの輪郭線bに沿って頭皮に近接し又は密着した編込み部20を連続して形成していくことができる。編込み部20は、多くの毛束によって頭部に固定され、編込み部20を編むときの力は多くの毛束に分散される。編込み部20の完成したものがかつら取付部100である。
〔第9の工程〕
かつら取付部の形成を終了する位置まで順次、連続して編込み部20を形成すると、最後に棒状の編込み張出部20Aが形成されることになる。第9の工程では、このようにして形成された編込み張出部20Aを折り返して終端側の編込み部20に縫い合わせることで、かつら取付部として完成する。
すなわち、最終段階では、図6(a)に示すように、かつら取付部の形成を終了する位置において余る集束毛10と芯糸11とを集束毛10の先端付近まで編込み用糸12で締め付けて束ねることで、棒状の終端張出部、すなわち編込み張出部20Aを形成し、図6(b)に示すように、編込み張出部20Aをかつら取付部の形成終了位置から折り返し、形成終了位置まで形成したかつら取付部100の終端側の編込み部20に縫い合わせる。
編込み張出部20Aを折り返して縫い合わせるには、1本の編込み用糸12をリールから断ち切り、該断ち切った編込み用糸12を残り1本の編込み用糸12に緊縛することを2回行って余分を切除し、残り1本の編込み用糸12についても適当な長さを残してリールから断ち切る。
そして、後から断ち切った編込み用糸12の先端を、図示しない手芸用のC形針の目に係止し、C形針を用いてかつら取付部の下に通し、かつら取付部100と編込み張出部20Aとを束ねるように編込み用糸12を掛け回すことを反復して、上記折り返した編込み張出部20Aをかつら取付部に括りつける。図6(b)に示すように、括りつけが終了したら、編込み用糸12と2本の芯糸11とを結着し、余分を切断する。
以上で、かつら取付部100の形成を終了するが、必要に応じて、新たな編込み用糸を用いてC形針にてかつら取付部の開始端から終了端まで締め付ける工程を入れてもよい。この場合の締付け操作は、編込み張出部20Aのかつら取付部への括りつけと同様に行う。
〔第10の工程〕
上記のようにしてかつら装着者の頭部に形成されたかつら取付部100を利用して、かがり糸によりかつら装着者の頭部にかつらが固定される。
図6(c)に示すように、かつら取付部を形成したら、かがり糸21を用いてかつら200をかつら取付部100に取り付ける。まず、2つのC形針にかつら取付部の長さの例えば約3倍の長さの各かがり糸の一端をそれぞれ係止し、一方のC形針をかつら取付部の一端に括りつけ、他方のC形針をかつら取付部の他端に括りつける。そして、かつら装着者の頭部にかつらを載せ、当初の工程でつけた額の印とかつら200の内面の印とを合わせ、かつら200の周辺をかつら取付部の内縁に重なるように位置させる。次いで、かつら取付部の一端に括りつけたC形針を、かつら取付部の下側に潜らせ、さらにかつら200の周縁部に縫い通すことを複数回繰り返し、かがり糸によりかつら取付部とかつら200の周縁部とを縫い合わせる。同様に、かつら取付部の他端に括りつけたC形針を、同様の操作でかつら200の周縁部に縫い通すことを複数回繰り返し、かがり糸によりかつら取付部とかつら200の周縁部とを縫い合わせる。以後、後頭部に向かって左右交互にかがり糸によりかつら取付部とかつら200の周縁部とを縫い合わせていく。かがり糸は、リール糸と同じ材質のものが使用できる。
かつらベースの額側の部分は、かつら取付部が無いので、両面テープあるいは接着剤により固定される。
上記構成のかつら取付部の形成方法によれば、毛束を次々に重ね合わせて連接させる集束毛10と、該集束毛10に沿って配置する芯糸11とを、各毛束間で2本の編込み用糸12で結束することで、編込み部20を形成していくものであり、毛束1,2,3,・・・・,n−3,n−2,n−1,nを介して芯糸11が頭部にしっかりと固定されてかつら取付部100が形成される。編込み用糸12が芯糸11と集束毛10とを一体的に結束することで編込み部20を形成するので、かつら取付部とかつらとをかがり糸でかがる場合に、かがり糸が編込み部内の芯糸11のみを誤って括って引っ張り出してしまうようなことが無く、強固なかつら取付部100が形成される。
〔第2の実施形態〕
図7は、薄毛領域が額から頭頂に至るU字形に存在する場合において、後頭部側だけにかつら取付部100Aを形成する例である。符号A2が編込み開始端、符号B2が編込み終了端であり、頭部の上方から見て反時計回りに編み込んでいく。かつらは、頭部の薄毛領域を覆ってかつらの後部をかつら取付部100Aにかがり糸で縫い合わされる。かつらは、頭部の薄毛領域の側方に生えている自毛を例えばストッパ等の挟着具で固定し、額部に両面テープあるいは接着剤により貼り付けることで固定される。
この実施例では、ストッパを外し、両面テープあるいは接着剤を剥がすと、かつらを後頭部側へ開けられるので、頭皮を直接洗うことができる。
〔第3の実施形態〕
図8は、薄毛領域が頭頂に円形に存在する場合において、薄毛領域を一回りするかつら取付部100Bを示す。かつら取付部100Bは、エンドレスであり編込み開始端A3と編込み終了端B4は一致する。編込み開始端をどの位置にしてもよいが、なるべく額部から避けた位置とするのがよい。編込み用糸は、編込み終了端に到達すると、もはや編込みを続行できないので、芯糸と結着して余分を切除する。
かつらは、頭部の薄毛領域を大きく覆い、かつらの周縁はかつら取付部100Bの内輪郭に密着する。かつらの周縁とかつら取付部100Bとをかがり糸でかがることで、かつらを固定できる。
〔第4の実施形態〕
図9は、薄毛領域が頭頂に円形に存在する場合において、額側のみにかつら取付部100Cを形成する例である。符号A4が編込み開始端、符号B4が編込み終了端である。かつらは、額側から頭部の薄毛領域を大きく覆い、かつらの前側周縁部をかつら取付部100Cにかがり糸で縫い合わされる。かつらベースの後半周縁部は自毛に対してストッパで固定される。
この実施例では、ストッパを外すと、かつらを額側へ開けられるので、頭部を直接洗うことができる。
〔第5の実施形態〕
図10は、薄毛領域が額から後頭部まで存在する場合において、薄毛領域の境界線に沿って両側頭部に対向一対に形成するかつら取付部100D,100Dを示す。符号A5が編込み開始端、符号B5が編込み終了端である。かつらは、額側から後頭部の薄毛領域を大きく覆い、かつらの両側周縁部を左右一対のかつら取付部100D,100Dにかがり糸で縫い合わされる。かつらの前部及び後部は、両面テープあるいは接着剤により固定される。
この実施例では、両面テープあるいは接着剤を剥がすと、額側からかつらベースの内側に手を入れて薄毛領域を直接洗うことができる。
〔第6の実施形態〕
図11に示すように、この実施形態のかつら取付部は、一つのリール31からリール糸を引き出して、先端側の糸部を芯糸11とし、芯糸11に続くリール側の糸部を編込み用糸12とし、これらの境目で輪を形成して編込み開始位置A1の第1の毛束1の根元に縛ることで、結着部を形成する。次いで、第1の毛束1に隣接した位置の複数本の毛髪を取り纏めて第2の毛束とし、第1の毛束1を第2の毛束に沿わせて重ね合せ集束毛10とし、芯糸11を沿わせて重ねる。集束毛と芯糸とを外側から編込み用糸12で締め付けて束ねることで、編込み部を形成する。以後同様に、順次、次の毛束を取り込んで集束毛及び芯糸と共に編込み用糸で結束していき、終端のかつら取付部の形成を終了する所定位置まで、同様の作業を繰り返し、一本の綱状に連続する編込み部を形成する。次いで、かつら取付部の形成を終了する位置に形成された棒状の編込み張出部を折り返して末端側の編込み部に縫い合わせることで、かつら取付部を完成する。形成したかつら取付部を利用してかがり糸によりかつらを固定する。
この実施形態のかつら取付部及びその形成方法が、第1の実施形態と相違している点は、芯糸11及び編込み用糸12がそれぞれ1本であること、及び編込み用糸12による結束の仕方が相違していることである。この実施形態では、編込み用糸12にテンションを掛けて左手でループする輪を3つ作る。このとき、輪のクロスする部分を一回又は数回捻るようにして、3つの輪に集束毛10を通して3つの輪を縮径したときに、スパイラルに広がらない輪とする。3つの輪を一度に作らず、輪を一つずつ作って輪に集束毛10を通すことを複数回行うようにしてもよい。
〔その他の実施形態〕
本発明は、上記の実施形態に限定されるものでなく、本発明の技術的範囲には、発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々、設計変更した形態が含まれる。
(1)上記実施形態では、芯糸11と編込み用糸12とをリールから繰り出したリール糸Sに輪を作り第1の毛束1を締めて先端側を芯糸11、リール側を編込み用糸12としたが、芯糸11と編込み用糸12とは別々の糸を用意して第1の毛束1に結着してもよい。
(2)編込み用糸12に掛けるテンションはリール以外のものとしてもよい。すなわち、編込み用糸12の繰り出しが可能なように該編込み用糸12にテンションを掛けられれば足りる。
100,100A,100B,100C,100D…かつら取付部
1…第1の毛束
2…第2の毛束
10…集束毛
11…芯糸
12…編込み用糸
12a…撚り部
12b…広がり部
12c…撚り部
13…輪
20…編込み部
20A…編込み張出部
31,32…糸巻冶具
200…かつら

Claims (18)

  1. かつらの輪郭の少なくとも一部に沿ってかつら装着者の頭部に形成されたかつら取付部であって、
    複数本の毛髪を取り纏めて毛束とし該毛束を順次一方向に重ね合わせることで連接して形成する集束毛と、
    上記集束毛の全長に沿って配設する芯糸と、
    上記集束毛を結束する編込み用糸と、で成り、
    編込み開始端の毛束を上記編込み用糸で結着すると共に、上記集束毛と上記芯糸とを纏めてその外周を上記編込み用糸で結束することで、連続した編込み部を備えるとともに、連続した編込みが終了する位置から突出して、集束毛および芯糸を編込み用糸で束ねてなる編込み張出部を形成し、当該編込み張出部を折り返して上記編込み部に縫い合わせたことを特徴とする、かつら取付部。
  2. 前記編込み開始端の毛束が前記芯糸の基端でさらに結着されたことを特徴とする、請求項1に記載のかつら取付部。
  3. 前記編込み用糸は、糸巻冶具から繰り出した複数本の糸で成ることを特徴とする、請求項1又は2に記載のかつら取付部。
  4. 前記芯糸及び編込み用糸は、糸巻冶具から繰り出した2本の糸で成り、該2本の糸が前記編込み開始端の毛束に結着され、該結着部位から先端側を前記芯糸とすると共に、結着部位から糸巻冶具側の2本の糸を前記編込み用糸としたことを特徴とする、請求項3に記載のかつら取付部。
  5. 前記編込み用糸は、糸巻冶具から繰り出した2本の糸で成っており、該2本の糸に撚りを掛けて連鎖状の広がり部を形成し、該広がり部に前記集束毛と前記芯糸とを通して該広がり部を縮径することで集束毛及び芯糸を結束することを特徴とする、請求項4に記載のかつら取付部。
  6. 前記編込み開始端の第1の毛束が、編込み糸で形成した輪に通されて該第1の毛束の根元付近で結着されることで結着部を有していることを特徴とする、請求項1に記載のかつら取付部。
  7. 前記結着部は、糸巻冶具から繰り出した1本又は複数本の糸で形成された輪に前記集束毛を通し該輪を縮径することで形成されることを特徴とする、請求項6に記載のかつら取付部。
  8. 頭部のかつら取付部の形成を開始する位置の複数本の毛髪を取り纏めて第1の毛束とする工程と、
    上記第1の毛束の根元付近に編込み用糸を結着する工程と、
    上記第1の毛束に芯糸を添わせる工程と、
    上記第1の毛束に隣接した位置の複数本の毛髪を取り纏めて第2の毛束とする工程と、
    上記第1の毛束及び上記芯糸と、上記第2の毛束とを一方向に重ね合わせることで毛束を連接させて集束毛とする工程と、
    上記集束毛を纏めて外側から編込み用糸で結束して編込み部とする工程と、を備え、
    以後同様に、順次、毛束を取り込んで編込み用糸で結束することで、かつら取付部の形成を終了する所定位置まで編込み部を連続して形成し、
    前記かつら取付部の形成を終了する位置において余る前記集束毛と前記芯糸とを上記集束毛の先端付近まで前記編込み用糸で締め付け束ねて棒状の編込み張出部とし、該編込み張出部を上記かつら取付部の形成終了位置から折り返し、該形成終了位置まで形成したかつら取付部に縫い合わせることを特徴とする、かつら取付部の形成方法。
  9. 糸を2本使用し、該2本の糸を、頭部から所要寸法離れた位置で前記各編込み用糸にテンションをかけ頭部方向へ間隔を次第に狭めて鋭角となるように繰り出し、該2本の糸の先端から所要長さの位置に結び目とする輪を作り、この輪で上記第1の毛束の根元近傍を結着し、上記第1の毛束から繰り出し元側の2本の糸部分を上記編込み用糸として使用し、上記第1の毛束から上記先端までの2本の糸部分を上記芯糸として使用することを特徴とする、請求項8に記載のかつら取付部の形成方法。
  10. 糸を2本使用し、該2本の糸を、頭部から所要寸法離れた位置で前記各編込み用糸にテンションをかけ頭部方向へ間隔を次第に狭めて鋭角となるように繰り出し、かつ一方の糸の先端と他方の糸の先端とが前記芯糸の長さ分だけずれるように繰り出し、短く繰り出した糸の先端部に対応する位置で該2本の糸に結び目とする輪を作り、この輪で前記第1の毛束の根元近傍を結着し、前記第1の毛束から繰り出し元側の2本の糸部分を上記編込み用糸として使用し、上記第1の毛束から延びる1本の糸部分を上記芯糸として使用することを特徴とする、請求項8に記載のかつら取付部の形成方法。
  11. 前記芯糸と前記編込み用糸とは別の糸を使用し、上記編込み用糸は2本使用し頭部から所要寸法離れた位置で前記各編込み用糸にテンションをかけて互いに離れた状態から頭部方向へ間隔を次第に狭めて鋭角となるように繰り出して前記第1の毛束の根元に結着することを特徴とする、請求項9又は10に記載のかつら取付部の形成方法。
  12. 前記2本の編込み用糸を複数回撚り合わせて、中間に広がり部をもたせかつ該広がり部の両側にそれぞれ撚り合わせ部を形成し、上記広がり部に対し前記集束毛と前記芯糸とを通し、次いで上記広がり部を最も近い毛束の近傍に移行させて縮径させ、上記2本の編込み用糸で集束毛と芯糸とを締め付け束ねることを、前記毛束間で1回又は複数回行うことを特徴とする、請求項8乃至11の何れかに記載のかつら取付部の形成方法。
  13. 糸を1本又は複数本使用し、該1本又は複数本の糸を、頭部から所要寸法離れた位置で前記各編込み用糸にテンションをかけて頭部方向へ繰り出し、該糸の先端から所要長さの位置に結び目とする輪を作り、この輪で前記第1の毛束の根元近傍を結着し、上記第1の毛束から繰り出し元側の糸部分を上記編込み用糸として使用し、上記第1の毛束から先端までの糸部分を芯糸として使用することを特徴とする、請求項8に記載のかつら取付部の形成方法。
  14. 前記上記芯糸と前記編込み用糸とは別の糸を使用し、上記編込み用糸は、頭部から所要寸法離れた位置でテンションをかけて頭部方向へ繰り出して先端を前記第1の毛束の根元に結着することを特徴とする、請求項13に記載のかつら取付部の形成方法。
  15. 前記集束毛を延長するごとに該集束毛と前記芯糸とを共捻りし、該共捻りした集束毛と芯糸とを前記編込み用糸の輪に通して輪を縮径して締め付け束ねることを、前記毛束間で1回又は複数回行うことを特徴とする、請求項8乃至14の何れかに記載のかつら取付部の形成方法。
  16. 請求項8乃至15の何れかに記載の前記編込み用糸は、かつら装着者の側方に配置したリールから引き出した糸を使用することを特徴とする、かつら取付部の形成方法。
  17. かつら取付部の形成開始に先立って、前記かつらベースの輪郭に沿って前記頭部にマーカー線を印す、請求項8乃至16の何れかに記載のかつら取付部の形成方法。
  18. 請求項8乃至17の何れかに記載のかつら取付部の形成方法によって形成されたかつら取付部と前記かつらの周縁部とをかがり糸よって括りつけることで、かつらを頭部に固定することを特徴とする、かつらの固定方法。
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