JP5552262B2 - 肺疾患の治療に用いられる気体製剤 - Google Patents

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Description

本発明は、ウイルス性呼吸器感染症を予防するための気体吸入療法や肺動脈高血圧等の肺疾患を伴う疾患に対する気体吸入療法に用いる気体製剤に関し、特に低濃度の一酸化炭素を用いた気体製剤及び低濃度一酸化炭素を用いた吸入療法に用いる気体製剤に関するものである。
肺高血圧症による呼吸困難はその最も苦痛な症状のひとつであり、日常生活を制限している。また、慢性的な肺高血圧症は続発性の右心不全を引き起こし、予後不良因子となる。従って肺高血圧症をいかに和らげるかは、患者のQOL(quality of life)を保つ上で、また、良い全身状態で寿命を延長する上で非常に大切なこととなる。
肺動脈圧の正常値は一般に収縮期圧30〜15mmHg、拡張期圧8〜2mmHg、平均圧18〜9mmHg とされている。従って収縮期圧で30mmHg以上、平均圧で20mmHg以上の肺動脈圧が存在する場合に、これを肺高血圧と定義する。
肺高血圧症は、肺動脈という血管そのものの変性による原発性肺高血圧症と、慢性的弁膜症、陳旧性心筋梗塞や拡張型心筋症などによる高度左心不全、収縮性心膜炎、左房粘液腫、心房中隔欠損症や心室中隔欠損症などによる心内左−右短絡疾患、動脈管開損症、末梢性動静脈短絡、先天性心疾患によるEisenmenger症候群、肺血管炎、膠原病に伴う肺高血圧症、低酸素性肺血管攣縮、陳旧性肺結核、間質性肺炎、肺血栓塞栓症、各種癌の肺動脈転移、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、慢性閉塞性肺疾患を含む慢性肺疾患などによる様々な原因疾患により続発性に発症する二次性肺高血圧症がある。原発性肺高血圧症の診断を行う場合には、肺動脈平均圧25mmHg以上、運動時30mmHg以上を肺高血圧の診断基準としている(非特許文献1参照)。原発性肺高血圧症の治療としては肺移植が、そして二次性肺高血圧症に対しては原疾患に対する内科的保存療法もしくは外科的治療(弁膜症、先天性心疾患)が行われるが、肺高血圧症が既に起きている状態では根治的な治療により治癒することは困難である。従って、肺高血圧症の患者に対して、吸入療法を用いる場合には、肺血管抵抗を低下させる平滑筋弛緩作用、血圧低下作用等を有する気体製剤を用いる治療法が有効となる。
そして、肺高血圧症に対して試験的に行われている気体吸入治療としては、先天性心疾患に伴う肺高血圧緊急症に対して、一酸化炭素と同じくグアニレート・サイクレースに作用して血管平滑筋弛緩作用を介した血管拡張効果を有する一酸化窒素吸入療法が既に使用されている。なお、気体吸入療法とは、気体供給機より供給される酸素や一酸化窒素等の気体を鼻カヌラ等のチューブを介して所定期間に渡って直接鼻から吸入する療法である。この一酸化窒素吸入療法においては、例えば、酸素及び窒素に対して一酸化窒素を数十ppm含む気体を患者に所定期間吸入させることで肺血管抵抗を低下させて、患者の肺高血圧を緩和させる療法である。なお、一酸化窒素は、平滑筋弛緩作用、血小板凝集抑制作用、血圧低下作用等の弛緩作用を有する分子ガスであり、この一酸化窒素を用いた吸入療法は既に、先天性心疾患や肺高血圧症の多くの患者で実際に吸入に用いられている。
米国心臓病学会誌、2008年、51巻、1527-1538頁 高地医学生物学、2001年、2巻3号、377-385頁 ネイチャー・メディスン、2001年、17巻5号、598-604頁 英国医学遺伝学、2006年、43巻4号、e17頁 血液、2003年、102巻、1619-21頁 米国呼吸器救命医学雑誌、2005年、171巻、1246-51頁 中毒科学、2005年、85巻、976-982頁
しかしながら、肺高血圧症の患者に対する上記の一酸化窒素を用いた吸入療法には以下の問題点がある。
すなわち、患者に吸入される一酸化窒素は易水溶性であり、活性酸素と活動的に結合し、活性窒素(reactive nitrogen species: RNS)となり、生体内の酸素消費量を減らして、長期間使用することにより血管内皮障害による持続性臓器障害や動脈硬化の促進に伴う脳梗塞や心筋梗塞、DNA障害による発癌の可能性が否定できない。このため、この一酸化窒素を用いた気体吸入療法は、長期間に亘り安全な治療法として使用することに適していないという問題がある。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ウイルス性呼吸器感染症を予防するための気体吸入療法や肺高血圧症を伴う疾患に対する気体吸入療法において、一酸化窒素吸入療法に見られるような発がん性の可能性を排除すると共に、長期間の療法に適した安全性の高い気体製剤を提供することを目的とする。
以上の課題を解決するために、本発明に係る気体製剤は、ウイルス性呼吸器感染症(例えば、炎症性肺疾患を有する患者におけるヒトライノウイルス14型(RV14)の気道上皮細胞への感染)を抑制・予防するための気体吸入療法、又は、肺高血圧症を伴う疾患の運動耐性能を向上させるための気体吸入療法に用いる気体製剤であって、当該気体製剤には少なくとも、低濃度の一酸化炭素が含まれることを特徴とする。また、患者が吸入する前記気体製剤の前記一酸化炭素の濃度は、20ppm以上300ppm未満であることを特徴とする。さらに、患者が吸入する前記気体製剤の前記一酸化炭素の濃度は、40ppm以上100ppm未満であることを特徴とする。
これらの構成により、本発明の気体製剤では、肺高血圧症を伴う患者への肺高血圧を緩和して、発がん性のない安全な気体製剤とできると共に、低濃度とすることで一酸化炭素中毒に対する安全性をも確保した気体製剤とすることが可能となる。
また、本発明に係る気体製剤を用いる疾患には、原発性肺高血圧症と、慢性的弁膜症、陳旧性心筋梗塞や拡張型心筋症などによる高度左心不全、収縮性心膜炎、左房粘液腫、心房中隔欠損症や心室中隔欠損症などによる心内左−右短絡疾患、動脈管開損症、末梢性動静脈短絡、先天性心疾患によるEisenmenger症候群、肺血管炎、膠原病に伴う肺高血圧症、低酸素性肺血管攣縮、陳旧性肺結核、間質性肺炎、肺血栓塞栓症、各種癌の肺動脈転移、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、慢性閉塞性肺疾患を含む慢性肺疾患などによる様々な原因疾患により続発性に発症する二次性肺高血圧症のいずれかが含まれることを特徴とする。さらに、前記疾患には、肺性心、肺高血圧症による右心負荷、慢性炎症に伴う肺動脈血栓症、慢性呼吸不全、又は癌終末期が含まれてもよい。
また、本発明に係る低濃度一酸化炭素を用いた吸入療法の気体吸入療法における前記気体製剤の患者への投与期間は、少なくとも1時間以上であることを特徴とする。また、前記投与期間は、6時間以上であることを特徴とする。さらに、前記投与期間は、12時間であることを特徴とする。
この構成により、患者は在宅酸素療法等と共に、本発明に係る低濃度一酸化炭素を用いた吸入療法を例えば睡眠時に共に利用でき、無理なく継続的に安全な肺高血圧症による肺高血圧を緩和できる。つまり、在宅酸素療法で用いられる量と同量の酸素が一酸化炭素とともに患者に吸入される。
また、本発明は、動脈血中の一酸化炭素ヘモグロビン濃度を安全に増加させる方法として適用することもできる。
本発明は、酸素及び窒素に対して数十ppmから数百ppmの低濃度一酸化炭素を含む気体製剤を用いる吸入療法とすることで、炎症性肺疾患におけるヒトライノウイルス14型(RV14)の気道上皮細胞への感染の抑制効果とそれに基づく急性増悪の抑制効果があるとともに、臓器障害や発がん性の可能性を排除しながら患者の運動耐性能を向上させ、肺高血圧症を緩和できる。また、本発明は、呼吸困難感を伴う疾患、原発性肺高血圧症と、慢性的弁膜症、陳旧性心筋梗塞や拡張型心筋症などによる高度左心不全、収縮性心膜炎、左房粘液腫、心房中隔欠損症や心室中隔欠損症などによる心内左−右短絡疾患、動脈管開損症、末梢性動静脈短絡、先天性心疾患によるEisenmenger症候群、肺血管炎、膠原病に伴う肺高血圧症、低酸素性肺血管攣縮、陳旧性肺結核、間質性肺炎、肺血栓塞栓症、各種癌の肺動脈転移、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、慢性閉塞性肺疾患を含む慢性肺疾患などによる様々な原因疾患により続発性に発症する二次性肺高血圧症に対しての、より安全性の高い吸入療法とすることができる。
つまり、本発明により、肺高血圧症例における肺高血圧が軽減されるとともに運動耐性能が向上されたり、慢性肺疾患における呼吸困難感が改善されたり、炎症性肺疾患におけるヒトライノウイルス14型(RV14)の気道上皮細胞への感染が抑制されたり、それに基づく急性増悪が抑制されたりする。
さらに、本発明を、動脈血一酸化炭素ヘモグロビン濃度を安全に増加させる方法として適用することで、煙草の煙以下の一酸化炭素ガス濃度で煙草のような発癌性の成分を含まずに安全に、かつ、人工的に、動脈血一酸化炭素ヘモグロビン濃度を増加させて生体生命を守るという効果が奏される。
本発明に係る気体製剤を用いた吸入療法の際の患者の外観図を示している。 (a)は本発明に係るCO吸入によるRV14感染の抑制効果の確認実験を示し、(b)はその結果を示す。
以下、本発明に係る気体製剤および低濃度一酸化炭素を用いた吸入療法の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
(実施の形態)
本発明は、数十から数百ppmの低濃度一酸化炭素を含む気体製剤を用いて肺高血圧症の患者への治療法とすることを特徴とする。
最初に、本発明の気体製剤に用いる一酸化炭素の性質について説明を行う。
本発明の気体製剤に用いる一酸化炭素(CO)は、高濃度ではヘモグロビンの酸素運搬能阻害し毒性のある大気汚染の原因の一つとして知られているが、一方生体内でも産生され、平滑筋弛緩作用・抗炎症作用・抗酸化作用等、様々な生理活性作用を担っていることが明らかとなってきている。内因性のCOは、ヘム代謝過程を通してヘムオキシゲナーゼ(HO)酵素の作用により産生され、局所ではかなりの内因性CO濃度になると考えられる。COは、グアニルサイクラーゼを刺激し、平滑筋細胞内のcGMP濃度を増大させ、血管の平滑筋を弛緩させる。
一酸化炭素は、弛緩作用を有する点と分子ガスである点で一酸化窒素(NO)と類似しているが、NOと異なりイオン基の形成やフリーラジカルの産生をおこさない点で安全である。NOは既に、先天性心疾患や持続性肺高血圧の多くの患者で実際に吸入に用いられている。
そして、こうしたCOの生理作用に注目し、近年、動物を用いた低濃度CO吸入による様々な治療的研究が報告されている。
例えば、羊を用いて、急性低酸素血症により増大した肺血管抵抗を低濃度CO吸入により改善させたとの報告がある(非特許文献2参照)。低酸素にて線溶系は抑制されるが、低濃度CO吸入によりその線溶系の抑制に歯止めをかけたとの報告もある(非特許文献3参照)。
本発明は、肺高血圧症を伴う疾患が対象となる。本発明者は今日までに、内因性COを産生するHO-1遺伝子多型と様々な疾患の病態との関係を研究してきており、COの産生誘導が弱いタイプのHO-1遺伝子多型のヒトは脳梗塞や誤嚥性肺炎になりやすく(非特許文献4参照)、また酸化刺激によるアポトーシス(細胞死)にも陥りやすいことを報告してきた(非特許文献5参照)。
また、慢性閉塞性肺疾患患者の病期(ステージ)とCO-Hbとの関連を報告しており、慢性閉塞性肺疾患に関するスタディーでは十分な実績を有している(非特許文献6参照)。HO-1は様々な病的誘因により誘導されることから、おそらく内因性CO産生メカニズムは、血管平滑筋弛緩作用による肺高血圧改善効果等の合目的作用をしていると考えられる。従って、肺高血圧症患者において低濃度CO吸入の効果が十分期待できるが、これまで肺高血圧症を改善する目的でのヒトに対するCO吸入研究報告がなかった。
そこで、本発明においては肺高血圧症を伴う疾患に対して、数十から数百ppmの低濃度の一酸化炭素を用いた気体製剤で気体吸入療法を行う。尚、後述で詳細に説明するように、本発明での低濃度COは100ppmと煙草の煙内のそれに比べ4分の1の濃度であり(非特許文献7参照)、実際に吸入して安全であることを実証済みである。さらに安全性に関して云えば、COの毒性評価はCO-Hb(一酸化炭素ヘモグロビン:ヘモグロビンとCOが結合したものであり、ヘモグロビンによる組織への酸素運搬を妨げる一酸化炭素中毒等の症状を起こす原因となる)濃度により評価するのが一般的であり、臨床研究の結果からは、100ppmの12時間CO吸入中・後でCO-Hbは2〜3%以下である。中毒症状は20%前後の濃度でおこり、大量喫煙者では8%前後であるから、本臨床実験例のCO-Hb濃度は十分安全な程度に低いといえる。なお通常のヒトにおけるCO-Hb濃度は1%以下程度、炎症性肺疾患患者は1%前後である。
(臨床実験例)
以下、本発明に係る気体製剤を用いた臨床実験例について説明する。なお、本臨床実験の目的は、本発明にかかるCO吸入療法による肺高血圧症における呼吸困難感の改善効果、肺高血圧に対する血圧減少効果、血小板凝集抑制効果、血液凝固因子への影響、肺機能への影響、血清過酸化脂質(活性酸素への影響)、抗炎症性サイトカインであるインターロイキン10 (IL-10)への影響の検討である。
図1は、本発明に係る気体製剤を用いた吸入療法の際の患者の外観図を示している。本図に示すように、本発明の気体製剤は、肺高血圧症患者の在宅気体療法として使用できるものである。つまり、在宅酸素療法で用いられる量と同量の酸素が一酸化炭素とともに患者に吸入される。
本臨床実験では、呼吸困難感を主訴とする肺高血圧症のべ11症例([表4]の401から403参照:Aさん〜Kさん、59〜84歳、中央値:76歳、男性9例、女性2例)に対して本発明の低濃度一酸化炭素(CO)吸入療法を行った。なお、対象患者の選択基準としては、研究の目的を理解し、本人からの文章同意が得られた患者、肺高血圧新規診断症例、長期酸素療法を施行している患者である。また、除外基準としては、動脈血中CO-Hb濃度が3%以上の患者:十分な禁煙状態であることと、高すぎるCO-Hbでは、吸入による治療効果が期待できないことから、3%以上は除外とし、研究開始前4週間以内に喫煙している患者、重篤な心・肝・肺・血液疾患を合併している患者、血液データ上、凝固系・線溶系に異常を認める患者、及び凝固系・線溶系に影響を与える投薬を受けている患者、急性増悪で治療中の患者、その他、医師が不適当と判断した患者である。
また、各症例は、必要な酸素吸入を行ないながら(0〜3L/min)、少量COガス(吸入濃度40ppm〜104ppm:中央値51ppm)をsmokerlyser(登録商標)にて測定の上、12時間吸入した。このスモーカーライザーにより呼気中の一酸化炭素濃度を測定する。
そして、臨床試験実施計画書に従い、以下の調査スケジュール100を示す[表1]について、患者の負担のない範囲内で評価項目を測定・検討した。ここで、[表1]中の○は、実際に行う調査の対象を示している。
[表1]に示すように、調査は前吸入期11、4、8時間吸入期12、12時間吸入終了後13の観察期からなる。
前吸入期11においては、被験者背景の調査14、選択・除外基準の確認105、同意文書取得106、呼吸機能検査107、心動脈血ガス分析108、機能検査109、QOL110(日常生活状況)、併用薬・併用療法の確認111、バイタルサイン112(血圧・脈拍、体温)、自覚症状・他覚所見113、臨床検査114を行う。
低濃度CO吸入開始後4時間、8時間吸入期12においては、静脈血ガス分析108(留置針から採血により静脈血Hb-COをチェックし中毒を予防する)、バイタルサイン112(血圧・脈拍、体温)、自覚症状(症状訴えのある場合)・他覚所見113を行う。
低濃度CO吸入終了後13においては、呼吸機能検査107、心機能検査109、動脈血ガス分析108、QOL110(日常生活状況)、バイタルサイン112(血圧・脈拍、体温)、自覚症状・他覚所見113、臨床検査114を行う。
また、[表1]に示す調査項目内容は、原則として、以下の項目について調査票に記入する。なお、患者を特定するために必要な情報としては、カルテ番号、患者略名(イニシャル)である。
患者背景の調査14としては、性別、生年月日、同意取得日、診断名、肺高血圧診断日、現在の治療法(薬物療法)、合併症、既往歴を行う。
呼吸機能検査107としては、前吸入期、及び低濃度CO吸入終了後の計2回行う。この際の測定項目としては、1秒量、1秒率、肺活量及びCO肺拡散能力(DLco)である。
動静脈血ガス分析108としては、前吸入期、吸入期4、8時間、吸入終了後の計4回行う。このうち前吸入期と吸入終了後は動脈血採血であり、低濃度CO吸入の効果を評価する。吸入期は留置針採血により静脈血Hb-COをチェックし中毒を予防する。測定項目としては、pH、動脈血酸素分圧、CO分圧及びCO-Hb濃度である。
心機能評価109として、三尖弁閉鎖不全圧較差にて右心負荷所見並びに肺高血圧症の程度を評価する。又、心駆出率及びドップラー法による測定を行い、心機能全般の評価も併せて行う(前吸入期、吸入終了後)。
QOL調査110(ボルグスコア)として、低濃度CO吸入前、吸入後の計2回行う。この際、6分間歩行テストは、低濃度CO吸入前、吸入後の計2回行う。なお、ボルグスコアは呼吸困難の程度を下記の[表2]に示す200のように分けて評価するものであり、息切れスコア、日常生活への質問からのスコアである。
安全性の評価となる、自覚症状・他覚所見113の確認としては、来院時に調査・観察する。また、臨床検査としては、前吸入期、吸入終了後に以下の項目の検査を行う。すなわち、(1)血液一般検査:赤血球、ヘモグロビン量、ヘマトクリット値、白血球数、血小板数、(2)血液生化学的検査:AST、ALT、γGTP、ALP、LDH、総ビリルビン、総タンパク、アルブミン、BUN、血清クレアチニン、尿酸、血小板凝集能、血液凝固能、インターロイキン10、過酸化脂質である。採血量は、前吸入期・吸入終了後にて14mLずつ、2回の吸入期について1mLずつ、計30mLとなる。
(評価法)
以下、本臨床実験例の評価法を説明する。
本臨床実験例での呼吸困難感の評価を評価可能な症例において、Hugh-Jones分類、Borg score(ボルグスコア)を用いて行った。なお、呼吸困難の程度を客観的に表現する試みとして最も利用されているものに、ヒュー・ジョーンズ分類(Hugh-Jones分類)があり、心不全からくる呼吸困難に対しては下記の5段階評価が使われる。
すなわち、1度では同年代の健常者と同様の生活・仕事ができ、階段も健常者なみにのぼれる状態であり、2度では歩行は同年代の健常者なみにできるが、階段の上り下りは健常者なみにできない状態であり、3度では健常者なみに歩けないが、自分のペースで1km(または1マイル)程度の歩行が可能であり、4度では休みながらでなければ50m以上の歩行が不可能な状態であり、5度では会話や着物の着脱で息がきれ、外出ができない状態となる。
また、平均肺動脈圧の評価を内科専門医による三尖弁逆流圧格差(TrPG)の計測+10mmHgによって行った。また、血小板凝集能、線溶系への影響をPT-INR, APTTを測定して評価した。IL-10は外部委託して行った。
次に、臨床実験方法を説明すると、気体の吸入内容としては、肺高血圧症に伴う慢性低酸素血症の通常の治療は継続の上、図1に示すように、鼻カヌラ103を介して酸素ボンベ101から酸素吸入と、例えば99.5%の窒素に0.5%の一酸化炭素を含む一酸化炭素及び窒素用ボンベ102からのCO及び窒素吸入を同時に行い、低濃度COガス(太陽東洋酸素株式会社作成、CO100ppm)をCOオキシメータ-で50〜100ppmに調節(1〜1.5リットル/分に相当)の上、12時間吸入する。なお、酸素による生理的影響を除外する為、ガス吸入口で吸入酸素濃度(FiO2)を測定して、CO吸入前のFiO2を調節する。
また、気合製剤の投与期間としては、就寝時に、低濃度COを鼻カヌラ103にて12時間吸入する。この間、基本的に安静臥床であるが、トイレ等は自由である。尚、本臨床実験例では鼻カヌラ103を用いて説明を行っているが、患者は鼻カヌラ以外、吸引用マスク等を使用しても構わない。また、投与期間に関しては本臨床実験例では12時間としているが、12時間に限定されるものではなく、最低1時間、好ましくは6時間以上の吸入を行うことが望ましい。
そして、本臨床実験では、一酸化炭素を患者が吸引するため、予測される危険である一酸化炭素中毒に対して配慮する必要がある。
CO吸入により、血液中でCO-Hbを形成し、ヘモグロビンによる組織への酸素運搬を妨げ、又、生成されたCO-Hbにより、残りの酸素ヘモグロビンの解離が障害され、組織への酸素供給がより一層妨げられる。更に高濃度COはミオグロビンと結合して(ヘモグロビンに比べると親和性は小さい)心筋の機能を抑制し、血圧低下、虚血を起こして、低酸素状態をより悪化させる。一般にCO-Hbの濃度と臨床症状300は[表3]のとおりである。
COの毒性は、1時間程度の曝露では、600〜700ppmから酸素不足による症状が出現し、1,000ppm以上になると重篤な症状が出現し、1,500ppm以上では生命に危険が及ぶ。
本臨床実験例では、許容濃度とされる50〜100ppmで行う。更に、低濃度CO吸入前、吸入4時間後、吸入8時間後、吸入12時間後(吸入終了後)、吸入中止6時間、12時間と動脈CO-Hb濃度を動脈血ガス分析装置ABL620によって測定し、症状出現と併せてモニタリングを行う。
従って、本実験ではCO-Hb8%以下を基準に設けている為、通常、症状や容態の悪化を認めることはないと考える。しかしながら、CO-Hb濃度が8%以上を認めた場合、及びその濃度相当の症状を認めた場合は、即刻、吸入中止とする。
(臨床実験結果)
以下、[表4]、[表5]及び[表6]を参照して本臨床実験例の結果を示す。
最初に、COヘモグロビンに関しては、[表4]の400の408〜411に示すように、12時間のCO吸入によって静脈血中vHb-CO濃度は0.2〜0.8%増加した。なお、吸入前動脈血中aHb-CO:0.54±0.06%、吸入後動脈血中aHb-CO:0.99±0.10%、p=0.0001である。そして、12時間吸入後の最高aHb-CO濃度は1.6%程度であり、軽度喫煙者相当のaHb-CO濃度であった。このことにより、一酸化炭素中毒程度のHb-CO濃度には至っておらず本療法が明らかに安全であることが確認できた。
次に、ヒュー・ジョーンズ評価に関しては、本臨床実験例において、[表5]の504及び505に示すように、Hugh-Jones評価による呼吸困難感の改善は評価可能な7人中5人で認められた。なお、CO吸入前:4.0±0.4 points、CO吸入後:3.6±0.3 points、p=0.0082である。以上から、本発明により患者の呼吸困難感を低減させていることが分かる。なお、患者への呼吸困難感の緩和効果は2〜3日継続するものである。
そして、ボルグスコアに関しては[表5]の502及び503に示すように、Borg scoreの改善は評価可能な4人中2人で認められた(CO吸入前:8.9±3.7 points、CO吸入後:7.9±2.4 points、p=0.5943)。このことより、本発明が患者の呼吸困難感を緩和させていることがわかる。なお、慢性肺疾患の運動耐性能を検討するために行われる6分間歩行距離計測ではCO吸入前の218±124mに対して、CO吸入後は266±160mと増加した。このことから、CO吸入療法は十分に慢性肺疾患症例の運動耐性能向上効果が期待できると考えられる。
平均肺動脈圧に関しては、[表4]の407に示すように、平均肺動脈圧は正常値25mmHg以下とされているが、本症例ではCO吸入前は46.6±4.9mmHgであったが、吸入後は33.1±3.1mmHgであり、CO吸入によって有意に(p=0.0119)平均肺動脈圧の改善が認められた。このことにより、本発明は肺高血圧を低下させていることがわかる。
また、エピネリン、ADP、コラーゲンに関しては、[表6]の601から606に示すように、CO吸入により11人中、4人でエピネリン(5μg/ml)による、6人でADP(5μM)による、5人でコラーゲン(3μg/ml)による血小板凝集抑制効果が認められた。このことにより、本発明が血小板の凝縮が低くしていることがわかり、抗血小板凝固作用を有し、例えば脳卒中にも適用できる可能性がある。
以上の説明より、肺高血圧症例における本発明に係る低濃度一酸化炭素を用いた吸入療法により、低濃度CO吸入後に有意な三尖弁閉鎖不全圧較差(TrPG)、QOLの改善(ボルグスコアの改善)等を認めた。従って、一酸化炭素により患者の肺高血圧症を緩和して呼吸困難感から来る患者への不快感を低減できるという作用効果を奏する。
また、上述のように、類似した治療としては、先天性心疾患に伴う肺高血圧緊急症に対して同じくグアニレート・サイクレースに作用して血管拡張効果を有する一酸化窒素吸入療法が既に集中治療室で本邦でも使用されている。しかし、COと異なりNOは易水溶性であり、活性酸素と活動的に結合し、活性窒素となり、長期間使用することにより血管内皮障害、DNA障害による発癌の可能性が否定できない。
従って、本発明に係る低濃度一酸化炭素を用いた気体製剤において、化学的に安定したCOは慢性呼吸不全などの長期にわたる吸入治療の必要性が考えられる病態に対して有効かつ安全に使用することができると考えられる。
なお、CO吸入療法の一酸化炭素中毒等への安全性のモニタリング手段としては、上述の本臨床試験で行われたとおり、動脈血もしくは静脈血Hb-CO濃度をモニターした。この結果、本発明は、喫煙症例でしばしば認められる動脈血Hb-CO濃度5%以下は十分な薬理効果をもたらすと考えられ、かつ安全性が担保できると考えられる。
また、本件発明は、以下の(1)、(2)のような治療用途として有意義である。
(1)12時間CO吸入後12時間休薬の用途
上記臨床実験において、発明者らは12時間の吸入で2〜3日に渡るCO吸入の臨床効果(息切れ感の改善)を認めている。
そもそも、COやNOはネガティブ・フィードバックと呼ばれ、過剰なCOやNOは、それぞれの産生酵素である誘導型ヘムオキシゲナーゼ−1(HO-1)や誘導型一酸化窒素合成酵素の発現を抑制してしまい、それ以上多くのCOやNOが増えないように調節する自動調整機能を持つ。これにより、生体はCOやNOによる行き過ぎた薬理効果を、ホメオスターシスを守るために自己調節していると考えられる。したがって、持続的にCOを吸入させることは、治療効果への耐性化をもたらし、結局そのCO持続吸入では臨床効果が長続きせずに一過性で終わるという致命的な治療方法のデザインミスを犯している。
そこで、発明者らは、そのようなCOのネガティブ・フィードバック効果まで考慮して、夜間に12時間CO吸入して昼間に12時間CO休薬(つまり、12時間の投与期間の後に、12時間の非投与期間を設ける)というリーズナブルなデザインの臨床試験を行った。これによって、生体内でのCOガス濃度は増加・減少の緩急・変化がついてCOに対する生体の耐性化の獲得を予防するという効果が奏される。この周期を繰り返していけば、長期間CO吸入による良い臨床効果を持続できると考えられる。
このような医学的な効果に加えて、さらに、現実的な効果として、夜間に12時間CO吸入することによって、以下のメリットがある。
(i)患者は日中重くて煩わしいCOボンベを使用せずにいられる。
(ii)COガス仕様密度の節約化に伴う、CO吸入療法システム維持費のコストダウンを図れる(COボンベを頻繁に患者さんに届ける輸送の必要性が減る)。
(iii)患者が日中移動時にCOガスボンベを持ち歩かないことにより、不意にCO投与量調節ダイヤルが動くことによるCO過剰投与のリスク軽減につながる。更に、安全で確実に適切なCOガスを呼吸の吸気時に同調させるCO吸入調節器を開発することによって、より安全なCO吸入療法を確立できる。
(2)CO吸入療法を在宅酸素療法で既に気体の吸入療法を受けている症例で行うことができる。
気体吸入治療を受けていない患者よりも、既に期待吸入療法を受けている患者の方がCO吸入療法に対する抵抗感がなく、コンプライアンスが良いと考えられる。よって、在宅酸素療法に併用したCO吸入療法という用途が有意義である。
なお、本発明に係る治療法は、上述の肺高血圧症により在宅酸素療法を行っている症例の呼吸困難感を改善するのみならず、慢性的弁膜症、陳旧性心筋梗塞や拡張型心筋症などによる高度左心不全、収縮性心膜炎、左房粘液腫、心房中隔欠損症や心室中隔欠損症などによる心内左−右短絡疾患、動脈管開損症、末梢性動静脈短絡、先天性心疾患によるEisenmenger症候群、肺血管炎、膠原病、陳旧性肺結核、間質性肺炎、肺血栓塞栓症、各種癌の肺動脈転移、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、慢性閉塞性肺疾患などの呼吸困難感の緩和によるQOLの改善などの幅広い応用が考えられる。また、低酸素状態になれば低酸素性肺血管攣縮発症するものに対しても用いることができる。さらに、本発明に係る治療法は、肺性心、肺高血圧症による右心負荷、慢性炎症に伴う肺動脈血栓症、慢性呼吸不全、又は癌終末期の患者にも適用できる。
また、本発明に係る気体製剤及び吸入療法は、動脈血一酸化炭素ヘモグロビン濃度を安全に増加させる方法として用いることもできる。ここで、動脈血一酸化炭素ヘモグロビン濃度の増加は、炎症、感染症、重金属の暴露に対して内因性にホメオスターシスにより生体が自分の体を守るための自衛策である。このような治療法は、煙草の煙以下の一酸化炭素ガス濃度で煙草のような発癌性の成分を含まずに安全に、かつ、人工的に、動脈血一酸化炭素ヘモグロビン濃度を増加させて生体生命を守るという意義がある。
また、本発明に係る気体製剤及び吸入療法は、ウイルス性呼吸器感染症、例えば、炎症性肺疾患におけるヒトライノウイルス14型(RV14)の気道上皮細胞への感染の抑制効果とそれに基づく急性増悪の抑制効果があることも判明している。
慢性閉塞性肺疾患症例(COPD)などの慢性炎症性肺疾患では、気道上皮細胞においてウイルス受容体が炎症により増加し、健常人よりもウイルス感染を起こし易くなっている。このような、呼吸器感染症ウイルスは他にRSウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルスなど多数あるが、その中でもRV14はウイルス性呼吸器感染症の大多数を占めて、強い感染性を持ち、強い炎症を起こす。COPD症例では、RV14感染すると、急性増悪という炎症の悪化とCOPDの病態の悪化を引き起こし、COPD症例の生存時間を減少させ、QOLを低下させることが知られている。
本発明のCO吸入によれば、ウイルス感染に続発した炎症の軽減効果だけでなく、炎症を起こす前段階のRV14感染のリスク軽減とヒト気道上皮細胞内のヒトRV14ウイルス・メッセンジャーRNAの増幅抑制効果が発揮されることが、発明者らによって確認されている。つまり、RV14感染を抑制することはCOPD症例における通年性急性増悪回数の減少につながることを発明者らは確認している。L-carbocisteineがRV14感染の抑制効果があり、COPDの急性増悪回数抑制効果があることは既に報告されているが、CO吸入によってこのような効果が発揮されることついてはまだ報告されていない。
以下、CO吸入によるRV14感染の抑制効果の確認実験(図2(a))とその結果(図2(b))について詳細に説明する。
図2(a)に示されるように、まず、ヒト気道上皮細胞を培養試験管内に充足(コンフレント)になるまで培養した。培養してコンフレントになったヒト気道上皮細胞にRV14を感染させる前に毎日連続3日間100ppmのCOで泡を立ててCOを細胞に暴露した。さらにコンフレントになった後にヒト気道上皮細胞を1x104 TCID50・mL-1 の主要型RV14に1時間暴露して感染させ、毎日連続3日間100ppmのCOで泡を立ててCOを細胞に暴露したことによるRV14感染の抑制効果について検討した。そして、リン酸緩衝溶液で培養細胞を濯いだ後に、ヒト気道上皮細胞を回収するまで更に培養した。ヒト気道上皮細胞はRV14感染後1時間、24時間、72時間に回収され、そのRNAを抽出した。
ヒト気道上皮細胞の中のRV14mRNAの定性的検討は、半定量性逆転写酵素ポリメラーゼ反応法(RT-PCR法)で検討した。
細胞内のRV14mRNAと内部コントロールであるグリセルアルデヒド−3−ホスホデヒドロゲナーゼ(GAPDH)mRNAを定量するために、定量性RT-PCR法を、タックマン手技を用いて行った。RV2とRV14のフォアード・プライマーとして5'-GCACTTCTGTTTCCCC-3'を、リバース・プライマーとして5'-CGGACA CCCAAAGTAG-3'を用いた。RV14検出用のタックマン・プローブとして5'-[FAM] CGAGGTATAG GCTGTACCC ACTGCCAAAA [TAMRA]-3'を用いた。PCR検出用の至適プローブとプライマーはプライマーエキスプレスを使用してデザインした。
以上の実験の結果、図2(b)に示されるように、RV14感染72時間後のGAPDHに対するRV14 mRNAの相対比はCOバブリングしなかったものに比べて、COバブリングしたものでは優位に減少していた。しかし、RV14感染24時間後では、ヒト気道上皮細胞内のRV14mRNAは、COバブリングしなかったものと、COバブリングしたものの間に差は認められなかった。
以上のことから、ヒト気道上皮細胞へのRV14感染前後でCOバブリングすることによって細胞内のRV14mRNA増幅への抑制効果が確認された。
以上のように、本発明に係る気体製剤及び吸入療法により、肺高血圧症例における肺高血圧が軽減されるとともに運動耐性能が向上されたり、慢性肺疾患における呼吸困難感が改善されたり、炎症性肺疾患におけるヒトライノウイルス14型(RV14)の気道上皮細胞への感染等のウイルス性呼吸器感染症が抑制・予防されたり、それに基づく急性増悪が抑制されたりする。
さらに、本発明を、動脈血一酸化炭素ヘモグロビン濃度を安全に増加させる方法として適用することで、煙草の煙以下の一酸化炭素ガス濃度で煙草のような発癌性の成分を含まずに安全に、かつ、人工的に、動脈血一酸化炭素ヘモグロビン濃度を増加させて生体生命を守ることができる。
以上、本発明に係る気体製剤及び吸入療法について、実施の形態及び実験例に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施の形態及び実験例に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、実施の形態及び実験例における例示を抽象化して得られる形態も、本発明に含まれる。
本発明に係る低濃度一酸化炭素を含む気体製剤は、全ての呼吸困難感を伴う疾患、例えば、肺高血圧症、慢性的弁膜症、陳旧性心筋梗塞や拡張型心筋症などによる高度左心不全、収縮性心膜炎、左房粘液腫、心房中隔欠損症や心室中隔欠損症などによる心内左−右短絡疾患、動脈管開損症、末梢性動静脈短絡、先天性心疾患によるEisenmenger症候群、肺血管炎、膠原病、陳旧性肺結核、間質性肺炎、肺血栓塞栓症、各種癌の肺動脈転移、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、慢性閉塞性肺疾患を含む慢性肺疾患などの気体吸入治療において用いることができる。また、動脈血一酸化炭素ヘモグロビン濃度を安全に増加させる方法としても利用できる。
101 酸素ボンベ
102 一酸化炭素及び窒素用ボンベ
103 鼻カヌラ
104 患者

Claims (5)

  1. ウイルス性呼吸器感染症を予防するための気体吸入療法、又は、肺高血圧症を伴う疾患を有する患者の運動耐性能を向上させるための気体吸入療法に用いる気体製剤であって、
    前記ウイルス性呼吸器感染症には、炎症性肺疾患を有する患者におけるヒトライノウイルス14型(RV14)の気道上皮細胞への感染であり、
    前記肺高血圧症を伴う疾患には、原発性肺高血圧症、慢性的弁膜症、陳旧性心筋梗塞や拡張型心筋症を含む高度左心不全、収縮性心膜炎、左房粘液腫、心房中隔欠損症や心室中隔欠損症を含む心内左−右短絡疾患、動脈管開損症、末梢性動静脈短絡、先天性心疾患によるEisenmenger症候群、肺血管炎、膠原病に伴う肺高血圧症、低酸素性肺血管攣縮、陳旧性肺結核、間質性肺炎、肺血栓塞栓症、各種癌の肺動脈転移、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、慢性閉塞性肺疾患のいずれかが含まれ、
    当該気体製剤には少なくとも一酸化炭素が含まれ、
    患者が吸入する前記気体製剤の前記一酸化炭素の濃度は、20ppm以上300ppm未満である
    ことを特徴とする気体製剤。
  2. 患者が吸入する前記気体製剤の前記一酸化炭素の濃度は、40ppm以上100ppm未満である
    ことを特徴とする請求項1記載の気体製剤。
  3. 前記気体製剤には、さらに酸素及び窒素が含まれ、前記一酸化炭素の濃度は、当該酸素及び窒素に対する濃度であり、
    在宅酸素療法で用いられる量と同量の酸素が一酸化炭素とともに患者に吸入される
    ことを特徴とする請求項1又は2記載の気体製剤。
  4. 前記疾患には、さらに、肺性心、肺高血圧症による右心負荷、慢性炎症に伴う肺動脈血栓症、慢性呼吸不全、又は癌終末期が含まれる
    ことを特徴とする請求項1記載の気体製剤。
  5. 前記気体製剤はさらに、動脈血一酸化炭素ヘモグロビン濃度を安全に増加させるための気体吸入療法に用いられる
    ことを特徴とする請求項1記載の気体製剤。
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