本発明は、光ファイバを相互に接続するファイバ接続部品に関する。より具体的には、1本の媒体に平行に配置された複数のコアを有するマルチコアファイバの複数のコアに対し、個別に光を入力/出力するマルチコアファイバ用ファンナウト部品に関する。
ネットワーク需要の急速な拡大に伴い、光通信システムにおいて伝送容量の大幅な拡大が求められている。これに伴い、光ファイバ1本あたりの伝送容量の拡大が必要とされている。しかしながら、1本の光ファイバによって伝送できる容量は、耐パワー性や非線形性の観点から限界に近づきつつある。これを解決する手段の一つとして、同一ファイバ内に複数のコアを有するマルチコアファイバ(以後、マルチコアファイバをMCFと略す)を利用して、光ファイバの空間利用効率を向上させる方法が提案されている。
図1〜図4は、それぞれMCFの様々な構造例を示す図である。図1〜図4では、コアおよびクラッドのみを示しており、被覆等は省略して描いている。それぞれ、MCFの断面を示しており、コアの配置が異なる例を示している。
図1は、第1の例のMCFの構成を示す図であって、コア数が7つの場合を示す図である。MCF10−1は、コア10bと、クラッド10aから構成され、各々のコアの間隔は5μm〜50μm程度である。各コア10bは、三角格子を形成されるように配置されており、以下、この配置構成を三角配置型と呼ぶ。
図2は、第2の例のMCFの構成を示す図であって、コア数が19個の場合を示す図である。MCF10−2は、コア10bと、クラッド10aから構成され、各々のコアの間隔は5μm〜50μm程度である。図1と同様に、各コア10bは、三角格子を形成されるように配置されている。
図3は、第3の例のMCFの構成を示す図であって、コア数が12個の場合を示す図である。MCF10−3は、コア10bと、クラッド10aから構成され、本構成では、各コア10bは、長方形を形成するように配置されており、以下、この配置構成を長方形配置型と呼ぶ。
図4は、第2の例のMCFの構成を示す図であって、コア数が10個の場合示している。MCF10−4は、コア10bと、クラッド10aから構成され、本構成では、各コアの位置に単純な規則性がなく配置されており、以下、ランダム配置型と呼ぶ。尚、ここで言うランダム配置とは、コアが何の規則性もなく無秩序に配置されているということではなく、隣接するコアの中心で形成される図形が、すべて1種類の同一対称形状の繰り返しではないという意味である。上述の各構成において、クラッド10bの径は、単一のコアを有する光ファイバ(概ねφ80〜125μm)と同程度の径、または、単一のコアを有する光ファイバより大きい径である(概ねφ125μm〜300μm)。MCFの複数のコアは、ファイバの長手方向について平行に配置される。基本的には、各コアに沿って、別々の光信号が伝送される。したがって、1本の光ファイバの中に複数の伝送路を有していると考えることができ、同一波長の異なる光信号を同時に伝送することもできる。
MCFは、コア配置によって分類すると、上述の三角配置型、長方形配置型およびランダム配置型の3種類に大別されるが、他に、コア間のクロストーク結合によって分類した結合型、非結合型といった分類もできる。また、各コアの屈折率やコア径を変えたものや、コアの周囲に1〜20μm程度の第2クラッド層を設けたトレンチ型と呼ばれるもの、さらに、各コアの周りに微小な空孔を設けたフォトニック結晶型と呼ばれるものなども提案されている。
MCFにおいて、コアごとに別々の信号を伝送させるためには、MCFの複数のコアと、各々が単一のコアを有する複数本の光ファイバとの間で個別に光を入出力させる必要がある。以下、MCFと接続をされ、80μmφから125μmφ程度のクラッド径を持った単一のコアを有するファイバを、「通常の光ファイバ」と定義する。MCFと通常ファイバとの間で、光を入出力可能とするために、MCF用ファンナウト部品が必要となる。このように、光の入出力を可能とする接続を「光接続」と定義する。
図5は、従来技術のMCFのファンナウト部品の構成例を示す図である。MCF10および複数本の通常の光ファイバ30が、ファンナウト部品20によって、光接続される。通常の光ファイバ30の一端には、それぞれ光コネクタ1が設けられている。光コネクタ1を、光部品付きの他の光ファイバと接続することによって、信号光を入力/出力/増幅などをさせて、MCF10内に伝送させる。しかしながら、通常の光ファイバでは、MCFのコア間隔d(30μm〜50μm)に比べてファイバ径が大きいため、MCFの各コアと通常の光ファイバとを個別に光接続させることが困難である。
この問題を解決する手段としては、空間結合を用いる手法および細径ファイバを用いる手法が提案されている。空間結合を用いた手法は、1枚または複数枚のレンズをMCFと通常の光ファイバの間に設ける手法である。しかしながら、レンズ結合トレランスが厳しいことや、装置構成が大規模と成るため、実用には適さない。
一方、細径ファイバを用いた手法では、MCFのコア間隔dと同程度またはそれ以下(10μm〜50μm)までクラッド径を細径化した複数本の細径ファイバを用い、複数本の細径ファイバをMCFのコアと一致するように配置させる手法である。以下では、MCFのコア間隔dと同程度またはそれ以下クラッド径(10μm〜50μm)の光ファイバを、「細径ファイバ」と定義する。細径ファイバを用いた手法は、接続部品を比較的小型に作ることができるため、空間結合を用いる手法に比べ、より有望な手法である。細径ファイバを作製する手法には、エッチングまたはファイバ延伸などが利用される。
図6は、従来技術のフェルールを使用したファンナウト部品の断面構造を示す図である。MCFと細径ファイバとの間で、相互のコアの位置合わせが行われる。図6は、フェルール2の断面を示しており、フェルールの孔2bの内部に複数本の細径ファイバ40が最密充填されている。各細径ファイバ40は、コア40bとクラッド40aを有している。MCFの各コア位置と図6の各細径ファイバのコア位置と合わせるためには、図6のように細径ファイバ40の径の整数倍の孔径を有するフェルールの孔2bや、断面が六角形状の孔に、細径ファイバを最密充填するように挿入して固定する手法が提案されている(例えば非特許文献1)。
本発明のファイバ接続部品は、溝を有する基板上に複数本の細径ファイバを充填する構造を持つ。以下、この溝を持つ基板を溝基板と呼ぶ。基板は、石英、ガラス、Si基板、セラミック基板またはポリマー基板などとすることができる。また、適切な溝形状を選択し、孔径の等しいまたは異なる複数本の細径ファイバ、円柱状のダミーファイバ、または、ガラスロッドもしくはポリマーロッドなどのダミー部品を組合せて、所望のコア配置パターンを構成する。細径ファイバ、ダミーファイバおよびダミー部品などが等円充填配置または非等円充填配置された構造を持つ。この配置構造は、細径ファイバ等の部品を溝上に順次1本ずつ搭載させていくか、または、列毎に1本ないし複数本ずつ順次搭載していくかもしくは複数本のファイバを束ねた状態で一括して搭載していくことによって作製される。
本発明のファイバ接続部品の構成により、ファイバを搭載する時に摩擦などが生じないため、ファイバの折れ等の心配なく比較的容易に細径ファイバ群を溝内に搭載することができる。さらに、本発明のファイバ接続部品の構成によれば、従来技術における丸孔や六角形状の孔とは異なり、溝基板の形状が上下非対称であるため、軸周り方向を溝部品のみによって規定することができる。細径ファイバのコアと、MCFの各コアとの間の位置の対応を、溝内に充填される部品(すなわち細径ファイバおよびダミー部品)の形状(例えば、径)とその位置によって規定できる。
したがって、MCFの様々な配置に対して、使用する細径ファイバの径を適切に選択し、必要に応じてダミー部品も組み合わせることで、細径ファイバを最密に充填した配置であってかつ様々なコア配置のパターンに簡単に対応ができる。本発明のファイバ接続部品は、典型的には、MCFと通常のファイバとの間を光接続するファンナウト部品に適用することができる。
本発明のファイバ接続部品において、細径ファイバが最密充填に配置されているとは、孔内において最も稠密にファイバが詰め込まれた配置、すなわち隣接するファイバ同士で囲まれる間隙面積の合計が最小になるよう配置されていることを意味している。
図7は、本発明のファイバ接続部品の基本構成を説明する図である。詳細は、実施例とともにさらに後述するが、本発明のファイバ接続部品は、溝基板5上のV溝5aに複数の細径ファイバ40が搭載されている。複数の細径ファイバ40は接着剤3によって相互に固定され、細径ファイバ全体を上方から、押さえ蓋6によって押圧する構造を持つ。
すなわち、1本の媒体(クラッド)に2つ以上のコアを有するマルチコアファイバ(MCF)に対して、2以上のコアの各々に光を入出力するためのファイバ接続部品であって、1つの面上に直線状に形成され、矩形または前記面の垂直方向に向かって幅が広がる断面形状を有する溝(例えば、V溝)が形成された溝基板5と、各々が1つのコアを有し、前記溝内に、前記溝の底部から溝の開口部に向かって、充填されるように順次配置された複数の細径ファイバ40であって、この細径ファイバの各コアが、MCFの2つ以上のコアの位置と概ね一致するように各々のコア径が選択されている、複数の細径ファイバとを備えている。
溝形状としては、代表例として、以下V溝5aを基本として説明するがこれには限られず、U溝、矩形溝またはW溝などを任意に選択が可能である。本発明のファイバ接続部品の構成によれば、異なる径を持つファイバを搭載させる際も、順に搭載することができる。このため、所定の配置へ所定のファイバを対応させることが可能となる。すなわち、長方形配置やランダム配置などの種々の配置によるMCFや、各コア径が異なるMCFなど、任意のコア配置、コア形状に容易対応することができる。また、本発明の構成によれば、従来技術の手法のように予めサブミクロン精度に形成されている孔に細径ファイバを挿入するような困難な作業を必要としない。細径ファイバを溝内に順次または一括して搭載すれば良いので、従来技術のMCFの接続方法と比べて実装作業が非常に簡単である。
溝を形成する方法としては、特定角度の先端を持つブレードを用いたダイシングやエッチングを利用することができる。また、フラットな面を有する3つ以上の部品を対向させて貼り合わせることによっても、所望の角度を持った孔を形成できる。ここでV溝の角度および深さは、作製したいファイバ接続部品のコア配置に合わせて設定し、同時に細径ファイバの径、および細径ファイバの数も所望のコア配置になるよう設定する。溝の形状がV溝などの場合は、その溝のエッジ(底面)は、出来る限り、その溝角度を保った状態が好ましい。ダイシングにおいてそのような精密なエッジ作製が困難な場合は、ダイシング後に溝研磨を施すか、もしくは、エッチングを行うか、または、フラットな面を有する3つ以上の部品の貼合わせ等により、溝を形成させれば良い。
図8は、本発明のMCF用ファイバ接続部品の外観を示す構成図である。詳細は、後述するが、本発明のファイバ接続部品は、溝基板5および押さえ蓋6によって保持された細径ファイバ5および細径ファイバを固定する部品7から構成される。細径ファイバ40は、エッチングまたは線引き加工により作製される。MCFと入出力を行うための細径ファイバは、ファイバ接続部品の押さえ蓋6より外部においては、ファイバ破断を防ぐような被覆層等を有している。また、ファイバ接続部品とは逆側にあるファイバ端にはコネクタなどがとりつけられる。一方で、入出力を伴わない細径ファイバまたはロッド部品は、最適な充填配置とするために必要な部品であるが、少なくとも溝内においてのみ存在していれば良い。したがって、被覆は不要でありファイバ接続部品の外部において必ずしも存在している必要は無い。
本発明のファイバ接続部品は、上述のように溝5aを含む溝基板5と押さえ蓋6との間に、細径ファイバ40を順次搭載することによって構成できるが、この溝への安定的な充填配置構造を実現するためには、溝に細径ファイバを順次搭載していき、その後、単純に蓋を被せて押圧するだけでは、問題が生じ得る。溝の角度誤差、細径ファイバのクラッド径誤差が全くない状態であれば、図7に示した本発明のファイバ接続部品の充填構造を形成できる。
しかしながら、現実的には、サブミクロンオーダで細径ファイバ群を作製すること、および、V溝において深さ誤差をなくし、0.1度以内の角度誤差に抑えかつ十分な平坦度で溝を形成するには限界がある。このような製作誤差は、80〜125μm程度の径を持つ「通常のファイバ」を溝に充填する場合には、問題にならない場合もあるが、本発明で使用する細径ファイバ40の場合には、その誤差の影響を受けやすい。特に、MCF光接続部品の場合、例えば、7コアのときは10本以上の細径ファイバを、19コアのときは28本の細径ファイバを搭載する必要がある。したがって、ファイバの数が増える分だけ、累積誤差は大きくなりえる。
図9は、本発明のファイバ続部品において弾性体を介さずに細径ファイバ群を押圧した場合の構造を示す図である。ファイバ群40に微小な寸法誤差がある中で、ガラス板などを押さえ蓋6として、細径ファイバ群40を溝底面方向に押圧する場合、ガラス板面がフラットであるため、溝最上部の全てのファイバを押圧できない場合が生じる。そのため、図9に示したように、最上段の4本のファイバ群のうちの例えば内側の2本と、押さえ蓋6との間に間隙が生じ得る。このような十分に押圧されないファイバが存在することによって、ファイバ同士の間隙が広くなり、所期の充填配置からのずれが大きくなる。または、図9では明示されていないが、押さえ蓋6がわずかに斜めに傾いた状態で固定されることもあり得る。さらに、ファイバ径の異なる細径ファイバ群を搭載させる場合は、上述の累積誤差の影響はより顕著となる。誤差などによって最上段の細径ファイバ群のうちの一部のファイバしか押圧できない場合、溝形状およびMCFのコア配置によって定まる所定の充填配置からのずれは大きくなり、低損失な接続を実現することが難しくなる場合がある。
本発明のファイバ接続部品では上述の累積誤差の問題が生じないよう、図7に示したように溝5a上の複数本の細径ファイバ群が、ゴムなどの弾性体4および押さえ蓋6を用いて、溝下方向に偏るように押しつけられる構造とする。弾性体4は、溝5a内の最上段に配置された複数本のすべての光ファイバと接している。この構成によって、溝5aが深さの寸法誤差を有していても、溝の角度さえ決まれば、常に細径ファイバ40やロッド部品等が常に接触した状態を保つことができる。間隙がない状態を保ちながら、所望の充填構造を維持した状態でファイバ接続部品を作製することができる。
要約すれば、本発明のファイバ接続部品は、概ね以下の手順で製作することができる。すなわち、1本の媒体(クラッド)に2つ以上のコアを有するマルチコアファイバ(MCF)に対して、2以上のコアの各々に光を入出力するファイバ接続部品を製造する方法は、概ね以下の3つのステップを含む。すなわち、第1のステップは、1つの面上に直線状に形成され、矩形または前記面の垂直方向に向かって幅が広がる断面形状を有する溝が形成された溝基板を備えるステップである。溝は、例えば、V溝とすることができる。
第2のステップは、各々が1つのコアを有し、上述の溝内に、溝の底部から溝の開口部に向かって、複数の細径ファイバを順次または一括して配置するステップであって、複数の細径ファイバは、1本の細径ファイバ毎にまたは概ね同一の高さにある複数本の細径ファイバ毎に前記溝内に順次配置されるかまたはすべての細径ファイバが一括して搭載され、細径ファイバの各コアが、MCFの2つ以上のコアの位置と概ね一致するように各々のコア径が選択されている、配置するステップである。細径ファイバのコア径は、すべて同一であっても良いし、異なる径のものを含んでいても良い。
第3のステップは、複数の細径ファイバが充填された溝を覆う弾性体および該弾性体上の押さえ蓋によって、溝の底部方向に複数の細径ファイバを押圧するステップであって、溝内の充填された複数の細径ファイバの少なくとも一部は溝の底部に接し、複数の細径ファイバが最密充填されるように、弾性体を介して、底面方向に複数の細径ファイバを押圧するステップである。
本発明のファイバ接続部品では、V溝の角度誤差や細径ファイバ径の誤差があったとしても、弾性体4が弾性変形して、弾性体5が溝5aの最上列の全てのファイバと接することが可能となる。最上段のファイバ群と、ゴム4との間には無駄な間隙が生じることはなく、押さえ蓋6が斜めに傾くこともないため、所定の充填配置からの誤差を最小限に抑えることができる。
従来技術のファイバファンナウト部品による光接続方法では、所定の径となるよう予め高精度に作製された孔内にファイバを挿入するのに、隙間(クリアランス)が必要となる。このため、ファイバが最密充填された構造を実現することができなかった。本発明のファイバ接続部品を使用することによって、細径ファイバの所望の配置位置に容易に制御しつつ複数本のファイバを搭載しながら、かつ最密充填構造をとることが可能となる。従来技術では、所望の位置に配置することと最密充填構造との両立は不可能であった。
図7に示した本発明のファイバ接続部品の構成では、弾性体4がない状態で細径ファイバ群50を順次搭載して行き、その後、弾性体4および押さえ蓋6を被せ、押圧する順序で構成されるものとして説明した。しかしながら、予め弾性体4および押さえ蓋6を被せておいて、まず孔を形成し、その後ファイバ群40を搭載する順序の構成でも、下記のように充填構造を実現できる。すなわち、細径ファイバ40を容易に孔に挿入できるよう、弾性体4と溝基板5との間にスペーサ治具などを介しておけば良い。クリアランスの大きな孔を用意し、すべての細径ファイバ群40が搭載された後でスペーサ治具を外して、その後、弾性体4の作用によって押圧すれば、クリアランスが小さくなり、充填構造が実現可能となる。弾性体によって細径ファイバを押圧するという点では、最後に押さえ蓋6で押さえる手順と同じである。弾性体5は例えばゴムを利用可能であって、押圧することで容易に形状が変形する程度の弾性率をもつものが好ましい。例えば、シート状、フィルム状のゴムを用いることが好ましい。
図7における弾性体4は、細径ファイバ40のクラッド40bの径以下の厚さであることが好ましい。これは、クラッド径以上の厚さをもつゴムを介して細径ファイバ40を押圧すると、弾性変形量が大きいため、V溝5aによって形成される三角孔の形状を維持できない可能性がある。弾性体4をクラッド径以下の厚さとし、その上から押さえ蓋6によって押すことで、弾性変形量を制限し、ほぼ三角孔の形状を維持することができる。上述の膜厚を持つゴムは、市販の弾性フィルム(ゴムフィルム)が好ましいが、同様に弾性率(粘弾性率)の大きな樹脂フィルム、例えば粘着剤フィルムなどを用いても良い。
細径ファイバ群40を溝5aに搭載させる際は、予め同じ径を持つ細径ファイバ群を列ごとにまたは一括してまとめた状態とすることが作業上好ましい。複数のファイバをまとめる手法としては、各細径ファイバの被覆部を、樹脂などによって複数本のファイバが一列に並ぶようにテープで固定化した状態とする方法などがある。これにより、細径ファイバ40を1本ずつ溝に搭載させる従来技術の作業に比べ、大幅に作業時間を短縮することが可能であって、しかもより容易に細径ファイバを扱うことができる。テープ化する手段としては、「通常のファイバ」を多心テープ化する際と、同様の手段を適用することができる。
本発明のファイバ接続部品は、図7に示したように、1つの基板上に1つの溝5aを備えたものだけでなく、溝を2つ以上備えた溝アレイ部品としても良い。2つ以上の溝からなる溝アレイのうちで、上述のように複数本の細径ファイバを充填させるためのV溝を少なくとも1つ以上有していれば良い。本発明のファイバ接続部品を使用して充填させた細径ファイバ群を内包するV溝を含む複数のV溝を一列にアレイ化するとともに、このV溝ピッチに合わせてMCFもアレイ化することもできる。これによって、複数本のMCFを本発明のファイバ接続部品で一括して接続させることが可能となる。これは、後述の実施例4でさらに詳細に説明する。
さらに、上述の溝アレイの内少なくとも2つのV溝を位置決め用V溝として利用し、V溝5aと押さえ蓋6とで形成される三角孔断面の内接円よりわずかに径の小さいファイバまたは金属ピンなどを挿入可能な構造とすることもできる。上述のアレイ化したV溝を含む2つの部品において、一方がMCFを含むMCF固定用の部品、もう一方が細径ファイバ群を含む本発明のファイバ接続部品とする。これら2つの部品同士を接続する際に、対向させて配置し、上述の径の小さいファイバまたは金属ピンを、2つの部品に形成された位置決め用三角孔に挿入する。これによって、これら2つの部品が位置合わせをされながら、嵌合される接続構造を実現できる。詳細は、実施例5でさらに説明する。
本発明の構成によって、本発明のファイバ接続部品同士または、アレイ化した部品同士を、アクティブアライメントによって調心したりθz軸方向を調整したりする必要がなくなる。V溝を形成するピッチが十分な精度を持っていれば、MTコネクタやMPOコネクタを使用する場合のように、MCFと細径ファイバとをパッシブで接続することができる。本発明のファイバ接続部品におけるMCFの接続断面は、すべてのコアに対して低損失な接続を実現し、V溝部品の面とすべての細径ファイバのコア面が同一と成るように、研磨処理がなされているのが好ましい。
以下より具体的に説明する実施例における本発明のファイバ接続部品は、溝5aと、ゴムフィルム(粘着フィルム)4と、蓋6などの押さえ部品とで形成された構造を基本としている。しかし、溝同士を上下対称に貼り合わせて菱形形状としても同様に適用できる。また、必要に応じて、クリップなどのバネ部品を用いて、押さえ蓋に押圧力を加えた状態を維持する構造としても良い。詳細は、実施例6でさらに説明する。
以下、図面を用いて本発明の様々な実施例について詳細に説明する。
図7、図8、図10、図11を用いて、本発明の実施例1のMCF用ファンナウト部品の構造について説明する。以下、ファイバ接続部品の詳細を、MCF用ファンナウト部品を例として説明する。既に図7でその概要を説明したように、本発明のMCF用ファンナウト部品には、溝基板5上のV溝5aに複数の細径ファイバ40が搭載されている。複数の細径ファイバ40は接着剤3によって相互に固定され、細径ファイバ全体を上方から、押さえ蓋6によって押圧する構造を持つ。複数の細径ファイバ40と押さえ蓋6の間には、弾性体であるゴム4が挿入されている。
本実施例のファンナウト部品は、図2に示したのと同様のコア配置であって、7個のシングルモード伝送コアを有するMCFに対応している。対応するMCFのクラッド径は200μm、コア間隔は50μm、コア径は全て10μm程度である。細径ファイバ40のクラッド径は50μmであり、コア径はMCFと同様に10μm程度である。細径ファイバ40は、80μmの市販ファイバの先端部(長さ5mm)をフッ酸水溶液に浸漬させ、クラッドをエッチングすることによって、先端クラッド径として50μmまで細径化された細径ファイバが作製される。
一方、V溝基板5は、1mm厚のガラス基板に深さ60度の先端形状を有するブレードによってV溝研削加工することで作成できる。V溝の角度は60度、V溝の深さは205μmである。このV溝5aの上に、10本の細径ファイバ40を、1段目、2段目、3段目、4段目の順に搭載してゆく。最後に、厚さ30μmのシリコーンゴムフィルム4と1mm厚のガラス板からなる押さえ蓋6を置き、10本の細径ファイバ40が溝5aの底面方向に偏るよう、上から適切な圧力を加える。10本の細径ファイバ40の各々は、そのままUV樹脂3によって硬化することにより一体として接着固定される。細径ファイバ群を搭載する際は、1本ずつ搭載しても良いが、同一の列(溝底部からの高さ)にあるファイバ毎に搭載することもできる。すなわち、1本の細径ファイバ毎にまたは概ね同一の高さにある複数本の細径ファイバ毎に前記溝内に順次配置することができる。例えば、1段目(溝の最下段)は1本、2段目は2本まとめて、3段目は3本まとめてといったように、概ね同一の高さにある列毎の細径ファイバ群を単位として、被覆部をテープ化して、列毎を束ねた状態で搭載できる。また、本実施例では、全てほぼ同一の細径ファイバであるため、10本の全てのファイバを束ねた状態で搭載することもできる。接着剤3が、ファイバ−ファイバ間およびファイバ−溝間にそれぞれ充填されることで、10本の細径ファイバが一体に接着固定される。
本実施例のMCF用ファンナウト部品では、図7に示したように10本のファイバのコア面とV溝基板5および押さえ蓋6の断面が全て同一面となるように処理される。V溝からはみ出る余分なファイバ部をカットした後に、細径ファイバ群は、V溝基板5および押さえ蓋6の断面において、接着層ごと研磨処理が施されている。この研磨処理は、「通常のファイバ」をV溝上に固定している商用のファイバブロック部品(ファイバアレイ部品とも呼ばれる)の作製と同様の工程によって実現される。図7に示した断面は、図8に示したファンナウト部品構造の最前面の端面に対応しており、後述するように、この端面がMCFを含むファイバ接続部品の端面と接続される。
V溝5aの角度については、加工に使用するブレードの精度に依存して非常に精度良く作製することができる。一方、深さ方向については、一般には最大0.5μm程度の誤差が生じる。しかしながら、本実施例のファンナウト部品の構造によれば、すべての細径ファイバが溝の底部方向に押されて、最密充填配置となるように充填されている。このため、V溝の角度さえ決まっていれば、コアの配置位置が自動的に決定し、溝の深さ方向の製作誤差は最密充填配置を乱す要因とならない。
ここで溝の深さ方向にy軸をとり、溝の最下部を原点とすると、V溝の角度が60度であるので、細径ファイバの半径をr(=25μm)とするとき、1段目の細径ファイバは y=3/2×r=75μm の位置で2点内壁と接することとなる。そのため、y<75μmの範囲であれば、溝の角度を60度に必ずしも維持する必要は無く、ブレードの先端形状がやや丸みを有していても問題ない。
一方、深さyが75μm≦y≦167.4μm[=(3/2+3√3)r]の範囲では、V溝は60度の傾斜角度を維持する必要があるが、これは比較的容易に達成できる。たとえ、V溝の角度に60度に対してごくわずかに誤差(0.1〜0.2度程度)があったとしても、弾性体5による押圧効果により細径ファイバは整列され、各コアの最適位置からのずれを最小限に抑えることができる。したがって、コア位置の不整合による結合損失は十分に小さいレベルに抑えられる。
本実施例のファンナウト部品の場合、上述の計算のようにV溝の深さは最低167.4μmであれば良いが、押圧しても細径ファイバ群が溝に収まるために190μm程度以上あることが好ましい。10本の細径ファイバ40のうち、4段目(最下段)の両端位置にあってV溝と接する2つの細径ファイバおよびV溝底面の1段目(最下段)の細径ファイバは、実際にはMCFのコアに対応しておらず、実際に光を入出力しないダミーファイバである。このため、V溝に収容される部分以外は接着固定後に適宜折るなどして排除しても良い。また、細径ファイバではなく、50μm径のガラスロッド等のダミー部品で代用しても良い。
上述のダミーファイバ(ダミー部品)以外の7本の細径ファイバは、V溝に収容されている部分のファイバ径が、エッチングにより50μmにまで細径化されている。しかし、図7の紙面奥方向にあるV溝基板の後方部では、細径ファイバはエッチング液に浸漬させていないため、80μmのファイバ径を維持している。図8に示した本実施例のMCF用ファンナウト部品の外観構造のように、細径ファイバはガラス板などの細径ファイバ固定部品7上に接着固定される。
細径ファイバ固定部品7には、細径ファイバ7本をそれぞれ個別に収容するための溝や、7本を一括して収容するための幅広な溝などを形成しても良い。この固定部品7よりさらに後方では、各ファイバには被覆を設けられており、各ファイバは固定されていない状態にあって通常の光ファイバと同様に扱うことができる。そのため、細径ファイバ40の最端部には単心形光コネクタのプラグや多心形光コネクタのプラグを装着することができる。また、他の光ファイバと融着接続するなどすることによって、光の入出力を容易に行うことができる。
細径ファイバ40の固定のために用いる接着剤3は、光コネクタや光スプリッタ、ファイバブロックにおける接着用途に既に使用されており、温度および湿度変動や長期間の使用に対して安定な熱硬化型接着剤または紫外線硬化型接着剤を用いることが好ましい。V溝内に収容された細径ファイバは、溝の内壁や細径ファイバ同士の接触によって、溝に対する位置の変動は抑制される。従って、各細径ファイバの溝に対する位置は、温度および湿度変動や長期間の使用に対して、十分に安定である。
V溝部品5(V溝基板)外形寸法は溝長手軸方向については、本実施例では5mmとしたが、細径ファイバを保持し収容できれば他の任意の長さで良い。取り扱いの容易さから、およそ1mm〜50mm程度の範囲の長さで適宜設定される。V溝長手軸方向と直角の方向の長さについても、本実施例では1mmとしたが、溝が形成できれば任意の長さで良く、およそ0.5mm〜20mm程度の範囲の長さで適宜設定される。
図10は、実施例1のファンナウト部品に対応するMCF用固定部品の断面構造を示す図である。図8に示した細径ファイバを最密充填して配置した構成に対応するMCF10は、図1に示したコア配置の構造を持っている。図10に示すように、MCF10は、溝の角度が60度で、深さが285μmのV溝に接着剤3を介して固定されている。このとき、MCF10の各コアの位置が図7に示したファンナウト部品のコア配置と一致するように、ファイバの断面の回転方向を調整して設置される。
回転方向の調整は、MCF10の端面画像から各コアを観察しながら、MCF10を所定位置になるよう回転させ、その後接着固定することでなされる。図7に示したファンナウト部品の接続端面と同様に、図10に示したMCF用固定部品の接続端面も研磨処置がなされる。MCF10の固定法は、図10のようなV溝に収容する方法以外にも、従来技術として述べたフェルールに納める方法などのその他いずれの方法も選択できる。図10に示したV溝に収容する方法によれば、一度溝に合わせてMCF10の軸周りの回転方向のコア位置を合わせて固定をするだけで済む。その後、図7に示したファンナウト部品と接続する際に、軸周りでθzの調心作業を行う必要がなく調整工程を簡略化できる。
図11は、本発明の実施例1のMCF用ファンナウト部品と対応するMCF固定部品とを接続したときの構造を示す図である。細径ファイバ40を充填したV溝を含むファンナウト部品41とMCF10を充填したV溝を含むMCF固定部品42は、図11に示すように、ファンナウト部品41では、細径ファイバ40が押さえ蓋6で固定され、MCF固定部品42ではMCF1が押さえ蓋11で固定されている。2つの部品41、42の端面同士を対向させて接続される。既に述べたように、2つの部品41、42の各コアの位置が合うようにXY軸について調心して、接着剤3を2つの部品41、42の各端面間に充填し、硬化させることによって、両部品は接合される。既に述べたように、接着剤3は光通信デバイス用に使用に適したUV硬化樹脂などが好ましい。2つの部品41、42の調心方法としては、例えば、細径ファイバ40から光を入力し、MCF10の一端から出力される光のパワーをモニタしながら、位置決めを行うアクティブアライメントを用いることができる。複数の細径ファイバ40は、各々が被覆40cで覆われており、MCF10も被覆10cで覆われている。接合された2つの部品41、42は、筐体に固定され、図5に示したような従来技術のファンナウト部品20と同様のものとして扱うことができる。
本実施例のファンナウト部品では、V溝基板5と押さえ蓋6との間のゴム4は、固定後も部品41に一体化されている。しかし、押さえ蓋6で押圧して複数の細径ファイバ40を固定した後にゴム4だけを取り外し、その後押さえ蓋6をかぶせて接着する構成としても良い。その際は、ゴム4とファイバ40との間には接着剤3をしみこませないように接着剤量を適量の値に設定すれば良い。ガラス基板5および細径ファイバ40のクラッドに表面処理を施し、予めガラス表面の―OH基を取り除くなどして接着性を低下させてもよい。また、ゴム4で押圧した状態を長期的に維持するために、接着固定後はV溝基板5と押さえ蓋6とを固定するクリップやバネなどを装着しても良い。
2つの部品41、42の接続断面は直角に研磨し、両部品同士を接続しているが、反射減衰量を向上させる目的で、両部品の端面を斜めに研磨しても良い。特に、直角よりも3〜10度程度の傾斜をつけて研磨することが好ましく、6〜8度程度が特に好ましい。2つの部品41、42の端面の研磨角度は、対の関係になるよう設定される。例えば、一方の端面が+8度の傾斜で研磨される場合は、他方の端面は−8度の傾斜で研磨される。また、本実施例では各コアを伝搬する光は、シングルモードのものとして説明をしたが、マルチモードの光であっても良い。また、細径ファイバ40はエッチングによって形成するのでなく、線引き加工によって形成しても良い。
図12は、三角配置型の別のMCF用ファンナウト部品の構成を示す図である。本実施例では、図1に示した三角配置型で10コアを持つMCFを例に説明をしたが、図2に示した19コアを持つMCFに対しても本実施例と同様の構成を適用できる。接続するMCFのコア間隔に対応した構成の細径ファイバを選択し、V溝基板5の溝内に順次搭載して、ゴム4を介して押さえ蓋で押して接着固定することにより、ファンナウト部品を提供することができる。図12に示したファンナウト部品において、V溝内には、19本の細径ファイバと、9本のダミーファイバが最密充填配置で搭載されている。V溝によって形成される三角形の各頂点の位置に、3本ずつのダミーファイバを配置している。
上述のように、本実施例のファンナウト部品の構成により、ファイバを搭載時に摩擦などが生じないため、ファイバの折れ等の心配なく比較的容易に細径ファイバ群を溝に順次搭載していくことができる。本発明のファンナウト部品の構成によれば、従来技術における丸孔や六角形状の孔とは異なり、溝基板が上下非対称であるため、軸周り方向を溝基板のみで規定することができる。各細径ファイバのコアと、MCFの各コアとの対応を、溝形状と、溝内に収納されるファイバの配置位置とによって規定できる。したがって、細径ファイバの最密充填配置を誤差が少なくかつ容易に実現できる。さらにはMCFとの接続時に軸周り調心を不要とするMCF用ファイバ接続(ファンナウト)部品を提供することができる。
次に、三角配置型以外のコア配置を持つMCFに適用できる実施例2のファンナウト部品について説明する。本実施例は、ランダム配置型のMCFと通常の光ファイバとを接続する場合に適応可能な構成を持っている。
図13は、本発明の実施例2のランダム配置型の10コアMCF用ファンナウト部品の断面構造を示す図である。本ファンナウト部品は、図4に示したのと同様のランダム配置で10個のシングルモード伝送コアを有するMCFに対応している。図13は、このMCFと接続されるファンナウト部品の断面構造を示している。図4に示したように、対応するMCFのクラッド径は200μm、コア間隔は不規則なランダム配置となっており、コア径は全て10μm程度である。本実施例のファンナウト部品における細径ファイバは、クラッド径の異なる3種類の細径ファイバから構成されている。それぞれのクラッド径は、最も太い細径ファイバ40aが85μm、最も細い細径ファイバ40cが34.5μm、中間の太さの細径ファイバ40bが50μmである。本実施例では、各ファイバ先端部のみが細径化されるように、母材を線引き加工することにより形成される。
V溝基板13は、1mm厚のガラス基板に深さ60度の先端形状を有するブレードによってV溝研削加工することで作製される。V溝の角度は60度で、V溝の深さは280μmである。細径ファイバ40a、40b、40cは、図13の配置になるよう、所定の順で搭載されている。また、細径ファイバ以外にも、直径50μmのガラスロッド14が3本搭載されている。10本の細径ファイバおよび3本のロッド部品を搭載した後、厚さ20μmの粘着フィルム17および蓋12を被せて押圧することによって、ファンナウト部品は構成される。
図13に示すように、押さえ蓋12は、溝基板13の最上部の溝幅に概ね対応した幅でわずかに溝方向に突出した突起部12aを有している。この突出部12aは、V溝上の細径ファイバ群をより効率的に下方に押圧できる構造となっている。接着剤3を充填後、細径ファイバ群を固定する際には、押さえ蓋12に対して、上方向から溝の底面方向に向かって押圧力を適切に加えることによって、細径ファイバ群は溝の底面方向に偏った状態を維持して最密に充填配置され、接着固定される。前述の実施例1の構成と同様に、図4のような構造を持つMCFをV溝などに固定してMCF固定部品を構成し、本ファンナウト部品と接続することによって、ランダム配置型のコアを持つMCFも通常のファイバと容易に光接続することができる。
上述の2つの実施例においては、細径ファイバを最密に充填配置するために、V溝基板の基板面の上方から押さえ蓋によって押圧する構成を例として説明したが、本発明のファンナウト部品の構成はこれに限られない。溝構造の中に細径ファイバを押圧することのできる構成であれば、他の方法も可能である。
図14は、本発明の実施例3の長方形配置型の12コアMCF用ファンナウト部品の作製方法および断面構造を示す図である。図14の(a)はファンナウト部品を作製途中の接続部の断面構造を、(b)は作製が完了した後であって、接着固定された後の断面構造を示している。本実施例のファンナウト部品は、図3に示したのと同様のコア配置であって、12個のシングルモード伝送コアを有するMCFに対応している。MCFとの接続部の最終的な断面構造は、図14の(b)に示されたものとなる。
本実施例のファンナウト部品に接続するMCFのクラッド径は190μmであって、コアは長方形配置をとり、隣接するコア同士の間隔は40μmである。コア径は全て10μm程度である。本実施例のファンナウト部品における12本の細径ファイバ40は、クラッド径が40μmであり、実施例1と同様にファイバ先端部のみをエッチングすることにより形成されている。エッチングでは、被覆部分を一列に並べてテープで固定された4本のテープファイバをエッチング液に浸漬させることで細径化する。エッチングされていない被覆を有す部分では、ファイバが4本単位で一体化されている。
本実施例における溝は、フラットな面を有する3枚のファイバ押さえ部品15a、15b、15cより形成される矩形の溝である。溝を形成するファイバ押さえ部品15a、15b、15cの各内壁は、面がフラットになるよう研磨処理がなされている。図14の例では、ファイバ押さえ部品15cを底面とし、左右のファイバ押さえ部品15a、15bの間に細径ファイバ40が収まる構造とし、最初の溝幅を約170μm程度とする。本実施例では、ファイバ押さえ部品15aを固定しており、一方でファイバ押さえ部品15bは、図の左右方向へ動かすことのできる可動構成となっている。上述の3方を囲まれることで形成される矩形の溝内に、最初に、最下段の1段目に対応する4本のテープファイバの細径ファイバを収容する。その後、同様に2段目のテープファイバの細径ファイバ、3段目のテープファイバの細径ファイバを順次収容する。この時点では、溝幅方向に約10μmのクリアランスがあるため、最密に充填された状態とはなっていない。しかし、このクリアランスがあることによって、容易に4本の細径ファイバを収容することが可能となっている。
図14の(b)に示したように、すべての細径ファイバが収納された後で、矩形の溝の中にUV硬化型接着剤3を滴下し、溝上に厚さ30μmのシリコーンゴムフィルム4およびガラスの押さえ蓋12を載せて、押圧力を加える。押圧力を適切に加えながら、ファイバ押さえ部品15bを図の左方向へ向かって、溝幅が160μm(=40μm×4)程度となるよう動かす。押圧方法および可動方法は、類似のほかの手段を用いることもできる。ゴム、フラットな面を有する金属板またはガラス板等を介して、加重計などのネジまたはバネなどをつけた治具により、適切に応力を加えていくことで実現できる。
ファイバ押さえ部品15bが動かして、細径ファイバ4本の径とほぼ等しい溝幅とすることにより、クリアランスによって緩やかに充填された状態から各細径ファイバ群は密に充填された状態になる。細径ファイバを充填した後は、細径ファイバ全体にUV光源を照射してファイバ相互に溝内で接着固定させる。その後、可動のファイバ押さえ部品15bおよび押さえ蓋12等も接着剤などで固定することで、一体のファンナウト部品を形成させる。最後に余分なファイバ部をカットし、実施例1などと同様に接続端面に研磨処理を施すことで、図14の(b)に示すような断面が形成される。実施例1のファンナウト部品と同様に、図3に示したような長方形配置型のコアが配置された構造を持つMCFをV溝などに固定してMCF用固定部品を構成し、本ファンナウト部品と接続することで、長方形配置型のMCFも通常のファイバと容易に光接続をすることができる。
上述の各実施例においては、ファンナウト部品は1本のMCFとの接続を行うための構成について説明してきた。これらの実施例の構成をアレイ化することによって、複数本のMCFを本発明のファイバ接続部品で一括して接続させることが可能となる。すなわち、溝基板の1つ面上に、各々が複数の細径ファイバを収容し、アレイ状に配置された複数の溝を備えることによって、数本のMCFを本発明のファイバ接続部品で一括して接続させることが可能となる。
図15は、本発明の実施例4のファンナウト部品とMCF固定部品の断面構造を示す図である。本実施例のファンナウト部品は、実施例1のファンナウト部品と同様に図1に示した三角配置型のコアを持つMCFと、細径ファイバ7本とを接続するための部品である。図15の(a)は、MCFを固定したV溝型のMCF固定部品を示し、図15の(b)は、細径ファイバを充填したファンナウト部品を示している。細径ファイバ7本の充填は、実施例1に示した方法と同様になされており、本実施例では同一構成のファイバ充填用の溝が、1体の部品として4つ形成されている。図15の(b)のように、各溝内には、細径ファイバ10本が充填されて接着、固定、および研磨がなされている。10本の細径ファイ場のうち、ダミーファイバが3本ふくまれている。図15の(a)のように、MCFに関しても、MCFを固定するV溝が4つ形成されており、各溝にMCFが接着、固定され、その端面は研磨がなされている。
ファンナウト部品およびMCF固定部品の両部品のV溝は、500μmのピッチで形成されており、両部品とも同一のピッチを持っている。図11で示したのと同様に、両部品を対向させて配置し、アクティブアライメント等で、XY軸のほか、Z軸を基準としたθz軸の調心を行う。4つのMCF用V溝に対応するように4つの細径ファイバ群用のV溝を位置合わせする。本実施例の構成により、同一ファンナウト部品で4つのMCFを一括して光り接続することが可能となる。本実施例では、4つのMCFとの接続を示したが、同時接続するMCFの本数に制限はない。
実施例4の溝をアレイ化したファンナウト部品は、さらに位置合わせを容易に行うことができる構成に応用が可能である。すなわち、本実施例では、アレイ状に配置された複数の溝のうちの少なくとも2つの溝が、V溝構造を有し、この少なくとも2つの溝には、V溝および弾性体によって形成される三角孔の断面の内接円より小さい径を持つ円柱状のピン部品の少なくとも一端が挿入可能なように構成することができる。
ファンナウト部品に対応する部品として、アレイ状に配置された複数の溝の各々の内の前記複数の細径ファイバと接続される複数のMCFを収納するマルチコアファイバ(MCF)用固定部品を備える。このMCF用固定部品は、溝基板のV溝および弾性体によって形成される三角孔に対向し、ピン部品の他端を含む残りの部分を挿入可能な三角孔を有している。このピン部品が、ファイバ接続部品およびMCF用固定部品の両方に嵌合しながら挿入されて、前記複数の細径ファイバの各々のコアと、対応する前記MCFの前記2つ以上の各コアが位置合わせされる。
図16は、本発明の実施例5のファンナウト部品とMCF固定部品の断面構造を示す図である。本ファンナウト部品は、実施例1と同様に図1に示したコア配置を持つMCFと細径ファイバ7本とを接続するための部品である。MCF10を固定するV溝を備えたMCF固定部品100を図16の(a)に、細径ファイバ群40を固定するファンナウト部品110を図16の(b)にそれぞれ示している。2つの部品100、110の基本的な構成は、基板5上に4つのV溝が形成された実施例4の構成と同じである。本実施例では、ファンナウト部品100およびMCF固定部品110のいずれにおいても、両端にある2つのV溝18a、18bを空洞として、MCF、細径ファイバまたは接着剤は存在させない構成とする。接着剤は、その量を制御して導入すれば、毛細管現象により、幅の広いV溝には回り込まないよう充填させることができる。
図17は、本発明の実施例5のファンナウト部品およびMCF固定部品を接続したときの構造を示す図である。各部品100、110の両端にある2つのV溝18a、18bには、V溝および蓋6によって形成される三角孔内にファイバ・ピンまたは金属ピン16が挿入できる構造となっている。ファイバ・ピンまたは金属ピン16は、三角孔断面の内接円と比べて、例えば0.5μm〜3μm程度わずかに小さい径を持っている。本実施例の構造によって、対応する2つの部品同士を接続する際は、アクティブアライメントを必要とせず、2本のピン16同士が嵌合することによって、ピンおよび溝の位置精度のみでパッシブに調心することができる。図17の左側には嵌合前の状態を、右側には嵌合させた後の状態を示している。ピン16が、ファンナウト部品100およびMCF固定部品110の2つの部品を貫いて接続することで、例えば、多心コネクタであるMTコネクタなどと同様に位置合わせが簡単にできる。本実施例では、2本のMCF10を一括して接続する例を示したが、接続するMCFの数に制限はない。
図18は、本発明の実施例6のファンナウト部品およびMCF固定部品の断面構造を示す図である。本実施例は、図7に示した実施例1の構成と同様に作製した15本の細径ファイバ40をそれぞれ充填させたV溝基板5a、5bからなる2つの部品を用意し、これら2つの部品を、6本の細径ファイバを介して上下から貼り合わせた構成となっている。各部品では、実施例1で記述したように細径ファイバ群はV溝内に接着固定されるが、それぞれの細径ファイバの表面には表面処理を施して、接着性を低下させており、実施例1におけるゴム4を接着させずに取り外した構成としている。2つの部品の貼り合わせの際には、V溝基板面の上下方向から2つのV溝基板が押圧される。押圧状態を保ちながら接着固定することで、間に介した5本の細径ファイバも含め、充填構造を維持して、一体のファンナウト部品が作製される。本構成のファンナウト部品は、図1〜図4に示した三角配置型、長方形配置型およびランダム配置型のいずれのコア配置のMCFにも対応可能な構造である。
以上の各実施例では、図10などで示したようにV溝基板は直方体(板状)の基板上にV溝を形成した構造のものを例として説明してきたが、その基板形状は直方体に限られない。例えば、溝を形成する部品は、半円筒形のものでも良い。すなわち、半円筒形状の部品の平面部に溝を形成し、その溝内に細径ファイバ群を最密充填させた構成としても良い。さらに、溝内に細径ファイバを充填させた上述の2つの半円筒部品を、各々の平面部同士を対向させて貼合わせることで、図18に示した実施例6の構成と同様に、孔の断面形状を有する円筒形状の部品を作製することができる。このとき、この円筒形状部品は、フェルール部品と同様のものとなる。
以上、詳細に述べたように、本発明のファンナウト部品によって、任意のコアピッチを有するMCFに対応した複数本の細径ファイバコアを接続するためのファイバ接続部品を提供することができる。三角配置型のMCFだけでなく、長方形配置型やランダム配置型をはじめとした種々のコア配置のMCFに対応することができる。細径ファイバを最密充填配置された状態を、誤差が少なくかつ容易に実現することができる。さらに、MCFとの接続時に軸周り調心を不要とするMCF用ファイバ接続部品を提供できる。