以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
本実施形態の画像処理方法、撮像装置、画像処理装置、および、画像処理プログラムは、入力画像の再構成を行うことによりピント位置の異なる複数の出力画像を生成可能である。また、本実施形態の撮像装置は、正の屈折力を有する複数の光学系を配列し、または、結像光学系の像側にレンズアレイを配置することにより、ライトフィールドを取得可能に構成されている。入力画像は、このような撮像装置で取得された画像である。また、出力画像を生成する際は、入力画像に対してデモザイキング等の処理を施した画像を用いてもよい。
図1乃至図3は、本実施例形態における撮像装置を構成する撮像光学系の例である。撮像光学系とは、結像光学系および撮像素子を備えて構成されており、レンズアレイが設けられている場合にはレンズアレイを含めて撮像光学系を構成する。図1乃至図3中に示される被写体面201の上には、人物や物体が必ずしも存在していなくてよい。これは、再構成処理によって、被写体面201よりも奥または手前に存在する人物や物体に対して、撮影後でもピントを合わせることができるためである。また、以下の各実施例の説明は、簡単のために1次元系を用いて行うが、2次元系に関しても同様の議論が成り立つ。
まず、図4を参照して、本発明の実施例1における撮像装置の構成について説明する。図4は、本実施例における撮像装置のブロック図である。本実施例の画像処理方法は、撮像装置の画像処理部105により実行される。
瞳分割部102は、被写体面の同一位置からの光線を、光線が通過する結像光学系101の瞳領域に応じて、撮像素子103の互いに異なる画素に入射させる。撮像素子103は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal−Oxide Semiconductor)などの2次元撮像素子であり、複数の画素を備える。結像光学系101(主レンズ群)および瞳分割部102を介して撮像素子103に入射した光線のエネルギーは電気信号(アナログ信号)となり、A/Dコンバータ104でデジタル信号へ変換される。このデジタル信号は、画像処理部105にて所定の処理が行われ、半導体メモリなどの画像記録媒体110に所定のフォーマットで保存される。この際、同時に状態検知部108から得られた撮像装置の撮像条件情報も保存される。撮影条件情報とは、撮影距離や絞り、ズームレンズにおける焦点距離などである。状態検知部108は、システムコントローラ111から撮影条件情報を直接得てもよいし、撮像光学系に関する情報に関しては光学系制御部107から得ることもできる。
画像記録媒体110に保存された画像を表示部106に表示する際には、画像処理部105で撮影条件情報に基づいた再構成処理が施される。その結果、表示部106には所望の視点、ピント位置や被写界深度に再構成された画像が表示される。また高速化のため、所望の画像設定(視点、ピント、被写界深度など)を予め記憶部109に保存し、画像記録媒体110を介さずに再構成画像を表示部106に直接表示させてもよい。さらに、画像記録媒体110に記録する画像は、再構成後の画像でもよい。
画素ずれ算出部112は、撮影条件情報から、複数のピント位置に対して再構成により合成される画素の画素ずれ量(リフォーカス画像の解像度に相当する)を算出する。そして、画素ずれ算出部112は、その算出結果を記憶部109と画像記録媒体110のいずれか一方、またはこれらの両方に保存する(画素ずれ算出工程)。この画素ずれ算出工程の詳細に関しては、後述する。撮影条件情報は前述と同様に、システムコントローラ111から直接得ることができる。また、撮像光学系に関する情報については、光学系制御部107から得るように構成してもよい。また、記憶部109または画像記録媒体110に保存された算出結果を用いて得られた出力を表示部106に表示してもよい。例えば、高解像なリフォーカス画像を自動的に生成し、または、ユーザーに高解像なピント位置を表示して知らせるなどしてもよい。また、高解像なピント位置の中から、ユーザーがリフォーカス画像のピント位置を選択できるように構成してもよい。
このように、画像処理部105は、撮像素子103で取得された入力画像に対して、入力画像の撮影条件情報を用いた再構成を行うことにより出力画像を生成する。以上の一連の制御は、システムコントローラ111により行われ、撮像光学系の機械的な駆動はシステムコントローラ111の指示によって光学系制御部107で行われる。
次に、図1を参照して、本実施例における撮像光学系の構成について説明する。図1は、撮像光学系の概略構成図である。撮像光学系は、結像光学系101、瞳分割部102(レンズアレイ102a)、および、撮像素子103を備えて構成される。本実施例において、結像光学系101は開口絞り(不図示)を備えている。
本実施例において、瞳分割部102として、固体レンズからなるレンズアレイ102aを用いているが、これに限定されるものではなく、ピンホールアレイなど他の構成でもよい。また本実施例において、レンズアレイ102aは複数のレンズ(小レンズ)を用いて構成され、小レンズは固体レンズで構成されている。ただし本実施例はこれに限定されるものではなく、液体レンズ、液晶レンズ、または、回折光学素子などを用いてレンズアレイ102aを構成してもよい。レンズアレイ102aを構成する小レンズは、両側の面が凸形状を有している。ただし本実施例はこれに限定されるものではなく、一方側の面が平面で他方側の面が凸形状を有していてもよい。ただし、レンズアレイ102aを構成する小レンズの像側の面は、凸形状であることが好ましい。これにより、レンズアレイ102aの非点収差を低減し、撮像素子103上で得られる画像が鮮鋭になる。逆に、小レンズの像側面が凸形状でない場合には非点収差が大きくなり、各小レンズによって形成される画像の周辺部がぼけてしまう。この画像のぼけた部分を再構成処理に使用すると、再構成により得られた画像が鮮鋭に形成されない場合がある。また、レンズアレイ102aを構成する小レンズの物体側の面は、平面又は凸形状であることがより好ましい。これにより、小レンズの曲率が緩まって収差が低減し、更に鮮鋭な画像を得ることができる。
レンズアレイ102aは、結像光学系101の被写体面201に対する像側共役面に配置されている。被写体面201からの光線は、結像光学系101およびレンズアレイ102aを通過した後、光線の被写体面201上での位置と角度に応じて、撮像素子103の異なる画素へ入射し、ライトフィールドが取得される。ここで、レンズアレイ102aは、被写体面201上の異なる位置を通過した光線が、同一の画素へ入射するのを防ぐ役割を持つ。その結果、撮像素子103において、被写体面201上の同一の領域を複数の視点から撮影した画素群が並んだ画像が取得される。図1に示される構成では、被写体面201上の同一の位置を3つの画素(2次元では9画素)で撮像している。このため、本実施例の撮像光学系は、光の2次元強度分布のみを取得する撮像光学系に対して2次元的な空間解像度が1/9に低下する。これは、被写体面201上の同一の位置を撮像する画素の数が変化しても、定性的に同じである。
続いて、本実施例におけるリフォーカス処理について説明する。リフォーカス処理に関しては、「Fourier Slice Photography」(Ren Ng著、2005 ACM Trans. Graph.24,735−744参照)にて詳述されているため、ここでは簡単に説明する。図5を参照して、リフォーカス画像を生成する方法の一例について説明する。図5(a)、(b)は、図1に示される撮像光学系において、レンズアレイ102aと撮像素子103の部分を詳細に示した図である。図5(a)、(b)中の一点鎖線は、各画素の中心と、この画素に対応した小レンズの主平面と光軸の交点を結んだ直線である。仮想結像面203は、リフォーカスによりピントを合わせようとする物体側の面に対する結像光学系101の像側共役面である。ただし本実施例において、像側共役面がレンズアレイ102aの物体側主平面よりも像側に位置した場合、像側共役面をレンズアレイ102aの主平面間隔だけ像側へ移動した面が仮想結像面203となる。撮像素子103で得られた画素値を、一点鎖線に沿って仮想結像面203へ平行移動させて合成することで、所望のピント位置でのリフォーカス画像を生成することができる。
例えば、図1中の被写体面201にピントの合った画像を生成するには、図5(b)に示されるように、被写体面201と結像光学系101を介して共役な面、すなわちレンズアレイ102aの主平面(像側主平面)に仮想結像面203を設定すればよい。図5(a)、(b)において、リフォーカス画像生成の際の平行移動した画素は、破線で表され、分りやすくするために重ねずにずらして描画している。図5(a)、(b)に示されるように、任意のリフォーカス画像を生成する際、画素に入射した光束が通過した結像光学系101の瞳領域が同じである場合、それらの画素は平行移動量が同じであることが分かる。したがって、リフォーカス画像生成時の画素の操作は、画素に入射する光束が通過した結像光学系101の瞳領域に応じて決定される。
次に、リフォーカスが可能な範囲に関して説明する。結像光学系101の開口径は有限であるため、撮像素子103で得られるライトフィールドの角度成分、すなわち視差情報も有限である。したがって、リフォーカスが可能な範囲は、有限の範囲に限定される。ここで、光の2次元強度分布をライトフィールドの空間成分と呼ぶ。このとき、リフォーカス範囲は、空間成分のサンプリングピッチΔyおよび角度成分のサンプリングピッチΔuにより決定され、その係数α±は以下の式(1)のように与えられる。
式(1)を用いて表される像側のリフォーカス範囲α+s2〜α−s2と、結像光学系101に対して共役な範囲が、物体側のリフォーカス範囲となる。ここでs2は、結像光学系101の像側主平面と被写体面201に対する結像光学系101の像側共役面との間の距離である。
図6は、リフォーカス範囲の説明図である。図6に示される構成例では、被写体面201上の同一の位置を撮像している画素の1次元的な周期が3画素となっているため、空間成分のサンプリングピッチΔyは、撮像素子103の画素ピッチの3倍となる。角度成分のサンプリングピッチΔuは、結像光学系101の射出瞳が3分割(2次元では9分割)されているため、射出瞳径の1/3となる。式(1)で表されるリフォーカス範囲を超えると、取得したライトフィールドでは情報が不足し、正しいリフォーカス画像を生成することができない。式(1)は、撮像素子103の画素ピッチΔが結像光学系101の瞳距離Pに対して十分小さいことから、次の式(2)のように近似できる。
ここで、結像光学系101の瞳距離Pとは、結像光学系101の射出瞳面と被写体面201に対する結像光学系101の像側共役面との間の距離である。また、Nは結像光学系101の瞳の1次元分割数、Fは結像光学系101のF値、ΔLAはレンズアレイ102aのピッチである。ΔLAは、瞳分割部102がピンホールアレイなどの場合は、その構造周期となる。図5の一点鎖線に沿って、ある小レンズに対応した画素群を平行移動させると、式(2)の最大リフォーカス量を超えたところで、各画素の間隔がΔyより大きくなり、情報が欠落した領域が生じる。この場合、正しいリフォーカス画像を生成することができない。
次に、画像再構成時の画素ずらし超解像に関して説明する。図5(a)を参照すると、仮想結像面203において、平行移動した画素が互いにずれてオーバーラップしていることが分かる(オーバーラップ画素)。これらを合成することにより、見かけの画素サイズ(見かけの画素ピッチ)を小さくすることができる。これを画素ずらし超解像と呼ぶ。一方、図5(b)のように平行移動した画素がずれずに一致してオーバーラップしている場合、画素ずらし超解像の効果を得ることはできず、高解像度化を図ることはできない。オーバーラップしている画素のずれは、画素を平行移動する仮想結像面203の位置に応じて変化するため、画素ずらし超解像の効果も仮想結像面203により変化する。
ここで、画素ずらし超解像により小さくなった見かけの画素ピッチの中で、最も大きい画素ピッチがリフォーカス画像の解像度を決定すると定義する。また、解像度を決定する画素ピッチを見かけの画素ピッチの最大値と呼ぶ。このとき、被写体面201の同一の領域を撮像している1次元方向の画素数がn画素であるとする。ここで、nは結像光学系101の1次元瞳分割数に対応している。画素が1/n画素ずつずれていれば、見かけの画素ピッチの最大値が最小となり、リフォーカス画像が最も高解像度になる。
図5(a)に示した状態は、n=3であり、仮想結像面203上で各画素が1/3画素ずつずれているため、リフォーカス画像が最も高解像となる状態である。図5から、同様の効果を得られるリフォーカス画像のピント位置は、リフォーカス範囲内に4点存在していることが分かる。逆に、図5(b)のように平行移動した画素が一致してオーバーラップしている場合、画素ずらし超解像を行うことはできない。したがって、仮想結像面203に対応した画素ずれ量を算出することにより、仮想結像面203と、その位置にピントの合ったリフォーカス画像の解像度の関係を知ることができる。
ここまでで、本実施例における撮像光学系の構成と、リフォーカス画像の生成、および、解像度に関して説明した。次に、図7を参照して、入力画像から出力画像を生成する画像処理方法について説明する。図7は、本実施例における画像処理方法のフローチャートである。図7のフローチャートの各ステップは、画像処理部105により実行される。
まずステップS001において、画像処理部105は、図1に示される撮像光学系により撮影された入力画像を取得する。すなわち画像処理部105は、複数の画素を有する撮像素子103と、結像光学系101を有する撮像装置とを用いて、複数の視点から被写体空間の情報を取得した画像である入力画像を取得する。入力画像の形式は撮像光学系の構成に応じて変化する。本実施例において、入力画像は、被写体面201上の同一の領域を複数の視点から撮影した画素群が並んで構成された画像である。また入力画像は、画像記録媒体110に保存された、同様の撮像光学系で撮影された画像でもよい。
続いてステップS002において、画像処理部105は、入力画像内に含まれている撮影条件情報(撮像光学系の構成に関する情報)から、画像の再構成方法を決定する。本実施例の撮像光学系は図1に示されるような構成を有するため、図5に示されるリフォーカス画像の生成方法を、画像の再構成方法として用いる。ただし、図5に示されるリフォーカス画像の生成方法と定性的に同じ方法であれば、画像の再構成方法の詳細は異なっていてもよい。また、撮像光学系が図2、図3、またはその他の構成を有する場合、その構成に応じて異なる画像の再構成方法が用いられる。ただし、撮像光学系の構成が変化しない場合、画像の再構成方法は単一の方法を用い、ステップS002は実行しなくてもよい。
次にステップS003において、画像処理部105(画素ずれ算出部112)は、撮影条件情報から複数の仮想結像面203に対して、リフォーカス画像生成時の合成画素の画素ずれ量を算出する。すなわち画像処理部105は、複数のピント位置に対応する複数の仮想結像面に対して、再構成により合成される画素の画素ずれ量を算出する。算出される仮想結像面203の位置は、例えば、像側のリフォーカス範囲または物体側のリフォーカス範囲を等ピッチに分割して決定される。ただし本実施例はこれに限定されるものではなく、入力画像内に存在する被写体の物体距離ごとに、または、リフォーカス範囲内で任意に選んでもよい。ステップS003は、画素ずれ算出工程に相当する。
続いてステップS004において、画像処理部105は、ステップS003で算出された結果(リフォーカス画像生成時の合成画素のずれ量)から、出力画像のピント位置を決定する。その決定方法として、画素ずらし超解像の効果が高く、高解像度となる仮想結像面203を選択する方法が考えられる。前述のとおり、画素ずらし超解像の効果が最も高くなるのは、被写体面201の同一の位置を撮像している1次元方向の画素数がn画素の場合、合成される画素が1/n画素ずつずれる仮想結像面203である。
図5から具体的には、s2±FΔ、および、α±s2±FΔの4点であると分かる。これらの4点から、出力画像のピント位置を選択すれば、高解像なリフォーカス画像が得られる。また、許容錯乱円の直径をεとした場合、結像光学系101の焦点深度は近似的にFεで表される。よって、s2±Fε内で高解像となるピント位置を選択してもよい。ここで、ε≧Δが成立するため、最も画素ずらし超解像の効果が高いピント位置であるs2±FΔは、必ずs2±Fε内に収まる。さらに、出力画像のピント位置は、以下の条件式(3)で表される範囲内から決定してもよい。
ただし、s2−σ2≦ρ≦s2+σ2である。ここで、ρは結像光学系101の像側主平面とリフォーカスによりピントを合わせたい物体側の面に対する結像光学系101の像側共役面との間の距離、σ2はレンズアレイ102aの像側主平面と撮像素子103との間の距離である。条件式(3)は、画素ずらし超解像の効果の大きさを表す。σ2/(FΔ)が、被写体面201の同一の位置を撮像している1次元方向の画素数を表し、|(ρ−s2)/σ2|は合成する画素のずれの割合を表す。s2±FΔでは、条件式(3)の値は1となり、画素ずらし超解像の効果が最も高いことを表す。条件式(3)の値が1から離れるにつれて画素ずらし超解像の効果が弱まり、条件式(3)の上限または下限を超えると十分な画素ずらし超解像の効果を得られなくなる。
望ましくは、更に以下の条件式(3a)の範囲を満たすように設定することで、より高解像な出力画像を得ることができる。
条件式(3a)の範囲とすることで、特にnが小さい構成の場合、出力画像が高解像度となる。例えば、結像光学系101のF値が2.0、焦点距離fが50mmで、撮像素子103の画素ピッチΔが0.006mmの場合を考える。被写体面201と結像光学系101の物体側主平面との間の距離が2500mmのとき、s2は51.0204mmとなる。このとき、ρ=51.0300(mm)とすれば、条件式(3)の値が0.8となり、高解像なリフォーカス画像を出力することができる。
また、出力画像のピント位置は、ユーザーが指定したピント位置でもよい。この際、ユーザーにステップS003で算出した結果を把握させることで、ユーザーはその結果に基づいて望ましいピント位置を指定することができる。また、これに代えて、算出により得られた高解像となるピント位置から、ユーザーに選択させるように構成してもよい。
次にステップS005において、ステップS004で決定されたピント位置の出力画像を生成するため、画像処理部105は、入力画像の画素を操作する操作パラメータを算出する。本実施例では、前述のリフォーカス画像の生成方法を使用するため、操作パラメータは画素の平行移動量である。
続いてステップS006において、画像処理部105は、ステップS005で算出した平行移動量を用いて入力画像を再構成し、出力画像を生成する。すなわち画像処理部105は、画素ずれ量に基づいて決定されたピント位置での出力画像を生成する。ステップS006は、画像生成工程に相当する。生成された出力画像は、表示部106に出力されるか、または、画像記録媒体110に保存される。
また必要に応じて、リフォーカスと同時に、視点や被写界深度を変更する再構成処理を行ってもよい。さらに画像の再構成処理の際に、MAP(Maximum a posteriori)推定などの画像推定を併用して、更なる高解像度化を図ってもよい。
以上の構成により、本実施例によれば、リフォーカス画像が高解像度になるピント位置を算出可能な画像処理方法、撮像装置、画像処理装置、および、画像処理プログラムを提供することができる。
次に、本発明の実施例2について説明する。本実施例における撮像装置の基本構成は、図4を参照して説明した実施例1の撮像装置と同様であるため、それらの説明は省略する。
図2を参照して、本実施例における撮像光学系の構成について説明する。図2は、撮像光学系の概略構成図である。レンズアレイ102aは、結像光学系101の被写体面201に対する像側共役面202より物体側へ配置され、像側共役面202と撮像素子103とが、レンズアレイ102aを介して共役関係であるように配置されている。被写体面201からの光線は、結像光学系101およびレンズアレイ102aを通過した後、光線の被写体面201上での位置と角度に応じて撮像素子103の異なる画素へ入射し、ライトフィールドが取得される。その結果、撮像素子103では、撮影視点と撮影範囲の異なる複数の小画像が並んだ画像が取得される。
図2に示される撮像光学系は、光の2次元強度分布のみを取得する撮像光学系に対して空間解像度が低下する。これは、結像光学系101が形成した像を、レンズアレイ102aが虚物体として見ることで、撮像素子103へさらに縮小結像するためである。その縮小倍率は|σ2/σ1|倍である。ここで、σ1は像側共役面202とレンズアレイ102aの物体側主平面の間の距離、σ2はレンズアレイ102の像側主平面と撮像素子103の間の距離である。したがって、図2に示される撮像光学系は、光の2次元強度分布のみを取得する撮像光学系に対して、2次元的な空間解像度が(σ2/σ1)2倍される。
次に、図8(a)、(b)を参照して、本実施例におけるリフォーカス画像の生成方法について説明する。図8(a)、(b)は、図2に示される撮像光学系の構成において、レンズアレイ102aと撮像素子103の部分の詳細図である。本実施例において、レンズアレイ102aは、物体側の面が平面で、像側の面が凸形状の小レンズによって構成されている。ただし実施例1と同様に、レンズアレイ102aの形状はこれに限定されるものではない。
図8(a)、(b)中の一点鎖線は、各小レンズの画角を示す。撮像素子103で得られた画素値を、画素に対応する小レンズを介して仮想結像面203へ投影して合成することで、仮想結像面203にピントの合ったリフォーカス画像を生成することができる。例えば、図2中の被写体面201にピントの合った画像を生成するには、像側共役面202に仮想結像面203を設定すればよい。図8(a)、(b)において、リフォーカス画像生成の際に投影した画素は、破線で表され、分りやすくするために重ねずにずらして描画している。リフォーカス画像の生成は、前述した画素を投影する生成方法と、同様の画素の重なりとなるように、各画素を平行移動させて合成する方法でもよい。このとき、画素に入射した光束が通過したレンズアレイ102aの領域が等しい場合、それらの画素の平行移動量は同じになる。以上のとおり、本実施例におけるリフォーカス画像生成時の画素の操作は、画素に入射する光束が通過したレンズアレイ102aの領域に応じて決定される。
続いて、リフォーカス可能な範囲について説明する。本実施例における撮像光学系のリフォーカス範囲も、実施例1と同様に式(1)で表される。その関係は、図9に示されるとおりである。図9は、本実施例におけるリフォーカス範囲の説明図である。本実施例の撮像光学系において、Δy=Δ|σ1/σ2|、Δu=P/(NF)であり、Δ≪Pであるから、式(1)は以下の式(4)のように書き換えられる。
ここで、Δは撮像素子103の画素ピッチである。実施例1と同様に式(4)の範囲を超えた場合、正しいリフォーカス画像が生成できなくなる。
次に、画素ずらし超解像による空間解像度の向上について説明する。図8(a)に示されるように、仮想結像面203へ投影された画素はオーバーラップしている。オーバーラップした画素の数を、画素のオーバーラップ数と呼ぶ。図8(a)のように、投影された画素が各々ずれていれば、それらを合成することで見かけの画素ピッチを小さくすることができる。一方、図8(b)に示されるように、投影された画素のずれが画素の整数倍になっている場合、画素ずらし超解像の効果は得られない。画素ずらし超解像によって最も高解像度化が図れるのは、画素がずれている割合が画素のオーバーラップ数に対応している場合である。具体的には、図8(a)の場合、画素のオーバーラップ数が3であるため、画素ずれの割合が1/3または2/3のときに解像度を最大にすることができる。画素ずれの割合と画素のオーバーラップ数の関係については、追って詳述する。以上のように本実施例においても、仮想結像面203によって画素ずらし超解像の効果が変化する。したがって、リフォーカス画像のピント位置に対応した画素ずれ量を算出することにより、高解像度化に関する様々な処理が可能となる。
次に、本実施例において、入力画像から出力画像を生成する画像処理方法について説明する。本実施例の画像処理方法は、図7のフローチャートで表され、実施例1と同様の部分の説明は省略する。
まずステップS001において、撮像素子103によって、撮影視点と撮影範囲の異なる複数の小画像が並んだ画像が取得される。ステップS002で再構成方法が選択された後、ステップS003において、撮影条件情報から複数の仮想結像面203に対して、リフォーカス画像生成時の合成画素のずれ量を算出する。本実施例における画素ずれの割合は、ΔLAを仮想結像面203上に投影された画素のピッチで割った比ΔLAσ2/(Δτ)で表される。ここで、τは結像光学系の物体側主平面と仮想結像面203との間の距離である。さらに、図8(b)のように画素の整数倍のずれは意味がないため、整数部分は落として考えてよい。したがって、画素ずれの割合δは、以下の式(5)のように表される。
ここで、z=mod(x,y)は、zがxをyで割った時の剰余に等しいことを表す。
次にステップS004において、ステップS003で算出された結果から、出力画像のピント位置を決定する。その決定方法として、実施例1と同様に、画素ずらし超解像の効果が高く、高解像度となる仮想結像面203を選択する方法が採用される。そこで、具体的に高解像度となる仮想結像面203を求める。まず、仮想結像面203での画素のオーバーラップ数を見積もる。図10は、画素のオーバーラップ数の説明図あり、図8(a)に示される小レンズの番号jを横軸、仮想結像面203上の座標yを縦軸に取ったグラフである。ここで、j=0はレンズアレイ102aの任意の小レンズとしてよい。図10中のy軸に平行な直線は、それぞれj番目の小レンズに対応した画素の集合を仮想結像面203へ投影した場合の座標を表す。これらの直線の上限を結んだものが一点鎖線Aであり、下限を結んだものが一点鎖線Bである。一点鎖線Aはy=ΔLA{j+|τ/(2σ2)|}で与えられ、また一点鎖線Bはy=ΔLA{j−|τ/(2σ2)|}で与えられる。画素のオーバーラップ数は、一点鎖線Aと一点鎖線Bのj方向の間隔に対応している。j=0に対応する画素で最も画素のオーバーラップ数が少なくなるのは、y=0近傍の画素であり、そのオーバーラップ数は|τ/σ2|程度と見積もることができる。
続いて、画素ずらし超解像を含めた空間解像度を求める。前述のとおり、最も解像度が高くなるのは、画素のオーバーラップ数と式(5)で表される画素ずれの割合δが対応している場合である。例えば、画素のオーバーラップ数が8で、画素ずれの割合δが0.45のとき、8つの画素のそれぞれの画素ずれは、0、0.45、0.90、0.35、0.80、0.25、0.70、0.15となる。この場合、解像度を決める見かけの画素ピッチの最大値は0.70−0.45=0.25となる。次に、オーバーラップ数が同じで、画素ずれの割合δが3/8の場合を考える。このとき、8つの画素のそれぞれの画素ずれは、0、3/8、6/8、1/8、4/8、7/8、2/8、5/8となる。この場合、見かけの画素ピッチの最大値は1/8となり、画素のオーバーラップ数の逆数と一致する。したがって、最も高い画素ずらし超解像の効果が得られていることとなる。これは、画素ずれの割合δが1/8、5/8、7/8の場合でも同じである。
ただし、画素ずれの割合δが2/8、4/8、6/8の場合、画素ずらし超解像の効果は低下する。例えば、画素ずれの割合δが2/8の場合を考える。このとき、オーバーラップした8つの画素のそれぞれの画素ずれは、0、2/8、4/8、6/8、0、2/8、4/8、6/8となり、画素が互いに重なることで見かけの画素ピッチの最大値が2/8=1/4となる。したがって、画素ずれの割合δが1/8、3/8、5/8、7/8のときに対して、画素ずらし超解像の効果は半分になる。
このことから、画素ずれの割合δがm0/M0に等しいとき、最大の画素ずらし超解像の効果が得られることが分かる。ここで、M0は画素のオーバーラップ数であり、m0はM0より小さく、かつM0との最大公約数が1となる整数である。M0は前述したように、τ/σ2程度と見積もることができ、画素ずれの割合δがm0/M0に近いほど画素ずらし超解像の効果は高くなる。
以上より、出力画像のピント位置は、以下の条件式(6)を満たす範囲内で決定してもよい。
ここでMは、以下の条件式(7)を満たす整数である。
またmはMより小さく、かつMとの最大公約数が1となる整数である。条件式(6)と条件式(7)は、画素ずらし超解像の効果の大きさを表し、条件式(6)および条件式(7)を満たすことで高解像なリフォーカス画像が得られる。条件式(6)および条件式(7)の上限または下限を超えると、十分な画素ずらし超解像の効果が得られず、空間解像度の向上が不十分となる。
望ましくは、以下の条件式(6a)を満たす範囲に設定することにより、リフォーカス画像がより高解像となる。
さらに望ましくは、以下の条件式(6b)を満たす範囲に設定することで、更なる高解像度化を図ることができる。
また望ましくは、以下の条件式(7a)、更には条件式(7b)を満たす範囲に設定することで、より高い画素ずらし超解像の効果を得られる。
例えば、レンズアレイ102aのピッチΔLA=4.3559(mm)、撮像素子103の画素ピッチΔ=0.0043(mm)、σ1=37.7657(mm)、σ2=5.4325(mm)の場合を考える。このとき、τ=37.8000(mm)とすると、条件式(6)の値は1.02、条件式(7)の値は1.0となる。ここで、M=7、m=4である。これにより、高解像なリフォーカス画像が自動的に生成される。
また、実施例1と同様に、出力画像のピント位置は、ユーザーが指定したピント位置でもよい。この際、ユーザーにステップS003で算出した結果を把握させることにより、ユーザーはその結果に基づいて望ましいピント位置を指定することができる。
図7のステップS005において、ステップS004にて決定されたピント位置の出力画像を生成するため、画素の操作パラメータを算出する。図8を参照して説明したリフォーカス画像の生成方法を用いる場合、操作パラメータは画素の拡大倍率である。また、画素を拡大して合成した場合と結果が同じになるように、画素を平行移動させてリフォーカス画像を生成してもよい。このときの操作パラメータは、平行移動量である。
以上の構成により、本実施例によれば、リフォーカス画像が高解像度になるピント位置を算出可能な画像処理方法、撮像装置、画像処理装置、および、画像処理プログラムを提供することができる。
次に、本発明の実施例3について説明する。本実施例は、上述の画像処理方法を行う画像処理装置(画像処理システム)について説明する。図11は、本実施例における画像処理システムのブロック図である。
図11に示されるように、画像処理システムは撮像装置301を備えている。撮像装置301は、例えば図3に示される撮像光学系を有する。画像処理装置302は、前述の画素ずれ算出工程および画像生成工程を実行するコンピュータ機器(情報処理装置)である。画像処理装置302は、撮像装置301で取得された画像に対して、撮像装置301の構成に応じた再構成を行い、出力画像を生成する画像生成工程を実行する。その結果は、記憶媒体303、表示機器304、および、出力機器305のいずれか一つまたは複数に出力される。記憶媒体303は、例えば、半導体メモリ、ハードディスク、または、ネットワーク上のサーバーである。表示機器304は、例えば、液晶ディスプレイやプロジェクタである。出力機器305は、例えばプリンタである。画像処理装置302には表示機器304が接続され、再構成された画像が表示機器304へ入力される。ユーザーは、表示機器304を介して再構成された画像を確認しながら作業を行うことができる。
画像処理装置302は、画素ずれ算出部306および画像処理ソフトウエア307を備えて構成される。画素ずれ算出部306は、画素ずれ算出工程を実行する。画素ずれ算出工程は、前述した撮像光学系の構成に応じた再構成方法から、複数の仮想結像面203に対する画素ずれ量を算出する工程である。画像処理ソフトウエア307(画像処理プログラム)は、前述の再構成処理(画像処理方法)を行うとともに、必要に応じて現像処理やその他の画像処理を行う。
本実施例の撮像装置301を構成する撮像光学系は、図3に示されるように配置されている。図3に示される本実施例の撮像光学系は、レンズアレイ102aが像側共役面202よりも像側へ配置されていることを除いて、図2に示される実施例2の構成と同様である。本実施例(図3)の構成は、レンズアレイ102aが結像光学系101の形成した像を実物体として見て、撮像素子103へ再結像させる点で、実施例2(図2)の構成と異なる。ただし、図2の構成と図3の構成は、いずれも結像光学系101の結んだ像をレンズアレイ102aが物体として見て、その像を撮像素子103へ結像しているため、本質的には同様である。したがって、本実施例のリフォーカス画像の生成方法は実施例2と同様である。
次に、図12を参照して、入力画像から出力画像を生成する画像処理方法について説明する。図12は、本実施例における画像処理方法のフローチャートである。図12のフローチャートの各ステップは、画像処理装置302により実行される。
まずステップS101において、画像処理装置302(画像処理部)は、図11の撮像装置301で得られた画像を入力画像として取得する。入力画像は、画像処理装置302の内部メモリ(記憶部)などに記憶される。続いてステップS102において、画像処理装置302は、入力画像または撮像装置301から撮影条件情報(撮像光学系の構成に関する情報)を読み取る。撮影条件情報は画像処理装置302の内部メモリに記憶され、画像処理装置302はその撮影条件情報から画像の再構成方法を決定する。本実施例における撮像光学系は、図3に示される構成を有し、実施例2と同様の再構成方法でリフォーカス画像を生成することができる。
次にステップS103において、画像処理装置302は、撮影条件情報から複数の仮想結像面203に対して、リフォーカス画像生成時の合成画素のずれ量を算出する。すなわち画像処理装置302は、複数のピント位置に対応する複数の仮想結像面に対して、再構成により合成される画素の画素ずれ量を算出する。そしてステップS104において、画像処理装置302は、ステップS103で算出された結果(画素ずれ量)から、高解像になるピント位置を求めてその結果を出力する。出力結果は、例えば表示機器304や出力機器305などに出力され、ユーザーはその結果を参考にして、生成するリフォーカス画像のピント位置を指定することができる。
続いてステップS105において、ユーザーが指定したピント位置の出力画像を生成するため、画像処理装置302は入力画像の画素の操作パラメータを算出する。操作パラメータに関しては、実施例2と同様である。そしてステップS106において、画像処理装置302は、ステップS105で算出した操作パラメータを用いて入力画像を再構成し、出力画像を生成する。生成された出力画像は、記憶媒体303、表示機器304、および、出力機器305のいずれか一つまたは複数に出力される。なお本実施例において、画像処理装置302は、ステップS104の前に、特定のピント位置でのリフォーカス画像を生成して表示機器304や出力機器305に出力してもよい。そのピント位置は、像側共役面202や、実施例1、2で説明したようにステップS103の算出結果から決定してもよい。
以上の構成により、本実施例によれば、リフォーカス画像が高解像度になるピント位置を算出可能な画像処理方法、撮像装置、画像処理装置、および、画像処理プログラムを提供することができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。