JP5548955B2 - インフルエンザウイルス由来のrnaポリメラーゼ発現系構築と結晶化及び抗インフルエンザ薬のスクリーニング方法 - Google Patents

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Description

本発明は、インフルエンザウイルス由来のRNAポリメラーゼ発現系構築と結晶化及び抗インフルエンザ薬の有効成分となり得る物質のスクリーニング方法に関する。
インフルエンザウイルスは、マイナス鎖RNAをゲノムとして持つRNAウイルスである。インフルエンザウイルスの表現型又はゲノムの塩基配列は頻繁に変異し、場合により種の壁を超えて感染する。
A型インフルエンザウイルスは、ヒト及び動物の主要な病原体であり、世界的パンデミックを定期的に引き起こし、破局的な生命の損失をもたらす場合もある。最近アジアにおいて、病原性の高い型のヒトウイルスに関連するトリインフルエンザが出現したことから、新しい効果的な治療法が早急に必要であることが強調されている(非特許文献1)。
大多数の現在のインフルエンザ薬は、ウイルス表面に存在するヘマグルチニン(HA)又はノイラミニダーゼ(NA)のいずれかを標的とする。この2つの主要抗原はビリオン表面に存在し(非特許文献2)、16種類のHAサブタイプ及び9種類の異なるNAサブタイプが同定されている(非特許文献3)。このサブタイプの組み合わせにより、インフルエンザウイルスの型(例えば、H1N1型、H3N2型、H5N1型など)が決定される。例えば、オセルタミビル(「タミフル」として市販)とザナミビル(リレンザ)はNA阻害剤であり、ウイルス粒子が感染細胞から放出されることを防ぐ(非特許文献4〜7)。オセルタミビルは、新型インフルエンザのアジアでの流行の対応のために数十億ドルほどの予算をかけて備蓄された薬剤である。しかしながら、オセルタミビル耐性インフルエンザがすでに出現しており、またこの薬は副作用を有するため、小児への投与が制限されている。抗インフルエンザ薬のアマンタジンはM2タンパク質(ウイルスプロトンチャネル)を標的としており(非特許文献8)、また、別の薬剤が、インフルエンザ由来のM2タンパク質の立体構造に基づいて開発されている(非特許文献9)。しかしながら、M2タンパク質を標的とした薬物の場合、M2の単一の残基の変異によってウイルスが耐性を獲得できるため、多くの株に対して役に立たなくなる可能性がある。また、B型インフルエンザはM2を持たない。オセルタミビルとアマンダジンの両者は、単一の知られている機能とウイルス株の間で実質的な配列変異を獲得するタンパク質を標的とする。従って、ウイルスのライフサイクルにおける他のプロセスを破壊する新しいリード分子を開発する必要性がある。
インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼは、人への感染後、ウイルス増殖に関わる重要な役割を果たしているため、抗インフルエンザウイルス剤のターゲットとなり得る。しかしながら、ウイルスRNAポリメラーゼを標的としている薬物療法は現在のところ皆無である。ウイルスRNAポリメラーゼは、ウイルスが複製するための広範な役割を担っている(非特許文献10)。このポリメラーゼは、ヘテロ三量体の複合体からなり、全分子量がほぼ250 kDaであり、αサブユニット(PA)、βサブユニット1(PB1)及びβサブユニット2(PB2)から構成される(非特許文献11)。これらの3個のサブユニットのすべてが、転写と複製の両方に必要である(非特許文献12)。今までのところ、RNAポリメラーゼの構造に関する情報は、非常に限定されている(非特許文献13〜15)。また、RNAポリメラーゼの研究のカギとなるRNAポリメラーゼの大量発現方法についても、現時点で報告されていない。
Peiris, J. S. et al., Clin. Microbiol. Rev. 20, 243-267 (2007) Hsieh, H. P. & Hsu, J. T., Curr. Pharm. Des. 13, 3531-42 (2007) World Health Organization., Bull. World Health Organ. 58, 585-591 (1980) Kim, C. U. et al., J. Am. Chem. Soc. 119, 681-690 (1997) von Itzstein, M. et al., Nature 363, 418-423 (1993) Liu, Y., Zhang, J. & Xu, W., Curr. Med. Chem. 14, 2872-91 (2007) Russel, R. J. et al., Nature 443, 45-49 (2006) Wang, C. et al, J. Virol. 67, 5585-5594 (1993); and Stouffer, A. L. et al., Nature 451, 596-599 (2008) Jason R. Schnell and James J. Chou, Nature 451, 591-595 (2008) Braam, J. et al., Cell 34, 609-618 (1983) Horisberger, M. A. Virology 107, 302-305 (1980) Huang, T. S. et al., J. Virol. 64, 5669-5673 (1990) Area, E. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101, 308-313 (2004) Torreira, E. et al., Nucleic Acids Res. 35, 3774-3783 (2007) Tarendeau, F. et al., Nature Struct. Mol. Biol. 14, 299-233 (2007)
そこで、本発明は、インフルエンザウイルス由来のRNAポリメラーゼを大量発現させることを目的とする。また、本発明は、インフルエンザウイルス由来のRNAポリメラーゼを結晶化することを目的とする。さらに、本発明は、インフルエンザウイルスの種間で高度に保存されたタンパク質であるRNAポリメラーゼを標的とする抗インフルエンザ薬を開発することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行い、インフルエンザウイルス由来の遺伝子を用いて、RNAポリメラーゼPA-PB1鎖の複合体での発現系(大腸菌利用)構築と結晶化方法を確立した。
また、本発明者らは、PA-PB1複合体の構造解析を行った結果、RNAポリメラーゼを構成するαサブユニット(PA)とβサブユニット1(PB1)との相互作用部位の構造を特定することに成功した。そして、この部位に関与するアミノ酸配列がウイルス種間で高度に保存されており、上記相互作用部位が抗インフルエンザ薬の標的部位として有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)下記の(a1)、(a2)又は(a3)のポリペプチドと、下記の(b1)、(b2)又は(b3)のポリペプチドとを含む複合体。
(a1)配列番号6のアミノ酸配列からなるポリペプチド
(a2)配列番号6のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ(a1)のポリペプチドと同様の生物学的活性を有するポリペプチド
(a3)配列番号5のヌクレオチド配列からなるDNAに相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるポリペプチドであり、かつ(a1)のポリペプチドと同様の生物学的活性を有するポリペプチド
(b1)配列番号8のアミノ酸配列からなるポリペプチド
(b2)配列番号8のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ(b1)のポリペプチドと同様の生物学的活性を有するポリペプチド
(b3)配列番号7のヌクレオチド配列からなるDNAに相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるポリペプチドであり、かつ(b1)のポリペプチドと同様の生物学的活性を有するポリペプチド
(2)(a1)、(a2)又は(a3)のポリペプチドをコードするDNAと、(b1)、(b2)又は(b3)のポリペプチドをコードするDNAとを含有する組換えベクター。
(3)(a1)、(a2)又は(a3)のポリペプチドをコードするDNAと、(b1)、(b2)又は(b3)のポリペプチドをコードするDNAとを導入した形質転換細胞。
(4)(a1)、(a2)又は(a3)のポリペプチドをコードするDNAと、(b1)、(b2)又は(b3)のポリペプチドをコードするDNAとを導入した形質転換細胞を培養し、培養物から(1)に記載の複合体を採取することを含む、(1)に記載の複合体の製造方法。
(5)(1)に記載の複合体の結晶。
(6)空間群がP3221である(5)に記載の結晶。
(7)単位格子が、a=b=101.957±50.0Å、c=115.023±50.0Åの大きさを持つ(6)に記載の結晶。
(8)(1)に記載の複合体を沈殿剤の存在下に結晶化させることを含む、(1)に記載の複合体の結晶の製造方法。
(9)沈殿剤が蟻酸ナトリウムである(8)に記載の方法。
(10)下記の(a1)、(a2)又は(a3)のポリペプチド。
(a1)配列番号6のアミノ酸配列からなるポリペプチド
(a2)配列番号6のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ(a1)のポリペプチドと同様の生物学的活性を有するポリペプチド
(a3)配列番号5のヌクレオチド配列からなるDNAに相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるポリペプチドであり、かつ(a1)のポリペプチドと同様の生物学的活性を有するポリペプチド
(11)(10)に記載のポリペプチドをコードするDNA。
(12)(11)に記載のDNAを含有する組換えベクター。
(13)(10)に記載のポリペプチドをコードするDNAを導入した形質転換細胞。
(14)(10)に記載のポリペプチドをコードするDNAを導入した形質転換細胞を培養し、培養物から(10)に記載のポリペプチドを採取することを含む、(10)に記載のポリペプチドの製造方法。
(15)下記の(b1)、(b2)又は(b3)のポリペプチド。
(b1)配列番号8のアミノ酸配列からなるポリペプチド
(b2)配列番号8のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ(b1)のポリペプチドと同様の生物学的活性を有するポリペプチド
(b3)配列番号7のヌクレオチド配列からなるDNAに相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるポリペプチドであり、かつ(b1)のポリペプチドと同様の生物学的活性を有するポリペプチド
(16)(15)に記載のポリペプチドをコードするDNA。
(17)(15)に記載のDNAを含有する組換えベクター。
(18)(15)に記載のポリペプチドをコードするDNAを導入した形質転換細胞。
(19)(15)に記載のポリペプチドをコードするDNAを導入した形質転換細胞を培養し、培養物から(15)に記載のポリペプチドを採取することを含む、(15)に記載のポリペプチドの製造方法。
(20)候補物質の存在下で、インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼを構成するαサブユニット又はその部分断片とβサブユニット1又はその部分断片とを接触させ、前記αサブユニット又はその部分断片と前記βサブユニット1又はその部分断片との相互作用を阻害する物質を選択する工程を含む、抗インフルエンザ薬の有効成分となり得る物質のスクリーニング方法。
(21)αサブユニットが以下の(a)又は(b)のポリペプチドからなるものである上記(20)に記載の方法。
(a) 配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド
(b) 配列番号2で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼのαサブユニット活性を有するポリペプチド
(22) αサブユニットの部分断片が、以下の(a)又は(b)のポリペプチドからなるものである上記(20)に記載の方法。
(a) 配列番号2で表されるアミノ酸配列のC末端から130残基以内のアミノ酸配列からなるポリペプチド
(b) 配列番号2で表されるアミノ酸配列のC末端から130残基以内のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼのαサブユニット活性を有するポリペプチド
(23)βサブユニット1が以下の(a)又は(b)のポリペプチドからなるものである上記(20)に記載の方法。
(a) 配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド
(b) 配列番号4で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼのβサブユニット1活性を有するポリペプチド
(24)βサブユニット1の部分断片が、以下の(a)又は(b)のポリペプチドからなるものである上記(20)に記載の方法。
(a) 配列番号4で表されるアミノ酸配列のN末端から15残基以内のアミノ酸配列からなるポリペプチド
(b) 配列番号4で表されるアミノ酸配列のN末端から15残基以内のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼのβサブユニット1活性を有するポリペプチド
(25)αサブユニットの相互作用部位のアミノ酸残基が、配列番号2で表されるアミノ酸配列におけるGln408、Phe411、Asn412、Met595、Glu617、Thr618、Trp619、Pro620、Ile621、Glu623、Val636、Leu640、Leu666、Leu667、Gln670、Arg673、Trp706及びPhe710からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基である上記(20)〜(24)のいずれかに記載の方法。
(26)βサブユニット1の相互作用部位のアミノ酸残基が、配列番号4で表されるアミノ酸配列におけるMet1、Asp2、Val3、Asn4、Pro5、Thr6、Leu7、Leu8、Phe9、Leu10、Lys11、Val12、Pro13及びAla14からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基である、上記(20)〜(24)のいずれかに記載の方法。
(27)αサブユニットの相互作用部位のアミノ酸残基が、配列番号2で表されるアミノ酸配列におけるVal636、Leu640、Leu666及びTrp706からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基である上記(25)に記載の方法。
(28)βサブユニット1の相互作用部位のアミノ酸残基が、配列番号4で表されるアミノ酸配列におけるAsn4、Pro5、Thr6、Leu7、Leu8、Phe9及びLeu10からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基である、上記(26)に記載の方法。
(29)βサブユニット1の相互作用部位のアミノ酸残基が、配列番号4で表されるアミノ酸配列の5〜10番目のアミノ酸残基である上記(26)に記載の方法。
(31)候補物質が、化合物及びその塩、ペプチド、抗体並びに核酸からなる群から選択される少なくとも一種である、上記(20)〜(29)のいずれかに記載の方法。
本発明により、RNAポリメラーゼPA-PB1鎖の複合体を大量に発現させることが可能である。また、本発明により、タンパク質の立体構造解析のためのRNAポリメラーゼPA-PB1鎖の複合体の結晶を得ることができる。さらに、本発明により、抗インフルエンザ薬の有効成分となりうる物質のスクリーニング方法が提供される。PAとPB1との相互作用部位は、アミノ酸配列の高い保存領域であることから、インフルエンザウイルスの表現型やゲノムの変異とは関係なく、抗インフルエンザ薬を開発するための標的とすることができる。
図1は、PA-PB1複合体の全体構造を示すリボン図である。図1aは、PAのフォールドを示す全体のリボン図である。ヘリックスを赤、ストランドを黄色、コイルを緑に着色した。ヘリックスはN末端から番号付けした。PB1残基を濃青に着色した。主要なβシートは大部分が残基478-571から形成される。図1bは、ヘリックス10、11及び13からできた「クランプ」を見下ろす直交図である。PA-PB1複合体の二次構造エレメントを上段に示し、トリインフルエンザウイルス(H5N1)の配列とともに配列を示す。無秩序な領域は黒の破線で示す。アミノ酸残基は、保存レベルに対応する色コードで強調した。PAとPB1間の水素結合、赤;PAとPB1間の疎水接触、濃青。 図2は、ヒトインフルエンザ(H1N1)PA及びPB1とトリインフルエンザ(H5N1)PA及びPB1とのアミノ酸配列アラインメントを示す図である。 図3は、PAとPB1間の水素結合を示すスキーム図である。点線(青)は長さ2.4オングストローム-3.5オングストロームの水素結合を示す。 図4は、PB1が結合するPAの割れ目(cleft)を示す分子表面図である。 図5は、図4(a)のファンデルワールス表面に対する水平軸のまわりに180°回転させた接触ドメインのタンパク質表示のファンデルワールス表面を示す。d,Glu623とHis713の間に形成された塩橋は、PB1ペプチドの上にPAのβヘアピン(残基Ile621-Glu630)を保持する。 図6は、PA及びPB1の静電ポテンシャルを表す。図6aは、PAの静電ポテンシャルに従って着色したタンパク質のファンデルワールス表面を示す。赤は負電荷を青は正電荷を示す。区切りのレベルは-15から+15 KBT-1である。PA分子は図1bと同じ配向である。図6bは、PB1の静電ポテンシャルに従って着色したタンパク質のファンデルワールス表面を示す。 図7は、PAとPB1との疎水的接触を示す図である。 図8は、PA-PB1複合体形の電子密度マップである。 a):複合体の主要なPB1残基を含む電子密度(2mFo-DFc)。マップは振幅を有する解像度範囲50.0-2.3オングストロームの反射から算出し、1.2σで輪郭をつけた(σは電子密度マップの標準偏差である)。PB1のThr 6及びPAの間には接触がないことから、この部位での置換がLeu666とPhe707の露出した側鎖との相互作用を利用できることが示唆される。PAとPB1サブユニットをスティックモデルで示した(PA:黒ラベル、炭素原子は黄色、窒素原子は明るい青、酸素原子は赤;PB1:赤ラベル及びスティックモデル)。 b):複合体の主要なPB1残基を含む電子密度(2mFo-DFc)。マップは振幅を有する解像度範囲50.0-2.3オングストロームの反射から算出し、1.2σで輪郭をつけた(σは電子密度マップの標準偏差である)。Glu623とHis713の間に形成された塩橋は、PB1ペプチド上でPAのβヘアピン(残基Ile 621-Glu 630)を保持する。黒の点線は水素結合(3.2オングストローム)を示す。 図9は、PA-PB1の共発現系(pET28HisTEV-PA(239-716)-PB1(1-81))の構成を示す。インフルエンザA/Puerto Rico/8/1934 H1N1型のRNAポリメラーゼPAサブユニットの239-716をコードしているDNAと、PB1サブユニットの1-81をコードしているDNAが、同じpET28bに組み込まれている。どちらのスブユニットも一つのT7プロモーターで制御されるが、リボソーム結合部位であるSD配列が、どちらのサブユニットをコードするDNAの上流にも存在するため、一つのRNAから二つのペプチド鎖の共発現が可能になっている。ヒスチジンタグとTEVプロテアーゼ認識部位は、制限酵素NdeIとBamHI間に組み込まれており、これによりヒスチジンタグが付加されたPAサブユニットの239-716が発現される。PB1サブユニットの1-81にはヒスチジンタグは付加されないが、PAサブユニットの239-716に直接結合することで、共精製が可能になっている。 図10は、PA異性体とPB1との結合活性及び複合体の転写活性を示す。図10aは、PAとPB1間の相互作用の詳細を示す。PA及びPB1残基は、それぞれ、緑及び黄色に着色した。変異体の場所は青色で示した。図10bは、GSTプルダウンアッセイの結果である。GST融合N末端14残基のPB1(中央)又はネガティブコントロールとしてのGST(底部)によりPA変異体(上部:プルダウンアッセイ用の半量)をプルダウンし、5-20% SDS-PAGE及びクーマシー染色により分析した。使用したPA変異体は以下の通り。レーン:1、WT; 2、657で欠失したC末端(239-657); 3、619-630欠失; 4、V636S; 5、L640D; 6、L666D; 7、W706A; 8、F710A。 図11は、生化学的な手法による化合物スクリーニング結果の一例を示す図である。 図12は、ウイルス感染系による化合物スクリーニング結果の一例を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこの実施の形態のみに限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施をすることができる。
なお、本明細書において引用した全ての文献、および公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み込むものとする。また、本明細書は、2008年7月2日及び2009年1月27日に出願された本願優先権主張の基礎となる日本国特許出願(特願2008-173567号及び特願2009-015497号)の明細書及びに記載の内容を包含する。
本発明において、RNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼの各サブユニットは、以下に説明する通りである。
1.RNAポリメラーゼ
(1)RNA依存性RNAポリメラーゼ複合体
インフルエンザウイルスのRNA依存性RNAポリメラーゼ複合体は、インフルエンザウイルスゲノムの8つのセグメントを結合するタンパク質複合体であり、ウイルスの転写及び複製に必須の複合体である。
また、この複合体は、ウイルスの病原性を発揮するために必須の役割を果たす。例えば、キャップ付加反応(cap-snatching)により、複合体は宿主mRNAのキャップ構造を認識し、キャップ構造を含む宿主mRNAを切断する。
RNAポリメラーゼ複合体は、3種類のサブユニット、すなわちPA、PB1及びPB2から構成される。これら3つのサブユニットの全てがウイルスの転写及び複製に必要とされる。
これらサブユニットの構造については、いくつかの報告はあるものの、構造の情報は非常に限られたものである(Area, E. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101, 308-313 (2004); Torreira, E. et al. Nucleic Acids Res. 35, 3774-3783 (2007);Tarendeau, F. et al. Nature Struct. Mol. Biol. 14, 229-233 (2007); Guilligay, D. et al. Nature Struct. Mol. Biol. 15, 500-506 (2008))。このことは、インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼ複合体のX線結晶構造を解析すること自体が、当業者にとって非常に困難であったことを示す。
(2)αサブユニット(PA)
PAは、機能的複合体の構築に関与する。PAのカルボキシ末端ドメインは、PB1が相互作用する疎水性の高い溝(groove)を形成する。
本発明に使用されるαサブユニットとしては、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドが挙げられる。
また、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドのほか、当該ポリペプチドの変異体にも、PB1との相互作用を有するポリペプチドが存在し得る。したがって、配列番号2で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼのαサブユニット活性を有するポリペプチドも、本発明に使用することが可能である。
また、αサブユニットは、その部分断片であってもよい。αサブユニットがβサブユニット1と相互作用するために必要なコンフォメーションを形成するには、当該形成に特異的な領域であって、αサブユニットのアミノ酸配列のうち、C末端側の130個アミノ酸からなる領域が含まれていれば足りると考えられる。したがって、当該部分断片としては以下のポリペプチドが挙げられる。
(a)配列番号2の239-716番目のアミノ酸に対応するアミノ酸配列(配列番号6)
(b)配列番号6のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ配列番号6のポリペプチドと同様の生物学的活性を有するアミノ酸配列
(c)配列番号5のヌクレオチド配列からなるDNAに相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるポリペプチドであり、かつ配列番号6のポリペプチドと同様の生物学的活性を有するアミノ酸配列
(d) 配列番号2で表されるアミノ酸配列のC末端から130残基以内のアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は
(e) 配列番号2で表されるアミノ酸配列のC末端から130残基以内のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼのαサブユニット活性を有するポリペプチド
本明細書においては、「PA」又は「αサブユニット」の用語は、インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼαサブユニットの全長ポリペプチド及びその部分断片のいずれか一方又は両者を包含する意味で使用される。
本発明において、「配列番号6のアミノ酸配列からなるポリペプチドと同様の生物学的活性」とは、RNAポリメラーゼのαサブユニット活性の他、抗原としての活性、免疫原としての活性なども含む。「RNAポリメラーゼのαサブユニット活性」とは、βサブユニットとの結合活性を意味する。PAが、PB1とPB2との複合体に結合して獲得するRNAポリメラーゼの活性、及びPAがPB1に結合して複合体を形成する活性のいずれも、上記「RNAポリメラーゼのαサブユニット活性」に含まれる。また、変異型の「RNAポリメラーゼのαサブユニット活性」とは、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるPAの活性と比較して、少なくとも30%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは90%以上の活性を有することを意味する。したがって、上記のPA断片(b)、(c)及び(e)は、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるPAの活性と比較して、少なくとも30%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは90%以上のαサブユニット活性を有する。
本発明において、PAをコードするポリヌクレオチドは、例えば、配列番号1で表される塩基配列又はその部分配列を基にプライマーを設計し、インフルエンザウイルスゲノムcDNAを鋳型として遺伝子増幅(ポリメラーゼ連鎖反応:PCR法)(Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons(1987)Section 6.1-6.4)を行うことにより得ることができる。
本発明において、塩基配列は、慣用の方法によって配列決定することにより確認することができる。例えば、ジデオキシヌクレオチドチェーンターミネーション法(Sanger et al.(1977)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74: 5463)等により確認することができる。また、適当なDNAシークエンサーを利用して配列を解析することも可能である。
PAをコードするポリヌクレオチドは、配列番号1又は2で表される全長の塩基配列若しくはアミノ酸配列又はこれらの部分配列の配列情報から、所望の配列が得られるようにプライマーを設計し、インフルエンザウイルス粒子より精製したウイルスゲノムを鋳型として用いた逆転写反応及びPCR反応により得ることができる。逆転写反応は、「Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed.」(Cold Spring Harbor Press(1989))を参照することができる。さらに、前記のプライマーを利用して、PAをコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドから、所望の断片をPCR法で増幅することにより取得することもできる。この際、プライマーには、増幅産物のベクターへのクローニングを容易にするため、適当な制限酵素配列などを付加させてもよい。
配列番号2又は6で表されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸に欠失、置換又は付加などの変異の生じたアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、「Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed.」(Cold Spring Harbor Press(1989))、「Current Protocols in Molecular Biology」(John Wiley & Sons(1987-1997))、Kunkel(1985)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82: 488-92、Kramer and Fritz(1987)Method. Enzymol. 154: 350-67、Kunkel(1988)Method. Enzymol. 85: 2763-6等に記載の部位特異的変異誘発法等の方法に従って調製することができる。
また、上記の変異型PAを調製するためにポリヌクレオチドに変異を導入するには、Kunkel法やGapped duplex法等の部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット、例えばQuikChangeTM Site-Directed Mutagenesis Kit(ストラタジーン社製)、GeneTailorTM Site-Directed Mutagenesis System(インビトロジェン社製)、TaKaRa Site-Directed Mutagenesis System(Mutan-K、Mutan-Super Express Km等:タカラバイオ社製)等を用いて行うことができる。
「ストリンジェントな条件」としては、当業者であれば適宜選択することができる。ハイブリダイゼーションの条件は、例えば、低ストリンジェントな条件が挙げられる。低ストリンジェントな条件とは、例えば「2×SSC、0.1%SDS、42℃」、「1×SSC、0.1%SDS、37℃」、が挙げられ、よりストリンジェントな条件としては、例えば、「1×SSC、0.1%SDS、65℃」、「0.5×SSC、0.1%SDS、50℃」、「2×SSC 、0.1%SDS、50℃」の条件が挙げられる。またより好ましくは、高ストリンジェントな条件として、例えば「2×SSC、0.1%SDS、65℃」が挙げられる。これらの条件において、ハイブリダイゼーションの反応温度を低下させると、高い相同性を有するDNAのみならず、低い相同性しか有しないDNAまでも包括的に得ることができる。逆に、ハイブリダイゼーション温度を上げると、高い相同性を有するDNAのみを得られることが期待できる。但し、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度以外にも塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれらの要素を適宜選択することで所望のストリンジェンシーを実現することが可能である。ハイブリダイゼーションは、公知の方法によって行うことができる。ハイブリダイゼーションの方法は、例えば、「Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed.」(Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989))、「Current Protocols in Molecular Biology」(John Wiley & Sons(1987-1997))等を参照することができる。
さらに本発明において、PAには他のペプチド配列により付加された融合タンパク質が含まれる。PAに付加するペプチド配列としては、ヘマグルチニン(HA)、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、ヘキサヒスチジンタグ(6×His、10×His等)、マルトース結合タンパク質(MBP)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(DsRed)、Luciferase又はVenus等の、タンパク質の識別を容易にするタグ配列等を選択することができる。タグ配列のPAへの連結は、通常の遺伝子工学的手法により容易に行うことができる。または、市販のベクターを用いることもできる。このようなベクターの例としては、pGEXシリーズ(アマシャムファルマシアバイオテク社)、pET Expression Syetem(Novagen社)などを例示することができる。
(2)βサブユニット1
βサブユニット1(PB1)は、ポリメラーゼ活性部位を有する。PB1のアミノ末端残基は、310へリックスを形成する。この構造は、上記PAの疎水性の高い溝に適合する。
本発明におけるβサブユニット1としては、配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドが挙げられる。
また、配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドのほか、当該ポリペプチドの変異体であっても、PAとの相互作用を有するポリペプチドが存在し得る。したがって、配列番号4で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼのβサブユニット1活性を有するポリペプチドも、本発明の方法に使用することが可能である。
本発明におけるβサブユニット1は、その部分断片であってもよい。βサブユニット1がαサブユニットと相互作用するために必要なコンフォメーションを形成するには、PB1のアミノ酸配列のうち、N末端側の15アミノ酸配列が含まれていれば足りると考えられる。したがって、当該部分断片としては、以下のポリペプチドが挙げられる。
(a) 配列番号4の1-81番目のアミノ酸に相当するアミノ酸配列(配列番号8)
(b)配列番号8のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ配列番号8のポリペプチドと同様の生物学的活性を有するアミノ酸配列
(c)配列番号7のヌクレオチド配列からなるDNAに相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるポリペプチドであり、
(d) 配列番号4で表されるアミノ酸配列のN末端から15残基以内のアミノ酸配列からなるポリペプチド。
(e) 配列番号4で表されるアミノ酸配列のN末端から15残基以内のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼのβサブユニット1活性を有するポリペプチド
本明細書においては、「PB1」又は「βサブユニット1」の用語は、インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼβサブユニット1の全長ポリペプチド及びその部分断片のいずれか一方又は両者を包含する意味で使用される。
本発明において、「配列番号8のポリペプチドと同様の生物学的活性」とは、RNAポリメラーゼのβサブユニット1活性の他、抗原としての活性、免疫原としての活性なども含む。「RNAポリメラーゼのβサブユニット1活性」とは、αサブユニットとの結合活性を意味する。PB1が、PAに結合するとともにPB2に結合することにより複合体を形成して獲得するRNAポリメラーゼの活性、及びPB1がPAに結合して複合体を形成する活性のいずれも上記「RNAポリメラーゼのβサブユニット1活性」に含まれる。また、変異型の「RNAポリメラーゼのβサブユニット1活性」とは、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるPB1の活性と比較して、少なくとも30%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは90%以上の活性を有することを意味する。したがって、上記のPB1断片(b)、(c)及び(e)は、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるPB1の活性と比較して、少なくとも30%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは90%以上のβサブユニット1活性を有する。
PB1についての部位特異的変異誘発法、PB1へのタグ配列の付加、ストリンジェントな条件の定義、ハイブリダイゼーションの方法、変異の態様、PCR反応の条件などについては、塩基配列及びアミノ酸配列がそれぞれ配列番号3及び配列番号4である点を除き、前記と同様である。
2.本発明の態様
(1)RNAポリメラーゼ複合体
本発明は、第1の態様として、下記の(a1)、(a2)又は(a3)のポリペプチドと、下記の(b1)、(b2)又は(b3)のポリペプチドとを含む複合体を提供する。
(a1)配列番6のアミノ酸配列からなるポリペプチド
(a2)配列番号6のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ(a1)のポリペプチドと同様の生物学的活性を有するポリペプチド
(a3)配列番号5のヌクレオチド配列からなるDNAに相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるポリペプチドであり、かつ(a1)のポリペプチドと同様の生物学的活性を有するポリペプチド
(b1)配列番号6のアミノ酸配列からなるポリペプチド
(b2)配列番号6のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ(b1)のポリペプチドと同様の生物学的活性を有するポリペプチド
(b3)配列番号5のヌクレオチド配列からなるDNAに相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるポリペプチドであり、かつ(b1)のポリペプチドと同様の生物学的活性を有するポリペプチド
(a1)、(a2)又は(a3)のポリペプチドは、(b1)、(b2)又は(b3)のポリペプチドと結合して、複合体を形成することができる。
この態様において、欠失、置換又は付加されるアミノ酸の総数及び位置は特に限定されるものではない。欠失、置換又は付加されるアミノ酸の総数は1又は複数個、好ましくは1又は数個であり、その具体的な範囲は、欠失に関しては通常1〜10個、好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1〜2個であり、置換に関しては通常1〜20個、好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜3個であり、付加に関しては通常1〜10個、好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1〜2個である。
(a2)のポリペプチドとしては、配列番号10のアミノ酸配列からなるポリペプチドを例示することができる。配列番号10のアミノ酸配列は、インフルエンザAウイルス(A/Duck/Hong Kong/2986.1/2000(H5N1))のRNAポリメラーゼPAサブユニットの239-716番目のアミノ酸に対応するアミノ酸配列である。
(b2)のポリペプチドとしては、配列番号12のアミノ酸配列からなるポリペプチドを例示することができる。配列番号12のアミノ酸配列は、インフルエンザAウイルス(A/Duck/Hong Kong/2986.1/2000(H5N1))のRNAポリメラーゼPB1サブユニットの1-81のアミノ酸配列である。
また、(a3)及び(b3)のポリペプチドは、通常、それぞれ(a1)及び(b1)のポリペプチドとアミノ酸配列において、97%以上の相同性、好ましくは98%以上の相同性、さらに好ましくは99%以上の相同性を有する。ポリペプチドの相同性は、文献(Wilbur, W. J. and Lipman, D. J. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1983) 80, 726-730)に記載のアルゴリズムを利用したソフトウェアやBLASTなどの公知のソフトウェアを用いてを決定できる。
本発明の複合体は、(a1)、(a2)又は(a3)のポリペプチドをコードするDNAと、(b1)、(b2)又は(b3)のポリペプチドをコードするDNAとを導入した形質転換細胞を培養し、培養物から目的の複合体を採取することにより製造することができる。
(a1)、(a2)又は(a3)のポリペプチドをコードするDNAと、(b1)、(b2)又は(b3)のポリペプチドをコードするDNAとを導入した形質転換細胞は、(a1)、(a2)又は(a3)のポリペプチドをコードするDNAと、(b1)、(b2)又は(b3)のポリペプチドをコードするDNAとを含有する組換えベクターを適当な宿主細胞に導入することにより得られる。本発明は、(a1)、(a2)又は(a3)のポリペプチドをコードするDNAと、(b1)、(b2)又は(b3)のポリペプチドをコードするDNAとを導入した形質転換細胞も提供する。
組換えベクターを作製するには、上記の方法により、目的とするポリペプチドのコード領域を含む適切な長さのDNA断片を調製する。目的とするポリペプチドのコード領域のヌクレオチド配列において、宿主細胞における発現に最適なコドンとなるように、ヌクレオチドを置換してもよい。
次いで、このDNA断片を適当な発現ベクターのプロモーターの下流に挿入して、組換えベクターを作製することができる(例えば、Molecular Cloning2nd Edition, J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989を参照のこと)。DNA断片はその機能が発揮されるように発現ベクターに組み込む必要がある。そこで、コドンフレームが、目的のアミノ酸の配列と対応するように発現ベクターに挿入する。本発明は、(a1)、(a2)又は(a3)のポリペプチドをコードするDNAと、(b1)、(b2)又は(b3)のポリペプチドをコードするDNAとを含有する組換えベクターも提供する。
(a1)、(a2)又は(a3)のポリペプチドをコードするDNA及び(b1)、(b2)又は(b3)のポリペプチドをコードするDNAは、前記のように、インフルエンザウイルスのcDNAを鋳型として用いてPCR増幅することにより調製することができる。
(a1)、(a2)又は(a3)のポリペプチドをコードするDNAとしては、配列番号5のヌクレオチド配列からなるDNA、配列番号5のヌクレオチド配列からなるDNAに相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAなどを挙げることができる。配列番号5のヌクレオチド配列からなるDNAに相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAとしては、配列番号5のヌクレオチド配列からなるDNAと少なくとも88%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の相同性を有するDNAが挙げられる。配列番号5のヌクレオチド配列からなるDNAに相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAとしては、配列番号9のヌクレオチド配列からなるDNAを例示することができる。配列番号9のヌクレオチド配列は、インフルエンザAウイルス(A/Duck/Hong Kong/2986.1/2000(H5N1))のRNAポリメラーゼPAサブユニットの239-716のアミノ酸配列をコードするDNAのヌクレオチド配列である。
(b1)、(b2)又は(b3)のポリペプチドをコードするDNAとしては、配列番号7のヌクレオチド配列からなるDNA、配列番号7のヌクレオチド配列からなるDNAに相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAなどを挙げることができる。配列番号7のヌクレオチド配列からなるDNAに相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAとしては、配列番号7のヌクレオチド配列からなるDNAと少なくとも88%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の相同性を有するDNAが挙げられる。配列番号7のヌクレオチド配列からなるDNAに相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAとしては、配列番号11のヌクレオチド配列からなるDNAを例示することができる。配列番号11のヌクレオチド配列は、インフルエンザAウイルス(A/Duck/Hong Kong/2986.1/2000(H5N1))のRNAポリメラーゼPB1サブユニットの1-81のアミノ酸配列をコードするDNAのヌクレオチド配列である。
「ストリンジェントな条件」については、前記で説明した条件と同様である。
発現ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド(例、pBR322,pBR325,pUC12,pUC13)、枯草菌由来のプラスミド(例、pUB110,pTP5,pC194)、酵母由来プラスミド(例、pSH19,pSH15)、λファージなどのバクテリオファージ、レトロウイルス,ワクシニアウイルスなどの動物ウイルス、バキュロウイルスなどの昆虫病原ウイルスなどを用いることができる。
発現ベクターには、プロモーター、エンハンサー、リボソーム結合サイト、種々のシグナル配列(例えば、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナルなど)、クローニングサイト、翻訳・転写ターミネーター、選択マーカー、SV40複製オリジンなどを付加してもよい。このようなベクターの例としては、pGEXシリーズ(アマシャムファルマシアバイオテク社)、pET Expression Syetem(Novagen社)などを例示することができる。
宿主細胞としては、細菌細胞(例えば、エシェリヒア属菌、バチルス属菌、枯草菌など)、真菌細胞(例えば、酵母、アスペルギルスなど)、昆虫細胞(例えば、S2細胞、Sf細胞など)、動物細胞(例えば、CHO細胞、COS細胞、HeLa細胞、C127細胞、3T3細胞、BHK細胞、HEK293細胞など)、植物細胞などを例示することができる。
組換えベクターを宿主細胞に導入するには、Molecular Cloning 2nd Edition, J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989に記載の方法(例えば、リン酸カルシウム法、DEAE-デキストラン法、トランスベクション法、マイクロインジェクション法、リポフェクション法、エレクロトポレーション法、形質導入法、スクレープローディング法、ショットガン法など)または感染により行うことができる。
(a1)、(a2)又は(a3)のポリペプチドをコードするDNAと、(b1)、(b2)又は(b3)のポリペプチドをコードするDNAとを導入した形質転換細胞を培地で培養し、培養物から(a1)、(a2)又は(a3)のポリペプチドと(b1)、(b2)又は(b3)のポリペプチドとの複合体を採取することができる。複合体が培地に分泌される場合には、培地を回収し、その培地から複合体を分離し、精製すればよい。複合体が形質転換された細胞内に産生される場合には、その細胞を溶解し、その溶解物から複合体を分離し、精製すればよい。
複合体が別のタンパク質(タグとして機能する)との融合タンパク質の形態で発現される場合には、融合タンパク質を分離及び精製した後に、FactorXaや酵素(エンテロキナーゼ)処理をすることにより、別のタンパク質を切断し、目的とする複合体を得ることができる。
複合体の分離及び精製は、公知の方法により行うことができる。公知の分離及び精製法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、及びSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法などが用いられる。
結晶化を行うのに十分な純度まで複合体を精製した後、適宜濃縮を行い、沈殿剤の存在下で複合体を結晶化することができる。本発明は、複合体の結晶も提供する。沈殿剤としては、蟻酸ナトリウムなどを例示することができる。結晶化する方法としては、バッチ法、透析法、蒸気拡散法などの手法を用いることができる。バッチ法を採用する場合、結晶化はハンギングドロップ法により行うことが好ましい。複合体の結晶の一例として、空間群P3221を有するもの、さらにその結晶の単位格子が、a=b=101.957±50.0Å、c=115.023±50.0Åの大きさを持つものが挙げられる。
本発明は、(a1)、(a2)又は(a3)のポリペプチド、このポリペプチドをコードするDNA、このDNAを含有する組換えベクター及びこのDNAを導入した形質転換細胞も提供する。また、本発明は、(a1)、(a2)又は(a3)のポリペプチドをコードするDNAを導入した形質転換細胞を培養し、培養物から(a1)、(a2)又は(a3)のポリペプチドを採取することを含む、ポリペプチドの製造方法も提供する。これらのポリペプチド、DNA,組換えベクター、形質転換細胞、それらの製造方法は、前記の複合体について記載した内容に準じる。(a1)、(a2)又は(a3)のポリペプチドは、公知のペプチド合成法に従って製造してもよい。
また、本発明は、(b1)、(b2)又は(b3)のポリペプチド、このポリペプチドをコードするDNA、このDNAを含有する組換えベクター及びこのDNAを導入した形質転換細胞も提供する。また、本発明は、(b1)、(b2)又は(b3)のポリペプチドをコードするDNAを導入した形質転換細胞を培養し、培養物から(b1)、(b2)又は(b3)のポリペプチドを採取することを含む、ポリペプチドの製造方法も提供する。これらのポリペプチド、DNA,組換えベクター、形質転換細胞、及びこれらの製造方法は、上記の複合体について記載した内容と同様である。(b1)、(b2)又は(b3)のポリペプチドは、公知のペプチド合成法に従って製造してもよい。
(a1)、(a2)又は(a3)のポリペプチドと(b1)、(b2)又は(b3)のポリペプチドとをバインディングアッセイに用いて、抗インフルエンザウイルス剤をスクリーニングすることができる。
RNAポリメラーゼ複合体は、ウイルスの転写、複製、病原性において必須の役割を果たすことから、そのアミノ酸配列はウイルス種間を超えて高度に保存されている。一方、ヒトタンパク質との相同性はないことから、この複合体を標的とする薬剤は副作用を低減できる点で有用である。
(2)RNAポリメラーゼ阻害剤のスクリーニング方法
本発明の第2の態様では、候補物質の存在下で、インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼを構成するαサブユニット又はその部分断片とβサブユニット1又はその部分断片とを接触させ、前記αサブユニット又はその部分断片と前記βサブユニット1又はその部分断片との相互作用を阻害する物質を選択する工程を含む、抗インフルエンザ薬の有効成分となり得る物質のスクリーニング方法が提供される。
PAとPB1との結合活性の有無が確認できれば、本発明のスクリーニング方法により、サブユニット間の相互作用を阻害する物質を選択することができる。したがって、PAにおけるPB1との結合部位が保持される限り、PAのアミノ酸配列に欠失、置換、付加又はこれらの組合せによる変異が生じてもよい。また、当該αサブユニット活性は、PAとPB1とが結合したときに必ずしもポリメラーゼ活性を有することが必要とされるものではない。
PAとPB1との結合活性の有無については、例えば免疫沈降法、プルダウンアッセイなどの公知の方法を用いることにより、検出することができる。
本態様において、PAには、上記の通り配列番号2で表されるアミノ酸配列又はその部分配列において1又は数個のアミノ酸が、欠失、置換若しくは付加され、又はそれらの組合せにより変異されたアミノ酸配列からなり、かつ、RNAポリメラーゼのαサブユニット活性を有するタンパク質も含まれる。
本態様では、配列番号2で示されるアミノ酸配列又はその部分配列において、1又は数個のアミノ酸が、欠失、置換、若しくは付加され、又はそれらの組合せにより変異されたアミノ酸配列としては、例えば、
(i) 配列番号2で表されるアミノ酸配列又はその部分配列中の1〜9個(例えば、1〜5個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個、さらに好ましくは1個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、
(ii) 配列番号2で表されるアミノ酸配列又はその部分配列中の1〜9個(例えば、1〜5個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個、さらに好ましくは1個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、
(iii) 配列番号2で表されるアミノ酸配列又はその部分配列に1〜9個(例えば、1〜5個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個、さらに好ましくは1個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、
(iv) 上記(i)〜(iii) の組合せにより変異されたアミノ酸配列などが挙げられる。
また、本態様において、PAの変異型としては、配列番号2で表されるアミノ酸配列、又はその部分配列のアミノ酸配列と約80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは約95%以上、さらに好ましくは約98%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、RNAポリメラーゼのαサブユニット活性を有するアミノ酸配列などが挙げられる。
ホモロジーは、インターネットを利用したホモロジー検索サイトを利用して行うことができる。例えば日本DNAデータバンク(DDBJ)において、FASTA、BLAST、PSI-BLAST等の相同性検索が利用できる。
但し、配列番号2で表されるアミノ酸配列のGln408、Phe411、Asn412、Met595、Glu617、Thr618、Trp619、Pro620、Ile621、Glu623、Val636、Leu640、Leu666、Leu667、Gln670、Arg673、Trp706及びPhe710、好ましくは、Gln408、Asn412、Glu617、Thr618、Pro620、Ile621、Glu623、Gln670及びArg673は、PB1と相互作用し、PB1との結合ポケットを形成するために必要なアミノ酸である。したがって、PB1との相互作用活性を維持するために、上記アミノ酸残基からなる群から選ばれる少なくとも1個のアミノ酸残基においては、前述の変異が生じていないことが好ましい。
なお、本明細書において、タンパク質のアミノ酸残基は、各サブユニットの全長アミノ酸配列のN末端から数えた番号単独で、あるいは当該番号とアミノ酸の三文字表記とを併せた形で表記することがある。後者の場合、例えば、N末端から数えて408番目のグルタミン残基は、「Gln408」と表記する(以下同様)。
変異の導入方法については、前記の通りである。
PAには、配列番号1で表される塩基配列又はその部分配列によりコードされるタンパク質、及び、配列番号1で表される塩基配列又はその部分配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質であって、RNAポリメラーゼαサブユニット活性を有するタンパク質も含まれる。
本発明においては、上記PAをコードするポリヌクレオチドは、PA又はこれらの変異体を作製する際に使用される。
また、本明細書において、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドには、例えば、配列番号1で示される塩基配列又はその部分配列と少なくとも80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上の同一性(相同性)を有する塩基配列を含むポリヌクレオチドが含まれる。同一性を示す値は、BLASTなどの公知のプログラムを利用することにより算出することができる。ストリンジェントな条件及びハイブリダイゼーションの方法は、前記と同様である。
本態様において、配列番号1で表される塩基配列又はその部分配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドは、例えば、配列番号1で表される塩基配列又はその部分配列において1個又は数個の核酸に欠失、置換又は付加などの変異の生じた塩基配列を含むポリヌクレオチドが挙げられる。
ここで、配列番号1で表される塩基配列又はその部分配列において1個又は数個の核酸に欠失、置換又は付加などの変異の生じた塩基配列を含むポリヌクレオチドとしては、例えば、
(i) 配列番号1で表される塩基配列又はその部分配列中の1〜10個(例えば、1〜5個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個、さらに好ましくは1個)の核酸が欠失した塩基配列、
(ii) 配列番号1で表される塩基配列又はその部分配列中の1〜10個(例えば、1〜5個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個、さらに好ましくは1個)の核酸が他の核酸で置換された塩基配列、
(iii) 配列番号1で表される塩基配列又はその部分配列に1〜10個(例えば、1〜5個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個、さらに好ましくは1個)の核酸が付加した塩基配列、
(iv)上記(i)〜(iii)の組合せにより変異された塩基配列などが挙げられる。
PAとPB1との結合活性の有無が確認できれば、本発明のスクリーニング方法により、サブユニット間の相互作用を阻害する物質を選択することができる。したがって、PB1において少なくともPAとの結合部位が保持される限り、PB1のアミノ酸配列に欠失、置換、付加又はこれらの組合せによる変異が生じてもよい。なお、当該βサブユニット1活性は、PAとPB1とが結合したときに必ずしもポリメラーゼ活性を有することを意味するものではない。
βサブユニット1のαサブユニットとの結合活性の有無については、前述したように、公知の方法を用いることにより、判断することができる。
本発明において、PB1には、上記の通り配列番号4で表されるアミノ酸配列又はその部分配列において1又は数個のアミノ酸が、欠失、置換若しくは付加され、又はそれらの組合せにより変異されたアミノ酸配列からなり、かつ、RNAポリメラーゼのβサブユニット1活性を有するタンパク質も含まれる。
配列番号4で示されるアミノ酸配列又はその部分配列において、1又は数個のアミノ酸が、欠失、置換、若しくは付加され、又はそれらの組合せにより変異されたアミノ酸配列としては、例えば、
(i) 配列番号4で表されるアミノ酸配列中の1〜9個(例えば、1〜5個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個、さらに好ましくは1個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、
(ii) 配列番号4で表されるアミノ酸配列中の1〜9個(例えば、1〜5個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個、さらに好ましくは1個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、
(iii) 配列番号4で表されるアミノ酸配列に1〜9個(例えば、1〜5個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個、さらに好ましくは1個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、
(iv) 上記(i)〜(iii) の組合せにより変異されたアミノ酸配列 などが挙げられる。
また、PB1の変異型は、配列番号4で表されるアミノ酸配列、又はその部分配列のアミノ酸配列と約80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは約95%以上、さらに好ましくは約98%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、RNAポリメラーゼのβサブユニット活性を有するアミノ酸配列などが挙げられる。
配列番号4で表されるアミノ酸配列のMet1、Asp2、Val3、Asn4、Pro5、Thr6、Leu7、Leu8、Phe9、Leu10、Lys11、Val12、Pro13及びAla14は、PAと相互作用し、PAとの結合を維持するために必要なアミノ酸である。したがって、上記アミノ酸残基からなる群から選ばれる少なくとも1個のアミノ酸残基においては、前述の変異が生じていないことが好ましい。
ホモロジー検索は、インターネットを利用したホモロジー検索サイトを利用して行うことができる。例えば日本DNAデータバンク(DDBJ)において、FASTA、BLAST、PSI-BLAST等の相同性検索が利用できる。
PB1には、配列番号3で表される塩基配列又はその部分配列によりコードされるタンパク質、及び、配列番号3で表される塩基配列又はその部分配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質であって、RNAポリメラーゼβサブユニット1活性を有するタンパク質も含まれる。また、本発明においては、上記PB1をコードするポリヌクレオチドは、PB1又はこれらの変異体を作製する際に使用される。
PB1についての部位特異的変異誘発法、PB1へのタグ配列の付加、ストリンジェントな条件の定義、ハイブリダイゼーションの方法、変異の態様、PCR反応の条件などについては、塩基配列及びアミノ酸配列がそれぞれ配列番号3、配列番号4である点を除き、前記と同様である。
本発明において、αサブユニットとβサブユニット1との「相互作用」とは、インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼにおいて複合体を形成する構成因子PAとPB1とが会合して結合することを意味する。相互作用の種類として、例えば、水素結合、疎水的会合、疎水性結合などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
また、候補物質がPAとPB1との相互作用を阻害する態様は、特に限定されるものではなく、例えば、候補物質がPA又はPB1のいずれかの相互作用部位に結合することによるもの、候補物質がPA又はPB1のいずれかの部位に結合して両サブユニットの相互作用を阻害する態様等が挙げられる。
ここで、「相互作用」とは、複合体を形成するPA及びPB1が会合して結合することを意味する。
「候補物質の存在下」とは、被検化合物がPA、PB1、又はこれらの複合体に接触できる条件下であることを意味し、PA若しくはPB1又はこれらの複合体を含む反応系に候補化合物を添加すること、PA若しくはPB1又はこれらの複合体を含む細胞(発現可能にこれらの遺伝子が組み込まれた細胞を含む)とともに培養することのいずれをも意味する。
スクリーニングの対象となる候補化合物の例としては、特に限定されるものではないが、PA又はPB1に親和性を有する化合物であることが好ましい。
また、本発明において、「相互作用部位」とは、αサブユニットとβサブユニット1との接触面に現れるアミノ酸残基のうち、少なくとも1つのアミノ酸残基からなるアミノ酸配列をいう。
αサブユニットの相互作用部位のアミノ酸残基は、配列番号2で表されるアミノ酸配列に含まれるアミノ酸残基であれば限定されるものではないが、好ましくは、上記Gln408、Phe411、Asn412、Met595、Glu617、Thr618、Trp619、Pro620、Ile621、Glu623、Val636、Leu640、Leu666、Leu667、Gln670、Arg673、Trp706及びPhe710からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基である。さらに好ましくは、Val636、Leu640、Leu666及びTrp706からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基である。
βサブユニット1の相互作用部位のアミノ酸残基は、配列番号4で表されるアミノ酸配列におけるMet1、Asp2、Val3、Asn4、Pro5、Thr6、Leu7、Leu8、Phe9、Leu10、Lys11、Val12、Pro13及びAla14からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基であり、好ましくは、配列番号4で表されるアミノ酸配列におけるAsn4、Pro5、Thr6、Leu7、Leu8、Phe9及びLeu10からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基である。
また、βサブユニット1の相互作用部位のアミノ酸残基は、配列番号4で表されるアミノ酸配列の5〜10番目のアミノ酸残基であることが好ましい。
本発明において、「接触」とは、上記サブユニットをコードする遺伝子が導入された細胞と候補物質(被験物質)とを同一の反応系又は培養系に存在させることを意味し、例えば、細胞培養容器に候補物質を添加すること、細胞と候補物質とを混合すること、細胞を候補物質の存在下で培養することなどが含まれる。
本態様において「候補物質」とは、インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼ活性を変化させることのできる任意の分子である。例えば、天然又は合成の低分子化合物ライブラリー由来の化合物、遺伝子ライブラリーの発現産物(ペプチド、タンパク質等)、天然又は合成のオリゴ核酸、天然又は合成のペプチドライブラリー由来のペプチド、抗体、細菌由来の物質(細菌から代謝により放出される物質等)、微生物、植物細胞抽出液、動物細胞抽出液、培養液(微生物、植物細胞、動物細胞等の培養物)由来の化合物、土壌中の化合物、ファージディスプレイライブラリー等に含まれる化合物などが挙げられる。化合物は、従来の化学的手段、物理的手段及び/又は生化学的手段により改変したものであってもよく、たとえばアルキル化、エステル化、アミド化などの直接的化学修飾又はランダムな化学修飾に付して構造類似体に改変させることができる。
さらに、候補化合物は、ファーマコフォア検索、又はコンピューターを用いた構造比較プログラムにより同定される化合物であってもよい。本発明において、ファーマコフォア検索、コンピューターを用いた構造比較プログラムなどにより同定される化合物を用いる場合は、PAとPB1との結合部位の構造解析の結果に基づき、これらサブユニット間の相互作用を阻害する化合物の候補をIn silicoにおいて選別することができる。実施例では、In silicoにおける化合物の探索方法として、通常のスクリーニング方法よりも格段にヒット率の高いmultiple target screening(MTS)法を用いてスクリーニングを行った。
本発明のスクリーニング方法は、PA若しくはPB1を産生する細胞、又はこれらの細胞の細胞調製物を用いて、例えば生化学的手法により行うことができ、また、PA及びPB1のうち少なくとも一つは精製された形態のものを使用することも可能である。「細胞調製物」としては、細胞の培養物、培養細胞の破砕物、培養細胞から分画された細胞質、核などのオルガネラなどが挙げられる。また、PA又はPB1を産生する細胞としては、一般の遺伝子工学的手法で使用される細胞が挙げられる。これらの細胞は、PA遺伝子及びPB1遺伝子のうち少なくとも一つが導入されて発現しているものを使用することができる。遺伝子の導入法は当分野で周知であり、容易に実施することができる(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed., (Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)を参照)。
これら化合物は新規な化合物であっても公知の化合物であってもよく、また塩を形成していてもよい。「塩」とは、薬学的に許容される塩を示し、前記化合物と薬学的に許容される塩を形成するものであれば特に限定されるものではない。具体的には、たとえば好ましくはハロゲン化水素酸塩(例えば、フッ化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩など)、無機酸塩(例えば、硫酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩、炭酸塩、重炭酸塩など)、有機カルボン酸塩(例えば、酢酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩など)、有機スルホン酸塩(例えば、メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩など)、アミノ酸塩(例えば、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩など)、四級アミン塩、アルカリ金属塩(例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(例えば、マグネシウム塩、カルシウム塩など)などが挙げられる。
PA及びPB1を製造する方法としては、PA又はPB1をコードする遺伝子(例えば配列番号1若しくは3で表される塩基配列又はこれらの部分配列を有する遺伝子)を、それらのタンパク質が発現するのに適した形態で適宜発現用ベクター内に組み込んだベクターを作製し、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、あるいは酵母や大腸菌等の微生物のいずれかに導入した形質転換体を作製して、その形質転換体を培養する方法が挙げられる。また、無細胞系タンパク質合成による製造方法を採用することも可能である。無細胞系タンパク質合成は、市販のキットを用いて行うことができ、そのようなキットとしては、例えば試薬キットPROTEIOSTM(東洋紡)、TNTTMSystem(プロメガ)、合成装置のPG-MateTM(東洋紡)、RTS(ロシュ・ダイアグノスティクス)などが挙げられる。
このような形質転換体又は無細胞系タンパク質合成により生産されたPA又はPB1は、所望によりその物理学的性質、化学的性質等を利用した各種の分離操作により分離、精製することができる。精製方法としては、例えば通常の塩析法、遠心分離、超音波破砕、限外ろ過、ゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等の各種液体クロマトグラフィー、透析法、これらの組合せを例示できる。
また、PA又はPB1を調製するその他の方法として、PA又はPB1がアフィニティータグを融合した形になるように形質転換体又は無細胞系タンパク質合成で産生させ、PA及びPB1を分離、精製する方法を例示することができる。
本発明のスクリーニング方法は、インフルエンザウイルスの複製、あるいはゲノムの転写活性を評価して抗インフルエンザ薬の有効成分となる物質を選択するために用いることができる。例えば、哺乳類細胞を用いるアッセイとしては、モデルウイルスゲノム及び転写・複製に関与するウイルスタンパク質を導入するモデルウイルスレプリコン系(Turan, K. et al., Nucleic Acids Res. 29, 643-652 (2004))によるアッセイ並びにウイルス感染系によるアッセイなどが挙げられる。また、遺伝学的手法も用いることが可能な酵母を用いたモデルウイルスレプリコン系も転写活性を測定するための方法として採用することができる(国際公開公報WO2008/139627 A1)。さらに、試験管内ウイルスゲノムRNA合成系も採用することができる(Kawaguchi, A. and Nagata, K., EMBO J. 26, 4566-4575 (2007))。当業者であればこれらの方法を適宜選択して転写活性を指標としたスクリーニング系を構築することが可能である。
また本発明においては、PA及びPB1は、FLAG-、HA-、 His-、免疫グロブリンのFc部分-、GST-、GFP、DsRed、Luciferase又はVenus等のタグ又は標識ペプチドとの融合タンパク質として発現させて用いることも可能である。この場合は免疫沈降又は免疫学的手法によりスクリーニングを行うことができる。これらの手法に用いる抗体は、当該タグを認識する抗体を用いることができる。抗体による免疫沈降の代わりに、ビーズ等の固層にNiやグルタチオンを固定化してPAとPB1との複合体を補足することも可能である。さらに、複合体は、融合させたタグやペプチドの特性を利用して、酵素活性又は蛍光活性により検出することも可能である。さらに、PAとPB1との複合体又はその構成因子を検出する際、当該構成因子を分離してウェスタンブロットにより検出することができる。
PA又はPB1の一方をGFP等の蛍光タンパク質との融合タンパク質として発現させると、他方の分子を認識する抗体等で固層にPA/PB1複合体を捕捉した後、直接蛍光活性を測定することでPAとPB1との相互作用(結合状態)を評価することができる。
上記方法において、候補物質によるPAとPB1との結合阻害の有無については、例えば、阻害効果の絶対量に基づく評価、対照との比較に基づく評価等により、判断することができる。
例えば、対照との比較に基づく評価法では、
(i) 候補化合物の存在下及び非存在下で、PAとPB1とを接触させ、
(ii)候補化合物の存在下及び非存在下におけるPAとPB1との相互作用をそれぞれ測定し、
(iii)前記(ii)で測定された測定結果に基づき、PAとPB1との相互作用に影響を与える候補化合物を選択する。
前記(iii)で選択された候補化合物を、PAとPB1との相互作用に影響を与える物質、あるいは抗インフルエンザ薬の有効成分であると同定する。
本発明のスクリーニング方法の態様によれば、タンパク質間の相互作用(結合)を測定しうる系であれば、目的とするPAとPB1との相互作用を阻害する物質の検索が可能である。そのような測定系としては、細胞系も無細胞系も可能であり、ELISA、RIA等の免疫学的手法、Two-Hybrid Systemなどを採用することができる。
PAとPB1との複合体形成を量的に解析する系としては、例えば、プルダウンアッセイや免疫沈降法などの方法を用いることができる。
PAとPB1との間の結合を速度論的に解析する系としては、例えば表面プラズモン共鳴法などを使う方法も挙げられる。この方法では、例えばBIACORE(登録商標)タンパク質相互作用解析システムなどが使用される。
PAとPB1との相互作用を量的に解析する系においては、PA及びPB1の全てを産生する細胞又は当該細胞の細胞調製物を用いて行なうことが可能である。
(3)スクリーニング用キット
本発明のPA及びPB1は、これらの相互作用を阻害する物質、又は抗インフルエンザ薬の有効成分となり得る物質のスクリーニング用キットの形態で提供することができる。本発明のキットは上記PA及びPB1を含むが、その他に、遺伝子発現に必要なベクター、プライマー、制限酵素、標識物質、検出用試薬などを含めることができる。標識物質とは、酵素、放射性同位体、蛍光化合物及び化学発光化合物等を意味する。本発明のキットは、上記の構成要素のほか、本発明の方法を実施するための他の試薬、例えば標識物が酵素標識物の場合は、酵素基質(発色性基質等)、酵素基質溶解液、酵素反応停止液などを含めることができる。さらに、本発明のキットには、候補化合物用希釈液、各種バッファー、滅菌水、各種細胞培養容器、各種反応容器(エッペンドルフチューブ等)、洗浄剤、実験操作マニュアル(説明書)等を含めることもできる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
1.実施例の概要
A型インフルエンザウイルスは、マイナス鎖RNAゲノムを有し、8個のセグメントに分割されている。ビリオンの中では、各ゲノムセグメントはウイルスにコードされたRNA依存性ポリメラーゼの単一コピーに結合している(Elton, D., Digard, P., Tiley, L. & Ortin, J. in Current Topics in Influenza Virology (ed Kawaoka, Y.) 1-92 (Horizon Scientific Press, Norfolk, 2005))。これは、"cap-snatching"、すなわち宿主細胞のpre-mRNAを切断して、そのキャップをウイルス転写物に利用することを含むウイルスの複製及び発病に多数の本質的な役割を果たす(Huang, T. S. et al, J. Virol. 64, 5669-5673 (1990); Deng, T. et al, J. Gen. Virol. 87, 3373-3377 (2006); and Plotch, S. J. et al, Cell 23, 847-858 (1981))。ポリメラーゼの各サブユニットの正確な役割を決定するために多数の研究が行われているが、いくつかの研究は議論の余地が残るものである。
例えば、PB1とPB2のいずれかがcap-snatchingエンドヌクレアーゼ活性を有することを示すような、相反する証拠が提示されている(Li, M. L. et al, EMBO J. 20, 2078-2086 (2001); and Fechter, P. et al, J. Biol. Chem. 278, 20381-20388 (2003))。RNAポリメラーゼはウイルス遺伝子の発現及びウイルス複製に必須であるから、株間での配列保存性が高い。また、RNAポリメラーゼは、ヒトタンパク質とは機能において無関係であるために、魅力的な創薬ターゲットとなる。現在、この複合体の構造に関する情報は非常に限られており、僅かに以下のことが知られているにすぎない。電子顕微鏡観察による解像度23オングストロームの全体構造は、明確なドメイン境界のないコンパクトな構造を示している(Area, E. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101, 308-313 (2004); and Torreira, E. et al., Nucleic Acids Res. 35, 3774-3783 (2007))。また、核移行シグナルを含むPB2のC末端ドメインが結晶化され、インポーチンαとの複合体が形成された(Tarendeau, F. et al., Nature Struct. Mol. Biol. 14, 299-233 (2007))。さらに、広範な変異誘発によりRNAポリメラーゼにおけるサブユニット相互作用の特性決定がなされ、PB1のN末端先端部がPAのC末端と結合することが示された(Zurcher, T. et al, J. Gen. Viol. 77, 1745-1749 (1996); Perez, D. R. & Donis, R. O., J. Viol. 75, 8127-8136 (2001); and Ohtsu, Y. et al.,Microbiol. Immunol. 46, 167-175 (2002))。また、PB1はPB2と数多くの相互作用を示すが、PAが喪失するとRNAポリメラーゼ活性が消失する(Kawaguchi, A. et al., J. Virol. 79, 732-744 (2005))。PAは複合体の安定性のみならずエンドヌクレアーゼ活性、cap結合及びビリオンRNA(vRNA)プロモーター活性にも必要である(Hara, K. et al., J. Virol. 80, 7789-7798 (2006))。
トリプシン消化により、PAが2個のドメインを形成することが明らかとなった(Hara, K. et al., J. Virol. 80, 7789-7798 (2006))。PB1結合部位を持つC末端ドメイン(残基239-716)のみを大腸菌中に過剰発現させ、精製した。プルダウンアッセイを用いて、このタンパク質がPB1と結合し、そのC末端(残基657-716)がこの相互作用に必要であることを確認した。このことは、Zurcherら(Zurcher, T. et al, J. Gen. Viol. 77, 1745-1749 (1996))及びOhtsuら(Ohtsu, Y. et al., Microbiol. Immunol. 46, 167-175 (2002))の報告と一致する。PB1における結合領域はPerezらにより規定され、N末端の12個のアミノ酸が必須の相互領域を構成することが示された(Perez, D. R. & Donis, R. O., J. Viol. 75, 8127-8136 (2001))。PA(239-716)とPB1(1-81)を共発現させると、精製可能な安定複合体が生成した。PB1がN末端14又は36残基にトランケートした場合にも同様の結果が得られた。従って、これらの複合体の結晶化を試みて、PA(239-716)/PB1(1-81)の回折結晶を得た。
1.材料及び方法
(1)PA-PB1複合体のクローニング、発現及び精製
本研究におけるタンパク質発現系の作製には、インフルエンザA/Puerto Rico/8/1934(「A/PR/8/34」ともいう)H1N1型の遺伝子(pET14bに組み込まれたcDNA(インフルエンザA/PR/8/34, H1N1)を使用した。RNAポリメラーゼPAサブユニットの239-716アミノ酸をコードする遺伝子をPCRによって増幅し、これを制限酵素BamHIとNotIで消化して、同酵素で消化したタンパク質発現ベクターpET28b(Novagen)に組み込んだ。この際、タンパク質精製を容易にするために、PAのN末端側にヒスチジンタグを、またこれを精製後除去するために、ヒスチジンタグとPAの間にTEVプロテアーゼ切断配列を組み込んだ(pET28HisTEV-PA(239-716))。一方、PB1サブユニットの1-81アミノ酸をコードする遺伝子をPCRで増幅後、制限酵素NdeIとNotIで消化した後に、同酵素で消化したタンパク質発現ベクターpET21bに組み込んだ(pET21b-PB1(1-81))。その後、タンパク質発現に必要なSD配列とPB1(1-81)を含む部分を、制限酵素XbaIとNotIを用いてpET21b-PB1(1-81)から切り出し、上記で作製したpET28HisTEV-PA(239-716)の制限酵素部位NheIとNotI間に組み込むことで、PA-PB1の共発現系を作製した(pET28HisTEV-PA(239-716)-PB1(1-81))(図9)。なお、pET28HisTEV-PA(239-716)におけるNheI制限酵素部位は、PAサブユニット遺伝子をPCRで増幅した際に、PAの翻訳終結部位とNotI制限酵素部位の間に組み込まれたものである。
作製したpET28HisTEV-PA(239-716)-PB1(1-81)を、タンパク質発現用大腸菌BL21(DE3)RILP(Stratagene)に形質転換し、これをLB培地中で培養した。IPTGを0.5mM添加することでタンパク質発現誘導を行い、誘導後は15℃で一晩培養を行った。集菌後、Ni-NTA-500菌体破砕溶液(20mM Tris pH8.0, 500mM NaCl, 500mM Urea, 25mM imidazole and10mM β-mercaptoethanol)に懸濁し、超音波により菌体を破砕した。遠心分離によって不溶性画分を除去し、Ni-NTAアフィニティカラムを用いて目的のRNAポリメラーゼPA-PB1を精製した。これにTEVプロテアーゼを加えてヒスチジンタグをPAから切断し、再度Ni-NTAアフィニティカラムを用いることで、アフィニティタグのないPA-PB1を単離した。Qセファロースによってさらなる精製を行い、結晶化を行うのに十分な純度のサンプルを得た。
野生型PA遺伝子のVal636がSerに、Leu640がGluに、Leu666がGluに、Trp706がAlaに変異したPAアミノ酸配列をコードするPA変異遺伝子もこれと同様の方法によりクローニングした。これらの、部位特異的突然変異はPCRにより導入した。変異タンパク質は上記と同じ方法で精製した。
(2)結晶解析
結晶化には、15mg/mlまで濃縮したPA(残基239-716)-PB1(残基1-81)を使用した。ハンギングドロップ蒸気拡散法により結晶化を行い、100mM Tris-HCl(pH7.5)、 2.4 M 蟻酸ナトリウムの条件下でPA-PB1の結晶を得た。位相情報を得るために使用した重原子置換結晶は、上記方法で得られた結晶を、0.5mM thimerosal (Hg)に12時間浸すことで得た。
結晶は、a=b=101.957 Å, c=115.023 Åの大きさを持つP3221の空間群であり、一個の非対称ユニット中に一分子を含んでいた。30%(v/v)グリセロールを含有する結晶化バッファー中でフラッシュ凍結した結晶を用いて回折データを-180℃で収集した。日本国茨城県つくば市のPhoton factoryにてビームラインBL5A及び17A上で、ADSC Quantum 314 CCD検出器を用い、天然及び水銀誘導体結晶由来のデータをそれぞれ1.0オングストローム及び1.008オングストロームで収集した。回折データは積算され、HKL2000及びSCALEPACK(Otwinowski, Z. & Minor, W., Methods Enzymol., 276, 307-326 (1997))で評価した。評価に用いたデータの一般的な取扱いにはCCP4サイト(Collaborative Computational Project, Number 4., Acta Crystallogr. D Biol. Crystallogr. 50, 760-763 (1994))から入手したプログラムを用いた。
天然及び水銀誘導体結晶のデータセットはSIRフェーズの計算であった。
使用したプログラムは、パターソンピーク検索プログラムSHELXD (Sheldrick, G.M. SHELXS86-Program for crystal structure solution (University of Gottingen, Germany, 1986).) 及びSOLVE (Terwilliger, T. C., Methods Enzymol., 374, 22-37 (2003)) プログラムである。
SOLVEプログラムを用いて5個の水銀部位と初期フェーズを決定した。RESOLVEによるSolvent flatteningを用いて位相の正確性を改善した。Density modificatioinの後、3.2オングストロームの解像度で電子密度マップを作成した。マップは高品質であり、ほとんどの鎖を追跡することができた。COOT (Emsley, P. & Cowtan, K., Acta Crystallogr. D Biol. Crystallogr. 60, 2126-2132 (2004)) 及びTURBO-FRODO (Roussel, A. & Cambillau, C., in Silicon Graphics Geometry Partner Directory, 77-78 (Silicon Graphics, Mountain View, CA, 1989)) を用いたモデル構築及びCNS (Brunger, A.T. et al., Acta Crystallogr. D Biol. Crystallogr. 54, 905-921 (1998)) 及びREFMAC (Murshudov G. N. et al., Acta Crystallogr. D 53, 240-255 (1997)) プログラムを用いた緻密化を連続するラウンドで行った。球状の電子ピークが、|2Fo-Fc|マップで1.3σ以上、|Fo-Fc|マップで3.0σ以上に見出され、立体化学的に合理的な水素結合が許される位置に溶媒分子を配置した。最終モデルは、PAの257-348, 354-371, 398-549, 558-716残基、及びPB1タンパク質の1-15残基を含んでいた。PROCHECK (Laskowski, R. A. et al., J. Appl. Cryst., 26, 283-291 (1993)) を用いた複合体タンパク質の最終モデルの構造評価により、残基の87.7%がラマチャンドランプロットの最も好ましい領域にあり、「許されない」領域にアミノ酸残基は存在しないことが示された。データ収集及び緻密化の統計をSupplementary Table 1にまとめた。

(3)プルダウンアッセイ
PA遺伝子の逆転写反応には配列番号1で表される核酸配列の5'末端から23塩基と同一配列にNdeI切断サイトを付加したプライマーを用い、PB1遺伝子の逆転写反応には配列番号3で表される核酸配列の5'末端から22塩基と同一配列にNdeI切断サイトを付加したプライマーを用いて、逆転写したPA及びPB1のcDNAを鋳型としたPAの増幅に、逆転写反応に用いたものと同一のプライマー及び配列番号1で表される核酸配列の3'末端から21塩基と相補的な配列にBamHIサイトを付加したプライマーを用い、PB1の増幅には、逆転写反応に用いたものと同一のプライマー及び配列番号3で表される核酸配列の3'末端から21塩基と相補的な配列にXhoIサイトを付加したプライマーを用いた点を除いては、上記と同様の方法で、PA遺伝子及びPB1遺伝子をクローニングした。
pET28HisTEV中のヒスチジンタグの代わりにGSTタグをクローニングした別の改変pET28bベクター(pETGSTTEV)に、合成したPB1のN末端1-14の遺伝子をクローニングした。上記のPA-PB1複合体と同じ方法で発現させた後、20 mM Tris pH8.0、還元グルタチオンの0-20 mMの直線的勾配で、150 mM NaCl及び5 mM DTTで平衡化したグルタチオンセファロースを用いてGST融合PB1(1-14)を精製した。PAについては、クローニングと精製はPA-PB1複合体と同じ方法で行った。
2 nmolのGSTタグ付きPB1を4 nmolタグ無PAとともに、室温で、一晩、20 mM Tris/HCl pH 8.0、150 mM NaCl、5 mM DTTを含有する再構築バッファー中でインキュベートした。その後、20μlグルタチオンセファロース樹脂を使用して、タンパク質をプルダウンした。再構築と同じバッファーによる洗浄工程の後、上記のバッファーとともに20 mMの還元グルタチオンを含む50 μlの溶出バッファーで複合体を溶出した。5-20%勾配のtris-glycineゲルを用いたSDS-アクリルアミドゲル電気泳動法及びクーマシーブルー染色によりタンパク質を分析した。
2.結果
(1)結晶解析の結果
天然X線回折データを2.3オングストロームまで収集し、単水銀浸漬結晶を用いて構造を解析したところ、PAのCドメインは13個のαヘリックスと9個のβストランド(図1a, b)から構成されることが明らかになった。N末端の18残基及びα3とα4との間のループ(残基372-397)は無秩序であり、最終モデルにおけるPAは、Ile257で始まる全部で423個のアミノ酸残基からなる。PAにおける3つのαへリックス(α10、α11、α13)は、"jaws of clamp"と類似した配置をとり、β8及びβ9からなるβヘアピンループとともにPB1のN末端を捉える(図1b)。SSM(Secondary Structure Matching)でPDBを検索したところ、類似の構造はなかった。このドメイン単独ではRNAと結合できず、その表面は特別に電荷の高い領域を示さない(図6a)。3個のC末端αヘリックス(α10, α11及びα13)はクランプの口のように位置し、β8及びβ9でできたβヘアピンループの支持でPB1のN末端をつかんでいる(図1a, b)。Met1からGln15までのPB1の15残基全体は電子密度マップにおいて確認できる(図8a)。これら15個のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列は、ヒト及びトリインフルエンザで完全に保存されている(図2)。図2において、赤字で示されるアミノ酸残基は、両者の間で保存されていないアミノ酸残基を表す。青の背景に白文字で示されるアミノ酸残基は、PAとPB1との水素結合を形成する残基を表す。赤の背景に白文字で示されるアミノ酸残基は、PAとPB1との疎水的接触を形成する残基を表す。青いバーはαヘリックスを表し、黄色の矢印はβストランドを表し、破線は除去されたアミノ酸残基を表す。
PB1のMet1とAsp2はヘアピンループ近くの間隙から現れていて、溶媒によく露出されているが、Val3の側鎖は部分的に埋もれている(図5及び図8b)。Pro5からLys11は310ヘリックスを形成し、これはPAのフィンガー様クラスプにより保持されている。Pro13は主鎖を回転させて、Ala14とGln15がPAに詰め込まれるが、その構造においてさらに他の残基について、秩序だった配置は認められない。PAに結合した短い長さのPB1を用いて結晶を成長させたが、これらの回折は弱く、データ収集に用いられなかった。マススペクトルにより、PB1に由来するペプチドの81残基全部が結晶中に存在するが、大多数の電子密度が可視化できないことが確認された。
PB1は、広範な領域で水素結合(図3及び図4)と疎水性接触(図6及び7a)を介してPAと相互作用する。そして、サブユニット間の水素結合のほとんどは、PB1の主鎖原子を介して形成される(図3及び4)。図4において、パネルaは、PA表面のアミノ酸結合部位を示す。PB1との水素結合を形成するアミノ酸残基は黄色で示し、その他の部分は青で示す。PB1は、赤色のCα トレースで表す。この赤色のCαトレースはスティック状で表し、アミノ酸残基における窒素原子は青で、酸素原子はピンクで示す。パネルbは、パネルaに示すモデルを、垂直軸を中心軸として180度回転させた図であり、PB1のN末端が示されている。PB1のMet1及びAsp2は、ヘアピンループの近傍に存在する隙間からから外側に出現し、溶媒に曝される。一方、Val3の側鎖は、部分的に埋もれている(図4)。従って、Met1は、たとえNアセチル化されても、PAと強力な相互作用を形成する可能性は低いものと考えられる。
サブユニット間水素結合の大部分は、PB1の主鎖原子によって形成する。図3において、破線は、2.4-3.4Åの長さの水素結合を示す。図3の中央に縦1列で配列され赤色のボックスで囲まれたアミノ酸残基(Met1、Asp2、Val3、Asn4、Pro5、Thr6、Leu7、Leu8、Phe9、Leu10、Lys11、Val12、Pro13、Ala14及びGln15)は、PB1のアミノ酸残基を表し、その両側に青色のボックスで囲まれたアミノ酸残基(Gln408、Asn412、Glu617、Thr618、Pro620、Ile621、Glu623、Gln670、Arg673及びTrp706)は、PAのアミノ酸残基を表す。PB1におけるAsp2からAsn4までの残基は、PAにおけるIle621からGlu623との逆平行のβシート様相互作用を形成する。また、PB1におけるAsp2、Val3、Phe9、Leu10、及びVal12のカルボニル酸素原子は、PAのGlu623、Gln408、Trp706、Gln670及びArg673と水素結合を形成する。そして、PB1のAsp2、Val3、Asn4、Leu8、及びAla14の窒素原子は、それぞれ、Glu623、Asn412、Ile621、Pro620及びGln670と水素結合を形成する(図3)。疎水的相互作用は、結合エネルギーに実質的に寄与すると考えられる(図7)。図7において、パネルaは PAとPB1との疎水的接触を示す空間充填図である。PAアミノ酸残基(Trp619、Val636、Leu640、Phe411、Trp706、Phe710、Leu666及びLeu667)は緑色で示し、PB1アミノ酸残基(Val3、Pro5、Thr6、Leu8、Phe9、Leu10、Val12及びAla14)は赤色で示す。パネルbは、β8及びβ9ストランドを除去した状態のPAとPB1との接触面を示す図である。PAの分子表面において、PB1との疎水的接触(3.5-4.3Åの距離)を形成する残基(Phe411、Trp619、Val636、Leu640、Leu666、Trp706、Phe710)は緑色で示し、他の残基は青色で示す。PB1は赤で示す。Pro5はIle621とTrp706の間に充填され、Leu8は、Met595、Trp619、Val636及びLeu640の側鎖と接触する(図7a)。PAとPB1との接触面は、ほとんど密に充填されているが、充填されていない空間がPB1のPro5、Thr6及びPhe9の近傍に認められる。PB1のThr6とPAとの間には、いかなる接触も存在しないことから、この位置のアミノ酸残基を置換すると、その近傍にあるLeu666及びPhe710の側鎖と相互作用を引き起こすことが示唆される。Leu666は、Phe9のベンゼン環に対し3.6Åの距離でプレスされる。
(2)プルダウンアッセイの結果
上記モデルを用いて、本発明者らは、PAのC末端ドメインの欠失体及び点変異体を作製し、PAのPB1への結合性を減少又は消失させるか否か、そして、ヒト細胞におけるウイルスRNA合成を減少させるか否か、検討を行った(図10a)。
PAとPB1との相互作用に影響を与えるアミノ酸配列を検討するため、プルダウンアッセイを行い、野生型(WT)PA及び変異体PAが、N末端14残基にGSTが融合したPB1に結合するかについて試験した(図10b中段)。陰性対照としては、GSTのみのサンプルを用いた(図10b下段)。
図10において、パネルaは、PA 変異体を示すモデル図である。PAのCα トレースは緑色で示し、変異又は欠失させたアミノ酸残基は青色で示す。PB1は黄色で示し、そのアミノ酸残基は赤字で示す。
パネルbは、野生型(WT)PA及び各種PA変異体(Δ657、Δ619-630、V636S、L640D、L666D、W706A)について、GSTプルダウンアッセイを行った結果を示す図である。上段(input)は、PB1と接触させていない各種PA(野生型(WT)PA又はPA変異体)の電気泳動図を示し、中段(GST-PB1)は、PB1と接触させた各種PA(野生型(WT)PA又はPA変異体)の電気泳動図を示す。下段(GST)は、陰性対照として用いたGSTのみを含むサンプルの電気泳動図を示す。
パネルcは、ウイルスRNAの産生レベルに対するPAの変異の効果を、定量的PCR法により測定した結果を示す図である。レポーターアッセイにおいては、ウイルスゲノムRNA(vRNA)、相補性RNA(cRNA)及びウイルスmRNAの産生レベルを測定した。試験は独立して3回行い、その結果は平均値及び標準偏差で示す。
図10aにおいて、Val 636 は、Leu8に接触し、Leu640はLeu8及びPro5の近くに存在し、Leu666はPhe9の側鎖に対し充填する。Trp706はAsn4、Pro5及びThr6と相互作用する。
その結果、試験した全ての欠失変異体(Δ657、Δ619-630)及びPAのC末端ドメインの部位特異的突然変異誘発(Val636、Leu640、Leu666、Trp706、Phe710を、それぞれ、V636S、L640D、L666D、W706A及びF710Aに置換)はPB1と結合することができなかった(図10b)。
PB1のPro5をロイシンに変異することによって結合が消失したが、このことは、この残基がPAと無極性の接触をしている他にヘリックスの安定化を助けることを示唆している。PB1のVal3又はThr6のいずれかをAspに置換しても、結合は若干の減少に止まるか、あるいは結合活性は残存した (用いたアッセイにおいて、それぞれ約80%、25%)。その理由は、これらの側鎖は、前記複合体において溶媒中の水分子と接触するためであると考えられる。Leu 7とLeu 8の両者とも多くの疎水性接触を形成しているため、これらを帯電した側鎖で置換すると、複合体が強く不安定化することが予想される。Phe9又はLeu10は、Leu7及びLeu8ほどPAと多くの相互作用を見かけ上形成せず、また、これらの残基は溶媒に曝露されるにも係わらず、Phe9又はLeu10のいずれかをAspに置換した場合、PB1への結合が完全に阻害された。おそらく、PB1の9位のアスパラギン酸側鎖がN末端ペプチドのヘリックスを妨害するのであろう。同様に、この位置におけるカルボキシル基は、近くに位置するPAのLys 643又はArg 663を引き寄せることによって結合ポケットを変形させる。Leu 10はLeu 7の側鎖と接触するため、これをアスパラギン酸で置換すると、その残基によって形成される鍵となる相互作用が阻害されると考えられる。変異体のAsp 10は、Arg 673によって、ほぼ確実に引き離されると考えられる。このように、結晶構造の全体が示されたことにより、PB1変異体の挙動を明確に説明することが可能となり、PB1相互作用のインターフェースの核心(core)が、Pro 5、Leu 7、Leu 8、Phe 9及びLeu 10の5個の残基に特定された。PA-PB1の複合体では、それら残基の間の表面領域のみが埋まっている(図7a, 7b及び10a)。事実、Phe 9の貢献はかなり小さく、この位置にロイシン等の性質の類似するアミノ酸残基を配置したとしても、依然として強いPB1-PA結合が支持されるであろう。PTLLFLペプチド配列の最後の2個の残基のみがPAと水素結合を形成する(図6)。
PAへのPB1結合部位は、高度に保存されており、その相互作用は多くのウイルス機能にとって極めて重要である。そして当該相互作用が少数の疎水基及び水素結合に依存することを考慮すると、薬剤の標的として高い可能性を有する。
ペプチドPTLLFLは、トリインフルエンザを含め、あらゆるタイプのインフルエンザAウイルスに対して効果的な新規治療法の開発を促進するリード分子であることが明らかとなった。
1.材料及び方法
(1)レポーターアッセイによる、ウイルスの各種RNAの産生レベルの測定
宿主のDNA依存性RNAポリメラーゼIプロモーター支配下に、Luciferase遺伝子の5'及び3'末端にウイルスゲノムの3'及び5'末端のプロモーター配列(末端からそれぞれ26及び23塩基)のcDNAを付加したフラグメントを持つプラスミドと、DNA依存性RNAポリメラーゼIIプロモーター支配下にウイルスゲノムの転写及び複製に必須なウイルス遺伝子(PB1、PB2、PA、NP)を配置したプラスミドを293T細胞内に導入し、細胞内でウイルスの転写及び複製を再構成した。
その際、PA遺伝子は、野生型PA遺伝子並びに野生型PA遺伝子のVal636がSerに、Leu640がGluに、Leu666がGluに、Trp706がAlaに変異したPAアミノ酸配列をコードするPA変異遺伝子をそれぞれ用いた。プラスミドを導入してから16時間後、細胞を回収し、RNAを精製した。
ウイルスゲノムの検出にはLuciferase遺伝子の351番目から380番目の塩基と同一配列を持つプライマー、ウイルスゲノム複製の中間体の検出にはウイルスゲノムの5'末端から26塩基と同一配列を持つプライマー、ウイルスmRNAの検出にはTを20塩基持つプライマーを用いて、逆転写反応を行った。逆転写したcDNAを鋳型にして、Luciferase遺伝子の351番目から380番目の塩基と同一配列を持つプライマーと681番目から700番目の塩基に相補的なプライマーを用いて、定量的PCRをThermal Cycler Dice(TaKaRa)システムにて行った。
2.結果
(1)レポーターアッセイの結果
同様に、全ての変異体(Δ657、Δ619-630、V636S、L640D、L666D、W706A)について、ウイルスの各種RNAの相対的発現レベルを測定した結果、vRNA、相補性RNA(cRNA)及びウイルスmRNA合成のレベルが著しく減少していることが示された(図10c)。PA非存在下では、各RNAの産生レベルは極めて低い。また、点変異によっても各RNAの産生レベルは全体的に少なくとも40%減少した。
1.材料及び方法
(1)In silicoによる候補化合物の探索
本発明者らは、PAとPB1との結合部位のX線結晶構造解析の結果に基づき、In silicoにおいて、PAとPB1との相互作用を阻害しうる候補化合物の探索を行った。
具体的には、200万個の化合物を1万個ずつの200グループに分け、並列化して計算を行い、化合物の探索を行った。
その結果、In silico解析において、5559種類の化合物が候補化合物としてヒットした。
上記5559種類の化合物から、薬品に適されない構造を持つと判断された化合物が、1298個存在した。これらを除外し、残りの化合物4261個をスクリーニングの最終結果として得ることが出来た。
選択した化合物は、ナミキ商事から購入した。
(2)候補化合物のスクリーニング
本実施例では、候補化合物として、化合物A-Fの6つの化合物を用いた。
これらの候補化合物について以下のアッセイを行い、各化合物の機能を評価した。
(3)生化学的方法によるポリメラーゼサブユニットと候補化合物との結合評価
ポリメラーゼサブユニットと候補化合物との結合を評価するための生化学的方法として、共沈降法を用いて候補化合物によるPAとPB1の結合阻害実験を行った。
具体的には、以下のとおりである。
PB1にGSTタグを融合し、GST親和性樹脂を用いてPB1を沈降させる。これをPA存在下で行うと、PAはPB1に結合するため、PAもPB1と共に沈降する。候補化合物は、PAに結合してPB1への結合能を失わせると予想される。すなわち、この共沈降を候補化合物存在下で行い、PAのPB1への結合阻害の有無を確認することにより、候補化合物のPAへの結合を評価した。
(4)物理化学的方法によるポリメラーゼサブユニットと候補化合物との結合評価
ポリメラーゼサブユニットと候補化合物との結合を評価するための物理化学的方法として、等温滴定型熱量測定法を用いた。
具体的には、以下のとおりである。
PAサブユニット単体に候補化合物を加えた際の熱量変化を測定する。候補化合物がPAに結合すると、熱量に変化を生じるので、この変化を測定することで候補化合物とPAの結合を評価した。
(5)ウイルス感染系によるアッセイ
候補化合物のインフルエンザウイルスの複製に対する抑制効果を評価するために、ウイルス感染系によるアッセイを用いた。
具体的には、以下のとおりである。
哺乳類細胞の培養液中にin silico解析より得られた候補化合物を添加し、インフルエンザウイルスを感染させ、産生するウイルス粒子量をプラークアッセイ法(Kawaguchi, et al., J. Virol. 79, 732-744(2005))により、定量した。
2.結果
(1)生化学的方法によるポリメラーゼサブユニットと候補化合物との結合評価の結果
化合物A及び化合物Bとして示す2種類の化合物がPAタンパク質と相互作用していることが確認された(図11)。
(2)物理化学的方法によるポリメラーゼサブユニットと候補化合物との結合評価の結果
PAタンパク質との相互作用について、化合物Aの場合、解離定数(Kd)は、2μMで、6個の化合物が結合していた。また、化合物Bは、Aに対し約10倍のKd値の上昇が観察された。
(3)ウイルス感染系によるアッセイの結果
一部の化合物にてウイルス粒子産生量が1/40まで低下し、ウイルス増殖阻害が観察された(図12、化合物E)。
以上、本実施例により、候補物質の存在下で、インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼを構成するαサブユニットとβサブユニット1との相互作用を阻害する、抗インフルエンザ薬の有効成分となり得る物質をスクリーニングすることができることが示された。
本発明により、人工的にインフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼタンパク質のαサブユニットとβサブユニット1の複合体を容易に、大量に精製することが可能になった。また、インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼタンパク質のαサブユニットとβサブユニット1の複合体の構造及びその複合体の形成に不可欠なアミノ酸が同定されたことにより、インフルエンザの株及び変異に影響されない抗インフルエンザ薬の有効成分となり得る物質のスクリーニング方法が提供される。
<配列番号1>
配列番号1は、インフルエンザA/Puerto Rico/8/1934 H1N1型のRNAポリメラーゼの完全長PAサブユニットをコードするDNAのヌクレオチド配列を示す。
<配列番号2>
配列番号2は、インフルエンザA/Puerto Rico/8/1934 H1N1型のRNAポリメラーゼの完全長PAサブユニットのアミノ酸配列を示す。
<配列番号3>
配列番号3は、インフルエンザA/Puerto Rico/8/1934 H1N1型のRNAポリメラーゼの完全長PB1サブユニットをコードするDNAのヌクレオチド配列を示す。
<配列番号4>
配列番号4は、インフルエンザA/Puerto Rico/8/1934 H1N1型のRNAポリメラーゼの完全長PB1サブユニットのアミノ酸配列を示す。
<配列番号5>
配列番号5は、インフルエンザA/PUERTO RICO/8/1934 H1N1型のRNAポリメラーゼPAサブユニットの239-716をコードするDNAのヌクレオチド配列を示す。
<配列番号6>
配列番号6は、インフルエンザA/PUERTO RICO/8/1934 H1N1型のRNAポリメラーゼPAサブユニットの239-716のアミノ酸配列を示す。
<配列番号7>
配列番号7は、インフルエンザA/PUERTO RICO/8/1934 H1N1型のRNAポリメラーゼPB1サブユニットの1-81をコードするDNAのヌクレオチド配列を示す。
<配列番号8>
配列番号8は、インフルエンザA/PUERTO RICO/8/1934 H1N1型のRNAポリメラーゼPB1サブユニットの1-81のアミノ酸配列を示す。
<配列番号9>
配列番号9は、インフルエンザAウイルス(A/Duck/Hong Kong/2986.1/2000(H5N1))のRNAポリメラーゼPAサブユニットの239-716をコードするDNAのヌクレオチド配列を示す。
<配列番号10>
配列番号10は、インフルエンザAウイルス(A/Duck/Hong Kong/2986.1/2000(H5N1))のRNAポリメラーゼPAサブユニットの239-716のアミノ酸配列を示す。
<配列番号11>
配列番号11は、インフルエンザAウイルス(A/Duck/Hong Kong/2986.1/2000(H5N1))のRNAポリメラーゼPB1サブユニットの1-81をコードするDNAのヌクレオチド配列を示す。
<配列番号12>
配列番号12は、インフルエンザAウイルス(A/Duck/Hong Kong/2986.1/2000(H5N1))のRNAポリメラーゼPB1サブユニットの1-81のアミノ酸配列を示す。
<配列番号13>
配列番号13は、インフルエンザA/PUERTO RICO/8/1934 H1N1型のRNAポリメラーゼPB1サブユニット中に見出されるペプチド配列(PTLLFL)である。

Claims (5)

  1. 下記の(a1)、(a2)又は(a3)のポリペプチドと、下記の(b1)、(b2)又は(b3)のポリペプチドとを含む複合体の結晶
    (a1)配列番号6のアミノ酸配列からなるポリペプチド
    (a2)配列番号6のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつβサブユニット1との結合活性を有するポリペプチド
    (a3)配列番号5のヌクレオチド配列からなるDNAに相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるポリペプチドであり、かつβサブユニット1との結合活性を有するポリペプチド
    (b1)配列番号8のアミノ酸配列からなるポリペプチド
    (b2)配列番号8のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつαサブユニットとの結合活性を有するポリペプチド
    (b3)配列番号7のヌクレオチド配列からなるDNAに相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるポリペプチドであり、かつαサブユニットとの結合活性を有するポリペプチド
  2. 空間群がP3221である請求項1に記載の結晶。
  3. 単位格子が、a=b=101.957±50.0Å、c=115.023±50.0Åの大きさを持つ請求項2に記載の結晶。
  4. (a1)、(a2)又は(a3)のポリペプチドと、下記の(b1)、(b2)又は(b3)のポリペプチドとを含む複合体を沈殿剤の存在下に結晶化させることを含む、請求項1に記載の結晶の製造方法。
  5. 沈殿剤が蟻酸ナトリウムである請求項4に記載の方法。
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