以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。かかる実施の形態に示す寸法、材料、その他の具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。
図1は、本発明の実施の形態に係わる蒸気供給制御装置が適用される蒸気供給システムの全体概要図である。蒸気供給システムは、複数の発電ユニット11A、11B、11Cを有した発電所と、発電所内で使用される補助蒸気を送る補助蒸気系統12と、発電所外で使用される所外蒸気を送る所外蒸気系統13とから構成される。図1では3台の発電ユニット11A、11B、11Cを有した発電所を示している。
各々の発電ユニット11A、11B、11Cは同一構成であるので、発電ユニット11Aについて説明する。発電ユニット11Aは、空気を圧縮する圧縮機14Aと、圧縮機14Aで圧縮された空気と燃料とを燃焼させる燃焼器15Aと、燃焼器15Aの燃焼ガスにより駆動されるガスタービン16Aと、燃焼ガスの排熱を利用して蒸気を生成する排熱回収ボイラ17Aと、排熱回収ボイラ17Aで生成された蒸気により駆動される蒸気タービン18Aと、ガスタービン16A及び排熱回収ボイラ17Aからの回転駆動により発電する発電機19Aとから構成される。なお、図1では、発電ユニット11Aはガスタービン16Aと蒸気タービン18Aとを備えたコンバインドサイクル発電ユニットを示したが、蒸気ボイラで蒸気を生成し、生成された蒸気で蒸気タービンを駆動するようにした発電ユニットであってもよい。
補助蒸気系統12には、発電ユニット11A、11B、11C毎に補助蒸気の供給を制御する補助蒸気弁20A、20B、20Cが設けられ、発電ユニット11A、11B、11C内に補助蒸気を供給する補助蒸気配管21A、21B、21Cを有している。そして、補助蒸気弁20A、20B、20Cの近傍には、発電ユニット11A、11B、11Cの排熱回収ボイラ17A、17B、17Cから補助蒸気弁20A、20B、20Cを介して供給される補助蒸気流量を検出する補助蒸気供給流量検出部22A、22B、22Cが設けられている。
また、所外蒸気系統13には、発電ユニット11A、11B、11C毎に所外蒸気の供給を制御する所外蒸気弁23A、23B、23Cが設けられている。そして、所外蒸気弁23A、23B、23Cの近傍には、発電ユニット11A、11B、11Cの排熱回収ボイラ17A、17B、17Cから所外蒸気弁23A、23B、23Cを介して発電所外に供給される所外蒸気の蒸気流量を検出する所外蒸気流量検出部24A、24B、24C及び所外蒸気の蒸気圧力を検出する所外蒸気圧力検出部25A、25B、25Cが設けられている。
補助蒸気供給流量検出部22A、22B、22Cで検出された補助蒸気供給流量、所外蒸気流量検出部24A、24B、24Cで検出された所外蒸気流量、及び所外蒸気圧力検出部25A、25B、25Cで検出された所外蒸気圧力は、蒸気供給制御装置26に入力される。
蒸気供給制御装置26は、各々の発電ユニット11A、11B、11Cの運転状況(運転状態、停止状態、起動状態)を入力し、運転状況に応じて補助蒸気又は所外蒸気を供給する発電ユニットを割り当て、補助蒸気弁20A、20B、20C、所外蒸気弁23A、23B、23Cの開度を制御する。
図2は本発明の実施の形態に係わる蒸気供給制御装置26の構成図である。蒸気供給制御装置26は、各々の発電ユニット11A、11B、11Cの運転状況(運転状態、停止状態、起動状態)、補助蒸気供給流量検出部22A、22B、22Cで検出された補助蒸気流量、所外蒸気流量検出部24A、24B、24Cで検出された所外蒸気の蒸気流量、所外蒸気圧力検出部25A、25B、25Cで検出された所外蒸気の蒸気圧力をプロセス入力部27により入力し、プロセス入力部27で入力された各々の発電ユニット11A、11B、11Cの運転状況は供給元決定部28に入力され、補助蒸気流量は供給流量設定部30A、30B、30Cに入力され、所外蒸気の蒸気流量及び所外蒸気圧力は供給制御部32A、32B、32Cに入力される。
供給元決定部28は、各々の発電ユニット11A、11B、11Cの運転状況に応じて各々の発電ユニット11A、11B、11Cに対して、補助蒸気あるいは所外蒸気を供給する蒸気供給元を割り当てるものである。供給元決定部28で蒸気供給元が割り当てられると、その割当情報は、補助蒸気弁駆動部29A、29B、29C、供給流量設定部30A、30B、30C及び供給圧力設定部31A、31B、31Cに入力される。
補助蒸気弁駆動部29A、29B、29Cは、補助蒸気を供給する供給元に割り当てられた発電ユニット11A、11B、11Cの補助蒸気弁20A、20B、20Cを開閉駆動するものである。
供給流量設定部30A、30B、30Cは、所外蒸気を供給する蒸気供給元に割り当てられた発電ユニット11A、11B、11Cの所外蒸気の供給流量の流量設定値を設定するものであり、流量設定値としては、後述するように、発電ユニット11A、11B、11Cが供給可能な所外蒸気の最大流量が設定される。また、供給圧力設定部31A、31B、31Cは、蒸気供給元に割り当てられた発電ユニット11A、11B、11Cの所外蒸気の供給圧力の圧力設定値を設定するものである。
そして、供給制御部32A、32B、32Cは、所外蒸気流量検出部24A、24B、24Cで検出された所外蒸気の供給流量が流量設定値以下になるように、また、所外蒸気圧力検出部25A、25B、25Cで検出された所外蒸気の供給圧力が圧力設定値になるように所外蒸気弁23A、23B、23Cの開度を調節するものである。
すなわち、所外蒸気を供給する蒸気供給元に割り当てられた発電ユニット11A、11B、11Cの所外蒸気弁23A、23B、23Cの開度は、所外蒸気の蒸気流量が発電ユニット11A、11B、11Cの供給可能な所外蒸気の最大流量未満のときは、所外蒸気の供給圧力が供給圧力設定部31A、31B、31Cに設定された圧力設定値になるように制御し、所外蒸気の蒸気流量が発電ユニット11A、11B、11Cの供給可能な所外蒸気の最大流量となったときは、所外蒸気の供給流量が供給流量設定部30A、30B、30Cに設定された流量設定値になるように制御する。この詳細は後述する。
図3は本発明の実施の形態に係わる蒸気供給制御装置26の供給元決定部28の詳細図である。供給元決定部28は、プロセス入力部27から入力される各々の発電ユニット11A、11B、11Cの運転状況(運転、停止、起動)を運転台数判定部33により入力し、運転台数判定部33は各々の発電ユニット11A、11B、11Cのいずれが運転中であるか判定する。
供給元割当部34は、運転中の発電ユニット11が2台以上ある場合には、運転中の1台の発電ユニット11を所外蒸気供給元とし、運転中の他の1台の発電ユニット11を補助蒸気供給元として決定する。残りの発電ユニット11については蒸気供給元の割り当てをしない。また、補助蒸気供給元として決定した発電ユニット11を所外蒸気待機元として割り当てることも可能である。所外蒸気待機元に割り当てられた発電ユニット11は、所外蒸気の供給をバックアップする発電ユニット11でありその詳細は後述する。一方、運転中の発電ユニット11が1台のみの場合(2台の発電ユニット11の運転中に一方がトリップした場合を含む)には、運転中の発電ユニット11を所外蒸気供給元かつ補助蒸気供給元と決定する。
供給元割当部34は、所外蒸気供給元として割り当てた発電ユニット11の供給流量設定部30に所外蒸気選択信号S1を出力し、補助蒸気供給元として割り当てた発電ユニット11の供給流量設定部30及び補助蒸気弁駆動部30に補助蒸気選択信号S2を出力する。また、所外蒸気待機元として割り当てた発電ユニット11の供給流量設定部30に所外蒸気待機信号S3を出力し、所外蒸気待機元として割り当てた発電ユニット11があるときは他の発電ユニット11の供給流量設定部30に他発電ユニット所外蒸気待機信号S4を出力する。
図4は本発明の実施の形態に係わる蒸気供給制御装置26の実施例1の構成図である。図4では蒸気供給制御装置26の主要部のみを示している。この実施例1の供給流量設定部30は、所外蒸気の供給流量の流量設定初期値として予め定めた設計流量SV1を設定し、所外蒸気供給元かつ補助蒸気供給元に割り当てられたとき(所外蒸気選択信号S1かつ補助蒸気選択信号S2を入力したとき)は、所外蒸気の供給流量の流量設定値として設計流量SV1から補助蒸気弁20を介して供給される補助蒸気供給流量Fを減じた値を設定するようにしたものである。また、この実施例1の供給圧力設定部31は、所外蒸気の供給圧力の圧力設定初期値として予め定めた設計圧力SV4を設定する。
図4に示すように、実施例1の供給流量設定部30は、所外蒸気の設計流量SV1が設定された設定器35を有し、常時、低値優先回路36に設計流量SV1を出力している。また、供給元割当部34から所外蒸気選択信号S1が入力されたときは、否定回路37を通して供給制御部32の第1切替器38に出力する。ここで、切替器は切替信号の論理値「1」、「0」により、出力信号を切り替えるものである。
供給流量設定部30の第2切替器39は、切替信号の論理値「1」であるときは減算器40の出力を選択し、切替信号の論理値「0」であるときは設定器41の出力を選択するものである。すなわち、供給元決定部28から所外蒸気選択信号S1かつ補助蒸気選択信号S2が入力されたとき減算器40の出力(設定器42に設定された所外蒸気の設計流量SV1から補助蒸気供給流量Fを減じた値)を選択して低値優先回路36に出力し、所外蒸気選択信号S1かつ補助蒸気選択信号S2が入力されていないときは設定器41に設定された所外蒸気の設計流量SV1を選択して低値優先回路36に出力する。
従って、供給元割当部34から所外蒸気選択信号S1のみが入力されたときは、低値優先回路36には、設定器35からの所外蒸気の設計流量SV1及び設定器42に設定された所外蒸気の設計流量SV1が第2切替器39で選択されて入力される。従って、低値優先回路36は設計流量SV1を所外蒸気の蒸気流量として供給制御部32に出力する。
一方、供給元割当部34から所外蒸気選択信号S1かつ補助蒸気選択信号S2が入力されたときは、設定器35からの所外蒸気の設計流量SV1及び減算器40の出力(設定器42に設定された所外蒸気の設計流量SV1から補助蒸気供給流量Fを減じた値)が第2切替器39で選択されて入力される。従って、低値優先回路36は、設計流量SV1から補助蒸気供給流量Fを減じた値を所外蒸気の蒸気流量として供給制御部32に出力する。
供給制御部32は、所外蒸気流量検出部24で検出された所外蒸気の供給流量と供給流量設定部30で設定された流量設定値とを入力し、減算器43で所外蒸気の供給流量と供給流量設定部30で設定された流量設定値との差分を求め、調節器45に出力する。これにより、調節器45は、所外蒸気の供給流量が供給流量設定部30に設定された流量設定値になるように、所外蒸気弁23の開度を調節する制御指令を演算し低値優先回路46に出力する。
次に、供給圧力設定部31は、所外蒸気の設計圧力SV4が設定された設定器47を有し、常時、供給制御部32の減算器48に圧力設定値として設計圧力SV4を出力している。供給制御部32の減算器48は、供給圧力設定部31からの圧力設定値は、供給制御部32の減算器48に入力され、所外蒸気圧力検出部25で検出された所外蒸気の蒸気圧力との差分が演算される。この圧力差分は調節器49に入力され、調節器49にて所外蒸気供給圧力が供給圧力設定値となるように最適な弁開度を演算し低値優先回路46に出力する。
低値優先回路46では、調節器45で演算された流量偏差の制御指令と、調節器49で演算された圧力偏差の制御指令とのうち小さい方を選択して、第1切替器38に出力する。
第1切替器38は、切替信号が論理値「1」であるときは設定器44の出力を選択し、切替信号の論理値「0」であるときは低値優先回路46の出力を選択する。すなわち、供給元決定部28から所外蒸気選択信号S1が入力されているときは、供給流量設定部30の否定回路37により、切替信号は論理値「0」となるので、低値優先回路46の出力を所外蒸気弁23に出力する。これにより、供給制御部32は、所外蒸気選択信号S1が入力されているときは、所外蒸気の供給流量が供給流量設定部30に設定された流量設定値になるように、あるいは所外蒸気供給圧力が供給圧力設定値となるように所外蒸気弁23の開度を調節する。 所外蒸気の供給流量が少ない間は、同じ調節弁開度であっても減算器43で演算された流量偏差よりも、演算器48で演算された圧力偏差の方が小さい。よって、流量偏差を調節する調節器45で演算された最適な弁開度よりも、圧力偏差を調節する調節器49で演算された最適な弁開度の方が小さくなる。従って、供給制御部32は、所外蒸気弁23を介して供給される所外蒸気の供給圧力が供給圧力設定値となるように所外蒸気弁23の開度を制御することになる。
流量偏差を調節する調節器45で演算された最適な弁開度の方が小さくなるのは、所外蒸気流量が最大流量となったときである。所外蒸気流量が最大流量の近傍となったときは圧力制御よりも流量制御を優先して所外蒸気流量を制限する。
一方、供給元決定部28から所外蒸気選択信号S1が入力されていないときは、供給流量設定部30の否定回路37により、切替信号は論理値「1」となるので、設定器44の出力を所外蒸気弁23に出力する。設定器44には零流量設定値「0」が設定されているので、供給元決定部28から所外蒸気選択信号S1が入力されていないときは、所外蒸気弁23の弁開度が全閉となる。
従って、供給制御部32は、所外蒸気の供給流量が最大設定値以下となるように所外蒸気弁23の開度を制御していることになる。
このように、実施例1の供給流量設定部30では、発電ユニット11が所外蒸気の供給可能な最大流量を所外蒸気の供給流量の最大設定値としており、発電ユニット11の所外蒸気の供給可能な最大流量は次の通りである。
(1)所外蒸気供給元のみに選択された発電ユニットの場合
設計流量SV1
(2)所外蒸気供給元かつ補助蒸気供給元に選択された発電ユニットの場合
設計流量SV1−補助蒸気供給流量F
特に、1台の発電ユニット11が所外蒸気供給元かつ補助蒸気供給元に選択された場合にも、必要な補助蒸気の供給を確保し、発電ユニット11の起動を維持したままで、可能な限り所外蒸気を送ることができる。また、所外蒸気の供給流量だけでなく供給圧力も制御対象とすることにより、総合的な蒸気制御を行うことができる。
次に、図5は本発明の実施の形態に係わる蒸気供給制御装置26の実施例2の構成図である。この実施例2は、図4に示した実施例1に対し、供給流量設定部30には、第3切替器50、供給元流量SV2が設定された設定器51、第4切替器52、待機元流量SV3が設定された設定器53、所外蒸気待機信号S3の論理値を反転する否定回路54を追加して設け、供給制御部32には、否定回路37の出力信号かつ否定回路54の出力信号が成立したとき論理値「1」を出力する論理積回路55を追加して設け、供給圧力設定部31には、第5切替器56、減算器57、設計圧力SV4が設定された設定器57、待機元圧力用バイアス値SV5が設定された設定器58、設計圧力SV4から待機元圧力用バイアス値SV5を減算した値を求める減算器59を追加して設けたものである。図4と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
供給元決定部28で自己の発電ユニット11が所外蒸気待機元に割り当てられたとき(第4切替器52が所外蒸気待機信号S3を入力したとき)は、所外蒸気の供給流量として予め定めた待機元流量SV3を設定し、供給元決定部28で自己の発電ユニット11が所外蒸気供給元に割り当てられ他の発電ユニットが所外蒸気待機元に割り当てられたとき(第3切替器50が所外蒸気選択信号S1及び他発電ユニット所外蒸気待機信号S4を入力したとき)は、所外蒸気の供給流量として設計流量SV1から待機元流量SV3を減じた供給元流量SV2を設定するようにしたものである。 供給流量設定部30は、供給元決定部28で自己の発電ユニット11が所外蒸気供給に割り当てられたとき(所外蒸気選択信号S1を入力したとき)は、否定回路37を介して供給制御部32の論理積回路55に論理値「0」の論理信号を出力し、所外蒸気供給に割り当てられていないときは供給制御部32の否定回路37を介して論理積回路55に論理値「1」の論理信号を出力する。
また、供給流量設定部30は、供給元決定部28で自己の発電ユニット11が所外蒸気供給元に割り当てられ、他の発電ユニットが所外蒸気待機元に割り当てられたとき(第3切替器50が所外蒸気選択信号S1及び他発電ユニット所外蒸気待機信号S4を入力したとき)は、第3切替器50は、所外蒸気の供給流量として設定器51に設定された供給元流量SV2を出力し、そうでないときは、設定器35に設定された設計流量SV1を選択して出力する。
また、供給元決定部28で自己の発電ユニット11が所外蒸気待機元に割り当てられたとき(所外蒸気待機信号S3を入力したとき)は、第4切替器52は、設定器53に設定された待機元流量SV3を低値優先回路36に出力するとともに、供給圧力設定部31の第5切替器56に論理値「1」の論理信号を出力する。さらに、否定回路54を介して供給制御部32の論理積回路55に論理値「0」の論理信号を出力する。一方、自己の発電ユニット11が所外蒸気待機元に割り当てられていないときは、第4切替器52は、第3切替器50の出力信号を低値優先回路36に出力するとともに、供給圧力設定部31の第5切替器56に論理値「0」の論理信号を出力する。さらに、否定回路54を介して供給制御部32の論理積回路55に論理値「1」の論理信号を出力する。
前述したように、論理積回路55は、否定回路37の出力信号かつ否定回路54の出力信号が成立したときに第1切替器38に論理値「1」の切替信号を出力するものであり、第1切替器38は切替信号が論理値「1」であるときは設定器44の出力(零開度設定値「0」)を選択するものであることから、自己の発電ユニット11が所外蒸気供給元かつ所外蒸気待機元に割り当てられていないときは所外蒸気弁23は全閉となる。
ここで、設定器51に設定される供給元流量SV2は、設計流量SV1に対し70%程度の流量が設定される。また、設定器53に設定される待機元流量SV3は、設計流量SV1に対して30%程度の流量が設定される。これは、所外蒸気待機元の発電ユニット11Bがある場合には、所外蒸気供給元の発電ユニット11Aからの蒸気の供給に余裕を持たせるためである。
いま、自己の発電ユニット11が所外蒸気供給元に選択されかつ他の発電ユニット11が所外蒸気待機元に選択されたとする。この場合、所外蒸気選択信号S1が否定回路37に入力され、所外蒸気選択信号S1かつ他発電ユニット所外蒸気待機信号S4が第3切替器50に入力される。第3切替器50には所外蒸気選択信号S1かつ他発電ユニット所外蒸気待機信号S4が入力されているので、第3切替器50は設定器51に設定された供給元流量SV2を出力する。第4切替器52には、所外蒸気待機信号S3が入力されていないので、第4切替器52は第3切替器50の出力値(供給元流量SV2)を低値優先回路36に出力する。
また、第2切替器39は、自己の発電ユニット11が補助蒸気供給元に選択されていないので、設定器41に設定された所外蒸気の設計流量SV1を選択して低値優先回路36に出力することになる。これにより、低値優先回路36は、第3切替器50の出力値(供給元流量SV2)を所外蒸気の蒸気流量として供給制御部32に出力する。
一方、自己の発電ユニット11が所外蒸気待機元に選択されたとする。第3切替器50には所外蒸気選択信号S1かつ他発電ユニット所外蒸気待機信号S4が入力されないので、設定器35に設定された設計流量を第4切替器52に出力することになるが、第4切替器52には、所外蒸気待機信号S3が入力されているので、第4切替器52は設定器53に設定された待機元流量SV3を選択して低値優先回路36に出力する。
また、第2切替器39は、自己の発電ユニット11が補助蒸気供給元に選択されていないので、設定器41に設定された所外蒸気の設計流量SV1を選択して低値優先回路36に出力することになる。これにより、低値優先回路36は、第4切替器44の出力値(待機元流量SV3)を所外蒸気の蒸気流量として供給制御部32に出力する。
一方、自己の発電ユニット11が所外蒸気待機元に選択されたときは、供給圧力設定部31の第5切替器56に論理値「1」の論理信号が入力される。供給圧力設定部31の第5切替器56は、自己の発電ユニット11が所外蒸気待機元に割り当てられたときは、減算器59で得られる待機元圧力SV6を供給圧力設定値として出力する。すなわち、設定器57に設定された設計圧力SV4から設定器58に設定された待機元圧力用バイアス値SV5を減算した待機元圧力SV6(=SV4−SV5)を所外蒸気の供給圧力設定値として出力する。待機元圧力用バイアス値SV5は、設計圧力SV4の5%程度の値が設定されるので、待機元圧力SV6は設計圧力SV4の95%程度の値となる。なお、第5切替器56は、供給元決定部28で自己の発電ユニット11が所外蒸気供給元に割り当てられたときは、設定器47に設定された設計圧力SV4を所外蒸気の供給圧力設定値として出力することになる。
従って、供給元決定部28で自己の発電ユニット11が所外蒸気供給元に割り当てられたときは、設計圧力SV4が所外蒸気の供給圧力設定値として出力され、供給元決定部28で自己の発電ユニット11が所外蒸気待機元に割り当てられたときは、待機元圧力SV6(=SV4−SV5)が所外蒸気の供給圧力設定値として出力される。
所外蒸気待機元に選択された発電ユニット11では、ウォーミングのために所外蒸気弁23を最低流量(設計流量SV1の10%程度)の開度だけ開いて所外蒸気系統13に最低流量だけ通気できる状態にしておく。この場合、供給圧力設定値は所外蒸気供給元の発電ユニット11の圧力設定値(設計圧力SV4)より低い待機元圧力SV6(=SV4−SV5)に設定されるので、所外蒸気の供給流量は、所外蒸気供給元の発電ユニット11から供給されることになる。従って、所外蒸気弁23を最低流量の開度だけ開いていても所外蒸気の供給流量はほとんど零である。
これにより、所外蒸気の供給流量が一定量以上増加した場合や、所外蒸気供給元に選択された発電ユニット11が何らかの原因でトリップした場合に、迅速に連続性を保って所外蒸気待機元からの供給に切り替えることができるようにしている。表1に実施例2における蒸気供給元決定部28での決定結果の一例を示す。
表1の上段に示すように、3台の発電ユニット11A、11B、11Cが運転中の場合には、1台の発電ユニット11Aを蒸気供給元に決定し、他の1台の発電ユニット11Bを補助蒸気供給元かつ所外蒸気待機元に決定し、残りの発電ユニット11Cは補助蒸気供給元及び所外蒸気供給元のいずれの割り当てもしない。これは、所外蒸気や補助蒸気を供給する発電ユニット11A、11Bは、一定の蒸気量を確保できるように出力が固定されるので、電力需要の変動に追随できるように出力制約を受けない発電ユニット11Cを設けて、発電所全体として出力を調整できるようにするためである。
表1の中段に示すように、2台の発電ユニット11が運転中の場合には、1台の発電ユニット11Aを所外蒸気供給元とし、他の発電ユニット11Bを補助蒸気供給元かつ所外蒸気待機元に決定する。
表1の下段に示すように、運転中の発電ユニット11が1台の場合(2台の発電ユニット11の運転中に一方がトリップした場合を含む)には、その発電ユニット11Aが所外蒸気供給元かつ補助蒸気供給元と決定され、所外蒸気待機元は設定されない。
図6は本発明の実施の形態における所外蒸気及び補助蒸気の供給の一例を示すタイムチャートである。この一例は、表1のうち、2台の発電ユニットの運転時において発電ユニット11Cの起動中に、所外蒸気供給元である発電ユニット11Aが何らかの原因でトリップした場合を対象としている。
いま、時点t1で停止中の発電ユニット11Cを起動するため起動操作を開始したとする。時点t1以前においては、発電ユニット11Aは、所外蒸気供給元の発電ユニットとして、設計流量SV1の70%程度の所外蒸気供給流量L1を供給しているとする。この所外蒸気供給流量L1は所外蒸気消費設備が要求している蒸気流量である。この場合、発電ユニット11Aは、発電ユニット11Bが所外蒸気待機元に割り当てられているので、所外蒸気の供給流量の流量設定値は供給元流量SV2(設計流量SV1の70%)に設定されている。
一方、発電ユニット11Bは、補助蒸気供給元及び所外蒸気供給元の発電ユニットとして、補助蒸気弁20Bは全開となっており、運転中の発電ユニット11A、11Bが要求している共通設備用の補助蒸気需要量を供給している。この補助蒸気需要量は、補助蒸気供給流量L2に示すように設計流量SV1の5%程度である。また、発電ユニット11Bは、所外蒸気待機元の発電ユニットとして所外蒸気弁23の開度を最低流量(設計流量SV1の10%程度)に相当する開度だけ開いている。なお、最低開度に開いているが、前述したように、供給圧力設定値は所外蒸気供給元の発電ユニット11の圧力設定値(設計圧力SV4)より低い待機元圧力SV6(=SV4−SV5)に設定されるので、所外蒸気の供給流量は、所外蒸気供給元の発電ユニット11Aから供給されることになり、所外蒸気の供給流量はほとんど零である。
時点t1で発電ユニット11Cが起動操作を開始すると、発電ユニット11Cの起動時の補助蒸気需要量L3は、段階的に増加しその後に段階的に減少する特性となる。すなわち、発電ユニット11Cは時点t1〜時点t2で補助蒸気需要量L3は設計流量SV1の0%から30%まで急激に増加し、時点t2〜時点t3では補助蒸気需要量L3は設計流量SV1の30%でほぼ一定量となり、時点t3〜時点t4でさらに補助蒸気需要量L3は設計流量SV1の30%から55%まで急激に増加し、時点t4〜時点t5では補助蒸気需要量L3は設計流量SV1の55%でほぼ一定量となる。そして、時点t5〜時点t6で補助蒸気需要量L3は設計流量SV1の55%から35%まで急激に減少し、時点t6〜時点t7では補助蒸気需要量L3は設計流量SV1の35%でほぼ一定量となり、時点t7〜時点t8で補助蒸気需要量L3は設計流量SV1の35%から0%まで急激に減少する。
この補助蒸気需要量L3の変化に伴い、発電ユニット11Bが供給する補助蒸気供給流量L2は、運転中の発電ユニット11A、11Bに供給する補助蒸気(設計流量SV1の5%)に補助蒸気需要量L3を加えたものとなる。すなわち、時点t2〜t3では発電ユニット11Bは、設計流量SV1の35%の補助蒸気供給流量L2、時点t4〜t5では発電ユニット11Bは、設計流量SV1の60%の補助蒸気供給流量L2、時点t6〜t7では発電ユニット11Bは、設計流量SV1の40%の補助蒸気供給流量L2を供給することになる。
このような発電ユニット11Cの起動過程において、所外蒸気供給元である発電ユニット11Aが時点taにトリップしたとする。時点ta以前においては、発電ユニット11Aは、所外蒸気消費設備が要求している設計流量SV1の70%程度の所外蒸気供給流量L1を供給している。
また、発電ユニット11Bは、時間ta以前においては、運転中の発電ユニット11A、11Bの共通設備が要求する補助蒸気需要量と、起動中の発電ユニット11Cが要求する補助蒸気需要量L3との合計の補助蒸気供給流量L2を供給するとともに、所外蒸気待機元として所外蒸気弁23の開度は最低流量(設計流量SV1の10%程度)に相当する開度だけ開いている。
発電ユニット11Aがトリップした時点ta以降においては、発電ユニット11Bが所外蒸気待機元から所外蒸気供給元に切り替わる。発電ユニット11Bは所外蒸気供給元に切り替わると、発電ユニット11Aが供給していた所外蒸気供給流量L1を供給すべく、一定の変化率で所外蒸気供給流量L4となるように供給流量を増加させようとする。つまり、設計流量SV1の60%の補助蒸気供給流量L2に、設計流量SV1の70%程度の所外蒸気供給流量L1を加算した所外蒸気供給流量L4(設計流量SV1の130%)となるように時点t5に向けて供給流量を増加させようとする。
発電ユニット11Aがトリップした時点taでは、起動中の発電ユニット11Cの起動用の補助蒸気需要量L3が最大(設計流量SV1の55%)であるため、発電ユニット11Bが供給すべき蒸気総需要量(補助蒸気+所外蒸気)は、設計流量SV1の130%となり設計流量SV1を超えている。
しかし、発電ユニット11Bでは、図5において、第1切替器35に所外蒸気選択信号S1が入力され、第2切替器39に所外蒸気選択信号S1及び補助蒸気選択信号S2が入力されるので、低値優先回路36では第2切替器39からの出力信号が選択されることになる。従って、一時的に所外蒸気の供給流量を式(2)の流量まで絞って、蒸気の総供給流量(補助蒸気+所外蒸気)が設計流量を超えないように制御する。
所外蒸気供給流量=設計流量SV1−補助蒸気供給流量F(L2) …(2)
例えば、設計流量SV1を100%としたときの補助蒸気供給流量L2は60%であるので、所外蒸気供給流量は40%(=100%−60%)まで制限される。従って、実際の総供給量L5は設計流量SV1の100%に制限される。
この制限は、所外蒸気の需要量と供給流量とのギャップが解消されるまで継続される(流量制限される範囲は図中の範囲A1)。例えば、前記の条件において、所外蒸気需要量L1を70%とすると、補助蒸気供給流量L2が時点t7’で30%以下になれば、設計流量SV1−補助蒸気供給流量L2が70%以上となるので、時点t7’において所外蒸気供給流量L1を70%とすることができる。
このように、2台の発電ユニット11A、11Bの運転時において発電ユニット11Cの起動中に、所外蒸気供給元である発電ユニット11Aが何らかの原因でトリップした場合であっても、起動中の発電ユニット11Cの起動用の補助蒸気流量を供給できるので、起動中の発電ユニット11Cがトリップするなど発電に支障が出ることを防止できる。また、補助蒸気供給元に割り当てられている発電ユニット11Bは所外蒸気待機元に割り当てられているので、所外蒸気の供給の連続性を確保できる。
次に、図7は本発明の実施の形態に係わる蒸気供給制御装置の実施例3の構成図である。この実施例3は、図5に示した実施例2に対し、補助蒸気弁20を介して供給される補助蒸気供給流量Fを予め定められた関数に基づき標準化する関数設定器60を備えたものである。
関数設定器60は、補助蒸気弁20を介して供給される補助蒸気供給流量Fを標準化された補助蒸気供給流量F0に変換し、減算器40は、設定器42に設定された設計流量SV1から関数設定器60で標準化された補助蒸気供給流量F0を減じた値を所外蒸気の供給流量として設定し、第2切替器39に出力する。
関数設定器60は、補助蒸気弁20を介して供給される補助蒸気供給流量Fを減算器61及び一次遅れ器62に入力し、補助蒸気供給流量Fが上昇したか下降したかを検出する。一次遅れ器62は補助蒸気供給流量検出部22から入力された補助蒸気供給流量Fの1ステップ前の補助蒸気供給流量F’を出力するものである。すなわち、減算器61には補助蒸気供給流量検出部22から現在の補助蒸気供給流量Fが入力されるとともに、一次遅れ器62から1ステップ前の補助蒸気供給流量F’が入力され、その差分が演算される。その差分は増減判定器63に入力され、増減判定器63は差分が0%以下(流量が減少傾向)の場合に信号「1」を出力し、その他の場合(流量が増加傾向の場合)には信号「0」を出力する。
また、関数設定器60は補助蒸気弁20を介して供給される補助蒸気供給流量Fを増加時用関数発生器64及び減少時用関数発生器65に入力する。増加時用関数発生器64は、補助蒸気供給流量Fが予め定めた閾値を超えて変化したときに、その閾値に対応する標準化された増加時用補助蒸気供給流量F0uを第6切替器66に出力し、減少時用関数発生器65は、補助蒸気供給流量Fが予め定めた閾値未満の状態に変化したときに、その閾値に対応する標準化された減少時用補助蒸気供給流量F0dを第6切替器66に出力する。
図8は、本発明の実施の形態における関数設定器60の増加時用関数発生器64及び減少時用関数発生器65の関数の一例を示す特性図である。図8(a)は、増加時用関数発生器64の関数の一例の特性図であり、標準化前の補助蒸気供給量に対し、2つの閾値S1、S2を設け、補助蒸気供給流量が最初の閾値S1を超えるまでは増加時用補助蒸気供給流量F0uとして最低流量Qs0(共通設備維持流量)とし、閾値S1以上かつ閾値S2未満では増加時用補助蒸気供給流量F0uとして第1流量Qs1とし、閾値S2以上では増加時用補助蒸気供給流量F0uとして第2流量Qs2(最大流量)としそれぞれ標準化する。
図8(b)は、減少時用関数発生器65の関数の一例の特性図であり、標準化前の補助蒸気供給量に対し、補助蒸気供給流量が閾値S3以上では減少時用補助蒸気供給流量F0dとして第2流量Qs2(最大流量)とし、閾値S1以上かつ閾値S3未満では減少時用補助蒸気供給流量F0dとして第3流量Qs3とし、閾値S1未満では減少時用補助蒸気供給流量F0dとして最低流量Qs0(共通設備維持流量)としそれぞれ標準化する。図8(a)に示した増加時用関数発生器64の関数に対し、異なる閾値S3を設定し、その閾値S3に対応した所定の補助蒸気供給流量F0dとして第3流量Qs3を用いている。これは、補助蒸気供給流量Fが増加傾向の場合と減少傾向の場合とで、特性が異なるため、その特性により近似させるためである。
第6切替器66は、増減判定器63の信号が「0」であるときは増加時用関数発生器64からの増加時用補助蒸気供給流量F0uを選択し、増減判定器63の信号が「1」であるときは減少時用関数発生器65からの減少時用補助蒸気供給流量F0dを選択して、標準化された補助蒸気供給流量F0として減算器40に出力する。
これにより、関数設定器60は、補助蒸気供給流量Fが予め定めた閾値近傍で増加したときは、標準化された増加時用補助蒸気供給流量F0uを減算器40に出力し、補助蒸気供給流量Fが予め定めた閾値近傍で減少したときは、標準化された減少時用補助蒸気供給流量F0dを減算器40に出力することになる。
図9は、停止中の発電ユニット11をコールド起動する際に供給すべき補助蒸気供給量L2cの一例を示すグラフである。コールド起動とは発電ユニット11が停止してからの時間が比較的長く蒸気タービンのメタル温度が下がっている状態で起動することをいう。発電ユニット11のコールド起動時には、補助蒸気供給量L2cは図9に示すようなパターンで推移する。
発電ユニット11のコールド起動時の補助蒸気供給量L2cは、図6に示した発電ユニット11Bの補助蒸気供給量L2と同様に、起動の時点t1以前においては、最低流量Qs0(共通設備維持流量=5%)であり、起動の時点t1以降においては段階的に増加した後に段階的に減少する。
すなわち、時点t1〜時点t2で補助蒸気供給量L2cは設計流量SV1の5%から約33%まで急激に増加し、時点t2〜時点t3では補助蒸気需要量L3cは設計流量SV1の33〜35%でほぼ一定量となり、時点t3〜時点t4でさらに補助蒸気供給量L2cは設計流量SV1の35%から60%まで急激に増加し、時点t4〜時点t5では補助蒸気供給量L2cは設計流量SV1の60%でほぼ一定量となる。そして、時点t5〜時点t6で補助蒸気供給量L2cは設計流量SV1の60%から約37%まで急激に減少し、時点t6〜時点t7では補助蒸気供給量L2cは設計流量SV1の約37%でほぼ一定量となり、時点t7〜時点t8で補助蒸気供給量L2cは設計流量SV1の37%から5%まで急激に減少する。
このように、発電ユニット11のコールド起動時の補助蒸気供給量L2cは、図9に示すように、実際には直線的に変化するのでなく、一定幅内で変動しながら変化する。また、蒸気流量が安定していても、外乱の影響を受けて補助蒸気供給流量検出器22の出力値が変動する場合もあるので、微少な変動や外乱の影響等を除外するために、補助蒸気供給流量L2cを標準化する。
補助蒸気供給流量L2cの標準化は以下のようにして行われる。まず、時点t1で補助蒸気供給流量L2cが予め定めた閾値S1を超え閾値S2以下の範囲に入ったので、増加時用関数発生器64は第1流量Qs1を第6切替器66に出力する。一方、減少時用関数発生器65は、補助蒸気供給流量L2cが予め定めた閾値S3の未満で閾値S1以上であるので、減少時用関数発生器65は第3流量Qs3を第6切替器66に出力する。この場合、減算器61で求められた現在の補助蒸気供給流量Fと1ステップ前の補助蒸気供給流量F’との差分は、0%以上(流量が増加方向)であるので、増減判定器63は第6切替器66に出力信号「1」を出力する。従って、第6切替器66は、増加時用関数発生器64からの第1流量Qs1を選択し減算器40に出力することになる。これにより、時点t1以降においては、補助蒸気供給流量L2cは第1流量Qs1で標準化されることになる。
同様に、時点t3になり、補助蒸気供給流量L2cが予め定めた閾値S2を超えた範囲に入ると、流量は増加方向であり、第6切替器66は、増加時用関数発生器64からの第2流量Qs2を選択し減算器40に出力することになり、時点t3以降においては、補助蒸気供給流量L2cは第2流量Qs2で標準化されることになる。
次に、時点t6になり、補助蒸気供給流量L2cが予め定めた閾値S3未満となると、流量は増加方向であり、補助蒸気供給流量L2cは予め定めた閾値S3未満で閾値S1以上の範囲に入ったので、第6切替器66は、減少時用関数発生器65からの第3流量Qs3を選択し減算器40に出力することになり、時点t6以降においては、補助蒸気供給流量L2cは第3流量Qs3で標準化されることになる。同様に、時点t8になり、補助蒸気供給流量L2cが予め定めた閾値S1未満の範囲に入ると、時点t8以降においては、補助蒸気供給流量L2cは最低流量Qs0(共通設備維持流量=5%)で標準化されることになる。
図10は、停止中の発電ユニット11をホット起動する際に供給すべき補助蒸気供給量L2hの一例を示すグラフである。ホット起動とは発電ユニット11が停止してからの時間が比較的短く蒸気タービンのメタル温度が所定温度以上の状態で起動することをいう。発電ユニット11のホット起動時には、補助蒸気供給量L2hは図10に示すようなパターンで推移する。図9に示したコールド起動する際の補助蒸気供給量L2cと比較し、時点t4〜時点t5での設計流量SV1の60%の領域が短く、時点t6〜時点t7での領域が事実上零に近い点が異なる。
停止中の発電ユニット11をホット起動する際に供給すべき補助蒸気供給量L2hについても、コールド起動する際に供給すべき補助蒸気供給量L2cの場合と同様に、補助蒸気供給流量L2hが所定の閾値S1、S2、S3で区分された範囲のどの範囲に属するかに応じて、補助蒸気供給量L2hを標準化することができる。
以上の説明では、補助蒸気供給流量L2が所定の閾値Sで区分された範囲のどの範囲に属するかに応じて所定の補助蒸気供給流量で標準化する場合について説明したが、発電ユニットのホットモード、ウォームモード、コールドモードに応じて、予めモードに応じた特定の変化パターン(経時変化)を記憶しておき、この変化パターンに沿うように補助蒸気供給流量L2を標準化するようにしてもよい。具体的には、蒸気タービンのメタル温度を温度計(図示しない)で計測し、計測された蒸気タービンのメタル温度に適した変化パターンを選定し、選定された変化パターンに沿うように前記補助蒸気供給流量を標準化する。
また、現在の補助蒸気供給流量Fと一次遅れ器62から得られる1ステップ前の補助蒸気供給流量F’との差分により、補助蒸気供給流量Fが上昇したか下降したかを判定するようにしたが、補助蒸気供給流量Fに移動平均により補助蒸気供給流量Fが上昇したか下降したかを判定するようにしてもよい。
この実施例3のように、補助蒸気供給流量L2を標準化し、模擬流量信号として出力することで、微少な変動や外乱の影響等を除外して、所外蒸気の供給流量制御を安定化させることができる。