JP5514124B2 - 板ガラス中の白金族欠陥を低減する方法と装置 - Google Patents

板ガラス中の白金族欠陥を低減する方法と装置 Download PDF

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Description

関連出願の説明
本出願は、2008年2月29日出願の米国仮特許出願第61/067,562号からの優先権を主張する。この文書の内容と、本明細書に記載の公開公報、特許、特許文献の全開示を参照により本明細書に援用する。
本発明は板ガラスの製造に関し、具体的には板ガラス中の白金族欠陥のレベルを下げる方法と装置に関する。本発明は、様々な種類の板ガラスの製造において使用可能であるが、低欠陥レベルの要件が特に厳しい液晶ディスプレー(LCD)などのディスプレイの製作における基板として使用される大きな板ガラスの製造に特に有利である。
板ガラスは、フュージョン法としても知られるオーバーフローダウンドロー法など(フロート法とダウンドロー法を含む)の当該技術領域で公知の様々な技術により製造される。これらすべての方法では、流動溶融ガラスは、個々の板ガラスに分離される連続したガラスリボン状に形成される。
LCD基板を製作するために使用されるガラスなどの高い溶融温度を有するガラスに関しては、溶融、精製、撹拌、調整、吐出、成形装置の少なくともいくつかは、白金と白金合金(例えば白金−ロジウム合金)と共に、通常使用される材料である白金族系金属を含む材料で作られる。本明細書で使用されるように、白金族金属は、白金、ロジウム、パラジウム、イリジウム、レニウム、ルテニウムとオスミウムである。
白金含有欠陥の存在はLCDガラス基板の製作における長年の問題だった。譲受人共通の特許文献1では、このような欠陥の1つの源、すなわち溶融ガラスを均質化するのに使用される白金含有部品(例えば撹拌機と撹拌室壁)の浸食について検討している。特許文献1は、完成ガラス基板の均質性を妥協することなく、この源に起因する欠陥のレベルを実質的に下げる方法と装置を提供する。
本発明は、白金族欠陥の別の源、すなわち流動溶融ガラスの自由(開放)表面が存在する製造工程内の場所における白金族系金属(例えば白金)の凝縮物の形成に対処する。譲受人共通の特許文献2は凝縮問題に取り組む1つの手法を開示している。特許文献2では、ガラス溶融物を均質化する際に使用される撹拌機の軸に沿ったガス(例えば空気)の流れが、軸上の白金含有凝縮物の形成を低減するために利用される。
本発明は、板ガラス中に見出される凝縮物に基づく白金族欠陥の数を著しく低減することが驚くべきことにわかった凝縮物問題に対する別の手法に関する。以下にさらに詳細に検討される図12は、本発明の実施形態を利用した実証研究の結果を示す(垂直バーの後の領域を参照)。この図でわかるように、本発明は、本質的にはこれらの種類の欠陥の形成をオフ(低減)するためのスイッチとして作用した。
米国特許第7,127,919号明細書 米国特許出願公開第2006/0042318号明細書
第1の態様によると、本発明は、流動溶融ガラスが、白金族凝縮物欠陥の源となり得る白金族金属を含む構造においてまたはその下に配置される自由表面(開放面)を有する、処理により製造される板ガラスの上記欠陥のレベルを下げる方法であって、
(a)自由表面と上記構造とに接触する限られた容積のガス充填空間を設ける工程と、
(b)上記処理により製造される板ガラス中の白金族凝縮物欠陥の平均レベルが0.02欠陥/キログラム以下となるように、空間内の環境を実質的に制御し、この空間を周辺環境から実質的に隔離する工程と、
を含む方法を提供する。
第2の態様によると、本発明は、流動溶融ガラスが、白金族凝縮物欠陥の源となり得る白金族金属を含む構造においてまたはその下に配置される自由表面(開放面)を有する、処理により製造される板ガラス中の白金族凝縮物欠陥のレベルを下げる方法であって、
(a)自由表面と上記構造とに接触する限られた容積のガス充填空間を設ける工程と、
(b)同じ処理であるが実質的な制御と隔離なしで製造される板ガラス中の白金族凝縮物欠陥の平均レベルより少なくとも50%少ない上記処理により製造される板ガラス中の白金族凝縮物欠陥の平均レベルを実現するように、空間内の環境を実質的に制御しこの空間を周辺環境から実質的に隔離する工程と、
を含む方法を提供する。
本発明の第1と第2の態様のいくつかの実施形態では、空間は、平均酸素含有量が10体積百分率以下であるガスで充填される。
第3の態様によると、本発明は、
(a)流動溶融ガラスの自由表面(開放面)の上の、白金族金属を含む材料に接触する限られた内部容積を有するエンクロージャと、
(b)エンクロージャに熱を供給する少なくとも1つの熱源と、
(c)規定の組成のガスが選択速度でエンクロージャ内に導入される少なくとも1つの吸気口と、
を含む装置であって、
(i)エンクロージャ内のいかなる2点間の最高温度差は250℃以下であり、
(ii)選択速度の結果として、3分を超すエンクロージャのガス交換時間となる、装置を提供する。
第4の態様によると、本発明は板ガラス製造工程により製造される100枚の連続する板ガラスの集団を提供し、
(i)各板は、少なくとも1,800立方センチの体積(例えば、板は第6世代LCD基板を製作するのに十分に大きい)、好ましくは少なくとも3,500立方センチの体積(例えば、板は第8世代LCD基板を製作するのに十分大きい)を有し、
(ii)集団の白金族凝縮物欠陥のレベルは0.02欠陥/キログラム以下である。
本発明のさらなる特徴と利点は以下の詳細説明に記載され、1つには、この説明から当業者には容易に明らかとなり、あるいは本明細書に記載のように本発明を実施することにより認識されるだろう。本明細書に記載の特定の実施形態は本発明の単なる例示であり、本発明の範囲を制限することなく本発明の性質と特徴を理解するための概要または枠組みを提供するように意図されているということを理解すべきである。
添付図面は本発明のさらなる理解を与えるために含まれており、本明細書に組み込まれその一部を構成する。本明細書と添付図面に開示される本発明の様々な特徴は、任意および全ての組み合わせで使用され得るということを理解すべきである。
1200℃(一番下の曲線)から1550℃(上の曲線)の範囲の4つの温度の酸素分圧(水平軸)対白金の質量減少(垂直軸)のプロットである。 2つの酸素水準(10%:下の曲線、20%:上の曲線)の温度(水平軸)対白金の質量減少(垂直軸)のプロットである。 2つの温度(1550℃:下の曲線、1645℃:上の曲線)のガス流(水平軸)対白金の質量減少(垂直軸)のプロットである。 3つの異なる酸素濃度の温度(水平軸)対白金族系金属である白金とロジウムのそれぞれの全圧(垂直軸)のプロットである。 空間の実質的な隔離/制御無しで撹拌室の溶融ガラスの自由表面と接触する限られた容積のガス充填空間内の対流計算のプロットである。 空間の実質的な隔離/制御有りで撹拌室の溶融ガラスの自由表面と接触する限られた容積のガス充填空間内の対流計算のプロットである。 板ガラスを製造するためのフュージョン法における流動溶融ガラスの自由表面への本発明の実施形態の代表的な適用を説明する概略図である。 撹拌室を通る溶融ガラスの自由表面におけるおよびその上に、実質的に隔離/制御された限られた容積のガス充填空間を生成する際に使用することができる装置の透視図である。 図8の円310内の装置の透視図である。 前部が取り除かれた図9の装置を示す。 図9の装置の前部と後部の分解図である。 撹拌室を流れるガラスの自由表面におけるおよびその上の空間の実質的な隔離/制御の適用前後の、フュージョン法を使用して製造された板ガラス中のポンド(0.453キログラム)当たりの白金欠陥を示す時系列プロットであり、実質的な隔離/制御の適用は図では陰影付き垂直バーにより示される。
上に検討したように、本発明は板ガラス中の白金族欠陥の問題に関する。より具体的には、本発明は、流動溶融ガラスが自由表面を有し、かつ白金族金属(例えば白金、白金合金)を含む1つまたは複数の露出面が自由表面におけるまたはその上に位置する、製造工程における場所における白金族系金属の凝縮物の形成に関する。本明細書で使用されるように、白金族金属を含む構造または表面と流動溶融ガラスの自由表面との空間的関係に適用される場合の語句「におけるまたはその上の」は、自由表面においておよびその上の両方に存在する構造または表面を含む。同様に、同じ目的のための使用される語句「におけるまたはその下の」は、流動溶融ガラスの自由表面が白金族金属を含む構造または表面においておよびその下の両方に存在する場合を含む。
関与する高温のために、自由表面におけるまたはその上のある場所では、白金族系金属は酸化されて、金属に戻りかつ自由表面におけるまたはその上の他の場所において金属粒子に凝縮することができる金属の蒸気(例えばPtO2蒸気)を形成する可能性がある。次に、これらの白金族金属粒子は元の自由表面上に「降り注ぐ」か、あるいはガラス流内に混入し、これにより完成板ガラス中の欠陥(通常は混在物)を形成する可能性がある。
この機構(本明細書では「白金族凝縮物欠陥」または単に「凝縮物欠陥」と呼ぶ)により形成された白金族金属を含む欠陥は、他の機構により形成された白金族金属を含む欠陥とは区別される特性を有する。したがって凝縮物欠陥は結晶状であり、その最大寸法は50ミクロン以上である。
白金族凝縮物欠陥は以下の化学および熱力学効果に由来する。この問題の主要な源は、白金族系金属が酸素により入ることができる一連の双方向反応である。例えば、白金とロジウムに関しては、双方向反応の1つは次のように表すことができる。
Pt(s)+O2(g)←→PtO2 (1)
4Rh(s)+3O2(g)←→2Rh2O3 (2)
白金にかかわる他の反応はPtOと他の酸化物を生成することができ、ロジウムにかかわる他の反応はRhO、RhO2および他の酸化物を生成することができる。
これらの反応の順方向は白金族凝縮物欠陥の「発生源」(出発点)と考えられる。図1〜図3に示すように、これらの反応の順方向速度に影響を与える主要な要因はpO2、温度および流速である。
特に、図1は、4つの異なる温度(すなわち1200℃:星形のデータ点、1450℃:三角形のデータ点、1500℃:正方形のデータ点、1550℃:ダイヤモンド形のデータ点)の白金の正反応に対するpO2の影響を示す。この図の水平軸は酸素分圧(%)であり、垂直軸は白金の質量減少(グラム/cm2/秒)である。直線は実験データに対する直線近似である。図1でわかるように、白金の酸化および気化は酸素分圧に従ってほぼ直線的に増加し、その効果の傾斜は温度が増加するにつれてさらに大きくなる。
図2はこの温度効果をさらに詳細に示す。この図の水平軸は温度(℃)であり、垂直軸はまた白金の質量減少(グラム/cm2/秒)である。ダイヤモンド形のデータ点は、10%の酸素分圧を有する雰囲気に対するものであり、正方形のデータ点は20%の酸素分圧に対するものである。データ点を通る曲線は指数関数近似である。温度の上昇による白金酸化および気化の急速な(指数関数的)上昇はこのデータから明らかである。図2には示さないが、他の実験はPt気化の開始が600℃程度であることを示した。
図3には、白金族系金属の酸化および気化にかかわる第3の主要パラメータ(すなわち金属の表面の上の酸素含有雰囲気の流速)の影響を示す。この図の水平軸は、試験のために白金サンプルが収容された容器を通過する流速(標準条件下でのリッター/分:SLPM)であり、垂直軸は図1および図2と同様に白金の質量減少(グラム/cm2/秒)である。三角形のデータ点は1550℃の温度のものであり、ダイヤモンド形のデータ点は1645℃で得られた。両方の場合の酸素分圧は20%だった。
図3でわかるように、白金の質量減少は、停滞条件から離れるにつれ両温度で急速に増加し、次に、流速が増加するにつれ特に低い温度ではいくぶん横ばい状態になる傾向がある。いかなる特定の動作原理にも束縛されたくないが、露出金属面における流量増加は金属−ガス界面における酸化被膜を剥ぎ、より急速な酸化を促進すると考えられる。流量はまた、揮発性種生成速度を動力学的に低減するであろう金属面の上の酸化物の平衡蒸気圧の確立を抑制すると考えられる。
図1〜図3をグループとして考慮すると、白金族凝縮物欠陥の発生源(すなわち白金族金属の酸化、気化)は、pO2、温度、および流速のそれぞれにしたがって増加し、それらの組み合わせ効果は実質的に加法的であるということがわかる。したがって凝縮物欠陥の発生源は、白金族金属を含む材料が他の領域より高い酸素濃度、高い温度、および/または速い流速に晒される流動溶融ガラスの自由表面の近傍の構造の欠陥の領域と見なすことができ、これら条件の2つまたは3つすべての組み合わせは最も厄介な(最も困難な)発生源である。
白金族系金属それ自体および単独の酸化/気化は凝縮物欠陥に至らない。むしろ、自由表面上に「降り注ぐ」あるいは流動ガラス内に混入して板ガラス中の凝縮物欠陥になり得る粒子を生成するためには、流動溶融ガラスの自由表面の上の蒸気/ガス雰囲気から固形物が凝縮することが必要である。上記支配方程式(1)と(2)の逆反応は白金族系金属の凝縮を促進するので、固形粒子形成の「シンク」と考えることができる。
逆反応速度を加速する要因としては、温度および/またはpO2の低下が挙げられる。図4では、凝縮処理にかかわる熱力学を図示する。この図の水平軸は温度(℃)であり、垂直軸は白金族金属を含むガス種の雰囲気における全圧である。同図に示す熱力学的計算は80重量%白金/20重量%ロジウムの合金に対するものである。(i)実線、(ii)破線、(iii)点線の各ペアは、0.2気圧、0.01気圧、0.001気圧のpO2値を有する雰囲気をそれぞれ表す。各ペアの線については、ペアの上側の線が白金を下側の線がロジウムを表す。
この図でわかるように、高温領域で生成された白金および/またはロジウム蒸気が低温領域に移動するにつれて、それらは不安定になり母材の固形粒子の凝縮を生じる。図の最上部の丸い3点は、0.2気圧のpO2値を有する雰囲気中の白金のこの効果を示す。これらの点からわかるように、温度が1450℃から1350℃へ低下するにつれて、雰囲気中の白金含有種の全圧は約0.5×10−6気圧から約0.8×10−7気圧に低下しなければならない。白金含有種のガス圧のこの低下の機構は、凝縮すなわちガス状態から固体状態への変態である。
図4は、また、高酸化領域内で生成された白金および/またはロジウム蒸気が低酸素水準の領域内に移動するにつれて固形種の形成がまた生じるということを示す。T=1450℃の線に沿った3つの丸点はこの効果を示す。pO2が0.2気圧(3つの点の一番上のもの)から0.001気圧(一番下)へ低下するにつれて、雰囲気中の白金含有種の全圧は約0.5×10−6気圧から約0.8×10−7気圧に低下しなければならない。再び、この低下は白金の固体形態が形成されなければならないことを意味する。固体形態は、溶融ガラス流内に戻るまたは混入され、固化した板ガラス中に金属斑点を生成し得る金属凝縮粒子を構成する。
欠陥発生プロセスの「源」部分と同様に、ガス流はまた、「シンク」(凝縮)部分において役割を果たす。再び、いかなる特定の動作原理にも束縛されたくないが、相当量の流れは固形粒子が形成しやすい場所における酸化物の平衡蒸気圧の確立を抑制すると考えられる。
本発明によると、白金族凝縮物欠陥問題は、問題の源側とシンク側の両方に対処することにより解決される。これは、(1)流動溶融ガラスの自由表面、(2)白金族金属を含みかつ欠陥の発生源としての役割を果たす1つまたは複数の材料、および(3)凝縮物が形成されその後自由表面上に「降り注ぐ」および/または流動ガラス内に混入されると予測され得る自由表面におけるまたはその上の1つまたは複数の構造に接触する(例えば、それに接するおよび/またはそれを含む)実質的に隔離/制御された限られた容積のガス充填空間を設けることにより達成される。
この空間は排気されるのとは対照的にガスで充填される。ガスは規定の組成を有する。特に、ガスは低酸素含有量を有することが好ましい。これにより、欠陥発生プロセスの源側だけではなく、空間に対する酸素勾配の大きさの低減によりシンク側も低減する。以下に検討されるように、ガス充填空間は好ましくは10体積%以下、より好適には2体積%以下、最も好ましくは1体積%以下の酸素含有量を有する。ガスの残りは、不活性成分、例えば窒素、アルゴンからなってよい。
ガス充填空間は、ガラス製造ラインのより大きな部分とは対照的に、溶融ガラスの特定の自由表面におけるおよびその上の空間を隔離/制御するためだけのものであるという意味で、限られた容積を有する(例えば、以下に検討される図7の空間142を参照)。容積は当然ながら自由表面の面積に応じて変化し、したがって例えば撹拌室よりも精製機の方が大きくなる。基準点として、撹拌室の図8〜図11に示される装置により製作された限られた容積のガス充填空間の容積は約100リットルであった。一般論として、限られた容積のガス充填空間の容積は低性能のもので約50リットルから高性能のもので約1000リットルの範囲にあるであろう。小さな容積は実質的に隔離/制御するのが容易であり、小さな実質的に隔離/制御された空間を製造ラインに取り込むのに伴うコストは低いので、容積は好ましくは1000リットル未満、より好適には500リットル未満、最も好ましくは100リットル以下である。
限られた容積のガス充填空間は、その内部環境およびその周辺環境との相互作用が材料流と熱流の両方の点でユーザにより実質的に決定されるという意味で「実質的に隔離/制御」される。材料流に関しては、実質的な隔離/制御は、限られた容積のガス充填空間の化学組成がユーザにより決定できるようにする。特に、酸素が欠陥発生プロセスの源面(例えば、図1と図2を参照)とシンク面(例えば、図4を参照)の両方において果たす役割に空間内の平均酸素含有量が対処するように規定され制御されるようにする。さらに、材料流に関する実質的な隔離/制御は、欠陥発生におけるガス流の影響を低減するために、空間を通るガスの全体流量がユーザにより決定できるようにする(例えば、図3を参照)。
製造設定ではガス充填空間中へのまたはガス充填空間からの全ての流れを防ぐのが困難である(例えば、特に溶融ガラスにかかわる高温で全ての漏れを零にまで低減するのは困難である可能性がある)ので、材料流に関する実質的な隔離/制御は、正味流がこの空間から外へ向かうように、限られた容積のガス充填空間にその周辺環境の空間のやや上の圧力(例えば、零を超え、最大で0.01気圧、好ましくは最大で0.001気圧、最も好ましくは最大で0.0001気圧である正差圧)を与える工程をしばしば含むことになる。これはその組成が制御不能および/または時間とともに可変であるかもしれない周辺環境からのガスの侵入を回避するので、空間内の化学組成の制御を容易にする。
空間内の圧力としたがって空間からの正味流出は、所望の化学組成を有するガスを空間内に導入するための1つまたは複数のガス吸気口を空間に設けることにより実現される。吸気口の場所は、空間内の凝縮物欠陥発生の典型的な源/シンク障害箇所において流量を最小限にするように選択される。例えば、以下の図5と図6のコンピュータシミュレーションにより示されるように、典型的な源障害箇所はガス充填空間の周囲表面の壁部の温度が最も高いガラスラインまたはその近くであり、典型的なシンク障害箇所は温度が最も低いガス充填空間の最上部またはその近くである。したがってガス充填空間内にガスを導入するための吸気口は通常、これらの場所を回避することになる。
熱流という意味では、限られた容積のガス充填空間は、空間内の温度勾配を低減できるようにその環境に対し実質的に隔離/制御される。このようにして、この空間は、温度差が欠陥発生プロセスの源面(例えば、図1〜図3を参照)とシンク面(例えば、図4を参照)の両方において果たす役割に対処することができる。また、温度勾配は対流的ガス流をもたらすので(図5と図6を参照)、温度勾配の制御はまた、欠陥形成(例えば、図3を参照)へのガス流の影響を低減するように局所的および/または全体の対流的ガス流を低減するための機構を提供する。
熱流の隔離/制御は、一般的に、限られた容積のガス充填空間周囲の断熱材の利用、選択された場所における熱源の配置、外部環境との境界における自由または強制対流の利用を伴うことになる。通常、熱源は空間の周囲壁に沿ってまたはその近傍に配置されるが、必要に応じ空間内の熱源を使用してもよい。熱源は、空間の外の環境における温度分布の時間的および/または空間的変化にかかわらず空間内の温度が制御されるように調整可能である。空間の外側周囲で隔離を使用することに加え、隔離はまた内部温度勾配を低減するために空間の内側で使用されてよい。例えば、撹拌室の場合、中間カバーを使用して空間を制限されたガス流通を有する2つの領域に分割することができる。カバーを隔離するにより、溶融ガラスに近い領域の温度勾配を低減することができる。
用語「実質的な」と「実質的に」は、完全な分離/制御は必要ではないが本発明の特定のアプリケーションに許容可能な白金族凝縮物欠陥のレベルを実現するための単に実際的かつ十分な量の隔離/制御が必要であるということを表わすために、限られた容積のガス充填空間の隔離/制御に関連して使用される。例えば、LCD基板の場合、基板の寸法要件は何年にもわたって増加してきており、表面欠陥要件は厳格化されてきた。白金族凝縮物欠陥は不合格基板の重大な源であるので、実際上は、容認可能な低いレベルの不合格品を提供する限られた容積のガス充填空間の隔離/制御の水準が使用されることになる。もちろん、経済的観点からは、不合格品の水準が低くなればなるほど良く、したがって最終的には、使用される隔離/制御の水準は、隔離/制御のより高い水準を実現する際の全費用と、より低い欠陥レベルという観点での結果として生じる恩恵との間の費用対効果解析に依存することになる。
図8〜図11には、白金族凝縮物欠陥の主要な低下を達成するために使用可能な装置の一例を示す。この装置は市販の材料と部品を使用しており、この装置またはその類似装置は、本開示に基づき当業者が容易に製作することができる。本装置は、限られた容積のガス充填空間(この場合、撹拌室を通る溶融ガラスの自由表面におけるおよびその上の空間)の実質的であるが完全ではない隔離/制御を実現する(以下の検討を参照)。
上記を考慮すると、隔離/制御の水準は、本発明を使用して製造される板ガラス中の白金族凝縮物欠陥のレベルという点で好都合に表すことができる。限られた容積のガス充填空間は、この空間の使用により板ガラスの単位重量当たりの白金族凝縮物欠陥の平均数を少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも90%低減するようなレベルで隔離/制御されるのが好ましい。欠陥の絶対的レベル換算では、実質的に隔離/制御された限られた容積のガス充填空間(または、ガラスの2つ以上の自由表面がこのような空間を備える場合の空間)の使用は、好ましくは0.01欠陥/ポンド(0.02欠陥/キログラム)以下、より好適には0.005欠陥/ポンド(0.01欠陥/キログラム)以下、最も好ましくは0.001欠陥/ポンド(0.002の欠陥/キログラムの白金族凝縮物欠陥の平均レベルをもたらす。
欠陥のレベルはまた、板ガラス製造工程(例えばフュージョン法)により製造される所定サイズを有する一続きの板ガラスのポンド当たりの欠陥で表現することができる。これは製造工程の不合格品水準の直接指標であり、そして明らかなように商業的に大きな意義がある。本発明の実質的に隔離/制御された限られた容積のガス充填空間の使用により、当該技術領域では従来知られていない不合格水準が実現可能となった。具体的には、100枚の連続する板ガラス(それぞれは少なくとも1,800立方センチの体積を有する)の集団は、0.01以下の欠陥/ポンド(0.02欠陥/キログラム)である集団の白金族凝縮物欠陥のレベルで製造することができる。
アプリケーションに依存するが、限られた容積のガス充填空間の隔離/制御の水準はまた、(i)ガス充填空間内の酸素濃度、(ii)ガス充填空間内の温度差、(iii)空間からのガスの正味流、および/または(iv)空間内の対流的ガス流の点で特徴づけられてよい。
空間内の酸素濃度は、局所的酸素濃度が平均酸素濃度に近い場合の限られた容積のガス充填空間の隔離/制御の水準を特徴付けるのに特に有用である。図7に関連して以下に検討されるように、溶融処理については、実質的に隔離/制御された限られた容積のガス充填空間は、精製機、撹拌室、ボウル、吐出システムから融着機への移行中に存在する溶融ガラスの自由表面の上に形成することができる。これらの場所のうち、精製機だけが、通常、局所的な酸素濃度の大きな空間的変動を呈するだろう。例えば精製機内では、精製機の目的は溶融ガラスから酸素を含むガス混入物を含むガス混入物を取り除くことであるので、溶融ガラスの表面における酸素濃度は通常、精製機内の他の場所の酸素濃度より高くなる。他の3つの場所については、限られた容積のガス充填空間内の酸素濃度は比較的一様になり、したがってその平均値は本発明の目的のこれらの空間の隔離/制御の水準の有効な指標を与える。
定量的には、空間内の平均酸素含有量は、好ましくは10体積百分率以下(すなわち空気中の酸素の体積百分率未満)、より好適には2体積百分率以下、最も好ましくは1体積百分率以下である。凝縮物欠陥を低減することに加え、より低い酸素水準は、溶融ガラス中の酸素含有ガス混入物の収縮を引き起こすことが知られているガラス中の酸素含有量を低減することによりガス混入物を低減するのに役立つ可能性がある。
限られた容積のガス充填空間内のいかなる2点間の最高温度差は、空間の隔離/制御の水準を特徴付けるための別の有用なパラメータである。図5と図6に関連して以下に検討されるように、最高温度は通常、空間の壁とガラスラインの接合の近傍で生じ、一方、最低温度は通常、空間の最上部近くで生じるが、他の分布が本発明の特定のアプリケーションに依存して可能である。
限られた容積のガス充填空間の温度分布は、例えば空間の壁に沿った様々な場所に熱電対を配置することにより測定することができる。しかしながら、実際上は、温度分布を推定するためにコンピュータモデリングを使用し、そして限られた数の実測値(例えば熱電対測定値)を使用してこのコンピュータモデリングを確認することがより実際的かつ効率的であることがわかった。これは以下に検討される図5と図6に使用された手法である。
実測により決定されるかあるいはモデリングにより決定されるかにかかわらず、実質的に隔離/制御された限られた容積のガス充填空間のいかなる2点間の最高温度差は、好ましくは250℃未満、より好適には125℃以下、最も好ましくは25℃以下である。
限られた容積のガス充填空間からのガスの正味流はまた、空間の隔離/制御の程度の有用な指標である。定量的には、正味流は、空間のガス交換時間(すなわち空間内のガスの容積の全交換を実現するのに必要な時間)の点で特徴付けることができる。ガス交換時間は、好ましくは3分以上、より好適には10分以上、最も好ましくは30分以上である。
対流という意味では、空間内の異なる場所でガス流測定を行なうことは可能であるが、実際上、既知の空間の形状と空間を境界付ける材料の熱的特性と組み合わせ、入力データ(例えば、溶融ガラス温度、モデル化された空間の選択場所における温度、空間からのガスの正味流出量)に基づき対流を計算するためにコンピュータモデリングを使用することはより経済的かつ効率的である。
図5と図6には、その底面200が溶融ガラスであり、側面210が垂直であり、上面220が円錐状であるガス充填空間240のモデル化手法を示す。例示のため、撹拌機の軸230は空間を貫通するものと仮定された。このような軸は撹拌室の自由表面におけるおよびその上のガス充填空間に対し存在することになる(本発明の特に有利なアプリケーション。以下参照)が、一般的には存在しないだろう(例えば、図7についての検討を参照)。
モデリングは数値流体力学(CFD)計算において利用される種類の技術を使用して行われることが好ましい。概要では、CFDによると、検討対象の形状が規定され例えば有限要素のメッシュに分割され、境界条件および材料特性もまた規定され、次に流体力学式に対する数値解が、規定された形状と規定された境界条件および材料特性に対して得られる。
これらのモデル化工程のそれぞれは、カスタマイズソフトウェアを使用して、あるいは好ましくは市販のソフトウェアパッケージ(3D CADについてはAUTOCAD、PRO/ENGINEER、またはSOLIDWORKS;メッシュ化についてはGAMBITまたはICEMCFD;そして流量、温度等の計算についてはFLUENT、FLOW3−D、またはACUSOLVE)により実行することができる。例えば、図5と図6のプロットは、関連形状を規定するために使用された3D CADソフトウェアパッケージSOLIDWORKSで始めることにより生成された。形状は次に、有限要素にメッシュ化するICEMCFDソフトウェアにエキスポートされた。本発明が関心を持つ種類のシステムのモデルは、100万〜200万要素を必要とする。次に、有限要素ソフトウェアACUSOLVEを使用して、解を生成した。このソフトウェアは、入力として材料特性と境界条件だけでなくICEMCFDメッシュも使用し、反復処理により定常解に収束する。その解は、モデル内のガスの圧力と速度だけでなくすべての容積にわたる温度場を含む。上に挙げたようなSOLIDWORKS、ICEMCFD、ACUSOLVEに加えて他のソフトウェアパッケージが当然、必要に応じ本発明の実施に使用されてよい。
図5と図6のモデリングでは、垂直撹拌室の最上部は3次元で表された。モデルは、溶融ガラス、撹拌機軸、モデル化される物理的機器の隔離とヒーター場所を含んだ。モデルの底部平面が、物理的機器の操作中に温度測定が行なわれた場所に対応するように、この場合約10.8インチ(27.4センチメートル)のガラス深さをモデル形状で使用した。基本ケースモデル(図5)はまた、完全に対流現象を取り込むために撹拌室の上のガス(空気)の容積を含んだ。すべてのガス運動は自然対流によるものであった、すなわちガス運動はモデル条件に規定されなかった。このようなガス運動は当然、必要に応じ規定されてよい。
入力された材料特性は、固体については熱伝導度、密度、比熱、流体(ガス)については熱伝導度、密度、比熱、粘度であった。固体−ガス界面(熱伝達が輻射により存在する)については、放射率の値(固体材料に依存する)も与えられた。溶融ガラスはモデルでは固体として扱われ、その放射特性はRosseland近似を介しその熱伝導特性に含まれた。
使用境界条件は以下の通りである。ガラスの温度とモデルの底部の撹拌機軸の温度は、物理的機器のこの場所における測定値と一致するように設定した。ヒーター電力はまた物理的機器のものに設定した。外部条件は、熱がどのようにモデルを離れることができるかを定義する。これらの条件はどこでも同一であるとは限らないが、物理的機器の様々な部品を取り囲むものに依存する。主要な違いは、境界上に自由対流が存在するかあるいは強制対流が存在するかと、境界近くの外界温度である。物理的機器の既知の構成と環境に基づき、これらの熱損失条件もまたモデルでは規定された。
その結果が図5と図6にグラフィックに示される。これらの図でわかるように、空間240内の温度差は、実質的な隔離/制御が使用される場合(図6)、それが使用されない場合(図5)より小さい。定量的には、図5のガラスの自由表面に沿った計算温度は、撹拌機軸における1285℃と撹拌室の垂直壁とガラスの接合部における1305℃の間で変化する。図6の場合は、その範囲は1302℃〜1321℃であった。垂直壁の上に行くに従い計算温度はガラスとの接続部の真上の1304℃から図5の壁の最上部における1208℃まで変化し(すなわち96℃の温度差)、一方、図6では(すなわち実質的な隔離と制御を有する)、対応する値は1321℃と1247℃(すなわち、壁に沿った温度差はわずか74℃)であった。
いずれにしても、空間内の最高温度は、ガラスと垂直壁の接点におけるもの(図5の1305℃と図6の1321℃)であり、最低温度は撹拌機棒が空間を出たところの空間の上におけるもの(図5の992℃と図6の1102℃)であった。したがって2つの場合の空間内の最高温度差は、図5では313℃であり図6ではわずか219℃だった。内部空間の実質的な隔離と制御により達成されたこの温度差の低減は、凝縮物形成の源とシンク面に対処するだけでなく、図5の16.5cm/秒に比較し図6の10.6cm/秒の最大計算対流速度により証明されるように空間内のガス流を低減する。それぞれの場合、最大速度は撹拌機軸に沿って発生した。
図5と図6の計算最大内部温度と計算最大対流速度を使用すると、白金/ロジウム質量減少速度の推定を行なうことができる(例えば図1〜図3のデータを使用することにより)。同一である酸素分圧について、図5と比較して低い図6の線速度は高い最高温度により相殺され、その結果、質量減少速度は基本的に同じである。しかしながら、空間内の酸素含有量を制御する追加の変数を加えることにより、質量減少速度の大きな違いが見出せる。したがって図5のデータと21%(空気)の酸素分圧の計算質量減少速度は7.8×10−9グラム/cm2/秒であり、一方、図6のデータと1%の酸素分圧では3.4×10−10グラム/cm2/秒であり、95%超の低減となる。
上述の種類のコンピュータモデリングを使用すると、限られた容積のガス充填空間内の対流の実質的な制御を空間内のガスの最大計算対流速度に換算して定量化することができる。その速度は好ましくは15センチメートル/秒以下、より好適には10センチメートル/秒以下、最も好ましくは5センチメートル/秒以下である。対流はまた、限られた容積のガス充填空間を通る断面をとり単位時間当たりのその断面全体にわたる流量を計算することにより決定されるそれらの全体の計算流速値により特徴づけられてよい。この指標としては、限られた容積のガス充填空間内の対流の実質的な制御は、好ましくは1.0SCFM(5.28ft3/分、2,500cm3/秒)以下、より好適には0.5SCFM(2.64ft3/分、1,250cm3/分)以下、最も好ましくは0.25SCFM(1.32ft3/分、625cm3/分)以下である流速に対応する。
実質的な隔離/制御の定量化のための対流手法は多くの場合他の措置より実際的ではなくなる。一般的には、限られた容積のガス充填空間の使用に起因する板ガラス中の白金族凝縮物欠陥のレベルの低減は、空間の実質的な隔離/制御の最も実際的な指標であり、以下順番に、空間内の平均酸素含有量、空間内の最高温度差、空間のガス交換時間、次に空間内の対流による最大線速度と全体流速値が続く。ある好ましい実施形態では複数の指標(すべの指標を含む)が満たされるが、本発明のある実施形態では前述の実質的な隔離/制御の指標の1つだけが満たされる。
本発明の実質的に隔離/制御された限られた容積のガス充填空間は、流動溶融ガラスが自由表面を有し、かつ凝縮物欠陥の源として機能することができる白金族系金属を含む1つまたは複数の構造が自由表面においてまたはその上に存在する、ガラス製造工程中の様々な場所において使用することができる。図7は、溶融処理を使用する板ガラス製造ラインの概略図である。溶融処理は例示のためだけに選択されたことと、本発明は一般的にはすべての種類の板ガラス製造工程(例えばスロットドロー法、フロート法)に適用可能であるということとを理解すべきである。
図7に示すように、原料114は溶解装置110内で溶解され、次に、精製機115、撹拌機121を備えた撹拌室120、ボウル127を通って、個々の板ガラス137に分割されるガラスのリボンを形成するアイソパイプ133の吸気口132まで進む。好適な仕上げの後、個々の板ガラス137は例えば液晶および他の種類のディスプレイの製作の際に基板として使用することができる。精製機、撹拌室、ボウルおよびそれらの連結導管は、これら容器の白金含有壁を通過する水素浸透の結果としての板ガラス137中のガス混入物の発生を低減するように設計されたこれら構成要素周囲の制御環境を提供するカプセル142内に含まれることが好ましい。参照により本明細書にその全体を援用する米国特許出願公開第2006/0242996号明細書を参照されたい。
図7の破線116は本システムのガラスラインを表し、図に示すようにガラスラインは精製機115、撹拌室120およびボウル127内の自由表面を構成する。さらに、自由表面はまたシステムの吐出部分からシステムの成形部分への移行時に形成される(例えば、自由表面はアイソパイプ133の吸気口132において形成される)。白金族系金属を含む構造はこれらの場所のそれぞれに存在し、したがってそれぞれの場所は本発明による実質的に隔離/制御された限られた容積のガス充填空間の適用の候補である。図7では、このようなガス充填空間を、精製機の参照符号113a、撹拌室の参照符号113b、ボウルの参照符号113cおよび吐出システムから融着機までの移行の参照符号113dに概略的に示す。制御された組成(例えば10体積百分率以下の酸素濃度)を有するガスのこれら空間内への導入もまた矢印118a、118b、118cおよび118dにより示される。カプセル142内のガス充填空間はそれが低酸素濃度を有する場合ですら十分に隔離されないかあるいは白金族凝縮物欠陥の形成を回避するように制御されないということに留意すべきである。特に、カプセル空間は、そのすべてが白金族凝縮物欠陥につながる相当なガス流だけでなく相当な熱勾配と酸素勾配を呈する(例えば、図1〜図4を参照)。実際、以下にさらに検討されるように、図12の垂直バーに先行する時間点のデータはカプセル142を使用して得られ、本発明が使用された垂直バー後に達成されたものより明らかにはるかに高い。
本発明の特に有利な適用は撹拌室120におけるものである。図8〜図11は、撹拌室の溶融ガラスの自由表面においておよびその上に所望の実質的に隔離/制御された限られた容積のガス充填空間を形成するために使用することができる装置300の実施形態を示す。図8の円で囲まれた領域310は、所望の空間を形成するために既存の撹拌室の最上部に取り付けられる準備ができた組み立て状態の装置を示す。図示のように、装置300は、撹拌機340を回転させるためのモータアセンブリ330を載せる上部構造350により支持される。
図9〜図11には装置300をさらに詳細に示す。本装置は、シートメタルで構成することができ、高温シール358同士を押し付ける急速錠353で組み立て可能な後部および前部351、352を含む(図11を参照)。後部351は、本装置が室温から動作温度まで加熱される際ガス充填空間をほぼ密閉状態のままにする蛇腹装置354にボルトで固定される。割軸受アセンブリ355は撹拌機の軸356と本装置の最上部との間を密閉する。軸受アセンブリからの潜在的な汚染を防ぐために、円盤集塵装置357が軸受下に配置され撹拌機軸に取り付けられている。本装置の意図せぬ接地を回避するために複数の電気的絶縁体ガスケットを使用することができる。
前部352は、保護領域の保守のためのアクセスを可能にするラッチドア359を有する。ドアは、ドアを開けることなくしたがってガス充填空間の隔離を損なうことなく密閉空間の観察を可能にする耐火ガラスで作られた窓360を含む。前部と後部351と352は、組成制御されたガスをガス充填空間内に導入するためのポート371だけでなく、圧力制御/監視、酸素および露点センサーと制御/監視熱電対用の複数のアクセスポート370を有する。温度敏感電気部品を過熱から保護するだけでなく装置内のガスの温度を規制するのを助けるために熱交換器(図示せず)を装置内に含むことができる。
図12には、板ガラス中の白金族凝縮物欠陥を低減する際の本発明の有効性を示す。この図の垂直軸は、固化された板ガラス上で測定されたポンド当たりの白金欠陥を示し、水平軸は3週間にわたる一連の時間点である。時間点は均等な間隔ではなく、異なる数の測定が異なる日の異なる時間になされた。試験のそれぞれの日には少なくとも2つの測定がなされた。各時間点は4時間の板ガラス製造を表す。
時間点50と60との間の垂直バーは、溶融処理を使用した板ガラス製造ラインの撹拌室を通過する溶融ガラスの自由表面におけるおよびその上の限られた容積のガス充填空間内の酸素および温度勾配に実質的な制御が適用された実験中の点を表す。動作条件のこの変化は約1週間後に実験内に発生した。
垂直バーの前の時間点については、空間内の酸素含有量および温度が、撹拌室の下部を取り囲むカプセル環境(図7の参照符号142を参照)および撹拌室の上部を取り囲む外気内の変化の結果として変化できるようにした。垂直バーでは、限られた容積のガス充填空間内の酸素勾配は、この容積をカプセル環境から密閉し、かつ内容積を内容積と外気との間の限られた流れを通じてカプセル環境の外側の空気と均衡させることにより低減された。カプセル内の酸素含有量が低く(1.5体積%)そして外気中の酸素含有量が高かった(21体積%)ので、相当な勾配が垂直バーの前に存在した。内容積中の酸素含有量を周囲環境中の酸素含有量とほぼ等しくすることにより勾配は最小化された。温度勾配はまた、撹拌室の自由表面におけるおよびその上の空間の温度勾配を発生したガスの定常流が存在したカプセル環境からの内容積の密閉により低減された。
図12でわかるように、酸素および温度勾配の実質的な隔離/制御により達成された欠陥レベルの改善は、隔離/制御が適用されると直ちに(一日程度内に)起こった。図12の実験で使用されたものと同一の構成を有する空間に関し特定の計算は行わなかったが、様々な空間で行った計算から、この隔離/制御された空間における温度分布と対流的ガス流は図5のものよりむしろ図6に関連して先に計算されたものに似ているであろう。
図12でわかるように、実質的に隔離/制御された限られた容積のガス充填空間は、平均値およびその分散の両方の点で欠陥レベルに大きな影響を与えた。撹拌室を通過する溶融ガラスの自由表面におけるおよびその上の空間が実質的に隔離/制御されなかった場合、欠陥レベルは広範に変化し、決まって0.05欠陥/ポンド(0.11欠陥/キログラム)を超え、一方、実質的な隔離/制御がある場合、欠陥レベルは0.01欠陥/ポンド(0.02欠陥/キログラム)未満の平均値を有する帯内の狭い範囲に規制された。上記のように、このデータから、本発明は白金族凝縮物欠陥のオン/オフスイッチとして実質的に作用するということがわかる。
以上から、本明細書に記載の実質的に隔離/制御された限られた容積のガス充填空間は、以下の4項目の少なくとも1つ、好ましくはそのすべてにより板ガラス中の白金族凝縮物欠陥のレベルを下げるということがわかる。
(1)大気の酸素含有量を低減することにより流動溶融ガラスの自由表面におけるおよびその上の大気中の白金族金属酸化物の量を低減する、
(2)白金族金属の酸化および気化の速度を遅くするより多くの停滞条件を設定するために大気の運動を制限することにより、流動溶融ガラスの自由表面におけるおよびその上の大気中の白金族金属酸化物の量を低減する、
(3)固化されたガラス中の欠陥(例えば混入物)になり得る固体を凝縮し形成する白金族金属酸化物の量を制限するために、流動溶融ガラスの自由表面におけるおよびその上の大気中の温度範囲または温度勾配を低減する、および/または
(4)より均質のガス環境を提供し、これにより、固化されたガラス中の欠陥(例えば混入物)になり得る固体を凝縮し形成する白金族金属酸化物の量を制限するために、流動溶融ガラスの自由表面におけるおよびその上の大気中の酸素濃度の範囲または酸素勾配を低減する。
他の手法とは異なり、この手法は、欠陥発生の源とシンクの両方に対処し制御する。この手法は、ガラスの組成の詳細に関係なく、白金族系金属を使用するシステムにおいて溶融または吐出されるすべての種類のディスプレイ用ガラスと任意のガラスに適用可能である。さらに、追加の利点として、相当な量の揮発性酸化物(例えばBおよび/またはSn酸化物)を含むガラス組成に関して、実質的に隔離/制御された限られた容積のガス充填空間は、自由表面に溶融ガラスを残し自由表面におけるまたはその上の構造上で凝縮し次に自由表面上に降り注ぐあるいは流動ガラス内に混入され板ガラス中の追加の欠陥を形成する酸化物の結果としてのこのような酸化物から凝縮物欠陥を低減する。
上記開示に基づき、本発明の範囲および精神から逸脱しない様々な変更が当業者には明らかになる。以下の特許請求範囲は、このような変更、変形、等価物だけでなく本明細書に記載の特定の実施形態を包含するように意図されている。

Claims (5)

  1. (a)流動溶融ガラスの自由表面の上の、白金族金属を含む材料に接触する限られた内部容積を有するエンクロージャと、
    (b)前記エンクロージャに熱を供給する少なくとも1つの熱源と、
    (c)規定の組成のガス選択速度で前記エンクロージャ内に導入る少なくとも1つの吸気口と、
    を含む装置であって、
    (i)前記エンクロージャ内のいかなる2点間の最高温度差250℃以下であり、
    (ii)前記選択速度の結果として、前記エンクロージャのガス交換時間が3分を超えることとなることを特徴とする装置。
  2. (a)前記エンクロージャは撹拌室の自由表面の上にあり、および/または
    (b)前記ガスの平均酸素含有量は10体積百分率以下であり、および/または
    (c)前記エンクロージャ内の前記ガスの圧力と該エンクロージャの外部に隣接する周囲圧力の差は零気圧を超えかつ0.01気圧以下であり、および/または
    (d)前記最高温度差はコンピュータモデリングにより決定される、
    ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
  3. 流動溶融ガラスが、白金族凝縮物欠陥の源となり得る白金族金属を含む構造に接触するかまたはその下に自由表面を有する状態が生じる処理により製造される板ガラス中の前記欠陥のレベルを下げる方法であって、
    (a)前記自由表面と前記構造とに接触する限られた容積のガス充填空間を設ける工程と、
    (b)
    (i)前記処理により製造される板ガラス中の白金族凝縮物欠陥の平均レベルが0.02欠陥/kg以下となるように、および/または
    (ii)前記処理により製造される板ガラス中の白金族凝縮物欠陥の平均レベルが、同じ処理であるが実質的な制御と隔離なしで製造される板ガラス中の白金族凝縮物欠陥の平均レベルより少なくとも50%少なくなるように、
    空間内の環境を実質的に制御し前記空間を周辺環境から実質的に隔離する工程と、
    を含
    前記空間内のいかなる2点間の最高温度差も250℃以下であり、前記空間のガス交換時間は3分を超えることを特徴とする方法。
  4. (i)前記自由表面は撹拌室の自由表面であり、前記構造は該撹拌室の壁を含み、および/または
    (ii)前記空間は、平均酸素含有量が10体積百分率以下のガスで充填され、および/または
    (iii)前記最高温度差はコンピュータモデリングにより決定され、および/または
    v)コンピュータモデリングにより決定される前記空間内の最大対流速度は15センチメートル/秒以下であり、および/または
    v)コンピュータモデリングにより決定される前記空間内の対流の流速は1標準立方フィート/分(0.0283立方メートル/分)である、
    ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
  5. 前記製造される板ガラスが100枚の連続板ガラスの集団であって、各板ガラスは少なくとも1,800立方センチの容積を有することを特徴とする請求項3または4に記載の方法
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