JP5553275B2 - 金属錯体およびこれを有効成分として含有する抗がん剤 - Google Patents

金属錯体およびこれを有効成分として含有する抗がん剤 Download PDF

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Description

本発明は、金属錯体およびこれを有効成分として含有する抗がん剤に関する。
金属錯体を有効成分として含有する抗がん剤として、「白金製剤(プラチナ製剤)」に分類されるシスプラチンが知られている。シスプラチンは、下記化学式で表されるように、白金錯体としての構造を有する。
このシスプラチンが投与されると、塩素原子が脱離して白金原子ががん細胞に含まれるDNAの構成塩基であるグアニンやアデニンのN−7位に結合する。これによりDNA鎖内には架橋が形成され、DNAの複製が阻害される結果、がん細胞の分裂・増殖が抑制され、がん細胞は死滅に至る。
シスプラチンは、1965年、アメリカのローゼンバーグ博士によって細菌の増殖を抑制する抗菌薬として発見され、その後、抗腫瘍効果が確認されてがん治療に用いられるようになった。日本におけるシスプラチンの適応症は、睾丸腫瘍、膀胱がん、腎盂・尿管腫瘍、前立腺がん、卵巣がん、頭頸部がん、非小細胞肺がん、食道がん、子宮頸がん、神経芽細胞腫、胃がん、小細胞肺がん、骨肉腫、胚細胞腫瘍、悪性リンパ腫など、非常に広い範囲に及んでいる。また、世界におけるプラチナ製剤のマーケットは急速に拡大しており、数年前までは年約20%の割合でマーケットが成長していた。近年でもその割合は鈍化しつつあるものの、プラチナ製剤のマーケットは依然として拡大の一途を辿っている。
このように、シスプラチンは、幅広い腫瘍縮小効果を有するものの、激しい副作用を示すという特徴をも有している。最も深刻な副作用は、強い腎毒性による腎不全などの腎臓機能の障害であり、投与上の大きな問題点とされている。かような腎臓障害は尿量が減少したときに発現しやすいことから、点滴によって水分を摂ったり、利尿剤を使用して尿量を増やしたりすることで、腎毒性を軽減するなどの対策が必要とされている。また、多くの患者に見られる悪心・嘔吐や食欲不振などの消化器症状に関しても、他の抗がん剤と比べてかなり強く発現することが知られている。このような消化器症状に対しては、主に制吐剤を併用することによって対応しているのが現状である。
ところで、上述したようなプラチナ製剤の1つとして、特許文献1には、各種のカチオン性またはアニオン性化合物が開示されている。この特許文献1に記載の化合物は、主として骨がん等の骨関連疾患の治療を指向したものである。
特表2007−521257号公報
特許文献1に記載の化合物についても、一定の抗がん効果は認められているが、その効果はいまだ満足のいくものではなかった。また、特許文献1では開示されている化合物の腎毒性についての評価がなされておらず、シスプラチン等の従来のプラチナ製剤に内在している副作用の問題を解決しうる手段としての可能性は未知数である。
そこで本発明は、シスプラチンなどの従来の抗がん剤と比較して副作用(特に、腎毒性)が低減され、かつ、抗がん活性に優れた化合物を提供することを目的とする。
本発明者は、従来の技術における上述したような問題点に鑑み、鋭意検討を行なった。その結果、白金(Pt)やパラジウム(Pd)といった貴金属を含有するある種の金属錯体が上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の第1の形態によれば、下記化学式1で表される金属錯体またはその塩:
が提供される。
また、本発明の第2の形態によれば、下記化学式2で表される金属錯体またはその塩:
が提供される。なお、上記化学式1および化学式2における符号については、以下で詳細に説明する。
本発明によれば、シスプラチンなどの従来の抗がん剤と比較して副作用(特に、腎毒性)が低減され、かつ、抗がん活性に優れた化合物が提供される。
ヒト培養がん細胞パネルを用いた評価により得られた、実施例1−5で合成したPt(5−MP)(AtC3)Clについてのフィンガープリントを示す図である。 ヒト培養がん細胞パネルを用いた評価により得られた、Pt(5−MP)(AtC3)Clについてのフィンガープリントのうち、「GI50」のグラフを、公知の白金錯体抗がん剤であるシスプラチン、カルボプラチンおよびオキサリプラチンの「GI50」のグラフと並べて示した図である。 実施例の「腎毒性評価」において、Pt(5−MP)(AtC3)(実施例1−5)の腎毒性を評価した結果を示すグラフである。 実施例の「腎毒性評価」において、(Pt(NH・Pt(dach))−IP(実施例2−2)の腎毒性を評価した結果を示すグラフである。 実施例の「腎毒性評価」において、Pt(Pt(dach)−IP(実施例2−3)の腎毒性を評価した結果を示すグラフである。 実施例の「腎毒性評価」において、シスプラチンの腎毒性を評価した結果を示すグラフである。 実施例の「腎毒性評価」において、マウスに対して本発明の錯体を投与し、シスプラチン投与群およびコントロール群と比較するように各サンプル投与群について測定された血中グルコース値の平均値±標準偏差(相対値)を示すグラフである。 実施例の「腎毒性評価」において、マウスに対して本発明の錯体を投与し、シスプラチン投与群およびコントロール群と比較するように各サンプル投与群について測定された血中BUN値の平均値±標準偏差(相対値)を示すグラフである。 実施例の「腎毒性評価」において、マウスに対して本発明の錯体を投与し、シスプラチン投与群およびコントロール群と比較するように各サンプル投与群について測定された血中Crea値の平均値±標準偏差(相対値)を示すグラフである。 実施例の「腎毒性評価」において、マウスに対して本発明の錯体を投与し、シスプラチン投与群およびコントロール群と比較するように各サンプル投与群について測定された血中ヘマトクリット値(Hct)値の平均値±標準偏差(相対値)を示すグラフである。 実施例の「腎毒性評価」において、マウスに対して本発明の錯体を投与し、シスプラチン投与群およびコントロール群と比較するように各サンプル投与群について測定された血中ヘモグロビン(Hb)値の平均値±標準偏差(相対値)を示すグラフである。 実施例の「in vivoにおける抗がん効果の評価(カチオン錯体)」において、Pt(5-MP)(AtC3)Cl2を投与した胆がんマウスの平均腫瘍体積比の変化をコントロール群と比較して示すグラフである。 実施例の「in vivoにおける抗がん効果の評価(カチオン錯体)」において、Pt(5-MP)(AtC3)Cl2を投与した胆がんマウスの平均体重比の変化をコントロール群と比較して示すグラフである。 実施例の「in vivoにおける抗がん効果の評価(カチオン錯体)」において、シスプラチンまたはPd(5-MP)(AtC3)(NO3)2を投与した胆がんマウスの平均腫瘍体積比の変化をコントロール群と比較して示すグラフである。 実施例の「in vivoにおける抗がん効果の評価(カチオン錯体)」において、シスプラチンまたはPd(5-MP)(AtC3)(NO3)2を投与した胆がんマウスの平均体重比の変化をコントロール群と比較して示すグラフである。 実施例の「in vivoにおける抗がん効果の評価(アニオン錯体)」において、シスプラチンまたはPt(Pt(dach)-IP6)2を投与した胆がんマウスの平均腫瘍体積比の変化をコントロール群と比較して示すグラフである。 実施例の「ラット骨転移モデルを用いたin vivo評価」において、シスプラチン 33μmol/kg 1回投与群およびPt(Pt(dach)-IP6)233μmol/kg 1回投与群の平均腫瘍体積比の変化をコントロール群と比較して示すグラフである。 実施例の「ラット骨転移モデルを用いたin vivo評価」において、シスプラチン 8.25μmol/kg 1回投与群(1日目投与)およびPt(Pt(dach)-IP6)2 8.25μmol/kg 2回投与群(1, 8日目投与)の平均腫瘍体積比の変化をコントロール群と比較して示すグラフである。 実施例の「ラット骨転移モデルを用いたin vivo評価」において、シスプラチン 8.25μmol/kg 1回投与群(1日目投与)およびPt(Pt(dach)-IP6)28.25μmol/kg 2回投与群(1, 8日目投与)の左右足比(メジアン値の平均値)の変化をコントロール群と比較して示すグラフである。 実施例の「ラット骨転移モデルを用いたin vivo評価」において、シスプラチン 8.25μmol/kg 1回投与群(1日目投与)およびPt(Pt(dach)-IP6)2 8.25μmol/kg 2回投与群(1, 8日目投与)の体重(平均値)の変化をコントロール群と比較して示すグラフである。
以下、本発明を実施するための具体的な形態について詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は下記の具体的な形態のみに限定されるわけではない。
[第1の形態:カチオン錯体]
本発明の第1の形態は、下記化学式1で表される金属錯体またはその塩:
である。本発明の第1の形態の金属錯体は塩の形態であってもよいが、この場合、錯体の塩は、カチオン錯体と対イオンとしてのアニオンとから形成される。したがって、本発明の第1の形態の金属錯体を「カチオン錯体」と称することがある。また、塩の形態も含めて「金属錯体」と総称することもある。
化学式1において、Mは、PtまたはPdである。本形態の金属錯体(またはその塩)は、貴金属である白金(Pt)またはパラジウム(Pd)を含有することにより、優れた抗がん効果を発揮する。なお、体内においてタンパク質などの生体物質と置換反応を受けにくい方が副作用が少ないという観点からは、Mは好ましくはPtである。
化学式1において、R〜R17は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数3〜30のシクロアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数3〜30のシクロアルケニル基、炭素数2〜30のアルキニル基、炭素数7〜30のアラルキル基、炭素数7〜30のアラルケニル基、炭素数7〜30のアラルキニル基、炭素数6〜30のアリール基、ハロゲン原子、炭素数1〜30のハロアルキル基、炭素数2〜30のハロアルケニル基、炭素数2〜30のハロアルキニル基、炭素数6〜30のハロアリール基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数6〜30のアリールオキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、炭素数1〜30のアルキルアミノ基、炭素数6〜30のアリールアミノ基、シアノ基、またはニトロ基である。
炭素数1〜30のアルキル基の例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、neo−ペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、cyclo−ヘキシル基、1,3−ジメチルブチル基、1−イソプロピルプロピル基、1,2−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、1,4−ジメチルペンチル基、2−メチル−1−イソプロピルプロピル基、1−エチル−3−メチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、3−メチル−1−イソプロピルブチル基、2−メチル−1−イソプロピル基、1−t−ブチル−2−メチルプロピル基、n−ノニル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基が挙げられる。
炭素数3〜30のシクロアルキル基の例としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基が挙げられる。
炭素数2〜30のアルケニル基の例としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチルアリル基、2−ブテニル基が挙げられる。
炭素数3〜30のシクロアルケニル基の例としては、例えば、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、2−シクロペンテン−1−イル基、2−シクロヘキセン−1−イル基、3−シクロヘキセン−1−イル基が挙げられる。
炭素数2〜30のアルキニル基の例としては、例えば、エチニル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基が挙げられる。
炭素数7〜30のアラルキル基の例としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ジフェニルメチル基が挙げられる。
炭素数7〜30のアラルケニル基の例としては、例えば、スチリル基、2−フェニル−1−プロペニル基、3−フェニル−2−ブテニル基、2−ナフチルエテニル基が挙げられる。
炭素数7〜30のアラルキニル基の例としては、例えば、2−フェニルエチニル基、2−ナフチルエチニル基が挙げられる。
炭素数6〜30のアリール基の例としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、ナフチル基、アントラニル基が挙げられる。
ハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素である。
炭素数1〜30のハロアルキル基の例としては、例えば、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリクロロメチル基、ジクロロメチル基、フルオロメチル基、クロロメチル基、ヨードメチル基、ブロモメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタクロロエチル基が挙げられる。
炭素数2〜30のハロアルケニル基の例としては、例えば、2,2−ジフルオロエテニル基、2,2−ジクロロエテニル基、3−クロロ−2−アリル基、3,3−ジクロロ−2−アリル基、2,3−ジブロモ−2−アリルが挙げられる。
炭素数2〜30のハロアルキニル基の例としては、例えば、3−クロロ−2−プロピニル基、1,3−ジクロロ−2−プロピニル基、1,3−ジブロモ−2−プロピニル基が挙げられる。
炭素数6〜30のハロアリール基の例としては、例えば、クロロフェニル基(例えば、4−クロロフェニル基)、ブロモフェニル基、フルオロフェニル基が挙げられる。
炭素数1〜30のアルコキシ基の例としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシが挙げられる。
炭素数6〜30のアリールオキシ基の例としては、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、ビフェニルオキシ基が挙げられる。
炭素数1〜30のアルキルアミノ基の例としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基が挙げられる。
炭素数6〜30のアリールアミノ基の例としては、例えば、フェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、ベンジルアミノ基、インダニルアミノ基、インデニルアミノ基が挙げられる。
本発明の好ましい一実施形態においては、アントラセン環が非置換であり、かつ、フェナントロリン環は5位のみに置換基を有する。換言すれば、R〜R、およびR〜R17は水素原子であり、Rが水素原子以外の基である。この際、フェナントロリン環の5位における置換基(R)は、好ましくは、炭素数1〜30のアルキル基(なかでも好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜3のアルキル基である)、ハロゲン原子(なかでも好ましくは塩素原子である)、炭素数1〜30のアルコキシ基(なかでも好ましくは炭素数1〜6のアルコキシ基であり、より好ましくは炭素数1〜3のアルコキシ基である)、またはニトロ基である。より好ましい実施形態においては、R〜R、およびR〜R17は水素原子であり、Rがメチル基、ニトロ基、塩素原子、またはメトキシ基である。つまり、本形態のカチオン錯体(またはその塩)の好ましい具体例は、下記化学式1a〜1dのいずれかで表される。
なかでも、高い抗がん活性を有するという観点からは、上記化学式1aまたは化学式1bで表される錯体が好ましく、化学式1aで表される錯体が最も好ましい。
なお、上述した化学式1a〜1dで表されるカチオン錯体においては、中心金属Mに対するリガンドの配位の向きによって、立体異性体が存在しうる。上記した化学構造において一部の配位結合を波線(〜〜〜)によって表現しているのはこのためであり、より具体的には、下記の化学式で表される2つの立体異性体の双方を含みうるものである(下記の化学式では、中心金属MがPtである場合を例に挙げて記載している)。
なお、後述する実施例においてもそうであるが、かような立体異性体が存在しうるカチオン錯体を製造する際には、選択的に製造するのでない限り、生成物が上述した2種の立体異性体の当量混合物として得られるのが通常である。この場合、得られた立体異性体の混合物から一方のみを精製する手段としては、例えば、結晶化法,クロマトグラフィー法などが挙げられる。本発明においては、かような精製処理が施されていない混合物の形態であっても、また、精製処理が施された後の一方の異性体のみの形態であっても、いずれも請求項に記載された発明の技術的範囲に包含されるものとする。
本発明の好ましい他の実施形態においては、偶数個の同一の炭素数1〜30のアルキル基が、化学式1におけるフェナントロリン環における対称な位置に結合している。偶数個のアルキル基が結合しうる、フェナントロリン環における対称な位置としては、例えば、アルキル基が2つの場合には、5,6位、2,9位などが挙げられる。また、アルキル基が4つの場合には、3,4,7,8位などが挙げられる。この際、炭素数1〜30のアルキル基は、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜3のアルキル基であり、最も好ましくはメチル基である。つまり、本形態のカチオン錯体(またはその塩)の好ましい具体例は、下記化学式1e〜1gのいずれかで表される。
上述したように、本発明のカチオン錯体は塩の形態であってもよいが、本発明のカチオン錯体が塩の形態である場合における対アニオンの種類について特に制限はない。かような対アニオンとしては、例えば、塩化物イオン、フッ化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンなどのハロゲン化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、酢酸イオン、炭酸イオン、過塩素酸イオンなどが挙げられる。
本発明のカチオン錯体の製造方法について特に制限はなく、後述する実施例の記載と、本願の出願時における技術常識を参酌することにより、製造が可能である。
本発明のカチオン錯体の製造方法の一例としては、下記化学式9で表されるスキームに記載のように、1,10−フェナントロリン誘導体(DI)を塩化白金酸塩や塩化パラジウム酸塩などの貴金属錯体(YMCl;Yはアルカリ金属である)と反応させて白金またはパラジウムの錯体を形成した後、得られた錯体を「AtC3」で表されるアントラセン環を有するジアミン誘導体と反応させて、M(DI)(AtC3)で表される本発明のカチオン錯体を得る方法が例示される(後述する実施例も参照)。
この際、用いる1,10−フェナントロリン誘導体やAtC3の種類を適宜選択することにより、所望の置換基(化学式1におけるR〜R17)を有するカチオン錯体を製造することができる。また、用いる貴金属錯体(YMCl)の有する貴金属原子(PtまたはPd)を選択することにより、得られるカチオン錯体に対して所望の貴金属原子を導入することができる。なお、上記のスキームでは原料としての貴金属錯体はリガンドとして塩素原子を有しているが、かような形態のみには限られず、後段の反応においてAtC3と置換されうるリガンドであれば、特に制限されることなく用いられうる。
なお、得られたカチオン錯体は、従来公知の精製手段によって、適宜精製されうる。これは、後述する他の化合物についても、同様である。
[第2の形態:アニオン錯体]
本発明の第2の形態は、下記化学式2で表される金属錯体またはその塩:
である。本発明の第2の形態の金属錯体は塩の形態であってもよいが、この場合、錯体の塩は、アニオン錯体と対イオンとしてのカチオンとから形成される。したがって、本発明の第2の形態の金属錯体を「アニオン錯体」と称することがある。また、塩の形態も含めて「金属錯体」と総称することもある。なお、本発明のアニオン錯体が塩の形態である場合における対カチオンの種類について特に制限はない。かような対カチオンとしては、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどのアルカリ金属イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオンなどのアルカリ土類金属イオン、第4級アンモニウムイオン、亜鉛などの遷移金属イオン、ランタンなどの希土類金属イオン、水素イオンなどが挙げられる。
化学式2において、Mは、PtまたはPdである。本形態の金属錯体(またはその塩)は、貴金属である白金(Pt)またはパラジウム(Pd)を含有することにより、優れた抗がん効果を発揮する。なお、体内においてタンパク質などの生体物質と置換反応を受けにくい方が副作用が少ないという観点からは、Mは好ましくはPtである。
化学式2において、Rは、水素原子であるか、または、隣接するRと一緒になって下記化学式7で表される構造を形成する。
ここで、「隣接するR」とは、自身(R)が結合する窒素原子(N)が結合する金属原子(M)に結合する他方の窒素原子(N)に結合する「R」を意味する。よって、化学式2にはR基が4つ存在するが、化学式2における左端の2つのR基どうしは、互いに同一であるし、化学式2における右端の2つのR基どうしは、やはり互いに同一である。つまり、隣接する2つのRどうしは、ともに水素原子であってもよいし、そうでなければ互いに一緒になって上述した化学式7で表される構造を形成するのである。
なお、隣接する2つのRが一緒になって上述した化学式7で表される構造を形成する場合、当該構造における立体構造に特に制限はない。本発明においては、シクロヘキサン環に結合した結合手が互いにcisの関係にあってもよいし、transの関係にあってもよい。抗がん活性の観点からは、互いにtransの関係にあることがより好ましく、なかでも1R,2Rの立体配置を有するものであることが特に好ましい。
また、化学式2において、Xは、下記化学式3で表される構造でありうる。
この場合、アニオン錯体は、下記化学式2dで表す構造をとりうる(後述する実施例2−4も参照)。下記化学式2dで表されるアニオン錯体は、本発明の第2の形態における好ましい実施形態の1つである。
なお、化学式2dでは、すべてのRが上述した化学式7で表される構造を形成しているが、本発明のアニオン錯体においては、少なくとも2つの隣接するRが水素原子であってもよいし、すべてのRが水素原子であってもよいことはもちろんである。
化学式2dで表されるアニオン錯体の製造方法について特に制限はなく、後述する実施例(例えば、実施例2−4)の記載と、本願の出願時における技術常識を参酌することにより、製造が可能である。
一方、化学式2において、Xは、下記化学式4で表される構造であってもよい。
上記化学式4で表される構造は、myo−イノシトール6リン酸エステル由来の構造である。ここで、myo−イノシトール6リン酸エステルは、下記の化学式で表される構造を有する。なお、本願では、上記化学式4で表される構造またはこれに対応する構造を「IP」と記載することがある。なお、下記の化学式では、リン酸エステル基が「−OPO」と記載されており、それぞれ図示しない2価の負の電荷を帯びている。
上記化学式4に示すように、化学式4で表される構造では、シクロヘキサン環に4つのOPO基が結合し、残りの2つのOPO基は酸素原子を介して金属原子Mとの結合に用いられている。本形態では、これらの6つの基がmyo−イノシトール6リン酸エステルの1〜6位(上記の位置番号を参照)のいずれに割り当てられていてもよい。ただし、化学式2におけるXが上記化学式4で表される構造を有する場合における好ましい一実施形態は、金属原子Mとの結合に用いられる2つのOPO基が、myo−イノシトール6リン酸エステルの2位および5位に位置するように配置されている形態である。かような実施形態によるアニオン錯体は、下記化学式2aで表す構造をとりうる(後述する実施例2−1も参照)。下記化学式2aで表されるアニオン錯体は、本発明の第2の形態における好ましい実施形態の1つである。なお、下記の化学式では、リン酸エステル基が「−OPO」と記載されており、それぞれ図示しない2価の負の電荷を帯びている。
なお、化学式2aでは、すべてのRが水素原子であるが、本発明のアニオン錯体においては、少なくとも2つの隣接するRが一緒になって上述した化学式7で表される構造を形成していてもよいし、すべてのRが一緒になって上述した化学式7で表される構造を形成していてもよい。かような構成によれば、他の好ましい実施形態として、下記化学式2bや化学式2eで表されるアニオン錯体も提供されうる(それぞれ、後述する実施例2−2および実施例2−5を参照)。なお、下記の化学式では、リン酸エステル基が「−OPO」と記載されており、それぞれ図示しない2価の負の電荷を帯びている。
また、化学式2におけるXが上記化学式4で表される構造を有する場合における好ましい他の実施形態は、金属原子Mとの結合に用いられる2つのOPO基が、myo−イノシトール6リン酸エステルの1位および2位に位置するように配置されている形態である。かような実施形態によるアニオン錯体は、下記化学式2fで表す構造をとりうる(後述する実施例2−6も参照)。下記化学式2fで表されるアニオン錯体は、本発明の第2の形態における好ましい実施形態の1つである。なお、下記の化学式では、リン酸エステル基が「−OPO」と記載されており、それぞれ図示しない2価の負の電荷を帯びている。
化学式2a、2b、2e、2fで表されるアニオン錯体の製造方法について特に制限はなく、後述する実施例(例えば、実施例2−1、2−2、2−5、および2−6)の記載と、本願の出願時における技術常識を参酌することにより、製造が可能である。
本発明により提供されるアニオン錯体の1つの特徴は、金属錯体1分子中に2つ以上の貴金属原子(PtまたはPd)が含まれている(つまり、多核の錯体である)という点にある。ここまで説明した形態のアニオン錯体では、錯体1分子中に2つの貴金属原子が含まれていたが(二核錯体)、本発明の他の実施形態によれば、1分子中に3つの貴金属原子が導入された三核錯体もまた、提供されうる。
かような形態では、上述した化学式2におけるXが、下記化学式5で表される構造である。
化学式5において、Mは、上記と同様の定義である(つまり、PtまたはPdである)。また、化学式5において、Aは、上述した下記化学式6で表される構造である。
本実施形態でも、上述した化学式4と同様に、化学式6においてシクロヘキサン環に結合している6つの基がmyo−イノシトール6リン酸エステルの1〜6位(上記の位置番号を参照)のいずれに割り当てられていてもよい。ただし、化学式2におけるXが上記化学式5で表される構造を有する場合の好ましい実施形態においては、化学式6における2つの結合手が、myo−イノシトール6リン酸エステルの1位および2位に位置するように配置されていることが好ましい。かような実施形態によるアニオン錯体は、下記化学式2cで表す構造をとりうる(後述する実施例2−3も参照)。下記化学式2cで表されるアニオン錯体もまた、本発明の第2の形態における好ましい実施形態の1つである。なお、下記の化学式は、カッコで囲まれた2つの単位がそれぞれ、2つの酸素原子を介して金属原子Mに配位する構造を表現している。
なお、化学式2cでは、すべてのRが上述した化学式7で表される構造を形成しているが、本発明のアニオン錯体においては、少なくとも2つの隣接するRが水素原子であってもよいし、すべてのRが水素原子であってもよいことはもちろんである。
化学式2cで表されるアニオン錯体の製造方法について特に制限はなく、後述する実施例(例えば、実施例2−3)の記載と、本願の出願時における技術常識を参酌することにより、製造が可能である。
ただし、例えば化学式2cで表される三核錯体の製造方法を本発明者が検討したところ、上述した二核錯体とは異なるスキームによって、当該三核錯体が製造されうることを見出した。つまり、本願によれば、本発明の第2の形態における三核錯体の新規な製造方法もまた、提供されうる。
この製造方法は、概説すれば、下記化学式8で表される金属錯体と:
ハロゲン化白金酸塩またはハロゲン化パラジウム酸塩とを反応させるものである。これにより、上述した化学式2で表される三核アニオン錯体が製造される。
化学式8において、MおよびRの定義は上述したとおりであるため、ここでは詳細な説明を省略する。
ハロゲン化白金酸塩(YPtZ(Yはアルカリ金属であり、Zはハロゲン原子である))またはハロゲン化パラジウム酸塩(YPdZ(Yはアルカリ金属であり、Zはハロゲン原子である))については、得られる三核錯体に導入を希望する貴金属原子の種類に応じて、適宜選択されうる。好ましくは、上述した化学式8で表される金属錯体の有する貴金属原子と同一の貴金属原子を有する塩を用いることが好ましい。また、アルカリ金属について特に制限はなく、カリウム、ナトリウム、リチウム、セシウムなどが用いられ、好ましくはカリウムまたはナトリウムが用いられる。また、ハロゲン原子にも特に制限はなく、フッ素(Pdのみ)、塩素、臭素、ヨウ素が用いられうるが、好ましくは塩素が用いられる。なかでも、白金(Pt)の導入を希望するのであれば、塩化白金酸カリウム(KPtCl)が好ましく用いられ、パラジウム(Pd)の導入を希望するのであれば、塩化パラジウム酸ナトリウム(NaPdCl)が好ましく用いられる。
上述した反応式(および後述する実施例2−3)の記載からも明らかなように、上述した化学式8で表される金属錯体は、ハロゲン化白金酸塩またはハロゲン化パラジウム酸塩に対して約2倍モル用いられることが必要である。ただし、具体的にどの程度の原料を用いるかについては、仕込み順序などを考慮して、適宜決定されうる。
この反応は、ハロゲン捕捉剤の存在下で行なわれることが好ましい。上記の反応ではハロゲン化物イオンが副生し、これが水素イオンと結合するとハロゲン化水素が生成する。上記ハロゲン捕捉剤は、副生したハロゲン化物イオンを捕捉して、沈殿として反応系外へ追いやり,溶液中での置換反応を速やかに進行させる目的で添加されるものである。かようなハロゲン捕捉剤としては、例えば、硝酸銀、硫酸銀、酸化銀などの銀塩が、あるいは、加熱してハロゲン化水素として大気中に追い出すなどの手法が用いられうる。かようなハロゲン捕捉剤の使用量について特に制限はないが、好ましくは、副生するハロゲン化物イオンの全量を捕捉しうる量のハロゲン捕捉剤が用いられる。
反応条件についても特に制限はなく、適宜設定されうる。一例を挙げると、反応温度は、通常は室温〜80℃であり、好ましくは室温〜40℃である。また、反応時間は、通常は2時間〜1週間であり、好ましくは数時間〜数日である。
本発明に係る金属錯体は、後述するように高い抗がん活性を有することから、抗がん剤として用いられうる。
すなわち、本発明によれば、上述した金属錯体を有効成分として含有する抗がん剤が提供されるのである。
本発明の抗がん剤が適用されるがんの種類は、特に限定されず、例えば、白血病、悪性黒色腫、悪性リンパ腫、消化器癌、肺癌、食道癌、胃癌、大腸癌、直腸癌、結腸癌、尿管腫瘍、胆嚢癌、胆管癌、胆道癌、乳癌、肝臓癌、膵臓癌、睾丸腫瘍、上顎癌、舌癌、口唇癌、口腔癌、咽頭癌、喉頭癌、卵巣癌、子宮癌、前立腺癌、甲状腺癌、脳腫瘍、カポジ肉腫、血管腫、真性多血症、神経芽腫、網膜芽腫、骨髄腫、膀胱腫、肉腫、骨肉腫、筋肉腫、皮膚癌、基底細胞癌、皮膚付属器癌、皮膚転移癌、皮膚黒色腫などが挙げられる。また、悪性腫瘍のみならず、良性腫瘍への適用も可能である。また、本発明の抗がん剤は、癌転移を抑制するために使用されることができ、特に、術後の癌転移抑制剤としても有用である。
本発明の抗がん剤を使用するにあたっては、種々の形態でヒトまたは動物に(特に好ましくはヒトに)、本発明の抗がん剤を投与することができる。本発明の抗がん剤の投与形態としては、可能であれば経口投与でもよいし、静脈内、筋肉内、皮下または皮内等への注射、直腸内投与、経粘膜投与などの非経口投与でもよい。経口投与に適する製剤形態としては、例えば、錠剤、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤などが挙げられる。また、非経口投与に適する医薬組成物としては、例えば、注射剤、点滴剤、点鼻剤、噴霧剤、吸入剤、坐剤等の外用固形剤、または、軟膏、クリーム、粉状塗布剤、液状塗布剤、貼付剤等の経皮吸収剤などが挙げられる。さらに、本発明の抗がん剤の製剤形態としては、埋め込み用ペレットや公知の技術により調製される持続性製剤が挙げられる。
好ましい投与形態や製剤形態等は、患者の年齢、性別、体質、症状、処置時期等に応じて、医師によって適宜選択される。
本発明の抗がん剤が、錠剤、丸剤、散剤、粉剤、顆粒剤などの固形製剤である場合、これらの固形製剤は、本発明に係る金属錯体を、常法に従って適当な添加剤、例えば、乳糖、ショ糖、D−マンニトール、トウモロコシデンプン、合成もしくは天然ガム、結晶セルロース等の賦形剤、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アラビアゴム、ゼラチン、ポリビニルピロリドン等の結合剤、カルボシキメチルセルロースカルシウム、カルボシキメチルセルロースナトリウム、デンプン、コーンスターチ、アルギン酸ナトリウム等の崩壊剤、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム等の滑沢剤、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸ナトリウム等の充填剤または希釈剤等と適宜混合することにより、製造されうる。錠剤等には、必要に応じて、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、白糖、ポリエチレングリコール、酸化チタン等のコーティング剤を用いて、糖衣、ゼラチン、腸溶被覆、フイルムコーティングなどが施されてもよい。
本発明の抗がん剤が、注射剤、点眼剤、点鼻剤、吸入剤、噴霧剤、ローション剤、シロップ剤、液剤、懸濁剤、乳剤等の液状製剤である場合、これらの液状製剤は、本発明に係る金属錯体に、精製水、リン酸緩衝液等の適当な緩衝液、生理的食塩水、リンゲル溶液、ロック溶液等の生理的塩類溶液、カカオバター、ゴマ油、オリーブ油等の植物油、鉱油、高級アルコール、高級脂肪酸、エタノール等の有機溶媒等に溶解して、必要に応じてコレステロール等の乳化剤、アラビアゴム等の懸濁剤、分散助剤、浸潤剤、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油系、ポリエチレングリコール系等の界面活性剤、リン酸ナトリウム等の溶解補助剤、糖、糖アルコール、アルブミン等の安定化剤、パラベン等の保存剤、塩化ナトリウム、ブドウ糖、グリセリン等の等張化剤、緩衝剤、無痛化剤、吸着防止剤、保湿剤、酸化防止剤、着色剤、甘味料、フレーバー、芳香物質等を適宜添加することにより、滅菌された水溶液、非水溶液、懸濁液、リポソームまたはエマルジョン等として調製されうる。この際、注射剤は、生理学的なpHを有することが好ましく、6〜8の範囲内のpHを有することが特に好ましい。
本発明の抗がん剤が、ローション剤、クリーム剤、軟膏等の半固形製剤の場合、これらの半固形製剤は、本発明に係る金属錯体を脂肪、脂肪油、ラノリン、ワセリン、パラフィン、蝋、硬膏剤、樹脂、プラスチック、グリコール類、高級アルコール、グリセリン、水、乳化剤、懸濁化剤等と適宜混和することにより、製造されうる。
本発明の抗がん剤における、本発明に係る金属錯体の含有量は、投与形態、重篤度や所望の投与量などに応じて変動しうるが、一般的には、本発明の抗がん剤の全質量に対して、0.001〜80質量%、好ましくは0.1〜50質量%である。
本発明の抗がん剤の投与量は、例えば患者の年齢、性別、体重、症状、および投与経路などの条件に応じて、医師により適宜決定されうる。一般的には、成人一日あたりの有効成分の量として1μg/kgから1,000mg/kg程度の範囲であり、好ましくは10μg/kgから10mg/kg程度の範囲である。かような投与量の抗がん剤は、一日一回で投与されてもよいし、一日数回(例えば、2〜4回程度)に分けて投与されてもよい。
本発明の抗がん剤を使用するにあたっては、既知の化学療法、外科的治療法、放射線療法、温熱療法や免疫療法などと併用されてもよい。
本発明の抗がん剤は、後述する実施例において示されるように、極めて高い抗がん性を示す。また、本発明の抗がん剤は、重篤な副作用(腎毒性)が問題となっている従来のプラチナ製剤と比較して、非常に顕著に副作用が低減されている。さらに、本発明の抗がん剤の作用様式も、既存の抗がん剤とは異なるものであることが示唆されている。したがって、本発明の抗がん剤は、既存のプラチナ製剤に代替しうる可能性を秘めたものであり、非常に有望な新規薬剤の候補である。
また、本発明の金属錯体は、後述する実施例において示されるように、プロテアソームの阻害作用が認められた。プロテアソームは,ポリユビキチン化された細胞内タンパク質を選択的に分解する酵素であり、細胞周期やアポトーシスを制御するタンパク質の分解において中心的な役割を果たしている。このため、本発明の錯体が抗がん性を発揮するメカニズムの少なくとも一部には、このプロテアソーム阻害作用が関与しているものと考えられる。また、本発明の錯体はこれ以外にも、テロメラーゼ、ファルネシルトランスフェラーゼ、ヒストンデアセチラーゼ、プロテインキナーゼなどの各種のがん関連酵素の1つまたは2つ以上を阻害するものがほとんどである。このことから、本発明の錯体の抗がん性は、上述したプロテアソームの阻害作用のみならず、他の酵素に対する阻害作用とも相俟って、総合的な作用として発揮されているものと考えられる。なお、上記知見に基づき、本願では、上述した本発明の金属錯体を有効成分として含有する、プロテアソーム阻害剤、テロメラーゼ阻害剤、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、またはプロテインキナーゼ阻害剤もまた、提供されうる。
さらに、本発明のアニオン錯体のうち、IP構造を有するものに特有の特徴として、当該アニオン錯体は従来のプラチナ製剤と比較して、ヒドロキシアパタイト(HAP;Ca10(PO(OH))に対する吸着平衡定数aが大きいという特徴がある。したがって、本発明のアニオン錯体のうちIP構造を有するものは、それ単独で、またはHAPと複合化されて、骨がん等の骨関連疾患に罹患した細胞への標的化が可能な薬物送達システム(DDS)製剤として用いられうる。かような知見に基づき、本発明によれば、HAPと複合化された、IP構造を有する本発明のアニオン錯体もまた、提供されうる。HAPと複合化されたアニオン錯体は、上記と同様の用途に用いられうる。とりわけ、骨がん等の骨関連疾患の治療剤として有用であるものと期待される。なお、かような複合体の製造方法については特に制限はないが、例えば、上記所定のアニオン錯体を適当な緩衝液(例えば、HEPES緩衝液)中でHAPとともにインキュベートすることで、製造が可能である。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲が下記の実施例に記載の形態のみに制限されるわけではない。
[カチオン錯体(M(DI)(AtC3))の合成]
下記化学式9に示すスキームにより、本発明のカチオン錯体を合成した。
上記化学式9に記載の化合物の構造において、Rはフェナントロリン骨格への置換基を表し、Aはアルカリ金属を表し、MはPt(II)またはPd(II)を表す。なお、下記の実施例において合成された目的生成物のうち、フェナントロリン環に非対称に置換基が導入されたもの(すなわち、フェナントロリン環の5位のみに置換基が導入された生成物)においては、下記化学式10で表されるような2種の生成物の等量混合物として得られている。
カチオン錯体の合成において用いた試薬は、それぞれ以下の経路により入手したものである。
PtCl、NaPdCl:田中貴金属工業株式会社より購入
5,6−ジメチルフェナントロリン(5,6−DMP):Fluka社より購入
2,9−ジメチルフェナントロリン(2,9−DMP)、3,4,7,8−テトラメチルフェナントロリン(3,4,7,8−TMP):SIGMA社より購入
5−ニトロフェナントロリン(5−NP)、5−メチルフェナントロリン(5−MP)、5−クロロフェナントロリン(5−ClP):東京化成工業株式会社より購入
5−メトキシフェナントロリン(5−OMP):文献(Y. Shen, B. P. Sullivan, Inorg. Chem., 34, 6235-6(1995))の記載に従って合成
ジメチルスルホキシド(DMSO):ナカライテスク株式会社より購入
アセトン:和光純薬工業株式会社より購入
[合成例1−1:Pt(5,6−DMP)Clの合成]
5,6−DMP 0.708g(3.4mmol)をDMSO 1mLに溶かし、KPtCl1.38g(3.3mmol)をHO 24mLに懸濁した。これらを混合した後、80℃で3時間加熱撹拌し、その後常温で2時間撹拌した。生成した黄色の粉末を濾取し、HOで洗浄後、乾燥した。
[合成例1−2:Pd(5,6−DMP)Clの合成]
5,6−DMP 0.708g(3.4mmol)をDMSO 1mLに溶かし、NaPdCl0.745g(3.3mmol)をHO 24 mLに懸濁した。これを80℃で3時間加熱撹拌し、その後常温で2時間撹拌した。生成した黄色の粉末を濾取し、HOで洗浄後、乾燥した。
[合成例1−3:AtC3・2HClの合成]
特表2007−521257号公報(段落「0079」〜「0081」)に記載の手法により、AtC3・2HClを合成した。
[実施例1−1:Pt(5,6−DMP)(AtC3)Clの合成]
上述した合成例1−1と同様の手法により合成したPt(5,6−DMP)Cl0.474g(1mmol)をHO 10mLに懸濁した。次いでこの懸濁液に、上述した合成例1−3の手法により合成したAtC3・2HCl 0.42g(1.3mmol)およびNaCO0.16g(1.5mmol)をHO 10mLとエタノール 5mLとの混合溶媒に溶かした溶液を添加した。その後、得られた反応液を80℃で3時間加熱撹拌したところ、黄色溶液が得られた。これをただちに熱時濾過した後、濾液の量が1〜2mLになるまで減圧濃縮した。濃縮した溶液にアセトンを加えて冷蔵庫内に一晩放置し、黄色の粉末を得た。この粉末を濾取し、アセトンで洗浄後、乾燥して、目的生成物を得た(収量 0.22g、収率 26%)。
元素分析 C3232PtCl・6H
実測値:C 45.5%、H 4.83%、N 6.60%
計算値:C 45.4%、H 5.20%、N 6.62%
[実施例1−2:Pd(5,6−DMP)(AtC3)Clの合成]
上述した合成例1−2と同様の手法により合成したPd(5,6−DMP)Cl0.385g(1mmol)をHO 10mLに懸濁した。次いでこの懸濁液に、AtC3・2HCl 0.42g(1.3mmol)およびNaCO0.16g(1.5mmol)をHO 10mLとエタノール 5mLとの混合溶媒に溶かした溶液を添加した。その後、得られた反応液を80℃で3時間加熱撹拌したところ、黄色溶液が得られた。これをただちに熱時濾過した後、濾液の量が1〜2mLになるまで減圧濃縮した。濃縮した溶液にアセトンを加えて冷蔵庫内に一晩放置し、黄色の粉末を得た。この粉末を濾取し、アセトンで洗浄後、乾燥して、目的生成物を得た(収量 0.53g、収率 47.5%)。
元素分析 C3232PdCl・3HO・7NaCl
実測値:C 34.4%、H 3.54%、N 4.88%
計算値:C 34.5%、H 3.41%、N 5.03%
[実施例1−3:Pt(2,9−DMP)(AtC3)Clの合成]
上述した合成例1−1と同様の手法により合成したPt(2,9−DMP)Cl0.474g(1mmol)をHO 10mLに懸濁した。次いでこの懸濁液に、AtC3・2HCl 0.42g(1.3mmol)およびNaCO0.16g(1.5mmol)をHO 10mLとエタノール 5mLとの混合溶媒に溶かした溶液を添加した。その後、得られた反応液を80℃で2時間加熱撹拌したところ、黄色溶液が得られた。これをただちに熱時濾過した後、濾液の量が1〜2mLになるまで減圧濃縮した。濃縮した溶液にアセトンを加えて冷蔵庫内に一晩放置し、黄色の粉末を得た。この粉末を濾取し、アセトンで洗浄後、乾燥して、目的生成物を得た(収量 0.30g、収率 38%)。
元素分析 C3232PtCl・1EtOH
実測値:C 51.5%、H 5.37%、N 6.87%
計算値:C 52.0%、H 4.85%、N 7.14%
[実施例1−4:Pd(2,9−DMP)(AtC3)Clの合成]
上述した合成例1−2と同様の手法により合成したPd(2,9−DMP)Cl0.385g(1mmol)をHO 10mLに懸濁した。次いでこの懸濁液に、AtC3・2HCl 0.42g(1.3mmol)およびNaCO0.16g(1.5mmol)をHO 10mLとエタノール 5mLとの混合溶媒に溶かした溶液を添加した。その後、得られた反応液を80℃で4時間加熱撹拌し、40℃で一晩撹拌したところ、黄色溶液が得られた。これをただちに熱時濾過した後、濾液の量が1〜2mLになるまで減圧濃縮した。濃縮した溶液にアセトンを加えて冷蔵庫内に一晩放置し、黄色の粉末を得た。この粉末を濾取し、アセトンで洗浄後、乾燥して、目的生成物を得た(収量 0.21g、収率 17%)。
元素分析 C3232PdCl・4.5HO・0.5CO・8NaCl
実測値:C 33.1%、H 3.21%、N 4.08%
計算値:C 32.8%、H 3.34%、N 4.56%
[実施例1−5:Pt(5−MP)(AtC3)Clの合成]
上述した合成例1−1と同様の手法により合成したPt(5−MP)Cl 0.460g(1mmol)をHO 10mLに懸濁した。次いでこの懸濁液に、AtC3・2HCl 0.42g(1.3mmol)およびNaCO 0.16g(1.5mmol)をHO 10mLとエタノール 5mLとの混合溶媒に溶かした溶液を添加した。その後、得られた反応液を80℃で3時間加熱撹拌したところ、黄色溶液が得られた。これをただちに熱時濾過した後、濾液の量が1〜2mLになるまで減圧濃縮した。濃縮した溶液にアセトンを加えて冷蔵庫内に一晩放置し、黒色の粉末を得た。この粉末を濾取し、アセトンで洗浄後、乾燥して、目的生成物を得た(収量 0.45g、収率 53%)。
元素分析 C3130PtCl・5HO・0.5NaCl
実測値:C 44.1%、H 4.30%、N 6.26%
計算値:C 44.1%、H 4.74%、N 6.64%
[実施例1−6:Pt(5−MP)(AtC3)(NOの合成]
上述した実施例1−5の手法により合成したPt(5−MP)(AtC3)Clを水に溶かし(約1M)、イオン交換樹脂IRA400J(NO 形)に通した。濾液を減圧濃縮した溶液にアセトンを加えて冷蔵庫内に一晩放置し、粉末を得た。この粉末を濾取し、アセトンで洗浄後、乾燥して、目的生成物を得た。
元素分析 C3130Pt・0.5H
実測値:C 47.2%、H 3.86%、N 10.3%
計算値:C 47.3%、H 3.94%、N 10.7%
[実施例1−7−1:Pd(5−MP)(AtC3)Clの合成]
上述した合成例1−2と同様の手法により合成したPd(5−MP)Cl 0.371g(1mmol)をHO 10mLに懸濁した。次いでこの懸濁液に、AtC3・2HCl 0.42g(1.3mmol)およびNaCO 0.16g(1.5mmol)をHO 10mLとエタノール 5mLとの混合溶媒に溶かした溶液を添加した。その後、得られた反応液を80℃で3時間加熱撹拌したところ、黄色溶液が得られた。これをただちに熱時濾過した後、濾液の量が1〜2mLになるまで減圧濃縮した。濃縮した溶液にアセトンを加えて冷蔵庫内に一晩放置し、黒色の粉末を得た。この粉末を濾取し、アセトンで洗浄後、乾燥して、目的生成物を得た(収量 0.37g、収率 39%)。
元素分析 C3130PdCl・1HO・5NaCl
実測値:C 39.2%、H 3.36%、N 5.73%
計算値:C 39.3%、H 3.38%、N 5.92%
[実施例1−7−2:Pd(5−MP)(AtC3)(NOの合成]
上述した実施例1−7−1と同様の手法により合成したPd(5−MP)(AtC3)Clを原料として用い、上述した実施例1−6と同様の手法により、目的生成物を得た。
元素分析 C3130Pd・2H
実測値:C 51.68%、H 4.38%、N 11.3%
計算値:C 51.35%、H 4.69%、N 11.62%
[実施例1−8:Pt(5−NP)(AtC3)Clの合成]
上述した合成例1−1と同様の手法により合成したPt(5−NP)Cl 0.484g(1mmol)をHO 10mLに懸濁した。次いでこの懸濁液に、AtC3・2HCl 0.42g(1.3mmol)およびNaCO 0.16g(1.5mmol)をHO 10mLとエタノール 5mLとの混合溶媒に溶かした溶液を添加した。その後、得られた反応液を80℃で3時間加熱撹拌したところ、黒色溶液が得られた。これをただちに熱時濾過した後、濾液の量が1〜2mLになるまで減圧濃縮した。濃縮した溶液にアセトンを加えて冷蔵庫内に一晩放置し、黒色の粉末を得た。この粉末を濾取し、アセトンで洗浄後、乾燥して、目的生成物を得た(収量 0.17g、収率 20%)。
元素分析 C3027PtCl・6H
実測値:C 41.7%、H 4.38%、N 7.6%
計算値:C 41.7%、H 4.52 %、N 8.11%
[実施例1−9:Pt(5−NP)(AtC3)(NOの合成]
上述した実施例1−8と同様の手法により合成したPt(5−NP)(AtC3)Clを原料として用い、上述した実施例1−6と同様の手法により、目的生成物を得た。
元素分析 C3027PtCl・3C
実測値:C 45.8%、H 3.93%、N 9.07%
計算値:C 44.9%、H 4.31%、N 9.40%
[実施例1−10:Pd(5−NP)(AtC3)Clの合成]
上述した合成例1−2と同様の手法により合成したPd(5−NP)Cl 0.402g(1mmol)をHO 10mLに懸濁した。次いでこの懸濁液に、AtC3・2HCl 0.42g(1.3mmol)およびNaCO 0.16g(1.5mmol)をHO 10mLとエタノール 5mLとの混合溶媒に溶かした溶液を添加した。その後、得られた反応液を80℃で3時間加熱撹拌したところ、黒色溶液が得られた。これをただちに熱時濾過した後、濾液の量が1〜2mLになるまで減圧濃縮した。濃縮した溶液にアセトンを加えて冷蔵庫内に一晩放置し、黒色の粉末を得た。この粉末を濾取し、アセトンで洗浄後、乾燥して、目的生成物を得た(収量 0.27g、収率 31%)。
元素分析 C3027PdCl・1HO・3.5C
実測値:C 54.2%、H 5.19%、N 7.41%
計算値:C 54.7%、H 5.63%、N 7.89%
[実施例1−11:Pt(3,4,7,8−TMP)(AtC3)Clの合成]
上述した合成例1−1と同様の手法により合成したPt(3,4,7,8−TMP)Cl 0.31g(0.62mmol)をHO 10mLに懸濁した。次いでこの懸濁液に、AtC3・2HCl 0.26g(0.80mmol)およびNaCO 0.092g(0.86mmol)をHO 10mLとエタノール 5mLとの混合溶媒に溶かした溶液を添加した。その後、得られた反応液を80℃で3時間加熱撹拌したところ、黄色溶液が得られた。これをただちに熱時濾過した後、濾液の量が1〜2mLになるまで減圧濃縮した。濃縮した溶液にアセトンを加えて冷蔵庫内に一晩放置し、黒色の粉末を得た。この粉末を濾取し、アセトンで洗浄後、乾燥して、目的生成物を得た(収量 0.16g、収率 21%)。
元素分析 C3436PtCl・7HO・2NaCl
実測値:C 40.4%、H 4.60%、N 5.67%
計算値:C 40.4%、H 4.96%、N 5.55%
[実施例1−12:Pt(3,4,7,8−TMP)(AtC3)(NOの合成]
上述した実施例1−11と同様の手法により合成したPt(3,4,7,8−TMP)(AtC3)Clを原料として用い、上述した実施例1−6と同様の手法により、目的生成物を得た。
元素分析 C3436Pt・0.5C
実測値:C 49.3%、H 5.04%、N 9.41%
計算値:C 49.7%、H 4.67%、N 9.80%
[実施例1−13:Pd(3,4,7,8−TMP)(AtC3)Clの合成]
上述した合成例1−2と同様の手法により合成したPd(3,4,7,8−TMP)Cl 0.39g(0.94mmol)をHO 10mLに懸濁した。次いでこの懸濁液に、AtC3・2HCl 0.39g(1.2mmol)およびNaCO 0.14g(1.3mmol)をHO 10mLとエタノール 5mLとの混合溶媒に溶かした溶液を添加した。その後、得られた反応液を80℃で3時間加熱撹拌したところ、黒色溶液が得られた。これをただちに熱時濾過した後、濾液の量が1〜2mLになるまで減圧濃縮した。濃縮した溶液にアセトンを加えて冷蔵庫内に一晩放置し、黄色の粉末を得た。この粉末を濾取し、アセトンで洗浄後、乾燥して、目的生成物を得た(収量 0.53g、収率 62%)。
元素分析 C3436PdCl・7HO・2NaCl
実測値:C 44.0%、H 4.95%、N 6.00%
計算値:C 44.3%、H 5.43%、N 6.08%
[実施例1−14:Pt(5−ClP)(AtC3)Clの合成]
上述した合成例1−1と同様の手法により合成したPt(5−ClP)Cl0.33g(0.7mmol)をHO 10mLに懸濁した。次いでこの懸濁液に、AtC3・2HCl 0.32g(1.0mmol)およびNaCO0.14g(1.3mmol)をHO 10mLに溶かした溶液を添加した。その後、得られた反応液を80℃で3時間加熱撹拌したところ、黄色溶液が得られた。これをただちに熱時濾過した後、濾液の量が1〜2mLになるまで減圧濃縮した。濃縮した溶液にアセトンを加えて冷蔵庫内に一晩放置し、黒色の粉末を得た。
[実施例1−15:Pt(5−ClP)(AtC3)(NOの合成]
上述した実施例1−14と同様の手法により合成したPt(5−ClP)(AtC3)Clを原料として用い、上述した実施例1−6と同様の手法により、目的生成物を得た。
元素分析 C3027PtCl・2H
実測値:C 43.3%、H 3.26%、N 9.61%
計算値:C 43.2%、H 3.72%、N 10.1%
[実施例1−16:Pd(5−ClP)(AtC3)Clの合成]
上述した合成例1−2と同様の手法により合成したPd(5−ClP)Cl0.39g(1.0mmol)をHO 10mLに懸濁した。次いでこの懸濁液に、AtC3・2HCl 0.42g(1.3mmol)およびNaCO0.16g(1.5mmol)をHO 10mLに溶かした溶液を添加した。その後、得られた反応液を80℃で3時間加熱撹拌したところ、黄色溶液が得られた。これをただちに熱時濾過した後、濾液の量が1〜2mLになるまで減圧濃縮した。濃縮した溶液にアセトンを加えて冷蔵庫内に一晩放置し、黄色の粉末を得た。この粉末を濾取し、アセトンで洗浄後、乾燥して、目的生成物を得た(収量 0.76g、収率 89%)。
元素分析 C3027PdCl・3HO・3NaCl
実測値:C 43.1%、H 3.74%、N 5.96%
計算値:C 42.4%、H 3.88%、N 6.59%
[実施例1−17:Pd(5−ClP)(AtC3)(NOの合成]
上述した実施例1−14と同様の手法により合成したPd(5−ClP)(AtC3)Clを原料として用い、上述した実施例1−6と同様の手法により、目的生成物を得た(収量 0.76g、収率 89%)。
元素分析 C3027Pd・1.5H
実測値:C 48.91%、H 4.23%、N 10.93%
計算値:C 48.93%、H 4.78%、N 11.42%
[実施例1−18:Pt(5−OMP)(AtC3)Clの合成]
上述した合成例1−1と同様の手法により合成したPt(5−OMP)Cl0.476g(1mmol)をHO 20mLに懸濁した。次いでこの懸濁液に、AtC3・2HCl 0.42g(1.3mmol)およびNaCO0.15g(1.5mmol)を添加した。その後、得られた反応液を80℃で3時間加熱撹拌したところ、茶色溶液が得られた。これをただちに熱時濾過した後、濾液の量が1〜2mLになるまで減圧濃縮した。濃縮した溶液にエタノールを加えて黄土色の沈殿を形成させた。沈殿を濾取し,エタノールおよびエーテルで洗浄し、真空デシケータで乾燥させた。これをn−ブタノール/水に分配させ、n−ブタノール層をエバポレーターにより除去した後、残渣をヘキサン/エーテル(9/1)で再結晶して、目的生成物を得た(収量 0.26g、収率 34%)
元素分析 C3132PtCl
実測値:C 48.1%、H 3.95%、N 7.09%
計算値:C 48.1%、H 4.16%、N 7.23%
[アニオン錯体の合成]
アニオン錯体の合成において用いた試薬は、それぞれ以下の経路により入手したものである。
PtCl:田中貴金属工業株式会社より購入
myo−イノシトール−1,2,3,4,5,6−六リン酸エステル 12ナトリウム塩(IP・12Na):SIGMA社より購入
1R,2R−1,2−シクロヘキサンジアミン(dach):東京化成工業株式会社より購入
N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、AgNO:和光純薬工業株式会社より購入
28質量%アンモニア水:ナカライテスク株式会社より購入
[合成例2−1:cis−Pt(NHの合成]
特表2007−521257号公報(段落「0050」)に記載の手法により、cis−Pt(NHを合成した。
[合成例2−2:cis−Pt(NH−IPの合成]
特表2007−521257号公報(段落「0095」〜「0098」)に記載の手法により、cis−Pt(NH−IPを合成した。
[合成例2−3:cis−Pt(dach)Iの合成]
特表2007−521257号公報(段落「0057」〜「0058」)に記載の手法により、cis−Pt(dach)Iを合成した。
[合成例2−4:cis−Pt(dach)−IPの合成]
特表2007−521257号公報(段落「0098」〜「0103」)に記載の手法により、cis−Pt(dach)−IPを合成した。
[合成例2−5:cis−Pt(dach)−PPの合成]
下記化学式11に示すスキームにより、cis−Pt(dach)−PPを合成した。
AgSO 0.315g(0.98mmol)をHO 40mLに懸濁した。これに、上述した合成例2−3の手法により合成したcis−Pt(dach)I0.57g(1.0mmol)を溶かした10mLのジメチルアセトアミド(DMA)溶液を加えて、遮光して4時間撹拌した。濾過してAgIを取り除いた溶液に、Ba(OH)・8HO 0.315g(0.98mmol)を加え、30分間撹拌した。濾過してBaSOを除いた溶液にピロリン酸(PP)(1.0mmol)を加え、4時間撹拌した。濾液をエバポレーターで濃縮して、暗褐色粉末を得た。析出した粉末を、HOおよびアセトンで再沈殿させて、目的生成物を得た(収量 0.37g、収率 77%)。
元素分析 C16Pt・H
計算値:C 14.31%、H 3.61%、N 5.58%
実測値:C 14.79%、H 3.60%、N 5.57%
蛍光X線分析
計算値:P 2.00、Pt 1.00
実測値:P 2.00、Pt 0.990
[実施例2−1:(Pt(NH−IPの合成]
下記化学式12に示すスキームにより、本発明の二核アニオン錯体である(Pt(NH−IPを合成した。
AgNO(0.34g、2.0mmol)をHO 40mLに溶かし、これに上述した合成例2−1の手法により合成したcis−Pt(NH(0.48g、1.0mmol)を溶かした5.0mLのジメチルアセトアミド溶液を加え、遮光して一晩撹拌した。溶液を濾過してAgIを除去し、これに上述した合成例2−2の手法により合成したcis−Pt(NH−IP(1.2g、1.0mmol)を含む水溶液40mLを加え、一晩撹拌した。濾液をエバポレーターで減圧濃縮して、黄白色粉末を得た。析出粉末をHOおよびメタノールで再沈殿させて、目的生成物を得た(収量 1.16g、収率 77%)。
元素分析 C4234PtNa((Pt(NH−IP・8Na・10H0・1MeOH)
実測値:C 5.60%、H 2.70%、N 3.70%
計算値:C 5.59%、H 2.78%、N 3.58%
蛍光X線分析
実測値:P 6.00、Na 8.54、Pt 1.73
計算値:P 6.00、Na 8.00、Pt 2.00
[実施例2−2:(Pt(NH・Pt(dach))−IPの合成]
下記化学式13に示すスキームにより、本発明の二核アニオン錯体である(Pt(NH・Pt(dach))−IPを合成した。
AgNO(0.34g、2.0mmol)をHO 40mLに溶かし、これに上述した合成例2−3の手法により合成したcis−Pt(dach)I(0.56g、1.0mmol)を溶かした5.0mLのジメチルアセトアミド溶液を加え、遮光して一晩撹拌した。溶液を濾過してAgIを除去し、これに上述した合成例2−2の手法により合成したcis−Pt(NH−IP(1.2g、1.0mmol)を含む水溶液40mLを加え、一晩撹拌した。濾液をエバポレーターで濃縮し、黄色粉末を得た。析出粉末をHOおよびメタノールで再沈殿させて、目的生成物を得た(収量 1.22g、収率 83%)。
元素分析 C144634PtNa((Pt(NH・Pt(dach))IP・8Na・10H0)
実測値:C 9.42%、H 2.35%、N 3.12%
計算値:C 9.29%、H 2.97%、N 3.61%
蛍光X線分析
実測値:P 6.00、Na 8.54、Pt 1.73
計算値:P 6.00、Na 8.00、Pt 2.00
[実施例2−3:Pt(Pt(dach)−IPの合成]
下記化学式14に示すスキームにより、本発明の三核アニオン錯体であるPt(Pt(dach)−IPを合成した。
AgNO(0.10g、0.6mmol)をHO 5mLに溶かし、これに上述した合成例2−4の手法により合成したcis−Pt(dach)−IP(0.41g、0.3mmol)を溶かした7.5mL水溶液、およびKPtCl(0.06g、0.15mmol)の7.5mL水溶液を加え、55℃の恒温槽で三晩撹拌した。溶液を濾過してAgClを除去し、濾液をエバポレーターで減圧濃縮し、これにメタノールを加えて、黄色粉末を得た。析出粉末をHOおよびメタノールで再沈殿させて、目的生成物を得た(収量 337mg、収率 39%)。
元素分析 C2494Na147312Pt
実測値:C 9.77、H 2.87、N 1.45
計算値:C 9.99、H 3.28、N 1.94
[実施例2−4:2Pt(dach)−PPの合成]
下記化学式15に示すスキームにより、本発明の二核アニオン錯体である2Pt(dach)−PPを合成した。
AgSO 31.5mg(0.098mmol)をHO 4mLに懸濁し、これに上述した合成例2−3の手法により合成したcis−Pt(dach)I 57mg(0.1mmol)を溶かした1mLのジメチルアセトアミド溶液を加え、遮光して4時間撹拌した。濾過してAgIを取り除いた溶液に、Ba(OH)・8HO 31.5mg(0.098mmol)を加え、30分間撹拌した。濾過してBaSOを除いた溶液に、上述した合成例2−5の手法により合成したcis−Pt(dach)−PP 54mg(0.1mmol)を加え、1日撹拌した。濾液をエバポレーターで濃縮し、暗褐色粉末を得た。析出した粉末を、HOおよびアセトンで再沈殿させて、目的生成物を得た(収量 34mg、収率 40%)。
元素分析 C1228Pt・3H
実測値:C 16.71%、H 4.12%、N 6.59%
計算値:C 17.01%、H 4.02%、N 6.61%
[実施例2−5:(Pt(dach)・Pt(NH)−IPの合成]
下記化学式16に示すスキームにより、本発明の二核アニオン錯体である(Pt(dach)・Pt(NH)−IPを合成した。
AgNO(0.17g、1.0mmol)をHO 20mLに溶解し、上述した合成例2−1の手法により合成したcis−Pt(NH(0.24g、0.5mmoL)を溶かした2.5mLのジメチルアセトアミド溶液を加えて、遮光し一晩撹拌した。溶液を濾過してAgIを除去し、上述した合成例2−4の手法により合成したcis−Pt(dach)−IP(0.58g、0.5mmol)を含む水溶液 20mLを加え、3日間撹拌した。濾液をエバポレーターで濃縮し、メタノールを加えて、目的生成物を茶色粉末として得た(収量 0.32g、収率 41%)。
元素分析 C1868Na39Pt((Pt(dach)・Pt(NH)IP・4Na・4H・15HO)
計算値:C 10.45%、H 3.64%、N 3.75%
実測値:C 10.30%、H 3.36%、N 3.37%
[実施例2−6:(Pt(dach))−IPの合成]
下記化学式17に示すスキームにより、本発明の二核アニオン錯体である(Pt(dach))−IPを合成した。
AgNO(0.17g、1.0mmol)をHO 20mLに溶解し、上述した合成例2−1の手法により合成したcis−Pt(NH(0.24g、0.5mmoL)を溶かした2.5mLのジメチルアセトアミド溶液を加えて、遮光し一晩撹拌した。溶液を濾過してAgIを除去し、上述した合成例2−4の手法により合成したcis−Pt(dach)−IP(0.58g、0.5mmol)を含む水溶液 20mLを加え、3日間撹拌した。濾液をエバポレーターで濃縮し、メタノールを加えて、目的生成物を茶色粉末として得た(収量 0.35g、収率 41%)。
元素分析 C1864Na39Pt((Pt(dach))IP・8Na・15HO)
計算値:C 12.56%、H 3.75%、N 3.26%
実測値:C 12.67%、H 3.74%、N 3.10%
[ヒト培養がん細胞パネルを用いた抗がん性評価]
上記の実施例で合成したいくつかの錯体(カチオン錯体:実施例1−1、1−2、1−3、1−4、1−5、1−7、1−9、1−10、1−11、および1−13;アニオン錯体:実施例2−1〜2−4)について、財団法人癌研究会・癌化学療法センターによるヒト培養がん細胞パネル(HCCパネル)により、抗がん性を評価した。HCCパネルを用いた抗がん性評価は、複数の細胞株での薬剤感受性試験とデータベースプログラムによる解析手法とを組み合わせたものである。本実施例では、具体的に、肺がん7系、胃がん6系、大腸がん5系、卵巣がん5系、脳腫瘍6系、乳がん5系、腎がん2系、前立腺がん2系、およびメラノーマ1系の計39系を1つのパネルとして扱い、in vitro薬剤感受性試験を行ない、その薬剤に対する感受性パターン(フィンガープリント)を得た。このようにして得られたフィンガープリントは、個々のがん細胞に対するサンプル物質の有効濃度偏差を視覚的に表現したものであり、サンプルに対するそれぞれのがん細胞の感受性を一目で把握することが可能である。そして、このフィンガープリントをデータベース内のデータと比較することで、既存の抗がん剤の作用様式との同否を確認することが可能である。
なお、それぞれのがん細胞に対するサンプル物質の感受性の測定は、以下の手法により行なわれた(文部科学省がん特定領域研究・統合がん化学療法基盤情報支援班のウェブサイト(http://gantoku-shien.jfcr.or.jp/panel.html)より引用(出願日に当該情報の存在を確認した))。
[方法]
がん細胞を96ウェルプレートにまき込み,翌日サンプル溶液を添加、2日間培養後、細胞増殖をスルホローダミンBによる比色定量で測定する。測定したがん細胞株39系の平均薬剤有効濃度に対する個々のがん細胞株の有効濃度偏差を計算し、フィンガープリントとして表示する。
[化合物の評価]
サンプルのフィンガープリントを、これまで測定しデータベース化した約70種類の標準抗がん剤のフィンガープリントと比較することにより、サンプルの作用機作の推定あるいは作用機作の新規性の評価を行う。
図1に、実施例1−5で合成したPt(5−MP)(AtC3)Clについてのフィンガープリントを示す。図1に示すように、フィンガープリントには3つのグラフが含まれている。この3つのグラフは、左から、GI50(コントロールと比較して細胞増殖を50%に抑制する濃度)、TGI(ゼロ時の細胞数と同じ細胞数に増殖を抑制する濃度(見かけ上細胞数の増減がない濃度))、LC50(ゼロ時の細胞数の50%まで細胞数を減少させる濃度(殺細胞効果の指標となる))のそれぞれの常用対数(log10)値を表す。なお、「ゼロ時の細胞数」とは、薬剤サンプルを投与する直前の細胞数を意味する。そして、個々のグラフにおいて、縦軸は39系の細胞株に対応し、横軸は39系の細胞株に対するそれぞれの指標の値の平均値を原点として、当該平均値よりも大きい値を示す場合は正の側に、小さい値を示す場合は負の側にグラフが伸びている。なお、このがん細胞パネルを用いて得られたIC50値を表1〜表2に示す。このIC50値は、100μMから0.01μMまでの5個の濃度における細胞生存率(=薬剤処置後の細胞数/薬剤未処置の細胞数)を濃度(常用対数値)に対してプロットした図から、細胞生存率が50%のときの薬剤濃度として求められる値である。
ここで、図1に示すPt(5−MP)(AtC3)Clについてのフィンガープリントのうち、「GI50」のグラフを、公知の白金錯体抗がん剤であるシスプラチン、カルボプラチンおよびオキサリプラチンの「GI50」のグラフと並べて図2に示す。一般に、フィンガープリントが類似のプロファイルを示す複数の抗がん剤の作用様式は類似していることが推定される。かような観点から図2を見ると、Pt(5−MP)(AtC3)Clのフィンガープリントのプロファイルは3つの公知の抗がん剤のいずれのプロファイルとも類似していない。よって、Pt(5−MP)(AtC3)Clは、これらの公知の抗がん剤とは異なる作用様式によって抗がん性を発揮していることが示唆される。なお、上記で合成した他のカチオン錯体およびアニオン錯体はいずれも、上述した3つの公知の白金錯体抗がん剤とは異なるフィンガープリントプロファイルを示した。
このHCCパネルによる評価データベースには、既知の抗がん剤との作用様式の類似性をより客観的に評価するための「COMPAREプログラム」という機能も含まれている。このCOMPAREプログラムは、2つの薬剤間で統計学的相関性を検定するもので、サンプル薬剤のフィンガープリントを入力すると、過去に蓄積された標準薬剤のデータ中からそのサンプル薬剤に類似したフィンガープリントを有する薬剤が類似度の高い順にリストアップされる。この際、類似度を評価する目的で、サンプルに対して相関係数(r値)が算出されるが、このr値が1に近づくほど、そのサンプル薬剤は既存の抗がん剤と作用様式の点で類似していることになる。ここで、上記で合成したそれぞれの錯体についてCOMPAREプログラムによりリストアップされたもののうち、r値が最も大きかったものについて、そのr値を下記の表1〜2に示す。
[がん関連酵素の阻害アッセイ]
上記の実施例で合成したいくつかの錯体(カチオン錯体:実施例1−1、1−2、1−3、1−4、1−5、1−7、1−9、1−10、1−11、および1−13;アニオン錯体:実施例2−1〜2−4)について、がん関連酵素に対する阻害活性を調べた。具体的には、プロテアソーム、テロメラーゼ、ファルネシルトランスフェラーゼ(FPTase)、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)、プロテインキナーゼのそれぞれに対する阻害活性を評価した。結果を下記の表1〜2に示す。
なお、それぞれの酵素に対する阻害活性の測定は、以下の手法により行なわれた(文部科学省がん特定領域研究・統合がん化学療法基盤情報支援班のウェブサイト(http://gantoku-shien.jfcr.or.jp/panel.html)より引用(出願日に当該情報の存在を確認した))。
[プロテアソーム阻害活性の検定]
[方法]
第1ステップとして、20Sプロテアソームのキモトリプシン様活性に対する阻害活性を調べ、有意な阻害活性が認められた検体について第2ステップの検定を行う。第2ステップではカスパーゼ様及びトリプシン様活性、さらに他のプロテアーゼ(αキモトリプシン、カテプシンB)に対する阻害活性を測定し、検体の阻害活性の選択性を評価する。阻害活性の陽性対照としては、既知のプロテアソーム阻害剤のMG132とclasto−Lactacystin β−lactone(Lactacystin活性化体)を用いる。実際の反応は、20Sプロテアソームに10μMの濃度で検体を添加し、30℃、10分間保温後基質として20Sプロテアソーム切断配列を含む蛍光標識ペプチドを加え、30℃、1時間反応させる。このとき遊離した蛍光物質(AMC)を定量することで酵素活性を測定する。
[活性の評価]
検体未処理対照群をもとに各活性の阻害の有無を検討する。有意な阻害活性を示した検体については、段階的な希釈系列を作って50%阻害濃度(IC50)を決定する(注:これにより算出されたIC50値を表1〜2に示す。なお、阻害活性を示さなかったものは表1〜2において「−」で示されている)。
[テロメラーゼ阻害活性の検定]
[方法]
ヒト白血病U937細胞の抽出液を酵素源とする。これを、テロメラーゼの基質となるオリゴヌクレオチドおよび検体化合物を含む酵素反応液中に添加し、20℃で30分酵素反応を行う。氷上で反応停止後、テロメア伸長産物をPCR増幅する(PCRは定量条件下で実施する。反応液には非テロメアDNA断片が予め添加されており、内部標準としてこれも同時に増幅させる)。反応液をポリアクリルアミドゲルにて電気泳動した後、CYBR Green染色したDNAをデンシトグラフィーにて定量解析する。阻害活性の陽性対照には、テロメラーゼ阻害剤MST−312を用いる。
[活性の評価]
検体は最終濃度10μMになるように添加し、阻害活性を測定する。この濃度で50%以上阻害活性を示し、かつPCRに対する非特異的阻害活性が40%未満であった検体については、10μMから4段階の10倍希釈系列を作り、再度阻害活性を測定する(注:これにより算出されたIC50値を表1〜2に示す。なお、阻害活性を示さなかったものは表1〜2において「−」で示されている)。
[ファルネシルトランスフェラーゼ(FPTase)阻害活性の検定]
[方法]
FPTase:ヒト扁平上皮がんA431細胞の粗精製FPTaseを酵素源とし、GST−H−Ras蛋白質、[H]−FPPを基質とした酵素反応液に、サンプルを添加し、37℃で1時間酵素反応を行う。30%TCAと1%SDSを含むメタノール溶液を加えることにより反応を停止させ、氷上で1時間静置する。[H]−FPPの結合したGST−H−Rasを含む酸不溶性画分をガラス繊維フィルターにトラップし、6%TCAで洗浄する。フィルターを乾燥後、酸不溶性画分に含まれる放射活性を液体シンチレーションカウンターにより測定し、FPTase活性とする。ポジティブ陽性対照にはFTI−276を用いる。
[活性の評価]
FPTaseのアッセイ系において、サンプルは最終濃度10μMになるように添加し、阻害活性を測定する。この濃度で、70%以上阻害活性を示したサンプルについては、10μMから5段階の10倍希釈系列を作り、再度阻害活性を測定する(注:これにより算出されたIC50値を表1〜2に示す。なお、阻害活性を示さなかったものは表1〜2において「−」で示されている)。
[ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害活性の検定]
[方法]
組換えヒトHDAC1(クラスI)を用いてサンプル化合物の酵素阻害活性の有無を検定する。実際の反応は、精製したヒトHDAC1に基質としてアセチル化した蛍光標識ペプチドを加え、37℃で30分間反応させる。その後トリプシンを添加し、このとき遊離した蛍光物質(アミノメチルクマリン)を定量することで酵素活性を測定する。阻害活性の陽性対照としてはトリコスタチンAを用いる。
[活性の評価]
検体はまず最終濃度100μMで検定し、阻害活性の認められたものについては段階希釈系列を作り、50%阻害濃度を求める(注:これにより算出されたIC50値を表1〜2に示す。なお、阻害活性を示さなかったものは表1〜2において「−」で示されている)。
[プロテインキナーゼ阻害の検定(I)]
ここでは簡便なin vitroの自己リン酸化反応により、EGFレセプター(実験系1)とVEGFレセプター(Flt−1)(実験系2)のチロシンキナーゼの阻害活性を調べる。
[方法]
実験系1:
A431細胞を蔗糖バッファーで破砕し、除核後、超遠心により膜画分を集め、酵素液とする。これに、検体、EGFを加え、25℃、30分間保温後、ATPを加えて0℃、15分間反応する。反応停止後、リン酸化されたレセプターをウエスタンブロットにより解析する。
実験系2:
精製したVEGFレセプターを酵素液とする。これに検体、ATP加え30℃、20分間反応する。反応停止後、リン酸化されたレセプターをウエスタンブロットにより解析する。
[活性の評価]
検体は最終濃度10μMになるように加え、リン酸化阻害の有無を判定する。阻害活性のあった検体について、3段階以上の10倍希釈系列を作り再度試験を行ない、1μM以下の濃度で50%以上阻害したものを有効と判定する。
[プロテインキナーゼ阻害の検定(II)]
ここでは細胞を血小板由来増殖因子(platelet-derived growth factor, PDGF)刺激して、活性化されるPDGFレセプターチロシンキナーゼおよび主要な細胞内シグナル伝達経路(PI3 kinase-AKT pathway, classical MAP kinase pathway,PLC-PKC pathway)に対する検体の阻害効果を評価する。
[方法]
NRK細胞を96ウェルプレートにまき込み、3日間培養後、サンプル溶液を添加、3時間処理した後にPDGFで刺激する。電気泳動用サンプルを調製し、リン酸化されたシグナル伝達分子(AKT,ERK,PKD,PLCγ1,S6 ribosomal protein)及びphosphotyrosineに対する抗体によるウェスタンブロットを行い、PDGFレセプターからの細胞内シグナル伝達に対する影響を評価する。
[活性の評価]
検体は最終濃度1、10μMになるように加え、阻害の有無と阻害パターンを判定する(注:この阻害パターンを表1〜2に示す。なお、阻害活性を示さなかったものは表1において「−」で示されている)。
表1および表2に示すIC50の結果から、本発明の錯体はいずれも、39系のがん細胞株に対するIC50値の平均値として、極めて低い値を示すことがわかる。ここで、慣用されているプラチナ製剤であるシスプラチンについて同様の手法により算出したIC50値は8μMであった。本発明の多くの錯体のIC50値は、このシスプラチンのIC50値を大幅に下回っていることから、本発明の錯体は、高活性の新規な抗がん剤としての用途が期待される。
また、表1および表2に示すr値(最大値)の結果から、本発明の錯体ではr値がせいぜい0.7強程度であり、既存の抗がん剤との作用様式の観点からの類似性は認められなかったことがわかる。このことから、本発明の錯体は既存の抗がん剤とは異なる作用様式に基づいて抗がん作用を発揮しているものと考えられる。したがって、本発明の錯体は、既存の抗がん剤が効かない、いわゆる「薬剤耐性がん」に対しても有効な抗がん剤として期待される。特に、本発明のカチオン錯体ではほぼ半数の実施例でr値が0.5を下回っており、薬剤耐性がんの治療薬として非常に有望である。
さらに、表1および表2に示すように、本発明の錯体では、そのすべてにおいて、プロテアソームの阻害作用が認められた。プロテアソームは,ポリユビキチン化された細胞内タンパク質を選択的に分解する酵素であり、細胞周期やアポトーシスを制御するタンパク質の分解において中心的な役割を果たしている。このため、本発明の錯体が抗がん性を発揮するメカニズムの少なくとも一部には、このプロテアソーム阻害作用が関与しているものと考えられる。また、本発明の錯体はこれ以外にも、テロメラーゼ、ファルネシルトランスフェラーゼ、ヒストンデアセチラーゼ、プロテインキナーゼなどの各種のがん関連酵素の1つまたは2つ以上を阻害するものがほとんどである。このことから、本発明の錯体の抗がん性は、上述したプロテアソームの阻害作用のみならず、他の酵素に対する阻害作用とも相俟って、総合的な作用として発揮されているものと考えられる。
[腎毒性の評価]
上記の実施例で合成したいくつかの錯体について、以下の手法により、腎毒性を評価した。なお、コントロールとしてはシスプラチンを用いた。
6週齢ICR系雄性マウス5匹を一群として、投与前0時間と薬物静脈投与72時間後に採血し、腎機能の指標であるクレアチニンおよびBUNの値を調べた。なお、採血16時間前に絶食させ、クレアチニンおよびBUNの測定にはiStatを用いた。また、投与薬物量は各薬物同モルとした。評価した薬物の種類とその投与量は以下のとおりである:
Pt(5−MP)(AtC3)(実施例1−5):28.5mg/kg
(Pt(NH・Pt(dach))−IP(実施例2−2):53mg/kg
Pt(Pt(dach)−IP(実施例2−3):94mg/kg
シスプラチン:10mg/kg。
Pt(5−MP)(AtC3)(実施例1−5)、(Pt(NH・Pt(dach))−IP(実施例2−2)、Pt(Pt(dach)−IP(実施例2−3)、およびシスプラチンの腎毒性評価の結果を、図3〜図6にそれぞれ示す。
図6に示すように、シスプラチン投与72時間後には、投与前と比べて、BUN値は約2倍に、クレアチニン値は約3.5倍にそれぞれ上昇しており、腎機能が障害を受けていることがわかる。一方、図3〜図5に示すように、本発明の錯体の場合には、投与72時間後にもBUN値やクレアチニン値の有意な上昇は認められなかった。
同様に、6週齢雄性ICRマウス(各群について、n=3〜5)を用いて、本発明の錯体の腎毒性を評価した。具体的には、まずマウスを絶食させ、16時間後、頚骨後ろに位置する静脈からアニマルランセットを用いて採血を行い、i-STAT 1 AnalyzerとカートリッジCHEM8+を用い、血液中成分(ナトリウムNa、カリウムK、イオン化カルシウムiCa、総二酸化炭素tCO2、グルコースGlc、血液尿素窒素BUN、クレアチニンCrea、ヘマトクリットHct、ヘモグロビンHb)の値を測定した。その後、シスプラチン 33 μmol/kg、Pt(Pt(dach)-IP6)233 μmol/kgを尾静脈より投与した。その56時間後、絶食を開始し、さらに16時間後、同様の方法で採血を行い、血中成分を測定した。
図7は、各サンプル投与群について測定された血中グルコース値の平均値±標準偏差(相対値)を示すグラフである。図7に示すように、コントロールでは血中グルコースレベル(Glc)が減少した。これは、ストレスが原因と考えられる。また、Pt(Pt(dach)-IP6)2、(Pt(dach)・Pt(NH3)2)-IP6ではGlcの減少が見られず、コントロールと有意差1%が観察された。一方、(Pt(dach)・Pt(NH3)2)-IP6、(Pt(dach))2-IP6ではGlcの減少が見られ、コントロールと有意差が観察されなかった。
図8は、各サンプル投与群について測定された血中BUN値の平均値±標準偏差(相対値)を示すグラフである。また、図9は、各サンプル投与群について測定された血中Crea値の平均値±標準偏差(相対値)を示すグラフである。図8および図9に示すように、シスプラチンでは腎機能マーカーとなるBUN、Creaの上昇が見られたが、本発明の錯体ではこのようなBUNやCreaの上昇は観察されなかった。これは、本発明の錯体が骨へ集積して腎への集積が軽減したことや、水溶性が高く腎排泄が促進されたことなどが要因であると考えられる。なお、BUNの測定結果において、Pt(Pt(dach)-IP6)2、(Pt(dach))2-IP6では減少傾向が見られた。これらの錯体は特に細胞増殖抑制効果が強いため、白金抗癌剤の副作用の1つである食欲減退が他の錯体と比較して強いことが推測され、その結果としてBUNの減少が生じたと考えられる。
図10は、各サンプル投与群について測定された血中ヘマトクリット値(Hct)値の平均値±標準偏差(相対値)を示すグラフである。また、図11は、各サンプル投与群について測定された血中ヘモグロビン(Hb)値の平均値±標準偏差(相対値)を示すグラフである。図10および図11に示すように、HctおよびHbの測定結果において、コントロールと錯体との間で有意な差は観察されなかった。しかしながら、Hctでは、Pt(Pt(dach)-IP6)2を除き、減少傾向が見られた。本発明の錯体は骨への集積が期待され、骨髄への影響も予想される。
以上の通り、測定したパラメータでは、Glcを除き、Pt(Pt(dach)-IP6)2、(Pt(NH3)2・Pt(dach))-IP6、(Pt(dach)・Pt(NH3)2)-IP6、(Pt(dach))2-IP6の間で有意な差は見られなかった。これらの本発明の錯体はin vitroでの細胞増殖抑制作用やヒドロキシアパタイト(HAP)への吸着能に大きな差はないことから、生体への影響についても差は見られなかったと考えられる。
以上のことから、本発明の錯体は、カチオン錯体およびアニオン錯体ともに、白金等の貴金属を含有しているにもかかわらず腎機能に障害を及ぼす虞は非常に小さい。よって、副作用が極めて低減された抗がん剤の有望な候補となりうる。
[ヒドロキシアパタイト(HAP)への吸着性の評価]
実施例2−1〜2−2および2−5で合成した4種のアニオン錯体について、ヒドロキシアパタイト(HAP;Ca10(PO(OH))への吸着性を評価した。なお、HAPは、ヒトの歯や骨を構成する主要成分である。
この評価は、単分子層吸着理論であるLangmuir理論に従って行なった。ここではまず、Langmuir理論について簡単に説明する。
吸着される物質と吸着剤との間に単分子層吸着が起こっているとき、溶液中に残存している化合物の濃度と吸着量との間には直線関係がみられ、単分子層平衡吸着反応が進行していることを示す。単分子層吸着が起こっているとき、下記数式(1)のLangmuirの単分子層吸着式が成立することが知られている。
数式(1)において、Wは吸着剤単位重量当たりに吸着した溶質の質量を表し、Wsは飽和吸着量を表し、aは吸着平衡定数を表し、Cは溶質の平衡濃度を表す。ここで、数式(1)を変形すると、下記数式(2)が導かれる。
この数式(2)に基づき、横軸に1/Cをプロットし、縦軸に1/Wをプロットして得られるLangmuirの単分子層吸着式の直線の傾き(1/aWs)とy切片(1/Ws)のそれぞれの値から,単分子層吸着状態における吸着平衡定数a、および、飽和吸着量Wsが算出される。
[(Pt(NH−IPのHAP吸着性の評価]
上述したLangmuir理論に従って、上記の実施例2−1で合成した(Pt(NH−IPのHAPに対する吸着性を評価した。具体的な手法は以下のとおりである。
HAP 5mgに5mM HEPES緩衝液(pH7.5)を加え、37℃で30分間インキュベートした。そこに(Pt(NH−IPの同緩衝液の溶液を、1、2、3または4mMの錯体濃度で全量が5.0mLになるようにそれぞれ添加して、サンプルを調製した。これらを1.5時間インキュベートし、遠心によりHAPと溶液とに分離した。次いで、回収されたHAPの31P−NMRを測定し、それぞれの錯体濃度における(Pt(NH−IPのHAPへの吸着量を求めた。得られた結果に基づき、溶液中に残存している化合物の濃度C(mM)、および、HAP 1mg当たりに吸着している化合物のモル数W(μmol/mg)をそれぞれ算出し、上記数式(2)によりデータをプロットして、グラフを作成した。そしてこのグラフの直線の傾きおよびy切片の値から、吸着平衡定数a、および飽和吸着量Wsを算出した。得られた結果を下記の表3に示す。なお、表3には、公知の白金錯体抗がん剤であるシスプラチンおよびカルボプラチンについて同様の評価を行なった結果も併せて記載されている。
表3に示す結果から、本発明のアニオン錯体はいずれも、シスプラチンやカルボプラチンと比較してより大きい吸着平衡定数aを示すことがわかる。これは、本発明のアニオン錯体がHAPに対して非常に高い親和性を有することを示している。上述したように、HAPはヒトの歯や骨の主要構成成分であることから、本発明のアニオン錯体のうちIP構造を有するものは、それ単独で、またはHAPと複合化されて、骨がん等の骨関連疾患に罹患した細胞への標的化が可能な薬物送達システム(DDS)製剤として用いられうる。
[in vivoにおける抗がん効果の評価(カチオン錯体)]
本発明のカチオン錯体のin vivoにおける抗がん効果を検討するために、以下に詳述するように、ヌードマウスBALB/c Slc-nu/nuを用い、サンプルとして実施例1−5で合成したPt(5−MP)(AtC3)Clのin vivoにおける抗がん活性を評価した。
ヒト前立腺がん由来細胞DU-145の継代実験
ヒト前立腺がん由来細胞DU-145を用いて胆がんマウスを作製してin vivoにおけるカチオン錯体の抗がん活性の評価を行うために、DU-145の培養実験を行った。下記に、継代実験の操作手順を示す。
CO2インキュベータの用意
CO2ボンベをインキュベータに接続し、5%、37℃に調節した。インキュベータ内部には、滅菌済蒸留水に消毒剤ヒビテンを加えたもの1000 mlを入れたバットを設置した。
クリーンベンチの用意
クリーンベンチの殺菌灯を消し、70%エタノールを手に吹き付け、エタノールを染み込ませたキムワイプでベンチ内を拭き、殺菌した。
培地の作成
820 mlのMilliQ水にRPMI-1640培地10.4 gを加え撹拌した。そこに、ペニシリン-ストレプトマイシン混合溶液をペニシリン100 units/μl、ストレプトマイシン100 mg/μlになるように加えた。さらに、NaHCO32.0 gとFBS100 mlを加え撹拌後、全量が1000 mlになるよう滅菌蒸留水を加えた。その後、クリーンベンチ内で滅菌ろ過し、以下の培養実験の培地として使用した。
PBSの作成
滅菌蒸留水1000 mlにDulbecco's Phosphate Buffered Saline9.6 gを加えて撹拌し、全て溶解後、120℃、20分で滅菌した。
細胞培養と継代
サンプル容器に凍結保存していたヒト前立腺がん由来細胞DU-145を37℃で急速に溶解し、クリーンベンチ内で、25 mlの培地を入れたディッシュに移した。2日後、培地を除去し、10 mlのPBSで洗浄後、5倍希釈した0.5%-Trypsin/5.3 mM-EDTA溶液 5 mlを加え、37℃で10分間インキュベートした。細胞が全て剥がれたのを確認後、培地5 mlを加え、継代を行った。2日後、同様の操作を行った。
細胞数の計測
計数板にトリパンブルーで染色した細胞浮遊液を乗せ、上からカバーガラスをかけた。光学顕微鏡にて計数板の計8か所のカウンター部に存在する細胞数を数え、1か所に存在する平均細胞数を算出し、希釈前の細胞浮遊液中の細胞数を計算した。
細胞浮遊液の調製とインジェクション
培地100μl当たり8.3×106 個の細胞数になるように細胞浮遊液を調製した。調製済みの細胞浮遊液を1匹当たり100μl、マウスの右肩付近の皮下にインジェクションした。
サンプル投与と腫瘍サイズの測定
マウスに腫瘍をインジェクションした日から20日後を実験開始0日目とし、0、7、14日目に蒸留水(コントロール)またはPt(5-MP)(AtC3)Cl2を投与した。各サンプル(n=5)は8.25 mmol/kgで投与した。0日目、1日目、3日目、7日目、8日目、11日目、14日目、15日目、18日目、20日目に体重(マウス体積)、腫瘍サイズを測定した。腫瘍の大きさはノギスを用いて計測し、A×B2×0.52 (A=腫瘍長さ、B=腫瘍幅;単位はすべてmmである)により得られる腫瘍体積の、薬剤投与前のマウス体積に対する百分率として腫瘍体積比を算出した。
図12は、Pt(5-MP)(AtC3)Cl2を投与した胆がんマウスの平均腫瘍体積比の変化をコントロール群と比較して示すグラフである。図12に示すように、Pt(5-MP)(AtC3)Cl2を8.25 mmol/kgの用量で週1回投与すると、コントロール(蒸留水)と比較して腫瘍細胞の増殖を抑制する傾向が見られた。ただし,実験開始後20日においても有意差は見られていない。なお、上記でマウスの腫瘍体積比を算出したそれぞれのタイミングで、胆がんマウスの体重比の値(0日目の体重を1としたときのマウス体重の相対値)も算出した。図13は、Pt(5-MP)(AtC3)Cl2を投与した胆がんマウスの平均体重比の変化をコントロール群と比較して示すグラフである。図13に示すように、マウスの体重比の平均値に差は見られなかったことから、Pt(5-MP)(AtC3)Cl2投与による副作用の小ささが示された。
続いて、蒸留水(コントロール)、シスプラチン、およびPd(5-MP)(AtC3)(NO3)2をそれぞれサンプルとして用い、上記と同様の実験を行った。
図14は、シスプラチンまたはPd(5-MP)(AtC3)(NO3)2を投与した胆がんマウスの平均腫瘍体積比の変化をコントロール群と比較して示すグラフである。図14に示すように、Pd(5-MP)(AtC3)(NO3)2を8.25 mmol/kgの用量で週1回投与すると、コントロール(蒸留水)と比較して腫瘍細胞の増殖を抑制する傾向が見られ、その程度はシスプラチンと同程度であった。ただし,実験開始後20日においても有意差は見られていない。また、図15は、シスプラチンまたはPd(5-MP)(AtC3)(NO3)2を投与した胆がんマウスの平均体重比の変化をコントロール群と比較して示すグラフである。図15に示すように、マウスの体重比の平均値に差は見られなかったことから、Pd錯体であるPd(5-MP)(AtC3)(NO3)2投与についても、Pt錯体と同様に副作用が小さいことが示された。
[in vivoにおける抗がん効果の評価(アニオン錯体)]
本発明のアニオン錯体のin vivoにおける抗がん効果を検討するために、サンプルとして実施例2−3で合成したPt(Pt(dach)−IPのin vivoにおける抗がん活性を評価した。なお、アニオン錯体の実験プロトコールは以下の通りであるが、記載のない事項については本発明のカチオン錯体について上述したのと同様の手法を採用した。
0日目
マウス搬入:BALB/c slc-nu/nu 雄 4週齢
細胞植え付け:DU-145 3.8×106 cells/匹を右肩に皮下投与
24日目
薬剤投与(静脈内投与)
シスプラチン 17μmol/kg投与群 n=6
コントロール(蒸留水投与)群 n=5
Pt(Pt(dach)-IP6)217μmol/kg投与群 n=4
42日目
薬剤投与(静脈内投与)
Pt(Pt(dach)-IP6)217μmol/kg投与群に17μmol/kg再投与(シスプラチン投与群およびコントロール群には再投与せず)
図16は、シスプラチンまたはPt(Pt(dach)-IP6)2を投与した胆がんマウスの平均腫瘍体積比の変化をコントロール群と比較して示すグラフである。図16に示すように、シスプラチン 17μmol/kg 1回投与群はコントロールとそれほど違いは見られないのに対し、Pt(Pt(dach)-IP6)217μmol/kg 2回投与群はDU-145前立腺癌の増殖を抑制する傾向が見られた。なお、シスプラチン投与群では初期の体重減少が大きかったことから、2回投与による死亡を回避する目的で2回投与を行わなかった。
[ラット骨転移モデルを用いたin vivo評価]
骨転移モデルラット作製の確認は,癌細胞が移植された左足脛骨が移植されてない右足脛骨と比較してn-1日(n-1=17, 21)後に骨表面が粗くなり,癌細胞が増殖し、骨代謝が活発化していることから確認した。
癌細胞の移植後n日(n=18, 22)目に、Pt(Pt(dach)-IP6)2、またはシスプラチンを投与し、投与前後における腫瘍サイズ、足刺激への反応性、体重の変動から、それぞれ、腫瘍増殖阻害効果、疼痛緩和効果、副作用を評価した。各種評価法は、後述するように、腫瘍サイズについてはノギスを用いて行い、足刺激への反応性はvon frey filamentを用いて行った。
メディウム溶液の作製
約450 mlのMilliQ水にRPMI-1640培地 5.2 mg、NaHCO3 1.0 mg、37°Cに溶かしたFetal Bovine serum (FBS) 50 ml、ペニシリン−ストレプトマイシン混合溶液 (ペニシリン 10000 units/ml, ストレプトマイシン10000μg/ml) 5 mlを加え、撹拌した。その後、クリーンベンチ内で滅菌濾過した。
PBS溶液の作製
1 LのMiliQ水にPhosphate Buffered Saline (PBS) 9.6 gを加え、撹拌後、オートクレーブした。
MRMT-1細胞培養
凍結保存されたMRMT-1細胞を37℃の恒温槽で溶かした。その後、クリーンベンチ内で、作製したメディウム 20 mlをディッシュに加え、そこに、よくピペッティングし、細胞 1 mlを加えた。その後、CO2インキュベータ内で保管した。2日後、継代実験を行った。保管したディッシュをクリーンベンチ内で、PBSで洗浄し、トリプシン 10 mlを加え、CO2インキュベータ内で約20分間置き、細胞をディッシュから剥がした。次に、クリーンベンチ内で、剥がした細胞の半分を捨て、残ったディッシュにメディウム 20 mlを加え、その後、ディッシュをCO2インキュベータ内で保管した。この継代実験を3回行った。
骨転移モデルの作製
7週齢雌性SDラットをネンブタール麻酔下、脛骨近位部が見えるように切り口をいれ、左足膝関節から5 mm遠位の部位に23ゲージの針を用いて、骨髄腔にまで達する穴を開け、ハミルトンシリンジを用い、MRMT-1ラット乳癌細胞(3000 cells/3 μL)を注入した。一方、右足脛骨の対応する部位に穴を開け、擬似的処置として同容量のメディウム3 μLのみを投与した。術後、ボーンワックス(ミツロウ)を用い骨の穴を埋め、傷を縫合した。
骨転移モデル作製確認
手術後、ラットを経時的にX線撮影した。ラットをネンブタール麻酔後、IP(イメージングプレート)を挿入したカセッテに貼り付け、SOFTEX M-6でX線撮影を行い、その後、IPをBAS5000で解析した。
・腫瘍増殖阻害効果、疼痛緩和、副作用の評価
癌細胞をラット脛骨に移植したn日後(n=18, 22)にPt(Pt(dach)-IP6)2m mol/kg、シスプラチン m mol/kg(m = 33, 8.25) を水50μlに溶かしたものを尾静脈より投与した。なお、コントロール群には水100μlを投与した。
疼痛緩和効果を評価するため、von frey filamentを用いた。von frey filament testは機械的アロディニアを測定する代表的な方法である。フィラメントで片足の足底を刺激し、徐々に圧力を加え、ラットが痛感反応を示した圧力を閾値とした。この操作をラット1匹につき、左足、右足の各々5回ずつ交互に間を5分あけて測定(左足測定→5分→右足測定→5分→)×5回/1匹)した。そのメジアン値の左右足比(右足/左足)を算出し、この値を疼痛の指標とした。なお、値の比は投与前の右足の値/左足の値を1として相対的に評価した。
腫瘍サイズはノギスを用いて計測し、腫瘍体積はA×B2×0.52 (A=腫瘍長さ、B=腫瘍幅;単位はすべてmmである)により算出し、サンプル投与1日前の値を1としたときの相対値で評価した。
図17は、シスプラチン 33μmol/kg 1回投与群およびPt(Pt(dach)-IP6)233μmol/kg 1回投与群の平均腫瘍体積比の変化をコントロール群と比較して示すグラフである。図17に示すように、シスプラチン 33μmol/kg 1回投与群はコントロールと違いが見られないのに対し、Pt(Pt(dach)-IP6)2 33μmol/kg 1回投与群はMRMT-1乳癌の増殖を抑制する傾向が見られた。
図18は、腫瘍増殖抑制効果に関して、シスプラチン 8.25μmol/kg 1回投与群(1日目投与)およびPt(Pt(dach)-IP6)2 8.25μmol/kg 2回投与群(1, 8日目投与)の平均腫瘍体積比の変化をコントロール群と比較して示すグラフである。なお、本実験では、薬剤投与の前日を0日とした(以下同様)。
図19は、疼痛緩和効果に関して、シスプラチン 8.25μmol/kg 1回投与群(1日目投与)およびPt(Pt(dach)-IP6)2 8.25μmol/kg 2回投与群(1, 8日目投与)の左右足比(平均値)の変化をコントロール群と比較して示すグラフである。
図20は、副作用評価に関して、シスプラチン 8.25μmol/kg 1回投与群(1日目投与)およびPt(Pt(dach)-IP6)2 8.25μmol/kg 2回投与群(1, 8日目投与)の体重(平均値)の変化をコントロール群と比較して示すグラフである。
図18に示す結果(腫瘍増殖抑制効果の評価)から、シスプラチン 8.25μmol/kg 1回投与群はコントロール群よりも劣るように見えるものの、これらの違いは誤差範囲内であった。一方、Pt(Pt(dach)-IP6)2 8.25μmol/kg 2回投与群ではMRMT-1乳癌の増殖を抑制する傾向が見られた。なお、ヌードマウスを用いた評価と同様に、シスプラチン投与群では初期の体重減少が大きかったことから、2回投与による死亡を回避する目的で2回目の投与を行わなかった。これに対し、Pt(Pt(dach)-IP6)2については2回投与でもコントロールとほぼ同じ体重比であったことから(図20)、Pt(Pt(dach)-IP6)2の副作用は小さいことが示唆された。
また、図19に示す結果(疼痛緩和効果)について、一般に、骨癌の左足が癌の進行とともに痛みに対して敏感になり、閾値が小さくなるため、右足の値/左足の値は日が経つにつれて大きくなり、グラフは右上がりになる。図19に示すように、シスプラチン投与群では右上がりのコントロールと似た傾向を示すのに対し、Pt(Pt(dach)-IP6)2はほぼフラットな傾きを示し、疼痛を緩和する傾向が認められた。

Claims (9)

  1. 下記化学式1で表される金属錯体またはその塩:
    式中、
    Mは、PtまたはPdであり、
    〜R、およびR〜R17が水素原子であり、Rが炭素数1〜30のアルキル基、ハロゲン原子、炭素数1〜30のアルコキシ基、またはニトロ基である。
  2. 下記化学式1a〜1dのいずれかで表される、請求項1に記載の金属錯体またはその塩:
  3. 下記化学式1eまたは1fで表される金属錯体またはその塩:
    式中、Mは、PtまたはPdである。
  4. MがPtである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の金属錯体またはその塩。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属錯体またはその塩を有効成分として含有する、抗がん剤。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属錯体またはその塩を有効成分として含有する、プロテアソーム阻害剤。
  7. 下記化学式1aまたは1bで表される金属錯体またはその塩を有効成分として含有し、ファルネシルトランスフェラーゼ、ヒストンデアセチラーゼ、およびプロテインキナーゼからなる群から選択される1種または2種以上の酵素を阻害する、酵素阻害剤
    式中、Mは、PtまたはPdである
  8. 下記化学式1cで表される金属錯体またはその塩を有効成分として含有し、プロテインキナーゼを阻害する、酵素阻害剤:
    式中、MはPtである。
  9. 下記化学式1eで表される金属錯体またはその塩を有効成分として含有し、ヒストンデアセチラーゼおよびプロテインキナーゼからなる群から選択される1種または2種の酵素を阻害する、酵素阻害剤:
    式中、MはPdである。
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