JP5559640B2 - 構造体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、構造体の製造方法関する。
近年、ダイオキシンやビスフェノールAを検知する分子センサ、DNAセンサ、溶液センサ、およびガスセンサなどの各種センサの電極、ならびに色素増感型太陽電池の電極などにおいて、酸化スズの微細構造体の利用が期待されている(例えば、特許文献1参照)。酸化スズの微細構造体は、例えば溶液中において導電膜上に酸化スズのナノ結晶を析出成長させて形成される。
酸化スズのナノ結晶は、導電性を有しているので、導電膜の表面積を実質的に増加させることができる。表面積の増加は、ガスセンサにおけるガス吸着量の増加や、色素増感型太陽電池における色素吸着量の増加など、特定の物質の吸着量の増加をもたらす。そのため、各種センサの感度や、色素増感型太陽電池の光電変換効率などを高めることができる。
特開2010−60461号公報
ところで、各種センサや色素増感型太陽電池などには、フレキシブル性が要求されることがある。
しかしながら、上記特許文献1では、導電膜であるFTO(フッ素ドープ酸化スズ)膜をガラス基板上に形成していたので、良好なフレキシブル性が得られないことがあった。
また、別の問題として、上記特許文献1では、導電膜を溶液中に浸漬して酸化スズの微細構造体を形成するので、酸化スズの微細構造体を用途に応じた所望のパターンに形成することが難しかった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、良好なフレキシブル性を有する構造体の製造方法であって、酸化スズの微細構造体を所望のパターンに形成することができる構造体の製造方法提供すること目的とする。
本発明の一態様によれば、
基材と、該基材上に設けられる導電膜と、該導電膜上に設けられる酸化スズの微細構造体とを備える構造体の製造方法において、
前記基材として高分子基材を用い
マスクパターンを介して光を前記導電膜の表面に照射することで(または、走査型プローブ顕微鏡のプローブで前記導電膜の表面を走査することで)、当該表面に親水性領域および撥水性領域を形成し、
次いで、前記導電膜の前記親水性領域および前記撥水性領域をスズイオン含有溶液に接触させ、前記スズイオン含有溶液から酸化スズのナノ結晶を前記親水性領域に選択的に析出成長させて、前記酸化スズの微細構造体を形成する、構造体の製造方法が提供される。
本発明の一態様によれば、良好なフレキシブル性を有する構造体の製造方法であって、酸化スズの微細構造体を所望のパターンに形成することができる構造体の製造方法を提供することができる。
本発明の一実施形態による構造体の製造方法の工程図である。 スズイオン含有溶液中に高分子基材および導電膜が浸漬された状態の模式図である。 本発明の別の実施形態による構造体の製造方法の工程図である。 導電膜の表面処理の模式図である。 実施例1の構造体の外観写真である。 実施例1の構造体のSEM写真である。 実施例1の構造体の破断面のTEM写真である。 図7の中央部の拡大写真である。 図8の領域Xの拡大写真である。 図8に示す領域1〜領域3の電子線回折パターンの図である。 エッジングの累積時間とエッチング面近傍の化学組成との関係を示す図である。 実施例1の構造体のXPSスペクトルの全体図である。 図12におけるSn3d5/2スペクトルの拡大図である。 図12におけるO1sスペクトルの拡大図である。 図12におけるF1sスペクトルの拡大図である。
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。なお、本発明は、後述の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、後述の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の一実施形態による構造体の製造方法の工程図である。構造体は、基材と、該基材上に設けられる導電膜と、該導電膜上に設けられる酸化スズの微細構造体とを備える。
まず、導電膜を設置するための基材を準備する(ステップS10)。基材の材料としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)などの高分子有機化合物(ポリマー)が用いられる。
このように、本実施形態によれば、基材として、高分子有機化合物からなる高分子基材を用いるので、良好なフレキシブル性を有する構造体を得ることができる。また、基材としてガラス基材を用いる場合に比べて、構造体のコスト削減や軽量化を図ることができる。
高分子基材は、透明であっても良いし、不透明であっても良いが、色素増感型太陽電池などに適用される場合、透明であることが要求される。また、高分子基材の形態は、用途に応じて適宜選定されるが、フィルム状、繊維状、粒子状、凹凸形状のような複雑形状などであって良い。透明であって、フィルム状の高分子基材としては、例えばPETフィルムなどが挙げられる。
次いで、高分子基材上に導電膜を設置する(ステップS12)。導電膜の種類としては、特に限定されないが、例えば、ITO(スズドープ酸化インジウム)膜、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)膜などが挙げられる。
導電膜は、透明であっても良いし、不透明であっても良いが、色素増感型太陽電池などに適用される場合は、透明であることが要求される。また、導電膜は、酸化スズの微細構造体との密着性を向上するため、酸化スズを含んでいることが好ましい。透明であって、酸化スズを含んでいる導電膜としては、例えばITO膜やFTO膜などが挙げられる。
導電膜を設置する方法は、高分子基材が劣化しない方法である限り、特に限定されず、一般的な方法であって良い。例えば、高分子基材であるPETフィルム上に、導電膜であるITO膜を設置する場合、スパッタリング法などが用いられる。
なお、本実施形態の積層体の製造方法は、基材を準備する工程(ステップS10)と、基材上に導電膜を設置する工程(ステップS12)とを有するとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、積層体の製造方法は、これらの工程(ステップS10、ステップS12)の代わりに、基材と、基材上に設置される導電膜とを備える積層体を準備する工程を有しても良く、この場合、積層体の基材として、高分子基材を用いれば、良好なフレキシブル性を有する構造体を得ることができる。
次いで、導電膜の表面をスズイオン含有溶液(以下、単に「溶液」ともいう)に接触させる(ステップS14)。これによって、導電膜の表面に、酸化スズのナノ結晶を析出成長させて酸化スズの微細構造体を設置する。
ここで、「酸化スズ」とは、一酸化スズ(SnO)および二酸化スズ(SnO2)の少なくとも一方を意味する。なお、酸化スズの一部は、アモルファスの形態で析出成長しても良い。
また、「酸化スズのナノ結晶」とは、酸化スズを主成分(モル%表示で50%以上)とするナノ結晶をいう。同様に、「酸化スズの微細構造体」とは、酸化スズを主成分(モル%表示で50%以上)とする微細構造体をいう。酸化スズの微細構造体に含まれる複数のナノ結晶は、互いに離れていても良いし、一部のみにおいて接触していても良い。
このように、本実施形態によれば、溶液中において導電膜上に酸化スズの微細構造体を設置するので、高分子基材や導電膜が劣化しない程度の温度(例えば、300℃以下の温度)で、酸化スズの微細構造体を設置することができる。
溶液は、溶媒にスズ化合物などを添加して調製される。本実施形態では、溶媒として、取り扱い上の容易性から、水を用いるが、酸化スズのナノ結晶が析出成長する系であれば、有機溶媒などの非水溶媒を用いることも可能である。
スズ化合物は、何価のスズを含んでも良く、スズは2価、4価であっても良い。スズ化合物としては、例えば、SnF4(フッ化スズ)、SnCl4(四塩化スズ)、SnCl2(二塩化スズ)、SnCl2・2H2O(塩化スズ二水和物)、SnCl4・5H2O(塩化スズ五水和物)、SnBr2(臭化スズ)、SnI2(ヨウ化スズ)、SnI4(ヨウ化スズ)、酢酸スズ、シュウ酸スズ、ステアリン酸スズ、硫酸スズ、酒石酸スズ、テトラフルオロホウ酸スズ、トリフルオロメタンスルホン酸スズ、または、スズメトキシドなどのスズ金属アルコキシドを使用することができる。これらのスズ化合物は、組み合わせて使用されても良い。
溶液中に含まれるスズイオンの濃度は、特に限られない。スズイオンの濃度は、例えば、0.1mM〜100mMの範囲であっても良い。スズイオンの濃度が100mMよりも大きくなると、析出成長の時間が短くなるため、制御が比較的難しくなる。また、スズイオンの濃度が0.1mMよりも小さくなると、析出成長の時間が長くなるため、生産性が悪くなる。ただし、スズイオンの濃度が0.1mM〜100mMの範囲以外の場合であっても、得られる酸化スズのナノ結晶の特性に、大きな変化はなく、必要な場合そのような濃度を採用しても良い。
溶液は、スズイオンの他、フッ素イオンを含むものであることが好ましい。そのような溶液は、例えば水にSnF4(フッ化スズ)を添加して調製される。これによって、溶液から析出成長する酸化スズのナノ結晶にフッ素をドープすることができ、導電性などの特性を向上することが可能である。なお、フッ素のドーピング量は、スズ化合物の種類の変更や他の添加物の添加などで調節することが可能である。
図2は、スズイオン含有溶液中に高分子基材および導電膜が浸漬された状態の模式図である。導電膜20は、溶液60に接触する接触面21と、その反対側の非接触面22とを有する。
導電膜20を溶液60に浸漬する際には、導電膜20の接触面21が「下向き」になるように設置することが好ましい。導電膜20の接触面21を「上向き」にした場合、溶液60中で析出し浮遊した酸化スズが導電膜20の接触面21に滞留して、以降の酸化スズの析出成長を妨害する恐れがあるからである。
ここで、「下向き」とは、導電膜20の接触面21が、溶液60の液面62と平行に、下向きに設置される状態の他、図3に示すように、導電膜20の接触面21が、溶液60の液面62に対して傾斜した状態で、下向きに設置されている状態も含まれる。導電膜20の接触面21が下向きの場合、浮遊性の酸化スズは、接触面21に滞留せず、溶液60の底部に向かって落下し、沈殿物を形成することになる。
溶液60の温度および処理時間は、特に限られないが、温度が低い場合は、より長い時間、導電膜20を浸漬保持させる必要がある。処理温度は、例えば室温〜99℃の範囲であり、例えば90℃である。また、処理時間は、特に限られないが、例えば、1分〜24時間の範囲であり、例えば、2時間である。なお、処理の際に、水熱反応を利用しても良い。
以上の工程により、高分子基材と、該高分子基材上に設けられる導電膜と、該導電膜上に設けられる酸化スズの微細構造体とを備える構造体が得られる。基材として高分子基材を用いるので、良好なフレキシブル性を得ることができる。
この構造体において、酸化スズのナノ結晶の長軸長さは、処理条件などで変化するが、
例えば1nm〜300nm程度である。導電膜表面の近傍では5〜10nm程度の長軸長さを有するナノ結晶が多く、一方、導電膜表面から離れた領域では100〜300nm程度の長軸長さを有するナノ結晶が多い傾向にある。
また、この構造体において、酸化スズのナノ結晶の形態は、処理条件などで変化するが、例えばシート状、ロッド状などであって良い。100〜300nm程度の長軸長さを有するナノ結晶は、短冊シート状の形態をとることが多い。
この構造体において、酸化スズの微細構造体は、酸化スズのナノ結晶などで構成される多孔質体であって、ナノオーダからマイクロオーダの微細な凹凸形状の表面形状を有している。そのため、酸化スズの微細構造体は、特定の物質に対して良好な吸着性を有しており、各種センサの電極や色素増感型太陽電池の電極などに好適に用いられる。なお、本実施形態の酸化スズの微細構造体は、フィルタや触媒などにも適用することができる。
(第2の実施形態)
図3は、本発明の別の実施形態による電極の製造方法の工程図である。なお、図3において、図1と同一工程には同一符号を付して説明を省略する。
本実施形態では、高分子基材上に導電膜を設置した(ステップS12)後に、導電膜の表面の一部を表面処理する(ステップS30)。これによって、スズイオン含有溶液に対して濡れ性の異なる領域(濡れ性の高い領域または濡れ性の低い領域)を導電膜の表面に設ける。
例えば、導電膜の表面の一部を表面処理して、親水性領域または疎水性領域を導電膜の表面に設ける。ここで、「親水性」および「撥水性」は相対的なものであるが、例えば親水性領域は、10°以下(より好ましくは5°以下、さらに好ましくは1°以下)の水接触角(JIS R3257)を有していることが好ましい。また、撥水性領域は90°以上(より好ましくは100°以上、さらに好ましくは110°以上)の水接触角を有していることが好ましい。
通常、ITO膜やFTO膜などの導電膜を空気中で放置すると、空気中に含まれる有機物などが導電膜の表面に付着するので、導電膜の表面は撥水性を示す。導電膜の表面は、清浄化されると、親水性に戻る。
そこで、本実施形態では、導電膜の表面処理として露光処理を行う。露光処理によって導電膜の表面に付着した有機物などが分解され、導電膜の表面が清浄化されて親水性に戻る。露光の光としては、特に限定されないが、例えば10〜200nmの波長を有する真空紫外光などが用いられる。
図4は、導電膜の露光処理の模式図である。なお、図4において、図2と同一構成には、同一符号を付して説明を省略する。
図4に示すように、マスクパターンを用いて露光処理を行って良い。マスクパターン70は、一般的な構成であって良く、例えば遮光膜72と該遮光膜72に設けられる開口部74などで構成される。
マスクパターン70を介して、光源から出射された光80を導電膜20の表面21に照射すると、表面21の露光領域が清浄化されて親水性領域となり、表面21の非露光領域が撥水性領域となる。
露光領域のパターンは、光80の波長程度まで微細化することが可能である。微細化のため、マスクパターン70と導電膜20との間の光路に集光レンズを設け、マスクパターン50からの光を導電膜20上に縮小投影しても良い。
別の露光処理として、マスクパターン70を用いることなく、導電膜20上でスポット光を走査する方法もある。この場合、スポット光の走査領域が清浄化されて親水性領域となり、残りの非走査領域が撥水性領域となる。
その他の表面処理として、AFM(原子間力顕微鏡)などのSPM(走査型プローブ顕微鏡)を用いる方法もある。この場合、プローブ(短針)の先端から電荷を導電膜20に印加すると、印加された領域が清浄化されるので、プローブの走査領域が親水領域となり、残りの非走査領域が撥水性領域となる。この場合、露光処理の場合に比べて、露光領域のパターンをより微細化することができる。
なお、本実施形態では、撥水性(高濡れ性)を有する導電膜20の表面の一部を親水性(低濡れ性)に改質するが、本発明はこれに限定されない。例えば、親水性(低濡れ性)を有する導電膜20の表面の一部を撥水性(高濡れ性)に改質しても良い。
このように導電膜の表面に濡れ性の異なる領域を設けることで、後述のステップS32において、導電膜の表面の一部にのみ、溶液を選択的に密着させて、ナノ結晶を選択的に析出成長させることができる。
最後に、導電膜の表面をスズイオン含有溶液に接触させる(ステップS32)。これによって、濡れ性の高い領域(例えば、親水性領域)に、酸化スズのナノ結晶を選択的に析出成長させる。よって、微細構造体を所望のパターンに形成することができる。
親水性領域上にナノ結晶を析出成長させる場合、溶液の溶媒は水を含むことが好ましいが、非水系の有機溶媒であっても良い。
以上の工程により得られる構造体は、酸化スズの微細構造体が所望のパターンに形成されているので、各種センサの電極や色素増感型太陽電池の電極などに、好適に用いられる。
なお、本実施形態では、基材として高分子基材を用いるが、ガラス基材や金属基材などの他の基材を用いても、酸化スズの微細構造を所望のパターンに形成することができる。
以下に、実施例などにより本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
[実施例1]
(導電膜の表面処理)
まず、高分子基材と導電膜とからなるフィルム基板(縦305mm×横305mm×厚さ0.125mm、Aldrich社製、ITOコートPETシート)を用意した。このフィルム基板において、高分子基材はPETフィルムであり、導電膜はITO膜であった。
次に、ITO膜の表面に、マスクパターンを介して、真空紫外光を大気中で10分間露光した。真空紫外光の光源には、低圧水銀ランプ(セン特殊光源社製、PL16−110)を用いた。この光源の主波長は、184.9nmおよび253.7nmであった。
その後、ITO膜上の水接触角を測定した。露光領域は111°の水接触角を有しており撥水性を示したのに対し、非露光領域は5°以下の水接触角を有しており親水性を示した。
(酸化スズの微細構造体の形成)
酸化スズの微細構造体の形成のため、溶液を調製した。溶液は、90℃の蒸留水に、SnF2(和光純化学社製、質量数156.71g、純度90.0%)を5mMの濃度で溶解して調製した。
この溶液中に、真空紫外光を露光したフィルム基板を浸漬して、ITO膜を溶液に接触させた。なお、フィルム基板を、溶液の液面(上面)に対して約45゜の傾きとなるように、溶液中に完全に浸漬した。なお、この際、ITO膜の接触面が下向きになるようにした。溶液の温度は90℃であった。また、浸漬時間は2時間であった。このようにして、ITO膜上に酸化スズのナノ結晶を析出成長させて微細構造体を形成した。
その後、フィルム基板を溶液から取り出し流水で洗浄した。流水の衝撃による、ナノ結晶の破損および脱落は認められず、ナノ結晶とITO膜との密着性は良好であった。これは、ナノ結晶がITO膜上に直接形成されているためと考えられる。
このようにして、PETフィルムと、PETフィルム上に設けられるITO膜と、ITO膜上に設けられる酸化スズの微細構造体とを有する構造体を得た。
(評価)
得られた構造体の評価結果について図5〜図15を参照して説明する。図5〜図9には、構造体100、PETフィルム110、ITO膜120、酸化スズの微細構造体130、酸化スズのナノ結晶140の少なくとも1つが図示されている。
まず、得られた構造体100の外観写真を図5に示す。図5において、(a)は構造体を湾曲させた状態の全体写真であり、(b)は構造体の拡大写真である。
図5(a)に示すように、構造体100を湾曲させたところ、構造体100の破損、ナノ結晶140の破損および脱落は認められず、良好なフレキシブル性を有していることがわかった。
図5(b)に示すように、酸化スズの微細構造体130は、マスクパターンと同じ形状のパターンを有し、ITO膜120上の露光領域に選択的に形成されていた。一方、ITO膜120上の非露光領域およびPETフィルム110上には、酸化スズの微細構造体130は認められなかった。酸化スズの微細構造体130の形成領域は、非形成領域に比べて僅かに白色を呈していた。
次に、構造体100のSEM(走査型電子顕微鏡)写真を図6に示す。図6において、(a)は構造体100の表面の写真であり、(b)は(a)の中央部の拡大写真であり、(c)は構造体100の破断面の断面写真である。
図6(a)から、ITO膜120上の露光領域には、酸化スズのナノ結晶140が均一に形成されていることがわかる。また、図6(b)から、ナノ結晶140は、約100〜300nmの長さ、約5〜10nmの厚さを有していることがわかる。さらに、図6(c)から、ナノ結晶140は、短冊シート状であることがわかる。
次に、構造体100の破断面のTEM(透過型電子顕微鏡)写真を図7〜図8に示す。図8は、図7の中央部の拡大写真である。
図7〜図8から、導電膜120の表面に、酸化スズのナノ結晶140が直接形成されていることがわかる。これは、導電膜120の表面の露光領域(親水性領域)が、酸化スズのナノ結晶140の析出成長に適した表面であることを示している。
また、図7〜図8から、酸化スズのナノ結晶140は、導電膜120の表面近傍において、約5〜10nmの長さを有していることがわかる。また、酸化スズのナノ結晶140は、導電膜120の表面から離れた領域において、約100〜300nmの長さを有していることがわかる。
次に、図8の領域Xの拡大写真を図9に示す。図9において、(a)は図8の領域Xの拡大写真であり、(b)は(a)の領域Yの拡大写真である。
図9に示すように、酸化スズのナノ結晶140には、格子縞が観察された。これは、ナノ結晶140の結晶性が良好であることを示している。
次に、図8に示す領域1〜領域3の電子線回折パターンを図10に示す。図10において、(a)は領域1における電子線回折パターンであり、(b)は領域2における電子線回折パターンであり、(c)は領域3における電子線回折パターンである。これらの電子線回折パターンはTEMを用いて測定したものである。
図10(a)は、ITO膜120の表面から約210nm離れた領域に存在する酸化スズのナノ結晶140の電子線回折パターンである。この電子線回折パターンから、酸化スズのナノ結晶140がSnO単相であることがわかる。ちなみに、観察された面間隔0.315nm、0.189nm、0.159nmに相当する回折像は、それぞれ、SnOの(101)面、(112)面、(104)面による回折像であると推定された。
図10(b)は、図10(a)と同様に、ITO膜120の表面から約210nm離れた領域に存在する酸化スズのナノ結晶140の電子線回折パターンである。この電子線回折パターンから、酸化スズのナノ結晶140がSnO単相であることがわかる。ちなみに、観察された面間隔0.315nm、0.189nm、0.159nmに相当する回折像は、それぞれ、SnOの(101)面、(112)面、(104)面による回折像であると推定された。
図10(c)は、ITO膜120の表面から約30nm離れた領域に存在する酸化スズのナノ結晶140の電子線回折パターンである。この電子線回折パターンから、酸化スズのナノ結晶140がSnO2単相であることがわかる。ちなみに、観察された面間隔0.343nm、0.243nm、0.181nm、0.146nmに相当する回折像は、それぞれ、SnO2の(110)面、(101)面、(211)面、(112)面による回折像であると推定された。
図10(a)〜(c)から、ITO膜120の表面近傍では、SnO2が析出成長しており、ITO膜120の表面から離れた領域では、SnOが析出成長していることがわかる。
次に、構造体100の化学組成を調べた。具体的には、酸化スズの微細構造体130からPETフィルム110に向けてエッチングを3秒行う度に、エッチングを停止させて、エッチング面近傍の化学組成をXPS(X線光電子分光)で調べた。
エッジングの累積時間とエッチング面近傍の化学組成との関係を図11および表1に示す。なお、表1において、O/Snは酸素原子とスズ原子との原子比であり、F/Snはフッ素原子とスズ原子との原子比である。
図11および表1から、エッチングの累積時間が3秒以上になると、各成分の原子%が安定化しているので、酸化スズの微細構造体130への付着物(汚染物)が除去されたことがわかる。また、図11から、エッチングの累積時間が15秒に達すると、インジウム(In)の原子%が増えているので、エッチング面がITO膜120に到達しており、酸化スズの微細構造体130が除去されたことがわかる。
そこで、エッチングの累積時間が3〜12秒の間に測定した化学組成から、酸化スズの微細構造体130の化学組成を推定した。酸化スズの微細構造体130において、O/Snは0.75〜0.93であると推定される。これは、TEMによる電子線回折パターンの結果と矛盾しない。また、酸化スズの微細構造体130において、F/Snは0.047〜0.052であると推定される。これは、酸化スズのナノ結晶140にフッ素がドープされていることを示す。
次に、エッチングの累積時間が0秒のときの構造体100のXPS(X線光電子分光)スペクトルを図12〜図15に示す。図12は、構造体100のXPSスペクトルの全体図である。図13は、図12におけるSn3d5/2スペクトルの拡大図である。図14は、図12におけるO1sスペクトルの拡大図である。図15は、図12におけるF1sスペクトルの拡大図である。
図13に示すように、Sn3d5/2スペクトルの結合エネルギーは、486.4eVであった。この値は、一酸化スズ(SnO)における文献値(486.7eV)と略一致しており、金属スズ(Sn)における文献値(484.9eV)よりも高いものであった。これは、酸化スズのナノ結晶140において、スズ原子と酸素原子とが結合しており、スズ原子が正に帯電していることを示している。
図14に示すように、O1sスペクトルの結合エネルギーは、530.4eVであった。この値は、一酸化スズ(SnO)における文献値と略一致していた。これは、酸化スズのナノ結晶140において、酸素原子が負に帯電しており、酸素原子とスズ原子とが結合していることを示している。
図15に示すように、F1sスペクトルの結合エネルギーは、684.5eVであった。この値は、フッ素ドープ酸化スズにおける文献値(684.4eV)と略一致していた。これは、酸化スズのナノ結晶140において、フッ素原子がドーピングされていることを示している。
10 基材
20 導電膜
60 スズイオン含有溶液
70 マスクパターン
72 遮光膜
74 開口部
80 露光の光
100 構造体
110 PETフィルム(高分子基材)
120 ITO膜(導電膜)
130 酸化スズの微細構造体
140 酸化スズのナノ結晶

Claims (2)

  1. 基材と、該基材上に設けられる導電膜と、該導電膜上に設けられる酸化スズの微細構造体とを備える構造体の製造方法において、
    前記基材として高分子基材を用い
    マスクパターンを介して光を前記導電膜の表面に照射することで、当該表面に親水性領域および撥水性領域を形成し、
    次いで、前記導電膜の前記親水性領域および前記撥水性領域をスズイオン含有溶液に接触させ、前記スズイオン含有溶液から酸化スズのナノ結晶を前記親水性領域に選択的に析出成長させて、前記酸化スズの微細構造体を形成する、構造体の製造方法。
  2. 基材と、該基材上に設けられる導電膜と、該導電膜上に設けられる酸化スズの微細構造体とを備える構造体の製造方法において、
    前記基材として高分子基材を用い
    走査型プローブ顕微鏡のプローブで前記導電膜の表面を走査することで、当該表面に親水性領域および撥水性領域を形成し、
    次いで、前記導電膜の前記親水性領域および前記撥水性領域をスズイオン含有溶液に接触させ、前記スズイオン含有溶液から酸化スズのナノ結晶を前記親水性領域に選択的に析出成長させて、前記酸化スズの微細構造体を形成する、構造体の製造方法。
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