JP5553334B2 - 正弦波パラメータ推定方法 - Google Patents

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    • G01R23/00Arrangements for measuring frequencies; Arrangements for analysing frequency spectra
    • G01R23/16Spectrum analysis; Fourier analysis

Description

本発明は、音響センシング、音響信号処理分野に関し、特に信号波形中に含まれる正弦波パラメータを推定する方法に関する。
さらに本発明は、音響や光など、広く波動場のセンシングや信号処理、通信やデータ記録における復調や復号化の技術においては、正弦波パラメータの推定は極めて重要な技術事項であるので、それらの分野にも強く関連する。
音声信号などの信号波形解析においては、その信号に含まれる正弦波のパラメータを推定することは基本的、且つ重要な事項である。
したがって、従来から信号中の正弦波パラメータ推定技術として種々のものが提案されている。広く利用されている技術は、FFT(高速フーリエ変換)を利用したものであり、特にその得られたFFTスペクトルを2次補間して正弦波パラメータを推定する方法は簡単で精度も高いので広く利用されている。
先行技術文献
正弦波パラメータ推定と関連性があると思われるいくつかの先行技術を挙げる。
下記特許文献1には、正弦波の振幅と周波数とを推定する方法等が開示されている。ここに開示されている技術は、サンプリング信号に基づき、これらの信号間を補間すること等によって正弦波の推定を行うことを特徴とする。
また、下記特許文献2には、未知の信号を推定するスペクトル分析装置が開示されている。ここに開示されているスペクトル分析装置によれば、入力信号の周波数や位相が推定できるとされている。
また、下記特許文献3には、入力音声の正弦波を抽出し、その正弦波を利用して音声合成する技術が開示されている。
また、下記特許文献4には、ノイズが音声信号に混入した場合、そのノイズの期間における正弦波を推定し、入力信号を補間することによってノイズキャンセルを行う装置が開示されている。
また、下記非特許文献1においては、FFTの2次補間による正弦波パラメータの推定の基準に関する研究が開示されている。特に、その設計パラメータ、窓関数や、窓の長さ、零詰めを行う際の零詰めの量等について研究がなされている。
特開平07−083964号公報 特開2000−258478号公報 特開2004−109809号公報 特開2006−135806号公報 安部, スミス, "FFTの2次補間に基づく正弦波パラメータ推定法の設計基準",信学技報, vol.104 No.304, pp.7-12, Nov. 2004.
このように、未知の信号に対して正弦波のパラメータを調べる従来の手法は、補間等のテクニックを用いた近似であり、精度の向上にも一定の限界があると考えられる。
そこで、近似ではなく、直接的に正弦波のパラメータ(振幅、位相)を推定できる手法が望ましいことは言うまでもない。
理論的には、ナイキストの定理から、サンプリング周期が十分に高ければそのサンプリングした信号の値から(量子化誤差を除けば)元の正弦波信号は完全に再現できるはずであり、そのような手法が望まれている。
本願発明は、このような背景に鑑みなされたものであり、補間等の近似ではなく、入力信号を計測した値から、直接的にその入力信号中に含まれる正弦波のパラメータを推定する技術を実現することを目的とする。
本願発明は、上記課題を解決するために、微分方程式の有限区間荷重積分に基づく正弦波パラメータの直接推定を行うことをその解決原理とするものである。
また、本特許においては、正弦波のパラメータとは、周波数と振幅と位相を意味する。なお、正弦波のパラメータという場合、周波数と振幅と位相とに加えて直流バイアスを意味する場合もある。
本特許においては、この直流バイアスを直接パラメータとして扱ってはいないが、周波数が直流という特別の場合の振幅として推定することができる。
具体的には、上記課題を解決するため以下のような手段を採用している。
(1)本発明は、上記課題を解決するために、解析の対象である信号中の正弦波のパラメータを推定する方法において、前記信号の微分を含む支配方程式を立てる工程と、前記微分を含む支配方程式に任意の荷重関数を導入し、有限区間の積分形式に置き換える工程と、前記積分形式に変換した方程式を解く工程と、
を含み、
前記積分形式の支配方程式を解く工程は、
前記連立方程式群を解くことによって前記信号中の正弦波の少なくとも周波数を含むパラメータを推定する前記工程
を含むことを特徴とする正弦波パラメータ推定方法である。
(2)本発明は、解析の対象である信号中の正弦波のパラメータを推定する方法において、任意の荷重関数を導入した有限区間の積分形式で、前記信号の微分を含む支配方程式を構成する工程と、前記積分形式の支配方程式を解く工程と、
を含み、
前記積分形式の支配方程式を解く工程は、
前記連立方程式群を解くことによって前記信号中の正弦波の少なくとも周波数を含むパラメータを推定する前記工程
を含むことを特徴とする正弦波パラメータ推定方法である
(3)また、本発明は、上記(1)又は(2)記載の正弦波パラメータ推定方法において、前記荷重関数は、前記有限期間の整数分の1の周期の三角関数であることを特徴とする正弦波パラメータ推定方法である。
整数分の1にとることによって、後述するように、未知数や計数の個数を近似無しで減じ、かつ、必要な個数は残すことが可能である。
(4)また、本発明は、上記(1)又は(2)記載の正弦波パラメータ推定方法において、前記積分形式の支配方程式を解く工程は、異なる3個の荷重周波数の荷重関数を導入し、それらに関する連立方程式群を構成する工程と、前記連立方程式群を解くことによって前記信号中の正弦波の少なくとも周波数を含むパラメータを推定する前記工程と、を含むことを特徴とする正弦波パラメータ推定方法である。
(5)また、本発明は、上記(1)又は(2)記載の正弦波パラメータ推定方法において、前記積分形式の支配方程式を解く工程は、異なる2個の荷重周波数の荷重関数を導入し、それらに関する連立方程式群を構成する工程と、前記連立方程式群を解くことによって前記信号中の正弦波の少なくとも周波数を含むパラメータを推定する前記工程と、を含むことを特徴とする正弦波パラメータ推定方法である。
(6)また、本発明は、上記(1)又は(2)記載の正弦波パラメータ推定方法において、前記積分形式の支配方程式を解く工程は、3個以上の荷重周波数の荷重関数を導入し、それらに関する連立方程式群を構成する工程と、前記連立方程式群を解くことによって前記信号中の正弦波の少なくとも周波数を含むパラメータを推定する前記工程と、を含むことを特徴とする正弦波パラメータ推定方法である。
(7)また、他の関連発明は、上記(1)又は(2)記載の正弦波パラメータ推定方法において、前記積分形式の支配方程式を解く工程は、1個の荷重周波数と窓関数の荷重関数を導入し、それらに関する連立方程式群を構成する工程と、前記連立方程式群を解くことによって前記信号中の正弦波の少なくとも周波数を含むパラメータを推定する前記工程と、を含むことを特徴とする正弦波パラメータ推定方法である。
(8)また、他の関連発明は、上記(4)〜(7)のいずれかに記載の正弦波パラメータ推定方法において、前記パラメータを推定する工程は、前記推定された周波数と、積分境界値項と、その推定された周波数の信号の振幅と位相とを正弦波のパラメータとして求める工程、を含むことを特徴とする正弦波パラメータ推定方法。ここで、積分境界値項とは積分区間の信号やその微分の両端の値の差をいう。
(9)また、他の関連発明は、上記(4)〜(7)のいずれかに記載の正弦波パラメータ推定方法において、前記パラメータを推定する工程は、前記推定された周波数に関して、位相と振幅とをパラメータとして含む正弦波モデルを構築し、この正弦波モデルを解析対象となる解析信号にフィッティングさせることによって、最もフィットする正弦波モデルの振幅と位相とを求める工程、を含むことを特徴とする正弦波パラメータ推定方法である。
(10)また、他の関連発明は、上記(1)〜(9)のいずれかに記載の正弦波パラメータ推定方法において、前記積分形式に置き換える工程は、前記積分の積分境界を、前記信号を標本化するタイミングの中間に設定することを特徴とする正弦波パラメータ推定方法である。
参考発明の手段
以下、本件発明と関連する参考発明の手段を説明する。
上で述べた正弦波パラメータ推定方法は、以下のようなハードウェアを用いて実施することが好適である。
(11)本参考発明は、上記(1)〜(10)のいずれかに記載の正弦波パラメータ推定方法の前記荷重積分を支援する装置において、前記解析信号に前記荷重を乗算するN個の乗算手段と、前記N個の乗算手段毎にそれぞれ設けられ、前記乗算手段の各出力信号をN周期遅延させるN個の遅延手段と、前記N個の遅延手段毎にそれぞれ設けられ、遅延後の出力信号と、遅延前の信号との差を求め、その差を累積値に累積するN個の加算手段と、前記加算手段毎にそれぞれ設けられ、前記加算手段の出力信号を累積するN個の累積手段と、を含むことを特徴とする正弦波パラメータ推定方法支援装置である。ここで、前記Nは正の整数である。
(12)さらに、上で述べた正弦波パラメータ推定方法を実施する為に、任意の荷重関数を導入した有限区間の積分形式で、前記信号の支配方程式を構成する手段と、前記方程式を解く手段と、を含むことを特徴とする正弦波パラメータ推定支援装置を用いることが好ましい。
以上述べたように、本発明によれば、解析信号中に含まれる正弦波のパラメータを直接推定することができる。
本実施例における反復法2の処理の流れのフローチャートである。 本実施例におけるシミュレーションした周波数の推定結果を表すグラフである。 本実施例におけるsinc関数の積分関数(正弦積分)と、複素正弦波荷重のsinc積分関数(ω=2π/4)のグラフである。 本実施例における積分範囲を標本化メッシュに対して標本点の中間位置までシフトした場合の荷重分布と誤差分布のグラフである。 本実施例における移動有限フーリエ変換を実行する構成のブロック図である。 本実施例において、方程式の他の解法の窓関数と荷重関数の例を示すグラフである。
符号の説明
10 乗算手段
20 遅延部
22 単位遅延手段
30 累積部
32 加算手段
第1 解析信号の周波数等の推定
a)支配方程式
解析の対象となる信号を、解析信号と呼ぶ。まず、支配方程式について説明する。
解析信号に対して下記式(1)
Figure 0005553334
の一般解は、
Figure 0005553334
となる。ここで、
Figure 0005553334
であるから、その結果、下記式(2)
Figure 0005553334
が得られる。すなわち、上で述べた式(1)(数1)が支配方程式である。複素正弦波の周波数は、この式中のaの虚部に相当し、その振幅変化率はaの実部に表現される。この支配方程式が、請求の範囲の「微分を含む支配方程式」の好適な一例に相当する。
b)荷重積分観測方程式
観測期間を[−T/2,T/2](すなわり、総時間はT)とし、その期間中、信号周波数は一定であると仮定する。すなわり、上記a)で述べた微分方程式が一様に成立していると仮定する。この条件は、任意の荷重関数
Figure 0005553334
を導入すると、下記の同値関係式(3)によって、積分形式に置き換えることができる。
Figure 0005553334
この支配方程式が、請求の範囲の「積分形式に変換した支配方程式」の好適な一例に相当する。この式(3)において、w(t)は、具体的には、区間[−T/2,T/2]で完備な関数系
Figure 0005553334
を荷重関数として用いればよい。
この式(3)の下で微分を消去するために、式(3)の後段の積分を実行すると、
Figure 0005553334
となる。ここで、
Figure 0005553334
と選ぶと、これらは区間[−T/2,T/2]で完備な直交系をなし、
Figure 0005553334
のように、荷重の微分による荷重積分が原関数の荷重積分に比例する。さらに、
Figure 0005553334
のように、全ての
Figure 0005553334
に関する積分境界値項が符号を除いて同一となる。ここで、積分境界値項とは積分区間の信号やその微分の両端の値の差を言う。以下、同様である。さてこの結果、
Figure 0005553334
及び、荷重積分を、下記式(4)に示すように
Figure 0005553334
と置くことによって、題意の荷重積分式は
Figure 0005553334
を未知変数とする線形方程式(下記式(5))
Figure 0005553334
に帰着させることができる。aを任意の複素数としても未知数は4個であり、方程式は上記の実部と虚部の2個である。したがって、上記の線形方程式は、任意の2個の周波数で連立することによって解くことが可能になる。
c)DC成分との連立法
さて、具体的にω=0の式と上式とを連立させると、
Figure 0005553334
より、下記の式(6)
Figure 0005553334
と解かれる。
ここで注意すべきことは、f(t)は解析の対象である解析信号だということである。したがって、f(t)は虚部を有し、
Figure 0005553334
にはこのf(t)のヒルベルト変換のフーリエ変換が加わり、
Figure 0005553334
も虚部を有する。解析信号化が上記の荷重積分で同時になされると考えることも可能ではあるが、それは何を解析信号であると認識するかの問題でもある。
なお、ヒルベルト変換のフーリエ変換が加わっても
Figure 0005553334
は2倍されるだけであろうかという疑問が生じるかもしれないが、正しいヒルベルト変換ではないので2倍にはならない点にも注意すべきである。
d)近接2周波数成分を用いた連立法
今、利用する2個の周波数をω、ωとおき、それらの周波数におけるsをs,sとおくと、連立方程式は
Figure 0005553334
となる。したがって、
Figure 0005553334
となり、よって、下記(7)式、(8)式
Figure 0005553334
を得る。
e)振幅と位相の推定
さて、推定された周波数aとして
Figure 0005553334
とおくと(ここでAは複素振幅を表す)、
Figure 0005553334
より下記(9)式
Figure 0005553334
が求められる。ここで、aT=2nπのときはsin(aT/2)=0となって適用不可能となるが、この場合は、単一周波数スペクトルとなって、振幅も位相もこのスペクトル値から決定することができる。
第2 実信号の周波数等の推定
a)支配方程式
解析の対象となる実信号に関して、まず上の記載と同様に、支配方程式についての説明を行う。実信号に対して下記式(10)
Figure 0005553334
の一般解は、周知のように、下記式(11)
Figure 0005553334
となる。ここで、AやBは符号も含めて任意である。すなわち、上で述べた式(10)(数2)が支配方程式であり、上記式(11)の一般解の形の意味でのaの推定が周波数を推定することに相当する。この支配方程式が、請求の範囲の「微分を含む支配方程式」の好適な一例に相当する。ここでaの符号は決定しない、又は意味を有しないと言い換えてもよい。
b)荷重積分観測方程式
観測期間を、上の記載と同様に、[−T/2,T/2](すなわち、総時間はT)とし、その期間中、信号周波数は一定、すなわち、上記a)で述べた微分方程式(支配方程式)が一様に成立していると仮定する。この条件は、上述したのと同様に、任意の荷重関数
Figure 0005553334
を導入すると、下記の同値関係式(12)によって、積分形式に置き換えることができる。
Figure 0005553334
この支配方程式が、請求の範囲の「積分形式に変換した支配方程式」の好適な一例に相当する。この式(12)(数31)において、上述した荷重関数は、具体的には、区間[−T/2,T/2]で完備な関数系
Figure 0005553334
を用いればよい。一般に、
Figure 0005553334
であるので、前節で述べたように、
Figure 0005553334
とおき、
Figure 0005553334
とおくと、前節で述べたのと同様の論法によって、同値条件を構成する周波数ごとの方程式として、下記式(13)
Figure 0005553334
が得られる。
なお、支配方程式を荷重関数を用いて積分形式にすることは上で述べたような機械的な作業である。特に、荷重関数の周期を積分区間の整数分の一にとっていることも、単純な作業の実現に寄与している。そのため、コンピュータ等の上で実施することが好適である。このようにして構成した式に、実際に計測したデータを導入すれば、正弦波のパラメータを変数として含む方程式が完成する。
この処理に際して、まず支配方程式を決めて、それから荷重関数を導入して変形する処理をコンピュータの上で行わせるの好適であるし、また、積分形式の支配方程式の形を予め準備しておき、その係数を、荷重関数に応じて設定して方程式を構成することも好ましい。
請求の範囲において方程式を「立てる」としている動作は、上述のように方程式を構成する処理を意味し、コンピュータで実行することが迅速な処理の為には好ましい。
また、荷重関数の周期は、対象となる信号(正弦波)の周期と区別する為に、特に、荷重周期と呼ぶ場合がある。同様に、荷重関数の周波数は、対象となる信号の周波数と区別する為に、特に、荷重周波数と呼ぶ場合がある。
c)DC成分を含む連立法
さて、ω=0に対する下記の関係を用いると、
Figure 0005553334
積分境界値が1個消去され、関係式は
Figure 0005553334
となる。この方程式は複素変数の方程式であり、
Figure 0005553334
の実部に注意し、上記方程式の実部のみを取り出すと、
Figure 0005553334
が得られる。よって、以下の式(14)のように、
Figure 0005553334
と求められる。また、積分境界値は、
Figure 0005553334
のように書くことができる(式(15)及び式(16))。
d)DC成分を含む3周波数を用いた連立法
荷重積分観測方程式を解くもう一つの連立法は、上記DCに加えてさらに2個の周波数ω、ωを連立する方法である。それぞれの周波数におけるsをs、sとおくと、これらを連立することによって
Figure 0005553334
であり、よってこの前段の第1式にsωを乗じ、後段の第2式にsωを乗じて差し引くことによって、
Figure 0005553334
のように、残りの積分境界値も消去され、よって、下記式(17)
Figure 0005553334
が得られる。対称性が良く、従来の周波数成分の補間のほうほうと対応が取りやすいという利点を有する。
e)近接3周波数成分を用いた連立法
3個の周波数をω、ω、ωとおき、そのときのsをそれぞれs、s、sとおくと、これらを連立することによって、
Figure 0005553334
を得る。この方程式の解は下記式(18)、式(19)、式(20)のようになる。
Figure 0005553334
ただし、
Figure 0005553334
である(式(21))。なお、ここで、2×2と3×3の行列の逆行列の公式を用いている(下記数49参照)。
Figure 0005553334
また、念のため、ω=0、s=1の場合について求めてみると
Figure 0005553334
となり、前節の結果と一致することが理解されよう。
f−1)振幅と位相の推定
さて、推定された周波数と、同時に推定された積分境界値項
Figure 0005553334
から、振幅・位相を求めることが考えられる。すなわち、a>0を推定された周波数として、
Figure 0005553334
とおく。すると、
Figure 0005553334
であるので、
Figure 0005553334
すなわち、下記式(22)
Figure 0005553334
を求めることができ、この結果から、振幅と位相が求められる。なお、数53の導出には、下記三角関数の和と積の公式が用いられている。
Figure 0005553334
さて、aT=2nπのときには、sin(aT/2)=0となってこの方法を適用することが困難であるが、この場合は、ωT=2nπの中の単一周波数のみにスペクトルが立つ(表れる)ので、周波数も位相もこのスペクトルから決定可能である。
したがって、アルゴリズムとしては、切り換えるための判断ステップ、又は、切り換えまで統合した推定アルゴリズムを用いることが好ましい。そのようなスペクトルのみが立つ場合を検出することはスペクトルを検査すれば比較的容易に判断できるので、その判断に基づきアルゴリズムを切り換えるのは当業者であれば容易に実施することができる。
f−2a)振幅と位相の他の推定方式
また、他の方式として、推定に用いた周波数成分
Figure 0005553334
へ正弦波モデル
Figure 0005553334
をフィッティングする方法もある。この方法は、上述した単一の周波数のみにスペクトルが立つ場合でも、条件判断をしてアルゴリズムを切り換える必要がないので便利である。また、全ての周波数成分の影響を受ける積分境界値を用いないため、複数の周波数が混合する信号を取り扱う場合にも高い精度を維持できると考えられる。
すなわち、標記モデルの最小二乗評価関数は
Figure 0005553334
を展開すると、
Figure 0005553334
であり、Aで微分して零とおくと、
Figure 0005553334
よって、
Figure 0005553334
となる。この式では、Aは常に実数であるが、正の値だけでなく負にもなりえる点には注意すべきである。次に、φで微分して零とおくと、
Figure 0005553334
すなわち、
Figure 0005553334
すなわち、
Figure 0005553334
を得る。この式では、位相が[−π/2,π/2]の範囲でしか求まらないが、上記Aの符号を正に固定し、符号を位相φに含ませると、全範囲で位相を推定することが可能である。
f−2b)上記f−2の別解
複素振幅をAで表し、最小二乗評価関数
Figure 0005553334
をA、Aで微分して零とおくと、
Figure 0005553334
よって、
Figure 0005553334
となる。
g)複素正弦波の同時推定法(複数推定法)
観測信号(「解析信号」、「実信号」とも呼び、解析の対象となる信号を意味する)に複数の正弦波が含まれる場合について説明する。この観測信号に含まれる正弦波の個数Nは既知であるとする。このN個は予め知ることができる場合も多い。例えば、離散スペクトル分布のピークの個数から予めNを求めることができる。
このNの算出もコンピュータ上で行うことが好ましい。スペクトル分布からピークを算出し、その個数をカウントすることはコンピュータによる一般的な信号処理として知られているので、そのような技術を用いればよい。
さて、このN個の周波数を、
Figure 0005553334
とおく。この記法は、本節g)においてのみ採用する記法であり、他の節では他の記法を採用する場合がある。また、正弦波を
Figure 0005553334
とおくと、
Figure 0005553334
と記述できる。これらによって表される各信号が満たすべき方程式は、
Figure 0005553334
である。よって、これに対応する荷重積分式は、
Figure 0005553334
である。この方程式は複素方程式であり、1個のωに対して2個の方程式を与える。一方、観測式としては全ての正弦波の混合信号に対する荷重積分
Figure 0005553334
しか得られない。この式も複素方程式であり、同様に2個以上のωの組に対して2個の方程式を与える。これに対して、未知数は、1個の正弦波に対して、周波数
Figure 0005553334
の1個と、実数である2種類の積分境界値である。したがって、この境界積分値の1+1=2個を足し、計3個であり、これに周波数N個を乗じて、合計3N個の未知数がある。ここで、未知数を周波数と振幅と位相で考えた場合も同様の結果になる。
さて、これらの未知数と荷重積分は一意に結ばれるため、ここで、2個の方程式が立てられる。
よって、推定に用いるωの個数をMとすると、これらを未知数として解が得られるための必要条件は、下記式(23)
Figure 0005553334
となる。N=1の場合は、この式(23)から、M>3/2と求まる。すなわち、2個の周波数が必要で、前節の2周波数連立法の結果と一致することが理解されよう。
なお、これらの方程式の構築は、コンピュータ上で実行することが好ましい。所定のωから方程式を得ることは上述のように機械的な作業であるので、汎用的なコンピュータ上でも容易に実行することが可能である。
本特許において、方程式を「立てる」と述べている部分があるが、本特許で「立てる」と述べている作業は、上述のごとく機械的に、決まった形の方程式を「準備する」作業であるので、汎用的なコンピュータで十分に実行することが可能である。
さて、標本値からのフーリエ係数の計算によってわずかに加わる誤差を無視すると、有限フーリエ変換は離散フーリエ変換で高速に実行することができる。このとき、例えば、256点のFFTを使用することを前提とすれば、M(推定に用いるωの個数)=127とすると(ここで、説明を簡単にするため、実の直流成分と最高周波数成分とは除く)、N<(2M+2)/3=257/3=85.33が得られる。したがって、計算上、85個までの正弦波のパラメータを推定することができる。同様に、128点のFFTでは42個、64点では21個、32点では10個、16点では5個、8点では2個、4点では1個の正弦波のパラメータを推定することができる。
以下、具体的な実施例を説明する。
本発明の実施においては、直接的な解法は困難であると考えられるので、推定精度を必要なだけ向上させるための反復法を用いるのが実用的であると考えられる。
「解法1」(反復法1)
ステップ1
まず、単一周波数を想定して全ての隣接3周波数荷重積分値から、周波数を推定する。
ステップ2
次に、主要な周波数成分の周波数と位相とを推定する。
ステップ3
上記の主要な周波数成分(周波数の摂動を含む)による荷重積分値の分布を算出する。
ステップ4
観測した荷重積分値の分布との誤差によって推定値を更新する。
ステップ5
上記のステップ3とステップ4を必要回数繰り返す。更新する量が一定値未満になった場合に所定の精度が得られたものと判断し、終了する。
「解法2」(反復法2)
この方法の処理の流れのフローチャートが図1に示されている。
ステップ1
まず、単一周波数を想定して全ての隣接3周波数荷重積分値から、周波数と振幅と位相とを推定する。この処理は、図1中、S1−1に相当する。
ステップ2
次に、ピークを検出することによって、主要な周波数成分を取り出し(図1中ステップS1−2に相当する)、これら周波数成分の周波数と振幅と位相とを推定する(図1中のS1−3に相当する)。
ステップ3
上記の主要な周波数成分の推定に用いた荷重積分値から他の主要な周波数成分の影響を差し引く。この処理は、図1中、S1−4に相当する。
ステップ4
修正された荷重積分値から、新たに周波数と振幅と位相とを推定する。この処理は図1中、S1−5に相当する。
ステップ5
上記のステップ2の後半(S1−3)と、ステップ3(S1−4)と、ステップ4(S1−5)を必要回数繰り返す。差し引く量が一定値未満になった場合に所定の精度が得られたものと判断し、終了する。この繰り返し判断処理は図1中、S1−6に相当する。
実際にこのアルゴリズムをコンピュータ上でシミュレーションした結果が図2に示されている。図2は、N=32による単一並びに複数正弦波信号に対する周波数の推定結果を表すグラフである。このグラフにおいて、横軸は与えられた周波数(右上がり45度の周波数成分である)であり、縦軸が推定された周波数である。
図2(a)は1個の周波数を推定する場合であり、図2(b)は、2個の周波数を推定する場合、そして、図2(4)は、4個の周波数を推定する場合である。
全ての隣接する3荷重積分で単一周波数を仮定して独立に推定し、detAの値が所定の第1しきい値以上のものを大きな黒点で表し、第1しきい値より小さな第2しきい値以上のものを小さな黒点で示している。複数の周波数成分が交差する付近ではうねり状の誤差が生じている。
h)基本値系列を用いる荷重積分の高精度化
一般にナイキスト(Nyquist)条件を満たして間隔Δtで標本化された標本値の時系列
Figure 0005553334
は、sinc関数補間された連続関数
Figure 0005553334
と等価である。よって区間[−T/2,T/2]の荷重積分は、
Figure 0005553334
となる。ただし、ωT=2nπ(n:整数)のように記述される。上式(数82)中の積分のt>0をグラフで表したものが、図3に示されている。
この図3においては、sinc関数の積分関数(正弦積分)と、複素正弦波荷重のsinc積分関数(ω=2π/4)のグラフが示されている。実線がSi(t)であり、破線がSi(t)の実部であり、一点鎖線はSi(t)の虚部である。
すなわち、t<0でほぼ零、t=0では1/2、t>0では、ほぼ1の値をとる。しかし、原点付近では波打があり、そのt>0における1との交差、及び、t<0における0との交差は、tの整数点のほぼ中間点に位置する。このことから、積分範囲を標本点の中間に取ることによって精度を格段に向上させることが可能である。
なお、本特許では、解析の対象である信号は、所定のサンプリング周期でサンプリング(標本化)することを前提としている。
正弦積分の整数点上での値は、原点(t=0)からそれぞれ、
0.000000(t=0)
0.589490(t=1)
0.451412(t=2)
0.533094(t=4)
0.474970(t=5)
0.520108(t=6)
0.483206(t=7)
となる。中間点での値は、t=0.5からそれぞれ、
0.436328(t=0.5)
0.511961(t=1.5)
0.495237(t=2.5)
0.502519(t=3.5)
0.498452(t=4.5)
0.501047(t=5.5)
である。
このように、積分範囲を標本化メッシュに対して標本点の中間位置までシフトした場合の荷重分布と誤差分布のグラフが図4に示されている。
図4(1)は、積分境界を標本化メッシュの中間に取った場合の誤差分布を表すグラフである。その横軸は、サンプリング点を表し、縦軸は誤差を表す。また、図4(2)は、積分境界を標本化メッシュの中間に取った場合の荷重分布を表すグラフである。その横軸は、サンプリング点を表し、縦軸は荷重を表す。
この図4に示すように、荷重分布のばらつきは大きく減少し、境界に隣接する標本点に小さな誤差が残るのみとなる。この荷重は、境界の外側隣接点で0.5−0.436328=0.063672となり、内側隣接点で0.5+0.436328=0.936328となる。上記の補償は−1、0及びN−1、Nの標本値に該当し、適用には前後に計2画素(サンプル)の拡張が必要である。補償については次に述べる。
補償処理
さて、このような積分範囲のシフト(積分範囲を標本点の中間位置までずらす)の影響を補償するために、以下のような処理を行う。まず、積分領域の標本化メッシュに対するシフト量をεとすると、積分境界値項は
Figure 0005553334
のように位相シフト項
Figure 0005553334
が乗じられる。よって、標本化間隔Δtを用いて、補償量は、具体的には、
Figure 0005553334
となることが理解されよう。
h)推定法の性質についての検討
以上、種々の推定法についてそれぞれ検討を行ったが、推定法は以下のような性質を有していると想像される。
1.無雑音、単一周波数の正弦波で、積分によるフーリエ係数を用いる場合は、厳密解が得られる。
2.標本値を用いた離散フーリエ変換を利用しても、標本化密度を十分に高めることによって、厳密解にいくらでも近づけることが可能である。
3.無雑音、含まれる周波数の個数が既知、積分によるフーリエ係数を観測地に用いる場合は厳密解が得られる。
第3 正弦波周波数推定の応用
以上述べたように、本実施の形態によれば、信号中に含まれる正弦波のパラメータを推定(周波数、振幅、位相)できる。このような正弦波の推定は、音声信号処理の基本処理とも言うべきものであり、その応用範囲は極めて広い。応用できると考えられる分野、用途、目的としては以下のようなものが考えられる。
・分析区間によらない厳密な周波数推定を測定。
・調和関係にない複数正弦波の周波数の測定
・一般調和解析
・音声、楽器音、異常音の時間周波数分析
・音の立ち上がり、立ち下がりの分析
・時間応答による残響分析
・周波数精度と周波数分解能の明確な概念的な分離
・周波数変調の復調、位相変調の微分復調
・ドップラ検出、反射波による振動検出、音源の振動検出
本発明は、音声信号の解析だけでなく、その他各種信号に応用できることは言うまでもない。また、本特許においては、正弦波のパラメータとは、周波数と振幅と位相を意味する。
なお、正弦波のパラメータという場合、周波数と振幅と位相とに加えて直流バイアスを意味する場合もある。
本特許においては、この直流バイアスを直接パラメータとして扱ってはいないが、周波数が直流という特別の場合の振幅として推定することができる。
第4 移動フーリエ変換
時間積分型音源恒等式に必要な荷重積分、すなわち有限フーリエ変換には、窓関数が不要という顕著な特徴がある。これを数値計算法やハードウェア信号処理に利用することを検討する。
上述した特徴は重なりのある密な短時間フーリエ変換の計算の場合に特に顕著に発揮される特徴である。すなわち、この計算は、各標本点で複素指数関数
Figure 0005553334
を乗じ、これらを区間幅Nで移動平均することと備えられる。荷重が「1」で一定であるため、この移動平均は、各標本点で、区間の前端と後端の差を累積メモリに加算するだけで実行可能である。これを、ここでは、移動(有限)フーリエ変換と称することにする。
このときに生じる分析区間に応じた初期位相のずれは、後で補償すれば問題はない。
4.1 演算量の評価
移動フーリエ変換の乗算回数と加算回数(複素数)は、各標本点でN+N=2N回である。全データ長さをMとすると、重なりなしのFFTで乗算回数は
Figure 0005553334
であり、完全に密な移動演算とすると、
Figure 0005553334
である。これに対して上記の移動フーリエ変換法の乗算回数は、
Figure 0005553334
であるので、FFTをそのまま用いるよりも少ない値となる。もし、窓関数が必要であれば、窓付きでFFTを完全に密に適用するには、乗算回数
Figure 0005553334
が必要である。これに対して上記の移動フーリエ変換法の場合は、
Figure 0005553334
であり、やはり少なくなる。
次に、密な窓関数付きFFTと、窓関数なしの移動フーリエ変換法との比較では、乗算回数では
Figure 0005553334
倍の開きがある。N=256の場合は、上記値は、256×8=2048となり、2048倍の開きとなる。また、窓関数なしのFFTと移動フーリエ変換法とでは
Figure 0005553334
倍の開きがある。もし、N=256の場合は、上記値は8となり、8倍の開きとなる。
すなわち、従来法(例えばフーリエ位相法)で密に遅延推定を行う場合に比べて3桁の高速化が可能となると期待される。また、音源恒等式を密にFFTを用いて行う場合と比較しても、少なくとも1桁の高速化が期待される。
4.2 移動平均の漸化式の計算法
一般に平均化の荷重分布を
Figure 0005553334
とすると、区間[−T/2、T/2]の移動平均は、
Figure 0005553334
であり、
Figure 0005553334
である。ところが、一方、
Figure 0005553334
である。ここで、
Figure 0005553334
は区間内及びその両端で連続かつ微分可能である。したがって、
Figure 0005553334
では、
Figure 0005553334
となる。すなわち、
Figure 0005553334
のような漸化式による計算が可能である。この漸化式の右辺の中括弧は単に積分の境界における信号値の差であり、区間内の値を用いずに容易に計算できる。
一方、離散値を用いる場合は、上記の漸化式は厳密な式となり、厳密解が得られる。その理由は、区間[0,N−1]の
Figure 0005553334
の移動平均
Figure 0005553334

Figure 0005553334
であり、
Figure 0005553334
とすると、
Figure 0005553334
であり、
Figure 0005553334
ならば
Figure 0005553334
となるからである。なお、数値計算誤差の累積を防ぐ手段を講じることが好ましい。具体的には、漸化式の直流応答を有限なものとする等の手段を高じることが好ましい。このような手段は従来から知られている工夫であるから、当業者であれば容易に実行することができる。
4.3 移動有限フーリエ変換の実施の一例
さて、これまで説明してきた事項に基づき、移動有限フーリエ変換を実行する構成のブロック図が図5に示されている。
この図5に示すように、入力データ(観測信号)
Figure 0005553334


Figure 0005553334
を乗じてN系統、N段の遅延部に入力する。
図5におけるN個の乗算手段10は、入力した各データに上述した荷重を乗じる。乗算した結果は、遅延部20に供給される。この遅延部20は、単位遅延手段22をN段接続して構成されている。
遅延部20の先頭と終端の差が累積部30入力となり、各時刻の累積値が各時刻のSTFT出力を与える。ここで遅延部20の先頭と終端の差と、それまでの累積値との加算が加算手段32によって行われる。遅延部20の先頭のデータすなわち入力しようとするデータは符号がそのままで加算手段32に供給され、遅延部20の終端のデータは符号が反転されてから加算手段32に供給される。また、累積部30の出力信号がさらに加算手段32に供給される。このような構成によって、加算手段32は先頭のデータから終端のデータを減算して「差」を求めてこの差と、累積部30の現在の累積値とを「累積」して、その結果を累積部30に再び格納する。累積部30はいわゆるアキュムレータから構成される。この累積部30の出力信号がSTFT出力を与える。
図5に示す形態のままで、前端付近と後端付近の荷重補償も行うことが可能である。また、矩形以外の窓関数では、非零の窓関数の微分の個数だけ遅延部からの乗算と加算の段数が増えることに注意されたい。演算量の低減は、窓関数が不要(境界以外で一様に−1)であるために実現されていることに注意すべきである。
4.4 分析区間の初期位相の補償
さて、STFTによって求められるのは、
Figure 0005553334
である。これに対して、移動フーリエ変換で求められるのは、
Figure 0005553334
であり、t+τを新たにtと置き換えることによって、
Figure 0005553334
のように互いに変換可能であることが理解されよう。この際の補償位相は分析の離散周波数ごとに異なることに注意するべきである。積分範囲における1/2標本点シフト(上述したようなサンプリング周期の1/2の期間のシフト)のために位相補償の乗算は元々必要である。したがって、これに含ませることによって、この演算は演算量の増大には結びつかない。
第5.参考発明
これまで、近似ではなく厳密にパラメータを求めることができる正弦波パラメータ推定方法を説明したが、この方法は、以下のようなハードウェアを用いて実施することが好適である。
5.1 装置
上で述べた正弦波パラメータ推定方法を実施する為に、任意の荷重関数を導入した有限区間の積分形式で、前記信号の支配方程式を構成する手段と、前記方程式を解く手段と、を含むことを特徴とする正弦波パラメータ推定支援装置を用いることが好ましい。
このような手段は、例えば、デジタルシグナルプロセッサ等で実現することが好適である。例えば、FFTを実行するする半導体チップや、暗号化処理を実行する暗号チップ等が知られているので、このような半導体チップと同様に所定の処理を高速に実施する半導体チップを作成することが好ましい。
なお、種々のアプリケーションに対応する為に、種々のサンプリング周期や、様々な音源の数に対応する為には、ソフトウェアとそのソフトウェアを実行する汎用的なプロセッサとで実現することも好ましいが、速度的には遅くなってしまう可能性がある。
また、音源の数や、データの入出力部分や、サンプリング数の設定部分のみをソフトウェアで構成し、方程式を解く演算部分のみを半導体チップを用いて構成することも好適である。このように、一部をハードウェアで、他の一部をソフトウェアで構成すれば、種々のアプリケーションに対応できると共に高速なデータ処理(信号処理)を実現できる可能性がある。
5.2 具体的な構成
また、参考発明としては、これまで述べた正弦波パラメータ推定方法を支援する装置において、前記解析信号に前記荷重を乗算するN個の乗算手段と、前記N個の乗算手段毎にそれぞれ設けられ、前記乗算手段の各出力信号をN周期遅延させるN個の遅延手段と、前記N個の遅延手段毎にそれぞれ設けられ、遅延後の出力信号と、遅延前の信号との差を求め、その差を累積値に累積するN個の加算手段と、前記加算手段毎にそれぞれ設けられ、前記加算手段の出力信号を累積するN個の累積手段と、を含むことを特徴とする正弦波パラメータ推定方法支援装置である。ここで、前記Nは正の整数である。
このような構成は、図5に示した通りである。

第6 方程式の他の解法
上記第2章(c)DC成分を含む連立法や、同(d)DC成分を含む3周波数を用いた連立法等において、方程式の種々の解法を説明した。しかし、連立方程式の解法は、他にもあり、以下、他の解法を説明する。
a) 単一荷重周波数と窓関数を用いる方法
本節でも、荷重積分観測値の種類が増加する欠点を承知の上で、積分境界値を未知数から除去する方法を導くことにする。出発点となる荷重積分観測方程式
Figure 0005553334
において、
Figure 0005553334
かつ、この窓関数p(t)を原点対称に選ぶと、
Figure 0005553334
である。ゆえに、荷重積分観測方程式は
Figure 0005553334
となる。ただし、
Figure 0005553334
である。特に
Figure 0005553334
となるように、窓関数を選ぶと、荷重積分観測方程式は、
Figure 0005553334
となり、
Figure 0005553334
のように求められる。p(t)の具体例としてHannの窓関数を利用することが考えられる。Hannの窓関数を利用し、
Figure 0005553334
とすると(ここで、
Figure 0005553334
である)、原点対象で
Figure 0005553334
となる。また、
Figure 0005553334
である。これらのグラフが図6に示されている。図6のグラフは、横軸が時間を表し、縦軸が荷重を表す。図6(a)は、窓関数を示し、図6(b)は荷重関数(T=8)を表す。図6(a)では、実線が
Figure 0005553334
を表し、破線が
Figure 0005553334
を表し、一点鎖線が
Figure 0005553334
をそれぞれ表す。図6(b)は、これらに、n=4のcos正弦波荷重関数を乗じたものである。

Claims (6)

  1. 解析の対象である信号中の正弦波のパラメータを推定する方法において、
    前記信号の微分を含む支配方程式を立てる工程と、
    前記微分を含む支配方程式に任意の荷重関数を導入し、有限区間の積分形式に置き換える工程と、
    前記積分形式に変換した支配方程式を解く工程と、
    を含み、
    前記積分形式の支配方程式を解く工程は、
    前記連立方程式群を解くことによって前記信号中の正弦波の少なくとも周波数を含むパラメータを推定する前記工程
    を含むことを特徴とする正弦波パラメータ推定方法。
  2. 解析の対象である信号中の正弦波のパラメータを推定する方法において、
    任意の荷重関数を導入した有限区間の積分形式で、前記信号の微分を含む支配方程式を構成する工程と、
    前記積分形式の支配方程式を解く工程と、
    を含み、
    前記積分形式の支配方程式を解く工程は、
    前記連立方程式群を解くことによって前記信号中の正弦波の少なくとも周波数を含むパラメータを推定する前記工程
    を含むことを特徴とする正弦波パラメータ推定方法。
  3. 請求項1又は2記載の正弦波パラメータ推定方法において、
    前記荷重関数は、前記有限期間の整数分の1の周期の三角関数であることを特徴とする正弦波パラメータ推定方法。
  4. 請求項1又は2記載の正弦波パラメータ推定方法において、
    前記積分形式の支配方程式を解く工程は、
    異なる3個の荷重周波数の荷重関数を導入し、それらに関する連立方程式群を構成する工程と、
    前記連立方程式群を解くことによって前記信号中の正弦波の少なくとも周波数を含むパラメータを推定する前記工程と、
    を含むことを特徴とする正弦波パラメータ推定方法。
  5. 請求項1又は2記載の正弦波パラメータ推定方法において、
    前記積分形式の支配方程式を解く工程は、
    異なる2個の荷重周波数の荷重関数を導入し、それらに関する連立方程式群を構成する工程と、
    前記連立方程式群を解くことによって前記信号中の正弦波の少なくとも周波数を含むパラメータを推定する前記工程と、
    を含むことを特徴とする正弦波パラメータ推定方法。
  6. 請求項1又は2記載の正弦波パラメータ推定方法において、
    前記積分形式の支配方程式を解く工程は、
    3個以上の荷重周波数の荷重関数を導入し、それらに関する連立方程式群を構成する工程と、
    前記連立方程式群を解くことによって前記信号中の正弦波の少なくとも周波数を含むパラメータを推定する前記工程と、
    を含むことを特徴とする正弦波パラメータ推定方法。
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